(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ホスファゼン化合物ベース電解質組成物、準固体および固体状態電解質、ならびにリチウムバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20240130BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240130BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240130BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240130BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240130BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20240130BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240130BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240130BHJP
C08G 79/025 20160101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/48
H01M4/587
H01M12/08 K
H01M50/44
H01M50/434
H01M50/437
H01M50/414
H01B1/06 A
C08G79/025
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547080
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022070467
(87)【国際公開番号】W WO2022170317
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522082160
【氏名又は名称】グローバル グラフェン グループ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Global Graphene Group,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【テーマコード(参考)】
4J030
5G301
5H021
5H029
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
4J030CA01
4J030CA02
4J030CB43
4J030CB44
4J030CB45
4J030CB47
4J030CB48
4J030CC01
4J030CD03
4J030CD05
4J030CE02
4J030CG02
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
5H021CC01
5H021EE02
5H021EE21
5H021EE28
5H021HH01
5H029AJ12
5H029AK01
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5H029AL02
5H029AL03
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5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
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5H029AM07
5H029AM16
5H029DJ04
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5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H032AA01
5H032AS02
5H032CC06
5H032CC17
5H032EE01
5H032EE04
5H032EE07
5H032HH01
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA12
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA19
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
アノード、カソード、ならびにアノードおよびカソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む、充電式リチウムバッテリーであって、電解質が、ポリホスファゼンポリマーおよびポリマー中に溶解または分散したリチウム塩を含み、リチウム塩が、組み合わせられたリチウム塩およびポリホスファゼンポリマーの全重量に基づいて0.1%~50%の重量比率を占有し;ポリホスファゼンポリマーが、アノードおよび/またはカソードに浸透し、ならびにアノードの内側でアノード活性材料と物理的に接触しており、および/またはカソードの内側でカソード活性材料と物理的に接触しているか、もしくはカソード活性材料に化学的に結合しており;ならびに電解質が、組み合わせられたリチウム塩、ポリマー、および非水性液体溶媒の全重量に基づいて、ポリマー中に分散した重量で0%~50%の非水性液体溶媒をさらに含む、充電式リチウムバッテリー。
【選択図】
図1(A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、ならびに前記アノードおよび前記カソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む、充電式リチウムバッテリーであって、前記電解質が、ポリホスファゼンポリマーおよび前記ポリマー中に溶解または分散したリチウム塩を含み、前記リチウム塩が、組み合わせられた前記リチウム塩および前記ポリホスファゼンポリマーの全重量に基づいて0.1%~50%の重量比率を占有し;
前記ポリホスファゼンポリマーが、前記アノードおよび/または前記カソードに浸透し、ならびに前記アノードの内側でアノード活性材料と物理的に接触しており、および/もしくはアノード活性材料に化学的に結合しており、ならびに/または前記カソードの内側でカソード活性材料と物理的に接触しており、および/もしくはカソード活性材料に化学的に結合しており;ならびに
前記電解質が、組み合わせられた前記リチウム塩、前記ポリマー、および非水性液体溶媒の全重量に基づいて、前記ポリマー中に分散した重量で0%~50%の前記非水性液体溶媒をさらに含む、
前記充電式リチウムバッテリー。
【請求項2】
前記ポリホスファゼンポリマーが、(a)式(N=PR
1R
2)
n(式中、R
1およびR
2は有機である)を有する直鎖状ポリマー;(b)小さいホスファゼン環が有機鎖単位により接続されて一緒になったシクロリニアおよびシクロマトリックスポリマー;(c)ブロックコポリマー、スター、樹枝状、またはコームタイプ構造;ならびにその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項3】
前記ポリホスファゼンポリマーが、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、またはその組み合わせ:
(式中、R、R
1およびR
2は、有機基または有機金属基から独立して選択される)から選択される前駆体モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマーから合成される、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項4】
前記リチウム塩が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF
3(CF
2CF
3)
3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項5】
前記電解質が、組み合わせられた前記リチウム塩、前記ポリマー、および非水性液体溶媒の全重量に基づいて、前記ポリマー中に分散した重量で0.1%~50%の前記非水性液体溶媒をさらに含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項6】
前記液体溶媒が、フッ素化カーボネート、ハイドロフルオロエーテル、フッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、フッ素化ビニルエーテル、スルホン、スルフィド、ニトリル、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、スルフェート、シロキサン、シラン、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、イオン液体溶媒、またはその組み合わせから選択される、請求項5に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項7】
前記スルホンまたはスルフィドが、ビニルスルホン、アリルスルホン、アルキルビニルスルホン、アリールビニルスルホン、ビニルスルフィド、TrMS、MTrMS、TMS、EMS、MMES、EMES、EMEES、またはその組み合わせのビニル含有バリアントから選択される、請求項6に記載の充電式リチウムバッテリー:
【請求項8】
前記ビニルスルホンまたはスルフィドが、エチルビニルスルフィド、アリルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホキシド、アリルフェニルスルホン、アリルメチルスルホン、ジビニルスルホン、またはその組み合わせから選択され、前記ビニルスルホンがメチルエチレンスルホンおよびエチルビニルスルホンを含まない、請求項7に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項9】
前記ニトリルが、ジニトリルを含むか、またはAND、GLN、SEN、もしくはその組み合わせから選択される、請求項6に記載の充電式リチウムバッテリー:
【請求項10】
前記ホスフェートが、ホスホネート部分を有するアリルタイプ、ビニルタイプ、スチレンタイプおよび(メタ)アクリルタイプモノマーから選択される、請求項6に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項11】
前記ホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸、ホスファゼン、またはホスファイトが、TMP、TEP、TFP、TDP、DPOF、DMMP、DMMEMP、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、アルキルホスフェート、トリアリルホスフェート(TAP)、その組み合わせから選択され、TMP、TEP、TFP、TDP、DPOF、DMMP、DMMEMP、およびホスファゼンが、以下の化学式:
(式中、R=H、NH
2、またはC
1~C
6アルキル)を有する、請求項6に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項12】
前記シロキサンまたはシランが、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、またはその組み合わせから選択される、請求項6に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項13】
前記ポリホスファゼンが、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、またはその組み合わせから選択されるアミド基と架橋されたネットワークを形成している、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項14】
前記ポリホスファゼンが、分子中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アクリルアミド基、アミン基、アクリル基、アクリルエステル基、またはメルカプト基から選択される少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む架橋剤により架橋されている、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項15】
前記ポリホスファゼンが、フェニレン基、ポリ(ジエタノール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(ジエタノール)ジメチルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、またはその組み合わせから選択される架橋剤により架橋されている、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項16】
前記電解質が、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される難燃性添加剤をさらに含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項17】
前記ポリホスファゼンポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成している、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項18】
リチウム金属二次電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウムイオン硫黄電池、リチウムセレン電池、またはリチウム空気電池である、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項19】
前記カソードが、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi
aMn
2-aO
4、0<a<2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNi
nMn
mCo
1-n-mO
2、0<n<1、0<m<1、n+m<1)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi
cCo
dAl
1-c-dO
2、0<c<1、0<d<1、c+d<1)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO
2)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)、リチウムニッケルコバルト酸化物(LiNi
pCo
1-pO
2、0<p<1)、またはリチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi
qMn
2-qO
4、0<q<2)から選択されるカソード活性材料を含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項20】
リチウムイオン電池であり、前記アノードが、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo
2O
4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されるアノード活性材料を含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項21】
前記アノードと前記カソードとの間に配されたセパレータをさらに含み、前記セパレータが前記準固体または固体状態電解質を含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項22】
前記電解質が、前記ポリホスファゼンポリマー中に溶解または分散したリチウム塩を含むポリホスファゼンポリマーを含み、および前記セパレータが、前記ポリホスファゼンポリマー中に分散されているか、または前記ポリホスファゼンポリマーにより結合された、ポリマー繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、またはその組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項23】
モノマー、オリゴマーまたは反応性ポリマーの形態の、反応性ホスファゼン化合物を含む反応性液体媒体中に溶解または分散したリチウム塩および開始剤、置換基、または架橋剤を含む、電解質組成物。
【請求項24】
前記電解質組成物が、
a.液体状態にあるか、または第1の非水性液体溶媒中に溶解した前記反応性ホスファゼン化合物を含む、第1の溶液;ならびに
b.開始剤、置換基、または架橋剤、リチウム塩、および第2の非水性液体溶媒を含む、第2の溶液
を含み;
電解質を形成させるために前記第1の溶液および前記第2の溶液が混合される前に、前記第1の溶液および前記第2の溶液が別々に貯蔵されており、ならびに前記第1および前記第2の非水性液体溶媒が同じまたは異なる組成である、
請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項25】
前記反応性ホスファゼン化合物が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、またはその組み合わせ:
(式中、R、R
1およびR
2は有機基または有機金属基から独立して選択される)から選択される前駆体モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマーを含む、請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項26】
前記反応性ホスファゼン化合物が、一般式:[-NP(A)a(B)b-]
x(式中、基AおよびBは、--O--、--S--、--NH--、または--NR--を通じてリン原子に結合しており、RはC
1~C
6アルキル基であり;Aは、一般式Q--O--CR’=CHR’’のビニルエーテル基および一般式:
のスチレンエーテル基のうちの少なくとも1つを含有し、R’およびR’’のうちの少なくとも1つは水素またはC
1~C
10アルキル基であり;Bは反応性または非反応性炭化水素基であり;Qは、O、S、およびNのうちの少なくとも1つを任意選択的に含有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式炭化水素基のうちの1つであり;aは0より大きい数であり;bは0または0より大きい数であり;a+b=2であり、xは、少なくとも2であるすべての数を表し;ならびにzは0または1を表す)のホスファゼン誘導体を含む、請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項27】
前記反応性ホスファゼン化合物が、一般式:[-NP(A)a(B)b-]
x(式中、AおよびBは互いと同一または異なり、ならびにアクリル基、メタクリル基、ビニル基もしくはアリル基を含有する重合硬化性基、または、水素原子、ハロゲン原子、フェノキシ基、ハロゲン化フェノキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルアミノ基もしくはメルカプト基を含む、非重合硬化性基を独立して表し、AおよびBの少なくとも1つは重合硬化性基であり;aおよびbは独立して各々0または0より大きい整数であり、ならびにaおよびbの和は2であり;ならびにnは3またはより大きい整数である)のホスファゼン誘導体を含む、請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項28】
前記第1の非水性液体溶媒または前記第2の非水性液体溶媒が、フッ素化カーボネート、ハイドロフルオロエーテル、フッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、フッ素化ビニルエーテル、スルホン、スルフィド、ニトリル、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスファゼン、スルフェート、シロキサン、シラン、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、イオン液体溶媒、またはその組み合わせから選択される、請求項24に記載の電解質組成物。
【請求項29】
前記リチウム塩または開始剤が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF
3(CF
2CF
3)
3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択される、請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項30】
前記開始剤が、PCl
5、ペルフルオロアルキルヨージド(C
6F
13I)、アゾ化合物、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、ベンゾイルペルオキシド tert-ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化水素、ドデカノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、n-C
4H
9Li、(C
5H
5)
2Mg、(i-C
4H
9)
3Al、カルベニウム塩、CF
3S0
3CH
3、CF
3S0
3C
2H
5、(CF
3SO
2)O、Ph
3C
+AsF
6
-、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよびカンファーキノン、ホスファイト、カチオン性開始剤、酸、リチウム塩、またはその組み合わせから選択される、請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項31】
非水性液体溶媒をさらに含む、請求項23に記載の電解質組成物。
【請求項32】
Bが、O、S、およびNのうちの少なくとも1つを含有する、ならびに少なくとも1つの反応性基を含有する反応性または非反応性炭化水素基である、請求項26に記載の電解質組成物。
【請求項33】
非水性液体溶媒、リチウム塩、および前記液体溶媒中に溶解した反応性ホスファゼン化合物を含む、電解質組成物であって、前記非水性液体溶媒が、フッ素化カーボネート、ハイドロフルオロエーテル、フッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、フッ素化ビニルエーテル、スルホン、スルフィド、ニトリル、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスファゼン、スルフェート、シロキサン、シラン、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、イオン液体溶媒、またはその組み合わせから選択される、前記電解質組成物。
【請求項34】
前記リチウム塩が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF
3(CF
2CF
3)
3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択される、請求項33に記載の電解質組成物。
【請求項35】
アノード活性材料を含むアノードであって、前記アノード活性材料が、請求項23に記載の電解質組成物と混合されており、および硬化で前記電解質組成物と物理的に接触しているか、または前記電解質組成物に化学的に結合している、前記アノード。
【請求項36】
カソード活性材料の粒子を含むカソードであって、カソード活性材料の前記粒子が、請求項23に記載の電解質組成物と混合されており、および硬化で前記電解質組成物と物理的に接触しているか、または前記電解質組成物に化学的に結合している、前記カソード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐火性電解質組成物、それからの準固体および固体状態電解質、ならびにそのような電解質を含有するリチウムバッテリー(リチウムイオンおよびリチウム金属バッテリー)を提供する。
【背景技術】
【0002】
充電式リチウムイオン(Liイオン)およびリチウム金属バッテリー(例えば、リチウム硫黄、リチウムセレン、およびLi金属空気バッテリー)は、電動輸送機器(EV)、ハイブリッド電動輸送機器(HEV)、ならびに携帯型電子デバイス、例えばラップトップコンピュータおよびモバイルホンのための有望な電源と考えられている。金属元素としてのリチウムは、アノード活性材料として任意の他の金属または金属挿入化合物(4,200mAh/gの比容量を有するLi4.4Siを除く)と比較して最も高いリチウム貯蔵容量(3,861mAh/g)を有する。それゆえ、一般に、Li金属バッテリー(リチウム金属アノードを有する)は、リチウムイオンバッテリー(グラファイトアノードを有する)よりも有意に高いエネルギー密度を有する。
【0003】
しかしながら、リチウムイオンバッテリーおよびすべてのリチウム金属二次バッテリーのために使用される電解質は、何らかの安全性の課題を提示する。有機液体電解質のほとんどは、熱暴走または爆発問題を引き起こし得る。
【0004】
イオン液体(IL)は、著しく低い温度において液体である、純粋にイオン性の、塩様の材料の新たなクラスである。ILの公式の定義は、参照点として水の沸点を使用する:「イオン液体は100℃未満で液体であるイオン性化合物である」。ILの特に有用なおよび科学的に興味深いクラスは室温イオン液体(RTIL)であり、これは、室温またはそれ未満の温度で液体である塩を指す。RTILはまた、有機液体塩または有機溶融塩として参照される。RTILの認められる定義は、周囲温度よりも低い融解温度を有する任意の塩である。
【0005】
ILは、それらの非可燃性に起因して充電式リチウムバッテリーのための潜在的な電解質として示唆されたが、従来のイオン液体組成物は、恐らくはいくつかの本来的な欠点に起因して電解質として使用された場合に満足のいく性能を呈していない:(a)ILは、室温またはより低い温度において相対的に高い粘度を有し;そのためリチウムイオン輸送に適しないと考えられている;(b)Li-S電池での使用のために、ILは、カソードにおいてリチウム多硫化物を溶解させ、溶解された種がアノードに移動することを可能とする能力を有する(すなわち、シャトル効果は依然として重度である);および(c)リチウム金属二次電池のために、ILのほとんどはアノードにおいてリチウム金属と強く反応して、Liを消費し続け、繰り返しの充電および放電の間に電解質それ自体を枯渇させる。これらの要因は、相対的に不良な比容量(特には高電流または高充電/放電速度条件下;それゆえより低い出力密度下において)、低い比エネルギー密度、急速な容量減衰および不良なサイクル寿命に繋がる。さらには、ILは依然として極めて高価である。結果的に、現時点で、商業的に入手可能なリチウムバッテリーは、一次電解質成分としてイオン液体を使用していない。
【0006】
固体状態電解質は、防火および防爆の観点において安全であると一般的に考えられている。固体状態電解質は、有機、無機、有機-無機複合電解質に分けられ得る。しかしながら、有機ポリマー固体状態電解質、例えばポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、およびポリ(アクリロニトリル)(PAN)の伝導性は典型的には低い(<10-5S/cm)。
【0007】
無機固体状態電解質(例えば、ガーネットタイプおよび金属硫化物タイプ)は高い伝導性(約10-3S/cm)を呈し得るが、無機固体状態電解質と電極(カソードまたはアノード)との間の界面インピーダンスまたは抵抗は高い。さらに、伝統的な無機セラミック電解質は非常にもろく、不良なフィルム形成能力および不良な機械的特性を有する。これらの材料は、高い対費用効果で生産することができない。有機-無機複合電解質は、低減した界面抵抗に繋がり得るが、リチウムイオン伝導性および動作電圧は、有機ポリマーの追加に起因して減少し得る。
【0008】
本出願人の研究グループは、第4のタイプの固体状態電解質と考えられ得る準固体状態電解質(QSSE)を以前に開発した。準固体状態電解質のある特定のバリアントにおいて、電解質と電極との間の物理的およびイオン的接触を向上させ、そのため界面抵抗を低減させることを助けるために小量の液体電解質が存在し得る。QSSEの例は以下において開示されている:Hui He,et al.「Lithium Secondary Batteries Containing a Non-flammable Quasi-solid Electrolyte」、米国特許出願第13/986,814号(2013年6月10日);米国特許第9,368,831号(2016年6月14日);米国特許第9,601,803号(2017年3月21日);米国特許第9,601,805号(2017年3月21日);米国特許第9,059,481号(2015年6月16日)。
【0009】
しかしながら、ある特定の液体電解質の存在は、何らかの問題、例えば液体漏出、気体放出(gassing)、および高温に対する低い耐性を引き起こし得る。したがって、これらの課題のすべてまたはほとんどを取り除く新規の電解質システムが必要とされている。
【0010】
それゆえ、本開示の一般的な目的は、既存のバッテリー製造設備と適合性の充電式リチウム電池のための安全な、耐炎性/耐火性の、準固体または固体状態電解質システムを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、アノード、カソード、ならびにアノードおよびカソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む、充電式リチウムバッテリーであって、電解質が、ポリホスファゼンポリマーおよびポリマー中に溶解または分散したリチウム塩を含み、リチウム塩が、組み合わせられたリチウム塩およびポリホスファゼンポリマーの全重量に基づいて0.1%~50%の重量比率を占有する、充電式リチウムバッテリーを提供する。ポリホスファゼンポリマーは、アノードおよび/またはカソードに浸透し、ならびにアノードの内側でアノード活性材料と物理的に接触しており、および/もしくはアノード活性材料に化学的に結合しており、ならびに/またはカソードの内側でカソード活性材料と物理的に接触しており、および/もしくはカソード活性材料に化学的に結合している。ポリホスファゼンポリマーは、典型的にはまた、アノードおよび/またはカソード中の伝導性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子、カーボンナノチューブ、およびグラフェンシートなど)に化学的に結合している。ポリホスファゼンポリマーはまた、集電体(例えば、CuホイルおよびAlホイル)の表面に化学的に結合することができる。それゆえ、ポリホスファゼンポリマーはまた、電極においてバインダーの役割を果たす。
【0012】
一部の実施形態において、電解質は、組み合わせられたリチウム塩、ポリマー、および非水性液体溶媒の全重量に基づいて、ポリマー中に分散した重量で0%~50%(好ましくは0.1%~50%、より好ましくは1%~30%)の非水性液体溶媒をさらに含む。
【0013】
ポリ(オルガノ)ホスファゼンとしても一般的に参照されるポリホスファゼンは、可能な有機置換基の莫大な多様性に起因して独特の特性の広い多様性を示す有機側基で置換されたリン-窒素骨格に基づく無機分子ハイブリッドポリマーのファミリーである。
【0014】
ポリホスファゼンを合成する方法は、ポリホスファゼンの所望されるタイプに依存する。多様な反応性ホスファゼン化合物が潜在的な反応性前駆体材料(モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマー)として利用可能である。本明細書において、反応性ホスファゼン化合物は、化学的に反応することができる(すなわち、共重合を含む、重合、官能基置換、例えば有機もしくは有機金属基でのCl-の置換、および/または架橋を起こすことができる)モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマーを意味することができる。硬化剤は、所望される化学反応(重合、置換、および/または架橋)を可能にする開始剤、触媒、置換基(例えば、有機もしくは有機金属基)、および/または架橋剤を指す。
【0015】
直鎖状ホスファゼンポリマーのための最も広く使用される方法は2工程プロセスに基づく。第1の工程において、例として、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、(NPCl2)3(化学式1)は、密閉系において250℃で加熱されて、典型的には15,000またはより多くの繰り返し単位を有する長鎖の直鎖状ポリマー、[NPCl2]n(または化学式2)に変換される。この反応は以下の反応1において示される:
【0016】
【0017】
第2の工程において、ポリマー中のリンに連結した塩素原子はR1またはR2との反応を通じて有機基により置換されて化学式3を形成し、式中、R1およびR2は有機または有機金属基である(選択され得る有機または有機金属基のタイプは特に制限されない)。好ましくは、R1およびR2は、アルコキシド、アリールオキシド、アミン、または有機金属基などから独立して選択されてもよい。多くの異なる試薬(または置換剤もしくは単純に「置換基」と呼ばれる)がこの高分子置換反応において使用可能であり、それゆえ、多数の異なるポリマーが製造され得る。すべてのこれらのポリマーは本明細書においてポリホスファゼンとして参照される。高分子置換の一部の例が以下において示される(反応2a、2b、および2c):
【0018】
【0019】
ポリホスファゼンポリマーは、骨格-P-N-P-N-P-N-を有する多数の異なる骨格構造を有する広範囲のハイブリッド無機-有機ポリマーを含む。これらの材料のほぼすべてにおいて、2つの有機側基が各々のリン中心に結合している。ホスファゼンポリマーの例は以下を含む:
a)直鎖状ポリマーは式(N=PR1R2)n(式中、R1およびR2は有機である)を有する;
b)小さいホスファゼン環が有機鎖単位により接続されて一緒になったシクロリニアおよびシクロマトリックスポリマー。
c)ブロックコポリマー、スター、樹枝状、またはコームタイプ構造。
【0020】
異なる側基(R)および異なる分子構造を有する700より多くの異なるポリホスファゼンが公知である。
【0021】
議論の目的のために、ポリホスファゼンは2つの主要なクラスに好都合に分けることができ、これらは、側基がリンに酸素(P-OR)または窒素(P-NR2)連結を介して結合したもの、ならびに置換基がリン-炭素結合を通じてリンに直接的に結合したもの、すなわち、ポリ(アルキルホスファゼンおよびポリ(アリールホスファゼン)である。本開示は、準固体または固体電解質中の成分としての両方のタイプのポリホスファゼンを提供する。
【0022】
ブロックコポリマー、有機側鎖を有するグラフトポリマー、および他の進化した構造の作製もまた達成可能であり、これは例えば分岐ポリホスファゼン骨格を有するポリホスファゼン、ポリホスファゼンからの超分子構造、ポリホスファゼンを有するらせん構造、シクロマトリックスポリホスファゼン、およびヘキサクロロ-シクロトリホスファゼンからのデンドリマーである。
【0023】
ある特定の好ましい実施形態において、リチウム塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択される。
【0024】
電解質は、組み合わせられたリチウム塩、ポリホスファゼン、および非水性液体溶媒の全重量に基づいて、ポリホスファゼンポリマー中に分散した重量で0.1%~50%(好ましくは1%~30%)の重量の非水性液体溶媒をさらに含んでもよい。
【0025】
液体溶媒は、フッ素化カーボネート、ハイドロフルオロエーテル、フッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、フッ素化ビニルエーテル、スルホン、スルフィド、ニトリル、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスファゼン、スルフェート、シロキサン、シラン、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、またはその組み合わせから選択されてもよい。内因的に難燃剤であるイオン液体または有機液体が好ましい。
【0026】
例えば、液体溶媒は、フッ素化溶媒、例えばフッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、およびフッ素化ビニルエーテルから選択されてもよい。フッ素化ビニルエステルは、RfCO2CH=CH2およびプロペニルケトン、RfCOCH=CHCH3を含み、式中、Rfは、Fまたは任意のF含有官能基(例えば、CF2-およびCF2CF3-)である。
【0027】
フッ素化ビニルカーボネートの2つの例は以下に与えられる:
【0028】
【0029】
一部の実施形態において、フッ素化カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、DFDMEC、FNPEC、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、その組み合わせから選択され、FEC、DFDMEC、およびFNPECの化学式はそれぞれ以下に示される:
【0030】
【0031】
スルホンベース液体溶媒は、アルキルおよびアリールビニルスルホンまたはスルフィド;例えば、エチルビニルスルフィド、アリルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホキシド、エチルビニルスルホン、アリルフェニルスルホン、アリルメチルスルホン、およびジビニルスルホンを含むが、これらに限定されない。
【0032】
ある特定の実施形態において、スルホンベース液体溶媒は、TrMS、MTrMS、TMS、またはTrMS、MTrMS、TMS、EMS、MMES、EMES、EMEES、もしくはその組み合わせのビニルもしくは二重結合含有バリアントから選択され;それらの化学式は以下に与えられる:
【0033】
【0034】
ニトリルは、ジニトリル、例えば以下の化学式を有するAND、GLN、およびSENから選択されてもよい:
【0035】
【0036】
一部の実施形態において、液体溶媒としてのホスフェート、ホスホネート、ホスファゼン、ホスファイト、またはスルフェートは、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、アルキルホスフェート、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、その組み合わせから選択される。
【0037】
シロキサンまたはシランは、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0038】
電解質中のポリマーは、ポリマー中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アクリルアミド基、アミン基、アクリル基、アクリルエステル基、またはメルカプト基から選択される基を含む架橋された鎖のネットワークを含んでもよい。アミド基は、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0039】
開示されるリチウム電池におけるカソードは、典型的には、カソード活性材料の粒子を含み、および電解質は、カソードに浸透し、実質的にすべてのカソード活性材料粒子と物理的に接触している。
【0040】
一部の好ましい実施形態において、バッテリー電池は、その中に残された液体溶媒を実質的に含有しない(液体モノマーの実質的にすべては重合してポリマーとなっており、重合不可能な液体溶媒は除去される)。しかしながら、(特に前駆体モノマーそれ自体が液体状態にない場合に)電池に液体溶媒を最初に含めて、リチウム塩がリチウムイオンおよびアニオンに解離することを可能にすることが必須である。液体溶媒の大部分(>50%、好ましくは>70%)または実質的にすべては次に重合後に除去される。実質的に0%の液体溶媒を用いる場合、結果としてもたらされる電解質は固体状態電解質である。30%未満の液体溶媒を用いる場合、準固体電解質が得られる。両方は高度に耐炎性である。
【0041】
電解質中の液体溶媒のより低い割合は、有意に低減した蒸気圧および増加した引火点または完全に排除された引火点(検出不可能)に繋がる。典型的には液体溶媒の割合を低減させることにより、結果としてもたらされる電解質について低減したリチウムイオン伝導性が観察される傾向があるが;しかしながら、かなり驚くべきことに、閾値となる液体溶媒比率後に、この傾向は減少または逆転される(リチウムイオン伝導性は、一部の場合において、液体溶媒の低減と共に実際に増加し得る)。
【0042】
一部の実施形態において、電解質は、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される難燃性添加剤をさらに含む。
【0043】
電解質中で、難燃性添加剤は、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料のシェルにより被包された添加剤を含む被包された粒子の形態であってもよく、前記シェルは、閾値温度よりも高い温度に曝露された場合に破壊可能である。
【0044】
ポリマー中の難燃性添加剤の割合は、好ましくは1%~50%、より好ましくは10%~30%である。
【0045】
電解質中のポリビニルホスホネートポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートもしくはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成していてもよい。この第2のポリマーは、アノードおよび/またはカソードに予め混合されてもよい。代替的に、この第2のポリマーは、バッテリー電池への注入に先立って溶液を形成させるために、適切または可能な場合に液体溶媒に溶解されてもよい。
【0046】
ある特定の望ましい実施形態において、電解質は、2nm~30μmの粒子サイズを有する無機固体電解質材料の粒子をさらに含み、無機固体電解質材料の粒子は、ポリマー中に分散されているか、またはポリマーにより化学的に結合されている。無機固体電解質材料の粒子は、好ましくは、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される。
【0047】
本開示の充電式リチウムバッテリーは、リチウム金属二次電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウムイオン硫黄電池、リチウムセレン電池、またはリチウム空気電池であってもよい。このバッテリーは、本明細書に開示されている耐炎性の、安全な、および高性能の電解質を特色とする。
【0048】
充電式リチウム電池は、アノードとカソードとの間に配されたセパレータをさらに含んでもよい。好ましくは、セパレータは、本明細書に開示されている準固体または固体状態電解質を含む。
【0049】
ポリホスファゼンポリマーは最初に、バッテリー電池に注入され、次にその場で電池の内側で硬化(重合および/または架橋)され得る液体モノマー状態であってもよい。
【0050】
代替的に、反応性液体物(必要とされる硬化剤(例えば、開始剤、置換基、および/または架橋剤)と共に、モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマー)は、電極活性材料(例えばカソード活性材料粒子、例えばNCM、NCAおよびリン酸鉄リチウム)、伝導性添加剤(例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張化グラファイトフレーク、またはグラフェンシート)、ならびに任意選択的な難燃剤および/または任意選択的な無機固体電解質の粒子と混合されて、反応性スラリーまたはペーストを形成してもよい。スラリーまたはペーストは次に、場合により集電体(例えばカソード集電体としてのAlホイル)の表面上に支持された、所望される電極形状(例えばカソード電極)にされる。リチウムイオン電池のアノードは、アノード活性材料(例えばグラファイト、Si、SiOなどの粒子)を使用して類似した方式で作られ得る。アノード電極、カソード電極、および任意選択的なセパレータは次に組み合わせられて、バッテリー電池が形成される。電池の内側の反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーは次に、その場でバッテリー電池の内側で重合および/または架橋される。
【0051】
電解質組成物は、カソードの内部構造中に浸透し、カソード中のカソード活性材料と物理的に接触またはイオン的に接触するように、ならびにアノード電極中に浸透して、存在する場合にアノード活性材料と物理的に接触またはイオン的に接触するように設計される。
【0052】
準固体電解質の引火点は、典型的には、有機液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも100度高い。ほとんどの場合において、引火点は200℃より高いか、または引火点は検出され得ない。電解質は単に燃え移ることも点火されることもない。任意の偶発的に引き起こされた炎は数秒よりも長く持続しない。火および爆発の課題が、バッテリー駆動式電動輸送機器が広く認められるための大きな障害となっているという考えを考慮すると、これは非常に意義深い発見である。この新たな技術はEV産業の風景を潜在的に造り直し得る。
【0053】
本開示のさらに別の好ましい実施形態は、カソード活性材料として硫黄またはリチウム多硫化物を有する硫黄カソードを含有する充電式リチウム硫黄電池またはリチウムイオン硫黄電池である。
【0054】
リチウム金属電池(リチウム金属が主要な活性アノード材料である)のために、アノード集電体は、2つの主要な表面を有する金属のホイル、穿孔されたシート、またはフォームを含んでもよく、少なくとも1つの主要な表面は、親リチウム性金属(金属-Li固体溶液を形成する能力を有するか、もしくはリチウムイオンによりウェッタブルな金属)の層、グラフェン材料の層、または両方でコーティングまたは保護されている。金属ホイル、穿孔されたシート、またはフォームは、好ましくは、Cu、Ni、ステンレス鋼、Al、グラフェンコーティングされた金属、グラファイトコーティングされた金属、炭素コーティングされた金属、またはその組み合わせから選択される。親リチウム性金属は、好ましくは、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、その合金、またはその組み合わせから選択される。
【0055】
本開示の電解質を特色とするリチウムイオンバッテリーのために、アノード活性材料の選択に関する制限は特にない。アノード活性材料は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0056】
一部の実施形態において、アノード活性材料は、プレリチウム化されたSi、プレリチウム化されたGe、プレリチウム化されたSn、プレリチウム化されたSnOx、プレリチウム化されたSiOx、プレリチウム化された酸化鉄、プレリチウム化されたV2O5、プレリチウム化されたV3O8、プレリチウム化されたCo3O4、プレリチウム化されたNi3O4、またはその組み合わせを含有し、x=1~2である。
【0057】
セパレータは、本開示の電解質を含んでもよい。ある特定の実施形態において、セパレータは、ポリマー繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、またはその組み合わせを含む。これらの繊維は、リチウムイオンの透過を可能とするが、任意の潜在的に形成されるリチウムデンドライトの透過を可能としないポアがあるような方式で積み重ねられてもよい。これらの繊維は、マトリックス材料中に分散されているか、またはバインダー材料により結合されてもよく、バインダー材料はポリホスファゼンポリマーであってもよい。このマトリックスまたはバインダー材料はセラミックまたはガラス材料を含有してもよい。ポリマー電解質は、これらの繊維を一緒に保持することを助けるマトリックス材料またはバインダー材料として役立ち得る。セパレータは、ガラスまたはセラミック材料(例えば金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物など)の粒子を含有してもよい。
【0058】
充電式リチウム電池は、アルミニウムホイル、炭素もしくはグラフェンコーティングされたアルミニウムホイル、ステンレス鋼ホイルもしくはウェブ、炭素もしくはグラフェンコーティングされた鋼ホイルもしくはウェブ、炭素もしくはグラファイト紙、炭素もしくはグラファイト繊維生地、柔軟なグラファイトホイル、グラフェン紙もしくはフィルム、またはその組み合わせから選択されるカソード集電体をさらに含んでもよい。ウェブは、好ましくは相互接続されたポアまたは貫通したアパーチャを有する、スクリーン様構造物または金属フォームを意味する。
【0059】
本開示はまた、反応性ホスファゼン化合物(モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマー状態)を含む液体媒体中に溶解または分散したリチウム塩ならびに硬化剤(例えば、開始剤、置換基、および/または架橋剤)を含む反応性液体電解質組成物を提供する。反応性ホスファゼン化合物は最初に室温で液体状態であってもよい。電解質組成物は、特に反応性ホスファゼン化合物それ自体が0℃~100℃の温度において液体状態ではない場合に、非水性液体溶媒をさらに含んでもよい。
【0060】
ある特定の好ましい実施形態において、電解質組成物は、(a)液体状態にあるか、または第1の非水性液体溶媒中に溶解した反応性ホスファゼン化合物を含む、第1の溶液;ならびに(b)リチウム塩ならびに硬化剤(例えば、開始剤、置換基、および/または架橋剤)、ならびに第2の非水性液体溶媒を含む、第2の溶液を含み;電解質を形成させるために第1の溶液および第2の溶液が混合される前に、第1の溶液および第2の溶液は別々に貯蔵される。
【0061】
第1の非水性液体溶媒は、第2の非水性液体溶媒と同じまたは異なるものであってもよい。いずれかの液体溶媒は、このセクションにおいて上記に議論されるものから選択されてもよい。
【0062】
電解質組成物中のリチウム塩は、このセクションにおいて上記に列記されるものから選択されてもよい。
【0063】
ある特定の実施形態において、開始剤は、アゾ化合物(例えば、アゾジイソブチロニトリル、AIBN)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、ベンゾイルペルオキシド tert-ブチルペルオキシドおよびメチルエチルケトンペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化水素、ドデカノイル(dodecamoyl)ペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、またはその組み合わせから選択される。これらの開始剤は、リチウム塩と組み合わせて使用されてもよく、またはそうでなくてもよい。開始剤はまた、n-C4H9Li、(C5H5)2Mg、(i-C4H9)3Al、カルベニウム塩、CF3S03CH3、CF3S03C2H5、(CF3SO2)O、Ph3C+AsF6
-、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよびカンファーキノン(camphaquinone)、ホスファイト、カチオン性開始剤、酸、リチウム塩、またはその組み合わせから選択されてもよい。リチウム塩は、以上の段落中のリストから選択されてもよい。他のタイプのリチウム塩もまた使用され得る。
【0064】
本開示はまた、非水性液体溶媒、リチウム塩、反応性ホスファゼン化合物、ならびに液体溶媒中に溶解した硬化剤(例えば開始剤、触媒、置換基、および/または架橋剤)を含む、反応性液体電解質組成物を提供する。この電解質組成物において、非水性液体溶媒、リチウム塩、およびホスファゼン化合物は、このセクションにおいて上記に議論されるものから選択されてもよい。この反応性液体電解質組成物は、その中に分散した難燃剤および/または無機固体電解質の粒子をさらに含んでもよい。
【0065】
本開示はまた、開示される充電式リチウム電池を製造する方法であって、(a)アノード、任意選択的なセパレータ層、カソード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;(b)反応性液体電解質組成物を電池に導入することであって、反応性液体電解質組成物が、反応性ホスファゼン化合物(すなわちモノマー、オリゴマー、または反応性ポリマー形態)、任意選択的な非水性液体溶媒、反応性モノマーもしくはオリゴマー中に溶解しているか、または液体溶媒中に溶解したリチウム塩、硬化剤(例えば開始剤、触媒、置換基、および/または架橋剤)を少なくとも含む、導入すること;ならびに(c)反応性電解質組成物を部分的にまたは全体的に硬化(例えばモノマーもしくはオリゴマーの重合、側基置換、および/または架橋の惹起)させて、ホスファゼン化合物の重量で少なくとも30%(好ましくは>50%、さらに好ましくは>70%、最も好ましくは>99%)が化学的に反応した(例えば、モノマーまたはオリゴマーが、重合、置換、または架橋された)準固体または固体状態電解質を得ることを含む、方法を提供する。
【0066】
この方法において、反応性液体電解質組成物は第2の液体溶媒をさらに含んでもよく、および工程(c)は、第2の液体溶媒を重合させないか、またはモノマーもしくはオリゴマーと比較して異なる程度まで第2の液体溶媒を重合させる。
【0067】
本開示は、充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、および反応性電解質組成物を混合してカソードを形成させることであって、反応性電解質組成物が、反応性ホスファゼン化合物を含む反応性液体媒体中に溶解または分散したリチウム塩および開始剤または硬化剤(開始剤、置換基、もしくは架橋剤)を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソードおよびアノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)工程(C)の前または後に、モノマーまたはオリゴマーを部分的にまたは完全に重合させて、反応性ホスファゼン化合物の重量で少なくとも30%が反応した(重合、置換、または架橋された)充電式リチウム電池を製造することを含む、方法をさらに提供する。
【0068】
この方法において、アノードは、類似した方式において作製されてもよく、工程(B)は、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、およびリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含んでもよく、反応性添加剤は、ホスファゼン化合物および硬化剤(開始剤、置換基、または架橋剤)を少なくとも含み、ならびに方法は、工程(C)の前または後に、モノマーまたはオリゴマーを重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することをさらに含む。
【0069】
方法において、工程(A)は、カソード中またはアノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含んでもよい。
【0070】
工程(D)の後に、第2の液体溶媒を電池に注入する工程(E)を実行することを選択してもよい。この第2の液体溶媒は重合可能または重合不可能であってもよい。
【0071】
重合および/または架橋の手順は、熱、UV、高エネルギー放射線、またはその組み合わせに反応性添加剤を曝露することを含んでもよい。高エネルギー放射線は、電子線、ガンマ放射線、X線、中性子放射線などから選択されてもよい。電子線照射は特に有用である。
【0072】
本開示はまた、アノード活性材料を含むアノードであって、アノード活性材料が、(伝導性充填剤および任意選択的なバインダーと共に)本開示の電解質組成物と混合されており、ならびに硬化で電解質組成物と物理的に接触しているか、または電解質組成物に化学的に結合している、アノードを提供する。
【0073】
開示されるのはまた、カソード活性材料の粒子を含むカソードであって、カソード活性材料の粒子が、(伝導性充填剤および任意選択的なバインダーと共に)電解質組成物と混合されており、ならびに硬化で電解質組成物と物理的に接触しているか、または電解質組成物に化学的に結合している、カソードである。
【0074】
本開示のこれらおよび他の利点および特色は、以下のベストモードの実施および実例的な実施例の記載と共により明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1(A)】
図1(A)は、本開示の一部の実施形態による実質的に固体状態電解質を含むリチウム金属バッテリーを製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図1(B)】
図1(B)は、本開示の一部の実施形態による反応性電解質組成物を製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図1(C)】
図1(C)は、本開示の一部の実施形態による実質的に固体状態電解質を含むリチウム金属バッテリーを製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図1(D)】
図1(D)は、本開示の一部の実施形態による実質的に固体状態電解質を含むリチウム金属バッテリーを製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図2(A)】
図2(A)は、本開示の一部の実施形態によるアノードレスリチウム金属電池(生産時または放電された状態)の構造。
【
図2(B)】
図2(B)は、本開示の一部の実施形態によるアノードレスリチウム金属電池(充電された状態)の構造。
【発明を実施するための形態】
【0076】
詳細な説明
本開示は、リチウムイオン電池またはリチウム金属電池の様々なタイプのいずれかであり得る、安全なおよび高性能のリチウムバッテリーを提供する。高い程度の安全性は、高度に耐炎性のおよび火を引き起こすことも火を持続させることもなく、それゆえ爆発の危険を課さない新規のおよび独特の電解質によりこのバッテリーに付与される。本開示は、20年よりも長きにわたりリチウム金属およびリチウムイオン産業を悩ませてきたまさに最も決定的な課題を解決した。
【0077】
背景技術のセクションにおいて既に指し示したように、既存のバッテリー製造設備と適合性の、充電式リチウム電池のための安全な、非可燃性の、しかし注入可能な準固体電解質(または実際的に固体状態電解質)システムに対する強い必要性が存在する。従来の固体状態電解質バッテリーは、典型的には、既存のリチウムイオンバッテリー製造設備または方法を使用して製造され得ないことは当技術分野において周知である。
【0078】
本開示は、アノード、カソード、ならびにアノードおよびカソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む、充電式リチウムバッテリーであって、電解質が、ポリホスファゼンポリマーおよびポリマー中に溶解または分散したリチウム塩を含み、リチウム塩が、組み合わせられたリチウム塩およびポリホスファゼンポリマーの全重量に基づいて0.1%~50%の重量比率を占有する、充電式リチウムバッテリーを提供する。ポリホスファゼンポリマーは、アノードおよび/またはカソードに浸透し、ならびにアノードの内側でアノード活性材料と物理的に接触しており、および/もしくはアノード活性材料に化学的に結合しており、ならびに/またはカソードの内側でカソード活性材料と物理的に接触しており、および/もしくはカソード活性材料に化学的に結合している。ポリホスファゼンポリマーは、典型的にはまた、アノードおよび/またはカソード中の伝導性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子、カーボンナノチューブ、およびグラフェンシートなど)に化学的に結合している。ポリホスファゼンポリマーはまた、集電体(例えば、CuホイルおよびAlホイル)の表面に化学的に結合することができる。それゆえ、ポリホスファゼンポリマーはまた、電極においてバインダーの役割を果たす。
【0079】
好ましくは、ポリホスファゼンポリマーは、ポリマー鎖の間の空間に浸透し、ポリマー鎖により適所に保持される非水性溶媒(有機またはイオン液体溶媒)を含浸している。有機液体は好ましくは難燃性溶媒から選択される。
【0080】
狭い群のポリホスファゼンポリマー(すなわち、エチレンオキシド側鎖またはメトキシエトキシエトキシ置換されたホスファゼンをグラフトされた、-(N=PR2)-単位を有する直鎖状ポリマー)が固体電解質膜として調べられたことが留意され得る:N.Kaskhedikar,M.Burjanadze,Y.Karatas,H.D.Wiemhofer,Solid State Ionics,177(2006)3129-3134;S.Jankowsky,M.M.Hiller,H.-D.Wiemhofer,Journal of Power Sources 253(2014)256-262。しかしながら、これらのポリマーは、アノードとカソードとの間にセパレータとして配される固体電解質膜中に作られた。これらのポリマーは、アノードの内側に存在してアノード活性材料(例えば、グラファイト粒子)と接触するものではなく、またアノード活性材料の粒子に化学的に結合していない。追加的に、これらのポリマーは、カソードの内側に存在してカソード活性材料(例えば、リチウム遷移金属酸化物粒子)と接触するものではなく、またカソード活性材料の粒子に化学的に結合していない。これらのポリマーは、アノード集電体(例えば、Cuホイル)ともカソード集電体(例えば、Alホイル)とも接触しておらず;反対に、これらのポリマー膜はバッテリー電池の中央にあり、カソードからアノードを電子的に分離している。
【0081】
ポリ(オルガノ)ホスファゼンとしても一般的に参照されるポリホスファゼンは、可能な有機置換基の莫大な多様性に起因して非常に異なる特性を示す有機側基で置換されたリン-窒素骨格に基づく無機分子ハイブリッドポリマーのファミリーである。ポリホスファゼンを合成する方法は、ポリホスファゼンの所望されるタイプに依存する。直鎖状ポリマーのための最も広く使用される方法は2工程プロセスに基づく。第1の工程において、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、(NPCl2)3(化学式1)は、密閉系において250℃で加熱されて、典型的には15,000またはより多くの繰り返し単位を有する長鎖の直鎖状ポリマー、[NPCl2]n(または化学式2)に変換される。この反応は以下の反応1において示される:
【0082】
【0083】
第2の工程において、ポリマー中のリンに連結した塩素原子はR1またはR2との反応を通じて有機基により置換されて化学式3を形成し、式中、R1およびR2は、アルコキシド、アリールオキシド、アミン、または有機金属試薬などから独立して選択されてもよい。多くの異なる試薬がこの高分子置換反応において使用可能であり、それゆえ、多数の異なるポリマーが製造され得る。すべてのこれらのポリマーは本明細書においてポリホスファゼンとして参照される。高分子置換の一部の例は以下において示される(反応2a、2b、および2c):
【0084】
【0085】
ポリホスファゼンポリマーは、骨格P-N-P-N-P-N-を有する多数の異なる骨格構造を有する広範囲のハイブリッド無機-有機ポリマーを含む。これらの材料のほぼすべてにおいて、2つの有機側基が各々のリン中心に結合している。ホスファゼンポリマーの例は以下を含む:
(a)直鎖状ポリマーは式(N=PR1R2)n(式中、R1およびR2は有機である)を有する;
(b)小さいホスファゼン環が有機鎖単位により接続されて一緒になったシクロリニアおよびシクロマトリックスポリマー。
(c)ブロックコポリマー、スター、樹枝状、またはコームタイプ構造。
【0086】
異なる側基(R)および異なる分子構造を有する700より多くの異なるポリホスファゼンが公知である。
【0087】
議論の目的のために、ポリホスファゼンは2つの主要なクラスに好都合に分けることができ、これらは、側基がリンに酸素(P-OR)または窒素(P-NR2)連結を介して結合したもの、ならびに置換基がリン-炭素結合を通じてリンに直接的に結合したもの、すなわち、ポリ(アルキルホスファゼンおよびポリ(アリールホスファゼン)である。本開示は、準固体または固体電解質中の成分としての両方のタイプのポリホスファゼンを提供する。
【0088】
トリクロロホスホランイミン(Cl3PNSiMe3)のリビングカチオン重合を介して[NPCl2]nの制御された重合を達成することもまた可能である。これは、2当量のPCl5とのCl3PNSiMe3の反応を介して室温の溶液中で実行可能であり、対イオンとしてPCl6
-を有するカチオン性種[Cl3PNPCl3]+を与える(反応3a)。この種は、さらなる当量のCl3PNSiMe3の添加で重合を開始させることができ、「リビング」カチオン性末端基を有するポリマー鎖に繋がる。ポリマーに加えられたモノマー分子毎に1当量のClSiMe3が副生成物として形成され、それによりこの重合は、(ステップ成長機序を有するほとんどの重縮合反応と比較して)鎖成長機序を介して起こる重縮合反応の希少な例となる。拡大する鎖当たりで1つのカチオン性開始剤を用いる、リビング鎖成長機序は、フィードモノマーと開始剤との比を介する分子量の制御を可能とするだけでなく、狭い多分散性指数を有するポリ(ジクロロ)ホスファゼンにも繋がる。反応時間は、所望されるポリマー鎖長、モノマー濃度および対イオンの性質に依存して変動し得るが、Cl3PNSiMe3は、ジクロロメタンにおいて相対的に急速に数時間以内に完全に消費されることが観察される。
【0089】
リビングカチオン重合は、高純度の大量のモノマーCl3PNSiMe3を要求し、これは、通常は、PCl3をLiN(SiMe3)2と反応させてCl2PN(SiMe3)2を形成させ、続いて塩素化剤SO2Cl2での酸化によりCl3PNSiMe3を得ることを介して作製される。ポリホスファゼンをバッテリー電池に組み込むために、本発明者らは、Cl3PNSiMe3のその場作製および重合を介して直接的に[NPCl2]nを製造する方法を発明した。この経路は、モノマーの真空蒸留を回避するので、バッテリーにおけるポリホスファゼンのアップスケーリングおよび産業的作製を促し得る。
【0090】
Cl3PNSiMe3のリビング重合のためのカチオン性開始剤を形成させるためにPCl5が使用される場合(反応3a)、移動するカチオン性拡大部位の能力に起因してある程度の二方向性成長が観察され得る。さらには、両方の末端基は塩素原子の高分子置換後に同一であり、そのためより大きい構造を有するポリマーの作製の観点においてオプションを限定する。しかしながら、一方向性成長はR3PNSiMe3タイプ部分の使用を介して達成され得る(反応3b)。2当量のPCl5とのそのようなホスホランイミンの反応は、同一の機序を介してCl3PNSiMe3の重合を開始させる能力を有するカチオン性種を与える。R基、典型的にはフェニル基は、開始性種の1つの末端を有効に遮断して、重合が1つの方向のみに進行することを強制し、およびより重要なことに、定義された鎖末端を有するポリマーを結果としてもたらす。
【0091】
【0092】
[NPCl2]n前駆体経路を通過することなく、ポリ(オルガノ)ホスファゼンを直接的に合成することもまた可能である。例えば、N-メチルイミダゾールの存在下でフッ化物イオン開始剤とのN-シリルホスホランイミンのアニオン重合を実行することができる(反応4):
【0093】
【0094】
この重合は、リビングの特徴を有し、125℃で1.3~2.3の多分散性指数を有するポリマーの作製を可能にする。類似したN-シリルホスホランイミンの重合は、良好なリビング重合動態を有する触媒量のN-メチルイミダゾールを用いてH2Oにより開始させることができ、これはポリ(ビストリフルオロエトキシホスファゼン)の堅牢な作製を可能にする。同じ方法に従って、より広い範囲のモノマーから分子量および多分散性の優れた制御と共にポリ(オルガノ)ホスファゼンを作製することができる。
【0095】
有機置換基がP-C結合を介して直接的に結合したポリ(アルキル/アリール)ホスファゼン、[NPR2]nはまた、直接的な重合経路を介して作製され得る。これは、(CF3CH2O)R2PQNSiMe3タイプモノマーの熱(100~180℃)凝縮により最初に開発され、カチオン性開始剤のためにおよびタイプBrR2PQNSiMe3のモノマーを用いて使用され得る。有機ホスファイト((MeO)3P)により開始されるハロ(アルキル/アリール)ホスホランイミン(XR2PNSiMe3、X=BrまたはCl)の重合は、周囲温度でのポリ(アルキル/アリール)ホスファゼンへの有効な経路であり得る(反応5)。
【0096】
【0097】
追加的に、そのようなホスホランイミンは、[NPCl2]nのカチオン重合と組み合わせることができ(反応6)、そのためブロックコポリマーの作製を可能とし得る:
【0098】
【0099】
ブロックコポリマー、有機側鎖を有するグラフトポリマー、ならびに他の進化した構造、例えば分岐ポリホスファゼン骨格を有するポリホスファゼン、ポリホスファゼンからの超分子構造、ポリホスファゼンを有するらせん構造、シクロマトリックスポリホスファゼン、およびヘキサクロロ-シクロトリホスファゼンからのデンドリマーの作製もまた達成され得る。
【0100】
ポリホスファゼンポリマーは、好ましくは、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、またはその組み合わせから選択される反応性前駆体モノマー、オリゴマー、またはポリマーから合成される:
【0101】
【0102】
これらの式において、R、R1、およびR2は、有機基(例えばアルコキシド、アリールオキシド、およびアミン基)ならびに有機金属基などから独立して選択されてもよい。
【0103】
重合可能なホスファゼン誘導体または化合物の望ましい基は、一般式:[-NP(A)a(B)b-]x(化学式5)(式中、基AおよびBは、--O--、--S--、--NH--、または--NR--を通じてリン原子に結合しており、RはC1~C6アルキル基であり;Aは、一般式Q--O--CR’=CHR’’のビニルエーテル基および一般式:
【0104】
【0105】
のスチレンエーテル基のうちの少なくとも1つを含有し、R’およびR’’のうちの少なくとも1つは水素またはC1~C10アルキル基であり;Bは、O、S、およびNのうちの少なくとも1つを任意選択的に含有する、ならびに少なくとも1つの反応性基を任意選択的に含有する反応性または非反応性炭化水素基であり;Qは、O、S、およびNのうちの少なくとも1つを任意選択的に含有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式炭化水素基のうちの1つであり;aは0より大きい数であり;bは0または0より大きい数であり;a+b=2であり、xは少なくとも2であるすべての数を表し、ならびにzは0または1を表す)のものである。
【0106】
さらに望ましくは、Aは、一般式:
【0107】
【0108】
のものであり、およびB=Z’-YHであり、その結果、ホスファゼン誘導体は、一般式:
【0109】
【0110】
のものであり、式中、ZおよびZ’は同じまたは異なり、ならびに各々のeは、--O--、--S--、--NH--、または--NR--を表し、RはC1~C6アルキルであり;Qは、O、S、およびNのうちの少なくとも1つを任意選択的に含有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式炭化水素基のうちの少なくとも1つであり;YHは、O、S、およびNのうちの少なくとも1つを任意選択的に含有する、ならびにビニルエーテル基またはスチレンエーテル基とは異なる反応性基を任意選択的に含有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式炭化水素基のうちの少なくとも1つ(at last one)を表し;yは0または1であり;xは2~20のすべての数であり;ならびにa、b、R’およびR’’は上記の通りに定義される。
【0111】
本開示のホスファゼン(ホスファゼン誘導体またはホスファゼン化合物としても一般的に参照される)は、カチオン的に開始されるプロセスにより硬化可能であり、これは多くの利点を有する。本開示のホスファゼン誘導体は、1つの分子中に2つもしくはより多くの異なるビニルエーテル基ならびに/またはビニルエーテル基およびスチレンエーテル基の両方を含有することができる。これらのホスファゼン誘導体は、少なくともビニルエーテル基により置換されている場合にカチオン的に重合させることができ、これらのホスファゼンの重合は酸により開始させることができる。ホスファイトまたは他のカチオン性開始剤が使用されてもよい。それらは以下の利点のうちの1つまたは複数を有する:ホスファゼンの完全な置換およびそのため塩素の非存在が高い収率で達成され得ること;酸素が本開示のホスファゼン誘導体の硬化を阻害しないこと;通常はより低い粘性であり、したがってドライバッテリー電池への注入のためにより好適であること。
【0112】
一部の好ましい実施形態において、[-NP(A)a(B)b-]x(化学式5)として指定される重合可能なホスファゼン誘導体において、AおよびBは互いと同一または異なり、ならびにアクリル基、メタクリル基、ビニル基もしくはアリル基を含有する重合硬化性基、または、水素原子、ハロゲン原子、フェノキシ基、ハロゲン化フェノキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルアミノ基もしくはメルカプト基を含む、非重合硬化性基を独立して表すが、但し、AおよびBの少なくとも1つは重合硬化性基であり;aおよびbは独立して各々0または0より大きい整数であるが、但しaおよびbの和は2であり;nは3またはより大きい整数である。
【0113】
この一般式[-NP(A)a(B)b-]xにおいて、参照記号AおよびBにより参照される重合硬化性基は、基が、加熱と共にまたは紫外光、電子線、もしくは他の形態の高エネルギー放射線への曝露で重合可能な不飽和連結を備えている限り、いかなる特定の基にも制限されず、アクリル基、メタクリル基、ビニル基またはアリル基を含有する基を含む。好ましいものは、硬化速度の観点からアクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基である。
【0114】
この一般式において、参照記号AおよびBにより参照される非重合硬化性基は、水素原子、ハロゲン原子、フェノキシ基、ハロゲン化フェノキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルアミノ基またはメルカプト基を含むことができる。
【0115】
難燃性を向上させるために、以下の一般式:-OCH2(CF2)mZ1(式中、mは1~4の整数であり;Z1は水素原子もしくはフッ素原子である)により表されるか、または以下の一般式:-OCH(CF3)2により表されるようなフッ素含有基が非重合基として導入されてもよい。
【0116】
フッ素含有基を導入する能力を有するフッ化物は、例えば、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール、および1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールを含み得る。
【0117】
本開示のある特定の実施形態によれば、上記の一般式において参照記号Aおよび/またはBにより表される基は、好ましくは、以下の化学式6:
【0118】
【0119】
(式中、Rは、1~12個の炭素原子を有するアルキレン基であり;Zは水素原子またはメチル基である)により表される基である。一般式において、参照記号Rにより参照されるアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を含んでもよく、エチレン基は好ましいアルキレン基である。
【0120】
上記の化学式(6)により表される基の代表的な例は、例えば、メタクリレート、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、5-ヒドロキシペンチルメタクリレート、6-ヒドロキシ-3-メチルヘキシルメタクリレート、5-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、3-ヒドロキシ-2-t-ブチルプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルヘキシルメタクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピルメタクリレートおよび12-ヒドロキシドデシルメタクリレートのヒドロキシ基から水素原子を除去することにより取得可能な残基(以下においてメタクリレート残基として参照されることがある);ならびにアクリレート、例えば2-ヒドロキシルエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、5-ヒドロキシペンチルアクリレート、6-ヒドロキシ-3-メチルヘキシルアクリレート、5-ヒドロキシヘキシルアクリレート、3-ヒドロキシ-2-t-ブチルプロピルアクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルヘキシルアクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピルアクリレートおよび12-ヒドロキシドデシルアクリレートのヒドロキシ基から水素原子を除去することにより取得可能な残基(以下においてアクリレート残基として参照されることがある)を含み得る。好ましいものは、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート残基および2-ヒドロキシルエチルアクリレート残基である。
【0121】
ヒドロキシルアルキルアクリレート残基とのヒドロキシルアルキルメタクリレート残基の比較の結果として、ヒドロキシルアルキルアクリレート残基は硬化速度の観点でより好ましい。上記の化学式(5)により表される硬化性ホスファゼン化合物は、参照記号nが3もしくはより大きい整数、好ましくは3~18である化合物、および、より好ましくは、nが3もしくは4である環状化合物、またはその混合物であってもよい。
【0122】
硬化性ホスファゼン化合物は、公知の方法により作製されてもよい。例えば、2-ヒドロキシルエチルメタクリレートとのヘキサクロロシクロトリホスファゼンの反応は、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンの塩素原子の一部またはすべてが2-ヒドロキシルエチルメタクリレート残基により置換されたホスファゼン化合物をもたらす。この場合、すべての塩素原子が置換されることが好ましいが、塩素原子の一部は非置換のままであることが可能である。この反応において、第三級アミンを使用することが有利であり、その理由は、それは塩化水素を除去する反応を促すことができるからである。そのような第三級アミンは、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンおよびピリジンを含み得る。最も好ましいものはピリジンである。
【0123】
反応は、通常は有機溶媒中で実行されてもよく、有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、シクロヘキサン、塩化メチレンもしくはテトラヒドロフランまたはその混合物を含んでもよい。
【0124】
ホスファゼン化合物の作製用の出発材料として使用されるクロロホスファゼン化合物は、好ましくは、ジクロロホスファゼンのトリマー、すなわち、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、そのテロマー、すなわち、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、またはそのオリゴマーを含んでもよく、その理由は、そのトリマー、テロマーまたはオリゴマーを使用することにより得られるホスファゼン化合物は、(ホスファゼン化合物を硬化させることにより取得可能な)最終電解質製造物において架橋密度を容易に制御することができるからである。
【0125】
本開示の一部の実施形態によるその場硬化性樹脂組成物は、本明細書において上記されている硬化性ホスファゼン化合物の中でも特に、ペンタエリトリトールアクリレート化合物および/またはビス(4-アクリルオキシジアルコキシフェニル)アルカン化合物を含有する。ペンタエリトリトールアクリレート化合物の例は、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートまたはジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを含む。これらの化合物の中で、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、およびジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートは好ましい。ペンタエリトリトールアクリレート化合物は、単独でまたはその組み合わせで使用されてもよい。好ましくは、ペンタエリトリトールアクリレート化合物は、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートとのジペンタエリトリトールヘキサアクリレートの混合物である。
【0126】
ペンタエリトリトールアクリレート化合物は、例えば、ペンタエリトリトールをアクリル酸と反応させることにより得られ得る。さらには、これらのペンタエリトリトールアクリレート化合物の中で、容易に入手可能な0.3~0.5モルのジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを含有するジペンタエリトリトールヘキサアクリレートの混合物を使用することが硬化性の観点で好ましい。
【0127】
硬化剤は、好ましくは、例えば、光重合開始剤からのもの、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、過酸化ベンゾイル、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよびカンファーキノンであってもよい。これらの硬化剤は、単独でまたはその組み合わせで使用されてもよい。それらは、重量で100部の硬化性樹脂組成物に対して通常は重量で0.05部~10.0部の範囲に及ぶ量において使用され得る。
【0128】
硬化性樹脂組成物が、上昇温度での加熱により硬化されるか、または周囲温度で硬化される場合、過酸化物化合物、アミン化合物またはその混合物を重合開始剤として使用することが好ましい。過酸化物化合物の代表的な例は、過酸化ベンゾイル、P-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシアセテート、ジアセテートまたはt-ブチルペルオキシベンゾエートを含む。アミン化合物の代表的な例として、例えば、N,N-ジエタノール-p-トルイジン、ジメチル-p-トルイジン、p-トルイジン、メチルアミン、t-ブチルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジニトロジフェニルアミン、o-ニトロアニリン、p-ブロモアニリンまたは2,4,6-トリブロモアニリンが挙げられ得る。それらは、単独でまたはその組み合わせで、および重量で100部の硬化性樹脂組成物に対して通常は重量で0.05部~10.0部、好ましくは重量で0.1~6.0部の範囲に及ぶ量で使用されてもよい。
【0129】
ある特定の好ましい実施形態において、リチウム塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択される。
【0130】
電解質は、組み合わせられたリチウム塩、ポリホスファゼンポリマー、および非水性液体溶媒の全重量に基づいて、ポリホスファゼンポリマー中に分散した重量で0.1%~50%(好ましくは1%~30%)の重量の非水性液体溶媒をさらに含んでもよい。この液体溶媒は、存在する場合に、ポリマー鎖の間の場所に保持され、それゆえ、流れることも、漏出することも、容易に蒸発されることもない。
【0131】
液体溶媒は、フッ素化カーボネート、ハイドロフルオロエーテル、フッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、フッ素化ビニルエーテル、スルホン、スルフィド、ニトリル、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスファゼン、スルフェート、シロキサン、シラン、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、イオン液体溶媒、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0132】
バッテリー電池に注入されてから反応性ホスファゼン化合物を重合させる(または高分子置換および/もしくは架橋を実行する)ことができることは独特に有利である。そのような新規の戦略を用いて、容易に液体溶媒(存在する場合)をポリマー鎖のマトリックス中に封入するか、または一斉に液体溶媒を完全に排除することができる。このアプローチはまた、固体状態電解質が電極活性材料の表面を湿潤させることができないという問題、およびポリマーが完全に重合してからバッテリーに固体電解質を組み込むという課題を排除する。液体モノマーもしくはオリゴマー、またはその中に溶解したモノマー、オリゴマー、もしくは反応性ポリマー(置換、架橋、および/もしくは共重合を起こす能力を有する)を含有する溶液は、モノマー/オリゴマーが重合、置換、架橋されるか、または溶媒が除去される前にアノード活性材料またはカソード活性材料を湿潤させるために作用する。これは意義深い有用性上の価値を有し、その理由は、有機溶媒のほとんどは、揮発性および可燃性であることが公知であり、火および爆発の危険性を課すからである。
【0133】
重合、置換、および/または架橋で、電解質は、以下の非常に望まれているおよび有利な特色:(i)液体電解質により一般的に享受されるが従来の固体状態電解質によっては享受されない良好な電解質-電極接触および界面安定性(最小の固体電極-電解質界面インピーダンス);(ii)バッテリー電池製造の良好な加工可能性および容易性;(iii)炎および火に対する高度な耐性を有する準固体または実質的に固体状態電解質となる。ポリマーは、好ましくはおよび典型的には、典型的には室温で10-8S/cm~10-2S/cmのリチウムイオン伝導性を有するポリマーを含む。
【0134】
ある特定の実施形態において、充電式リチウム電池は、
(a)(任意選択的な伝導性添加剤および任意選択的な樹脂バインダーと共に)カソード活性材料ならびにカソード活性材料を支持する任意選択的なカソード集電体(例えばAlホイル)を有するカソード;
(b)アノード集電体上に支持されたアノード活性材料を有するか、または有しない、アノード集電体を有するアノード;(電池が作られたときならびに電池が充電および放電され始める前に従来のアノード活性材料、例えばグラファイト、Si、SiO、Sn、および変換タイプアノード材料、ならびにリチウム金属が電池に存在しない場合、バッテリー電池は「アノードレス」リチウム電池として一般的に参照されることが留意され得る);
(c)アノードおよびカソードを電子的に分離する任意選択的な多孔性セパレータ(またはリチウムイオン透過膜);ならびに
(d)ホスファゼン化合物に由来する鎖を含むポリホスファゼンポリマーおよびポリマー中に溶解または分散したリチウム塩を含む、電解質
を含む。
【0135】
一部の好ましい実施形態において、バッテリー電池は、要求される化学反応(例えば重合、置換、および/または架橋)が完了した後のバッテリー電池の中に液体溶媒を実質的に含有しない。しかしながら、電池に液体モノマー、液体オリゴマー、または液体溶媒(その中に溶解したモノマー、オリゴマー、または反応性ポリマーを有する)を最初に含めて、リチウム塩がリチウムイオンおよびアニオンに解離することを可能にすることが必須である。液体溶媒(特には有機溶媒)の大部分(>50%、好ましくは>70%)または実質的にすべては次に、硬化の直前または後に除去される。実質的に0%の液体溶媒を用いる場合、結果としてもたらされる電解質は固体状態電解質である。30%未満の液体溶媒を用いる場合、準固体電解質が得られる。両方は高度に耐炎性である。
【0136】
この液体溶媒の存在は、重合した電解質にある特定の所望される特性、例えばリチウムイオン伝導性、難燃性、電極(アノードおよび/またはカソード)に浸透してアノード活性材料および/またはカソード活性材料の表面を適切に湿潤させる電解質の能力を付与するように設計される。
【0137】
望ましい液体溶媒(好ましくは100℃よりも低い、より好ましくは50℃よりも低い、最も好ましくは25℃よりも低い融点を有する)は、フッ素化溶媒;例えば、フッ素化ビニルカーボネート、フッ素化エステル、フッ素化ビニルエステル、およびフッ素化ビニルエーテルを含む。フッ素化ビニルエステルは、RfCO2CH=CH2およびプロペニルケトン、RfCOCH=CHCH3を含み、式中、Rfは、Fまたは任意のF含有官能基(例えば、CF2-およびCF2CF3-)である。
【0138】
フッ素化ビニルカーボネートの2つの例は以下に与えられる:
【0139】
【0140】
一部の実施形態において、フッ素化カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、DFDMEC、FNPEC、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、またはメチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)から選択され、FEC、DFDMEC、およびFNPECの化学式はそれぞれ以下に示される:
【0141】
【0142】
液体溶媒としての望ましいスルホンは、アルキルおよびアリールビニルスルホンまたはスルフィド;例えば、エチルビニルスルフィド、アリルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホキシド、エチルビニルスルホン、アリルフェニルスルホン、アリルメチルスルホン、およびジビニルスルホンを含むが、これらに限定されない。
【0143】
【0144】
ある特定の実施形態において、液体溶媒としてのスルホンは、TrMS、MTrMS、TMS、またはTrMS、MTrMS、TMS、EMS、MMES、EMES、EMEES、もしくはその組み合わせのビニルもしくは二重結合含有バリアントから選択され;それらの化学式は以下に与えられる:
【0145】
【0146】
液体溶媒としてのまたは液体溶媒への添加剤としてのニトリルは、ジニトリル、例えばAND、GLN、SEN、またはその組み合わせから選択されてもよく、それらの化学式は以下に与えられる:
【0147】
【0148】
一部の実施形態において、液体溶媒は、ホスフェート、アルキルホスホネート、ホスファゼン、ホスファイト、またはスルフェート;例えば、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、アルキルホスフェート、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、その組み合わせ、または1,3-プロパンスルトン(PS)もしくはプロペンスルトン(PES)との組み合わせから選択される。ホスフェート、アルキルホスホネート、またはホスファゼンは以下から選択されてもよい:
【0149】
【0150】
(式中、R=H、NH2、またはC1~C6アルキル)。
【0151】
開示される電解質は最初に、反応性ホスファゼン化合物(モノマー、オリゴマー、または反応性ポリマー)を含む反応性液体媒体中に溶解または分散したリチウム塩および開始剤、置換基、コモノマー、または架橋剤を含む、反応性液体電解質組成物の形態であってもよい。
【0152】
ある特定の好ましい実施形態において、電解質組成物は、(a)液体状態にあるか、または第1の非水性液体溶媒中に溶解した反応性ホスファゼン化合物を含む、第1の溶液;ならびに(b)開始剤(必要な場合に、触媒、加速剤(accelerator)、促進剤(promoter)などを含む)、置換基、または架橋剤、リチウム塩、および第2の非水性液体溶媒を含む、第2の溶液を含み;電解質を形成させるために第1の溶液および第2の溶液が混合される前に、第1の溶液および第2の溶液は別々に貯蔵される。第1の非水性液体溶媒は、第2の非水性液体溶媒と同じまたは異なるものであってもよい。
【0153】
反応性液体電解質組成物は、アミド基、例えばN,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、またはその組み合わせから選択される硬化剤(架橋剤または共重合モノマー)をさらに含んでもよい。一部の実施形態において、架橋剤は、分子中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アクリルアミド基、アミン基、アクリル基、アクリルエステル基、またはメルカプト基から選択される少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含んでもよい。ある特定の実施形態において、架橋剤は、フェニレン基、ポリ(ジエタノール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(ジエタノール)ジメチルアクリレート、またはポリ(エチレングリコール)ジアクリレートから選択される。
【0154】
開始剤または共開始剤は、アゾ化合物(例えば、アゾジイソブチロニトリル、AIBN)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、ペルフルオロアルキルヨージド(C6F13I)、ベンゾイルペルオキシド tert-ブチルペルオキシドおよびメチルエチルケトンペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化水素、ドデカノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0155】
開始剤は、PCl5、n-C4H9Li、(C5H5)2Mg、(i-C4H9)3Al、カルベニウム塩、CF3S03CH3、CF3S03C2H5、(CF3SO2)O、Ph3C+AsF6
-、リチウム塩、またはその組み合わせから選択されてもよい。開始剤は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、またはその組み合わせから選択されるリチウム塩を含んでもよい。換言すれば、本発明者らは驚くべきことに、ある特定のリチウム塩は重合反応に実際に参加することを観察した。
【0156】
架橋剤は、好ましくは、分子中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アミン基、アクリル基、またはメルカプト基から選択される少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む。アミン基は、好ましくは、以下の構造から選択される:
【0157】
【0158】
架橋剤は、フェニレン基、N,N-メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ケイ皮酸、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム18水和物、ジエポキシ、ジカルボン酸化合物、ポリ(カリウム1-ヒドロキシアクリレート)(PKHA)、グリセロールジグリシジルエーテル(GDE)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)、クエン酸(以下の式4)、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体化合物、メタクリル酸の誘導体化合物(例えばポリヒドロキシエチルメタクリレート)、グリシジル官能基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMAAm)、イソボルニル(isobomyl)メタクリレート、ポリ(アクリル酸)(PAA)、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジイソシアネート(例えばメチレンジフェニルジイソシアネート、MDI)、ウレタン鎖、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0159】
電解質は、液体溶媒とは組成が異なる難燃性添加剤をさらに含んでもよい。難燃性添加剤は、関与する様々な機序(加熱、点火、および熱分解の伝播)に干渉することによりポリマー熱分解および電解質燃焼プロセスを阻害しまたは停止させることが意図される。
【0160】
難燃性添加剤は、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0161】
弾性ポリマーに物理的にまたは化学的に組み込まれ得る難燃剤のタイプに関して制限はない。難燃剤の主なファミリーは、ハロゲン(臭素および塩素)、リン、窒素、膨張系(Intumescent Systems)、鉱物(アルミニウムおよびマグネシウムに基づく)、ならびにその他(例えばホウ砂、Sb2O3、およびナノ複合材料)を含有する化合物に基づく。三酸化アンチモンは良好な選択であるが、アンチモンの他の形態、例えばアンチモン酸五酸化物およびナトリウムもまた使用され得る。
【0162】
反応性タイプ(ポリマー構造に化学的に結合するか、またはその部分となる)および添加物タイプ(ポリマーマトリックス中に単純に分散される)を使用することができる。例えば、反応性ポリシロキサンは、EPDMタイプ弾性ポリマーと化学的に反応し、架橋ネットワークポリマーの部分となることができる。難燃基修飾されたポリシロキサンそれ自体は、本開示の一実施形態による難燃剤を含有する弾性ポリマー複合物であることが留意され得る。反応性タイプおよび添加物タイプの両方の難燃剤は、いくつかの異なるクラスにさらに分けられ得る:
1)鉱物:例は、水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、ハンタイトおよびハイドロマグネサイト、様々な水和物、赤リンならびにホウ素化合物(例えばホウ酸塩)を含む。
2)有機ハロゲン化合物:このクラスは、有機塩素、例えばクロレンド酸誘導体および塩素化パラフィン;有機臭素、例えばデカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)、デカブロモジフェニルエタン(decaBDEの代替物)、ポリマー臭素化化合物、例えば臭素化ポリスチレン、臭素化カーボネートオリゴマー(BCO)、臭素化エポキシオリゴマー(BEO)、テトラブロモフタル酸無水物(tetrabromophthalic anyhydride)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、およびヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を含む。
3)有機リン化合物:このクラスは、有機ホスフェート、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BADP)、およびトリクレジルホスフェート(TCP);ホスホネート、例えばジメチルメチルホスホネート(DMMP);ならびにホスフィネート、例えばアルミニウムジエチルホスフィネートを含む。難燃剤の1つの重要なクラスにおいて、化合物はリンおよびハロゲンの両方を含有する。そのような化合物は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)ならびに塩素化有機ホスフェート、例えばトリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート(塩素化トリスまたはTDCPP)およびテトラキス(2-クロレチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート(V6)を含む。
4)有機化合物、例えばカルボン酸およびジカルボン酸。
【0163】
鉱物難燃剤は、主に添加物難燃剤として作用し、周囲のシステム(ポリマー)に化学的に取り付けられない。有機ハロゲンおよび有機ホスフェート化合物のほとんどもまた、ポリマーに取り付けられるために永久的に反応しない。反応性および非放射性の特徴を有する、ある特定の新たな非ハロゲン化生成物もまた商業的に入手可能である。
【0164】
ある特定の実施形態において、難燃性添加剤は、閾値温度よりも高い温度(例えば、内部短絡により誘導される炎または火の温度)に曝露された場合に破壊可能または融解可能なコーティング材料のシェルにより被包された添加剤を含む被包された粒子の形態である。被包性材料は、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料である。被包性または微小滴形成プロセス。
【0165】
混合物中の難燃性添加剤対液体溶媒の比は、重量で1/95~99/1、好ましくは重量で10/85~80/20、さらに好ましくは重量で20/80~70/20、最も好ましくは重量で35/65~65/35である。
【0166】
ある特定の望ましい実施形態において、電解質は、2nm~30μmの粒子サイズを有する無機固体電解質材料の粒子をさらに含み、無機固体電解質材料の粒子は、ポリマー中に分散されているか、またはポリマーにより化学的に結合されている。無機固体電解質材料の粒子は、好ましくは、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される。
【0167】
弾性ポリマー保護層に組み込まれ得る無機固体電解質は、ペロブスカイトタイプ、NASICONタイプ、ガーネットタイプおよび硫化物タイプ材料を含むが、これらに限定されない。代表的なおよび周知のペロブスカイト固体電解質は、Li3xLa2/3-xTiO3であり、これは室温で10-3S/cmを上回るリチウムイオン伝導性を呈する。この材料は、リチウム金属との接触でのTi4+の還元のためリチウムバッテリーにおいて好適でないとみなされてきた。しかしながら、この材料は、弾性ポリマー中に分散された場合に、この問題を被らないことを本発明者らは見出した。
【0168】
ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ化合物は、周知のNa1+xZr2SixP3-xO12を含む。これらの材料は、一般に、AM2(PO4)3の式を有し、A部位は、Li、NaまたはKにより占有される。M部位は、通常は、Ge、ZrまたはTiにより占有される。特に、LiTi2(PO4)3システムは、リチウムイオンバッテリー用の固体状態電解質として広く研究されている。LiZr2(PO4)3のイオン伝導性は非常に低いが、HfまたはSnの置換により改善され得る。これは、Li1+xMxTi2-x(PO4)3(M=Al、Cr、Ga、Fe、Sc、In、Lu、YまたはLa)を形成させるための置換でさらに増強され得る。Al置換は、最も有効な固体状態電解質であることが実証されている。Li1+xAlxGe2-x(PO4)3システムもまた、その相対的に広い電気化学安定性ウィンドウに起因して有効な固体状態である。NASICONタイプ材料は、高電圧固体電解質バッテリーのための好適な固体電解質と考えられている。
【0169】
ガーネットタイプ材料は一般式A3B2Si3O12を有し、AおよびBのカチオンはそれぞれ8配位および6配位を有する。Li3M2Ln3O12(M=WまたはTe)に加えて、広範囲のガーネットタイプ材料が添加剤として使用可能であり、これは、Li5La3M2O12(M=NbまたはTa)、Li6ALa2M2O12(A=Ca、SrまたはBa;M=NbまたはTa)、Li5.5La3M1.75B0.25O12(M=NbまたはTa;B=InまたはZr)ならびに立方体システムLi7La3Zr2O12およびLi7.06M3Y0.06Zr1.94O12(M=La、NbまたはTa)を含む。Li6.5La3Zr1.75Te0.25O12化合物は、室温で1.02×10-3S/cmの高いイオン伝導性を有する。
【0170】
硫化物タイプ固体電解質はLi2S-SiS2システムを含む。このタイプの材料において報告された最も高い伝導性は6.9×10-4S/cmであり、これは、Li2S-SiS2システムにLi3PO4をドーピングすることにより達成された。硫化物タイプはまた、Li2S-P2S5システムにより表されるチオ-LISICON(リチウム超イオン伝導体)結晶性材料のクラスを含む。Li2S-P2S5システムの化学的安定性は不良と考えられ、材料は水分に対して感受性である(気体状H2Sを生成する)。安定性は、金属酸化物の追加により改善され得る。安定性はまた、Li2S-P2S5材料が弾性ポリマー中に分散された場合に有意に改善される。
【0171】
電解質ポリマー中に分散されたこれらの固体電解質粒子は、内因的に低いイオン伝導性を有するある特定のポリマーのリチウムイオン伝導性の増強を助けることができる。
【0172】
好ましくはおよび典型的には、ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、さらに好ましくは10-3S/cm以上、最も好ましくは10-2S/cm以上のリチウムイオン伝導性を有する。
【0173】
開示されるリチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリーまたはリチウム金属バッテリーであることができ、後者は、主要なアノード活性材料としてリチウム金属を有する。リチウム金属バッテリーは、電池が作られるときにアノードに装備されたリチウム金属を有することができる。代替的に、リチウムはカソード活性材料中に貯蔵されてもよく、アノード側は最初にリチウム金属フリーである。これはアノードレスリチウム金属バッテリーと呼ばれる。
【0174】
図2(A)に図示されるように、アノードレスリチウム電池は、本開示のある特定の実施形態にしたがって生産時のまたは完全に放電された状態にある。電池は、アノード集電体12(例えば、Cuホイル)、セパレータ、カソード活性材料、任意選択的な伝導性添加剤(図示せず)、任意選択的な樹脂バインダー(図示せず)、および電解質(カソード層全体中に分散されており、カソード活性材料と接触している)を含むカソード層16、ならびにカソード層16を支持するカソード集電体18を含む。電池が生産されるときにアノード側にリチウム金属はない。
【0175】
充電された状態において、
図2(B)に図示されるように、電池は、アノード集電体12、アノード集電体12(例えば、Cuホイル)の表面(または2つの表面)上にめっきされたリチウム金属20、セパレータ15、カソード層16、およびカソード層を支持するカソード集電体18を含む。リチウム金属は、カソードが作られるときにLi元素を含有するカソード活性材料(例えば、LiCoO
2およびLiMn
2O
4)に由来する。充電工程の間に、リチウムイオンはカソード活性材料から放出され、アノード側に移動してアノード集電体の1つまたは両方の表面に沈着する。
【0176】
本開示のアノードレスリチウム電池の1つの独特の特色は、バッテリー電池が作られるときにアノード活性材料およびリチウム金属が実質的に存在しないという概念である。一般的に使用されるアノード活性材料、例えばインターカレーションタイプアノード材料(例えばグラファイト、炭素粒子、Si、SiO、Sn、SnO2、Geなど)、P、または任意の変換タイプアノード材料は電池に含まれない。アノードは、集電体または保護された集電体のみを含有する。電池が作られるときにリチウム金属(例えばLi粒子、表面安定化Li粒子、Liホイル、Liチップなど)はアノードに存在せず;リチウムは基本的にカソードに貯蔵される(例えばLiCoO2、LiMn2O4、リン酸鉄リチウム、リチウム多硫化物、リチウム多セレン化物などにおけるLi元素)。電池がハウジング(例えばステンレス鋼中空シリンダーまたはAl/プラスチック積層エンベロープ)中に密封された後の第1の充電手順の間に、リチウムイオンは、カソード中のこれらのLi含有化合物(カソード活性材料)から放出され、電解質/セパレータを通じてアノード側に移動し、アノード集電体の表面上に沈着する。引き続いての放電手順の間に、リチウムイオンはこれらの表面を離れ、再びカソードに移動し、カソード活性材料にインターカレートまたは挿入される。
【0177】
そのようなアノードレス電池は、製造がはるかにより単純およびより高い費用効果であり、その理由は、従来のスラリーコーティングおよび乾燥手順を介してCuホイル表面上にプレコーティングされたアノード活性材料(例えば、伝導性添加剤およびバインダーと共に、グラファイト粒子)の層を有する必要がないからである。アノード材料およびアノード活性層生産コストは節約され得る。さらには、アノード活性材料層(さもなければ典型的には40~200μmの厚さ)がないので、電池の重量および体積は有意に低減可能であり、それにより、電池の重量測定および容積測定エネルギー密度が増加され得る。
【0178】
アノードレス電池の別の重要な利点は、リチウム金属電池が作られるときにアノードにリチウム金属が存在しないという概念である。リチウム金属(例えばLi金属ホイルおよび粒子)は、空気中の水分および酸素に対して高度に感受性であり、Li金属電池の生産の間の取り扱いの困難性および危険性が悪名高く知られている。生産設備は、特別なクラスのドライルームを備えているべきであり、これは高価であり、バッテリー電池のコストを重大に増加させる。
【0179】
アノード集電体は、Cu、Ni、ステンレス鋼、Al、グラフェン、グラファイト、グラフェンコーティングされた金属、グラファイトコーティングされた金属、炭素コーティングされた金属、またはその組み合わせのホイル、穿孔されたシート、またはフォームから選択されてもよい。好ましくは、集電体は、Cuホイル、Niホイル、ステンレス鋼ホイル、グラフェンコーティングされたAlホイル、グラファイトコーティングされたAlホイル、または炭素コーティングされたAlホイルである。
【0180】
アノード集電体は、典型的には、2つの主要な表面を有する。好ましくは、これらの主要な表面の1つまたは両方は、リチウム誘引性金属(親リチウム性金属)の複数の粒子またはコーティングを沈着されており、好ましくは1nm~10μmの直径または厚さを有する、リチウム誘引性金属は、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、その合金、またはその組み合わせから選択される。この沈着された金属層は、親リチウム性金属の複数の粒子またはコーティングをカバーおよび保護するグラフェンの層をさらに沈着されていてもよい。
【0181】
グラフェン層は、単一層または少数層グラフェンから選択されるグラフェンシートを含んでもよく、少数層グラフェンシートは、X線回折による測定で0.3354nm~0.6nmの面間間隔d002を有する積み重ねられたグラフェン面の2~10個の層を有するように一般的に定義される。単一層または少数層グラフェンシートは、本質的に0%の非炭素元素を有するプリスティングラフェン材料、または重量で0.001%~45%の非炭素元素を有する非プリスティングラフェン材料を含有してもよい。非プリスティングラフェンは、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化されたグラフェン、窒素化されたグラフェン、ドーピングされたグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0182】
グラフェン層は、グラフェンボールおよび/またはグラフェンフォームを含んでもよい。好ましくは、グラフェン層は、1nm~50μmの厚さを有し、および/または5~1000m2/g(より好ましくは10~500m2/g)の比表面積を有する。
【0183】
本開示の電解質を特色とするリチウムイオンバッテリーのために、アノード活性材料の選択に関する制限は特にない。アノード活性材料は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0184】
別の驚くべきおよび途方もない科学的なおよび技術的な意義は、十分に多い量のリチウム塩およびポリマーをこの有機溶媒に加えて溶解させて固体様または準固体電解質(例えばカソードにおける第1の電解質)を形成させれば、任意の揮発性有機溶媒の可燃性は有効に抑制され得るという本発明者らの発見である。一般に、そのような準固体電解質は、(20℃で測定された場合に)0.01kPa未満、多くの場合に0.001kPa未満、および(100℃で測定された場合に)0.1kPa未満、多くの場合に0.01kPa未満の蒸気圧を呈する。(その中に溶解したいかなるリチウム塩も有しない、対応するニート溶媒の蒸気圧は典型的には有意により高い。)多くの場合に、蒸気分子は実際的に、検出されるためには少なすぎる。
【0185】
非常に意義深い観察は、ホスファゼン化合物に由来する(それから重合された)ポリマーは、熱力学的平衡状態において蒸気相に逃避できる揮発性溶媒分子の量を劇的に削減できるということである。多くの場合に、これは、任意の可燃性気体分子が炎を引き起こすことを極めて高温においても有効に予防した。準固体または固体状態電解質の引火点は、重合なしのニート有機溶媒の引火点よりも典型的には少なくとも100度(多くの場合に>150度)高い。ほとんどの場合において、引火点は200℃よりも有意に高いか、または引火点は検出され得ない。電解質は単に燃え移ることがない。さらには、任意の偶発的に引き起こされた炎は3秒よりも長く持続しない。火および爆発の課題が、バッテリー駆動式電動輸送機器が広く認められるための大きな障害となっているという考えを考慮すると、これは非常に意義深い発見である。この新たな技術は、活気に満ちたEV産業の到来に意義深く影響し得る。
【0186】
非可燃性および高いリチウムイオン転移数に加えて、本開示の準固体または固体状態電解質の使用と関連付けられるいくつかの追加の利益がある。1つの例として、これらの電解質は、リチウムデンドライトの増大の有効な抑制を通じて充電式リチウムバッテリーの寿命および安全性性能を有意に増強することができる。電解質と電極との間の良好な接触に起因して、界面インピーダンスは有意に低減され得る。追加的に、ポリマーの存在により誘導される局所的な高い粘性は、電解質からの圧力を増加させてデンドライトの増大を阻害し、アノードの表面上のリチウムイオンのより均一な沈着を潜在的にもたらすことができる。高い粘性はまた、沈着区画の近くでのアニオン対流を制限して、Liイオンのより均一な沈着を促進し得る。これらの理由は、別々にまたは組み合わせで、本発明者らがこれまで調査してきた多数の充電式リチウム電池のいずれでもデンドライト様特色が観察されていないという考えの原因となると考えられる。
【0187】
別の利益の例として、この電解質は、カソードにおけるリチウム多硫化物の溶解およびLi-S電池のアノードへの移動を阻害する能力を有し、そのため多硫化物シャトル現象を克服し、電池容量が時間と共に重大に劣化しないことを可能とする。結果的に、100%に近いクーロン効率が長いサイクル寿命と共に達成され得る。濃縮された電解質および架橋ポリマーが使用される場合、リチウム多硫化物の溶解性は有意に低減される。
【0188】
ポリマー電解質中に分散したリチウム塩は、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせを含んでもよい。イオン液体は、イオンのみから構成される。イオン液体は、所望される温度を上回る場合に融解または液体状態である低融解温度の塩である。例えば、イオン性の塩は、その融点が100℃を下回る場合にイオン液体と考えられる。融解温度が室温(25℃)に等しいかまたはそれより低い場合、塩は室温イオン液体(RTIL)として参照される。ILベースリチウム塩は、大きいカチオンと電荷非局在化アニオンとの組み合わせに起因して、弱い相互作用により特徴付けられる。これは、柔軟性(アニオン)および非対称性(カチオン)に起因して結晶化する低い傾向を結果としてもたらす。
【0189】
一部のILは、本開示の第1の有機溶媒と共に働くために(塩としてではなく)共溶媒として使用されてもよい。周知のイオン液体は、1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム(EMI)カチオンとN,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組み合わせにより形成される。この組み合わせは、多くの有機電解質溶液と同等のイオン伝導性、低い分解傾向および約300~400℃までで低い蒸気圧を有する液体を与える。これは一般に低い揮発性および非可燃性、ならびにそれゆえバッテリー用のはるかにより安全な電解質溶媒を含意する。
【0190】
イオン液体は、有機または無機イオンから基本的に構成され、多様なそれらの成分の作製の容易性に起因して無数の構造的バリエーションがある。そのため、様々な種類の塩を使用して、所与の応用のための所望される特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、数ある中でも、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウムおよび第四級アンモニウム塩ならびにアニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびヘキサフルオロホスフェートを含む。有用なイオン液体ベースリチウム塩(溶媒ではない)は、カチオンとしてのリチウムイオンならびにアニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびヘキサフルオロホスフェートから構成されてもよい。例えば、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)は特に有用なリチウム塩である。
【0191】
それらの組成に基づいて、イオン液体は、各々が特有の応用のために好適な、3つの基本的なタイプ:非プロトン、プロトンおよび双性イオンタイプを含む異なるクラスに入る。室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、ジ、トリ、およびテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、ならびにトリアルキルスルホニウムを含むが、これらに限定されない。RTILの一般的なアニオンは、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-などを含むが、これらに限定されない。相対的に言えば、イミダゾリウムまたはスルホニウム系カチオンと複合ハロゲン化物アニオン、例えばAlCl4
-、BF4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、NTf2
-、N(SO2F)2
-、またはF(HF)2.3
-との組み合わせは、良好な作動伝導性を有するRTILを結果としてもたらす。
【0192】
RTILは、典型的な特性、例えば高い内因的イオン伝導性、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実際的に0の)蒸気圧、非可燃性、室温を上回るおよび下回る広範囲の温度において液体のままである能力、高い極性、高い粘性、ならびに広い電気化学的ウィンドウを有することができる。これらの特性は、高い粘性を除いて、充電式リチウム電池における電解質共溶媒としてRTILを使用する場合に望ましい属性である。
【0193】
本開示の実施において使用され得るカソード材料のタイプに関しても制限はない。Li-S電池のために、カソード活性材料はリチウム多硫化物または硫黄を含有してもよい。電池が作られるときにカソード活性材料がリチウム含有種(例えば、リチウム多硫化物)を含む場合、リチウム金属がアノードに予備装備される必要はない。
【0194】
一次バッテリーまたは二次バッテリーであることができる本開示のリチウムバッテリーにおいて使用され得るカソード活性材料のタイプに関して特に制限はない。充電式リチウム金属またはリチウムイオン電池は、好ましくは、例として、層状化合物LiMO2、スピネル化合物LiM2O4、カンラン石化合物LiMPO4、ケイ酸化合物Li2MSiO4、タボライト化合物LiMPO4F、ホウ酸化合物LiMBO3、またはその組み合わせから選択されるカソード活性材料を含有してもよく、Mは遷移金属または複数の遷移金属の混合物である。
【0195】
充電式リチウム電池において、カソード活性材料は、金属酸化物、金属酸化物フリー無機材料、有機材料、ポリマー材料、硫黄、リチウム多硫化物、セレン、またはその組み合わせから選択されてもよい。金属酸化物フリー無機材料は、遷移金属フッ化物、遷移金属塩化物、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物、またはその組み合わせから選択されてもよい。特に有用な実施形態において、アノードがアノード活性材料としてリチウム金属を含有する場合に、カソード活性材料は、FeF3、FeCl3、CuCl2、TiS2、TaS2、MoS2、NbSe3、MnO2、CoO2、酸化鉄、酸化バナジウム、またはその組み合わせから選択される。酸化バナジウムは、好ましくは、VO2、LixVO2、V2O5、LixV2O5、V3O8、LixV3O8、LixV3O7、V4O9、LixV4O9、V6O13、LixV6O13、それらのドーピングされたバージョン、それらの誘導体、およびその組み合わせからなる群から選択されてもよく、0.1<x<5である。その中にLi元素を含有しないカソード活性材料について、最初にカソード側にリチウム供給源が装備されているべきである。これは、高いリチウム含有量を含有する任意の化合物、またはリチウム金属合金などであることができる。
【0196】
充電式リチウム電池(例えば、リチウムイオンバッテリー電池)において、カソード活性材料は、層状化合物LiMO2、スピネル化合物LiM2O4、カンラン石化合物LiMPO4、ケイ酸化合物Li2MSiO4、タボライト化合物LiMPO4F、ホウ酸化合物LiMBO3、またはその組み合わせを含有するように選択されてもよく、Mは遷移金属または複数の遷移金属の混合物である。
【0197】
特に望ましいカソード活性材料は、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNiaMn2-aO4、0<a<2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNinMnmCo1-n-mO2、0<n<1、0<m<1、n+m<1)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNicCodAl1-c-dO2、0<c<1、0<d<1、c+d<1)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルト酸化物(LiNipCo1-pO2、0<p<1)、またはリチウムニッケルマンガン酸化物(LiNiqMn2-qO4、0<q<2)を含む。
【0198】
好ましいリチウム金属二次電池において、カソード活性材料は、好ましくは、(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物もしくはトリカルコゲン化物、(c)ニオビウム、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)その組み合わせから選択される無機材料を含有する。再び、その中にLi元素を含有しないカソード活性材料について、最初にカソード側にリチウム供給源が装備されているべきである。
【0199】
別の好ましい充電式リチウム電池(例えばリチウム金属二次電池またはリチウムイオン電池)において、カソード活性材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン(スクアリン酸、クロコン酸、およびロジゾン酸リチウム塩を含む)、オキサカーボン(キニーネ、酸無水物、およびニトロ化合物を含む)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、Quino(トリアゼン)、レドックス活性有機材料(複数の隣接するカルボニル基に基づくレドックス活性構造(例えば、「C6O6」タイプ構造、オキソカーボン)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS2)3]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリト酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li4C6O6、Li2C6O6、Li6C6O6、またはその組み合わせから選択される有機材料またはポリマー材料を含有する。
【0200】
チオエーテルポリマーは、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、またはポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)から選択されてもよく、該ポリマーにおいて硫黄原子は炭素原子を連結してポリマー骨格を形成させる。側鎖チオエーテルポリマーは、コンジュゲート性芳香族部分からなるポリマー主鎖を有するが、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する。それらの中で、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、およびポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)はポリフェニレン主鎖を有し、チオランをペンダントとしてのベンゼン部分に連結している。同様に、ポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)はポリチオフェン骨格を有し、シクロ-チオランをチオフェン環の3,4位に連結している。
【0201】
さらに別の好ましい充電式リチウム電池において、カソード活性材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、二価マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、金属フリーフタロシアニン、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択されるフタロシアニン化合物を含有する。このクラスのリチウム二次バッテリーは、高い容量および高いエネルギー密度を有する。再び、その中にLi元素を含有しないカソード活性材料について、最初にカソード側にリチウム供給源が装備されているべきである。
【0202】
図1(B)に図示されるように、本開示はまた、(a)液体状態にあるか、または第1の非水性溶媒中に溶解したホスファゼン化合物(例えばモノマー、オリゴマー、または反応性ポリマー)を少なくとも含む、第1の溶液;ならびに(b)硬化剤(例えば、開始剤、置換基、および/または架橋剤)、リチウム塩、ならびに第2の非水性液体溶媒(例えば、有機溶媒またはイオン液体溶媒)を含む、第2の溶液を含む、電解質組成物であって、電解質を形成させるために第1の溶液および第2の溶液が混合される前に、第1の溶液および第2の溶液が別々に貯蔵されている、電解質組成物を提供する。実際に、リチウム塩は、第1の溶媒、第2の溶媒、または両方に溶解していてもよい。
【0203】
本開示は、(
図1(A)において図示されるような)充電式リチウム電池を製造する方法であって、(a)カソードを用意すること;(b)アノードを用意すること;(c)カソードおよびアノードを組み合わせてドライ電池を形成させること;ならびに(d)ドライ電池に本開示の反応性電解質組成物を導入(例えば、注入)し、ならびに反応性電解質組成物を硬化(重合、置換、および/または架橋)させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法をさらに提供する。工程(d)は、任意の重合していないまたは残留した液体溶媒を部分的にまたは完全に除去することを含んでもよい。
【0204】
この方法において、工程(a)は、任意の一般的に使用されるカソード製造方法から選択されてもよい。例えば、方法は、(i)カソード活性材料の粒子、伝導性添加剤、任意選択的な樹脂バインダー、任意選択的な固体無機電解質粉末の粒子、および任意選択的な難燃剤を液体媒体(例えば、有機溶媒、例えばNMP)中で混合してスラリーを形成させること;ならびに(ii)カソード集電体(例えば、Alホイル)上にスラリーをコーティングし、および溶媒を除去することを含んでもよい。工程(b)におけるアノードは、類似した方式であるが、アノード活性材料の粒子(例えば、Si、SiO、Sn、SnO2、グラファイト、および炭素の粒子)を使用して製造されてもよい。アノードの製造において使用される液体媒体は水または有機溶媒であってもよい。工程(c)は、アノード、多孔性セパレータ、カソードをそれらのそれぞれの集電体と共に組み合わせて、ドライ電池を形成させるための保護用ハウジング中に封入された単位電池を形成させることを伴ってもよい。
【0205】
図1(C)に図示されるように、本開示はまた、開示される充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、任意選択的であるが要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤、ならびにリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも反応性ホスファゼン化合物および硬化剤を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソードおよびアノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法を提供する。
【0206】
工程(A)において、カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、任意選択的な難燃剤、リチウム塩、および任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子は、スラリーを形成させるために反応性添加剤(少なくともホスファゼン化合物を含有する)中に溶解または分散されてもよい。スラリーは、カソードを形成させるためにカソード集電体(例えば、Alホイル)の主要な表面または両方の主要な表面上に取り付けまたはコーティングされる。
【0207】
ある特定の実施形態において、工程(B)は、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(アノード活性材料が炭素またはグラファイト材料である場合には要求されない)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤(カソードにおいて使用されるものと同じまたは異なる反応物)、ならびにリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含む。
【0208】
方法は、工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することをさらに含んでもよい。
図1(C)は、本開示のある特定の実施形態にしたがって電池が作られた後に硬化が起こることを指し示すが、反応性電解質組成物の硬化は、電極(アノードまたはカソード)が作られた直後に起こることができる。
【0209】
一部の実施形態において、工程(A)は、カソード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む。工程(B)は、アノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含んでもよい。
【0210】
図1(D)において図示されるのは、開示される充電式リチウム電池を製造する方法である、本開示のさらに別の実施形態である。方法は、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(反応性添加剤は重合および/または架橋でバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、ならびに反応性添加剤を混合してカソード(好ましくは集電体上に支持された少なくとも1つのカソード活性材料層を含有する)を形成させることであって、反応性添加剤が、液体形態にあるか、または第1の液体溶媒中に溶解したホスファゼン化合物を少なくとも含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソード、任意選択的なセパレータ、アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)リチウム塩、硬化剤、任意選択的な難燃剤(液体状態である場合)および第2の非水性液体溶媒の液体混合物を電池に注入し、ならびに(熱、UV、電子線、または他の高エネルギー放射線を介して)反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む。これに続いて、任意の重合していない溶媒を部分的にまたは完全に除去する工程が行われてもよい。
【0211】
リチウムイオン電池の製造のために、工程(B)は、アノード材料の粒子(例えば、Si、SiO、グラファイト、炭素粒子など)、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、および反応性添加剤(反応性ホスファゼン化合物を含む)を混合して、アノード集電体(例えば、Cuホイル)上に支持された少なくとも1つのアノード活性層を形成させることを含んでもよい。
【0212】
以下の実施例は、主に本開示のベストモードの実施を説明する目的のために提示され、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0213】
実施例1:一般式[-NP(A)a(B)b-]xに基づく固体電解質
代表的な手順において、温度計、撹拌器、滴下漏斗およびコンデンサーを備えた1リットルフラスコに58.0g(0.167モル)のヘキサクロロトリホスファゼン、50mlのトルエンおよび158g(2.0モル)のピリジンを入れ、混合物を撹拌した。混合物に滴下漏斗を通じて143g(1.1モル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を滴下で加えた。混合物を60℃に加熱し、反応を撹拌と共に8時間続けさせた。沈殿した結晶性材料を濾去した後に、濾液中の溶媒を減圧下で蒸留除去した。残留溶液を所望されるレベルまで乾燥させたところ、黄色を有する溶液の形態の136g(収率:91%)の硬化性ホスファゼン化合物が残った。
【0214】
過酸化ベンゾイル開始剤(重量で0.5%)をトルエン中の硬化性ホスファゼン化合物に加えて第1溶液を製造した。リチウム塩、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)をフルオロエチレンカーボネート(FEC)に溶解させて1.0Mの溶液(第2溶液)を形成させた。リチウム塩の量を変動させて5/100~25/100の最終リチウム塩対ポリホスファゼン比を得た。第1溶液および第2溶液を次に混合し、よく撹拌し、ドライバッテリー電池に注入した。溶媒のほとんどを真空ポンプの補助と共に除去した。樹脂を60℃で終夜硬化させた。2つのタイプのバッテリー電池をこの実施例において研究した:リチウム/NCM-532電池(最初に電池はリチウムフリーである)ならびにSiベースアノードおよびNCM-532カソードを含有するリチウムイオン電池。
【0215】
実施例2:一般式[-NP(A)a(B)b-]xに基づく固体電解質
温度計、撹拌器、滴下漏斗およびコンデンサーを備えた1リットルフラスコに100mlのテトラヒドロフランおよび11.6g(0.5モル)の金属ナトリウムを入れた。この混合物に55.5g(0.55モル)の2,2,2-トリフルオロエタノールを滴下で加え、混合物を次に、ナトリウムが完全に消費されるまで還流下で反応させた。この反応混合物に100mlのトルエン中の39.6g(0.111モル)のヘキサクロロトリホスファゼンの溶液を滴下で加え、混合物を還流下で2時間反応させた。その後、反応混合物の温度を室温に低下させ、滴下漏斗を使用して191g(1.47モル)のHEMAを反応混合物に緩徐に滴下で加えた。混合物を次に60℃に加熱し、反応をその温度で撹拌と共に8時間続けさせた。その後、沈殿した結晶性材料および触媒を濾去し、濾液中の溶媒を減圧下で蒸留除去した。残留溶液を十分なレベルまで乾燥させたところ、黄色を有する溶液の形態の88g(収率:93%)の硬化性ホスファゼン化合物が残った。
【0216】
過酸化ベンゾイル開始剤(重量で0.5%)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、および硬化性ホスファゼン化合物(0.5/10/100の比)をビニレンカーボネート(VC)およびトルエンの混合物中に分散させて1.0Mの溶液を形成させた。溶液をドライバッテリー電池に注入した。溶媒のほとんど(>80%)を真空ポンプの補助と共に除去した。樹脂を65℃で終夜硬化させた。2つのタイプのバッテリー電池をこの実施例において研究した:リチウム/NCM-811電池(最初に電池はリチウムフリーである)ならびにSiベースアノードおよびNCAカソードを含有するリチウムイオン電池。
【0217】
実施例3:ポリ[ビス(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)-ホスファゼン]およびポリ[(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)-グラフト-ポリ(乳酸)-ホスファゼン]に基づく固体電解質
ポリ[ビス(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)-ホスファゼン]を異なる濃度の置換基での求核性縮合反応により得た。特に、求核性置換によるポリ(オルガノホスファゼン)合成のスキームは上記の反応1に示される。真空下250℃で3時間のヘキサクロロシクロトリホスファゼン(HCCP)の溶融開環重合によりポリ(ジクロロホスファゼン)から単一置換および共置換ポリ(ジクロロホスファゼン)(PZ)を得た。この時間の後に、ポリマーを室温で無水THF中に溶解させ、それをn-ヘプタンへの沈殿により分離させた。
【0218】
ペンタエリトリトールトリアクリレート(PEATA)でのポリ(ジクロロホスファゼン)(PZ)の置換を2つのモル比:1:3および1:6mmol PZ-PEATAで行った。トリエチルアミン(TEA)を、塩化水素をトラップするための有効なアクセプターとして1:1mmol比PEATA:TEAで加えた。PZをTHF(10mL)に撹拌下で溶解させ、10分後にPEATAおよびTEAを加え、ガラスバイアル反応器を2日間室温に保った。PZについて記載した手順に従って生成物を精製し;収率は51%であった。
【0219】
メチルアミン開始剤(重量で0.5%)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、および硬化性ホスファゼン化合物(0.5/10/100の比)をビニレンカーボネート(VC)およびトルエンの混合物中に分散させて1.0Mの溶液を形成させた。溶液をドライバッテリー電池に注入した。溶媒のほとんど(>80%)を真空ポンプの補助と共に除去した。樹脂を65℃で終夜硬化させた。2つのタイプのバッテリー電池をこの実施例において研究した:リチウム/NCM-811電池(最初に電池はリチウムフリーである)ならびにグラファイトベースアノードおよびNCM-622カソードを含有するリチウムイオン電池。
【0220】
実施例4:2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(ビニルオキシエチレンオキシ)-2,2,4,4,6,6-ヘキサヒドロ-1,3,5,2,4,6-トリアザトリホスホリン
化合物2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(ビニルオキシエチレンオキシ)-2,2,4,4,6,6-ヘキサヒドロ-1,3,5,2,4,6-トリアザトリホスホリンは以下の反応により作製される:
【0221】
【0222】
式中、R=以下の構造:
【0223】
【0224】
代表的な手順において、16.80g(0.10モル)の水素化ナトリウム(95%)を、内部温度計、滴下漏斗、および還流コンデンサーを有する2リットル3口フラスコ中の700mlの無水THFおよび/またはアルゴンに懸濁した。氷浴中で冷却しながら、61.67g(0.70モル)のエチレングリコールモノ-ビニルエーテルを次に、滴下漏斗を通じて90分の期間にかけて緩徐に加えた。撹拌を次に約50℃で全部で20時間続けた。フラスコの内容物は褐色を徐々に呈した。
【0225】
引き続いて、200mlの無水THF中の34.79g(0.10)モルのホスホニトリルクロリド(NPCl2)3の溶液を滴下漏斗を通じて緩徐(90分)に加えた。30℃未満の温度を保つために水浴での冷却がこの添加の間に必要であった。撹拌を室温で1時間続け、バッチを次に50℃の内部温度に加熱した。撹拌をこの温度で終夜(全部で24時間)続けた。
【0226】
混合物を次に室温に冷却させ、吸引により濾過した。THFのほぼすべてをロータリーエバポレーター中で褐色の濾液から除去し;250mlのジエチルエーテルおよび250mlの脱イオン水を加え、混合物を分液漏斗に移した。エーテル相を分離し、各125mlのジエチルエーテルで水性相をさらに2回抽出した。合わせたエーテル相を各50mlの脱イオン水と共に3回振盪し、これは混合物をかなり軽くすることができる。エーテル相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾去し、ロータリーエバポレーター中で溶媒を蒸発させた後に、62.84g(0.096モル、理論量の96%に対応する)の透明黄色液体を得た。所望される場合に生成物をさらに精製してもよい。生成物は、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、イソプロパノール、エチルアセテート、およびトルエン中に容易に可溶性である。ここで製造されたホスファゼン誘導体を次に、リチウム塩(例えば10%のホウフッ化リチウム(LiBF4)またはトリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3))と共に、溶媒、例えばエチルアセテート(EA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびハイドロフルオロエーテル(HFE)に溶解させて前駆体または反応性液体電解質組成物を製造した。
【0227】
この実施例において作製されたリチウムイオン電池は、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB、人工的なグラファイト)のアノード、NCM-622粒子のカソード、およびセパレータとしての多孔性PE/PP膜を含む。反応性液体電解質組成物を45℃でドライバッテリー電池に注入し、電解質をアノードおよびカソードの両方に完全に浸透させてアノードおよびカソード活性材料の表面を湿潤させた。40Gyの総線量に達するまで電池に次に室温で電子線を照射した。バッテリー電池中のポリホスファゼンポリマーのその場架橋が達成された。架橋されたネットワークは、任意の液体電解質を適所に保持する能力を有し、任意の漏出の懸念を予防する。
【0228】
追加的に、ポリマーフィルムをガラス表面にキャストし、フィルムの一部を同じ線量の電子線に供した。ポリマー(重量で約10%のリチウム塩、LiBF4を各々含有する)の室温でのリチウムイオン伝導性値は、未架橋ポリマーについての約3.8×10-4S/cmから、電子線で硬化させたポリマーについての約2.6×10-3S/cmまで増加した。
【0229】
電気化学測定(CV曲線)を1~100mV/sのスキャン速度で電気化学ワークステーションにおいて実行した。Arbin電気化学ワークステーションを使用して50~500mA/gの電流密度において定電流充電/放電サイクリングにより電池の電気化学的性能を評価した。その場硬化により得られた準固体または固体状態電解質を含有する電池は、サイクリング安定性およびエネルギー貯蔵容量の観点において非常に良好な性能であるが、これらの電池は耐炎性および相対的に安全であることを試験結果は指し示す。
【0230】
実施例5:ビニルエーテルホスファゼン誘導体からのホモポリマーおよびコポリマーを含有する電解質
以下の反応にしたがって作製された混合的置換を有するビニルエーテルホスファゼン誘導体から耐炎性電解質組成物(液体溶液)、準固体電解質、および固体状態電解質を作製する:
【0231】
【0232】
式中、
【0233】
【0234】
代表的な手順において、9.60g(0.40モル)の水素化ナトリウムを、KPG撹拌器、滴下漏斗、および内部温度計を有する1000ml 3口フラスコに入れ、100mlの無水テトラヒドロフランでスラリー処理した。氷/塩で冷却しながら、50mlの無水テトラヒドロフラン(THF)中の65.68g(0.40モル)のオイゲノールの溶液を次に滴下で加えた(気体発生、添加時間45分)。撹拌を室温で1時間続け、次に150mlの無水THF中の46.36g(0.133モル)の(NPCl2)3の溶液を加えた。
【0235】
混合物を室温で60時間撹拌し、1口フラスコに移し、溶媒を回転により蒸発させた。生成物を150mlのジエチルエーテルおよび150mlの脱イオン水中に入れ、相を分液漏斗において分離させた。水性相を各10mlの脱イオン水で2回洗浄した。合わせた橙色のエーテル相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾去し、透明な濾液を活性炭と共に室温で30分間撹拌した。繰り返しの濾過および回転蒸発による溶媒除去後に、94.94g(0.130モル、理論量の98%に対応する)の粘性の透明な褐色の液体が得られた。所望される場合に、短いシリカゲルカラムを通じて生成物をさらに濾過してもよい。生成物は、分子量730.89g/モルを有し、トルエン、クロロホルム、エチルアセテート、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびアセトンなどに容易に可溶性である。
【0236】
ここで製造されたビニルエーテルホスファゼン誘導体を次に、リチウム塩(例えば10%のホウフッ化リチウム(LiBF4))と共に溶媒、例えばエチルアセテート(EA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびハイドロフルオロエーテル(HFE)に溶解させて、前駆体または反応性電解質組成物を製造した。
【0237】
この実施例において作製されたリチウムイオン電池は、グラフェン保護されたSi粒子のアノード、NCM-622粒子のカソード、およびセパレータとしての多孔性PE/PP膜を含む。いくつかの試料において、ガーネットタイプ固体電解質(Li7La3Zr2O12(LLZO)粉末)をアノードレスリチウムバッテリー中のカソード(NCM-532)に加えた。
【0238】
実施例6:準固体または固体状態電解質を含有するカソードおよびアノード層
ポリホスファゼン電解質と接触したアノード中のアノード活性材料の粒子(例えばMCMB粒子)およびカソード活性材料(例えばカソード中のLiCoO2粒子)を含む電極層を、[NPCl2]nおよびプロピレンオキシドオリゴマーから以下の反応にしたがって作製した:
【0239】
【0240】
代表的な手順において、4.69gの[NPCl2]nを200mlの無水THFに溶解させてポリマー溶液を形成させた。次に、11.3mlのトリエチルアミン(TEA)および50mlのプロピレンオキシドオリゴマーを次にポリマー溶液に加えた。結果としてもたらされた反応混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を次に真空下で除去して高度に粘性の黄ばんだポリマー溶液を得、それを水に対して5日間透析した。透析後の水の除去により、わずかに黄ばんだ高度に粘性のポリマーを得た。
【0241】
置換されたポリホスファゼン、重量で15%のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、および光重合開始剤としての重量で0.5%のベンゾフェノンを次にフルオロエチレンカーボネート(FEC)およびビニレンカーボネート(VC)の50/50の溶媒混合物に分散/溶解させて溶液を形成させた。室温で1時間撹拌した後に、溶液にLiCoO2粒子および重量で7%のカーボンブラック(Super-P)を加えて反応性スラリーを形成させた。スラリーをAlホイルの表面にコーティングしてカソードの層を形成させ、それをUV光に20分間曝露して架橋反応を誘導した。
【0242】
アノードの層を類似した方式で作製したが、電極活性材料はMCMB粒子であった。アノード層をCuホイル表面にコーティングしてアノード電極を作った。アノード層もまたUV光に曝露して架橋反応を開始させた。
【0243】
別々の実験において、電極活性材料を重量で25%のガーネットタイプ固体電解質粉末、Li7La3Zr2O12(LLZO)で置き換え、それを、溶媒中にポリマー、リチウム塩、光重合開始剤を含有するがカーボンブラックを含有しない反応性スラリーと混合することによりセパレータ膜を作製した。この反応性スラリーをガラス表面にキャストしてセパレータ層を得、それを次にガラスから剥がして自立型セパレータ層を得た。
【0244】
アノード、セパレータ、およびカソード層を次に積み重ねて一緒にし、保護用ハウジングに入れてバッテリー電池を作った。
【0245】
電気化学測定(CV曲線)を1~100mV/sのスキャン速度で電気化学ワークステーションにおいて実行した。Arbin電気化学ワークステーションを使用して50~500mA/gの電流密度において定電流充電/放電サイクリングにより電池の電気化学的性能を評価した。その場硬化により得られた準固体または固体状態電解質を含有する電池は、非常に良好な性能であることを試験結果は指し示す。これらの電池は耐炎性および相対的に安全である。
【国際調査報告】