(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸固形組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/44 20060101AFI20240130BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240130BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A01N37/44
A01P21/00
A01N25/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546337
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2022014649
(87)【国際公開番号】W WO2022165394
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509319074
【氏名又は名称】バレント・バイオサイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Valent BioSciences LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,パルベシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ユエチエン
(72)【発明者】
【氏名】ベルカインド,ベンジャミン エイ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ジェンユー
(72)【発明者】
【氏名】マッカートニー,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ペトラチェク,ピーター ディ
(72)【発明者】
【氏名】笹川 満弘
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB03
4H011BA05
4H011BB06
4H011BC03
4H011BC07
4H011BC08
4H011BC16
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA02
4H011DC06
4H011DC07
4H011DE12
4H011DG04
4H011DH02
(57)【要約】
本発明は、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)、および、ラクトース、デキストロース、スクロース、またはそれらの混合物からなる群から選択される充填剤、非イオン性エトキシル化ソルビタン、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、およびアニオン性ジオクチルスルホサクシネートからなる群から選択される1つ以上の湿潤剤、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸塩からなる群から選択される1つ以上の結合剤、ならびに、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサンおよびポリエーテルトリシロキサンからなる群から選択される1つ以上の有機ケイ素界面活性剤、を含む、水溶性顆粒組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(ACC)、および、ラクトース、デキストロース、スクロース、マルトデキストリン、糖アルコール、またはそれらの混合物からなる群から選択される充填剤、非イオン性エトキシル化ソルビタン、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、およびアニオン性ジオクチルスルホサクシネートからなる群から選択される1つ以上の湿潤剤、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸塩からなる群から選択される1つ以上の結合剤、ならびに、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサンおよびポリエーテルトリシロキサンからなる群から選択される1つ以上の有機ケイ素界面活性剤、を含む、安定な水溶性顆粒組成物。
【請求項2】
ACCが、約5%~約90%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ACCが、約10%~約70%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ACCが、約20%~約60%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、約1%~約80%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記充填剤が、約37%~約77%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の湿潤剤が、セチルアルコール由来のポリオキシエチレン植物性脂肪エーテル、ポリソルベート20、およびジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つ以上の湿潤剤が、約1.5%~約3.5%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1つ以上の結合剤が、約0.5%~約2.0%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記1つ以上の有機ケイ素界面活性剤が、約0.05%~約0.2%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約0.5%~約5%w/wの濃度で水をさらに含み、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該組成物のpHが、約4~約6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
塩化カルシウムをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
塩化カルシウムが、約5%~約20%w/wの濃度であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
クエン酸をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
下記成分:
約20%~約40%w/wの1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸;
約37%~約77%w/wのラクトース一水和物;
約1.5%~約3.5%w/wの、セチルアルコール由来のポリオキシエチレン植物性脂肪エーテル、ポリソルベート20、およびジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩からなる群から選択される、1つ以上の湿潤剤;
約0.5%~約2.0%w/wの、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、1つ以上の結合剤;
約0.05%~約0.2%w/wの、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサンおよびポリエーテルトリシロキサンからなる群から選択される、1つ以上の有機ケイ素界面活性剤;
約2%~約4%w/wの水;および、
任意に含まれてもよい、約5%~約20%w/wの塩化カルシウム、
を含む、安定な水溶性顆粒組成物であって、
該組成物のpHは約4~約6であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、組成物。
【請求項17】
下記成分:
約40%w/wの1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸;
約2.5%w/wのポリソルベート20;
約1.0%w/wのポリビニルピロリドン;および、
約0.1%w/wのポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサン、
を含む、安定な水溶性顆粒組成物であって、
該組成物のpHは約4~約6であり、w/wは組成物の総重量に対する重量を表す、組成物。
【請求項18】
約0.1%~約10%w/wの水をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸、充填剤、および界面活性剤、を含む、湿潤性粉末。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を植物に適用することを含む、木本多年生植物の作物負荷を軽減する方法。
【請求項21】
前記植物が、核果樹またはリンゴの木である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物をブドウ植物に適用することを含む、ブドウの着色を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)、および、ラクトース、デキストロース、スクロース、マルトデキストリン、糖アルコール、またはそれらの混合物からなる群から選択される充填剤、非イオン性エトキシル化ソルビタン、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、およびアニオン性ジオクチルスルホサクシネートからなる群から選択される1つ以上の湿潤剤、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸塩からなる群から選択される1つ以上の結合剤、ならびに、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサンおよびポリエーテルトリシロキサンからなる群から選択される1つ以上の有機ケイ素界面活性剤、を含む、安定な水溶性顆粒組成物に関する。本発明は、さらに、ACC、充填剤および界面活性剤、を含む、湿潤性粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)は、植物においてACCシンターゼによって合成され、エチレンの生合成の前駆体として作用する。エチレンは、ストレス、結実、落葉、開花などのいくつかの植物反応に関与していることが示されている。エチレン前駆体としての役割のため、ACCは、農業においてエチレン反応性事象を誘発するために使用されている。
【0003】
具体的には、ACCは、仁果(pome fruits)および核果(stone fruits)を薄くすることが実証されている。イリノイ州リバティービルのValent BioSciences LLCにて発行された米国特許第8,435,929号(「929特許」)を参照されたい。樹木への作物負荷の軽減(間伐)は、高品質の樹木果実を生産するためによく使用される。開花および結実の際、生産者は一般に、残る果実の大きさと品質を最大化するために、花(花の間引き)または若い果実(子実の間引き)を物理的または化学的に取り除く(Dennis, 2000, Plant Growth Reg. 31: 1-16)。上記929特許において、Valent BioSciences LLCは、ACCがエテフォン(ethephon)よりも一貫した薄化効果をもたらすことを実証した。
【0004】
さらに、ACCはブドウの着色を増強することが実証されている。イリノイ州リバティービルのValent BioSciences LLCにて発行された米国特許第10,694,748号を参照されたい。果実の色は、赤い生食用およびワイン用のブドウの重要な品質要素である。商業的な収穫には、商業的に成熟した果実に十分なレベルの色が必要であり、これは生食用ブドウ栽培者にとって大きな課題となる可能性がある。果実の色の発達は、ブドウの品種、台木、植物の活力、気候、林冠の管理、光の曝露、作物の負荷、灌漑、施肥、植物の成長調節剤などの多くの要因によって影響を受ける可能性がある。したがって、最適な果物の色を実現するには、単一のツールやプラクティスを使用するよりも、プログラムによるアプローチが必要である。上記748特許において、Valentは、S-アブシジン酸(S-abscisic acid)(「S-ABA」)とACCの組み合わせが、S-ABA単独よりも市場性の高いブドウの着色を向上することを実証している。
【0005】
ACCは、そのまま使用できるスプレーおよび濃縮した液体として製剤化されている。米国特許出願公開第2018-0279621 A1(2018年10月4日公開)および米国特許第10,517,299 B2(2019年12月31日公開)を参照されたい。液体製剤には保管と用途に多くの利点があるが、特定の用途においては固形製剤が必要である。さらに、固形製剤には、取り扱い、輸送、保管において独自の利点がある。
【0006】
水溶性顆粒および湿潤性粉末は、保存安定性および施用前の溶解の容易さのため、農業者に好まれる2種類の固形製剤である。水溶性顆粒は、特定の用途の種類に適した製剤である。しかしながら、ACCは、水溶性顆粒や湿潤性粉末として製剤化されていない。したがって、当技術分野において、安定なACC水溶性顆粒製剤および湿潤性粉末製剤が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)、および、ラクトース、デキストロース、スクロースまたはそれらの混合物からなる群から選択される充填剤、非イオン性エトキシル化ソルビタン、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、およびアニオン性ジオクチルスルホサクシネートからなる群から選択される1つ以上の湿潤剤、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸塩からなる群から選択される1つ以上の結合剤、ならびに、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサンおよびポリエーテルトリシロキサンからなる群から選択される1つ以上の有機ケイ素界面活性剤、を含む、水溶性顆粒組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、ACC、充填剤および界面活性剤、を含む、湿潤性粉末に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
特許または出願書類には、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、申請と必要な手数料の支払いに応じて、当局によって提供される。
【0010】
【
図1】ACC湿潤物の押出による押出物の形成を表し、パネルAは、40%のACCおよび21%の水のものであり、パネルBは、40%のACCおよび27%の水のものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態において、本発明は、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)、および、ラクトース、デキストロース、スクロース、マルトデキストリン、糖アルコール、またはそれらの混合物からなる群から選択される充填剤、非イオン性エトキシル化ソルビタン、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、およびアニオン性ジオクチルスルホサクシネートからなる群から選択される1つ以上の湿潤剤、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸塩からなる群から選択される1つ以上の結合剤、ならびに、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサンおよびポリエーテルトリシロキサンからなる群から選択される1つ以上の有機ケイ素界面活性剤、を含む、水溶性顆粒組成物に関する。
【0012】
ACCは、本発明の組成物中に、約5%~約90%w/w、好ましくは約10%~約70%w/w、より好ましくは約20%~約60%w/w、最も好ましくは約40%w/w、の濃度で存在し得る。
【0013】
別の好ましい実施形態において、ラクトース、デキストロース、スクロース、マルトデキストリン、糖アルコール、またはそれらの混合物からなる群から選択される充填剤は、本発明の組成物中に、約1%~約89%、好ましくは約30%~約80%w/w、より好ましくは約37%~約77%w/w、最も好ましくは、約37.7%w/w、約47.7%w/w、約52.7%w/w、約55.9%w/w、約56.4%w/w、約66.3%w/w、または約76.3%w/w、の濃度で存在し得る。
【0014】
好ましい実施形態において、ラクトースは、ラクトース一水和物として、本発明の組成物中に存在し得る。
【0015】
本発明での使用に適した湿潤剤としては、これに限定されるものではないが、Tween(登録商標)20-24、40、60、80などのTween(登録商標)シリーズ(Tweenは、Croda Americas LLCの登録商標であってそこから入手可能)のポリソルベートなどが含まれるエトキシル化ソルビタンなどの非イオン性界面活性剤や、Brij(登録商標)35、78、98、700、O20、C10、C2、C20、L4、L23、S20などのBrij(登録商標)シリーズ(Brijは、Croda Americas LLCの登録商標であってそこから入手可能)などが含まれるポリオキシエチレングリコールアルキルエーテルや、Aerosol(登録商標)22、A-102、C-61、OT-75、OT-A、OT-BなどのAerosol(登録商標)アニオン性界面活性剤(Aerosolは、Cytec Technology Corpの登録商標であり、Solvayから入手可能)などが含まれるジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン性界面活性剤、が挙げられる。好ましい実施形態において、湿潤剤は、セチルアルコール由来のポリオキシエチレン植物性脂肪エーテル(Brij(登録商標)O20)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、およびジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩(Aerosol(登録商標)OT-B)からなる群から選択される。
【0016】
好ましい実施形態において、1つ以上の湿潤剤は、本発明の組成物中に、約1%~約10%w/w、好ましくは約1.5%~約3.5%w/w、最も好ましくは、約1.5%w/w、約2.5%w/w、または約3.5%w/w、の濃度で存在する。
【0017】
本発明での使用に適した結合剤としては、これに限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、および、リグノスルホン酸カルシウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを含めたリグノスルホン酸塩が挙げられる。好ましい実施形態において、結合剤は、ポリビニルピロリドンおよびリグノスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0018】
好ましい実施形態において、1つ以上の結合剤は、本発明の組成物中に、約0.1%~約10%w/w、好ましくは約0.1%~約5.0%w/w、より好ましくは約0.5%~約2.0%w/w、最も好ましくは、約0.8%w/w、約1.0%w/w、約1.1%w/w、約1.5%w/w、または約2.0%w/w、の濃度で存在する。
【0019】
本発明での使用に適した有機ケイ素界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサン(Silwet ECO spreader;Silwetは、Momentive Performance Chemicalsの登録商標であってそこから入手可能)、および、Break-Thru(登録商標)S200、S233、S240、S279、S301などのBreak-Thru(登録商標)Sシリーズのポリエーテルトリシロキサンを含めたポリエーテルトリシロキサンが挙げられる。
【0020】
好ましい実施形態において、1つ以上の有機ケイ素界面活性剤は、本発明の組成物中に、約0.01%~約1%w/w、好ましくは約0.05%~約0.2%w/w、最も好ましくは約0.1%w/w、の濃度で存在する。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、水をさらに含む。水は、本発明の組成物中に、約0.1%~約10%w/w、好ましくは約0.5%~約5%w/w、より好ましくは約0.5%~約4%w/w、最も好ましくは、約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3.0%、または3.5%w/w、の濃度で存在し得る。本発明の組成物中の水分の測定は、乾燥減量法によって行われる。
【0022】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、pH調整剤をさらに含んでもよい。本発明での使用に適したpH調整剤としては、これに限定されるものではないが、クエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。pH調整剤は、pHを、約4~約6、好ましくは約4~約5の値に調整するのに必要な濃度で、本発明の組成物中に存在し得る。
【0023】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、塩化カルシウムをさらに含んでもよい。塩化カルシウムは、本発明の組成物中に、約1%~約50%w/w、好ましくは約2%~約30%w/w、より好ましくは約5%~約20%w/w、最も好ましくは、約5%w/w、約10%w/w、または約20%w/w、の濃度で存在し得る。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、ACC、充填剤、および界面活性剤、を含む、湿潤性粉末(wettable powder)に関する。
【0025】
本発明の湿潤性粉末製剤での使用に適した充填剤としては、これに限定されるものではないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、マルトデキストリン、糖アルコール、およびそれらの水和物が挙げられる。糖アルコールとしては、これに限定されるものではないが、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0026】
本発明の湿潤性粉末組成物での使用に適した界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、および、リグノスルホン酸カルシウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを含めたリグノスルホン酸塩が挙げられる。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明の湿潤性粉末組成物は、フリーフロー剤(固化防止剤)をさらに含む。
【0028】
本発明での使用に適したフリーフロー剤としては、これに限定されるものではないが、二酸化ケイ素および沈降アルミノケイ酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
本発明の顆粒組成物での使用に適した賦形剤は、本発明の湿潤性粉末組成物での使用に適することができ、またその逆も同様である。
【0030】
本発明の組成物に添加され得る追加の賦形剤としては、これに限定されるものではないが、粘着剤、湿潤剤、全身獲得抵抗性誘導剤、染料、保湿剤、UV保護剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、本発明の組成物を植物に適用することを含む、木本多年生植物の作物負荷を軽減する方法に関するものであり、好ましくは、木本多年生植物は、核果樹またはリンゴの木であり、より好ましくは、ネクタリンの木、桃の木、またはプラムの木である。
【0032】
核果樹としては、これに限定されるものではないが、ピーチ(桃)の木、ネクタリンの木、プラム(梅)の木、アプリコット(杏)の木、およびチェリー(桜)の木が挙げられる。
【0033】
別の実施形態において、本発明はさらに、本発明の製剤をブドウ植物に適用することを含む、ブドウの着色を増強する方法に関する。
【0034】
本出願全体を通じて、文脈上明らかに別の指示がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数形を含む。
【0035】
本明細書において、各特定の値に「約」または「およそ」として定義される量、重量パーセントなどに関するすべての数値は、その特定の値のプラス・マイナス10%の値を表す。例えば、「約10%w/w」という用語は、9%から11%w/wの値を包含するものと理解されるべきである。したがって、特許請求された値の10%以内の量は、本発明の範囲に包含される。
【0036】
本発明は、以下の代表的な実施例によって実証される。これらの例は、説明のみを目的として提供されており、限定を目的とするものではない。
【実施例】
【0037】
Agrimer(登録商標)30を、ポリビニルピロリドンの供給源として使用した(Agrimerは、Pharmachem Laboratories LLCおよびAshlandの登録商標であり、そこから入手可能である)。
【0038】
Ultrazine NA、またはGreensperse S9を、リグノスルホン酸ナトリウムの供給源として使用し、それぞれ、Borregaard Lignotechから入手可能である。
【0039】
実施例1:ACC水溶性顆粒の製造プロセス
方法
実験室条件下の開放系において、結合剤の溶液を、ACC活性成分およびラクトース乾燥粉末を含有する組成物に噴霧し、湿潤物(wet mass)を形成する。湿潤物を押出機に供給する。押出機によって湿潤物をダイ(押し出し金型)に押し込み、押出物を形成する。次いで、押出物を40℃で24時間乾燥させて、ACC水溶性顆粒を得る。
【0040】
結果
図1のパネルAに示されるように、約40%のACC(ACC水溶性顆粒の総重量に対する重量)を提供するのに十分な量のACC乾燥粉末に、21%の水(湿潤物の総重量に対する重量)を添加すると、乾燥すると望ましくない脆い顆粒を形成する低水分の押出物が得られた。驚くべきことに、約40%のACC(ACC水溶性顆粒の総重量に対する重量)を提供するのに十分な量のACC乾燥粉末に、22~28.5%の濃度(湿潤物の総重量に対する重量)で水を添加すると、乾燥後、良好に形成された弾性のある押出物および顆粒が得られた。
図1のパネルBを参照されたい。これらの良好に形成された押出物の乾燥により、乾燥減量法により測定して約3%w/wの含水量を有する良好に形成された顆粒が得られた。乾燥減量法は、CEM Smart 5、OHAUS、または、Mettler Toledo水分計などの一般的な機器で実施することができる。
【0041】
外気に対して閉鎖された系(「閉鎖空気系」)におけるさらなる実験により、約40%のACC(ACC水溶性顆粒の総重量に対する重量)を提供するのに十分な量のACCおよび不活性充填剤の乾燥粉末混合物に、20%の水(湿潤物の総重量に対する重量)を含有する結合剤溶液を添加すると、乾燥後に良好に形成された弾性のある押出物および顆粒が得られることが実証された。特定の理論に縛られるものではないが、出願人は、開放空気系は、閉鎖空気系と比較して顆粒の製造中に水のさらなる損失をもたらし、そのため、開放空気系と比較して閉鎖空気系において、同様の良好に形成された顆粒を得るために、より少量の水を使用することができると考えている。
【0042】
実施例2:本発明のACC水溶性顆粒の安定性
【表1】
方法
上記の表1の組成を有するACC水溶性顆粒を、実施例1の方法によって製造した。それぞれについて、良好に形成された顆粒が製造された。さらに、40%ACC顆粒を、2週間摂氏5℃または54℃の温度にかけ、その前後で、ACC濃度、摩耗、および溶解性について試験した。磨耗は、摩擦または衝撃による顆粒の表面のすり減りとして定義される。摩耗は、コードMT178.2に基づいて国際農薬分析法協議会(CIPAC)によって提供される基準と同様またはそれより厳しい基準に基づいて試験した。結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0043】
結果
表2に示されるように、本発明のACC水溶性顆粒は加速保存条件下で物理的に安定である。
【0044】
実施例3:本発明のACC水溶性顆粒の安定性
方法
上記の実施例2の40%ACC水溶性顆粒を、5、25、30または40℃の温度に最長2年間かけ、その前後でACC濃度を試験した。ACC濃度は、0、3、12、18、24か月目に測定した。結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0045】
結果
表3に示されるように、本発明のACC水溶性顆粒は、加速された長期保存条件下で化学的に安定である。
【0046】
実施例4:リグノスルホン酸ナトリウムを用いたACC水溶性顆粒の安定性
上記の実施例2の40%ACC水溶性顆粒について、1.0%w/wポリビニルピロリドンの代わりに1.5%または2.0%w/wのリグノスルホン酸ナトリウムを用いて、製剤化した。1.5%または2.0%w/wのリグノスルホン酸ナトリウムを配合したACC水溶性顆粒は、良好に形成された。したがって、本発明の組成物において、ポリビニルピロリドンまたはリグノスルホン酸ナトリウムを使用すると、安定なACC水溶性顆粒が得られる。
【0047】
実施例5:様々な湿潤剤および有機ケイ素界面活性剤を用いたACC水溶性顆粒の安定性
【表4】
上記の実施例2の40%ACC水溶性顆粒について、上記の表4に示すように、様々な湿潤剤および有機ケイ素界面活性剤を用いて製剤化した。湿潤剤としてセチルアルコール由来のポリオキシエチレン植物性脂肪エーテルまたはジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩を配合したACC水溶性顆粒は、良好に形成された。さらに、ポリエーテルトリシロキサンを配合したACC水溶性顆粒が、良好に形成された。したがって、本発明の組成物において、湿潤剤としてセチルアルコール由来のポリオキシエチレン植物性脂肪エーテルまたはジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、および/または、有機ケイ素界面活性剤としてポリエーテルトリシロキサンを使用すると、安定なACC水溶性顆粒が得られる。
【0048】
実施例6:塩化カルシウムを用いたACC水溶性顆粒の組成物
【表5】
上記の表5の40%ACC水溶性顆粒を、上記の実施例1の方法を用いて製剤化した。すべての組成物は、良好に形成した顆粒となった。したがって、塩化カルシウムの含有により、安定したACC水溶性顆粒が得られる。
【0049】
実施例7:本発明の組成物のpH
ACC活性は、適用時の溶液のpHに依存することが以前に実証されている。ACC適用に望ましいpHは、約4である。pHを下げるために、配合組成物に有機酸が添加される。表6は、クエン酸を0.25~1.75%w/wで添加した本発明の組成物を示す。WHO水中において600ppmで測定した溶液のpHは、4~5の範囲であると決定された。約1%のクエン酸を使用すると、適用溶液のpHを4まで下げることができることが分かった。
【表6】
【国際調査報告】