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特表2024-505568芳香族化合物の製造工程で発生するブラインの精製方法
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  • 特表-芳香族化合物の製造工程で発生するブラインの精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】芳香族化合物の製造工程で発生するブラインの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/74 20060101AFI20240130BHJP
   C07C 37/72 20060101ALI20240130BHJP
   C07C 37/86 20060101ALI20240130BHJP
   C07C 39/07 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C07C37/74
C07C37/72
C07C37/86
C07C39/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546476
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2022001363
(87)【国際公開番号】W WO2022169179
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0015468
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジ ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ナムジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジンホ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD16
4H006BB15
4H006BD84
(57)【要約】
本発明は、低沸点有機化合物の除去方法に関し、より詳細には、芳香族化合物の製造工程時に、生成されたブライン溶液から低沸点有機化合物を除去する際に塩の生成を抑制することができる低沸点有機化合物の除去方法に関する。
本発明に係る低沸点有機化合物の除去方法は、ブライン中の低沸点有機化合物の除去時に塩の析出を抑制することで、工程設備のメンテナンスが容易であり、低沸点有機化合物を容易に除去することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物の製造工程で生成されたブライン溶液を蒸留塔で蒸留し、ブライン溶液中の低沸点有機化合物を除去する方法であって、
前記低沸点有機化合物を含むブライン溶液は、強制循環型熱交換器により下記式を満たすように強制循環されながら熱交換されるステップを含む、低沸点有機化合物の除去方法。
【数1】
10≦C≦200
(前記式中、Veは流体速度(ft/s)、Cは実験定数、ρは流体密度(lb/ft)である。)
【請求項2】
芳香族化合物の製造工程中に生成されたブライン溶液に含まれた低沸点有機物を除去するために、
有機溶媒を添加して水溶性層から有機溶媒層に芳香族化合物を抽出する抽出ステップを含み、
前記ブライン溶液は、前記抽出ステップにおける水溶性層である、請求項1に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項3】
前記低沸点有機化合物は、前記芳香族化合物を抽出する抽出ステップで投入された有機溶媒である、請求項2に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項4】
前記蒸留塔の上部から水が前記ブライン溶液に噴射される、請求項1に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項5】
前記水の温度は、前記蒸留温度と同一である、請求項4に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項6】
酸を添加するステップは、pKa値が-6以下の酸を用いて行われる、請求項2に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項7】
芳香族化合物を抽出する抽出ステップにおける有機溶媒は、DI値が20以下である、請求項2に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項8】
前記有機溶媒で抽出するステップを2回以上繰り返す、請求項2に記載の低沸点有機化合物の除去方法。
【請求項9】
蒸留塔と、
芳香族化合物の製造工程で生成されたブライン溶液を供給ラインから供給を受けて熱交換する強制循環型熱交換器、前記熱交換器を経て熱交換されたブライン溶液を前記蒸留塔に供給する第1循環ライン、および前記蒸留塔から供給されたブライン溶液を前記強制循環型熱交換器に供給する第2循環ラインを含むブライン強制循環部と、
を含む、低沸点有機化合物の除去装置。
【請求項10】
前記蒸留塔の上部に位置する少なくとも1つのノズルを含んで前記蒸留塔の内部に水を噴射する水噴射部をさらに含む、請求項9に記載の低沸点有機化合物の除去装置。
【請求項11】
前記ブライン強制循環部は、前記第2循環ラインが前記供給ラインから分岐する、請求項9に記載の低沸点有機化合物の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低沸点有機化合物の除去方法に関し、より詳細には、芳香族化合物の製造工程時に、生成されたブライン溶液中の低沸点有機化合物を除去する方法であり、ブライン溶液の精製方法を含む。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物は、医薬および化学分野で有機合成の基礎原料として多く用いられている。
具体的に、芳香族化合物の1つであるクレゾールは、局所麻酔剤、消毒剤、界面活性剤や、半導体封止剤などの合成樹脂の製造に用いられている。クレゾールは、種々の植物(木タール)や、原油、石炭タール(コールタール)などでタール酸の形態で発見されたり、天然有機物が土壌および水中の微生物により分解されることで生成されたりもする。クレゾール類化合物は、上記のように天然に存在する混合物に含まれているものを蒸留精製して得てもよく、有機合成により得てもよい。
【0003】
しかし、石炭タールなど、天然混合物中には、ピリジン、メチルピリジン、アニリン、キシレノールをなど、クレゾールと類似の物理化学的性質を有する物質が多く含まれており、蒸留が容易ではなく、このような物質が精製した結果物中にも残留し、高純度のクレゾールを得ることが容易ではなく、上記の用途として用いるのに適していないため、有機合成により製造する場合が多い。
【0004】
従来、本出願人が既に出願した大韓民国公開特許公報第10-2017-0106804A号には、クレゾールの製造方法として、ハロトルエンと塩基性水溶液を反応させる反応ステップと、酸を添加して酸性化するステップと、有機溶媒を添加して水溶性層から有機溶媒層にクレゾールを抽出する抽出ステップと、を含む、クレゾールの製造方法が公知されている。
【0005】
上記方法において最終的に相分離する水溶性層は、20wt%のNaClを含むブライン(brine)水溶液であり、前記水溶液は前記反応ステップで生成されるクレゾールが前記抽出ステップで有機溶媒層にさらに多く溶解するようにするためにMTBEなどの低沸点有機化合物を投入することになるが、このような低沸点有機化合物が前記ブライン溶液層に1000ppm以上存在するため、ブライン溶液を化成工程にリサイクルすることができなかった。このため、最終的にはブライン溶液を廃棄するという問題があった。
【0006】
通常、苛性ソーダを用いた塩素基を含む芳香族化合物の製造工程で発生するブラインを化成工程でリサイクルするためには、有機化合物の含量が1ppm以下に調節されないと、化成工程で電気分解などの反応に副反応を引き起こす。すなわち、ブラインのリサイクルのためには、このように有機化合物の含量を調節するステップが非常に重要である。
【0007】
そこで、ブライン溶液の有機化合物の含量を低くするために熱交換器により蒸留する方法が考案されたが、熱交換器により蒸留する場合、NaClが析出され、熱交換器の内部にスケールをもたらし、熱交換効率を下げるという問題があった。
また、蒸留塔においてもNaClが析出され、蒸留効率を下げるという問題があるため、長期使用性にも多くの問題を抱えていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、芳香族化合物の製造工程で生成されたブライン中の低沸点有機化合物を蒸留除去する際に塩の析出を防止することができる低沸点有機化合物の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、芳香族化合物の製造工程で生成されたブライン溶液を蒸留塔で蒸留し、ブライン溶液中の低沸点有機化合物を除去する方法であって、低沸点有機化合物を含むブライン溶液は、強制循環型熱交換器により下記式を満たすように強制循環されながら熱交換されるステップを含む。
【0010】
【数1】
【0011】
10≦C≦200
(前記式中、Veは流体速度(ft/s)、Cは実験定数、ρは流体密度(lb/ft)である。)
【0012】
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、芳香族化合物の製造工程中に生成されたブライン溶液に含まれた低沸点有機物を除去するために、有機溶媒を添加して水溶性層から有機溶媒層に芳香族化合物を抽出する抽出ステップを含み、前記ブライン溶液は、前記抽出ステップにおける水溶性層であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、前記低沸点有機化合物は、前記芳香族化合物を抽出する抽出ステップで投入された有機溶媒であってもよい。
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、前記蒸留塔の上部から水が前記ブライン溶液に噴射されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、前記水の温度は、前記蒸留温度と同一であってもよい。
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、前記酸を添加するステップは、pKa値が-6以下の酸を用いて行われてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、芳香族化合物を抽出する抽出ステップにおける有機溶媒は、DI値が20以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去方法において、前記有機溶媒で抽出するステップを2回以上繰り返してもよい。
【0016】
本発明は、低沸点有機化合物の除去装置であって、蒸留塔と、芳香族化合物の製造工程で生成されたブライン溶液を供給ラインから供給を受けて熱交換する強制循環型熱交換器、前記熱交換器を経て熱交換されたブライン溶液を前記蒸留塔に供給する第1循環ライン、および前記蒸留塔から供給されたブライン溶液を前記強制循環型熱交換器に供給する第2循環ラインを含むブライン強制循環部と、を含む。
【0017】
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去装置において、前記蒸留塔の上部に位置する少なくとも1つのノズルを含んで前記蒸留塔の内部に水を噴射する水噴射部をさらに含んでもよい。
本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去装置において、前記ブライン強制循環部は、前記第2循環ラインが前記供給ラインから分岐していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る低沸点有機化合物の除去方法は、ブライン中の低沸点有機化合物の除去時に塩の析出を抑制することで、工程設備のメンテナンスが容易であり、低沸点有機化合物を容易に除去することができる。
【0019】
また、本発明に係る低沸点有機化合物の除去方法は、純度の高いブラインを得ることができるため、高純度のブラインを化成工程に再使用することができ、工程効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で用いられる技術用語および科学用語において、他の定義がない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に曖昧にする恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0022】
また、本明細書で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
また、本明細書において、特に言及せずに用いられた単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義しない限り、全組成物のいずれか1つの成分が組成物中に占める重量%を意味する。
【0023】
また、本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0024】
本明細書において、「含む」という用語は、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
【0025】
本明細書の全体にわたって、「芳香族化合物」とは、分子内にベンゼン環を含有する有機化合物を指し、オルト(ortho)、メタ(meta)、およびパラ(para)の形態を全て含む。非限定的な具体例として、オルト(ortho)、メタ(meta)、およびパラ(para)クレゾールであってもよい。
【0026】
従来、芳香族化合物の製造工程時に発生する20wt%のNaClを含むブライン(brine)水溶液には、以前の工程で用いられた他の有機物が含まれている場合がある。この場合、最終的にはブライン溶液を廃棄するという問題があった。そこで、ブライン溶液の有機化合物の含量を低くするために熱交換器により蒸留する方法が考案されたが、熱交換器により蒸留する場合、NaClが析出され、熱交換器の内部にスケールをもたらし、熱交換効率を下げるという問題がある。また、蒸留塔においてもNaClが析出され、蒸留効率を下げるという問題があるため、長期使用性にも多くの問題を抱えていた。
【0027】
本発明は、芳香族化合物の製造工程で生成されたブライン溶液を蒸留塔で蒸留し、ブライン溶液中の低沸点有機化合物を除去する方法であって、低沸点有機化合物は、強制循環型熱交換器により下記式を満たすように強制循環されながら熱交換されるステップを含む、低沸点有機化合物の除去方法である。
【0028】
【数2】
【0029】
10≦C≦200
(前記式中、Veは流体速度(ft/s)、Cは実験定数、ρは流体密度(lb/ft)である。)
【0030】
このように蒸留されるブライン溶液は、前記式を満たし、熱交換器に強制循環されることで、線速度により塩が析出されるのが防止される。そこで、熱交換器、配管、蒸留塔などの除去設備に塩(NaCl)が積層されてスケールなどが形成されるのを防止することで、低沸点有機化合物の除去設備を長時間安定的に作動させることができ、これにより、設備のメンテナンスが容易である。さらに、このような方法により低沸点有機化合物が除去されたブライン溶液は、ブライン溶液の純度が高いため、化成工程に直ちに投入することができる。すなわち、本除去方法は、効用価値の高いブライン溶液の製造が可能である。
【0031】
具体的に、前記式中、実験定数Cは、前記式に記載されているように10~200であってもよいが、好ましくは50~100、より好ましくは70~90であってもよい。上記範囲にて、塩の析出抑制が極大化されることができる。
【0032】
本発明のブライン溶液は、芳香族化合物の製造工程で生成されたものである。一般的に、10~25%(15~23%、20~22%)NaClのように高温でのNaClの溶解度が高いシステムにおいて有機物を除去するために抽出工程および蒸留工程を導入する。
【0033】
抽出工程の場合、油溶性(Oil-soluble)層と水溶性(Water-soluble)から分離した後、油溶性層を回収、および分離した水溶性層に有機溶媒を添加して水溶性層から有機溶媒層にクレゾールを抽出する抽出ステップを含んでもよい。この際、ブライン溶液とは、抽出ステップにおける水溶性層を意味する。
【0034】
芳香族化合物を油溶性(Oil-soluble)層と水溶性(Water-soluble)から分離した後、油溶性層を回収するステップは、以前のステップで酸の添加によりpHが調節された生成物を油溶性(Oil-soluble)層と水溶性(Water-soluble)層に分離した後、油溶性層を回収するステップであり、油溶性層の回収は、層分離した状態で油溶性層のみを回収するか、または層分離した状態で水溶性層のみを回収するなどの方法で行われてもよい。
【0035】
抽出ステップは、1回以上行われてもよく、好ましくは2回以上行われてもよい。このように繰り返し行われることで、水溶性層中の残存芳香族化合物を高収率で得ることができる。
【0036】
本ステップにおいて、油溶性層と水溶性層を分離する方法は、公知の様々な方法を採用してもよい。一例として、上層分離(decanting)により分離してもよい。
【0037】
また、本ステップは、0℃以上および100℃以下の温度で行われてもよく、状況に応じて0℃~100℃の間で運転温度を調節してもよいが、実際の運転コストを考慮すると、40℃~60℃の温度が好適である。
【0038】
その後、分離した水溶性層に有機溶媒を添加して水溶性層から有機溶媒層に抽出する抽出ステップは、芳香族化合物の収率をさらに高めるためのものである。
【0039】
この際、使用可能な有機溶媒としては、水溶性層中の芳香族化合物を分類できる有機溶媒であれば使用可能であり、DI値が約20以下のものを使用可能である。DI値とは、誘電定数(Dielectric constant or Relative permittivity)を意味し、値は、真空状態の誘電率(vacuum permittivity)に対する物質の絶対誘電率(absolute permittivity)の比をいう。すなわち、誘電定数が大きいほど水のような極性を示し、誘電定数が小さいほど非極性を示しており、水溶性層からの抽出に有利である。
【0040】
例えば、ベンゼン、トルエン、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソブチルアセテート(iBA)、またはこれらの混合物を用いてもよく、この他に、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、またはキシレンなど、本発明が属する技術分野で一般的に用いられる有機溶媒であれば、特に限定なく使用可能である。
【0041】
有機溶媒は、前記芳香族化合物を生成するステップで生成された生成物の総量100重量部に対して、10重量部以上および200重量部以下であってもよい。より具体的には、20重量部以上および100重量部以下であってもよい。
【0042】
前記抽出ステップは、0℃以上および60℃以下の温度で行われてもよい。より具体的には、30℃以上および50℃以下の温度で行われてもよい。抽出時の温度が低すぎる場合、抽出速度低下の問題が発生し得る。また、抽出工程前段の上層分離ステップの最適運転温度が40℃~60℃であるが、抽出効率を高めるために冷却器を設置して温度を調節する。
その後、芳香族化合物の抽出が完了した水溶性層は、ブライン溶液として約20w%の濃度を有することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、上述した工程で生成されたブライン溶液中の低沸点有機化合物を除去することができる。この際、低沸点とは、150℃以下の沸点を意味し得る。具体的に、低沸点有機化合物は、上述した有機溶媒であってもよい。
【0044】
本発明において、ブライン溶液は、熱交換器により20℃~100℃、具体的には50℃~70℃の温度で蒸留塔に供給されてもよく、この際、線速度は、上述した式によるものである。
【0045】
本発明の一実施形態において、蒸留塔内の蒸留は、0barg~2bargの圧力、60℃~150℃の温度条件下で行われてもよいが、これに限定されない。
【0046】
本発明の一実施形態において、蒸留時、蒸留塔の上部から水が蒸留塔の内部に収容されたブライン溶液に噴射されてもよい。水は、洗浄効果を発揮し、塩によるスケール形成をさらに防止できるようにする。この際、水の温度は、上記蒸留温度と同一であってもよいが、これに限定されない。ただし、上記範囲の温度で水が噴射されることで、水により蒸留条件が変化するのを防止し、工程条件の維持を容易にする。
【0047】
以下、上述した低沸点有機化合物の除去方法により低沸点有機化合物の除去が可能な除去装置について説明する。
図1には本発明の一実施形態に係る低沸点有機化合物の除去装置が示されている。
【0048】
図1を参照すると、本発明の低沸点有機化合物の除去装置は、蒸留塔10と、クレゾールの製造工程で生成されたブライン溶液を供給ライン20から供給を受けて熱交換する強制循環型熱交換器33、熱交換器33を経て熱交換されたブライン溶液を蒸留塔10に供給する第1循環ライン35、および蒸留塔10から供給されたブライン溶液を強制循環型熱交換器33に供給する第2循環ライン31を含むブライン強制循環部30と、を含むことができる。このような低沸点有機化合物の除去装置は、ブライン溶液を強制循環させて供給できることで、熱交換器33および蒸留塔10内に塩が発生するのを防止することができる。
【0049】
具体的に、蒸留塔10は、従来、当業界で用いられた蒸留装置であれば限定されない。
ブライン強制循環部は、図示するように、供給ライン20から第2循環ライン31が分岐して設けられることができるが、これに限定されず、供給ライン20は、強制循環型熱交換器33と連結され、第2循環ライン31は、これとは別に蒸留塔10と強制循環型熱交換器33を連結することができる。供給ライン20から第2循環ライン31が分岐する際に、図示するように、3方向バルブにより連結されることができ、制御部により制御され、ブライン溶液を熱交換器33に供給するか、または蒸留塔10と熱交換器33にブライン溶液を循環させて供給することができる。
【0050】
強制循環型熱交換器33は、ポンプ37を含む熱交換器33であり、ポンプ37によりブライン溶液が一定の線速度を有することができる。この際、ブライン溶液の線速度は、前記式を満たすものであり、以下、詳しい説明は省略する。
【0051】
本発明の一実施形態において、蒸留塔10の上部に位置する少なくとも1つのノズルを含んで蒸留塔10の内部に水を噴射する水噴射部(図示せず)をさらに含むことができる。
【0052】
水噴射部は、強制循環型熱交換器により蒸留塔10に供給されたブライン溶液に水を噴射し、蒸留塔10内の塩によるスケールをさらに防止できるようにする。水噴射部は、蒸留塔10の外部に設置された水道または水貯蔵部を介して水の供給を受けることができる。ノズルとしては、当業界で周知のノズルを使用することができる。
【0053】
以下、図面を参照して、本発明の装置を介したブライン溶液の低沸点有機化合物の除去過程について説明する。
図1を参照すると、供給ライン20を介して本発明のブライン溶液が強制循環型熱交換器33に供給され、強制循環型熱交換器33により一定の線速度を有するブライン溶液が第1循環ライン35を介して蒸留塔10内に供給される。この際、図示したものとは異なり、蒸留塔10の上部から水が供給されることができる。一次蒸留が終わったブライン溶液は、第2循環ライン31を介して再び強制循環型熱交換器33に供給されることができ、このような循環過程によりブライン溶液中の低沸点有機化合物を高い除去率で除去することができる。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
加水分解反応によるクレゾレートの生成:連続式反応器内にNaOH水溶液(10wt%)およびクロロトルエンを2.5:1(NaOH:クロロトルエン)のモル比で投入し、400℃、300atmの条件を30分間維持し、pHが約13の塩基性条件でクロロトルエンの加水分解反応を行ってクレゾレート(クレゾールイオン)混合物を生成した。
【0056】
pHの調節および油溶性層と水溶性層の分離:前記加水分解反応の結果生成物にHClを投入し、生成物のpHをそれぞれ1に調節した。その後、これをデカンタ(decanter)に移し、油溶性層と水溶性層が分離するように、45℃で5分間上層分離(decanting)を行った。pHが低いほど、油溶性層と水溶性層の分離が速く進行し、2分以内に分離がほぼ完了することを確認した。
【0057】
この際、各実施例のデカンタの上部は油溶性層、下部は水溶性層に分離した。ここで、境界面を除く下部の水溶性層を別にサンプリングし、油溶性層を別に回収した。その後、サンプリングした水溶性層中のクレゾールの濃度を測定した。濃度分析は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、C18カラムを使用し、この際、検出可能な濃度の下限は10ppmである。
【0058】
その後、水溶性層サンプルに40℃のMTBE(Methyl Tertiary Butyl Ether)を添加して残留芳香族化合物を抽出する。その後、約20秒間の撹拌後に2段抽出を行った後、上部のMTBE層と下部の水溶性層のうち水溶性層の一部をサンプリングして残存クレゾールの濃度を分析した。濃度分析は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、C18カラムを使用し、この際、検出可能な濃度の下限は10ppmである。測定の結果、いずれも「検出不可」と判定され、これは、残存クレゾールの濃度が10ppm未満であることを意味する。
【0059】
低沸点有機化合物の除去:前記クレゾール抽出が完了した水溶性層、すなわちブライン溶液には、抽出溶媒として用いられていたMTBEが溶解度(Solubility)だけ含まれており、これを除去するためにブライン溶液を蒸留塔に供給した。蒸留塔の上部に低沸点有機物が除去され、強制循環型熱交換器によりブライン溶液が循環される線速度は、前記式中のC値が80になるように設定して供給された。蒸留は、蒸留塔内の圧力0.1barg、温度125℃(±5℃)で行われた。
【0060】
低沸点有機物の除去後の残存有機物の濃度は、全有機炭素量分析装置(TOC)を用いて分析し、濃度が100ppm未満であることを確認した。その後、吸着塔を経て有機化合物の含量を1ppm以下に調節し、ブラインを化成工程にリサイクルする。
【0061】
(比較例1)
前記実施例1の低沸点有機化合物の除去ステップにおいて、実施例1の線速度とは異なり、C値を300に設定した線速度でブライン溶液を強制循環させたことを除いては、実施例1と同様の方法で低沸点有機化合物を除去した。
【0062】
実施例1において、低沸点有機化合物が除去されたブライン溶液は、低沸点有機化合物の濃度が10ppm未満であって、非常に高純度のブライン溶液が得られることを確認した。
【0063】
さらに、実施例1および比較例1の工程後の設備内の塩の発生を目視で観察したところ、実施例1の場合は塩を観察することができなかったが、比較例1の場合は設備内で塩を観察することができた。
【0064】
以上、特定の事項と限定された実施例および図面により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0065】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。
図1
【国際調査報告】