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特表2024-505524プログラム死受容体1(PD-1)抗体の組成物及びその組成物を得る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】プログラム死受容体1(PD-1)抗体の組成物及びその組成物を得る方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240130BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 D
A61K39/395 E
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545829
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022014055
(87)【国際公開番号】W WO2022165001
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,461
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブラワー,マーク・エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,チョン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】クワン,ブライアン・ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ナポリ,ウィリアム・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ブミット・エー.
(72)【発明者】
【氏名】ドス・サントス・ピント,ヌーノ・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン・ザ・セカンド,ダグラス・デニス
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,セン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064BH07
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC10
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CDRH3重鎖領域におけるMet105の約3.0%以下の酸化を有する抗PD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの組成物、及び精製組成物を得る方法を提供する。本発明はまた、抗PD-1抗体主要種及びその酸性種を含む組成物を提供し、酸性種の量は約1.0~12.0%である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物であって、前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2及び配列番号3のCDRL3を含む3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2及び配列番号8のCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含み、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、メチオニン105の約3.0%以下の酸化を有する、
組成物。
【請求項2】
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗ヒトPD-1抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗ヒトPD-1抗体が、2本の軽鎖及び2本の重鎖から構成され、ここで前記2本の軽鎖が、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、前記2本の重鎖が、配列番号10から15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又はそれらの組み合わせから構成される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗ヒトPD-1抗体が、2本の軽鎖及び2本の重鎖から構成され、前記2本の軽鎖が、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、前記2本の重鎖が、配列番号11に示されるアミノ酸配列から構成される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体がペンブロリズマブである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗体がペンブロリズマブ変異体である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
メチオニン105の酸化が約0.2から3.0%である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記メチオニン105の酸化が、還元ペプチドマッピング、液体クロマトグラフィー及び質量分析によって測定される場合、約0.5%から3.0%である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記メチオニン105の酸化が0.5から3.0%である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、前記抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物であって、前記酸性種の量が1.0から12.0%である、
組成物。
【請求項12】
重鎖が配列番号10、13若しくは15のアミノ酸配列から構成され、軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び重鎖をコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、チャイニーズ卵巣細胞から生成される抗ヒトPD-1抗体主要種と、前記抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物であって、前記酸性種の量が1.0から12.0%である、
組成物。
【請求項13】
各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、前記抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種及び塩基性種とを含む組成物であって、前記主要種の量が65から85%である、
組成物。
【請求項14】
前記酸性種の量が約6から10%である、
請求項11から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
約1から4%の酸性1種を含む、
請求項11から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
約1から5%の酸性変異体種を含む、
請求項11から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記主要種の量が約65から80%である、
請求項11から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記主要種の量が約70から80%である、
請求項11から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記塩基性種が約12から27%である、
請求項12から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗ヒトPD-1抗体が哺乳動物宿主細胞から産生され、前記組成物が採取された細胞培養液である、
請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記主要種、酸性、酸性1、酸性変異体又は塩基性種が、陽イオン交換クロマトグラフィーによって同定され、その後に任意選択的に質量分析される、
請求項11から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
陽イオン交換カラムProPac WCX-10、Sepax Proteomix WCX-NP1.7、Thermo MAbPac SCX-10G又はThermo MAbPac SCX50Gが使用される、
請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
カルボキシレート官能基を有する弱陽イオン交換カラムが使用される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記主要種、酸性種、酸性1種、酸性変異体種又は塩基性種が、ProPac WCX-10によって、移動相(A)4%アセトニトリルを含む24mM MES pH6.1、及び移動相(B)4%アセトニトリルを含む20mMリン酸ナトリウム、95mM NaCl pH8.0を使用して、カラム温度35℃で、勾配は0から0.6分に22%から22%B、0.6から15.0分に22%から29%B、15.0から30.0分に29%から70%B、30.0から30.5分に70%から100%B、30.5から33.0分に100%から100%Bを適用して決定され、クロマトグラムは280nmでの検出を用いて作成される、
請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
約165mg/mLの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約10mMのL-メチオニン又はその薬学的に許容される塩、約7% w/vのスクロース、及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む、
医薬組成物。
【請求項26】
約130mg/mLの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約10mMのL-メチオニン又はその薬学的に許容される塩、約7% w/vのスクロース、及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む、
医薬組成物。
【請求項27】
約25mg/mLの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約7% w/vのスクロース及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む、
医薬組成物。
【請求項28】
約200から800mgの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体を含む、
医薬組成物。
【請求項29】
a)少なくとも約0.25から6.0容器体積/日(vvd)の灌流速度を適用することによって、灌流バイオリアクターにおいて細胞培地中で哺乳動物宿主細胞を灌流し、ここで前記宿主細胞が、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド及び重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含み、
b)細胞培養ブロスから前記抗体又はその抗原結合フラグメントを連続的に採取して採取細胞培養液を得て、
c)場合により、約0.5から8時間の滞留時間の間、前記採取細胞培養液(HCCF)をサージ容器に移し、
d)アフィニティークロマトグラフィー工程を用いて前記採取細胞培養液を連続的に精製することで精製組成物を得る、
ステップを含む、
請求項1から24のいずれか一項に記載の精製組成物を得る方法。
【請求項30】
ステップa)の前に、
(i)約0.2から0.6×10細胞/mlの細胞密度で細胞培地中の哺乳動物宿主細胞を灌流バイオリアクターに接種し、ここで前記宿主細胞が、前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの前記軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド及び前記重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含み、
(ii)灌流バイオリアクターにおいて、細胞培地中の前記哺乳動物宿主細胞を約2.0から6.0×10細胞/mlの細胞密度まで増殖させる、
ステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ステップi)において、前記細胞密度が接種時に約0.25から0.5×10細胞/mlである、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップa)において、前記細胞密度が約2から10×10細胞/mlに達したときに前記灌流が開始される、
請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップa)において、前記細胞密度が約4から8×10細胞/mlに達したときに前記灌流が開始される、
請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップa)において、前記灌流が約0.5vvdから2vvdである、
請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、
請求項29から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記灌流バイオリアクター中の銅濃度が1から35ppbの範囲である、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記連続採取が、一定の透過速度を設定して行われることによって、前記灌流バイオリアクターに接続された中空糸膜を通る無細胞透過液が得られる、
請求項29から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アフィニティークロマトグラフィー工程がプロテインAアフィニティークロマトグラフィーである、
請求項29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、連続マルチカラムクロマトグラフィーシステムで操作される、
請求項29から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、ステップa)の前記灌流バイオリアクターに流体接続される、
請求項29から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
サージ容器が前記灌流バイオリアクター及びアフィニティークロマトグラフィーに流体接続され、前記サージ容器へのHCCF流速が、前記サージ容器から前記連続マルチカラムクロマトグラフィーシステムへの供給速度に等しい、
請求項39に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(d)の後に、ウイルス不活化、深層濾過、第2のクロマトグラフィー、第3の研磨クロマトグラフィー、ウイルス濾過、限外濾過、透析濾過、シングルパス接線流濾過及びインライン透析濾過の1つ又は複数のステップが続き、これが流体接続されていてもよい、又はサージ容器を介して流体接続されていてもよい、及び/又は保持容器を介して接続されていてもよい、
請求項29から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
請求項29から42のいずれか一項に記載の方法によって産生されるか、又はそれによって得ることができる、
抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントを含む精製組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDRH3重鎖領域におけるMet105の約3.0%以下の酸化又は約1.0~12.0%の酸性種を有する抗PD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの精製組成物、及び本発明の精製組成物を得る方法を提供する。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
【0003】
本出願の配列表は、ファイル名25195-WO-PCT_SEQLIST-20JAN2022.txt、作成日2022年1月20日、サイズ30kbのASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出される。EFS-Webを介して提出されたこの配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
プログラム死受容体-1(PD-1)軸を標的とする免疫チェックポイント療法は、複数のヒト癌における臨床応答の革新的な改善をもたらした(Brahmer et al.,N Engl J Med 2012,366:2455-65;Garon et al.N Engl J Med 2015,372:2018-28;Hamid et al.,N Engl J Med 2013,369:134-44;Robert et al.,Lancet 2014,384:1109-17;Robert et al.,N Engl J Med 2015,372:2521-32;Robert et al.,N Engl J Med 2015,372:320-30;Topalian et al.,N Engl J Med 2012,366:2443-54;Topalian et al.,J Clin Oncol 2014,32:1020-30;Wolchok et al.,N Engl J Med 2013,369:122-33)。T細胞上のPD-1受容体と、腫瘍及び免疫浸潤細胞上のそのリガンドPD-L1及びPD-L2との相互作用は、T細胞媒介性免疫応答を調節し、ヒト腫瘍による免疫回避において役割を果たし得る(Pardoll DM.Nat Rev Cancer 2012,12:252-64)。PD-1がそのリガンドのいずれかに結合すると、阻害性刺激がT細胞に伝達される。PD-1軸を標的とする免疫療法には、PD-1受容体(KEYTRUDA(商標)(ペンブロリズマブ)、Merck and Co.,Inc.,Kenilworth,NJ及びOPDIVO(商標)(ニボルマブ)、Bristol-Myers Squibb、Princeton、NJ)に対するモノクローナル抗体、及びPD-L1リガンド(MPDL3280A;TECENTRIQ(商標)(アテゾリズマブ)、Genentech,San Francisco,CA)に結合するモノクローナル抗体が含まれる。両方の治療アプローチは、多数の癌種において抗腫瘍効果を実証している。
【0005】
メチオニンの酸化は、多くのタンパク質医薬品における主要な分解経路の1つである。タンパク質中のメチオニン残基は酸化されやすく、メチオニンスルホキシド及び極端な条件下ではスルホンの形成をもたらす。抗体のCDR中の露出したメチオニン残基又はメチオニン残基は、酸化によって抗体の生物学的活性に影響を及ぼす可能性がある。ペンブロリズマブの主な分解経路には、光又は過酸化ストレスにさらされた場合の重鎖CDR及びFcメチオニン残基中のメチオニン105(Met105)の酸化が含まれる。特にMet105位置で、酸化が少ないペンブロリズマブ組成物を得ることが望ましい。
【0006】
アスパラギン残基の脱アミド化はスクシンイミド形成をもたらし得、次いで、これをアスパラギン酸又はイソアスパラギン酸に変換することができる。抗体、特にCDR領域における脱アミド化は、抗体の生物学的活性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、脱アミド変異体の少ないペンブロリズマブ組成物を得ることも望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Brahmer et al.,N Engl J Med 2012,366:2455-65
【非特許文献2】Garon et al.,N Engl J Med 2015,372:2018-28
【非特許文献3】Hamid et al.,N Engl J Med 2013,369:134-44
【非特許文献4】Robert et al.,Lancet,2014,384:1109-17
【非特許文献5】Robert et al.,N Engl J Med 2015,372:2521-32
【非特許文献6】Robert et al.,N Engl J Med 2015,372:320-30
【非特許文献7】Topalian et al.,N Engl J Med 2012,366:2443-54
【非特許文献8】Topalian et al.,J Clin Oncol 2014,32:1020-30
【非特許文献9】Wolchok et al.,N Engl J Med 2013,369:122-33
【非特許文献10】Pardoll DM.Nat Rev Cancer 2012,12:252-64
【発明の概要】
【0008】
本発明は、CDRH3重鎖領域においてMet105の約3.0%以下の酸化を有する抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの組成物を提供する。本発明はまた、各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物を提供し、酸性種の量は約1.0~12.0%である。本発明はまた、各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種及び塩基性種とを含む組成物を提供し、主要種の量は約65~85%である。驚くべきことに、連続灌流上流プロセスは、フェドバッチプロセスによって製造されたペンブロリズマブと比較して、より低いMet105酸化%、より低い酸性種%及び/又はより高い主要種%を有するペンブロリズマブ組成物を提供した。本発明はまた、連続灌流プロセスによって精製組成物を得る方法を提供する。
【0009】
有効量の本発明の組成物を患者に投与することを含む、それを必要とするヒト患者の癌を治療する方法も本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】2L及び50Lスケールでの連続灌流培養の細胞培養性能を示す図である。左上は生存細胞密度(VCD)、右上は生存率、左下は透過力価、及び右下は生成物のふるい分けを示す。
【0011】
図2】実施例3に記載の還元ペプチド消化によって生成された総イオンクロマトグラムを示す図である。フェドバッチ生成ペンブロリズマブ製剤化薬物製品標準資料(reference standard)(上)及び連続灌流生成ペンブロリズマブ(下)の両方を同様にロードし、相対存在量は両方のサンプルについて同一のペプチド及び保持時間を示す。NLは、正規化レベルを指し、m/zは電荷に対する質量を指し、FTMSはフーリエ変換質量分析を指し、ESIはエレクトロスプレーイオン化を指す。
【0012】
図3】フェドバッチ生成ペンブロリズマブ標準資料(上)及び連続灌流生成ペンブロリズマブ(下)についての非修飾M105ペプチドの抽出イオンクロマトグラムを示す図である。M105を含有する非修飾ペプチドの保持時間は約37.8分である。NLは、正規化レベルを指し、m/zは電荷に対する質量を指し、FTMSはフーリエ変換質量分析を指し、ESIはエレクトロスプレーイオン化を指し、RTは保持時間を指す。
【0013】
図4】フェドバッチ生成ペンブロリズマブ標準資料(上)及び連続灌流生成ペンブロリズマブ(下)についての修飾M105ペプチドの抽出イオンクロマトグラムを示す図である。M105を含有する修飾ペプチドの保持時間は約36.4分である。NLは、正規化レベルを指し、m/zは電荷に対する質量を指し、FTMSはフーリエ変換質量分析を指し、ESIはエレクトロスプレーイオン化を指す。RTは保持時間を指す。
【0014】
図5】採取した細胞培養液(HCCF)サンプルにおける経時的なペンブロリズマブのM105酸化の変化を示す図である。黒丸は各サンプル注入の結果であり、線はデータの線形適合であり、y=0.038x+0.94で記述され、Rの二乗値は0.9833である。
【0015】
図6】連続灌流プロセスからのHCCFのプロテインAクロマトグラフィー精製後のペンブロリズマブのイオン交換クロマトグラフィー分析図である。各ピークの保持時間は、図に注釈が付けられている。
【0016】
図7】連続灌流プロセスからのHCCFの陰イオン交換クロマトグラフィー及びプロテインAクロマトグラフィー精製後のペンブロリズマブのイオン交換クロマトグラフィー分析図である。各ピークの保持時間は、図に注釈が付けられている。
【0017】
図8】本発明の陰イオン交換工程後のペンブロリズマブ及びフェドバッチ法から得られたペンブロリズマブ標準資料のイオン交換クロマトグラフィー分析図の重ね合わせを示す図である。菱形は、統合されたピークの開始及び終了を示している。
【0018】
図9】培養日数の時間経過におけるバイオリアクター(BRX)、無細胞透過液(PERM)、プロテインAクロマトグラフィー工程(PAP)後、及び陰イオン交換クロマトグラフィー(AEXP)後の細胞培養液中の酸性種合計%(酸性1+酸性変異体+主要前)を示す図である。
【0019】
図10】培養日数の時間経過における無細胞透過液(PERM)中、プロテインAクロマトグラフィー工程(PAP)後、及び陰イオン交換クロマトグラフィー(AEXP)後の主要種合計%(イオン交換によって測定)を示す図である。
【0020】
図11】培養日数の時間経過における無細胞透過液(PERM)中、プロテインAクロマトグラフィー工程(PAP)後、及び陰イオン交換クロマトグラフィー(AEXP)後の塩基性種合計%(塩基性1+塩基性2+塩基性変異体A+塩基性変異体B)を示す図である。
【0021】
図12】培養日数の時間経過における無細胞透過液(PERM)中、プロテインAクロマトグラフィー工程(PAP)後、及び陰イオン交換クロマトグラフィー(AEXP)後の塩基性1種%を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.定義及び略語
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用される場合、以下の略語が適用される。
【0024】
API 活性医薬成分
CDR 免疫グロブリン可変領域中の相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
CI 信頼区間
DS 原薬
EC50 50%の有効性又は結合をもたらす濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
FFPE ホルマリン固定、パラフィン包埋
FR フレームワーク領域
HC 重鎖
HNSCC 頭頸部扁平上皮癌
HP-HIC 高速疎水性相互作用クロマトグラフィー
HP-IEX 高速イオン交換クロマトグラフィー
HP-SEC 高速サイズ排除クロマトグラフィー
IC50 50%阻害をもたらす濃度
IgG 免疫グロブリンG
IHC 免疫組織化学又は免疫組織化学の
mAb モノクローナル抗体
NCBI 国立生物工学情報センター
NSCLC 非小細胞肺癌
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PD-1 プログラム死1(別名プログラム細胞死-1及びプログラム死受容体1)
PD-L1 プログラム細胞死1リガンド1
PD-L2 プログラム細胞死1リガンド2
PS80又はPS-80 ポリソルベート80
SWFI 注射用滅菌水
TNBC トリプルネガティブ乳癌
免疫グロブリン重鎖可変領域
VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
免疫グロブリン軽鎖可変領域
v/v 体積当たりの体積
WFI 注射用水
w/v 体積当たりの重量
【0025】
本発明がより容易に理解され得るように、特定の技術的及び科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数を含む。
【0027】
「又は」への言及は、示された可能性のうちの1つを文脈が明確に示さない限り、いずれか又は両方の可能性を示す。場合によっては、「及び/又は」を使用して、いずれか又は両方の可能性を強調した。
【0028】
本明細書で使用される場合、「酸性種」は、抗PD-1抗体主要種よりも酸性(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーによって決定される場合)である抗PD-1抗体種を指す。そのような酸性種は、イオン交換、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、実施例5に記載の方法)又はWCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)など、電荷によって分子変異体を分離するための様々なクロマトグラフィー精製方法によって検出され、その後に質量分析が続いてもよい。一般に、酸性種は、主要種よりも低い等電点(pI)を有し、例えば、メチオニン酸化、アスパラギン残基のシアリル化若しくは抗体の脱アミド化変異体、又はそれらの組み合わせに起因して、より酸性の性質を有することができる。酸性種の例には、本発明の図6又は図7で同定される酸性変異体(Acidic Variants)、酸性1(Acidic 1)及び主要前(Pre Main)ピークが含まれるが、これらに限定されない。酸性種のいずれもまた、例えばCH2ドメイン中のN297に、G0-F、G1-F、G2-F、G0、G1、G2及びMan5から構成される群から選択されるCHO N結合グリカンの1つ又は複数を有し得る。
【0029】
一実施形態では、抗PD-1抗体酸性種は、陽イオン交換法により主要(Main)ピークの前に溶出される(1又は複数の)ピークによって同定される通りである。別の実施形態では、抗PD-1抗体酸性種は、弱陽イオン交換法により主要ピークの前に溶出される(1又は複数の)ピークによって同定される通りである。イオン交換クロマトグラフィー法において、「酸性種%」とは、溶出クロマトグラムにおける酸性種ピークの総面積を全ピークの総面積で割ったものをいう。
【0030】
本明細書で使用される場合、「酸性1種」は、抗PD-1抗体主要種の重鎖のN384、N389及びN390のうちの1又は複数における脱アミド、スクシンイミド、アスパラギン酸又はイソアスパラギン酸形成のうちの1又は複数の存在を有する酸性種を指す。そのような酸性1種は、イオン交換、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、実施例5に記載の方法)又はWCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)など、電荷によって分子変異体を分離するための様々なクロマトグラフィー精製方法とそれに続く酸性種ピークの質量分析によって検出される。
【0031】
一実施形態では、抗PD-1抗体の酸性1種は、図6又は図7の酸性1ピークで同定される通りであり、実施例5に記載の陽イオン交換法により溶出される。イオン交換クロマトグラフィー法において、「酸性1種%」とは、溶出クロマトグラムにおける酸性1ピークの総面積を全ピークの総面積で割ったものをいう。
【0032】
本明細書で使用される場合、「酸性変異体種」は、重鎖のN31、N52、N55、N59、及びN61の1つ又は複数における脱アミド、スクシンイミド、アスパラギン酸又はイソアスパラギン酸形成の1つ又は複数の存在、又は重鎖中のM105酸化の存在、又は抗PD-1抗体主要種の組み合わせを有する酸性種を指す。そのような酸性変異体種は、イオン交換、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、実施例5に記載の方法)又はWCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)など、電荷によって分子変異体を分離するための様々なクロマトグラフィー精製方法とそれに続く酸性種ピークの質量分析によって検出される。
【0033】
一実施形態では、抗PD-1抗体酸性変異体種は、図6又は図7の(1又は複数の)酸性変異体ピークによって同定される抗PD-1抗体種であり、実施例5に記載の陽イオン交換法により溶出される。イオン交換クロマトグラフィー法では、「酸性変異体種%」は、溶出クロマトグラムにおける(1又は複数の)酸性変異体ピークの総面積を全ピークの総面積で割ったものをいう。
【0034】
本明細書で使用される場合、「塩基性種」は、抗PD-1抗体主要種よりも塩基性(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーによって決定される場合)である抗PD-1抗体種を指す。そのような塩基性種は、イオン交換、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、実施例5に記載の方法)又はWCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)など、電荷によって分子変異体を分離するための様々なクロマトグラフィー精製方法によって検出され、その後に質量分析が続いてもよい。一般に、塩基性種は、主要種よりも高いpIを有し、C末端リジン残基の存在(配列番号10又は12)、N末端グルタミン残基の存在(配列番号10又は13)、又はC末端ロイシン残基のアルファ-アミド化(配列番号14又は15)、配列番号10~15のいずれか1つのアミノ酸配列による一方又は両方の重鎖のN末端アミノ酸残基の切断、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない主要種からの改変又は違いにより、より塩基性の性質を有することができる。塩基性種の例としては、本発明の図6又は図7で同定される塩基性変異体A(Basic Variant A)、塩基性変異体B(Basic Variant B)、塩基性1(Basic 1)及び塩基性2(Basic 2)のピークが挙げられるが、これらに限定されない。塩基性種のいずれもまた、例えばCH2ドメイン中のN297に、G0-F、G1-F、G2-F、G0、G1、G2及びMan5から構成される群から選択されるCHO N結合グリカンの1つ又は複数を有し得る。
【0035】
一実施形態では、抗PD-1抗体塩基性種は、陽イオン交換法による主要ピークの後に溶出される(1又は複数の)ピークによって同定される通りである。別の実施形態では、抗PD-1抗体塩基性種は、弱陽イオン交換法による主要ピークの後に溶出される(1又は複数の)ピークによって同定される通りである。イオン交換クロマトグラフィー法において、「塩基性種%」とは、溶出クロマトグラムにおける(1又は複数の)塩基性種ピークの総面積を全ピークの総面積で割ったものをいう。
【0036】
本明細書で使用される場合、「主要種」は、その1又は複数の酸性又は塩基性種との混合物中の抗体種の大部分として同定される抗PD-1抗体種を指す。そのような主要種は、イオン交換、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、実施例5に記載の方法)又はWCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)など、電荷によって分子変異体を分離するための様々なクロマトグラフィー精製方法によって検出され、その後に質量分析が続いてもよい。混合物は、例えば、哺乳動物細胞からの抗体調製物及びその翻訳後修飾、上流及び下流処理、又は貯蔵の結果であり得る。主要種はまた、例えばCH2ドメイン中のN297に、G0-F、G1-F、G2-F、G0、G1、G2及びMan5から構成される群から選択されるCHO N結合グリカンの1つ又は複数を有し得る。
【0037】
一実施形態では、主要種は、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗PD-1抗体を含み、各重鎖は配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖は配列番号5のアミノ酸配列から構成される。別の実施形態では、抗PD-1抗体主要種は、配列番号5のアミノ酸配列から構成される軽鎖をコードするポリヌクレオチド、及び配列番号10、13若しくは15のアミノ酸配列から構成される重鎖をコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む中国卵巣細胞から産生される。
【0038】
一実施形態において、主要種は、陽イオン交換法により主要ピークとして同定される。イオン交換法において、「主要種%」とは、溶出クロマトグラムにおける主要ピークの総面積を全ピークの総面積で割ったものをいう。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「塩基性1種」は、一方の重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、一方の重鎖が配列番号12のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される塩基性種、又は、一方の重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、一方の重鎖が配列番号14のアミノ酸配列から構成され、C末端ロイシンがアルファ-アミド化されており、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される塩基性種、又はそれらの組み合わせを指す。そのような塩基性1種は、イオン交換、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、実施例5に記載の方法)又はWCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)など、電荷によって分子変異体を分離するための様々なクロマトグラフィー精製方法とそれに続く塩基性種ピークの質量分析によって検出される。
【0040】
一実施形態では、抗PD-1抗体の塩基性1種は、図6又は図7の塩基性1ピークで同定される通りであり、実施例5に記載の陽イオン交換法により溶出される。イオン交換クロマトグラフィー法において、「塩基性1種%」とは、溶出クロマトグラムにおける塩基性1ピークの総面積を全ピークの総面積で割ったものをいう。
【0041】
本明細書で使用される場合、「脱アミド化変異体」は、1又は複数のアスパラギン残基(1又は複数)が脱アミド化されている抗体を指す。脱アミド化変異体は、スクシンイミド、アスパラギン酸又はイソアスパラギン酸の形態であり得る。すなわち、中性アミド側鎖は、全体的に酸性の特徴を有する残基に変換されている。
【0042】
主要種、酸性種又は塩基性種を測定する一態様では、Thermo Scientific ProPac WCX-10カラムが陽イオン交換法に使用される。別の実施形態では、Thermo Scientific ProPac WCX-10カラムが使用され、移動相(A)は4%アセトニトリルを含む24mM MES pH6.1であり、移動相(B)は4%アセトニトリルを含む20mMリン酸ナトリウム、95mM NaCl pH8.0であり、カラム温度は35℃である。一実施形態では、非線形勾配が、0~0.6分に22%~22%B、0.6~15.0分に22%~29%B、15.0~30.0分に29%~70%B、30.0~30.5分に70%~100%B、及び30.5~33.0分に100%~100%Bで使用される。さらなる実施形態では、陽イオン交換法が実施例5に記載されている。
【0043】
本明細書で使用される場合、「発現する」及び「発現」は、遺伝子又はコード配列、例えばRNA又はDNA中の情報の顕在化を可能にすること又は顕在化させること、例えば、対応する遺伝子の転写及び翻訳に関与する細胞機能を活性化することによってタンパク質を生成することを指す。DNA配列は、RNA(例えば、mRNA)又はタンパク質などの「発現産物」を形成するために、細胞内又は細胞によって発現され得る。発現産物自体は、細胞によって「発現される」とも言われ得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」又は「発現構築物」は、コード配列に作動可能に連結された調節配列を含むポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することができるビヒクル(例えば、プラスミド)を指し、コード配列は、宿主細胞の転写及び翻訳機構を使用して発現される。
【0045】
本明細書で使用される「発現カセット」は、遺伝子の発現を制御するのに十分な要素、例えば限定されないが、遺伝子配列に作動可能に連結された、又は遺伝子配列を挿入するためのマルチクローニングサイトに作動可能に連結されたプロモーター、及びポリAシグナルを含むポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、発現カセットは、転写レベル、翻訳レベル及び/又はクロマチンレベルで遺伝子の発現を調節することができる1つ又は複数の調節要素をさらに含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」又は「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼを(例えば、直接的に、又は他のプロモーターに結合したタンパク質若しくは物質を介して)動員し、コード配列の転写を開始することができる、調節領域を含むDNAのセグメントを指す。プロモーター配列内には、転写開始部位(好都合には、例えばヌクレアーゼS1によるマッピングによって定義される)、並びにRNAポリメラーゼの動員に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「エンハンサー」又は「エンハンサー配列」は、プロモーターまでの距離、位置、又は配向とは無関係にプロモーターの転写を増強するDNA調節領域を指す。特定の実施形態では、エンハンサーはプロモーターに直接隣接している。いくつかの態様において、エンハンサーはプロモーターから離れている。他の実施形態では、プロモーター及びエンハンサーは、本明細書で「コンボエンハンサー/プロモーター」と呼ばれる1つの結合配列である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「内部リボソーム進入部位」又は「IRES」は、リボソームを直接動員することによってキャップ非依存的な様式で翻訳開始を可能にするRNA要素又は配列を指す。本明細書で使用される場合、「内部リボソーム進入部位」又は「IRES」という用語はまた、リボソームを直接動員することによってキャップ非依存的な様式で翻訳開始を可能にするRNA配列に転写され得るDNA配列を包含する。IRESは、天然に存在するものであれ人工のものであれ、任意の種由来の野生型IRES又はその変異体若しくは変種であり得る。使用され得るIRESの例としては、限定されないが、脳心筋炎ウイルス(EMCV)の5’非翻訳領域のヌクレオチド配列(GenBank:M81861.1;Duke et al.,Sequence and structural elements that contribute to efficient encephalomyocarditis virus RNA translation.J Virol.1992 Mar;66(3):1602-9)、Bochkov&Palmenbergによって記載されたIRES要素(Translational efficiency of EMCV IRES in bicistronic vectors is dependent upon IRES sequence and gene location.Biotechniques.2006 Sep;41(3):283-4)、発現ベクターpInSRT-GFPからのIRES要素(GenBank LC 417349.1)、発現ベクターpCeMM-CTAP(SG)からのIRES要素(GenBank EF 467048.1)、Jang&Wimmerによって記載されたIRES要素(Cap-independent translation of encephalomyocarditis virus RNA:structural elements of the internal ribosomal entry site and involvement of a cellular 57-kD RNA-binding protein.Genes Dev.1990 Sep;4(9):1560-72)、発現ベクターpIRESneo3からのIRES要素(Clontech/Takara Bio)、国際公開第2015/016786号、国際公開第2015/021077号、国際公開第2016/003368号、国際公開第2016/074016号若しくは国際公開第2013/092743号に記載されたIRES要素、又はそれらの変異体が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「調節要素」、「調節領域」又は「調節配列」は、遺伝子の発現を調節する(例えば、開始する、活性化する、増強する、増加させる、減少させる、阻害する、抑圧する、又は抑制する)能力を有するポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの態様において、調節は、ポリヌクレオチド配列への細胞因子の結合によって達成される。他の実施形態では、調節は、細胞因子間の相互作用によって達成される。調節は、限定されないが、転写、翻訳、又はクロマチンレベルを含む、DNAからタンパク質への発現プロセスにおいて1つ又は複数の異なるレベルで起こり得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「インスレーター」は、周囲の染色体領域からの位置効果を防ぐことによって近位DNA領域を単離する能力を有するDNA要素又は配列のクラスを指す。特定の実施形態では、インスレーターがエンハンサーとプロモーターとの間に位置する場合、インスレーターはエンハンサーを遮断することができる。いくつかの実施形態では、インスレーターは、そうでなければ発現を抑制し得る近くの凝縮されたクロマチンの進行を防ぐバリアとして作用し得る。他の実施形態では、インスレーターはエンハンサーを遮断し、バリアとして作用することができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「発現増強配列要素」又は「EASE」は、タンパク質の発現を制御するプロモーターの上流にDNA要素又は配列が配置された場合に、タンパク質の発現を増加させることができるDNA要素又は配列を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「三連染色体のリーダー」又は「TPL」は、キャップ非依存的に後期発現mRNAの翻訳を開始する能力を有する、アデノウイルス後期発現mRNAの5’非翻訳領域のRNA要素又は配列を指す。本明細書で使用される場合、「三連染色体のリーダー」又は「TPL」という用語はまた、キャップ非依存的に後期発現mRNAの翻訳を開始する能力を有する、アデノウイルス後期発現mRNAの5’非翻訳領域のRNA配列に転写され得るDNA配列を包含する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「逆位末端反復配列」又は「ITR」は、トランスポゾン技術の文脈において、破壊及び結合が起こるべき場所をシグナル伝達するトランスポゾンの両端のDNA要素又は配列及びその逆位バージョンを指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「選択可能マーカー」又は「選択マーカー」は、細胞の特異的選択を可能にするタンパク質を指し、対応する選択剤を培地に添加することによって、このタンパク質を発現する。特定の実施形態では、選択可能マーカーは、マーカータンパク質を発現する真核細胞の選択を可能にする真核生物選択可能マーカーである。いくつかの実施形態では、選択可能マーカーは、マーカータンパク質を発現する細菌細胞の選択を可能にする細菌選択可能マーカーである。
【0055】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」又は「ヌクレオチド配列」は、DNA又はRNAなどの核酸中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)を指し、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、発現ベクターによってコードされる組換えタンパク質を生成する目的、又は宿主細胞に導入された発現ベクターを増殖させる目的で使用される、任意の生物の任意の細胞を指す。「哺乳動物組換え宿主細胞」は、宿主細胞染色体に組み込まれても組み込まれなくてもよい異種発現ベクターを含む哺乳動物宿主細胞を指す。「細菌組換え宿主細胞」は、宿主細胞染色体に組み込まれても組み込まれなくてもよい異種発現ベクターを含む細菌宿主細胞を指す。
【0057】
本明細書で使用される「フェドバッチ培養」という用語は、培養プロセス中に追加の栄養素が培養物に提供される細胞培養方法を指す。フェドバッチ培養は、典型的にはある時点で停止され、培地中の細胞及び/又は成分が採取される。生成物は蓄積し、ラン(Run)の終了までバイオリアクター内に留まる。
【0058】
本明細書で使用される場合、抗体又は抗原結合フラグメントを「採取する」ことは、宿主細胞、細胞凝集体、及び/又は溶解された細胞フラグメントを含み得る粒子状物質から、宿主細胞及び細胞残屑を実質的に含まない無細胞画分、すなわち無細胞「透過液」にそれを分離することを含む。そのような細胞及び細胞残屑は、例えば、遠心分離、深層濾過及び/又は精密濾過によって細胞培養ブロスから除去される。例えば、無細胞透過液を作製するために、中空糸膜又は深層濾過などの一連の濾過工程を使用することができる。「連続的に採取する」とは、抗体産生がバイオリアクター内で行われている間に細胞培養ブロスを採取することを指す。バイオリアクター内の分泌されたタンパク質産物は、灌流システムを介して培地を除去するプロセス中に精密濾過によって細胞培養ブロスから連続的に採取することができ、したがって目的のタンパク質は、灌流システムを出るマイクロフィルター透過液中に単離される。マイクロフィルターは、中空糸モジュールを含む接線流濾過(TFF)ユニット又は交互接線流濾過(ATF)ユニットとすることができる。市販のTFFユニットには、Microza(登録商標)TFFユニット又はKrosFlow(登録商標)Maxが含まれるが、これらに限定されない。市販の中空糸モジュールは、例えばPall又はRepligenから入手することができる。一実施形態では、灌流バイオリアクターは、抗体又は抗原結合フラグメントを含む細胞培養ブロスの透過速度を一定にして、アフィニティークロマトグラフィー工程に対する一貫した流速を維持する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「細胞培養ブロス」は、細胞増殖及び抗体産生プロセス中に宿主細胞、細胞片、細胞培地、抗体又は抗原結合フラグメントを含むブロスを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「採取細胞培養液」又は「HCCF」は、細胞培養ブロスを採取した後に得られる抗体又は抗原結合フラグメントを含む細胞培養液を指し、これは宿主細胞及び細胞残屑を実質的に含まない。一実施形態では、HCCFは無細胞透過液である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「流体接続された」、「流体的に」、又は「に流体接続されて」いる、又は「から材料を流体的に受け取る」は、目的のタンパク質を含有する材料が、手動でローディング又はアンローディングすることなく工程又はシステム間でパイプ、チューブ、又は他の閉鎖導管によって流れる場合に、製造プロセスの別の工程又は別のシステムからの別の工程を指す。
【0062】
本明細書においてHCCFの文脈で使用される場合、「連続的に精製する」とは、少なくともローディング工程のための少なくとも1つの親和性固定相へのHCCFの途切れない流れを指し、任意の洗浄又は溶出工程のための途切れない流れを指してもよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、「灌流」又は「灌流すること」は、ある期間にわたって追加の新鮮な培地が連続的に提供される細胞を培養物(培養プロセスの開始後)まで培養し、培地から抗体又は抗原結合フラグメントを連続的に採取しながら同時に培地を除去する方法を指す。新鮮な培地は、典型的には、培養プロセス中に枯渇した細胞のための栄養補助を提供する。
【0064】
本明細書で使用される「灌流速度」は、新鮮な培地が提供され、細胞培養液が除去される速度を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「灌流バイオリアクター」は、細胞を培養するためのバイオリアクターであって、反応器に同量の培地を添加し、同時に反応器から除去することができるバイオリアクターを指す。一実施形態では、細胞はバイオリアクター内に保持される。灌流バイオリアクターは、バイオリアクターと、新鮮な栄養培地の安定した供給源及び細胞廃棄物の除去を提供する、作動可能に取り付けられた灌流システムとを含む。バイオリアクター及び灌流バイオリアクターの灌流システムは、協調して動作する別個の機械的ユニットであり得る。多数の市販の例としては、限定されないが、様々なXcellerex(登録商標)ブランドの単回使用バイオリアクター(SUBs;GE Healthcare Life Sciences)及びKrosFlo(登録商標)ブランドの灌流流路アセンブリ及びシステム(Spectrum;Repligen)が挙げられ、これらのバイオリアクター及び灌流システムは、当業者によって灌流バイオリアクターに適切に組み合わせることができる。あるいは、バイオリアクター及び灌流システムは、単一の機械的ユニット、例えば、これに限定されないが、3D Biotekブランドの灌流バイオリアクター(Sigma-Aldrich)に組み付けることができる。
【0066】
本明細書で使用される「サージ容器」という用語は、導管、フィーダ、ダム、パイプ、又はチューブの下流端部にあって、2つの流体接続されたユニット動作の間の不一致な流速、例えば、バイオリアクターから来る透過液の流速と、本発明の連続又は半連続フォーマットプロセス実施形態における自動制御下の第1のクロマトグラフィーシステムの流速とを吸収する、よく混合された(流体が均質になるように十分な混合を提供する)貯蔵リザーバ、混合容器、供給タンク、又は収集容器(又は交換可能に、「収集タンク」)を指す。サージ容器は、流体接続されたユニット動作間の予め設定された体積範囲限界内で体積をサージさせることを可能にすることによって、流速の変化又は差を吸収する。
【0067】
本明細書で使用される「滞留時間」という用語は、流体溶液が容器内で費やす平均時間を指す。灌流の場合、これは交換速度の逆数である(例えば、2VVDは0.5日の平均滞留時間を有する)。溶液成分のふるい分け、膜による溶液成分の保持は、滞留時間に関して無視される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「M105」、「Met105」、又は「メチオニン105」は、配列番号8(RDYRFDMGFDY)の重鎖のCDRH3領域中のメチオニンを指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「M105の酸化%」又は「Met105の酸化%」は、a)酸化Met105を有する本発明の(1又は複数の)抗PD-1抗体フラグメントの総量対酸化Met105を有する及び有さない本発明の(1又は複数の)抗PD-1抗体フラグメントの総量、又はb)酸化Met105を有する本発明の抗PD-1抗体の総量対酸化Met105を有する及び有さない本発明の抗PD-1抗体の総量を指す。計算方法a)は、実施例に示した還元ペプチドマッピング法に従って使用することができる。計算方法b)は、例えば、参照によりその全体が組み込まれる、国際公開第2018/204368号に記載されている疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又は逆相HPLC法で使用することができる。
【0070】
抗体又は抗原結合フラグメントを固定相に「結合する」とは、抗体又は抗原結合フラグメントが抗体又は抗原結合フラグメントと固定相に固定されたリガンドとの間の相互作用によって固定相と可逆的に会合するように、適切な条件下(pH及び/又は導電率)で抗体又は抗原結合フラグメントを固定相に曝露することを意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「平衡化溶液」という用語は、抗体又は抗原結合フラグメントを固定相にローディングする前に固定相を平衡化するために使用される溶液を指す。平衡化溶液は、塩及び緩衝種の1つ又は複数を含むことができる。一実施形態では、平衡化溶液は、抗体又は抗原結合フラグメントを含むローディング溶液と同じ条件である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「ローディング溶液」という用語は、目的の抗体又は抗原結合フラグメント及び1又は複数の不純物を含む組成物を固定相にロードするために使用される溶液を指す。ローディング溶液は、緩衝種及び塩の1つ又は複数をさらに含んでもよい。
【0073】
本明細書で使用される場合、「洗浄溶液」という用語は、目的の抗体又は抗原結合フラグメントを溶出する前に、固定相を洗浄又は再平衡化するために使用される溶液を指す。洗浄のために、洗浄溶液の導電率及び/又はpHは、不純物が固定相から除去されるようなものである。再平衡化のために、洗浄溶液及び平衡化溶液は同じであってもよいが、これは必須ではない。洗浄溶液は、塩及び緩衝種の1つ又は複数を含むことができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「溶出溶液」は、固定相から目的の抗体又は抗原結合フラグメントを溶出するために使用される溶液を指す。溶出溶液は、塩又は緩衝種の1つ又は複数を含むことができる。溶出溶液の塩、緩衝種、pH又は導電率の1つ又は複数の存在は、抗体又は抗原結合フラグメントが固定相から溶出されるようなものである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「導電率」という用語は、水溶液が2つの電極間で電流を伝導する能力を指す。溶液中では、電流はイオン輸送によって流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量が増加するにつれて、溶液はより高い導電率を有する。導電率の測定単位はmS/cmであり、例えばGE HealthcareAkta(商標)System内で販売されている導電率計を使用して測定することができる。溶液の導電率は、その中のイオンの濃度を変えることによって変更することができる。例えば、緩衝剤の濃度及び/又は溶液中の塩(例えばNaCl又はKCl)の濃度は、所望の導電率を達成するために変更することができる。好ましくは、様々な緩衝液の塩濃度は、以下の実施例のように所望の導電率を達成するように変更される。
【0076】
本明細書で使用される場合、目的の抗体又は抗原結合フラグメント又は「精製組成物」を「精製する」とは、組成物から少なくとも1つの不純物を(完全に又は部分的に)除去することによって、組成物中の抗体又は抗原結合フラグメントの純度の程度を増加させることを指す。不純物は、血清、タンパク質又は核酸、細胞残屑、増殖培地又は抗体凝集体などの宿主細胞成分であり得る。この用語は、そのような生物学的分子が完全に存在しないこと、又は水、緩衝液若しくは塩が存在しないこと、又は抗体若しくは抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の成分を指すことを意図しない。
【0077】
本明細書で使用される場合、「連続マルチカラムクロマトグラフィーシステム」は、同様の不純物分離機能を有する少なくとも2つの固定相を含み、少なくとも1つの固定相がサンプルをロードし、少なくとも1つの固定相が非ローディング工程(平衡化、洗浄、溶出及び再生のうちの1又は複数)を実行することを可能にするクロマトグラフィーシステムを指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「固定相」は、1又は複数のリガンドを固定することができる任意の表面を指す。固定相は、懸濁液、個別の粒子の不連続相、プレート、センサ、チップ、カプセル、カートリッジ、樹脂、ビーズ、モノリス、ゲル、膜、又は膜吸着器などであってもよい。固定相はまた、精製カラム(例えば、樹脂ビーズが充填されている)に充填されてもよい。固定相を形成するための材料の例には、多孔質又は非多孔質ビーズ、無機材料(例えば、多孔質シリカ、制御細孔ガラス(CPG)及びヒドロキシアパタイト)、合成有機ポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン-ジビニルベンゼン、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子及び上記のいずれかの誘導体)及び多糖類(例えば、セルロース、アガロース及びデキストラン)などの機械的に安定なマトリックスが含まれる。Jansson,J.C.;Ryden,L.Protein Purification;Wiley:New York,1998を参照のこと。
【0079】
本明細書で使用される場合、「不純物」は、所望の抗体又は抗原結合フラグメントとは異なる材料を指す。不純物は、宿主細胞タンパク質(HCP)、宿主細胞DNA(HC-DNA)、タンパク質凝集体又はクリップ及び他の望ましくないタンパク質修飾(すなわち、酸化種、酸変異種)であり得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、癌を「治療する」又は「治療すること」は、例えば、癌細胞の数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官への癌細胞浸潤の割合の減少、又は腫瘍転移若しくは腫瘍成長の割合の減少などの少なくとも1つのプラスの治療効果を達成するための、免疫状態若しくは癌性状態を有する、又は癌若しくは病原性感染(例えば、ウイルス性、細菌性、真菌性)と診断された対象への本発明の組成物の投与を指す。「治療」は、抗腫瘍免疫応答を誘導/増加させること、病原体、毒素、及び/又は自己抗原に対する免疫応答を刺激すること、ウイルス感染に対する免疫応答を刺激すること、1つ又は複数の腫瘍マーカーの数を減少させること、腫瘍若しくは血液癌の成長又はそのリガンドPD-L1及び/又はPD-L2へのPD-1の結合に関連する疾患(「PD-1関連疾患」)、例えば癌の進行を停止又は遅延させること、PD-1関連疾患の安定化、腫瘍細胞の成長又は生存を阻害すること、1つ若しくは複数の癌性病変若しくは腫瘍を排除又はサイズを減少させること、1つ又は複数の腫瘍マーカーのレベルを低下させること、PD-1関連疾患の臨床症状を改善すること、抑止すること、例えば癌などのPD-1関連疾患の臨床症状の重症度又は持続期間を減少させること、類似の未治療患者において予想される生存期間と比べて患者の生存期間を延長すること、癌性状態又は他のPD-1関連疾患の完全又は部分的寛解を誘導することのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0081】
「免疫状態」又は「免疫障害」は、例えば、病的炎症、炎症性障害、及び自己免疫障害又は疾患を包含する。「免疫状態」はまた、感染症、持続性感染症及び増殖性状態、例えば、免疫系による根絶に抵抗する感染症、腫瘍及び癌を含む、癌、腫瘍及び血管新生を指す。「癌状態」には、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、血管新生、及び異形成などの前癌状態が含まれる。
【0082】
癌におけるプラスの治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)参照)。例えば、腫瘍増殖阻害に関して、NCI規格によれば、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、T/C(%)=治療された腫瘍体積の中央値/対照の腫瘍体積の中央値×100である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の投与によって達成される治療は、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)又は全生存期間(OS)のいずれかである。PFSは、「腫瘍進行までの時間」とも呼ばれ、治療中及び治療後に癌が成長しない時間の長さを示し、患者が完全奏効又は部分奏効を経験した時間の長さ、並びに患者が安定した疾患を経験した時間の長さを含む。DFSは、患者が疾患を有さないままである治療中及び治療後の時間の長さを指す。OSは、ナイーブ又は未治療の個体又は患者と比較した平均余命の延長を指す。本発明の組成物、治療方法及び使用の実施形態は、すべての患者においてプラスの治療効果を達成するのに有効ではないかもしれないが、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タープストラ検定及びウィルコクソン検定などの当技術分野で公知の任意の統計学的検定によって決定されるように、統計学的に有意な数の対象においてそうであるべきである。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」(あるいは、本明細書中で「対象」又は「個体」と呼ばれる)とは、本発明の組成物又は組成物で治療することができる哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)のことを指し、最も好ましくはヒトのことを指す。いくつかの実施形態では、患者は成人患者である。他の実施形態では、患者は小児患者である。「治療を必要とする」それらには、本発明の組成物又は組成物による治療から利益を得ることができる患者、例えば癌又は免疫状態に罹患している患者が含まれる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、所望の生物学的活性を示す任意の形態の抗体を指す。したがって、それは最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、及びキメラ抗体を具体的に包含するが、これらに限定されない。
【0085】
一般に、塩基性抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を含み、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、インタクトな抗体は2つの結合部位を有する。重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を画定し得る。典型的には、ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。一般的にはFundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照のこと。
【0086】
典型的には、重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは通常、フレームワーク領域によってアライメントされ、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端に向かって、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方が、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901-917 or Chothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883の定義に従う。
【0087】
本明細書で使用される場合、「薬学的有効量」又は「有効量」という用語は、疾患又は状態を治療するのに十分な治療用組成物又は組成物が患者に導入される量を指す。当業者は、このレベルが年齢、体重などの患者の特性に応じて変化し得ることを認識している。
【0088】
「約」という用語は、物質又は組成物の量(例えば、mM又はM)、組成物成分の割合(v/v又はw/v)、溶液/組成物のpH、又は方法のステップを特徴付けるパラメータの値などを変更する場合に、例えば、物質又は組成物の調製、特徴付け及び/又は使用に含まれる典型的な測定、取り扱い及びサンプリング手順を通して、これらの手順の機器誤差によって、組成物を製造若しくは使用するために、又は手順を実施するために使用される成分の製造、供給源又は純度の違いなどによって、起こり得る数値量の変動を指す。特定の実施形態において、「約」は、その値の±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%又は10%の変動を意味し得る。
【0089】
本明細書で使用される「癌」、「癌性」、又は「悪性」という用語は、制御されない細胞増殖を典型的には特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか又は説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫及び肉腫が含まれるが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例には、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、胃腸(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形性神経膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、及び頭頸部癌が含まれる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「PD-1結合フラグメント」、「その抗原結合フラグメント」、「その結合フラグメント」又は「そのフラグメント」という用語は、抗原(ヒトPD-1)に結合し、その活性を阻害する(例えば、PD-1のPDL1及びPDL2への結合の遮断)生物学的活性を依然として実質的に保持する抗体のフラグメント又は誘導体を包含する。したがって、「抗体フラグメント」又はPD-1結合フラグメントという用語は、完全長抗体の一部、一般にその抗原結合領域又は可変領域を指す。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメントが含まれる。典型的には、結合フラグメント又は誘導体は、そのPD-1阻害活性の少なくとも10%を保持する。いくつかの実施形態では、結合フラグメント又は誘導体は、そのPD-1阻害活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%(又はそれ以上)を保持するが、所望の生物学的効果を発揮するのに十分な親和性を有する任意の結合フラグメントが有用である。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、無関係な抗原との親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で、好ましくは少なくとも10倍大きい親和性で、より好ましくは少なくとも20倍大きい親和性で、最も好ましくは少なくとも100倍大きい親和性で、その抗原に結合する。一実施形態では、抗体は、例えばスキャッチャード分析によって決定されるように、約10リットル/molを超える親和性を有する。Munsen et al.(1980)Analyt.Biochem.107:220-239.PD-1結合フラグメントは、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を有する変異体を含み得ることも意図される。
【0091】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えば、マウス)抗体及びヒト抗体からの配列を含む抗体の形態を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでもよい。齧歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親齧歯類抗体の同じCDR配列を含むが、親和性を高めるため、ヒト化抗体の安定性を高めるため、又は他の理由のために、特定のアミノ酸置換が含まれ得る。
【0092】
本発明の抗体はまた、改変されたエフェクター機能を提供するために改変された(又はブロックされた)Fc領域を有する抗体を含む。例えば、米国特許第5,624,821号;国際公開第2003/086310号;国際公開第2005/120571号;国際公開第2006/0057702号;Presta(2006)Adv.Drug Delivery Rev.58:640-656を参照のこと。そのような改変は、免疫系の様々な反応を増強又は抑制するために使用することができ、診断及び治療において有益な効果があり得る。Fc領域の変化には、アミノ酸の変化(置換、欠失及び挿入)、グリコシル化又は脱グリコシル化、及び複数のFcの付加が含まれる。Fcの変化はまた、治療用抗体における抗体の半減期を変化させることができ、より長い半減期は、投与頻度の低下をもたらし、それに付随して利便性の増加及び材料の使用の減少をもたらす。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731、734-35を参照のこと。
【0093】
本明細書で使用される「保存的に改変された変異体」又は「保存的置換」は、当業者に知られており、かつ一般に、ポリペプチドの必須領域においてさえ、得られた分子の生物学的活性を変化させることなく行われ得る、アミノ酸の置換を指す。そのような例示的な置換は、好ましくは、以下の表1に示されるものに従って行われる。
【0094】
表1.例示的な保存的アミノ酸置換
【0095】
【表1】
【0096】
加えて、当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する。例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Edition)を参照のこと。
【0097】
明細書及び特許請求の範囲を通して使用される「から本質的になる(consists essentially of)」という語句又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、任意の列挙された要素又は要素群の包含、及び指定された投与計画、方法又は組成物の基本的又は新規な特性を実質的に変化させない、列挙された要素と同様又は異なる性質の他の要素の任意の包含を示す。非限定的な例として、列挙されたアミノ酸配列から本質的になる結合化合物はまた、結合化合物の特性に実質的に影響を及ぼさない1又は複数のアミノ酸残基の置換を含む1又は複数のアミノ酸を含み得る。
【0098】
「含む(comprising)」又は「含む(comprise)」、「含む(comprises)」若しくは「を含む(comprised of)」などの変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して包括的な意味で、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の実施形態のいずれかの動作又は有用性を実質的に高めることができるさらなる特徴の存在又は追加を排除しないために使用されるが、文脈上、明示的な文言又は必要な含意のためにそうでないことが必要な場合は除く。
【0099】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」又は「mAb」又は「Mab」は、実質的に均一な抗体の集団を指し、すなわち、集団を含む抗体分子は、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いてアミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、異なるエピトープに特異的であることが多いそれらの可変ドメイン、特にそれらのCDRに異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾因子「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628及びMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597に記載されている技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離され得る。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照のこと。
【0100】
癌と診断された又は癌を有すると疑われる対象に適用される「腫瘍」は、悪性又は潜在的に悪性の新生物又は任意のサイズの組織塊を指し、原発性腫瘍及び続発性新生物を含む。固形腫瘍は、通常嚢胞又は液体領域を含まない異常な成長又は組織塊である。様々なタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプに命名されている。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫及びリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般に固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute,Dictionary of Cancer Terms)。
【0101】
「腫瘍サイズ」という用語は、腫瘍の長さ及び幅として測定することができる腫瘍の総サイズを指す。腫瘍サイズは、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、対象から除去したときの(1又は複数の)腫瘍の寸法を、例えば、ノギスを使用して測定することによって、又は体内で画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CT若しくはMRIスキャンを使用して測定することによって決定され得る。
【0102】
「腫瘍割合スコア(TPS)」は、任意の強度(弱、中、強)で細胞膜上にPD-L1を発現する腫瘍細胞の割合を指す。線状の部分的又は完全な細胞膜染色は、PD-L1について陽性と解釈される。
【0103】
「単核炎症密度スコア(MIDS)」は、腫瘍細胞の総数と比較した、腫瘍に浸潤又は隣接するPD-L1発現単核炎症細胞(MIC)(腫瘍巣及び隣接する支持間質内の小型及び大型のリンパ球、単球、及びマクロファージ)の数の比を指す。MIDSは0~4のスケールで記録され、0=なし;1=存在するが、100個の腫瘍細胞ごとに1 MIC未満(<1%);2=100個の腫瘍細胞ごとに少なくとも1つのMIC、ただし10個の腫瘍細胞ごとに1つ未満のMIC(1~9%);3=10個の腫瘍細胞ごとに少なくとも1つのMIC、ただし腫瘍細胞よりも少ないMIC(10~99%);4=少なくとも腫瘍細胞と同じ数のMIC(≧100%)である。
【0104】
「複合陽性スコア(CPS)」は、腫瘍細胞の総数(分母;すなわち、PD-L1陽性及びPD-L1陰性腫瘍細胞の数)と比較した、腫瘍巣及び隣接する支持間質内のPD-L1陽性腫瘍細胞及びPD-L1陽性単核炎症細胞(MIC)の数(分子)の比を指す。任意の強度でのPD-L1発現は、陽性、すなわち、弱い(1+)、中程度(2+)又は強い(3+)と考えられる。
【0105】
「PD-L1発現陽性」とは、腫瘍割合スコア、単核炎症密度スコア又は複合陽性スコアが少なくとも1%であることを指し、AISは≧5である、又は適切な対照と比較して、悪性細胞及び/又は腫瘍内の浸潤免疫細胞によるPD-L1発現(タンパク質及び/又はmRNA)レベルの上昇を指す。
【0106】
「マイクロサテライト不安定性(MSI)」は、腫瘍における不完全なDNAミスマッチ修復に関連するゲノム不安定性の形態を指す。Boland et al.,Cancer Research 58,5258-5257,1998を参照のこと。一実施形態では、MSI分析は、5つの国立癌研究所(NCI)推奨マイクロサテライトマーカー:BAT25(GenBankアクセション番号9834508)、BAT26(GenBankアクセション番号9834505)、D5S346(GenBankアクセション番号181171)、D2S123(GenBankアクセション番号187953)、D17S250(GenBankアクセション番号177030)を使用して実行することができる。さらなるマーカー、例えば、BAT40、BAT34C4、TGF-β-RII及びACTCを使用することができる。市販のMSI分析用キットには、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織標本から単離されたDNAを使用するインビトロ診断装置に基づく、Promega MSIマルチプレックスPCRアッセイ、FoundationOne(登録商標)CDx(F1CDx)次世代シーケンシングが含まれる。
【0107】
「高周波マイクロサテライト不安定性」又は「マイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)」は、上記の5つのNCIマーカーのうち2つ以上が不安定性を示すか、又は全マーカーの30~40%以上が不安定性(すなわち、挿入/欠失変異を有する)を示すことを指す。
【0108】
本明細書で使用される「非MSI-H癌」は、マイクロサテライト安定性(MSS)及び低周波MSI(MSI-L)癌を指す。
【0109】
「マイクロサテライト安定性(MSS)」は、上記の5つのNCIマーカーのいずれも不安定性(すなわち、挿入/欠失変異を有する)を示さないことを指す。
【0110】
「ミスマッチ修復機構欠損なし(proficient mismatch repair)(pMMR)癌」は、IHCによる腫瘍標本におけるMMRタンパク質(MLH1、PMS2、MSH2、及びMSH6)の正常な発現を指す。MMR分析用の市販のキットには、Ventana MMR IHCアッセイが含まれる。
【0111】
「ミスマッチ修復不全(dMMR)癌」は、IHCによる腫瘍標本中の1又は複数のMMRタンパク質(1又は複数)(MLH1、PMS2、MSH2、及びMSH6)の低発現を指す。
【0112】
本明細書で使用される「可変領域」又は「V領域」は、異なる抗体間で配列が可変であるIgG鎖のセグメントを意味する。これは、軽鎖のカバット残基109及び重鎖のカバット残基113に及ぶ。
【0113】
「緩衝液」という用語は、本発明の組成物の溶液pHを許容範囲に維持する薬剤を包含する。
【0114】
「医薬組成物」という用語は、有効成分が有効であることを可能にするような形態であり、かつ組成物が投与される対象にとって毒性である追加の成分を含有しない、薬学的に許容される賦形剤を有する調製物を指す。
【0115】
「薬学的に許容される」は、使用される有効成分の有効量を提供するために対象に合理的に投与することができ、例えば、生理学的に忍容性であり、ヒトに投与した場合にアレルギー反応又は同様の有害な反応、例えば胃の不調などを典型的に引き起こさない「一般に安全と見なされる」賦形剤(ビヒクル、添加剤)及び組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認された、又は米国薬局方若しくは別の一般に認識されている薬局方に記載されている分子実体及び組成物を指す。
【0116】
本明細書で「ペンブロ」とも呼ばれる「ペンブロリズマブ」(以前はMK-3475、SCH 900475及びラムブロリズマブとして知られていた)は、WHO Drug Information,Vol.27,No.2,pages 161-162(2013)に記載されている構造を有するヒト化IgG4 mAbであり、表2に記載の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列並びにCDRを含む。ペンブロリズマブは、Prescribing Information for KEYTRUDA(商標)(Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ USA;initial U.S.approval 2014)に記載されているように米国FDAによって承認されている。
【0117】
本明細書で使用される場合、「ペンブロリズマブ変異体」は、軽鎖CDRの外側に位置する位置に3個、2個又は1個の保存的アミノ酸置換及び重鎖CDRの外側に位置する6個、5個、4個、3個、2個又は1個の保存的アミノ酸置換を有することを除いて、ペンブロリズマブのものと実質的に同一である重鎖及び軽鎖配列を含むモノクローナル抗体を意味し、例えば、変異位置はFR領域又は定常領域に位置し、重鎖のC末端リジン残基が欠失していてもよい。換言すれば、ペンブロリズマブ及びペンブロリズマブ変異体は、同一のCDR配列を含むが、それらの完全長軽鎖及び重鎖配列のそれぞれ3つ又は6つ以下の他の位置に保存的アミノ酸置換を有するために互いに異なる。ペンブロリズマブ変異体は、以下の特性、すなわち、PD-1に対する結合親和性、並びにPD-L1及びPD-L2の各々がPD-1に結合することを遮断する能力に関してペンブロリズマブと実質的に同じである。
【0118】
抗PD-1抗体及びその抗原結合フラグメント
【0119】
いくつかの態様において、本発明の組成物において使用されるための抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントは、CDRL1、CDRL2及びCDRL3の3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含む。
【0120】
本発明の一実施形態では、CDRL1は配列番号1であり、CDRL2は配列番号2であり、CDRL3は配列番号3である。一実施形態では、CDRH1は配列番号6であり、CDRH2は配列番号7であり、CDRH3は配列番号8である。一実施形態では、3つの軽鎖CDRは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3であり、3つの重鎖CDRは、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8である。
【0121】
本発明の組成物の抗PD-1結合フラグメントは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む。本発明の組成物の一実施形態では、抗体又は抗原に結合するフラグメントは、配列番号4を含むか又はそれからなる軽鎖可変領域と、配列番号9を含むか又はそれからなる重鎖可変領域とを含む。
【0122】
別の実施形態では、本発明の組成物は、上記のVドメイン又はVドメインの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%の配列相同性を有するVドメイン及び/又はVドメインを有し、かつPD-1への特異的結合を示す、抗体又は抗原結合フラグメントを含む。別の実施形態において、本発明の組成物の抗体又は抗原結合フラグメントは、最大1個、2個、3個、4個又は5個又はそれを超えるアミノ酸置換を有するVドメイン及びVドメインを含み、PD-1に対する特異的結合を示す。
【0123】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合する完全長抗PD-1抗体であり得る。特定の実施形態では、完全長抗PD-1抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリンから選択される。好ましくは、抗体はIgG抗体である。IgG、IgG、IgG及びIgGを含むIgGの任意のアイソタイプを使用することができる。異なる定常ドメインが、本明細書中に提供されるV領域及びV領域に付加される場合がある。例えば、本発明の抗体(又はフラグメント)の特定の意図された使用が、変更されたエフェクター機能を必要とするものであった場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインが使用され得る。IgG1抗体は、補体活性化及び抗体依存性細胞傷害性などの長い半減期及びエフェクター機能を提供するが、そのような活性は、抗体のすべての使用にとって望ましくない場合がある。そのような場合、例えば、IgG4定常ドメインが使用され得る。
【0124】
本発明の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸残基の配列を含むか又はそれからなる軽鎖と、配列番号10に示されるアミノ酸残基の配列を含むか又はそれからなる重鎖とを含む。本発明のいくつかの組成物において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブ又はペンブロリズマブ変異体である。
【0125】
通常、本発明の抗PD-1抗体及び抗原結合フラグメントのアミノ酸配列変異体は、参照抗体又は抗原結合フラグメント(例えば、重鎖、軽鎖、V、V又はヒト化配列)のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95、98、又は99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するであろう。配列に対する同一性又は相同性は、本明細書では、最大パーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要に応じて間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、抗PD-1残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。N末端、C末端、又は抗体配列への内部伸長、欠失、又は挿入のいずれも、配列同一性又は相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。
【0126】
配列同一性は、2つの配列が最適にアラインメントされたときに、2つのポリペプチドのアミノ酸が等価な位置で同じである程度を指す。配列同一性は、BLASTアルゴリズムを使用して決定することができ、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致を与えるように選択される。以下の参考文献は、配列分析にしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関する。BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.” M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;及びAltschul,S.F.”Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.” in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York.
【0127】
同様に、いずれかのクラスの軽鎖を本明細書の組成物及び方法で使用することができる。具体的には、カッパ、ラムダ、又はそれらの変異体は、本発明の組成物及び方法において有用である。
【0128】
表2.例示的なPD-1抗体配列
【0129】
【表2】
【0130】
タンパク質発現
【0131】
抗体を製造するための本発明の方法は、抗体分泌哺乳動物細胞を培養することを含む。そのような培養哺乳動物細胞は、典型的には、一過性又は安定なトランスフェクションを含む組換えDNA技術によって作製され、例えば、クローニング工程からのプールされたプラスミド構築物(発現ベクター)は、カチオン性脂質、ポリエチレンイミン、Lipofectamine(商標)若しくはExpiFectamine(商標)を使用した発現又はエレクトロポレーションのために、複数の宿主細胞(例えば、哺乳動物、HEK 293又はCHO、細菌、昆虫、酵母細胞)にトランスフェクトすることができる。当業者は、組換え抗体の発現を達成するためにトランスフェクトするための多数の適切な手段を認識している。あるいは、目的のタンパク質をコードする発現カセットの安定なゲノムインテグレーションのための方法を用いて、タンパク質分泌哺乳動物細胞の産生細胞株を作製することができる。(例えば、Zhang,Crispr-Cas Systems and Methods for Altering Expression Of Gene Products,WO2014093661 A2;Frendewey et al.,Methods and Compositions for the Targeted Modification of a Genome,米国特許第9228208号;Church et al.,Multiplex Automated Genome Engineering、国際公開第2008052101号、米国特許第8153432号;Bradley et al.,Methods Cells and Organisms,米国特許第2015/0079680号;Begemann et al.,Compositions and Methods for Modifying Genomes、国際公開第2017141173号;Gill et al.,Nucleic acid-guided nucleases、米国特許第9982279号;Minshull et al.,Enhanced nucleic acid constructs for eukaryotic gene expression、米国特許第9428767号、米国特許第9580697号、米国特許第9574209号;Minshull et al.,DNA Vectors,Transposons And Transposases For Eukaryotic Genome Modification,米国特許第10041077号を参照のこと)。
【0132】
他の実施形態では、真核生物の転写活性ホットスポットに効率的に組み込み、目的の遺伝子(GOI)の長期安定かつ一貫した発現を確実にする発現カセットが、国際公開第2020068631号に記載されている。これらの発現カセットは、CHOK1SV(Lonza;Slough,U.K)、HD-BIOP1(Horizon Discovery、U.K)、CHOZN(登録商標)(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)及びGSノックアウトCHO宿主細胞株を含む、様々な宿主CHO細胞株にトランスフェクトすることができる。一実施形態では、発現ベクターは、
(a)上流から下流への順序で以下の要素、すなわち第1のインスレーター、EASE、プロモーター、TPL、目的の遺伝子(GOI)の挿入部位、IRES、真核生物選択可能マーカーをコードするポリヌクレオチド、ポリAシグナル、及び第2のインスレーターを含む第1の発現カセットと、
(b)第1の発現カセットに隣接する2つのITR配列と、
(c)細菌選択可能マーカーをコードするポリヌクレオチドを含む第2の発現カセットと、
(d)細菌プラスミド複製起点と、
を含む。
【0133】
一実施形態では、プロモーターはSV40プロモーターである(Nature 273(5658):113-20(1978),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1):23-27(1984),GenBank:J02400.1。別の実施形態では、プロモーターは、hCMV前初期エンハンサー/プロモーター(GenBank X17403.1)である。別の実施形態では、ITRはpiggyBac ITRである。一実施形態では、インスレーターはニワトリβグロビンHS4インスレーターである。
【0134】
一実施形態では、真核生物選択可能マーカーは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、トリプトファンシンセターゼ、ピューロマイシンN-アセチル-トランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、グルタミンシンセターゼ、アデノシンデアミナーゼ、又はメタロチオネイン-1である。一実施形態において、真核生物選択可能マーカーはネオマイシンホスホトランスフェラーゼである。別の実施形態では、真核生物選択可能マーカーはグルタミンシンセターゼである。本明細書で提供される様々な発現ベクターの特定の実施形態では、細菌選択可能マーカーは、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子などである。一実施形態では、細菌選択可能マーカーはアンピシリン耐性遺伝子である。
【0135】
上流細胞培養プロセス
【0136】
本発明において抗体を生成するために使用される宿主細胞は、様々な細胞培地中で培養することができる。CD-CHO液体又はCD-CHO AGT(商標)粉末(Life Technoogies)、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、シグマ)などの市販の培地が、宿主細胞の培養に適している。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;4,657,866号;4,927,762号;4,560,655号;又は5,122,469号;国際公開第90103430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許再第30,985号に記載された培地のいずれかを宿主細胞の培地として用いてもよい。これらの培地のいずれにも、必要に応じて、当業者に知られているであろう適切な濃度で他の成分が補充され得る。例えば、ホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、硫酸銅、マンガン、マグネシウム、リン酸塩など)、ヌクレオチド(アデノシン、アデニン、チミジン、シチジン、グアノシン、ウリジン、プリンなど)、20種のアミノ酸のいずれか(チロシン、システイン、シスチン、グルタミン酸)、ビタミン又はサプリメント(コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルビン酸、リポ酸、リノール酸、亜セレン酸、グリシン、プトレシン、エタノールアミン)、選択可能マーカーに耐性又は生存を与える選択剤、例えば抗生物質(ジェネティシン、ネオマイシン、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、ゼオシン、ゲンタマイシン(商標))、微量元素(通常はマイクロモル濃度範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース、ガラクトース又は同等のエネルギー源であり、それにより培地中又は培地上の細胞の生理学的条件が宿主細胞による目的のタンパク質の発現を促進する。典型的には、灌流のための細胞培地は、より高密度での細胞の持続的増殖を可能にするためにより濃縮される。一実施形態では、2~10g/LのKolliphor(登録商標)P188などの非イオン性界面活性剤を添加して、灌流プロセス中の細胞死を防ぎ、高い細胞密度及び生存率を維持することができる。Xu et al.,Bioprocess Biosyst Eng(2017)40:1317-1326を参照のこと。別の実施形態では、灌流細胞培地中の銅濃度は10~35ppbである。細胞密度及び銅の細胞取り込みに応じて、灌流バイオリアクター内の銅濃度は1から35ppbの範囲であり得る。培地は、好ましくは無血清である。いくつかの実施形態では、宿主細胞が液体培地内の細胞懸濁液中で培養されるように、水性培地は液体である。
【0137】
培養条件、例えば温度(哺乳動物細胞の場合、典型的には約37°±1℃)、pH(必ずしもそうとは限らないが、典型的には細胞培地は約pH6.5~7.5の範囲内に維持される)、酸素化などは、当業者には明らかであろう。一実施形態では、溶存酸素レベルは約15~100%であり、pHは約6.7~7.3である。明らかに、温度、pH、又は他の培養条件の経時的な変化、及び培養容器(すなわち、バイオリアクター)を通る場所ごとの変化は小さく、これらのパラメータの動作範囲が存在する。(例えば、Oguchi et al.,pH Condition in temperature shift cultivation enhances cell longevity and specific hMab productivity in CHO culture,Cytotechnology.52(3):199-207(2006);Al-Fageeh et al.,The cold-shock response in cultured mammalian cells:Harnessing the response for the improvement of recombinant protein production,Biotechnol.Bioeng.93:829-835(2006);Marchant,R.J.et al.,Metabolic rates,growth phase,and mRNA levels influence cell-specific antibody production levels from in vitro cultured mammalian cells at sub-physiological temperatures,Mol.Biotechnol.39:69-77(2008)も参照のこと)。
【0138】
トランスフェクト又は形質転換された宿主細胞を培養すると、抗体は細胞培地に直接分泌され(適切な分泌指向性シグナルペプチドを使用することによって)、そこから採取される。
【0139】
灌流バイオリアクターは、バイオリアクター(介在するユニット動作を介して直接的又は間接的に、例えばサージ容器)からアフィニティークロマトグラフィーシステムに来る途切れない流れで、アフィニティークロマトグラフィーステップに流体接続することができる。本発明のいくつかの実施形態は、(1又は複数の)灌流バイオリアクターから除去された大量の無細胞透過液を受け取るように適合された第1の単回使用サージ容器(SUSV1)を含む。これらの透過容積を、1又は複数の灌流バイオリアクターからSUSV1に自動的かつ流体的に供給することができる。
【0140】
本発明は、本発明の精製組成物を得る方法を提供し、方法は、
a)少なくとも約0.25~6.0容器体積/日(vvd)の灌流速度を適用することによって、灌流バイオリアクターにおいて細胞培地中で哺乳動物宿主細胞を灌流するステップであって、宿主細胞が、抗ヒトPD-1抗体の抗体又は抗原結合フラグメントの軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド及び重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む、ステップと、
b)採取細胞培養液を得るために細胞培養ブロスから抗体を連続的に採取するステップと、
c)場合により、約0.5~8時間の滞留時間の間、採取細胞培養液(HCCF)をサージ容器に移すステップと、
d)精製組成物を得るためにアフィニティークロマトグラフィー工程を用いて採取細胞培養液を連続的に精製するステップと、
を含む。
【0141】
一実施形態では、上記の方法は、ステップa)の前に以下のステップを含む。
【0142】
(i)約0.2~0.6×10細胞/mlの細胞密度で細胞培地中の哺乳動物宿主細胞を灌流バイオリアクターに接種するステップ、及び
ii)灌流バイオリアクターにおいて、哺乳動物細胞を細胞培地中で約1.0~6.0×10細胞/mlの細胞密度まで増殖させるステップ。
【0143】
一実施形態では、ステップi)において、細胞密度は1日目に約0.20~0.6x10細胞/mlである。
【0144】
一実施形態では、ステップi)において、細胞密度は1日目に約0.25~0.5x10細胞/mlである。
【0145】
別の実施形態では、ステップi)において、細胞密度は1日目に約0.4~0.5x10細胞/mlである。
【0146】
別の実施形態では、ステップa)において、灌流は3日目に開始される。別の実施形態では、ステップa)において、灌流は約2~10×10細胞/mlの細胞密度で開始される。別の実施形態では、ステップa)において、灌流は約4~8×10細胞/mlの細胞密度で開始される。別の実施形態では、ステップ(ii)は、灌流バイオリアクターにおいて、哺乳動物宿主細胞を細胞培地中で約2.0~6.0×10細胞/mlの細胞密度まで成長させることである。
【0147】
灌流速度は、約0.5vvdで開始してもよく、約0.5vvdから6vvdまで連続的に、徐々に又は漸増的に増加させることができる。一実施形態では、ステップa)において、灌流速度は約0.5vvd~4vvdである。一実施形態では、ステップa)において、灌流速度は約0.5vvd~2vvdである。好ましくは、灌流速度は、目標に到達した後に一定に保たれる。あるいは、灌流速度は、連続的に測定された生存細胞密度に応じて、連続製造プロセスを通して調整することができる。一実施形態では、灌流速度は、3日目に約0.5vvd、4日目に約1vvd、及び5日目に約2vvdである。さらなる実施形態では、ステップd)は5日目以降に実施される。さらなる実施形態では、特定の細胞密度、例えば約80~100×10細胞/ml、又はキャパシタンス値(約70~90又は80pF/cm)を維持するために細胞ブリーディング(cell bleeding)が行われる。一実施形態では、最大細胞密度は、灌流中に約80~100×10細胞/mlである。一実施形態では、最大細胞密度は、灌流中に約100×10細胞/mlである。一実施形態では、哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である。別の実施形態では、灌流細胞培地は10~35ppbの銅濃度を有する。さらなる実施形態では、灌流バイオリアクター中の銅濃度は1~35ppbの範囲である。
【0148】
別の態様では、連続採取は、一定の透過速度を設定して、灌流バイオリアクターに接続された中空糸膜を通る無細胞透過液を得ることによって行われる。一実施形態では、灌流速度は、透過速度と細胞ブリーディング速度との和に等しい。供給流、灌流流及び細胞ブリーディング流を有する典型的な灌流システムは、Goudar,C.T.&Chen,C.&Le,H..(2015).SBE special section:Biopharmaceuticals-Continuous processing in upstream operations.p111に記載されている。
【0149】
下流プロセス
【0150】
上流プロセスからの本発明の組成物は、抗体又は抗原結合フラグメント組成物をさらに精製するために、連続的又は半連続的な下流精製又は下流バッチ精製プロセスをさらに経てもよい。
【0151】
アフィニティークロマトグラフィーは、例えば抗原と抗体、酵素と基質、受容体とリガンド、又はタンパク質と核酸との間の相互作用など、目的の分子と樹脂の官能基との間の高特異的相互作用に基づいて分子を分離する。いくつかの一般的に使用されるアフィニティークロマトグラフィー樹脂には、抗体を精製するためのプロテインA又はプロテインG樹脂、ビオチン/アビジン及びその誘導体を精製するためのアビジンビオチン樹脂、GSTタグ付き組換えタンパク質を精製するためのグルタチオン樹脂、血漿凝固タンパク質を分離するためのヘパリン樹脂、金属イオンと特異的に相互作用するタンパク質を精製するためのIMAC樹脂などが含まれる。各アフィニティークロマトグラフィーの動作条件は、相互作用の機構及び相互作用に影響を及ぼす因子に依存する。市販のアフィニティークロマトグラフィー樹脂としては、MabSelect Sure,UNOsphere SUPrATM,Affi-Gel(登録商標),及びAffi-Prep(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、アフィニティークロマトグラフィー工程は、結合及び溶出モードで行われるプロテインAクロマトグラフィーである。
【0152】
一実施形態において、採取細胞培養液は、
a)HCCFを固定相に結合させる工程と、
b)抗体又は抗原に結合するフラグメントをプロテインA固定相から溶出溶液で溶出する工程と、
c)必要に応じて、反復サイクルのために固定相を洗浄及び消毒する工程と、
を含むプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製される。
【0153】
一実施形態では、工程(a)の前に、固定相を平衡化溶液で平衡化することが実施される。一実施形態では、1又は複数の不純物が工程a)の通過画分にある。
【0154】
本方法の別の態様では、工程a)の後であるが工程b)の前に、本方法は、固定相を1又は複数の洗浄溶液で洗浄する工程をさらに含む。一実施形態では、1又は複数の不純物が洗浄工程から除去される。一実施形態では、洗浄溶液又は溶出溶液は、塩、好ましくはNaCl又はKClなどの一価金属イオン塩を含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約400~600mMのNaCl又はKClを含む。別の実施形態では、洗浄溶液は、約500mMのNaCl又はKClを含む。別の実施形態では、洗浄溶液は、約400~500mMのNaCl又はKClを含む。さらなる実施形態では、第1、第2及び第3の洗浄溶液は約5~20mMのリン酸ナトリウムを含み、第2の洗浄溶液は約400~600mMのNaCl又はKClをさらに含む。さらなる実施形態では、第1、第2及び第3の洗浄溶液は約10mMのリン酸ナトリウムを含み、第2の洗浄溶液は約500mMのNaCl又はKClをさらに含む。
【0155】
一実施形態において、洗浄溶液又は溶出溶液のpHは約6~7である。一実施形態において、洗浄溶液又は溶出溶液のpHは約6.5である。別の実施形態では、溶出溶液は約5~50mMの酢酸ナトリウムを含む。別の実施形態では、溶出溶液は約5~30mMの酢酸ナトリウムを含む。別の実施形態では、溶出溶液は約20mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0156】
別の態様では、溶出溶液は約5~50mMの酢酸ナトリウムを含む。別の実施形態では、溶出溶液は約5~30mMの酢酸ナトリウムを含む。別の実施形態では、溶出溶液は約20mMの酢酸ナトリウムを含む。一実施形態では、溶出溶液は約3.5~3.6のpHを有する。別の実施形態では、溶出溶液は約3~4のpHを有する。
【0157】
一実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーは、クロマトグラフィースキッドへのHCCFの途切れない流れを可能にする連続マルチカラムクロマトグラフィー(少なくとも2つ、3つ又は4つのカラム)システムにおいて操作される。
【0158】
一実施形態では、HCCFを含む灌流バイオリアクター又は灌流システムは、アフィニティークロマトグラフィーに間接的又は直接的に流体接続される。一実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、灌流バイオリアクターに流体接続される。
【0159】
別の実施形態では、HCCFを含む灌流バイオリアクター又はシステムは、サージ容器を介してアフィニティークロマトグラフィーに流体接続される。サージ容器は、流体制御容積がサージ容器内で費やす滞留時間を制御するように寸法決めされる。本発明のいくつかの実施形態では、平均滞留時間は0.5~30時間である。本発明のいくつかの実施形態では、平均滞留時間は0.5~20時間である。本発明のいくつかの実施形態では、平均滞留時間は0.5~8時間である。いくつかの実施形態では、平均滞留時間は2時間である。いくつかの実施形態では、平均滞留時間は1時間である。いくつかの実施形態では、平均滞留時間は0.5時間である。HCCFは、サージ容器内で4~25℃で貯蔵することができる。一実施形態では、サージ容器へのHCCF流速は、サージ容器から連続マルチカラムクロマトグラフィーシステムへの供給速度に等しい。あるいは、アフィニティークロマトグラフィーに供給する前に、HCCFを-40℃~-80℃の容器に貯蔵することができる。一実施形態では、抗体は、サージ容器又は容器内での貯蔵中に光から保護される。
【0160】
さらなる実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーの後に、流体接続されていてもよい、又はサージ容器を介して流体接続されている、又は保持容器を介して接続されている、ウイルス不活化、深層濾過、第2のクロマトグラフィー、第3の研磨クロマトグラフィー、ウイルス濾過、限外濾過、透析濾過、シングルパス接線流濾過及びインライン透析濾過の1つ又は複数の工程が続く。
【0161】
一態様では、アフィニティークロマトグラフィーは、途切れない流れでウイルス不活化システムに流体接続され、途切れない流れで深層濾過に流体接続されてもよく、第2のクロマトグラフィーシステム、任意選択的な第3の研磨クロマトグラフィーシステム、ウイルス濾過システム、及び限外濾過/透析濾過システムに流体接続されてもよく、これらはすべて、任意選択的に介在するサージ容器を用いて、前述の上流処理工程に途切れない流れで、互いに連続して接続される。国際公開第2020168315号の図1Cを参照されたい。最終限外濾過工程は、シングルパス接線流濾過工程と、インライン透析濾過工程とを含むことができ、これらは流体接続されるか又は任意のサージ容器を介してのいずれかで操作されて、アフィニティークロマトグラフィー工程からインライン透析濾過生成物までの連続性を維持する。
【0162】
別の態様では、アフィニティークロマトグラフィーは、途切れない流れでウイルス不活化システムに流体接続し、深層濾過システム、ウイルス不活化生成物プールの一時的貯蔵のための保持容器(HV1)、第2のクロマトグラフィーシステム、任意選択の第3の研磨クロマトグラフィーシステム、及び限外濾過/透析濾過システムに途切れない流れで流体接続されてもよく、場合によっては任意選択の介在するサージ容器又は保持容器(すなわち、2つ以上のバッチ工程又は操作がある場合、保持容器)を用いて、途切れない流れ又はバッチモードで互いに連続的に流体接続される。例えば、国際公開第2020168315号の図1Dを参照されたい。最終限外濾過工程は、シングルパス接線流濾過工程と、インライン透析濾過工程とを含むことができ、これらは直接接続されるか又は任意のサージ容器を介してのいずれかで操作されて、アフィニティークロマトグラフィー工程からインライン透析濾過生成物までの連続性を維持する。
【0163】
本発明のいくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー工程の後にウイルス不活化工程が続く。ウイルス不活化のために、アフィニティークロマトグラフィー溶出液の集合体を2つのウイルス不活化プール容器のうちの1つにプールする。別個の数の溶出液がプール容器に収集された後、プール体積部は、酸性溶液を添加することによって溶出pHからウイルス不活化pH(pH=3.4~3.7)への自動pH調整、続いて塩基の添加による中性pHへの調整を受ける。いくつかの実施形態では、中和pHは4.0~7.5である。いくつかの実施形態では、中和pHは4~6である。いくつかの実施形態では、中和pHは7.2である。この自動調整サイクルの間に、新しいアフィニティークロマトグラフィー溶出液を第2のウイルス不活化プール容器に収集する。2つのウイルス不活化プール容器を切り替えることにより、ユニット動作を連続的に操作することが可能になる。本発明のいくつかの実施形態では、ウイルス不活化生成物(VIP)は、他の下流ユニット操作に連続的に供給するサージ容器に移される。
【0164】
本発明のいくつかの実施形態では、ウイルス不活化システム/中和システムの下流の操作は、第2のクロマトグラフィー工程に供給することができるか、又は深層濾過によって濾過して濾過済みウイルス不活化生成物プール(FVIP)を得てもよいサージ容器にVIPを移すことによる連続処理を含む。これらのユニット操作における半連続流は、深層濾過消耗品又は第2のクロマトグラフィーカラムのいずれかを一定間隔で循環させることによって維持される。これらの例では、消耗品交換の間のフェーズのフラッシング及び更生中、並びにクロマトグラフィーフェーズの非ロード工程中に流れが一時停止される。
【0165】
本発明のいくつかの実施形態において、ウイルス不活化システム/中和システムの下流での操作は、ウイルス不活化生成物プールの連続的な処理を伴う(また、深層濾過によって濾過して濾過済みウイルス不活化生成物プール(FVIP)を得てもよい)。そのような実施形態では、ウイルス不活化生成物プールを収集容器に収集し、その後のバッチ式工程又は操作において、精製生成物プール又はウイルス不含濾液を工程間に他の収集容器に収集してもよい。そのような個別の操作、バッチ式、又はバッチモードの処理では、1つの工程からの(1又は複数の)収集容器又は交換可能に「(1又は複数の)収集タンク」(特定の実施形態では、後続工程の「(1又は複数の)供給タンク」とも見なされ得る)は、サージ容器の自動制御を欠いており、収集容器(又は供給タンク)は物理的にサージ容器に似ていてもよいが、そのような収集容器(又は交換可能に、「収集タンク」)又は供給タンクは、「保持容器」又は交換可能に「HV」(例えば、HV1、HV2、HV3、HV4、又はHV5)と呼ばれる。「保持容器」は、製造プロセスステップ又は操作の連続又は半連続フォーマットセットにおける単回使用収集容器(SUCV、例えばSUCV1又はSUCV2)とは異なる、単回使用保持容器(SUHV)であり得る。国際公開第2020168315号の図1Dを参照されたい。
【0166】
アフィニティークロマトグラフィー工程の後に、例えばタンパク質凝集体、宿主細胞タンパク質又はDNAを除去するための第2及び/又は第3のクロマトグラフィー工程を行うことができる。IEXクロマトグラフィーは、分子の正味電荷に基づいて分子を分離する。分離は、目的の荷電分子と、IEXクロマトグラフィー樹脂上の反対に荷電したリガンド基の対イオンとの間の競合の結果として起こる。IEX樹脂への分子の結合の強度は、pH及びイオン強度などの操作条件によって影響を受ける分子の正味電荷に依存する。IEX樹脂には、AEX樹脂及びCEX樹脂が含まれる。AEX樹脂は、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、第四級アミノエチル(QAE)及び第四級アミン(O)基などの置換基を含有し得る。CEX樹脂は、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P)及びスルホネート(S)などの置換基を含有し得る。DE23、DE32、DE52、CM-23、CM-32及びCM-52などのセルロース系IEX樹脂は、Whatman Ltd.Maidstone,Kent,U.Kから入手可能である。セファデックス系及び架橋IEX樹脂も知られている。例えば、DEAE-、QAE-、CM-、及びSP-Sephadex、並びにDEAE-、Q-、CM-、及びS-Sepharose、及びSepharoseはすべて、GE Healthcare,Piscataway,NJから入手可能である。さらに、DEAE及びCMの両方から誘導されるエチレングリコール-メタクリレートコポリマー、例えば、TOYOPEARL(商標)DEAE-650S又はM及びTOYOPEARL(商標)CM-650S又はMは、Toso Haas Co.,Philadelphia,PAから入手可能である。POROSTM HS、POROSTM HQ、POROSTM XSは、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAから入手可能である。一実施形態において、第2のクロマトグラフィー工程は、約6.5~8.0のpHでフロースルーモードで行われるAEXクロマトグラフィーである。一実施形態では、pHは約6.5~7.5である。
【0167】
クロマトグラフィー工程による精製の後、抗体又は抗原結合フラグメントは、ウイルス除去のためのナノ濾過並びに濃縮及び緩衝液交換のための限外濾過を含む一連の濾過工程によって処理され得る。ナノ濾過は、保持容器の使用によってバッチ式で、又はナノ濾過膜を適切な周波数で循環させることによって連続的に操作することができる。限外濾過工程は、ウイルス濾過されたナノ濾過生成物を含有する保持容器からユニット操作を供給することによって、従来のバッチモードで行われてもよい。あるいは、限外濾過は、シングルパス限外濾過を使用して連続的に行われ、続いて直接接続された又は中間サージ容器の使用を介したインライン透析濾過が行われてもよい。
【0168】
精製組成物
【0169】
本発明は、メチオニン105の約3.0%未満の酸化を有する抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物を提供し、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2及び配列番号3のCDRL3を含む3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2及び配列番号8のCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含む。一実施形態において、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。別の実施形態では、抗ヒトPD-1抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。さらなる実施形態では、抗ヒトPD-1抗体は、2本の軽鎖及び2本の重鎖から構成され、2本の軽鎖は、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、2本の重鎖は、配列番号10~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又はそれらの組み合わせから構成される。さらなる実施形態では、抗ヒトPD-1抗体は、2本の軽鎖と2本の重鎖とから構成され、2本の軽鎖は、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、2本の重鎖は、配列番号11に示されるアミノ酸配列から構成される。
【0170】
一実施形態では、メチオニン105の酸化は、約0.2~3.0%である。一実施形態では、メチオニン105の酸化は、0.2~3.0%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、約0.5~3.0%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、0.5~3.0%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、約0.5~2.5%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、0.5~2.5%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、約0.5~2.0%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、0.5~2.0%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、約0.5~1.5%である。別の実施形態では、メチオニン105の酸化は、0.5~1.5%である。
【0171】
一実施形態では、メチオニン酸化%は、還元ペプチドマッピングとそれに続く液体クロマトグラフィー及び質量分析によって測定される。別の実施形態では、メチオニン酸化%は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって測定される。一実施形態では、HIC法は、東ソーフェニル-5PWカラム、及び以下の成分(移動相A:2%アセトニトリル中5mMリン酸ナトリウム、pH7.0;移動相B:400mM硫酸アンモニウム、2%アセトニトリル中5mMリン酸ナトリウム、pH6.9)の勾配を含む移動相を用いたHPLCによって行われる。Met105酸化%は、主要前、主要ピーク及びピーク後の合計に対する主要前ピーク(Met105酸化を含む)のパーセンテージによって決定される。
【0172】
さらなる態様では、本発明は、各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物を提供し、酸性種の量は約1.0~12.0%である。別の態様では、本発明は、各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗PD-1抗体主要種と、抗PD-1抗体主要種の酸性種及び塩基性種とを含む組成物を提供し、主要種の量は約65~85%である。さらなる態様では、本発明は、重鎖が配列番号10、13若しくは15のアミノ酸配列から構成され、軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び重鎖をコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、中国卵巣細胞から生成される抗PD-1抗体主要種と、その抗PD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物を提供し、酸性種の量は1.0~12.0%である。一実施形態では、主要種の量は約65~80%である。別の実施形態では、主要種の量は、約70~80%である。別の実施形態では、主要種の量は、約70~85%である。さらなる実施形態では、主要種の量は、約70~75%である。さらなる実施形態では、主要種の量は、少なくとも約65%である。
【0173】
別の態様では、本発明は、各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗PD-1抗体主要種と、抗PD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物を提供し、酸性種の量は1.0~12.0%である。別の態様では、本発明は、各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗PD-1抗体主要種と、抗PD-1抗体主要種の酸性種及び塩基性種とを含む組成物を提供し、主要種の量は65~85%である。さらなる態様では、本発明は、重鎖が配列番号10、13若しくは15のアミノ酸配列から構成され、軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び重鎖をコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、中国卵巣細胞から生成される抗PD-1抗体主要種と、その抗PD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物を提供し、酸性種の量は1.0~12.0%である。一実施形態では、主要種の量は65~80%である。一実施形態では、主要種の量は65~80%である。別の実施形態では、主要種の量は、70~80%である。別の実施形態では、主要種の量は、70~85%である。さらなる実施形態では、主要種の量は、70~75%である。さらなる実施形態では、主要種の量は、少なくとも65%である。
【0174】
一実施形態では、酸性種の量は約6~10%である。一実施形態では、酸性種の量は約7~9%である。別の実施形態では、酸性1種の量は約1~4%である。別の実施形態では、酸性1種の量は約2~4%である。別の実施形態では、酸性1種の量は約2~3%である。さらなる実施形態では、酸性変異体種の量は約1~5%である。さらなる実施形態では、酸性変異体種の量は約2~5%である。さらなる実施形態では、酸性変異体種の量は約2~4%である。さらに別の実施形態では、組成物は、約12~27%の塩基性種をさらに含む。さらに別の実施形態では、組成物は、約15~20%の塩基性種をさらに含む。なおさらなる実施形態では、塩基性1種の量は約4~12%である。なおさらなる実施形態では、塩基性1種の量は約8~12%である。
【0175】
一実施形態では、酸性種の量は6~10%である。一実施形態では、酸性種の量は7~9%である。別の実施形態では、酸性1種の量は1~4%である。別の実施形態では、酸性1種の量は2~4%である。別の実施形態では、酸性1種の量は2~3%である。さらなる実施形態では、酸性変異体種の量は1~5%である。さらなる実施形態では、酸性変異体種の量は2~5%である。さらなる実施形態では、酸性変異体種の量は2~4%である。さらに別の実施形態では、組成物は、12~27%の塩基性種をさらに含む。さらに別の実施形態では、組成物は、15~20%の塩基性種をさらに含む。なおさらなる実施形態では、塩基性1種の量は4~12%である。なおさらなる実施形態では、塩基性1種の量は8~12%である。
【0176】
主要種、酸性種又は塩基性種を測定する一態様では、陽イオン交換クロマトグラフィーが使用される。一実施形態では、陽イオン交換カラムは、ProPac WCX-10,Sepax Proteomix WCX-NP1.7,Thermo MAbPac SCX-10G又はThermo MAbPac SCX50Gである。当業者は、前述のカラムと同等の任意の業界を使用することを理解するであろう。別の実施形態では、カルボキシレート官能基を有する弱陽イオン交換カラムが使用される。さらなる実施形態では、カルボキシレート官能基を有する弱陽イオン交換カラムは、粒径10μm、直径4mm、長さ250mmを有する。一実施形態では、Thermo Scientific ProPac WCX-10カラムを陽イオン交換法に使用する。別の実施形態では、Thermo Scientific ProPac WCX-10カラムを35℃で使用し、移動相(A)は4%アセトニトリルを含む24mM MES pH6.1であり、移動相(B)は4%アセトニトリルを含む20mMリン酸ナトリウム、95mM NaCl pH8.0であり、クロマトグラムは280nmでの検出を用いて生成される。一実施形態では、非線形勾配が、0~0.6分に22%~22%B、0.6~15.0分に22%~29%B、15.0~30.0分に29%~70%B、30.0~30.5分に70%~100%B、及び30.5~33.0分に100%~100%Bで使用される。さらなる実施形態では、陽イオン交換法が実施例5に記載されている。主要種、酸性種又は塩基性種を測定する別の態様では、陰イオン交換クロマトグラフィーが使用される。
【0177】
一実施形態では、組成物は、灌流バイオリアクターからの細胞培養液である。別の実施形態では、組成物は、採取された細胞培養液である。別の実施形態では、組成物は無細胞透過液である。別の実施形態では、組成物は、プロテインA及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製された採取細胞培養液である。別の実施形態では、抗体はCHO細胞から産生された。
【0178】
上記実施形態の別の態様において、組成物は約5~200mg/mlの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約25~165mg/mlの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約25mg/mlの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約120mg/mlの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約130mg/mlの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約165mg/mlの抗体を含む。一実施形態では、医薬組成物は、約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約10mMのL-メチオニン又はその薬学的に許容される塩、約7% w/vのスクロース及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む。一実施形態では、医薬組成物は、約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約10mMのL-メチオニン又はその薬学的に許容される塩、約7% w/vのスクロース及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む。一実施形態では、医薬組成物は、約25mg/mLの抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約7% w/vのスクロース及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む。
【0179】
上記実施形態の別の態様において、組成物は約200~800mgの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約200mgの抗体を含む。一実施形態では、組成物は、約400mgの抗体を含む。
【0180】
使用方法
【0181】
本発明はまた、対象における癌を治療する方法に関し、方法は、有効量の本発明の組成物のいずれか、すなわち、本明細書に記載される任意の組成物を、対象に提供することを含む。この方法のいくつかの実施形態では、組成物は、皮下投与によって対象に投与される。
【0182】
本発明の方法のいずれにおいても、癌は、黒色腫、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、メルケル細胞癌、皮膚扁平上皮癌、リンパ腫、腎癌、中皮腫、卵巣癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液癌、前立腺癌(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、膵臓癌、結腸癌、肝臓癌、甲状腺癌、神経膠芽腫、神経膠腫、及び他の新生物性悪性腫瘍から構成される群から選択することができる。
【0183】
一実施形態では、癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃癌、胃食道接合部腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、皮膚扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液癌、前立腺癌、神経膠芽腫、腫瘍遺伝子変異量-High又はMSI-H癌である。
【0184】
いくつかの実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、肺癌は扁平上皮非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は非扁平上皮非小細胞肺癌である。一実施形態では、NSCLCは転移性である。
【0185】
代替の実施形態では、肺癌は小細胞肺癌(SCLC)である。一実施形態では、SCLCは転移性である。
【0186】
いくつかの態様では、リンパ腫はホジキンリンパ腫である。
【0187】
他の実施形態では、リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、リンパ腫は縦隔大細胞型B細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0188】
いくつかの実施形態では、乳癌はトリプルネガティブ乳癌である。
【0189】
さらなる実施形態では、乳癌はER+/HER2-乳癌である。
【0190】
いくつかの実施形態では、膀胱癌は尿路上皮癌である。
【0191】
いくつかの実施形態では、頭頸部癌は鼻咽頭癌である。いくつかの実施形態では、癌は甲状腺癌である。他の実施形態では、癌は唾液癌である。他の実施形態では、癌は頭頸部の扁平上皮癌である。
【0192】
いくつかの実施形態では、癌は、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する転移性結腸直腸癌である。
【0193】
いくつかの実施形態では、癌は、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する固形腫瘍である。
【0194】
いくつかの実施形態では、癌は、高い遺伝子変異量を有する固形腫瘍である。一実施形態では、腫瘍遺伝子変異量(TMB)は、FDA承認試験によって決定される場合、≧10突然変異/メガベースである。一実施形態では、腫瘍は転移性又は切除不能である。
【0195】
いくつかの実施形態では、癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、再発性又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部扁平上皮癌、尿路上皮癌、食道癌、胃癌、DLBCL及び肝細胞癌からなる群から選択される。
【0196】
上記治療方法の他の実施形態では、癌はヘム悪性腫瘍である。特定の態様では、ヘム悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、DLBCL、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球が豊富な大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、又は小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0197】
生検材料又は外科材料中の腫瘍浸潤リンパ球の存在に関連して改善された無病生存率及び全生存率を示す悪性腫瘍、例えば黒色腫、結腸直腸癌、肝臓癌、腎臓癌、胃/食道癌、乳癌、膵癌及び卵巣癌は、本明細書に記載の方法及び治療に包含される。このような癌サブタイプは、Tリンパ球による免疫制御を受けやすいことが知られている。さらに、本明細書に記載の抗体を使用して増殖が阻害され得る難治性又は再発性悪性腫瘍が含まれる。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、胃癌、食道癌及び黒色腫を含む試験した組織サンプル中のPD-L1及び/又はPD-L2の発現上昇を特徴とする癌を有する対象に投与される。ヒト化抗PD-1抗体ペンブロリズマブなどの抗PD-1抗体による治療から利益を得ることができるさらなる癌には、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルスクラスA、B及びC、エプスタイン・バーウイルス、例えばカポジ肉腫、肝臓癌、鼻咽頭癌、リンパ腫、子宮頸癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌及び口腔癌に因果関係があることが知られているヒトパピローマウイルスなどのウイルスによる持続感染に関連する癌が含まれる。
【0199】
一実施形態では、本発明は、本発明の任意の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の癌を治療する方法を含む。
【0200】
一実施形態では、本発明は、本発明の任意の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の切除不能又は転移性黒色腫を治療する方法を含む。
【0201】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の転移性非小細胞肺癌(NSCLC)を治療する方法を含む。具体的な実施形態では、患者は、PD-L1発現が高い腫瘍を有する[(腫瘍割合スコア(TPS)≧50%)]。他の実施形態では、患者は、PD-L1発現(TPS≧1%)を有する腫瘍を有する。さらに他の実施形態では、患者は、以前に白金含有化学療法で治療されていたか、又は治療されていなかった。特定の実施形態では、患者は、白金含有化学療法を受けたとき又は受けた後に疾患が進行していた。一実施形態では、NSCLCは転移性又はステージIIIである。
【0202】
特定の実施形態では、PD-L1 TPSは、FDA承認試験によって決定される。
【0203】
特定の実施形態では、患者の腫瘍は、EGFR又はALKのゲノム異常を有さない。
【0204】
特定の実施形態では、患者の腫瘍は、EGFR又はALKのゲノム異常を有し、本発明の組成物を投与する前に(1又は複数の)EGFR又はALK異常の治療を受けたとき又は受けた後に疾患が進行していた。
【0205】
特定の実施形態では、患者は、PD-L1発現CPS≧1%の腫瘍を有する。
【0206】
一実施形態では、本発明は、非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)を治療する方法を含み、方法は、本発明の組成物、ペメトレキセド及び白金化学療法を患者に投与することを含む。一実施形態では、本発明は、(1)本発明の組成物を患者に投与するステップと、(2)ペメトレキセド及びカルボプラチンを患者に投与するステップとを含む、ヒト患者の非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者は、本発明の組成物、ペメトレキセド及びカルボプラチンで併用治療レジメンを開始する前に、抗癌治療薬で以前に治療されていなかった。特定の実施形態では、患者は、転移性非扁平上皮非小細胞肺癌を有する。
【0207】
特定の実施形態では、ペメトレキセドは、500mg/mの量で患者に投与される。サブ実施形態では、ペメトレキセドは、21日ごとに静脈内注入によって患者に投与される。特定の実施形態では、注入時間は約10分である。
【0208】
患者がペメトレキセドと組み合わせて本発明の組成物で治療される本発明の実施形態では、本発明はさらに、約400μg~約1000μgの葉酸を1日1回患者に投与することを含み、これは患者にペメトレキセドを投与する約7日前から開始し、患者にペメトレキセドの最後の用量が投与された後約21日まで継続する。特定の実施形態では、葉酸は、経口投与される。いくつかの実施形態では、本発明はさらに、約1mgのビタミンB12を、ペメトレキセドの初回投与の約1週間前及びペメトレキセド投与の約3サイクルごとに(すなわち、およそ9週間ごとに)患者に投与することを含む。特定の実施形態では、ビタミンB12は筋肉内投与される。特定の実施形態では、本発明はさらに、約4mgのデキサメタゾンを、ペメトレキセド投与の前日、当日及び翌日に1日2回患者に投与することを含む。特定の実施形態では、デキサメタゾンは、経口投与される。
【0209】
一実施形態では、本発明は、(1)本発明の組成物を患者に投与することと、(2)パクリタキセル又はタンパク質結合パクリタキセル及びカルボプラチンを患者に投与することとを含む、ヒト患者の扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者は、併用治療レジメンを開始する前に抗癌治療薬で以前に治療されていなかった。特定の実施形態では、患者は、転移性扁平上皮非小細胞肺癌を有する。
【0210】
一実施形態では、本発明は、本発明の任意の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の再発性又は転移性頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者は、白金含有化学療法で以前に治療されていた。特定の実施形態では、患者は、白金含有化学療法の際又は後に疾患が進行していた。具体的な実施形態では、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(CPS)≧1]。一実施形態では、治療は白金及びFUと組み合わせて行われる。
【0211】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の難治性古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者は、cHLに対する2つ以上の治療ラインの後に再発した。特定の実施形態では、患者は成人患者である。代替の実施形態では、患者は小児患者である。
【0212】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の局所進行性又は転移性尿路上皮癌を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者はシスプラチン含有化学療法に適格ではない。特定の実施形態では、患者は、白金含有化学療法の間若しくは後、又は白金含有化学療法によるネオアジュバント若しくはアジュバント治療の12ヶ月以内に疾患が進行した。具体的な実施形態では、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(CPS)≧1]。一実施形態では、患者は、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)非応答性高リスク非筋層浸潤性膀胱癌を有する。
【0213】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の切除不能又は転移性のマイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損固形腫瘍を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者は、以前の抗癌治療後に疾患が進行していた。
【0214】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の切除不能又は転移性のマイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損固形腫瘍又は結腸直腸癌を治療する方法を含む。特定の実施形態では、患者は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、及びイリノテカンによる事前の治療後に疾患が進行していた。
【0215】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の再発性局所進行又は転移性胃癌を治療する方法を含む。
【0216】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の再発性局所進行型又は転移性胃食道接合部腺癌を治療する方法を含む。具体的な実施形態では、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(CPS)≧1]。特定の実施形態では、患者は、フルオロピリミジン及び白金含有化学療法を含む以前の2つ以上の治療ラインの際又は後に疾患が進行した。特定の実施形態では、患者は、HER2/neu標的療法を含む以前の2つ以上の治療ラインの際又は後に疾患が進行した。
【0217】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の食道の再発性局所進行又は転移性扁平上皮癌を治療する方法を含む。具体的な実施形態では、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(CPS)≧1]。
【0218】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の再発性局所進行又は転移性子宮頸癌を治療する方法を含む。具体的な実施形態では、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(CPS)≧1]。
【0219】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の肝細胞癌を治療する方法を含む。一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の再発性局所進行型又は転移性メルケル細胞癌を治療する方法を含む。一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の再発性又は転移性皮膚扁平上皮癌を治療する方法を含む。
【0220】
一実施形態では、本発明は、患者に本発明の組成物及びアキシチニブに投与することを含む、ヒト患者の進行性腎細胞癌を治療する方法を含む。一実施形態では、本発明は、患者に本発明の組成物及びレンバチニブに投与することを含む、ヒト患者の進行した子宮内膜癌を治療する方法を含む。一実施形態では、子宮内膜癌はMSI-H又はdMMRではない。
【0221】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の癌を治療する方法を含み、患者は、黒色腫、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、リンパ腫、腎癌、中皮腫、卵巣癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、及び唾液癌から構成される群から選択される癌を有する。
【0222】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の小細胞肺癌を治療する方法を含む。
【0223】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の非ホジキンリンパ腫を治療する方法を含む。特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0224】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の乳癌を治療する方法を含む。特定の実施形態では、乳癌は、トリプルネガティブ乳癌であり、化学療法と組み合わせてもよい。特定の実施形態では、乳癌はER+/HER2-乳癌である。具体的な実施形態では、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(CPS)≧1]。
【0225】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の鼻咽頭癌を治療する方法を含む。
【0226】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の甲状腺癌を治療する方法を含む。
【0227】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を患者に投与することを含む、ヒト患者の唾液癌を治療する方法を含む。
【0228】
上記のように、本発明の方法のいくつかの実施形態では、本方法は、追加の治療薬を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、追加の治療薬は、抗LAG3抗体又はその抗原結合フラグメント、抗GITR抗体又はその抗原結合フラグメント、抗TIGIT抗体又はその抗原結合フラグメント、抗CD27抗体又はその抗原結合フラグメントである。一実施形態では、追加の治療薬は、IL-12を発現するニューカッスル病ウイルスベクターである。さらなる実施形態では、追加の治療薬はジナシクリブである。なおさらなる実施形態では、追加の治療薬はSTINGアゴニストである。一実施形態では、追加の治療薬はコクサキウイルスCVA21である。
【0229】
さらなる治療薬の適切な投与経路としては、例えば、筋肉内、皮下、並びに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内を含む非経口送達が挙げられ得る。薬物は、腹腔内、非経口、動脈内又は静脈内注射などの様々な従来の方法で投与することができる。
【0230】
さらなる治療薬の投与量の選択は、実体の血清又は組織の代謝回転率、症状のレベル、実体の免疫原性、及び治療される個体における標的細胞、組織又は器官への近づきやすさを含むいくつかの因子に依存する。追加の治療薬の投与量は、許容可能なレベルの副作用をもたらす量でなければならない。したがって、追加の各治療薬(例えば、生物療法剤又は化学療法剤)の用量及び投与頻度は、特定の治療薬、治療されている癌の重症度、及び患者の特徴に部分的に依存する。適切な用量の抗体、サイトカイン及び小分子を選択する際の指針が利用可能である。例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert et al.(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602;Physicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(November 2002)を参照のこと。適切な投与レジメンの決定は、例えば治療に影響を及ぼすことが当技術分野で知られている、若しくは疑われる、又は予測されるパラメータ又は因子を使用して、臨床医によって行われ得、例えば、患者の病歴(例えば、以前の治療)、治療される癌の種類及び病期、並びに併用療法における1種又は複数の治療薬に対する応答のバイオマーカーに依存する。
【0231】
追加の治療薬のための薬学的に許容される担体又は賦形剤の選択を容易にするために、様々な参考文献が利用可能である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984);Hardman et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照のこと。
【0232】
医薬抗体組成物は、連続注入によって、又は例えば1日、1週間に1~7回、1週間、2週間、3週間、毎月、隔月などの間隔での用量によって投与することができる。好ましい用量プロトコルは、重大な望ましくない副作用を回避する最大用量又は用量頻度を含むものである。総毎週用量は、一般に、少なくとも0.05μg/kg、0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.2mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg体重又はそれ以上である。例えば、Yang et al.(2003)New Engl.J.Med.349:427-434;Herold et al.(2002)New Engl.J.Med.346:1692-1698;Liu et al.(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Portielji et al.(20003)Cancer Immunol.Immunother.52:133-144を参照のこと。小分子治療薬、例えばペプチド模倣物、天然産物又は有機化学物質の所望の用量は、モル/kg基準で抗体又はポリペプチドとほぼ同じである。
【0233】
特定の実施形態では、投与は、治療の過程にわたって、1.0、3.0、及び10mg/kgの本発明の医薬組成物又は組成物の漸増用量を対象に投与することを含む。組成物は、再構成された液体組成物であってもよく、又は事前に凍結乾燥されていない液体組成物であってもよい。時間経過は様々であり得、所望の効果が得られる限り継続し得る。特定の実施形態では、用量漸増は、約10mg/kgの用量まで継続するであろう。特定の実施形態では、対象は、黒色腫又は他の形態の固形腫瘍の組織学的又は細胞学的診断を有し、一定の例では、対象は測定不能な疾患を有し得る。特定の実施形態では、対象は他の化学療法剤で治療されているが、他の実施形態では、対象は治療未経験である。
【0234】
さらに追加の実施形態では、投薬レジメンは、治療の過程全体にわたって、1、3、又は10mg/kgの用量の本明細書に記載の任意の医薬組成物又は組成物を投与することを含む。そのような投薬レジメンでは、投与間隔は約14日間(±2日間)であろう。特定の実施形態では、投与間隔は、約21日間(±2日間)である。
【0235】
特定の実施形態では、投薬レジメンは、患者内用量漸増を伴って、約0.005mg/kg~約10mg/kgの用量を投与することを含むであろう。特定の実施形態では、5mg/kg又は10mg/kgの用量が、3週間毎又は2週間毎の間隔で投与されるであろう。なおさらなる実施形態において、3mg/kgの用量が、黒色腫患者又は他の固形腫瘍を有する患者に対して3週間間隔で投与されるであろう。これらの実施形態では、患者は切除不能な疾患を有するべきであるが、患者は以前に手術を受けたことがあるかもしれない。
【0236】
特定の実施形態では、対象には、本明細書中に記載される薬学的組成物又は組成物のいずれかの30分間IV注入が投与されるであろう。漸増用量についての特定の実施形態では、投与間隔は、第1の用量と第2の用量との間で約28日間((±1日)である。特定の実施形態では、第2の用量と第3の用量との間の間隔は、約14日間(±2日間)であろう。特定の実施形態では、投与間隔は、2回目の投与の後の用量については、約14日間(±2日間)であろう。特定の実施形態では、投与間隔は、2回目の投与の後の用量については、約3週間であろう。特定の実施形態では、投与間隔は、2回目の投与の後の用量については、約6週間であろう。
【0237】
特定の実施形態では、国際公開第2012/018538号又は国際公開第2008/156712号に記載されるような細胞表面マーカー及び/又はサイトカインマーカーの使用は、PD-1経路の遮断を伴うモニタリング、診断、患者選択及び/又は処置レジメンのためのバイオアッセイにおいて使用されるであろう。
【0238】
皮下投与は、シリンジを使用して注射することによって、又は他の注射装置(例えば、Inject-ease(登録商標)デバイス)、インジェクタペン、又は無針装置(例えば、MediJector及びBioJector(登録商標))を使用して行うことができる。
【0239】
本発明の実施形態はまた、(a)治療(例えば、人体の)、(b)薬剤、(c)抗腫瘍免疫応答の誘導又は増大、(d)患者における1つ又は複数の腫瘍マーカーの数の減少、(e)腫瘍又は血液癌の成長の停止又は遅延、(f)PD-1関連疾患の進行の停止又は遅延、(g)癌の進行の停止又は遅延、(h)PD-1関連疾患の安定化、(i)腫瘍細胞の成長又は生存の阻害、(j)1つ又は複数の癌性病変又は腫瘍の排除又はサイズの減少、(k)PD-1関連疾患の進行、発症又は重症度の軽減、(l)癌などのPD-1関連疾患の臨床症状の重症度又は持続期間の減少、(m)同様の未治療患者における予想される生存と比較した場合の患者の生存延長、n)癌性状態又は他のPD-1関連疾患の完全寛解若しくは部分寛解の誘導、又はo)癌の治療、(i)に使用するための、(ii)のための医薬品若しくは組成物として使用するための、又は(iii)のための医薬品の調製に使用するための、本明細書に記載の生物学的組成物の1つ又は複数を含む。
【0240】
一般的な方法
【0241】
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,Fritsch and Maniatis(1982&1989 2nd Edition,2001 3rd Edition)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA)に記載されている。標準的な方法は、Ausbel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも記載されており、これは、細菌細胞及びDNA突然変異誘発におけるクローニング(第1巻)、哺乳動物細胞及び酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質及びタンパク質発現(第3巻)、並びにバイオインフォマティクス(第4巻)を記載している。
【0242】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離及び結晶化を含むタンパク質精製のための方法は記述されている(Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化は記述されている(例えば、Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照のこと)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の産生、精製及び断片化は記述されている(Coligan,et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Harlow and Lane,supra)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coligan,et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0243】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及びヒト化抗体は調製することができる(例えば、Sheperd and Dean(eds.)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;Kontermann and Dubel(eds.)(2001)Antibody Engineering,Springer-Verlag,New York;Harlow and Lane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenter,et al.(2000)J.Immunol.165:6205;He,et al.(1998)J.Immunol.160:1029;Tang et al.(1999)J.Biol.Chem.274:27371-27378;Baca et al.(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684;Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883;Foote and Winter(1992)J.Mol.Biol.224:487-499;U.S.Pat.No.6,329,511を参照のこと)。
【0244】
添付の図面を参照して本明細書で本発明の異なる実施形態を説明してきたが、本発明はそれらの正確な実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、当業者によって様々な変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【0245】
[実施例1]
【0246】
連続灌流プロセス
【0247】
以下の手順及び実施例では、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する重鎖をコードするポリヌクレオチド(ペンブロリズマブを発現)を含むグルタミンシンセターゼノックアウトCHO宿主細胞を用いた。
【0248】
3Lバイオリアクター動作
【0249】
マリンインペラ(直径70mm)及び穿孔スパージャ(直径0.5mmの14×孔)を有するガラスバイオリアクター(3L、Sartorius Stedim,Gottingen、ドイツ)を使用した。バイオリアクターに、0.5×10細胞/mLの標的細胞密度で接種した。過剰な泡形成を避けるためにOスパージ速度を<0.30vvmに制御するために、純粋なO及び260~450rpmの範囲で徐々に増加させた撹拌速度を使用して、溶存酸素(DO)を空気飽和度の30~60%に制御した。EX-CELL(登録商標)消泡剤(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)を、泡制御のために必要に応じて添加した。オーバーレイ空気を0.1L/分で制御した。培養期間を通して温度を36.5℃に維持した。培養期間中、バイオリアクターのpHを7.0±0.3に制御した。
【0250】
最初のバイオリアクターバッチ増殖には市販の基礎培地を使用し、続いて培地交換には灌流培地を使用した。灌流培地の銅濃度は10~35ppbである。バイオリアクターは、1.6Lの作業体積で開始し、灌流中に同じレベルに維持した。3日目に、細胞密度が2~4×10細胞/mLに達したら、培地交換を開始し、0.5vvdから始まる所定のスケジュールに従って灌流速度を上昇させた。4日目に、1vvdの灌流速度を適用し、5日目から生成終了までの間に2vvdの最大灌流速度に達した。磁気浮揚ポンプを備えたTFFシステムを、細胞保持及び培地交換のために使用した(KrosFlo(登録商標)KML System,Repligen,Waltham,MA)。TFFシステムは、透過液を所定の速度で収集しながら、中空糸モジュールを通して細胞培養液を連続的に循環させる。中空糸モジュールの仕様は以下の通りである:モジュール長:32cm;有効濾過表面積:0.09m;ファイバールーメンID:1.4mm;細孔径:0.2μm(Pall,Port Washington,NY)。1.0L/分のTFFクロスフロー速度をすべての実験で使用した。細胞密度が100×10細胞/mL又は80pF/cmのキャパシタンス目標に達すると、細胞ブリード(cell bleed)ポンプがオンになって細胞密度又は生体体積を維持する(キャパシタンス、pF/cm細胞ブリードはキャパシタンスプローブによって自動的に制御された(Incyte DN12,Hamilton Bonaduz AG,Switzerland)。灌流培養期間は28~32日であった。バイオリアクター内の銅濃度は1~35ppbの範囲であった。連続採取は、バイオリアクターについて2vvdの灌流速度が達成された5日後に開始される。
【0251】
50Lバイオリアクター動作
【0252】
Xcellerx XDR 50単回使用バイオリアクター(GE healthcare,Marlborough,MA)を、この研究のための生産バイオリアクターとして使用した。純粋なO供給を使用して30~60%の空気飽和に制御された溶存酸素(DO)を含む0.5×10細胞/mLの標的細胞密度でバイオリアクターに接種した。バイオリアクターの撹拌を86~93rpmで制御して、適切な混合及び物質移動を確実にした。EX-CELL(登録商標)消泡剤(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)を、泡制御のために必要に応じて添加した。オーバーレイ空気を0.1~0.5L/分で制御した。培養期間を通して温度を36.5℃に維持した。培養期間中、バイオリアクターのpHを7.0±0.3に制御した。
【0253】
最初のバイオリアクターバッチ増殖には市販の基礎培地を使用し、続いて培地交換には灌流培地を使用した。灌流培地の銅濃度は32.5ppbである。バイオリアクターは、50Lの作業体積で開始し、灌流中に同じレベルに維持した。3日目に、細胞密度が2~4×10細胞/mLに達したら、培地交換を開始し、3日目の0.5vvdから開始して4日目の1vvdまで所定のスケジュールに従って灌流速度を上昇させ、5日目に2vvd(0.5日間の平均滞留時間)の最大灌流速度に達した。磁気浮揚ポンプを備えたTFFシステムを、細胞保持及び培地交換のために使用した(KrosFlo(登録商標)KML System,Repligen,Waltham,MA)。TFFシステムは、透過液を所定の速度で収集しながら、中空糸モジュールを通して細胞培養液を連続的に循環させる。細孔径0.2umの中空繊維(Pall,Port Washington,NY)を、この研究のための細胞保持デバイスとして使用した。10.5L/分のTFFクロスフロー速度をこの研究で使用した。細胞密度が100~105×10細胞/mL又は80~85pF/cmのキャパシタンス目標に達すると、細胞ブリードポンプがオンになって細胞密度又は生体体積を維持する(キャパシタンス、pF/cm細胞ブリードはキャパシタンスプローブによって自動的に制御した(Incyte DN12,Hamilton Bonaduz AG,Switzerland)。還流培養期間は28日間であった。連続採取は、バイオリアクターについて2vvdの灌流速度が達成された5日後に開始された。
【0254】
サンプルをバイオリアクター及び透過液ラインから毎日採取した。Cedex Hi-Res細胞カウンター(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germany)でトリパンブルー排除法を用いて、生存細胞密度(VCD)及び生存率を測定した。細胞直径を同じ細胞カウンターで測定し、報告した。オフラインpH、pO及びpCOは、ABL80血液ガス分析装置(Radiometer,Denmark)を用いて測定した。グルコース、乳酸、アンモニウム及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を、RX Daytona+又はImola分析装置(Randox Laboratories,Ltd.、Crumlin、UK)を使用して測定した。バイオリアクター上清及び透過液抗体価を、プロテインAカラムを備えたAgilent 1100高速液体クロマトグラフィー(HPLC,Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を用いて分析した。
【0255】
[実施例2]
【0256】
下流精製
【0257】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー
【0258】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、精製の大部分にGE Healthcare(商標)のMabSelect SuRe樹脂を使用して、一次捕捉ステップとして機能する。生成物は樹脂に結合するが、培地成分及び宿主細胞タンパク質などの不純物は結合せず、カラムフロースルー画分中に残る。プロテインA工程は、連続マルチカラムクロマトグラフィースキッドを使用して連続的に操作され、バイオリアクターからのHCCFの途切れない流れを可能にしてスキッドに供給する(BioSMB PD,Sartorius Stedim Biotech GmbH Goettingen Germany)。これは、スキッド上に同じプロテインA樹脂が充填された4つの同等のカラムを利用することによって達成される。任意の時点において、3つのカラムは、第4のカラムがプロテインA法における非ローディング工程(平衡化工程、洗浄工程、溶出工程、再生工程)工程を受けている間のローディング専用である。
【0259】
バイオリアクターからのHCCFは、3L単回使用サージ容器(Cercell,Herlev Denmark)を介して連続マルチカラムクロマトグラフィースキッドに接続される。単回使用サージ容器へのHCCF流速は、サージ容器から連続マルチカラムクロマトグラフィーシステムへの供給速度と一致し、容器内の一定の容積を維持した。サージ容器内の動作容積範囲は、30分の目標値で容器内の流体の平均滞留時間15~45分間を与えた。
【0260】
操作的には、カラム平衡化、ローディング、洗浄及び再生のためのフェーズを含む単一カラムバッチモードクロマトグラフィーと同じ工程をマルチカラムプロテインAクロマトグラフィーで行う。カラムを10mMリン酸ナトリウム、pH6.5で平衡化した後、ローディングフェーズを開始した。タンパク質を50g/LのプロテインA樹脂の容量までロードした。プロテインA工程のローディングフェーズの後に、10mMリン酸ナトリウム、pH6.5、及び10mMリン酸ナトリウムと0.5M塩化ナトリウムを含む3つの洗浄工程を行い、緩く結合した不純物を溶出させ、生成物流中の抗体の純度を高めた。生成物を低pHシフトを介して20mM酢酸ナトリウムpH3.6で溶出し、280nmの吸光度でオンライン分光光度法によって監視した。サージ容器内の工程及びプロテインA工程は、周囲温度(20±5℃)で実施した。
【0261】
プロテインAクロマトグラフィーの後、タンパク質を追加の精製及び濾過工程を通して処理して、ウイルス不活化、深層濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、ウイルス濾過、シングルパス接線流濾過、及びインライン透析濾過を含む中間サージ容器を介して接続された連続プロセスで限外濾過生成物を得た。
【0262】
ウイルス不活化/深層濾過
【0263】
プロテインA親和性プールを1M酢酸で低pH(目標pH3.6)に調整して、存在する可能性のあるウイルスを不活化した。この工程は、周囲温度(20±5℃)で実施した。ウイルス不活化後のプールを1M Trisで目標pH5.5に調整し、明確化のために荷電デプスフィルター(A1HC)及び0.22μmフィルターを通して濾過した(Millipore Sigma,Burlington MA)。濾過された中和されたウイルス不活化生成物(FNVIP)は、後続の陰イオン交換クロマトグラフィー工程におけるさらなる処理の前に2~8℃で貯蔵され得る。
【0264】
陰イオン交換
【0265】
Applied BiosystemsのPOROS HQ50を用いて実施した陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)は、このプロセスにおける最初の研磨工程である。ペンブロリズマブ抗体はカラムを通って流れるが、存在し得る宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、凝集体、及びウイルスなどの残留不純物が樹脂に結合している。カラムを平衡化し、25mMリン酸ナトリウムpH7.2で洗浄した。工程の開始前に、1M Trisを用いてウイルス不活化後プールのpHを目標pH7.2に調整した。カラム流出物のUV吸光度を280nmの波長でオンラインでモニターし、AEXプールを収集するために使用した。1M酢酸を用いてプールのpHをpH5.5に調整して、工程後のサージ容器での処理を続けた。
【0266】
ウイルス濾過
【0267】
AEX生成物を、Planova 20N(平均孔径19nm)ウイルス除去フィルター(Asahi Kasei Bioprocess,Glenview,IL)と直列の0.1μmプレフィルター又は同等物を通して濾過した。プレフィルター及びフィルター接続部をオートクレーブ処理し、バイオセーフティキャビネット内のナノフィルターと一直線に配置した。次いで、フィルターを10mMヒスチジン、10mMメチオニン、pH5.4で連続的に閉鎖様式で洗い流した。
【0268】
限外濾過濃度及び透析濾過
【0269】
ウイルス濾過生成物を、30kDaの分子量カットオフを有するシングルパス接線流濾過(SPTFF)モジュール(Pall Corporation Westboro MA Port Washington,NY)によって最初に8倍濃縮した。次いで、SPTFF工程からの生成物を10mMヒスチジン、10mMメチオニン、pH5.4で透析濾過して、濃縮タンパク質流の緩衝液交換をもたらす。30kDaのMWカットオフ膜を含む6段階インライン透析濾過モジュール(ILDF)ユニット(Pall Corporation Westboro MA Port Washington,NY)を利用して緩衝液交換を行った。限外濾過生成物とも呼ばれる透析濾過生成物を、滅菌フィルターを通してさらに濾過し、貯蔵容器に収集した。十分な質量の限外濾過生成物が蓄積されたら、限外濾過生成物をプールし、Ultracel 30kDa分子量カットオフ膜(Millipore,Burlington,MA)を使用する標準的なバッチ限外濾過工程によって最終濃度190~200g/Lまでさらに濃縮した。ストック賦形剤を添加して、10mMヒスチジン、10mMメチオニン、7%(w/v)スクロース及び0.02%(w/v)PS-80緩衝液pH5.5中165mg/mLの最終原薬製剤を得た。
【0270】
[実施例3]
【0271】
M105酸化レベルを決定する方法
【0272】
ペンブロリズマブの酸化レベルは、以下に概説する還元ペプチドマッピング質量分析法を用いて決定した。
【0273】
サンプル調製
【0274】
仕掛品又は原薬(DS)サンプルを水で5mg/mLに希釈した。合計20μLの希釈サンプル(100μgを含む)を変性させ、6Mのグアニジン-HCl、50μMのTris-HCl、50μMのEDTA及び200μMのDTTを含む最終溶液(100μL)中で還元した。混合したサンプルを、300rpmで振盪しながら、37℃のサーモミキサー内で30分間インキュベートした。混合及びスピンダウン後、各サンプルを、25℃で30分間、光から保護した5μLのヨードアセトアミド(IAM)(1M)でアルキル化する。合計5μLのDTT(200μM)を添加して、未反応のヨードアセトアミド(IAM)をブロックした。500μLのリジルエンドペプチダーゼ(Lys-C)(和光、125-05061)酵素(1:10(wt:wt))を、ゆっくりとピペットで3回上下させながらタンパク質サンプルに添加して、よく混合した。消化物をサーモミキサー内で37℃にて60分間インキュベートした。消化物を15μLの20% TFAでクエンチする。消化したサンプルを、サンプル消化後24時間以内にLC-MSによって分析した。そうでなければ、消化したサンプルを、将来の分析のために-80℃で貯蔵した。
【0275】
LC-MS法及びデータ分析
【0276】
Waters Acquity Liquid Chromatographyを使用して、20μLのサンプルをカラムに注入した(UPLC HSS T 3 100Å、1.8μm、2.1mm×150mm、P/N:186003540)。オートサンプラーを5℃に設定した。移動相Aは水中0.02% TFAであり、移動相Bはアセトニトリル中0.02% TFAであり、勾配は0~5分まで0.1%B、5~7分まで0.1%~10%Bであり、その後、次の38分にわたって35%Bまで直線的に増加した。Q Exactive Orbitrap MS(Thermo)を使用してMS1データを収集した。Chromeleon及びXcaliburをデータ分析に使用した。M105非修飾及び修飾ペプチド(各ペプチドについて2つの荷電状態(+3及び+4)及びそれぞれ3つの同位体イオン)の抽出イオンクロマトグラム(EIC)を使用して、式[修飾ペプチドの抽出イオンクロマトグラム(EIC)のピーク面積]/[修飾ペプチドのEICのピーク面積+非修飾ペプチドのEICのピーク面積]×100を使用してM105酸化%を決定した。図2図4を参照されたい。M105酸化の%CV(変動係数;(標準偏差/平均)×100として計算)は20%未満であった。
【0277】
【表3】
【0278】
フェドバッチ生成ペンブロリズマブ薬物製品標準資料の製剤は、7%(w/v)スクロース及び0.02%(w/v)ポリソルベート80を含有する10mMヒスチジン緩衝液中25mg/mLペンブロリズマブであり、pH5.5である。連続灌流生成ペンブロリズマブ製剤化薬物物質は、165mg/mLペンブロリズマブ、10mM L-ヒスチジン、7%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)PS80及び10mM L-メチオニン、pH5.5である。
【0279】
フェドバッチ生成ペンブロリズマブ製剤化薬物製品標準資料の酸化M105%は約4.9%であったが、連続灌流生成ペンブロリズマブサンプルは約0.5%~3.0%のM105を含有する。プロテインA精製、限外濾過生成物(非製剤化DS)及び製剤化DSからのいくつかの代表的なサンプルを表3に示す。
【0280】
[実施例4]
【0281】
HCCFにおける経時的なペンブロリズマブのM105酸化の変化を測定する
【0282】
酸化速度は、以下のようにProA-HIC 2D-LCにより、実施例1に係るHCCFサンプルの酸化量を繰り返し測定することにより求めた。
【0283】
サンプルをバイオリアクターから採取し、濾過して細胞を除去し、HCCFを得た。滅菌条件下で、HCCFサンプルを96ウェルプレートの48ウェルにわたって200μLアリコートに分割した。プレートをアルミニウム箔蓋で覆い、無菌性を保持し、サンプルを遮光した。内部ライトをオフにした状態で、直ちにサンプルを25℃に設定したAgilent 1290オートサンプラーに入れた。サンプルの各ウェルを、時間経過に従って二次元液体クロマトグラフィー分離によって順次分析した。
【0284】
得られた各サンプルのクロマトグラムを積分して酸化パーセントを決定し、データの要約を図5に示す。データの線形回帰は、0.94%から始まり、次の26時間にわたって1時間当たり約0.038%で最大1.95%の酸化まで増加する酸化パーセントを示す。
【0285】
[実施例5]
【0286】
抗PD-1抗体の酸性種を測定するためのイオン交換(IEX)法
【0287】
IEX法では、Waters Alliance LCシステム(Milford,MA,U.S.A)を使用して、Thermo ScientificのProPac WCX-10(p/n:054993、粒径10um、直径4mm、長さ250mm)を80μgサンプルのローディングで選択した。移動相(A)は4%アセトニトリルを含む24mM MES pH6.1であり、移動相(B)は4%アセトニトリルを含む20mMリン酸ナトリウム、95mM NaCl pH8.0を非線形のS字形、pH勾配として使用し、分離を0.5mL分-1の流速で34分間にわたって監視し、カラム温度は35℃であった。使用した勾配は、0~0.6分に22%~22%B、0.6~15.0分に22%~29%B、15.0~30.0分に29%~70%B、30.0~30.5分に70%~100%B、30.5~33.0分に100%~100%Bであった。移動相(C)は10mM CHES pH8.0、40mM Tris、15mM EDTA、200mM NaCl及び4%アセトニトリルを使用して、33.1~34.0分に0.5mL分-1でカラムをストリッピングし、続いて1.0mL分-1で34.5~44.5分に22%Bと再平衡化した。44.5~45分後、流速を0.5mL分-1に低下させた。ピークの検出のために溶出を280nmで監視した。アッセイ変動性は1%以内であると決定された。
【0288】
同定されたペンブロリズマブ参照サンプルの各ピークの化学組成は、各ピークのサンプルを収集し、ペプチドマッピング及び逆相液体クロマトグラフィーを実施した後、MS/MSによって分析して実施例3と同一の方法に従って質量分析を行うことによって決定した。主要ピークは、軽鎖及び重鎖の両方について、それぞれ配列番号5及び配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する抗体を主に含むと決定された。前述の抗体のアスパラギン残基(例えば、配列番号11の重鎖におけるN31、N52、N55、N59又はN61)の酸化(例えば、メチオニン105)及び脱アミドが酸性変異体ピークにおいて検出された。前述の抗体のアスパラギン残基(例えば、配列番号11の重鎖におけるN384、N389又はN390)の脱アミドが酸化1ピークで検出された。塩基性1ピークにおいて、配列番号11のアミノ酸配列から構成される1本の重鎖、配列番号12のアミノ酸配列から構成される1本の重鎖、及び配列番号5のアミノ酸配列から構成される2本の軽鎖;又は配列番号11のアミノ酸配列から構成される1本の重鎖、C末端ロイシンがアルファ-アミド化されている配列番号14のアミノ酸配列から構成される1本の重鎖、及び配列番号5のアミノ酸配列から構成される2本の軽鎖を有する抗体が検出された。
【0289】
実施例1~2の手順によるプロテインAクロマトグラフィー(PAP)及び陰イオン交換クロマトグラフィー(AEXP)後のサンプルからのイオン交換クロマトグラム及び酸性種%、メインピーク及び塩基性種を図6図7及び表4に示す。PAPサンプル及びAEXPサンプルについての酸性種(酸性変異体、酸性1及び主要前)の合計は、それぞれ7.86%及び8.76%である。PAPサンプル及びAEXPサンプルについての塩基性種(塩基性1、塩基性変異体A、塩基性2、塩基性変異体B)の合計は、それぞれ16.95%、18.19%である。フェドバッチ法によって得られたペンブロリズマブ参照からのイオン交換クロマトグラム及び酸性種%、主要ピーク及び塩基性種を図8及び表5に示す。参照サンプルの酸性種(酸性変異体、酸性1及び主要前)の合計は16.56%である。参照サンプルの塩基性種(塩基性1、塩基性変異体A、塩基性2、塩基性変異体B)の合計は23.76%である。参照サンプルの塩基性変異体(塩基性変異体Aと塩基性変異体B)の合計は6.23%である。要約すると、本発明の連続灌流プロセスによって調製されたペンブロリズマブサンプルは、混合物中の酸性種の割合が低いため、主要種の割合が高かった。実施例1~2と実質的に同様の連続灌流プロセスによって調製されたペンブロリズマブサンプルの他のバッチでは、主要ピークは約74~80%である。
【0290】
表4:本発明の方法から得られたペンブロリズマブ:酸性種、主要種及び塩基性種
【0291】
【表4】
【0292】
表5:ペンブロリズマブ参照の酸性種、主要種及び塩基性種
【0293】
【表5】
【0294】
図9図12はまた、実施例1~2の手順に従って調製したプロテインAクロマトグラフィー工程(PAP)の後、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEXP)の後の、無細胞透過液(PERM)中の全酸性種%、主要種%、全塩基性種%及び塩基性1種%の培養日による時間経過を提供する。
【0295】
米国仮出願第63/143,461号は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で引用されるすべての参考文献は、個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列又はGeneIDエントリ)、特許出願、又は特許のそれぞれが、各個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列又はGeneIDエントリ)、特許出願、又は特許の参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に参照により組み込まれ、そのそれぞれは、そのような引用が参照による組み込みの専用の記述に直接隣接していなくても、37C.F.R.§1.57(b)(2)に従って明確に識別される。参照による組み込みの専用の記述がある場合、それを本明細書内に含めることは、参照による組み込みのこの一般的な記述を決して弱めない。本明細書における参考文献の引用は、その参考文献が適切な先行技術であることの承認として意図されておらず、これらの刊行物又は文書の内容又は日付に関するいかなる承認も構成しない。参照文献が、本明細書で提供される定義と矛盾する特許請求される用語の定義を提供する限りにおいて、本明細書で提供される定義は、特許請求される発明を解釈するために使用されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024505524000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物であって、前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2及び配列番号3のCDRL3を含む3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2及び配列番号8のCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含み、前記組成物が、メチオニン105の約3.0%以下の酸化を有する、
組成物。
【請求項2】
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗ヒトPD-1抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗ヒトPD-1抗体が、2本の軽鎖及び2本の重鎖から構成され、ここで前記2本の軽鎖が、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、前記2本の重鎖が、配列番号10から15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又はそれらの組み合わせから構成される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗ヒトPD-1抗体が、2本の軽鎖及び2本の重鎖から構成され、前記2本の軽鎖が、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、前記2本の重鎖が、配列番号11に示されるアミノ酸配列から構成される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗ヒトPD-1抗体がペンブロリズマブである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗ヒトPD-1抗体がペンブロリズマブ変異体である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
メチオニン105の酸化が約0.2から3.0%である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記メチオニン105の酸化が、還元ペプチドマッピング、液体クロマトグラフィー及び質量分析;又は疎水性相互作用クロマトグラフィーによって測定される場合、約0.5%から3.0%である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記メチオニン105の酸化が0.5から3.0%である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、前記抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物であって、前記酸性種の量が1.0から12.0%である、
組成物。
【請求項12】
重鎖が配列番号10、13若しくは15のアミノ酸配列から構成され、軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び重鎖をコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、チャイニーズハムスター卵巣細胞から生成される抗ヒトPD-1抗体主要種と、前記抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種とを含む組成物であって、前記酸性種の量が1.0から12.0%である、
組成物。
【請求項13】
各重鎖が配列番号11のアミノ酸配列から構成され、各軽鎖が配列番号5のアミノ酸配列から構成される、2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される抗体を含む抗ヒトPD-1抗体主要種と、前記抗ヒトPD-1抗体主要種の酸性種及び塩基性種とを含む組成物であって、前記主要種の量が65から85%である、
組成物。
【請求項14】
前記酸性種の量が約6から10%である、
請求項11から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
酸性1種を含み、前記酸性1種の量が約1から4%である
請求項11から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
酸性変異体種を含み、前記酸性変異体種の量が約1から5%である、
請求項11から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記主要種の量が約65から80%である、
請求項11から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記主要種の量が約70から80%である、
請求項11から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
塩基性種を含み、前記塩基性種の量が約12から27%である、
請求項12から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗ヒトPD-1抗体が哺乳動物宿主細胞から産生され、前記組成物が採取された細胞培養液である、
請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記主要種、酸性、酸性1、酸性変異体又は塩基性種が、陽イオン交換クロマトグラフィーによって同定され、その後に任意選択的に質量分析される、
請求項11から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
roPac WCX-10、Sepax Proteomix WCX-NP1.7、Thermo MAbPac SCX-10G及びThermo MAbPac SCX50Gからなる群から選択される陽イオン交換カラムが使用される、
請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
カルボキシレート官能基を有する弱陽イオン交換カラムが使用される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記主要種、酸性種、酸性1種、酸性変異体種又は塩基性種が、ProPac WCX-10によって、移動相(A)4%アセトニトリルを含む24mM MES pH6.1、及び移動相(B)4%アセトニトリルを含む20mMリン酸ナトリウム、95mM NaCl pH8.0を使用して、カラム温度35℃で、勾配は0から0.6分に22%から22%B、0.6から15.0分に22%から29%B、15.0から30.0分に29%から70%B、30.0から30.5分に70%から100%B、30.5から33.0分に100%から100%Bを適用して決定され、クロマトグラムは280nmでの検出を用いて作成される、
請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
約165mg/mLの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約10mMのL-メチオニン又はその薬学的に許容される塩、約7% w/vのスクロース、及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む、
医薬組成物。
【請求項26】
約130mg/mLの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約10mMのL-メチオニン又はその薬学的に許容される塩、約7% w/vのスクロース、及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む、
医薬組成物。
【請求項27】
約25mg/mLの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体、約10mMのヒスチジン緩衝液、約7% w/vのスクロース及び約0.02% w/vのポリソルベート80を含む、
医薬組成物。
【請求項28】
約200から800mgの請求項1から24のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-1抗体を含む、
医薬組成物。
【請求項29】
抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントを含む精製組成物を得る方法であって、前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2及び配列番号3のCDRL3を含む3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2及び配列番号8のCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含み、
a)少なくとも約0.25から6.0容器体積/日(vvd)の灌流速度を適用することによって、灌流バイオリアクターにおいて細胞培地中で哺乳動物宿主細胞を灌流し、ここで前記宿主細胞が、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド及び重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド、又は軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含み、
b)細胞培養ブロスから前記抗体又はその抗原結合フラグメントを連続的に採取して採取細胞培養液(HCCF)を得て、
c)場合により、約0.5から30時間の滞留時間の間、HCCFをサージ容器に移し、
d)アフィニティークロマトグラフィー工程を用いて前記採取細胞培養液を連続的に精製することで精製組成物を得る、
ステップを含む
製組成物を得る方法。
【請求項30】
ステップa)の前に、
(i)約0.2から0.6×10細胞/mlの細胞密度で細胞培地中の哺乳動物宿主細胞を灌流バイオリアクターに接種し、ここで前記宿主細胞が、前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントの前記軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド及び前記重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含み、
(ii)灌流バイオリアクターにおいて、細胞培地中の前記哺乳動物宿主細胞を約2.0から6.0×10細胞/mlの細胞密度まで増殖させる、
ステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ステップi)において、前記細胞密度が接種時に約0.25から0.5×10細胞/mlである、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップa)において、前記細胞密度が約2から10×10細胞/mlに達したときに前記灌流が開始される、
請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップa)において、前記細胞密度が約4から8×10細胞/mlに達したときに前記灌流が開始される、
請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップa)において、70~90pF/cmのキャパシタンス値を維持する、
請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ステップa)において、前記灌流が約0.5vvdから4vvdである、
請求項29から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ステップa)において、前記灌流速度は、3日目に約0.5vvd、4日目に約1vvd、及び5日目に約2vvdであり、さらに前記精製組成物はステップc)にて得られる、又は5日目に得られる、
請求項29から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ステップa)において、前記灌流が約0.5vvdから2vvdである、
請求項29から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、
請求項29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記灌流バイオリアクター中の銅濃度が1から35ppbの範囲である、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記連続採取が、一定の透過速度を設定して行われることによって、前記灌流バイオリアクターに接続された中空糸膜を通る無細胞透過液が得られる、
請求項29から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記アフィニティークロマトグラフィー工程がプロテインAアフィニティークロマトグラフィーである、
請求項29から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、連続マルチカラムクロマトグラフィーシステムで操作される、
請求項29から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、ステップa)の前記灌流バイオリアクターに流体接続される、
請求項29から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
サージ容器が前記灌流バイオリアクター及びアフィニティークロマトグラフィーに流体接続され、前記サージ容器へのHCCF流速が、前記サージ容器から前記連続マルチカラムクロマトグラフィーシステムへの供給速度に等しい、
請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(d)の後に、ウイルス不活化、深層濾過、第2のクロマトグラフィー、第3の研磨クロマトグラフィー、ウイルス濾過、限外濾過、透析濾過、シングルパス接線流濾過及びインライン透析濾過の1つ又は複数のステップが続き、これが流体接続されていてもよい、又はサージ容器を介して流体接続されていてもよい、及び/又は保持容器を介して接続されていてもよい、
請求項29から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
請求項29から45のいずれか一項に記載の方法によって産生されるか、又はそれによって得ることができる、
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントを含む精製組成物。
【請求項47】
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、
請求項46に記載の精製組成物。
【請求項48】
前記抗ヒトPD-1抗体が、2本の軽鎖及び2本の重鎖から構成され、ここで前記2本の軽鎖が、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成され、前記2本の重鎖が、配列番号10から15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又はそれらの組み合わせから構成される、
請求項46に記載の精製組成物。
【国際調査報告】