(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】生体触媒のためのタンパク質ベースの材料
(51)【国際特許分類】
C12M 1/40 20060101AFI20240130BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20240130BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240130BHJP
C07K 14/435 20060101ALN20240130BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240130BHJP
C12N 11/02 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C12M1/40 A
C12P1/00 Z
C07K19/00
C12N15/11 Z ZNA
C07K14/435
C12N15/62 Z
C12N11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546428
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2022014944
(87)【国際公開番号】W WO2022169875
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522392807
【氏名又は名称】ボンドウェル テクノロジーズ エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スクービー, レベッカ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル, デイビッド ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ボンドス, サラ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ブース, レベッカ エム.
(72)【発明者】
【氏名】パラム, クリスティ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルオン, ダット ピー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB16
4B029CC03
4B029CC11
4B033NA22
4B033NB32
4B033NB70
4B033NC03
4B033ND02
4B033ND12
4B033ND14
4B033ND15
4B033NE02
4B033NG09
4B064AE01
4B064AH16
4B064CA21
4B064CA34
4B064CC24
4B064CD21
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA11
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA42
4H045CA51
4H045DA89
4H045EA01
4H045EA05
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
酵素を安定化するための組成物及び方法が、本明細書に提供される。安定化酵素を使用して所望の化合物を生成するためのシステム、組成物、及び方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質を含む1つ以上の固体マトリクスを含み、前記融合タンパク質が、少なくとも1つのUbxタンパク質及びその酵素または触媒断片を含む、化合物を触媒的に生成するためのシステム。
【請求項2】
2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上の固体マトリクスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
1つ以上の前記固体マトリクスを含む1つ以上の反応チャンバを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ以上の反応チャンバを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ以上の反応チャンバが互いに流体連通している、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ以上の固体マトリクス中の前記酵素またはその触媒断片が、生体触媒カスケード中の酵素である、請求項2~5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記酵素またはその触媒断片が、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、イソメラーゼ、またはその触媒断片である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
各融合タンパク質中の前記酵素またはその触媒断片が、同じであるか、または異なる、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
各チャンバ内の前記融合タンパク質が固定化されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
各チャンバ内の前記融合タンパク質の前記酵素または触媒断片が安定化されている、請求項3~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記Ubxタンパク質が、配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその断片を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
所望の化合物を製造する方法であって、
(a)請求項3~11のいずれかに記載のシステムの前記1つ以上の反応チャンバの第1の反応チャンバを基質と接触させて、1つ以上の反応生成物を触媒的に生成することと、
(b)(i)前記第1の反応チャンバで生成された前記1つ以上の反応生成物から前記所望の化合物を回収すること、または
(ii)更なる触媒作用のために、前記1つ以上の反応生成物を前記第1の反応チャンバから1つ以上の後続の反応チャンバに連続的もしくは非連続的にフローし、前記1つ以上の後続の反応チャンバから前記所望の化合物を回収することと、を含む、前記方法。
【請求項13】
1つ以上の補因子が、前記第1の反応チャンバまたは前記1つ以上の後続の反応チャンバに添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、医薬品、バイオ燃料、ファインケミカル、またはバルクケミカルである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬品が、抗生物質またはホルモンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのUbxタンパク質と、その酵素または触媒断片とを含む融合タンパク質であって、前記その酵素または触媒断片が、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、イソメラーゼ、またはその触媒断片である、前記融合タンパク質。
【請求項17】
前記融合タンパク質の前記酵素または触媒断片が、前記Ubxタンパク質に融合していない場合と比べて、前記酵素または触媒断片と比較して安定性が向上している、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項16または17に記載の融合タンパク質を含む固体マトリクス。
【請求項19】
請求項16もしくは17に記載の融合タンパク質、または請求項18に記載の固体マトリクスを含む反応チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以前の関連出願
本出願は、2021年2月2日に出願された米国仮出願第63/144,755号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表の参照
配列表の公式コピーは、2022年2月2日に作成され、サイズが105KBである、1298582_seqlist.txtという名前のファイルによって、ASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出され、本明細書と同時に提出される。このASCII形式の文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
薬物や工業用化学物質の大部分は、重要な資源と設備を必要とする伝統的な化学合成によって生産されている。合成反応には複数の化学反応が含まれ、それぞれに独自の連続した分離及び精製がある。各単離/精製工程は、典型的には、プロセスにおける総質量の最大80~90%を占める異なる溶媒を必要とし、かなりの廃棄物をもたらす。腐食性及び/または毒性試薬への著しい依存は、廃棄物処分を更に複雑にする。従来の化学合成は、非効率的な化学反応を採用し、大規模な装置とエネルギー入力を必要とする極端なpH、温度、及び圧力によって支援されている。最後に、薬物分子は、典型的には、多くの場合、塩基、弱プロトン酸、アミド、アミン、アルコール、水素結合ドナーまたはアクセプター、及び窒素含有複素環などの多くの密にクラスター化された極性官能基を含む。反応の忠実度を維持するには、多くの場合、追加の保護及び脱保護工程、プロセスの延長及び溶媒の添加、触媒、廃棄物、及び多額の費用を必要とする。最先端の化学合成技術であるフローケミストリーは、密閉型反応器内で連続フローを使用する。複数の反応と及び精製工程を組み合わせて(伸縮式)、1つの連続したフローで複雑な分子を生成し、溶媒の使用と廃棄物の発生を削減する。フローケミストリーであっても、必要な資源と生成される有毒廃棄物の組み合わせは、化学合成を高価なものにする。
【0004】
これらの限界を克服するために、数十億ドル規模のバイオ触媒業界は、酵素を使用してファインケミカル、医薬品、及びその他の工業的に関連する化学物質を製造する。対応する化学触媒とは異なり、酵素は、周囲温度及び圧力において水性環境において活性であり、大量の危険な溶媒、危険な条件を作成及び封じ込めるための広範な施設、及び有毒廃棄物を処分するメカニズムの必要性を取り除く。しかし、この大きな可能性にもかかわらず、酵素は容易に分解され、貯蔵中に急速に活性を失う可能性があるため、産業用途は妨げられている。酵素安定性を改善するための努力にもかかわらず、例えば、酵素(複数可)を固定化することによって、各酵素の安定化条件を予測することは依然として困難であり、したがって、これらの方法を不十分なものとする。例えば、共有結合化学架橋は、酵素固定化のために最も広く使用される技術である。しかし、共有結合固定化にはいくつかの制限があり、これには、i)共有結合架橋は、典型的には、高温、高電圧、有機化学物質への曝露、及び/または極端なpHなどの過酷な条件を必要とし、これは、酵素の構造及び活性を損なう可能性があり、ii)酵素の支持体への非効率的な架橋により、酵素活性が失われ、有意な破損率(約20%)をもたらし、iii)全ての酵素が異なる表面化学を有するため、プロトコルは、各酵素に対して個別に最適化されなければならない、ことが含まれる。したがって、多種多様な酵素を固定化及び/または安定化するための組成物及び方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
幅広い酵素を安全かつ確実に固定化及び安定化するためのシステム、組成物、及び方法が本明細書に提供される。本明細書に記載される方法は、時間のかかる最適化プロセスを取り除きながら、コストを大幅に削減する。本明細書に提供される組成物及び方法は、使用中に酵素を安定化するだけでなく、室温での酵素の乾燥保存を可能にする。更に、本明細書に記載のシステム、組成物、及び方法は、生体触媒を介した医薬品、化学薬品、及び他の貴重な化合物の製造のための複数の結合した酵素反応を促進する。
【0006】
本明細書では、化合物を触媒的に生成するためのシステムを提供し、このシステムは、融合タンパク質を含む1つ以上の固体マトリクスを含み、融合タンパク質は、少なくとも1つのUbxタンパク質及びその酵素または触媒断片を含む。いくつかの実施形態では、システムは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上の固体マトリクスを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上の固体マトリクスを含む1つ以上の反応チャンバを含む。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上の反応チャンバは、互いに流体連通している。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上の固体マトリクスのそれぞれにおける酵素またはその触媒断片は、生体触媒カスケードにおける酵素である。
【0008】
いくつかの実施形態では、各融合タンパク質の酵素またはその触媒断片は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、イソメラーゼ、またはその触媒断片である。いくつかの実施形態では、システム内の各融合タンパク質の酵素またはその触媒断片は、同じであるか、または異なる。いくつかの実施形態では、各チャンバ内の融合タンパク質は、固定化される。いくつかの実施形態では、各チャンバ内の融合タンパク質のその触媒断片の酵素は、安定化される。
【0009】
また、(a)本明細書に記載のシステムのいずれかの1つ以上の反応チャンバの第1の反応チャンバを基質と接触させて、1つ以上の反応生成物を触媒的に生成することと、(b)(i)第1の反応チャンバで生成された1つ以上の反応生成物から所望の化合物を回収すること、または(ii)1つ以上の反応生成物を第1の反応チャンバから1つ以上の後続の反応チャンバに連続的もしくは非連続的にフローして、更なる触媒作用を行うことと、1つ以上の後続の反応チャンバから所望の化合物を回収することと、を含む、所望の化合物を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の補因子を、第1の反応チャンバ及び/または1つ以上の後続の反応チャンバに添加する。いくつかの方法では、所望の化合物は、医薬品、ファインケミカル、またはバルクケミカルである。
【0010】
また、少なくとも1つのUbxタンパク質と、その酵素または触媒断片と、を含む融合タンパク質であって、その酵素または触媒断片が、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、イソメラーゼ、またはその触媒断片である融合タンパク質も提供される。
【0011】
また、本明細書に記載される融合タンパク質のいずれかを含む固体マトリクスも提供される。本明細書に記載される融合タンパク質のいずれかを含む、反応チャンバが更に提供される。
【0012】
本出願は以下の図を含む。図は、本明細書に記載の方法の特定の態様及び/または特徴を例示し、組成物及び方法の任意の記述(複数可)を補完することを意図している。図面は、記述による説明がそのような場合であることを明示的に示す場合を除き、方法の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ウルトラバイソラックス(Ubx)タンパク質に融合した酵素を含有する融合タンパク質の例示的な概略図である。
図1に示すように、融合タンパク質は、任意選択により、ペプチドタグ及びリンカーを含むことができる。
【
図2】例示的なカスケードシステム経路を示す。β-ラクタム抗生物質の合成は、アミノ酸からイソペニシリンNを生成するための2つの一般的な反応を伴う。セファロスポリンCは、2つの後続の工程で産生され、ペニシリンGは、1つの工程で産生される。アモキシシリンは、1つの工程で、ペニシリンGから導かれる。各反応を触媒する酵素は、反応矢印に隣接して標識される。各反応の補因子を表2に提供する。
【
図3】β-ラクタム酵素とUbxとの成功した遺伝子融合を例示する。(A)イソペニシリンNアシルトランフェラーゼ-ウルトラバイソラックス(IPNAT-Ubx、80kDa)、イソペニシリンNシンターゼ-ウルトラバイソラックス(IPNS-Ubx、78kDa)、イソペニシリンNエピメラーゼ-ウルトラバイソラックス(IPNE-Ubx、83kDa)、デアセトキシセファロスポリンCシンターゼ-ウルトラバイソラックス(DAOCS-Ubx、75kDa)、デアセチルセファロスポリンCシンターゼ-ウルトラバイソラックス(DACS-Ubx、75kDa)、デアセチルセファロスポリンCアセチルトランフェラーゼ-ウルトラバイソラックス(DACOAT-Ubx、89kDa)のウェスタンブロット。(B)ペニシリンGアシラーゼ-ウルトラバイソラックス(PGA-Ubx136kDa)のウェスタンブロット。
【
図4】トリプトファンからメラトニンを産生する例示的なメラトニン合成経路である。各反応を触媒する酵素は、各反応矢印の上にラベルされる。各反応の補因子を表3に提供する。
【
図5】メラトニン経路酵素とUbxとの成功した遺伝子融合を示す。ウェスタンブロットは、N-アセチルトランスフェラーゼ-ウルトラバイソラックス(SNAT-Ubx、63kDa)(A)、アセチルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼ-ウルトラバイソラックス(ASOMT-Ubx、78kDa)(B)、トリプトファン5ヒドロキシラーゼ-ウルトラバイソラックス(T5H-Ubx、106kDa)(C)、及び5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ-ウルトラバイソラックス(HTDC-Ubx、104kDa)(D)を検出した。
【
図6】Ubxに融合したペニシリンGアシラーゼが、2つの工程でペニシリンGからアモキシシリンへの反応を触媒したことを示す。両方の工程は、文献と一致する反応速度論を示した。
【
図7】グルコースイソメラーゼを介したグルコース/キシロースからフルクトース/キシルロースへの変換を示す。
【
図8】グルコースイソメラーゼのUbx(GI-Ubx、89kDa)への融合に成功したことを示すウェスタンブロットである。
【
図9】GI-Ubx材料をフルクトースに曝露すると、グルコース濃度が経時的に増加することを示す。
【
図10】ペニシリンGアシラーゼ-Ubx材料が、10℃~30℃の間で変動する温度で保管及び/または出荷条件を模倣する条件に晒されたときに、新しい材料と比較してその酵素活性を保持したことを示す。
【
図11】Ubxと融合し、乾燥した室温下で2日間保存されたイソペニシリンNシンターゼが、活性を保持したことを示す。これは、酵素-UBX融合材料の再利用性を実証する。
【
図12】酵素-Ubx材料の再利用性を示す。HTDC-Ubx材料を使用して、5-ヒドロキシトリプトファンのセロトニンへの反応を実施し、次いで、乾燥状態で、またはPBS中で室温で48時間保存した。反応を、新しい基質を使用して再度実行し、活性を最初の実行と比較した。PBSに保存された材料は84%の活性を保持したが、乾燥保存された材料は61%の活性しか保持しなかった。したがって、PBSのような水性緩衝液中での貯蔵は、材料の安定性に寄与し得る。興味深いことに、48時間の乾燥保管と2週間の乾燥保管との間に統計的な差はなく、分解が保管中ではなく主に使用中に発生する可能性が高いことを示している。
【
図13】全体を通して説明される固定化方法が、Ubxと融合した酵素を周囲温度で保存して7ヶ月後でさえも活性(83%)を保持することを可能にすることを示す(
図15)。実際、加速エージング実験では、3年後にルシフェラーゼ-Ubx材料に活性が保持されたことが示された(新しいものの28%)。ルシフェラーゼ-Ubx材料を40℃、55%の湿度に設定した環境チャンバ内に11週間配置する加速エージング技術を用いて3年間をシミュレートした。比較のために、対照として可溶性ルシフェラーゼを使用し、エージング後にシグナルを示さなかった。
【
図14】3工程のカスケード反応の概略図である。各酵素(複数可)-Ubx膜は、反応チャンバ内に挟まれている。
【
図15】トリプトファン5ヒドロキシラーゼ-Ubx、5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ-Ubx、及びセロトニンアセチラーゼ(SNAT)-Ubx材料を用いた、単一反応カスケードにおけるN-アセチルセロトニンの単一ポット合成を示す。
【
図16A】液体クロマトグラフィー-質量分析によるメラトニン合成の分析を示す。A)N-アセチルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼ(ASMOT)-Ubx材料なしの生成物を示さない対照反応。
【
図16B】液体クロマトグラフィー-質量分析によるメラトニン合成の分析を示す。B)反応物にASMOT-Ubx材料を添加した場合の12.82におけるピークの検出。
【
図16C】液体クロマトグラフィー-質量分析によるメラトニン合成の分析を示す。C)構造決定。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本方法の様々な例を列挙する。特定の例は、方法の範囲を定義することを意図しない。むしろ、これらは、非限定的な例示的な方法である。説明は、当業者の観点から読まれるべきである。したがって、当業者に周知の情報は必ずしも含まれない。
【0015】
他に定義されない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書を通して参照される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数参照を含む。例えば、「(1つの)ポリペプチド」または「(その)ポリペプチド」への言及は、複数のポリペプチドを含んでもよい。
【0017】
本明細書に提供される任意の及び全ての例または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
「してもよい」、「おそらく(may be)」、「できる」、及び「なり得る(can be)」という用語、ならびに関連する用語は、文脈が明確に別様に示さない限り、関与する主題が任意選択である(すなわち、主題はいくつかの例に存在し、他の例には存在しない)ことを伝えることを意図しており、主題の能力または確率への言及ではない。
【0019】
「任意選択の」及び「任意選択により」という用語は、続いて記載される事象、状況、または材料が生じ得るか、もしくは生じ得ず、もしくは存在し得ず、その記載が、その事象、状況、または材料が生じるか、または存在する、ならびにそれが起こらないか、存在しない状況を含む。
【0020】
「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」という用語、及びそれらの変形の本明細書における使用は、その後に列挙される要素及びそれらの等価物ならびに追加の要素を包含することを意味する。特定の要素を「含む」、「含む」、または「有する」として列挙される実施形態は、特定の要素「から本質的になる」及び「からなる」としても企図される。本明細書で使用される場合、「及び/または」は、関連する記載された項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての可能な組み合わせ、ならびに二者択一(「または」)で解釈される組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
【0021】
本明細書で使用される場合、移行フレーズ「から本質的になる」(及び文法的変形物)は、特許請求される発明の列挙された材料または工程「ならびに基本的及び新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」を包含するものとして解釈されるべきである。re Herz,537F.2d549,551-52,190U.S.P.Q.461,463(CCPA1976)(オリジナルで強調)を参照されたい。MPEP§2111.03も参照されたい。したがって、本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、「を含む」と同等であると解釈されるべきではない。
【0022】
範囲は、本明細書において1つの特定の値から、及び/または別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表される場合、文脈が別段の指示をしない限り、1つの特定の値から、及び/または他の特定の値までの範囲もまた、具体的に企図され、開示されるとみなされる。明示的に開示された範囲内に含まれる個々の値及び値の部分範囲の全てもまた、具体的に企図され、文脈が特に別段の指示をしない限り、開示されたものとみなされるべきであることを理解されたい。更に、全ての範囲は、列挙された範囲を範囲として、及び第1のエンドポイントを含みそこから、第2のエンドポイントを含みそこまで、を含む個々の数の集合として、の両方を指すことを理解されたい。後者の場合、個々の数のいずれかが、範囲が参照する数量、値、または特徴の1つの形態として選択され得ることを理解されたい。このようにして、範囲は、第1のエンドポイントを含みそこから、第2のエンドポイントを含みそこまで、の数値または値のセットを記述し、セットの単一のメンバー(すなわち、単一の数値)を、範囲が参照する数量、値、または特徴として選択できる。
【0023】
全体を通して使用される場合、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、または「ポリヌクレオチド配列」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)及びそのポリマーを指す。RNAが記載される場合、その対応するDNAも記載され、ウリジンはチミジンとして表されることが理解される。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。核酸配列は、デオキシリボ核酸及びリボ核酸の組み合わせを含むことができる。かかるデオキシリボ核酸及びリボ核酸は、天然に存在する分子及び合成類似体の両方を含む。本明細書に記載のポリヌクレオチドはまた、一本鎖形態、二本鎖形態、ヘアピン、ステムアンドループ構造などを含むが、これらに限定されない、全ての形態の配列を包含する。
【0024】
別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その修飾変異体、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列、ならびに明示的に示される配列を暗黙的に包含する。
【0025】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すために同義に使用される。用語は、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基は共有結合ペプチド結合によって連結される。この定義はまた、本明細書に記載される任意のポリペプチドの断片及び変異体を含む。タンパク質は、当業者に既知の方法を使用して、例えば、細菌、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞中の宿主細胞によって産生され得る。
【0026】
「固相」、「支持体」、「足場」、及び「マトリクス」という用語は、本明細書で互換的に使用され、酵素またはその触媒断片を固定化するための物理的構造を提供する固体材料(例えば、2つ以上、すなわち、複数のUbxポリペプチドによって形成されるUbx材料構造)を指す。本明細書に記載されるマトリクスのいずれも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100個以上のUbxポリペプチドによって形成され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、異なるタンパク質に由来するが、タンパク質の両方をコードするヌクレオチド配列、及びいくつかの実施形態では、単一のプロモーターの制御下での結合配列を含むポリヌクレオチドから単一のポリペプチドとして産生される、2つ以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。本明細書に記載される融合タンパク質中の2つ以上のポリペプチド、例えば、Ubxタンパク質もしくはその断片、及びその酵素もしくは触媒断片は、任意選択によって、リンカーを介してコンジュゲートまたは連結される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、2つの要素、例えば、タンパク質ドメイン間の結合を指す。リンカーは、共有結合またはペプチドリンカーであり得る。「結合」という用語は、化学結合、例えば、アミド結合もしくはジスルフィド結合、または化学反応、例えば、化学コンジュゲーションから作製される任意の種類の結合を指す。「ペプチドリンカー」という用語は、2つのタンパク質ドメインを連結して、2つのタンパク質ドメイン間に空間及び/または柔軟性を提供するために用いられ得るアミノ酸またはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10アミノ酸以上の長さであり得る。例示的な可塑性リンカーとしては、GGGS(配列番号6)、GGGGS(配列番号7)、GGSG(配列番号8)、GGSGG(配列番号9)、GSGSG(配列番号10)、GSGGG(配列番号11)、GGGSG(配列番号12)、GSSSG(配列番号13)、及びTSGSGSH(配列番号14)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれるとき、「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、またはリボソーム結合部位が、それが翻訳を容易にするように配置されている場合にコード配列に動作可能に連結されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。
【0030】
「酵素」または「生体触媒」という用語は、化学反応の速度を加速する生体触媒を指す。「触媒断片」は、その基質と相互作用して酵素反応を引き起こす酵素の領域または部分を指す。本明細書で使用される場合、本明細書で提供される組成物及び方法のいずれかで使用される酵素または生体触媒は、全長酵素またはその触媒断片であり得る。触媒断片は、酵素の完全長配列に由来するポリペプチド断片であってもよく、断片は、断片が由来する酵素の触媒活性の少なくとも50%、60%、70%、60%、90%、95%、99%を有する。酵素の例としては、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、及びトランスロカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
オキシドレダクターゼは、典型的には、電子が移動される酸化還元反応を触媒する。これらの電子は、通常、水素化物イオンまたは水素原子の形態である。基質が酸化されている場合、それは水素ドナーである。使用される最も一般的な名前は、デヒドロゲナーゼであり、時にはレダクターゼが使用される。オキシダーゼは、酸素原子がアクセプターである場合に言及される。オキシドレダクターゼの例としては、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、及びリダクターゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
トランスフェラーゼは、基移動反応を触媒する。移動は、ドナーとなる1つの分子からアクセプターとなる別の分子に生じる。典型的には、ドナーは、移送されようとしている基を担当する補因子である。トランスフェラーゼの例としては、C1-トランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、アミノトランスフェラーゼ、及びホスホトランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
ヒドロラーゼは、加水分解を伴う反応を触媒する。これには通常、官能基の水への移行が含まれる。ヒドラーゼがアミド、グリコシル、ペプチド、エステル、または他の結合に作用するとき、それらは基質からの基の加水分解除去を触媒するだけでなく、アクセプター化合物への移動も触媒する。ヒドロラーゼの例としては、エステラーゼ、グリコシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、及びアミダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
リアーゼは、官能基が添加されて分子内の二重結合を破壊する反応、または二重結合が官能基の除去によって形成される逆の反応を触媒する。リアーゼの例としては、アルドラーゼ、デカルボキシラーゼ、及びデヒドラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
イソメラーゼは、分子内の官能基を移動させる反応を触媒し、その結果、「異性体形態が生成される。これらの酵素は、化合物内の構造的または幾何学的変化を可能にする。相互変換は、分子内酸化還元によって行われることがある。この場合、1つの分子は水素アクセプターとドナーの両方であるため、酸化生成物ではない。例示的なイソメラーゼは、グルコース6-リン酸をフルクトース6-リン酸に変換するために、同じ基質内で化学基を移動させるホスホグルコースイソメラーゼである。イソメラーゼの例としては、エピメラーゼ、ラセマーゼ、及び分子内トランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
リガーゼは、2つの基質がライゲーションされ、縮合反応によって炭素-炭素、炭素-硫化物、炭素-窒素、及び炭素-酸素結合が形成される触媒作用において使用される。これらの反応は、ATPの切断につながっている。例示的なリガーゼとしては、C-C、C-N、C-O、及びC-Sリガーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書に記載の組成物、方法、及びシステムのいずれかにおいて使用することができる例示的な酵素を、表1に提供する。表1は、酵素の名称、酵素の国際生化学分子生物学連合(IUBMB)分類、酵素のクラス、及び各酵素の例示的な非限定的な用途を提供する。表1に列挙される各酵素の全長または断片は、単一の生体触媒反応において、または一連の(すなわち、2つ以上の)連続的もしくは非連続的な生体触媒反応における反応として使用することができることが理解される。全体を通して記載される酵素は、いくつか挙げると、例えば、細菌種、真菌種、哺乳動物種、または植物種などの任意の種に由来し得る。当業者は、本明細書に記載の各酵素クラスが触媒ドメインを特徴とすることを理解するであろう。したがって、当業者は、通常の配列アライメントツールを使用して、本明細書に記載の各クラスの他の酵素を特定することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【0038】
いくつかの実施形態では、1つ以上の酵素は、ACVシンターゼ、イソペニシリンNシンターゼ、イソペニシリンNアシルトランスフェラーゼ、ペニシリンGアシラーゼ、イソペニシリンNエピメラーゼ、デアセトキシセファロスポリンCシンターゼ、デアセトキシセファロスポリンCヒドロラーゼ、デアセチルセファロスポリンCアセチルトランスフェラーゼ、トリプトファンヒドロキシラーゼ、5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ、セロトニンNアシルトランスフェラーゼ、アシルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼ、グルコースイソメラーゼ、及びアセチル-coAシンターゼからなる群から選択される。
【0039】
「Ubx材料(Ubx material)」または「Ubx材料(Ubx materials)」という用語は、ショウジョウバエメラノガスター転写因子であるウルトラバイソラックス(Ubx)の自己組織化から作製される生体材料(例えば、米国特許出願公開第US2010/0143436号を参照されたい)、または米国特許出願公開第US2018/0222949A1号に記載されているウルトラバイソラックスの改善された合成バージョンのいずれかを指す。いくつかの実施例では、Ubx材料は、2つ以上の自己組織化Ubxタンパク質分子を含有する。本明細書に記載のUbx材料のいずれにおいても、Ubxタンパク質は、GenBank受託番号AAN13717、GenBank受託番号AAN13718、GenBank受託番号AAN13719、GenBank受託番号AAF55355、GenBank受託番号AAF55356、及びGenBank受託番号AAS65158、に記載のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその断片を含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、完全長Ubxタンパク質(例えば、配列番号5)を使用して、融合タンパク質を作製する。他の実施形態では、Ubx融合タンパク質を産生するために使用されるUbxタンパク質は、Ubxホメオドメインを含む完全長Ubxタンパク質の断片、例えば、配列番号1(LRRRGRQTYTRYQTLELEKEFHTNHYLTRRRRIEMAHALCLTERQIKIWFQNRRMKLKKEI)を含むUbxタンパク質断片である。
【0041】
例えば、限定するものではないが、Ubxタンパク質またはポリペプチドは、配列番号1を含む配列番号5の断片であり得る。例えば、断片は、配列番号5のアミノ酸280~345、配列番号5のアミノ酸285~345、配列番号5のアミノ酸275~345、配列番号5のアミノ酸270~345、配列番号5のアミノ酸265~345、配列番号5のアミノ酸260~345、配列番号5のアミノ酸255~345、または配列番号5のアミノ酸250~345、配列番号5のアミノ酸245~345、配列番号5のアミノ酸240~345、配列番号5のアミノ酸235~345、配列番号5のアミノ酸230~345、配列番号5のアミノ酸225~345、配列番号5のアミノ酸220~345、配列番号5のアミノ酸215~345、配列番号5のアミノ酸210~345、配列番号5のアミノ酸205~345、配列番号5のアミノ酸200~345、配列番号5のアミノ酸195~345、配列番号5のアミノ酸190~345、配列番号5のアミノ酸180~345、配列番号5のアミノ酸175~345、配列番号5のアミノ酸170~345、配列番号5のアミノ酸165~345、配列番号5のアミノ酸160~345、配列番号5のアミノ酸155~345、配列番号5のアミノ酸153~345、または配列番号5のアミノ酸150~345、を含むことができる。
【0042】
他の実施形態では、Ubx融合タンパク質は、配列番号1及び配列番号2を含むUbxタンパク質断片(MNSYFEQA)を含む。他の実施形態では、Ubx融合タンパク質は、配列番号3(VRPSACTPDSRVGGYLDTS)及び/または配列番号4(FYPWMAIA)を含むUbxタンパク質断片を含む。いくつかの実施形態では、Ubx融合タンパク質は、本明細書に記載されるUbxタンパク質断片のうちの1つ以上を含み、完全長Ubxタンパク質ではない。本明細書に記載されるポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列も提供される。本明細書に提供されるポリペプチド配列のいずれかに対して少なくとも60%の同一性を有するポリペプチド及びヌクレオチド配列も、本明細書に提供される組成物及び方法に使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチド及びヌクレオチド配列は、本明細書に提供されるポリペプチド配列のいずれかと少なくとも60%の同一性を有し、それが由来するポリペプチドまたは核酸の少なくとも1つの活性、例えば、Ubxポリペプチドの触媒活性または自己組織化を保持する。
【0043】
本明細書に記載のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の文脈で使用される場合、「同一性」または「実質的な同一性」という用語は、参照配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有する配列を指す。あるいは、同一性パーセントは、60%~100%の任意の整数であり得る。例示的な実施形態は、本明細書に記載されるプログラム、好ましくは標準パラメータを使用するBLASTを使用した参照配列と比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。本明細書で提供される任意の配列(例えば、配列番号1~28)に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を有するアミノ酸配列が、本明細書で提供される。
【0044】
配列比較のために、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、または代替的なパラメータを指定することができる。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、20~600、約20~50、約20~100、約50~約200、または約100~約150からなる群から選択される連続位置の数のうちのいずれか1つのセグメントを参照することを含み、配列は、2つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、局所相同性アルゴリズム(Smith and Waterman Add.APL.Math.2:482(1981)によって、相同性アライメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443(1970))によって、類似性検索方法(Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444(1988))によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(例えば、BLAST)によって、または手動アライメント及び目視検査によって実施されてもよい。
【0046】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムは、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のWebサイトから公開され、利用可能である。アルゴリズムは、まず、データベースシーケンス内の同じ長さのワードと整列したときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、または満たすかのいずれかである、クエリシーケンス内の長さWの短いワードを識別することによって、高いスコアリング配列対(HSP)を識別することを伴う。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al、上記)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アライメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットは、各シーケンスに沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(マッチする残基の対に対する報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチする残基のペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。各方向へのワードヒットの拡張は、累積アライメントスコアがその達成された最大値から量Xだけ低下するとき、累積スコアがゼロ以下になるとき、1つ以上のネガティブスコアリング残基アライメントの蓄積のためにゼロ以下になるとき、またはいずれかのシーケンスの終わりに達したとき、に停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワードサイズ(W)28、期待値(E)10、M=1、N=-2、及び両方の鎖の比較を使用する。
【0047】
BLASTアルゴリズムは、2つのシーケンス間の類似性の統計的分析も行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こり得る確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.01未満、より好ましくは約10~5未満、最も好ましくは約10~20未満である場合、参照配列と同様とみなされる。
【0048】
「機能性材料」または「酵素-Ubx材料」という用語は、酵素または触媒断片、及びUbxタンパク質またはその断片を含有する融合タンパク質から作製されるUbx生体材料を指す。いくつかの実施形態では、Ubx生体材料は、酵素またはその触媒断片を含有する2つ以上の自己組織化融合タンパク質(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100以上)及びUbxタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の自己組織化融合タンパク質は、本明細書に記載のシステムの1つ以上の固体マトリクスを形成する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「生体触媒カスケード」という用語は、所望の化合物を生成するための複数工程、すなわち、2つ以上の触媒または酵素工程を指す。例えば、生体触媒カスケードは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、カスケードの工程によって触媒される反応生成物(複数可)は、連続的または非連続的のいずれかで、カスケードの次の触媒工程にフローする。例えば、生体触媒カスケードの第1の工程の反応生成物(複数可)は、生体触媒カスケードの第2の工程にフローすることができ、任意選択により、第2の工程の反応生成物は、生体触媒カスケードの第3の工程にフローすることができる。本明細書に記載される方法は、生体触媒カスケードまたは工程のサブセットの工程の全てを実行するために使用することができる。生体触媒作用または他の手段によって得られる反応生成物は、本明細書に記載の生体触媒プロセスのいずれかにおいて基質として使用され得ることが理解される。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、アモキシシリンは、
図2に示すように4段階の工程プロセスを使用して製造することができ、またはアモキシシリンは、
図2に示すように、他の手段で生体触媒を介してイソペニシリンNを得ることによって、及び2段階のプロセス(すなわち、イソペニシリンアシルトランフェラーゼ反応及びPGA反応)を使用して製造することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「精製された」または「精製する」という用語は、最初に生成されたときにそれが関連していた成分(例えば、不純物または汚染物質)の少なくともいくつかから物質を分離することを指す。例えば、化合物は、汚染酵素、試薬などの除去によって精製される。精製された物質は、それらが最初に関連付けられた他の成分の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えるものから分離することができる。
[発明を実施するための形態]
【0051】
システム
生体触媒、すなわち酵素の連続または非連続カスケードのいずれかを使用して、所望の化合物を生成するためのシステムが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、システムは、少なくとも1つのUbxタンパク質を含む融合タンパク質と、その酵素または触媒断片とを含む1つ以上の固体マトリクスを含む。いくつかの実施形態では、システムは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ以上の固体マトリクスを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上の固体マトリクスを含む1つ以上の反応チャンバを含む。いくつかの実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上の反応チャンバは、互いに流体連通している。
【0053】
例えば、限定するものではないが、システムは、(i)第1の固体マトリクスを含む第1の反応チャンバであって、固体マトリクスが、少なくとも1つのUbxタンパク質及びその酵素または触媒断片を含む融合タンパク質を含む、第1の反応チャンバと、(ii)第2の固体マトリクスを含む第2の反応チャンバであって、第2の反応チャンバが、第1の反応チャンバと流体連通しており、第2の固体マトリクスが、少なくとも1つのUbxタンパク質及びその酵素または触媒断片を含む第2の融合タンパク質を含み、第2の融合タンパク質の酵素またはその触媒断片が、第1の融合タンパク質の酵素またはその触媒断片と同一または異なる、第2の反応チャンバと、を含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、システムは、第3の固体マトリクスを含有する第3の反応チャンバを更に含み、第3の反応チャンバは、第2の反応チャンバと流体連通し、第3の固体マトリクスは、少なくとも1つのUbxタンパク質及びその酵素または触媒断片を含有する第3の融合タンパク質を含み、第3の融合タンパク質の酵素またはその触媒断片は、第1の融合タンパク質または第2の融合タンパク質の酵素またはその触媒断片と同一または異なる。
【0055】
本システムは、追加の反応チャンバ、例えば、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10チャンバ等を更に含み得、各チャンバは、少なくとも1つのUbxタンパク質及びその酵素または触媒断片を含有する融合タンパク質を含有する固体マトリクスを含むことが理解される。任意選択により、本明細書に記載のシステムのいずれかの各反応チャンバは、先行する反応チャンバ、例えば、第1の反応チャンバと流体連通している第2の反応チャンバ、第2の反応チャンバと流体連通している第3の反応チャンバ、第3の反応チャンバと流体連通している第4の反応チャンバなどと流体連通している。いくつかの実施形態では、システム内の反応チャンバの各々は、先行する反応チャンバと流体連通している。いくつかの実施形態では、2つ以上の反応チャンバ(すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つの反応チャンバなど)は、バイオリアクター内にある。本明細書に記載される反応チャンバは、反応が起こることを可能にする条件下で、試薬、液体、ガス、及び/または温度を含むことができる任意の容器であり得る。反応チャンバは、いくつか挙げると、プラスチックチャンバ、ガラスチャンバ、石英チャンバ、または金属チャンバであり得る。いくつかの実施形態では、反応チャンバは、温度制御されたホルダに配置された石英キュベット、または各チャンバを接続するプラスチックチューブを備えたアクリルシリンジフィルタハウジングであり得る(
図14)。
【0056】
本明細書で使用される場合、「連続的に」または「連続的な」は、連続的なプロセスまたは連続的に流れる流れの一部として、反応(例えば、反応チャンバ内の反応)の反応生成物(複数可)が後続の反応に流れるシステムまたは方法を指す。そのような連続的に流れる流れまたはプロセスは、本明細書に記載のシステムのいずれかが分配手段、ポンプ、ミキサー、及び下流ユニットを含むことができるため、互いに流体連通している2つ以上の反応チャンバに限定されない。
【0057】
本明細書で使用される場合、「非連続的に」または「非連続的に」は、第1の反応(例えば、反応チャンバ内の反応)の反応生成物(複数可)が、システム内の後続の反応チャンバにフローするか、または移送されるシステムまたは方法を指し、後続の反応チャンバは、第1の反応チャンバと流体連通していない。
【0058】
いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上の固体マトリクスのそれぞれにおける酵素またはその触媒断片は、生体触媒カスケードにおける酵素である。
【0059】
いくつかの実施形態では、各融合タンパク質の酵素またはその触媒断片は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、イソメラーゼ、またはその触媒断片である。いくつかの実施形態では、システム内の各融合タンパク質の酵素またはその触媒断片は、同じであるか、または異なる。いくつかの実施形態では、各反応チャンバ内の融合タンパク質は、固定化される。いくつかの実施形態では、各チャンバ内の融合タンパク質の酵素またはその触媒断片は、安定化される。
【0060】
本明細書に記載されるシステムは、酵素を固定化するための生体材料を含む。いくつかの実施形態では、生体材料は、Ubxタンパク質またはその断片を含む。本明細書に提供される生体材料は、酵素またはその触媒断片をUbxタンパク質またはその断片に融合させることによって付与される機能的特性を有する。酵素または触媒断片は、天然起源または合成起源であり得る。いくつかの実施形態では、酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、及びリガーゼからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、同じ酵素またはその触媒断片の2つ以上、例えば、2~18個のコピーを含有する多量体融合物を使用することができる(
図1)。他の実施形態では、2つ以上、例えば、2~18個の異なるモノマー断片を含有する多量体酵素を使用することができる。酵素または触媒断片の機能的変異形は、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて使用され得る。
【0061】
(1)少なくとも1つのUbxタンパク質またはその断片、及び(2)その酵素または触媒断片を含有する融合タンパク質、が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、酵素またはその触媒断片は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、イソメラーゼ、またはその触媒断片である。また、本明細書に記載される融合タンパク質のいずれかを含有する固体マトリクスも提供される。任意選択によって、融合タンパク質を含む固体マトリクスは、例えば、濾紙、ゲル、ビーズ、または樹脂などの固体支持体に固定されるか、または固体支持体と接触することができる。1つ以上の反応チャンバが更に提供され、各反応チャンバは、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する。いくつかの実施形態では、反応チャンバは、融合タンパク質を含有するか、またはそれから構成される固体マトリクスを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、反応チャンバ内で固定化及び/または安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の反応チャンバは、本明細書に記載の1つ以上の融合タンパク質を含有し、各チャンバ内の酵素またはその触媒断片は、様々酵素またはその触媒断片である。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる酵素は、生体触媒カスケードの一部である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する酵素含有するUbx材料または固体マトリクスのうちのいずれかは、対照、例えば、対応する非Ubx含有酵素またはそれらを含む材料と比較して、Ubx材料または固体マトリクス中の酵素またはその触媒断片の固定化後、その酵素活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%を、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、またはそれ以上保持する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する酵素含有するUbx材料または固体マトリクスのいずれかは、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間または20週間、約20℃~約50℃の範囲の温度で熱安定性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する酵素含有するUbx材料または固体マトリクスのうちのいずれかは、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、または4年間、約20℃~約50℃の範囲の温度で熱的に安定である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する酵素含有するUbx材料または固体マトリクスのいずれかは、非Ubx含有酵素または非Ubx含有酵素を含むマトリクスの熱安定性と比較して、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、または20週間、約20℃~約50℃の範囲の温度で熱的に安定である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する酵素含有するUbx材料または固体マトリクスのいずれかは、非Ubx含有酵素または非Ubx含有酵素を含むマトリクスの熱安定性と比較して、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、または4年間、約20℃~約50℃の範囲の温度で熱的に安定である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のいずれか、または融合タンパク質を含むマトリクスは、それがUbxタンパク質に融合されていない場合、酵素または触媒断片と比較して安定性が向上している。この増加は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%以上の増加であり得る。いくつかの実施形態では、増加は、安定性の少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍の増加である。いくつかの実施形態では、酵素安定性の増加は、温度の上昇(例えば、熱安定性)、高pH(例えば、約9以上のpH)もしくは低pH(例えば、約5以下のpH)への曝露、または有機溶媒の存在下での安定性の増加であり得る。
【0065】
本明細書に提供される実施形態のいずれかにおいて、生体触媒作用の機能的特性は、その酵素または触媒断片及びUbxタンパク質またはその断片を含む融合タンパク質を通して付与される。これらの融合タンパク質は、非天然タンパク質または合成タンパク質を発現するための当技術分野で認識されている技術を使用して作製される。例えば、機能的融合タンパク質をコードする核酸(すなわち、酵素またはその触媒断片を含む融合タンパク質をコードする核酸、及びUbxタンパク質またはその断片)を、タンパク質を発現するためのプラスミド、一般的には、タンパク質精製を容易にするためのペプチドタグをコードするDNA配列の3’にローニングする。いくつかの実施形態では、リンカーは、酵素または触媒断片をコードする核酸配列の3’末端に配置される。このリンカーの長さ及び配列は変化し得る。例えば、リンカーは、約2~約20アミノ酸長であってもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン及びセリンの交互の反復を含む。リンカーが存在する場合、Ubxタンパク質またはその断片をコードする核酸は、リンカーの3’末端に位置付けられ、続いて、遺伝子融合体中で唯一の(複数可)1つ以上の終止コドンが存在する。生きた細菌及び/または酵母細胞における融合遺伝子の発現は、機能化された材料を作製するために使用することができる融合タンパク質を産生する。融合タンパク質及び官能化材料を作製する方法については、例えば、米国特許公開第2018/0222949号を参照されたい。
【0066】
本明細書に提供される実施形態のいずれにおいても、大きな、複雑なタンパク質は、タンパク質融合(すなわち、タンパク質のUbxへの融合)を介して固定化され得、したがって、化学的架橋剤の必要性を排除する。タンパク質融合アプローチでは、所望の酵素をコードする核酸配列を、Ubxをコードする核酸またはその断片に隣接して配置する。細菌において、一例として、この融合は、例えば、単一のポリペプチドとしての酵素-Ubxタンパク質融合物を産生する。融合タンパク質の酵素及びUbxセグメントが独立して折り畳まれた後、融合タンパク質のUbx部分が材料形成を駆動する。本明細書に記載される組成物のみが、最大160kDaのタンパク質を首尾よく組み込むことができる。ほとんどの酵素は、35kDaよりも著しく大きいため、本明細書で提供する組成物及びシステムは、生体触媒プロセス全体にわたって酵素の安定性を維持しながら、酵素の信頼性の高い固定化を可能にする。特に、多段階の生体触媒プロセスの一部である複数の酵素の固定化と安定化は予期されなかった。
【0067】
方法
また、(a)本明細書に記載のシステムのいずれかの1つ以上の反応チャンバの第1の反応チャンバを基質と接触させて、1つ以上の反応生成物を触媒的に生成することと、(b)(i)第1の反応チャンバで生成された1つ以上の反応生成物から所望の化合物を回収すること、または(ii)1つ以上の反応生成物を第1の反応チャンバから1つ以上の後続の反応チャンバに連続的もしくは非連続的にフローして、更なる触媒作用を行い、1つ以上の後続の反応チャンバから所望の化合物を回収することと、を含む、所望の化合物を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の補因子を、第1の反応チャンバ及び/または1つ以上の後続の反応チャンバに添加する。いくつかの方法では、所望の化合物は、医薬品(例えば、抗生物質(例えば、β-ラクタム抗生物質)、スタチン、ホルモンなど)、化学物質(例えば、ファインケミカルまたはバルクケミカル(例えば、アセチルCoA由来ケミカル))、薬物、食品添加物(例えば、フルクトースまたはグルコース)、またはバイオ燃料(例えば、エタノール)である。多段階生体触媒を使用して作製することができる任意の化合物は、本明細書で提供する方法及びシステムのいずれかを使用して作製することができることを理解する。
【0068】
いくつかの実施形態では、接触工程は、基質を含む液体または溶液を第1の反応チャンバに分配することによって実行される。いくつかの実施形態では、分配手段は、システムの第1の反応チャンバと流体連通している。
【0069】
いくつかの実施形態では、この方法は、(a)前駆体(すなわち、基質)及び補因子を含有する緩衝溶液を、本明細書に記載の融合タンパク質のいずれかを含有する固体マトリクスと接触させることと、(b)酵素が溶液中の基質と相互作用することを可能にすることと、(c)反応チャンバから所望の生成物(複数可)を回収することと、(d)(1)更なる生体触媒変換、または(2)最終的な所望の生成物の精製のために、反応生成物(複数可)を後続のチャンバに連続的もしくは非連続的にフローすることと、を含む。本明細書に記載の方法では、酵素またはその触媒断片をUbxタンパク質またはその断片に融合させることによって、酵素をタンパク質ベースの生体材料、すなわちUbx材料上に固定化する。本明細書に提供される方法では、固体マトリクスは、固体支持体としてのUbx材料から構成される。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、生体材料は、Ubxタンパク質、Ubxタンパク質を含有する融合タンパク質、またはそれらの断片の自己アセンブリから作製される。
【0070】
いくつかの実施形態では、生体触媒カスケードを使用して、適切な一連の反応チャンバを接続し、基質、及び任意選択で任意の補因子を第1の反応チャンバに添加することによって、医薬品、化学物質、及び他の貴重な化合物を合成する(
図15)。反応生成物(複数可)は、所望の化合物が最後の反応チャンバから得られるまで、第1の反応チャンバから1つ以上の後続の反応チャンバにフローする。本明細書に記載の方法は、生体触媒カスケードの1つ以上の触媒反応を含むことができるが、生体触媒カスケード、すなわち、全触媒カスケードにおける反応の全てを含むことに限定されないことが理解される。いくつかの実施形態では、補因子は、1つ以上の後続のチャンバにも添加される。各ディスクまたはマトリクスは、1つ以上の化合物を製造するために、必要に応じて、すすぎ、乾燥させ、再利用することができる。本明細書に記載の方法のいずれも、所望の化合物を生成するために、1つ以上の反応チャンバ、例えば、最後の反応チャンバから反応生成物(複数可)を得た後の1つ以上の精製工程を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、精製は、所望の化合物の濃縮を含む。濃縮は、例えば、いくつかを挙げると、液体クロマトグラフィー、遠心分離、精密濾過、限外濾過、またはナノ濾過の1つ以上による使用など、当該技術分野で知られている任意の好適な濃縮手段によって行うことができる。
【0071】
開示される方法及び組成物のために使用され得るか、それらと併用して使用され得るか、それらの調製において使用され得るか、またはそれらの産物である、材料、組成物、及び構成要素が開示される。これら及び他の材料は、本明細書において開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示されるとき、これらの化合物の各様々な個々及び集約的組み合わせ及び順列のそれぞれに関する特異的な言及は明らかに開示されないかもしれないが、それぞれが特異的に企図され、本明細書に記載されることを理解されたい。例えば、方法が開示及び議論され、方法に含まれる1つ以上の分子に対して行われ得るいくつかの修飾が議論される場合、方法の各々の組み合わせ及び順列、ならびに可能である変形は、それとは反対であると具体的に示されない限り、具体的に企図される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせはまた、具体的に企図され開示される。この概念は、限定されないが、開示される組成物を用いる方法における工程を含む、本開示の全態様に適用する。よって、実施し得る多様な追加の工程がある場合、これら追加の工程の各々が、開示される方法の任意の特異的な方法工程または方法工程の組み合わせで実施され得、かかる各組み合わせまたは組み合わせのサブセットは、具体的に企図され、開示されるとみなされるべきであることが理解される。
【0072】
本明細書に引用される出版物及びそれらが引用される資料は、参照によりそれら全体が具体的に本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0073】
薬物合成
2つの天然経路を使用して、ベース基質から反応生成物を作製した。第1の経路は、8つの酵素(イソペニシリンNアシルトランフェラーゼ(IPNAT、80kDa)、イソペニシリンNシンターゼ(IPNS、78kDa)、イソペニシリンNエピメラーゼ(IPNE、83kDa)、デアセトキシセファロスポリンCシンターゼ(DAOCS、75kDa)、デアセチルセファロスポリンCシンターゼ(DACS、75kDa)、デアセチルセファロスポリンCアセチルトランスフェラーゼ(DACOAT、89kDa)及びペニシリンGアシラーゼ(PGA136kDa))のうちの7つを、Ubx材料に固定化し、セファロスポリンC、ペニシリンG、及びアモキシシリン、価値のあるβラクタムクラスの3つの抗生物質(
図2及び3)を生成した。この反応シリーズの基質及び補因子は全て、以下のとおり市販されている:JT Baker(Radnor,PA)からのアスコルビン酸、Sigma(St.Louis,MO)からの補酵素A、Millipore(Burlington,MA)からのテトラヒドロビオプテリン、Sigmaからの硫酸第一鉄アンモニウム、VWR(Radnor,PA)からのFeSO
4及びMgSO
4、Sigmaからのピリドキサールリン酸、Enamine(Monmouth Jct,NJ)によって合成されたデアセチルセファロスポリンC、イソペニシリンN、及びペニシリンN、本明細書に記載される方法を使用して合成されたデアセトキシセファロスポリンC、ならびにACV、2-アミノアジペート、システイン、バリン、ペニシリンG、及びSigmaから購入したセロトニン経路基質。この例示的な生体触媒カスケードで使用される補因子及び緩衝液を、表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0074】
第2の経路は、4つの(4)酵素(セロトニンN-アセチルトランスフェラーゼ-ウルトラバイソラックス(SNAT-Ubx、63kDa)、アセチルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼ-ウルトラバイソラックス(ASOMT-Ubx、78kDa)、トリプトファン5ヒドロキシラーゼ-ウルトラバイソラックス(T5H-Ubx、106kDa)、及び5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ-ウルトラバイソラックス(HTDC-Ubx、104kDa))をUbx材料に固定化し、3つの補因子を使用して、トリプトファンからメラトニンを生成した(
図4及び5A~5D)。この例示的な生体触媒カスケードで使用される補因子及び緩衝液を表3に示す。
【表3】
【0075】
両方の経路は、上記のように、連続流生成を使用した。これらの経路で使用される酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、及びリアーゼクラスの酵素からの例示的な酵素が全てUbx材料に固定化され、本明細書に記載のシステム及び方法で化合物を合成するために使用できることを実証した。
【0076】
図6A及び
図6Bは、Ubxに融合した酵素または触媒断片が、所望の反応を成功裏に触媒することを実証する。具体的には、この実施例では、ペニシリンGアシラーゼ(PGA)は、ペニシリンGからアモキシシリンへの変換の両方の工程を触媒する。まず、PGAは、ペニシリンGを6-アミノペニシラン酸(6-APA)に触媒し(
図6A)、続いて、反応物にp-ヒドロキシフェニルグリシンメチルエステル(AHPAME)を添加することにより、アモキシシリンに縮合する(
図6B)。
【0077】
ペニシリンGは265nmで吸光度を有し、したがって、ペニシリンGの6-APAへの加水分解は、265nmでのペニシリンGの消失によって測定した。反応は、1mLの石英キュベット中の播種ループの周りに包まれた酵素-Ubx材料を用いて、30℃で、50mMのリン酸塩(pH7.0)中で起こった。反応を0.1、1、5、及び10μMの基質濃度で実行し、反応を監視した。吸光度を、900秒間記録した。吸光度は、ベールの法則を使用して濃度に変換され、消光係数は119.8M-1cm-1に等しい。データをプロットし、材料(酵素)の量に正規化し、線形回帰を使用して、各基質濃度の酵素速度を計算した。Vmax及びKmは、非線形Michaelis-Menton方程式を用いて各濃度の初期速度をプロットすることによって計算した。
【0078】
アモキシシリンを合成するための第2のPGA反応を、50mMのリン酸塩、pH7.04mMの6-APA、及び2、3、6、8、または12mMの補因子AHPAME中で行った。6-APAからのアモキシシリンのPGA合成の活性を測定するために、反応生成物(200mMの酢酸緩衝液、pH2.0、0.1%pDAB、及び各指定時点での反応物の10%)をジメチルアミノベンジルアルデヒド(p-DAB)と反応させ、415nmで吸光度を記録した。吸光度は、ベールの法則及び991.2M
-1cm
-1に等しい消光係数を使用して濃度に変換した。V
max及びK
mの計算は、上記のように計算した。
図5に示されるように、両方のPGA反応は、文献と一致する反応速度論を実証し、Ubx材料中の酵素の触媒活性を実証する(Dineva,M.A.;Bioorg.Med.Chem.Lett.3,2781-2784(1993)、Gabor,EM;Enzyme Microb.Technol.36,182-190(2005))。
【0079】
リガーゼクラス酵素の活性を実証するために、アセチルCoAシンセターゼを、遺伝子融合を介してUbx材料に固定化した。アセチルCoAシンターゼは、アセテート及び補酵素Aをライゲーションして、TCAサイクル及び脂肪酸合成の成分であるアセチル-CoAを形成する。工業用では、アセチルCoA由来の化学物質は、食品添加物、医薬品、農業、化粧品、及び化学工業における複数の用途に適している。アセチルCoA由来の化学物質のバイオ生産は、石油ベースの用途にグリーンな代替品を提供する。反応は、前述のように、播種ループの周りに包まれた酵素-Ubx材料を有する石英キュベット内で起こった。この反応は、30μlの5、10、15、または20mMの補酵素A、50μlの0.1MのATP、12.5μlの0.2MのMgCl2、30μlの0.2Mの酢酸ナトリウム、及び50μlのヒドロキシルアミン溶液で発生した。540nmでの吸光度測定の前に、450μlの塩化第一鉄を添加して各反応を停止した。酵素反応速度論を、前述のとおり得た。
【0080】
記載したシステム及び方法におけるイソメラーゼの活性を実証するために、Ubx材料に融合したグルコースイソメラーゼの機能性の試験を行った。この実施例は、酵素であるグルコースイソメラーゼを介してグルコースから高フルクトースコーンシロップを生成するために食品産業で使用するための貴重な化学物質である、フルクトースを生成する能力を実証した。グルコースイソメラーゼ(GI、イソメラーゼクラス酵素)は、最も重要な工業用酵素の1つである。しかし、GIは、最適な活性のために低pH及び高温を必要とし、これはUbx材料への固定化によって克服することができる。この実施例では、GIをUbx材料に固定化して、フルクトースからグルコースを生成した(
図7及び8)。GI-Ubx材料を播種ループの周りに包み、Biovision(Glucose Isomerase Activity Assay kit,K491,Milpitas,CA)のプロトコル及びキットを使用して、GI活性について試験した。GIは、キシロース及び他の糖の異性化を触媒することができるため、グルコース以外にも幅広い基質を有する。GIはまた、キシロースをキシルロースに変換し、これは最終的に従来の酵母によってエタノールに発酵させることができる(
図7)。再生可能なバイオマスの発酵可能な糖及びエタノールへの生体変換は、代替エネルギー源として重要である。Ubx材料に固定化されたGIは、フルクトース(
図8)及びエタノールなどの貴重な化学物質の工業生産での使用に経済的に好適であり得る。
【0081】
酵素の安定性
固体支持体上の酵素の固定化は、温度の適度な上昇または極端なpH値または有機溶媒への曝露に抵抗するために酵素の安定性を高めることができる。しかしながら、文献で報告されている固定化による安定性の増加は、本明細書に記載の組成物及び方法を使用して付与される安定性と比較して有意ではない。例えば、デキストランポリアルデヒドまたはキトサン固定化ペニシリンGアシラーゼは、pH10で半減期が18倍増加することが示され(Mateo et al.,Biotechnol.Bioeng.86(3):273-276(2004)、4.9倍(Adriano et al.,Braz.J.Chem.Eng22:529-538(2005)、50℃で4時間安定性が向上し、遊離酵素と比較して、60%ジメチルホルムアミドに曝露したときに2倍増加した(Abian et al.,Appl.Environ.Microbiol.70(2):1249-1251(2004)。本明細書に記載される固定化技術は、以前に報告されていない安定性を提供する。ペニシリンGアシラーゼ-Ubx繊維を前述のように調製し、15mLのファルコンチューブに真空密封した後、10℃~30℃の間で変動する温度で出荷及び/または保管を模倣する条件に曝露した。2℃/分の10、50、100、200サイクルの過程で、10℃~30℃の間で温度を上昇させた。このペニシリンGアシラーゼ-Ubx物質活性を前述のように測定し、新しい物質と比較してその酵素活性を保持し、k
cat、K
M及びV
max値は減少しているが類似していることを示した(
図10)。
【0082】
別の実施例では、Ubxと融合したイソペニシリンNシンターゼを、播種ループの周りに包んだ。反応条件は、25℃で2mMのACV、1.2mMのTCEP、50mMのpH7.0のリン酸塩、25μMのアスコルビン酸塩、10μMのNH
4Fe(II)SO
4であった。イソペニシリンNは、1150M
-1cm
-1の消光係数で235nmで吸収する。新しい材料を活性について分析し、追加の材料を乾燥させ、室温で2日間保存した。再利用すると、材料は活性を保持した(
図11)。これは、材料が少なくとも2回再利用され得ることを実証する。酵素を乾燥させる代わりにPBS中に保存する場合、材料は有意に活性をより保持する。
【0083】
この実験では、HTDC-Ubx材料を使用して、5-ヒドロキシトリプトファンのセロトニンへの反応を実施し(反応条件は、25℃で750μMの5-ヒドロキシトリプトファン、50mMのリン酸塩pH7.0、7mMのDTT、100μMのPLPであった。活性は、蛍光計上で330nmでの5-ヒドロキシトリプトファンの消失によって監視された)、次いで、乾燥させるか、または室温でPBS中で48時間保管した。反応を、新しい基質を使用して再度実行し、活性を最初の実行と比較した。PBSに保存された材料は84%の活性を保持し、乾燥保存された材料は61%の活性しか保持しなかった(
図12)。したがって、PBSのような水性緩衝液中での貯蔵は、材料の安定性に寄与し得る。興味深いことに、48時間の乾燥保管と2週間の乾燥保管との間に統計的な差はない。
【0084】
Ubx材料における酵素固定化の別の利点は、酵素の貯蔵寿命の増加である。可溶性酵素は、活性を維持するために、典型的には、ゼロ未満の温度で保管されなければならないが、通常は数ヶ月の貯蔵寿命しかない。したがって、酵素を使用可能になるまで保存することにはかなりのコストがかかる。本発明に記載の固定化方法は、酵素を周囲温度で保存し、7ヶ月後でも活性(83%)を保持することを可能にする(
図13)。実際、加速エージングを使用すると、3年後に活性がルシフェラーゼ-Ubx材料に保持されることが示された(新しいものの28%)。ルシフェラーゼ-Ubx材料を40℃、55%の湿度に設定した環境チャンバ内に11週間配置する、加速エージング技術を用いて3年間をシミュレートした。比較のために、対照として可溶性ルシフェラーゼを使用し、エージング後にシグナルを示さなかった。ルシフェラーゼ反応は、プPromega Luciferaseキット及び化学発光技術(Bio-rad ChemiDoc system,Hercules,CA)を使用して行った。
【0085】
1つ以上の酵素でそれぞれ修飾されたマトリクスが、それぞれプラスチック反応チャンバ内に密封される方法が実証される。治療薬は、適切な一連の反応チャンバを接続し、基質及び任意の必要な補因子を第1の反応チャンバに添加することによって合成することができる。望ましい最終製品は、最後のチャンバからフローする(
図14)。各ディスクまたはマトリクスは、1つ以上の薬物を製造するために、必要に応じて、すすぎ、乾燥させ、再利用することができる。この伸縮性生体触媒カスケード法は、メラトニン経路を使用して本明細書で実証される。反応は、トリプトファンから始まり、4つの酵素を使用してメラトニンを触媒する(
図4)。最初の3つの工程は、トリプトファン5ヒドロキシラーゼ-ウルトラビトラックス、5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ-ウルトラビトラックス、及びセロトニンアセチラーゼ(SNAT)-ウルトラビトラックス材料を一緒に使用して、トリプトファンからN-アセチルセロトニンを触媒する単一ポット反応で完了した(
図15)。反応は、N-アセチルセロトニンを生成するSNATの副産物の存在を検出することによって監視される。反応条件は、25℃で、50mMのリン酸塩pH7.5、100μMのPLP、300μMのテトラヒドロプテリン、200mMの(NH
4)
2SO
4、25μMのNH
4Fe(II)SO
4、25μg/mLのカタラーゼ、1mMのDTNB、1mMのアセチル-CoA及び1mMのトリプトファンを必要とする。アッセイを、UV/Vis分光光度計で412nmでN-アセチルセロトニンについて監視する。3つの酵素は全て、反応が起こるために必要であり、単一の酵素またはUbx材料のみで酵素が存在しない陰性対照では、反応は検出されなかった。0.5mMのS-アデノシル-L-メチオニンをこの反応の生成物(N-アセチルセロトニン)に添加し、アセチルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼ-ウルトラバイソラックスを使用した第2の反応における経路の最終工程の基質として使用した。この酵素カスケードによるメラトニンの産生を、液体クロマトグラフィー-質量分析により確認した(
図16A~C)。
【0086】
要約すると、本明細書に記載のシステム、組成物、及び方法を使用して、1つ以上の触媒反応で使用するための酵素を安定化し、医薬品、バイオ燃料、ファインケミカル、またはバルクケミカルを含むが、これらに限定されない、1つ以上の所望の化合物を生成することができる。
【0087】
例示的なUbx及び酵素-Ubx融合ポリペプチド配列
Ubx(配列番号5)
MNSYFEQASGFYGHPHQATGMAMGSGGHHDQTASAAAAAYRGFPLSLGMSPYANHHLQRTTQDSPYDASITAACNKIYGDGAGAYKQDCLNIKADAVNGYKDIWNTGGSNGGGGGGGGGGGGGAGGTGGAGNANGGNAANANGQNNPAGGMPVRPSACTPDSRVGGYLDTSGGSPVSHRGGSAGGNVSVSGGNGNAGGVQSGVGVAGAGTAWNANCTISGAAAQTAAASSLHQASNHTFYPWMAIAGKIRSDLTQYGGISTDMGKRYSESLAGSLLPDWLGTNGLRRRGRQTYTRYQTLELEKEFHTNHYLTRRRRIEMAHALCLTERQIKIWFQNRRMKLKKEIQAIKELNEQEKQAQAQKAAAAAAAAAAVQGGHLDQ
【0088】
以下に示される酵素-Ubx融合タンパク質の各アミノ酸配列(配列番号15~28)において、酵素のアミノ酸配列(未修飾、イタリック化されたていないフォント)に続いて、リンカー(下線)、及びUbxポリペプチドのアミノ酸配列(斜体)が続く。
【0089】
ペニシリンGアシラーゼ(PGA)-Ubx(配列番号15)
【化1】
【0090】
イソペニシリンNシンターゼ(IPNS)-Ubx(配列番号16)
【化2】
【0091】
イソペニシリンNエピメラーゼ(IPNE)-Ubx(配列番号17)
【化3】
【0092】
デアセトキシセファロスポリンCシンターゼ(DAOCS)-Ubx(配列番号18)
【化4】
【0093】
デアセチルセファロスポリンCシンターゼ(DACS)-Ubx(配列番号19)
【化5】
【0094】
デアセチルセファロスポリンCアセチルトランスフェラーゼDACOAT-Ubx(配列番号20)
【化6】
【0095】
イソペニシリンNアシルトランフェラーゼ(IPNAT)-Ubx(Streptomyces clavuligerusからのIPNAT)(配列番号21)
【化7】
【0096】
トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)-Ubx(配列番号22)
【化8】
【0097】
5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ(HTDC)-Ubx(配列番号23)
【化9】
【0098】
セロトニンアセチラーゼ(SNAT)-Ubx(配列番号24)
【化10】
【0099】
アセチルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼ(ASOMT)-Ubx(配列番号25)
【化11】
【0100】
グルコースイソメラーゼ-Ubx(配列番号26)
【化12】
【0101】
アセチルCoAシンテターゼ(配列番号27)
【化13】
【0102】
ルシフェラーゼ-Ubx(配列番号28)
【化14】
【配列表】
【国際調査報告】