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特表2024-505560特定の化学実体、組成物、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】特定の化学実体、組成物、および方法
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20240130BHJP
   A61K 31/585 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
A61K31/585
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546436
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022014524
(87)【国際公開番号】W WO2022169705
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/144,821
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523208280
【氏名又は名称】ネウファーマ,インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チエン,シャンピン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086DA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA60
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZB27
4C091AA01
4C091BB01
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE05
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL03
4C091LL09
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA13
4C091PB04
4C091QQ01
4C091SS01
4C091SS05
(57)【要約】
新規な化合物である化学実体、それらの多形、医薬組成物、および癌の治療方法が、記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩):
【化1】
である化合物、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項2】
結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩):
【化2】
またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項3】
結晶形態が結晶形態Iである、請求項2に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項4】
結晶形態Iが、
(a)X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、および10.3±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターン、
(b)図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターン、
(c)約230~240℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(d)約234℃の開始および約238℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(e)図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(f)図3に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)サーモグラム、
(g)40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管した後で未変化のXRPD、
(h)25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管した後で未変化のXRPD、または
(i)それらの組合せ
によって特徴付けられる、請求項3に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項5】
結晶形態Iが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、および10.3±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項3または4に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項6】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、および14.8±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む、請求項5に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項7】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む、請求項5または6に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項8】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも5つのピークを含む、請求項5に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項9】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.1°2-θ、19.5±0.1°2-θ、10.3±0.1°2-θ、25.9±0.1°2-θ、20.6±0.1°2-θ、14.8±0.1°2-θ、27.8±0.1°2-θ、25.2±0.1°2-θ、および11.4±0.1°2-θのピークを含む、請求項5に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項10】
結晶形態Iが、図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項3から9のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項11】
結晶形態Iが、約230~240℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項3から10のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項12】
結晶形態Iが、約234℃の開始および約238℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項3から11のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項13】
結晶形態Iが、図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項3から12のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項14】
結晶形態Iが、図3に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項3から13のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項15】
結晶形態が結晶形態IIである、請求項2に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項16】
結晶形態IIが、
(a)X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、および15.2±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターン、
(b)図4に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターン、
(c)i)約75~100℃の範囲の吸熱、
ii)約195~210℃の範囲の吸熱、および
iii)215~235℃の範囲の吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(d)i)約77℃の開始および約94℃のピークを有する吸熱、
ii)約202℃の開始および約205℃のピークを有する吸熱、ならびに
iii)約220℃の開始および約230℃のピークを有する吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(e)図5に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(f)図6に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)サーモグラム、または
(g)それらの組合せ
によって特徴付けられる、請求項15に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項17】
結晶形態IIが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、および15.2±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項15または16に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項18】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、および16.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む、請求項17に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項19】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む、請求項17または18に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項20】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも5つのピークを含む、請求項17に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項21】
前記X線粉末回折パターンが、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.1°2-θ、20.1±0.1°2-θ、15.2±0.1°2-θ、18.4±0.1°2-θ、26.2±0.1°2-θ、16.4±0.1°2-θ、20.9±0.1°2-θ、25.0±0.1°2-θ、および27.0±0.1°2-θのピークを含む、請求項17に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項22】
結晶形態IIが、図4に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項15から21のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項23】
結晶形態IIが、
i)約75~100℃の範囲の吸熱、
ii)約195~210℃の範囲の吸熱、および
iii)215~235℃の範囲の吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項15から22のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項24】
結晶形態IIが、
i)約77℃の開始および約94℃のピークを有する吸熱、
ii)約202℃の開始および約205℃のピークを有する吸熱、ならびに
iii)約220℃の開始および約230℃のピークを有する吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項15から23のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項25】
結晶形態IIが、図5に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項15から24のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項26】
結晶形態IIが、図6に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項15から25のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物。
【請求項27】
請求項2から26のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項28】
経口投与による哺乳動物への投与のために製剤化される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
固体形態の医薬組成物の形にある、請求項27または請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
錠剤、丸剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、坐剤、またはエアロゾルの形にある、請求項27から29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項27から30のいずれか一項に記載の医薬組成物と、癌に罹患している対象を治療するための組成物の使用に関する指示書とを含む包装された医薬組成物。
【請求項32】
新生物の治療を必要とする対象の新生物を治療する方法であって、請求項2から26のいずれか一項に記載の結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、または請求項27から30のいずれか一項に記載の医薬組成物を治療有効量で前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項33】
前記新生物が癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記癌が、頭頸部癌、脳腫瘍、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、例えば急性リンパ性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤血白血病)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)、および真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、ならびに重鎖疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が大腸癌である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記癌が肝臓癌である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記癌が肺癌である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記癌が乳癌である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記癌が口腔癌である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記癌が頭頚部癌である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が脳腫瘍である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項42】
(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iを調製する方法であって、
(a)溶媒中で(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸と接触させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの溶液を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた溶液を結晶化させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iを得る工程と
を含む方法。
【請求項43】
工程(a)の前記溶媒が、酢酸エチル、DCM、エタノール、またはイソプロパノールを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程(a)の前記溶媒がエタノールを含む、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
工程(a)が、約60~90℃の温度で行われる、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
工程(a)が、約70℃の温度で行われる、請求項42から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
工程(a)が、約1~3時間の時間にわたり行われる、請求項41から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
工程(a)が、約1.5時間の時間にわたり行われる、請求項42から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
工程(b)が、工程(a)で得られた溶液を室温に降温させることを含む、請求項42から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
工程(b)が、工程(a)で得られた溶液を約20~25℃の温度に降温させることを含む、請求項42から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
工程(b)で得られた結晶化溶液を濾過することで結晶形態Iを得る工程をさらに含む、請求項42から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
得られた結晶形態Iを乾燥させる工程をさらに含む、請求項42から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記乾燥させる工程が、真空下、室温で行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記乾燥させる工程が、真空下、約20~25℃の温度で行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIを調製する方法であって、
(a)溶媒中で(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸と接触させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの溶液を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた溶液を結晶化させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIを得る工程と
を含む方法。
【請求項56】
工程(a)の前記溶媒が、酢酸エチル、DCM、エタノール、またはイソプロパノールを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
工程(a)の前記溶媒がイソプロパノールを含む、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
工程(a)が室温で行われる、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
工程(a)が、約20~25℃の温度で行われる、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
工程(b)が、工程(a)で得られた溶液を一晩撹拌することを含む、請求項55から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
工程(b)で得られた結晶化溶液を濾過することで結晶形態IIを得る工程をさらに含む、請求項55から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
得られた結晶形態IIを乾燥させる工程をさらに含む、請求項55から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記乾燥させる工程が、真空下、35℃で行われる、請求項62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年2月2日出願の米国仮特許出願第63/144,821号に基づく利益を主張し、当該出願はその全体を参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
癌は、腫瘍細胞とその正常な隣接細胞を含む環境との間の伝達崩壊と見なすことができる。成長刺激性と成長阻害性両方のシグナルが、組織内の細胞間で慣例的に交換される。通常、細胞は刺激性シグナルのない状態では分裂せず、同様に、阻害性シグナルの存在下では分裂を停止する。癌性または新生物状態では、細胞は、これらのシグナルを「無力化」して、正常細胞が増殖しない条件下で増殖する能力を獲得する。
【0003】
ジゴキシンやジギトキシンのような強心ステロイドは、Na/K-ATPase(ナトリウムポンプ)に結合しそれを阻害する自然由来の化合物のクラスである。このファミリーのメンバーは、長年にわたり心不全および不整脈の治療に使用されてきた。近年の所見では、これらの化合物は、いくつかの重要な細胞プロセスの調節に関与し得ることが明らかにされている。ジギトキシンやオレアンドリンなどのいくつかの強心テロイドは、ヒト腫瘍細胞の増殖に対する阻害効果を示している。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩):
【0005】
【化1】
である化合物、またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物を提供する。
【0006】
別の態様では、本開示は、結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩):
【0007】
【化2】
またはその薬学的に許容可能な溶媒もしくは水和物を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、結晶形態は結晶形態Iである。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、
(a)X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、および10.3±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターン、
(b)図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターン、
(c)約230~240℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(d)約234℃の開始および約238℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(e)図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(f)図3に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)パターン、
(g)40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管した後で未変化のXRPD、
(h)25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管した後で未変化のXRPD、または
(i)それらの組合せ
によって特徴付けられる。
【0009】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、および10.3±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、および14.8±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも5つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.1°2-θ、19.5±0.1°2-θ、10.3±0.1°2-θ、25.9±0.1°2-θ、20.6±0.1°2-θ、14.8±0.1°2-θ、27.8±0.1°2-θ、25.2±0.1°2-θ、および11.4±0.1°2-θのピークを含む。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、約230~240℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、約234℃の開始および約238℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、図3に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、結晶形態IIである。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、
(a)X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、および15.2±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターン、
(b)図4に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターン、
(c)i)約75~100℃の範囲の吸熱、
ii)約195~210℃の範囲の吸熱、および
iii)215~235℃の範囲の吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(d)i)約77℃の開始および約94℃のピークを有する吸熱、
ii)約202℃の開始および約205℃のピークを有する吸熱、ならびに
iii)約220℃の開始および約230℃のピークを有する吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(e)図5に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(f)図6に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)パターン、または
(g)それらの組合せ
によって特徴付けられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、および15.2±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、および16.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも5つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.1°2-θ、20.1±0.1°2-θ、15.2±0.1°2-θ、18.4±0.1°2-θ、26.2±0.1°2-θ、16.4±0.1°2-θ、20.9±0.1°2-θ、25.0±0.1°2-θ、および27.0±0.1°2-θのピークを含む。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、図4に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、
i)約75~100℃の範囲の吸熱、
ii)約195~210℃の範囲の吸熱、および
iii)215~235℃の範囲の吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、
i)約77℃の開始および約94℃のピークを有する吸熱、
ii)約202℃の開始および約205℃のピークを有する吸熱、ならびに
iii)約220℃の開始および約230℃のピークを有する吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、図5に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、図6に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)パターンによって特徴付けられる
【0018】
別の態様では、本開示は、結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口投与による哺乳動物への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体形態の医薬組成物の形にある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、坐剤、またはエアロゾルの形にある。
【0019】
別の態様では、本開示は、本明細書中で提供される医薬組成物と、癌に罹患している対象を治療するための組成物の使用に関する指示書とを含む、包装された医薬組成物を提供する
【0020】
別の態様では、本開示は、新生物の治療を必要とする対象の新生物を治療する方法であって、本明細書中で提供される結晶性の(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート、または本明細書中で提供される医薬組成物を治療有効量で対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、新生物は癌である。いくつかの実施形態では、癌は、頭頸部癌、脳腫瘍、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、例えば急性リンパ性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤血白血病)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)、および真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、ならびに重鎖疾患である。いくつかの実施形態では、癌は大腸癌である。いくつかの実施形態では、癌は肝臓癌である。いくつかの実施形態では、癌は肺癌である。いくつかの実施形態では、癌は乳癌である。いくつかの実施形態では、癌は口腔癌である。いくつかの実施形態では、癌は頭頚部癌である。いくつかの実施形態では、癌は脳腫瘍である。
【0021】
別の態様では、本開示は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iを調製する方法であって、
(a)溶媒中で(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸と接触させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの溶液を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた溶液を結晶化させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iを得る工程と
を含む方法を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程(a)の溶媒は、酢酸エチル、DCM、エタノール、またはイソプロパノールを含む。いくつかの実施形態では、工程(a)の溶媒はエタノールを含む。いくつかの実施形態では、工程(a)は、約60~90℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、工程(a)は、約70℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、工程(a)は、約1~3時間の時間にわたり行われる。いくつかの実施形態では、工程(a)は、約1.5時間の時間にわたり行われる。
【0023】
いくつかの実施形態では、工程(b)は、工程(a)で得られた溶液を室温に降温させることを含む。いくつかの実施形態では、工程(b)は、工程(a)で得られた溶液を約20~25℃の温度に降温させることを含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、工程(b)で得られた結晶化溶液を濾過することで結晶形態Iを得る工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、得られた結晶形態Iを乾燥させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、乾燥させる工程は、真空下、室温で行われる。いくつかの実施形態では、乾燥させる工程は、真空下、約20~25℃の温度で行われる。
【0024】
別の態様では、本開示は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIを調製する方法であって、
(a)溶媒中で(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸と接触させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの溶液を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた溶液を結晶化させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIを得る工程と
を含む方法を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、工程(a)の溶媒は、酢酸エチル、DCM、エタノール、またはイソプロパノールを含む。いくつかの実施形態では、工程(a)の溶媒はイソプロパノールを含む。いくつかの実施形態では、工程(a)は、室温で行われる。いくつかの実施形態では、工程(a)は、約20~25℃の温度で行われる。
【0026】
いくつかの実施形態では、工程(b)は、工程(a)で得られた溶液を一晩撹拌することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記方法は、工程(b)で得られた結晶化溶液を濾過することで結晶形態IIを得る工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、得られた結晶形態IIを乾燥させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、乾燥させる工程は、真空下、35℃で行われる。
【0028】
参照による援用
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ、参照によって援用されると具体的かつ個別に示される程度にまで、それらの全体を参照によって本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に特殊性を伴って記載される。本発明の特徴および利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を明記する以下の詳細な説明と、次の添付図面を参照することによって理解され得る。
図1】化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図2】化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図3】化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関する熱重量分析(TGA)パターンを示す図である。
図4】化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIに関するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図5】化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIに関する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図6】化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIに関する熱重量分析(TGA)パターンを示す図である。
図7】40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図8】40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図9】25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図10】25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
小分子阻害剤は、溶液中に溶解されるとその活性を最初に評価されることが多いが、多形などの固体状態の特徴も重要である。薬物物質の多形形態は、融点、見かけの溶解度、溶解速度、光学的および機械的特性、蒸気圧、ならびに密度を含む様々な物理的特性を有することができる。これらの特性は、薬物物質および薬物製品を加工または製造する能力に直接的な影響を及ぼす可能性がある。さらに、これらの特性の違いは、薬物の異なる多形形態の異なる薬物動態プロファイルを生じさせる可能性が多くある。それゆえ多形は、多くの場合、種々の製造業者による医薬品の「同一性」に対する規制審査の下、重要な因子である。例えば多形は、ワルファリンナトリウム、ファモチジン、ラニチジンなど、数百万ドル、さらには数十億ドルもの薬物において評価されている。多形は、医薬品の品質、安全性、および/または有効性に影響を及ぼす可能性がある。このため、医薬品の多形が依然として必要とされている。本開示は、この必要性に対処すると同様に、関連する利点を提供する。
【0031】
化合物A
本明細書中で使用されるとき、化合物Aは、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートを指し、以下に示す化学構造:
【0032】
【化3】
を有する。
【0033】
化合物Aは既に調製されている(国際公開第2011/085641号、米国特許第8,334,376号明細書、米国特許第8,993,550号明細書、米国特許第9,399,659号明細書、米国特許第9,814,735号明細書、米国特許第10,179,141号明細書、米国特許第10,471,078号明細書、および米国特許第16/584,263号明細書を参照)。
【0034】
本明細書には、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩)が開示される。
【0035】
本明細書中に開示されるいくつかの実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩は結晶性である。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、「結晶形態」、「多形」、「形態(Form)」、および「形態(form)」は、本明細書中では互換的に使用される場合があり、特定の結晶形態または非晶質形態が言及されない限り、例えば、多形、偽多形、塩、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体配座多形、および非晶質多形を含む化合物のすべての結晶形態および非晶質形態のほか、それらの混合物を含むことを意図している。本発明の化合物は、例えば、多形、偽多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体配座多形体、および非晶質形態の化合物を含む、化合物のすべての結晶形態および非晶質形態のほか、それらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、結晶形態は、単一の固体形態、例えば結晶形態Iである。
【0037】
I.化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態
本発明の方法により作製された多形は、当該技術分野によるいずれかの方法によって特徴付けられ得る。例えば、本発明の方法により作製された多形は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、熱ステージ顕微鏡法(hot-stage microscopy)、および/または分光法(例えば、ラマン、固体核磁気共鳴(ssNMR)、および赤外線(IR))によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、固体形態の結晶化度は、X線粉末回折(XRPD)によって判定される。
【0038】
XRPD:本発明による多形は、XRPDによって特徴付けられ得る。XRPDピークの相対強度は、粒径、試料調製技術、試料取付け手順、および利用される特定の器具に応じて変動する可能性がある。さらに、機器の変動およびその他の要因が、2-Θ値に影響を及ぼす可能性がある。それゆえ、XRPDピークの割当ては、例えば、プラスまたはマイナス約0.2度変動する可能性がある。
【0039】
DSC:本発明による多形は、図2図5などに示されるその特徴的なDSCサーモグラムによっても同定することができる。DSCにおいて、観察される温度は、温度変化の速度、ならびに試料調製技術および利用される特定の機器に左右されることが知られている。このため、DSCサーモグラムに関連する本明細書中で報告される値は、例えば、プラスまたはマイナス約4℃変動する可能性がある。
【0040】
TGA:本発明の多形形態はまた、非晶質材料または他の多形形態とは異なる熱挙動も生じさせる場合がある。熱挙動は、一部の多形形態を他の多形形態と区別するのに使用され得る熱重量分析(TGA)によって実験室で測定され得る。一態様では、多形は、熱重量分析によって特徴付けられ得る。
【0041】
化合物Aのマレイン酸塩の多形形態は、医薬調製物の製造に有用であり、かつ、結晶形態および半結晶形態を産生するための結晶化プロセス、または非晶質形態を得るための固化プロセスによって得ることができる。種々の実施形態では、結晶化は、所望の化合物(例えば、化合物Aのマレイン酸塩)を反応混合物中で生成して所望の多形を反応混合物から単離すること、または、生の化合物を溶媒中、任意選択で熱により溶解し、続いて一定期間にわたり降温(アクティブ冷却を含む)および/もしくは逆溶剤(antisolvent)の添加により生成物を結晶化/固化することのいずれかによって、実行される。結晶化または固化に続いて、最終の多形形態で所望の水分含有量が達成されるまで、乾燥が制御条件下で実行されてもよい。
【0042】
種々の実施形態では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、室温で安定する。いくつかの例では、種々の多形は、相当な化学分解も結晶形態の変化も生じることなく、室温で長期間保管することができる。いくつかの例では、種々の多形は、少なくとも約1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月の期間にわたり室温で保管することができる。いくつかの例では、種々の多形は、約36か月を超える期間にわたり室温で保管することができる。いくつかの例では、種々の多形は、1~2か月、1~3か月、1~6か月、1~9か月、1~12か月、1~18か月、1~24か月、1~30か月、1~36か月、2~3か月、2~6か月、2~9か月、2~12か月、2~18か月、2~24か月、2~30か月、2~36か月、3~6か月、3~9か月、3~12か月、3~18か月、3~24か月、3~30か月、3~36か月、6~9か月、6~12か月、6~18か月、6~24か月、6~30か月、6~36か月、9~12か月、9~18か月、9~24か月、9~30か月、9~36か月、12~18か月、12~24か月、12~30か月、12~36か月、18~24か月、18~30か月、18~36か月、24~30か月、24~36か月、または30~36か月の期間にわたり室温で保管することができる。いくつかの例では、種々の多形は、少なくとも1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月の期間にわたり室温で保管することができる。
【0043】
種々の実施形態では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、室温より上の温度および/または高い相対湿度(RH)で安定する。いくつかの例では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、相当な化学分解も結晶形態の変化も生じることなく、約40℃、約75%RHで長期間保管することができる。いくつかの例では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、約40℃および約75%RHで、約10日、30日、60日、90日、120日、150日、または180日の期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、約40℃および約75%RHで約180日より長い期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、約40℃および約75%RHで、10~14日、10~18日、10~22日、10~26日、10~30日、10~40日、10~50日、10~60日、10~90日、10~120日、10~150日、10~180日、14~18日、14~22日、14~26日、14~30日、14~40日、14~50日、14~60日、14~90日、14~120日、14~150日、14~180日、18~22日、18~26日、18~30日、18~40日、18~50日、18~60日、18~90日、18~120日、18~150日、18~180日、22~26日、22~30日、22~40日、22~50日、22~60日、22~90日、22~120日、22~150日、22~180日、26~30日、26~40日、26~50日、26~60日、26~90日、26~120日、26~150日、26~180日、30~40日、30~50日、30~60日、30~90日、30~120日、30~150日、30~180日、40~50日、40~60日、40~90日、40~120日、40~150日、40~180日、50~60日、50~90日、50~120日、50~150日、50~180日、60~90日、60~120日、60~150日、60~180日、90~120日、90~150日、または90~180日の期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、本明細書中に開示される種々の多形形態(例えば、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iと結晶形態II)は、約40℃、約75%RHで、少なくとも10日、14日、18日、22日、26日、30日、40日、50日、60日、90日、120日、150日、または180日の期間にわたり保管することができる。
【0044】
化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態I
図1は、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
【0045】
図2は、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
【0046】
図3は、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iに関する熱重量分析(TGA)パターンを示す図である。
【0047】
一態様では、本明細書には、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iが提供される。一部の実施形態は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iは、
(a)X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、および10.3±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターン、
(b)図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターン、
(c)約230~240℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(d)約234℃の開始および約238℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(e)図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(f)図3に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)パターン、
(g)40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された後に未変化のXRPD、
(h)25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された後に未変化のXRPD、または
(i)それらの組合せ
を有すると特徴付けられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、および10.3±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される1.8±0.1°2-θ、19.5±0.1°2-θ、および10.3±0.1°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約13.8°2-θ、約19.5°2-θ、および約10.3°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、および14.8±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される25.9±0.1°2-θ、20.6±0.1°2-θ、および14.8±0.1°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約25.9°2-θ、約20.6°2-θ、および約14.8°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される27.8±0.1°2-θ、25.2±0.1°2-θ、および11.4±0.1°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約27.8°2-θ、約25.2°2-θ、および約11.4°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも2つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも3つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも4つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも5つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも6つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも7つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θから選択される少なくとも8つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.2°2-θ、19.5±0.2°2-θ、10.3±0.2°2-θ、25.9±0.2°2-θ、20.6±0.2°2-θ、14.8±0.2°2-θ、27.8±0.2°2-θ、25.2±0.2°2-θ、および11.4±0.2°2-θのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される13.8±0.1°2-θ、19.5±0.1°2-θ、10.3±0.1°2-θ、25.9±0.1°2-θ、20.6±0.1°2-θ、14.8±0.1°2-θ、27.8±0.1°2-θ、25.2±0.1°2-θ、および11.4±0.1°2-θのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約13.8°2-θ、約19.5°2-θ、約10.3°2-θ、約25.9°2-θ、約20.6°2-θ、約14.8°2-θ、約27.8°2-θ、約25.2°2-θ、および約11.4°2-θのピークを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、図2に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、約230~240℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、約234℃の開始および約238℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、DSCサーモグラムにおいて約230~250℃、232~250℃、234~250℃、236~250℃、238~250℃、240~250℃、242~250℃、244~250℃、246~250℃、248~250℃、230~248℃、232~248℃、234~248℃、236~248℃、238~248℃、240~248℃、242~248℃、244~248℃、246~248℃、230~246℃、232~246℃、234~246℃、236~246℃、238~246℃、240~246℃、242~246℃、244~246℃、230~244℃、232~244℃、234~244℃、236~244℃、238~244℃、240~244℃、242~244℃、230~242℃、232~242℃、234~242℃、236~242℃、238~242℃、240~242℃、230~240℃、232~240℃、234~240℃、236~240℃、238~240℃、230~238℃、232~238℃、234~238℃、236~238℃、230~236℃、232~236℃、234~236℃、230~234℃、232~234℃、または230~232℃の吸熱によって特徴付けられる。種々の実施形態では、結晶形態Iは、DSCサーモグラムにおいて約230~240℃、例えば、約230℃、231℃、232℃、233℃、234℃、235℃、236℃、237℃、238℃、239℃、または240℃の吸熱によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iの融点は、約238℃である。
【0055】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、図3に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる。種々の実施形態では、結晶形態Iは、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、または600℃超の温度より上で分解する。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、約200℃の温度より上で分解する。
【0056】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された後に未変化のXRPDによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された後、図7に示すものと実質的に同じXRPDによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された後に未変化のDSCによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、40℃および75%相対湿度(RH)で6か月間保管された後、図8に示すものと実質的に同じDSCによって特徴付けられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された後に未変化のXRPDによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された後、図9に示すものと実質的に同じXRPDによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された後に未変化のDSCによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態Iは、25℃および60%相対湿度(RH)で36か月間保管された後、図10に示すものと実質的に同じDSCによって特徴付けられる。
【0058】
種々の実施形態では、結晶形態Iは室温で安定する。いくつかの例では、結晶形態Iは、相当な化学分解も結晶形態の変化も生じることなく、室温で長期間保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、少なくとも約1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月の期間にわたり室温で保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約36か月を超える期間にわたり室温で保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、1~2か月、1~3か月、1~6か月、1~9か月、1~12か月、1~18か月、1~24か月、1~30か月、1~36か月、2~3か月、2~6か月、2~9か月、2~12か月、2~18か月、2~24か月、2~30か月、2~36か月、3~6か月、3~9か月、3~12か月、3~18か月、3~24か月、3~30か月、3~36か月、6~9か月、6~12か月、6~18か月、6~24か月、6~30か月、6~36か月、9~12か月、9~18か月、9~24か月、9~30か月、9~36か月、12~18か月、12~24か月、12~30か月、12~36か月、18~24か月、18~30か月、18~36か月、24~30か月、24~36か月、または30~36か月の期間にわたり室温で保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、少なくとも1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月の期間にわたり室温で保管することができる。
【0059】
種々の実施形態では、結晶形態Iは、室温より上の温度および/または高RHで安定する。いくつかの例では、結晶形態Iは、相当な化学分解も結晶形態の変化も生じることなく、約40℃、約75%RHで長期間保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約40℃および約75%RHで、約10日、30日、60日、90日、120日、150日、または180日の期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約40℃および約75%RHで、約180日より長い期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約40℃および約75%RHで、10~14日、10~18日、10~22日、10~26日、10~30日、10~40日、10~50日、10~60日、10~90日、10~120日、10~150日、10~180日、14~18日、14~22日、14~26日、14~30日、14~40日、14~50日、14~60日、14~90日、14~120日、14~150日、14~180日、18~22日、18~26日、18~30日、18~40日、18~50日、18~60日、18~90日、18~120日、18~150日、18~180日、22~26日、22~30日、22~40日、22~50日、22~60日、22~90日、22~120日、22~150日、22~180日、26~30日、26~40日、26~50日、26~60日、26~90日、26~120日、26~150日、26~180日、30~40日、30~50日、30~60日、30~90日、30~120日、30~150日、30~180日、40~50日、40~60日、40~90日、40~120日、40~150日、40~180日、50~60日、50~90日、50~120日、50~150日、50~180日、60~90日、60~120日、60~150日、60~180日、90~120日、90~150日、または90~180日の期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約40℃、約75%RHで、少なくとも10日、14日、18日、22日、26日、30日、40日、50日、60日、90日、120日、150日、または180日の期間にわたり保管することができる。
【0060】
種々の実施形態では、結晶形態Iは、室温より上の温度および/または高RHで安定する。いくつかの例では、結晶形態Iは、相当な化学分解も結晶形態の変化も生じることなく、約25℃、約60%RHで長期間保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約25℃、約60%RHで、少なくとも約1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月の期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約25℃、約60%RHで、約36か月より長い期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約25℃、約60%RHで、1~2か月、1~3か月、1~6か月、1~9か月、1~12か月、1~18か月、1~24か月、1~30か月、1~36か月、2~3か月、2~6か月、2~9か月、2~12か月、2~18か月、2~24か月、2~30か月、2~36か月、3~6か月、3~9か月、3~12か月、3~18か月、3~24か月、3~30か月、3~36か月、6~9か月、6~12か月、6~18か月、6~24か月、6~30か月、6~36か月、9~12か月、9~18か月、9~24か月、9~30か月、9~36か月、12~18か月、12~24か月、12~30か月、12~36か月、18~24か月、18~30か月、18~36か月、24~30か月、24~36か月、または30~36か月の期間にわたり保管することができる。いくつかの例では、結晶形態Iは、約25℃、約60%RHで、少なくとも1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月の期間にわたり保管することができる。
【0061】
化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態II
図4は、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIに関するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
【0062】
図5は、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIに関する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
【0063】
図6は、化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIに関する熱重量分析(TGA)パターンを示す図である。
【0064】
一態様では、本明細書には、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIが提供される。一部の実施形態は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIは、
(a)X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、および15.2±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターン、
(b)図4に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターン、
(c)i)約75~100℃の範囲の吸熱、
ii)約195~210℃の範囲の吸熱、および
iii)215~235℃の範囲の吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(d)i)約77℃の開始および約94℃のピークを有する吸熱、
ii)約202℃の開始および約205℃のピークを有する吸熱、ならびに
iii)約220℃の開始および約230℃のピークを有する吸熱
を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(e)図5に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、
(f)図6に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)パターン、または
(g)それらの組合せ
を有すると特徴付けられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、図4に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0066】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、および15.2±0.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.1°2-θ、20.1±0.1°2-θ、および15.2±0.1°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約14.3°2-θ、約20.1°2-θ、および約15.2°2-θのピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、および16.4±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される18.4±0.1°2-θ、26.2±0.1°2-θ、および16.4±0.1°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約18.4°2-θ、約26.2°2-θ、および約16.4°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される20.9±0.1°2-θ、25.0±0.1°2-θ、および27.0±0.1°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約20.9°2-θ、約25.0°2-θ、および約27.0°2-θから選択される少なくとも1つのピークをさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも1つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも2つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも3つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも4つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも5つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも6つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも7つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θから選択される少なくとも8つのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.2°2-θ、20.1±0.2°2-θ、15.2±0.2°2-θ、18.4±0.2°2-θ、26.2±0.2°2-θ、16.4±0.2°2-θ、20.9±0.2°2-θ、25.0±0.2°2-θ、および27.0±0.2°2-θのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される14.3±0.1°2-θ、20.1±0.1°2-θ、15.2±0.1°2-θ、18.4±0.1°2-θ、26.2±0.1°2-θ、16.4±0.1°2-θ、20.9±0.1°2-θ、25.0±0.1°2-θ、および27.0±0.1°2-θのピークを含む。いくつかの実施形態では、X線粉末回折パターンは、X線波長1.54179Åを用いたX線粉末回折によって測定される約14.3°2-θ、約20.1°2-θ、約15.2°2-θ、約18.4°2-θ、約26.2°2-θ、約16.4°2-θ、約20.9°2-θ、約25.0°2-θ、および約27.0°2-θのピークを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、図5に示すものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、約75~100℃の範囲の吸熱、約195~210℃の範囲の吸熱、および約215~235℃の範囲の吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、約77℃の開始および約94℃のピークを有する吸熱、約202℃の開始および約205℃のピークを有する吸熱、ならびに約220℃の開始および約230℃のピークを有する吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、DSCサーモグラムにおいて約70~100℃、例えば約70~100℃、70~95℃、70~90℃、70~85℃、70~80℃、70~75℃、75~100℃、75~95℃、75~90℃、75~85℃、75~80℃、80~100℃、80~95℃、80~90℃、80~85℃、85~100℃、85~95℃、85~90℃、90~100℃、90~95℃、または95~100℃の範囲の吸熱によって特徴付けられる。いくつかの例では、結晶形態IIは、DSCサーモグラムにおいて約94℃の吸熱によって特徴付けられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、DSCサーモグラムにおいて約190~220℃、例えば約190~220℃、190~215℃、190~210℃、190~205℃、190~200℃、190~195℃、195~220℃、195~215℃、195~210℃、195~205℃、195~200℃、200~220℃、200~215℃、200~210℃、200~205℃、205~220℃、205~215℃、205~210℃、210~220℃、210~215℃、または215~220℃の範囲の吸熱によって特徴付けられる。いくつかの例では、結晶形態IIは、DSCサーモグラムにおいて約205℃の吸熱によって特徴付けられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、DSCサーモグラムにおいて約210~240℃、例えば約210~240℃、210~235℃、210~230℃、210~225℃、210~220℃、210~215℃、215~240℃、215~235℃、215~230℃、215~225℃、215~220℃、220~240℃、220~235℃、220~230℃、220~225℃、225~240℃、225~235℃、225~230℃、230~240℃、230~235℃、または235~240℃の範囲の吸熱によって特徴付けられる。いくつかの例では、結晶形態IIは、DSCサーモグラムにおいて約230℃の吸熱をさらに特徴とする。
【0074】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、図6に示すものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)パターンによって特徴付けられる。種々の実施形態では、結晶形態IIは、約150℃、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、または600℃超の温度より上で分解する。いくつかの実施形態では、結晶形態IIは、約150℃の温度より上で分解する。
【0075】
II.化合物Aのマレイン酸塩およびその多形形態を作製する方法
一態様では、本発明は、化合物Aのマレイン酸塩:
【0076】
【化4】
の1つまたは複数の多形を作製する方法を提供する。
【0077】
いくつかの実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩は、本明細書中の例により調製される。
【0078】
本発明による多形は、化合物Aまたは化合物Aのマレイン酸塩を産生するのに使用される出発材料に限定されない。
【0079】
一態様では、本発明は、化合物Aのマレイン酸塩またはその薬学的に許容可能な塩および/もしくは溶媒和物の多形体を、化合物Aのマレイン酸塩の合成後に第1の固体形態としての所望の多形を単離することによって、または代替的に、先の化合物Aのマレイン酸塩の固体形態からの移行として所望の多形を単離することによって作製する方法に関する。1つの形態から別の形態への移行は、それらが医薬調製物の製造に所望される形態を得るための代替的な製造方法であり得るので、本発明の範囲内にある。
【0080】
本発明の方法による化合物Aのマレイン酸塩の多形は、結晶形態I、結晶形態II、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0081】
本明細書中に記載の化学実体および中間体の単離と精製は、必要に応じて、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーもしくは厚層クロマトグラフィー、またはこれら手順の組合せなどのいずれかの好適な分離または精製手順によって行うことができる。好適な分離および単離手順の具体的な例示は、以下の例を参照することによって得ることができる。しかし、他の等価な分離または単離手順も使用することができる。結晶化の前、化合物Aのマレイン酸塩は、約50%の化学純度、55%の化学純度、60%の化学純度、65%の化学純度、70%の化学純度、75%の化学純度、80%の化学純度、90%の化学純度、91%の化学純度、92%の化学純度、93%の化学純度、94%の化学純度、95%の化学純度、96%の化学純度、97%の化学純度、98%の化学純度、99%の化学純度、約98%の化学純度、または約100%の化学純度で単離されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示される結晶形態は、約98%未満、約97%未満、約96%未満、約95%未満、約94%未満、約93%未満、約92%未満、約91%未満、約90%未満、約89%未満、約88%未満、約87%未満、約86%未満、約85%未満、約84%未満、約83%未満、約82%未満、約81%未満、約80%未満、約78%未満、約76%未満、約74%未満、約72%未満、または約70%未満の化学純度で化合物Aのマレイン酸塩を結晶化することによって得られる。いくつかの実施形態では、結晶形態は、約70%~約99%、80%~約96%、85%~約96%、90%~約96%、80%~約98%、85%~約98%、90%~約98%、92%~約98%、94%~98%、または96%~約98%の範囲の化学純度で化合物Aのマレイン酸塩を結晶化することによって得られる。
【0083】
いくつかの実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩の所望の多形を単離することは、単溶媒系からの粗製反応生成物の結晶化を含む。種々の実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩の所望の多形体を単離することは、総じて多溶媒系と理解される二次、三次、またはそれより上の溶媒系からの粗製生成物の結晶化を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、結晶化は、所望の化合物Aのマレイン酸塩を反応混合物中で生成し、所望の多形を反応混合物から単離することによって実行される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、マレイン酸に(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートの溶液を添加することで、溶解された(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩)を形成することによって、形成される。他の実施形態では、反応混合物は、化合物Aのマレイン酸塩を溶媒に溶解させることによって形成される。
【0085】
結晶形態Iの調製
いくつかの実施形態では、所望の多形は化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iであり、単離する工程は、単溶媒系からの粗製反応生成物の結晶化を含む。いくつかの実施形態では、所望の多形は化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iであり、単離する工程は、総じて多溶媒系と理解される二次、三次、またはそれより上の溶媒系からの粗製反応生成物の結晶化を含む。いくつかの実施形態では、粗製反応生成物は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸に接触させることで、溶解された(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩)を形成することによって、形成される。
【0086】
いくつかの実施形態では、所望の多形は化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iであり、化合物Aのマレイン酸塩を単離することは、単溶媒系または多溶媒系からの結晶化を含み、結晶化は、周囲温度より上の温度で(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸に接触させることによって、in situで化合物Aのマレイン酸塩を形成することを含む。いくつかの例では、単溶媒系または多溶媒系での反応は、約40~90℃、45~90℃、50~90℃、55~90℃、60~90℃、65~90℃、70~90℃、75~90℃、40~85℃、45~85℃、50~85℃、55~85℃、60~85℃、65~85℃、70~85℃、75~85℃、80~85℃、40~80℃、45~80℃、50~80℃、55~80℃、60~80℃、65~80℃、70~80℃、75~80℃、40~75℃、45~75℃、50~75℃、55~75℃、60~75℃、65~75℃、70~75℃、40~70℃、45~70℃、50~70℃、55~70℃、60~70℃、65~70℃、40~65℃、45~65℃、50~65℃、55~65℃、60~65℃、40~60℃、45~60℃、50~60℃、55~60℃、40~50℃、または45~50℃の温度で行われる。
【0087】
いくつかの例では、溶媒は、酢酸エチル、DCM、エタノール、またはイソプロパノールを含む。いくつかの例では、溶媒はエタノールを含む。いくつかの実施形態では、溶媒はエタノールを含み、反応は、約65~75℃の温度で行われる。あらゆる好適な量の溶媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、使用される溶媒(例えば、エタノール)の量は、化合物Aのマレイン酸塩のグラム当たり約40~60mLである。例えば、いくつかの実施形態では、使用される溶媒の量は、化合物Aのマレイン酸塩のグラム当たり50mLである。いくつかの例では、溶媒はエタノールを含み、反応は約65~75℃の温度で行われ、溶媒の量は、化合物Aのマレイン酸塩の約50mL/gである。
【0088】
種々の実施形態では、結晶化は、化合物Aのマレイン酸塩が溶解した溶液を、例えば、約40~100℃、40~90℃、40~80℃、40~70℃、40~60℃、40~50℃、50~100℃、50~90℃、50~80℃、50~70℃、50~60℃、60~100℃、60~90℃、60~80℃、60~70℃、70~100℃、70~90℃、70~80℃、80~100℃、または80~90℃の温度に能動的に加温することをさらに含む。いくつかの実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩が溶解した溶液は、約65~75℃の温度に加温される。種々の実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩が溶解した溶液は、一定期間、例えば、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、またはそれより長い期間にわたり、加温温度で維持される。
【0089】
種々の実施形態では、結晶化は、化合物Aのマレイン酸塩が溶解した加温溶液を、例えば、約0~40℃、0~30℃、0~20℃、0~10℃、10~40℃、10~30℃、10~20℃、20~40℃、20~30℃、20~10℃、または30~40℃の温度に能動的に降温させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、結晶化は、化合物Aのマレイン酸塩が溶解した加温溶液を、約20~30℃の温度に能動的に降温させることをさらに含む。種々の実施形態では、化合物Aのマレイン酸塩が溶解した溶液は、一定期間、例えば、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、またはそれより長い期間にわたり、このような低温でさらに維持される。
【0090】
種々の実施形態では、能動的な加温、その後の能動的な降温の工程は、複数回、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回繰り返される。いくつかの実施形態では、能動的な加温、その後の能動的な降温の工程は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回繰り返される。
【0091】
種々の実施形態では、結晶化は、得られた化合物Aのマレイン酸塩の結晶を含有する溶液を濾過することをさらに含む。いくつかの実施形態では、結晶化は、任意選択で得られた結晶を溶媒によって、例えば、再結晶化溶媒によって1回以上洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、結晶化は、任意選択で得られた結晶を例えば真空下、約20~30℃の温度で乾燥させることを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iの化学純度は、60%、70%、80%、90%、95%、または99%より高い。いくつかの実施形態では、結晶形態Iの化学純度は、約90%より高い。いくつかの実施形態では、結晶形態Iの化学純度は、約95%より高い。いくつかの実施形態では、結晶形態Iの化学純度は、約99%より高い。結晶形態Iの化学純度は、いずれかの利用可能な分析技術、例えばHPLC分析によって測定されてよい。
【0093】
種々の実施形態では、結晶形態Iは乾燥している。種々の実施形態では、結晶形態Iは溶媒和されていない。種々の実施形態では、結晶形態Iは水和されていない。種々の実施形態では、結晶形態Iは無水である。
【0094】
結晶形態IIの調製
いくつかの実施形態では、所望の多形は化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIであり、単離する工程は、単溶媒系からの粗製反応生成物の結晶化を含む。いくつかの実施形態では、所望の多形は化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIであり、単離する工程は、総じて多溶媒系と理解される二次、三次、またはそれより上の溶媒系からの粗製反応生成物の結晶化を含む。いくつかの実施形態では、粗製反応生成物は、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸に接触させることで、溶解された(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩)を形成することによって、形成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、所望の多形は化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIであり、化合物Aのマレイン酸塩を単離することは、単溶媒系または多溶媒系からの結晶化を含み、結晶化は、周囲温度より上の温度で(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートをマレイン酸に接触させることによって、in situで化合物Aのマレイン酸塩を形成することを含む。いくつかの例では、単溶媒系または多溶媒系での反応は、約10~50℃、10~45℃、10~40℃、10~35℃、10~30℃、10~25℃、10~20℃、10~15℃、15~50℃、15~45℃、15~40℃、15~35℃、15~30℃、15~25℃、15~20℃、20~50℃、20~45℃、20~40℃、20~35℃、20~30℃、20~25℃、25~50℃、25~45℃、25~40℃、25~35℃、25~30℃、30~50℃、30~45℃、30~40℃、30~35℃、35~50℃、35~45℃、35~40℃、40~50℃、40~45℃、または45~50℃の温度で行われる。
【0096】
いくつかの例では、溶媒は、酢酸エチル、DCM、エタノール、またはイソプロパノールを含む。いくつかの例では、溶媒はイソプロパノールを含む。いくつかの実施形態では、溶媒はイソプロパノールを含み、反応は、約20~30℃の温度で行われる。あらゆる好適な量の溶媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、使用される溶媒(例えば、イソプロパノール)の量は、化合物Aのマレイン酸塩のグラム当たり約80~100mLである。例えば、いくつかの実施形態では、使用される溶媒の量は、化合物Aのマレイン酸塩のグラム当たり90mLである。いくつかの例では、溶媒はイソプロパノールを含み、反応は約20~30℃の温度で行われ、溶媒の量は、化合物Aのマレイン酸塩の約90mL/gである。
【0097】
種々の実施形態では、結晶化は、得られた化合物Aのマレイン酸塩の結晶を含有する溶液を濾過することをさらに含む。いくつかの実施形態では、結晶化は、任意選択で得られた結晶を溶媒によって、例えば、再結晶化溶媒によって1回以上洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、結晶化は、任意選択で得られた結晶を例えば真空下、約30~40℃の温度で乾燥させることを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIの化学純度は、60%、70%、80%、90%、95%、または99%より高い。いくつかの実施形態では、結晶形態IIの化学純度は、約90%より高い。いくつかの実施形態では、結晶形態IIの化学純度は、約95%より高い。いくつかの実施形態では、結晶形態IIの化学純度は、約99%より高い。結晶形態IIの化学純度は、いずれかの利用可能な分析技術、例えばHPLC分析によって測定されてよい。
【0099】
III.さらなる定義
本明細書中で使用されるように、「活性剤」は、生体活性を有する化学実体を示すために使用される。特定の実施形態では、「活性剤」は、薬学的有用性を有する化合物である。例えば活性剤は、抗癌治療薬であり得る。
【0100】
本明細書中で使用されるように、「調節」は、本明細書中に記載の化学実体の存在に対する直接的または間接的な応答時の活性の、化学実体の非存在下での活性と比較した変化を指す。この変化は、活性の増加または活性の減少であり、かつ、化合物と標的との直接的な相互作用に起因するもの、または化合物と、標的の活性に影響を及ぼす1つもしくは複数の他の因子との相互作用に起因するものであり得る。例えば、化学実体の存在は、例えば、標的に直接結合するか、(直接的もしくは間接的に)別の因子に標的活性を増加もしくは減少させるか、または(直接的もしくは間接的に)細胞もしくは生物に存在する標的の量を増加もしくは減少させることによって、標的活性を増加または減少させる場合がある。
【0101】
本明細書中で使用されるように、本明細書中に記載の化学実体の「治療有効量」は、ヒトまたは非ヒト対象に投与されたときに、症状の軽快、疾患進行の緩徐化、または疾患の予防などの治療利益をもたらすのに有効な量を指す。
【0102】
「処置すること(Treating)」または「処置(treatment)」は、投与を必要とする哺乳動物対象、具体的にヒト対象への化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩の投与を包含し、かつ、(i)癌などの疾患の臨床的症状の発症を阻止すること、(ii)癌などの疾患の臨床的症状の退行を引き起こすこと、および/または(iii)癌などの疾患の出現を防止するための予防的治療を含む。
【0103】
本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容可能な」成分は、妥当なベネフィット/リスク比に見合った過度の有害な副作用(毒性、刺激、およびアレルギー反応など)が生じることなくヒトおよび/または動物に対する使用に適した成分である。
【0104】
「薬学的に許容可能な塩」には、塩酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、硝酸塩のような塩など無機酸を有する塩のほか、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル-アミノメタン)、-p-トルエンスルホン酸塩、プロピオン酸塩(priopionate)、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、および酢酸塩、nが0~4であるHOOC-(CH-COOHなどのアルカン酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。他の塩には、硫酸塩、メタスルホン酸塩、臭化物、トリフルオロ酢酸塩、ピクリン酸塩、ソルビン酸塩、ベンジル酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、フタル酸塩、またはモルホリンが挙げられる。薬学的に許容可能な陽イオンには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
加えて、本明細書中に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸塩の溶液を塩基化することによって得ることができる。反対に生成物が遊離塩基の場合、付加塩、具体的に薬学的に許容可能な付加塩は、酸付加塩を塩基性化合物から調製するための従来手順に従って、遊離塩基を好適な有機溶媒に溶解させて溶液を酸で処理することによって、産生されてもよい。当業者は、非毒性の薬学的に許容可能な付加塩を調製するのに使用され得る種々の合成方法を認識するであろう。
【0106】
本明細書中で使用されるように、「対象」は、治療、観察、または実験の対象であるか、またはその予定となる哺乳動物を指す。本明細書中に記載の方法は、ヒトの治療および獣医学的用途の両方に有用であり得る。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0107】
「哺乳動物」という用語は、その標準的な意味を有することが意図され、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ヒツジ、およびウシを包含する。
【0108】
本明細書中に記載の「プロドラッグ」は、対象に投与された場合にプロドラッグの代謝処理に際して化合物Aとなるあらゆる化合物を含む。同様に、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な塩の「プロドラッグ」を含む。プロドラッグの例には、カルボン酸基など化合物Aの官能基の誘導体を含む。カルボン酸基の例示的なプロドラッグには、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アリールアルキルエステル、およびアリールオキシアルキルエステルなどのカルボン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なプロドラッグには、エチルエステルなどの低級アルキルエステル、ピバロイルオキシメチル(POM)などのアシルオキシアルキルエステル、グリコシド、およびアスコルビン酸誘導体が挙げられる。他の例示的なプロドラッグには、カルボン酸のアミドが挙げられる。プロドラッグについての議論は、T.HiguchiおよびV.Stellaによる「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、Edward B.Roche編の「Bioreversible Carriers in Drug Design」,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987、および「Design of Prodrugs」,H.Bundgaard,Elsevier,1985で提供される。
【0109】
本明細書中に開示される化合物は、様々な濃縮された同位体形態、例えば、H、H、11C、13C、および/または14Cの含有量が豊富な形態で使用することができる。特定の一実施形態では、化合物は、少なくとも1つの位置で重水素化される。このような重水素化形態は、米国特許第5,846,514号明細書および同第6,334,997号明細書に記載される手順によって作製することができる。米国特許第5,846,514号明細書および同第6,334,997号明細書に記載されるように、重水素化は、薬物の有効性を改善し、作用持続時間を増加させることができる。
【0110】
重水素置換化合物は、Dean,Dennis C.;Editor.Recent Advances in the Synthesis and Applications of Radiolabeled Compounds for Drug Discovery and Development.[In:Curr.,Pharm.Des.,2000;6(10)]2000,110頁;George W.;Varma,Rajender S.The Synthesis of Radiolabeled Compounds via Organometallic Intermediates,Tetrahedron,1989,45(21),6601~21頁;およびEvans,E.Anthony.Synthesis of radiolabeled compounds,J.Radioanal.Chem.,1981,64(1-2),9~32頁に記載されるものなど種々の方法を用いて合成することができる。
【0111】
「溶媒和物」は、溶媒と化合物との相互作用によって形成される。「化合物」という用語は、化合物の溶媒和物を含むことが意図される。同様に、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な塩の溶媒和物を含む。好適な溶媒和物は、一水和物および半水和物を含む水和物などの薬学的に許容可能な溶媒和物である。また、1つまたは複数の結晶化溶媒で形成された溶媒和物も含まれる。
【0112】
本明細書中に記載の化合物の薬学的に許容可能な形態は、薬学的に許容可能な塩、キレート、非共有結合性錯体、プロドラッグ、およびそれらの混合物を含む。
【0113】
「キレート」は、2つ(またはそれ以上)の点における金属イオンへの化合物の配位によって形成される。「化合物」という用語は、化合物のキレートを含むことが意図される。同様に、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な塩のキレートを含む。
【0114】
「非共有結合性錯体」は、化合物と別の分子との相互作用によって形成され、このとき化合物と分子との間に共有結合は形成されない。例えば、錯化は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、および静電相互作用(イオン結合とも呼ばれる)を介して生じる可能性がある。このような非共有結合性錯体は、用語「化合物」に含まれる。同様に、薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な塩の「非共有結合性錯体」を含む。
【0115】
本明細書中で、分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性に対して範囲が使用される場合、範囲およびその中の特定の実施形態のすべての組合せおよび組合せ構成要素(sub combinations)が含まれることが意図される。
【0116】
数または数値範囲に言及するときの「約」という用語は、言及される数または数値範囲が、実験的変動(または統計的実験誤差)内の近似値であることを意味し、このため数または数値範囲は、例えば、明示された数または数値範囲の1%~15%の間で変動する場合がある。数値範囲のいくつかの例では、「約」は±10%を意味する。
【0117】
本明細書中で使用されるように、「有意」は、スチューデントT検定などの統計的有意性の標準パラメトリック検定において統計的に有意であるあらゆる検出可能な変化を指し、このときp<0.05である。
【0118】
本明細書中で使用されるように、「癌」は、癌腫および肉腫を含め、哺乳動物に見られるすべてのタイプの癌、新生物、または悪性腫瘍を指す。癌の例は、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮、および髄芽腫の癌である。
【0119】
IV.使用方法
本明細書中に記載の多形は、悪性腫瘍および良性腫瘍、ならびに癌を含む種々の新生物を治療するのに使用され得る。本明細書中に記載の多形、組成物、および方法によって予防および/または治療可能な癌には、ヒト肉腫および癌腫、例えば、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、甲状腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、エルドハイム・チェスター病(ECD)、白血病、例えば急性リンパ性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤血白血病)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)、および真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、ならびに重鎖疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載の多形、組成物、および方法によって予防および/または治療可能な良性腫瘍には、頭蓋咽頭腫が挙げられるがこれに限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の多形は、以下、
i.食道、胃、小腸、結腸(結腸直腸を含む)、肝臓および肝内胆管、胆嚢および他の胆道、膵臓、ならびに他の消化器官を含むがこれらに限定されない消化器系、
ii.喉頭、肺および気管支、ならびにその他の呼吸器官を含むがこれらに限定されない呼吸器系、
iii.皮膚、
iv.甲状腺、
v.乳房、
vi.子宮頸部、卵巣、および前立腺を含むがこれらに限定されない生殖器系、
vii.膀胱、腎臓、および腎盂を含むがこれらに限定されない泌尿器系、ならびに
viii.舌、口、咽頭、およびその他の口腔を含むがこれらに限定されない口腔および咽頭
の癌の治療のために使用される。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の多形は、結腸癌、肝臓癌、肺癌、黒色腫、甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、口腔癌、頭頸部癌、および脳腫瘍の治療に使用される。
【0122】
本明細書中に記載の多形はまた、治療されている疾病に対する特定の有用性のために選択される他の周知の治療剤と組み合わせて使用されてもよい。例えば、本明細書中に記載の多形は、少なくとも1つの追加の抗癌剤および/または細胞傷害剤と組み合わせて有用な場合がある。さらに、本明細書中に記載の多形は、細胞表面成長因子受容体を、細胞増殖を開始する核シグナルに連結させるシグナル伝達経路の部分の他の阻害剤と組み合わせて有用な場合がある。
【0123】
本明細書中に記載の多形と組み合わせて使用され得る、このような既知の抗癌剤および/または細胞傷害剤には、以下が挙げられる:
(i)アルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾラミド、およびニトロソウレア)、代謝拮抗薬(例えば、ゲムシタビン、および5-フルオロウラシルやテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素などの葉酸拮抗薬)、抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、およびミトラマイシンのようなアントラサイクリン)、抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビンのようなビンカアルカロイド、タキソールやタキソテールなどのタキソイド、ポロキナーゼ阻害剤)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドやテニポシドのようなエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、およびカンプトテシン)などの腫瘍内科で使用される他の抗増殖薬/抗腫瘍薬およびそれらの組合せ、
(ii)抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、および酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン、およびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール、およびエキセメスタン)、およびフィナステリドなどの5α-レダクターゼ阻害剤、
(iii)抗浸潤剤[例えば、4-(6-クロロ-2,3メチレンジオキシアニリノ)-7-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]-5-テトラヒドロピラン-4イルオキシキナゾリン(AZD0530、国際公開第01/94341号)、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-{6-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]-2-メチルピリミジン-4イルアミノ}チアゾール-5-カルボキサミド(ダサチニブ、BMS-354825、J.Med.Chern.,2004,47,66586661)、およびボスチニブ(SK1-606)などのc-Srcキナーゼファミリー阻害剤、ならびにマリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害剤、またヘパラナーゼに対する抗体]、
(iv)成長因子機能の阻害剤(例えば、このような阻害剤には、成長因子抗体および成長因子受容体抗体(例えば、抗erbB2抗体トラスツズマブ[Herceptin(商標)]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗erbB1抗体セツキシマブ[Erbitux、C225]、およびStemらによる「Critical reviews in oncology/haematology」,2005,Vol.54,11~29頁に開示されるいずれかの成長因子または成長因子受容体抗体)が挙げられ、このような阻害剤には、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えば、N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(エルロチニブ、OSI-774)、および6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(CI1033)、ラパチニブなどのerbB2チロシンキナーゼ阻害剤といった、EGFRファミリーのチロシンキナーゼ阻害剤)、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、インスリン成長因子ファミリーの阻害剤、イマチニブおよび/またはニロチニブ(AMN107)などの血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤などのRas/Rafシグナル伝達阻害剤、例えばソラフェニブ(BAY43-9006)、チピファルニブ(RI15777)、およびロナファルニブ(SCH66336))、MEKおよび/またはAKTキナーゼを通る細胞シグナル伝達の阻害剤、c-kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、P13キナーゼ阻害剤、Plt3キナーゼ阻害剤、CSF-IRキナーゼ阻害剤、IGF受容体(インスリン様成長因子)キナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、AZD1152、PH739358、VX-680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX-528、およびAX39459)、ならびにCDK2および/またはCDK4阻害剤などのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤が挙げられる)、
(v)血管内皮増殖因子の効果を阻害するものなどの抗血管新生剤(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標))、および例えば、バンデタニブ(ZD6474)、バタラニブ(PTK787)、スニチニブ(SU1l248)、アキシチニブ(AG-013736)、パゾパニブ(GW786034)、および4・{4-フルオロ-2-メチルインドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-(3ピロリジン-1-イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171、国際公開第00/47212号内の実施例240)などのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、国際公開第97/22596号、同第97/30035号、同第97/32856号、および同第98/13354号に開示されるものなどの化合物、ならびに他の機構により作用する化合物(例えば、リノミド、インテグリンav~3機能の阻害剤、およびアンギオスタチン))、
(vi)コンブレタスタチンA4や、国際公開第99/02166号、同第00/40529号、同第00/41669号、同第01/92224号、同第02/04434号、および同第02/08213号に開示される化合物などの血管損傷剤、
(vii)エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えば、ジボテンタン(ZD4054)またはアトラセンタン、
(viii)アンチセンス治療薬、例えば、ISIS2503や抗rasアンチセンスなどの上記に列挙した標的を対象とするもの、
(ix)例えば、異常p53または異常BRCA1もしくはBRCA2などの異常遺伝子を置換する手法、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ、または細菌性ニトロレダクターゼ酵素を使用するものなどのGDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)手法、および多剤耐性遺伝子治療などの化学療法または放射線療法に対する対象の耐性を高めるための手法を含む、遺伝子治療手法、ならびに
(x)例えば、インターロイキン2、インターロイキン4、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインによるトランスフェクションなどの対象の腫瘍細胞の免疫原性を高めるためのex-vivoおよびin-vivo手法、T細胞エネルギーを減少させる手法、サイトカインでトランスフェクトされた樹状細胞などのトランスフェクトされた免疫細胞を用いる手法、サイトカインでトランスフェクトされた腫瘍細胞株を用いる手法、および抗イディオタイプ抗体を用いる手法を含む、免疫療法手法。
【0124】
特定の実施形態では、化合物Aの少なくとも1つの多形は、パクリアタキセル、ボルテゾミブ、ダカルバジン、ゲムシタビン、トラスツズマブ、ベバシズマブ、カペシタビン、ドセタキセル、エルロチニブ、AROMASIN(商標)(エキセメスタン)などのアロマターゼ阻害剤、およびFASLODEX(商標)(フルベストラント)などのエストロゲン受容体阻害剤から選択される1つまたは複数の薬剤と組み合わせて投与される。
【0125】
化合物Aの多形体がヒト対象に投与される場合、1日の投与量は、通常、個々の対象の年齢、体重、および応答、ならびに対象の症状の重症度に応じて全体的に変動する投与量で、処方医師によって決定されることとなる。
【0126】
1つの例示的な用途では、化合物Aの少なくとも1つの多形が、好適な量で癌、例えば乳癌の治療を受けている哺乳動物に投与される。投与は典型的に、1日あたり体重1kgにつき少なくとも約0.1mgなど、1日あたり体重1kgにつき約0.01mg/kg~体重1kgにつき約100mgの間の量で行われる(単回用量または分割用量で投与される)。特定の治療投与量は、例えば、約1mg~約1000mgなど、約0.01mg~約1000mgの化合物Aの多形を含むことができる。調製物の単位用量における化合物Aの少なくとも1つの多形の分量は、特定の用途に応じて、約1mg~300mg、例えば10mg~200mgなど約0.1mg~1000mgの範囲で変動または調整されてもよい。投与される量は、使用される化合物Aの少なくとも1つの多形の特定のIC50値、ならびに健康、体重、および年齢などの因子を考慮した主治医の判断に応じて変動する。本明細書中に記載の化合物Aの少なくとも1つの多形が唯一の有効成分ではない併用用途では、化合物Aの少なくとも1つの多形をより少量で投与し、依然として治療または予防効果を達成することも可能な場合がある。
【0127】
いくつかの実施形態では、医薬調製物は単位剤形にある。このような形態では、調製物は、化合物Aの多形の適切な分量、例えば、所望の目的を達成するのに有効な量を含有する単位用量に細分される。
【0128】
使用される実際の投与量は、対象の要件、および治療される疾病の重症度に応じて変動させられる場合もある。特定の状況における適切な投与量の決定は、当業者の考え得る範囲内にある。一般的に、治療は、化合物Aの少なくとも1つの多形の最適用量よりも少ない投与量で開始される。その後、この投与量は、その状況下で最適な効果が達成されるまで少量ずつ増加される。便宜上、1日の総投与量は、分割されて、必要に応じてその日の間に少量ずつ投与されてもよい。
【0129】
化合物Aの少なくとも1つの多形、ならびに適用可能な場合には他の化学療法剤および/または放射線療法の投与における量と頻度は、対象の年齢、状態、およびサイズ、ならびに治療されている疾患の重症度などの因子を考慮して主治医(医師)の判断に従い調節されることになる。
【0130】
化学療法剤および/または放射線療法は、当該技術分野で周知の治療プロトコルに従って投与することができる。化学療法剤および/または放射線療法の投与は、治療されている疾患、ならびにその疾患に対して把握されている化学療法剤および/または放射線療法の効果に応じて変動させることができることが、当業者には明白であろう。また、当該技術分野の臨床医の考えに従って、治療プロトコル(例えば、投与量および投与時間)は、投与された治療剤(すなわち、抗腫瘍薬または放射線)で観察された効果、および投与された治療剤に対して観察された疾患の応答を考慮して、変動させることができる。
【0131】
また、一般に、化合物Aの少なくとも1つの多形は、化学療法剤と同じ医薬組成物中で投与される必要はなく、異なる物理特性および化学特性により、異なる経路で投与されてもよい。例えば、多形/組成物は、その良好な血中レベルを生成かつ維持するために経口投与されてよく、一方で化学療法剤は静脈内投与されてもよい。同じ医薬組成物における投与形態および投与の妥当性の決定は、可能であれば、当該技術分野の臨床医の考え得る範囲内で十分である。最初の投与は、当該技術分野で公知の確立されたプロトコルに従い行うことができ、次いで、観察された効果に基づき、投与量、投与形態、および投与時間は、当該技術分野の臨床医によって改変することができる。
【0132】
多形(および適切な場合には、化学療法剤および/または放射線)の特定の選択は、主治医の診断、主治医による対象の状態の判断、および適切な治療プロトコルに左右される。
【0133】
化合物Aの1つまたは複数の多形(および適切な場合、化学療法剤および/または放射線)は、増殖性疾患の性質、対象の状態、ならびに1つまたは複数の多形/組成物とともに(すなわち、単一の治療プロトコル内で)投与される化学療法剤および/または放射線の実際の選択に応じて、一斉に(例えば、同時に、実質的に同時に、または同じ治療プロトコル内で)、または連続的に投与されてもよい。
【0134】
併用での用途および使用では、1つまたは複数の多形/組成物、ならびに化学療法剤および/または放射線は、同時または実質的に同時に投与される必要はなく、1つまたは複数の多形/組成物、ならびに化学療法剤および/または放射線の最初の投与順序は、重要でない場合もある。このため、化合物Aの少なくとも1つの多形が最初に投与され、続いて化学療法剤および/もしくは放射線が投与されてよく、または、化学療法剤および/もしくは放射線が最初に投与され、続いて化合物Aの少なくとも1つの多形が投与されてもよい。この交互の投与は、単一の治療プロトコル中に繰り返されてもよい。投与順序、および治療プロトコル中の各治療剤の投与の繰返し回数の決定は、治療される疾患および対象の状態を評価した後、当業者の考え得る範囲内で十分である。例えば、治療プロトコルが完了するまで、化学療法剤および/または放射線が最初に投与され、次いで化合物Aの少なくとも1つの多形の投与によって治療が継続され、その後、有利であると判断される場合には、化学療法剤および/または放射線などが投与されてもよい。
【0135】
このため、医師は、経験と知識に従って、治療が進行するにつれて個々の対象の必要性に応じて、治療用の化合物Aの多形/組成物の投与のために各プロトコルを改変することができる。
【0136】
担当の臨床医は、投与された投与量で治療が有効であるかどうかを判断する際に、対象の全体的な健康だけでなく、疾患関連症状の軽減、腫瘍増殖の阻害、実際の腫瘍収縮、または転移の阻害などのより明確な徴候を考慮することになる。腫瘍の大きさは、放射線学的試験、例えば、CATまたはMRIスキャンなどの標準の方法によって測定することができ、連続測定を使用して、腫瘍の増殖が緩徐化されるか、またはさらには逆転されたか否かを判断することができる。疼痛などの病気関連の症状の緩和、および全体的な状態の改善も、治療の有効性判断を補助するのに使用することができる。
【0137】
V.組成物および製剤
本開示は、本発明の1つまたは複数の結晶形態を含む医薬組成物を含む、組成物を提供する。
【0138】
種々の実施形態では、組成物中での結晶形態Iなどの所望の結晶形態と他のすべての結晶形態との比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、またはそれ以上のw/wより大きい。他の実施形態では、結晶形態IIと他のすべての結晶形態との比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、またはそれ以上のw/wより大きい。
【0139】
いくつかの実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、医薬組成物に製剤化される。具体的な実施形態では、医薬組成物は、活性な化合物/多形を薬学的に使用可能な調製物に処理するのを容易にする賦形剤および助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容可能な担体を用いて、従来様式で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。あらゆる薬学的に許容可能な技術製品、担体、および賦形剤が、本明細書、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995)、Hoover,John E.によるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975、Liberman,H.A.およびLachman,L.編のPharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980、ならびにPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)に記載される医薬組成物を処方するのに好適なものとして使用される。
【0140】
本明細書には、化合物Aの1つまたは複数の多形と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、または担体とを含む医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、中で1つまたは複数の多形が併用療法におけるように他の有効成分と混合される医薬組成物として投与される。本明細書には、後述の併用療法の項、および本開示全体に明記される活性剤(actives)の組合せがすべて包含される。具体的な実施形態では、医薬組成物は、化合物Aの1つまたは複数の多形を含む。
【0141】
医薬組成物は、本明細書中で使用されるとき、化合物Aの1つまたは複数の多形と、担体、安定剤、希釈剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。特定の実施形態では、医薬組成物は、生物への多形体の投与を容易にする。いくつかの実施形態では、本明細書中で提供される治療または使用の方法を実施する際に、化合物Aの1つまたは複数の多形の治療有効量が、医薬組成物に入れて治療対象の疾患または疾病を有する哺乳動物に投与される。具体的な実施形態では、哺乳動物はヒトである。特定の実施形態では、治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、ならびに他の要因に応じて変動する。本明細書中に記載の化合物Aの1つまたは複数の多形は、単独で、または、混合物の成分として1つまたは複数の治療剤と組み合わせて使用される。
【0142】
一実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、水溶液中で製剤化される。具体的な実施形態では、水溶液は、ほんの一例として、ハンク溶液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液など生理学的に適合性の緩衝液から選択される。他の実施形態では、化合物A1つまたは複数の多形は、経粘膜投与用に製剤化される。具体的な実施形態では、経粘膜製剤は、透過対象の障壁に適切な浸透剤を含む。本明細書中に記載の1つまたは複数の多形が他の非経口注射用に製剤化される、さらに他の実施形態では、適切な製剤は、水溶液または非水溶液を含む。具体的な実施形態では、このような溶液は、生理学的に適合性の緩衝液および/または賦形剤を含む。
【0143】
別の実施形態では、本明細書中に記載の多形は、経口投与用に製剤化される。化合物Aの多形は、例えば、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と組み合わせることにより製剤化される。種々の実施形態では、本明細書中に記載の多形は、ほんの一例として、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液などを含む経口剤形で製剤化される。
【0144】
特定の実施形態では、経口用のための医薬調製物は、1つまたは複数の固形賦形剤を本明細書中に記載の多形のうち1つまたは複数と混合し、任意選択で得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な助剤を添加後に顆粒の混合物を処理することで錠剤または糖衣錠コアを得ることによって、得られる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、またはポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)やリン酸カルシウムなどのその他のものである。具体的な実施形態では、任意選択で崩壊剤が添加される。崩壊剤には、ほんの一例として、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩が挙げられる。
【0145】
一実施形態では、糖衣錠コアや錠剤などの剤形は、1つまたは複数の好適なコーティングを施される。具体的な実施形態では、剤形をコーティングするために濃縮糖溶液が使用される。この糖溶液は、任意選択で、ほんの一例としてアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物などの追加の成分を含有する。識別目的で、染料および/または顔料も任意選択でコーティングに添加される。加えて、染料および/または顔料は、任意選択で活性化合物の用量の様々な組合せを特徴付けるために利用される。
【0146】
特定の実施形態では、本明細書中に記載の多形の少なくとも1つの治療有効量は、他の経口剤形に製剤化される。経口剤形には、ゼラチン製のプッシュフィットカプセルのほか、ゼラチン、およびグリセロールやソルビトールなどの可塑剤で作られた軟密閉カプセルが挙げられる。具体的な実施形態では、プッシュフィットカプセルは、有効成分を1つまたは複数の充填剤と混合して含有する。充填剤は、ほんの一例として、ラクトース、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、ならびに任意選択で安定剤を含む。他の実施形態では、軟カプセルは、好適な液体中に溶解または懸濁された1つまたは複数の活性化合物を含有する。好適な液体は、ほんの一例として、1つまたは複数の脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールを含む。加えて、任意選択で安定剤が添加される。
【0147】
他の実施形態では、本明細書中に記載の多形の少なくとも1つの治療有効量が、頬側投与または舌下投与用に製剤化される。頬側または舌下投与に適した製剤には、ほんの一例として、錠剤、ロゼンジ、またはゲルが挙げられる。さらに他の実施形態では、本明細書中に記載の多形は、ボーラス注射または連続注入に適した製剤を含む親注射用に製剤化される。具体的な実施形態では、注射用の製剤は、単位剤形(例えば、アンプル)または複数回用量容器で提供される。任意選択で防腐剤が注射用製剤に添加される。さらに他の実施形態では、化合物Aの多形の医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液、またはエマルジョンとして非経口注射に適した形態で製剤化される。非経口注射製剤は、任意選択で懸濁化剤、安定化剤、および/または分散化剤などの製剤を含有する。具体的な実施形態では、非経口投与用の医薬製剤は、水溶性の形態にある活性な多形の水溶液を含む。付加的な実施形態では、活性な多形の懸濁液が、適切な油性注射懸濁液として調製される。本明細書中に記載の医薬組成物での使用に適した親油性の溶媒またはビヒクルは、ほんの一例として、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルやトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。ある具体的な実施形態では、水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる、例えばカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどの物質を含有する。任意選択で懸濁液は、好適な安定化剤、または、多形の溶解度を増加させて高濃縮溶液の調製を可能にする薬剤を含有する。代替的に、他の実施形態では、有効成分は、好適なビヒクル、例えば滅菌の発熱物質除去水とともに構成するために、使用前は粉末形態にある。
【0148】
さらに他の実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、局所投与される。本明細書中に記載の1つまたは複数の多形は、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バーム、クリーム、または軟膏などの種々の局所投与可能な組成物に製剤化される。このような医薬組成物は、任意選択で可溶化剤、安定剤、等張性増強剤(tonicity enhancing agents)、緩衝剤、および防腐剤を含有する。
【0149】
また他の実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、経皮投与用に製剤化される。具体的な実施形態では、経皮製剤は、経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチを利用し、かつ、ポリマーまたは接着剤に溶解かつ/または分散された親油性エマルジョンまたは緩衝水溶液であり得る。種々の実施形態では、このようなパッチは、薬剤の連続送達、拍動送達、または必要に応じた送達用に構築される。付加的な実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形の経皮送達は、イオン泳動パッチなどによって達成される。特定の実施形態では、経皮パッチは、化合物Aの1つまたは複数の多形の制御送達をもたらす。具体的な実施形態では、吸収速度は、律速膜を使用することによって、またはポリマーマトリクスもしくはゲル内に化合物を捕捉することによって緩徐化される。代替的な実施形態では、吸収を高めるために吸収増強剤が使用される。吸収増強剤または担体は、皮膚の通過を補助する吸収性の薬学的に許容可能な溶媒を含む。例えば一実施形態では、経皮デバイスは、裏打ち材、化合物を任意選択で担体とともに含有するリザーバ、任意選択で化合物を宿主の皮膚に制御速度および所定の速度で長期にわたり送達するための律速バリア、ならびにデバイスを皮膚に固定する手段を含む、包帯の形態にある。
【0150】
他の実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、吸入による投与用に製剤化される。吸入による投与に適した種々の形態には、エアロゾル、霧、または粉末が挙げられるが、これらに限定されない。化合物Aの多形の医薬組成物は、好適な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガス)の使用とともに、加圧パックまたは噴霧器からエアロゾル噴霧を提供するという形で好都合に送達される。具体的な実施形態では、加圧エアロゾルの投与単位は、計測された量を送達するための弁を設けることによって定められる。特定の実施形態では、ほんの一例として吸入具または吸入器で使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、ラクトースやデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化される。
【0151】
さらに他の実施形態では、化合物Aの1つまたは複数の多形は、浣腸剤、直腸用ゲル、直腸用発泡体、直腸用エアロゾル、坐剤、ゼリー坐剤、または保持用浣腸剤など、ココアバターや他のグリセリドなどの従来の坐剤用基剤のほか、ポリビニルピロリドンやPEGなどの合成ポリマーを含有する直腸用組成物中で製剤化される。組成物の坐剤形態では、脂肪酸グリセリドの混合物を含むがこれに限定されない低融点ワックスが、任意選択でココアバターと組み合わせて最初に溶融させられる。
【0152】
特定の実施形態では、医薬組成物は、活性多形を薬学的に使用可能な調製物に処理するのを容易にする賦形剤および助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容可能な担体を用いて、あらゆる従来様式で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。あらゆる薬学的に許容可能な技術製品、担体、および賦形剤が、好適なものとして任意選択で使用される。化合物Aの1つまたは複数の多形を含む医薬組成物は、ほんの一例として、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、封入、捕捉、または圧縮のプロセスなどによる、従来の方法で製造される。
【0153】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、および有効成分として本明細書中に記載の化合物Aの少なくとも1つの多形を含む。有効成分は、遊離酸または遊離塩基の形態にあるか、または薬学的に許容可能な塩の形態にある。本明細書中に記載の化合物のすべての互変異性体は、本明細書中で提示される化合物の範囲内に含まれる。加えて、本明細書中に記載の化合物は、不溶媒和形態のほか、水やエタノールなどのような薬学的に許容可能な溶媒と溶媒和された形態を包含する。本明細書中で提示される化合物の溶媒和形態も、本明細書中に開示されると考慮される。加えて、医薬組成物は、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、もしくは乳化剤などの他の医薬品または薬剤、担体、アジュバント、溶液促進剤(solution promoters)、浸透圧調節用の塩、緩衝剤、および/または他の治療上価値のある物質を任意選択で含む。
【0154】
本明細書中に記載の化合物Aの1つまたは複数の多形を含む医薬組成物を調製する方法は、1つまたは複数の不活性で薬学的に許容可能な賦形剤または担体を用いて多形を製剤化することで、固体、半固体、または液体を形成する工程を含む。固形組成物には、粉末、錠剤、分散性の顆粒、カプセル、カシェ、および坐剤が挙げられるが、これらに限定されない。液体組成物には、化合物が溶解した溶液、化合物を含むエマルジョン、または、本明細書中に開示される化合物を含むリポソーム、ミセル、もしくはナノ粒子を含有する溶液が挙げられる。半固形組成物には、ゲル、懸濁液、およびクリームが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載の医薬組成物の形態には、液体溶液もしくは懸濁液、使用前に液体中の溶液もしくは懸濁液に適した固体形態、またはエマルジョンが挙げられる。これらの組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤などの、少量の非毒性の補助物質を任意選択で含有する。
【0155】
いくつかの実施形態では、化合物Aの少なくとも1つの多形を含む医薬組成物は、例示的に、薬剤が溶液中、懸濁液中、またはその両方に存在する液体の形態を呈する。典型的には、組成物が溶液または懸濁液として投与される場合、薬剤の第1の部分は溶液中に存在し、薬剤の第2の部分は懸濁液の液体マトリックス中の懸濁液中に粒子状形態で存在する。いくつかの実施形態では、液体組成物は、ゲル製剤を含む。他の実施形態では、液体組成物は水性である。
【0156】
特定の実施形態では、有用な水性懸濁液は、懸濁化剤として1つまたは複数のポリマーを含有する。有用なポリマーには、セルロース系ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー、および架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーが挙げられる。本明細書中に記載の特定の医薬組成物は、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウム、およびデキストランから選択される、粘膜付着性ポリマーを含む。
【0157】
有用な医薬組成物はまた、化合物Aの多形の溶解性を補助するための可溶化剤を任意選択で含む。「可溶化剤」という用語は、概してミセル溶液または薬剤の真溶液を生じさせる薬剤を含む。特定の許容可能な非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート80は、眼科的に許容可能なグリコール、ポリグリコール、例えば ポリエチレングリコール400、およびグリコールエーテルのように、可溶化剤として有用である。
【0158】
さらに、有用な医薬組成物は、1つまたは複数のpH調整剤または緩衝化剤を任意選択で含み、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、および塩酸などの酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、およびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基、ならびにシトラート/デキストロース、重炭酸ナトリウム、および塩化アンモニウムなどの緩衝剤を含む。このような酸、塩基、および緩衝剤は、組成物のpHを許容可能な範囲に維持するのに必要な量で含まれる。
【0159】
付加的に、有用な組成物はまた、組成物の浸透圧を許容可能な範囲にするのに必要な量の1つまたは複数の塩を任意選択で含む。このような塩には、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムの陽イオン、および塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩の陰イオンを有する塩が挙げられ、好適な塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、および硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0160】
他の有用な医薬組成物は、微生物活性を阻害するための1つまたは複数の防腐剤を任意選択で含む。好適な防腐剤には、メルフェンやチオメルサールなどの水銀含有物質、安定化二酸化塩素、ならびに塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化セチルピリジニウムなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0161】
さらに他の有用な組成物は、物理的安定性を高めるために、または他の目的のために1つまたは複数の界面活性剤を含む。好適な非イオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水添ヒマシ油、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。
【0162】
さらに他の有用な組成物は、必要な場合に化学的安定性を増強するための1つまたは複数の酸化防止剤を含む。好適な酸化防止剤には、ほんの一例として、アスコルビン酸やメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0163】
特定の実施形態では、水性懸濁液組成物は、単回投与用の再密閉不能な容器に包装される。代替的に、複数回投与用の再密閉可能な容器が使用され、その場合、組成物中に防腐剤を含めることが典型的である。
【0164】
代替的な実施形態では、疎水性医薬化合物用の他の送達系が使用される。リポソームおよびエマルジョンが、本明細書中で有用な送達ビヒクルまたは担体の例である。特定の実施形態では、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒も利用される。付加的な実施形態では、本明細書中に記載の多形体は、治療剤を含有する固形の疎水性ポリマーの半透性マトリクスなどの持続放出システムを用いて送達される。種々の持続放出材料が本明細書中で有用である。いくつかの実施形態では、持続放出カプセルは、最大100日にわたり数週間、多形を放出する。治療用試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化用の追加の戦略が採用される。
【0165】
特定の実施形態では、本明細書中に記載の製剤は、1つもしくは複数の酸化防止剤、金属キレート化剤、チオール含有化合物、および/または他の一般的な安定化剤を含む。このような安定化剤の例として、(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ポリ硫酸ペントサンおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムや亜鉛などの二価カチオン、または(n)それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
VI.投与経路
好適な投与経路として、経口投与、静脈内投与、直腸内投与、エアロゾル投与、非経口投与、経眼投与、経肺投与、経粘膜投与、経皮投与、経膣投与、経耳投与、経鼻投与、および局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本明細書中で、非経口送達には、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射、ならびに髄腔内注射、直接脳室内注射、腹腔内注射、リンパ内注射、および鼻内注射が挙げられる。
【0167】
特定の実施形態では、化合物Aの多形は、全身的ではなく局所的に、例えば、多くの場合はデポー調製物または持続放出製剤において、多形を器官に直接注射することにより投与される。特定の実施形態では、長期間作用型製剤は、植込み(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与される。さらに、他の実施形態では、薬物は、標的とされた薬物の送達システム、例えば、器官に特異的な抗体を被覆されたリポソームで送達される。このような実施形態では、リポソームは、器官に対し標的とされ、かつ器官によって選択的に取り込まれる。さらに他の実施形態では、化合物Aの多形は、急速放出製剤の形態、長期放出製剤の形態、または中間放出製剤の形態で提供される。さらに他の実施形態では、化合物Aの多形は局所投与される。
【0168】
VII.キット/製造品
本明細書中に記載の治療用途での使用のために、キットおよび製造品も提供される。いくつかの実施形態では、このようなキットは、バイアルやチューブなどの1つまたは複数の容器を受容するように区画化された運搬体、パッケージ、または容器を備え、容器のそれぞれは、本明細書中に記載の方法に使用されることとなる別個の要素のうちの1つを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスやプラスチックなどの種々の材料から形成される。
【0169】
本明細書中で提供される製造品は、包装材料を包含する。医薬品の包装に使用するための包装材料として、例えば、米国特許第5,323,907号明細書、同第5,052,558号明細書、および同第5,033,252号明細書に見出されるものが挙げられる。医薬品包装材料の例として、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入具、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、ボトル、ならびに、選択された製剤、および意図した投与および治療の形態に適したあらゆる包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、容器は、本明細書中に記載の1つまたは複数の多形を、任意選択で組成物中に、または本明細書中に開示される別の薬剤と組み合わせて含む。容器は、任意選択で滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は、皮下注射針が貫通可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルである)。このようなキットは、本明細書中に記載の方法でのキットの使用に関連する同定用の記述(identifying description)、ラベル、または指示書とともに化合物を任意選択で含む。
【0170】
例えば、キットは、典型的に1つまたは複数の追加の容器を備えており、それぞれが、本明細書中に記載の化合物の使用において商業的観点およびユーザの観点から望ましい種々の材料(任意選択で濃縮形態にある試薬、および/またはデバイスなど)のうち1つまたは複数を有する。このような材料の非限定的な例として、緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、運搬体、パッケージ、容器、バイアル、ならびに/または内容物および/もしくは使用説明を列挙したチューブラベル、ならびに使用説明を伴う添付文書が挙げられるが、これらに限定されない。一組の指示書も典型的に含まれることになる。ラベルは、任意選択で容器の上にあるか、または容器に付随される。例えば、ラベルは、ラベルを形成する文字、数字、または他の文字が容器自体に取り付けられ、成形され、または刻まれる場合には容器の上にあり、ラベルは、容器も保持するレセプタクルまたは運搬体内に例えば添付文書として存在する場合には容器に付随される。加えて、ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されるべきであることを示すために使用される。加えて、ラベルは、本明細書中に記載の方法などでの内容物の使用についての指示を示す。特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書中で提供される化合物を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有するパックまたはディスペンサデバイスに入れて提供される。パックには、例えば、ブリスターパックなどの金属箔またはプラスチック箔が含まれる。あるいは、パックまたはディスペンサデバイスには、投与の指示書が添付される。あるいは、パックまたはディスペンサには、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関が規定する形で容器に付随された注記が添付されており、この注記は、ヒトまたは獣医学的投与用の薬物の形態についての政府機関による承認を反映している。このような注記は、例えば、処方箋について米国食品医薬品局が承認したラベル、または承認済みの製品添付文書である。いくつかの実施形態では、適合性のある医薬担体中で製剤化された化合物Aの多形を含有する組成物が調製され、適切な容器に入れられ、適応症の治療についてのラベルを付される。
【実施例
【0171】
以下の実施例は、本発明を用いる方法をより完全に記述するのに役立つ。これらの実施例は、例示目的のために提示されており、本発明の正当な範囲を制限する役目を果たすものではない。
【0172】
本明細書中に記載の方法の手順を実行する際に、特定の緩衝剤、培地、試薬、細胞、培養条件などに対する言及は、限定的であることを意図するものではなく、その議論が提示される特定の文脈において当業者が関心または価値があると認識するであろう関連材料をすべて含むように読み取られるべきであることを、当然の如く理解されたい。例えば、1つの緩衝系または培養培地を別のものと置き換えても、同一ではないにしても依然として同様の結果を達成することが可能であることが多い。当業者は、過度の実験を必要とせずに、本明細書中に開示される方法および手順の使用時にそれらの目的に最適に役立つような置換えを行うことが可能となるように、かかるシステムおよび方法に関する十分な知識を有するであろう。
【0173】
本明細書中に記載の多形は、市販の出発物質および試薬から当該技術分野で周知の技法を利用して合成することができる。例えば、本明細書中に記載の多形は、実施例および反応スキームを参照して以下に例示されるように調製することができる。
【0174】
ブファリンは、アジアヒキガエルまたはヘリグロヒキガエルの皮膚腺から得ることができ、かつ、例えばSigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から市販で入手可能である。他の試薬は、例えばSigma-Aldrich Corpから市販で入手可能であるか、または、一般に採用される合成方法を用いて当業者によって容易に調製することができる。
【0175】
本明細書中に記載の多形は、薬学的に許容可能な形態での製剤化の前に、実質的に純粋な形態で、典型的には標準のクロマトグラフィー法によって調製される場合がある。
【0176】
以下の略語および用語は、本明細書全体を通して示された意味を有する。
AcOH=酢酸
Boc=tert-ブトキシカルボニル
c-=シクロ
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM=ジクロロメタン
DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP=4-ジメチルアミノピリジン
EDC=1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
eq=当量(複数)
Et=エチル
EtOAcまたはEA=酢酸エチル
EtOH=エタノール
g=グラム
hまたはhr=時間
HBTU=O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC=高圧液体クロマトグラフィー
i-=イソ
kgまたはKg=キログラム
Lまたはl=リットル
LC/MS=LCMS=液体クロマトグラフィー質量分析
LRMS=低分解能質量分析
m/z=質量電荷比
Me=メチル
MeOH=メタノール
mg=ミリグラム
min=分
mL=ミリリットル
mmol=ミリモル
n-=正常
NaOAc=酢酸ナトリウム
PE=石油エーテル
Ph=フェニル
Prep=分取
quant.=量的
RP-HPLC=逆相高圧液体クロマトグラフィー
rtまたはRT=室温
s-=sec-=二次
t-=tert-=三次
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
UV=紫外線
【0177】
実施例1:(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレート(化合物A)の調製
【0178】
【化5】
【0179】
工程1:ブファリン(60mg、0.15mmol)とDMAP(16.8mg、0.15mmol)とのCHCl(10mL)溶液に、DIPEA(77.5mg、0.6mmol)と4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(60.6mg、0.3mmol)を添加した。この混合物を37℃で16時間撹拌し、次いで分取TLC(PE/EA=1:1)により精製することで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル4-ニトロフェニルカーボネートを白色固形物(72mg、87.1%)として得た。
【0180】
工程2:(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル4-ニトロフェニルカーボネート(29mg、0.054mmol)のCHCl溶液に、ピペラジン(46.4mg、0.54mmol)を添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌し、次いで分取TLCにより精製することで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレート(18.6mg、69.2%)を白色固形物として得た。LRMS(M+H)m/z 499.5。H NMR(CDOD,400MHz)δ7.90(dd,J=9.6,2.4Hz,1H),7.33(m,1H),6.18(d,J=9.6Hz,1H),4.89(m,1H),3.41(m,4H),2.77-2.80(m,4H),2.44-2.48(m,1H),1.08-2.15(m,21H),0.88(s,3H),0.62(s,3H)。
【0181】
実施例2.(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩)の結晶形態Iの調製
(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレート(2.4g、4.81mmol)のEtOH(120mL)溶液を、70℃で1時間撹拌した。マレイン酸のEtOH溶液(21.6mL、0.25M)を、撹拌しながら徐々に添加した。この混合物を70℃で約1.5時間撹拌した。懸濁液を室温に降温し、15~16時間撹拌した。沈殿物を濾過し、EtOHで洗浄し、真空下、室温で乾燥させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態Iを得た。
【0182】
実施例3.(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエート(化合物Aのマレイン酸塩)の結晶形態IIの調製
(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレート(1g、2mmol)を、室温で90mLのイソプロピルアルコール(IPA)に溶解した。マレイン酸(0.252g、2.2mmol)のIPA(5mL)溶液を添加した。この混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿物を濾過し、IPAで2回洗浄し、真空オーブン中、35℃で一晩乾燥させることで、(3S,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-14-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-17-(2-オキソ-2H-ピラン-5-イル)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルピペラジン-1-カルボキシレートマレエートの結晶形態IIを得た。
【0183】
実施例4.X線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折(XRPD)パターンを、Bruker D8 Advance上で得た。40kVおよび40mAで最小限に動作するCuKソース(=1.54179オングストローム)により、3°~40°2-シータ間で各試料を走査する。走査速度は毎分10°2-シータであり、試料回転速度は毎分15回転である。
【0184】
化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iについて得られたXRPDパターンを、表1および図1にまとめる。
【0185】
【表1】
【0186】
化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIについて得られたXRPDパターンを、表2および図4にまとめる。
【0187】
【表2】
【0188】
実施例5.熱重量分析(TGA)
熱重量分析を、TA機器TGAユニット(Q5000IR)で実行した。試料をアルミニウムパンの中、周囲温度から300℃まで10℃/分で加温した。化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iについて得られたTGAパターンを図3にまとめる。化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIについて得られたTGAパターンを図6にまとめる。
【0189】
化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態について得られたTGAパターンを、以下の表にまとめる。
【0190】
【表3】
【0191】
実施例6.示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定の分析を、TA機器DSCユニット(TA Q2000)で実行した。試料を非密閉アルミニウムパンの中、周囲温度から260℃まで10℃/分で加温した。化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態Iについて得られたDSCサーモグラムを図2にまとめる。化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態IIについて得られたDSCサーモグラムを図5にまとめる。
【0192】
化合物Aのマレイン酸塩の結晶形態について得られたDSCサーモグラムを、以下の表にまとめる。
【0193】
【表4】
【0194】
実施例7.結晶形態Iの安定性試験
結晶形態Iは、40℃/75%RHで6か月間保管、または25℃/60%RHで36か月間保管された後、変化しなかった。加速された長期安定性試験における結晶形態Iの結果を、表3および図7図10に示す。
【0195】
【表5】
【0196】
いくつかの実施形態が示され、かつ記述されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の修正および置換えが本発明に対しなされてもよい。例えば、特許請求の範囲を構成する目的のために、以下に記載される特許請求の範囲がその文字通りの言語よりも決して狭く解釈されることは意図されておらず、このため、本明細書からの例示的な実施形態が特許請求の範囲の意で読み取られることは意図されていない。したがって、本発明は例示として記載されており、特許請求の範囲には限定されないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】