IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イーライ リリー アンド カンパニーの特許一覧

特表2024-505563GITRアンタゴニスト及びその使用方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】GITRアンタゴニスト及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240130BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240130BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240130BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240130BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N5/10
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P37/08
A61P11/06
A61P17/00
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546441
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2022014752
(87)【国際公開番号】W WO2022169766
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/144,732
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/297,968
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ケイン,ポール フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ラセルト,メリンダ アン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ステイシー リン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルディーノ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルティンガー,マーク アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA10
4B064DA03
4B065AA87Y
4B065AB04
4B065BA02
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045DA50
4H045DA75
(57)【要約】
本開示は、ヒトGITRに結合する化合物、そのような化合物を含む医薬組成物、及びそのような化合物の使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGITR(配列番号20)に結合し、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合フラグメントXを含む化合物であって、前記VHが、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
i.前記HCDR1が、配列番号1を含み、
ii.前記HCDR2が、配列番号2又は配列番号7を含み、
iii.前記HCDR3が、配列番号3を含み、
iv.前記LCDR1が、配列番号4を含み、
v.前記LCDR2が、配列番号5を含み、
vi.前記LCDR3が、配列番号6を含む、化合物。
【請求項2】
式:
X-L-M 又は M-L-X
(式中、Mは、ヒト血清アルブミンに結合するVHH部分であり、
L(存在する場合)は、リンカーである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記VHH部分が、配列番号13、又はそれと少なくとも約90%~約99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記VHH部分が、Lを介してFabフラグメントの重鎖第1定常ドメイン(CH1)のC末端に融合されている、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、配列番号10を有するVLを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、配列番号8を有するVH又は配列番号9を有するVHを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Lが、配列番号11、配列番号12、及び配列番号23からなる群から選択されるペプチドリンカーを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Xが、配列番号16に示される軽鎖(LC)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Xが、配列番号14に示されるHC又は配列番号15に示されるHCを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
配列番号17を含む、核酸。
【請求項11】
配列番号18を含む、核酸。
【請求項12】
配列番号19を含む、核酸。
【請求項13】
配列番号17、配列番号18、又は配列番号19に示される核酸を含む、ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項15】
化合物を生成するプロセスであって、前記抗体が発現するような条件下で、請求項13に記載の細胞を培養することと、培養培地から発現した抗体を回収することとを含む、プロセス。
【請求項16】
請求項14に記載のプロセスによって生成される、化合物。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
GITR細胞関連疾患の治療を必要とする対象においてGITR活性を阻害することによりそれを治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又は請求項17に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記GITR関連疾患が、自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、アトピー性皮膚炎(AtD)、炎症性障害、関節炎症、関節炎、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
療法における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、AtD、炎症性障害、関節炎症、関節炎、RA、IBD、CD又はUCの治療における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、AtD、炎症性障害、関節炎、関節炎、関節リウマチ、IBD、CD又はUCの前記治療のための医薬の製造における、請求項20又は21に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して生物学及び医学に関し、より具体的には、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRSF18)としても知られるグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)のアンタゴニスト、特にFc-ガンマ受容体(FcγR)結合を欠き、GITRアゴニズムを刺激し得ないく一価アンタゴニスト形式に関する。本開示は更に、それを含む組成物、及び自己免疫疾患又は障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
GITRは、TNFRスーパーファミリーのメンバーであり、制御性T細胞(Treg)及び活性化T細胞を含む様々な免疫細胞で発現されることが知られている。例えば、Tian,J.,et al.,(2020)Front.Immunol.,11:1-7を参照されたい。GITRはシングルパスI型膜貫通タンパク質であり、その細胞外ドメイン(ECD)はTNFRスーパーファミリーに典型的な3つのシステインに富むドメインで構成される。
【0003】
GITRは、その三量体リガンドGITRL(TNFSF18)との相互作用により多量体化され活性化され、その結果、TRAF2/TRAF5を介したNFkB活性化が誘導される。例えば、Pedros,C.,Altman,A.,and Kong,K.(2018)Front.Immunol.9:2412、及びSnell,L.M.,et al.,(2010) J.Immunol.,185(12):7223-7234を参照されたい。GITRL誘導性のGITRシグナル伝達の結果には、T細胞増殖及びサイトカイン放出の共刺激、並びにTreg抑制効果の無効化が含まれる。また、GITRは抗体結合を通じてアゴナイズされ、このGITR活性化はアゴニスト抗体又はGITRL-FcのFcγRへの結合によって更に増強される可能性があることも示されており、この増強は、結合力の増加又は受容体の多量体化によって媒介されると考えられている。したがって、GITRアンタゴニストが表面に結合すると、おそらく細胞表面上のFcγRとの結合を通じて、GITRの多量体化及びその後の活性化をもたらすアゴニスト活性を示す可能性がある。したがって、GITRLのその受容体への結合を効率的にブロックし、実質的にFcγRに結合する能力を持たずに受容体の活性化を防止する一価抗GITR抗体フラグメントが望まれている。FcγR結合の可能性がないことを確認する最も簡単な方法は、Fcドメインが完全に欠如した抗体フラグメントを生成することである。しかしながら、FabなどのFcドメインが完全に欠如した抗体フラグメントは半減期(t1/2)が短いことが知られており、治療薬として使用する際には課題が生じる。
【0004】
薬物動態(PK)及び/又は薬力学(PD)プロファイルを改善し得る、生物療法のt1/2を延長するためのいくつかの戦略が存在する。そのような戦略では、通常、バルキング部分又は新生児Fc受容体(FcRn)を介したリサイクリングが使用される。このようにして、抗体(Ab)又はそのフラグメント(例えば、Fab、Fcなど)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)などのポリマー、脂肪酸及びその他の脂質、N-又はO-グリコシル化、並びに血清アルブミン又は他の血漿タンパク質(トランスフェリンなど)は、所与の生物療法に共有結合及び/又は非共有結合して、その半減期を延長することができる。
【0005】
WO2017/096189(Agenus)として特許協力条約(PCT)に基づいて公開された国際特許出願は、とりわけ、抗ヒトGITRアンタゴニスト抗体(二重特異性抗体、例えば、ヒトGITRに結合する第1の抗原結合ドメイン、及びヒト免疫細胞により発現される抗原に特異的に結合しない第2の抗原結合ドメインを含む抗体を含むがこれに限定されない)、並びにそれらを使用する方法を開示している。いくつかの実施形態において、及びある特定のインビトロアッセイにおいて、WO2017/096189に開示されているある特定の抗ヒトGITR抗体はアンタゴニストとして作用する。しかしながら、出願人であるAgenusによって発表されたその後の報告では、ラギフィリマブとしても知られるINCAGN1876がGITRのアゴニスト抗体であると記載されている。例えば、Gonzalez,Ana M.,et al.,AACR Annual Meeting 2017、April 1-5,2017;Washington,DC,Abstract 3643を参照されたい。
【0006】
したがって、1)最適な拮抗活性を得るために望ましい会合及び解離速度でヒトGITRに結合し、2)GITRLとGITRとの結合をブロックしてGITR活性化を防止し、3)ヒトGITRの検出可能な刺激を欠き、4)十分な薬物動態(PK)及び/又は薬力学(PD)プロファイルを有し、自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、アトピー性皮膚炎(AtD)、関節炎症、関節炎、関節リウマチ(RA)、又は炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)及び/若しくは潰瘍性大腸炎(UC)などの他の炎症性障害の治療及び/又は予防のための単独療法としての実証可能なインビボ有効性を有する、5)サイトカイン放出の有意な誘導を引き起こさない、6)低い免疫原性(すなわち、カニクイザル及び/又はヒトにおいて十分な非免疫原性)を有する、並びに7)熱安定性、溶解性、低い自己会合性、及び薬物動態特性を含むがこれらに限定されない、インビトロ及びインビボでの物理的及び化学的安定性(これらは、自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、AtD、関節炎症、関節炎、RA、又はIBD、CD及び/若しくはUCなどの他の炎症性障害の治療における開発及び/又は使用に許容される)を示す、抗ヒトGITR抗体の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、1)最適な拮抗活性を得るために望ましい会合及び解離速度でヒトGITRに結合し、2)GITRLとGITRとの結合をブロックしてGITR活性化を防止し、3)ヒトGITRの検出可能な刺激を欠き、4)十分な薬物動態(PK)及び/又は薬力学(PD)プロファイルを有し、自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、アトピー性皮膚炎、関節炎症、関節炎、関節リウマチ、又はIBD、CD及び/若しくはUCなどの他の炎症性障害の治療及び/又は予防のための単独療法としての実証可能なインビボ有効性を有する、5)サイトカイン放出の有意な誘導を引き起こさない、6)低い免疫原性(すなわち、カニクイザル及び/又はヒトにおいて十分な非免疫原性)を有する、並びに7)熱安定性、溶解性、低い自己会合性、及び薬物動態特性を含むがこれらに限定されない、インビトロ及びインビボでの物理的及び化学的安定性(これらは、自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、AtD、関節炎症、関節炎、RA、又はIBD、CD及び/若しくはUCなどの他の炎症性障害の治療における開発及び/又は使用に許容される)を示す、新規ヒトGITRアンタゴニスト化合物を提供する。
【0008】
本開示は、1)配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号2又は7のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域(HCVR)と、2)配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む、抗ヒトGITR抗原結合フラグメントを含む化合物を提供する。
【0009】
いくつかの例では、本明細書の化合物は、式(アミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)まで):X-L-M(式中、LのN末端は、XのHCのC末端に融合されており、LのC末端はMのN末端に融合されている)、又はX-L-M(式中、LのN末端はXのLCのC末端に融合されており、LのC末端はMのN末端に融合されている)、又はM-L-X(式中、LのN末端はMのC末端に融合されており、LのC末端はXのHCのN末端に融合されている)、又はM-L-X(LのN末端はMのC末端に融合されており、LのC末端はXのLCのN末端に融合されている)のものであり、式中、Mはt1/2延長部分として作用する化合物であり、L(存在する場合)はリンカーであり、XはヒトGITRに結合する抗体Fabフラグメントである。いくつかの例では、Mはアルブミン結合VHHであり、Lは(GGGGQ)を含むアミノ酸配列を有し得、nは1~15、特に約4~約8であり得る。他の例では、Mは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含み、Lは配列番号11又は12から選択されるアミノ酸配列を有し得る。更に他の例では、Lは、Lが配列番号11又は12のうちのいずれか1つに対して少なくとも約90%~約99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有するように、1つ以上の付加、欠失、挿入、又は置換を有し得る。
【0010】
本開示はまた、本明細書の少なくとも1つの化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物についても記載する。
【0011】
更に、本開示は、化合物及び医薬組成物を医薬に使用する方法を記載する。
【0012】
更に、本開示は、医薬の製造における本明細書の化合物の使用を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、類似体、医薬組成物、及び方法の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が本明細書に記載されている。
【0014】
また、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、文脈が1つ及び1つのみの要素があることを明確に要求しない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。よって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0015】
定義
本明細書で使用される場合、「約」は、例えば、明記された濃度、長さ、分子量、pH、配列同一性、時間枠、温度、体積などの値(単数又は複数)の統計学的に意味のある範囲内を意味する。このような値又は範囲は、所与の値又は範囲の典型的には20%以内、より典型的には10%以内、更により典型的には5%以内の大きさの範囲内であり得る。「約」によって包含される許容される変動は、研究での特定の系に依存し、当業者によって容易に理解され得る。
【0016】
本明細書で使用する場合、受容体の1つ以上に関して、「活性(activity)」、「活性化する(activate)」、「活性化する(activating)」などは、以下に記載されるインビトロアッセイなどの当該技術分野で既知のアッセイを使用して測定される、受容体に結合して受容体での応答を誘導する本明細書における融合などの化合物の能力を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」は、化学的観点から、1つ以上のアミン基及び1つ以上のカルボン酸基の存在を特徴とし、他の官能基を含んでもよい分子を意味する。当該技術分野で既知であるように、標準アミノ酸として指定され、あらゆる生物によって産生されるペプチド/タンパク質の大部分の構成要素として使用され得る20個のアミノ酸のセットが存在する。本開示のアミノ酸配列は、20個の天然に存在するアミノ酸の標準的な1文字又は3文字のコードを含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「類似体」は、標的受容体を活性化し、その受容体の天然アゴニストによって誘発される少なくとも1つのインビボ又はインビトロ効果を誘導する、合成のペプチド又はポリペプチドなどの化合物を意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体の実施形態には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又はコンジュゲート抗体が含まれる。抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA)、及び任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のものであってもよい。例示的な抗体は、4つのポリペプチド鎖:鎖間ジスルフィド結合を介して架橋される2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)から構成された免疫グロブリンG(IgG)型抗体である。4つのポリペプチド鎖の各々のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~125個以上のアミノ酸の可変領域を含む。4つのポリペプチド鎖の各々のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域から構成される。IgGアイソタイプは、更にサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)に分割され得る。
【0020】
VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変領域に更に細分され得る。CDRはタンパク質の表面上に露出しており、抗原結合特異性のための抗体の重要な領域である。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成されており、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。本明細書では、重鎖の3つのCDRを「HCDR1、HCDR2、及びHCDR3」と称し、軽鎖の3つのCDRを「LCDR1、LCDR2、及びLCDR3」と称する。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。アミノ酸残基のCDRへの割り当ては、Kabat(Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、Chothia(Chothia et al.,“Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987)、Al-Lazikani et al.,“Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、North(North et al.,“A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations”,Journal of Molecular Biology,406,228-256(2011))、又はIMGT(www.imgt.orgで利用可能な国際的なImMunoGeneTicsデータベース;Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.1999;27:209-212を参照のこと)に記載されているものを含む、周知のスキームに従って行われ得る。North CDRの定義は、本明細書に記載の抗ヒトGITR抗体に使用される。
【0021】
「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力を保持する抗体の部分を指す。抗原結合フラグメントの例としては、Fab又はFab’が挙げられるが、これらに限定されない。「Fab」フラグメントは、重鎖可変領域(VH)及び重鎖第1定常ドメイン(CH1)を伴う、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む抗体軽鎖全体からなる。各Fabフラグメントは、抗原結合に関して一価である。すなわち、それは、単一の抗原結合部位を有する。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上の残基を含むCH1ドメインのカルボキシル末端における少しの追加の残基を有することによって、Fabフラグメントと異なる。本明細書に記載のFab又はFab’は、ヒトFab若しくはFab’、又はヒトCL及びCH1を含むキメラFab若しくはFab’であり得る。
【0022】
本明細書で使用される「結合する」という用語は、別段の定めがない限り、ある種の化学結合又は別のタンパク質若しくは分子との引力相互作用を形成するタンパク質又は分子の能力を意味し、当該分野において既知である一般的な方法によって決定されるように、2つのタンパク質又は分子の密接な近接をもたらす。
【0023】
本明細書で使用する場合、「生物療法薬」などは、少なくとも1つの治療活性/適用性を有する、抗体、凝固因子、凝血因子、サイトカイン、酵素、成長因子、ホルモン、及びそれらのフラグメントなどのアミノ酸又は核酸ベースの化合物、並びに治療用のDNA及び/又はRNA分子を意味する。
【0024】
本明細書で使用する場合、「保存的置換」は、参照分子と、そのアミノ酸配列に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有することを除いて同一である、参照ペプチド又はポリペプチドの変異体を意味する。一般に、保存的に修飾された変異体は、参照アミノ酸配列と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。より具体的には、保存的置換は、特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格構造、及び剛性など)が類似しており、得られる置換されたペプチド又はポリペプチドの生物学的活性への影響が最小限であるアミノ酸によるアミノ酸の置換を指す。機能的に類似したアミノ酸の保存的置換は当該技術分野で周知であるため、本明細書で徹底的に説明する必要はない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「有効量」は、それを必要とする個体に単回又は複数回投与すると、診断又は治療中のそのような個体において所望の効果をもたらす(すなわち、個人の状態に臨床的に測定可能な差異を生じさせ得る、例えば、米国リウマチ学会(ACR)20、ACR50、ACR70;疾患活動性スコア(DAS);乾癬面積及び重症度指数(PASI)50、PASI75、PASI90、PASI100;全身性エリテマトーデス疾患活動性指数(SLEDAI);Mayoスコア疾患活動性指数(DAI);クローン病活動性指数(CDAI);Geboesスコア(GS);ロバーツ組織病理学指数(RHI);アトピー性皮膚炎重症度指数(ADSI);並びにEULARシェーグレン症候群疾患活動性指数(ESSDAI)などの1つ以上の臨床疾患活動性尺度の低下をもたらし得る)、本明細書に記載の化合物の1つ又は複数、又はその薬学的に許容される塩の量又は用量を意味する。有効量は、既知の技法の使用によって、及び同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者であれば容易に決定することができる。個体についての有効量を決定する際には、哺乳動物の種、その大きさ、年齢、及び全体的な健康状態、関与する特定の疾患又は障害、疾患又は障害の程度又は関与度又は重症度、個体の応答、投与される特定の化合物、投与の様式、投与される調製物の生物学的利用能の特徴、選択される用法、併用薬の使用、並びに他の関連する状況を含むが、これらに限定されない、多数の因子が考慮される。
【0026】
本明細書で使用する場合、「長期間の作用」は、本明細書の少なくとも1つの化合物及び生物療法を含む結合親和性及び活性が、天然生物療法よりも長い期間継続し、このため、少なくとも、1日1回又は更には週3回、週2回、若しくは週1回程度の頻度で投薬することが可能になることを意味する。時間作用プロファイルは、以下の実施例で利用されるものなどの既知の薬物動態試験方法を使用して測定され得る。
【0027】
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む抗体の領域を指す。任意選択で、Fc領域は、抗体重鎖のヒンジ領域の一部分又はヒンジ領域全体を含み得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、「グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質」又は「GITR」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRSF18)としても知られ、哺乳動物種、特にヒトなどの任意の種から得られるか、又はそれに由来するGITRタンパク質を意味する。GITRには、天然GITR(すなわち、全長)とその変形(すなわち、天然GITRの付加、欠失、挿入、及び/又は置換)との両方が含まれる。ヒトGITR全長(ただしシグナルペプチドを含まない)の1つの配列を配列番号20に示す(UniProt/SwissProtデータベースアクセッション番号Q9Y5U5も参照されたい)。ヒトGITR ECD(ただしシグナルペプチドは含まない)の1つの配列を配列番号21に示す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「半減期」又は「t1/2」は、本明細書に記載の融合タンパク質などの化合物の量の半分が、生物学的プロセスにより、個体の血清又は血漿などの流体又は他の生理学的空間から除去されるのにかかる時間を意味する。代替的に、t1/2は、そのような融合タンパク質の量が、その薬理学的、生理学的、又は放射線学的活性の半分を失うのにかかる時間を意味することもある。
【0030】
本明細書で使用する場合、「最大の半分の効果濃度」又は「EC50」は、用量反応曲線などのアッセイエンドポイントの50%の活性化/刺激をもたらす化合物の濃度を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「と組み合わせて」は、本明細書の融合タンパク質のうちの少なくとも1つを、1つ以上の追加の治療薬と同時に、順次に、又は1つ以上の追加の治療薬と組み合わせた単一の調合で投与することを意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする個体」は、例えば、本明細書に列挙されるものを含む、治療又は療法を必要とする状態、疾患、障害、又は症状を有する、ヒトなどの哺乳動物を意味する。具体的には、治療される好ましい個体はヒトである。
【0033】
本明細書で使用する場合、「長時間作用型」は、本明細書の化合物の結合親和性及び活性が、天然のペプチド又はタンパク質よりも長い期間継続し、このため、少なくとも、1日1回又は更には週3回、週2回、週1回、若しくは月1回程度の頻度で投薬することが可能になることを意味する。本明細書の化合物の時間作用プロファイルは、以下の実施例に記載のものなどの既知の薬物動態試験方法を使用して測定され得る。
【0034】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で互換的に使用される場合、天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチドの類似体を組み込んだDNA、cDNA、及びRNA分子等の一本鎖及び/又は二本鎖ヌクレオチド含有分子を含むヌクレオチドのポリマーを指す。本開示のポリヌクレオチドはまた、例えば、DNA若しくはRNAポリメラーゼ又は合成反応によってその中に組み込まれた基質も含み得る。
【0035】
本明細書で使用する場合、「非標準アミノ酸」は、細胞内で自然に発生し得るが、ペプチド合成には関与しないアミノ酸を意味する。非標準アミノ酸はペプチドの構成要素である可能性があり、多くの場合、ペプチド内の標準アミノ酸の修飾によって(すなわち、翻訳後修飾を介して)生成される。非標準アミノ酸には、上記の標準アミノ酸とは反対の絶対キラリティーを有するD-アミノ酸が含まれ得る。
【0036】
本明細書で使用する場合、「オリゴマー」は、より小さい分子、そのモノマーのコピーに由来し得る、いくつかの類似又は同一の繰り返し単位を有する分子を意味する。これらのモノマーは、強い結合又は弱い結合、共有結合又は非共有結合(例えば分子内)のいずれかの結合によって接続され得る。
【0037】
本明細書で使用する場合、「患者」、「対象」、及び「個体」は、本明細書では互換的に使用され、動物、特にヒトを意味する。ある特定の例では、個体は、本明細書の化合物又は組成物を投与することから利益を得る状態、疾患、障害又は症状を更に特徴とする。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される緩衝液」は、当業者に知られている標準的な医薬緩衝液のいずれかを意味する。
【0039】
本明細書で使用する場合、「配列類似性」は、例えば、2つ以上の配列の全長又は比較ウィンドウにわたる一致など、生物学的化合物の2つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列の定量的特性を意味する。配列類似性は、(1)同一性パーセント又は(2)類似性パーセントにより測定され得る。同一性パーセントは、2つの生物学的化合物間で同一の残基のパーセンテージを最短配列の長さで割ったものを測定し、一方、類似性パーセントは、同一性を測定し、加えて、評価に配列ギャップ及び残基類似性を含む。配列類似性を決定するための方法及びアルゴリズムは当該技術分野で周知であるため、本明細書で徹底的に説明する必要はない。同一のヌクレオチド又はアミノ酸位置の特定のパーセンテージは、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上である。
【0040】
本明細書で使用する場合、「治療する(treating)」又は「治療する(treat)」とは、本明細書の化合物の投与が状態、疾患、障害、又は症状の進行又は重症度を減弱する、抑制する、逆転させる、遅延させる、又は停止する目的のために示される、状態、疾患、障害、又は症状を有する個体を管理及びケアすることを意味する。治療することには、本明細書の化合物又は本明細書の化合物を含む組成物を個体に投与して、症状若しくは合併症の発症を予防する、症状若しくは合併症を緩和する、又は状態、疾患、障害、若しくは症状を排除することが含まれる。治療することには、本明細書の化合物又は本明細書の化合物を含む組成物を個体に投与して、例えば、自己免疫の減少(若しくは予防)及び/又はアレルギー性疾患、喘息、アトピー性皮膚炎、関節炎症、関節炎、関節リウマチ、又はIBD、CD及び/若しくはUCなどの他の炎症性障害の低減(若しくは予防)などをもたらすことが含まれる。治療される個体は、哺乳動物、特にヒトである。
【0041】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、被験者の生物学的又は医学的応答、例えば、酵素若しくはタンパク質の活性の低下又は阻害を誘発するか、あるいは症状を改善するか、状態を緩和するか、疾患の進行を減速若しくは遅延するか、又は疾患などを予防する、タンパク質あるいは核酸あるいはベクターあるいは組成物の量を指す。1つの非限定的な実施形態では、「治療有効量」という用語は、被験者に投与されたときに、状態、又は障害又は疾患を少なくとも部分的に緩和、阻害、予防及び/又は改善するために有効である、タンパク質又は核酸又はベクター又は組成物の量を指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、「可変重鎖ホモ二量体」、「VHH」又は「VHH部分」は、単一ドメイン抗体の形態、特に、サイズが約15kDaと非常に小さい、重鎖のみの抗体(HcAb)の単一の単量体可変領域の抗体フラグメントを意味する。ここで、操作/修飾VHHベース化合物を薬物動態エンハンサーとして使用して、生物療法の作用期間を延長し、かつ/又はそのt1/2を改善することができることが見出された。VHHベース化合物は血清アルブミンに結合するが、VHHベース化合物は、IgG(Fcドメインを含む)、新生児Fc受容体(FcRn)、又は他の長期持続性血清タンパク質に結合するために使用することができる。したがって、VHHベース化合物は、ペプチド若しくはタンパク質などの化合物、又は更に例えば小分子などの他の分子のt1/2を改善するために使用することができる。
【0043】
ある特定の略語が次のように定義される。「ACR」は、尿アルブミン/尿クレアチニン比を指し、「AUC」は、曲線下面積を指し、「AUC0-inf」は、0時間から無限時間までの曲線下の面積を指し、「cAMP」は、環状アデノシン一リン酸を指し、「C」は、時間ゼロにおける推定血漿濃度を指し、「CL」は、IV投与後のクリアランスを指し、「CL/F」は、SQ投与後の見かけのクリアランスを指し、「Cmax」は、観察された最大血漿濃度を指し、「CMV」は、サイトメガロウイルスを指し、「DNA」は、デオキシリボ核酸を指し、「ECD」は、細胞外ドメインを指し、「EDC」は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を指し、「ETA」は、エタノールアミンを指し、「GS」は、グルタミン合成酵素を指し、「HC」は、重鎖を指し、「HIC」は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを指し、「hr」は、1時間又は複数時間を指し、「IV」は、静脈内を指し、「kDa」は、キロダルトンを指し、「LC」は、軽鎖を指し、「LC-MS」は、液体クロマトグラフィー質量分析法を指し、「min」は、分を指し、「MS」は、質量分析を指し、「MSX」は、メチオニンスルホキシイミンを指し、「NHS」は、N-ヒドロキシスクシンイミドを指し、「OtBu」は、O-tert-ブチルを指し、「PEI」は、ポリエチレンイミンを指し、「RP-HPLC」は、逆相高速液体クロマトグラフィーを指し、「sec」は、秒を指し、「NaOAc」は、酢酸ナトリウムを指し、「rcf」は、相対遠心力を意味し、「RT」は、室温を意味し、「RU」は、共鳴単位を意味し、「SQ」は、皮下を指し、「SEC」は、サイズ排除クロマトグラフィーを指し、「SEM」は、平均標準誤差を指し、「SPR」は、表面プラズモン共鳴を意味し、「t1/2」は、半減期を指し、「TFA」は、トリフルオロ酢酸を指し、「Tmax」は、観察された最大濃度の時間を指し、「Trt」は、トリチルを指す。
【0044】
抗ヒトGITR抗原結合フラグメント化合物
本開示は、1)配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1、配列番号2又は7のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域(HCVR)と、2)配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む、抗ヒトGITR抗原結合フラグメント化合物を提供する。いくつかの例では、抗ヒトGITR抗原結合フラグメント化合物は、ヒトカッパCL及びヒトIgG1 CH1を含むFabを含む。
【0045】
VHHベース半減期延長剤を有する化合物
簡潔に説明すると、本明細書のある特定の化合物は、式(N末端からC末端まで):X-L-Mを有し、式中、Mはt1/2延長部分として作用する化合物であり、L(存在する場合)はリンカーであり、XはヒトGITRに結合する抗体Fabフラグメントである。いくつかの例では、Lは、(GGGGQ)、(GGGQ)、(GGGGS)、(PGPQ)、(PGPA)、GGGG(AP)GGGG、(GGE)、(GGGGE)、(GGK)、(GGGGK)、GGGG(EP)GGGG、GGGG(KP)GGGG、(PGPE)又は(PGPK)を含むアミノ酸配列を有し得、nは1~15、特に約5~約10であり得る。いくつかの例では、Mはアルブミン結合VHHであり、Lは(GGGGQ)のアミノ酸配列を含むペプチドであり、nは1~15、特に約4~約8であり得る。他の例では、Mは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含み、Lは配列番号11又は12から選択されるアミノ酸配列を有し得る。更に他の例では、Lは、Lが配列番号11又は12のうちのいずれか1つに対して少なくとも約90%~約99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有するように、1つ以上の付加、欠失、挿入、又は置換を有し得る。更に他の例では、Lは、ポリエチレングリコール(PEG)、特に(PEG)などのポリマーであり得、nは1~20であり得る。
【0046】
いくつかの例では、本明細書に開示される化合物は、式(N末端からC末端まで):X-L-Mを有し、式中、Mは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれと少なくとも約90%~約99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有し、L(存在する場合)はリンカーであり、XはヒトGITRに結合するFabである。いくつかの例では、Lは(GGGGQ)を含むアミノ酸配列を有し得、nは1~15、特に約4~約8であり得る。他の例では、Lは配列番号11又は12から選択されるアミノ酸配列を有し得る。更に他の例では、Lは、Lが配列番号11又は12のうちのいずれか1つに対して少なくとも約90%~約99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有するように、1つ以上の付加、欠失、挿入、又は置換を有し得る。更に他の例では、Lは、ポリエチレングリコール(PEG)、特に(PEG)などのポリマーであり得、nは1~20であり得る。好ましくは、化合物はヒトGITRアンタゴニストである。
【0047】
医薬組成物及びキット
いくつかの例では、抗ヒトGITR Fab、抗ヒトGITR Fab融合体、又はそのアルブミン結合VHHへのコンジュゲート(本明細書に開示される抗体I及び抗体IIなど)などの、本明細書に開示される抗ヒトGITR抗原結合フラグメント化合物は、医薬組成物として製剤化することができ、非経口経路(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は経皮)によって投与することができる。そのような薬学的組成物及びそれを調製するための技法は、当該技術分野において周知である。例えば、Remington,「The Science and Practice of Pharmacy」(D.B.Troy ed.,21st Ed.,Lippincott,Williams&Wilkins,2006)を参照されたい。特定の例では、組成物は、SQ又はIVで投与される。しかしながら、代替的には、組成物は、例えば、錠剤又は経口投与のための他の固体;徐放性カプセル;及びクリーム、ローション、吸入剤などを含む現在使用されている任意のその他の形態などの他の薬学的に許容される経路のための形態で製剤化され得る。
【0048】
上述のように、それらのインビボ適合性及び有効性を改善するため、本明細書のVHHベース融合対又はVHHベースコンジュゲートは、任意の数の無機及び有機酸/塩基と反応して、薬学的に許容される酸/塩基付加塩を形成し得る。薬学的に許容される塩及びそれらを調製するための一般的な技法は、当該技術分野で周知である(例えば、Stahl et al.,「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」(2nd Revised Ed.Wiley-VCH,2011))。本明細書における使用のための薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、及び/又は酢酸塩が挙げられる。
【0049】
本明細書の化合物は、医師によって投与され得るか、又は注射を使用して自己投与され得る。ゲージサイズ及び注入量は、当業者によって容易に決定され得ることが理解される。ただし、注入量は約2mL以下、更には約1mL以下であり、ニードルゲージは約27G以上又は約29G以上であり得る。
【0050】
本開示はまた、本明細書の化合物、又はその薬学的に許容される塩を合成するために有用な新規な中間体及び方法を提供し、したがってこれらを包含する。中間体及び化合物は、当該技術分野で周知の様々な手法によって調製することができる。例えば、組換え合成を使用する方法を以下の実施例で例解する。記載される技法の各々についての具体的なステップは、化合物を調製するための異なる方法において組み合わせることができる。試薬及び出発材料は、当業者にとって容易に入手可能である。
【0051】
本明細書の化合物は、一般に、広い投与量範囲にわたって有効である。化合物又はそれを含む医薬組成物の例示的な用量は、個体の1キログラム(kg)当たりのミリグラム(mg)又はマイクログラム(μg)量であり得る。このようにして、1日用量は約1μg~約1000mgとなり得る。
【0052】
ここで、医薬組成物中の化合物の有効量は、約2.5mg~約1000mgの用量であり得る。しかしながら、いくつかの例では、有効量(すなわち用量/投薬量)が前述の範囲の下限を下回っても十分すぎる可能性があること、また一方で他の例では、有効量がより多くの用量となってもよく、許容できる副作用を伴って用いられてもよいことが当業者には理解される。
【0053】
本明細書の化合物に加えて、医薬組成物はまた、例えば、特定の状態、疾患及び障害(例えば、心血管、神経学的、免疫学的、代謝的、腫瘍学的、心理学的、肺学的及び/又は腎臓の状態、疾患又は障害)の標準治療として典型的に使用される治療薬剤などの少なくとも1つの追加の治療薬剤を含んでもよい。
【0054】
このように、医薬組成物は、有効量の1つ以上の本明細書の化合物、薬学的に許容される担体、及び任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬剤を含んでもよい。
【0055】
代替的に、本明細書の化合物は、キットの一部として提供され得る。いくつかの例では、キットは、少なくとも1つの化合物(及び任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬剤)を個体に投与するためのデバイスを含む。ある特定の例では、キットは、少なくとも1つの化合物(及び任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬剤)を投与するための注射器及び針を含む。特定の例では、化合物(及び任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬剤)は、注射器内の水溶液中に予め製剤化される。
【0056】
半減期延長剤として作用するVHHベース化合物又はその融合体及びコンジュゲートを作製及び使用する方法
本明細書の化合物は、当該技術分野で既知の任意の数の標準的な組換えDNA法又は標準的な化学ペプチド合成法を介して作製することができる。組換えDNA法に関しては、標準的な組換え技法を使用して、化合物のアミノ酸配列をコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドを構築し、そのポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込み、ベクターを、細菌、酵母、及び哺乳動物細胞などの宿主細胞に導入して、化合物を産生させることができる。(例えば、Green & Sambrook,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(Cold Spring Harbor Laboratory Press,4th ed.,2012)を参照されたい)。
【0057】
組換えDNA法に関して、本明細書の化合物は、組換えDNA技術を使用してタンパク質又は前駆体タンパク質分子を産生させることにより調製することができる。cDNA及び合成DNAを含むDNAは、二本鎖であっても一本鎖であってもよく、本明細書の化合物をコードするその中のコード配列は、遺伝暗号の冗長性又は縮退の結果として変化してもよい。端的には、本明細書の化合物をコードするDNA配列を宿主細胞に導入して、本化合物又はその前駆体を生成する。宿主細胞は、Escherichia coliのK12株又はB株などの細菌細胞、酵母細胞などの真菌細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞であり得る。
【0058】
本発明の化合物又はその前駆体を産生するために、適切な宿主細胞を、発現ベクターなどの発現系で一過性又は安定にトランスフェクト又は形質転換する。発現ベクターは、典型的には、エピソーム、又は宿主染色体DNAの一体化した部分のいずれかとして、宿主生物中で複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするために、選択マーカー、例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、G418、及びジヒドロ葉酸レダクターゼを含有する。
【0059】
本発明の化合物を調製するために、本明細書に記載されるステップの各々のための特定の生合成ステップ又は合成ステップを使用してもよいし、使用しなくてもよいし、又は異なる方法で組み合わせてもよい。
【0060】
化学ペプチド合成法に関しては、標準的な手動又は自動の固相合成手順を使用することができる。例えば、自動ペプチド合成装置は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,CA)及びProtein Technologies Inc.(Tucson,AZ)から市販されている。固相合成用の試薬は、商用供給業者から容易に入手可能である。干渉基のブロック、反応中のアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、及び未反応のアミノ酸のキャッピングのために、固相合成装置を製造業者の指示に従って使用することができる。
【0061】
本方法には、本明細書に記載のステップが含まれてもよく、これらは、必ずではないが記載の順序で実行されてもよい。しかしながら、他の順序も考えられる。更に、個々の又は複数のステップは、時間的に並行して及び/若しくは重複して、並びに/又は個別に、又は複数回繰り返されるステップで実行されてもよい。更に、本方法には、追加の不特定のステップが含まれてもよい。
【0062】
したがって、そのような方法には、例えば自己免疫状態、疾患若しくは障害を有する個人、又はそれらに罹患しやすい個人を選択することが含まれ得る。
【0063】
方法にはまた、同じく本明細書に記載されるような医薬組成物の形態であり得る、本明細書の少なくとも1つの化合物の有効量を個体に投与することが含まれ得る。いくつかの例では、化合物/医薬組成物は追加の治療薬剤を含み得る。
【0064】
化合物及び任意選択の追加の治療薬剤の濃度/用量/投薬量は、本明細書の他の場所で論じられている。
【0065】
投与経路に関して、化合物又はそれを含む医薬組成物は、例えば、経口、注射(すなわち、動脈内、静脈内、腹腔内、脳内、脳室内、筋肉内、眼内、門脈内若しくは病変内)、徐放システム、又は埋め込みデバイスなどによる既知の方法に従って投与され得る。ある特定の例では、化合物又はそれを含む医薬組成物は、ボーラス注射によって又は連続的にSQ投与され得る。
【0066】
投薬頻度に関して、化合物又はそれを含む医薬組成物は、毎日、隔日、週3回、週2回、週1回(すなわち、毎週)、隔週(すなわち、1週間おきに)、又は毎月投与され得る。ある特定の例では、化合物又はそれを含む医薬組成物は、1日おきにSQ投与、週3回SQ投与、週2回SQ投与、週1回SQ投与、1週間おきにSQ投与、又は毎月SQ投与される。特定の例では、化合物又はそれを含む医薬組成物は、週1回SQ投与(QW)される。
【0067】
代替的に、IV投与される場合、化合物又はそれを含む医薬組成物は、1週間おきにIV投与、週3回IV投与、週2回IV投与、週1回IV投与、1週間おきにIV投与、又は毎月IV投与される。特定の例では、化合物又はそれを含む医薬組成物は、週1回IV投与(IW)される。
【0068】
化合物又はそれを含む医薬組成物が有効量の少なくとも1つの追加の治療薬剤と組み合わせて投与される場合に関して、追加の治療薬剤は、化合物又はそれを含む医薬組成物と同時に、別々に、又は連続的に投与することができる。
【0069】
更に、追加の治療薬剤は、化合物又はそれを含む医薬組成物と同じ頻度で(すなわち、1日おき、週2回、又は更には毎週)投与され得る。代替的に、追加の治療薬剤は、化合物又はそれを含む医薬組成物とは異なる頻度で投与され得る。他の場合には、追加の治療薬は、SQで投与され得る。他の場合には、追加の治療薬は、IVで投与され得る。更に他の場合には、追加の治療薬は、経口で投与され得る。
【0070】
方法は、上記で論じたもの以外の追加の治療薬剤と組み合わせることができることが更に企図される。
【実施例
【0071】
以下の非限定的な実施例は、限定ではなく例示の目的で提供される。
【0072】
ポリペプチド発現
実施例1:抗体Iの組換え発現
抗体Iは、
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGYTFSSYVMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGTHEYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENNWAPDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRYIDETAVAWFRQAPGKGREFVAGIGGGVDITYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRPEDTAVYYCAARPGRPLITSKVADLYPYWGQGTLVTVSSPP(配列番号14)の重鎖アミノ酸配列、及び
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNSLAWYQQKPGKAPKRLIYAAFSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCYQYYNYPSAFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号16)の軽鎖アミノ酸配列を有する抗ヒトGITR Fab-アルブミン結合VHH融合体である。
【0073】
配列番号14の重鎖及び配列番号16の軽鎖を有する抗体を、CHOK1細胞誘導体(Lonza Biologics Inc.)を使用する哺乳動物細胞発現系で生成する。配列番号14及び配列番号16をコードするcDNA配列を、GS含有発現プラスミド骨格(pEE12.4ベースのプラスミド;Lonza Biologics Inc.)にサブクローニングする。cDNA配列を、シグナルペプチド配列METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号22)のコード配列とフレーム中に融合させて、組織培養培地への抗体の分泌を増強させる。発現をウイルス性CMVプロモーターにより駆動する。
【0074】
一過性トランスフェクションを介して抗体を生成する場合、PEIベースの方法を使用して、CHOK1細胞を、等化学両論比の組換え発現プラスミドでトランスフェクトする。端的には、密度4×10細胞/mLの適切な体積のCHOK1の懸濁細胞を振盪フラスコに移し、PEI及び組換えプラスミドDNAの両方を細胞に加える。細胞を浮遊培養において32℃で6日間インキュベートする。インキュベーション期間の終了時に、細胞を低速遠心分離によって除去し、抗体を馴化培地から精製する。
【0075】
代替的に、また抗体を安定なトランスフェクションを介して生成するために、CHOK1細胞を、エレクトロポレーション及び適切な量の組換え発現プラスミドを使用して安定にトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞を適正な細胞密度で浮遊培養中に維持する。トランスフェクトされた細胞の選択を、25μMのMSX含有無血清培地中で増殖させることにより達成し、約35℃~37℃及び約5~7%COでインキュベートする。その後、細胞を低速遠心分離によって除去し、抗体を馴化培地から精製する。
【0076】
抗体はCHO細胞から培地中に分泌され、これをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製する。具体的には、採取した培地からの抗体を、MabSelect PrismAプロテインA樹脂(Cytiva)上に捕捉する。次いで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)又はトリス含有緩衝液などの洗浄緩衝液で樹脂を簡単に洗浄して、非特異的に結合した物質を除去する。タンパク質を、10mMクエン酸pH3などの低pH溶液で樹脂から溶出させる。抗体を含有する画分を低pHでプールし、可能性のあるウイルスを不活化することができる。pH8.0の0.1Mトリスなどの塩基を加えることで、pHを中性化してもよい。抗体を、POROS 50 HS(ThermoFisher)などの樹脂を使用するイオン交換クロマトグラフィーにより更に精製してもよい。抗体は、20カラム容量にわたる20mM酢酸ナトリウム、pH5.0中の0~1M NaCl勾配を使用してカラムから溶出することができる。
【0077】
精製した抗体は、リン酸緩衝生理食塩水に緩衝液交換するか、代替的にPlanova 20N(旭化成メディカル株式会社)などのウイルス保持フィルタを通過させ、続いて再生セルロース膜(Millipore)での接線流限外濾過を使用してリン酸緩衝生理食塩水に濃縮/透析濾過することができる。
【0078】
したがって、抗体は、この様式で、又は当業者によって容易に決定される類似の様式で、調製される。
【表1】
【0079】
実施例2:抗体IIの組換え発現
抗体IIは、
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGYTFSSYVMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGTHELYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENNWAPDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRYIDETAVAWFRQAPGKGREFVAGIGGGVDITYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRPEDTAVYYCAARPGRPLITSKVADLYPYWGQGTLVTVSSPP(配列番号15)の重鎖アミノ酸配列
及び
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNSLAWYQQKPGKAPKRLIYAAFSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCYQYYNYPSAFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号16)の軽鎖アミノ酸配列を有する抗ヒトGITR Fab-アルブミン結合VHH融合体である。
【0080】
配列番号15及び配列番号16をコードするcDNA配列を発現プラスミド中で使用することを除いて、配列番号15の重鎖及び配列番号16の軽鎖を有する抗体を、実質的に実施例1について説明したように生成する。
【表2】
【0081】
実施例3:SPRによるアルブミンオルソログへの抗体の結合
ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、ブタ、イヌ、ウシ及びウサギ血清アルブミンに対する抗体(すなわち、抗ヒトGITR Fab-アルブミン結合VHH融合体)のインビトロ結合を、25℃でSPRによって測定する。具体的には、これらの種の血清アルブミンに対する抗体I及びIIの親和性を、それぞれ以下の表3及び表4に要約する。
【0082】
様々な血清アルブミンへの抗体I及び抗体IIの結合は、Biacore 8K機器で行われる。Series S Sensor Chip CM5(Cytiva 29149603)表面への血清アルブミンの固定化を、製業者の指示(Amine Coupling Kit BR-1000-50)に従って行う。簡単に説明すると、センサチップ表面(フローセル1及び2)のカルボキシル基は、75mg/mlの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)及び11.5mg/mlのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の混合物70μLを10μl/分で注入することによって活性化する。ヒト、カニクイザル、ラット、マウス、イヌ、ブタ、ウシ、及びウサギの血清アルブミンを10mM酢酸ナトリウムpH4.0(BR-1003-49)で0.8、0.8、0.8、2.5、0.8、1、1、及び1.5μg/mlに希釈し、10μl/分で100秒間、活性化チップ表面(フローセル2、チャネル1~8)上に注入した。ヒト血清アルブミンは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)(カタログ番号A8763)から入手した。カニクイザル血清アルブミンは、Athens R&T(Athens,GA)(カタログ番号16-16-011202-CM)から入手した。ラット血清アルブミンは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)(カタログ番号A4538)から入手した。マウス血清アルブミンは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)(カタログ番号A3139)から入手した。イヌ血清アルブミンは、Molecular Innovations(Novi,MI)(カタログ番号DSA-1213 NC0739153)から入手した。ブタ血清アルブミンは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)(カタログ番号A4414)から入手した。ウシ血清アルブミンは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)(カタログ番号A7030)から入手した。ウサギ血清アルブミンは、Fitzgerald Industries International(Acton,MA)(カタログ番号30R-3303)から入手した。
【0083】
血清アルブミンは、遊離アミンを介してカルボキシメチルデキストランでコーティングされたセンサチップCM5上に、ヒト、カニクイザル、ラット、マウス、イヌ、ブタ、ウシについては29~52共鳴単位(RU)、またウサギ血清アルブミンについては118共鳴単位(RU)の表面密度で共有結合により固定化されている。表面(フローセル1及び2)の過剰な反応基を、pH8.5の1Mエタノールアミン塩酸塩-NaOHを70μl注入することにより不活性化する。
【0084】
実施例1及び2の抗体を、(すなわち、それぞれ抗体I及びII)HBS-EP+緩衝液(10mM HEPES pH7.6、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%ポリソルベート20)で、1000、333.3、111.1、37.04、12.35、4.12、1.37、0.457、0.152、0.051、及び0.017nMの濃度に希釈する。150μlの試料を、チップの表面の固定化血清アルブミン全体に個々に順次注入し、25℃、60μl/分の流量で600秒間解離させる。pH1.5の10mMグリシン-HCl(BR-1003-54)を60μl/分で100秒間注入して、表面を再生する。得られたセンサグラムを、Biacore 8K Insight Evaluation Software(バージョン3.0.11.15423)の1:1結合反応速度モデルフィッティングを使用して分析し、結合速度パラメータの会合速度(ka)、解離速度(kd)、及び平衡解離定数(K)を計算する。Kは、抗体Iとのヒト、カニクイザル、マウス、ラット、ブタ、イヌ、及びウシの血清アルブミン結合について、それぞれ0.25、4.4、53、44、100、20、及び460nMとして決定される(表3)。KDは、抗体IIとのヒト、カニクイザル、マウス、ラット、ブタ、イヌ、及びウシの血清アルブミン結合について、それぞれ0.4、5.9、42、51、99、20及び430nMとして決定される(表4)。
【表3】


【表4】
【0085】
実施例4:GITR発現細胞への抗体の結合
JurkatヒトGITR/NFkB-Luc2細胞(CS184004)をPromegaから購入し、RPMI1640培地+10%FBS(HyClone SH30070.3)+400μg/mLハイグロマイシンB+600μg/mL G418に維持した。
【0086】
NFkBレポーターpNiFty2-Luc(InvivoGen)をエレクトロポレーションによってJurkat細胞(ATCC)に導入し、トランスフェクタントを400μg/mLゼオシンで2週間選択する。得られたJurkat NFkBluc細胞株にカニクイザルGITRレンチウイルスを形質導入し、0.5μg/mLピューロマイシンで1週間選択する。Jurkat cyno GITR/NFkBluc細胞を、RPMI1640培地+10%FBS(HyClone SH30070.3)+400μg/mLゼオシン+0.5μg/mLピューロマイシン中で維持する。
【0087】
JurkatヒトGITR/NFkB-Luc2及びJurkatカニクイザルGITR/NFkBluc細胞をFACS緩衝液(PBS+1%BSA+0.01%アジ化ナトリウム)に100万細胞/mLで再懸濁し、5μl Fcブロック/mL(BioLegend)を添加し、4℃で20分間インキュベートする。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、1e6細胞/mLでFACS緩衝液に再懸濁し、ポリプロピレン96ウェルプレートに100μl/ウェルで添加し、100,000細胞/ウェルとする。FACS緩衝液に希釈した2X抗体用量滴定液100μl/ウェルを細胞に添加し、4℃で45分間インキュベートする。細胞を200μl/ウェルのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液中の12.5μg/mLの抗ヒトIg軽鎖カッパ/PE二次抗体(Invitrogen #PA1-74408)に再懸濁し、4℃で45分間インキュベートする。細胞を200μl/ウェルのFACS緩衝液で2回洗浄し、200μlのFACS緩衝液に再懸濁する。試料をMillipore EasyCyte Cytometerで読み取り、GuavaSoft 3.3 InCyteソフトウェアを使用して蛍光強度の中央値を計算する。EC50値を3回の実験反復のそれぞれについて計算し、EC50幾何平均+/-誤差(デルタ法)を、これら3つの結果から計算する。表5に示す細胞結合の結果は、抗体I及び抗体IIの両方がヒトGITR及びカニクイザルGITR(「cyno GITR」)に強力に結合することを示している。一方、この研究の陰性対照として使用したアダリムマブFab-albVHHは、ヒトGITR及びカニクイザルGITRへの結合が無視できる程度であることを示した(データは示さず)。
【表5】
【0088】
実施例5:ヒト及びCyno GITRにおける抗体のインビトロGITRL拮抗作用
JurkatヒトGITR/NFkB-Luc2細胞又はJurkat cyno GITR/NFkBluc細胞をアッセイ培地(RPMI1640+1%FBS)中で37℃、5%COで一晩飢餓状態にし、翌日アッセイ培地(RPMI1640+1%FBS)に2e6細胞/mLで再懸濁する。25μL/ウェルの細胞懸濁液を、5e5細胞/ウェルとなるように白色不透明96ウェルプレート(Corning Costar)に添加する。アッセイ培地に希釈した50μL/ウェルの2X抗体用量滴定液を添加し、続いてすぐに、アッセイ培地に希釈した4X(12nM)ヒトGITRL又はcyno GITRLをそれぞれ25μL/ウェルで添加する。プレートを37℃、5%COで6時間インキュベートし、次いで室温に15分間置く。100μL/ウェルのBioGloルシフェラーゼ試薬(Promega)をウェルごとに加え、室温で5分間振盪しながらインキュベートする。発光を、Gen5ソフトウェアを備えたBioTek SynergyNeo2プレートリーダーで測定する。3回の反復実験のそれぞれからGITRアンタゴニスト抗体処理によるGITRL阻害についてIC50値を計算し、誤差を伴うIC50幾何平均(デルタ法)を、これら3つの結果から計算する。
【表6】
【0089】
表6のルシフェラーゼレポーター機能バイオアッセイの結果は、抗体I及び抗体IIの両方が、ヒトGITRのヒトGITRL刺激及びcyno GITRのcyno GITRL刺激を強力に阻害することを実証している。
【0090】
実施例6:ヒト及びCyno GITRにおける抗体のインビトロアゴニズム
JurkatヒトGITR/NFkB-Luc2細胞又はJurkat cyno GITR/NFkBluc細胞をアッセイ培地(RPMI1640+1%FBS)中で37℃、5%COで一晩飢餓状態にし、翌日アッセイ培地(RPMI1640+1%FBS)に2e6細胞/mLで再懸濁する。50μL/ウェルの細胞懸濁液を、5e5細胞/ウェルとなるように白色不透明96ウェルプレート(Corning Costar)に添加する。アッセイ培地に希釈した50μL/ウェルの2X抗体用量滴定液を添加し、プレートを37℃、5%COで6時間インキュベートし、次いで室温に15分間置く。100μL/ウェルのBioGloルシフェラーゼ試薬(Promega)をウェルごとに加え、室温で5分間振盪しながらインキュベートする。発光を、Gen5ソフトウェアを備えたBioTek SynergyNeo2プレートリーダーで測定する。2回又は3回の反復実験のそれぞれからGITR抗体処理についてEC50値を計算し、EC50幾何学的誤差(デルタ法)を、これらの結果から計算する。
【表7】
【0091】
表7のルシフェラーゼレポーター機能バイオアッセイの結果は、GITRLの非存在下での抗体I又は抗体IIによるJurkatヒトGITR/NFkBルシフェラーゼ細胞又はJurkat cyno GITR/NFkBルシフェラーゼ細胞の処理がアゴニスト刺激をもたらさなかったことを実証している。対照的に、抗体Iの二価IgG変異体(すなわち抗体III)での処理は、GITR経路の活性化を誘導した。
【0092】
実施例7:T細胞増殖のGITRL共刺激に対する抗体のインビトロ拮抗作用。
GITRL生物学の1つの側面は、T細胞を共刺激して増殖を増加させる能力である。この実施例では、抗体I及び抗体II処理がヒトT細胞増殖のプレート結合GITRL共刺激を強力に阻害することが実証される。ヒトCD3+T細胞を末梢血単核球(PBMC)から単離し、プレートに結合した0.2μg/mL抗CD3抗体で1.5e6細胞/mLで4日間刺激して、T細胞上のGITR発現を増加させた。次いで、T細胞を培養培地中で2日間休ませて、再刺激用の細胞を準備した。次いで、1.5e6細胞/mLの活性化及び休止T細胞を、抗体I又は抗体II用量滴定液の存在下、プレートに結合した2μg/mL抗CD3抗体及び1nMヒトGITRLで5日間共刺激した。T細胞の増殖を、インキュベーションの最後の18時間の間のH3-チミジン取り込みによって測定した。各抗体を3回の用量滴定条件で試験し、3回の別々の実験にわたって4人の異なるドナーで試験した。
【表8】
【0093】
表8に示すGITRL共刺激アッセイの結果は、抗体I及び抗体IIがT細胞増殖のGITRL共刺激を強力に阻害することを実証している。対照的に、陰性対照として使用されたalbVHH抗体フラグメントは、T細胞増殖のGITRL共刺激を阻害する能力が無視できる程度であることを示した(データは示さず)。
【0094】
実施例8:GITRLの存在下でのエフェクターT細胞増殖のインビトロ制御性T細胞抑制の抗体回復。
GITRL生物学の1つの側面は、GITRの結合及び活性化を通じてエフェクターT細胞増殖の制御性T細胞抑制を阻害する能力である。この実施例では、抗体I及び抗体II処理が、プレート結合GITRLの存在下で制御性T細胞の抑制活性を強力に回復することが実証される。ヒトT細胞及びCD4+CD127lowCD25+制御性T細胞を末梢血単核球(PBMC)から単離し、それぞれCellTrace CFSE又はCellTrace Violet(Invitrogen)で標識した。T細胞及びCD4+CD127lowCD25+制御性T細胞を、抗体I又は抗体II用量滴定液の存在下で2:1の比率で組み合わせ、2μg/mL抗CD28及びプレートに結合した1μg/mL抗CD3及び2nM GITRLで刺激した。4日間のインキュベーション後、CellTrace Violet標識CD4+CD127lowCD25+制御性T細胞を除いて、CFSE標識を追跡するフローサイトメトリーによってCD4+T細胞の増殖を評価した。このアッセイは、4人の個別のドナーを用いて4つの別個の機会で行った。処理ごとに10,000のイベントを取得し(試験された抗体濃度ごとに単一の生物学的複製)、Tエフェクター細胞の増殖パーセントを計算するために使用した。
【表9】
【0095】
表9に示すアッセイ結果は、抗体I及び抗体IIが、GITRLの存在下でエフェクターT細胞増殖の制御性T細胞抑制を強力に回復することを実証している。
【0096】
実施例9:マウスにおける抗体薬物動態
雄C57BL/6マウスに、PBS(pH7.4)中の抗体I又は抗体IIの10mg/kgを0.1mL/動物の量で単回IV又はSQ投薬で投与する。薬物動態学的特性評価のために、IV投薬の1、6、24、48、72、96、120、168、240、及び336時間後又はSQ投薬の3、6、12、24、48、96、120、168、240、及び336時間後に3匹の動物/群/時点から血液を採取し、血清に処理する。
【0097】
抗体I及びIIの血漿濃度を、プレートベースのGITR抗原捕捉酵素結合免疫吸着検定(ELISA)法によって測定する。組換えヒトGITR Fcキメラ(rh GITR/TNFRSF18 Fc)を捕捉試薬として1mg/mLでELISAプレート上にコーティングする。血漿標準、対照及び試料とインキュベートした後、ヤギ抗ヒトIg Fabホースラディッシュペルオキシダーゼを使用して、プレート結合抗体I又は抗体IIを検出する。各時点で決定された平均濃度の非コンパートメント分析(NCA)を使用して、薬物動態パラメータを計算する(N=1~3匹の動物/群/時点)。NCAは、Watson Bioanalytical LIMSを使用して実行する。表10に示すように、抗体I及び抗体IIは、C57BL/6マウスにおいて拡張された薬物動態プロファイルを示す。
【表10】
【0098】
実施例10:ラットにおける抗体の薬物動態
雄のSprague Dawleyラットに、PBS(pH7.4)中の10mg/kgの抗体I又は抗体IIを、それぞれ2.5mL/kg及び1mL/kgの量で単回IV又はSQ投薬で投与する。薬物動態学的特性評価のために、IV投薬の1、6、24、48、72、96、120、168、240、336、432及び504時間後又はSQ投薬の3、6、12、24、48、96、120、168、240、336、432及び504時間後に3匹の動物/群/時点から血液を採取し、血清に処理する。
【0099】
抗体抗体I及びIIの血漿濃度を、プレートベースのGITR抗原捕捉酵素結合免疫吸着検定(ELISA)法によって測定する。組換えヒトGITR Fcキメラ(rh GITR/TNFRSF18 Fc)を捕捉試薬として1μg/mLでELISAプレート上にコーティングした。血漿標準、対照及び試料とインキュベートした後、ヤギ抗ヒトIg Fabホースラディッシュペルオキシダーゼ(1:10,000に希釈)を使用して、プレート結合抗体I又は抗体IIを検出した。各動物(N=2~3)についてNCAを使用して薬物動態パラメータを計算し、パラメータを必要に応じて平均及び標準偏差(SD)によって要約する。抗体IIを皮下投薬されたN=2匹のラットについて薬物動態データが得られたため、平均パラメータが報告されている。NCA及び要約統計計算は、Watson Bioanalytical LIMSを使用して実行する。表11及び表12に示すように、抗体抗体I及びIIは、Sprague Dawleyラットにおいて拡張された薬物動態プロファイルを示した。
【表11】


【表12】
【0100】
実施例11:カニクイザルにおける抗体の薬物動態
カニクイザルに、PBS(pH7.2)中の抗体I又は抗体IIの0.1、1、若しくは10mg/kg IV用量又は10mg/kg SQ用量を、1mL/kg(IV)又は0.2mL/kg(SC)の量で単回投与する。薬物動態学的特性評価のために、投薬の0.5、3、6、24、48、72、96、168、240、336、432、504及び672時間後に3匹の動物/群/時点から血液を採取し、血清に処理する。
【0101】
抗体I及びIIの血漿濃度を、プレートベースのGITR抗原捕捉酵素結合免疫吸着検定(ELISA)法によって測定する。組換えヒトGITR Fcキメラ(rh GITR/TNFRSF18 Fc)を捕捉試薬として1μg/mLでELISAプレート上にコーティングする。血漿標準、対照及び試料とインキュベートした後、検出抗体を使用して抗体の安定性を決定する。1つの方法では、ヤギ抗ヒトIg Fabホースラディッシュペルオキシダーゼを使用して、プレート結合抗体I又は抗体IIのFab部分を検出する。2番目の方法では、プレート結合抗体I又は抗体IIの無傷のリンカーを有する代謝的に安定した抗体を検出するために、Biotin-SP AffiniPure Goat Anti-Alpaca IgG、VHHドメインを二次抗体として添加する。このインキュベーションの後、プレート結合抗体I又は抗体IIを検出するための試薬として、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを添加する。各動物についてNCAを使用して薬物動態パラメータを計算し、パラメータを必要に応じて平均及び標準偏差(SD)によって要約する。NCA及び要約統計計算は、Watson Bioanalytical LIMSを使用して実行する。表13及び表14に示すように、抗体I及び抗体IIは、カニクイザルにおいて拡張された薬物動態プロファイルを示す。両方のELISA法で測定した抗体I又はIIの濃度を比較すると、同様の曝露及び薬物動態が観察され、IV又はSQ投与後のインビボでのこれらの抗体の代謝安定性が示された。
【表13】

【表14】
【0102】
配列表
配列番号1 HCDR1
AASGYTFSSYVMH
配列番号2 HCDR2.1
VTSYDGTHEY
配列番号3 HCDR3
ARENNWAPDY
配列番号4 LCDR1
RASQDISNSLA
配列番号5 LCDR2
YAAFSLQS
配列番号6 LCDR3
YQYYNYPSA
配列番号7 HCDR2.2
VTSYDGTHEL
配列番号8 HC可変領域(VH1)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGYTFSSYVMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGTHEYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENNWAPDYWGQGTLVTVSS
配列番号9 HC可変領域(VH2)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGYTFSSYVMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGTHELYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENNWAPDYWGQGTLVTVSS
配列番号10 LC可変領域(VL)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNSLAWYQQKPGKAPKRLIYAAFSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCYQYYNYPSAFGQGTKLEIK
配列番号11 リンカー1
DKTHTGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQ
配列番号12 リンカー2
DKTGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQ
配列番号13 アルブミン結合VHH
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRYIDETAVAWFRQAPGKGREFVAGIGGGVDITYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRPEDTAVYYCAARPGRPLITSKVADLYPYWGQGTLVTVSSPP
配列番号14 HC抗Fab-アルブミン結合VHH融合体1
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGYTFSSYVMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGTHEYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENNWAPDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRYIDETAVAWFRQAPGKGREFVAGIGGGVDITYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRPEDTAVYYCAARPGRPLITSKVADLYPYWGQGTLVTVSSPP
配列番号15 HC抗GITR Fab-アルブミン結合VHH融合体2
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGYTFSSYVMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGTHELYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENNWAPDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQGGGGQEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRYIDETAVAWFRQAPGKGREFVAGIGGGVDITYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRPEDTAVYYCAARPGRPLITSKVADLYPYWGQGTLVTVSSPP
配列番号16 LC
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNSLAWYQQKPGKAPKRLIYAAFSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCYQYYNYPSAFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号17 DNAコードHC抗-GITR Fab-アルブミン結合VHH融合体1
CAAGTGCAGCTCGTGGAGTCGGGTGGCGGAGTGGTGCAGCCCGGAAGGTCCTTGCGGCTCTCCTGTGCCGCTTCCGGCTACACCTTCTCGAGCTACGTGATGCACTGGGTCAGACAGGCACCGGGAAAGGGTCTGGAATGGGTGGCCGTGACTTCCTACGACGGCACCCACGAGTATTACGCCGACTCAGTGAAGGGCCGCTTCACTATCTCCCGGGACAACTCAAAGAACACCCTGTATCTGCAAATGAACTCACTGCGGGCCGAGGACACTGCCGTGTACTACTGCGCGCGCGAAAACAACTGGGCCCCTGACTACTGGGGACAGGGGACTCTGGTCACTGTGTCGTCCGCCTCGACCAAGGGACCCTCCGTGTTTCCGCTGGCGCCAAGCAGCAAGAGCACCTCGGGGGGAACTGCAGCCTTGGGGTGCCTCGTGAAGGATTACTTCCCCGAACCAGTGACCGTGTCCTGGAACTCTGGGGCCCTCACCAGTGGAGTGCACACTTTCCCTGCGGTGCTGCAGTCCTCCGGACTGTACAGCCTGTCCAGCGTGGTCACGGTGCCCAGCTCCTCACTGGGCACCCAGACCTACATTTGCAACGTGAACCATAAGCCGTCCAATACCAAAGTCGATAAGAAAGTCGAGCCGAAGTCCTGCGACAAGACACACACCGGTGGAGGAGGCCAGGGTGGAGGTGGACAAGGCGGCGGAGGTCAAGGCGGAGGAGGACAGGGTGGCGGAGGACAGGAAGTGCAGCTGCTGGAGTCCGGGGGCGGACTGGTGCAGCCTGGCGGATCATTGCGGCTGTCGTGCGCGGCCTCCGGACGCTACATCGACGAGACAGCAGTGGCCTGGTTCAGACAGGCTCCCGGAAAGGGAAGAGAGTTCGTGGCCGGAATTGGCGGGGGAGTCGACATTACCTACTACGCCGATTCCGTGAAGGGTCGCTTTACCATCTCCCGGGACAATTCGAAGAACACCCTGTACCTCCAAATGAACTCGCTGAGGCCGGAAGATACCGCGGTGTATTACTGTGCCGCCCGCCCGGGACGCCCGCTGATCACGTCCAAAGTCGCCGACCTGTACCCGTACTGGGGACAGGGTACCCTCGTGACCGTGTCCAGCCCTCCC
配列番号18 DNAコードHC GITR及びアルブミン結合VHH融合体2
CAGGTGCAGCTCGTGGAGTCGGGTGGCGGAGTGGTGCAGCCCGGAAGGTCCTTGCGGCTCTCCTGTGCCGCTTCCGGCTACACCTTCTCGAGCTACGTGATGCACTGGGTCAGACAGGCACCAGGAAAGGGTCTGGAATGGGTGGCCGTGACCTCCTACGACGGCACCCACGAGCTGTACGCCGACTCAGTGAAGGGCCGCTTCACTATCTCCCGGGACAACTCAAAGAACACCCTGTATCTGCAAATGAACTCACTGCGGGCCGAGGACACTGCCGTGTACTACTGCGCGCGCGAAAATAACTGGGCCCCTGACTACTGGGGACAGGGGACTCTGGTCACTGTGTCGTCCGCCTCGACCAAGGGACCCTCCGTGTTTCCGCTGGCGCCAAGCAGCAAGAGCACCTCGGGGGGAACTGCAGCCTTGGGGTGCCTCGTGAAGGATTACTTCCCCGAACCAGTGACCGTGTCCTGGAACTCTGGGGCCCTCACCAGTGGAGTGCACACTTTCCCTGCGGTGCTGCAGTCCTCCGGACTGTACAGCCTGTCCAGCGTGGTCACGGTGCCCAGCTCCTCACTGGGCACCCAGACCTACATTTGCAACGTGAACCATAAGCCGTCCAATACCAAAGTCGATAAGAAAGTCGAGCCGAAGTCCTGCGACAAGACACACACCGGTGGAGGAGGCCAGGGTGGAGGTGGACAAGGCGGCGGAGGTCAAGGCGGAGGAGGACAGGGTGGCGGAGGACAGGAAGTGCAGCTGCTGGAGTCCGGGGGCGGACTGGTGCAGCCTGGCGGATCATTGCGGCTGTCGTGCGCGGCCTCCGGACGCTACATCGACGAGACAGCAGTGGCCTGGTTCAGACAGGCTCCCGGAAAGGGAAGAGAGTTCGTGGCCGGAATTGGCGGGGGAGTCGACATTACCTACTACGCCGATTCCGTGAAGGGTCGCTTTACCATCTCCCGGGACAATTCGAAGAACACCCTGTACCTCCAAATGAACTCGCTGAGGCCGGAAGATACCGCGGTGTATTACTGTGCCGCCCGCCCGGGACGCCCGCTGATCACGTCCAAAGTCGCCGACCTGTACCCGTACTGGGGACAGGGTACCCTCGTGACCGTGTCCAGCCCTCCC
配列番号19 DNAコードLC
GATATCCAGATGACCCAGTCCCCGAGCTCGCTGTCCGCTTCCGTGGGAGACAGAGTGACGATCACTTGTCGGGCCAGCCAAGACATTAGCAACTCCCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAAGCACCCAAGAGGTTGATCTACGCGGCCTTTTCACTGCAATCCGGAGTGCCGAGCCGGTTCTCCGGATCCGGTTCAGGGACCGAGTTCACCTTGACCATTAGCAGCCTGCAGCCCGAAGATTTCGCCACTTACTACTGCTACCAGTATTACAATTACCCATCGGCGTTCGGCCAAGGCACCAAGCTCGAGATCAAGCGGACCGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGC
配列番号20 ヒトGITR全長(シグナルペプチドなし)
QRPTGGPGCGPGRLLLGTGTDARCCRVHTTRCCRDYPGEECCSEWDCMCVQPEFHCGDPCCTTCRHHPCPPGQGVQSQGKFSFGFQCIDCASGTFSGGHEGHCKPWTDCTQFGFLTVFPGNKTHNAVCVPGSPPAEPLGWLTVVLLAVAACVLLLTSAQLGLHIWQLRSQCMWPRETQLLLEVPPSTEDARSCQFPEEERGERSAEEKGRLGDLWV
配列番号21 ヒトGITR ECD(シグナルペプチドなし)
QRPTGGPGCGPGRLLLGTGTDARCCRVHTTRCCRDYPGEECCSEWDCMCVQPEFHCGDPCCTTCRHHPCPPGQGVQSQGKFSFGFQCIDCASGTFSGGHEGHCKPWTDCTQFGFLTVFPGNKTHNAVCVPGSPPAE
配列番号22:シグナルペプチドアミノ酸配列
METDTLLLWVLLLWVPGSTG
【配列表】
2024505563000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGITR(配列番号20)に結合し、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合フラグメントXを含む化合物であって、前記VHが、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
i.前記HCDR1が、配列番号1を含み、
ii.前記HCDR2が、配列番号2又は配列番号7を含み、
iii.前記HCDR3が、配列番号3を含み、
iv.前記LCDR1が、配列番号4を含み、
v.前記LCDR2が、配列番号5を含み、
vi.前記LCDR3が、配列番号6を含む、化合物。
【請求項2】
式:
X-L-M 又は M-L-X
(式中、Mは、ヒト血清アルブミンに結合するVHH部分であり、
L(存在する場合)は、リンカーである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記VHH部分が、配列番号13、又はそれと少なくとも約90%~約99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記VHH部分が、Lを介してFabフラグメントの重鎖第1定常ドメイン(CH1)のC末端に融合されている、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、配列番号10を有するVLを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、配列番号8を有するVH又は配列番号9を有するVHを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Lが、配列番号11、配列番号12、及び配列番号23からなる群から選択されるペプチドリンカーを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Xが、配列番号16に示される軽鎖(LC)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Xが、配列番号14に示されるHC又は配列番号15に示されるHCを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
配列番号17を含む、核酸。
【請求項11】
配列番号18を含む、核酸。
【請求項12】
配列番号19を含む、核酸。
【請求項13】
配列番号17、配列番号18、又は配列番号19に示される核酸を含む、ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項15】
化合物を生成するプロセスであって、前記抗体が発現するような条件下で、請求項14に記載の細胞を培養することと、培養培地から発現した抗体を回収することとを含む、プロセス。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって生成される、化合物。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
療法における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物
【請求項19】
自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、AtD、炎症性障害、関節炎症、関節炎、RAIBDCD又はUCの治療における使用のための、請求項17に記載の医薬組成物
【請求項20】
自己免疫疾患、アレルギー疾患、喘息、AtD、炎症性障害、関節炎、関節炎、関節リウマチ、IBD、CD又はUCの前記治療のための医薬の製造における、請求項1~9又は16のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【国際調査報告】