(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】積層造形のための加熱技術
(51)【国際特許分類】
B22F 10/368 20210101AFI20240130BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20240130BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240130BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240130BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240130BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240130BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240130BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240130BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240130BHJP
【FI】
B22F10/368
B22F10/36
B22F12/41
B22F10/28
B29C64/268
B29C64/153
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546466
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022070296
(87)【国際公開番号】W WO2022170296
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510102122
【氏名又は名称】マテリアライズ・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MATERIALISE NV
【住所又は居所原語表記】Technologielaan 15,B-3001 Leuven,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリュエル,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ダス,ブレヒト
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213AR08
4F213AR11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL45
4F213WL85
4F213WL96
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
本開示のいくつかの態様は概して、積層造形に関し、より詳細には、積層造形中に加熱するための方法および装置に関する。積層造形装置によって実行され得る例示的な方法は概して、加熱領域を複数のストリップに分割する工程であって、加熱領域が造形材料の層内で画定される、工程;複数のストリップにインデックスをランダムに割り当てる工程;およびランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数のストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形中に加熱する方法であって:
加熱領域を複数のストリップに分割する工程であって、前記加熱領域が造形材料の層内で画定される、工程;
前記複数のストリップにインデックスをランダムに割り当てる工程;および
ランダムに割り当てられた前記インデックスの順序で、前記複数のストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって前記造形材料の層にエネルギーを加える工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のストリップは、平行なストリップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー源は、電子ビームを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のストリップは、ランダムに割り当てられた前記インデックスに基づいて複数のベクトルを割り当てられ、前記複数のベクトルは、前記エネルギー源が前記エネルギーを前記造形材料の層に加えるための空間位置と、前記エネルギー源が前記エネルギーを前記造形材料に加えるための方向とを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のベクトルは、少なくとも1つのエネルギーの大きさを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のベクトルは、少なくとも1つの速度を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギー源が前記エネルギーを前記造形材料に加える前記方向は、ランダムに割り当てられた前記インデックスの順序で互い違いになる、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギーを加える工程は、前記エネルギー源を使用して、前記造形材料の層の1つ以上の部分に別々にエネルギーを加えて、前記造形材料の層の前記1つ以上の部分を溶融する前に実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エネルギーを加える工程は、前記エネルギー源を使用して、前記造形材料の層の1つ以上の部分に別々にエネルギーを加えて、前記造形材料の層の前記1つ以上の部分を溶融した後に実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の加熱領域を第2の複数のストリップに分割する工程であって、前記第2の加熱領域が前記造形材料の層内で画定される、工程;
前記第2の複数のストリップに第2のインデックスをランダムに割り当てる工程;および
ランダムに割り当てられた前記第2のインデックスの順序で、前記第2の複数のストリップのそれぞれにわたって、前記エネルギー源によって前記造形材料の層にエネルギーを加える工程、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の複数のストリップは、平行なストリップを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱領域は、前記造形材料の層における第1のオブジェクトの第1の断面と形状が対応し、前記第2の加熱領域は、前記造形材料の層における第2のオブジェクトの第2の断面と形状が対応する、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の加熱領域の少なくとも一部は、前記加熱領域の少なくとも一部と重なる、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の加熱領域は、前記加熱領域とは異なる前記造形材料の層の領域を占める、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱領域は、前記造形材料の層全体とサイズおよび形状が対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱領域は、前記造形材料の層内のオブジェクトの断面とサイズおよび形状が対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱領域は、前記造形材料の層全体と形状が対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記加熱領域は、前記造形材料の層内のオブジェクトの断面と形状が対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第2の加熱領域を第2の複数のストリップに分割する工程であって、前記第2の加熱領域が第2の造形材料の層内で画定され、前記造形材料の層がオブジェクトの第1のスライスと対応し、前記第2の造形材料の層がオブジェクトの第2のスライスと対応する、工程;
前記第2の複数のストリップに第2のインデックスをランダムに割り当てる工程;および
ランダムに割り当てられた前記第2のインデックスの順序で、前記第2の複数のストリップのそれぞれにわたって、前記エネルギー源によって前記造形材料の層にエネルギーを加える工程、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の複数のストリップは、平行なストリップを含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の加熱領域および前記加熱領域は、同じサイズおよび形状を有する、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
メモリ;および
前記メモリに結合されたプロセッサを備え、
前記メモリおよび前記プロセッサは、請求項1~21のうち1つ以上に記載の方法を実行するように構成されている、
ユーザ機器(UE)。
【請求項23】
請求項1~21のうち1つ以上に記載の方法を実行するための様々な手段を備える、
ユーザ機器(UE)。
【請求項24】
ユーザ機器(UE)によって実行されたとき、前記UEに、請求項1~21のうち1つ以上に記載の方法を実行させる命令を含む、
一時的でないコンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2021年2月2日に出願された米国仮特許出願第63/144,684号の利益および優先権を主張し、その全体が、以下に完全に記載されているかのように、適用可能なすべての目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔背景〕
〔開示の分野〕
本出願は、積層造形に関する。より詳細には、本出願が積層造形中に造形領域内の造形材料を加熱するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
〔関連技術の説明〕
積層造形の分野では、三次元固体オブジェクトがデジタルモデルから形成される。造形されたオブジェクトは三次元(「3D」)であるので、積層造形は一般に3Dプリントと呼ばれる。積層造形のためのいくつかの技術の例として、電子ビーム溶融(「EBM」)または指向性エネルギー蒸着が挙げられる。これらの技術は、造形材料の層を重合または固化するために、電子ビームまたはレーザービームを指定された位置に向けるものであり、所望の3Dオブジェクトを作り出すために使用される。3Dオブジェクトは、造形材料の連続層を固化することによって、層ごとに造形される。
【0004】
積層造形の様々な段階中に造形材料の温度を制御することは重要である。例えば、予熱段階は、溶融段階の一部として層中の造形材料を実際に溶融/焼結する前に、その融点付近の層中の造形材料をもたらすために使用され得る。造形材料を徐々に予熱することは、造形材料を単一の溶融段階中に急速に低温状態から溶融状態にしようとすることとは対照的に、より高い造形品質および成功率を有利にもたらし得る。
【0005】
さらに別の例として、溶融/焼結が層に対して行われた後に、後加熱段階を使用して、層内の造形材料の冷却速度を制御することができる。例えば、造形材料がそのままで冷却されるようにする代わりに、造形材料の温度を上昇させるために、または造形材料の冷却速度を遅くするために、後加熱段階が使用されてもよく、これは、造形された後のオブジェクトの品質を高めるのに役立ち得る。
【0006】
特定の事例では、加熱(例えば、予熱および/または後加熱)は、電子またはレーザービームを使用して、造形材料の層全体、および/または造形される1つ以上のオブジェクトに対応する層の1つ以上の部分または領域を加熱する。
【0007】
したがって、造形材料を予熱および後加熱することを含む、造形材料を加熱するための技術は、積層造形において有用である。
【0008】
〔要約〕
本開示のシステム、方法、および装置それぞれは、いくつかの態様を有し、それらのうちのいずれも、その望ましい特性を単独で負うものではない。以下の特許請求の範囲によって表される本開示の範囲を限定することなく、いくつかの特徴をここで簡単に説明する。この議論を考慮した後、特に「詳細な説明」という題名のセクションを読んだ後、本開示の特徴が、積層造形中に造形領域内の造形材料を加熱するための改良されたシステムおよび方法を含む利点をどのようにもたらすかを理解するであろう。
【0009】
特定の実施形態は、積層造形中に加熱する方法を提供する。本方法は概して、加熱領域を複数のストリップに分割する工程であって、加熱領域が造形材料の層内で画定される、工程;複数のストリップにインデックスをランダムに割り当てる工程;およびランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数のストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える工程を含む。
【0010】
特定の実施形態は、ユーザ機器(UE)を提供する。UEは概して、メモリ;およびメモリに結合されたプロセッサを備え、メモリおよびプロセッサは、加熱領域を複数のストリップに分割する工程であって、加熱領域が造形材料の層内で画定される、工程;複数のストリップにインデックスをランダムに割り当てる工程;およびランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数のストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える工程を実行するように構成されている。
【0011】
特定の実施形態は、UEを提供する。UEは概して、加熱領域を複数のストリップに分割する方法であって、加熱領域が造形材料の層内で画定される、方法;複数のストリップにインデックスをランダムに割り当てる方法;およびランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数のストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える方法を実行するための様々な手段を備える。
【0012】
特定の実施形態は、一時的でないコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。一時的でないコンピュータ読み取り可能な媒体は概して、ユーザ機器(UE)によって実行されたときに、UEに、加熱領域を複数のストリップに分割する方法であって、加熱領域が造形材料の層内で画定される、方法;複数のストリップにインデックスをランダムに割り当てる方法;およびランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数のストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える方法を実行させる命令を含む。
【0013】
他の態様は、上述の方法および本明細書に記載の方法を実行するように構成された加工システム;加工システムの1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、加工システムに、上述の方法および本明細書に記載の方法を実行させる命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な媒体;上述の方法および本明細書にさらに記載の方法を実行するためのコードを含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体上に具現化されたコンピュータプログラム製品;ならびに上述の方法および本明細書にさらに記載の方法を実行するための手段を備える加工システムを提供する。
【0014】
以下の説明および関連する図面は、1つ以上の実施形態のいくつかの例示的な特徴を詳細に説明する。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面は1つ以上の実施形態の特定の態様を示しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0016】
図1は、三次元(「3D」)オブジェクトを設計および造形するためのシステムの一例である。
【0017】
図2は、
図1に示すコンピュータの一例の機能ブロック図を示す。
【0018】
図3は、3Dオブジェクトを造形するための高レベルプロセスを示す。
【0019】
図4Aは、再コーティング機構を有する積層造形装置の一例である。
【0020】
図4Bは、再コーティング機構を有する積層造形装置の別の例である。
【0021】
図5A~5Bは、ランダム化プロセスによって生成された予熱パターンの上面図を示す。
【0022】
図6A~6Dは、
図5Bの予熱パターンを実行する積層造形装置の上面図を示す。
【0023】
図7A~7Bは、積層造形装置の造形層上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【0024】
図8A~8Dは、異なるランダム化された加熱パターンの上面図を示す。
【0025】
図9A~9Dは、異なる造形パーツの上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【0026】
図10は、ランダム化された加熱パターンを生成するための例示的な方法を示す。
【0027】
図11は、積層造形装置上にランダム化された加熱パターンを実装するための例示的な方法を示す。
【0028】
理解を容易にするために、可能な場合、図面に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号が使用されている。さらなる説明なしに一実施形態の要素および特徴を他の実施形態に有利に組み込んでもよいということが想定される。
【0029】
〔詳細な説明〕
本開示の態様は、積層造形中に造形領域内の造形材料を加熱するための装置、方法、加工システム、およびコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。例えば、本明細書で説明される態様は、造形材料の予熱および/または後加熱のために使用され得る。特定の態様は、電子ビーム溶融(「EBM」)などの特定の様式の積層造形に関して本明細書で説明される。しかしながら、本明細書で説明される技術は、他の様式の積層造形にも適用可能であり得、EBMのみに限定されないことに留意されたい。例えば、造形材料にエネルギーを加えるために、電子ビームの代わりにレーザーなどの他の加熱装置を使用して、造形材料を加熱してもよい。
【0030】
EBMは、造形材料を加熱するために電子ビームを使用するが、これはいくつかの課題を有している。例えば、電子ビームを使用する場合、造形材料の所定の領域に導入される電磁荷の量を制限することが重要である。電磁荷の蓄積がある場合、造形材料の得られた材料特性が悪影響を受けるか、または、造形材料を「爆発」または気化させ、造形の失敗を引き起こす放電が生じる可能性がある。
【0031】
したがって、いくつかの態様は、電子ビームなどからのエネルギーが、電磁荷の過剰な蓄積を回避しながら造形材料を加熱する様式で造形材料に加えられる技術に関する。したがって、本明細書の技術は、造形の失敗を回避するのを助けることによって、積層造形の技術の改善をもたらす。
【0032】
電子ビームを使用して予熱する特定の技術は、2006年7月27日に出願された欧州特許出願第06758093.6号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。06758093.6に記載されている技術は、予熱のために使用される連続的に走査される経路間の「最小安全距離」の計算および保全を必要とする。
【0033】
本明細書に記載されている技術は、06758093.6に記載されている技術とは異なる。いくつかの態様では、本明細書の技術は、積層造形における造形材料の加熱(例えば、予熱および/または後加熱)のために使用される走査経路のランダムに生成された順序付けに関する。いくつかの態様では、そのような技術が、加熱中の造形材料の電磁荷の蓄積の可能性を低減または除去するのを助け、それによって、説明したように、造形不良または造形失敗の問題を回避する。したがって、そのような技術は、積層造形の分野を改善するのに役立つ。さらに、そのような技術は、連続的に走査される経路間の最小安全距離の保全の必要性を回避する。
【0034】
積層造形プロセスは概して、エネルギー源(例えば、レーザーまたは電子ビーム)からエネルギーを供給して、造形材料(例えば、ポリマーまたは金属)の層を固化(例えば、重合)させることを含む。例えば、積層造形装置は、ジョブファイルに示される加工パラメータに基づいて、エネルギー源からのエネルギーを、造形材料の層に選択的に加えることができる。ジョブファイルは、積層造形装置を使用して造形される1つまたは複数のオブジェクトのデジタル表現のスライスに関する情報を含むことができる。例えば、コンピュータ支援設計(「CAD」)ファイルによって表される三次元(「3D」)オブジェクトは、積層造形装置の造形領域に対応する仮想造形領域内に配置され得る。結果として得られる3Dオブジェクトは、説明された通り、層またはスライスに分割され得る。したがって、ジョブファイルは、3Dオブジェクトのスライス(例えば、スライスのスタック)と、3Dオブジェクトを造形するための積層造形装置の加工パラメータとを含み得る。本明細書で説明された通り、スライスおよび層という用語は、互換的に使用され得ることに留意されたい。
【0035】
例えば、各スライスについて、ジョブファイルは、1つ以上のオブジェクトを造形するための予熱段階、溶融段階、および/または後加熱段階に対応する加工パラメータを含むことができる。加工パラメータは、走査のために使用されるエネルギーレベル/電力、走査方向、走査速度などのうちの1つ以上を含み得る。特定の態様では、加工パラメータは、積層造形装置がそのスライスに対応する造形材料の物理層にエネルギー(例えば、予熱のための電子ビーム、溶融のための電子ビーム、および/または後加熱のための電子ビーム)を加える経路(例えば、ツールパス)を示す1つ以上のパターンを含む。例えば、1つ以上のパターンは、予熱パターン、溶融パターン、および/または後加熱パターンのうちの1つ以上を含んでもよい。「パターン」とはそれぞれ、積層造形装置が造形材料上でエネルギー源を走査するベクトルの組を指し得る。
【0036】
予熱パターンは、予熱段階の間に予熱のために使用され、これは、造形材料の層の少なくとも一部の温度を、層を溶融する前に、その融点未満(例えば、その近く)に上昇させるプロセスである。予熱は、造形材料の層を溶融する(例えば、固化する)ために溶融段階で必要とされるエネルギーの量を低減することができる。さらに、本明細書で説明する予熱パターンは、1つ以上のオブジェクトを造形する間に、造形材料の層に一度に蓄積されるエネルギー(例えば、電磁荷)の量を制限するのに役立ち得る。
【0037】
溶融パターンは、予熱段階の後である溶融段階の間に溶融のために使用される。溶融は、3Dオブジェクトを形成するために造形材料の層を固化するプロセスである。
【0038】
後加熱パターンは、溶融段階の後である後加熱段階の間に後加熱のために使用される。後加熱パターンは、造形材料にエネルギーを加えることによって、造形材料の層の1つ以上の部分の冷却速度を制御し、冷却速度を遅くするために使用され得る。
【0039】
1つ以上のパターンそれぞれは、造形材料の層にエネルギーを加えるするためのエネルギー源の空間位置(例えば、開始点)と、造形材料にエネルギーを加えるするためのエネルギー源の方向(例えば、プリント中にレーザービーム、電子ビーム、または他のエネルギー源を造形材料上で移動させるための方向)とを各ベクトルが示すように、1つ以上のベクトルを含むことができる。特定の態様では、予熱、溶融、および/または後加熱パターンは、別のパターンとは異なり得る。ランダムに生成された走査経路(例えば、ベクトルに対応する)を使用する、予熱および/または後加熱パターンを含む加熱パターンの態様は、図面に関して本明細書でさらに詳細に説明される。
【0040】
本明細書で説明される特定の実施形態は、特定の造形材料を使用する、特定の積層造形技術に関して説明されるが、説明されるシステムおよび方法はまた、当業者によって理解されるように、特定の他の積層造形技術および/または特定の他の造形材料とともに使用され得る。
【0041】
〔3Dオブジェクトを造形するためのシステムおよびプロセスの実施例〕
加熱技術の実施形態は、3Dオブジェクトを設計、シミュレーション、および/または造形するためのシステム内で実施され得る。
図1を参照すると、3Dオブジェクトの設計、造形シミュレーション、および造形の実装に適したコンピュータ環境の実施例が示されている。環境は、システム100を含む。システム100は、1つ以上のコンピュータ102a~102dを含み、これらは、例えば、任意のワークステーション、サーバ、または情報を処理することが可能な他のコンピューティング装置であり得る。いくつかの実施形態では、コンピュータ102a~102dそれぞれが、任意の適切な通信技術(例えば、インターネットプロトコル)によって、ネットワーク105(例えば、インターネット)に接続され得る。したがって、コンピュータ102a~102dは、ネットワーク105を介して互いに情報(例えば、ソフトウェア、3Dオブジェクトのデジタル表現、積層造形装置を動作させるためのコマンドまたは命令など)を送受信することができる。
【0042】
システム100は、1つ以上の積層造形装置(例えば、3Dプリンタ)106a~106bをさらに含む。図示されるように、積層造形装置106aは、コンピュータ102dに直接接続され(および、コンピュータ102dを経由してネットワーク105を介してコンピュータ102a~102cに接続され)、積層造形装置106bは、ネットワーク105を介してコンピュータ102a~102dに接続される。したがって、積層造形装置106は、コンピュータ102に直接接続されてもよく、ネットワーク105を介してコンピュータ102に接続されてもよく、および/または別のコンピュータ102およびネットワーク105を介してコンピュータ102に接続されてもよいことを当業者は理解するであろう。
【0043】
システム100は、ネットワークおよび1つ以上のコンピュータに関して説明されるが、本明細書で説明される技術は、積層造形装置106に直接接続され得る単一のコンピュータ102にも適用されることに留意されたい。
【0044】
図2は、
図1のコンピュータの一例の機能ブロック図を示す。コンピュータ102aは、メモリ220、入力装置230、および出力装置240とデータ通信するプロセッサ210を含む。図示されていないが、他のコンピュータ(例えば、
図1の102b~102d)はコンピュータ102aについて示されている構成要素と同様の構成要素を有し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサはさらに、任意のネットワークインターフェースカード260とデータ通信する。別々に説明したが、コンピュータ102aに関して説明した機能ブロックは別々の構造的要素である必要はないことを理解されたい。例えば、プロセッサ210およびメモリ220は、単一のチップ内に具現化され得る。
【0045】
プロセッサ210は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)もしくは他のプログラム可能な論理装置、ディスクリートゲートもしくはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェア構成要素、または本明細書で説明する機能を実行するように設計されたそれらの任意の適切な組合せであり得る。プロセッサはまた、例えば、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと結合した1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のこのような構成といったコンピューティング装置の組み合わせとして実装されてもよい。
【0046】
プロセッサ210は、1つ以上のバスを介して、メモリ220から情報を読み出すか、またはメモリ220に情報を書き込むように結合され得る。プロセッサは追加的に、または代替的に、プロセッサレジスタなどのメモリを含むことができる。メモリ220は、異なるレベルが異なる容量およびアクセス速度を有する、マルチレベル階層キャッシュを含む、プロセッサキャッシュを含むことができる。メモリ220はまた、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他の揮発性記録装置、または不揮発性記録装置を含むことができる。記録装置は、ハードドライブ、フラッシュメモリなどを含むことができる。メモリ220はまた、
図5Bで説明されるように乱数を生成するために使用されるランダマイザ225を含むことができる。ランダマイザ225は、プロセッサ210によって実行され得るコードであり得る。様々な例では、メモリがコンピュータ読み取り可能な記録媒体と呼ばれ得る。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、情報を記録することが可能な一時的でない装置であり、ある位置から別の位置に情報を搬送することが可能な電子の一時的な信号などのコンピュータ読み取り可能な伝送媒体と区別可能である。本明細書で説明するコンピュータ読み取り可能な媒体は概して、コンピュータ読み取り可能な記録媒体またはコンピュータ読み取り可能な伝送媒体を指し得る。
【0047】
プロセッサ210はまた、コンピュータ102aのユーザからの入力を受信するための入力装置230、およびコンピュータ102aのユーザに出力を提供するための出力装置240に結合され得る。適切な入力装置には、キーボード、ボタン、キー、スイッチ、ポインティング装置、マウス、ジョイスティック、リモコン、赤外線検出器、バーコードリーダ、スキャナ、ビデオカメラ(例えば、手のジェスチャーまたは顔のジェスチャーを検出するための動画処理ソフトウェアに結合され得る)、モーション検出器、またはマイクロフォン(例えば、音声コマンドを検出するための音声処理ソフトウェアに結合され得る)が含まれるが、これらに限定されない。適切な出力装置には、ディスプレイおよびプリンタを含む視覚的出力装置、スピーカー、ヘッドフォン、イヤフォン、およびアラームを含む音声出力装置、積層造形装置、ならびに触覚的出力装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
プロセッサ210はさらに、ネットワークインターフェースカード260に結合され得る。ネットワークインターフェースカード260は、プロセッサ210によって生成されたデータを、1つ以上のデータ伝送プロトコルに従ってネットワークを介して伝送するために下処理する。また、ネットワークインターフェースカード260は、ネットワークを介して受信されたデータを、1つ以上のデータ伝送プロトコルに従って復号する。ネットワークインターフェースカード260は、送信機、受信機、またはその両方を含むことができる。他の実施形態では、送信機および受信機が2つの別個の構成要素であり得る。ネットワークインターフェースカード260は、汎用プロセッサ、DSP、ASIC、FPGAもしくは他のプログラム可能な論理装置、ディスクリートゲートもしくはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェア構成要素、または本明細書で説明する機能を実行するように設計されたそれらの任意の適切な組合せとして具現化され得る。
【0049】
図3は、3Dオブジェクトまたは装置を造形するためのプロセス300を示す。図示のように、ステップ305において、コンピュータ(例えば、
図1のコンピュータ102a)を使用して、オブジェクトのデジタル表現が設計される。例えば、3Dオブジェクトのデジタル表現の設計を支援するために、二次元(「2D」)または3Dデータがコンピュータに入力されてもよい。ステップ310に進むと、3Dオブジェクトに対応する情報がコンピュータから積層造形装置(例えば、
図1の積層造形装置106)に送信され、装置は、受信された情報に従って3Dオブジェクトを生成するための造形プロセスを開始する。ステップ315において、積層造形装置は、ポリマーまたは金属粉末などの好適な材料を使用して3Dオブジェクトを造形し続ける。さらに、ステップ320において、3Dオブジェクトが生成される。
【0050】
図4Aは、3Dオブジェクトを生成するための積層造形装置400の一例を示す。この実施例では、積層造形装置400は、EBM装置である。EBM装置400は、1つ以上の3Dオブジェクトを層ごとに生成するために使用され得る。EBM装置400は、例えば、造形プロセスの一部として一度にオブジェクト424に層を造形するために、粉末414などの粉末(例えば、金属)を造形材料として利用することができる。
【0051】
粉末層などの造形材料の次の層(例えば、造形層)は、例えば再コーティング機構415A(例えば、再コーティングブレード)を使用して、互いの上に広げられている。例えば図示の方向に、または造形の別の層などについて、再コーティング機構415Aが造形領域426の他方の端から始めている場合には反対方向に、造形領域426を横切って移動するとき、再コーティング機構415Aは、層状に粉末を堆積させる。造形領域は、粉末が堆積され、電子ビーム412によって走査され得る領域全体であってもよい。特定の実施形態では、堆積後、予熱段階中に、コンピュータ制御された電子ビーム412が表面を走査し、1つ以上の予熱パターンに従って粉末層の1つ以上の部分を予熱する。さらに、電子ビーム412は、溶融段階中(例えば、予熱段階後)に、オブジェクト424の対応する断面の粉末粒子を選択的に結合させる。溶融段階での電子ビーム露光中、粉末温度は、材料(例えば、金属)の遷移温度を超えて上昇し、その後、隣接する粒子が一緒に流れて(例えば、結合して)、3Dオブジェクト424を生成する。特定の実施形態では、結合後、電子ビーム412は、表面を走査し、後加熱段階中に1つ以上の後加熱パターンに従って粉末層の1つ以上の部分を後加熱する。
【0052】
層の造形が完了すると(例えば、溶融段階または後加熱段階の後)、造形領域426の深さは可動ピストン420によって制御される。追加の粉末が再コーティング機構415Aによって造形領域426内に堆積されるにつれて、可動ピストン420は、下方への移動を介して造形領域426の深さを増加させる。したがって、造形領域426は、オブジェクト424が造形された通りにオブジェクト424を保持する。次いで、造形プロセスが完了し、3Dオブジェクト424が形成されるまで、層形成プロセスが繰り返される。
【0053】
図4Bに関して示されるような他の実施形態では、再コーティング機構(例えば、
図4Aの再コーティング機構415A)の代わりに、少なくとも1つのホッパー(例えば、第1のホッパー418Aおよび/または第2のホッパー418B)および粉末層形成システム415B(例えば、レーキ)が使用されてもよい。したがって、ホッパー418Aおよび418Bを使用して、粉末414を造形領域426上に流すことによって、粉末414が分配され得る。次に、造形領域426の深さは、可動ピストン420によって制御される。追加の粉末が粉末ホッパー418Aおよび418Bから造形領域426内に移動するにつれて、可動ピストン420は、下方への移動を介して造形領域426の深さを増加させる。粉末層形成システム415Bは、粉末414を粉末ホッパー418Aおよび418Bから造形領域426内に分配(例えば、プッシュおよび/またはロール)する。
【0054】
図4Aおよび
図4Bに記載された動作は、清浄かつ制御された環境を確保するために、チャンバ内かつ真空下で行われる。加えて、電子ビーム412とは無関係に粉末414の温度を上昇させるために、チャンバの一部として、外部ヒーターまたは一体化されたヒーターを使用することができる。これは、予熱、溶融、および/または後加熱のために、選択ビーム412が要求するエネルギーを有利に低減する。同様に、ホッパー418Aおよび418B内の粉末を予熱するために、別個のヒーターまたは複数のヒーターが使用されてもよい。
【0055】
〔ランダム化された加熱パターンを生成するための技術の例〕
図5Aおよび
図5Bは、ランダム化プロセスによって生成された加熱パターン(例えば、予熱および/または後加熱)の上面図を示す。上面図は、造形プレートと平行である等、造形領域を横切る平面に対応し得る。
【0056】
特に、
図5Aは、ストリップ510(例えば、第1のストリップ510Aおよび第2のストリップ510B)にセグメント化された加熱領域500を示す。加熱領域500は、長方形として図示されているが、円形、多角形、または他の自由形状などの他の領域が使用されてもよいことに留意されたい。さらに、特定の実施形態では、異なる加熱領域500が異なる層に対して画定されてもよい。特定の実施形態では、加熱領域500の境界502が決定または画定され、または予め設定されてもよい。図示のように、境界502は、上側境界502Aおよび下側境界502Bを含む。いくつかの実施形態では、境界502のサイズおよび/または形状が、造形領域、層内の1つ以上のオブジェクトの断面など、1つ以上の特徴に対応する。例えば、特定の実施形態では、境界502のサイズおよび形状が、造形領域(例えば、造形プレートに対応する)全体の周囲のサイズおよび形状である。特定の実施形態では、境界502の形状は、造形領域全体の形状と同じ形状であり、境界502のサイズは、造形領域全体の周囲からサイズが(例えば、距離/閾値だけ)縮小されたサイズである。特定の実施形態では、境界502のサイズおよび形状は、層内のオブジェクトの断面のサイズおよび形状である。特定の実施形態では、境界502の形状は、層内のオブジェクトの断面の形状と同じであり、境界502のサイズは、層内のオブジェクトの断面の周囲から(例えば、距離/閾値だけ)縮小または拡大されたサイズである。
【0057】
いくつかの実施形態では、境界502がユーザによって割り当てられる。いくつかの実施形態では、層内の1つ以上のオブジェクトの造形領域および/または断面に基づくなどして、プロセッサ(例えば、
図2のプロセッサ210)によって自動的に境界502が生成される。特定の実施形態では、加熱領域500が平行なストリップ510にセグメント化され、
図5Bでさらに説明するように、各ストリップは加熱ベクトルに対応する。
【0058】
ストリップ510の長手方向504は、ユーザによって設定されてもよく、定数として設定されてもよく、または自動的に決定されてもよい。長手方向504は、(例えば、ストリップの幅506とは対照的に)ストリップ510の長さに平行な方向である。加熱ベクトルの方向は、長手方向504に平行である。
【0059】
ストリップの幅506(例えば、ストリップ幅)は、ユーザによって設定されてもよく、定数として設定されてもよく、または自動的に決定されてもよい。例えば、ストリップの幅506は、積層造形装置、装置の設定、または加熱ベクトルに基づいて決定することができる。EBM装置を使用する一実施形態では、幅は電子ビームの出力設定に依存し得、より高い出力またはエネルギーのビームがより広いストリップをもたらす。ストリップの総数508(例えば、ストリップ数)は、加熱領域500の幅507をストリップの幅506で割ることによって、算出される。この実施形態では、ストリップの幅506が全てのストリップ510について一定である。他の実施形態では、ストリップの幅は、ストリップが全て同じ幅ではないように、変化してもよい。
【0060】
図5Bは、インデックス512を、ストリップ510および加熱ベクトル514(例えば、第1の加熱ベクトル514Aおよび第2の加熱ベクトル514B)に割り当てるためのプロセスを示す。前述のように、ストリップ510は加熱ベクトル514に対応する。各加熱ベクトル514は、エネルギー源(例えば、電子ビームまたはレーザービーム)が造形層にエネルギーを加えるための空間位置(例えば、開始点)と、エネルギー源が造形層にエネルギーを加えるための方向(例えば、加熱中に造形層上でレーザービーム、電子ビーム、または他のエネルギー源を走査するための方向および/または経路)とを示す。したがって、加熱パターンは加熱ベクトルを含み、エネルギー源が造形層にエネルギーを加える経路(例えば、ツールパス)を提供する。
【0061】
ストリップ510が画定され、ストリップの総数508が決定されると、ランダマイザ(例えば、
図2のランダマイザ225)を使用して、インデックス512をストリップ510にランダムに割り当てる。この実施形態では、整数の配列(例えば、1からストリップの総数508まで)を使用し、そこから整数をランダムに選択し、選択された整数をストリップ(例えば、第1のストリップ510A)のインデックスとして割り当てるように、ランダマイザが動作する。整数が割り当てられると、選択された整数が配列から除去され、ランダマイザは、次の(例えば、隣接する)ストリップのインデックスとして整数を選択するためのプロセスを繰り返す。この実施形態では、整数の配列は1で始まり、ストリップの総数508(例えば、12)で終わる。インデックス512を割り当てるとき、ランダマイザは第1のストリップ510Aから開始し、整数の配列から乱数(例えば、3)をそのインデックスとして第1のストリップ510Aに割り当てる。ランダマイザは第2のストリップ510Bに続き、更新された整数の配列から乱数(例えば、7)をそのインデックスとして第2のストリップ510Bに割り当てる。ここで、更新された配列は、第1のストリップ510Aに割り当てられた整数(例えば、3)を含まない。インデックス512は、加熱領域500の一方の端部から開始して、加熱領域500の他方の端部まで幅507に沿うように、その位置の順序でストリップ510に割り当てることができる。インデックス512の割り当てプロセスは、全てのストリップ510にインデックスが割り当てられるまで継続する。使用されるランダマイザは変更してもよいことに留意されたい。いくつかの実施形態では、乱数発生器が使用される。いくつかの実施形態では、PythonからのNumPyライブラリーに対応するnumpy.random.rand関数が使用される。
【0062】
いくつかの実施形態では、整数の配列は、0から始まり、ストリップの総数より1少ない数(例えば、11)で終わる。いくつかの実施形態では、ストリップの総数に依存しない配列、あるいは、非整数、偶数のみもしくは奇数のみの整数、または文字を含む配列など、インデックスを割り当てる他の方法が使用され得る。
【0063】
したがって、インデックス512は、造形層の1つ以上の部分を加熱するときに、エネルギー源が加熱ベクトル514を走査する順序を提供する。この実施形態では、エネルギー源がインデックス1に対応する加熱ベクトル(例えば、第1の加熱ベクトル514A)を最初に走査し、次いで、エネルギー源がインデックス2に対応する加熱ベクトル(例えば、第2の加熱ベクトル514B)を2番目に走査し、以下、エネルギー源が加熱パターン内の全ての加熱ベクトルを走査するまで同様である。前述のように、加熱ベクトルは、エネルギー源が追従する位置および方向を含む。例えば、エネルギー源は、加熱ベクトル514Aの第1の端部から始めて、加熱ベクトル514Aの第2の端部まで走査する。この実施形態では、加熱ベクトルの方向は互い違いになり、第1の加熱ベクトル514Aが境界の第1の端(例えば、
図5Aの上側境界502A)から境界の第2の端(例えば、
図5Aの下側境界502B)まで走査し、第2の加熱ベクトル514Bが境界の第2の端から第1の端まで走査し、以下同様である。これは、
図6A~
図6Dでさらに説明する。いくつかの実施形態では、加熱ベクトルの方向は互い違いにならない。いくつかの実施形態では、ストリップおよび加熱ベクトルの方向はランダム化される。
【0064】
特定の実施形態では、加熱パターンは、付加的情報を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、エネルギーの大きさを加熱ベクトル514に割り当てることができる。いくつかの実施形態では、各加熱ベクトル(例えば、第1の加熱ベクトル514Aおよび第2の加熱ベクトル514B)によって大きさが変化し得るように、エネルギーの異なる大きさが異なる加熱ベクトル514に割り当てられ得る。これにより、造形材料の所定の領域に入力されるエネルギーまたは熱の正確な制御が有利に可能になる。いくつかの実施形態では、エネルギーの大きさは、個々の加熱ベクトル(例えば、第1の加熱ベクトル514A)の位置によって変化し得る。例えば、形成されるオブジェクトの断面に局所化された造形層の領域に、追加のエネルギーまたは熱を加えることができる。場合によっては、エネルギーの大きさを変化させることにより、結果として得られるオブジェクトについて、より効率的な造形プロセスおよびより良好な材料特性がもたらされる。特定の実施形態では、加熱パターンは、ベクトルを走査する速度を割り当てることもできる。速度はエネルギーの大きさと同様の様式で変化させることができ、同様の利益をもたらす。
【0065】
図5Aおよび
図5Bに示す実施形態では、加熱領域500の上側境界502Aおよび下側境界502Bに対して垂直な長手方向504と共にストリップ510が示されている。他の実施形態では、ストリップは、上側境界および下側境界に対して垂直でなくてもよく、
図8Cおよび
図8Dのように、平行または傾斜などの別の方位であってもよい。
【0066】
〔ランダム化加熱パターンの実装例〕
図6A~
図6Dは、
図5Bの加熱パターンの加熱ベクトル514を走査する積層造形装置の上面図を示す。特に、
図6A~
図6Dは、割り当てられたインデックスに従ってエネルギー源604が加熱ベクトル514をどのように走査するかを示す。
【0067】
図6Aは、第1の加熱ベクトル514Aを走査する前の、第1の位置にあるエネルギー源604を示す。
図6Bは、第1の加熱ベクトル514Aを走査した後の、第2の位置にあるエネルギー源604を示す。
図6Cは、第2の加熱ベクトル514Bを走査する前の、第3の位置にあるエネルギー源604を示す。
図6Dは、第2の加熱ベクトル514Bを走査した後の、第4の位置にあるエネルギー源604を示す。全ての加熱ベクトル(例えば、
図5Bの加熱ベクトル514)が走査されるまで、エネルギー源は、加熱パターンに従って走査し続ける。
【0068】
図7Aおよび
図7Bは、積層造形装置の造形層716上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。加熱パターンは、造形層全体にわたって、または造形層の一部のみにわたって、形成することができる。いくつかの実施形態では、加熱パターンは、形成されるオブジェクト(例えば、造形パーツ718)の断面に対応する領域を覆う。いくつかの実施形態では、加熱パターンは、造形層の他の部分に対応する領域を覆う。
【0069】
特に、
図7Aは、
図5Bの加熱パターンと同様の加熱パターンを示し、加熱領域700、境界702、ストリップ710、インデックス712、および加熱ベクトル714を含む。この実施形態では、境界702の形状は、造形領域の形状(例えば、造形層716に対応する)と同じであり、境界502のサイズは、造形領域全体の周囲からある距離だけ縮小されたサイズである。したがって、加熱領域700は、造形層716の領域よりも小さく、境界702は、造形層716の境界よりも小さい。前述のように、造形領域は、造形層716を構成する造形材料(例えば、金属粉末)を含む。境界702およびストリップ710は、それらが例示的な概念であり、造形層716上に物理的に存在しないことを強調するために、破線で示されている。造形パーツ718(例えば、
図4Aの3Dオブジェクト424)の断面は、造形層716および加熱領域700の両方の中に含まれる。造形パーツ718は、造形材料から、形成されるオブジェクトの加熱パターンおよび断面を使用して、積層造形装置によって作り出される3Dオブジェクトである。
【0070】
図7Bは、局所境界722を有する局所加熱領域720の局所加熱パターンを示す。加熱パターンは、造形パーツ718の断面に局所化された造形層716の領域に適合するので、局所化されている。したがって、局所境界722のサイズは、局所境界722が造形パーツ718を包み込むように、造形パーツ718の断面の周囲からの距離だけサイズが増加する。局所加熱領域720は、造形層716の領域および前述の加熱領域(例えば、
図7Aの加熱領域700)の領域よりも小さい。局所加熱領域720は、局所ストリップ730および局所インデックス732を含み、これらは、前述のものと同様のプロセスで、局所ストリップ730にランダムに割り当てられる。次いで、局所加熱ベクトル734が生成され、前述のように局所インデックス732が割り当てられる。
【0071】
図8A~8Dは、異なるランダム化加熱パターンの上面図を示す。特に、
図8A~8Dは、各ランダム化加熱パターンについて異なる加熱ベクトルを示す。
【0072】
図8Aは、
図5Bと同様の加熱領域800、境界802、ストリップ810、インデックス812、および加熱ベクトル814を含む加熱パターンを示す。この実施形態では、ストリップは、領域800の第1の端800Aから延び、領域800の第2の端800Bで終わる。
【0073】
図8Bは、
図8Aと類似であるが異なる、加熱領域820、境界822、ストリップ830、インデックス832、および加熱ベクトル834を含む加熱パターンを示す。この実施形態では、ストリップ830は、ストリップの幅、配向、およびストリップの総数が
図8Aのストリップと同じであるが、インデックス832がランダムに生成され、したがって、インデックス812とは異なる。
【0074】
図8Cは、加熱領域840と、境界842と、ストリップ850と、インデックス852と、加熱ベクトル854とを含む加熱パターンを示す。この実施形態では、ストリップ850が領域840の第3の端840Cから延び、領域840の第4の端840Dで終わるように、加熱領域840は、
図8Aのストリップ(例えば、ストリップ810)に対して垂直に配向されたストリップ850に分割される。
【0075】
図8Dは、加熱領域860と、境界862と、ストリップ870と、インデックス872と、加熱ベクトル874とを含む加熱パターンを示す。この実施形態では、ストリップが領域860の第1の端860Aおよび第3の端860Cから延び、領域860の第2の端860Bおよび第4の端860Dで終わるように、加熱領域860は、斜めに配向されたストリップ870に分割される。
【0076】
いくつかの実施形態では、加熱パターンが造形層ごとに複数回使用されてもよい。例えば、造形層は、造形層の所望の加熱レベルが達成されるまで、
図8Bの加熱ベクトルを繰り返し走査することによって加熱されてもよい。これは、一貫した様式で造形層の温度を有利に上昇させる。いくつかの実施形態では、各造形層について複数の加熱パターンを使用することができる。例えば、造形層は、
図8Aの加熱ベクトル走査と
図8Cの加熱ベクトル走査とを交互に行うことなどによって、異なる加熱パターンを使用して加熱されてもよい。これは、よりランダムな様式で造形層の温度を有利に上昇させ、特定の場所における熱の蓄積を防止する。したがって、所定の造形層ごとに、
図8A~
図8Dの加熱パターンは、個別に、または互いに任意の組み合わせで使用され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、加熱パターンのうちの少なくとも1つが造形層全体にわたって形成されないように、各造形層の異なる部分は、同じ加熱パターンまたは異なる加熱パターンを使用することができる。造形層の異なる部分に使用される加熱パターンは、重なり合ってもよく、重なり合わなくてもよい。例えば、造形層は、
図8Aの加熱ベクトルをその左側で走査し、
図8Cの加熱ベクトルをその右側で走査することによって、2つの加熱パターンの間で重なり合わないように加熱され得る。異なるが類似である実施例では、
図8Aの加熱パターンと
図8Cの加熱パターンとが造形層の中央で重なり合うことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、造形層の所定の部分は、同じ加熱パターンまたは異なる加熱パターンを使用することができる。例えば、
図8Bの加熱ベクトルは、造形層の所定の部分上で1回または繰り返し走査することができる。同様に、造形層の所定の部分は、
図8Aの加熱ベクトル走査と
図8Cの加熱ベクトル走査とを交互に行うことなどによって、異なる加熱パターンを使用して加熱することができる。
【0079】
いくつかの実施形態を示したが、当業者は、他の実施形態では、ストリップが加熱領域の他の端で開始および終了し得、幅が変化し得、図示されていないパターンまたは角度で配向され得ることを理解するであろう。
【0080】
図9A~9Dは、異なる造形パーツの上に重なり合った異なる加熱パターンの上面図を示す。特に、
図9A~9Dは、加熱パターンが、異なる造形パーツの形状にどのように適合し、異なる造形パーツの形状によってどのように変化し得るかを示す。明確性のために、加熱パターンのストリップの境界は図示されていない。
【0081】
図9Aは、加熱パターンが境界902および加熱ベクトル914を含む、第1の造形パーツ918のための造形層916を示す。加熱ベクトル914は、第1の造形パーツ918の境界を越えて延在し、概して第1の造形パーツ918に適合する。
【0082】
図9Bは、加熱パターンが境界922および加熱ベクトル934を含む、第2の造形パーツ938のための造形層936を示す。
【0083】
図9Cは、加熱パターンが境界942および加熱ベクトル954を含む、第3の造形パーツ958のための造形層956を示す。
【0084】
図9Dは、第4の造形パーツ978Aおよび第5の造形パーツ978Bを含む複数パーツ造形のための造形層976を示す。複数パーツ造形は、造形材料およびエネルギーなどの資源を有利に節約するために使用される。第4の造形パーツ978Aの加熱パターンは、境界962Aと加熱ベクトル974Aとを含む。第5の造形パーツ978Bのための加熱パターンは、境界962Bと加熱ベクトル974Bとを含む。この実施形態では、造形パーツ978Aおよび978Bは、境界962Aおよび962Bが部分的に重なり合うように、造形層976上に配置される。その結果、加熱ベクトル974Aおよび974Bもまた重なり合う。
【0085】
いくつかの実施形態では、加熱ベクトル974Aおよび974Bの重なりは、エネルギーの大きさで説明され得る。いくつかの実施形態では、各加熱パターンの加熱ベクトルの方向および/または配向は、同じでなくてもよい。いくつかの実施形態では、複数パーツ造形が3つ以上のパーツを含むことができる。
【0086】
本明細書に記載の加熱パターンは、予熱パターンおよび/または後加熱パターンを表してもよい。いくつかの実施形態では、造形パーツまたはオブジェクトを積層造形するためのプロセスは、造形材料の固化層ごとにいくつかの段階を含むことができる。例えば、プロセスは、造形層のための予熱段階、造形パーツに局所化された予熱段階、溶融段階、造形パーツに局所化された後加熱段階、および/または造形層のための後加熱段階を含むことができる。各段階は、1つ以上の加熱パターンまたは溶融パターンを含む。したがって、造形層は、複数の予熱パターン、溶融パターン、および後加熱パターンを含むことができる。いくつかの実施例では、エネルギーの大きさは、造形層の加熱パターンで最も高く、造形パーツに局所化された加熱パターンで最も低く、溶融パターンではその間のどこかであってもよい。したがって、溶融フェーズに必要なエネルギーの大きさは、予熱フェーズの少なくとも一部よりも小さい。いくつかの実施形態では、エネルギーの大きさは、加熱または溶融のフェーズ間および/またはパターン間で遷移するときに、遷移速度を有する。いくつかの実施形態では、エネルギーの大きさは、第1の予熱パターンについて、他の加熱パターンまたは溶融パターンよりも低い遷移速度を有する。
【0087】
本明細書では、等しいストリップ幅の直線および平行線のストリップの組に加熱領域を分割することを説明する、特定の態様を説明したが、加熱領域は、湾曲、傾斜などの異なる幾何学的形状を有する「ストリップ」の組に分割され得る。いくつかの実施形態では、ストリップの幅は、1つ以上のストリップについて変化してもよい。いくつかの実施形態では、複数の加熱ベクトルのうちの各加熱ベクトルが異なる経路方向に対応するように、1つ以上のストリップは、ストリップごとに複数の加熱ベクトルに対応し得る。いくつかの実施形態では、複数の加熱ベクトルの1つが複雑経路に対応するように、複数の加熱ベクトルのうちの1つは、ストリップのうちの1つに対応する。複雑経路は、線形関数または非線形関数に基づくことができる。例えば、複雑経路は、正弦、のこぎり歯、三角形、長方形などの1つ以上の波形タイプに基づくことができる。
【0088】
〔ランダム化された加熱パターンを生成および実装するための方法の実施例〕
図10は、ランダム化された加熱パターンを生成するための例示的な方法1000を示す。方法1000は、コンピュータ(例えば、
図1のコンピュータ102a)などの適切なコンピューティング装置によって実行され得る。
【0089】
方法1000は、ステップ1002で開始し、加熱領域を複数の平行なストリップに分割し、ここで、加熱領域は、造形材料の層内で画定される。
【0090】
次に、方法1000はステップ1004に進み、複数の平行なストリップにインデックスをランダムに割り当てる。
【0091】
次に、方法1000はステップ1006に進み、ランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数の平行なストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える。
【0092】
特定の態様では、エネルギー源は、電子ビームを含む。
【0093】
いくつかの態様では、複数の平行なストリップは、ランダムに割り当てられたインデックスに基づいて複数のベクトルを割り当てられる。特定の態様では、複数のベクトルは、エネルギー源がエネルギーを造形材料の層に加えるための空間位置と、エネルギー源がエネルギーを造形材料に加えるための方向とを含む。特定の態様では、複数のベクトルは、少なくとも1つのエネルギーの大きさを含む。特定の態様では、複数のベクトルは、少なくとも1つの速度を含む。特定の態様では、エネルギー源がエネルギーを造形材料に加える方向は、ランダムに割り当てられたインデックスの順序で互い違いになる。
【0094】
いくつかの態様では、エネルギーを加える工程は、エネルギー源を使用して、造形材料の層の1つ以上の部分に追加のエネルギーを加えて、造形材料の層の1つ以上の部分を溶融する前に実行される。いくつかの態様では、エネルギーを加える工程は、エネルギー源を使用して、造形材料の層の1つ以上の部分に追加のエネルギーを加えて、造形材料の層の1つ以上の部分を溶融した後に実行される。
【0095】
いくつかの態様では、方法1000は、第2の加熱領域を第2の複数の平行なストリップに分割する工程をさらに含み、ここで、第2の加熱領域は、造形材料の層内で画定される。いくつかの態様では、次に、方法1000が、第2の複数の平行なストリップに第2のインデックスをランダムに割り当てる工程に進む。いくつかの態様では、次に、方法1000が、ランダムに割り当てられた第2のインデックスの順序で、第2の複数の平行なストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える工程に進む。
【0096】
特定の態様では、加熱領域は、造形材料の層における第1のオブジェクトの第1の断面と形状が対応し、第2の加熱領域は、造形材料の層における第2のオブジェクトの第2の断面と形状が対応する。特定の態様では、加熱領域は、造形材料の層全体とサイズおよび形状が対応する。特定の態様では、加熱領域は、造形材料の層内のオブジェクトの断面とサイズおよび形状が対応する。特定の態様では、加熱領域は、造形材料の層全体と形状が対応する。特定の態様では、加熱領域は、造形材料の層内のオブジェクトの断面と形状が対応する。
【0097】
特定の態様では、方法1000は、第2の加熱領域を第2の複数の平行なストリップに分割する工程をさらに含み、ここで、第2の加熱領域は、造形材料の第2の層内で画定され、造形材料の第1の層は、オブジェクトの第1のスライスと対応し、造形材料の第2の層は、オブジェクトの第2のスライスと対応する。いくつかの態様では、方法1000が次いで、第2の複数の平行なストリップに第2のインデックスをランダムに割り当てる工程に進む。いくつかの態様では、方法1000がさらに、ランダムに割り当てられた第2のインデックスの順序で、第2の複数の平行なストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の層にエネルギーを加える工程に進む。特定の態様では、第2の加熱領域および第1の加熱領域は、同じサイズおよび形状を有する。特定の態様では、第2の加熱領域の少なくとも一部は、第1の加熱領域の少なくとも一部と重なる。特定の態様では、第2の加熱領域は、第1の加熱領域とは異なる造形材料の層の領域を占める。
【0098】
図11は、積層造形装置上にランダム化加熱パターンを実装するための例示的な方法1100を示す。方法1100は、コンピュータ(例えば、
図1のコンピュータ102a)および適切な積層造形装置(例えば、積層造形装置106aまたは
図4AのEBM装置400)などの適切なコンピューティング装置によって実行され得る。
【0099】
方法1100は、ステップ1102で開始し、3Dオブジェクトを複数のスライスに分割し、ここで、各スライスは、造形材料の層内で画定される。
【0100】
次に、方法1100はステップ1104に進み、造形材料の層ごとに少なくとも1つの加熱領域を割り当てる。
【0101】
次に、方法1100はステップ1106に進み、各加熱領域を複数の平行なストリップに分割し、複数の平行なストリップのそれぞれにインデックスをランダムに割り当て、ランダムに割り当てられたインデックスの順序で、複数の平行なストリップのそれぞれにわたって、エネルギー源によって造形材料の各層にエネルギーを加える。
【0102】
次いで、方法1100はステップ1108に進み、エネルギー源によってエネルギーを造形材料の前の層に加えた後、造形材料の次の層を広げる。
【0103】
特定の態様では、エネルギー源は、電子ビームを含む。
【0104】
いくつかの態様では、複数の平行なストリップは、ランダムに割り当てられたインデックスに基づいて複数のベクトルを割り当てられる。特定の態様では、複数のベクトルは、エネルギー源がエネルギーを造形材料の層に加えるための空間位置と、エネルギー源がエネルギーを造形材料に加えるための方向とを含む。特定の態様では、複数のベクトルは、少なくとも1つのエネルギーの大きさを含む。特定の態様では、複数のベクトルは、少なくとも1つの速度を含む。特定の態様では、エネルギー源がエネルギーを造形材料に加える方向は、ランダムに割り当てられたインデックスの順序で互い違いになる。
【0105】
いくつかの態様では、エネルギーを加える工程は、エネルギー源を使用して、造形材料の層の1つ以上の部分に追加のエネルギーを加えて、造形材料の層の1つ以上の部分を溶融する前に実行される。いくつかの態様では、エネルギーを加える工程は、エネルギー源を使用して、造形材料の層の1つ以上の部分に追加のエネルギーを加えて、造形材料の層の1つ以上の部分を溶融した後に実行される。
【0106】
特定の態様では、造形材料の次の層は、再コーティング機構によって広げられる。特定の態様では、造形材料の次の層は、粉末層形成システムによって広げられる。
【0107】
特定の態様では、造形材料の次の層は、エネルギー源を使用して造形材料の層の1つ以上の部分を溶融した後に、広げられる。特定の態様では、造形材料の次の層は、エネルギー源を造形材料の層の1つ以上の部分に加えた後に、広げられる。
【0108】
前述の説明は、当業者が本明細書に記載される様々な実施形態を実施することを可能にするために提供される。本明細書で説明される実施例は、特許請求の範囲に記載される範囲、適用可能性、または実施形態を限定するものではない。これらの実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、他の実施形態に適用され得る。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、説明された要素の機能および構成において変更が行われ得る。様々な実施例は、必要に応じて、様々な手順または構成要素を省略、置換、または追加し得る。例えば、説明された方法は、説明された順序とは異なる順序で実行され得、様々なステップが追加され、省略され、または組み合わされ得る。また、いくつかの実施例に関して説明された特徴は、いくつかの他の実施例に組み合わされ得る。例えば、ここに述べられた態様をいくらでも使用して、装置が実装されてもよく、また方法が実施されてもよい。加えて、本開示の範囲は、本明細書に記載される本開示の様々な態様に加えて、またはそれ以外の、他の構造、機能、または構造および機能を使用して実施されるそのような装置または方法を網羅することが意図される。本明細書で開示される開示の任意の態様は、特許請求の範囲の1つ以上の要素によって具現化され得ることを理解されたい。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「例示的」は、「例、実例、例示として提供される」ことを意味する。「例示的」なものとして本明細書で説明される任意の態様は、必ずしも他の態様よりも好ましいまたは好都合であると解釈されるべきではない。
【0110】
本明細書で使用される場合、項目のリスト「のうちの少なくとも1つ」を指す用語は、単一のメンバーを含む、それらの項目の任意の組合せを指す。一例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-c、ならびに複数の同じ要素を含む任意の組合せ(例えば、a-a、a-a-a、a-a-b、a-a-c、a-b-b、a-c-c、b-b、b-b-b、b-b-c、c-c、およびc-c-cまたは任意の他のa、b、およびcの順序付け)を含むことを意図する。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「決定すること」は、多種多様なアクションを包含する。例えば、「決定すること」は、計算すること、コンピューティングすること、処理すること、導出すること、調査すること、ルックアップすること(例えば、表、データベース、または別のデータ構造中でルックアップすること)、確認することなどを含み得る。また、「決定すること」は、受信すること(例えば、情報を受信すること)、アクセスすること(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)などを含み得る。また、「決定すること」は、解決すること、選択すること、選抜すること、確立することなどを含み得る。
【0112】
本明細書で開示される方法は、方法を実現するための1つ以上のステップまたはアクションを含む。方法のステップおよび/またはアクションは、特許請求の範囲から逸脱することなく、他のステップおよび/またはアクションに置き換えられ得る。言い換えれば、ステップまたはアクションの特定の順序が指定されない限り、特定のステップおよび/またはアクションの順序および/または使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく修正され得る。さらに、上記の方法の様々な動作は、対応する機能を実行することが可能な任意の好適な手段によって実行され得る。当該手段は、限定するものではないが、回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプロセッサを含む、様々なハードウェアおよび/またはソフトウェアの構成要素および/またはモジュールを含むことができる。概して、図に示される動作がある場合、それらの動作は、同様に番号付けされた、対応する同等の機能表現構成要素(means-plus-function component)を有し得る。
【0113】
本明細書に開示される様々な実施形態は、コンピュータ制御システムの使用を提供する。これらの実施形態は、汎用および/または特殊コンピューティングシステム環境または構成の両方を含む、多数の異なる種類のコンピューティング装置を使用して実装され得ることを、当業者は容易に理解するであろう。上記の実施形態に関連して使用するのに適し得る周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドまたはラップトップ装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、プログラマブル家電、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたは装置のいずれかを含む分散コンピューティング環境(例えば、ネットワーク、クラウドコンピューティングシステムなど)などを含み得るが、これらに限定されない。これらの装置は記憶された命令を含み得、当該命令は、コンピューティング装置内のマイクロプロセッサによって実行されるとき、コンピュータ装置に、指定されたアクションを実行させて命令を実行させる。本明細書で使用される場合、命令とは、システム内の情報を処理するためのコンピュータ実装されたステップを指す。命令は、ソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアで実装することができ、システムの構成要素によって行われる任意の種類のプログラムされたステップを含むことができる。
【0114】
マイクロプロセッサは、Pentium(登録商標)プロセッサ、Pentium(登録商標)Proプロセッサ、8051プロセッサ、MIPS(登録商標)プロセッサ、Power PC(登録商標)プロセッサ、またはAlpha(登録商標)プロセッサなどの任意の従来の汎用シングルチップまたはマルチチップマイクロプロセッサであり得る。さらに、マイクロプロセッサは、デジタル信号プロセッサまたはグラフィックスプロセッサなどの任意の従来の特殊なマイクロプロセッサであってもよい。マイクロプロセッサは、通常、従来のアドレス線、従来のデータ線、および1つ以上の従来の制御線を有する。
【0115】
本明細書で開示される本発明の態様および実施形態は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せを生成するための、標準的なプログラミングまたはエンジニアリングの技術を使用して、造形の方法、装置、または製品として実装され得る。本明細書で使用される用語「製品」は、ハードウェアまたは光学記憶装置などの一時的でないコンピュータ読み取り可能な媒体、および信号、搬送波などの揮発性または不揮発性メモリ装置または一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体において実装されるコードまたは論理を指す。そのようなハードウェアは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、複雑プログラマブル論理装置(「CPLD」)、プログラマブルロジックアレイ(「PLA」)、マイクロプロセッサ、または他の同様の処理装置を含み得るが、これらに限定されない。
【0116】
以下の特許請求の範囲は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲が認められるべきである。特許請求の範囲内で、要素への単数形による言及は、特に明記しない限り「1つおよび1つのみ」を意味することを意図せず、むしろ「1つ以上」を意味する。他で特に明記しない限り、用語「いくつか」は、1つ以上を意味する。特許請求の範囲の要素はいずれも、35 U.S.C§112(f)の規定に基づいて解釈されるべきではない。ただし、その要素が、用語「のための手段」を使用して明示的に列挙されている場合、または方法クレームの場合、その要素が、用語「のためのステップ」を使用して列挙されている場合を除く。当業者に知られているか、または後に知られることになる、本開示全体にわたって説明される様々な態様の要素に対するすべての構造的および機能的な等価物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲によって包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものはいずれも、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかに関わらず、公衆に提供されることは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】三次元(「3D」)オブジェクトを設計および造形するためのシステムの一例である。
【
図2】
図1に示すコンピュータの一例の機能ブロック図を示す。
【
図3】3Dオブジェクトを造形するための高レベルプロセスを示す。
【
図4A】再コーティング機構を有する積層造形装置の一例である。
【
図4B】再コーティング機構を有する積層造形装置の別の例である。
【
図5A】ランダム化プロセスによって生成された予熱パターンの上面図を示す。
【
図5B】ランダム化プロセスによって生成された予熱パターンの上面図を示す。
【
図6A】
図5Bの予熱パターンを実行する積層造形装置の上面図を示す。
【
図6B】
図5Bの予熱パターンを実行する積層造形装置の上面図を示す。
【
図6C】
図5Bの予熱パターンを実行する積層造形装置の上面図を示す。
【
図6D】
図5Bの予熱パターンを実行する積層造形装置の上面図を示す。
【
図7A】積層造形装置の造形層上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【
図7B】積層造形装置の造形層上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【
図8A】異なるランダム化された加熱パターンの上面図を示す。
【
図8B】異なるランダム化された加熱パターンの上面図を示す。
【
図8C】異なるランダム化された加熱パターンの上面図を示す。
【
図8D】異なるランダム化された加熱パターンの上面図を示す。
【
図9A】異なる造形パーツの上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【
図9B】異なる造形パーツの上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【
図9C】異なる造形パーツの上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【
図9D】異なる造形パーツの上に重ねられた異なる加熱パターンの上面図を示す。
【
図10】ランダム化された加熱パターンを生成するための例示的な方法を示す。
【
図11】積層造形装置上にランダム化された加熱パターンを実装するための例示的な方法を示す。
【国際調査報告】