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特表2024-505576内部抵抗が低い、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池の製造方法
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  • 特表-内部抵抗が低い、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池の製造方法 図1
  • 特表-内部抵抗が低い、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】内部抵抗が低い、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/179 20210101AFI20240130BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/627 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240130BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/636 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M50/179
H01M50/536
H01M50/188
H01M50/627
H01M50/184 D
H01M50/559
H01M50/55 201
H01M50/107
H01M50/152
H01M10/0587
H01M10/052
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/1391
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M50/159
H01M50/193
H01M50/533
H01M50/636
H01M50/169
H01M50/566
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547044
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 IN2022050087
(87)【国際公開番号】W WO2022168117
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202141004606
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】501307804
【氏名又は名称】インディアン・スペース・リサーチ・オーガニゼイション
【氏名又は名称原語表記】INDIAN SPACE RESEARCH ORGANISATION
【住所又は居所原語表記】Department of Space, Antariksh Bhavan, New BEL Road, Bangalore 560 094, India
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エス、アラバムザン
(72)【発明者】
【氏名】ティーディ、メルシー
(72)【発明者】
【氏名】ピーエス、ヴィジャヤクマール
(72)【発明者】
【氏名】サムリダ、アイスワルヤ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ビビン
(72)【発明者】
【氏名】エム、アルジュン・ラジ
(72)【発明者】
【氏名】スリバスタバ、ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】アンサリ、エムディー・ジャマル・ナワズ
(72)【発明者】
【氏名】ケー、ヴィジャヤクマール
(72)【発明者】
【氏名】パリワル、ヴィドゥアー・ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴイ、ヴィノド
(72)【発明者】
【氏名】エス、パドマクマール
(72)【発明者】
【氏名】エムアール、ラジェシュ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ケー、スニル
(72)【発明者】
【氏名】ケーティー、サジュ
(72)【発明者】
【氏名】ピー、ジニーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケー、ビニーシュラル
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H023
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA04
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD13
5H011EE01
5H011FF02
5H011GG02
5H011HH02
5H017AS02
5H023AS01
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ14
5H029CJ07
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029DJ02
5H029DJ03
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H043AA03
5H043AA12
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043DA09
5H043DA20
5H043EA02
5H043EA33
5H043EA39
5H043EA60
5H043HA02E
5H043HA17D
5H043HA17E
5H043JA06E
5H043KA08E
5H043KA09E
5H043KA45E
5H043LA02E
5H050AA02
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池に関し、特に、電池の上部から個々に正及び負の端子が突出している低容量(3~10Ah)の楕円形円筒型リチウムイオン電池に関する。特に、本発明は、プラスチック圧縮シールを備えた低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池、並びに、その加工方法に関する。本願の電池は、良好な電荷保持率と低い内部抵抗を有し、以下のようなミッションに応用して使用すること、つまり、衛星、打ち上げロケット、軍用車両、潜水艦、電気自動車に電力を供給することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極から構成される電極積層体(1)と、
前記電極積層体(1)の一端に溶接される正極の中間タブ(4)及び前記電極積層体(1)の反対側の端部に溶接される負極の中間タブ(5)と、
中央端子ポスト(13)、上部絶縁体(14)、下部絶縁体(16)、絶縁材(15)、ハーフナット(17)を備える正極及び負極の端子シールアセンブリ(23,24)と、
正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)によって蓋(12)が取り付けられる端子スタッド(21,22)と、を有し、
前記端子スタッド(21,22)は、正極の前記中間タブ(4)に固定された正極の端子ラグ(19)を備えると共に、一方の前記端子スタッド(22)は、負極の前記中間タブ(5)に固定された負極の端子ラグ(20)を備え、
更に、前記蓋(12)の上部に設けられた注入口と、
前記注入口を通してリチウムイオン電池(18)に加えられる電解質と、
前記リチウムイオン電池(18)のケースと、
前記リチウムイオン電池(18)の前記ケースから突出した正極及び負極の端子(10,11)と、を有し、
正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)は、前記端子スタッド(21,22)との移行嵌合を有する前記絶縁材(15)で作られたリングと、前記蓋(12)並びに前記下部絶縁体(16)及び前記ハーフナット(17)に設けられた締め付け用の穴と、を備え、前記リングは、前記上部絶縁体(14)と前記下部絶縁体(16)との間に挟まれる低容量のリチウムイオン電池(18)。
【請求項2】
正極と負極から構成される電極積層体(1)を有する低容量のリチウムイオン電池(18)の製造方法であって、
前記正極及び前記負極に活物質をコーティングする工程と、
前記正極及び前記負極をセパレータを介して巻回する工程と、
正極の中間タブ(4)を前記電極積層体(1)の一端に溶接し、負極の中間タブ(5)を前記電極積層体(1)の反対側の端部に溶接する工程と、
正極及び負極の端子シールアセンブリ(23,24)によって、端子スタッド(21,22)を蓋(12)に取り付ける工程と、を有し、正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)は、中央端子ポスト(13)、上部絶縁体(14)、下部絶縁体(16)、絶縁材(15)、ハーフナット(17)を備え、
更に、正極の端子ラグ(19)を有する前記端子スタッド(21)を正極の前記中間タブ(4)に固定し、負極の端子ラグ(20)を有する他方の前記端子スタッド(22)を負極の前記中間タブ(5)に固定する工程と、
前記蓋(12)の上部に設けられた注入口を通して前記リチウムイオン電池(18)に電解質を加える工程と、
溶接により前記注入口を密閉する工程と、を有し、当該工程には、前記蓋(12)に設けられた穴に前記上部絶縁体(14)を上から挿入し、続いて、前記端子スタッド(21,22)を挿入すると共に、下から前記絶縁材(15)を挿入し、続いて、前記下部絶縁体(16)、前記ハーフナット(17)を挿入し、所定のトルクで締め付ける工程が含まれる方法。
【請求項3】
前記正極及び前記負極への前記活物質のコーティングには、それぞれアルミニウム箔及び銅箔への前記活物質のコーティングが含まれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記正極は、(a)コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)と、(b)導電剤(アセチレンブラック、グラファイト)と、(c)アルミニウム箔上にコーティングされたバインダー(ポリフッ化ビニリデン)と、を含む混合物で構成されている請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記正極の組成は、活物質:80~95%、導電剤:2~8%、バインダー:3~10%である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記正極の最終的な厚さは、130~200μmである請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記負極は、(a)活物質(グラファイト、グラファイト-Si複合材料などの群から選択される)と、(b)銅箔上にコーティングされたバインダー(ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンなどの群から選択される)と、を含む混合物で構成されている請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記負極の組成は、活物質:85~97%、バインダー:2~8%である請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記負極の最終的な厚さは、100~200μmである請求項3に記載の方法。
【請求項10】
ポリフッ化ビニリデンがバインダーとして使用される場合、電極スラリーの処理用の溶媒として1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)が使用され、カルボキシメチルエルロース又はスチレンブタジエンがバインダーとして使用される場合、電極スラリーの処理用の溶媒として水が使用される請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記正極と前記負極には、電気導入端子を備えるために、その電極全長に亘ってそれぞれ4~10mm、並びに、5~11mmの裸の領域が設けられている請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記電極積層体(1)は、前記正極と前記負極を、前記セパレータを介して、平型マンドレルを用いた巻回機で巻回することにより作製される請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記セパレータの幅は、前記負極への前記コーティングの幅よりも2~8mm大きい範囲である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記巻回は、前記正極と前記負極の前記コーティングされていない領域が前記電極積層体(1)の反対側から突き出るように行われる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記正極の基板の突出幅は2~10mm、前記負極の基板の突出幅は3~10mmである請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記負極は、前記正極の長さと幅を超えて伸びている請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記リチウムイオン電池(18)の組み立てのために前記端子スタッド(21,22)を前記蓋(12)に取り付ける工程には、前記蓋(12)と正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)が含まれ、前記中間タブ(4,5)を前記電極積層体(1)に溶接し、前記中間タブ(4,5)を前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)に溶接し、前記電極積層体(1)と前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)を前記リチウムイオン電池(18)のケースに挿入し、前記リチウムイオン電池(18)の前記ケースを前記蓋(12)に溶接する請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記リチウムイオン電池(18)の組み立ては、RH<1%に湿度制御された環境で実行される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)は、正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)をアルミニウム合金製の上部カバー即ち前記蓋(12)に取り付けることで構成される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)は、プラスチック製圧縮シールである請求項17に記載の方法。
【請求項21】
正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)の前記中央端子ポスト(13)には、正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)の上にM4~M6のネジが設けられ、正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)の下に前記中間タブ(4,5)を溶接するための設備が設けられている請求項20に記載の方法。
【請求項22】
構成要素として、前記中央端子ポスト(13)、前記上部絶縁体(14)及び前記下部絶縁体(16)(PTFE、パーフルオロアルコキシアルカンなどからなる群から選択される)、前記絶縁材(15)、前記ハーフナット(17)が含まれ、これらの部品は、漏れ防止アセンブリを得るために、前記蓋(12)上に組み立てられる請求項19に記載の方法。
【請求項23】
正極及び負極の前記端子シールアセンブリ(23,24)の組み立てには、前記上部絶縁体(14)が前記蓋(12)に設けられた穴を通して挿入され、絶縁体フランジと前記蓋(12)の上部突起との面接触が確保されることが含まれる請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記端子スタッド(21,22)が前記上部絶縁体(14)に挿入され、前記スタッド(21,22)のフランジと前記絶縁体フランジとが確実に接触する請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記絶縁材(15)が前記端子スタッド(21,22)を通して下から挿入された後、前記下部絶縁体(16)と前記ハーフナット(17)を挿入し、所定のトルクで締め付ける請求項19に記載の方法。
【請求項26】
正極の前記中間タブ(4)を前記電極積層体(1)の一端に溶接するには、前記電極積層体(1)のアルミニウムの露出面の半分を2つの等しいグループに分割することが要件である請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記電極積層体(1)の反対側の端への正極の前記中間タブ(4)の溶接には、グループ化されたアルミニウム箔を正極の前記中間タブ(4)の溝に挿入して圧着させることが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項28】
負極の前記中間タブ(5)を前記電極積層体(1)に溶接するには、前記電極積層体(1)の銅の露出面の半分を2つの等しいグループに分割することが要件である請求項17に記載の方法。
【請求項29】
負極の前記中間タブ(5)の前記電極積層体(1)への溶接には、グループ化された銅箔を負極の前記中間タブ(5)の溝に挿入して圧着させることが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項30】
正極の前記中間タブ(4)の前記電極積層体(1)への溶接には、レーザーヘッドとアルゴンガスノズルを、正極の前記中間タブ(4)と前記電極積層体(1)との境界に集中させ、銅製のヒートシンクを使用して前記セパレータへの熱伝達を低減しつつ、5~8kWのピーク出力で溶接を実行することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項31】
負極の前記中間タブ(5)の前記電極積層体(1)への溶接には、レーザーヘッドとアルゴンガスノズルを、負極の前記中間タブ(5)と前記電極積層体(1)との境界に集中させ、銅製のヒートシンクを使用して前記セパレータへの熱伝達を低減しつつ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項32】
正極の前記中間タブ(4)の前記電極積層体(1)への溶接には、前記セパレータを熱から保護するために断熱シートの使用が含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項33】
前記中間タブ(4,5)の前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)への溶接には、それぞれの前記中間タブ(4,5)に前記端子ラグを固定することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項34】
正極の前記中間タブ(4)の前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)への溶接には、レーザーヘッドとアルゴンガスノズルを、正極の前記中間タブ(4)と正極の前記端子ラグとの境界に集中させ、5~8kWのピーク出力で溶接を実行することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項35】
負極の前記中間タブ(5)の前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)への溶接には、レーザーヘッドとアルゴンガスノズルを、負極の前記中間タブ(5)と負極の前記端子ラグとの境界に集中させ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項36】
前記中間タブ(4,5)は、前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)が前記電極積層体(1)の上に配置されるように曲げられる請求項17に記載の方法。
【請求項37】
前記ケースと前記蓋(12)の溶接には、端子(10,11)が上を向くように、前記蓋(12)端子アセンブリ(23,24)を備えた前記電極積層体(1)を前記リチウムイオン電池(18)の前記ケースに挿入することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項38】
前記ケースと前記蓋(12)の溶接には、レーザーヘッドとアルゴンガスノズルを、前記ケースと前記蓋(12)の境界上に集中させ、5~8kWの出力で前記ケースと前記蓋(12)の溶接を実行することが含まれる請求項17に記載の方法。
【請求項39】
必要量の前記電解質を前記蓋(12)に設けられた前記注入口から前記リチウムイオン電池(18)に加え、その後2~5日間浸漬させる請求項2に記載の方法。
【請求項40】
前記リチウムイオン電池(18)には、C/10から1Cの充放電率で所定の成形サイクル処理が施される請求項2に記載の方法。
【請求項41】
前記注入口は、ピーク出力の範囲が4~8kWとなるレーザービーム溶接を使用して密閉される請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関し、特に、電池の上部から個々に正及び負の端子が突出している低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池に関する。特に、本発明は、プラスチック圧縮シールを備えた低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池、並びに、その加工方法に関する。本願の電池は、良好な電荷保持率と低い内部抵抗を有し、以下のような重大なミッションに応用して使用すること、つまり、衛星、打ち上げロケット、軍用車両、潜水艦、電気自動車に電力を供給することができる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電圧とエネルギー密度が高く、自己放電が少ないため、最も人気のある電源であり、携帯電話、ノートパソコン、カメラなどのさまざまな用途や、航空機、潜水艦、衛星、打ち上げロケットなどの重大なミッションに応用して使用する用途に適している。リチウムイオン電池は、カソード(例えば、LiCoO2、LiFePO4など)、アノード(グラファイト、シリコン、グラファイトシリコンなど)、及び、非水電解質(エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの有機溶媒に溶解したLiPF6、LiBF4など)で構成されている。リチウムイオン電池の組み立て工程は、電極積層体(正極と負極をセパレータを挟んで配置したもの)を電池ケースに挿入し、最後に蓋を用いて溶接又は圧着により封止することで行われている。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般的に、円筒型と角型の2つの構成で入手可能である。しかしながら、円筒型電池は、通常、セルレベルでより高いエネルギー密度を実現するが、バッテリーレベルでの充填効率が低く、エネルギー密度が低くなる。他にもデメリットがある。電極の厚さが適切に維持されていない場合、電極積層体の寸法が一定せず、当該電極積層体を電池ケースに挿入することが困難になる。この問題は、電極の長さが長くなるとさらに深刻になる。円筒型電池の場合、特に直径が大きくなると、熱放散が悪くなる。電池レベルの充填効率や放熱の面を考慮すると、角型の構成が有利である。
【0004】
リチウムイオン電池の長い保存寿命は、電池内部の成分が水蒸気や二酸化炭素などと反応する可能性があるため、電池が密閉されている場合にのみ達成される[US4,567,121]。特に、超小型衛星や打ち上げロケットなどの重要な用途には、低容量(3~10Ah)の密封されたリチウムイオン電池が必要である。電池から大電流を出力するには、内部抵抗を低減する必要があるが、容量の小さい電池は、電極面積が小さいため、内部抵抗が高くなる傾向がある。個別に突出した端子を備えた電池は、特定の用途には不可欠であり、これにより、電池の組み立てが簡単化されると共に、何か異常があった場合には任意の電池と交換可能となる。
【0005】
先行技術調査の結果、この分野では次のような特許が存在することが判明した。
【0006】
リチウムイオン電池では、2つの端子間の絶縁が不可欠である。大容量の角型リチウムイオン電池では、個々の正端子と負端子が十分に離れているため、適切に絶縁されている。しかし、より小さい容量の電池の場合、スペースの制限とエネルギー密度の向上のため、電極タブ(electrode tabs)の1つは電池の本体に接続されており、この場合、本体は、端末の1つとして機能する。EP1246275A2、US2002/0142216A1及びUS6586134B2では、負のリード線がケースに溶接され、よって、ケース負極設計を形成する角型電池を扱っている。JP2017098220Aに開示されたリチウムイオン電池では、一方の電極が金属ケースに溶接されている。
【0007】
US6132900では、電極積層体からの正タブが上部プレートに溶接され、このようにして上部プレートと電池の本体が端子として機能するリチウムイオン電池を扱っている。本体を備えた電池は1つの端子として機能するが、2つの端子は通常非常に近くにあるため、バッテリーの組み立て中に安全上の懸念が生じる可能性がある。EP2479816A1は、端子が上部から突出しているが、正又は負の端子のいずれかが蓋に電気的に接続され、容器と同電位となるリチウムイオン電池を開示している。EP2549562B1は、上部に別個の端子を備えたリチウムイオン電池を開示しているが、端子は電池組立中にリンクを接続するためにネジ山が切られていなかったり、あまり突出していなかったりしている。US898687B2は、蓋から突き出た個別の端子が設けられたリチウムイオン電池を扱っているが、端子は平らで穴が開いている。このタイプの欠点としては、電池を平面方向に配置した場合のみ、電池の組み立てが容易であることです。ただし、電池を組み立てる際に並べて配置する場合、この端子の構成は好ましくない。
【0008】
バッテリーの物理的設計に加えて、電池をシールするために使用される端子シールの種類は、耐久性に影響し、結果として、バッテリー寿命に影響する。バッテリーは、さまざまな環境にさらされる。バッテリーがさらされる環境に汚染物質や湿気が含まれる場合、シールが非常に重要になる。シールは保護バリアとして機能します。これは、汚染物質や湿気が電池の内部に到達するのを防ぐ役割を果たします。これを適切に達成するには、シール自体が湿気やその他の汚染物質に対して不浸透性を有するものでなければならない[US2002/0076609A1]。
【0009】
バッテリーの耐久性に影響を与える主な問題は、バッテリー内に電解液を保持するために必要なシールの劣化です。シールは、さまざまな理由で故障または損傷する可能性があり、その中にはシールと隣接するコンポーネント間の熱衝撃やせん断トルクなどが含まれる。シールの損傷を防ぐことができれば、電池の耐久性を高めることができ、それによって電池の寿命を延ばすことができる[US2002/0076609A1]。電気化学電池は、出荷及び保管後に期待どおりの十分な保存寿命と性能を得るために、広範囲の温度及び相対湿度条件下で、長期間に亘って十分に密閉された状態を維持する必要がある。このため、シール部材の材質には安定性が高いことが要求される。シール部材は、一般に電池の内部環境に直接さらされるため、その環境においても安定でなければならない。これは、電解質や電極材料との接触により劣化してはならないことを意味する。電解質の溶媒とガスの透過速度は、電解質の過度の損失と電池内での無駄な腐食反応を防ぐために十分に遅くなければならない[US2003/0118902A1]。
【0010】
高容量電池に使用されるシールには、ガラスと金属のシール(glass to metal seals)、並びに、セラミックと金属のシール(ceramic to metal seals)の2つの主なタイプがある。このタイプのシールは、中央のロッド又はチューブを囲む外側の金属カラー(蓋に溶接されている)で構成され、ガラスやセラミックなどの絶縁部材で封止されている。中央の金属ロッド又はチューブは、内部の電極積層体に接続されている。US4233372及びUS2002/0076609A1は、ガラスと金属のシールを扱っている。US4508797は、リチウム/硫化鉄電池用のセラミックと金属のシールを扱っている。US5529858は、高温リチウムベースのバッテリー用途向けのセラミックと金属のシールを扱っている。US8450010B2は、セラミックと金属のシールを備えたリチウムイオン電池を扱っている。US6268079B1及びUS6335117B1は、ガラスと金属のシール及びセラミックと金属のシールが使用される楕円形円筒型電池を開示している。セラミックと金属のシールの欠点の1つは、シールを加工するために最小直径が必要なことである。従って、より小さい容量の電池の場合、セラミックから金属へのシールの加工は困難である。
【0011】
US6132900は、金属製の有底電池容器の開口部の上周縁と金属製の封止板の周縁とがレーザー溶接によって気密封止されたリチウムイオン電池の構造を扱っており、シール板の中央部に設けた穴に端子となるリベットを挿入し、ガスケットを介してかしめ固定する。この場合の欠点は、本体が端末の1つであることです。US8,623,545B2は、リベット留めが使用されるプラスチック圧縮シールを扱っており、従って、予圧に対する制御は比較的緩やかである。すべてのアセンブリで同じ量の予荷重を確保することは困難であり、シールアセンブリ間で異なる緩和パターンが発生する。シールの緩和パターンが電池の寿命を決定するため、電池の寿命については多少の不確実性がある。US8986874B2において、中間タブと電極積層体の溶接は、超音波溶接によって行われる。しかし、超音波溶接中に、活物質の層間剥離や集電箔の粉化が発生し、電池内でマイクロショート(micro shorts)が発生する可能性がある。また、超音波溶接は、レーザー溶接のような融着と比較して、電池内の内部抵抗が高くなる。
【0012】
総括すると、端子シール及び組立プロセスに関する既存の先行技術には、多くの制限がある。より小さい容量の電池のほとんどでは、本体が端子の1つとして機能するため、バッテリーの組み立て中の安全性が懸念される。また、このタイプの電池では、電池同士を接続するために溶接が必要な場合があり、異常が発生した場合に電池を除去することが困難になる。電極積層体と中間タブの溶接に従来技術で採用されている溶接方法は、粒子の発生/電極の損傷を引き起こすか、あるいは高い内部抵抗を引き起こす。従来技術で使用されるプラスチック圧縮シールは、リベット留めに基づいており、予荷重の制御は比較的不十分である。すべてのアセンブリで同じ量の予荷重を確保することは困難であり、シールアセンブリ間で異なる緩和パターンが発生する。これらすべての制限は、個々の端子が上部に突出している、より小容量のリチウムイオン電池を加工するための、新しい方法の開発につながった。
【本発明の目的】
【0013】
本発明の主な目的は、より低い内部抵抗を有し、個々の端子が電池の上部から突き出ている、より低い容量(3~10Ah)の楕円形円筒型リチウムイオン電池を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、電極積層体と中間タブ及び中間タブと端子の溶接にレーザービーム溶接を採用することによって、より低い内部抵抗(典型的な5Ah電池で<12mΩ)を有する低容量電池を加工することである。
本発明のさらに別の目的は、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池に、プラスチック圧縮シールを使用することである。
上述の目的に従って、本発明は、個々の端子が上部に突き出ている、より小さい容量のリチウムイオン電池を提供し、上述の目的の実現を可能にすると共に、その加工方法を提供する。
本発明の別の目的は、高い電流出力を得るために、より低い内部抵抗を有する電池を加工することである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電極積層体とその他のコンポーネント及び溶接接合部を示す図。
図2】組み立てられた電池を示す図。
図3】蓋へのプラスチック圧縮シールの組み立て図。
【発明の要旨】
【0015】
一態様では、本発明は、プラスチック圧縮シールを備えた低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池を提供する。
別の態様では、本発明は、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池を加工する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0016】
以下の詳細な説明を目的として、本発明は、明示的に反対の指定がない限り、さまざまな代替変形およびステップ順序を想定し得ることを理解されたい。さらに、実施例以外、または別段の指示がある場合を除き、例えば本明細書で使用される成分の量を表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。特に明記しない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されているすべてのパーセントは、全組成物の重量パーセントを指すことに留意されたい。
【0017】
従って、本発明を詳細に説明する前に、本発明は、当然のことながら変化し得る、特に例示されたシステムまたは方法パラメータに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的としており、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。
【0018】
本明細書で議論される用語の例を含む本明細書における例の使用は、単なる例示であり、本発明または例示された用語の範囲および意味を決して制限するものではない。同様に、本発明は、本明細書で与えられるさまざまな実施形態に限定されない。
【0019】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含む現在の文書が優先される。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象が含まれることに留意されたい。従って、例えば、「ポリマー」への言及には、2つ以上のそのようなポリマーが含まれる場合がある。
【0021】
「好ましい」および「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらす可能性がある本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じまたは他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。
【0022】
更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、また、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「備える」、「含む」、「有する」、「含有する」、「関与する」などの用語は、これに制限のないものではないが、含まれることを意味すると理解されるべきである。
【0024】
一態様では、本発明は、プラスチック圧縮シールを備えた低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池を提供する。
【0025】
正極は、(a)~(c)の混合物で構成されている。
(a)以下の群から選択される活物質
コバルト酸リチウム(LiCoO2)、
リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、
リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2)、
リン酸鉄リチウム(LiFePO4)
(b)導電剤(例:アセチレンブラック、グラファイトなど)
(c)アルミニウム箔上にコーティングされたバインダー(例えば、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride))。
正極の組成は、活物質:80~95%、導電剤:2~8%、バインダー:3~10%である。正極の最終的な厚さは、130~200μmである。
【0026】
負極は、(a)~(b)の混合物で構成されている。
(a)活物質(グラファイト、グラファイト-Si複合材料などの群から選択される)
(b)銅箔上にコーティングされたバインダー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンなどの群から選択される)。
負極の組成は、活物質:85~97%、バインダー:2~8%である。負極の最終的な厚さは、100~200μmである。
【0027】
端子シール(23,24)は、プラスチック圧縮シールである。端子シール(23,24)の中央端子ポスト(13)には、端子シール(23,24)の上にM4~M6のネジが設けられ、端子シール(23,24)の下に中間タブ(4,5)を溶接するための設備が設けられている。プラスチック圧縮シール(23,24)の構成要素には、中央端子ポスト(13)、上部絶縁体(14)及び下部絶縁体(16)(PTFE、パーフルオロアルコキシアルカン(perfluoroalkoxy alkane)などからなる群より選択される)、圧縮性絶縁材(15)及びハーフナット(17)が含まれる。これらのコンポーネントは、漏れ防止アセンブリを得るために蓋(12)上に組み立てられる。
【0028】
端子シール(23,24)において、挿入中にスタッド(21,22)および/または穴との移行嵌合(transition fit)を有する圧縮性絶縁材(15)で作られたリングが蓋(12)に設けられる。リング状の圧縮性絶縁材(15)は、上部と下部の絶縁体(14,16)の間に挟まれている。締め付け中、リング状の圧縮性絶縁材(15)は、軸方向に圧縮されため半径方向に拡張し、スタッド(21,22)と蓋(12)に半径方向への圧力を発生させ、これにより漏れを防止する。
【0029】
本特許における端子シール(23、24)は、1×10-8ミリバール・リットル/秒(mbar-l/s)未満の漏れ量を達成することができる。
【0030】
本発明には、個々のコンポーネントを配置するための溝が含まれていないため、コンポーネントの製造に必要な精度が低くなる。
【0031】
すべてのコンポーネントは軸対称であり、単一の軸を中心に同心であるため、自動調整される。本発明は、ガスケットの体積圧縮のために上部および底部の絶縁体によって形成されるキャビティを利用し、それによってガスケットの気密性を達成する。本発明は、予圧のためにねじ継手を使用するため、再加工が容易である。
【0032】
本発明の密封されたリチウムイオン電池(18)は、3~10Ahの容量を有し、様々な用途に対して非常に高い容量保持率を有し、2mΩ未満の低い内部抵抗を有する。達成されるヘリウム漏洩率(Helium leak rate)は、10-8mbar-l/s未満である。製造されたセルは、100%の放電深度で2500サイクルの充放電サイクルを受ける。容量維持率は、初期容量の80%を超えて(初期容量>80%)いる。
【0033】
本発明の低容量セルすなわち電池(18)は、以下の利点を提供する。
コストの削減:プラスチック圧縮シール(23,24)のコストは、従来使用されているセラミックと金属のシールよりもはるかに安価である。
加工が簡単:プラスチック圧縮シール(23,24)は、セラミックシールや金属シールと比較して、加工が簡単である。
組み立てが簡単:プラスチック圧縮シール(23,24)は、コンポーネントを締め付けるだけで溶接が必要ないため、セラミックや金属シールと比較して、蓋(12)への組み立てが簡単である。
組み立ての容易さ:バッテリーのセル同士すなわち電池(18)と電池(18)の接続は、リンクとナットを使用して簡単に行うことができる。
安全性:端子(10,11)が十分に分離されているため、電池(18)の安全性が向上する。
交換:バッテリーの組み立てに溶接が必要無いため、バッテリーの電池(18)の交換が簡単である。
本願の低容量電池(18)は、市販の低容量電池と比較して内部抵抗が低い。電極上の裸箔(bare foil)の幅が狭くなることによる電極積層体/セパレータへの熱伝達は、低容量電池の場合、高い自己放電又は短絡につながる。この問題は、特殊な中間タブ(4,5)と特殊なヒートシンクを使用して、電極積層体(1)とセパレータへの熱伝達を低減することで解決される。ガラステフロンシートは、セパレータと電極積層体(1)への熱伝達を避けるためにも使用される。
【0034】
本発明の低容量電池(18)は、15.52grmsまでの振動、及び、50g(10ミリ秒)までの衝撃レベルに耐えることができる。振動レベルと衝撃に耐える能力は、主に電池(18)設計の堅牢性に依存する。これは、打ち上げロケットと電気自動車の場合、両方の乗り物が異なる振動や衝撃レベルを受ける可能性があるため、特に有利である。
【0035】
電池(18)は、5~60℃の温度範囲で動作できる。電池(18)は、過充電時、過放電時、3.5Vでの短絡時は安全である。電池(18)は、非常に低い自己放電特性を有している(SOC30~40%まで充電した場合、<2mV/日)。電池(18)は、4.1Vで1週間充電した場合、95%を超える容量保持率を備えた良好な電荷保持率を有し、10-6mbarの真空条件下で動作することができる。この条件下において、漏れは観察されなかった。
【0036】
電池(18)の内部抵抗は、10~12mΩである。電池(18)は、15.52grmsまでのランダムな振動レベルに耐えることができ、電池(18)は、50g(10ミリ秒)までの衝撃レベルに耐えることができる。
【0037】
別の態様では、本発明は、低容量の楕円形円筒型リチウムイオン電池(18)を加工する方法を提供する。
加工方法は次のステップから構成される。
電極加工と、
電極積層体(1)の巻回と、
電池(18)の組み立てと、
電池(18)の活性化、試験とフィルプラグ溶接(fill plug welding)。
【0038】
「電極加工」
電極加工では、正極、負極の加工にあたり、それぞれアルミニウム箔、銅箔に活物質をコーティングする。
【0039】
正極は、(a)~(c)の混合物で構成されている。
(a)以下の群から選択される活物質
コバルト酸リチウム(LiCoO2)、
リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、
リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2)、
リン酸鉄リチウム(LiFePO4)
(b)導電剤(例:アセチレンブラック、グラファイトなど)
(c)アルミニウム箔上にコーティングされたバインダー(例えば、ポリフッ化ビニリデン)。
一実施形態において、正極の組成は、活物質:80~95%、導電剤:2~8%、バインダー:3~10%である。
正極の最終的な厚さは、130~200μmである。
【0040】
負極は、(a)~(b)の混合物で構成されている。
(a)活物質(グラファイト、グラファイト-Si複合材料などの群から選択される)
(b)銅箔上にコーティングされたバインダー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンなど)。
一実施形態において、負極の組成は、活物質:85~97%、バインダー:2~8%である。
負極の最終的な厚さは、100~200μmである。
【0041】
電極の加工には、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、水などから選択される溶媒を使用することができる。
【0042】
一実施形態では、ポリフッ化ビニリデンがバインダーとして使用される場合、電極スラリーの処理用の溶媒として、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)が使用される。カルボキシメチルエルロース又はスチレンブタジエンがバインダーとして使用される場合、電極スラリーの処理用の溶媒として、水が使用される。
【0043】
正電極と負電極には、電気導入端子(electrical feed through)を備えるために、電極の全長に亘ってそれぞれ4~10mm、並びに、5~11mmの裸の領域を設けることが好ましい。
【0044】
「電極積層体の巻回」
電極積層体(1)は、正極と負極を、セパレータを介して、平型マンドレルを用いた巻回機で巻回することにより作製することができる。セパレータの幅は、負極コーティングの幅よりも2~8mm大きい範囲であってもよい。巻回は、正極と負極のコーティングされていない領域が電極積層体の反対側から突き出るように行われる。正極基板の突出幅は2~10mm、負極基板の突出幅は3~10mmである。負極は、正極の長さと幅を超えて伸びている。
【0045】
一実施形態において、電極積層体(1)は、平らなマンドレルを使用する巻回機によって製造され、一般的な5Ah電池の場合、正極を1.5~2.5m、負極を1.7~2.7m巻回し、その間にセパレータを1.9~2.9mで置く。
【0046】
「電池の組み立て(Cell assembly)」
電極積層体(1)の巻回と、電池(18)の組み立ては、RH<1%に湿度制御された環境で実行される。以下は、電池(18)の組み立てに必要なさまざまな手順である。
【0047】
「蓋端子シールアセンブリ(Lid-terminal seal assembly)」
このステップには、端子シール(23,24)(正極側と負極側)をアルミニウム合金製の上部カバー即ち蓋(12)に取り付けることが含まれる。端子シール(23,24)は、プラスチック製圧縮シールである。プラスチック製圧縮シール(23,24)の構成要素には、中央端子ポスト(13)、上部絶縁体(14)及び下部絶縁体(16)(PTFE、パーフルオロアルコキシアルカン(perfluoroalkoxy alkane)などからなる群から選択される)、圧縮性絶縁材(15)、ハーフナット(17)が含まれる。これらの部品は、漏れ防止アセンブリを得るために、蓋(12)上に組み立てられる。プラスチック製圧縮シール(23,24)の中央端子ポスト(13)には、当該シール(23,24)の上にM4からM6のネジが設けられていると共に、当該シール(23,24)の下に中間タブ(4,5)を溶接するための設備が設けられている。
【0048】
端子シール(23,24)の組み立て中において、上部絶縁体(14)が蓋(12)に設けられた穴を通して挿入され、絶縁体フランジと蓋(12)の上部突起との面接触が確保される。端子スタッド(21,22)が上部絶縁体(14)に挿入され、当該スタッド(21,22)のフランジと絶縁体のフランジとが確実に接触する。リング状の圧縮性絶縁材(15)が端子スタッド(21、22)を通して底部(下)から挿入された後、下部(底部)絶縁体(16)が挿入される。続いて、ハーフナット(17)を挿入し、所定のトルクで締め付ける。端子シール(23、24)の組み立て中において、圧縮性絶縁材(15)で作られたリングは、その挿入中に、スタッド(21、22)及び/又は蓋(12)に設けられた穴との移行嵌合(transition fit)を有し得る。リング状の圧縮性絶縁材(15)は、上部絶縁体(14)と下部絶縁体(16)との間に挟まれる。上記の締め付け中において、リング状の圧縮性絶縁材(15)は、軸方向に圧縮されることで半径方向に拡張し、これにより、スタッド(21、22)と蓋(12)に半径方向の圧力を発生させて漏れを防止する。
【0049】
「中間タブの電極積層体への溶接」
電極積層体(1)のアルミニウムの露出面の半分は、2つの等しいグループに分割される。グループ化されたアルミニウム箔を正極の中間タブ(4)の溝に挿入して圧着させる。同様に、電極積層体(1)の銅の露出面の半分は、2つの等しいグループに分割される。グループ化された銅箔を負極の中間タブ(5)の溝に挿入して圧着させる。
【0050】
電極積層体(1)は、中間タブ(4,5)が取り付けられた状態で、正極の中間タブ(4)が上になるように溶接ワークステーション内に保管される。レーザー(IR)ヘッドは、正極の中間タブ(4)と電極積層体(1)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、正極の中間タブ(4)と電極積層体(1)との境界に集中し、銅製のヒートシンクを使用してセパレータへの熱伝達を低減しつつ、5~8kWのピーク出力で溶接を実行する。更に、セパレータを熱から保護するために、ガラスPTFEシートなどの断熱層が電極積層体(1)と正極の中間タブ(4)との間に配置される。溶接ワークステーション内の電極積層体(1)は、上部に負極の中間タブ(5)が置かれた状態で保管される。レーザー(IR)ヘッドは、負極の中間タブ(5)と電極積層体(1)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、負極の中間タブ(5)と電極積層体(1)との境界に集中し、銅製のヒートシンクを使用してセパレータへの熱伝達を低減しつつ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行する。
【0051】
「中間タブと蓋端子アセンブリの溶接(Welding of intermediate tabs to lid-terminal assembly)」
このステップには、端子ラグ(terminal lugs)(19,20)をそれぞれの中間タブ(4,5)に堅牢に固定することが含まれる。レーザー(IR)ヘッドは、正極の中間タブ(4)と端子ラグ(19,20)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、正極の中間タブ(4)と正極の端子ラグ(19,20)との境界に集中し、5~8kWのピーク出力で溶接を実行する。レーザー(IR)ヘッドは、負極の中間タブ(5)と負極の端子ラグ(19,20)との境界上に焦点を合わせ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行する。中間タブ(4,5)は、蓋(12)と端子シール(23,24)アセンブリ(組立体)が電極積層体(1)の上に配置されるように慎重に曲げられる。
【0052】
「ケースと蓋の溶接(Case to lid welding)」
このステップにおいて、電極積層体(1)は、蓋(12)と端子シール(23,24)アセンブリ(組立体)と共に、端子(10,11)が上を向くようにアルミニウム合金電池ケース内に挿入される。レーザーヘッドとアルゴンガスノズルは、当該ケースと蓋(12)との境界上に焦点を合わせ、当該ケースと蓋(12)の溶接を実行する。ケースと蓋(12)の溶接のレーザー出力の範囲は、5~8kWである。
【0053】
「セルの活性化、テスト、フィルプラグ溶接(Cell activation, testing and fill plug welding)」
このステップでは、必要量の電解質を蓋(12)に設けられた注入口から電池(18)に加え、その後2~5日間浸漬させる。この後、電池(18)には、C/10から1Cの充放電率(charge-discharge rate)で所定の成形サイクル処理が施される。成形中に発生したガスは排出され、注入口は、最終的にレーザービーム溶接を使用して密閉される。レーザーのピーク出力の範囲は、4~8kWである。
【0054】
電池(18)のヘリウム漏洩率(The helium leak rate)は、10-8mbar-l/s未満である。電池(18)の内部抵抗は、10~12mΩである(典型的な5Ah電池の場合)。中間タブ(4,5)と電極積層体(1)との溶接にレーザービーム溶接を使用することで、内部抵抗の値が低くなる。レーザービーム溶接により、電極の基板箔と中間タブ(4,5)との間の溶け込み深さ(depth of penetration)と接触面積が増加し、強力な溶接が得られる。溶接塊(weld nugget)の凹凸を最小限に抑えて接触面積を増加させると、電池(18)の内部抵抗が減少する。
【0055】
この方法によって製造された電池(18)は、以下のような重大なミッションに応用して使用すること、つまり、衛星、打ち上げロケット、航空機、軍用車両、潜水艦、電気自動車に電力を供給することができる。
【0056】
以下の例は、特許請求の範囲に記載された本発明をよりよく説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。以下に説明するすべての特定の材料および方法は、本発明の範囲内に含まれる。これらの特定の組成物、材料、および方法は、本発明を限定することを意図したものではなく、単に本発明の範囲内に含まれる特定の実施形態を説明することを目的としている。当業者は、発明能力を行使することなく、また本発明の範囲から逸脱することなく、同等の材料および方法を開発することができる。このような変形例も本発明の範囲内に含まれることが発明者らの意図である。
【0057】
「例1」
以下に示す例は、LiCoO2/LiNi0.8Co0.15Al0.05O2カソードと、グラファイトアノードを備えた低容量の楕円形円筒型電池(18)の加工を示している。
【0058】
「電極加工」
電極加工において、正極と負極は、それぞれ、アルミニウム箔と銅箔に活物質をコーティングして加工される。
【0059】
正極は、(a)~(c)の混合物で構成されている。
(a)コバルト酸リチウム(LiCoO2)、又は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)
(b)導電剤(アセチレンブラック、グラファイト)
(c)アルミニウム箔上にコーティングされたポリフッ化ビニリデン。
正極の組成は、LiCoO2/LiNi0.8Co0.15Al0.05O2活物質:85~90%、導電剤:2~6%、バインダー:4~6%である。カレンダー(calendering)加工後の正極の最終的な厚さは、150~160μmの範囲である。1-メチル-2-ピロリジノンは、スラリー処理のための溶媒として使用される。
【0060】
負極は、銅箔上にコーティングされた(a)グラファイトと、(b)ポリフッ化ビニリデンの混合物から構成されている。負極の組成は、黒鉛:90~96%、バインダー:3~6%である。負極の最終的な厚さは、150~160μmの範囲である。1-メチル-2-ピロリジノンは、スラリー処理のための溶媒として使用される。
【0061】
正電極と負電極には、電気導入端子(electrical feed through)を備えるために、電極の全長に亘ってそれぞれ4~8mmと5~8mmの裸の領域が設けられている。
【0062】
「電極積層体の巻回(winding)」
電極積層体(1)は、正極と負極を、セパレータを介して、平型マンドレルを用いた巻回機で巻回することにより作製される。セパレータの幅は、負極塗工幅よりも4~6mm長くなっている。巻回は、正極と負極のコーティングされていない領域が電極積層体(1)の反対側から突き出るように行われる。正極基板の突出幅は3~6mm、負極基板の突出幅は3~6mmである。負極は、正極の長さ及び幅を超えて延びている。正極、負極、セパレータの長さは、それぞれ、2.0m、2.2m、2.5mである。
【0063】
「電池の組み立て」
電極積層体(1)の巻回と電池(18)の組み立ては、RH<1%に湿度制御された環境で実行される。以下は、電池(18)の組み立てに必要なさまざまな手順である。
【0064】
「蓋端子シールアセンブリ(Lid-terminal seal assembly)」
このステップには、端子シール(23,24)(正極側と負極側)をアルミニウム合金製の上部カバー即ち蓋(12)に取り付けることが含まれる。端子シール(23,24)は、プラスチック製圧縮シールである。プラスチック製圧縮シール(23,24)の構成要素には、中央端子ポスト(13)、PTEF製の上部絶縁体(14)及び下部絶縁体(16)、圧縮性絶縁材(15)、ハーフナット(17)が含まれる。これらの部品は、漏れ防止アセンブリを得るために、蓋(12)上に組み立てられる。プラスチック製圧縮シール(23,24)の中央端子ポスト(13)には、当該シール(23,24)の上にM4ネジが設けられていると共に、当該シール(23,24)の下に中間タブ(4,5)を溶接するための設備が設けられている。端子シール(23,24)の組み立て中において、上部絶縁体(14)が蓋(12)に設けられた穴を通して挿入され、絶縁体フランジと蓋(12)の上部突起との面接触が確保される。端子スタッド(21,22)が上部絶縁体(14)に挿入され、当該スタッド(21,22)のフランジと絶縁体のフランジとが確実に接触する。リング状の圧縮性絶縁材(15)がスタッド(21、22)を通して底部(下)から挿入された後、下部(底部)絶縁体(16)が挿入される。続いて、ハーフナット(17)を挿入し、所定のトルクで締め付ける。
【0065】
「中間タブの電極積層体への溶接」
電極積層体(1)のアルミニウムの露出面の半分は、2つの等しいグループに分割される。グループ化されたアルミニウム箔を正極の中間タブ(4)の溝に挿入して圧着させる。同様に、電極積層体(1)の銅の露出面の半分は、2つの等しいグループに分割される。グループ化された銅箔を負極の中間タブ(5)の溝に挿入して圧着させる。
【0066】
電極積層体(1)は、中間タブ(4,5)が取り付けられた状態で、正極の中間タブ(4)が上になるように溶接ワークステーション内に保管される。レーザー(IR)ヘッドは、正極の中間タブ(4)と電極積層体(1)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、正極の中間タブ(4)と電極積層体(1)との境界に集中し、銅製のヒートシンクを使用してセパレータへの熱伝達を低減しつつ、5~8kWのピーク出力で溶接を実行する。更に、セパレータを熱から保護するために、ガラスPTFEシートなどの断熱層が電極積層体(1)と正極の中間タブ(4)との間に配置される。電極積層体(1)は、上部に負極の中間タブ(5)が置かれた状態で保管される。レーザー(IR)ヘッドは、負極の中間タブ(5)と電極積層体(1)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、負極の中間タブ(5)と電極積層体(1)との境界に集中し、銅製のヒートシンクを使用してセパレータへの熱伝達を低減しつつ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行する。
【0067】
「中間タブと蓋端子アセンブリの溶接」
このステップには、端子ラグ(terminal lugs)(19,20)をそれぞれの中間タブ(4,5)に堅牢に固定することが含まれる。レーザー(IR)ヘッドは、正極の中間タブ(4)と正極の端子ラグ(19,20)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、正極の中間タブ(4)と正極の端子ラグ(19,20)との境界に集中し、5~8kWのピーク出力で溶接を実行する。レーザー(IR)ヘッドは、負極の中間タブ(5)と負極の端子ラグ(19,20)との境界上に焦点を合わせ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行する。中間タブ(4,5)は、蓋(12)と端子シール(23,24)アセンブリ(組立体)が電極積層体(1)の上に配置されるように慎重に曲げられる。
【0068】
「ケースと蓋の溶接」
このステップにおいて、電極積層体(1)は、蓋(12)と端子シール(23,24)アセンブリ(組立体)と共に、端子(10,11)が上を向くようにアルミニウム合金電池ケース内に挿入される。レーザーヘッドとアルゴンガスノズルは、当該ケースと蓋(12)との境界上に焦点を合わせ、当該ケースと蓋(12)の溶接を実行する。ケースと蓋(12)の溶接のレーザー出力の範囲は、5~8kWである。
【0069】
「セルの活性化、テスト、フィルプラグ溶接」
このステップでは、必要量の電解質を蓋(12)に設けられた注入口から電池(18)に加え、その後2~5日間浸漬させる。この後、電池(18)には、C/10の充放電率で所定の成形サイクル処理が施される。成形中に発生したガスは排出され、注入口は、最終的にレーザービーム溶接を使用して密閉される。レーザーのピーク出力の範囲は、4~8kWである。
【0070】
「例2」
以下に示す例は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2又はLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2又はLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2)/リン酸鉄リチウム(LiFePO4)カソードと、グラファイト-Si複合アノードを備えた低容量の楕円形円筒型電池(18)の加工を示している。
【0071】
「電極加工」
電極加工において、正極と負極は、それぞれ、アルミニウム箔と銅箔に活物質をコーティングして加工される。
【0072】
正極は、(a)~(c)の混合物で構成されている。
(a)リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2又はLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2又はLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2)/リン酸鉄リチウム(LiFePO4)
(b)導電剤(アセチレンブラック、グラファイト)
(c)アルミニウム箔上にコーティングされたポリフッ化ビニリデン。
正極の組成は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物:88~94%、導電剤:3~5%、ポリフッ化ビニリデン:3~6%である。カレンダー加工後の正極の最終的な厚さは、160~180μmの範囲である。
【0073】
負極は、(a)グラファイト-Si複合材料と、(b)銅箔上にコーティングされたバインダー(カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンなど)の混合物から構成されている。負極の組成は、グラファイトシリコン:90~96%、バインダー:3~6%である。カレンダー加工後の負極の最終的な厚さは、110~140μmの範囲である。負極スラリーを処理する際の溶媒として水が使用される。
【0074】
正電極と負電極には、電気導入端子(electrical feed through)を備えるために、電極の全長に亘ってそれぞれ4~8mmと5~8mmの裸の領域が設けられている。
【0075】
「電極積層体の巻回」
セパレータの幅は、負極塗工幅よりも4~6mm長くなっている。巻回は、正極と負極のコーティングされていない領域が電極積層体(1)の反対側から突き出るように行われる。正極基板の突出幅は3~6mm、負極基板の突出幅は3~6mmである。負極は、正極の長さ及び幅を超えて延びている。正極、負極、セパレータの長さは、それぞれ、1.8m、2.0m、2.3mである。
【0076】
「電池の組み立て」
電極積層体(1)の巻回と電池(18)の組み立ては、RH<1%に湿度制御された環境で実行される。以下は、電池(18)の組み立てに必要なさまざまな手順である。
【0077】
「蓋端子シールアセンブリ(Lid-terminal seal assembly)」
このステップには、端子シール(23,24)(正極側と負極側)をアルミニウム合金製の上部カバー即ち蓋(12)に取り付けることが含まれる。端子シール(23,24)は、プラスチック製圧縮シールである。プラスチック製圧縮シール(23,24)の構成要素には、中央端子ポスト(13)、PTEF製の上部絶縁体(14)及び下部絶縁体(16)、圧縮性絶縁材(15)、ハーフナット(17)が含まれる。これらの部品は、漏れ防止アセンブリを得るために、蓋(12)上に組み立てられる。プラスチック製圧縮シール(23,24)の中央端子ポスト(13)には、当該シール(23,24)の上にM5ネジが設けられていると共に、当該シール(23,24)の下に中間タブ(4,5)を溶接するための設備が設けられている。
【0078】
端子シール(23,24)の組み立て中において、上部絶縁体(14)が蓋(12)に設けられた穴を通して挿入され、絶縁体フランジと蓋(12)の上部突起との面接触が確保される。端子スタッド(21,22)が上部絶縁体(14)に挿入され、当該スタッド(21,22)のフランジと絶縁体のフランジとが確実に接触する。リング状の圧縮性絶縁材(15)がスタッド(21、22)を通して底部(下)から挿入された後、下部(底部)絶縁体(16)が挿入される。続いて、ハーフナット(17)を挿入し、所定のトルクで締め付ける。
【0079】
「中間タブの電極積層体への溶接」
電極積層体(1)のアルミニウムの露出面の半分は、2つの等しいグループに分割される。グループ化されたアルミニウム箔を正極の中間タブ(4)の溝に挿入して圧着させる。同様に、電極積層体(1)の銅の露出面の半分は、2つの等しいグループに分割される。グループ化された銅箔を負極の中間タブ(5)の溝に挿入して圧着させる。
【0080】
電極積層体(1)は、中間タブ(4,5)が取り付けられた状態で、正極の中間タブ(4)が上になるように溶接ワークステーション内に保管される。レーザー(IR)ヘッドは、正極の中間タブ(4)と電極積層体(1)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、正極の中間タブ(4)と電極積層体(1)との境界に集中し、銅製のヒートシンクを使用してセパレータへの熱伝達を低減しつつ、5~8kWのピーク出力で溶接を実行する。更に、セパレータを熱から保護するために、ガラスPTFEシートなどの断熱層が電極積層体(1)と正極の中間タブ(4)との間に配置される。電極積層体(1)は、上部に負極の中間タブ(5)が置かれた状態で保管される。レーザー(IR)ヘッドは、負極の中間タブ(5)と電極積層体(1)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、負極の中間タブ(5)と電極積層体(1)との境界に集中し、銅製のヒートシンクを使用してセパレータへの熱伝達を低減しつつ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行する。
【0081】
「中間タブと蓋端子アセンブリの溶接」
このステップには、端子ラグ(19,20)をそれぞれの中間タブ(4,5)に堅牢に固定することが含まれる。レーザー(IR)ヘッドは、正極の中間タブ(4)と正極の端子ラグ(19,20)との境界上に焦点を合わせている。アルゴンガスノズルは、正極の中間タブ(4)と正極の端子ラグ(19,20)との境界に集中し、5~8kWのピーク出力で溶接を実行する。レーザー(IR)ヘッドは、負極の中間タブ(5)と負極の端子ラグ(19,20)との境界上に焦点を合わせ、4~7kWのピーク出力で溶接を実行する。中間タブ(4,5)は、蓋(12)と端子シール(23,24)アセンブリ(組立体)が電極積層体(1)の上に配置されるように慎重に曲げられる。
【0082】
「ケースと蓋の溶接」
このステップにおいて、電極積層体(1)は、蓋(12)と端子シール(23,24)の組立体と共に、端子(10,11)が上を向くようにアルミニウム合金電池ケース内に挿入される。レーザーヘッドとアルゴンガスノズルは、当該ケースと蓋(12)との境界上に焦点を合わせ、当該ケースと蓋(12)の溶接を実行する。ケースと蓋(12)の溶接のレーザー出力の範囲は、5~8kWである。
【0083】
「セルの活性化、テスト、フィルプラグ溶接」
このステップでは、必要量の電解質を蓋(12)に設けられた注入口から電池(18)に加え、その後2~5日間浸漬させる。この後、電池(18)には、C/10の充放電率で所定の成形サイクル処理が施される。成形中に発生したガスは排出され、注入口は、最終的にレーザービーム溶接を使用して密閉される。レーザーのピーク出力の範囲は、4~8kWである。
【符号の説明】
【0084】
図1
1.電極積層体
2.アルミニウム裸箔
3.銅裸箔
4.正極の中間タブ
5.負極の中間タブ
6.電極積層体と正極の中間タブとの溶接接合部
7.電極積層体と負極の中間タブとの溶接接合部
8.正極の中間タブと端子の溶接接合部
9.負極の中間タブと端子の溶接接合部
18.リチウムイオン電池
図2
10.正極の端子
11.負極の端子
図3
12.蓋
13.中央端子ポスト
14.上部絶縁体
15.圧縮性絶縁材
16.下部絶縁体
17.ハーフナット
(19,20)正極及び負極の端子ラグ
(21,22)端子スタッド
(23,24)端子シール
図1
図2
図3
【国際調査報告】