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特表2024-505530磁性粒子分離デバイス作動システム及び負圧充填
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】磁性粒子分離デバイス作動システム及び負圧充填
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240130BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240130BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240130BHJP
   C12M 1/28 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
G01N1/38
G01N1/28 J
C12N15/10 100Z
C12M1/00 A
C12M1/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546066
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022014382
(87)【国際公開番号】W WO2022165225
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,587
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】520474495
【氏名又は名称】アボット・ダイアグノスティックス・スカボロー・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523285878
【氏名又は名称】キトビエラ,ニール・エイ
(71)【出願人】
【識別番号】523285889
【氏名又は名称】サンタビッカ,カール・ジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キトビエラ,ニール・エイ
(72)【発明者】
【氏名】サンタビッカ,カール・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ダーフス,オースティン・エム
(72)【発明者】
【氏名】クルート,エイドリアン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヒグビー,ティモシー・エル
(72)【発明者】
【氏名】トバル,アルマンド・アール
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ダレン・エス
(72)【発明者】
【氏名】グリーベ,トシュテン
(72)【発明者】
【氏名】クマラバディベル,カーシキーヤン
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052CA11
2G052CA20
2G052GA11
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC01
4B029HA05
(57)【要約】
本開示の態様は、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを含む。システムは、半自動又は全自動であり得る。システムは、円筒形カートリッジなどの試料調製デバイスにおいて具現化されてもよい。システムは、1つ以上の収集容器を充填するために負圧を生成するプランジャチャンバを含む。プランジャチャンバは、枢動可能なロックアーム及びアームに結合されたトリガを使用して作動可能にされる。
チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムであって、
プランジャアセンブリ及びばねを備えるプランジャチャンバであって、前記プランジャアセンブリが、作動可能にされたとき、前記ばねを圧縮する、プランジャチャンバと、
枢動可能なロックアームであって、
第1の位置では、前記ロックアームが前記プランジャアセンブリを押下し、それによって前記ばねを作動可能にするように、前記ロックアーム及び前記プランジャアセンブリが係合され、
第2の位置では、前記ロックアーム及び前記プランジャアセンブリが係合解除され、前記プランジャアセンブリが前記ばねから離れて後退し、前記プランジャチャンバ内に真空を生成することを可能にする、枢動可能なロックアームと、
前記枢動可能なロックアームに結合されたトリガであって、力又は物理的干渉によって係合されたときに、前記ロックアーム及び前記プランジャアセンブリを係合解除させる、トリガと、を備え、
前記プランジャチャンバが、前記液体を含む前記チャンバを前記1つ以上の収集容器に接続しているチャネルに流体的に接続されており、
前記真空が、前記液体を含む前記チャンバから前記チャネルを介して前記1つ以上の収集容器内に前記液体を引き込む、システム。
【請求項2】
前記システムが、2つの収集容器を備え、前記チャネルが、前記2つの収集容器に流体的に接続された2つのサブチャネルに分岐している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プランジャチャンバが、実質的に円筒形の形状であり、前記プランジャアセンブリが、剛性構造及び圧縮可能な構造を備え、
前記剛性構造が、実質的に湾曲した端部と、前記湾曲した端部とは反対側の実質的に平坦な端部と、を有する狭長領域を備え、前記湾曲した端部が、前記ロックアームと係合し、前記平坦な端部が、前記圧縮可能な構造に取り付けられており、
前記圧縮可能な構造が、前記プランジャチャンバの内側表面とシールを形成している、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記枢動可能なロックアームが、シャフトに枢動可能に取り付けられた第1の領域と、前記プランジャアセンブリと係合する第2の領域と、を備え、前記第2の領域が、前記第1の領域と比較して面積が低減した表面を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記表面積が、前記第2の領域内のノッチの存在によって低減されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ロックアームの前記第2の領域が、前記プランジャアセンブリの前記湾曲した端部に接触する第1のエリアと、前記第1のエリアに隣接する第2のエリアと、を備え、前記第2のエリアが、前記ノッチにつながる斜面を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ノッチが、前記第2の領域の側縁部上に位置付けられている、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ノッチが、前記第2の領域の中央に位置付けられている、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項9】
前記ノッチが、実質的に円形の縁部を備える、請求項5~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の領域が、2つのノッチを備え、第1のノッチ及び第2のノッチが、前記第2の領域の反対側の側縁部に位置付けられているか、又は前記第1のノッチが、側縁部に位置付けられ、前記第2のノッチが、前記第2の領域の中央に位置付けられている、請求項5~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記トリガが、前記ロックアームに取り外し可能に結合されているか、又は固定的に結合されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記トリガが、前記ロックアームから下向きに延在するアームの一部分に結合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記トリガが、磁気応答性材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
磁気応答性材料が、鉄、ニッケル、コバルト、それらの酸化物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記枢動可能なロックアームを前記第1の位置に配置して、前記プランジャアセンブリを作動可能にするための作動アセンブリを更に備え、前記作動アセンブリが、
第2の表面とは反対側の第1の表面、前記第2の表面から延在する複数のプッシュロッド、を備える、キャップを含み、
前記枢動可能なロックアームの前記第1の領域が、開口部を備え、前記開口部を通して、前記アームが前記シャフトに枢動可能に取り付けられており、前記第1の領域が、前記開口部を取り囲むリップ領域を備え、前記リップ領域が、互いに実質的に直径方向に反対側に位置付けられた2つの接触点で前記プッシュロッドによって係合可能な表面積を提供するように構成されている、請求項4~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムが、下部表面とは反対側の上部表面を備える実質的に平面的な領域を備える、シーリングプレートアセンブリを備え、前記シャフトが、前記シーリングプレートアセンブリの中央に位置付けられており、前記シーリングプレートアセンブリの平面の上及び下に延在し、前記ロックアームが、前記シャフト上に枢動可能かつ摺動可能に位置決めされており、前記ロックアームが、前記2つの接触点で前記プッシュロッドによって係合される前に、前記シーリングプレートアセンブリの前記下部表面に隣接して配設され、前記ロックアームが、前記プッシュロッドと係合すると、前記下部表面から離れて前記シャフトを下に摺動するように構成されている、請求項4~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記シャフトは、前記ロックアームが前記下部表面に隣接する下部位置から押し離されるときに、前記枢動可能なアームが前記シャフトの周りをより自由に枢動するように、前記下部表面から更に離れた領域と比較して、前記下部表面に隣接する領域で大きい有効径を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記シーリングプレートアセンブリが、前記シャフトの直径方向に反対の側に位置付けられた2つの貫通したアパーチャを備え、前記アパーチャは、前記プッシュロッドが前記アパーチャを通過して前記ロックアームに接触するように、前記ロックアーム及び前記プッシュロッド上の前記接触点と位置合わせされている、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記シャフトが、中空であり、前記内側表面に位置付けられた凹みを備え、前記キャップが、前記キャップの前記第2の表面から延在する、中央に位置付けられた係合構造を備え、前記係合構造が、前記凹みに可逆的に嵌まる突起を備え、前記突起が前記凹みに位置決めされたとき、前記プッシュロッドが、前記ロックアームに下向きの圧力を加えない、請求項15~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記係合構造が、ロッド形状構造であって、前記ロッド形状構造の遠位端部から延在する複数のフィンガを備える、ロッド形状構造を含み、前記突起が、前記複数のフィンガの遠位端部に位置付けられており、前記シーリングプレートアセンブリ内の前記シャフトが、前記係合構造の直径よりも大きい直径を含み、前記シャフトが、遠位端部にリップを備え、前記キャップに下向きの圧力を加えると、前記突起が、前記凹みから係合解除され、前記突起が前記リップの下に位置付けられ、かつ前記キャップが後退することができないように、前記係合構造が前記シャフトを下に摺動することを可能にする、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
上端部と、底端部と、前記上端部と前記底端部との間に延在する環状壁と、を備える、円筒形カートリッジを備え、前記円筒形カートリッジが、前記チャンバと、プランジャチャンバと、枢動可能なロックアームと、トリガと、シーリングプレートアセンブリと、キャップと、を備え、前記シーリングプレートアセンブリが、前記円筒形カートリッジの前記上端部にわたって固定的に位置決めされており、前記キャップに下向きの力を加えると、前記キャップが、前記シーリングプレートアセンブリにわたって固定的に位置決めされる、請求項16~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記トリガが、磁性材料を含み、前記システムが、前記環状壁の外部表面に隣接して位置決めされた磁石を更に備え、前記円筒形カートリッジが、前記トリガを前記磁石に隣接して配置する位置まで回転可能であり、前記磁石からの磁力は、前記円筒形カートリッジが回転する間、前記ロックアームを所定の位置に保持し、前記ロックアームを前記プランジャアセンブリから係合解除させる、請求項16~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記トリガが、非磁性材料を含み、前記システムが、前記環状壁の前記外部表面に隣接して位置決めされた柱形状構造を更に備え、前記円筒形カートリッジが、前記トリガを前記柱形状構造に隣接して配置する位置まで回転可能であり、前記トリガが、前記円筒形構造内から前記環状壁の外部に延在する突出領域を備え、前記柱形状構造が、前記トリガと係合する前記物理的干渉を提供し、前記円筒形カートリッジが回転すると、前記ロックアームを前記プランジャアセンブリから係合解除させる、請求項16~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記ばねが、前記プランジャチャンバの内側領域に位置決めされている、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記ばねが、前記プランジャチャンバの外側の周りに位置決めされている、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記プランジャアセンブリが、剛性構造及び圧縮可能な構造を備え、
前記剛性構造が、前記プランジャチャンバの外部領域の周りに位置決めされ、かつ前記プランジャチャンバの上端部を囲む、外部領域を備え、前記外部領域が、前記外部領域から離れて延在する係合構造を備え、
前記係合構造が、前記枢動可能なロックアーム内の切り欠き部内に摺動可能に嵌まるようにサイズ決めされており、
前記剛性構造が、前記プランジャチャンバの内側に位置決めされ、かつ前記圧縮可能な構造に固定的に取り付けられた、内部領域を備え、
前記圧縮可能な構造は、前記枢動可能なロックアーム及び前記係合構造が係合するときに、前記プランジャチャンバの底部領域に位置決めされ、前記係合構造が前記枢動可能なロックアームから解放されるときに、前記プランジャチャンバの前記底部領域から離れて後退する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記トリガが、金属ボールと回転可能に係合したシャフト領域を備え、前記金属ボールが、磁力を加えると前記プランジャチャンバに向かって移動可能であり、前記金属ボールが前記プランジャチャンバに向かって移動すると、前記枢動可能なロックアームが回転し、前記プランジャアセンブリの前記剛性構造の前記外部領域の前記係合特徴部の解放につながる、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記トリガ及び前記枢動可能なロックアームが、単一の構造として構成されており、前記枢動可能なロックアームが、前記アームの回転を可能にしながら、前記アームを構造的に支持する溝内に保持されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記枢動可能なロックアームを前記第1の位置に配置して、前記プランジャアセンブリを作動可能にするための作動アセンブリを更に備え、前記作動アセンブリが、
第2の表面とは反対側の第1の表面、前記第2の表面から延在する複数のプッシュロッド、を備える、キャップを含み、
前記キャップに下向きの圧力を加えると、前記複数のプッシュロッドが、前記プランジャアセンブリと係合し、前記剛性構造の下向きの動きを強制し、
前記剛性構造の前記下向きの移動が、前記剛性構造の前記係合構造の、前記枢動可能なロックアームの切り欠き部内へのロックをもたらし、前記プランジャアセンブリを作動可能にする、請求項26~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記システムが、半自動である、請求項1~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムが、自動である、請求項1~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するための方法であって、
請求項1~31のいずれか一項に記載のシステムを提供することと、
前記枢動可能なロックアームを前記第1の位置に移動させることであって、前記ロックアームが、前記プランジャアセンブリと係合して前記プランジャアセンブリを作動可能にし、それによって前記ばねを圧縮する、移動させることと、
前記チャンバが前記液体で自動的に充填されることを可能にすることと、
前記トリガを係合させ、それによって前記枢動可能なロックアームを前記プランジャアセンブリから係合解除させ、前記プランジャアセンブリが前記ばねから離れて後退し、前記プランジャチャンバ内に真空を生成することを可能にすることと、を含み、
前記真空が、前記チャンバから前記チャネルを介して前記1つ以上の収集容器内に前記液体を引き込む、方法。
【請求項33】
前記システムが、請求項21に記載の円筒形カートリッジを備え、前記システムを提供することが、前記円筒形カートリッジを提供することを含み、前記シーリングプレートアセンブリが、前記円筒形カートリッジの前記上端部にわたって固定的に位置決めされており、前記キャップは、前記突起が前記凹み内に位置決めされるように位置決めされており、前記プッシュロッドが、前記ロックアームと接触していない、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記枢動可能なロックアームを前記第1の位置に移動させることが、前記キャップに下向きの圧力を加えることであって、それによって、前記突起が前記凹みから係合解除されることで、前記係合構造が前記シャフトを下に摺動することを可能にし、それによって、前記突起が前記リップの下に位置付けられ、前記キャップが後退することができない、加えることを含み、前記プッシュロッドが、前記ロックアームを、前記シーリングプレートアセンブリの前記下部表面に隣接する前記下部位置から押し離す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記システムが、請求項25~31のいずれか一項に記載の円筒形カートリッジを備え、前記システムを提供することが、前記円筒形カートリッジを提供することを含み、前記シーリングプレートアセンブリが、前記円筒形カートリッジの前記上端部にわたって固定的に位置決めされており、前記キャップが、前記シーリングプレートにわたって位置決めされており、かつ前記シーリングプレートと鉛直に位置合わせされており、前記プッシュロッドが、前記プランジャアセンブリと接触していない、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記キャップに下向きの圧力を加えることが、前記キャップを手動で押し下げることを含む、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記チャンバが前記液体で自動的に充填されることを可能にすることが、前記システムを、生体試料を処理する機器と関連付けて配置し、存在する場合、標的分析物を単離し、前記チャンバ内の前記液体中に前記標的分析物を提供することを含む、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記トリガを係合させることが、前記トリガを物理的に接触させ、それによって前記枢動可能なロックアームを前記プランジャアセンブリから係合解除させることを含む、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記トリガを係合させることが、前記トリガを前記磁石に隣接して配置することを含み、前記磁石からの磁力は、前記円筒形カートリッジが回転する間、前記ロックアームを所定の位置に保持し、前記ロックアーム及び前記プランジャアセンブリを係合解除させる、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記トリガを係合させることが、前記トリガを前記磁石に隣接して配置することを含み、前記磁石からの磁力は、前記円筒形カートリッジが静止したままである間、前記ロックアームを移動させ、前記ロックアームを前記第2の位置に移動させる、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,587号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
生体試料の分析は、試料中の標的分析物の存在を判定することを伴うことが多い。標的分析物は、存在する場合、試料から単離され、増幅、イムノアッセイなどのような下流の用途を使用して分析される。核酸などの標的分析物は、カラムベースの単離及び精製、試薬ベースの単離及び精製、磁性ビーズベースの単離及び精製、並びに他の技術を含む手法を使用して単離される。核酸の単離及び精製に使用される試薬、キット及び機器が利用可能である。不十分な試料調製は、下流用途において最適ではない結果をもたらす可能性があり、このため、血液、植物組織、真菌、細菌又はウイルスなどの試料源の変動に対処するために、最適化されたバージョンのキットが出現した。
【0003】
試料調製プロセスは、カオトロピック核酸抽出技術を使用して、その天然の生物源から核酸を放出すること(例えば、患者細胞などの細胞の溶解、又はウイルス、細菌、真菌などの微生物の溶解など)と、シリカ又は酸化鉄核酸化学を使用して核酸を固相(例えば、常磁性粒子)に結合させることと、磁気分離技術を使用して残留溶解溶液から固相を分離することと、不要な材料を除去するために洗浄することと、流体取り扱い技術を使用して固相から核酸を溶出又は分離することと、を含む。試料調製プロトコルの完了時に、核酸を含む液体は、PCRチューブ又はストリップなどの収集容器に移送される。スループットを高め、ユーザエラーを減らし、及び/又はユーザの有害物質への曝露を制限するために、試料調製の全て又は個々の側面を自動化することへの関心がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の態様は、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを含む。システムは、半自動又は全自動であり得る。システムは、円筒形カートリッジなどの試料調製デバイスにおいて存在してもよい。システムは、1つ以上の収集容器を充填するために負圧を生成するプランジャチャンバを含む。プランジャチャンバは、枢動可能なロックアーム及びアームに結合されたトリガを使用して制御される。
【0005】
チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを使用する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態による試料調製カートリッジ100の分解図を描示する。
図2A図1に描示される試料調製カートリッジの円筒形構造110の内側を示す。
図2B】一実施形態によるプランジャアセンブリを示す。
図2C】下から見たシーリングプレートアセンブリを示す。枢動可能なロックアームは、切り離された図で示されている。トリガは、更なる切り離された図で示されている。
図2D】枢動可能なロックアーム151及びキャップ160を示す。
図3】本開示の一実施形態による、試料調製カートリッジの切り欠き図を示す。カートリッジの一部の構成要素は示されていない。
図4】本開示の一実施形態による、試料調製カートリッジの切り欠き図を示す。カートリッジの一部の構成要素は示されていない。
図5A】キャップが作動前段階にあり、ばねがまだ作動可能にされていない、作動可能前段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図5B】キャップが作動前段階にあり、ばねがまだ作動可能にされていない、作動可能前段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図5C】キャップが作動前段階にあり、ばねがまだ作動可能にされていない、作動可能前段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図5D】キャップが作動前段階にあり、ばねがまだ作動可能にされていない、作動可能前段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図6A】キャップが作動後段階にあり、ばねが作動可能にされた、作動可能段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図6B】キャップが作動後段階にあり、ばねが作動可能にされた、作動可能段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図6C】キャップが作動後段階にあり、ばねが作動可能にされた、作動可能段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図6D】キャップが作動後段階にあり、ばねが作動可能にされた、作動可能段階の試料調製カートリッジ100を示す。
図7A】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジ100を示す。ロックアーム151は、シーリングプレートアセンブリのシャフト152に対して枢動している。
図7B】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジ100を示す。ロックアーム151は、シーリングプレートアセンブリのシャフト152に対して枢動している。
図7C】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジ100を示す。ロックアーム151は、シーリングプレートアセンブリのシャフト152に対して枢動している。
図7D】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジ100を示す。ロックアーム151は、シーリングプレートアセンブリのシャフト152に対して枢動している。
図8A】カートリッジの底端部に存在する流体チャネルの更なる詳細を示す。
図8B】カートリッジの底端部に存在する流体チャネルの更なる詳細を示す。
図9A】チャンバ140を収集容器130に接続するチャネル145及びチャンバ120を収集容器130に接続するチャネル146の構成を示す。
図9B】チャンバ140を収集容器130に接続するチャネル145及びチャンバ120を収集容器130に接続するチャネル146の構成を示す。
図9C】チャンバ140を収集容器130に接続するチャネル145及びチャンバ120を収集容器130に接続するチャネル146の構成を示す。
図10A】シーリングプレートアセンブリの追加の図を示す。
図10B】シーリングプレートアセンブリの追加の図を示す。
図10C】シーリングプレートアセンブリの追加の図を示す。
図11A】異なる角度から見たときのキャップ160を単独で示す。
図11B】異なる角度から見たときのキャップ160を単独で示す。
図11C】異なる角度から見たときのキャップ160を単独で示す。
図12A】回転可能なプラットフォーム及び磁石を備える機器を示す。
図12B】回転可能なプラットフォーム及び磁石を備える機器を示す。
図13】一実施形態による試料調製カートリッジ300の分解図を示す。
図14】プランジャアセンブリ及びトリガアセンブリを示す。
図15】プランジャアセンブリの切り欠き図を示す。
図16】プランジャアセンブリを示す。
図17A】プランジャアセンブリの作動可能前の、キャップ開状態の試料調製カートリッジを示す。
図17B】プランジャアセンブリの作動可能前の、キャップ開状態の試料調製カートリッジを示す。
図17C】プランジャアセンブリの作動可能前の、キャップ開状態の試料調製カートリッジを示す。
図17D】プランジャアセンブリの作動可能前の、キャップ開状態の試料調製カートリッジを示す。
図18A】プランジャアセンブリの作動可能後の、キャップ閉状態の試料調製カートリッジを示す。
図18B】プランジャアセンブリの作動可能後の、キャップ閉状態の試料調製カートリッジを示す。
図18C】プランジャアセンブリの作動可能後の、キャップ閉状態の試料調製カートリッジを示す。
図18D】プランジャアセンブリの作動可能後の、キャップ閉状態の試料調製カートリッジを示す。
図19A】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジを示す。
図19B】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジを示す。
図19C】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジを示す。
図19D】負圧トリガ段階の試料調製カートリッジを示す。
図20A】試料調製カートリッジ300のシーリングプレートアセンブリの上面図を示す。
図20B】試料調製カートリッジ300のキャップ360の底部の図を示す。
図21A】キャップ開状態の試料調製カートリッジを示す。
図21B】キャップ閉状態の試料調製カートリッジを示す。
図21C】試料調製カートリッジを保持するように構成された磁石アクセサリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の態様は、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを含む。システムは、半自動又は全自動であり得る。システムは、円筒形カートリッジなどの試料調製デバイスにおいて具現化されてもよい。システムは、1つ以上の収集容器を充填するために負圧を生成するプランジャチャンバを含む。プランジャチャンバは、枢動可能なロックアーム及びアームに結合されたトリガを使用して制御される。
【0008】
チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを使用する方法も提供される。
【0009】
本システム、試料調製デバイス及び方法がより詳細に記載される前に、本開示は、記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、もちろん、変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。
【0010】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が、本システム、試料調製デバイス及び方法に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、記載の範囲において任意の具体的に除外された限界に従って、同様に本システム、試料調製デバイス及び方法に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本システム、試料調製デバイス及び方法に含まれる。
【0011】
「約」という用語に先行されている数値を有する、ある特定の範囲は、本明細書で提示される。本明細書では、「約」という用語は、それが先行する正確な数、及びその用語が先行する数に近い、又は近似する数について文字通りの支持を提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又は近似するかどうかを判定するとき、その近い又は近似する列挙されない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙されている数の実質的な均等物を提供する数であり得る。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料もまた、本システム、試料調製デバイス及び方法の実践又は試験において使用され得るが、代表的で例示的なシステム、試料調製デバイス及び方法が、以下に記載される。
【0013】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が、参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれ、引用される刊行物に関連する方法及び/又は材料を開示し説明するために参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日以前のその開示についてのものであり、本発明が、先行発明の特色によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なり得、これらは独立して確認する必要があり得る。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに示さない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的な要素を排除するように設計され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」などのような排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0015】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例証される個々の実施形態の各々は、本試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットの範囲若しくは趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又はこれらと組み合わされ得る個別の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で行われ得る。
【0016】
負圧充填のためのシステム
上記で要約されたように、本開示の態様は、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するように構成された、試料調製カートリッジなどのシステム及び試料調製デバイスを含む。これらのシステム及びそのようなシステムを構成する試料調製デバイスは、標的分析物を含むか、又は含む疑いのある溶液(例えば、溶出緩衝液)を、標的分析物の分析のために1つ以上の収集容器内に輸送するのに有用である。収集容器の半自動又は完全に自動化された充填は、ユーザエラーを最小限に抑えながら、ユーザへの依存を低減する。収集容器を充填するために負圧を使用することは、チャンバ内のプランジャを使用して液体を直接的に強制的に出すことと比較して、いくつかの利点を有することができる。例えば、負圧の使用は、チャンバから移送される液体の量を増加させて、標的分析物の損失を最小限に抑えることができる。加えて、チャンバ及びプランジャの形状は、液体をチャンバから強制的に出すのに十分な漏れ防止シールを発生させるために完全に一致する必要がない。
【0017】
ある特定の実施形態によれば、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムは、プランジャチャンバと、枢動可能なロックアームと、アームに取り付けられたトリガと、を含んでもよい。プランジャチャンバは、プランジャアセンブリ及びばねを含んでもよい。ある特定の実施形態では、プランジャアセンブリのばね部分は、プランジャチャンバの外部に位置決めされてもよい。作動可能にされたとき、プランジャアセンブリは、ばねを圧縮する。枢動可能なロックアームは、第1の位置にあるとき、プランジャアセンブリと係合して、プランジャアセンブリを作動可能にする。枢動可能なロックアームは、第2の位置にあるとき、プランジャアセンブリと係合解除し、プランジャアセンブリがばねから離れて後退し、プランジャチャンバ内に真空を生成することを可能にする。トリガは、枢動可能なロックアームに結合されている。トリガは、力又は物理的干渉によって係合されたときに、ロックアーム及びプランジャアセンブリを係合解除させる。プランジャチャンバは、チャンバを1つ以上の収集容器に接続しているチャネルに流体的に接続されている。プランジャチャンバ内で生成された真空は、チャンバからチャネルを介して1つ以上の収集容器内に液体を引き込む。
【0018】
ある特定の実施形態では、システムは、2つの収集容器を含む。ある特定の実施形態では、システムは、3つの収集容器を含む。ある特定の実施形態では、システムは、4つ以上の収集容器を含む。ある特定の実施形態では、2つ以上の収集容器は各々、チャンバ内に実質的に等しい体積の液体を含む。例えば、2つ以上の容器に移送される液体の体積は、±20%を超えて相違しないものとすることができる。ある特定の例では、液体を含むチャンバは、約1ml~100ul、例えば、750~100ul、500~100ul、又は250~100ulの体積を有する。システムは、体積全体又はその一部を収集チャンバに移送することができる。2つ以上の収集チャンバが存在するとき、システムは、ほぼ等しい体積の液体を2つ以上の容器に移送してもよい。ある特定の場合、チャンバは、およそ250ulの液体を含んでもよく、システムは、液体を2つの収集容器に移送してもよく、各容器は、約125ulの液体を受け取る。
【0019】
ある特定の実施形態では、システムは、2つの収集容器を含み、チャンバを2つの収集容器に接続しているチャネルは、2つの収集容器に流体的に接続された2つのサブチャネルに分岐する。
【0020】
収集容器は、任意の好適な容器であってもよい。ある特定の実施形態では、収集容器は、PCRチューブ、又は熱循環反応若しくは等温反応を助長する同様の薄い壁の容器若しくはストリップであってもよい。
【0021】
ある特定の実施形態によれば、プランジャチャンバは、実質的に円筒形の形状であり、プランジャアセンブリは、剛性構造及び円筒形の圧縮可能な構造を含む。剛性構造は、実質的に湾曲した端部と、湾曲した端部とは反対側の実質的に平坦な端部と、を有する、狭長領域を含む。湾曲した端部は、ロックアームと係合し、平坦な端部は、圧縮可能な構造に取り付けられている。平坦な端部は、圧縮可能な構造との取り付けを改善するためにより広くてもよい。圧縮可能な構造は、プランジャチャンバの内側表面とシールを形成している。湾曲した端部は、プランジャアセンブリとロックアームとの間の摩擦を低減し、それによって、プランジャアセンブリとロックアームとの間の相対的な移動を引き起こすのに必要な力の量を低減する。圧縮可能な構造とプランジャチャンバの内側表面との間に形成されたシールは、ロックアームがプランジャアセンブリを押し下げるときに、チャンバ及び関連するチャネルからの空気のパージを容易にする。シールはまた、ロックアームがプランジャアセンブリに対する下向きの圧力を解放し、それによってプランジャアセンブリが後退することを可能にするときに、真空を形成することによる負圧の生成を容易にする。ばねは、ロックアームによる下向きの圧力の除去後に、プランジャアセンブリが後退する力を増加させることによって、真空の形成を容易にする。プランジャチャンバは、円筒形構造を有するものとして本明細書に例示されるが、プランジャチャンバの他の形状も可能である。例えば、プランジャチャンバ及びプランジャアセンブリの圧縮可能な構造は、立方体又は立方体状の形状であってもよい。
【0022】
プランジャチャンバの高さ及び直径は、チャンバ内の液体の体積、液体の粘度、移送される液体の量、ばねの材料などに基づいて変えることができる。ある特定の例では、プランジャチャンバは、10cm~1cm、例えば、5cm~1cm、4cm~1cm、又は3cm~1cmの高さを有してもよい。プランジャチャンバは、1cm~0.1cm、例えば、1cm~0.3cm又は1cm~0.5cmの内径を有してもよい。プランジャチャンバは、約1ml~200ul、例えば、900ul~300ul、800ul~300ul、又は700ul~400ulの内側容積を有してもよい。プランジャチャンバ及びプランジャアセンブリの剛性構造は、プラスチックから形成され得る。プランジャアセンブリの圧縮可能な構造は、ゴム又は同様の材料から形成され得る。プランジャアセンブリの平坦な端部は、実質的に円筒形であってもよく、圧縮可能な構造の直径と一致する直径を有してもよい。圧縮可能な構造は、実質的に円筒形の形状であってもよく、プランジャチャンバの内側表面とシールを形成するような直径を有してもよい。シールは、プランジャアセンブリ及びプランジャチャンバの相対的な移動を可能にしながら、かなりの量の空気がシールを通過するのを防止するほど十分に密であってもよい。ばねは、プランジャアセンブリの下のプランジャチャンバ内に配設され、圧縮可能な構造と接触してもよい。ばねは、プランジャチャンバの直径と実質的に等しいか、又はそれよりも小さい直径を有し得る。ばねの高さは、ロックアームからの下向きの圧力がない場合に、ばねが圧縮されないようなものであってもよい。ある特定の例では、ばねの高さは、ロックアームからの下向きの圧力がない場合に、ばねがわずかに圧縮されるようなものであってもよい。プランジャチャンバは、上端部に開口部を含み、その開口部は、プランジャアセンブリ及びばねをプランジャチャンバ内に配置することを可能にするほど十分に大きい。プランジャチャンバの底端部は、プランジャアセンブリ及びばねを収容するように構成された、より小さい開口部を含み、空気の移動を可能にするのに十分な幅である。ある特定の実施形態では、プランジャチャンバの底端部は、実質的に平坦である。他の実施形態では、プランジャチャンバの底端部は、湾曲していてもよい。
【0023】
ある特定の実施形態では、枢動可能なロックアームは、第1の領域及び第2の領域を備える実質的に平坦な細長い構造であり得る。任意選択的に、第2の領域は、平坦な細長い構造の平面の下に延在する延長部を含み得る。第1の領域は、シャフトに枢動可能に取り付けられ得、第2の領域は、プランジャアセンブリと係合する。第2の領域は、第1の領域と比較して面積が低減した表面を有し得る。低減した表面積は、プランジャアセンブリに接触するために利用可能なより狭い表面を表す。より狭い表面は、ロックアームが比較的小さな移動を必要とすることによって移動されるときにプランジャアセンブリからの圧力の除去を容易にする。第2の領域の表面積は、第2の領域におけるノッチの存在によって、より狭い表面を提供するために低減されてもよい。ある特定の実施形態では、ノッチは、ロックアームの第2の領域の側縁部に存在し得る。ある特定の実施形態では、ノッチは、ロックアームの第2の領域の中央エリアに存在してもよく、例えば、ノッチは、プランジャアセンブリの湾曲した端部が孔を通過するようにサイズ決めされた貫通孔であってもよい。ある特定の実施形態では、第2の領域は、2つのノッチを含み、第1及び第2のノッチは、第2の領域の反対側の側縁部に位置付けられているか、又は第1のノッチは、側縁部に位置付けられ、第2のノッチは、第2の領域の中央に位置付けられている。ロックアームの第2の領域は、プランジャアセンブリの湾曲した端部に接触する第1のエリアと、第1のエリアに隣接する第2のエリアと、を含んでもよく、第2のエリアは、ノッチにつながる斜面を含む。斜面は、プランジャアセンブリの湾曲した端部のノッチに向かう移動を加速させ、それによって、プランジャアセンブリがノッチ内に摺動する勢いを増加させ得る。したがって、斜面は、プランジャアセンブリに対してロックアームを移動させるために必要な力の量を低減することができる。ノッチは湾曲していてもよく、湾曲の直径は、プランジャアセンブリの湾曲した端部が摺動して通ることを可能にするほど十分に大きくてもよい。ノッチがロックアームの第2の領域の一方の側縁部のみに位置付けられている実施形態では、ノッチが、プランジャアセンブリに向かって移動してプランジャアセンブリに対する下向きの圧力を解放する側縁部に位置付けられることが理解される。
【0024】
ある特定の実施形態によれば、トリガは、ロックアームに取り外し可能に結合され得る。トリガは、磁気応答性材料から作られてもよく、ロックアーム内に、又はロックアーム上にスナップするように構成されてもよい。磁気応答性材料は、鉄、ニッケル、コバルト、その酸化物、その誘導体、及びそれらの組み合わせであってもよい。他の実施形態では、トリガは、ロックアームに固定的に結合されてもよい。例えば、ロックアーム及びトリガは、射出成形によって形成された単一の構造であってもよい。ある特定の実施形態では、ロックアームは、実質的に平面的であり得、トリガは、ロックアームから下向きに延在し得る。他の実施形態では、ロックアーム及びトリガは、同じ平面内に位置付けられてもよい。
【0025】
プランジャアセンブリを作動可能にするために、枢動可能なロックアームを第1の位置に配置するための作動アセンブリが、本システムに含まれてもよい。作動アセンブリは、キャップを含んでもよい。キャップは、第2の表面とは反対側の第1の表面、第2の表面から延在する複数のプッシュロッド、を含み得る。枢動可能なロックアームの第1の領域は、開口部を含んでもよく、開口部を通して、ロックアームがシャフトに枢動可能に取り付けられており、第1の領域は、開口部を取り囲むリップ領域を含み、リップ領域は、互いに実質的に直径方向に反対側に位置付けられた2つの接触点でプッシュロッドによって係合可能な表面積を提供するように構成されている。システムは、下部表面とは反対側の上部表面を備える実質的に平面的な領域を備える、シーリングプレートアセンブリを含んでもよく、シャフトは、シーリングプレートアセンブリ内に位置付けられており、シーリングプレートアセンブリの平面の少なくとも下、及び任意選択的にシーリングプレートアセンブリの平面の上に延在する。ロックアームは、シャフト上に枢動可能かつ摺動可能に位置決めされている。ロックアームは、2つの接触点でプッシュロッドによって係合される前に、シーリングプレートアセンブリの下部表面に隣接して配設されている。ロックアームは、プッシュロッドと係合すると、下部表面から離れてシャフトを下に摺動するように構成されている。
【0026】
シャフトは、ロックアームが下部表面に隣接する下部位置から押し離されるときに、枢動可能なアームがシャフトの周りをより自由に枢動するように、下部表面から更に離れた領域と比較して、下部表面に隣接する領域で大きい有効径を有し得る。
【0027】
シーリングプレートアセンブリは、シャフトの直径方向に反対の側に位置付けられた2つの貫通したアパーチャを含んでもよく、アパーチャは、プッシュロッドがアパーチャを通過してロックアームに接触するように、ロックアーム及びプッシュロッド上の接触点と位置合わせされている。
【0028】
シャフトは、中空であってもよく、内側表面に位置付けられた凹みを含んでもよい。キャップは、キャップの第2の表面から延在する、中央に位置付けられた係合構造を含んでもよく、係合構造は、凹みに可逆的に嵌まる突起を含む。突起が凹みに位置決めされたとき、プッシュロッドは、ロックアームと接触していない。
【0029】
係合構造は、ロッド形状構造であって、ロッド形状構造の遠位端部から延在する複数のフィンガを備える、ロッド形状構造であってもよく、突起は、複数のフィンガの遠位端部に位置付けられており、シーリングプレートアセンブリ内のシャフトは、係合構造の直径よりも大きい直径を有し、シャフトは、遠位端部にリップを含む。キャップに下向きの圧力を加えると、突起は、凹みから係合解除され、突起がリップの下に位置付けられ、かつキャップが後退することができないように、係合構造がシャフトを下に摺動することを可能にする。
【0030】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の円筒形カートリッジなどの試料調製デバイスは、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するための開示されるシステムを含み得る。したがって、試料調製デバイスは、チャンバと、1つ以上の収集容器と、を含み得る。試料調製デバイスは、プランジャチャンバと、枢動可能なロックアームと、トリガと、シーリングプレートアセンブリと、キャップと、を更に含み得る。試料調製デバイスでは、シーリングプレートアセンブリは、デバイスの上端部にわたって固定的に位置決めされており、キャップは、シーリングプレートアセンブリにわたって固定的に位置決めされている。作動前段階では、キャップは、シーリングプレートアセンブリの上部表面から離間して固定的に位置決めされている。作動後段階では、キャップは、シーリングプレートアセンブリの上部表面に隣接して固定的に位置決めされている。試料調製デバイスはまた、試料調製のための追加のチャンバを含み得る。例えば、デバイスは、生体試料が、溶解緩衝液、及び標的分析物、例えば、試料中に存在する核酸に結合する磁性粒子と組み合わされるチャンバを含んでもよい。磁性粒子は、捕捉ビーズと称され得る。これらの磁性粒子は、標的分析物を捕捉するように官能化されてもよい。例えば、磁性粒子は、核酸に結合する表面を含んでもよい。磁性粒子は、標的分析物に結合する固定化オリゴヌクレオチド、ペプチド、及び/又はタンパク質を含んでもよい。デバイスはまた、磁性粒子から非特異的に付着した分子、細胞デブリなどを除去するためのチャンバを含んでもよい。そのようなチャンバは、溶解緩衝液と混和しない非水相を含んでもよく、又は洗浄液を含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、「遠位端部」という用語は、基準点の近くに位置付けられた近位端部と比較して、基準点から更に離れて位置付けられた端部を指す。この文脈では、ロッド形状構造の遠位端部は、ロッド形状構造の上端部がキャップに取り付けられている間、ロッド形状構造の底端部に向かって位置付けられた端部である。「水平」及び「鉛直」という用語は、絶対基準、すなわち、地表面に対する方向を示すために使用される。ただし、これらの用語は、構造が互いに絶対的に平行又は絶対的に垂直であることを要求すると解釈されるべきではない。例えば、第1の鉛直構造及び第2の鉛直構造は、必ずしも互いに平行ではない。「上」及び「底」又は「上部」若しくは「下部」という用語は、上が、絶対基準、すなわち、地球の表面に対して常に底よりも高い表面を指すために使用される。「上向き」及び「下向き」という用語も、絶対基準に対するものであり、上向きは、常に地球の重力に反し、一方で、下向きは、常に地球の重力に向かう。
【0032】
ある特定の実施形態では、試料調製デバイスは、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するための本システムを含む円筒形カートリッジであり得る。したがって、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を移送するための構成要素のシステムを備える円筒形カートリッジが提供される。円筒形カートリッジは、上端部と、底端部と、上端部と底端部との間に延在する環状壁と、を有する、円筒形構造を含んでもよい。液体、例えば、溶出緩衝液を含むチャンバは、環状壁内に位置付けられてもよい。円筒形構造は、環状壁内に位置付けられた複数のチャンバを含んでもよく、チャンバは、環状壁の外側表面と円筒形構造の内側との間に延在する。円筒形カートリッジは、本明細書に記載されるプランジャチャンバと、枢動可能なロックアームと、トリガと、シーリングプレートアセンブリと、キャップと、を含む。試料調製デバイスは、円筒形カートリッジとして例示されるが、円筒形形状は必須ではない。例えば、円筒形構造の代わりに、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送するためのシステムを備える試料調製カートリッジは、立方体又は立方体状の形状を有し得る。
【0033】
本開示のシステム及び試料調製デバイスの更なる詳細は、特定の実施形態を描示する図面を参照して提供される。本明細書に記載のカートリッジなどのシステム及び試料調製デバイスは、特定の図に限定されず、修正され得ることが理解される。
【0034】
図1は、本明細書で提供される試料調製デバイスの分解図を描示する。試料調製デバイスは、チャンバ120を備える円筒形構造110を含む円筒形カートリッジである。チャンバ120は、収集容器130及びプランジャチャンバ140に流体的に接続されている。プランジャアセンブリ141及びばね142が、プランジャチャンバ140内に配設されている。円筒形構造110の上端部は、シーリングプレートアセンブリ150によって閉じられている。シーリングプレートアセンブリ150は、キャップ160に接続されている。トリガ170もまた描示されている。カバー180が、環状壁の外部表面に添着されている。シーリングフィルム190a及び190bが、それぞれ、円筒形構造の底部表面の上部表面及び底部表面に添着されており、チャンバ120を収集容器130及びプランジャチャンバ140に流体的に接続するチャネルを形成している。収集チャンバを円筒形構造の底部表面に取り付けるためのクリップ195が示されている。キャップの下部表面から延在する係合構造162が描示されている。係合構造162は、キャップが作動前段階にあるときに、シーリングプレートアセンブリのシャフト152内に存在するくぼみと係合する3つの突起を含む。これらの突起は、シャフトのリップの下に押し込まれ、キャップが下位置にあるときには後退可能ではない。
【0035】
図2Aは、図1に描示される試料調製カートリッジの円筒形構造110の内側を示す。チャンバ120を収集容器に流体的に接続するチャネル145は、部分的に見える。プランジャチャンバ140もまた描示されている。図2Bは、湾曲した端部を有する剛性構造141a及び圧縮可能な構造141bを有するプランジャアセンブリ141を示す。図は、一定の縮尺で描かれていない。
【0036】
図2Cは、下から見たシーリングプレートアセンブリを示す。中央に位置付けられたシャフト152が見える。シャフト上に摺動可能かつ枢動可能に配設されたロックアーム151が描示されている。ロックアーム151、及びロックアーム151に取り付けられるトリガ170の拡大図が示されている。
【0037】
図2Dは、枢動可能なロックアーム151及びキャップ160を示す。上部の2つの画像は、枢動可能なロックアーム151を逆さまの配向で示している。ロックアーム151は、開口部156を有する第1の領域と、第1の領域よりも狭く、ノッチ152を含む第2の領域と、を含む。ロックアームの第2の表面が、最も上部の画像に示されている。第2の表面は、プランジャアセンブリの湾曲した端部の、第2の表面の領域154からノッチ152への移動を容易にするために、ノッチにつながる斜面153を形成している。第3の画像は、表を上にした配向のロックアームを描示する。開口部156を取り囲むロックアームのエリアは、それぞれプッシュロッド161a及び161bに接触する、上部表面上の2つの接触点155a及び155bを含むリップを提供する。キャップ160は、逆さまの配向で描示されている。プッシュロッドは、ロックアームが中央開口部156の周りで移動されるか、又はロックアームが定位置に保持されている間にシャフトが回転するときに、比較的小さな接触点を使用してロックアーム151に圧力を加えて、ロックアームの上部表面とプッシュロッドとの間の摩擦を低下させるように設計されている。
【0038】
図3は、試料調製デバイスの切り欠き図を示す。液体がそこから収集容器(図示せず)及びプランジャチャンバ140に移送されるチャンバ120が、異なる配向で描示されている。チャンバ、プランジャチャンバ、及び収集容器を流体的に接続しているチャネル145及び146が、部分的に描示されている。具体的には、チャネル145は、チャンバ120を収集容器に接続しており、一方で、チャネル146は、プランジャチャンバ140を収集容器に接続している。
【0039】
図4は、試料調製カートリッジの切り欠き図を示す。試料調製デバイスは、チャンバ120及びプランジャチャンバ140を含む。プランジャアセンブリ141及びばね142が、プランジャチャンバ140内に配設されている。
【0040】
図5A~5Dは、キャップが「作動前」段階にあり、ばねがまだ作動可能にされていない、作動可能前段階の試料調製カートリッジ100を示す。図5Aでは、キャップ160は、作動前段階にある。作動前段階では、係合構造162の突起(図1を参照)は、シャフト152の内部表面に位置付けられたくぼみ内にロックされている。図5Bは、カートリッジ100の上部からの切り欠き図である。キャップ160及びシーリングプレートアセンブリの部分は、より明確な画像を可能にするために示されていない。係合構造162は、図5Bにおいて、シーリングプレートアセンブリ内のシャフト内に部分的に見える。ロックアームの側縁部に位置付けられたノッチ152を有するロックアーム151も見える。図5Cは、ロックアーム151の領域の拡大図であり、その領域は、ロックアームの残りの平面から下に延在する。トリガ170は、ロックアーム151に取り付けられている。作動前段階では、ロックアーム及びトリガは、カートリッジ内のより高いレベルに位置決めされている。図5Dは、カートリッジの内側図を示す。プランジャアセンブリ141の剛性構造141aは、ロックアームと接触しており、圧縮可能な構造141bは、ばね142と接触している。キャップが作動前段階にあるとき、ばね142は圧縮されていない。
【0041】
図6A~6Dは、キャップが作動後段階にあり、ばねが作動可能にされた、作動可能段階の試料調製カートリッジ100を示す。キャップ160は押し下げられている。プッシュロッド161a及び161bは、ロックアーム151及びトリガ170を下向きに駆動する。ロックアーム151は、プランジャアセンブリ141を押し下げ、プランジャアセンブリ141は、次に、ばね142を圧縮する。プランジャアセンブリ141の下向きの移動は、プランジャチャンバ140から空気を追い出す。システムはこのとき、作動可能にされる。図6Aでは、チャンバ120は、収集容器130に移送される液体で充填されているものとして示されている。カバー180も見える。図6Bでは、ロックアーム151は、シャフト152を下って進行している。切り欠き図は、シャフト152内に挿入されたキャップの係合構造162と、ロックアーム151上に押し下げられたプッシュロッド161a及び161bと、を示す。図6Cは、下向きに延在するロックアーム151の一部及びロックアーム151に取り付けられたトリガ170の拡大図を示す。図5Cと比較して、ロックアーム及びトリガは、カートリッジ内で下向きに移動している。図6Dには、カートリッジの内側が示されている。キャップ160の係合構造162は、シーリングプレートアセンブリのシャフト152内に位置付けられており、係合構造の突起は、シャフト152の端部の下に位置付けられており、そこでキャップの取り外しを防止する。
【0042】
図7A~7Dは、プランジャアセンブリの剛性構造がロックアーム151のノッチを通って移動し、プランジャアセンブリによる下向きの圧力が除去された、負圧トリガ段階の試料調製カートリッジ100を示す。下向きの圧力を除去すると、ばねが上向きに発射する。プランジャアセンブリ上の圧縮可能な構造がプランジャチャンバの内側壁とのシールを形成することに起因して、上向きの動きは、下に生じた新しい容積部における空気圧の低下を生じさせる。この圧力の低下により、チャンバ120内の液体が引き出され、カートリッジの底部にある2つのPCRチューブ130間でほぼ等しく分割される。図7Aは、液体が外に移送されたチャンバ120を描示する。図7Bは、シャフト152に対するロックアーム151の位置が不変であることを示す。ロックアーム151に対するシャフトの回転に起因して、剛性構造141aは、ロックアーム151の側縁部に存在するノッチを通って移動している。図7Cは、図6Cにおけるロックアーム及びトリガの位置に対して、ロックアーム151がシャフト152を中心に回転するにつれて、ロックアーム151及びトリガ170が横方向に移動したことを示す。図7Dは、キャップ160の係合構造162がシャフト152でロックされ、プッシュロッド161a及び161bが依然としてロックアーム151を押し下げており、湾曲した端部を有する剛性構造141aがロックアームのノッチを通過しており、ばね170が圧縮状態から解放されており、プランジャアセンブリの圧縮可能な構造141bが上向きに押されており、プランジャチャンバ内に真空が生じていることを示す。
【0043】
次に、チャンバ120を収集容器130に接続するチャネルの例示的な構成が記載される。この構成は、図8Aに描示されるように、チャンバ120内の液体を複数の収集容器、例えば、2つの収集容器130間で等しく分割することを目的とする場合に、特に有用である。図8Aは、環状壁に位置付けられた3つのチャンバを備える円筒形構造110を有する試料調製カートリッジ100を示す。チャンバ118が、チャネル118aに流体的に接続されている。チャネル118aは、チャンバ118を流体、例えば、溶解緩衝液で充填するために使用され得る。チャンバ120が、チャネル120aに流体的に接続されている。チャネル120aは、チャンバ120に流体、例えば、溶出緩衝液を充填するために使用され得る。チャネル120aは、投入口123を介してチャンバ120の底部領域に接続している。この例では、チャンバ119は、周囲空気を含有し、チャネルに接続されていない。チャネル146は、チャンバ120を収集容器130と接続している。チャネル146は、チャンバ120の底部領域で排水孔125に接続されている。チャネル145は、プランジャチャンバ140を収集容器130と接続している。図8Bでは、プランジャチャンバ140は、チャネル145及びチャネル146とともに見える。両方のチャネルはT接合部を含む。負圧が発生すると、空気がシステムから変位され、これにより、液体がチャンバ120から引き出され、収集容器130内に分散される。チャネル146内の液体経路、及び空気が変位されるチャネル145内の経路は、液体が収集容器内に分配されるときに液体に浸漬するのを防止するために、収集容器内の最終的な液体充填高さよりも十分に高い位置に存在する。これにより、チャネル145上の空気変位経路が湿潤され、収集容器の充填を時期尚早に停止するのを防止する。図8Bに描示される追加の特徴部は、カートリッジ内に設置された緩衝液パックの底端部を保持することができる、緩衝液パック支持特徴部507及び508を含む。チャネル118aは、緩衝液パック支持特徴部507の底部からチャンバ118まで延在する。チャネル120aは、緩衝液パック支持特徴部508の底部からチャンバ120まで延在する。
【0044】
図9A~9Cは、空気変位チャネル145及び液体経路チャネル146の構成の追加の詳細を提供する。図9A~9Bでは、上部のパネルは、カートリッジの上部から見たチャンバ及びチャネルの図を示す。下部のパネルは、チャンバ及びチャネルの側面図を示す。キャップがシーリングプレートアセンブリの上部表面から離間して配置され、ばねがまだ作動可能にされていない作動前段階(1-作動前段階を参照)では、システムは、周囲空気圧の空気で満杯である。プランジャチャンバ140、チャネル145及び146、並びに収集容器130は、大気で占有されている。2-起動後段階では、キャップが押されると、流体(例えば、溶出緩衝液)が、チャンバ120内に充填される。キャップを押し下げると、プランジャアセンブリも圧縮され、ばねを作動可能にする。圧縮可能な構造141bの下向きの移動は、プランジャチャンバから外に空気を変位させる。変位された空気は、大気に通気される。図5~7で説明されたように、キャップが起動後段階にあり、ばねが作動可能にされたとき、トリガ170は、下向きに移動する。3a及び3bの収集容器の充填であるこのプロセスは、迅速に起こり、説明のために2つのセクションに分割されている。トリガ170が横方向に移動すると、ばねが発射し、圧縮可能な構造141bを上向きに押し、システム内に負圧を発生させる。負圧は、チャネル145及び収集チャンバ130内に吸引力を生じ、これによって次に、チャンバ120からチャネル146内に流体を引き込む。負圧が流体を引き込むと、流体は、2つの収集容器に入る。収集容器内の残りの空気圧が等しいため、流体は、収集容器間で均等に分割される。図9A~9Cでは、チャンバ120が空であるとき、すなわち、液体を収容していないとき、チャンバ120は描示されていない。空のチャンバ及びチャネルは、内部の空間が空気又は真空によって占有されていることを示す。点描されたチャンバ及びチャネルは、液体の存在を示す。
【0045】
図13は、本明細書に提供される試料調製デバイス300の分解図を描示する。試料調製デバイスは、チャンバ320を備える円筒形構造310を含む円筒形カートリッジである。チャンバ320は、収集容器330及びプランジャチャンバ340(この図では見えない)に流体的に接続されている。プランジャアセンブリ341が、プランジャチャンバ340内に位置決めされている。シーリングプレートアセンブリ350が、円筒形構造310の上端部に添着されている。シーリングプレートアセンブリ350は、キャップ360によって覆われてる。トリガアセンブリ355もまた描示されている。可撓性のカバー380が、円筒形構造310の環状壁の外部表面に添着されている。シーリングフィルム390a及び390bが、それぞれ、円筒形構造の底部領域の上部表面及び底部表面に添着されており、チャンバ320を収集容器330及びプランジャチャンバ340に流体的に接続するチャネルを形成している。収集チャンバを円筒形構造の底部表面に取り付けるためのクリップ395が示されている。
【0046】
図14は、プランジャアセンブリ341、ばね342、及びトリガアセンブリ355のズームイン図を示す。プランジャアセンブリ341の剛性構造341aは、下向きに移動すると、剛性構造の外部領域がばねと係合するように、プランジャチャンバの外径よりも大きく、ばね342の直径と実質的に等しい直径を有する外部領域を含む。剛性構造341aの内部領域は、プランジャチャンバの内側に嵌まるようにサイズ決めされている。剛性構造の内部領域は、圧縮可能な構造341bに固定的に取り付けられている。圧縮可能な構造341bは、プランジャチャンバ(この図には示されていない)の内側内に位置決めされている。プランジャアセンブリ340の剛性構造341aの外側領域は、枢動可能な係合アーム351内の切り欠き部351aに嵌まるようにサイズ決めされた係合構造341cを含む。枢動可能な係合アーム351は、移動可能なトリガ370に取り付けられている。トリガ370は、金属ボール370aに磁力を加えることによってプランジャチャンバに向かう方向に移動可能である。トリガ370の移動は、係合アーム351を強制的に時計回りに枢動させる。係合アーム351の時計回りの移動は、切り欠き部351aから係合構造341cを解放することを可能にする。
【0047】
図15は、プランジャチャンバ340、ばね342、剛性構造341a、圧縮可能な構造341bの切り欠き図を示す。
【0048】
図16は、プランジャアセンブリ341及びばね342を示す。剛性構造341は、係合構造341cを含む。
【0049】
図17A~17Dは、キャップが「作動前」又は開段階にあり、プランジャアセンブリがまだ作動可能にされていない、作動可能前段階の試料調製カートリッジ300を示す。キャップ360は、円筒形構造にわたって位置決めされている。中央に位置付けられたシャフトが、キャップの底部領域から延在し、シーリングプレート内に中央に位置付けられた貫通開口部と位置合わせされている。キャップの底部領域から延在する3つのプッシュロッド361が、プランジャアセンブリの上に配置され、プランジャアセンブリと垂直に位置合わせするように構成されている。プランジャアセンブリの切り欠き図は、内側に位置決めされた斜面341dを示しており、プッシュロッド361によって剛性構造341aに下向きの圧力を加えると、剛性構造が斜面341dにわたって下に摺動する。キャップ開段階では、圧縮可能な構造341bは、プランジャチャンバ340の底部領域に位置決めされている。プランジャアセンブリ341の剛性構造341aは、プランジャチャンバの内側に位置決めされた内部領域と、プランジャチャンバの外側の周りに位置決めされた外部領域と、を含む。係合構造341cは、プランジャチャンバの外部に位置決めされている。剛性構造341aの内部領域は、斜面341dを含み、斜面341dに対して、剛性構造は、剛性構造に下向きの圧力を加えると下向きに、及び下向きの圧力を解放すると上向きに移動することができる。トリガ370は、この図では省略されている。
【0050】
図18A~18Dは、キャップ360が作動後段階にあり、プランジャアセンブリが作動可能にされた、作動可能段階の試料調製カートリッジ300を示す。この段階では、プッシュロッド361は、剛性構造341と係合し、係合構造341cを枢動可能なロックアーム351の切り欠き部351a内に強制的に下げており、ばね342が圧縮されている。トリガ370は、この図では省略されている。
【0051】
図19A~19Dは、プランジャアセンブリの剛性構造が移動して上に戻った、負圧トリガ段階の試料調製カートリッジ300を示す。剛性構造の上向きの移動は、斜面341dによって促進され、圧縮可能な構造341bの上向きの移動につながり、それによってプランジャチャンバ340内に負圧を生成する。上向きの移動は、枢動可能なロックアーム351内の切り欠き部からの構造341cの解放によって引き起こされる。トリガ370は、この図では省略されている。
【0052】
図20Aは、カートリッジの円筒形構造に固定的に取り付けられるシーリングプレート350の上部表面を示す。シーリングプレートは、キャップ360(図20B)の下部表面から延在するプッシュロッド361の通過を可能にするように構成された、3つの貫通孔を有する位置合わせ構造390を含む。
【0053】
図21A及び21Bは、それぞれ、キャップ開状態及び閉状態の試料調製カートリッジを示す。図21Cは、試料調製カートリッジ300を1つ以上の磁石(図示せず)に密着させて保持するように構成された、磁石アクセサリを示す。磁石アクセサリは、試料調製カートリッジを回転させるためのモータを備える機器に嵌まるようにサイズ決めされ得る。
【0054】
試料調製カートリッジは、試料の調製のための、例えば、試料から核酸を単離するための多数のチャンバを有し得るが、図に描示される試料調製カートリッジは、少なくとも3つのチャンバを含む。チャンバは、カートリッジの内側に、又は同じ外側表面にいくつか存在してもよい。図に描示されるカートリッジにおいて、環状壁は、複数のチャンバの各々の開口側面を形成するキャビティと、複数のチャンバ間の流体連通を提供する1つ以上のチャネルと、を備える。チャネルは、環状壁内の凹部によって形成されており、開口側面を備える。1つ以上のカバーが、環状壁の外側表面にわたって添着されており、チャンバの開口側面及び凹部の開口側面を覆い、かつ流体的にシールする。プランジャチャンバは、カートリッジの内側に存在し得る。プランジャチャンバは、液体が外に移送されるチャンバに隣接して位置付けられ得る。試料調製カートリッジの追加の構成要素は、以下でより詳細に記載される。
【0055】
円筒形構造
円筒形とは、円筒形構造が、実質的に直円柱であり得ることを意味する。円筒形構造は、円筒形構造の底端部の中心と円筒形構造の上端部の中心とを接続する線によって形成された軸の周りで回転可能であり得る。例えば、円筒形構造は、円筒形構造を、円筒形構造の上部を見下ろして上から見たときに、時計回りに回転してもよく、又は反時計回りに回転してもよい。代替的に、円筒形構造は、時計回り及び反時計回りの両方で回転してもよい。いくつかの事例では、円筒形構造の可動域は、一旋回の4分の3、又は一旋回の半分、又は一旋回の3分の1など、シリンダの軸の周りの全体的な旋回以下を包含し得る。ある特定の実施形態では、円筒形構造は、時計回り方向への完全な旋回、及び反時計回り方向への完全な旋回を回転し得る。ある特定の実施形態では、円筒形構造は、時計回り方向への完全な旋回を回転し、反時計回り方向への完全な旋回未満を回転し、又は逆もまた同様である。円筒形構造の回転は、1つ以上のチャンバの内容物を混合するため、又はチャンバに隣接するシリンダハウジング内に存在する磁石を位置決めして、チャンバ内に存在する磁性粒子の凝集を引き起こし、及び/若しくは凝集された磁性ビーズを、1つのチャンバから別のチャンバに移送する、ロックアームの回転をトリガしてプランジャチャンバ内に負圧を生成するためなどに使用され得る。
【0056】
上記で要約されたように、円筒形構造は、環状壁上に複数の側面が開口したチャンバを形成する、環状壁内の複数のキャビティを備える。例えば、複数のキャビティは、環状壁の連続した表面を変形させる、環状壁内のくぼみであってもよい。側面が開口したとは、環状壁が、チャンバのそのような側面を覆わないことを意味する。ある特定の事例では、変形された環状壁は、チャンバの閉じた側面を形成し得、キャビティを形成するように変形された環状壁の側面に対応するエリアが、チャンバの開口側面を形成し得る。
【0057】
ある特定の実施形態によれば、複数のチャンバの開口側面は、環状壁の外側に位置付けられている。例えば、環状壁は、外部から内方に変形されて、内方に変形されたキャビティを環状壁に形成し得る。そのような場合、チャンバの開口側面は、キャビティを形成するために内方に変形された環状壁の側面に対応するエリアであってもよい。そのような事例では、内方に変形された環状壁は、チャンバの閉じた側面を形成し得る。チャンバの容積は、環状壁内のくぼみの容積に対応する測定値を表し得る。チャンバは、任意の都合の良い容積であってもよく、いくつかの事例では、1cm~3cm又は2cm~5cmなど、1cm~約5cmまで変化してもよい。他の事例では、チャンバは、任意の都合の良い体積の流体を収容してもよく、いくつかの事例では、1μL~100μL、又は1,000μL~3,000μL、又は2,000μL~5,000μLなど、1μL~約5,000μLまで変化してもよい。複数のチャンバの各チャンバは、同じ容積を有してもよく、又は異なる容積を有してもよい。環状壁の外部表面からチャンバの内部側面までの距離として測定されるチャンバの深さは、任意の都合の良いサイズであってもよく、いくつかの事例では、1cm又は5cmなどの、0.1cm以上であり得る。複数のチャンバの各チャンバは、同じ深さを有してもよく、又は異なる深さを有してもよい。
【0058】
ある特定の実施形態によれば、複数のチャンバは、環状壁上で互いに近接して位置決めされている。例えば、第1のチャンバの横方向の境界と第2のチャンバの最も近い横方向の境界との間の距離は、0.5cm~1cmなどの、約0.1cm以上であってもよく、例えば、0.5cm又は0.75cm又は5cmである。互いに隣り合って位置決めされたチャンバの対の側面間の距離は、複数のチャンバについて同じであってもよく、又は異なっていてもよい。プランジャチャンバは、第3のチャンバに隣接して位置付けられてもよく、第3のチャンバは、試料から単離された分析物が存在するチャンバであってもよい。このチャンバは、溶出チャンバとも称される。プランジャチャンバは、環状壁に隣接して、環状壁上に、又は円筒形構造内のより中央に位置付けられ得る。ある特定の例では、プランジャチャンバに最も近い第3のチャンバの壁と、第3のチャンバに最も近いプランジャチャンバの壁との間の距離は、5cm未満、例えば、約0.1cm~4cm、0.5cm~2cmなどであってもよい。
【0059】
上記で要約されたように、試料調製カートリッジは、複数のチャンバ間に流体連通を提供する1つ以上のチャネルを含む。ある特定の態様では、チャネルは、標的分析物を単離するために使用される1つ以上の常磁性粒子(PMP)がそこを通って輸送され得るほど十分に広い。ある特定の実施形態では、チャンバ間のチャネルのうちの1つ以上は、環状壁内の凹部によって形成されている。環状壁内の凹部とは、チャンバ間に流体連通を提供することが可能な、環状壁内のくぼみ又はキャビティを意味する。いくつかの場合に、凹部は、環状壁の外側表面に開口側面を有して形成されている第1のチャンバ及び第2のチャンバが、そのような第1のチャンバと第2のチャンバとの間の環状壁の外部表面内の凹部によって相互接続されるように、環状壁の外部表面内に形成されている。環状壁内の凹部は、任意の都合の良い長さ、幅、及び深さであってもよい。
【0060】
ある特定の実施形態では、凹部は、複数のチャンバの側面に位置決めされている。複数のチャンバの側面とは、円筒形構造の底端部の中心と上端部の中心との間に形成された、円筒形構造の軸が、鉛直に配向されるとき、チャンバの上部側又は底部側ではなく、左側又は右側を意味する。複数のチャンバの側面に凹部を位置決めするとは、凹部が、第1のチャンバの右側を第2のチャンバの左側と相互接続することができ、それによって、そのような第1及び第2のチャンバが、凹部を介して互いに流体連通していることを意味する。チャンバ間の凹部は、第1のチャンバ上の点と第2のチャンバ上の点との間の実質的に直線であってもよい。第1のチャンバと第2のチャンバとの間の凹部は、凹部の全長にわたって環状壁において実質的に同じ幅及び深さを有してもよく、又は変化してもよい。異なる対のチャンバ間の凹部は、異なる寸法又は同じ寸法を有し得る。凹部は、PMPがそこを通って並進され得るように、都合の良いように成形され得る。
【0061】
ある特定の実施形態では、凹部は、円筒形構造の底端部の上の実質的に一定の高さで、1つ以上のチャンバの側面に位置決めされている。これらの実施形態では、チャンバの対間の凹部は、実質的に直線状であり得る。これらの実施形態では、凹部及びチャンバは、直線で、左端のチャンバの左端の位置から開始して、複数のチャンバの各々を通って、右端のチャンバの右端の位置まで経路が存在するように、成形されてもよい。1つ以上のチャンバの側面上の凹部は、円筒形構造の底端部の上の任意の都合の良い高さに位置決めされてもよい。これらの実施形態のうちのある特定の実施形態では、凹部が位置決めされる円筒形構造の底端部の上の高さは、チャンバのうちの1つ以上の縦の中点に対応する。ある特定の実施形態では、キャップを閉じることによってロックアームが下向きに押されたときに、ロックアームに取り付けられたトリガは、凹部のレベルとほぼ同じレベルにあり得る。そのような実施形態では、凹部を通して1つのチャンバから別のチャンバにPMPを移送するために使用される同じ磁石を使用して、トリガを係合させ、円筒形カートリッジが回転している間にトリガが移動するのを防止することもできる。他の実施形態では、トリガを係合させるために別個の磁石が使用される。
【0062】
ある特定の実施形態では、複数のチャンバのうちの1つ以上の形状は、概して矩形である。概して矩形のチャンバとは、環状壁へのくぼみの2次元形状が、その幅よりも長さがより長いことを意味する。各チャンバの高さ及び幅は、任意の都合の良い高さ及び幅であってもよい。各矩形のチャンバの高さ及び幅は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0063】
ある特定の実施形態では、1つ以上のチャネルによって別のチャンバに接続されたチャンバの形状は、チャネルに近接したチャンバの横方向部分に関して、チャンバの各横方向位置でのチャンバの高さが、そのような位置がチャネルに近いほど減少するようなものである。いくつかの場合に、各横方向位置におけるそのようなチャンバの高さは、テーパ状領域を形成するように直線的に減少する。凹部へのそのようなテーパ状の入口は、チャンバからチャネルへの凝集されたPMPの輸送を容易にし得る。
【0064】
ある特定の実施形態では、チャンバのうちの1つ以上は、排水孔を備える。排水孔とは、流体が通ってチャンバから出ることができる孔を意味する。ある特定の実施形態では、排水孔は、重力の影響下で相当量の液体が孔を通って排出されることができないようにサイズ決めされている。
【0065】
チャンバのうちの1つ以上は、チャンバの通気、チャンバの流体での充填、及び/又はチャンバからの流体の排出のために構成された開口部を含み得る。
【0066】
ある特定の実施形態では、円筒形構造の内側は、1つ以上のウェルを備える。ウェルとは、円筒形構造の内部内の1つ以上のエンクロージャを意味する。エンクロージャは、任意の都合の良いサイズ又は形状であってもよい。例えば、エンクロージャは、閉じた底端部、環状壁、及び開口した上端部を有する、実質的に円筒形であってもよい。これらの実施形態では、円筒形構造は、そのようなウェルと複数のチャンバのうちの1つ以上との間の流体連通を提供する、円筒形構造内のチャネルを更に備え得る。いくつかの事例では、各ウェルは、1つ以上のチャネルを介して異なるチャンバと相互接続されている。
【0067】
ある特定の実施形態では、複数のチャンバは、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバを形成している。ある特定の実施形態では、第1のチャンバは、第2のチャンバに隣接しており、第2のチャンバは、第1及び第3のチャンバに隣接しており、第3のチャンバは、第2のチャンバに隣接している。ある特定の実施形態では、円筒形構造は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流体連通を提供する、環状壁内の第1の凹部と、第2のチャンバと第3のチャンバとの間の流体連通を提供する、環状壁内の第2の凹部と、を更に含む。ある特定の実施形態では、第1のチャンバは、溶解チャンバであり、第2のチャンバは、不混和相チャンバ又は洗浄チャンバであり、第3のチャンバは、溶出チャンバである。溶解チャンバとは、試料調製カートリッジの使用中に、溶解緩衝液である流体などの緩衝液流体を収容するチャンバを意味する。不混和相チャンバとは、試料調製カートリッジの使用中に、水相と不混和性である流体などの不混和相を収容するチャンバを意味する。いくつかの場合に、不混和相は、油である。他の場合には、不混和相は、空気である。洗浄チャンバとは、カートリッジの使用中に、チャンバが洗浄液を収容することを意味する。溶出チャンバとは、試料調製デバイスの使用中に、溶出緩衝液である流体などの溶出緩衝液流体を収容するチャンバを意味する。プランジャチャンバは、溶出チャンバと隣接して位置付けられ、溶出チャンバと流体連通していてもよい。
【0068】
第1のチャンバは、チャンバの上部に開口部を含み得る。この開口部は、投入口として構成され得る。投入口は、溶解緩衝液、試料、及び/又はそれらの混合物を導入するように構成され得る。したがって、投入口は、溶解緩衝液、試料、及び/又はそれらの混合物のピペッティング、注入、若しくは圧送に適合した直径を有し得る。いくつかの場合に、第2のチャンバも、チャンバの上部に開口部を含み得る。この開口部は、不混和相、例えば、油を第2のチャンバ内に導入するための投入口として構成され得る。いくつかの場合に、第3のチャンバも、チャンバの上部に開口部を含み得る。この開口部は、溶出緩衝液を第3のチャンバ内に導入するための投入口として構成され得る。
【0069】
ある特定の例では、第1のチャンバは、第1のチャンバの底部領域上又は底部領域の下に位置決めされたコンパートメントを含み得る。コンパートメントは、コンパートメントを第1のチャンバの内側に流体的に接続する開口部を含み得る。コンパートメントは、常磁性粒子(PMP)を含んでもよい。PMPは、凍結乾燥され得る。ある特定の実施形態では、第1のチャンバは、チャンバの底部に開口部を含み、開口部は、溶解緩衝液のための投入口として構成されており、第1のチャンバは、第1のチャンバの上部に、試料投入口として構成された開口部を含む。ある特定の実施形態では、コンパートメントは、コンパートメントをチャネルに流体的に接続する投入口と、コンパートメントを第1のチャンバの内側に流体的に接続する出口と、を含む。
【0070】
ある特定の例では、第2のチャンバは、第1及び第3のチャンバとの相互接続部以外の開口部を含まなくてもよい。第2のチャンバは、空気を収容し得る。第1及び第3のチャンバが液体で充填されるとき、第2のチャンバ内の空気は、第2のチャンバ内に通気口がないことに起因して、圧縮される。圧縮空気は、第1のチャンバから、圧縮空気を含む第2のチャンバを介して、第3のチャンバに移送されるPMPの「洗浄」環境として機能する。
【0071】
ある特定の例では、第3のチャンバは、チャンバの底部領域に開口部を含む。開口部は、第3のチャンバから排出するように構成されている。第3のチャンバは、チャンバの底部領域に開口部を含んでもよく、開口部は、第3のチャンバから排出するための開口部とは異なり、第3のチャンバを充填するように構成されている。ある特定の場合に、排水孔は、排水孔が大気圧下では液体が通過することを可能にせず、液体の通過を可能にするためにはより高い圧力を必要とするように、充填孔よりも小さい直径を有し得る。第3のチャンバの底部の開口部は、1つ以上の収集容器に流体的に接続されている。収集容器は、上記のように、2つの別個のチューブ、例えば、PCRに好適な薄い壁のポリプロピレンチューブであってもよい。第3のチャンバの底部の開口部は、プランジャチャンバ内に生成された真空の影響下で第3のチャンバから排出された実質的に等量の液体で2つの収集容器を充填するために、開口部から分割された2つのチャネルに流体的に接続され得る。
【0072】
一実施形態による円筒形カートリッジ100を図1に示す。この例では、円筒形構造110は、環状壁上に3つの側面が開口したチャンバ118、119及び120を形成する、環状壁内の3つのキャビティと、側面が開口した相互接続部を形成する2つの凹部と、を含む。図1では、チャンバのうちの2つのみが見える。第3のチャンバ120は、収集容器130及びプランジャチャンバ140に流体的に接続されている。見られるように、チャンバ118、119及び120の開口側面は、環状壁の外側に位置付けられており、チャンバ118、119及び120は、互いに隣接して位置決めされている。相互接続部220aが、チャンバ118及び119間の流体連通を提供し、別の相互接続部220bが、チャンバ119及び120間の流体連通を提供する。この例では、相互接続部220a及び220bは、環状壁内の凹部であるチャネルであり、相互接続部220aは、チャンバ118及び119の側面に位置決めされており、相互接続部220bは、チャンバ119及び120の側面に位置決めされている。図に示されるように、チャンバ間に相互接続部220a及び220bを形成する凹部は、円筒形構造110の底端部の上の実質的に一定の高さにある。
【0073】
カバー
上記で要約されたように、試料調製カートリッジは、複数のチャンバの開口側面及びチャネルを形成するための相互接続部を覆う1つ以上のカバーを含む。ある特定の態様では、カバーは、円筒形構造の外部表面と嵌合するように湾曲している。湾曲しているとは、カバーが、円筒形構造に取り付けられたときに実質的に平坦ではないことを意味する。カバーがチャンバを覆うと、チャンバ内に配設された流体が、チャンバ内に収容される。円筒形デバイス内のチャンバの壁を形成するためのカバーの使用は、円筒形構造の環状壁よりも大幅に薄い壁を可能にする。円筒形デバイス内のチャンバの壁を形成するためのカバーの使用は、円筒形構造の材料とは異なる材料から作られた壁を可能にする。ある特定の実施形態では、単一のカバーが、複数のチャンバの全てを覆ってもよく、又は複数のチャンバのサブセット及びチャンバ間の相互接続部の全て若しくはサブセットを覆ってもよい。カバーは、任意の都合の良いサイズ及び形状であってもよく、カバーのサイズ及び形状は変更されてもよい。
【0074】
カバーは、湾曲し、環状壁の外側表面に取り付けることができる任意の好適な材料から作られ得る。例えば、カバーは、プラスチック、金属、紙、ガラスなどから作られ得る。カバーに金属材料を使用する場合、金属は非磁性であり得、すなわち、かなりの量の鉄を含まない。紙カバーは、非湿潤性コーティング、例えば、ワックスコーティングを含み得る。カバーは、実質的に不透明又は実質的に透明であり得る。カバーは、例えば接着剤、環状壁若しくはカバー又は両方の外側を局所的に加熱すること、カバーを環状壁に作成された溝にスナップすることによって、カバーを環状壁内にねじ留めすることなどを介して、任意の好適な手段によって環状壁に取り付けられてもよい。カバーは、チャンバ内で外側磁石の磁力を著しく減少させないように十分に薄くてもよい。例えば、カバーは、チャンバ内に存在する常磁性粒子(PMP)が、チャンバに隣接して位置付けられている外側磁石に応答して凝集されることを可能にし、かつ凝集されたPMPが、円筒形構造及び外側磁石の相対的な動きに応答して、隣接するチャンバを接続するチャネルを横切ることを可能にするほど十分に薄くてもよい。カバーは、1cm未満、0.5cm未満、0.1cm未満、例えば、1mm~5mmの厚さを有し得る。ある特定の実施形態では、カバーは、フィルム、例えば、接着フィルムであってもよい。
【0075】
ある特定の実施形態によれば、カバーの内側表面は、それに接したPMPの移動を容易にする。PMPの移動を容易にするとは、PMPがカバーの内側表面と接触したままで、カバー上の第1の位置からカバー上の第2の位置により確実に並進され得るように、カバーの内側表面が構成され得ることを意味する。例えば、カバーの内側表面は、PMPがカバーに沿って移動するときに、PMPとカバーの内側表面との間の摩擦を低減するように研磨されてもよい。カバー上の第1の位置からカバー上の第2の位置に並進されるとは、ある特定の場合には、PMPがカバーの内側に沿って移動されることを意味するか、又は、ある特定の場合には、カートリッジが第1の位置から第2の位置に移動される間に、PMPが固定位置に保持されることを意味するか、又は、ある特定の場合には、両方のPMPが移動され、カートリッジが移動されることを意味する。
【0076】
常磁性粒子とは、目的の分析物をその上に付着させることが可能であり、例えば、核酸をその上に付着させることが可能な磁性粒子を意味する。PMPは、磁気応答性である。磁気応答性粒子は、磁気応答性材料を含むか、又は磁気応答性材料から構成される。磁気応答性材料の例としては、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が挙げられる。好適な常磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、及びコバルト、並びにFe、BaFe1219、CoO、NiO、Mn、Cr、及びCoMnPなどの金属酸化物が挙げられる。PMPは、非磁性ポリマーに囲まれた常磁性材料、例えば、ポリマー材料で覆われた磁性材料、又はポリマーマトリックスに埋め込まれた磁性材料から構成され得る。そのような粒子は、磁性ビーズ又は常磁性ビーズと称され得る。
【0077】
図1では、カートリッジに追加の機能を提供するためのハウジングとして機能し得るくぼみ245も見える。例えば、くぼみは、バーコード又はQRコードを収納し得る。コードは、カートリッジ上に直接印刷されてもよく、又はカートリッジ上に添着されている基材上に印刷されてもよい。コードを使用して、カートリッジに一意の識別子を割り当てることができる。くぼみの深さ及び位置は、コードリーダの場所に一致されて、コードリーダとの適切な焦点及び位置合わせを確実にし得る。
【0078】
図1は、ウェルがカートリッジに含まれ、及び/又はチャンバ120を収集容器130に接続するための実施形態において、チャンバを個々のウェルに接続しているチャネルの上部壁及び底部壁を提供するために協働する追加のシーリングフィルム190a及び190bを示す。例えば、チャネルは、底部壁内の開口部であってもよく、開口部は、チャンバ120の底部から収集容器の投入口まで延在する。開口部の側壁は、底部壁によって形成されており、上部壁及び底部壁は、それぞれシーリングフィルム190a及び190bによって提供される。
【0079】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、上部領域に開口部を含む複数のチャンバを含んでもよい。第1のチャンバの上部領域の開口部を使用して、溶解緩衝液、PMP、及び試料を第1のチャンバ内に導入することができる。第2のチャンバは、不混和相として空気を含んでもよく、開口部(第1及び第3のチャンバへの相互接続部以外)を含まなくてもよい。第2のチャンバは、不混和相として油を含んでもよく、第2のチャンバ内に油を導入するための、上部領域の開口部を含んでもよい。第3のチャンバは、シーリングプレートアセンブリによって閉じられ得る、第3のチャンバに溶出緩衝液を導入するための開口部を含んでもよい。
【0080】
緩衝液パック
ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジは、緩衝液パックを含み得る。緩衝液パックは、1つ以上の流体パックを含み得る。各流体パックは、流体を収容し得る。流体パックは、任意の都合の良い量の任意の都合の良い流体を収容し得る。いくつかの実施形態では、流体パックは、溶解緩衝液パック、不混和相パック、及び溶出緩衝液パックの各々を含み得る。いくつかの実施形態では、流体パックは、溶解緩衝液パック及び溶出緩衝液パックを含み得る。ある特定の実施形態では、不混和相は、油を含み得る。ある特定の実施形態では、不混和相は、空気を含み得る。いくつかの事例では、流体パックのうちの1つ以上は、PMP又は捕捉ビーズを更に含み得る。捕捉ビーズは、磁性であっても非磁性であってもよい。捕捉ビーズは、標的分析物に結合するように官能化されてもよい。捕捉ビーズは、標的分析物に結合するための部分が、その表面上に固定化されていてもよい。その部分は、オリゴヌクレオチド、ペプチド、又はタンパク質(例えば、抗体)であり得る。流体パックは、例えば、PMPの体積又は重量に基づいて測定される、任意の都合の良い量のPMPを収容し得る。例えば、PMPは、流体パックに含まれる場合、流体と混合されてもよい。いくつかの事例では、PMPは、溶解緩衝液を含む流体パックに含まれてもよい。
【0081】
ある特定の実施形態では、緩衝液パックは、円筒形構造のウェル内に嵌まるように構成されている。例えば、ウェルが実質的に中空のシリンダとして成形されている場合、緩衝液パックは、円筒形構造のウェル内に嵌まるシリンダとして成形されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、溶解緩衝液は、組織試料、細胞、ウイルス、又は体液試料などの広範囲の試料から核酸を放出するように配合することができる。溶解緩衝液はまた、ウイルス、細菌、真菌、及び原生動物病原体などの全てのタイプの病原体を溶解するように設計され得る。そのような溶解緩衝液は、カオトロピック剤、特に、グアニジン塩酸塩を含有することができる。
【0083】
シーリングプレートアセンブリ
シーリングプレートアセンブリは、円筒形構造の上端部に位置決めされたシーリングプレートを含む。シーリングプレートは、実質的に円形の形状であってもよく、円筒形構造の上部領域内に、又は上部領域上にスナップして、上端部を閉じることができる。シーリングプレートは、任意の好適な長さの中央に位置付けられたシャフトを含んでもよい。シャフトは、中空シャフトであってもよい。ある特定の実施形態では、シャフトは、シーリングプレートの上に延在してもよい。ある特定の実施形態では、シャフトは、シーリングプレートの下に延在してもよい。シーリングプレートの下のシャフトの長さは、円筒形構造の高さ以下である長さであってもよい。
【0084】
シーリングプレートアセンブリ150の例を図2Cに示す。一番上の図は、シーリングプレートアセンブリの下側を示している。シーリングプレートの周囲の周りに均一に配置されたガイド特徴部157a~157cが描示されている。シーリングプレートアセンブリのシャフト152は、シーリングプレートの下部表面に直接隣接するシャフトの領域において、より高い有効外径を有する。枢動可能なロックアーム151は、最初は、シャフトのこの領域の周りに比較的密着して配設されている。より高い有効外径は、領域上に余分なシャフト材料を追加することによって達成され得る。
【0085】
ある特定の実施形態では、シーリングプレートは、枢動可能なロックアームの上のシーリングプレートの領域内の開口部を含み得る。開口部は、ロックアームの直径方向に反対側の2つの領域を露出させるのに十分な大きさであり得る。他の実施形態では、シーリングプレートは、枢動可能なロックアームの上のシーリングプレートの2つの領域内の2つの開口部を含み得る。同様に図2Cに描示されているが、いくつかの実施形態では必要とされていないのは、それぞれ、溶解緩衝液及び溶出緩衝液をカートリッジのチャンバ118及びチャンバ119に供給するために使用され得る緩衝液パック158である。
【0086】
図10A~10Cは、シーリングプレートアセンブリの追加の図面を示す。図10Aは、シーリングプレート159、枢動可能なロックアーム151、及び緩衝液パック290a及び290bを示す、シーリングプレートアセンブリ150の分解図である。円筒形構造上のシーリングプレートアセンブリを固定するためのスナップイン特徴部157a~157cが描示されている。中空シャフト152は、プレートのおおよその中心に位置付けられており、円筒形構造の底部に向かって下向きに、及びキャップに向かって上向きに延在する。緩衝液パックを保持するための指状構造291a及び291bも見える。シーリングプレートアセンブリの上部からの図を図10Bに示す。中空シャフトは、シーリングプレートの平面の上に延在する。シーリングプレートは、キャップのプッシュロッドがロックアームに接触する、ロックアーム151の上部表面上のほぼ直径方向に反対側の領域と位置合わせされた2つの開口部292a及び292bを含む。シーリングプレートアセンブリの逆さまの図を図10Cに示す。
【0087】
キャップ
上記で要約されたように、ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジは、円筒形構造の上部に摺動可能に位置決めされたキャップを更に含む。摺動可能に位置決めされるとは、キャップが、円筒形構造に向かって摺動することができるように、円筒形構造の上部に位置決めすることができることを意味する。
【0088】
図11A~11Cは、異なる角度からのキャップ160を単独で示す。図11Aは、シーリングプレートアセンブリが円筒形構造に取り付けられているシーリングプレートアセンブリ内に存在するシャフトの内側壁に位置付けられた凹みと突起164を係合させることによって、キャップ160が円筒形構造に取り付けられる配向を示す。突起164は、圧力の不在下では外に拡張することができ、シーリングプレートアセンブリのシャフト内で摺動するときに一緒に圧迫されることができ、シャフトを通って摺動すると、突起がシャフトの遠位端部の下に位置付けられるように(図6D及び7Dを参照)、再び外に拡張することができる、指状延長部166上の係合構造162の遠位端部に位置付けられている。キャップは、中央ドームを有して描示されているが、他の構成も本発明の範囲内である。例えば、ある特定の実施形態では、キャップは、実質的に平坦であってもよく、シーリングプレートのシャフト内及び円筒形構造内に適切に嵌まるために、係合構造の長さはそれに応じて減少する。キャップの下部表面から延在するプッシュロッド161a及び161bは、図11B及び11Cにおいて見える。キャップに含まれてもよいが、チャンバから収集容器内に液体を移送するためのシステムに必須ではない追加の特徴部は、プランジャ169を含む。シーリングプレートアセンブリが、緩衝液パック、例えば、溶解緩衝液パック及び溶出緩衝液パックを含む実施形態では、プランジャを使用して、緩衝液パックウェルから緩衝液を放出させることができる。例えば、キャップを押し下げてシーリングプレートアセンブリと密接に接触させると、緩衝液を放出させると同時に、プランジャチャンバ内の負圧をトリガするためのシステムを作動可能にすることができる。
【0089】
標的分析物を含む溶出緩衝液を、標的分析物の分析のために1つ以上の収集容器内に輸送するためのシステムを含むことができる例示的な試料調製デバイスは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年12月23日に出願されたPCT出願第PCT/US2020/066926号においてより詳細に記載されている。緩衝液パック及びキャップ、並びに試料調製デバイスの1つ以上のチャンバへの緩衝液の送達のための緩衝液パックの作動のための関連するシステムの具体的な例は、本出願と共同出願された、代理人整理番号ADDV-082PRVである、「Magnetic Particle Separation Device Buffer Pack and Cap Design」と題する米国仮特許出願において提供されており、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
システム及び方法
また、本明細書で提供されるのは、チャンバから1つ又は2つ以上の収集チャンバ内に液体を半自動又は自動的に移送することができるシステムである。例えば、チャンバは、溶出緩衝液及び標的分析物、例えば、生体試料から単離された核酸を含む溶出チャンバであってもよい。
【0091】
ある特定の実施形態では、システムは、カートリッジのチャンバからカートリッジの1つ又は2つ以上の収集チャンバ内に液体を移送するための構成要素を備えるカートリッジなどの、試料調製カートリッジを含み得る。システムは、カートリッジが配置される機器を更に含み得る。例えば、機器は、図10Aに示される機器であってもよい。機器は、取り外し可能な、又は恒久的に取り付けられた磁石を更に含んでもよい。磁石は、トリガが移動するのを効果的に防止することができるよう、アセンブリのトリガに十分に隣接するように位置決めされ得る。機器は、円筒形カートリッジが配置されるプラットフォームを回転させるモータを含んでもよい。磁気トリガが磁石によって所定の位置に保持されている間、プラットフォームの回転はカートリッジを回転させる。本明細書で説明されるように、カートリッジの回転は、プランジャ機構の剛性構造をロックアームに対して摺動させる。剛性構造は、ロックアームから摺動して離れると、圧縮されたばねに蓄積された力で上向きに移動し、それによってプランジャチャンバに負圧を生成する。
【0092】
ここで、カートリッジのチャンバからカートリッジの1つ又は2つ以上の収集チャンバ内に液体を移送するためのシステムを使用するための例示的な方法が記載される。作動前段階のキャップが位置決めされたカートリッジが、機器の回転可能なプラットフォームに配置される。例示的なカートリッジを図5Aに描示する。カートリッジと係合する回転可能なプラットフォームを有する例示的な機器を、図10A及び10Bに描示する。カートリッジが機器内に配置された後、ユーザは、生体試料をカートリッジのチャンバ内に装填する。例えば、ユーザは、試料をチャンバ300にピペッティングしてもよい。ある特定の実施形態では、ユーザはまた、溶解緩衝液をチャンバ300内に導入してもよく、又は溶解緩衝液及び試料の混合物をチャンバ300内に導入してもよい。他の実施形態では、カートリッジは、チャンバ300を溶解緩衝液で自動的に充填するように構成され得る。例えば、ユーザは、試料をチャンバ300内に装填した後、キャップを下向きに押してもよい。本明細書で説明されるように、キャップを下向きに押すことで、キャップ内のプランジャが、シーリングプレートアセンブリ内に存在する溶解緩衝液パックを穿孔してもよい。次に、溶解緩衝液が、溶解チャンバ118に流入し得る。溶解チャンバ又は溶解緩衝液又は試料はまた、PMPを含み得る。機器のプラットフォーム3000は、カートリッジを往復して回転させて、細胞/ウイルスの溶解、及び標的分析物、例えば、核酸の放出を容易にしてもよい。PMPは、標的分析物に結合し、固定するように官能化されている。機器は、カートリッジの往復回転を停止し、チャンバ118が機器1000内に存在する磁石2000に隣接するように、カートリッジを回転させてもよい。磁石2000は、取り外し可能な磁石として描示されている。磁石は、機器内の磁石を取り外し可能に固定するための手段を含む支持構造内に収納されている。そのような手段は、機器内の対応する特徴部の内部又は外部に嵌まるようにサイズ決めされたスナップイン特徴部を含むことができる。磁石は、PMPを凝集させる。磁石は、溶解チャンバ118を中間チャンバ119に流体的に接続しているチャネル220aの開口部において凝集体が実質的に形成されるように位置決めされている。中間チャンバ119は、洗浄緩衝液、又は油若しくは空気などの不混和相を含んでもよい。次いで、機器は、カートリッジを回転させて、チャネル220aを通して中間チャンバ119内に凝集体を輸送する。図5Aには描示されていないが、カートリッジは、追加のチャンバ、例えば、洗浄チャンバなどが続く不混和相チャンバを含むことができる。次いで、機器は、カートリッジを回転させて、チャネル220bを通してチャンバ120内に凝集体を輸送する。チャンバ120は、カートリッジの製造中に溶出緩衝液で予め充填されていてもよく、又はカートリッジを機器内に配置する前若しくは後にユーザによって予め充填されていてもよい。ある特定の実施形態では、チャンバ120は、キャップがユーザによって押し下げられたときに溶出緩衝液で充填され得る。これらの実施形態では、キャップは、シーリングプレートアセンブリ内の溶出緩衝液パックから溶出緩衝液を強制的に出すプランジャを含み得る。次いで、溶出緩衝液は、投入口と、溶出緩衝液パックが配置されるウェルとの間に延在するチャネルに接続された投入口を介して、チャンバ120を充填する。
【0093】
本明細書で説明されるように、ユーザが、キャップが作動前段階にあるカートリッジを試料処理機器内に配置するとき、プッシュロッド161a及び161bは、枢動可能なロックアーム151に下向きの圧力を加えない。トリガ170は、円筒形カートリッジの底部に対して比較的高い位置に位置付けられている。この高さでは、トリガは、機器1000内の磁石2000によって係合可能ではない。ユーザがキャップを押し下げると、プッシュロッド161a及び161bは、枢動可能なロックアーム151を押し下げることでシャフト152を強制的に下に移動させ、プランジャアセンブリの剛性構造141aを押し下げ、それによってばね142を圧縮する。圧縮可能な構造141bも、下に移動して、空気をプランジャチャンバ140から吐出させる。図6A~6Dを参照されたい。トリガは、カートリッジの底部近くの、カートリッジの底部に対する磁石の高さに一致する高さまで更に押し下げられる。この高さでは、磁石によって発生される磁力が、トリガに係合することができる。この時点で、ばねは作動可能位置にあり、ポテンシャルエネルギーを蓄積している。
【0094】
PMPがチャンバ120に輸送されると、核酸又は別の標的分析物が、PMPから溶出緩衝液中に放出される。次いで、PMPは、磁石によって凝集され、中間チャンバ、例えば、洗浄チャンバ119又は溶解チャンバ118のいずれかに後方に輸送されることができる。最後のステップでは、回転可能なプラットフォームは、トリガが磁石と位置合わせされるように、カートリッジを回転させ、次いでカートリッジを回転させ続ける。トリガに作用する磁力は、枢動可能なロックアームの端部を固定し、アームをシャフトの周りで枢動させる。カートリッジ及びロックアームの相対的な移動は、剛性構造141aをロックアームの下から摺動させて外し、プランジャ機構は、圧縮されたばね内に蓄積されたポテンシャルエネルギーによって提供される運動量の下で再び発射し、プランジャチャンバ内に真空を引き起こす(図7A~7Dを参照)。
【0095】
真空は、チャンバ120の底部の排水孔125から収集容器130の投入口まで延在するチャネル内に負圧を生成する。負圧は、液体を強制的にチャンバ120から排出し、収集容器130内に流入させる。トリガが移動すると、ばねが発射し、圧縮可能な構造を上向きに押し、システム内に負圧を発生させる。負圧は、チャネル145及び収集容器130内に吸引力を生じ、これによって次に、チャンバ120からチャネル146内に流体を引き込む。負圧が流体を引き込むと、流体は、2つの収集容器130に入る。収集容器130内の残りの空気圧が等しいため、流体は、収集容器間で均等に分割される。
【0096】
システム及びシステムを使用する方法は、プランジャチャンバ内に負圧を生成して、チャンバ120から収集容器130内への液体(例えば、溶出緩衝液)の移送をもたらすために、磁石及び磁気応答性トリガを利用するが、トリガは、カートリッジが磁石の代わりに物理的バリアを利用することによって回転するように固定されてもよい。本明細書で説明されるように、トリガは、カートリッジから突出してもよく、物理的なバリアによって移動を妨げられてもよい。
【0097】
磁石は、存在する場合、機器内に恒久的に又は取り外し可能に配設されるハウジング上に装着されてもよい。磁石とは、それ自体の外側に磁場を生成する能力を有する任意の物体を意味する。例えば、磁石は、常磁性粒子を引き付けることが可能な磁場を生成し得る。いくつかの事例では、磁石は、永久磁石又は電磁石であってもよい。ある特定の実施形態では、磁石は、カートリッジの環状壁の外側に近接して位置決めされている。
【0098】
機器の回転可能なプラットフォームは、モータを使用して作動させることができる。モータを自動化することによって、チャンバから1つ以上の収集容器内に液体を輸送する方法を自動化することができる。モータはまた、プロセッサによって実行されると、モータに、本明細書に開示されるようなシステムの使用方法を実施させる、コンピュータプログラムによって制御され得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、モータは、1.8°の角度の増分で円筒形カートリッジを回転させる。
【0100】
いくつかの実施形態では、モータは、円筒形構造を回転させて、例えば、磁石が溶解チャンバ、不混和相チャンバ、溶出チャンバ又はトリガに近接して位置決めされる所定の位置に円筒形構造を戻す。
【0101】
モータは、完全な360°回転のほんの一部を提供するように構成することができる。例えば、モータは、60°~120°の回転、好ましくは80°~110°の回転、更により好ましくは90°~100°の回転、最も好ましくは約90°の回転のみを提供するように構成することができる。
【0102】
試料調製デバイスに追加された追加の機能
ある特定の実施形態では、システム、試料調製デバイス、及び機器は、試料調製のある特定の態様及び/又はデバイスの使用方法を監視することができる追加の機能を含み得る。
【0103】
例えば、試料調製デバイス/機器は、特に、試料調製デバイスの様々なチャンバ内で、試薬の温度を監視及び報告することができる温度センサを備えることができる。試料調製機器には、試料調製デバイスの1つ以上のチャンバ内に所望の温度を提供することができるヒータ又はクーラなどの、温度を制御するための手段が提供されてもよい。
【0104】
試料調製機器には、試料調製カートリッジの1つ以上のチャンバ内の蛍光を読み取るためのフルオロメータを据え付けることができる。フルオロメータは、存在する場合、好ましくは、モータによって引き起こされるいかなる移動もなく、特定のパラメータを有するオンデマンドの読み取りを提供するように構成され得る。
【0105】
更なる実施形態では、試料調製機器には、試料調製のプロセス中に画像をキャプチャするためのカメラを据え付けることができる。1つ以上のカメラは、デバイスの1つ以上のチャンバから画像をキャプチャするように位置決め又は構成され得る。
【0106】
本明細書に開示されるデバイスは、短時間、例えば、20分未満、15分未満、10分未満、又は5分未満、例えば、1分~5分での核酸の検出方法に好適である。
【0107】
いくつかの場合に、カートリッジ及び関連する機器類は、試料を装填することができ、カバーを押し下げ、残りの処理ステップが自動化されるように構成されている。したがって、結果は、最小限のユーザ介在ステップで得ることができる。特に、ユーザは、必ずしもその順序ではないが、試料をカートリッジ内に装填し、カートリッジを機器類に装填し、キャップを押し下げ、分析機器を作動させて試料を分析するだけでよい場合がある。機器類は、試料を処理して、試料から核酸を単離し、核酸を収集容器、例えば、PCRチューブ内に送達し、PCRなどの分析を行い、結果を提示し、例えば、スクリーンに表示し、プリントアウトを提供し、コンピュータシステムに保存し、又は結果をリモートコンピュータシステムに送信するように構成されている。したがって、本明細書に開示されるカートリッジは、AbbottのID NOW(商標)機器類などの、適切な試料分析機器類で使用することができ、唯一のユーザ介在ステップは、試料をカートリッジ内に装填し、カートリッジを分析機器内に装填し(必ずしもその順序ではない)、キャップを押し下げることである。既存の試料分析機器を制御する適切なコンピュータプログラムを改訂して、本明細書に開示されるカートリッジから試料を操作及び処理することができる。
【0108】
ある特定の態様では、試料は、哺乳動物(例えば、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス)、又は目的の任意の他の哺乳動物)の全血、血清、血漿、痰、鼻液、唾液、粘液、精液、尿、膣液、組織、臓器、及び/又は同様のものの試料である。他の態様では、試料は、哺乳動物以外の源、例えば、細菌、酵母、昆虫(例えば、ショウジョウバエ)、両生類(例えば、カエル(例えば、ゼノパス))、ウイルス、植物、又は任意の他の非哺乳動物核酸試料源からの細胞の集合体である。
【0109】
ある特定の態様では、円筒形カートリッジを第1の位置から第2の位置に回転させることは、溶解チャンバのスパン全体が磁石を横切って回転するように、円筒形カートリッジを回転させることを含む。すなわち、円筒形カートリッジは、溶解チャンバの横方向スパン全体が磁石に曝露されるように回転され得る。
【0110】
同様に、ある特定の態様では、円筒形カートリッジを第2の位置から第3の位置に回転させることは、不混和相チャンバのスパン全体が磁石を横切って回転するように、円筒形カートリッジを回転させることを含む。すなわち、円筒形カートリッジは、不混和相チャンバの横方向スパン全体が磁石に曝露されるように回転され得る。
【0111】
本開示の方法は、溶解チャンバを、緩衝液パック内に収容された流体パックからの溶解緩衝液及び常磁性粒子で充填し、並びに、溶出チャンバを、緩衝液パック内に収容された流体パックからの溶出緩衝液で充填する追加のステップを含み得る。非空気不混和相を利用する実施形態では、ステップは、不混和相チャンバを、緩衝液パック内に収容された流体パックからの不混和相で充填することを追加的に含み得る。
【0112】
ある特定の実施形態では、流体は、緩衝液パック内に収容された流体パックから、流体パック内の流体に圧力を加えることによって、チャンバに移送され、流体を、試料調製デバイスの円筒形構造内のチャネルに強制的に通す。例えば、流体は、いくつかの場合に常磁性粒子を含む溶解緩衝液、不混和相、及び溶出緩衝液を含み得る。いくつかの場合に、不混和相は、油を含む。
【0113】
流体が流体パックから移送されるとき、ある特定の実施形態では、流体パックに係合するためのプランジャを備える試料調製デバイスのキャップに機械的な力を加えることによって、流体パック内の流体に圧力が加えられる。
【0114】
キャップは、キャップが適切に位置付けられていることを示すために、触覚、視覚、及び/又は聴覚フィードバックをユーザに提供するように構成されてもよい。例えば、ユーザによる下向きの圧力を加えるときに、キャップは、シーリングプレートアセンブリのシャフトを下に摺動し、キャップが適切に位置決めされていることを示すカチッという音を生成してもよい。他の実施形態では、キャップは、最初に急速に下に摺動し、ユーザによる更なる下向きの圧力に応答して、それ以上移動せず、キャップが適切に位置決めされていることを示してもよい。
【0115】
したがって、上記の説明は単に本開示の原理を例示するにすぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載又は図示していないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件的文言は、主として本発明の原理及び発明者らにより当該技術分野の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、このような具体的に列挙された例及び条件への限定ではないと解釈されるべきである。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体的な例を列挙する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的均等物の両方を包含することを意図している。加えて、そのような均等物は、構造に関係なく、現在知られている均等物及び将来開発される均等物の両方、すなわち、同じ機能を実施する開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示及び記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
【国際調査報告】