(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ジョー作動機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240130BHJP
A61B 17/295 20060101ALI20240130BHJP
A61B 34/30 20160101ALN20240130BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/295
A61B34/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547718
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 GB2022050316
(87)【国際公開番号】W WO2022175641
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522063697
【氏名又は名称】プレシジョン ロボティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナディ タマス クサバ
(72)【発明者】
【氏名】シャン ジャンジュン
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA13
4C130AA18
4C130AA19
4C130AA42
4C160FF12
4C160GG22
4C160MM32
(57)【要約】
作動機構であって、ジョー軸の周りで回転可能であり、第1スロットを備える第1ジョーと、ジョー軸の周りで回転可能であり、第2スロットを備える第2ジョーと、第1位置と第2位置との間でスライダ軸に沿って移動可能であり、前記第1及び第2ジョーと移動可能に係合可能なスライダであって、このスライダは、前記第1スロット内にスライド可能に受け入れ可能な第1突起、及び第2スロット内にスライド可能に受け入れ可能な第2突起を備え、各スロットは、それぞれの突起が前記スロットと係合したときに前記スライダ軸に非平行な方向に沿って延びるスライダと、作動機構に取り付け可能であり、前記スライダから離間したリターンと前記スライダ及び前記リターンの両方と動作可能に係合可能な作動部材であって、前記作動部材は、第1端、第2端、前記第1端から前記リターンまで延びる第1部分、及び前記リターンから前記第2端まで延びる第2部分を備え、前記第1部分は、スライダに固定可能であり、それによって、前記第1部分のリターンから離れる移動により、前記スライダは前記第1位置に向かって移動し、前記第2部分の前記リターンから離れる移動により、前記スライダは前記第2位置に向かって移動する作動部材と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動機構であって、
ジョー軸の周りで回転可能であり、第1スロットを備える第1ジョーと、
前記ジョー軸の周りで回転可能であり、第2スロットを備える第2ジョーと、
第1位置と第2位置との間でスライダ軸に沿って移動可能であり、前記第1及び第2ジョーと移動可能に係合可能なスライダであって、前記スライダは、前記第1スロット内にスライド可能に受け入れ可能な第1突起、及び前記第2スロット内にスライド可能に受け入れ可能な第2突起を備え、各スロットは、それぞれの突起が前記スロットと係合したときに前記スライダ軸に非平行な方向に沿って延びるスライダと、
前記作動機構に取り付け可能であり、前記スライダから離間したリターンと、
前記スライダ及び前記リターンの両方と動作可能に係合可能な作動部材であって、前記作動部材は、第1端、第2端、前記第1端から前記リターンまで延びる第1部分、及び前記リターンから前記第2端まで延びる第2部分を備え、前記第1部分は、前記スライダに固定可能であり、それによって、前記第1部分の前記リターンから離れる移動により、前記スライダは前記第1位置に向かって移動し、前記第2部分の前記リターンから離れる移動により、前記スライダは前記第2位置に向かって移動する作動部材と、を備える、ことを特徴とする作動機構。
【請求項2】
前記リターンは、リターン軸の周りで回転可能なプーリを備え、前記作動部材は、前記第1部分と前記第2部分との間で前記プーリの周りを通過する、ことを特徴とする請求項1に記載の作動機構。
【請求項3】
前記リターンは、前記リターン軸に沿って延び、前記プーリを支持するアクスルをさらに備える、ことを特徴とする請求項2に記載の作動機構。
【請求項4】
前記リターン軸は、前記ジョー軸と同軸である、ことを特徴とする請求項3に記載の作動機構。
【請求項5】
前記第1及び第2ジョーは、前記第1及び第2ジョーが前記アクスルによって支持され、前記アクスルの周りで回転可能であるように、前記アクスルと回転可能に係合可能である、ことを特徴とする請求項4に記載の作動機構。
【請求項6】
前記作動部材は、前記リターンと前記第2端との間で前記スライダとスライド可能に係合可能である、ことを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項7】
前記スライダは、第1部材受け部と第2部材部を備え、前記作動部材は、前記第1部材受け部を介して前記スライダに固定可能であり、前記第2部材受け部内にスライド可能に受け入れ可能である、ことを特徴とする請求項6に記載の作動機構。
【請求項8】
各ジョーはツール部を備え、前記第1位置に向かう前記スライダの移動により、前記第1及び第2ジョーは、前記ツール部が互いに接触する閉構成に向かって回転し、前記第2位置に向かう前記スライダの移動により、前記第1及び第2ジョーは、前記ツール部が離間する開構成に向かって回転する、ことを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項9】
前記ツール部は、鋏刃、鉗子、ディセクター又は把持器として構成される、ことを特徴とする請求項8に記載の作動機構。
【請求項10】
第1ガイドと第2ガイドを備えるハウジングをさらに備え、前記スライダが前記スライダ軸に沿って移動すると、前記第1突起は、前記第1ガイドによってガイドされ、前記第2突起は、前記第2ガイドによってガイドされる、ことを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項11】
手術器具であって、シャフトと、前記シャフトに結合された関節部と、前記関節部に結合されたエンドエフェクタとを備え、前記エンドエフェクタは、先行請求項のいずれか一項に記載の作動機構を備える、ことを特徴とする手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動機構に関し、特に、限定するものではないが、単一対の腱による2つのジョー部材の作動を容易にする作動機構に関する。本発明は、低侵襲外科手術のための手術器具のエンドエフェクタの一部を形成する2つのジョー部材の作動を容易にするために、外科用ロボット工学の分野で特に用途を有する。ただし、本発明はそのような用途に限定されず、ジョー部材などの2つ以上の可能部分を有する腱駆動エンドエフェクタを備える他の医療/手術装置又はロボット装置にも使用することができる。
【0002】
本明細書では、本発明は、主に、サージカルロボティクスの分野における応用に関連して説明される。しかしながら、これは、例示のみを目的としており、他の分野における本発明の応用を排除するものではない。
【背景技術】
【0003】
ロボティック手術システムの一部を形成する既知の手術器具は、シャフト、関節部及びエンドエフェクタを備える。シャフトは、関節部とエンドエフェクタの移動を制御及び駆動する手術用ロボットの他のコンポーネントから延在し得る。それによって、シャフトは、関節部とエンドエフェクタを患者の必要な領域に配置することを容易にし得る。関節部は、シャフトに対するエンドエフェクタの移動の自由度を提供するために、互いに隣接して位置決めされた複数のジョイントを含んでもよい。最後に、エンドエフェクタは、外科手術に必要な特定の動作を実行するように適合化されてもよい。
【0004】
既知のエンドエフェクタは、例えば、把持器、鉗子、鋏及びディセクターなどの2つの可動ジョー部材を有するエンドエフェクタを含む。幾つかの既知のエンドエフェクタは腱駆動型であり、これは、エンドエフェクタの各可能な関節動作が、エンドエフェクタ又はエンドエフェクタの一部に固着された腱の引っ張りによって引き起こされることを意味する。さらに、既知のエンドエフェクタは、各関節動作が確実に反転できるように、拮抗する腱の対によって駆動される。例えば、第1方向へのジョー部材の作動が第1腱の引張によって引き起こされる場合、第2の反対方向へのジョー部材の作動は、第2(拮抗する)腱の引張を必要とする可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1態様によれば、作動機構が提供される。この作動機構は、ジョー軸の周りで回転可能であり、第1スロットを備える第1ジョーと、ジョー軸の周りで回転可能であり、第2スロットを備える第2ジョーと、第1位置と第2位置との間でスライダ軸に沿って移動可能であり、前記第1及び前記第2ジョーと移動可能に係合可能なスライダであって、前記スライダは、前記第1スロット内にスライド可能に受け入れ可能な第1突起、及び第2スロット内にスライド可能に受け入れ可能な第2突起を備え、各スロットは、それぞれの突起が前記スロットと係合したときに前記スライダ軸に非平行な方向に沿って延びるスライダと、作動機構に取り付け可能であり、前記スライダから離間したリターンと、前記スライダ及び前記リターンの両方と動作可能に係合可能な作動部材であって、前記作動部材は、第1端、第2端、前記第1端から前記リターンまで延びる第1部分、及び前記リターンから前記第2端まで延びる第2部分を備え、前記第1部分は、スライダに固定可能であり、それによって、前記第1部分のリターンから離れる移動により、前記スライダは前記第1位置に向かって移動し、前記第2部分の前記リターンから離れる移動により、前記スライダは前記第2位置に向かって移動する作動部材と、を備える。
【0006】
使用中、スライダが第1位置と第2位置との間でスライダ軸に沿って移動するとき、第1及び第2突起の各々は、それぞれのスロット内でスライドしてもよい。各スロットは、スライダ軸に非平行な方向に延びるため、それぞれのスロット内での各突起の移動により、スロットはスライダ軸に対して移動する。各スロットの移動は、ジョー軸の周りのそれぞれのジョーの回転によって容易になり、従って、スライダの移動により、ジョーはジョー軸の周りで回転する。さらに、各ジョー、特に各スロットは、ジョーが互いに反対の向きにジョー軸の周りで回転するように構成されてもよい。つまり、スライダの移動により、第1ジョーは、第1向きに回転し、第2ジョーは、第1向きとは反対の第2向きに回転する。
【0007】
作動部材の第1部分は、作動部材の第1端からリターンまで延び、使用中に第1部分のリターンから離れる移動により、スライダがリターンから離れて第1位置に移動するように、スライダに固定されてもよい。言い換えれば、作動部材の第1端をリターンから引き離すことによって、スライダは第1位置に向かって移動する。作動部材の第2部分は、作動部材のリターンから第2端まで延び、スライダに固定されていない。使用中、第2部分のリターンから離れる移動により、作動部材の第1部分は、リターンに向かって移動し、従って、スライダは第2位置に向かって移動する。従って、作動部材の第2端をリターンから引き離すことによって、スライダは第2位置に向かって移動する。
【0008】
従って、本発明によれば、単一の作動部材を作動させることによって、作動機構の第1ジョー及び第2ジョーの両方を同時に互いに反対の向きに回転させることができる。さらに、作動部材を拮抗的に作動させることによって、各ジョーを第1向き又は第1向きと反対の第2向きに回転させることができる。言い換えれば、作動部材の第1部分をリターンから離れるように移動させることによって、ジョーは互いに向かって回転し、一方、作動部材の第2部分をリターンから離れるように移動させることによって、ジョーは互いに離れるように回転する。
【0009】
作動機構がロボティック手術器具のエンドエフェクタを作動させるために使用される場合、例えば、作動部材は、手術器具の関節部を通って延びてもよい。作動部材は狭くて可撓性があり、より具体的には、腱、ロープ、ワイヤ、糸、紐、又は同様の作動手段を容易にするのに適した他の種類の部材であってもよい。
【0010】
幾つかの既知のエンドエフェクタでは、各ジョーは、別個の対の拮抗腱によって駆動される。これは、エンドエフェクタの操作には、第1及び第2部分を備えた単一の腱ではなく、4つの腱が必要であることを意味する。各腱は、腱の作動を駆動し、腱の移動をエンドエフェクタのそれぞれのジョーに変換する関連する可動部品を有することになる。このような既知のエンドエフェクタは、すべての4つの腱及び関連する可動部分を容易にするために手術器具をどれだけ小さくできるか、また、それらの4つの腱を駆動するために必要なモータ及び他のコンポーネントのすべてを備えながらいかにコスト効率よく製造できるかなどの制限を受ける可能性がある。本発明は、それぞれ手術器具を通って延びる第1及び第2部分に必要な腱が1つだけであるため、これらの欠点を克服する。それに応じて、手術器具は、収容する必要がある腱の数が少なくなるので、よりコンパクトになる可能性がある。また、腱が1つしかないため、関連する可動部品の数は、さらに減らないとしても、半分になる可能性がある。
【0011】
ジョーによって加えられる力の量と可能な回転角度は、それぞれスライダ軸に対するスロットの角度に依存する。スライダがスライダ軸に沿って移動すると、各突起は、それぞれのスロットを介してそれぞれのジョーに力を伝達する。その力の一部は、ジョーをジョー軸の周りで回転させるために消費され、一部は、突起とスロットとの間の摩擦を克服するために消費され、残りはジョーに伝達され、ジョーが開閉するときにジョーによって適用される可能性があると考えられる。スライダが所与の位置にある時に、各スロットとスライダ軸との間の角度が浅くなると、スライダ軸に沿ったスライダの移動単位当たりのジョーの回転が少なくなり、従ってジョーを回転させるために消費される力が少なくなる。角度が浅いと、突起とスロットの間の摩擦に打ち勝つために必要な力も減少する。従って、角度が浅いと、より大きな大きさの力がジョーに伝達され、この力は、ジョーが開閉するときにジョーによって加えられる可能性がある。
【0012】
逆に言えば、各スロットとスライダ軸との間の角度が大きくなると、ジョーによって加えられる可能性のある大きさの力を犠牲にして、スライダ軸に沿ったスライダの移動単位当たりにジョーがさらに回転することになる。
【0013】
スライダ軸に対するスロットの角度、及びスロットの形状は、スライダがスライダ軸に沿って所与の位置にあるときに、ジョーによって加えられる力が適切になるように用途に適するように適合されてもよい。さらに、スロットの角度及び形状は、ジョーがジョー軸に対して異なる回転角度で位置決めされたときに異なる大きさの力を加えることができるように適合されてもよい。これにより、特定の用途に合わせて力を最適化できる場合がある。
【0014】
スロットの各々は、直線的に又は非直線的に延びることができる。直線状のスロットは、ジョー位置と加えられる力との間のより単純な関係を提供し、従って、作動機構のより直観的な使用を可能にする。非直線状のスロットは、ジョー位置と加えられる力との間のより多様な可能な関係を可能にする。この関係はより複雑になる可能性があり、これにより、作動機構が使用される用途に合わせて作動機構をより最適化できる可能性がある。
【0015】
本発明の実施形態では、リターンは、リターン軸の周りで回転可能なプーリを備えることができ、作動部材は、第1部分と第2部分との間でプーリの周りを通過することができる。
【0016】
本発明のこのような実施形態では、プーリは、作動部材が拮抗的に作動するときに、第1端又は第2端のいずれかをリターンから離れるように移動させることによって、作動部材とリターンとの係合から生じる摩擦を低減することができる。低減した摩擦は、作動部材の耐久性の向上、作動部材を作動させるのに必要なエネルギーの低減、及び/又はスライダとしての作動部材の性能の向上などの利点を提供し得、従って、ジョーはより正確に作動し、バックラッシュやぎくしゃくした動きの可能性が低くなる。
【0017】
本発明の実施形態では、リターンは、リターン軸に沿って延びかつプーリを支持するアクスルをさらに備えてもよい。
【0018】
本発明のこのような実施形態では、プーリは、アクスルの周りで回転可能であってもよく、アクスルは、リターン軸の周りで回転可能であってもよく、又はその両方であってもよく。
【0019】
本発明の他の実施形態では、リターンは、リターン軸に対して固定されてもよく、リターン及び/又は作動部材は、作動部材が低い摩擦係数でリターン上をスライドできるように適合されてもよい。
【0020】
本発明の実施形態では、リターン軸は、ジョー軸と同軸であってもよい。さらに、本発明の幾つかの実施形態では、第1及び第2ジョーは、第1及び第2ジョーがアクスルによって支持され、アクスルの周りで回転可能であるように、アクスルと回転可能に係合可能であってもよい。
【0021】
本発明のこのような実施形態では、ジョー、リターン及びスライダが占める長手方向の空間は、同じ軸及び同じアクスルの周りで回転可能なジョー及びプーリによって減少することができる。従って、作動機構は全体的によりコンパクトになる可能性がある。作動機構の複雑さは、必要な部品の数の点でも軽減され、ひいては製造コストを削減し、故障する可能性のある部品が少なくなるため作動機構の耐久性を向上させることができる。
【0022】
本発明の実施形態では、作動部材は、リターンと第2端との間でスライダとスライド可能に係合可能であってもよい。
【0023】
本発明のこのような実施形態では、作動部材の第2部分は、スライダに対して移動可能な状態を維持し、スライダがリターンに向かう方向とリターンから離れる方向の両方に確実に移動できるようにする。さらに、作動部材の第2部分とスライダとのスライド可能な係合は、スライダが作動部材の第1部分の移動に応じてスライダ軸に沿って移動するときのスライダの安定性を向上させることができる。特に、それぞれのジョーによって第1及び第2突起に及ぼされる力によりスライダがねじれる可能性を低減することができる。
【0024】
本発明の実施形態では、スライダは、第1部材受け部と第2部材部を備えてもよく、作動部材は、第1部材受け部を介してスライダに固定可能であり、第2部材受け部内にスライド可能に受け入れ可能あってもよい。
【0025】
本発明のこのような実施形態では、第1及び第2部材受け部は、スライダの残りの部分とは別個に形成され、それに取り付け可能であってもよいし、又は、第1及び第2部材受け部は、スライダの残りの部分と一体であってもよい。例えば、第1及び第2部材受け部は、例えばレーザースポット溶接などの任意の適切な手段によってスライダに取り付け可能な第1及び第2フェルールであってもよい。あるいは、第1及び第2部材受け部は、スライダを通って延びる第1及び第2チャンネルであってもよい。
【0026】
作動部材の第1部分は、任意の適切な手段によって第1部材受け部に固定されてもよい。例えば、第1部材受け部がフェルールである場合、フェルールは、作動部材に圧着、接着、レーザースポット溶接又はんだ付けされてもよい。
【0027】
本発明の実施形態では、各ジョーはツール部を備えてもよい。第1位置に向かうスライダの移動により、第1及び第2ジョーは、ツール部が互いに接触する閉構成に向かって回転することができる。第2位置に向かうスライダの移動により、第1及び第2ジョーは、ツール部が離間する開構成に向かって回転することができる。
【0028】
本発明のこのような実施形態では、作動部材の第1及び第2部分を拮抗的に作動させることによって、第1及び第2ジョーを閉構成と開構成との間で回転させることができる。
【0029】
本発明の実施形態では、ツール部は、鋏刃、鉗子、ディセクター又は把持器として構成されてもよい。さらに、本発明の実施形態では、ツール部は、拮抗的に作動可能な第1及び第2部分を備える単一の作動部材によって駆動されることから利益を得ることができる任意の適切なバイポーラツールを形成するように構成されてもよい。それに応じて、本発明による作動機構は、異なるタスクを実行するために好適な一連の装置を提供するように適合されてもよい。
【0030】
本発明の実施形態では、作動機構は、第1ガイドと第2ガイドを備えるハウジングをさらに備えてもよい。前記スライダが前記スライダ軸に沿って移動すると、前記第1突起は、前記第1ガイドによってガイドされ、前記第2突起は、前記第2ガイドによってガイドされる。
【0031】
本発明のこのような実施形態では、ガイドは、ジョーによって突起に及ぼされる力により、スライダがスライダ軸の周りで回転したりねじれたりするのを阻止するために、スライダを支持することができる。
【0032】
ガイドは、任意の適切な手段によって突起を支持するように適合されてもよい。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、第1及び第2ガイドは、その中に突起がスライド可能に受け入れ可能なチャンネルであってもよい。本発明の他の実施形態では、各ガイドはリッジであってもよく、各突起は、それぞれのガイドがスライド可能に受け入れ可能なチャンネルを備えてもよい。
【0033】
本発明の第2態様によれば、手術器具が提供される。この手術器具は、シャフトと、シャフトに結合された関節部と、関節部に結合されたエンドエフェクタとを備え、エンドエフェクタは、本発明の第1態様による作動機構を備える。
【0034】
手術器具は、外科手術に使用されてもよく、ロボティック手術器具であってもよい。関節部は、最大6自由度でシャフトに対するエンドエフェクの移動を容易にするように作動することができる。さらに、関節部は、例えば、腱の作動を駆動することができるアクチュエータ及びモータまでシャフトに沿って延びる複数の腱によって作動することができる。
【0035】
使用中、エンドエフェクタ、関節部及びシャフトは、エンドエフェクタが(関節部の作動を介して)操作され、駆動機構を介して作動され、関連する外科手術に必要なタスクを実行できるように、患者に対して必要に応じて位置決めされてもよい。より具体的には、エンドエフェクタは、スライダをスライダ軸に沿って移動させるために、作動部材の第1及び第2部分を拮抗的に作動させることによって作動し、これにより、ジョーが回転する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
ここでは、添付の図面を参照して、例としてのみ本発明を説明する。
【0037】
【
図1】本発明の第1態様の実施形態による作動機構の模式図である。
【
図2】第1と第2ジョーが閉構成にある、
図1に示される作動機構の模式図である。
【
図3】第1と第2ジョーが開構成にある、
図1に示される作動機構の模式図である。
【
図4】
図1に示される作動機構の一部をそれぞれ形成するスライダ、作動部材、リターン及びハウジングの模式図である。
【
図5】
図4に示されるスライダ及び作動機構の模式図である。
【
図6】
図4に示されるスライダ及びハウジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
最初に
図1~3を参照すると、本発明の一実施形態による作動機構は、一般に参照番号2で指定されている。作動機構2は、それぞれジョー軸8の周りで回転可能な第1ジョー4と第2ジョー6を備える。各ジョー4、6は、ツール部10を備える。ジョー4、6は、
図1及び2に示すようにツール部10が互いに接触する閉構成と、
図3に示すようにツール部10が互いに離間する開位置との間で回転可能である。
【0039】
本発明のこの実施形態では、ツール部10は把持器を形成するが、他の実施形態では、ジョー4,6は、鋏、鉗子又はディセクターなどの2つの反対方向に回転可能なジョーを備えた任意の適切なタイプのツールを形成するツール部を備えてもよい。
【0040】
作動機構2はまた、作動機構2の内部構成要素を隠して保護するように適合されたハウジング12を備える。これにより、可動部品がブロック、妨害又は損傷されるリスクを低減することができる。ハウジング12はまた、最小限の鋭利な縁又は角を備えた実質的に滑らかで規則的かつ連続的な外面を有する。作動機構2が手術器具の一部として使用されている場合、ハウジング12は、作動機構2の部品の不規則な表面から患者の内部組織を保護することができる。
【0041】
今、
図2~6を参照すると、特に
図2及び3に示すように、作動部材2は、スライダ14、リターン16及び作動部材18をさらに備える。また、第1ジョー4は第1スロット20を備え、第2ジョー6は第2スロット22を備える。
【0042】
スライダ14は、第1及び第2ジョー4、6と移動可能に係合可能であり、特に、
図2に示すような第1位置と、
図3に示すような第2位置との間でスライダ軸24に沿って移動可能である。スライダ14は、第1スロット20内にスライド可能に受け入れ可能な第1突起26と、
図4、5及び6に示すように第2スロット22内にスライド可能に受け入れ可能な第2突起28とを備える。各スロット20、22は、それぞれの突起26、28がスロット20、22と係合した時にスライダ軸24に非平行な方向に延びる。さらに、各スロット20、22は、
図2に示すように、スライダ14が第1位置にあるときにそれぞれの突起26、28を受け入れるように位置決めされた第1端21と、
図3に示すように、スライダ14が第2位置にあるときにそれぞれの突起26、28を受け入れるように位置決めされた第2端23とを備える。これは、スライダ14の移動により、第1ジョー4が第1向きに回転し、第2ジョー6が第1向きと反対の第2向きに回転することを意味する。より具体的には、第1位置に向かうスライダ14の移動により、ジョー4、6は閉構成に向かって回転し、第2位置に向かうスライダの移動により、ジョー4、6は開構成に向かって回転する。
【0043】
スライダ軸24に対するスロット20、22の角度、及びスロット20、22の形状は、用途に適するように適合されてもよい。特に、各スロット20、22は、スライダ14が所与の位置にあるときの各スロット20、22の角度が、ジョー4、6がジョー軸8の周りで特定の回転角度で回転するときにジョー4、6によって加えられる適切な大きさの力を可能にするのに適するように適合されてもよい。例えば、スライダが第1位置にあるときに(
図2に示す)、各スロット20、22とスライダ軸24との間の角度が浅ければ浅いほど、ジョー4、6が閉構成にあるときに又は閉構成に近いときに、ジョー4、6が加える可能性がある力は大きくなる。これは、角度が浅くなると、ジョー4、6を回転させ、第1及び第2突起26、28とそれぞれのスロット20、22との間の摩擦に打ち勝つために消費される力が少なくなるからである。ジョー4、6が閉じることができる力を増加させることは、例えば、ジョー4、6が針などの小さな物体を把握するために使用される外科的用途において特に有用であり得る。針をできるだけしっかりと保持できると、作動機構を使用する際の安全性と信頼性が向上する可能性がある。
【0044】
リターン16は、作動機構2、より具体的にはハウジング12に取り付け可能であり、スライダ14から離間している。作動部材18は、スライダ14及びリターン16の両方と動作可能に係合可能であり、第1端30、第2端32、第1部分34及び第2部分36を備える。第1部分34は、第1端30からリターン16まで延び、一方、第2部分36は、リターン16から第2端32まで延びる。第1部分34は、スライダ14に固定可能である。これは、
図2に示すように、使用中、第1部分34のリターン16から離れる移動により、スライダ14が第1位置に向かって移動することを意味する。逆に言えば、
図3に示すように、第2部分36のリターン16から離れる移動により、第1部分34はリターンに向かって移動し、従って、スライダ14は第2位置に向かって移動する。上述したように、第1位置と第2位置との間のスライダの移動により、ジョー4、6はそれぞれ閉構成と開構成との間で回転する。従って、作動部材18の拮抗作動により、ジョー4、6の関節運動が引き起こされる。
【0045】
特に
図4に示すように、リターン16は、プーリ38とアクスル40を備える。アクスル40は、ハウジング12によって支持され、リターン軸42に沿って延びる。次に、アクスル40は、リターン軸42の周りで回転可能なプーリ38を支持する。本発明のこの実施形態では、プーリ38は、作動部材18がいずれかの方向に作動するとき、即ち、第1端30又は第2端32のいずれかをリターン16から離れるように移動させるときに受ける摩擦を低減するように、軸40の周りで自由に回転可能である。本発明の他の実施形態では、プーリは、アクスルに固定されてもよく、アクスルは、ハウジングに対して回転可能であってもよいか、又は、プーリ及びアクスルは固定されてもよく、プーリは、例えば、作動部材が低摩擦係数でプーリ上をスライドすることを容易にするように適合されてもよい。
【0046】
本発明のこの実施形態では、リターン軸42は、
図1~3に示すように、ジョー軸8と同軸である。さらに、第1及び第2ジョー4、6は、ジョー4、6がアクスル40によって支持され、かつアクスル40の周りで回転可能であるように、アクスル40と回転可能に係合可能である。リターン軸42がジョー軸8と同軸となるようにリターン16を位置決めすることにより、ジョー4、6、リターン16及びスライダ14に必要とする長手方向の空間が減少し、作動機構2全体をよりコンパクトにすることができる。また、必要な部品の数という点で作動機構2の複雑さが軽減され、故障する可能性のある部品が少なくなるため、製造コストが削減され、作動機構2の耐久性が向上する。
【0047】
スライダ14は、第1部材受け部44と第2部材部46を備える。作動部材18は、第1部材受け部44を介して、第1端30とリターン16との間でスライダ14に固定可能である。さらに、作動部材18は、リターン16と第2端32との間でスライダ14とスライド可能に係合可能であり、より具体的には、第2部材受け部46内にスライド可能に受け入れ可能である。作動部材18の第2部分36とスライダとのスライド可能な係合は、スライダ軸24に沿ったスライダ14の移動に直接影響を与えないが、スライダ14がスライダ軸24に沿って移動するときのスライダ14の安定性を向上させることができる。特に、それぞれのジョー4、6によって第1及び第2突起26、28に及ぼされる力によりスライダ14がねじれる可能性を低減することができる。
【0048】
本発明のこの実施形態では、第1及び第2部材受け部44、46は、
図5に示すように、ジョイント48を介してスライダにそれぞれ取り付けられた第1及び第2フェルール45、47である。各ジョイント48は、レーザースポット溶接、又はフェルールをスライダに貼着するための他の適切な手段によって作成することができる。作動部材18の第1部分34をスライダ14に固定するために、第1フェルール45は、作動部材18に圧着される。一方、第2フェルール47は圧着されていないままであるため、作動部材18は、第2フェルール47を通って自由にスライドすることができる。
【0049】
今、
図6を参照すると、ハウジング12は、第1ガイド50と第2ガイド52を備える。使用中、スライダ14がスライダ軸24に沿って移動すると、第1突起26は、第1ガイド50によってガイドされ、第2突起28は、第2ガイド52ガイドされる。特に、ガイドは、ジョー4、6によって突起26、28に及ぼされる力により、スライダ14がスライダ軸24の周りで回転したりねじれたりするのを阻止するために、スライダ14を支持することができる。
【0050】
本発明のこの実施形態では、第1及び第2ガイド50、52は、その中に突起26、28がスライド可能に受け入れ可能なチャンネルである。しかしながら、本発明の他の実施形態では、ガイドは、任意の適切な手段によって突起を支持するように適合されてもよい。例えば、各ガイドはリッジであってもよく、各突起は、その中にそれぞれのガイドがスライド可能に受け入れ可能なチャンネルを備えてもよい。
【0051】
本発明の所与の態様、特徴、又はパラメーターの好み及び選択肢は、文脈が別段の指示をしない限り、本発明の他のすべての態様、特徴、及びパラメーターのあらゆる好み及び選択肢と組み合わせて開示されたと見なされるべきである。
【国際調査報告】