(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】結合剤およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240130BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240130BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240130BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240130BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240130BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240130BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240130BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240130BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240130BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240130BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240130BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240130BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240130BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20240130BHJP
C12N 5/0784 20100101ALN20240130BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240130BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P37/02
A61P1/00
A61P1/04
A61P19/02
A61P3/10
A61P13/12
A61P21/04
A61P9/00
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P31/12
A61P31/18
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/20
A61P37/04
A61P37/06
A61P43/00 121
C12N5/0781
C12N5/0784
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571242
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022014881
(87)【国際公開番号】W WO2022169825
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523292304
【氏名又は名称】モーツァルト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クレイン, コートニー
(72)【発明者】
【氏名】スウィデレク, クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン, スーザン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS33
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085BB36
4C085BB42
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CD8+KIR+T調節性細胞に特異的に結合する結合剤、および疾患または障害、例えば、炎症性疾患、自己免疫疾患、がんまたは感染性疾患の処置におけるそれらの使用を提供する。結合剤、およびCD8+KIR+調節性T細胞(Treg)の活性をモジュレートするためのそれらの使用の方法が、本明細書で提供される。結合剤は、二特異性または多特異性であり、CD8+KIR+Tregの表面上で発現される抗原に特異的に結合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の抗原に特異的に結合する第1の結合ドメインであって、前記第1の抗原が、KIRタンパク質以外の、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)上で発現される抗原から選択される、第1の結合ドメイン;および
阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する第2の結合ドメイン
を含む結合剤であって、CD8+KIR+Tregに結合する、結合剤。
【請求項2】
前記第1の抗原が、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BBからなる群から選択される、請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
前記第1の抗原が、抗原の以下の群:
a.CD3、CD5、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DR;
b.LAG-3/CD223、TIM-3、PD-1、S1000A8/9およびTLT2;
c.CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BB;
d.CD103(ITGAE)、CD166、CD177、CXCR3およびS1000A8/9;
e.CCR7、CXCR3およびCXCR5;
f.PD-1、ICOSおよびCXCR3;
g.CD3、CD5およびCD8;ならびに
h.CD3およびCD8
から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項4】
二特異性抗体、ダイアボディ、抗体Fc融合物、scFv1-ScFv2、scFv1
2-Fc-scFv2
2、IgG-scFv、DVD-Ig、トリオマブ/クアドローマ、ツーインワンIgG、scFv
2-Fc、TandAb、scFv-HSA-scFv、scFv-VHH、Fab-scFv-Fc、Fab-VHH-Fc、dAb-IgG、IgG-VHH、タンデムscFv-Fc、(scFv1)
2-Fc-(VHH)
2、BiTe、DART、クロスマブ、scFv-Fc、1アームタンデムscFv-Fc、DART-Fc、アンチカリン、アフィボディ、アビマー、DARPinまたはアドネクチンである、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項5】
前記第1または第2の結合ドメインのいずれかが、抗体またはその抗原結合部分から選択され、他方の結合ドメインが、抗体断片である、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項6】
前記抗原結合部分が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvまたは単一ドメイン抗体である、請求項5に記載の結合剤。
【請求項7】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項8】
前記第2の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項9】
前記第1の結合ドメインが、CD3またはCD3のサブユニット、必要に応じてCD3イプシロンに特異的に結合する、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項10】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVLのアミノ酸配列が、
a.それぞれ、配列番号1および配列番号2;
b.それぞれ、配列番号9および配列番号10;
c.それぞれ、配列番号17および配列番号18;
d.それぞれ、配列番号25および配列番号26;
e.それぞれ、配列番号33および配列番号34;
f.それぞれ、配列番号41および配列番号34;
g.それぞれ、配列番号45および配列番号34;
h.それぞれ、配列番号49および配列番号50;
i.それぞれ、配列番号57および配列番号58;
j.それぞれ、配列番号65および配列番号66;ならびに
k.それぞれ、配列番号65および配列番号166
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択される、請求項9に記載の結合剤。
【請求項11】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、前記CDRが、
a.それぞれ、配列番号3~配列番号8;
b.それぞれ、配列番号11~配列番号16;
c.それぞれ、配列番号19~配列番号24;
d.それぞれ、配列番号27~配列番号32;
e.それぞれ、配列番号35~配列番号40;
f.それぞれ、配列番号42~配列番号44および配列番号38~配列番号40;
g.それぞれ、配列番号46~配列番号48および配列番号38~配列番号40;
h.それぞれ、配列番号51~配列番号56;
i.それぞれ、配列番号59~配列番号64;
j.それぞれ、配列番号67~配列番号72;ならびに
k.それぞれ、配列番号67~69および167~169
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の結合剤。
【請求項12】
前記第1の結合ドメインが、CD8またはCD8のサブユニット、必要に応じてCD8アルファに特異的に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項13】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVL領域が、
a.それぞれ、配列番号73および配列番号74;ならびに
b.それぞれ、配列番号81および配列番号82
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する;
または前記第1の結合ドメインが、VHH鎖を含み、前記VHH鎖が、
c.配列番号89;
d.配列番号93;および
e.配列番号97
からなる群に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の結合剤。
【請求項14】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、前記CDRが、
a.それぞれ、配列番号75~配列番号80;もしくは
b.それぞれ、配列番号83~配列番号88
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する;
または前記第1の結合ドメインが、hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有するVHH鎖を含み、前記VHHのCDRが、
c.それぞれ、配列番号90~配列番号92;
d.それぞれ、配列番号94~配列番号96;および
e.それぞれ、配列番号98~配列番号100
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の結合剤。
【請求項15】
前記第1の結合ドメインが、ICOSに特異的に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項16】
前記第1の結合ドメインが、配列番号170のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号171のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項15に記載の結合剤。
【請求項17】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号172、173および174に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号175、176および177に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、請求項15に記載の結合剤。
【請求項18】
前記第1の結合ドメインが、PD-1に特異的に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項19】
前記第1の結合ドメインが、配列番号178のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号179のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項18に記載の結合剤。
【請求項20】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号180、181および182に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号183、184および185に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、請求項18に記載の結合剤。
【請求項21】
前記第1の結合ドメインが、CXCR3に特異的に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項22】
前記第1の結合ドメインが、配列番号186のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号187のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項21に記載の結合剤。
【請求項23】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号188、189および190に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号191、192および193に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、請求項21に記載の結合剤。
【請求項24】
前記第1の結合ドメインが、CD5に特異的に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項25】
前記第1の結合ドメインが、配列番号194のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号195のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項24に記載の結合剤。
【請求項26】
前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号196、197および198に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号199、200および201に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、請求項24に記載の結合剤。
【請求項27】
前記阻害性KIRタンパク質が、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3またはそれらの組合せから選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項28】
前記第2の結合ドメインが、KIR2DL1/2/3またはKIR2DL1/2に特異的に結合する、請求項27に記載の結合剤。
【請求項29】
前記第2の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVLが、
a.それぞれ、配列番号101および配列番号102;
b.それぞれ、配列番号109および配列番号110;
c.それぞれ、配列番号117および配列番号118;
d.それぞれ、配列番号125および配列番号126;
e.それぞれ、配列番号133および配列番号134;
f.それぞれ、配列番号141および配列番号142;
g.それぞれ、配列番号149および配列番号150;ならびに
h.それぞれ、配列番号157および配列番号158
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項30】
前記第2の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、前記CDRが、
a.それぞれ、配列番号103~配列番号108;
b.それぞれ、配列番号111~配列番号116;
c.それぞれ、配列番号119~配列番号124;
d.それぞれ、配列番号127~配列番号132;
e.それぞれ、配列番号135~配列番号140;
f.それぞれ、配列番号143~配列番号148;
g.それぞれ、配列番号151~配列番号156;ならびに
h.それぞれ、配列番号159および配列番号164
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項31】
Fcドメインを含有しない、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項32】
Fcドメインをさらに含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項33】
前記Fcドメインが、IgG1およびIgG4 Fcドメインから選択される、請求項32に記載の結合剤。
【請求項34】
エフェクター機能活性を実質的に有さない、請求項33に記載の結合剤。
【請求項35】
前記FcドメインがIgG1 Fcドメインである、請求項32から34のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項36】
前記FcドメインがIgG1 Fcヌルである、請求項32から35のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項37】
二価または四価である、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項38】
二特異性である、先行する請求項のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項39】
請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項40】
請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤をコードする核酸。
【請求項41】
請求項40に記載の核酸を含むベクター。
【請求項42】
請求項41に記載のベクターを含む細胞系。
【請求項43】
自己免疫疾患を処置する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、前記対象における病原性免疫細胞の数または活性を減少させ、それにより、前記自己免疫疾患の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項44】
病原性免疫細胞によって媒介される免疫応答を抑制する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それにより、病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法。
【請求項45】
自己抗原などの抗原に対する免疫応答を抑制する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、前記抗原または自己抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法。
【請求項46】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記病原性免疫細胞が、自己反応性CD4+T細胞、自己抗体産生B細胞または自己抗原提示樹状細胞である、請求項43から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記病原性免疫細胞が、自己抗原提示細胞である、請求項43から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
自己抗体の力価が、前記対象において減少する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、セリアック病、クローン病、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、ループス腎炎、重症筋無力症、心筋炎、多発性硬化症(MS)、天疱瘡/類天疱瘡、関節リウマチ(RA)、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群(SjS)、全身性エリテマトーデス(SLE)および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患からなる群から選択される自己免疫疾患を有する、請求項43から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記自己免疫疾患が、セリアック病、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、ループス腎炎、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群(SjS)、全身性エリテマトーデス(SLE)および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項43から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項43から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項43から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項43から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項43から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項43から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、請求項43から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、請求項43から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
免疫抑制剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項43から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、請求項43から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記処置転帰の改善が、疾患再燃の頻度もしくは重症度の低減、全身性炎症性サイトカインの低減、または前記自己免疫疾患に関連する症状の自己報告の低減である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記結合剤が、静脈内投与される、請求項43から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記結合剤が、皮下投与される、請求項43から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記結合剤が、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される、請求項43から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、請求項43から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における自己免疫疾患の処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用。
【請求項70】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる病原性免疫細胞による免疫応答の低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用。
【請求項71】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における自己抗体力価の低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用。
【請求項72】
がんを処置する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、前記がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、方法。
【請求項73】
がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さず、それにより、前記がん抗原に対する前記免疫応答が増加する、方法。
【請求項74】
がんを処置する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを枯渇させ、それにより、前記がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法。
【請求項75】
がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それにより、前記がん抗原に対する前記免疫応答が増加する、方法。
【請求項76】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、請求項73または請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記免疫応答の増加が、がん細胞の低減または免疫抑制性免疫細胞の枯渇を含む、請求項73および75から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記対象における前記がん細胞が減少する、請求項72から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記がんが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、骨髄腫および白血病からなる群から選択される、請求項72から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記がんが、固形腫瘍、例えば、乳房、子宮頸部、卵巣、肺、CRC(および腸の他のがん)、皮膚、食道、腺癌、膀胱および前立腺;ならびにリンパ腫からなる群から選択される、請求項72から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項72から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項72から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項72から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項72から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項72から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項72から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、請求項72から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、請求項72から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
化学療法剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項72から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、請求項72から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記処置転帰の改善が、部分奏効または完全奏効である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記処置転帰の改善が寛解である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記結合剤が、静脈内投与される、請求項72から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記結合剤が、皮下投与される、請求項72から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記結合剤が、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される、請求項72から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象におけるがんの処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項99】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる免疫抑制性免疫細胞による免疫抑制の低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項100】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における腫瘍負荷の低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項101】
CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象におけるがんの処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
【請求項102】
CD8+KIR+Tregの枯渇のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
【請求項103】
対象における腫瘍負荷の低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
【請求項104】
感染症を処置する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、前記感染症の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項105】
感染症によって引き起こされる感染細胞に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それによる、前記感染細胞に対する前記免疫応答の、方法。
【請求項106】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記免疫応答が、感染細胞の低減、またはCD4+T調節性細胞および寛容性DCから選択される免疫抑制性免疫細胞の低減を含む、請求項104から108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記対象における感染細胞の数が減少する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記感染症が、細菌疾患、全身性真菌疾患、リケッチア疾患、寄生生物疾患およびウイルス疾患から選択される、請求項104から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記感染症が、HIV感染症、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、エプスタインバーウイルス(EBV)感染症、コロナウイルス感染症、例えば、SARS-COV2感染症(Covid-19)、サイトメガロウイルス(CMV)感染症およびインフルエンザウイルス感染症からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項104から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項104から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項104から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項104から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項104から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項104から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、請求項104から118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、請求項104から119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
抗微生物剤または抗ウイルス剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項104から120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、請求項104から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記処置転帰の改善が、感染症または感染細胞の低減である、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記結合剤が、静脈内投与される、請求項104から123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記結合剤が、皮下投与される、請求項104から123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記結合剤が、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される、請求項104から125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、請求項104から126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における感染症の処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用。
【請求項129】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、免疫抑制性免疫細胞を抑制することによる免疫応答の刺激のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用。
【請求項130】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における感染症または感染細胞の低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用。
【請求項131】
移植後の移植片対宿主病(GVHD)の発症を低減または予防する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、GVHDの少なくとも1つの症状を低減または緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、方法。
【請求項132】
移植を受けた対象を処置する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さず、それにより、GVHDが低減または抑制される、方法。
【請求項133】
移植を受けた対象を処置する方法であって、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを枯渇させ、それにより、GVHDの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法。
【請求項134】
移植に対するGVHDを抑制する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それにより、GVHDまたはその症状が減少し、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法。
【請求項135】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、請求項132または請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、請求項132に記載の方法。
【請求項137】
前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記低減または減少されたGVHDが、GVHDにおいて活性なCD4+T細胞における低減を含む、請求項132および134から137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記移植が、臓器移植、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体または分化した細胞の移植、および骨髄移植からなる群から選択される、請求項131から138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記移植が、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞の移植、または骨髄移植である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記移植が同種異系である、請求項131から140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項131から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項131から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項131から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項131から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項131から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、請求項131から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、請求項131から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、請求項131から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
免疫抑制剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項131から149のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、請求項131から150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記処置転帰の改善が、GVHDに関連する症状の低減、全身性炎症性サイトカインの低減、GVHDによって影響される組織における病変の低減、宿主組織に対する有害作用に関連する免疫応答に関連する症状の自己報告の低減、移植生着の改善もしくは延長、1つもしくは複数の症状の軽減、および/または前記移植の拒絶の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速、または広範な免疫抑制剤、例えば、コルチコステロイドの使用の減少による移植生着の延長である、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記結合剤が、静脈内投与される、請求項131から152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記結合剤が、皮下投与される、請求項131から152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
対象における移植に関連するGVHDの処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項156】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における移植に関連するGVHDの処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項157】
CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる移植に関連するGVHDの低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項158】
移植に対するGVHDの低減のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
【請求項159】
CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象における移植に関連するGVHDの処置のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
【請求項160】
CD8+KIR+Tregの枯渇のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
【請求項161】
GVHDを低減させるために移植を受けた対象におけるCD8+KIR+Tregの枯渇のための、請求項1から38のいずれか一項に記載の結合剤または請求項39に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する陳述
本出願に関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、これにより参照により本明細書に組み込まれる。この配列表を含有するテキストファイルの名称は、670151_403WO_Sequence_Listing.txtである。このテキストファイルは、85KBであり、2022年1月20日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
背景
免疫系には、自然免疫および適応免疫系が含まれる。適応免疫系は、T細胞サブセットおよびB細胞サブセットを含むいくつかの細胞サブタイプを有する。T細胞サブセットには、ナイーブTリンパ球およびエフェクターTリンパ球、例えば、細胞傷害性T細胞およびヘルパーT細胞、ならびに調節性T細胞が含まれる、種々の型のT細胞が含まれる。これらのT細胞型の活性は、エフェクターT細胞の活性と調節性T細胞による調節との間のバランスによって達成される。エフェクターT細胞は、炎症を促進するが、調節性T細胞は、それを制御すると一般に考えられている。したがって、Tregは、自己寛容を維持し、自己免疫を制限し、自己反応性CD4+Tエフェクター細胞の拡大増殖および活性化を制御することによって、自己免疫性病変発生において重要な役割を果たす。エフェクターT細胞と調節性T細胞との間のバランスの崩壊は、免疫応答の不適切な活性化または抑制、自己寛容の喪失、自己免疫性障害、およびがんをもたらし得る。免疫系のバランスを維持するための機構および調節性T細胞の調節は、理解され始めたばかりである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
簡潔な概要
結合剤、およびCD8+KIR+調節性T細胞(Treg)の活性をモジュレートするためのそれらの使用の方法が、本明細書で提供される。結合剤は、二特異性または多特異性であり、CD8+KIR+Tregの表面上で発現される抗原に特異的に結合する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHCクラスI拘束される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHC Qa-1拘束されない。自己免疫疾患、感染性疾患およびがんの処置のために結合剤を使用する方法もまた提供される。
【0004】
一部の実施形態では、第1の抗原に特異的に結合する第1の結合ドメインであって、第1の抗原が、KIRタンパク質以外の、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)上で発現される抗原から選択される、第1の結合ドメイン;およびCD8+KIR+Tregの表面上で発現される阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する第2の結合ドメインを含む、結合剤であって、CD8+KIR+Tregに結合する、結合剤が提供される。
【0005】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BBからなる群から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BBからなる群から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DRから選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD5、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DRから選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、LAG-3/CD223、TIM-3、PD-1、S1000A8/9およびTLT2から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD103(ITGAE)、CD166、CD177、CXCR3およびS1000A8/9から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CCR7、CXCR3およびCXCR5から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、PD-1、CXCR3およびICOSから選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD5およびCD8から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3およびCD8から選択される。
【0006】
一部の実施形態では、結合剤は、二特異性抗体、ダイアボディ(diabody)、抗体Fc融合物、scFv1-ScFv2、scFv12-Fc-scFv22、IgG-scFv、DVD-Ig、トリオマブ(triomab)/クアドローマ、ツーインワン(two-in-one)IgG、scFv2-Fc、TandAb、scFv-HSA-scFv、scFv-VHH、Fab-scFv-Fc、Fab-VHH-Fc、dAb-IgG、IgG-VHH、タンデムscFv-Fc、(scFv1)2-Fc-(VHH)2、BiTe、DART、クロスマブ(crossmab)、アンチカリン(anticalin)、アフィボディ(affibody)、アビマー(avimer)、DARPin、アドネクチン(adnectin)、scFv-Fc、1アーム(one-armed)タンデムscFv-FcまたはDART-Fcである。一部の実施形態では、結合剤の第1または第2の結合ドメインのいずれかは、抗体またはその抗原結合部分から選択され、他方の結合ドメインは、抗体断片である。一部の実施形態では、抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvまたは単一ドメイン抗体(VHH、VNAR、sdAbまたはナノボディ(nanobody)とも呼ばれる)である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0007】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3またはCD3のサブユニット、必要に応じてCD3イプシロンに特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、
a.それぞれ、配列番号1および配列番号2;
b.それぞれ、配列番号9および配列番号10;
c.それぞれ、配列番号17および配列番号18;
d.それぞれ、配列番号25および配列番号26;
e.それぞれ、配列番号33および配列番号34;
f.それぞれ、配列番号41および配列番号34;
g.それぞれ、配列番号45および配列番号34;
h.それぞれ、配列番号49および配列番号50;
i.それぞれ、配列番号57および配列番号58;
j.それぞれ、配列番号65および配列番号66;ならびに
k.それぞれ、配列番号65および配列番号166
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0008】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、CDRは、
a.それぞれ、配列番号3~配列番号8;
b.それぞれ、配列番号11~配列番号16;
c.それぞれ、配列番号19~配列番号24;
d.それぞれ、配列番号27~配列番号32;
e.それぞれ、配列番号35~配列番号40;
f.それぞれ、配列番号42~配列番号44および配列番号38~配列番号40;
g.それぞれ、配列番号46~配列番号48および配列番号38~配列番号40;
h.それぞれ、配列番号51~配列番号56;
i.それぞれ、配列番号59~配列番号64;
j.それぞれ、配列番号67~配列番号72;ならびに
k.それぞれ、配列番号67~69および167~169
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0009】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD8またはCD8のサブユニット、必要に応じてCD8アルファに特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVL領域は、
a.それぞれ、配列番号73および配列番号74;ならびに
b.それぞれ、配列番号81および配列番号82
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する;
または前記第1の結合ドメインが、VHH鎖を含み、前記VHH鎖が、以下:
c.配列番号89;
d.配列番号93;および
e.配列番号97
からなる群に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0010】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、CDRのアミノ酸配列は、以下:
a.それぞれ、配列番号75~配列番号80;もしくは
b.それぞれ、配列番号83~配列番号88
からなる群に示されるアミノ酸配列から選択される;
または第1の結合ドメインは、hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有するVHH鎖を含み、VHHのCDRのアミノ酸配列は、以下:
c.それぞれ、配列番号90~配列番号92;
d.それぞれ、配列番号94~配列番号96;および
e.それぞれ、配列番号98~配列番号100
からなる群に示されるアミノ酸配列から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、ICOSまたはICOSのサブユニットに特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、それぞれ、配列番号170および配列番号171のアミノ酸配列を有する。
【0012】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号172~174のアミノ酸配列を有するhCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにそれぞれ配列番号175~177のアミノ酸配列を有するlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含む。
【0013】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、PD-1またはPD-1のサブユニットに特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、それぞれ、配列番号178および配列番号179のアミノ酸配列を有する。
【0014】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号180~182のアミノ酸配列を有するhCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにそれぞれ配列番号183~185のアミノ酸配列を有するlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含む。
【0015】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CXCR3またはCXCR3のサブユニットに特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、それぞれ、配列番号186および配列番号187のアミノ酸配列を有する。
【0016】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号188~190のアミノ酸配列を有するhCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにそれぞれ配列番号191~193のアミノ酸配列を有するlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含む。
【0017】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD5またはCD5のサブユニットに特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、それぞれ、配列番号194および配列番号195のアミノ酸配列を有する。
【0018】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号196~198のアミノ酸配列を有するhCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにそれぞれ配列番号199~201のアミノ酸配列を有するlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含む。
【0019】
一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3またはそれらの組合せから選択される阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、KIR2DL1/2/3またはKIR2DL1/2に特異的に結合する。一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVLが、
a.それぞれ、配列番号101および配列番号102;
b.それぞれ、配列番号109および配列番号110;
c.それぞれ、配列番号117および配列番号118;
d.それぞれ、配列番号125および配列番号126;
e.それぞれ、配列番号133および配列番号134;
f.それぞれ、配列番号141および配列番号142;
g.それぞれ、配列番号149および配列番号150;ならびに
h.それぞれ、配列番号157および配列番号158
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0020】
一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、CDRは、
a.それぞれ、配列番号103~配列番号108;
b.それぞれ、配列番号111~配列番号116;
c.それぞれ、配列番号119~配列番号124;
d.それぞれ、配列番号127~配列番号132;
e.それぞれ、配列番号135~配列番号140;
f.それぞれ、配列番号143~配列番号148;
g.それぞれ、配列番号151~配列番号156;ならびに
h.それぞれ、配列番号159および配列番号164
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0021】
一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインを含有しない。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインを含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG1およびIgG4 Fcドメインから選択される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcヌルである。
【0022】
一部の実施形態では、結合剤は、二価または四価である。一部の実施形態では、結合剤は、二特異性である。
【0023】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物もまた提供される。
【0024】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤をコードする核酸もまた提供される。本明細書に記載される核酸の実施形態のいずれかを含むベクターがさらに提供される。本明細書に記載される核酸またはベクターの実施形態のいずれかを含む細胞系もさらに提供される。
【0025】
一部の実施形態では、自己免疫疾患を処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかを、それを必要とする対象に、対象における病原性免疫細胞の数または活性を減少させ、それにより、自己免疫疾患の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法が提供される。
【0026】
一部の実施形態では、病原性免疫細胞によって媒介される免疫応答を抑制する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかと接触させるステップを含み、それにより、病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法が提供される。
【0027】
一部の実施形態では、自己抗原に対する免疫応答を抑制する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、自己抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法が提供される。
【0028】
一部の実施形態では、抗原に対する免疫応答を抑制する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法が提供される。
【0029】
自己免疫疾患を処置するまたは免疫応答を抑制するこれらの方法の一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与される。一部の実施形態では、病原性免疫細胞は、自己反応性CD4 T細胞、自己抗体産生B細胞または自己抗原提示樹状細胞である。一部の実施形態では、病原性免疫細胞は、自己抗原提示細胞である。一部の実施形態では、自己抗体の力価は、対象において減少する。
【0030】
一部の実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する。一部の実施形態では、自己免疫疾患は、セリアック病、クローン病、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、ループス腎炎、重症筋無力症、心筋炎、多発性硬化症(MS)、天疱瘡/類天疱瘡、関節リウマチ(RA)、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群(SjS)、全身性エリテマトーデス(SLE)および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される。
【0031】
自己免疫疾患を処置するまたは免疫応答を抑制する方法の一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD8および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD5および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のPD-1および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHCクラスI拘束される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されない。
【0032】
自己免疫疾患を処置するまたは免疫応答を抑制する方法の一部の実施形態では、これらの方法は、免疫抑制剤を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、対象への結合剤の投与は、対象において処置転帰の改善を生じる。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、疾患再燃の頻度もしくは重症度の低減、全身性炎症性サイトカインの低減、または自己免疫疾患に関連する症状の自己報告の低減である。
【0033】
自己免疫疾患を処置するまたは免疫応答を抑制する方法の一部の実施形態では、結合剤は、静脈内投与される。一部の実施形態では、結合剤は、皮下投与される。一部の実施形態では、結合剤は、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0034】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における自己免疫疾患の処置のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる病原性免疫細胞による免疫応答の低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における自己抗体力価の低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用が提供される。
【0035】
一部の実施形態では、がんを処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を活性化または刺激し、それにより、がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、方法が提供される。
【0036】
一部の実施形態では、がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかと接触させるステップを含み、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さず、それにより、がん抗原に対する免疫応答が増加する、方法が提供される。
【0037】
一部の実施形態では、がんを処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を枯渇させ、それにより、がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法が提供される。
【0038】
一部の実施形態では、がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかと接触させるステップを含み、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有し、それにより、がん抗原に対する免疫応答が増加する、方法が提供される。
【0039】
がんを処置するまたはがんに関連する抗原に対する免疫応答を刺激する方法の一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与される。一部の実施形態では、免疫応答の増加は、がん細胞の低減または免疫抑制性免疫細胞の枯渇を含む。一部の実施形態では、対象におけるがん細胞の数は減少する。
【0040】
一部の実施形態では、がんは、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病からなる群から選択される。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍、例えば、乳房、子宮頸部、卵巣、肺、結腸直腸(CRC)(および腸の他のがん)、皮膚、食道、腺癌、膀胱および前立腺のがん;ならびにリンパ腫からなる群から選択される。
【0041】
一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD8および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD5および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のPD-1および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHCクラスI拘束される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されない。
【0042】
一部の実施形態では、これらの方法は、化学療法剤を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、これらの方法は、免疫療法を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、これらの方法は、免疫療法、例えば、チェックポイント阻害剤を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、対象への結合剤の投与は、対象において処置転帰の改善を生じる。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、部分奏効または完全奏効である。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、寛解である。
【0043】
一部の実施形態では、結合剤は、静脈内投与される。一部の実施形態では、結合剤は、皮下投与される。一部の実施形態では、結合剤は、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される。
【0044】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象におけるがんの処置のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用であって、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用が提供される。
【0045】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる免疫抑制性免疫細胞による免疫抑制の低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用であって、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用が提供される。
【0046】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における腫瘍負荷の低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用であって、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用が提供される。
【0047】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象におけるがんの処置のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用であって、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用が提供される。
【0048】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregの枯渇のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用であって、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用が提供される。
【0049】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象における腫瘍負荷の低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用であって、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用が提供される。
【0050】
一部の実施形態では、感染症を処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、感染症の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法が提供される。
【0051】
一部の実施形態では、感染症によって引き起こされる感染細胞に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかと接触させるステップを含み、それにより、感染細胞に対する免疫応答が増加する、方法が提供される。
【0052】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与される。
【0053】
感染症を処置するまたは感染細胞に対する免疫応答を刺激する実施形態の一部では、免疫応答は、感染細胞、またはCD4 T調節性細胞および寛容性DCから選択される免疫抑制性免疫細胞の低減を含む。一部の実施形態では、対象における感染細胞の数は減少する。一部の実施形態では、感染症は、細菌疾患、全身性真菌疾患、リケッチア疾患、寄生生物疾患およびウイルス疾患から選択される。一部の実施形態では、感染症は、HIV感染症、C型肝炎ウイルス、(HCV)感染症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、エプスタインバーウイルス(EBV)感染症、コロナウイルス感染症、例えば、SARS-COV2感染症(Covid-19)、サイトメガロウイルス(CMV)感染症およびインフルエンザウイルス感染症からなる群から選択される。
【0054】
一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD8および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD5および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のPD-1および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHCクラスI拘束される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されない。
【0055】
一部の実施形態では、これらの方法は、抗微生物剤または抗ウイルス剤を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、対象への結合剤の投与は、対象において処置転帰の改善を生じる。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、感染症の低減である。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、感染細胞の低減である。一部の実施形態では、結合剤は、静脈内投与される。一部の実施形態では、結合剤は、皮下投与される。一部の実施形態では、結合剤は、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0056】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における感染症の処置のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用が提供される。
【0057】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、免疫抑制性免疫細胞を抑制することによる免疫応答の刺激のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用が提供される。
【0058】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における感染症の低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の実施形態のいずれかの使用が提供される。
【0059】
一部の実施形態では、移植後の移植片対宿主病(GVHD)の発症を低減または予防する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、GVHDの少なくとも1つの症状を低減または緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0060】
一部の実施形態では、移植を受けた対象を処置する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかと接触させるステップを含み、それにより、GVHDが低減または抑制される、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0061】
一部の実施形態では、移植を受けた対象を処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを枯渇させ、それにより、GVHDの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する。
【0062】
一部の実施形態では、移植に対するGVHDを抑制する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかと接触させるステップを含み、それにより、GVHDまたはその症状が減少する、方法が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する。
【0063】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与される。
【0064】
一部の実施形態では、低減または減少されたGVHDは、GVHDにおいて活性なCD4+T細胞における低減を含む。一部の実施形態では、前記移植は、臓器移植、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体または分化した細胞の移植、および骨髄移植からなる群から選択される一部の実施形態では、移植は、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞の移植、または骨髄移植である。一部の実施形態では、移植は同種異系である。
【0065】
一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD8および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCD5および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のPD-1および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、結合剤は、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHCクラスI拘束される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されない。
【0066】
一部の実施形態では、免疫抑制剤もまた、対象に投与される。
【0067】
一部の実施形態では、対象への結合剤の投与は、対象において処置転帰の改善を生じる。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、GVHDに関連する症状の低減、全身性炎症性サイトカインの低減、GVHDによって影響される組織における病変の低減、宿主組織に対する有害作用に関連する免疫応答に関連する症状の自己報告の低減、移植生着の改善もしくは延長、1つもしくは複数の症状の軽減、および/または前記移植の拒絶の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速、または広範な免疫抑制剤、例えば、コルチコステロイドの使用の減少による移植生着の延長である。
【0068】
一部の実施形態では、結合剤は、静脈内投与される。一部の実施形態では、結合剤は、皮下投与される。
【0069】
一部の実施形態では、対象における移植に関連するGVHDの処置のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの使用において提供される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0070】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における移植に関連するGVHDの処置のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0071】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる移植に関連するGVHDの低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0072】
一部の実施形態では、移植に対するGVHDの低減のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、結合剤は、エフェクター機能活性を実質的に有さない。
【0073】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象における移植に関連するGVHDの処置のための、本明細書に記載される結合剤または(of or)医薬組成物のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する。
【0074】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregの枯渇のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する。
【0075】
一部の実施形態では、GVHDを低減させるために移植を受けた対象におけるCD8+KIR+Tregの枯渇のための、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの使用が提供される。一部の実施形態では、結合剤は、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する。
【0076】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明、具体的な実施形態の非限定的な例、および添付の図面を参照して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は、種々の形式のIgG-scFv二特異性抗体を示す。
【0078】
【
図2】
図2は、種々の形式のある特定の二特異性抗体を示す。
【0079】
【
図3】
図3は、種々の形式の追加の二特異性抗体を示す。
【0080】
【
図4A-4D】
図4A~4Dは、CD8+KIR+T調節性細胞に対するLy49遮断の作用を示す。
【0081】
【
図5】
図5は、マウス実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおけるLy49遮断の作用を評価するための実験設計を示す。
【0082】
【
図6】
図6は、MOGのみ、MOG+SP、MOG+Ly49遮断による免疫から7~27日後の疾患重症度(臨床スコアによって測定される)を示す。
【0083】
【
図7A-7C】
図7A~7Cは、セリアック患者において優勢なT細胞の特徴を示す。セリアック患者は、CD8+KIR+T細胞保有率の増加を有し(
図7A);細胞内IFNガンマおよびパーフォリンを有するCD8+T細胞のパーセンテージにおける増加を有し(
図7B);細胞内グランザイムBを有するCD8+T細胞のパーセンテージにおける増加を有する(
図7C)。
【0084】
【
図8A-8B】
図8A~8Bは、セリアック患者が、健康な対照と比較して、より多くのCD8+KIR+T細胞(
図8A)およびCD8+KIR+ICOS+T細胞(
図8B)を有することを示す。
【0085】
【
図9A-9B】
図9A~9Bは、セリアック患者由来のCD8+KIR+T細胞のグルテンペプチド再刺激が、未刺激の細胞または対照インフルエンザペプチドで刺激した細胞と比較して、脱顆粒(
図9A、左)およびグランザイムBレベル(
図9A、右)を増加させることを示す。グルテンペプチド再刺激は、未刺激の細胞または対照インフルエンザペプチドで再刺激した細胞と比較して、反応性CD4+T細胞の低減ももたらす(
図9B)。
【0086】
【
図10A-10B】
図10A~10Bは、CD8+TregのKIR遮断(「KIRブロック」)が、細胞内グランザイムBレベルの増加(
図10A)および脱顆粒(CD107)の増加(
図10B)を生じることを示す。
【0087】
【
図11】
図11は、KIR遮断およびグルテン再刺激で処置したセリアック患者由来のPBMC中の、CD8+T細胞の細胞溶解活性の増加、CD4+T細胞活性化の減少、およびCD4+T細胞死の増加を示す。
【0088】
【
図12】
図12は、CD8+CD16+T細胞のKIR遮断が、3人のセリアック患者由来の試料中のCD4 T細胞の活性化および増殖(CD69)を低減させたことを示す。
【0089】
【
図13】
図13は、セリアック病、クローン病、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、潰瘍性大腸炎(UC)もしくは1型糖尿病(T1D)を有する患者由来の試料中、または健康な対象における、CD8+KIR+Treg細胞(上パネル)およびCD8+CD39+Treg細胞(下パネル)の存在を示す。
【0090】
【
図14】
図14は、セリアック患者PBMC試料から単離されたCD8+KIR+Treg細胞上での表面マーカーCD39、KLRG1、NKG2D、NKG2C、KLRB、CXCR3およびCD122の発現を示す。
【0091】
【
図15】
図15は、セリアック患者PBMC試料から単離されたCD8+Treg細胞によるグランザイムB、パーフォリンおよびIL-10産生を示す。
【0092】
【
図16】
図16は、抗CD3抗体による刺激後の、セリアック患者PBMC試料から単離されたCD8+KIR+Treg細胞によるRANTESおよびTNFβの産生を示す。
【0093】
【
図17】
図17は、グリアジン刺激後の、CD8+KIR+Treg細胞と共に共培養したCD4+T細胞によるIL-17AおよびIL-23産生の減少を示す。
【0094】
【
図18】
図18は、CD8+KIR+Treg細胞と共に共培養し、グルテンで刺激したCD4+T細胞による活性化およびIFNγにおける変化を示す。
【0095】
【
図19】
図19は、CD8+KIR+Treg細胞と共に共培養し、グリアジンで刺激したCD4+T細胞における抗炎症性サイトカインの増加を示す。CD4+T細胞によって産生されたIL-10は、細胞内サイトカイン染色を使用して示される。
【0096】
【
図20】
図20は、反復抗原曝露の際のCD8+Treg細胞応答の増加を示す。
【0097】
【
図21】
図21は、セリアック患者PBMC由来のCD8+Treg細胞による阻害性KIRタンパク質KIR2DL1/2/3およびKIR3DL1の選択的発現を示す。
【0098】
【
図22】
図22は、セリアック患者におけるCD8+KIR+T細胞の増加を示す。
【0099】
【
図23】
図23は、セリアック患者の腸組織中のCD8+KIR+T細胞の存在を示す。
【0100】
【
図24】
図24は、セリアック患者の腸組織中のグランザイム陽性CD8+T細胞とCD4+T細胞との相互作用を示す。グランザイムBは白色で示され、CD8+T細胞は緑色で示され、CD4+T細胞は黄土色で示され、CD8+T細胞とCD4+T細胞との間の相互作用は黄色で示される。
【0101】
【
図25】
図25は、グルテンによるチャレンジの6日後(6D)の末梢血中のCD8+Treg細胞の増加を示す。
【0102】
【
図26】
図26は、グルテンによるチャレンジの14日(14D)後の組織生検中のCD8+Treg細胞の増加を示す。
【0103】
【
図27】
図27は、(グルテンチャレンジ前の同等の患者組織と比較した)グルテンチャレンジの14日後のセリアック患者組織試料中のCD4+T細胞数、共刺激分子発現、および増殖、ならびにKIR2DL発現T細胞を示す。
【0104】
【
図28】
図28は、二特異性KIRバインダーの例および活性化シグナル強度に対するそれらの予想された影響を示す。
【0105】
【
図29A-29C】
図29Aは、CD8結合ドメインとKIR2DL1/2/3を標的化する結合ドメインとを有する二特異性抗体を示す。
図29Bは、抗CD8 scFv/KIR FAB-Fc(10μg/mL、1μg/mLまたは0.1μg/mLの用量での)またはモノクローナルKIR遮断(20μgでの)の投与後の脱顆粒を示し、
図29Cは、そのグランザイムBレベルを示す。
【0106】
【
図30】
図30は、抗CD8 scFv/KIR FAB-Fc(10μg/mLまたは1μg/mLの用量での)の投与後の炎症促進性サイトカインにおける用量依存的低減を示す。
【0107】
【
図31】
図31は、抗CD8 scFv/KIR FAB-Fc(10μg/mL、1μg/mLまたは0.1μg/mLの用量での)またはモノクローナルKIR遮断(20μgでの)の投与後のCD4+T細胞死を示す。
【0108】
【
図32】
図32は、抗CD8 scFv/KIR FAB-Fc(10μg/mL、1μg/mLまたは0.1μg/mLの用量での)の投与後のCD4+T細胞死を示す。
【0109】
【
図33】
図33は、二特異性遮断剤(抗KIR2DL1/2/3かつ抗CD8)の、NK細胞と比較したCD8+T細胞への優先的結合を示す。
【0110】
【
図34】
図34は、二特異性遮断剤(抗KIR2DL1/2/3かつ抗CD8)の、NK細胞およびCD4+T細胞と比較したCD8+T細胞への優先的結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0111】
詳細な説明
定義
簡便さのために、明細書、実施例および特許請求の範囲中のある特定の用語をここで定義する。特記しない限り、または文脈から暗黙に示されない限り、以下の用語および語句は、以下に提供される意味を有する。本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されるので、これらの定義は、特定の実施形態を記載するのに役立つように提供されているのであって、特許請求された発明を限定する意図はない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0112】
本明細書で使用される場合、他に示されない限り、用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、「1つ(one)」、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味すると解釈される。文脈によって他が要求されない限り、本明細書で使用される単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0113】
文脈が明らかに他を要求しない限り、記載および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などは、排他的または徹底的な意味とは対照的に、包含的意味で解釈される;即ち、「~が含まれるがそれらに限定されない」の意味で解釈される。
【0114】
用語「減少させる」、「低減させる」、「低減された」、「低減」、「減少」および「阻害する」は全て、参照と比較して統計的に有意な量の減少を意味するために本明細書で一般に使用される。
【0115】
用語「増加された」、「増加させる」、「増強する」または「活性化する」は全て、参照と比較して静的に有意な量(statically significant amount)の増加を一般に意味するために本明細書で使用される。
【0116】
用語「単離された」または「部分的に精製された」は、本明細書で使用される場合、核酸、ポリペプチドまたはタンパク質の場合、その天然の供給源において見出される核酸、ポリペプチドまたはタンパク質と共に存在する、ならびに/あるいは細胞によって発現される場合、または分泌されたポリペプチドおよびタンパク質の場合には分泌される場合に、核酸、ポリペプチドまたはタンパク質と共に存在する少なくとも1つの他の構成成分(例えば、核酸またはポリペプチドまたはタンパク質)から分離された、核酸、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。化学的に合成された核酸、ポリペプチドもしくはタンパク質、またはin vitro転写/翻訳を使用して合成されたものは、「単離された」とみなされる。用語「精製された」または「実質的に精製された」は、例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれよりも多くが含まれる、少なくとも95重量%の対象核酸、ポリペプチドまたはタンパク質である、単離された核酸、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、隣接残基のアルファ-アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって各々が互いに接続された一連のアミノ酸残基を指定するために、本明細書で相互交換可能に使用される。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、そのサイズにも機能にも関係なく、改変されたアミノ酸(例えば、リン酸化された、糖化された、グリコシル化されたなど)およびアミノ酸アナログが含まれるタンパク質アミノ酸のポリマーもまた指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は、比較的大きいポリペプチドに言及して使用される場合が多く、一方で、用語「ペプチド」は、小さいポリペプチドに言及して使用される場合が多いが、当該分野におけるこれらの用語の用法は、重複している。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、コードされる遺伝子産物およびその断片に言及する場合、本明細書で相互交換可能に使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片、ならびに上述のものの他の等価物、バリアント、断片およびアナログが含まれる。
【0118】
CD3イプシロンは、調節性T細胞を含むT細胞上で発現されるタンパク質である。CD3イプシロンポリペプチドとしては、これに限定されないがNP000724.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;この配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
CD5は、T細胞およびB細胞上で発現されるタンパク質である。CD5ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_055022.2およびNP_001333385.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらの配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
CD8アルファは、調節性T細胞を含むT細胞上で発現されるタンパク質である。CD8アルファポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001759.3、NP001139345.1、NP_741969.1、NP_001369627.1、NP_757362.1、NP_001171571.1、NP_742100.1、NP_742099.1およびNP_004922に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらの配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
KIR3DL1は、NK細胞上および一部のT細胞上で発現されるタンパク質である。これは、CD158E1、KIR、KIR2DL5B、KIR3DL1/S1、NKAT-3、NKAT3、NKB1およびNKB1Bとしても公知である。KIR3DL1ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_037421.2およびNP_001309097.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらの配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
KIR3DL2は、NK細胞上および一部のT細胞上で発現されるタンパク質である。これは、3DL2、CD158K、KIR-3DL2、NKAT-4、NKAT4、NKAT4Bおよびp140としても公知である。KIR3DL2ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_006728.2およびNP_001229796.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらの配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
KIR2DL1は、NK細胞上および一部のT細胞上で発現されるタンパク質である。これは、CD158A、KIR-K64、KIR221、KIR2DL3、NKAT、NKAT-1、NKAT1およびp58.1としても公知である。KIR2DL1ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_055033.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;この配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
KIR2DL2は、NK細胞上および一部のT細胞上で発現されるタンパク質である。これは、CD158B1、CD158b、NKAT-6、NKAT6およびp58.2としても公知である。KIR2DL2ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_055034.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;この配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
KIR2DL3は、NK細胞上および一部のT細胞上で発現されるタンパク質である。これは、CD158B2、CD158b、GL183、KIR-023GB、KIR-K7b、KIR-K7c、KIR2DL、KIR2DS5、KIRCL23、NKAT、NKAT2、NKAT2A、NKAT2Bおよびp58としても公知である。KIR2DL3ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_056952.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;この配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
CD27は、TNF受容体スーパーファミリーメンバー7、S152、LPFS2、T14、TNFRSF7およびTp55とも呼ばれる。CD27ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_001233.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;この配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
CD38は、ADP-リボシルシクラーゼ/サイクリックADP-リボースヒドロラーゼ1、ADPRC1およびADPRC 1とも呼ばれる。CD38ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_001766.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
CD39は、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、SPG64 ATPDaseおよびNTPDase-1としても公知である。これは、細胞外ATPおよびADPをAMPへと加水分解する細胞膜タンパク質をコードする。CD39ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001307845.1、NP_001157651.1、NP_001157650.1、NP_001091645.1、NP_001767.3、NP_001299583.1、NP_001157655.1、NP_001157654.1およびNP_001157653.1に開示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
CD40L、またはCD40リガンドは、CD154、HIGM1、IGM、IMD3、T-BAM、TNFSF5、TRAP、gp39およびhCD40Lとも呼ばれる。これは、T細胞の表面上で発現される。CD40Lポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_000065.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;この配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
CD45は、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型、B220、CD45R、GP180、L-CA、LCA、LY5およびT200と呼ばれる。これは、CD45RA、CD45RbおよびCD45ROを含む多くのアイソフォームを有する。CD45RAおよびCD45Rbは、ナイーブT細胞上で発現される。CD45ROは、メモリーT細胞上で発現される。CD45R0ポリペプチドとしては、これに限定されないがP08575-4に開示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。CD45RAポリペプチドとしては、これに限定されないがP08575-8に開示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。CD45RBポリペプチドとしては、これに限定されないがP08575-9に開示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。UniProtKBデータベースを参照されたい。これらの配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
CD73は、5’ヌクレオチダーゼエクト、CALJA、CD73、E5NT、NT、NT5、NTE、eNおよびeNTとも呼ばれる。CD73ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001191742.1およびNP_002517.1に開示されるものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
CD103、またはインテグリンサブユニットアルファE(ITGAE)は、HUMINAEとも呼ばれる。CD103ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_002199.3に開示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
CD122、またはインターロイキン2受容体サブユニットベータは、IL15RB、IMD63およびP70-75とも呼ばれる。CD122ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001333152.1、NP_001333151.1およびNP_000869.1に開示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
CD166、または活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)は、MEMDとも呼ばれる。CD166ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001618.2、NP_001230209.1、NP_001230210.1およびNP_001230212.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
CD177は、HNA-2a、HNA2A、NB1、NB1 GP、PRV-1およびPRV1とも呼ばれる。CD177ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_065139.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
CCR7、またはC-Cモチーフケモカイン受容体7は、BLR2、CC-CKR-7、CCR-7、CD197、CDw197、CMKBR7およびEBI1とも呼ばれる。CCR7ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001829.1、NP_001288643.1、NP_001288645.1、NP_001288646.1およびNP_001288647.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
CXCR3、またはC-X-Cモチーフケモカイン受容体3は、GPR9、MigR、CD182、CD183、Mig-R、CKR-L2、CMKAR3およびIP10-Rとも呼ばれる。CXCR3ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001495.1およびNP_001136269.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
CXCR5、またはC-X-Cモチーフケモカイン5は、BLR1、CD185およびMDR15とも呼ばれる。CXCR5ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001707.1およびNP_116743.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
HLA-DRは、2つの鎖から構成されるクラスII組織適合性抗原である。HLA-DRアルファ鎖ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_061984.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。HLA-DRベータ鎖ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_002116.2、NP_072049.2、NP_001346123.1およびNP_001346122.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
ICOS、または誘導性T細胞共刺激は、AILIM、CD278およびCVID1とも呼ばれる。ICOSポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_036224.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
LAG-3、またはCD223は、リンパ球活性化3とも呼ばれる。LAG-3ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_002277.4に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
OX-40は、TNF受容体スーパーファミリーメンバー4またはTNFRSF4、ACT35、CD134、IMD16およびTXGP1Lとも呼ばれる。OX-40ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_003318.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
PD-1は、プログラム細胞死タンパク質1とも呼ばれる。PD-1ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_005009.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
S1000A8/9、またはそれぞれS100A8およびS100A9は、S100ファミリーに属するCa2+結合タンパク質である。S100A8、またはS100-A8は、60B8AG、CAGA、CFAG、CGLA、CP-10、L1Ag、MA387、MIF、MRP8、NIFおよびP8とも呼ばれる。S100A8ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_001306125.1、NP_001306126.1、NP_001306127.1、NP_001306130.1およびNP_002955.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。S100A9、またはS100-A9は、60B8AG、CAGB、CFAG、CGLB、L1AG、LIAG、MAC387、MIF、MRP14、NIFおよびP14とも呼ばれる。S100A9ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_002956.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)とも呼ばれるTIM-3は、CD366、HAVcr-2、KIM-3、SPTCL、TIM3、TIMD-3およびTIMD3としても公知である。TIM-3ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_116171.3に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
TLT-2、または骨髄性細胞上で発現されるトリガー受容体様2(TREML2)は、C6orf76またはdJ238O23.1とも呼ばれる。TLT-2ポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_079083.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
2B4、またはCD244は、NAIL、NKR2B4、NmrkおよびSLAMF4とも呼ばれる。2B4ポリペプチドとしては、これらに限定されないがNP_057466.1、NP_001160135.1またはNP_001160136.1に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;これらのアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0148】
41BB、またはTNF受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFSF9)は、ILA、4-1BB、CD137およびCDw137とも呼ばれる。41BBポリペプチドとしては、これに限定されないがNP_001552.2に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられ;このアミノ酸配列は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、免疫グロブリンVH/VL対、例えば、本明細書に記載される抗体および他の結合剤によって通常に結合されるアミノ酸を指す。エピトープは、連続するアミノ酸、またはタンパク質の三次フォールディングによって並置された連続しないアミノ酸から、ポリペプチド上に形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露の際に保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒での処置の際に喪失される。エピトープは、典型的には、独自の空間的コンフォメーション中に、少なくとも3つ、より通常は、少なくとも5、約9または約8~10個のアミノ酸を含む。エピトープは、抗体または他の結合剤に対する最小限の結合部位を規定し、したがって、抗体、その抗原結合部分または他の免疫グロブリンベースの結合剤の特異性の標的を示す。単一ドメイン抗体の場合、エピトープは、可変ドメインによって隔絶して結合される構造の単位を示す。
【0150】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」は、KDが10-5M(10000nM)またはそれ未満、例えば、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12Mまたはそれ未満で標的に結合する、本明細書に記載される結合剤(例えば、抗体またはその抗原結合部分)の能力を指す。特異的結合は、例えば、抗体または他の結合剤の親和性および結合力ならびに標的ポリペプチドの濃度によって影響され得る。当業者は、本明細書に記載される抗体および他の結合剤が標的抗原に選択的に結合する適切な条件を、任意の適切な方法、例えば、適切な細胞結合アッセイでの結合剤の滴定を使用して決定することができる。標的に特異的に結合した結合剤は、非類似の競合因子によって置き換えられない。ある特定の実施形態では、結合剤、例えば、抗体またはその抗原結合部分は、タンパク質および/または高分子の複雑な混合物中のその標的抗原を優先的に認識する場合、その標的に特異的に結合すると言われる。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤、例えば、抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、10-5M(10000nM)またはそれ未満、例えば、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12Mまたはそれ未満の解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-5M~10-6Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-6M~10-7Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-7M~10-8Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-8M~10-9Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-9M~10-10Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-10M~10-11Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-11M~10-12Mの解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、10-12M未満の解離定数(KD)で、標的ポリペプチドに特異的に結合する。
【0152】
本明細書で使用される場合、用語「~から本質的になる」は、所与の実施形態に要求される要素を指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規のまたは機能的特徴(複数可)に実質的に影響を与えない要素の存在を許容する。
【0153】
用語「~からなる」は、実施形態のその説明において列挙されていない全ての要素を除外する、本明細書に記載される組成物、方法、およびそのそれぞれの構成成分を指す。
【0154】
実施例中、または他に示される場合を除き、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表す全ての数は、全ての場合において用語「約」によって修飾されると理解すべきである。用語「約」は、パーセンテージと併せて使用される場合、+/-1%を意味し得る。
【0155】
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性を指し、一般に、参照値を上回るまたは下回る、2標準偏差(2SD)の差異を意味する。
【0156】
他の用語は、本発明の種々の態様の記載内で、本明細書で定義される。
【0157】
CD8+KIR+調節性T細胞のモジュレーション
CD8+KIR+調節性T細胞(Treg)上で発現される抗原に特異的に結合する結合ドメインを含む結合剤が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHCクラスI拘束される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、MHC Qa-1(HLA-E)拘束されない。自己免疫疾患、感染性疾患およびがんの処置のために結合剤を使用する方法もまた提供される。
【0158】
結合剤は、KIRタンパク質以外の、CD8+KIR+Treg上で発現されるT細胞抗原に特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD8+KIR+Treg上で発現される阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する第2の結合ドメインとを含む。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、CD5および41BBから選択される抗原に特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBから選択される抗原に特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3、CD8、CD40L、CD122、HLA-DR、OX-40、S1000A8/9および41BB/CD137から選択される抗原のサブユニットに特異的に結合する。
【0159】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Tregを活性化することができる機能的アゴニストから選択される。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CD3、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DRである。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CD3、CD5、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DRである。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に結合した場合、アゴニスト活性を有する。
【0160】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Tregの機能的阻害を低減させるための機能的アンタゴニストから選択される。一部の実施形態では、かかる抗原(such as antigen)は、例えば、LAG-3/CD223、TIM-3、PD-1、S1000A8/9およびTLT2である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に結合した場合、アンタゴニスト活性(例えば、遮断活性)を有する。
【0161】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Tregに対する結合剤の特異性を増強するための係留部分である。一部の実施形態では、このような抗原は、例えば、CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBである。一部の実施形態では、このような抗原は、例えば、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBである。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0162】
一部の実施形態では、第1の抗原は、組織特異性を増強するための係留部分である。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CD103(ITGAE)、CD166、CD177、CXCR3およびS1000A8/9である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0163】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Treg細胞遊走を増強するためのアゴニストである。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CCR7、CXCR3またはCXCR5である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0164】
一部の実施形態では、第1の抗原は、PD-1、ICOSおよびCXCR3から選択される。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0165】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3またはCD8から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD5またはCD8から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3またはCD8のサブユニットから選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3イプシロンである。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8アルファである。
【0166】
結合剤の第2の結合ドメインは、阻害性KIRタンパク質(キラー細胞免疫グロブリン様受容体タンパク質)に特異的に結合する。阻害性KIRタンパク質は、例えば、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR2DL1、KIR2DL2もしくはKIR2DL3またはそれらの組合せであり得、例えば、KIR2DL1/2/3またはKIR2DL1/2タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、KIRタンパク質は、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR2DL1、KIR2DL2もしくはKIR2DL3またはそれらの組合せ、例えば、KIR2DL1/2/3またはKIR2DL1/2タンパク質から選択される。一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、KIRタンパク質とその結合パートナーとの相互作用を遮断するKIRタンパク質アンタゴニストである。
【0167】
結合剤は、両方の抗原に対する結合ドメインを含む任意の適切な薬剤であり得る。一部の実施形態では、結合剤は、二特異性である(即ち、2つの異なる抗原に対する結合ドメインを有する)。一部の実施形態では、結合剤は、二価である(即ち、2つの結合ドメインを有する)。一部の実施形態では、結合剤は、四価である(即ち、4つの結合ドメインを有する)。
【0168】
結合剤の結合ドメインは、抗体または非抗体形式に由来し得る。一部の実施形態では、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合部分(即ち、抗体断片)に由来する。一部の実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvまたは単一ドメイン抗体(VHH、VNAR、sdAbまたはナノボディとも呼ばれる)である。一部の実施形態では、結合ドメインは、アンチカリン、アフィボディ、アビマー、DARPinもしくはアドネクチンである、またはそれに由来する。
【0169】
一部の実施形態では、結合剤は、二特異性抗体、ダイアボディ、抗体Fc融合物、scFv1-ScFv2、scFv1
2-Fc-scFv2
2、IgG-scFv、DVD-Ig、トリオマブ/クアドローマ、ツーインワンIgG、scFv
2-Fc、TandAb、scFv-HSA-scFv、scFv-VHH、Fab-scFv-Fc、Fab-VHH-Fc、dAb-IgG、IgG-VHH、タンデムscFv-Fc、(scFv1)
2-Fc-(VHH)
2、BiTe、DART、クロスマブ、アンチカリン、アフィボディ、アビマー、DARPin、アドネクチン、scFv-Fc、1アームタンデムscFv-FcまたはDART-Fcである(例えば、
図2および3を参照されたい)。一部の実施形態では、IgG-scFvは、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、2scFV-IgGまたはIgG-2scFvである(
図1に示される通り)。
【0170】
一部の実施形態では、結合剤は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む第1の結合ドメインを含む。一部の実施形態では、第1の結合ドメインの重鎖および軽鎖可変領域は、CD8+KIR+Treg上で発現される抗原、例えば、CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBに、特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインの重鎖および軽鎖可変領域は、CD8+KIR+Treg上で発現される抗原、例えば、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBに、特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインの重鎖および軽鎖可変領域は、CD8+KIR+Treg上で発現される抗原、例えば、CD3、CD8、CD40L、CD122、HLA-DR、OX-40、S1000A8/9および41BB/CD137のサブユニットに、特異的に結合する。一部の実施形態では、第1の結合ドメインの重鎖および軽鎖可変領域は、CD8+KIR+Treg上で発現される抗原、例えば、CD3、CD5、CD8、CD40L、CD122、HLA-DR、OX-40、S1000A8/9および41BB/CD137のサブユニットに、特異的に結合する。
【0171】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Tregを活性化することができる機能的アゴニストから選択される。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CD3、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DRである。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CD3、CD5、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DRである。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に結合した場合、アゴニスト活性を有する。
【0172】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Tregの機能的阻害を低減させるための機能的アンタゴニストから選択される。一部の実施形態では、かかる抗原(such as antigen)は、例えば、LAG-3/CD223、TIM-3、PD-1、S1000A8/9およびTLT2である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に結合した場合、アンタゴニスト活性(例えば、遮断活性)を有する。
【0173】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Tregに対する結合剤の特異性を増強するための係留部分である。一部の実施形態では、このような抗原は、例えば、CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBである。一部の実施形態では、このような抗原は、例えば、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4、および41BBである。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0174】
一部の実施形態では、第1の抗原は、組織特異性を増強するための係留部分である。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CD103(ITGAE)、CD166、CD177、CXCR3およびS1000A8/9である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0175】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8 KIR+Treg細胞遊走を増強するためのアゴニストである。一部の実施形態では、かかる抗原は、例えば、CCR7、CXCR3またはCXCR5である。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0176】
一部の実施形態では、第1の抗原は、PD-1、ICOSおよびCXCR3から選択される。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、かかる抗原に特異的に結合する。
【0177】
一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3またはCD8から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3、CD5またはCD8から選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3またはCD8のサブユニットから選択される。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD3イプシロンである。一部の実施形態では、第1の抗原は、CD8アルファである。
【0178】
本明細書に記載される結合ドメインにおける使用のための抗体は、当該分野で公知である。
【0179】
CD3に対する抗体は、例えば、米国特許第5,929,212号;同第5,885,573号;および同第8,551,478号、ならびに国際特許公報WO2018223004に記載されている。
【0180】
CD8に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190382488号および同第20190071500号、ならびに国際特許公報WO2014164553およびWO2017134306に記載されている。
【0181】
CD5に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第2018/0104308号、同第2011/0250203号および同第2008/0254027号に記載されている。
【0182】
CD27に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20210009706号、同第20200247898号および同第20200131272号に記載されている。
【0183】
CD38に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20200408765号、同第20200399391号、同第20090304710号および同第20050158305号に記載されている。
【0184】
CD39に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190062448号、同第20130273062号および同第20100303828号に記載されている。
【0185】
CD40Lに対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190092868号、同第20100092482号、同第20030031668号および同第20010018041号に記載されている。
【0186】
CD45RA、CD45RBおよびCD45ROに対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20030232009号および同第20020168362号に記載されており、商業的供給源から入手可能である。
【0187】
CD73に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20200148781号、同第20200071404号、同第20190256598号および同第20160145350号に記載されている。
【0188】
CD103(ITGAE)に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20050266001号に記載されている。
【0189】
CD122に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20180362655号および同第20110250213号に記載されている。
【0190】
CD166に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20160355587号および同第20090269787号に記載されている。
【0191】
CD177に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190125832号に記載されている。
【0192】
CCR7に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20200216548号、同第20180237529号および同第20150344580号に記載されている。
【0193】
CXCR3に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190119391号、同第20190008955号および同第20130251733号に記載されている。
【0194】
CXCR5に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190169283号、同第20160053014号および同第20130236476号に記載されている。
【0195】
HLA-DRに対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20180355043号および同第20190071503号に記載されている。
【0196】
ICOSに対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20160304610号および同第20110243929号に記載されている。
【0197】
LAG-3/CD223に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20210009687号、同第20200277372号、同第20200071403号および同第20190276538号に記載されている。
【0198】
OX40に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20140377284号、同第20140308276号および同第20100196359号に記載されている。
【0199】
PD-1に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20190322749号、同第20190309069号、同第20170313774号および同第20110171215号に記載されている。
【0200】
S1000A8/9に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20180256710号および同第20200023045号に記載されている。
【0201】
TIM-3に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20180072804号、同第20170306016号および同第20150086574号に記載されている。
【0202】
TLT-2に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20130216540号に記載されている。
【0203】
2B4に対する抗体は、例えば、商業的供給業者から入手可能である。
【0204】
41BBに対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20170198050号および同第20200347144号に記載されている。
【0205】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3イプシロンに特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号1および配列番号2;それぞれ、配列番号9および配列番号10;それぞれ、配列番号17および配列番号18;それぞれ、配列番号25および配列番号26;それぞれ、配列番号33および配列番号34;それぞれ、配列番号41および配列番号34;それぞれ、配列番号45および配列番号34;それぞれ、配列番号49および配列番号50;それぞれ、配列番号57および配列番号58;それぞれ、配列番号65および配列番号66;またはそれぞれ、配列番号65および配列番号166に示されるアミノ酸配列を有する。
【0206】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3イプシロンに特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号1および配列番号2;それぞれ、配列番号9および配列番号10;それぞれ、配列番号17および配列番号18;それぞれ、配列番号25および配列番号26;それぞれ、配列番号33および配列番号34;それぞれ、配列番号41および配列番号34;それぞれ、配列番号45および配列番号34;それぞれ、配列番号49および配列番号50;それぞれ、配列番号57および配列番号58;またはそれぞれ、配列番号65および配列番号66;またはそれぞれ、配列番号65および配列番号166に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0207】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号1~72および166~169のうちいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列(例えば、VH、VL、hCDR1、hCDR1、hCDR3、lCDR1、lCDR2および/またはlCDR3)を含む。
【0208】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD8アルファに特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号73および配列番号74;もしくはそれぞれ、配列番号81および配列番号82に示されるアミノ酸配列を有する;または結合ドメインは、配列番号89、配列番号93もしくは配列番号97に示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0209】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD8アルファに特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号73および配列番号74;もしくはそれぞれ、配列番号81および配列番号82に示されるアミノ酸配列を有する;または結合ドメインは、それぞれ配列番号89、配列番号93もしくは配列番号97に示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含み;重鎖および軽鎖可変領域またはVHH鎖のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖もしくは軽鎖可変領域またはVHH鎖のCDRは、改変されていない。
【0210】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号73~100のうちいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列(例えば、VH、VL、hCDR1、hCDR1、hCDR3、lCDR1、lCDR2および/またはlCDR3)を含む。
【0211】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3イプシロンに特異的に結合し、重鎖可変領域は、相補性決定領域hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有し、軽鎖可変領域は、lCDR1、lCDR2およびlCDR3を有し、重鎖および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号3~配列番号8;それぞれ、配列番号11~配列番号16;それぞれ、配列番号19~配列番号24;それぞれ、配列番号27~配列番号32;それぞれ、配列番号35~配列番号40;それぞれ、配列番号42~配列番号44および配列番号38~配列番号40;それぞれ、配列番号46~配列番号48および配列番号38~配列番号40;それぞれ、配列番号51~配列番号56;それぞれ、配列番号59~配列番号64;またはそれぞれ、配列番号67~配列番号72に示される。一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD3イプシロンに特異的に結合し、それぞれ配列番号167、168および169に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域lCDR1、lCDR2およびlCDR3を含む。
【0212】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD8アルファに特異的に結合し、相補性決定領域hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有する重鎖可変領域を有し、軽鎖可変領域は、lCDR1、lCDR2およびlCDR3を有し、重鎖および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号75~配列番号80;もしくはそれぞれ、配列番号83~配列番号88に示され;または第1の結合ドメインは、hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有するVHH鎖を含み、VHHのCDRのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号90~配列番号92;それぞれ、配列番号94~配列番号96;もしくはそれぞれ、配列番号98~配列番号100に示される。
【0213】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、ICOSに特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号170および配列番号171に示されるアミノ酸配列を有する。
【0214】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、ICOSに特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号170および配列番号171に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0215】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号170~177のうちいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列(例えば、VH、VL、hCDR1、hCDR1、hCDR3、lCDR1、lCDR2および/またはlCDR3)を含む。
【0216】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、PD-1に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号178および配列番号179に示されるアミノ酸配列を有する。
【0217】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、PD-1に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号178および配列番号179に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0218】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号178~185のうちいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列(例えば、VH、VL、hCDR1、hCDR1、hCDR3、lCDR1、lCDR2および/またはlCDR3)を含む。
【0219】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CXCR3に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号186および配列番号187に示されるアミノ酸配列を有する。
【0220】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CXCR3に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号186および配列番号187に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0221】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号186~193のうちいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列(例えば、VH、VL、hCDR1、hCDR1、hCDR3、lCDR1、lCDR2および/またはlCDR3)を含む。
【0222】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD5に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号194および配列番号195に示されるアミノ酸配列を有する。
【0223】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、CD5に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号194および配列番号195に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0224】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号194~201のうちいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列(例えば、VH、VL、hCDR1、hCDR1、hCDR3、lCDR1、lCDR2および/またはlCDR3)を含む。
【0225】
一部の実施形態では、結合剤は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む第2の結合ドメインを含む。結合剤の第2の結合ドメインは、阻害性KIRタンパク質(キラー細胞免疫グロブリン様受容体タンパク質)に特異的に結合する。阻害性KIRタンパク質は、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR2DL1、KIR2DL2もしくはKIR2DL3またはそれらの組合せであり得、例えば、KIR2DL1/2/3またはKIR2DL1/2タンパク質に特異的に結合する。
【0226】
阻害性KIRタンパク質に対する抗体は、当該分野で公知である。
【0227】
KIR3DL1に対する抗体は、例えば、米国特許第5,770,387号および国際特許公報WO2018148223に記載されている。
【0228】
KIR3DL2に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第20200199228号および同第20150232556号に記載されている。
【0229】
KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3に対する抗体、およびそれらの組合せは、例えば、米国特許第10,668,180号および同第10,253,095号、国際特許公報WO2006003179、米国特許出願公開第20150290316号および同第20130251711号ならびに欧州特許第3072522号に記載されている。
【0230】
一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、KIR3DL1に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号133および配列番号134;それぞれ、配列番号141および配列番号142;またはそれぞれ、配列番号149および配列番号150に示されるアミノ酸配列を有する。
【0231】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR3DL1に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号133および配列番号134;それぞれ、配列番号141および配列番号142;またはそれぞれ、配列番号149および配列番号150に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0232】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR3DL2に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号157および配列番号158に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列を有する。
【0233】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR3DL2に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号157および配列番号158に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0234】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR2DL1/2/3に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号101および配列番号102;それぞれ、配列番号109および配列番号110;それぞれ、配列番号117および配列番号118;またはそれぞれ、配列番号125および配列番号126に示されるアミノ酸配列を有する。
【0235】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR2DL1/2/3に特異的に結合し、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号101および配列番号102;それぞれ、配列番号109および配列番号110;それぞれ、配列番号117および配列番号118;またはそれぞれ、配列番号125および配列番号126に示されるアミノ酸配列を有し;重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、1~8、1~6、1~4または1~2つのアミノ酸置換、欠失または挿入で必要に応じて改変され、重鎖または軽鎖可変領域のCDRは、改変されていない。
【0236】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR3DL1に特異的に結合し、重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有し、軽鎖可変領域は、lCDR1、lCDR2およびlCDR3を有し、重鎖および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号135~配列番号140;それぞれ、配列番号143~配列番号148;またはそれぞれ、配列番号151~配列番号156に示されるアミノ酸配列を有する。
【0237】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR3DL2に特異的に結合し、重鎖可変領域は、相補性決定領域hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有し、軽鎖可変領域は、lCDR1、lCDR2およびlCDR3を有し、重鎖および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号159~配列番号164のアミノ酸配列に示される。
【0238】
一部の実施形態では、第1の結合ドメインは、KIR2DL1/2/3に特異的に結合し、重鎖可変領域は、相補性決定領域hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有し、軽鎖可変領域は、lCDR1、lCDR2およびlCDR3を有し、重鎖および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号103~配列番号108;それぞれ、配列番号111~配列番号116;それぞれ、配列番号119~配列番号124;またはそれぞれ、配列番号127~配列番号132に示される。
【0239】
結合剤
結合剤は、少なくとも第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含む任意の適切な薬剤であり得、第1の結合ドメインは、KIRタンパク質以外の、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)上で発現される抗原から選択される第1の抗原に特異的に結合し;第2の結合ドメインは、阻害性KIRタンパク質に特異的に結合し、結合剤は、CD8+KIR+Tregに結合する。
【0240】
一部の実施形態では、結合剤は、二特異性である(即ち、2つの異なる抗原に対する結合ドメインを有する)。一部の実施形態では、結合剤は、二価である(即ち、2つの結合ドメインを有する)。一部の実施形態では、結合剤は、四価である(即ち、4つの結合ドメインを有する)。一部の実施形態では、結合剤は、三価、六価または八価である。
【0241】
結合剤の結合ドメインは、抗体または非抗体形式に由来し得る。一部の実施形態では、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合部分(即ち、抗原結合性抗体断片)に由来する。一部の実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvまたは単一ドメイン抗体(VHH、VNAR、sdAbまたはナノボディとも呼ばれる)である。一部の実施形態では、結合ドメインは、アンチカリン、アフィボディ、アビマー、DARPin、アドネクチンまたは受容体エクトドメインFc融合タンパク質に由来する。
【0242】
一部の実施形態では、結合剤は、二特異性抗体、ダイアボディ、抗体Fc融合物、scFv1-ScFv2、scFv1
2-Fc-scFv2
2、IgG-scFv、DVD-Ig、トリオマブ/クアドローマ、ツーインワンIgG、scFv
2-Fc、TandAb、scFv-HSA-scFv、scFv-VHH、Fab-scFv-Fc、Fab-VHH-Fc、dAb-IgG、IgG-VHH、タンデムscFv-Fc、(scFv1)
2-Fc-(VHH)
2、BiTe、DART、クロスマブ、アンチカリン、アフィボディ、アビマー、DARPin、アドネクチン、scFv-Fc、1アームタンデムscFv-FcまたはDART-Fcである。一部の実施形態では、IgG-scFvは、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、2scFV-IgGまたはIgG-2scFvである(
図1に示される通り)。
【0243】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、標的抗原に特異的に結合する抗原結合部位(抗原結合部分)を含有する分子を指す。この用語は、一般に、全長抗体(重鎖および軽鎖定常領域を有する)およびその抗原結合部分を含む、2つの免疫グロブリン重鎖可変領域および2つの免疫グロブリン軽鎖可変領域から構成される抗体を指し;例えば、無傷モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド連結されたFv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、二特異性抗体および単鎖抗体が挙げられる(例えば、これにより参照により本明細書に組み込まれる、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883 (1988)およびBird et al., Science 242, 423-426 (1988)を参照されたい)。
【0244】
抗体では、各重鎖は、可変領域(VHと略される)および定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3、ならびに必要に応じて第4のドメインCH4を含み得る。これらのドメインの各々は、「Fcドメイン」と呼ばれる。本明細書で使用される場合、結合剤がFcドメインを含む場合、結合剤は、文脈によって他が特定されない限り、1つもしくは複数のFcドメイン、またはFc領域全体を含み得る。各軽鎖は、可変領域(VLと略される)および定常領域または定常ドメインから構成される。軽鎖定常領域は、CLドメインである。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存された領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へとさらに分割され得る。したがって、各VHおよびVL領域は、N末端からC末端へと以下の順序で整列された3つのCDRおよび4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。この構造は、当業者に周知である。
【0245】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」は、VHおよびVL配列または重鎖および軽鎖可変領域CDRを有する、本明細書に記載される抗体の部分を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語によれば、抗原結合部分の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド連結されたFv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)、ダイアボディおよび単鎖抗体が挙げられる。本明細書で使用される場合、Fab、F(ab’)2およびFvという用語は、以下を指す:(i)Fab断片、即ち、VL、VH、CLおよびCH1ドメインから構成される一価断片;(ii)F(ab’)2断片、即ち、ジスルフィド架橋を介してヒンジ領域において互いに連結された2つのFab断片を含む二価断片;ならびに(iii)抗体のVLおよびVHドメインから構成されるFv断片。Fv断片の2つのドメイン、即ち、VLおよびVHは、別々のコード領域によってコードされるが、これらは、合成リンカー、例えば、ポリ-G4Sアミノ酸配列(配列番号165として開示される「(G4S)n」、式中、n=1~5)を使用して互いにさらに連結され得、一価分子(単鎖Fv(ScFv)としても公知)を形成するためにVLおよびVH領域が組み合わさった、単一のタンパク質鎖としてそれらを調製することを可能にする。抗体の「抗原結合部分」という用語は、かかる単鎖抗体も含むことを意図する。
【0246】
他の形態の単鎖抗体、例えば、「ダイアボディ」も同様に本明細書に含まれる。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメインが組み合わさることができるには短すぎる、VHおよびVLドメインを接続するリンカーを使用し、それにより、VHおよびVLドメインに、異なる鎖の相補的ドメイン(それぞれVLおよびVH)と対形成し、2つの抗原結合部位を形成するように強いる、二価の二特異性抗体である(例えば、Holliger, R, et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:64446448;Poljak, R. J, et al. (1994) Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0247】
免疫グロブリン定常領域、またはFc領域は、重鎖または軽鎖定常領域を指す。ヒト重鎖および軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、当該分野で公知である。定常領域は、免疫グロブリンのクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMから選択され得る任意の適切な型のものであり得る。いくつかの免疫グロブリンクラスは、アイソタイプ、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、またはIgAlおよびIgA2へとさらに分割され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域(Fc)は、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμであり得る。軽鎖は、カッパ(またはκ)およびラムダ(またはλ)のいずれかのうち1つであり得る。
【0248】
一部の実施形態では、結合剤は、そのFc領域またはドメインを欠如する。一部の実施形態では、結合剤は、そのFc領域全体またはFcドメインを有する。一部の実施形態では、結合剤は、IgG1アイソタイプのFc領域またはFcドメインを有する。一部の実施形態では、結合剤は、IgG2アイソタイプのFc領域またはFcドメインを有する。一部の実施形態では、結合剤は、IgG3アイソタイプのFc領域またはFcドメインを有する。一部の実施形態では、結合剤は、IgG4アイソタイプのFc領域またはFcドメインを有する。一部の実施形態では、Fcドメインは、2つまたはそれよりも多くのアイソタイプ由来の定常領域を含むハイブリッドアイソタイプを有し得る。一部の実施形態では、Fc領域またはFcドメインは、IgG1またはIgG4定常領域であり得る。
【0249】
一部の実施形態では、Fcドメイン(例えば、重鎖)のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であり得る。一部の実施形態では、FcドメインのC末端はまた、C末端アミノ酸残基のうち1つまたは2つが除去された、短縮されたC末端であり得る。一部の実施形態では、FcドメインのC末端は、PGで終わる短縮されたC末端である。一部の実施形態では、C末端CH3ドメインを含む重鎖を含む結合剤は、C末端グリシン-リシンジペプチド(G446およびK447、Kabat EUインデックスに従う番号付け)を含む。一部の実施形態では、C末端CH3ドメインを含む重鎖を含む結合剤は、C末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスに従う番号付け)を含む。
【0250】
本明細書に記載される結合剤は、多特異性、典型的には、二特異性結合剤である。一部の実施形態では、結合剤は、多特異性抗体または抗体様分子、例えば、二特異性抗体である。多特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位または抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。本明細書に記載される結合剤は、典型的には、異なる抗原に対する結合特異性を有する。二特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。二特異性および多特異性抗体としては、以下が挙げられる:scFv1-ScFv2、scFv1
2-Fc-scFv2
2、IgG-scFv、DVD-Ig、トリオマブ/クアドローマ、ツーインワンIgG、scFv
2-Fc、TandAb、scFv-HSA-scFv、scFv-VHH、Fab-scFv-Fc、Fab-VHH-Fc、dAb-IgG、IgG-VHH、タンデムscFv-Fc、(scFv1)
2-Fc-(VHH)
2、scFv-Fc、1アームタンデムscFv-FcおよびDART-Fc。一部の実施形態では、IgG-scFvは、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、svFc-(L)IgG、2scFV-IgGまたはIgG-2scFvである(
図1に示される通り)。
【0251】
多特異性抗体を作製するための技法としては、これらに限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983))、WO93/08829およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照されたい)、および「ノブ-イン-ホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられる。多特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロダイマー性分子を作製するために静電ステアリング(electrostatic steering)効果を操作すること(WO2009/089004A1);2つまたはそれよりも多くの抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照されたい);二特異性抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照されたい);二特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照されたい);および単鎖Fv(scFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい);および例えば、Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されるように三特異性抗体を調製すること、によっても作製され得る。
【0252】
「オクトパス抗体」を含む、3つまたはそれよりも多くの機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号を参照されたい)。
【0253】
本明細書の結合剤(例えば、抗体または抗原結合性断片)には、2つの異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用性(Dual Acting)FAb」、または「DAF」もまた含まれる(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号およびBostrom et al., 2009, Science 323:1610-14を参照されたい)。「クロスマブ」抗体もまた本明細書に含まれる(例えば、WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253、WO2009/080254およびWO2013/026833を参照されたい)。
【0254】
一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方または他方に融合された異なる抗原結合部位を含む;したがって、Fcドメインの2つのサブユニットは、2つの非同一なポリペプチド鎖中に含まれ得る。これらのポリペプチドの組換え共発現と、引き続くダイマー化とは、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組換えをもたらす。したがって、組換え産生における二特異性分子の収量および純度を改善するために、結合剤のFcドメイン中に、所望のポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有益である。
【0255】
したがって、特定の態様では、(a)少なくとも第1の結合ドメイン、(b)第2の結合ドメイン、ならびに(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む結合剤に関し、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する改変を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も広範なタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン中にある。したがって、一態様では、当該改変は、FcドメインのCH3ドメイン中にある。
【0256】
具体的な態様では、Fc改変は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方中の「ノブ」改変およびFcドメインの2つのサブユニットの他方中の「ホール」改変を含む、いわゆる「ノブ-イントゥ-ホール」改変である。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354CおよびT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407V(Kabat EUインデックスに従う番号付け)を含む。
【0257】
ノブ-イントゥ-ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号;同第7,695,936号;Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)およびCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載されている。一般に、この方法には、ヘテロダイマー形成を促進し、ホモダイマー形成を妨げるために、突起が空洞中に配置され得るように、第1のポリペプチドの界面において突起(「ノブ」)を導入し、第2のポリペプチドの界面において対応する空洞(「ホール」)を導入することが含まれる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さいアミノ酸側鎖を、大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。突起と同一または類似のサイズの代償的空洞が、大きいアミノ酸側鎖を、より小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面において創出される。
【0258】
したがって、一部の実施形態では、FcドメインのCH3ドメイン中で、アミノ酸残基は、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のFcドメインのCH3ドメイン内の空洞中に配置可能な、CH3ドメイン内の突起を生成し、第2のFcドメインのCH3ドメイン中で、アミノ酸残基は、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第1のFcドメインのCH3ドメイン内の突起がその内に配置可能な、第2のFcドメインのCH3ドメイン内の空洞を生成する。突起および空洞は、例えば、部位特異的変異誘発によって、またはペプチド合成によって、ポリペプチドをコードする核酸を変更することによって作製され得る。具体的な実施形態では、第1のFcドメインのCH3ドメイン中で、366位のスレオニン残基は、トリプトファン残基で置き換えられ(T366W)、第2のFcドメインのCH3ドメイン中で、407位のチロシン残基は、バリン残基で置き換えられる(Y407V)。別の実施形態では、第2のFcドメイン中で、さらに、366位のスレオニン残基は、セリン残基で置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基は、アラニン残基で置き換えられる(L368A)。
【0259】
さらにさらなる態様では、第1のFcドメイン中で、さらに、354位のセリン残基は、システイン残基で置き換えられ(S354C)、第2のFcドメイン中で、さらに、349位のチロシン残基は、システイン残基で置き換えられる(Y349C)。これら2つのシステイン残基の導入は、2つのFcドメイン間の、ダイマーをさらに安定化させるジスルフィド架橋の形成を生じる(Carter (2001), J Immunol Methods 248, 7-15)。一部の実施形態では、第1のFcドメインは、アミノ酸置換S354CおよびT366W(EU番号付け)を含み、第2のFcドメインは、アミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407V(Kabat EUインデックスに従う番号付け)を含む。
【0260】
一部の実施形態では、第1のFcドメインと第2のFcドメインとの会合を促進する改変は、例えば、PCT公報WO2009/089004に記載されるように、静電ステアリング効果を媒介する改変を含む。一般に、この方法には、ホモダイマー形成が静電的に不都合になるが、ヘテロダイマー化が静電的に好都合になるような、2つのFcドメインの界面の1つまたは複数のアミノ酸残基の、荷電したアミノ酸残基による置き換えが含まれる。
【0261】
一部の実施形態では、結合剤は、1つまたは複数のscFvまたは「単鎖可変断片」を含む。scFvは、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドを用いて接続された、抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)との融合タンパク質である。リンカーは、通常、可撓性のためにはグリシンリッチであり、および溶解性のためにはセリンまたはスレオニンリッチであり、VHのN末端をVLのC末端と接続させるか、またはその逆を行うことができる。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元の抗体の特異性を保持する。scFv抗体は、例えば、Houston, J. S., Methods in Enzymol. 203 (1991) 46-96に記載されている。scFv分子を作製し、適切なペプチドリンカーを設計するための方法は、例えば、米国特許第4,704,692号;米国特許第4,946,778号;Raag and Whitlow, FASEB 9:73-80 (1995)およびBird and Walker, TIBTECH, 9: 132-137 (1991)に記載されている。
【0262】
scFv-Fcである結合剤は、Sokolowska-Wedzina et al., Mol. Cancer Res. 15(8):1040-1050, 2017によって記載されている。
【0263】
一部の実施形態では、結合剤は、「二特異性T細胞エンゲージャー」、またはBiTEである(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261およびWO2008/119567を参照されたい)。このアプローチは、単一のポリペプチド上に整列された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一のポリペプチド鎖は、2つのドメイン間の分子内会合を可能にするのに十分な長さのポリペプチドリンカーによって分離された可変重鎖(VH)ドメインおよび可変軽鎖(VL)ドメインを各々が有する、2つの単鎖Fv(scFv)断片を含み得る。この単一のポリペプチドは、2つのscFv断片間にポリペプチドスペーサー配列をさらに含む。各scFvは、異なるエピトープを認識し、両方のタンパク質がBiTEによって結合されるように、これらのエピトープは、異なるタンパク質に特異的であり得る。
【0264】
単一のポリペプチドであるので、二特異性T細胞エンゲージャーは、当該分野で公知の任意の原核生物または真核生物細胞発現系、例えば、CHO細胞系を使用して発現され得る。しかし、特異的精製技法(例えば、EP1691833号を参照されたい)が、モノマー性二特異性T細胞エンゲージャーを、モノマーの意図した活性以外の生物学的活性を有し得る他の多量体種から分離するために必要であり得る。1つの例示的な精製スキームでは、分泌されたポリペプチドを含有する溶液が、金属親和性クロマトグラフィーに最初に供され、ポリペプチドは、イミダゾール濃度の勾配を用いて溶出される。この溶出物は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用してさらに精製され、ポリペプチドは、塩化ナトリウム濃度の勾配を使用して溶出される。最後に、この溶出物は、モノマーを多量体種から分離するために、サイズ排除クロマトグラフィーに供される。一部の実施形態では、二特異性抗体である結合剤は、ペプチドリンカーによって互いに融合された2つの単鎖FV断片(scFV)を含む単一のポリペプチド鎖から構成される。
【0265】
単一ドメイン抗体は、単一のモノマー可変抗体ドメインからなる抗体断片である。単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物由来の抗体重鎖の可変ドメインに由来し得る(例えば、ナノボディまたはVHH断片)。さらに、単一ドメイン抗体という用語は、自律的ヒト重鎖可変ドメイン(aVH)またはサメに由来するVNAR断片を含む(例えば、Hasler et al., Mol. Immunol. 75:28-37, 2016を参照されたい)。
【0266】
単一ドメイン抗体(DABまたはVHH)を産生するための技法は、例えば、Cossins et al. (2006, Prot Express Purif 51: 253-259およびLi et al., Immunol. Lett. 188: 89-95, 2017)に開示されるように、当該分野で公知である。単一ドメイン抗体は、標準的な免疫技法によって、例えば、ラクダ、アルパカまたはリャマから得られ得る(例えば、Muyldermans et al., TIBS 26:230-235, 2001;Yau et al., J Immunol Methods 281:161-75, 2003;およびMaass et al., J Immunol Methods 324:13-25, 2007を参照されたい)。VHHは、強力な抗原結合能を有し得、従来のVH-VL対にはアクセス不能な(inacessible)新規のエピトープと相互作用することができる(例えば、Muyldermans et al., 2001を参照されたい)。アルパカ血清IgGは、約50%の、ラクダ科動物重鎖のみIgG抗体(HCAb)を含有する(例えば、Maass et al., 2007を参照されたい)。アルパカは、抗原で免疫され得、標的抗原に結合しそれを中和するVHHが単離され得る(例えば、Maass et al., 2007を参照されたい)。アルパカVHHコード配列を増幅するPCRプライマーは、同定されており、当該分野で周知の標準的なバイオパニング技法による抗体断片単離のために使用され得るアルパカVHHファージディスプレイライブラリーを構築するために使用され得る(例えば、Maass et al., 2007を参照されたい)。
【0267】
一部の実施形態では、結合剤は、IgG-scFVである。IgG-scFv形式としては、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、svFc-(L)IgG、2scFV-IgGおよびIgG-2scFvが挙げられる。これらおよび他の二特異性抗体形式ならびにそれらを作製する方法は、例えば、Brinkmann and Kontermann, MAbs 9(2):182-212 (2017);Wang et al., Antibodies, 2019, 8, 43;Dong et al., 2011, MAbs 3:273-88;Natsume et al., J. Biochem. 140(3):359-368, 2006;Cheal et al., Mol. Cancer Ther. 13(7):1803-1812, 2014;およびBates and Power, Antibodies, 2019, 8, 28に記載されている。
【0268】
Igg様二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)は、Wu et al., 2007, Nat Biotechnol 25:1290-97;Hasler et al., Mol. Immunol. 75:28-37, 2016によって、ならびにWO08/024188およびWO07/024715において記載されている。トリオマブは、Chelius et al., MAbs 2(3):309-319, 2010によって記載されている。ツーインワン-IgG(2-in-1-IgG)は、Kontermann et al., Drug Discovery Today 20(7):838-847, 2015によって記載されている。タンデム(tanden)抗体、またはTandAbは、Kontermann et al., 同上によって記載されている。scFv-HSA-scFv抗体もまた、Kontermann et al.(同上)によって記載されている。
【0269】
一部の実施形態では、結合剤は、抗原結合ドメインのための代替的足場として使用されてきた足場抗原結合タンパク質、例えば、フィブロネクチンおよび設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)などである。例えば、Gebauer and Skerra, Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics. Curr Opin Chem Biol 13:245-255 (2009)およびStumpp et al., Darpins: A new generation of protein therapeutics. Drug Discovery Today 13: 695-701 (2008)を参照されたい。一部の実施形態では、足場抗原結合タンパク質は、リポカリン(アンチカリン)、プロテインA由来の分子、例えば、プロテインAのZ-ドメイン(アフィボディ)、A-ドメイン(アビマー/マキシボディ(Maxibody))、血清トランスフェリン(トランスボディ(trans-body));設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)、フィブロネクチン(アドネクチン)、C型レクチンドメイン(テトラネクチン(Tetranectin));新たな抗原受容体ベータ-ラクタマーゼの可変ドメイン(VNAR断片)、ヒトガンマ-クリスタリンまたはユビキチン(アフィリン(Affilin)分子);ヒトプロテアーゼインヒビターのクニッツ型ドメイン、ならびにミクロボディ(microbody)、例えば、ノッチンファミリーからのタンパク質、ペプチドアプタマーおよびフィブロネクチン(アドネクチン)からなる群から選択される。
【0270】
リポカリンは、小さい疎水性分子、例えば、ステロイド、ビリン、レチノイドおよび脂質を輸送する細胞外タンパク質のファミリーである。これらは、異なる標的抗原に結合するように操作され得る円錐構造の開口端においていくつかのループを有する硬いベータ-シート二次構造を有する。アンチカリンは、サイズが160~180アミノ酸の間であり、リポカリンに由来する。さらなる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482: 337-350 (2000)、米国特許第7,250,297B1号および米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。
【0271】
設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、細胞骨格への内在性膜タンパク質の結合を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのアルファ-ヘリックスおよび1つのベータ-ターンからなる33残基のモチーフである。これらは、各リピートの第1のアルファ-ヘリックスおよびベータ-ターン中の残基をランダム化することによって、異なる標的抗原に結合するように操作され得る。それらの結合界面は、モジュールの数を増加させることによって増加され得る(親和性成熟の方法)。さらなる詳細については、J. Mol. Biol. 332, 489-503 (2003)、PNAS 100(4), 1700-1705 (2003)およびJ. Mol. Biol. 369, 1015-1028 (2007)、ならびに米国特許出願公開第20040132028A1号を参照されたい。
【0272】
エフェクター機能を変更するためのFcドメイン改変
一部の実施形態では、Fc領域またはFcドメインは、FcyRI(CD64)、FcyRIIA(CD32a)、FcyRIIB(CD32b)、FcyRIIIA(CD16a)およびFcyRIIIB(CD16b)から選択される少なくとも1つのFc受容体への結合を実質的に有さない。一部の実施形態では、Fc領域またはドメインは、FcyRI(CD64)、FcyRIIA(CD32a)、FcyRIIB(CD32b)、FcyRIIIA(CD16a)およびFcyRIIIB(CD16b)から選択されるFc受容体のいずれへの結合も実質的に示さない。本明細書で使用される場合、「結合が実質的にない」は、選択されたFcガンマ受容体(単数または複数)への、弱い結合~結合がないことを指す。一部の実施形態では、「結合が実質的にない」は、少なくとも1000分の1の、Fcガンマ受容体に対する結合親和性の低減(例えば、Kdの増加)を指す。一部の実施形態では、Fcドメインまたは領域は、Fcヌルである。本明細書で使用される場合、「Fcヌル」は、Fcガンマ受容体のいずれかへの、弱い結合を示す~結合を示さない、Fc領域またはFcドメインを指す。一部の実施形態では、Fcヌルドメインまたは領域は、少なくとも1000分の1の、Fcガンマ受容体に対する結合親和性の低減(例えば、Kdの増加)を示す。
【0273】
一部の実施形態では、Fcドメインは、低減されたエフェクター機能活性を有するまたはエフェクター機能活性を実質的に有さない。本明細書で使用される場合、「エフェクター機能活性」は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を指す。一部の実施形態では、Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、低減されたADCC、ADCPまたはCDC活性を示す。一部の実施形態では、Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、ADCC、ADCPおよびCDCにおける低減を示す。一部の実施形態では、Fcドメインは、エフェクター機能(即ち、ADCC、ADCPまたはCDCを刺激する能力)を実質的に示さない。本明細書で使用される場合、「エフェクター機能が実質的にない」は、野生型Fcドメインと比較した、少なくとも1000分の1の、エフェクター機能活性の低減を指す。
【0274】
一部の実施形態では、Fcドメインは、低減されたADCC活性を有するまたはADCC活性を有さない。本明細書で使用される場合、低減されたADCC活性またはADCC活性がないとは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100または少なくとも500倍の、FcドメインのADCC活性の減少を指す。
【0275】
一部の実施形態では、Fcドメインは、低減されたCDC活性を有するまたはCDC活性を有さない。本明細書で使用される場合、低減されたCDC活性またはCDC活性がないとは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100または少なくとも500倍の、FcドメインのCDC活性の減少を指す。
【0276】
in vitroおよび/またはin vivo細胞傷害アッセイが、ADCCおよび/またはCDC活性の低減/枯渇を確認するために実施され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcガンマ受容体を欠如する(したがって、ADCC活性を欠如している可能性がある)ことを確実にするために実施され得る。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcガンマRIIIのみを発現するが、単球は、FcガンマRI、FcガンマRIIおよびFcガンマRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の第464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照されたい)およびHellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性のアッセイ方法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、Calif.);およびCytoTox 96(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega、Madison、Wis.)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、評価され得る。
【0277】
C1q結合アッセイもまた、抗体またはFcドメインもしくは領域がC1qに結合することができず、したがって、CDC活性を欠如するまたは低減されたCDC活性を有することを確認するために実施され得る。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402中のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M. S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, M. S. and M. J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照されたい)。
【0278】
一部の実施形態では、Fcドメインは、低減されたADCP活性を有するまたはADCP活性を有さない。本明細書で使用される場合、低減されたADCP活性またはADCP活性がないとは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100または少なくとも500倍の、FcドメインのADCP活性の減少を指す。
【0279】
ADCP結合アッセイもまた、抗体またはFcドメインもしくは領域がADCP活性を欠如することまたは低減されたADCP活性を有することを確認するために実施され得る。例えば、米国特許出願公開第20190079077号および米国特許出願公開第20190048078号ならびにそこに開示された参考文献を参照されたい。
【0280】
低減されたエフェクター機能活性を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329のうち1つまたは複数の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号を参照されたい)。かかるFc変異体としては、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つまたはそれよりも多くにおいて置換を有するFc変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号を参照されたい)。FcRへの減弱された結合を有するある特定の抗体バリアントもまた公知である(例えば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい)。
【0281】
ある特定の実施形態では、結合剤は、FcガンマR結合を減弱させる1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の234位および235位(残基のEU番号付け)における置換を有するFcドメインまたは領域を含む。一部の実施形態では、置換は、L234AおよびL235A(LALA)である。一部の実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域中にD265Aおよび/またはP329Gをさらに含む。一部の実施形態では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域中のL234A、L235AおよびP329G(LALA-PG)である(例えば、WO2012/130831を参照されたい)。一部の実施形態では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域中のL234A、L235AおよびD265A(LALA-DA)である。
【0282】
一部の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642およびIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載されるような、変更された(即ち、あるいは減弱された)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる変更が、Fc領域中になされる。
【0283】
結合ドメインの改変
一部の実施形態では、結合ドメインは、保存的置換(単数または複数)によって改変され得る。保存的アミノ酸置換のために、所与のアミノ酸は、類似の生理化学的特徴を有する残基によって置き換えられ得る、例えば、1つの脂肪族残基で別の脂肪族残基を置換する(例えば、互いの代わりに、Ile、Val、LeuまたはAla)、または1つの極性残基を別の極性残基の代わりに使用する(例えば、LysとArgとの間での;GluとAspとの間での;またはGlnとAsnとの間での)。他のかかる保存的アミノ酸置換、例えば、類似の疎水性特徴を有する領域全体の置換は、周知である。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、ネイティブまたは参照ポリペプチドの所望の活性、例えば、抗原結合活性および特異性が保持されることを確認するために、本明細書に記載されるアッセイのいずれか1つで試験され得る。
【0284】
保存的置換のために、アミノ酸は、それらの側鎖の特性における類似性に従って群分けされ得る(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)中):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);および(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。
【0285】
あるいは、保存的置換のために、天然に存在する残基は、共通する側鎖特性に基づいて群に分割され得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスのうち1つ、または別のクラスのメンバーを交換することを必然的に伴う。
【0286】
特定の保存的置換としては、例えば、以下が挙げられる;AlaからGlyにもしくはSerに;ArgからLysに;AsnからGlnにもしくはHisに;AspからGluに;CysからSerに;GlnからAsnに;GluからAspに;GlyからAlaにもしくはProに;HisからAsnにもしくはGlnに;IleからLeuにもしくはValに;LeuからIleにもしくはValに;LysからArgに、GlnにもしくはGluに;MetからLeuに、TyrにもしくはIleに;PheからMetに、LeuにもしくはTyrに;SerからThrに;ThrからSerに;TrpからTyrに;TyrからTrpに;および/またはPheからValに、IleにもしくはLeuに。
【0287】
一部の実施形態では、結合ドメインの保存的に改変されたバリアントは、好ましくは、参照VHまたはVL配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれよりも大きく同一であり、VHおよびVLのCDRは、改変されない。参照配列と改変された配列との間の相同性の程度(パーセント同一性)は、例えば、ワールドワイドウェブ上のこの目的のために一般に用いられる自由に利用可能なコンピュータプログラム(例えば、デフォルト設定を用いたBLASTpまたはBLASTn)を使用して2つの配列を比較することによって、決定され得る。
【0288】
ネイティブ(または参照)アミノ酸配列の改変は、当業者に公知のいくつかの技法のいずれかによって達成され得る。変異は、例えば、ネイティブ配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位に挟まれた、所望の変異体配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の部位において導入され得る。ライゲーションの後、得られた再構築された配列は、所望のアミノ酸挿入、置換または欠失を有するバリアントをコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発手順が、所望の置換、欠失または挿入に従って変更された特定のコドンを有する変更されたヌクレオチド配列を提供するために用いられ得る。かかる変更を行うための技法は、非常に十分に確立されており、例えば、それらの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、Walder et al. (Gene 42:133, 1986);Bauer et al. (Gene 37:73, 1985);Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19);Smith et al. (Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981);ならびに米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号によって開示されるものが含まれる。
【0289】
CD8+KIR+調節性T細胞
調節性T細胞は、CD8+KIR+である表現型によって特徴付けられ、典型的には、MHCクラスI拘束される。ヒトでは、CD8+Kir+調節性T細胞は、阻害性KIRタンパク質を発現する。一部の実施形態では、細胞によって発現されるKIRタンパク質としては、阻害性KIRタンパク質、例えば、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL5、KIR3DL1およびKIR3DL2のうち1つまたは複数が挙げられ得;KIR2DL2、KIR2DL3およびKIR3DL1のうち1つまたは複数が具体的に挙げられ得る。一部の実施形態では、CD8+KIR+調節性T細胞は、HLA E(Qa-1b)拘束されない(例えば、マウスQa-1bおよびヒトHLA E拘束の一般的な説明については、Lohwasser et al., International Immunology 13:321-327 (2001)およびSarantopoulos et al., J. Clin. Invest. 114(9):1218-1221 (2004)を参照されたい)。一部の実施形態では、CD8+KIR+調節性T細胞はまた、CD44+、CD122+であると特徴付けられ得、HLA E(Qa-1b)拘束されない。一部の実施形態では、CD8+KIR+調節性T細胞はまた、CD28-であると特徴付けられ得る。一部の実施形態では、CD8+KIR+調節性T細胞はまた、CD28-、CD44+かつCD122+であると特徴付けられ得る。一部の実施形態では、CD8+KIR+調節性T細胞はまた、CD28-、CD44+かつCD122+であると特徴付けられ得、HLA E(Qa-1b)拘束されない。
【0290】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、以下の抗原を発現する:CD3、CD8、PD-1、CD16、CD122、CD39、CXCR3、ICOS、CD103および阻害性KIRタンパク質。
【0291】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、以下の抗原のうち1つまたは複数を発現する:CD3、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BB。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、以下の抗原のうち1つまたは複数を発現する:CD3、CD5、CD16、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、KLRB1、KLRG1、LAG-3/CD223、NKG2C、NKG2D、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BB。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、以下の抗原のうち1つまたは複数を発現する:CD39、KLRB1、KLRG1、NKG2C、NKG2D、CXCR3およびCD122。
【0292】
結合剤の産生
種々の実施形態では、結合剤は、ヒト、マウスまたは他の動物由来の細胞系において産生され得る。組換えDNA発現が、結合剤を産生するために使用され得る。これは、選択された宿主種における抗体ならびに一定範囲の抗原結合部分および他の結合剤(融合タンパク質が含まれる)の産生を可能にする。細菌、酵母、トランスジェニック動物およびニワトリ卵における抗体、その抗原結合部分および他の結合剤の産生もまた、細胞ベースの産生系の代替法である。トランスジェニック動物の主な利点は、再生可能な供給源からの潜在的な高い収量である。
【0293】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」または「核酸配列」または「ポリヌクレオチド配列」または「ヌクレオチド」は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはそれらのアナログの単位を取り込むポリマー性分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性された二本鎖DNAの一方の鎖の核酸であり得る。一部の実施形態では、核酸は、cDNA、例えば、イントロンを欠如する核酸であり得る。
【0294】
抗体またはその抗原結合部分および他の結合剤のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、当該分野で公知の種々の方法によって調製され得る。これらの方法としては、これらに限定されないが、抗体、抗原結合部分または他の結合剤(複数可)をコードする合成ヌクレオチド配列の調製が挙げられる。さらに、オリゴヌクレオチド媒介性の(または部位特異的)変異誘発、PCR媒介性の変異誘発、およびカセット変異誘発が、抗体または抗原結合部分および他の結合剤をコードするヌクレオチド配列を調製するために使用され得る。本明細書に記載される抗体、その抗原結合部分、結合剤、またはそのポリペプチドを少なくともコードする核酸配列は、従来の技法、例えば、ライゲーションのための平滑末端または付着末端(staggered-ended)の終端、適切な終端を提供するための制限酵素消化、適切な場合、付着末端(cohesive end)のフィリングイン、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処置、および適切なリガーゼを用いたライゲーションなどに従って、ベクターDNAと組み換えられ得る。かかる操作のための技法は、例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning, Lab. Manual (Cold Spring Harbor Lab. Press, NY, 1982 and 1989)およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons), 1987-1993によって開示されており、抗体もしくはその抗原結合部分またはそのVHおよび/もしくはVLポリペプチドをコードする核酸配列およびベクターを構築するために使用され得る。結合剤が抗体またはその抗原結合部分を含む場合、一部の実施形態では、VHポリペプチドは、第1の核酸によってコードされる。一部の実施形態では、VLポリペプチドは、第2の核酸によってコードされる。一部の実施形態では、VHおよびVLポリペプチドは、1つの核酸によってコードされる。
【0295】
核酸分子、例えば、DNAは、それが、転写および翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、かかる配列が、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結されている」場合、ポリペプチドを「発現することが可能である」と言われる。作動可能な連結は、調節DNA配列および発現されることが求められるDNA配列(例えば、抗体またはその抗原結合部分)が、回収可能な量でのポリペプチド(複数可)または抗原結合部分の遺伝子発現を可能にするような方法で接続される、連結である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は、類似分野で周知のように、生物によって変動し得る。例えば、Sambrook et al., 1989;Ausubel et al., 1987-1993を参照されたい。
【0296】
したがって、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤の発現は、原核生物または真核生物細胞のいずれかにおいて発生し得る。適切な宿主としては、in vivoもしくはin situのいずれかの酵母、昆虫、真菌、鳥類および哺乳動物細胞を含む、細菌もしくは真核生物宿主、または哺乳動物、昆虫、鳥類もしくは酵母起源の宿主細胞が挙げられる。哺乳動物細胞または組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、げっ歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌまたはネコ起源のものであり得るが、任意の他の哺乳動物細胞が使用され得る。さらに、例えば、酵母ユビキチンヒドロラーゼ系の使用によって、ユビキチン-膜貫通ポリペプチド融合タンパク質のin vivo合成が達成され得る。そのように産生された融合タンパク質は、in vivoで処理され得、またはin vitroで精製および処理され得、特定されたアミノ末端配列を有する本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分の合成を可能にする。さらに、直接的な酵母(または細菌)発現における開始コドン由来のメチオニン残基の保持に関連する問題が回避され得る(例えば、Sabin et al., 7 Bio/Technol. 705 (1989);Miller et al., 7 Bio/Technol. 698 (1989)を参照されたい)。酵母をグルコースに富んだ培地中で成長させた場合に大量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現される遺伝子由来のプロモーターおよび終結エレメントを取り込む一連の酵母遺伝子発現系のいずれかが、組換え抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤を得るために利用され得る。公知の解糖遺伝子もまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供し得る。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルが利用され得る。
【0297】
昆虫における抗体またはその抗原結合部分および他の結合剤の産生は、例えば、昆虫宿主に、当業者に公知の方法によってポリペプチドを発現するように操作されたバキュロウイルスを感染させることによって、達成され得る。Ausubel et al., 1987-1993を参照されたい。
【0298】
一部の実施形態では、導入された核酸配列(抗体もしくはその抗原結合部分またはそのポリペプチドあるいは他の結合剤をコードする)は、レシピエント宿主細胞において自律的複製が可能なプラスミドまたはウイルスベクター中に取り込まれる。広範なベクターのいずれもが、この目的のために用いられ得、当業者に公知であり、入手可能である。例えば、Ausubel et al., 1987-1993を参照されたい。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択する際に重要な因子には、以下が含まれる:ベクターを含有するレシピエント細胞が認識され得、ベクターを含有しないレシピエント細胞から選択され得る容易さ;特定の宿主において所望されるベクターのコピーの数;および異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」させることができることが望ましいかどうか。
【0299】
当該分野で公知の例示的な原核生物ベクターとしては、プラスミド、例えば、E.coliにおいて複製が可能なものが挙げられる。抗体またはその抗原結合部分および他の結合剤をコードするDNAの発現に有用な他の遺伝子発現エレメントとしては、これらに限定されないが、(a)ウイルス転写プロモーターおよびそれらのエンハンサーエレメント、例えば、SV40初期プロモーター(Okayama et al., 3 Mol. Cell. Biol. 280 (1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman et al., 79 PNAS 6777 (1982))およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl et al., 41 Cell 885 (1985));(b)スプライス領域およびポリアデニル化部位、例えば、SV40後期領域に由来するもの(Okayarea et al., 1983)、ならびに(c)ポリアデニル化部位、例えば、SV40中のもの(Okayama et al., 1983)が挙げられる。免疫グロブリンコードDNA遺伝子は、SV40初期プロモーターおよびそのエンハンサー、マウス免疫グロブリンH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギS-グロビン介在配列、免疫グロブリンおよびウサギS-グロビンポリアデニル化部位、ならびにSV40ポリアデニル化エレメントを発現エレメントとして使用して、Liu et al., 以下、およびWeidle et al., 51 Gene 21 (1987)に記載されるように発現され得る。
【0300】
免疫グロブリンコードヌクレオチド配列について、転写プロモーターは、例えば、ヒトサイトメガロウイルスであり得、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルスおよびマウス/ヒト免疫グロブリンであり得る。
【0301】
一部の実施形態では、げっ歯類細胞におけるDNAコード領域の発現のために、転写プロモーターは、ウイルスLTR配列であり得、転写プロモーターエンハンサーは、マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーおよびウイルスLTRエンハンサーのいずれかまたは両方であり得、ならびにポリアデニル化および転写終結領域。他の実施形態では、他のタンパク質をコードするDNA配列が、哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現を達成するために、上で列挙した発現エレメントと組み合わされる。
【0302】
各コード領域または遺伝子融合物は、発現ベクター中でアセンブルされ、または発現ベクター中に挿入される。次いで、可変領域(複数可)またはその抗原結合部分を発現することが可能なレシピエント細胞は、抗体もしくは抗体ポリペプチドまたはその抗原結合部分をコードするヌクレオチドで単独でトランスフェクトされ、あるいはVHおよびVL鎖コード領域をコードするポリヌクレオチド(複数可)で共トランスフェクトされる。トランスフェクトされたレシピエント細胞は、取り込まれたコード領域の発現を可能にする条件下で培養され、発現された抗体鎖または無傷抗体または抗原結合部分は、培養物から回収される。
【0303】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分をコードするコード領域を含有する核酸は、レシピエント宿主細胞を共トランスフェクトするために次いで使用される別々の発現ベクター中でアセンブルされる。各ベクターは、1つまたは複数の選択可能な遺伝子を含有し得る。例えば、一部の実施形態では、2つの選択可能な遺伝子が使用され、第1の選択可能な遺伝子は、細菌系における選択のために設計されており、第2の選択可能な遺伝子は、真核生物系における選択のために設計されており、各ベクターは、1セットのコード領域を有する。この戦略は、細菌系におけるヌクレオチド配列の産生を最初に指示し、その増幅を可能にするベクターを生じる。細菌宿主においてそのように産生および増幅されたDNAベクターは、真核生物細胞を共トランスフェクトするために引き続いて使用され、所望のトランスフェクトされた核酸(例えば、抗体重鎖および軽鎖をコードする)を保有する共トランスフェクトされた細胞の選択を可能にする。細菌系における使用に選択可能な遺伝子の非限定的な例は、アンピシリンに対する耐性を付与する遺伝子およびクロラムフェニコールに対する耐性を付与する遺伝子である。真核生物形質転換体における使用のための選択可能な遺伝子としては、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gptと称される)およびTn5由来のホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoと称される)が挙げられる。あるいは、VHおよびVL鎖をコードする融合されたヌクレオチド配列は、同じ発現ベクター上でアセンブルされ得る。
【0304】
発現ベクターのトランスフェクションおよび抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤の産生のために、レシピエント細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞系(例えば、DG44)または骨髄腫細胞であり得る。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされた免疫グロブリン遺伝子によってコードされる免疫グロブリンを合成、アセンブルおよび分泌することができ、免疫グロブリンのグリコシル化の機構を保有する。例えば、一部の実施形態では、レシピエント細胞は、組換えIg産生骨髄腫細胞SP2/0である。SP2/0細胞は、トランスフェクトされた遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのみを産生する。骨髄腫細胞は、培養物中で、またはマウスの腹腔中で成長され得、マウスの腹腔中で、分泌された免疫グロブリンは、腹水から得られ得る。
【0305】
抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤をコードする発現ベクターは、形質転換、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、およびジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンの適用などの生化学的手段、ならびに電気穿孔、直接的マイクロインジェクションおよび微粒子銃などの機械的手段を含む、種々の適切な手段のいずれかによって、適切な宿主細胞中に導入され得る。当業者に公知のJohnston et al., 240 Science 1538 (1988)。
【0306】
酵母は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の産生に、細菌を超えるある特定の利点を提供する。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド改変を実行する。酵母における所望のタンパク質の産生に使用され得る強いプロモーター配列および高コピー数プラスミドを利用するいくつかの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を保有するポリペプチド(即ち、プレポリペプチド)を分泌する。例えば、Hitzman et al., 11th Intl. Conf. Yeast, Genetics & Molec. Biol. (Montpelier, France, 1982)を参照されたい。
【0307】
酵母遺伝子発現系は、抗体ならびにアセンブルされた抗体およびその抗原結合部分の産生、分泌ならびに安定性のレベルについて慣用的に評価され得る。酵母をグルコースに富んだ培地中で成長させた場合に大量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現される遺伝子由来のプロモーターおよび終結エレメントを取り込む種々の酵母遺伝子発現系が利用され得る。公知の解糖遺伝子もまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供し得る。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルが利用され得る。別の例は、翻訳伸長因子1アルファプロモーターである。酵母における免疫グロブリンの発現について最適な発現プラスミドを評価するために、いくつかのアプローチが取られ得る。II DNA Cloning 45, (Glover, ed., IRL Press, 1985)および例えば、米国特許出願公開第2006/0270045A1号を参照されたい。
【0308】
細菌株もまた、本明細書に記載される抗体分子もしくはその抗原結合部分または他の結合剤の産生のための宿主として利用され得る。E.coli K12株、例えば、E.coli W3110、Bacillus種、腸内細菌、例えば、Salmonella typhimuriumまたはSerratia marcescens、および種々のPseudomonas種が使用され得る。宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの細菌宿主と併せて使用される。ベクターは、複製部位、および形質転換された細胞において表現型的選択を提供することが可能な特定の遺伝子を保有する。細菌における抗体およびその抗原結合部分の産生について発現プラスミドを評価するために、いくつかのアプローチが取られ得る(Glover, 1985;Ausubel, 1987, 1993;Sambrook, 1989;Colligan, 1992-1996を参照されたい)。
【0309】
宿主哺乳動物細胞は、in vitroまたはin vivoで成長され得る。哺乳動物細胞は、リーダーペプチド除去、VHおよびVL鎖のフォールディングおよびアセンブリ、抗体分子のグリコシル化、ならびに機能的抗体および/またはその抗原結合部分の分泌を含む翻訳後改変を、免疫グロブリン分子に提供する。
【0310】
抗体タンパク質の産生のための宿主として有用であり得る哺乳動物細胞には、上記リンパ系起源の細胞に加えて、線維芽細胞起源の細胞、例えば、VeroまたはCHO-K1細胞が含まれる。免疫グロブリンポリペプチドを発現させるために使用され得る例示的な真核生物細胞としては、これらに限定されないが、COS7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO-S、CHO-K1およびDG44細胞を含むCHO細胞;PERC6(商標)細胞(Crucell);ならびにNSO細胞が挙げられる。一部の実施形態では、特定の真核生物宿主細胞は、重鎖および/または軽鎖に対して所望の翻訳後改変を行うその能力に基づいて選択される。例えば、一部の実施形態では、CHO細胞は、293細胞において産生された同じポリペプチドよりも高いレベルのシアリル化を有するポリペプチドを産生する。
【0311】
一部の実施形態では、1つまたは複数の抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、任意の適切な方法に従って、ポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸分子で操作またはトランスフェクトされた動物において、in vivoで産生され得る。
【0312】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、無細胞系において産生される。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44 (2009);Spirin, Trends Biotechnol. 22: 538-45 (2004);およびEndo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713 (2003)に記載されている。
【0313】
多くのベクター系が、哺乳動物細胞におけるVHおよびVL鎖の発現のために利用可能である(Glover, 1985を参照されたい)。種々のアプローチに従って、無傷抗体を得ることができる。上で議論したように、完全なテトラマー性H2L2抗体またはその抗原結合部分になるような、VHおよびVL鎖の細胞内会合および連結を達成するために、VHおよびVL鎖、ならびに必要に応じて関連する定常領域を同じ細胞中で共発現させることが可能である。共発現は、同じ宿主において同じまたは異なるプラスミドのいずれかを使用することによって、発生し得る。VHおよびVL鎖またはその抗原結合部分をコードする核酸は、同じプラスミド中に置かれ得、これは次いで、細胞中にトランスフェクトされ、それに関して、両方の鎖を発現する細胞について直接的に選択する。あるいは、細胞は、一方の鎖、例えばVL鎖をコードするプラスミドで最初にトランスフェクトされ得、その後、得られた細胞系が、第2の選択可能なマーカーを含有するVH鎖プラスミドでトランスフェクトされ得る。いずれかの経路を介して抗体、その抗原結合部分または他の結合剤を産生する細胞系は、増強された特性、例えば、アセンブルされた抗体もしくはその抗原結合部分のより高い産生、またはトランスフェクトされた細胞系の増強された安定性を有する細胞系を生成するために、追加の選択可能なマーカーと併せて、追加のコピーのペプチド、VH、VL、またはVHプラスVL鎖をコードするプラスミドでトランスフェクトされ得る。
【0314】
さらに、植物が、微生物または動物細胞の大規模培養に基づく、組換え抗体産生のための簡便で安全かつ経済的な代替的発現系として出現している。抗体または抗原結合部分は、植物細胞培養物、または通常通り成長した植物において発現され得る。植物における発現は、全身性であってもよく、細胞内色素体に限定されてもよく、種子(胚乳)に限定されてもよい。例えば、米国特許出願公開第2003/0167531号;米国特許第6,080,560号;米国特許第6,512,162号;およびWO0129242を参照されたい。いくつかの植物由来の抗体が、臨床試験を含む、開発の進行した段階に達している(例えば、Biolex, N.C.を参照されたい)。
【0315】
無傷抗体のために、抗体の可変領域(VHおよびVL)は、典型的には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものに連結される。ヒト定常領域DNA配列は、種々のヒト細胞、例えば、不死化B細胞から、周知の手順に従って単離され得る(例えば、WO87/02671を参照されたい;これは、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる)。抗体は、軽鎖定常領域および重鎖定常領域の両方を含有し得る。重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、および、ときどき、CH4領域を含み得る。一部の実施形態では、CH2ドメインは、欠失または割愛され得る。
【0316】
あるいは、単鎖抗体の産生のための記載された技法(例えば、米国特許第4,946,778号;Bird, Science 242:423-42 (1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988);およびWard et al., Nature 334:544-54 (1989)を参照されたい;これらは、それらの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる)は、所望の抗原に特異的に結合する単鎖抗体を産生するために適応され得る。単鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖可変領域を連結して単鎖ポリペプチドを生じることによって形成される。E.coliにおける機能的Fv断片のアセンブリのための技法もまた使用され得る(例えば、Skerra et al., Science 242:1038-1041 (1988)を参照されたい;これは、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる)。他の結合剤を作製する方法は、上記されている。
【0317】
無傷(例えば、全体)抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖、またはその抗原結合部分は、公知の技法、例えば、免疫吸着または免疫親和性クロマトグラフィー、クロマトグラフィー法、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、またはこれらの任意の組合せによって、回収および精製され得る。一般には、Scopes, Protein Purification (Springer-Verlag, N.Y., 1982)を参照されたい。特に、医薬品使用のためには、98%~99%またはそれよりも大きい均一性を有するものが有益であるので、少なくとも約90%~95%の均一性の、実質的に純粋な抗体またはその抗原結合部分が有益である。所望により部分的にまたは均一性になるまで精製されると、次いで、無傷抗体またはその抗原結合部分は、治療的に、またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などを開発および実施する際に、使用され得る。一般には、Vols. I & II Immunol. Meth. (Lefkovits & Pernis, eds., Acad. Press, NY, 1979 and 1981)を参照されたい。
【0318】
医薬製剤
一部の態様では、結合剤は、活性成分(即ち、本明細書に記載される結合剤あるいは本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤をコードする核酸が含まれる)を含む組成物に関する。一部の実施形態では、組成物は、医薬組成物である。本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、医薬品産業における使用のために許容された薬学的に許容される担体と組み合わせた活性薬剤を指す。語句「薬学的に許容される」は、妥当な医学的判断の範囲内の、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしのヒトおよび動物の組織と接触した使用に適切な、合理的なベネフィット/リスク比に釣り合った、化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために、本明細書で用いられる。
【0319】
その中に溶解または分散された活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当該分野で十分に理解されており、任意の特定の製剤に基づいて限定される必要はない。典型的には、かかる組成物は、液体液剤または懸濁剤のいずれかとして、注射剤として調製される;しかし、使用の前の液体中での再水和または懸濁に適切な固体形態もまた調製され得る。調製物はまた、リポソーム組成物として乳化または提示され得る。抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、薬学的に許容され、活性成分と適合性である賦形剤と、本明細書に記載される治療方法における使用に適切な量で混合され得る。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せである。さらに、所望であれば、医薬組成物は、活性成分(例えば、抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤)の有効性を増強または維持する微量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤などを含有し得る。本明細書に記載される医薬組成物は、その中に構成成分の薬学的に許容される塩を含み得る。薬学的に許容される塩としては、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸など、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄など、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。生理学的に忍容性がある担体は、当該分野で周知である。例示的な液体担体は、活性成分(例えば、抗体および/もしくはその抗原結合部分または他の結合剤)および水を含有する無菌水溶液であり、緩衝剤、例えば、生理pH値のリン酸ナトリウム、生理食塩水、または両方、例えばリン酸緩衝食塩水を含有し得る。なおさらに、水性担体は、1種よりも多くの緩衝塩、ならびに塩、例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、デキストロース、ポリエチレングリコールならびに他の溶質を含有し得る。液体組成物は、水に加えて、および水の除去に加えて、液相もまた含有し得る。かかる追加の液相の例示は、グリセリン、植物油、例えば、綿実油、および水-油エマルジョンである。特定の障害または状態の処置において有効な活性薬剤の量は、その障害または状態の性質に依存し、標準的な臨床的技法によって決定され得る。
【0320】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤あるいは抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤をコードする核酸を含む医薬組成物は、凍結乾燥物であり得る。
【0321】
一部の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を含むシリンジが提供される。
【0322】
炎症性疾患および自己免疫疾患の処置
一部の態様では、本明細書に記載される結合剤は、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、炎症性疾患を有する対象に投与するステップを含む方法(複数可)において使用され得る。一部の態様では、本明細書に記載される結合剤は、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、自己免疫疾患を有する対象または自己抗原に対する免疫応答を有する対象または自己免疫性障害(これは、本明細書で自己免疫疾患と集合的に呼ばれ得る)の発症を引き起こすもしくは生じる抗原に対する免疫応答を有する対象に投与するステップを含む方法(複数可)において使用され得る。一部の実施形態では、対象は、自己免疫疾患に対する処置を必要としている。一部の実施形態では、自己免疫疾患を処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、対象における病原性免疫細胞の数または活性を減少させ、それにより、自己免疫疾患の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、病原性免疫細胞によって媒介される免疫応答を抑制するための方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかと接触させるステップを含み、それにより、病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法が提供される。一部の実施形態では、自己抗原に対する免疫応答を抑制するための方法であって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、自己抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法が提供される。一部の実施形態では、自己免疫性障害の発症を引き起こすまたは生じる自己抗原に対する免疫応答を予防するための方法であって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、自己抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数もしくは活性が減少する、または自己抗体の力価が対象において減少する、方法が提供される。一部の実施形態では、自己免疫性障害の発症を引き起こすまたは生じる自己抗原に対する免疫応答を抑制するための方法であって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、自己抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数もしくは活性が減少する、または自己抗体の力価が対象において減少する、方法が提供される。一部の実施形態では、自己免疫性障害の発症を引き起こすまたは生じる抗原または自己抗原に対する免疫応答を抑制するための方法であって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、抗原または自己抗原に対する免疫応答が対象において減少または抑制される、方法が提供される。
【0323】
本明細書で使用される場合、用語「自己抗原」は、免疫系(例えば、健康なヒト免疫系)によって自己として通常認識される抗原(例えば、細胞表面タンパク質または他の抗原)を指す。抗原または自己抗原は、自己免疫疾患もしくは状態において体液性もしくは細胞媒介性の免疫応答の標的となる、または過度の免疫応答を誘発する(集合的に「自己免疫疾患」)。本明細書で使用される場合、CD8+KIR+Tregを「活性化または刺激する」こと、または活性化されたCD8+KIR+Tregは、かかる細胞の調節性T細胞機能、例えば、免疫応答、特に自己抗原に対する免疫応答を抑制する能力の増加、または自己免疫性障害の発症を引き起こすもしくは生じる自己抗原に対する免疫応答を抑制することを指す。CD8+KIR+Tregの活性化または刺激には、CD8+KIR+Tregを回復させる(例えば、対象において、または疾患の発症前に処置を必要とする対象において、免疫系のバランスを回復させる、またはバランスのとれた免疫活性を回復させる)ための、そのような細胞に対する抑制効果の除去が含まれ得る。CD8+KIR+Tregの活性化または刺激には、そのような細胞の除去、例えば、細胞溶解などによる、CD4+細胞、B細胞、または免疫応答を媒介する他の細胞の除去もまた含まれ得る。
【0324】
本明細書で使用される場合、病原性免疫細胞は、自己抗原と反応性のまたは自己抗原に対する応答を誘導する免疫細胞を指す。かかる病原性免疫細胞の例としては、当該分野で公知のように、自己反応性CD4+T細胞、自己抗体産生B細胞、自己抗原提示樹状細胞および他の自己抗原提示細胞が挙げられる。
【0325】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。次いで、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与され得る。
【0326】
一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、病原性免疫細胞、例えば、自己反応性CD4+T細胞、自己抗体産生B細胞、自己抗原提示樹状細胞または自己抗原提示細胞に対して抑制効果を発揮する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、病原性免疫細胞、例えば、自己反応性CD4+T細胞、自己抗体産生B細胞および自己抗原提示樹状細胞に対して抑制効果を発揮する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、病原性免疫細胞、例えば、自己反応性CD4+T細胞、自己抗体産生B細胞および自己抗原提示樹状細胞を枯渇させる。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、病原性免疫細胞の病原性効果をモジュレートし、対象において自己抗体の力価を減少させる。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、対象において自己抗体の力価を減少させる。
【0327】
一部の実施形態では、結合剤は、各場合において、低減されたエフェクター機能活性を有する、またはエフェクター機能活性を実質的に有さない、本明細書に記載される結合剤のいずれかから選択される。一部の実施形態では、低減されたエフェクター機能活性とは、低減されたADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性である、またはADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性がないことである。一部の実施形態では、エフェクター機能活性を実質的に有さないとは、ADCC、ADCPおよびCDCエフェクター機能活性を実質的に有さないことを意味する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如し、低減されたエフェクター機能を有する、またはエフェクター機能を実質的に有さない。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換、例えば、Fcヌル置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインもしくは領域を欠如する、または1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如する。一部の実施形態では、結合剤は、1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、1つまたは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインまたは領域を有する。
【0328】
いずれの特定の理論にも束縛されることを意図しないが、結合剤によるエフェクター機能活性の低減または非存在は、結合剤と他の細胞型(即ち、非CD8+KIR+Treg)との相互作用を制限し得、および/または結合剤に結合されたCD8+KIR+Tregの枯渇を制限し得る。
【0329】
一部の実施形態では、処置を必要とする対象は、自己免疫疾患を有する。一部の実施形態では、処置を必要とする対象は、自己免疫疾患、例えば、自己免疫誘導性肝炎、アジソン病、円形脱毛症、アルポート症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、関節炎、回虫症、アスペルギルス症 アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性筋炎、ベーチェット病、鳥飼育者肺、気管支喘息、カプラン症候群、心筋症、セリアック病、シャーガス病、慢性糸球体腎炎、慢性移植片対宿主病、コーガン症候群、寒冷凝集素病、CREST症候群、クローン病、クリオグロブリン血症、クッシング症候群、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス(Discoid Lupus)、ドレスラー症候群(Dressier's Syndrome)、イートン-ランバート症候群、脳脊髄炎、内分泌眼症、エリテマトーデス、エバンス症候群、フェルティ症候群、線維筋痛症、フックス毛様体炎、胃萎縮症、消化管アレルギー、巨細胞動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン-バレー病(症候群)、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、過粘稠度症候群、特発性副腎萎縮症、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、炎症性腸疾患(症候群)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたはI型)、若年性関節炎、若年性特発性関節炎、若年性糖尿病(I型)、ランバート-イートン症候群 蹄葉炎、扁平苔癬、ルポイド肝炎、ループス、ループス腎炎、リンパ球減少症、マクログロブリン血症、メニエール病、混合性結合組織病、起源不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、POEMS症候群、多腺性症候群、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、初老期認知症、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変/胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サンプター症候群(Sampter's Syndrome)、シュミット症候群、強皮症/全身性硬化症、シュールマン症候群、シェーグレン症候群(Sjorgen's Syndrome)、スティフ-マン症候群、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、甲状腺炎、血小板減少症、甲状腺中毒症、中毒性表皮壊死症、B型インスリン抵抗性、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、ワルデンストレームマクログロブリン血症および/またはウェゲナー肉芽腫症などを有する。
【0330】
一部の実施形態では、自己免疫疾患は、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、ループス腎炎、重症筋無力症、心筋炎、多発性硬化症(MS)、天疱瘡/類天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変/胆管炎、関節リウマチ(RA)、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群(SjS)、全身性エリテマトーデス(SLE)または潰瘍性大腸炎である。
【0331】
一部の実施形態では、自己免疫疾患は、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)または潰瘍性大腸炎から選択される。
【0332】
本明細書に記載される方法は、治療有効量の結合剤を、自己免疫疾患を有する対象に投与するステップを含む。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」、「有効な量」、「有効量」および「有効用量」は、自己免疫疾患の処置、自己免疫疾患の管理、自己免疫疾患の再発の予防、自己免疫疾患の発症の遅延、または自己免疫疾患の発症の予防において治療利益を提供する、本明細書に記載される結合剤の量、例えば、自己免疫疾患の少なくとも1つの症状、徴候またはマーカーの統計的に有意な減少を提供する量を指し得る。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態および性別、ならびに対象における医学的状態の重症度および型、ならびに他の薬学的に活性な薬剤の投与によって変動し得る。
【0333】
本明細書の方法は、対象において症状、病変、疾患進行または疾患再燃を低減させることが企図される。本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を指す。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、飼育動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科種、例えば、イエネコ、イヌ科種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが挙げられる。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語「患者」、「個体」および「対象」は、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0334】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、例えば、種々の自己免疫疾患の動物モデルを提示する対象として、例えば、有益に使用され得る。さらに、本明細書に記載される方法は、飼い慣らされた動物および/またはペットを処置するために使用され得る。対象は、雄性または雌性であり得る。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0335】
対象は、自己免疫疾患と以前に診断されまたは自己免疫疾患に罹患していると以前に同定され、処置を必要とするが、自己免疫疾患に対する処置を既に受けている必要はない対象であり得る。あるいは、対象はまた、処置を必要とする、自己免疫疾患を有すると以前に診断されていない対象であり得る。対象は、自己免疫疾患に関連する状態または1つもしくは複数の合併症についての1つまたは複数のリスク因子を示す対象、リスク因子を示さない対象であり得る。自己免疫疾患に対する処置を「必要とする対象」は、その疾患を有する対象またはその疾患を有すると診断された対象であり得る。一部の実施形態では、対象が、自己免疫性障害の発症を引き起こし得るまたは生じ得る抗原または自己抗原に対する免疫応答を発症するリスクがある場合、対象は、処置を必要とする。他の実施形態では、自己免疫疾患を「発症するリスクがある」対象は、疾患または状態を発症するリスクがあると診断された対象を指す。
【0336】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」または「緩和」は、疾患、障害または医学的状態(例えば、自己免疫疾患)に言及して使用される場合、状態に対する治療的処置を指し、その目的は、症状または状態の進行または重症度を逆転させる、軽減する、緩和させる、阻害する、減速させるまたは停止させることである。用語「処置すること」は、状態または疾患の少なくとも1つの有害作用または症状を低減させることまたは軽減することを含む。1つまたは複数の症状または臨床的マーカーが低減される場合、処置は一般に、「有効」である。あるいは、状態の進行が低減または中断される場合、処置は「有効」である。即ち、「処置」には、症状またはマーカーの改善だけではなく、処置の非存在下で予想される症状の進行または悪化の休止または少なくとも減速も含まれ得る。有益なまたは所望の臨床的結果としては、これらに限定されないが1つもしくは複数の症状の低減、対象における疾患再燃の低減、1つもしくは複数の症状の軽減、欠陥の程度の減弱、自己免疫疾患の安定化された(即ち、悪化していない)状態、または自己免疫疾患の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、CD8+KIR+Tregへの結合剤の結合を生じる方法または経路によって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を(例えば、対象への投与によって)接触させることを指す。同様に、本明細書で開示される、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を含む医薬組成物は、対象において有効な処置を生じる任意の適切な経路によって投与され得る。
【0337】
結合剤のための投薬量範囲は、効能に依存し、所望の効果、例えば、1つもしくは複数の症状の低減、対象における疾患再燃の低減、1つもしくは複数の症状の軽減、欠陥の程度の減弱、自己免疫疾患の安定化された(即ち、悪化していない)状態、または自己免疫疾患の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速を生じるのに十分に大きい量を包含する。投薬量は、許容されない有害な副作用を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、投薬量は、対象の年齢、状態および性別によって変動し、当業者によって決定され得る。投薬量はまた、何か合併症がある場合には、個々の医師によって調整され得る。一部の実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、約0.5mg/kg体重~約15mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、用量範囲は、約0.5mg/kg体重~約5mg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、1ug/mLと1000ug/mLとの間の血清レベルを維持するために用量設定され得る。
【0338】
一部の実施形態では、対象は、例えば、急性自己免疫疾患または状態の処置のために、本明細書に記載される結合剤のいずれかの単一の用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、自己免疫疾患または状態をもたらし得る免疫応答の予防のために、本明細書に記載される結合剤のいずれかの単一の用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、慢性自己免疫疾患または状態の処置のために、本明細書に記載される結合剤のいずれかの反復用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、自己免疫疾患または状態をもたらし得る免疫応答の予防のために、本明細書に記載される結合剤のいずれかの反復用量を受ける。一部の実施形態では、用量は、数週間、数か月間または数年間にわたって、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2か月毎または6か月毎に投与される。処置の持続時間は、対象の臨床的進行および処置に対する応答性に依存する。
【0339】
一部の実施形態では、用量は、静脈内投与され得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約10分間~約4時間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約30分間~約90分間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、用量は、皮下投与され得る。
【0340】
本明細書に記載される結合剤のいずれかを含有する医薬組成物は、単位用量で投与され得る。用語「単位用量」は、医薬組成物に言及して使用される場合、対象のための単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、要求される生理学的に許容される希釈剤、即ち、担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された、所定の量の活性材料(例えば、結合剤)を含有する。
【0341】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤のいずれかの投与は、処置転帰の改善、例えば、全身性炎症性サイトカインの低減、疾患によって影響される組織における病変の低減、低減された再燃頻度および/もしくは重症度、疾患に関連する症状の自己報告の低減、1つもしくは複数の症状の軽減、ならびに/または自己免疫疾患の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速を生じ得る。
【0342】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤または結合剤のいずれかの医薬組成物は、免疫療法と共に投与される。本明細書で使用される場合、「免疫療法」は、対象自身の免疫系をモジュレートするように設計された治療戦略を指す。免疫療法の例としては、これらに限定されないが、抗体、例えば、チェックポイント阻害剤およびモジュレーターおよび免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenylate mofetil)、シロリムス、タクロリムス、エタネルセプト、プレドニゾン、アザチオプリン、メトトレキサート シクロホスファミド、プレドニゾン、アミノカプロン酸、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、クロラムブシル、DHEA、ダナゾール、ブロモクリプチン、メロキシカム、インフリキシマブ、アバタセプト、ベラタセプトおよびアダリムマブが挙げられる。
【0343】
移植合併症の処置
一部の実施形態では、移植片対宿主病、またはGVHDに関連する移植の合併症を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、対象におけるGVHDの合併症を低減させるための方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた対象に投与して、移植に対する宿主免疫応答を抑制するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、対象におけるGVHDの合併症を低減させるための方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた対象に投与して、移植に関連する免疫応答を抑制するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、GVHDを低減させる方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた、GVHDを現に経験している対象に投与するステップを含み、それにより、GVHDの症状が低減される、方法が提供される。一部の実施形態では、GVHDを抑制する方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた、GVHDを現に経験している対象に投与するステップを含み、それにより、GVHDが抑制または低減される、方法が提供される。一部の実施形態では、GVHDを抑制するまたは低減させる方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた対象由来のCD8+KIR+T調節性細胞(Treg)と接触させるステップを含み、それにより、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)が活性化される、方法が提供される。一部の実施形態では、GVHDを抑制するまたは低減させる方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた対象由来のCD8+KIR+T調節性細胞(Treg)と接触させるステップを含み、それにより、移植のCD8+KIR+T調節性細胞(Treg)が枯渇される、方法が提供される。一部の実施形態では、GVHDを抑制するまたは低減させる方法であって、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、移植を受けた対象由来のCD8+KIR+T調節性細胞(Treg)と接触させるステップを含み、それにより、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)が枯渇される、方法が提供される。
【0344】
一部の実施形態では、対象は、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞の移植、骨髄移植または固形臓器移植を受けている。移植は、典型的には、同種異系移植である。一部の実施形態では、対象は、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞の移植、骨髄移植または固形臓器移植を受けており、GVHDを現に経験している。一部の実施形態では、対象は、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞の移植、骨髄移植または固形臓器移植を受けており、GVHDを経験するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、造血幹細胞移植を受けており、GVHDを現に経験している。一部の実施形態では、対象は、造血幹細胞移植を受けており、GVHDを経験するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、臍帯血幹細胞移植を受けており、GVHDを現に経験している。一部の実施形態では、対象は、臍帯血幹細胞移植を受けており、GVHDを経験するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、人工多能性幹細胞由来の前駆体または分化した細胞の移植を受けており、GVHDを現に経験している。一部の実施形態では、対象は、人工多能性幹細胞由来の前駆体または分化した細胞の移植を受けており、GVHDを経験するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、骨髄移植を受けており、GVHDを現に経験している。一部の実施形態では、対象は、骨髄移植を受けており、GVHDを経験するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、固形臓器移植を受けており、GVHDを現に経験している。一部の実施形態では、対象は、固形臓器移植を受けており、GVHDを経験するリスクがある。
【0345】
一部の実施形態では、GVHDは、病原性免疫細胞、例えば、CD4 T細胞の枯渇によって、抑制または低減される。一部の実施形態では、GVHDは、病原性免疫細胞、例えば、移植由来のCD8+KIR+Tregの枯渇によって、抑制または低減される。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。次いで、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与され得る。
【0346】
一部の実施形態では、結合剤は、各場合において、低減されたエフェクター機能活性を有する、またはエフェクター機能活性を実質的に有さない、本明細書に記載される結合剤のいずれかから選択される。一部の実施形態では、低減されたエフェクター機能活性とは、低減されたADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性である、またはADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性がないことである。一部の実施形態では、エフェクター機能活性を実質的に有さないとは、ADCC、ADCPおよびCDCエフェクター機能活性を実質的に有さないことを意味する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如し、低減されたエフェクター機能を有し、またはエフェクター機能を実質的に有さない。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換、例えば、Fcヌル置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインもしくは領域を欠如する、または1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如する。一部の実施形態では、結合剤は、1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、1つまたは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインまたは領域を有する。
【0347】
一部の実施形態では、結合剤は、各場合において、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、本明細書に記載される結合剤のいずれかから選択される。一部の実施形態では、エフェクター機能活性は、ADCPおよび/またはCDCエフェクター機能活性と組み合わされたADCCである。一部の実施形態では、エフェクター機能活性を有するとは、ADCC、ADCPおよびCDCエフェクター機能活性を有することを意味する。種々の実施形態では、かかる結合剤は、Fcドメインを有する、または1つもしくは複数のFcガンマ受容体に結合するFcドメインを有する。
【0348】
いずれの特定の理論にも束縛されることを意図しないが、結合剤によるエフェクター機能活性の低減または非存在は、結合剤と他の細胞型(即ち、非CD8+KIR+Treg)との相互作用を制限し得、および/またはCD8+KIR+Tregの枯渇を制限し得る。対照的に、結合剤によるエフェクター機能活性の存在は、免疫応答を、CD8+KIR+Tregの枯渇に偏らせると考えられる。
【0349】
一部の実施形態では、移植は、幹細胞移植、骨髄移植または固形臓器移植である。本明細書で使用される場合、用語「移植」の意味は、1つの対象から異なる対象に移植された、または同じ対象内で(例えば、対象内の異なる領域に)移植された、臓器、組織または細胞を指す。臓器、例えば、肝臓、腎臓、心臓もしくは肺、または他の身体部分、例えば、骨もしくは骨格マトリックス(skeletal matrix)、例えば、骨髄、組織、例えば、皮膚、角膜、腸、内分泌腺、または幹細胞もしくは種々の型、または造血幹細胞および前駆細胞を含む造血細胞、臍帯血幹細胞ならびに人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞は全て、移植の例である。一部の実施形態では、固形臓器移植は、肝臓、腎臓、肺、膵臓および/または心臓移植である。移植という用語は、移植片を含む。移植は、同種移植片(allograft)(または同種異系移植片(allogeneic graft))または異種移植片であり得る。用語「同種移植片」は、1つの種の2つの遺伝的に非同一なメンバー間での移植片を指す。用語「異種移植片」は、異なる種のメンバー間での移植片を指す。
【0350】
一部の実施形態では、移植は、骨髄移植である。一部の実施形態では、移植は、造血幹細胞移植である。一部の実施形態では、移植は、臍帯血幹細胞移植である。一部の実施形態では、移植は、人工多能性幹細胞由来の前駆体または分化した細胞の移植である。
【0351】
一部の実施形態では、対象は、移植片対宿主病、またはGVHDを有する。一部の実施形態では、対象は、GVHDを有するリスクがある。
【0352】
本明細書に記載される方法は、治療有効量の結合剤を、移植を現に受けている対象に投与するステップを含む。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」、「有効な量」、「有効量」および「有効用量」は、移植に関連するGVHDの管理において治療利益を提供する、本明細書に記載される結合剤の量を指し得る。一部の実施形態では、治療利益は、GVHDの発症の遅延または発症の予防である。一部の実施形態では、治療利益は、GVHDの少なくとも1つの症状、徴候またはマーカーの統計的に有意な減少である。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態および性別、ならびに対象における医学的状態の重症度および型、ならびに他の薬学的に活性な薬剤の投与によって変動し得る。
【0353】
本発明の方法は、移植を受けた対象において、GVHDの症状を低減させる、GVHDを低減させる、またはGVHDを予防することが企図される。本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を指す。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、飼育動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科種、例えば、イエネコ、イヌ科種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが挙げられる。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語「患者」、「個体」および「対象」は、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0354】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、例えば、種々の自己免疫疾患の動物モデルを提示する対象として、例えば、有益に使用され得る。さらに、本明細書に記載される方法は、飼い慣らされた動物および/またはペットを処置するために使用され得る。対象は、雄性または雌性であり得る。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0355】
対象は、移植を受けることになる対象であり得る。あるいは、対象は、移植をすでに受けている対象であり得る。対象は、移植を受けることになる、GVHDのリスクがある対象であり得る。対象は、移植を受けており、GVHDを有するリスクがある対象であり得る。対象は、移植を受けており、GVHDを有する対象であり得る。
【0356】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」または「緩和」は、疾患、障害または医学的状態(例えば、GVHD)に言及して使用される場合、状態に対する治療的処置を指し、その目的は、GVHDの症状または状態の進行または重症度を逆転させる、軽減する、緩和させる、阻害する、減速させるまたは停止させることである。用語「処置すること」は、状態または疾患の少なくとも1つの有害作用または症状を低減させることまたは軽減することを含む。1つまたは複数の症状または臨床的マーカーが低減される場合、処置は一般に、「有効」である。あるいは、状態の進行が低減または中断される場合、処置は「有効」である。即ち、「処置」には、症状またはマーカーの改善だけではなく、処置の非存在下で予想される症状の進行または悪化の休止または少なくとも減速も含まれ得る。有益なまたは所望の臨床的結果としては、これらに限定されないがGVHDに関連する1つまたは複数の症状の低減が含まれる。
【0357】
本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、CD8+KIR+Tregへの結合剤の結合を生じる方法または経路によって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を(例えば、対象への投与によって)接触させることを指す。同様に、本明細書で開示される本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を含む医薬組成物は、対象において有効な処置を生じる任意の適切な経路によって投与され得る。
【0358】
結合剤のための投薬量範囲は、効能に依存し、所望の効果、例えば、GVHDの1つもしくは複数の症状の低減またはGVHDの低減もしくは予防を生じるのに十分に大きい量を包含する。投薬量は、許容されない有害な副作用を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、投薬量は、対象の年齢、状態および性別によって変動し、当業者によって決定され得る。投薬量はまた、何か合併症がある場合には、個々の医師によって調整され得る。一部の実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、約0.5mg/kg体重~約15mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、用量範囲は、約0.5mg/kg体重~約5mg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、1ug/mLと1000ug/mLとの間の血清レベルを維持するために用量設定され得る。
【0359】
一部の実施形態では、対象は、例えば、移植後の急性GVHDの処置のために、本明細書に記載される結合剤のいずれかの単一の用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、慢性GVHDの処置のために、本明細書に記載される結合剤のいずれかの反復用量を受ける。一部の実施形態では、用量は、数週間、数か月間または数年間にわたって、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2か月毎または6か月毎に投与される。処置の持続時間は、対象の臨床的進行および処置に対する応答性に依存する。
【0360】
一部の実施形態では、用量は、静脈内投与され得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約10分間~約4時間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約30分間~約90分間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、用量は、皮下投与され得る。
【0361】
本明細書に記載される結合剤のいずれかを含有する医薬組成物は、単位用量で投与され得る。用語「単位用量」は、医薬組成物に言及して使用される場合、対象のための単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、要求される生理学的に許容される希釈剤、即ち、担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された、所定の量の活性材料(例えば、結合剤)を含有する。
【0362】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤のいずれかの投与は、処置転帰の改善、例えば、全身性炎症性サイトカインの低減、疾患によって影響される組織における病変の低減、宿主組織に対する有害作用に関連する免疫応答に関連する症状の自己報告の低減、移植生着の改善もしくは延長、1つもしくは複数の症状の軽減、および/または移植の拒絶の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速、または広範な免疫抑制剤、例えば、コルチコステロイドの使用の減少による移植生着の延長を生じ得る。
【0363】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤または結合剤のいずれかの医薬組成物は、免疫抑制剤、例えば、コルチコステロイド(複数可)と共に投与される。
【0364】
感染性疾患の処置
一部の態様では、本明細書に記載される結合剤は、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、感染症を有する対象に投与するステップを含む方法(複数可)において使用され得る。一部の実施形態では、対象は、感染症に対する処置を必要としている。一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、感染症の症状を緩和させるのに有効な量で投与することによる、感染症を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかと接触させることにより、感染性因子に対する免疫応答を刺激するステップを含み、それにより、感染性因子に対する免疫応答が刺激される。一部の実施形態では、この方法は、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかと接触させることによる、感染性因子に感染した細胞に対する免疫応答を刺激するステップを含み、それにより、感染細胞が枯渇される。一部の実施形態では、この方法は、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかと接触させることによる、感染性因子に感染した細胞に対する免疫応答を刺激するステップを含み、それにより、感染細胞に対する免疫応答が刺激される。
【0365】
感染症を処置する方法の一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、本明細書に記載される結合剤のいずれかとin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、本明細書に記載される結合剤のいずれかとex vivoで接触する。活性化されたCD8+KIR+Tregは、引き続いて、それを必要とする対象に有効量で投与される。一部の実施形態では、免疫応答は、免疫抑制性免疫細胞の低減を含む。本明細書で使用される場合、免疫抑制性免疫細胞としては、CD4 Tregおよび寛容性DCが挙げられる。一部の実施形態では、対象における感染細胞の数が減少する。
【0366】
一部の実施形態では、結合剤は、各場合において、低減されたエフェクター機能活性を有する、またはエフェクター機能活性を実質的に有さない、本明細書に記載される結合剤のいずれかから選択される。一部の実施形態では、低減されたエフェクター機能活性とは、低減されたADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性である、またはADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性がないことである。一部の実施形態では、エフェクター機能活性を実質的に有さないとは、ADCC、ADCPおよびCDCエフェクター機能活性を実質的に有さないことを意味する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如し、低減されたエフェクター機能を有し、またはエフェクター機能を実質的に有さない。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換、例えば、Fcヌル置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインもしくは領域を欠如する、または1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如する。一部の実施形態では、結合剤は、1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、1つまたは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインまたは領域を有する。
【0367】
いずれの特定の理論にも束縛されることを意図しないが、結合剤によるエフェクター機能活性の低減または非存在は、結合剤と他の細胞型(即ち、非CD8+KIR+Treg)との相互作用を制限し得、および/または結合剤に結合されたCD8+KIR+Tregの枯渇を制限し得る。
【0368】
一部の実施形態では、対象は、感染性疾患に対する処置を必要としている、または感染性因子に感染している、例えば、細菌疾患、全身性真菌疾患、リケッチア疾患、寄生生物疾患またはウイルス疾患など。一部の実施形態では、感染症は、細菌疾患、例えば、ジフテリア、百日咳、潜在性菌血症、泌尿器感染症、胃腸炎、蜂巣炎、喉頭蓋炎、気管炎、アデノイド肥大、咽後膿瘍、膿痂疹、膿瘡、肺炎、心内膜炎、化膿性関節炎、肺炎球菌性肺炎、腹膜炎、菌血症、髄膜炎、急性化膿性髄膜炎、尿道炎、子宮頸管炎、直腸炎、咽頭炎、卵管炎、精巣上体炎、淋病、梅毒、リステリア症、炭疽病、ノカルジア症、サルモネラ、腸チフス、赤痢、結膜炎、副鼻腔炎、ブルセラ症 野兎病、コレラ、腺ペスト、破傷風、壊死性腸炎、放線菌症、混合嫌気性感染症、梅毒、回帰熱、レプトスピラ症、ライム病、鼠咬熱、マイコバクテリウム結核を含む結核、リンパ節炎、ハンセン病、クラミジア、クラミジア性肺炎、トラコーマまたは封入体結膜炎;全身性真菌疾患、例えば、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス症(Coccicidoidomycosis)、ブラストミセス症、スポロトリクム症、クリプトコッカス症、全身性カンジダ症、アスペルギルス症、ムコール症、菌腫または黒色真菌症;リケッチア疾患、例えば、チフス、ロッキー山紅斑熱 エーリヒア症、東ダニ媒介性リケッチア症(Eastern Tick-Borne Rickettsioses)、リケッチア痘症、Q熱またはバルトネラ症;寄生生物疾患、例えば、マラリア、バベシア症、アフリカ睡眠病、シャーガス病、リーシュマニア症、ダムダム熱、トキソプラズマ症 髄膜脳炎、角膜炎、二核アメーバ症(Dientamebiasis)、ジアルジア症、クリプトスポリジウム症、イソスポーラ症、シクロスポラ症、微胞子虫症、回虫症、鞭虫感染症、鉤虫感染症、糞線虫感染症、眼幼虫移行症、旋毛虫症、メジナ虫病、リンパ管フィラリア症、ロア糸状虫症、河川盲目症、イヌ糸状虫感染症、住血吸虫症、セルカリア皮膚炎(Swimmer's Itch)、東方肺吸虫(Oriental Lung Fluke)、東方肝臓吸虫(Oriental Liver Fluke)、肝蛭症、肥大吸虫症、オピストルキス症、条虫感染症、包虫症および肺胞包虫症;ならびにウイルス疾患、例えば、麻疹、亜急性硬化性全脳炎、風邪、ムンプス、風疹、バラ疹、伝染性紅斑、水痘、コロナウイルス感染症、Covid19疾患、呼吸器多核体ウイルス感染症、クループ、細気管支炎、感染性単核球症、灰白髄炎、ヘルパンギーナ、手足口病、ボルンホルム病、性器ヘルペス、性器疣贅、無菌性髄膜炎 心筋炎、エコーウイルス感染症、エプスタイン-バーウイルス心膜炎、胃腸炎、A型肝炎感染症、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症、HIV感染症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、ライ症候群、川崎症候群、インフルエンザ、気管支炎、ウイルス性「ウォーキング」肺炎(Viral "Walking" Pneumonia)、急性熱性呼吸器疾患、急性咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)感染症、単純ヘルペス(Herpes Simples)ウイルス2(HSV-2)感染症、帯状疱疹、巨細胞封入体病、狂犬病、進行性多巣性白質脳症、クールー、致死性家族性不眠症、クロイツフェルト-ヤコブ病、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー病(Gerstmann-Sfraussler-Scheinker Disease)、熱帯性痙性不全対麻痺症、西部ウマ脳炎、カリフォルニア脳炎、セントルイス脳炎、黄熱病、デング熱、リンパ球性脈絡髄膜炎、ラッサ熱、出血熱、ハンタウイルス肺症候群、マールブルグウイルス感染症、エボラウイルス感染症および天然痘である。
【0369】
一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症である。一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症、例えば、HIV感染症、A型肝炎感染症、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症、エプスタイン-バーウイルス感染症、コロナウイルス感染症、例えば、SARS-COV2感染症(Covid-19)およびインフルエンザウイルス感染症(インフルエンザ)である。一部の実施形態では、感染症は、感染性因子、例えば、コロナウイルス、ジフテリア、エボラ、インフルエンザ(flu)(インフルエンザ(influenza))、HIV、ヒトパピローマウイルス(HPV)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ロタウイルスおよびヘルペスウイルスによって引き起こされる。
【0370】
本明細書に記載される方法は、治療有効量の結合剤を、感染症を有する対象または感染性因子が感染した細胞を有する対象に投与するステップを含む。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」、「有効な量」、「有効量」または「有効用量」は、感染性疾患の処置、感染性疾患の管理、または感染性疾患の再発の予防において治療利益を提供する、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの量、例えば、感染症の少なくとも1つの症状、徴候またはマーカーの統計的に有意な減少を提供する量を指し得る。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態および性別、ならびに対象における医学的状態の重症度および型、ならびに他の薬学的に活性な薬剤の投与によって変動し得る。
【0371】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を指す。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、飼育動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科種、例えば、イエネコ、イヌ科種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが挙げられる。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語「患者」、「個体」および「対象」は、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0372】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、例えば、種々の感染症の動物モデルを提示する対象として、例えば、有益に使用され得る。さらに、本明細書に記載される方法は、飼い慣らされた動物および/またはペットを処置するために使用され得る。対象は、雄性または雌性であり得る。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0373】
対象は、感染症と以前に診断されまたは感染症に罹患していると以前に同定され、処置を必要とするが、感染症に対する処置を既に受けている必要はない対象であり得る。あるいは、対象はまた、感染症を有すると以前に診断されていないが、処置を必要とする対象であり得る。対象は、感染症に関連する状態または1つもしくは複数の合併症についての1つまたは複数のリスク因子を示す対象、あるいはかかるリスク因子を示さない対象であり得る。感染症に対する処置を「必要とする対象」は、その感染症を有する対象またはその感染症を有すると診断された対象であり得る。他の実施形態では、感染症を「発症するリスクがある」対象は、感染症を発症するリスクがあると診断された対象を指す。
【0374】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」または「緩和」は、疾患、障害または医学的状態(例えば、感染症)に言及して使用される場合、状態に対する治療的処置を指し、その目的は、症状または状態の進行または重症度を逆転させる、軽減する、緩和させる、阻害する、予防する、減速させるまたは停止させることである。用語「処置すること」は、状態の少なくとも1つの有害作用または症状を低減させることまたは軽減することを含む。1つまたは複数の症状または臨床的マーカーが低減される場合、処置は一般に、「有効」である。あるいは、状態の進行が低減または中断される場合、処置は「有効」である。即ち、「処置」には、症状またはマーカーの改善だけではなく、処置の非存在下で予想される症状の進行または悪化の休止または少なくとも減速も含まれる。有益なまたは所望の臨床的結果としては、これらに限定されないが処置の非存在下で予想されるものと比較した、対象における感染細胞の低減、1つもしくは複数の症状の軽減、欠陥の程度の減弱、感染症の安定化された(即ち、悪化していない)状態、または感染症もしくは感染症の進行の遅延もしくは減速が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、CD8+KIR+Tregへの結合剤の結合を生じる方法または経路によって、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を(例えば、対象への投与によって)接触させることを指す。同様に、本明細書で開示される、本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を含む医薬組成物は、対象において有効な処置を生じる任意の適切な経路によって投与され得る。
【0375】
結合剤のための投薬量範囲は、効能に依存し、所望の効果、例えば、感染細胞に対する免疫応答の刺激、感染細胞の数の低減、または感染症の進行の減速もしくは予防を生じるのに十分に大きい量を包含する。投薬量は、許容されない有害な副作用を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、投薬量は、対象の年齢、状態および性別によって変動し、当業者によって決定され得る。投薬量はまた、何か合併症がある場合には、個々の医師によって調整され得る。一部の実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、約0.1mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、0.5mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、用量範囲は、約0.5mg/kg体重~約5mg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、1ug/mLと1000ug/mLとの間の血清レベルを維持するために用量設定され得る。
【0376】
一部の実施形態では、対象は、例えば、急性感染症の処置のために、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの単一の用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、自己免疫疾患または状態をもたらし得る感染症に対する免疫応答の予防のために、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの単一の用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、慢性感染症の処置のために、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物のいずれかの反復用量を受ける。一部の実施形態では、用量は、数週間、数か月間または数年間にわたって、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2か月毎または6か月毎に投与される。処置の持続時間は、対象の臨床的進行および処置に対する応答性に依存する。
【0377】
一部の実施形態では、用量は、静脈内投与され得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約10分間~約4時間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約30分間~約90分間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、用量は、皮下投与され得る。
【0378】
一部の実施形態では、合計で約2~約10用量が、対象に投与される。一部の実施形態では、合計で4用量が投与される。一部の実施形態では、合計で5用量が投与される。一部の実施形態では、合計で6用量が投与される。一部の実施形態では、合計で7用量が投与される。一部の実施形態では、合計で8用量が投与される。一部の実施形態では、合計で9用量が投与される。一部の実施形態では、合計で10用量が投与される。一部の実施形態では、合計で10よりも多くの用量が投与される。
【0379】
結合剤を含有する医薬組成物は、単位用量で投与され得る。用語「単位用量」は、医薬組成物に言及して使用される場合、対象のための単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、要求される生理学的に許容される希釈剤、即ち、担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された、所定の量の活性材料(例えば、結合剤)を含有する。
【0380】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤のいずれかの投与は、処置転帰の改善、例えば、臨床的症状の緩和、またはウイルス負荷の低減、あるいは病原体の除去もしくは低減または感染細胞の低減を生じ得る。
【0381】
一部の実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤または医薬組成物は、感染性疾患制御剤、例えば、抗細菌剤、抗真菌剤または抗ウイルス剤と共に投与される。抗細菌剤(antibacterial gents)は、例えば、ラクタム抗生物質、例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メズロシリン、ピペラシリンまたはチカルシリン;アミノグリコシド、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシンまたはトブラマイシン;マクロライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシンまたはクリンダマイシン;テトラサイクリン、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリンまたはテトラサイクリン;キノロン、例えば、シノキサシンまたはナリジクス酸;フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシンまたはトロバフロキサシン;ポリペプチド、例えば、バシトラシン、コリスチンまたはポリミキシンB;スルホンアミド、例えば、スルフィソキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファジアジン、スルファメチゾールまたはスルファセタミド;ならびに他の抗細菌剤、例えば、トリメトプリム、スルファメタゾール(Sulfamethazole)、クロラムフェニコール、バンコマイシン、メトロニダゾール、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピン、スペクチノマイシンまたはニトロフラントイン;ならびに抗ウイルス剤、例えば、一般抗ウイルス剤、例えば、イドクスウリジン、ビダラビン、トリフルリジン、アシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、ホスカルネット、リバビリン、アマンタジン、リマンタジンまたはシドフォビルなど;アンチセンスオリゴヌクレオチド;免疫グロブリン;インターフェロン;ならびに他の薬物、例えば、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、ネビラピン、デラビルジン、サキナビル、オセルタミビルおよびペラミビル、リトナビル、インジナビルまたはネルフィナビルであり得る。
【0382】
がんの処置
一部の態様では、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物は、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、がんの処置のための方法において使用され得る。一部の実施形態では、がんを処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤のいずれかまたは本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、方法が提供される。一部の実施形態では、がんに関連する抗原(がん抗原;例えば、がん細胞上で発現される抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の本明細書に記載される結合剤のいずれかまたは本明細書に記載される医薬組成物のいずれかと接触させるステップを含み、結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さず、それにより、がん抗原に対する免疫応答が増加する、方法が提供される。
【0383】
一部の実施形態では、結合剤は、各場合において、低減されたエフェクター機能活性を有する、またはエフェクター機能活性を実質的に有さない、本明細書に記載される結合剤のいずれかから選択される。一部の実施形態では、低減されたエフェクター機能活性とは、低減されたADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性である、またはADCC、ADCPもしくはCDCエフェクター機能活性がないことである。一部の実施形態では、エフェクター機能活性を実質的に有さないとは、ADCC、ADCPおよびCDCエフェクター機能活性を実質的に有さないことを意味する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如し、低減されたエフェクター機能を有し、またはエフェクター機能を実質的に有さない。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換、例えば、Fcヌル置換に起因して、低減されたエフェクター機能を有するまたはエフェクター機能を実質的に有さないFcドメインまたは領域を有する。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインもしくは領域を欠如する、または1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域を欠如する。一部の実施形態では、結合剤は、1つもしくは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインもしくは領域を有する、またはFcヌルドメインである。一部の実施形態では、結合剤は、Fcドメインまたは領域中のアミノ酸置換に起因して、1つまたは複数のFcガンマ受容体への低減された結合を有するFcドメインまたは領域を有する。
【0384】
一部の実施形態では、がんを処置する方法であって、本明細書に記載される結合剤のいずれかまたは本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを枯渇させ、それにより、がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法が提供される。一部の実施形態では、がんに対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の本明細書に記載される結合剤のいずれかまたは本明細書に記載される医薬組成物のいずれかと接触させるステップを含み、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有し、それにより、がんに対する免疫応答が増加する、方法が提供される。一部の実施形態では、がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の本明細書に記載される結合剤のいずれかまたは本明細書に記載される医薬組成物のいずれかと接触させるステップを含み、結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有し、それにより、がん抗原に対する免疫応答が増加する、方法が提供される。
【0385】
一部の実施形態では、結合剤は、各場合において、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、本明細書に記載される結合剤のいずれかから選択される。一部の実施形態では、エフェクター機能活性は、ADCPおよび/またはCDCエフェクター機能活性と組み合わされたADCCである。一部の実施形態では、エフェクター機能活性を有するとは、ADCC、ADCPおよびCDCエフェクター機能活性を有することを意味する。種々の実施形態では、かかる結合剤は、Fcドメインを有する、または1つもしくは複数のFcガンマ受容体に結合するFcドメインを有する。
【0386】
一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とin vivoで接触する。一部の実施形態では、CD8+KIR+Tregは、結合剤とex vivoで接触する。一部の実施形態では、活性化されたCD8+KIR+Tregは、それを必要とする対象に有効量で投与される。
【0387】
いずれの特定の理論にも束縛されることを意図しないが、結合剤によるエフェクター機能活性の低減または非存在は、結合剤と他の細胞型(即ち、非CD8+KIR+Treg)との相互作用を制限し得、および/またはCD8+KIR+Tregの枯渇を制限し得る。対照的に、結合剤によるエフェクター機能活性の存在は、免疫応答を、CD8+KIR+Tregの枯渇に偏らせると考えられる。
【0388】
一部の実施形態では、免疫応答の増加は、がん細胞の低減または免疫抑制性免疫細胞の枯渇を含む。これに関連して、免疫抑制性免疫細胞は、例えば、腫瘍関連マクロファージ、CD4+Tregおよび/または寛容性樹状細胞(DC)を指す。一部の実施形態では、対象におけるがん細胞の数が減少する。一部の実施形態では、対象における免疫抑制性免疫細胞の数が減少する。
【0389】
用語「がん」および「悪性疾患」は、身体臓器および系の正常な機能を妨害する、細胞の制御されない成長を指す。がんまたは悪性疾患は、原発性または転移性であり得る、即ち、がんまたは悪性疾患は、侵襲性になり、元の腫瘍部位から離れた組織において腫瘍成長の原因となる。「腫瘍」は、身体臓器および系の正常な機能を妨害する、細胞の制御されない成長を指す。本明細書で使用される場合、がんという用語には、文脈によって他に示されない限り、悪性疾患および腫瘍が含まれる。がんを有する対象は、対象の身体中に存在する客観的に測定可能ながん細胞を有する対象である。良性腫瘍および悪性がん、ならびに潜在的に休止状態の腫瘍および微小転移が、この定義に含まれる。その元の位置から遊走し、他の重要な臓器に播種するがんは、影響を受けた臓器の機能的劣化を介して、対象の死を最終的にもたらし得る。血液学的悪性疾患(造血がん)、例えば、白血病およびリンパ腫は、例えば、対象において正常な造血区画を打ち負かすことができ、それにより、死を最終的に引き起こす造血不全(貧血、血小板減少症および好中球減少症の形態の)をもたらす。
【0390】
がんの例としては、これらに限定されないが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、骨髄腫および白血病が挙げられる。かかるがんのより特定の例としては、これらに限定されないが、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳およびCNSがん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、腹膜のがん、子宮頸がん;胆管癌、絨毛癌、軟骨肉腫、結腸および直腸がん(結腸直腸がん)、結合組織がん、消化器系のがん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部のがん、胃(gastric)がん(消化管がんおよび胃(stomach)がんを含む)、神経膠芽腫(GBM)、肝癌、ヘパトーマ、上皮内新生物、腎臓または腎がん(例えば、明細胞腎臓がんまたは非明細胞腎臓がん)、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌)、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん(例えば、口唇、舌、口および咽頭)、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、呼吸器系のがん、唾液腺癌、肉腫、皮膚がん、扁平上皮がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮または子宮内膜がん、子宮重篤癌(uterine serious carcinoma)、泌尿器系のがん、外陰部がん;ならびに他の癌および肉腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫およびワルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)およびメイグズ症候群;ならびに骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫が挙げられる。
【0391】
一部の実施形態では、がんは、肝細胞癌、肺癌、例えば、小細胞肺がんおよび大細胞肺がん、結腸直腸癌、食道癌、子宮頸癌、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌ならびに膀胱癌が含まれるがこれらに限定されない固形腫瘍から選択される。
【0392】
本明細書に記載される方法は、治療有効量の本明細書に記載される結合剤または医薬組成物を、がんまたは悪性疾患を有する対象に投与するステップを含む。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」、「有効量」 「有効な量」または「有効用量」は、がんもしくは悪性疾患の処置、がんもしくは悪性疾患の管理、またはがんもしくは悪性疾患の再発の予防において治療利益を提供する、本明細書に記載される結合剤または医薬組成物の量、例えば、がん、腫瘍または悪性疾患の少なくとも1つの症状、徴候またはマーカーの統計的に有意な減少を提供する量を指し得る。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態および性別、ならびに対象における医学的状態の重症度および型、ならびに他の薬学的に活性な薬剤の投与によって変動し得る。
【0393】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、対象において腫瘍サイズもしくは腫瘍負荷を低減させ、および/または対象において転移を低減させる。種々の実施形態では、対象における腫瘍サイズは、約25~50%、約40~70%もしくは約50~90%またはそれよりも大きく減少する。種々の実施形態では、これらの方法は、腫瘍サイズを、10%、20%、30%またはそれよりも大きく低減させる。種々の実施形態では、これらの方法は、腫瘍サイズを、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%低減させる。
【0394】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を指す。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、飼育動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科種、例えば、イエネコ、イヌ科種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが挙げられる。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語「患者」、「個体」および「対象」は、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0395】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、例えば、種々のがんの動物モデルを提示する対象として、例えば、有益に使用され得る。さらに、本明細書に記載される方法は、飼い慣らされた動物および/またはペットを処置するために使用され得る。対象は、雄性または雌性であり得る。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0396】
対象は、がんと以前に診断されまたはがんに罹患していると以前に同定され、処置を必要とするが、がんに対する処置を既に受けている必要はない対象であり得る。あるいは、対象はまた、処置を必要とする、がんを有すると以前に診断されていない対象であり得る。対象は、がんに関連する状態または1つもしくは複数の合併症についての1つまたは複数のリスク因子を示す対象、リスク因子を示さない対象であり得る。特定のがんに対する処置を「必要とする対象」は、その状態を有する対象またはその状態を有すると診断された対象であり得る。他の実施形態では、状態を「発症するリスクがある」対象は、状態を発症するリスクがあると診断された対象を指す。
【0397】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」または「緩和」は、疾患、障害または医学的状態(例えば、がん)に言及して使用される場合、状態に対する治療的処置を指し、その目的は、症状または状態の進行または重症度を逆転させる、軽減する、緩和させる、阻害する、減速させるまたは停止させることである。用語「処置すること」は、状態の少なくとも1つの有害作用または症状を低減させることまたは軽減することを含む。1つまたは複数の症状または臨床的マーカーが低減される場合、処置は一般に、「有効」である。あるいは、状態の進行が低減または中断される場合、処置は「有効」である。即ち、「処置」には、症状またはマーカーの改善だけではなく、処置の非存在下で予想される症状の進行または悪化の休止または少なくとも減速も含まれる。有益なまたは所望の臨床的結果としては、これらに限定されないが処置の非存在下で予想されるものと比較した、対象におけるがん細胞の低減、1つもしくは複数の症状の軽減、欠陥の程度の減弱、がんもしくは悪性疾患の安定化された(即ち、悪化していない)状態、腫瘍成長および/もしくは転移の遅延もしくは減速、ならびに寿命の増加が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、CD8+KIR+Tregへの結合剤の結合を生じる方法または経路によって、本明細書に記載される結合剤もしくは医薬組成物または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を(例えば、対象への投与によって)接触させることを指す。同様に、本明細書で開示される本明細書に記載される結合剤または本明細書に記載される結合剤をコードする核酸を含む医薬組成物は、対象において有効な処置を生じる任意の適切な経路によって投与され得る。
【0398】
結合剤のための投薬量範囲は、効能に依存し、所望の効果、例えば、腫瘍成長の減速または腫瘍サイズにおける低減を生じるのに十分に大きい量を包含する。投薬量は、許容されない有害な副作用を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、投薬量は、対象の年齢、状態および性別によって変動し、当業者によって決定され得る。投薬量はまた、何か合併症がある場合には、個々の医師によって調整され得る。一部の実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、約0.1mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、投薬量は、0.5mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、用量範囲は、約0.5mg/kg体重~約5mg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、1ug/mLと1000ug/mLとの間の血清レベルを維持するために用量設定され得る。
【0399】
上で引用された用量の投与は、反復され得る。好ましい実施形態では、上で引用された用量は、数週間または数か月間にわたって、毎週、2週間毎、3週間毎または毎月投与される。処置の持続時間は、対象の臨床的進行および処置に対する応答性に依存する。
【0400】
一部の実施形態では、用量は、静脈内投与され得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約10分間~約4時間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、静脈内投与は、約30分間~約90分間の期間にわたって行われる注入であり得る。一部の実施形態では、用量は、皮下投与され得る。
【0401】
結合剤を含有する医薬組成物は、単位用量で投与され得る。用語「単位用量」は、医薬組成物に言及して使用される場合、対象のための単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、要求される生理学的に許容される希釈剤、即ち、担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された、所定の量の活性材料(例えば、結合剤)を含有する。
【0402】
一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤のいずれかの投与は、処置されているがんについての標準的な医学的基準によって決定される、安定疾患、部分奏効または完全奏効から選択される客観的応答などの処置転帰の改善を生じ得る。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、低減された腫瘍負荷である。一部の実施形態では、処置転帰の改善は、無増悪生存期間または無病生存期間である。
【0403】
一部の実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤または医薬組成物は、免疫療法または化学療法と共に投与される。本明細書で使用される場合、「免疫療法」は、対象自身の免疫系を、がんまたは悪性疾患と闘うように誘導または強化するように設計された治療戦略を指す。免疫療法の例としては、これらに限定されないが抗体、例えば、チェックポイント阻害剤が挙げられる。一部の実施形態では、化学療法は、例えば、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミドまたはクロラムブシルなど;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU);アルキルスルホネート、例えば、ブスルファンおよびトレオスルファン;トリアゼン、例えば、ダカルバジン;白金含有化合物、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;植物アルカロイド、例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキソール(Docetaxol);DNAトポイソメラーゼ阻害剤;エピポドフィリン(Epipodophyllin)、例えば、エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトテシン、エキサテカンおよびクリスナトール;マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC;代謝拮抗薬、例えば、葉酸代謝拮抗薬、例えば、DHFR阻害剤、例えば、メトトレキサートおよびトリメトレキサート;IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤、例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリンおよびEICAR;リボヌクレオチド(Ribonuclotide)レダクターゼ阻害剤、例えば、ヒドロキシウレアおよびデフェロキサミン;ならびにピリミジンアナログ、例えば、ウラシルアナログ、例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジンおよびラルチトレキセド(Ratitrexed);シトシンアナログ、例えば、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシドおよびフルダラビン;プリンアナログ、例えば、メルカプトプリンおよびチオグアニン;ホルモン療法、例えば、受容体アンタゴニスト、例えば、抗エストロゲン薬、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェンおよびメゲストロール;LHRHアゴニスト、例えば、ゴセレリン(goscrclin)および酢酸ロイプロリド;抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミドおよびビカルタミド;レチノイド/デルトイド(Deltoid);ビタミンD3アナログ、例えば、EB 1089、CB 1093およびKH 1060;光線力学的療法、例えば、ベルテポルフィン(vertoporfm)(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシ-ヒポクレリンA(Demethoxy-hypocrellin A)および(2BA-2-DMHA);サイトカイン、例えば、インターフェロン-アルファおよびインターフェロン-ガンマ;腫瘍壊死因子;ならびにその他、例えば、イソプレニル化阻害剤、例えば、ロバスタチン;ドーパミン作動性神経毒、例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン;細胞周期阻害剤、例えば、スタウロスポリン;アクチノマイシン、例えば、アクチノマイシンDおよびダクチノマイシン;ブレオマイシン、例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2およびペプロマイシン;アントラサイクリン、例えば、ダウノルビシン(daunorabicin)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、エピルビシン(Epirabicin)、ピラルビシン(Pirarabicin)、ゾルビシン(Zorabicin)およびミトキサントロン;MDR阻害剤、例えば、ベラパミルおよびCa2+ATPase阻害剤、例えば、タプシガルギンである。
【0404】
例示的な実施形態
本発明は、限定として解釈すべきではない以下の実施形態によってさらに例示される。
実施形態1.第1の抗原に特異的に結合する第1の結合ドメインであって、前記第1の抗原が、KIRタンパク質以外の、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)上で発現される抗原から選択される、第1の結合ドメイン;および
阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する第2の結合ドメイン
を含む結合剤であって、CD8+KIR+Tregに結合する、結合剤。
実施形態2.前記第1の抗原が、CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BBからなる群から選択される、先行する実施形態に記載の結合剤。
実施形態3.前記第1の抗原が、前記第1の抗原が、CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BBからなる群から選択される、先行する実施形態に記載の結合剤。
実施形態4.前記第1の抗原が、抗原の以下の群:
a.CD3、CD5、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DR;
b.LAG-3/CD223、TIM-3、PD-1、S1000A8/9およびTLT2;
c.CD3、CD5、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BB;
d.CD103(ITGAE)、CD166、CD177、CXCR3およびS1000A8/9;
e.CCR7、CXCR3およびCXCR5;
f.PD-1、ICOSおよびCXCR3;
g.CD3、CD5およびCD8;ならびに
h.CD3およびCD8
から選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の結合ドメイン。
実施形態5.前記第1の抗原が、抗原の以下の群:
a.CD3、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD122、ICOS、OX-40、2B4、41BBおよびHLA-DR;
b.LAG-3/CD223、TIM-3、PD-1、S1000A8/9およびTLT2;
c.CD3、CD8、CD27、CD38、CD39、CD40L、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD73、CD103(ITGAE)、CD122、CD166、CD177、CCR7、CXCR3、CXCR5、HLA-DR、ICOS、LAG-3/CD223、OX-40、PD-1、S1000A8/9、TIM-3、TLT-2、2B4および41BB;
d.CD103(ITGAE)、CD166、CD177、CXCR3およびS1000A8/9;
e.CCR7、CXCR3およびCXCR5;ならびに
f.CD3およびCD8
から選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の結合ドメイン。
実施形態6.二特異性抗体、ダイアボディ、抗体Fc融合物、scFv1-ScFv2、scFv12-Fc-scFv22、IgG-scFv、DVD-Ig、トリオマブ/クアドローマ、ツーインワンIgG、scFv2-Fc、TandAb、scFv-HSA-scFv、scFv-VHH、Fab-scFv-Fc、Fab-VHH-Fc、dAb-IgG、IgG-VHH、タンデムscFv-Fc、(scFv1)2-Fc-(VHH)2、BiTe、DART、クロスマブ(CrossMab)、scFv-Fc、1アームタンデムscFv-Fc、DART-Fc、アンチカリン、アフィボディ、アビマー、DARPinまたはアドネクチンである、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態7.前記第1または第2の結合ドメインのいずれかが、抗体またはその抗原結合部分から選択され、他方の結合ドメインが、抗体断片である、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態8.前記抗原結合部分が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvまたは単一ドメイン抗体、例えば、VHH、VNAR、sdAbまたはナノボディである、実施形態7に記載の結合剤。
実施形態9.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態10.前記第2の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態11.前記第1の結合ドメインが、CD3またはCD3のサブユニット、必要に応じてCD3イプシロンに特異的に結合する、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態12.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVLのアミノ酸配列が、
a.それぞれ、配列番号1および配列番号2;
b.それぞれ、配列番号9および配列番号10;
c.それぞれ、配列番号17および配列番号18;
d.それぞれ、配列番号25および配列番号26;
e.それぞれ、配列番号33および配列番号34;
f.それぞれ、配列番号41および配列番号34;
g.それぞれ、配列番号45および配列番号34;
h.それぞれ、配列番号49および配列番号50;
i.それぞれ、配列番号57および配列番号58;
j.それぞれ、配列番号65および配列番号66;ならびに
k.それぞれ、配列番号65および配列番号166
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択される、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態13.前記第1の結合ドメインが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態14.前記第1の結合ドメインが、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態15.前記第1の結合ドメインが、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態16.前記第1の結合ドメインが、配列番号25に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号26に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態17.前記第1の結合ドメインが、配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号34に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態18.前記第1の結合ドメインが、配列番号41に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号34に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態19.前記第1の結合ドメインが、配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号34に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態20.前記第1の結合ドメインが、配列番号49に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号50に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態21.前記第1の結合ドメインが、配列番号57に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号58に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態22.前記第1の結合ドメインが、配列番号65に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号66に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態23.前記第1の結合ドメインが、配列番号65に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号166に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態24.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、前記CDRが、
a.それぞれ、配列番号3~配列番号8;
b.それぞれ、配列番号11~配列番号16;
c.それぞれ、配列番号19~配列番号24;
d.それぞれ、配列番号27~配列番号32;
e.それぞれ、配列番号35~配列番号40;
f.それぞれ、配列番号42~配列番号44および配列番号38~配列番号40;
g.それぞれ、配列番号46~配列番号48および配列番号38~配列番号40;
h.それぞれ、配列番号51~配列番号56;
i.それぞれ、配列番号59~配列番号64;
j.それぞれ、配列番号67~配列番号72;ならびに
k.それぞれ、配列番号67~69および167~169
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態11に記載の結合剤。
実施形態25.前記第1の結合ドメインが、CD8またはCD8のサブユニット、必要に応じてCD8アルファに特異的に結合する、実施形態1から10のいずれかに記載の結合剤。
実施形態26.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVL領域が、
a.それぞれ、配列番号73および配列番号74;ならびに
b.それぞれ、配列番号81および配列番号82
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する;
または前記第1の結合ドメインが、VHH鎖を含み、前記VHH鎖が、
c.配列番号89;
d.配列番号93;および
e.配列番号97
からなる群に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態27.前記第1の結合ドメインが、配列番号73に示される アミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号74に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態28.前記第1の結合ドメインが、配列番号81に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号82に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態29.前記第1の結合ドメインが、配列番号89に示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態30.前記第1の結合ドメインが、配列番号93に示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態31.前記第1の結合ドメインが、配列番号97に示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態32.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、前記CDRが、
a.それぞれ、配列番号75~配列番号80;もしくは
b.それぞれ、配列番号83~配列番号88
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する;
または前記第1の結合ドメインが、hCDR1、hCDR2およびhCDR3を有するVHH鎖を含み、前記VHH CDRのアミノ酸配列が、
c.それぞれ、配列番号90~配列番号92;
d.それぞれ、配列番号94~配列番号96;および
e.それぞれ、配列番号98~配列番号100
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択される、実施形態25に記載の結合剤。
実施形態33.前記第1の結合ドメインが、ICOSに特異的に結合する、実施形態1から10のいずれかに記載の結合剤。
実施形態34.前記第1の結合ドメインが、配列番号170のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号171のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態33に記載の結合剤。
実施形態35.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号172、173および174に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号175、176および177に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、実施形態33に記載の結合剤。
実施形態36.前記第1の結合ドメインが、PD-1に特異的に結合する、実施形態1から10のいずれかに記載の結合剤。
実施形態37.前記第1の結合ドメインが、配列番号178のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号179のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態36に記載の結合剤。
実施形態38.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号180、181および182に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号183、184および185に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の結合剤。
実施形態39.前記第1の結合ドメインが、CXCR3に特異的に結合する、実施形態1から10のいずれかに記載の結合剤。
実施形態40.前記第1の結合ドメインが、配列番号186のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号187のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態39に記載の結合剤。
実施形態41.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号188、189および190に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号191、192および193に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、実施形態39に記載の結合剤。
実施形態42.前記第1の結合ドメインが、CD5に特異的に結合する、実施形態1から10のいずれかに記載の結合剤。
実施形態43.前記第1の結合ドメインが、配列番号194のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号195のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態42に記載の結合剤。
実施形態44.前記第1の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号196、197および198に記載のhCDR1、hCDR1およびhCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号199、200および201に記載のlCDR1、lCDR2およびlCDR3アミノ酸配列を含む、実施形態42に記載の結合剤。
実施形態45.前記阻害性KIRタンパク質が、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3またはそれらの組合せから選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態46.前記第2の結合ドメインが、KIR2DL1/2/3またはKIR2DL1/2に特異的に結合する、実施形態45に記載の結合剤。
実施形態47.前記第2の結合ドメインが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHおよびVL領域が、
a.それぞれ、配列番号101および配列番号102;
b.それぞれ、配列番号109および配列番号110;
c.それぞれ、配列番号117および配列番号118;
d.それぞれ、配列番号125および配列番号126;
e.それぞれ、配列番号133および配列番号134;
f.それぞれ、配列番号141および配列番号142;
g.それぞれ、配列番号149および配列番号150;ならびに
h.それぞれ、配列番号157および配列番号158
からなる群に示されるアミノ酸配列の対から選択されるアミノ酸配列を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態48.前記第2の結合ドメインが、配列番号101に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号102に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態49.前記第2の結合ドメインが、配列番号109に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号110に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態50.前記第2の結合ドメインが、配列番号117に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号118に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態51.前記第2の結合ドメインが、配列番号125に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号126に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態52.前記第2の結合ドメインが、配列番号133に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号134に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態53.前記第2の結合ドメインが、配列番号141に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号142に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態54.前記第2の結合ドメインが、配列番号149に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号150に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態55.前記第2の結合ドメインが、配列番号157に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号158に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態56.前記第2の結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖および軽鎖可変領域が、それぞれ、hCDR1、hCDR1およびhCDR3、ならびにlCDR1、lCDR2およびlCDR3を含み、CDRが、
a.それぞれ、配列番号103~配列番号108;
b.それぞれ、配列番号111~配列番号116;
c.それぞれ、配列番号119~配列番号124;
d.それぞれ、配列番号127~配列番号132;
e.それぞれ、配列番号135~配列番号140;
f.それぞれ、配列番号143~配列番号148;
g.それぞれ、配列番号151~配列番号156;ならびに
h.それぞれ、配列番号159および配列番号164
からなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有するCDRからなる群に示されるアミノ酸配列のセットから選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1から47のいずれかに記載の結合剤。
実施形態57.Fcドメインを含有しない、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態58.Fcドメインをさらに含む、実施形態1から56のいずれかに記載の結合剤。
実施形態59.前記Fcドメインが、IgG1およびIgG4 Fcドメインから選択される、実施形態58に記載の結合剤。
実施形態60.エフェクター機能活性を実質的に有さない、実施形態59に記載の結合剤。
実施形態61.前記FcドメインがIgG1 Fcドメインである、実施形態58から60のいずれかに記載の結合剤。
実施形態62.前記FcドメインがIgG1 Fcヌルである、実施形態58から61のいずれかに記載の結合剤。
実施形態63.二価または四価である、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態64.二特異性である、先行する実施形態のいずれかに記載の結合剤。
実施形態65.実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
実施形態66.実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤をコードする核酸。
実施形態67.実施形態66に記載の核酸を含むベクター。
実施形態68.実施形態67に記載のベクターを含む細胞系。
実施形態69.自己免疫疾患を処置する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、前記対象における病原性免疫細胞の数または活性を減少させ、それにより、前記自己免疫疾患の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法。
実施形態70.病原性免疫細胞によって媒介される免疫応答を抑制する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それにより、病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法。
実施形態71.自己抗原などの抗原に対する免疫応答を抑制する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激するのに有効な量で投与するステップを含み、それにより、前記抗原または自己抗原に対して応答性の病原性免疫細胞の数または活性が減少する、方法。
実施形態72.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、実施形態70に記載の方法。
実施形態73.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、実施形態70に記載の方法。
実施形態74.前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、実施形態73に記載の方法。
実施形態75.前記病原性免疫細胞が、自己反応性CD4 T細胞、自己抗体産生B細胞または自己抗原提示樹状細胞である、実施形態69から74のいずれかに記載の方法。
実施形態76.前記病原性免疫細胞が、自己抗原提示細胞である、実施形態69から74のいずれかに記載の方法。
実施形態77.自己抗体の力価が、前記対象において減少する、実施形態71に記載の方法。
実施形態78.前記対象が、セリアック病、クローン病、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、ループス腎炎、重症筋無力症、心筋炎、多発性硬化症(MS)、天疱瘡/類天疱瘡、関節リウマチ(RA)、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群(SjS)、全身性エリテマトーデス(SLE)および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患を有する、実施形態69および74から77のいずれかに記載の方法。
実施形態79.前記自己免疫疾患が、セリアック病、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、インスリン依存性糖尿病(IDDMまたは1型糖尿病)、ループス腎炎、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群(SjS)、全身性エリテマトーデス(SLE)および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、実施形態78に記載の方法。
実施形態80.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態69から79のいずれかに記載の方法。
実施形態81.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態69から79のいずれかに記載の方法。
実施形態82.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態69から79のいずれかに記載の方法。
実施形態83.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態69から79のいずれかに記載の方法。
実施形態84.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態69から79のいずれかに記載の方法。
実施形態85.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態69から79のいずれかに記載の方法。
実施形態86.前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、実施形態69から85のいずれかに記載の方法。
実施形態87.前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、実施形態69から86のいずれかに記載の方法。
実施形態88.免疫抑制剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、実施形態69から87のいずれかに記載の方法。
実施形態89.前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、実施形態69から88のいずれかに記載の方法。
実施形態90.前記処置転帰の改善が、疾患再燃の頻度もしくは重症度の低減、全身性炎症性サイトカインの低減、または前記自己免疫疾患に関連する症状の自己報告の低減である、実施形態89に記載の方法。
実施形態91.前記結合剤が、静脈内投与される、実施形態69から90のいずれかに記載の方法。
実施形態92.前記結合剤が、皮下投与される、実施形態69から91のいずれかに記載の方法。
実施形態93.前記結合剤が、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される、実施形態69から92のいずれかに記載の方法。
実施形態94.前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、実施形態69から93のいずれかに記載の方法。
実施形態95.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における自己免疫疾患の処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態96.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる病原性免疫細胞による免疫応答の低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態97.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における自己抗体力価の低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態98.がんを処置する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、前記がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、方法。
実施形態99.がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さず、それにより、前記がん抗原に対する前記免疫応答が増加する、方法。
実施形態100.がんを処置する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを枯渇させ、それにより、前記がんの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法。
実施形態101.がんに関連する抗原(がん抗原)に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それにより、前記がん抗原に対する前記免疫応答が増加する、方法。
実施形態102.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、実施形態99または実施形態101に記載の方法。
実施形態103.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、実施形態99に記載の方法。
実施形態104.前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、実施形態103に記載の方法。
実施形態105.前記免疫応答の増加が、がん細胞の低減または免疫抑制性免疫細胞の枯渇を含む、実施形態99および101から104のいずれかに記載の方法。
実施形態106.前記対象における前記がん細胞が減少する、実施形態98から105のいずれかに記載の方法。
実施形態107.前記がんが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、骨髄腫および白血病からなる群から選択される、実施形態98から106のいずれかに記載の方法。
実施形態108.前記がんが、固形腫瘍、例えば、乳房、子宮頸部、卵巣、肺、CRC(および腸の他のがん)、皮膚、食道、腺癌、膀胱および前立腺;ならびにリンパ腫からなる群から選択される、実施形態98から107のいずれかに記載の方法。
実施形態109.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態98から108のいずれかに記載の方法。
実施形態110.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態98から108のいずれかに記載の方法。
実施形態111.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態98から108のいずれかに記載の方法。
実施形態112.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態98から108のいずれかに記載の方法。
実施形態113.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態98から108のいずれかに記載の方法。
実施形態114.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態98から108のいずれかに記載の方法。
実施形態115.前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、実施形態98から114のいずれかに記載の方法。
実施形態116.前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、実施形態98から115のいずれかに記載の方法。
実施形態117.化学療法剤またはチェックポイント阻害剤などの免疫療法を前記対象に投与するステップをさらに含む、実施形態98から116のいずれか一項に記載の方法。
実施形態118.前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、実施形態98から117のいずれかに記載の方法。
実施形態119.前記処置転帰の改善が、部分奏効または完全奏効である、実施形態118に記載の方法。
実施形態120.前記処置転帰の改善が寛解である、実施形態118に記載の方法。
実施形態121.前記結合剤が、静脈内投与される、実施形態98から120のいずれかに記載の方法。
実施形態122.前記結合剤が、皮下投与される、実施形態98から120のいずれかに記載の方法。
実施形態123.前記結合剤が、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される、実施形態98から122のいずれかに記載の方法。
実施形態124.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象におけるがんの処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態125.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる免疫抑制性免疫細胞による免疫抑制の低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態126.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における腫瘍負荷の低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態127.CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象におけるがんの処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
実施形態128.CD8+KIR+Tregの枯渇のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
実施形態129.対象における腫瘍負荷の低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
実施形態130.感染症を処置する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、前記感染症の症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含む、方法。
実施形態131.感染症によって引き起こされる感染細胞に対する免疫応答を刺激する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それによる、前記感染細胞に対する前記免疫応答の、方法。
実施形態132.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、実施形態131に記載の方法。
実施形態133.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、実施形態131に記載の方法。
実施形態134.前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、実施形態133に記載の方法。
実施形態135.前記免疫応答が、感染細胞の低減、またはCD4+T調節性細胞および寛容性DCから選択される免疫抑制性免疫細胞の低減を含む、実施形態131から134のいずれかに記載の方法。
実施形態136.前記対象における感染細胞の数が減少する、実施形態135に記載の方法。
実施形態137.前記感染症が、細菌疾患、全身性真菌疾患、リケッチア疾患、寄生生物疾患およびウイルス疾患から選択される、実施形態130から136のいずれかに記載の方法。
実施形態138.前記感染症が、HIV感染症、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、エプスタインバーウイルス(EBV)感染症、コロナウイルス感染症、例えば、SARS-COV2感染症(Covid-19)、サイトメガロウイルス(CMV)感染症およびインフルエンザウイルス感染症からなる群から選択される、実施形態137に記載の方法。
実施形態139.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態130から138のいずれかに記載の方法。
実施形態140.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態130から138のいずれかに記載の方法。
実施形態141.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態130から138のいずれかに記載の方法。
実施形態142.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態130から138のいずれかに記載の方法。
実施形態143.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態130から138のいずれかに記載の方法。
実施形態144.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態130から138のいずれかに記載の方法。
実施形態145.前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、実施形態130から144のいずれかに記載の方法。
実施形態146.前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、実施形態130から145のいずれかに記載の方法。
実施形態147.抗微生物剤または抗ウイルス剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、実施形態130から146のいずれかに記載の方法。
実施形態148.前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、実施形態130から147のいずれかに記載の方法。
実施形態149.前記処置転帰の改善が、感染症または感染細胞の低減である、実施形態148に記載の方法。
実施形態150.前記結合剤が、静脈内投与される、実施形態130から149のいずれかに記載の方法。
実施形態151.前記結合剤が、皮下投与される、実施形態130から149のいずれかに記載の方法。
実施形態152.前記結合剤が、約0.01mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される、実施形態130から151のいずれかに記載の方法。
実施形態153.前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、実施形態130から149のいずれかに記載の方法。
実施形態154.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における感染症の処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態155.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、免疫抑制性免疫細胞を抑制することによる免疫応答の刺激のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態156.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における感染症または感染細胞の低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態157.移植後の移植片対宿主病(GVHD)の発症を低減または予防する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激し、それにより、GVHDの少なくとも1つの症状を低減または緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、方法。
実施形態158.移植を受けた対象を処置する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを活性化または刺激する(活性化されたTreg)のに有効な量の実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さず、それにより、GVHDが低減または抑制される、方法。
実施形態159.移植を受けた対象を処置する方法であって、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に、CD8+KIR+Tregを枯渇させ、それにより、GVHDの症状を緩和させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法。
実施形態160.移植に対するGVHDを抑制する方法であって、CD8+KIR+T調節性細胞(Treg)を、CD8+KIR+Tregを枯渇させるのに有効な量の実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物と接触させるステップを含み、それにより、GVHDまたはその症状が減少し、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、方法。
実施形態161.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とin vivoで接触する、実施形態158または160に記載の方法。
実施形態162.前記CD8+KIR+Tregが、前記結合剤とex vivoで接触する、実施形態158に記載の方法。
実施形態163.前記活性化されたCD8+KIR+Tregが、投与を必要とする対象に有効量で投与される、実施形態162に記載の方法。
実施形態164.前記低減または減少されたGVHDが、GVHDにおいて活性なCD4+T細胞における低減を含む、実施形態157および160から163のいずれかに記載の方法。
実施形態165.前記移植が、臓器移植、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体または分化した細胞の移植、および骨髄移植からなる群から選択される、実施形態157から164のいずれかに記載の方法。
実施形態166.前記移植が、造血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、人工多能性幹細胞由来の前駆体もしくは分化した細胞の移植、または骨髄移植である、実施形態165のいずれかに記載の方法。
実施形態167.前記移植が同種異系である、実施形態157から166のいずれかに記載の方法。
実施形態168.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD8および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態157から167のいずれかに記載の方法。
実施形態169.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態157から167のいずれかに記載の方法。
実施形態170.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCD5および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態157から167のいずれかに記載の方法。
実施形態171.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のPD-1および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態157から167のいずれかに記載の方法。
実施形態172.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のICOSおよび前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態157から167のいずれかに記載の方法。
実施形態173.前記結合剤が、CD8+KIR+Treg上のCXCR3および前記阻害性KIRタンパク質に特異的に結合する、実施形態157から167のいずれかに記載の方法。
実施形態174.前記CD8+KIR+Tregが、MHCクラスI拘束されている、実施形態157から173のいずれかに記載の方法。
実施形態175.前記CD8+KIR+Tregが、MHC HLA E(Qa-1b)拘束されていない、実施形態157から174のいずれかに記載の方法。
実施形態176.免疫抑制剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、実施形態157から175のいずれかに記載の方法。
実施形態177.前記対象への前記結合剤の前記投与が、前記対象において処置転帰の改善を生じる、実施形態157から176のいずれかに記載の方法。
実施形態178.前記処置転帰の改善が、GVHDに関連する症状の低減、全身性炎症性サイトカインの低減、GVHDによって影響される組織における病変の低減、宿主組織に対する有害作用に関連する免疫応答に関連する症状の自己報告の低減、移植生着の改善もしくは延長、1つもしくは複数の症状の軽減、および/または前記移植の拒絶の発症もしくは進行の予防、遅延もしくは減速、または広範な免疫抑制剤、例えば、コルチコステロイドの使用の減少による移植生着の延長である、実施形態177に記載の方法。
実施形態179.前記結合剤が、静脈内投与される、実施形態157から178のいずれかに記載の方法。
実施形態180.前記結合剤が、皮下投与される、実施形態157から178のいずれかに記載の方法。
実施形態181.対象における移植に関連するGVHDの処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態182.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる対象における移植に関連するGVHDの処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態183.CD8+KIR+Tregを活性化または刺激することによる移植に関連するGVHDの低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態184.移植に対するGVHDの低減のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、エフェクター機能活性を実質的に有さない、使用。
実施形態185.CD8+KIR+Tregを枯渇させることによる対象における移植に関連するGVHDの処置のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
実施形態186.CD8+KIR+Tregの枯渇のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
実施形態187.GVHDを低減させるために移植を受けた対象におけるCD8+KIR+Tregの枯渇のための、実施形態1から64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用であって、前記結合剤が、少なくともADCCを含むエフェクター機能活性を有する、使用。
実施形態188.実施形態69~94、98~123、130~153および157~180に記載の方法のいずれかにおける、実施形態1~64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
実施形態189.実施形態69~94、98~123、130~153および157~180に記載の方法のいずれかにおける使用のための医薬の製造における、実施形態1~64のいずれかに記載の結合剤または実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
【0405】
本開示の実施形態の記載は、網羅的であることも、本開示を開示された正確な形態に限定することも意図しない。本開示の具体的な実施形態および実施例は、例示目的のために本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、種々の等価な改変が、本開示の範囲内で可能である。本明細書で提供される開示の教示は、適宜、他の手順または方法に適用され得る。本明細書に記載される種々の実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得る。本開示の態様は、必要であれば、本開示のさらにさらなる実施形態を提供するために、上記参考文献および出願の組成、機能および概念を用いるように改変され得る。これらおよび他の変化は、詳細な説明を考慮して、本開示に対してなされ得る。
【0406】
上述の実施形態のいずれかの具体的な要素は組み合わせることができるか、または他の実施形態中の要素の代わりに使用し得る。さらに、本開示のある特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態に照らして記載されてきたが、他の実施形態もまたかかる利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内に入るためにかかる利点を示す必要は必ずしもない。
【0407】
同定された全ての特許および他の刊行物は、例えば、本発明と併せて使用され得るかかる刊行物中に記載される方法論を記載および開示することを目的として、これにより参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてもっぱら提供される。これに関して、以前の発明を理由としても、任意の他の理由でも、本発明者らがかかる開示に先行するという資格を与えられていないという承認として解釈すべきものは何もない。日付に関する全ての陳述またはこれらの文書の内容に関する表明は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関するいずれの承認も構成しない。
【実施例】
【0408】
(実施例1)
自己免疫性障害におけるCD8+KIR+Treg細胞活性化および病原性免疫細胞に対する細胞傷害に関する一特異性および二特異性分子の試験
CD8 KIR+Treg細胞活性化の機能的回復、および病原性免疫細胞、例えば、自己反応性CD4 T細胞の細胞傷害媒介性除去について一特異性および二特異性分子(阻害性KIR遮断剤を含む)のパネルを試験するために、初代CD8+KIR+T細胞を、漸増濃度のCD3アゴニスト抗体と共にインキュベートするが、これは、漸増濃度の阻害性KIR遮断分子の存在下で、CD8 KIR+T細胞受容体のペプチド/MHC結合を模倣する。阻害性KIRシグナルの遮断は、CD8 KIR+T細胞の特異的かつ増加した活性化ステータスを生じるCD8 KIR+Treg細胞活性化に要求されるTCR係合の活性化閾値を低減させると予測され得る。CD8+KIR+Treg細胞の活性化の増加は、ある特定のサイトカイン(例えば、IFNガンマ、IL-10、TNFアルファ、IL-35またはそれらのサブユニットなど)の分泌の増加、活性化に関連する発現マーカー(例えば、CD69、CD25、CD62L、CD44、CD45)の増加および増殖の増加によって確認される。
【0409】
一特異性および二特異性分子のパネルを、CD8 KIR+Treg細胞媒介性の機能的結果を誘導することによって、それらの効能に基づいて試験し、引き続いて、グルテン再刺激したCD4 T細胞に応答したセリアック患者末梢血単核球由来のCD8 KIR+Treg細胞を使用して試験する。CD8KIR+Treg細胞による活性化の増加および病原性免疫細胞に対する活性の増強を、ある特定のサイトカイン(例えば、IFNガンマ、IL-10、TNFアルファおよび/もしくはIL-35またはそれらのサブユニットなど)の分泌の増加、発現マーカー(例えば、CD69、CD25、CD62L、CD44および/またはCD45)の増加、阻害性分子(LAG-3、TIM-3および/またはPD-1)の減少、増殖の増加、自己反応性CD4+T細胞ならびに他の病原性免疫細胞、例えば、自己抗体産生B細胞、自己抗原提示樹状細胞および自己APCの阻害の増加によって確認する。
【0410】
(実施例2)
感染症モデルにおけるCD8+KIR+Treg細胞活性化および細胞傷害に関する一特異性および二特異性分子の試験
一特異性および二特異性分子(阻害性KIR遮断剤を含む)のパネルを、CD8 KIR+Treg細胞活性化の機能的回復、ならびに病原体感染細胞の細胞傷害媒介性の直接的および間接的除去について試験する。ヒトCMV特異的T細胞(Cellero)を、MHCクラスI分子HLA-A2に結合するウイルス由来の優性エピトープ(pp65)の漸増用量と共に培養する。ペプチドを、HLA-A2発現リンパ腫細胞系T2上に負荷する。特異的阻害性KIR分子機能の試験のために、MHC I欠損リンパ腫T1細胞系またはK562細胞系のいずれかを、適切な同族MHCクラスI分子(例えば、KIR2DL1を遮断する場合にはHLA-C2)でトランスフェクトする。KIR遮断が、病原体感染細胞の除去を特異的かつ効果的に再確立することを確認するために、CD8 Treg細胞活性化、細胞傷害、サイトカイン産生および増殖を試験する。標的細胞除去およびアポトーシスの程度もまた、アネキシンV染色および増殖を使用して決定する。対照として、本発明者らは、例えば、無関係のインフルエンザヘマグルチニン(hemaglutinin)ペプチド(陰性対照)、CD3抗体ビーズ活性化(陽性対照)、またはMHC欠損リンパ腫T1細胞系もしくは親K562細胞(陰性対照)を使用する。活性化をより高い感度で検出するために、本発明者らは、使用に関して分子に優先順位をつけるために、阻害性KIR遮断および/またはアゴニスト結合の際の増強された活性化を示すように、例えば、Jurkat細胞を、SHP1/2またはNFATレポーターでトランスフェクトする。
【0411】
(実施例3)
がんモデルにおけるCD8+KIR+Treg細胞活性化および細胞傷害に関する一特異性および二特異性分子の試験
KIR遮断がCD8 KIR Treg細胞活性化および標的細胞殺傷を改善するかどうかを決定するために、CD8 KIR+Treg細胞を、KIR二特異性分子のパネルの存在下で高い抗原負荷を用いて、腫瘍細胞系のパネルに対して試験する。KIR二特異性分子を、単独で、または他のKIR二特異性分子と組み合わせて、および他の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて試験する。例として、研究は、例えば、A549(NSCLC)、H1229(NSCLC)、A375(黒色腫)、SK-Mel 3(黒色腫)、Caki-1(RCC)および/または786-O(RCC)を含む腫瘍細胞系との共培養において、KIR分子の用量漸増と併せた抗CD3アゴニスト抗体の用量漸増を試験する。応答に対するハプロタイプの依存を、例えば、初代NY-ESO-1特異的T細胞(Cellero)対NY-ESO1ペプチドパルスしたT2(HLA-A2拘束される細胞系)および/またはHLA-A2 K562を使用して決定する。腫瘍細胞標的によるHLA発現のサブセット(例えば、HLA-B結合性KIR3DL1またはKIR2DL1/2/3結合性HLA-C)が最適な応答に要求されるかどうかを評価するために、適切なHLA分子を、K562細胞またはT1細胞のいずれかにおいて過剰発現させ、適切な優性エピトープ(https://antibodies.cancer.gov/detail/MajorHistocompatibilityComplexClassICPeptide1)でパルスする。
【0412】
(実施例4)
GVHD移植モデルにおけるCD8+KIR+Treg細胞活性化および細胞傷害に関する一特異性および二特異性分子の試験
造血幹細胞移植および他の移植手順の後、重篤かつ生命を脅かす合併症が生じ得、このとき、ドナー由来の細胞は、同種異系宿主組織を外来として認識し、活性化されて、レシピエントの健康な細胞を破壊するが、これは、移植片対宿主病(GVHD)として公知である。アロ反応性GVHDは、移植レシピエントの最大で50%において移植関連の病的状態を生じ、移植後の死亡のおよそ20%を占める。移植された細胞が健康な組織を破壊し、それを外来と認識する場合には、CD8+KIR+Treg上のKIR遮断は、移植片対宿主病の重症度を低減させ得る。GVHD重症度に対するKIR遮断の影響を試験するために、十分特徴付けられたGVHDモデルを使用し、このモデルでは、ヒト免疫細胞が、NOD/SCID/ガンマ鎖(NSG)欠損マウス中に注射され、ヒト細胞活性化およびマウス組織の破壊の結果として、引き続く多臓器急性病変が観察される。KIR遮断性一特異性および二特異性分子を、30~45日間の研究の持続時間にわたって72時間毎に注射し、エンドポイント分析には、血清炎症促進性サイトカイン、ヒトT細胞の活性化マーカー発現、疾患スコアリング(生存期間および体重が含まれる)、ならびに炎症および上皮細胞殺傷についての腸組織の病理組織学的分析が含まれる。この研究は、移植生着を保持しつつGVHDの重症度を低減させるための方法としてのKIR遮断の有用性を支持するだけでなく、複数の臓器および組織に影響し得る全身性疾患に対するKIR遮断の効果を決定する。
【0413】
(実施例5)
Ly49遮断は、CD8+Ly49+T調節性細胞の活性を増加させる
CD8+Ly49+Tregに対するLy49遮断の効果を、in vitroで確認した。簡潔に述べると、細胞を、10日目に標準的なMOGペプチドプロトコールを使用して、EAE誘導の10日後に、C57BL/6マウスの脾臓およびリンパ節から単離した(Saligrama et al., Nature 572:481-487 (2019)を参照されたい)。CD4+T細胞、CD8+CD28-調節性T細胞およびCD8+CD28+を、磁気分離を使用して単離し、遮断抗体の非存在下(対照)または遮断抗体LY49 C/lのF(ab’)2断片(クローン5e6;抗体のFc部分を欠如する)(抗Ly49)の存在下でCD3/CD28で刺激し、CD4 T細胞と1:1培養した。
【0414】
図4A~4Dを参照すると、Ly49遮断の存在下で、CD8+Treg活性化における統計的に有意な増加(
図4A)、免疫抑制性サイトカインの産生(
図4B)、細胞溶解活性(グランザイムB)(
図4C)、および抗炎症性IL-10サイトカインのCD4 T細胞産生における増加(
図4D)が存在した。類似の結果が、全長Ly49 C/l遮断抗体(クローン5E6)の存在下でCD3/CD28で刺激した細胞で観察された(データ示さず)。これらの結果は、CD8+Ly49+T細胞が、Ly49/KIR遮断による活性化の増加を示すことを確認する。
【0415】
細胞(上記)からの上清を、共培養の開始の48時間後に収集し、Bioplexアッセイを使用して種々の分析物(サイトカイン)について分析した。
【0416】
この分析の結果は、Ly49遮断が、MOGペプチド単独で処置したマウスと比較して、MOGおよびサプレッサーペプチドで処置したマウス由来の試料において、以下の炎症促進性サイトカインを抑制することを示した:RANTES、IL-6、IL-18、GM-CSF、TNFアルファおよびIFNガンマ(データ示さず)。さらに、IL-2およびIL-15レベルは、MOGペプチドで処置したマウスと比較して、MOGおよびサプレッサーペプチドで処置したマウス由来の試料において減少した(データ示さず)。抗炎症性サイトカインIL-22およびMCP-3のレベルは、MOGペプチドで処置したマウスと比較して、MOGおよびサプレッサーペプチドで処置したマウス由来の試料において減少した(データ示さず)。
【0417】
Ly49遮断の効果を、マウスEAEモデルにおいてin vivoで評価した。簡潔に述べると、EAEを、標準的なMOG注射プロトコールを使用して、C57BL/6マウスにおいて誘導した(Saligrama et al., Nature 572:481-487 (2019)を参照されたい)。マウスに、MOGを、単独で、または「代理ペプチド」カクテル(「SP」)もしくは遮断抗体LY49 C/lのF(ab’)2断片(クローン5E6;抗体のFc部分を欠如する)(抗Ly49または「Ly49遮断」)と組み合わせて、投与した(
図5)。Ly49遮断は、疾患の発症を遅延させ、疾患の重症度を減弱させたが(
図6)、これは、自己免疫トリガーの時点でのCD8+Treg動員が、疾患の制御に寄与したことを示唆している。
【0418】
(実施例6)
CD8 KIR+T細胞は、セリアック患者において、KIR発現について陰性のCD8 T細胞よりも、より高い細胞溶解潜在力を有する
末梢血単核細胞(PBMC)を、セリアック患者および健康なドナーから得た。PBMCを、CD8+T細胞について富化し、次いで、CD8、および汎阻害性KIR反応性ペプチドのミックスを含むいくつかの表面マーカーについて染色し、選別して、CD8+KIR+T細胞およびCD8+KIR-細胞を得た。選別した後、PBMCを、グルテンペプチドで刺激した。刺激の6日後に、CD8 Treg細胞を、細胞内グランザイム、パーフォリンおよびIFNガンマレベルについて評価した。
【0419】
セリアック患者由来のPBMCは、より高いパーセンテージのCD8+KIR+Treg細胞を有した(
図7A)。KIR+CD8+T細胞は、CD8+KIR-T細胞と比較して、パーフォリン、ならびに細胞内IFNガンマおよびグランザイムBを有する細胞のより高いパーセンテージを有した(
図7Bおよび7C)。これらの結果は、セリアック患者が、KIRについて陰性のCD8+T細胞よりも高い細胞溶解潜在力を有するCD8+KIR+T細胞を保有することを示している。
【0420】
(実施例7)
セリアック患者は、健康な対照よりも、より多くのKIR+CD8+T細胞を有し、KIR+CD8+T細胞上のより多くのICOS発現を有する
セリアック患者(6人)または健康なドナー由来のPBMCを、フローサイトメトリーによって分析し、CD8+T細胞に関してゲートした。セリアック患者由来のPBMCは、健康なドナー由来のPBMCよりも多くのCD3+/汎KIR+T細胞を有した(
図8A)。セリアック患者由来のPBMCは、健康なドナー由来のPBMCよりも多くのCD3+/汎KIR+/ICOS+細胞を有した(
図8B)。これらの結果は、セリアック患者が、KIR+CD8+T細胞上により多くのICOS発現を有することを示している。
【0421】
(実施例8)
グルテン再刺激は、CD8+KIR+TregのグランザイムBレベルおよび脱顆粒ならびにCD4+T細胞の喪失を増加させる
CD8+KIR+T細胞に対するグルテン再刺激の作用を決定するために、セリアック患者由来のPMBCを、IL-7および15の存在下で12日間にわたってグルテンペプチドで刺激して、CD4反応性細胞およびCD8+Treg細胞の両方について富化した。次いで、CD8 TregおよびCD4 T細胞を選択し、ペプチドパルスなしの、またはインフルエンザペプチドもしくはグルテンペプチドでパルスした自家APCと1:1で合わせた。48時間後、細胞を、フローサイトメトリーによって分析した。
【0422】
グルテンペプチドによる再刺激は、対照インフルエンザペプチドによる再刺激または未刺激の細胞と比較して、CD107によって測定される脱顆粒(
図9A、左)およびグランザイムBレベル(
図9A、右)を増加させた(598は、患者598由来のPBMCを指す)。グルテンペプチドによる再刺激は、生存CD4+細胞のパーセンテージの低減もまた引き起こしたが、インフルエンザペプチドによる再刺激はそれを引き起こさなかった(
図9B)。これらの結果は、CD8+KIR+Tregによる抗原応答が、セリアック患者由来のTregの供給源と一致して特異的であり、迅速かつ持続性であることを示している。これらの結果は、CD8+Treg細胞が上方調節され、CD4+T細胞活性化が下方調節されること、および病原性CD4+T細胞が除去されることを示している。
【0423】
(実施例9)
KIR遮断は、CD8+T細胞のグランザイムB含量および脱顆粒を増加させる
CD8+CD16+T細胞を、セリアック病と診断された3人の患者から選択し、100ug/mlのKIR2DL1/2/3およびKIR3DL1アンタゴニスト抗体(各々50ug)の存在または非存在下で、CD4+T細胞および1ug/ml抗CD3アゴニスト抗体(クローンOKT3)と1:1培養した。48時間後、CD8+Treg細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析した。KIR遮断(「KIRブロック」)は、細胞内グランザイムBレベル(
図10A)および脱顆粒(CD107)(
図10B)を増加させた。
【0424】
KIR遮断の効果を、セリアック患者由来のPBMCを使用する別の実験においてin vitroで評価した。簡潔に述べると、CD8+Tregを、セリアック患者PBMCから富化し、グリアジンペプチドカクテルでパルスした自家CD4 T細胞および抗原提示細胞と共に培養し、フローサイトメトリーを使用して分析した。再刺激の際に、抗阻害性KIR抗体(抗KIR2DL1/2/3、抗KIR3DL1、または抗KIR2DL1/2/3およびKIR3DL1のカクテル)を投与した細胞は、CD8+T細胞の細胞溶解活性の誘導、CD4+T細胞活性化の減少、およびCD4+T細胞死の増加を示した(
図11)。これらの結果は、一特異性および二特異性KIR遮断の際に、いくつかの患者試料にわたって一貫して観察された。
【0425】
(実施例10)
KIR遮断は、CD4+T細胞活性化を減少させる
CD8+CD16+T細胞を、セリアック病と診断された3人の患者から選択し、100ug/mlのKIR2DL1/2/3およびKIR3DL1アンタゴニスト抗体(各々50ug)の存在または非存在下で、CD4+T細胞および1ug/ml抗CD3アゴニスト抗体(クローンOKT3)と1:1培養した。48時間後、CD8+Treg細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析した。KIR遮断は、3人全ての患者由来の試料において、CD4+T細胞活性化および増殖(CD69)を低減させた(
図12)。
【0426】
(実施例11)
セリアック病におけるCD8+Treg細胞における選択KIRタンパク質とHLAリガンド発現との間の関連
セリアック患者PBMCを、KIR2DL1/2/3に対する抗体およびKIR3DL1に対する抗体を用いて染色した。CD8 T細胞に関してゲートした後、KIRリガンドおよびHLAハプロタイプについての細胞のパーセンテージ陽性度を決定した(HLAおよびKIR分類は、Scisco Geneticsと共同して実施した)。
【0427】
患者由来のCD8 T細胞は、以下のようにKIRを発現した:末梢血において、3つのうち3つは、KIR2DLを発現し、3つのうち2つは、KIR3DLを発現した。選択されたKIRに対するHLAリガンドは、セリアック患者試料において過剰提示される。10人の患者のうち9人は、少なくとも1コピーのHLA-C 07:01:01を有し、10人の患者のうち10人は、少なくとも1コピーのHLA-B 08:01:01を有した。
【0428】
(実施例12)
CD8およびKIR2DLに共結合する二特異性分子の特徴付け
クロスマブ(CrossMab)を、KIR2L1/2/3に結合するFab(IPH2102 IgG1r mAb(親抗体VHおよびVL配列、それぞれ配列番号101および102)から調製した)およびCD8アルファに結合するscFv(Mb1b IgG1r mAb(親抗体VHおよびVL配列、配列番号81および82)から調製した)を使用して調製した。FabおよびscFvを、IgG1のヒンジ-CH2-CH3に結合させ、このとき、CH3ドメインを、2つのヘテロダイマー性重鎖の正確な会合を強制する「ノブ-イントゥ-ホール」変異を含有するように操作した。「ノブ」重鎖は、変異S354CおよびT366Wを含んだ。「ホール」重鎖は、変異Y349C、T366S、L368AおよびY407Vを含んだ。
【0429】
KIR2L1/2/3-CD8アルファクロスマブを、Octet機器を使用するバイオレイヤーインターフェロメトリーによって、KIR2DL1またはKIR2DL3およびCD8アルファへの共結合について試験した。共結合研究のために、クロスマブを、0.3125ug/ml~20ug/mlの範囲の2倍希釈物を使用して、AHC(抗ヒトFc)バイオセンサーに捕捉させた。分析物(KIR2DL1、KIR2DL3およびCD8アルファ)を、100nMで一定に保持した。捕捉後の分析物共結合を、2つの方法で分析した:最初に、KIR2DL1もしくはKIR2DL3の会合、その直後の、CD8アルファの会合、またはCD8アルファの会合、その後の、KIRDL1もしくはKIR2DL3の直接的会合。KIR2DL1、KIR2DL3およびCD8アルファを、ヘキサヒスチジンペプチドでタグ化した。クロスマブは、標的KIR2DL1またはKIR2DL3およびCD8アルファに共結合することができた。
【0430】
Octet機器を使用して、KIR2DL1、KIR2DL3およびCD8アルファリガンドに対するクロスマブの親和性を測定し、抗CD8アルファおよび抗KIR2DL1/L2/L3親抗体と比較した。速度論的分析のために、クロスマブを、1.25ug/mlの負荷濃度を使用して、AHC(抗ヒトFc)バイオセンサーに捕捉させた。各分析物(KIR2DL1、KIR2DL3およびCD8アルファ)濃度は、6.25nM~200nMの範囲であった。捕捉後の分析物結合を、KIR2DL1、KIR2DL3またはCD8アルファの会合について最初に、その後、各分析物の解離について独立して、分析した。これにより、ka(オンレート)、kd(オフレート)およびKD値が得られ得、親抗体と直接比較され得ることを確実にした。速度論的分析により、クロスマブが、標的KIR2DL1、KIR2DL3およびCD8アルファに対する親和性を保持したことが明らかになった。
【0431】
親抗体抗KIR2DL1/L2/L3 IPH2102 IgG1r mAbおよび抗CD8アルファMb1b IgG1r mAbの親和性もまた分析した。速度論的分析のために、親抗体を、1.25ug/mlの負荷濃度を使用して、AHC(抗ヒトFc)バイオセンサーに別々に捕捉させた。IPH2102 IgG1r mAbについて、KIR2DL1またはKIR2DL3分析物は、6.25nM~200nMの範囲であった。捕捉後の分析物結合を、KIR2DL1またはKIR2DL3の会合について最初に、その後、各分析物の解離について独立して、分析した。同様に、Mb1b IgG1r mAbについて、CD8アルファ分析物は、6.25nM~200nMの範囲であった。捕捉後の分析物結合を、CD8アルファの会合について最初に、その後解離について分析した。
【表1】
【0432】
(実施例13)
他の自己免疫疾患と診断された患者由来のPBMC試料の分析
ループス、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症および1型糖尿病を有する患者由来のPBMCを、フローサイトメトリーおよびbioplexアッセイを使用して分析した。CD8+KIR+Treg細胞を、阻害性KIR表面受容体のサブセット、KIR2DL1/2/3およびKIR3DL1に対する抗体のカクテルを使用して、これらの患者試料において同定した(
図13)。Tregは、セリアック病患者由来のCD8+Tregと一致して、CXCR3、CD39および他の細胞表面マーカーを発現することが見出された(データ示さず)。CD8+Tregは、IFNガンマおよびIL-22を含む、CD8+Treg細胞機能に関連する可溶性分析物を産生することが見出された(データ示さず)。
【0433】
(実施例14)
CD8+KIR+Treg細胞の表現型的および機能的特徴付け
セリアック病およびHLA DQ2.5ハプロタイプを有する個体由来のPBMCを、フローサイトメトリーおよびbioplexアッセイを使用して分析して、上清中の可溶性分析物を検出した。CD8+KIR+Treg細胞は、これらの患者試料において同定され、表面マーカーCD39、KLRG1、NKG2D、NKG2C、KLRB、CXCR3およびCD122を発現することが見出された(
図14)。
【0434】
グリアジンペプチドでパルスした自家CD4 T細胞および抗原提示細胞と共に最適化された条件下で培養した場合、CD8+KIR+Tregは、細胞溶解マーカーグランザイムB、パーフォリンおよびCD107a、細胞内抗炎症性サイトカインIL-10、IFNγおよびTNFα、ならびに分泌されたサイトカインを含む、CD8+Treg細胞機能に関連する可溶性分析物を産生した(例えば、
図15を参照されたい)。漸増用量の抗CD3抗体による単離されたCD8+KIR+Treg細胞の刺激は、送達されたTCRシグナルの強度を用いて滴定されるRANTESおよびTNFβを含むいくつかのサイトカインおよびケモカインを、用量依存的様式で産生した(
図16)。グリアジンで再刺激したCD4+T細胞と共に共培養した場合、CD8+KIR+Treg細胞は、CD4+T細胞活性化を制御し、CD4+細胞によって産生される炎症促進性サイトカインを減少させた(
図17~19)。活性化のCD4+T細胞マーカーは、グリアジン再刺激の間のCD8+KIR+Treg細胞の添加が、グリアジン反応性CD4+T細胞活性化を特異的に減少させることを示している(
図18)。CD4 T細胞によって産生された抗炎症性サイトカインもまた増加し(
図19)、共培養上清において検出されたある特定の炎症性サイトカインおよびケモカインは、下方調節された。これらのデータは、セリアック患者に由来するPBMCから単離されたCD8+KIR+Tregが、最適化された条件下で培養した場合に、生存し、拡大増殖し、機能することができることを示しており、したがって、セリアック患者における機能的欠損は、可逆的であるように見える。
【0435】
さらに、CD8+Treg細胞応答および保有率の強化されたリコールが、反復抗原曝露の際に観察され、これは、潜在的に長い持続および疾患改変効果を示唆している(
図20)。患者毎の変動性が観察されたものの、反復抗原曝露にわたるCD8+Treg細胞の機能的応答に対する一貫した効果が、複数のデータ読み出しにわたって観察された。これらの知見は、CD8+Treg細胞の可能な誘導されたメモリー機能を示唆している。
【0436】
(実施例15)
セリアック病におけるCD8+Treg細胞における選択KIRタンパク質とHLAリガンド発現との間の関連
セリアック患者PBMCを、KIR2DL1/2/3に対する抗体およびKIR3DL1に対する抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーを使用して分析した。CD8+Treg細胞上での特定の阻害性KIRタンパク質の狭い発現が観察され、患者は、KIR2DL1/2/3、KIR3DL1、またはKIR2DL1/2/3およびKIR3DL1の両方を選択的に発現し(
図21)、この観察は、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症および1型糖尿病を有することを含む他のAI適応症を有する患者に拡張された(
図13)。この発現パターンは、阻害性KIRタンパク質のほぼ遍在性のゲノム発現、および健康な対照集団と比較した、セリアック患者にわたるそのそれぞれのHLAリガンドの過剰提示されたハプロタイプ発現に関連した(表2)。
【表2】
【0437】
(実施例16)
グルテンによるチャレンジの前および後のセリアック患者由来のPBMCおよび腸組織におけるT細胞発現および相互作用パターン
ホルマリン固定パラフィン包埋セリアック患者十二指腸生検を切片化し、独自のプラットフォーム、および固定された組織中の8つの細胞マーカーを同時に検出するカスタム抗体カクテル(Ultivue,Inc.と共同して開発した)を使用して染色した。抗体カクテルは、CD3、CD4、CD8、CD28、PD-1、Ki-67、グランザイムBおよびKIR2DL1/2/3に対する抗体を含んだ。
【0438】
CD8+KIR+Treg細胞は、セリアック病において増加する(
図22)。阻害性KIRの発現は、セリアック患者の末梢血および組織において確認され、CD8+Treg細胞のマーカーである(
図23)。CD8+T細胞のサブセットのみが、KIR発現と共に共局在し、したがって、KIRおよびCD8の共発現は、腸組織におけるCD8+Treg細胞を示す。
【0439】
無グルテン食を摂取する、グルテンによるチャレンジ前のセリアック患者由来の十二指腸組織試料を、T細胞マーカーについて分析した。CD4+T細胞と直接相互作用するグランザイム陽性CD8+T細胞が観察された(
図24を参照されたい。図中、グランザイムBは白色で示され、CD8+T細胞は緑色で示され、CD4+T細胞は黄土色で示され、CD8+T細胞とCD4+T細胞との間の相互作用は黄色で示される)。
【0440】
グルテンによるチャレンジの際に、CD8+Treg細胞は、セリアック患者の末梢血(
図25)および組織(
図26)において増加した。グルテンチャレンジの14日後に、CD4+T細胞数、共刺激分子発現、および組織における増殖は減少したが、阻害性KIR2DL発現T細胞は増加した(グルテンチャレンジ前の同等の患者組織と比較して)(
図27)。
【0441】
(実施例17)
二特異性KIRバインダー
二特異性KIRバインダー、例えば、KIRおよび別の分子を標的化する結合ドメインを有する二特異性抗体またはその断片は、活性化の機能的閾値に到達するようにシグナル強度を操作し、毒性なしに機能を達成するために使用することができる(
図28)。
【0442】
簡潔に述べると、CD8 Tregを、セリアック患者PBMCから富化し、グリアジンペプチドカクテルでパルスした自家CD4 T細胞および抗原提示細胞と共に培養し、フローサイトメトリー(
図29A、29Bおよび29C)、34種の分析物を検出するbioplexアッセイ(ProCarta Plex;
図30)、およびincucyteを使用する長期的イメージングとその後のフローサイトメトリー(
図31)を使用して分析した。二特異性および一特異性KIR遮断の存在下でのセリアック患者由来のPBMCのグルテン再刺激は、二特異性遮断(抗KIR2DL1/2/3かつ抗CD8)が、KIR単独を遮断することよりも、CD8+Treg細胞活性に対する大きい効果を生じたことを示した(
図29A、29Bおよび29C)。これらの効果は、用量依存的でもあった(
図29Bおよび29C)。用量依存的低減は、炎症促進性サイトカイン(
図30)およびケモカインの広範なパネルについても観察された。二特異性KIR-CD8遮断は、CD4+T細胞生存に対するより大きい用量依存的効果にも関連した(
図31および32)。KIR3DL1およびCD8に結合する二特異性剤は、同様に有効であった(データ示さず)。NK細胞と比較して、KIRを発現するCD8+T細胞は10分の1の少なさであるにもかかわらず、CD8+T細胞への二特異性遮断剤(抗KIR2DL1/2/3かつ抗CD8)の優先的結合が実証された(
図33および34)。類似の優先的結合が、KIR2DL1/2/3ではなく、KIR3DL1を標的化する二特異性剤について観察された(データ示さず)。
【0443】
具体的な実施形態が例示され記載されてきたが、上記種々の実施形態が、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得ること、および種々の変化が、本発明の精神および範囲から逸脱することなしにそれらにおいてなされ得ることは、容易に理解される。
【0444】
2021年2月3日出願の米国仮特許出願第63/145,394号、2021年2月10日出願の米国仮特許出願第63/148,016号、2021年3月15日出願の米国仮特許出願第63/161,325号、2021年6月11日出願の米国仮特許出願第63/209,949号、および2022年1月10日出願の米国仮特許出願第63/298,028号を含む、本明細書で言及されたまたは出願データシート中に列挙された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は全て、他が明示的に述べられない限り、それらの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要な場合に、さらにさらなる実施形態を提供するために、種々の特許、出願および刊行物の概念を用いるように改変され得る。
【0445】
これらおよび他の変化は、上に詳述した説明を考慮して、実施形態に対してなされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示された具体的な実施形態に限定すると解釈すべきではなく、かかる特許請求の範囲がそれに対して権利を与えられる等価物の完全な範囲と連動する全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】