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特表2024-505601がん療法に使用するための二重ATM及びDNA-PK阻害剤並びに免疫療法剤の組み合わせ
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  • 特表-がん療法に使用するための二重ATM及びDNA-PK阻害剤並びに免疫療法剤の組み合わせ 図1
  • 特表-がん療法に使用するための二重ATM及びDNA-PK阻害剤並びに免疫療法剤の組み合わせ 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】がん療法に使用するための二重ATM及びDNA-PK阻害剤並びに免疫療法剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/10 20060101AFI20240130BHJP
   A61K 31/4747 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C07D471/10 101
C07D471/10 CSP
A61K31/4747
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571245
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022014900
(87)【国際公開番号】W WO2022169840
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,321
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/277,672
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523293286
【氏名又は名称】エックスラッド セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギルマー,トナ
(72)【発明者】
【氏名】カスタン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ,デヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C065
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA17
4C065AA18
4C065BB05
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP08
4C065PP12
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、免疫チェックポイント阻害剤、及び任意選択的に、放射線療法を含む、併用がん療法。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、
式中、
が、H又はハロゲンであり、
Yが、CHR又はNRであり、
Lが、-OR-又は-N(R-であり、各Rが、独立して、H若しくはC1-3アルキルであるか、又はR置換基の両方が、Nと一緒になって、ヘテロシクリル環を形成し、
、R、R、R、R、及びRが、各々独立して、H又はC1-3アルキルであり、
前記対象が、抗腫瘍免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又はこれらの組み合わせを受けたことがあるか、又は受けている、方法。
【請求項2】
がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、(a)有効量の抗腫瘍免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又はこれらの組み合わせ、及び(b)有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【化2】
式中、
が、H又はハロゲンであり、
Yが、CHR又はNRであり、
Lが、-OR-又は-N(R-であり、各Rが、独立して、H若しくはC1-3アルキルであるか、又はR置換基の両方が、Nと一緒になって、ヘテロシクリル環を形成し、
、R、R、R、R、及びRが、各々独立して、H又はC1-3アルキルである、方法。
【請求項3】
前記対象が、前記放射線療法を受けたことがあるか、又は受けている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記抗腫瘍免疫チェックポイント阻害剤を受けたことがあるか、又は受けている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)において、前記対象に、前記放射線療法を実施することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)において、前記対象に、前記抗腫瘍免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、式(Ia)の化合物、
【化3】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R~Rが、請求項1で定義されるとおりである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、式(Ia-1)の化合物、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、Rが、C1-3アルキルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記式(Ia-1)の化合物が、
【化5】
であるか、又はその薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、式(Ib)の化合物、
【化6】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R~Rが、請求項1で定義されるとおりである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薬学的塩が、前記式(I)の化合物のメシル酸塩である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記式(I)の化合物が、経口投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記式(I)の化合物が、1日1回又は2回投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記チェックポイント阻害剤が、任意選択的に、表1に列挙されるPD-1アンタゴニストから選択されるPD-1アンタゴニストである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PD-1アンタゴニストが、任意選択的に、表1に列挙される抗PD-1抗体から選択される抗PD-1抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PD-1アンタゴニストが、任意選択的に、表1に列挙される抗PD-L1抗体から選択される抗PD-L1抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チェックポイント阻害剤が、静脈内注入によって、又は経口で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、ヒトがん患者である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒトがん患者が、結腸がん、黒色腫、乳がん、肺がん、又は頭頸部がんを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
式(I)の化合物のメシル酸塩であって、
【化7】
式中、
が、H又はハロゲンであり、
Yが、CHR又はNRであり、
Lが、-OR-又は-N(R-であり、各Rが、独立して、H若しくはC1-3アルキルであるか、又はR置換基の両方が、Nと一緒になって、ヘテロシクリル環を形成し、
、R、R、R、R、及びRが、各々独立して、H又はC1-3アルキルである、メシル酸塩。
【請求項21】
前記化合物が、式(Ia)の化合物であり、
【化8】
式中、R~Rが、請求項20で定義されるとおりである、請求項20に記載のメシル酸塩。
【請求項22】
前記化合物が、式(Ia-1)の化合物であり、
【化9】
式中、Rが、C1-3アルキルである、請求項21に記載のメシル酸塩。
【請求項23】
以下の構造
【化10】
を有する、請求項22に記載のメシル酸塩。
【請求項24】
前記化合物が、式(Ib)の化合物であり、
【化11】
式中、R~Rが、請求項1で定義されるとおりである、請求項20に記載のメシル酸塩。
【請求項25】
請求項20~24のいずれか一項に記載のメシル酸塩を含む、薬学的組成物。
【請求項26】
がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項20~24のいずれか一項に記載の式(I)の化合物のメシル酸塩、又は請求項25に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月3日に出願された米国特許出願第62/145,321号、及び2021年11月10日に出願された米国特許出願第63/277,672号の利益を主張し、それらの各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
セリントレオニンキナーゼのPIKK(PI-3K様キナーゼ)ファミリーのいくつかのメンバーは、DNA損傷シグナル伝達の既知のメディエーターである。
【0003】
放射線療法(RT)は、疾患中のある時点で、全てのがん患者の50%超を治療するために使用される。かなりの努力にもかかわらず、臨床放射線増感剤を開発するための以前のアプローチは、主に、放射線に対する細胞反応の直接的な調節因子ではない非特異的経路を標的とする結果として、極めて効果的ではなかった。
【0004】
免疫療法は、免疫系を調節することによる疾患の治療を指す。近年、免疫療法は、様々な形態のがんの治療において陽性結果を示している。しかしながら、ヒトからヒトへの免疫系の複雑さ及び変動を考慮すると、問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
腫瘍学的疾患のための新しい治療法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、少なくとも部分的に、ATM及びDNA-PKキナーゼの選択的二重阻害剤の開発、並びにがん治療における免疫チェックポイント阻害剤とのそれらの併用に基づいている。
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を特徴とする。式(I)において、R、R、R、R、R、及びRが、各々独立して、H又はC1-3アルキルであり得、
が、H又はハロゲン(例えば、フルロリン)であり得、Yが、CHR又はNRであり得、かつ/あるいは
Lが、-OR-又は-N(R-であり得、式中、
各Rが、独立して、H若しくはC1-3アルキルであり得るか、又はR基の両方が、Nと一緒になって、ヘテロシクリル環を形成し得る。いくつかの実施形態では、対象は、抗腫瘍免疫チェックポイント阻害剤を受けたことがあるか、又は受けている。
【0008】
他の態様では、本開示は、がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、(a)有効量の抗腫瘍免疫チェックポイント阻害剤、及び(b)有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を特徴とする。
【0009】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、対象は、放射線療法を受けたことがあるか、又は受けている。代替的に、本方法は、対象に、放射線療法を実施することを更に含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて使用される化合物は、式(Ia)の化合物であり得、
【化2】
、式中、Y及びR~Rが、本明細書に記載されるとおりである。
【0011】
いくつかの実施例では、式(Ia)の化合物は、以下のとおりであるか、
【化3】
、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの場合において、Rは、C1-3アルキルであり得る。
【0012】
いくつかの実施例では、式(Ia-1)の化合物は、
【化4】
であるか、又はその薬学的に許容される塩である。
【0013】
いくつかの実施例では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて使用される化合物は、式(Ib)の化合物であり得、
【化5】
Y及びR1~4は、本明細書で定義されるとおりである。
【0014】
いくつかの実施例では、式(I)の化合物のメシル酸塩は、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて使用され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、経口投与される。例えば、式(I)の化合物は、1日1回又は2回投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、任意選択的選択的に、表1に列挙されるPD-1アンタゴニストから選択されるPD-1アンタゴニストである。いくつかの実施例では、PD-1アンタゴニストは、任意選択的に、表1に列挙される抗PD-1抗体から選択される抗PD-1抗体である。いくつかの実施例では、PD-1アンタゴニストは、任意選択的に、表1に列挙される抗PD-L1抗体から選択される抗PD-L1抗体である。本明細書に開示されるチェックポイント阻害剤のうちのいずれも、静脈内注入によって投与され得る。代替的に、チェックポイント阻害剤は、経口投与され得る。
【0017】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、対象は、ヒトがん患者であり得る。例えば、ヒトがん患者は、結腸がん、黒色腫、乳がん、肺がん、又は頭頸部がん(例えば、下咽頭がん)を有する。
【0018】
他の態様では、式(I)の化合物のメシル酸塩が、本明細書で提供される。
【化6】
【0019】
式(I)において、R、R、R、R、R、及びRの各々は、独立して、Hであり得るか、又はC1-3アルキルRは、H又はハロゲンであり得、Yは、CHR又はNRであり得、かつ/あるいは
Lは、-OR-又は-N(R-であり得、各Rは、独立して、H又はC1-3アルキルであり得る。代替的に、R置換基の両方が、Nと一緒になって、ヘテロシクリル環を形成する。
【0020】
いくつかの実施形態では、メシル酸塩は、式(Ia)の化合物のメシル酸塩であり得る。
【化7】
Y及びR~Rは、本明細書で定義されるとおりである。
【0021】
いくつかの実施例では、メシル酸塩は、式(Ia-1)の化合物のメシル酸塩であり得る。
【化8】
いくつかの場合において、
は、C1-3アルキルであり得る。例えば、メシル酸塩は、以下の構造を有する。
【化9】
【0022】
他の実施例では、メシル酸塩は、式(Ib)の化合物のメシル酸塩であり得る。
【化10】
Y及びR1~4は、本明細書で定義されるとおりである。
【0023】
更に、本開示は、本明細書に開示される式(I)の化合物のうちのいずれかのメシル酸塩を含む、薬学的組成物を提供する。加えて、本開示は、がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に開示されるメシル酸塩、又はそのようなものを含む薬学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
また、本明細書に開示されるものとしての標的がんの治療における使用のために、任意選択的に、放射線療法とともに、式(I)の化合物(例えば、メシル酸塩の形態で)及び免疫チェックポイント阻害剤のうちのいずれかの共使用、又は標的がんの治療における使用のための医薬の製造のためのそのような治療剤の共使用が、本開示の範囲内である。加えて、本開示は、標的がんの治療における使用のために、及び標的がんの治療における使用のための医薬を製造するためのかかるメシル酸塩の使用のために、本明細書に開示されるメシル酸塩のうちのいずれかを含む、薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明、並びに添付の特許請求の範囲からも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の態様を更に実証するために含まれ、これらは、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、図面を参照することによってよりよく理解することができる。
【0027】
図1】放射線療法の有無にかかわらず、MCF7細胞に対する化合物569の効果を評価する代表的な実験からの免疫ブロットの画像である。
図2A-2B】クローン原性アッセイにおいて、化合物569が細胞生存率を改善したことを示すグラフを含む。図2A:放射線療法の有無にかかわらず、ビヒクル(DMSO)又は化合物569に曝露した後のMCF7細胞生存率を調べるクローン原性生存アッセイの結果を示すグラフ。図2B:放射線療法の有無にかかわらず、ビヒクル(DMSO)又は化合物569に曝露した後のA549細胞生存率を調べるクローン原性生存アッセイの結果を示すグラフ。
図3】野生型p53を発現するHCT116細胞又はp53発現が陰性であったHCT116細胞における、化合物569によるTBK1のリン酸化の誘導、選択的ATM阻害剤(ATMi)、選択的DNA-PK阻害剤(DNA-PKi)、及び選択的ATM阻害剤と選択的DNA-PK阻害剤(Ai+Di)との組み合わせを示す免疫ブロットの画像である。図3において、p.ATM、p.DNA-PK、p.TBK1、及びp.STINGは、それぞれ、ATM、DNA-PK、TBK1、及びSTINGのリン酸化形態を示す。
図4】FADU頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)ヒト腫瘍異種移植片における化合物569による、DNA-PKキナーゼの放射誘導性自己リン酸化の阻害及びATM基質であるKAP1の放射誘導性リン酸化を示す免疫ブロットである。pDNA-PK及びpKAP1は、それぞれ、DNA-PK及びKAP1のリン酸化形態を示す。
図5】MDA-MB-231乳がんヒト腫瘍異種移植片における化合物569による、DNA-PKキナーゼの放射誘導性自己リン酸化の阻害及びATM基質であるKAP1の放射誘導性リン酸化を示す免疫ブロットである。pDNA-PK及びpKAP1は、それぞれ、DNA-PK及びKAP1のリン酸化形態を示す。
図6】化合物569及び/又はIR、qd×3を有するFADU皮下ヒト異種移植片マウスモデルの投与を示すダイアグラムである。研究における各群の経時的な相対腫瘍体積の中央値を示す。「569」は化合物569を意味し、「Veh.」はビヒクルを意味し、「Rad.」は放射線療法を意味する。
図7】化合物569及び/又はIR、qd×3を有するFADU皮下ヒト異種移植片マウスモデルにおいて投与された各群のカプランマイヤー無5倍生存率を表すプロットである。「569」は化合物569を意味し、「Veh.」はビヒクルを意味し、「Rad.」は放射線療法を意味する。
図8】化合物569及び/又はIR、qd×3を有するMDA-MB-231皮下ヒト異種移植片マウスモデルの投与を示すダイアグラムである。研究における各群の経時的な相対腫瘍体積の中央値を示す。図8において、「569」は化合物569を意味し、「Veh.」はビヒクルを意味し、「Rad.」は放射線療法を意味する。
図9】化合物569及び/又はIR、qd×3を有するMDA-MB-231皮下ヒト異種移植片マウスモデルにおいて投与された各群のカプランマイヤー無5倍生存率を表すプロットである。図9において、「569」は化合物569を意味し、「Veh.」はビヒクルを意味し、「Rad.」は放射線療法を意味する。
図10】1)ビヒクル+アイソタイプ対照;2)抗mPD-1;3)放射線+アイソタイプ対照;4)放射線+抗mPD-1;5)化合物569+放射線;6)化合物569+抗mPD-1;7)化合物569+放射線+抗mPD-1を有するMC38同系マウスモデルに投与された各群(n=10)の腫瘍成長を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書で使用される用語が特定の実施形態を記載する目的のためであり、制限することを意図するものではないことは理解されるであろう。更に、本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法、デバイス、及び材料は、本発明の実施又は試験で使用することができるが、好ましい方法、デバイス、及び材料が、ここに記載される。上記に加えて、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、別途指定がない限り、以下の用語は、示される意味を有する。
「アミノ」は、-NHラジカルを指す。
「シアノ」は、-CNラジカルを指す。
「ヒドロキシル」は、-OHラジカルを指す。
「イミノ」は、=NH置換基を指す。
「ニトロ」は、-NOラジカルを指す。
「オキソ」は、=O置換基を指す。
「チオキソ」は、=S置換基を指す。
「トリフルオロメチル」は、-CFラジカルを指す。
【0029】
「アルキル」は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子又は1~6個の炭素原子を有し、単結合、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシルなどによって分子の残りの部分に結合する、直鎖、飽和、非環式、一価の炭化水素ラジカル又は分岐鎖、飽和、非環式、一価の炭化水素ラジカルを指す。任意選択的に置換されたアルキルラジカルは、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシラニル、-OR14、-OC(O)-R14、-N(R14、-C(O)R15、-C(O)OR14、-C(O)N(R14、-N(R14)C(O)OR16、-N(R14)C(O)R16、-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって、原子価が許す限り、任意選択的に置換されたアルキルラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0030】
「アルケニル」は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を有し、単結合、例えば、エテニル、プロプ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペント-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなどによって分子の残りに結合する、1個、2個、又は3個の炭素-炭素二重結合を含有する、直鎖、非環式、一価の炭化水素ラジカル又は分岐鎖、非環式、一価の炭化水素ラジカルを指す。任意選択的に置換されたアルケニルラジカルは、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシラニル、-OR14、-OC(O)-R14、-N(R14、-C(O)R15、-C(O)OR14、-C(O)N(R14、-N(R14)C(O)OR16、-N(R14)C(O)R16、-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって、原子価が許す限り、任意選択的に置換されたアルケニルラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0031】
「アルキニル」は、1個又は2個の炭素-炭素三重結合、及び任意選択的に、1個、2個、又は3個の炭素-炭素二重結合を含有し、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を有し、単結合、例えば、エチニル、プロプ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1-エン-4-エニルなどによって分子の残りに結合する、直鎖、非環式、一価の炭化水素ラジカル又は分岐鎖、非環式、一価の炭化水素ラジカルを指す。任意選択的に置換されたアルキニルラジカルは、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシラニル、-OR14、-OC(O)-R14、-N(R14、-C(O)R15、-C(O)OR14、-C(O)N(R14、-N(R14)C(O)OR16、-N(R14)C(O)R16、-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって任意選択的に置換されたアルキニルラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0032】
「アルキレン」又は「アルキレン鎖」は、1~12個の炭素原子、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなどを有する、直鎖、非環式、飽和、二価の炭化水素鎖又は分岐鎖、非環式、飽和、二価の炭化水素鎖を指す。アルキレン鎖は、単結合によって結合される。アルキレン鎖の結合点は、アルキレン鎖内で同じ炭素原子上にあっても、異なる炭素原子上にあってもよい。任意選択的に置換されたアルキレンラジカルは、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシラニル、-OR14、-OC(O)-R14、-N(R14、-C(O)R15、-C(O)OR14、-C(O)N(R14、-N(R14)C(O)OR16、-N(R14)C(O)R16、-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって、原子価が許す限り、任意選択的に置換されたアルキレンラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、アルキレンは、エチレンである。
【0033】
「アルケニレン」又は「アルケニレン鎖」は、1個、2個、又は3個の炭素-炭素二重結合を含有し、2~12個の炭素原子、例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどを有する、直鎖、非環式、二価の炭化水素鎖又は分岐鎖、非環式、二価の炭化水素鎖を指す。アルケニレン鎖は、単結合によって結合される。アルケニレン鎖の結合点は、アルケニレン鎖内で同じ炭素原子上にあっても、異なる炭素原子上にあってもよい。任意選択的に置換されたアルケニレンラジカルは、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシラニル、-OR14、-OC(O)-R14、-N(R14、-C(O)R15、-C(O)OR14、-C(O)N(R14、-N(R14)C(O)OR16、-N(R14)C(O)R16、-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって、原子価が許す限り、任意選択的に置換されたアルケニレンラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0034】
「アルキニレン」又は「アルキニレン鎖」は、1個又は2個の炭素-炭素三重結合、及び任意選択的に、1個、2個、又は3個の炭素-炭素二重結合を含有し、2~12個の炭素原子、例えば、プロピニレン、n-ブテニレンなどを有する、直鎖、非環式、二価の炭化水素鎖又は分岐鎖、非環式、二価の炭化水素鎖を指す。アルキニレン鎖は、単結合によって結合される。アルキニレンの結合点は、アルキニレン鎖内で同じ炭素原子上にあっても、異なる炭素原子上にあってもよい。任意選択的に置換されたアルキニレン鎖は、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシラニル、-OR14、-OC(O)-R14、-N(R14、-C(O)R15、-C(O)OR14、-C(O)N(R14、-N(R14)C(O)OR16、-N(R14)C(O)R16、-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-S(O)N(R14(式中、tが、1~2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって任意選択的に置換されたアルキネレン鎖であり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0035】
「アルコキシ」は、式-ORのラジカルを指し、式中、Rは、1~12個の炭素原子を含有する上記で定義されるアルキルラジカルである。任意選択的に置換されたアルコキシラジカルのアルキル部分は、アルキルラジカルについて上記で定義されるように、任意選択的に置換される。
【0036】
「アルコキシアルキル」は、式-R-O-Rのラジカルを指し、式中、Rは、アルキレンであり、Rは、上記で定義されるアルキルである。任意選択的に置換されたアルコキシアルキルラジカルのアルキル部分及びアルキレン部分は、それぞれ、アルキルラジカル及びアルキレン鎖について上記で定義されるように、任意選択的に置換される。
【0037】
「アラルキル」は、式-R-Rのラジカルを指し、式中、Rは、アルキレンであり、Rは、本明細書に記載されるアリールである。任意選択的に置換されたアラルキルのアルキレン部分及びアリール部分は、それぞれ、アルキレン及びアリールについて本明細書に記載されるように、任意選択的に置換される。
【0038】
「アリール」は、6~18個の炭素原子を含有する芳香族単環式又は多環式炭化水素環系ラジカルを指し、多環式アリール環系は、二環式、三環式、又は四環式環系である。アリールラジカルとしては、フルオレニル、フェニル、及びナフチルなどの基が挙げられるが、これらに限定されない。任意選択的に置換されたアリールは、アルキル、アケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、ニトロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R15-OR14、-R15-OC(O)-R14、-R15-N(R14、-R15-C(O)R14、-R15-C(O)OR14、-R15-C(O)N(R14、-R15-N(R14)C(O)OR16、-R15-N(R14)C(O)R16、-R15-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-R15-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって任意選択的に置換されたアリールラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、直接結合又は直鎖若しくは分岐鎖アルキレン若しくはアルケニン鎖であり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0039】
「アリールアルコキシ」は、式-O-Rの基を指し、式中、Rは、アラルキルである。任意選択的に置換されたアリールアルコキシは、アラルキルについて本明細書に記載されるように任意選択的に置換されるアリールアルコキシである。いくつかの実施形態では、アリールアルコキシは、ベンジルオキシである。
【0040】
「シクロアルキル」は、3~15個の炭素原子を有し、好ましくは3~10個の炭素原子を有し、飽和又は不飽和であり、単結合によって分子の残りの部分に結合する、安定した非芳香族単環式又は多環式炭化水素ラジカルを指す。多環式炭化水素ラジカルは、二環式、三環式、又は四環式環系である。不飽和シクロアルキルは、1個、2個、若しくは3個の炭素-炭素二重結合、及び/又は1個の炭素-炭素三重結合を含有する。単環式シクロアルキルラジカルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。多環式シクロアルキルラジカルとしては、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニルなどが挙げられる。任意選択的に置換されたシクロアリールは、アルキル、アケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、ニトロ、オキソ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、-R15-OR14、-R15-OC(O)-R14、-R15-N(R14、-R15-C(O)R14、-R15-C(O)OR14、-R15-C(O)N(R14、-R15-N(R14)C(O)OR16、-R15-N(R14)C(O)R16、-R15-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-R15-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって任意選択的に置換されたシクロアルキルラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、直接結合又は直鎖若しくは分岐鎖アルキレン若しくはアルケニレン鎖であり、各R16が、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。
【0041】
「縮合した」とは、本発明の化合物中の既存の環構造に縮合した、本明細書に記載される任意の環系を指す。縮合環系が、ヘテロシクリル又はヘテロアリールである場合、縮合環系の一部になる既存の環構造上の任意の炭素原子は、窒素原子に置き換えられ得る。
【0042】
「ハロ」は、ハロゲン置換基:ブロモ、クロロ、フルオロ、及びヨードを指す。
【0043】
「ハロアルキル」は、上記で定義されるように、1つ以上のハロゲン置換基によって更に置換されるアルキルラジカルを指す。ハロアルキルに含まれるハロ置換基の数は、1個からハロ置換基(例えば、ペルフルオロアルキル)との置換に利用可能な水素原子の総数までである。ハロアルキルの非限定的な例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1-ブロモメチル-2-ブロモエチルなどが挙げられる。任意選択的に置換されたハロアルキルについて、ハロアルキルラジカルのアルキル部分の炭素原子に結合した水素原子は、任意選択的に置換されたアルキルについて上記で定義される置換基で任意選択的に置換され得る。
【0044】
「ハロアルケニル」は、上記で定義されるように、1つ以上のハロ置換基によって更に置換されるアルケニルラジカルを指す。ハロアルケニルに含まれるハロ置換基の数は、1個からハロ置換基(例えば、ペルフルオロアルケニル)との置換に利用可能な水素原子の総数までである。ハロアルケニルの非限定的な例としては、2,2-ジフルオロエテニル、3-クロロプロプ-1-エニルなどが挙げられる。任意選択的に置換されたハロアルケニルについて、ハロアルケニルラジカルのアルケニル部分の炭素原子に結合した水素原子は、任意選択的に置換されたアルケニル基について上記で定義される置換基で任意選択的に置換され得る。
【0045】
「ハロアルキニル」は、上記で定義されるように、1つ以上のハロ置換基によって更に置換されるアルキニルラジカルを指す。ハロアルキニルに含まれるハロ置換基の数は、1個からハロ置換基(例えば、ペルフルオロアルキニル)との置換に利用可能な水素原子の総数までである。ハロアルキニルの非限定的な例としては、3-クロロプロプ-1-エニルなどが挙げられる。ハロアルキニルラジカルのアルキニル部分は、加えて、アルキニル基について上記で定義されるように、任意選択的に置換され得る。
【0046】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-R-Rのラジカルを指し、式中、Rは、アルキレンであり、Rは、本明細書に記載されるヘテロアリールである。任意選択的に置換されたヘテロアリールアルキルのアルキレン部分及びヘテロアリール部分は、それぞれ、アルキレン及びヘテロアリールについて本明細書に記載されるように、任意選択的に置換される。
【0047】
「ヘテロシクリル」は、炭素数が2~12を有し、窒素、酸素、リン、及び硫黄からなる群から独立して選択される合計1~6個のヘテロ原子を含有する、安定した3~18員の非芳香族環系ラジカルを指す。ヘテロシクリルラジカルは、単環式、二環式、三環式、又は四環式環系である。二環式、三環式、又は四環式ヘテロシクリルは、縮合、スピロ、及び/又は架橋環系である。ヘテロシクリルラジカルは、飽和又は不飽和であり得る。不飽和ヘテロシクリルは、1個、2個、若しくは3個の炭素-炭素二重結合、及び/又は1個の炭素-炭素三重結合を含有する。任意選択的に置換されたヘテロシクリルは、アルキル、アケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、オキソ、チオキソ、ニトロ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、-R15-OR14、-R15-OC(O)-R14、-R15-N(R14、-R15-C(O)R14、-R15-C(O)OR14、-R15-C(O)N(R14、-R15-N(R14)C(O)OR16、-R15-N(R14)C(O)R16、-R15-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-R15-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって任意選択的に置換されたヘテロシクリルラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、直接結合又は直鎖若しくは分岐鎖アルキレン若しくはアルケニレン鎖であり、各R16が、独立して、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素、又は硫黄原子は、任意選択的に酸化されてもよく(置換基がオキソであり、ヘテロ原子上に存在する場合)、窒素原子は、任意選択的に四級化されてもよい(置換基が、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、-R15-OR14、-R15-OC(O)-R14、-R15-N(R14、-R15-C(O)R14、-R15-C(O)OR14、-R15-C(O)N(R14、-R15-N(R14)C(O)OR16、-R15-N(R14)C(O)R16、-R15-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-R15-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)、R15が、直鎖若しくは分岐鎖アルキレン若しくはアルケニレン鎖であり、R14及びR16は、上記で定義されるとおりである)。任意選択的に置換されたヘテロシクリルラジカルの例としては、アゼチジニル、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「ヘテロシクリレン」は、1個の水素原子が原子価で置き換えられたヘテロシクリルを指す。任意選択的に置換されたヘテロシクリレンは、ヘテロシクリルについて本明細書に記載されるように任意選択的に置換される。
【0049】
「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの芳香族環を含有し、1~17の炭素数の炭素原子を有し、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から独立して選択される合計1~10個のヘテロ原子を含有する、5~18員環系ラジカルを指す。ヘテロアリールラジカルは、単環式、二環式、三環式、又は四環式環系である。二環式、三環式、又は四環式ヘテロアリールラジカルは、縮合及び/又は架橋環系である。任意選択的に置換されたヘテロアリールは、アルキル、アケニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、オキソ、チオキソ、ニトロ、オキソ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキル、-R15-OR14、-R15-OC(O)-R14、-R15-N(R14、-R15-C(O)R14、-R15-C(O)OR14、-R15-C(O)N(R14、-R15-N(R14)C(O)OR16、-R15-N(R14)C(O)R16、-R15-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-R15-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)からなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換基によって任意選択的に置換されたヘテロアリールラジカルであり、各R14が、独立して、水素、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり、各R15が、独立して、直接結合又は直鎖若しくは分岐鎖アルキレン若しくはアルケニレン鎖であり、各R16が、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素、又は硫黄原子は、任意選択的に酸化されてもよいが(置換基がオキソであり、ヘテロ原子上に存在する場合)、但し、ヘテロアリール中の少なくとも1つの環が芳香族を維持するものとし、窒素原子は、任意選択的に四級化されてもよいが(置換基が、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、-R15-OR14、-R15-OC(O)-R14、-R15-N(R14、-R15-C(O)R14、-R15-C(O)OR14、-R15-C(O)N(R14、-R15-N(R14)C(O)OR16、-R15-N(R14)C(O)R16、-R15-N(R14)S(O)16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)OR16(式中、tが、1又は2である)、-R15-S(O)16(式中、pが、0、1、又は2である)、及び-R15-S(O)N(R14(式中、tが、1又は2である)であり、R15が、直鎖若しくは分岐鎖アルキレン若しくはアルケニレン鎖であり、R14及びR16は、上記で定義されるとおりである)、但し、ヘテロアリール中の少なくとも1つの環が芳香族を維持するものとする。任意選択的に置換されたヘテロアリールラジカルの例としては、アゼピニル、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、及びチオフェニル(すなわち、チエニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
I.がん治療
特に、ATM(運動失調症-毛細血管拡張症、変異型)及びDNA-PKキナーゼは、DNA切断に対する細胞反応の重要なモジュレーターであり、これらの分子のいずれかの阻害は、電離放射線に対する細胞の感受性を著しく増加させる。運動失調症 毛細血管拡張症、変異型(ATM)キナーゼ及びDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)をそれぞれコードするATM又はPRKDC遺伝子に機能喪失変異を有するヒト及びマウスは、電離放射線に対して過敏である。ATM及びDNA-PKキナーゼを一緒に阻害することは、放射線療法又はDNA損傷剤(例えば、抗腫瘍剤)に対する腫瘍細胞の感作に有効であり得る。ATM及びDNA-PKキナーゼの二重阻害の有効性は、いずれかのキナーゼ自体の阻害よりも優れ得る。
【0051】
免疫療法は、患者自身の免疫系を調節することによるがん治療の一種であり、抗がん細胞免疫反応の増強をもたらす。免疫療法は、がん患者における無増悪生存期間及び全生存率の延長における成功を示した。一方、免疫療法は、過剰に活動する免疫系に起因する重篤な有害事象を引き起こし得る。
【0052】
本開示は、(a)1つ以上の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩(例えば、化合物568、569、570、若しくは574、又はメシル酸塩若しくはHCl塩などのその薬学的に許容される塩)、(b)PD1アンタゴニストなどの1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤、及び任意選択的に(c)放射線療法を含む、併用がん療法を提供する。本明細書に報告されるように、式(I)の化合物は、ATM(運動失調性毛細血管拡張症、変異型)及びDNA-PKキナーゼの選択的二重阻害剤であるが、mTOR、及び/若しくはPI3Kα/δを阻害するようなキナーゼに対する阻害活性が低い若しくはない、及び/若しくはhERGに対する阻害活性が低い若しくはない。したがって、本明細書に開示される式(I)の化合物は、放射線療法の有無にかかわらず、ATM及びDNA-PKの作用の有効な阻害剤であり得る。更に、式(I)の化合物及び免疫療法(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)の組み合わせは、例えば、抗腫瘍免疫シグナル伝達経路の活性化に関与する経路を刺激することによって、優れた抗腫瘍効果を達成することが期待され得る。理論に拘束されることなく、併用療法は、場合によっては、腫瘍細胞特異的T細胞を活性化すること(例えば、腫瘍微小環境内のサイトカインプロファイルの変化、免疫原性細胞死の促進、新抗原の提示の刺激、又はそれらの組み合わせを介して)によって、意図された治療効果を達成し得る。加えて、式(I)の化合物及び免疫療法と放射線療法との組み合わせは、同様の又は他の複数の機序によってその反応を増強することができる。
【0053】
A.治療剤
本明細書に開示される併用療法は、本明細書に開示される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(例えば、化合物568、569、570、若しくは574、又はその薬学的に許容される塩)、1つ以上の免疫療法剤(例えば、PD1アンタゴニストなどの免疫チェックポイント阻害剤、及び任意選択的に放射線療法)のうちの1つ以上を含む。本明細書に開示される化合物は、任意の立体異性体、鏡像異性体、互変異性体、又はそれらの混合物を包含する。
【0054】
(i)式(I)の化合物
いくつかの態様では、式(I)として示される構造を有する二重ATM/DNA-PK阻害化合物、
【化11】
又はその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。式(I)では、Rは、H又はハロゲン(例えば、フルオロ)であり得、Yは、CHR又はNRであり得、Lは、-OR-又は-N(R-であり得る。各Rは、独立して、H又はC1-3アルキルであり得る。いくつかの場合において、R置換基の両方が、Nと一緒に、ヘテロシクリル環を形成し、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立して、H、又はC1-3アルキル(置換又は非置換)である。いくつかの実施例では、C1-3アルキルは、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルであり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、Lは、-OR-であり、式中、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Lは、-OR-であり、式中、R又はC1-3アルキルである。
【0056】
いくつかの実施形態では、式(I)のYは、CHRであり得る。いくつかの実施例では、Rは、Hであり得る。他の実施例では、Rは、C1-3アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルなどの非置換C1-3アルキル)であり得る。代替的に、又は加えて、R、R、及びRの各々は、Hであり得る。他の例では、R、R、及びRの各々は、C1-3アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルなどの非置換C1-3アルキル)であり得る。代替的に、又は加えて、Rは、メチルであり得る。他の実施例では、Rは、エチルであり得る。更に他の実施例では、Rは、イソプロピルであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、式(I)のYは、NRであり得る。いくつかの実施例では、Rは、Hであり得る。他の実施例では、Rは、C1-3アルキル(例えば、メチル、エチル、又はプロピルなどの非置換C1-3アルキル)であり得る。代替的に、又は加えて、R、R、及びRの各々は、Hであり得る。他の例では、R、R、及びRの各々は、C1-3アルキル(例えば、メチル、エチル、又はプロピルなどの非置換C1-3アルキル)であり得る。代替的に、又は加えて、Rは、メチルであり得る。他の実施例では、Rは、エチルであり得る。更に他の実施例では、Rは、イソプロピルであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重ATM/DNA-PK阻害化合物は、式(Ia)の構造、
【化12】
を有し得、式中、Y及びR~Rは、本明細書で定義されるとおりである。いくつかの実施例では、二重ATM/DNA-PK阻害化合物は、式(Ia-1)の化合物、
【化13】
であり得、式中、Rは、本明細書で定義されるとおりである。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重ATM/DNA-PK阻害化合物は、式(Ib)の構造、
【化14】
を有し得、式中、Y及びR1~4は、本明細書で定義されるとおりである。
【0060】
本明細書に開示される式(I)の化合物は、ATM及びDNA-PKキナーゼの二重阻害剤であり得る。例えば、本明細書に開示される式(I)の化合物は、ATM≦5nMに対するIC50値及び/又はDNA-PK≦1.1nM(例えば、≦1.0nM)に対するIC50値(例えば、化合物568、569、570、若しくは574)を有し得る。いくつかの場合において、本明細書に開示される式(I)の化合物は、ATM及びDNA-PKに対する選択的阻害剤である。このような選択的阻害剤は、mTOR、PI3K-α/δ、及び/又はhERGなどの他の標的酵素に対する阻害活性が著しく低下している(又は低下していない)。例えば、本明細書に開示する式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、又は574)は、ATM IC50又はDNA-PK IC50よりも少なくとも10倍(例えば、少なくとも20倍)大きいmTOR IC50を有し得る。他の例では、式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、又は574)は、10nM以上(例えば、>100nM)のmTOR IC50を有し得る。追加的又は代替的に、式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、又は574)は、同じ化合物濃度で測定した場合、ATM IC50又はDNA-PK IC50よりも少なくとも100倍(例えば、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、又は少なくとも3000倍)大きいhERG IC50を有し得る。例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、又は574)は、3μM以上(例えば、10μM以上)のhERG IC50を有し得る。
【0061】
本明細書に開示される式(I)の化合物のうちのいずれかは、本明細書に開示される併用がん療法において使用され得る。使用するための式(I)の例示的な化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・トランス-N-(5-(3-エチル-7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド
・N-(5-(7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)プロパン-2-スルホンアミド
・N-(5-(7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド塩酸塩
・N-(5-(7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)エタンスルホンアミド塩酸塩
・N-(5-(7’-フルオロ-1-イソプロピル-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[アゼチジン-3,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド
・シス-N-(5-(3-エチル-7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド
・N-(2-(3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)-5-(3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド塩酸塩
【0062】
具体的な例では、併用療法で使用するための式(I)の化合物は、化合物568である。他の実施例では、式(I)の化合物は、化合物569である。更に他の実施例では、式(I)の化合物は、化合物570である。他の実施例では、式(I)の化合物は、化合物574である。
【0063】
いくつかの場合において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される併用がん療法に使用することができる。「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使用される場合、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしでヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適であり、妥当な利益/リスク比に見合ったものである塩を表す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。薬学的に許容される塩としては、酸及び塩基添加塩が挙げられる。
【0064】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的に又は他の方法で望ましくないものではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などであるが、これらに限定されない無機酸、並びに酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、樟脳-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシルスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムク酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフチン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などであるが、これらに限定されない有機酸で形成される塩を指す。」
【0065】
薬学的に許容される塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的でない又はさもなければ望ましくない塩を指す。これらの塩は、遊離酸への無機塩基又は有機塩基の付加から調製される。無機塩基に由来する塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩である。有機塩基に由来する塩としては、一級、二級、及び三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミンの塩、環状アミンの塩、並びに塩基性イオン交換樹脂、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、及びカフェインである。
【0066】
いくつかの実施例では、式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、又は574)のメシル酸塩は、本明細書に開示される併用療法に使用することができる。1つの特定の例を、以下に提供する:
【化15】
(化合物569のメシル酸塩)。
【0067】
本明細書に開示される式(I)の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩は、1つ以上の不斉中心を含み得、したがって、アミノ酸について(R)-若しくは(S)-又は(D)-若しくは(L)-として、絶対立体化学の観点から定義され得る鏡像異性体、ジアステレオマー、及び他の立体異性体形態を生じ得る。本発明は、そのような可能性のある全ての異性体、並びにそれらのラセミ形態及び光学的に純粋な形態を含むことを意図している。光学的に活性な(+)及び()、(R)-及び(S)、又は(D)-及び(L)-異性体は、キラルシンソン又はキラル試薬を使用して調製され得るか、又は従来の技術、例えば、クロマトグラフィー及び分割結晶化を使用して分解され得る。個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術には、例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用した、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成又はラセミ体(又は塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割が含まれる。本明細書に記載される化合物がオレフィン二重結合又は他の幾何学的非対称性中心を含有する場合、特に指定されない限り、化合物は、E及びZ幾何学的異性体の両方を含むことが意図される。同様に、全ての互変異性形態も含まれることが意図される。
【0068】
「立体異性体」は、同じ結合によって結合された同じ原子からなるが、互換性がない異なる三次元構造を有する化合物を指す。本発明は、様々な立体異性体及びそれらの混合物を企図し、分子が互いに重ね合わせできない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
【0069】
「互変異性体は、ある分子の1つの原子から同じ分子の別の原子へのプロトン移動を指す。本明細書に開示される任意の式(I)の化合物の互変異性体は、本開示の範囲内である。
【0070】
また、本開示の範囲内には、式(I)の中間化合物、並びに前述の種の全ての多形体、並びにそれらの晶癖も含まれる。
【0071】
式(I)の化合物の調製
本明細書に開示される式(I)の化合物は、当該技術分野で既知の方法及び技法を使用して、又は本明細書に提供される開示に従って調製することができる(例えば、以下の実施例を参照されたい)。これらの化合物を合成するための好適なプロセスは、実施例に提供される。一般に、式(I)の化合物は、以下に記載されるスキームに従い調製され得る。これらの反応の出発物質の情報源も記載されている。
【0072】
保護基は、当業者に既知であり、本明細書に記載される標準的な技術に従って、本発明の化合物の調製において付加又は除去され得る。保護基の使用は、Greene,T.W.and P.G.M.Wuts,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(2006),4th Ed.,Wileyに詳述されている。保護基はまた、Wang樹脂又は2-クロロトリチル-クロリド樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
【0073】
本発明の化合物のそのような保護された誘導体は、そのような薬理学的活性を有し得ないが、それらは、哺乳動物に投与され、その後、体内で代謝されて、薬理学的に活性である本発明の化合物を形成し得ることも、当業者によって理解されるであろう。
【0074】
遊離塩基又は酸形態で存在し得る、調製されるように以下に記載される化合物の全ては、適切な無機又は有機塩基又は酸で処理することによって、それらの薬学的に許容される塩に変換され得る。以下に調製される化合物の塩は、標準的な技術によってそれらの遊離塩基又は酸形態に変換され得る。本発明の化合物の全ての多形、非晶質形態、無水物、水和物、溶媒和物、及び塩は、本発明の範囲内であることが意図されることが理解される。更に、酸又はエステル基を含有する本発明の全ての化合物は、それぞれ、当業者に既知の方法又は本明細書に記載の方法によって、対応するエステル又は酸に変換することができる。
【0075】
これらの化合物の多くの調製の一般的な表現は、スキーム1に以下に示される。化合物は、分子の様々な成分のカップリング:ハロ置換化合物3(又は2’)とボロン酸又はボレート化合物2(又は3’)との鈴木カップリングによって調製される。更なる反応は、本発明の化合物の合成を提供するために必要であっても必要でなくてもよい。本発明の特定の化合物の調製物を、以下のスキームに示す。
【化16】
【0076】
アリールアリールカップリング反応では、ハロゲンは、ヨード、ブロモ、又はクロロ、好ましくはブロモ又はヨードであり得る。この方法では、ハロゲン置換は、鈴木カップリング反応条件を使用してアリール置換に変換され得る。この方法の条件は、A.SuzukiがModern Arene Chemistry 2002,53-106の「The Suzuki reaction with arylboron compounds in arene chemistry」と題する論文でレビューした多くの出版物に開示されている。この反応を実施する際に、鈴木反応において従来の好適な条件のうちのいずれかを利用することができる。一般に、鈴木カップリング反応は、この反応のために任意の従来の有機溶媒を利用するパラジウム触媒及び弱い無機又は有機塩基などの遷移金属触媒の存在下で行われる。好ましい有機溶媒の中には、極性非プロトン性溶媒がある。任意の従来の極性非プロトン性溶媒を、本発明の化合物の調製に利用することができる。好適な溶媒は、通常、特に高沸点溶媒、例えば、ジメトキシエタンである。弱い無機塩基は、炭酸カリウム又は炭酸セシウムなどの炭酸塩又は炭酸水素塩であり得る。有機塩基は、トリエチルアミンなどのアミンであり得る。
【化17】
【0077】
具体的には、他のスピロオキシンドール中間体7は、スキーム2に示されるように合成される。シクリル又はヘテロシクリル置換エステル5は、ジイソプロピルアミドリチウムなどであるが、これらに限定されない強塩基で、無水溶媒、例えば、テトラヒドロフランなどであるが、これらに限定されない低温で処理され、出発物質4と反応し、出発物質4は、市販されているか、又は中間体6を提供するための文献に記載された方法に従って当業者によって調製される。中間体6は、鉄などであるが、これらに限定されない還元試薬によって還元され、オキシンドール化合物7を原位置で提供するために環化する対応するアミノ中間体を得る。したがって、化合物7は、N,N-ジメチルホルムアミド又はテトラヒドロフランなどの極性溶媒中で、炭酸カリウム又は水素化ナトリウムなどであるが、これらに限定されない塩基の存在下で、アルキル化試薬でN-アルキル化されて、スピロオキシンドール中間体8を生成する。
【化18】
【0078】
具体的には、本発明における式(I)の化合物は、スキーム3に示されるように合成することができる。市販の5-ブロモ-2-クロロ-3-ニトロ-ピリジン(9)は、水素化ナトリウムなどであるが、これらに限定されない強力な塩基の存在下で、求核剤XH(10)と反応して、中間体11を得る。パラジウム触媒条件下では、ホウ酸塩12を調製することができ、次いで、スピロ中間体8と反応させて、クロスカップリング生成物13を得る。化合物13のニトロ基は、鉄などであるが、これらに限定されない還元試薬を使用してアミノ基に還元され、中間体14を得る。異なる塩化スルホニル(15)との14の反応は、式(I)の化合物の合成をもたらす。
【化19】
【0079】
具体的には、本発明における式(I)の化合物も、スキーム4に示されるように合成することができる。化合物11のニトロ基は、鉄などであるが、これらに限定されない還元試薬を使用してアミノ基に還元され、中間体16を得る。16と異なる塩化スルホニル(15)との反応は、パラジウム触媒作用下で対応するホウ酸塩18に変換されるスルホンアミド中間体17を得る。ホウ酸塩18は、鈴木反応条件下でハロ化合物8と結合して、式(I)の化合物を得ることができる。
【0080】
スキーム3及びスキーム4では、クロスカップリング化合物は、例えば、スキーム5に示されるように、ハロゲン及びボロネート/ボロン酸置換パターンを逆転させた成分との鈴木カップリング化学を使用しても合成可能である。
【化20】
【0081】
具体的には、本発明における式(I)の化合物も、スキーム5に示されるように合成することができる。ハロ化合物8は、パラジウム触媒作用下で対応するホウ酸塩19に変換することができる。ホウ酸塩19は、鈴木反応条件下でハロ化合物17と結合して、式(I)の化合物を得ることができる。
【0082】
(ii)免疫チェックポイント阻害剤
本明細書に開示される併用がん療法は、1つ以上の免疫療法剤を更に含む。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイントは、自己免疫又は過剰な免疫反応を最小限に抑えるために免疫反応を下方制御する免疫系の調節因子である。例示的な阻害免疫チェックポイントとしては、A2AR受容体、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADPHオキシダーゼアイソフォーム2(NOX2)、プログラミング死-1受容体(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7(SIGLEC7)、及びシアル酸結合免疫グロブリン型レクチン9(SIGLEC9)が挙げられる。阻害チェックポイント分子(例えば、本明細書に開示されるもの)をブロックする薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤として知られている。そのような薬剤は、免疫細胞機能(例えば、T細胞活性)をブロック又は低下させるシグナルを抑制することができ、それによって、がん細胞などの疾患細胞に対する免疫反応を増強する。
【0083】
本明細書に開示される併用がん療法に使用するための免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に開示される阻害性チェックポイント分子のうちのいずれかをブロックする薬剤であり得る。チェックポイント阻害剤は、抗体、阻害性チェックポイント受容体の可溶性リガンド、又は小分子阻害剤であり得る。例示的なチェックポイント阻害剤を、下の表1に提供する。
【表1】
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、例えば、CTLA-4に特異的な抗体(抗CTLA-4抗体)を標的とする。
【0085】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1相互作用によって媒介されるシグナル伝達経路を阻害する任意の薬剤であり得るPD1アンタゴニストである。いくつかの実施例では、PD1アンタゴニストは、抗PD1抗体であり得る。他の実施例では、PD1アンタゴニストは、抗PD-L1抗体であり得る。
【0086】
抗体(複数の形態で互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する「抗体」、例えば、抗PD1又は抗PD-L1抗体という用語は、無傷(例えば、完全長)のポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖抗体(scFv)、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)、単一ドメイン抗体(例えば、Vのみの抗体)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、及び共有結合修飾抗体を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構成も包含する。抗体、例えば、抗ガレクチン-9抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。
【0087】
典型的な抗体分子は、通常、抗原結合に関与する重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含む。V及びV領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)としても知られている超可変性の領域に更に細分化することができ、「フレームワーク領域」(「FR」)として知られているより保存されている領域が散在する。各V及びVは、典型的には、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、及び/又は接触の定義により、当該技術分野において既知の方法論を使用して正確に特定することができるが、これらは全て、当該技術分野において周知である。例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Chothia et al.,(1989)Nature 342:877、Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917、Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948、及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk and bioinf.org.uk/absも参照のこと)。
【0088】
いくつかの実施形態では、併用療法で使用するための免疫チェックポイント阻害剤は、上の表1に列挙される抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブ若しくはペムブロリズマブ)、又はその機能的バリアントであり得る。他の実施形態では、併用療法で使用するための免疫チェックポイント阻害剤は、上の表1に列挙される抗PD-L1抗体(例えば、REGN3504若しくはアテゾリズマブ)又はその機能的バリアントであり得る。そのような機能的バリアントは、構造的にも機能的にも、参照抗体(例えば、上の表1に列挙されているもの)と実質的に類似している。機能的バリアントは、参照抗体と実質的に同じV及びV CDRを含む。例えば、それは、抗体の全CDR領域において最大8個(例えば、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、又は1個)のアミノ酸残基変異のみを含み得、実質的に同様の親和性(例えば、同じ順序でK値を有する)でチェックポイント分子(例えば、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1)の同じエピトープに結合する。いくつかの場合において、機能的バリアントは、参照抗体と同じ重鎖CDR3、及び任意選択的に、例示的な抗体と同じ軽鎖CDR3を有し得る。代替的又は追加的に、機能的バリアントは、参照抗体と同じ重鎖CDR2を有し得る。かかる機能的バリアントは、参照抗体のVと比較して、重鎖CDR1のみにCDRアミノ酸残基の変異を有するV断片を含み得る。いくつかの実施例では、抗体は、参照抗体と同じV CDR3、及び任意選択的に同じV CDR1又はVL CDRを有するV断片を更に含み得る。
【0089】
代替的又は追加的に、アミノ酸残基変異は、保存的アミノ酸残基置換であり得る。本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷又はサイズ特性を変化させないアミノ酸置換を指す。バリアントは、当業者に既知のポリペプチド配列を改変するための方法、例えば、かかる方法をコンパイルする参考文献に見出される方法、例えば、分子クローニング:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkの現行のプロファイルに従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換には、(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる。
【0090】
(iii)放射線療法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される併用がん療法のうちのいずれかは、放射線療法を含み得る。放射線療法(radiotherapy)(放射線療法(radiation therapy)とも呼ばれる)は、イオン化放射線を使用してがん細胞を制御する又は死滅させる療法である。
【0091】
放射線療法は、例えば、放射性核種(例えば、β発光放射性核種、α発光放射性核種、又はγ線発光放射性核種)、電子捕捉放射性核種、抗体放射性核種コンジュゲート、又は別の標的放射性核種コンジュゲートとの外部、内部、近接照射療法、又は全身曝露を含み得る。
【0092】
例示的なβ発光放射性核種としては、32リン、67銅、77臭素、89ストロンチウム、90イットリウム、105ロジウム、131ヨウ素、137セシウム、149プロメテウム、153サマリウム、166ホルミウム、177ルテチウム、186レニウム、188レニウム、又は199ゴールドが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なα発光放射性核種としては、211アスタチン、213ビスマス、223ラジウム、225アクチニウム、又は227トリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なγ線放射性核種としては、192イリジウムが挙げられる。
【0093】
例示的な電子捕捉放射性核種としては、67ガリウム、103パラジウム、又は125ヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
例示的な抗体放射性核種コンジュゲートとしては、90Y-イブリツモマブチウセタン、131I-トシツモマブ、225Ac-リンツズマブサテトラキセタン、227Th-アネツマブコリキセタン、90Y-エピツモマブシツキセタン、90Y-クリバツズマブテトラキセタン、177Lu-リロトマブサテトラキセタン、90Y-ロソパタマブテトラキセタン、90Y-タバツキシマブバルズキセタン、又は90Y-タカツズマブテトラキセタンが挙げられるが、これらに限定されない。追加の標的化放射性核種コンジュゲートとしては、131I-PSMA、90Y-PSMA、177Lu-PSMA、又は177Lu-サトレオチドテトラキセタンが挙げられる。いくつかの場合において、抗体放射性核種コンジュゲートは、併用がん療法に使用することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される放射線療法は、X線(光子)、60コバルト又は他の放射性同位体からのガンマ線、中性子、電子、陽子、炭素イオン、ヘリウムイオン、及び他の荷電粒子による外部ビーム放射線療法を含み得る。放射線療法には、ガンマ線、アルファ粒子、ベータ粒子、オージェ電子、又は32リン、67銅、77臭素、89ストロンチウム、90イットリウム、105ロジウム、131ヨウ素、137セシウム、149プロメテウム、153サマリウム、166ホルミウム、177ルテチウム、186レニウム、188レニウム、199ゴールド、211アスタチン、213ビスム、223ラジウム、225アクチニウム、若しくは227トリウム、192イリジウム、67ガリウム、103パラジウム、125ヨウ素、及び他の放射性同位体(例えば、192イリジウム、125ヨウ素、137セシウム、103パラジウム、32リン、90イットリウム、67ガリウム、211アスタチン、若しくは223ラジウム)を含む同位体からの他の種類の放射性粒子を放出する近接照射療法及び放射線医薬も含まれる。放射線療法には、131ヨウ素、90イットリウム、225アクチニウム、211アスタチン、67ガリウム、177ルテチウム、227トリウム、及び他の放射性同位体を含む放射性同位体にコンジュゲートされた抗体又は小分子を用いた放射免疫療法(RIT)も含まれる。
【0096】
B.併用がん療法
本明細書に開示される併用がん療法は、本明細書に開示される式(I)の少なくとも1つの化合物(例えば、化合物568、569、570、若しくは574)、又はその薬学的に許容される塩(例えば、メシル酸塩)、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、及び任意選択的に放射線療法を含む。いくつかの場合において、治療剤のうちの少なくとも2つ(例えば、3つの治療剤の全て)を、連続した方法で対象に投与することができる。いくつかの場合において、治療剤のうちの少なくとも2つ(例えば、3つの治療剤の全て)を、同時に対象に投与され得る。いくつかの実施例では、式(I)の化合物及び放射線療法は、同じ日に対象に与えられ得、チェックポイント阻害剤は、化合物及び放射線療法の投与から少なくとも1日後に対象に与えられ得る。
【0097】
(i)薬学的組成物
本明細書に開示されるがん療法を実施するために、式(I)の化合物、免疫チェックポイント阻害剤、又は放射線治療薬のうちのいずれかも、薬学的組成物中に製剤化することができる。「薬学的組成物」は、本明細書に開示される治療剤のうちのいずれかの製剤、及び治療剤を哺乳動物、例えばヒトに送達するために当該技術分野で一般的に許容される培地を指す。そのような培地は、そのための全ての薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。「許容される」とは、担体が、組成物の活性成分と適合しなければならず(好ましくは、活性成分を安定させることができる)、治療される対象に有害でないことを意味する。緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)は、当該技術分野で周知である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照されたい。
【0098】
本明細書に開示される併用がん療法において使用される薬学的組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を含むことができる。(Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hoover)。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギニン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシンなどのアミノ酸、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストランを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0099】
いくつかの実施例では、本明細書に記載される薬学的組成物は、本明細書に開示される治療剤(例えば、式(I)の化合物、又は本明細書に開示される抗体若しくはコード核酸)を含有するリポソームを含み、これは、Epstein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985)、Hwang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980)、並びに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されるような当該技術分野に既知の方法によって調製され得る。循環時間が増大したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸着法によって生成することができる。リポソームを、定義された孔径のフィルターを通して押し出して、所望の直径を有するリポソームを得る。
【0100】
治療剤(例えば、式(I)の化合物、チェックポイント阻害抗体のうちのいずれか、又はコード核酸)はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル、それぞれ、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルションに捕捉され得る。そのような技法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)を参照されたい。
【0101】
他の実施例では、本明細書に記載される薬学的組成物は、持続放出形式で製剤化され得る。持続放出調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及び7エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用微粒子)、スクロースアセテートイソブチレート、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0102】
インビボ投与に使用される薬学的組成物は、無菌でなければならない。これは、例えば、無菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成される。治療抗体組成物は、一般に、無菌アクセスポート、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルを有する容器に入れられる。
【0103】
本明細書に記載される薬学的組成物は、経口、非経口、若しくは直腸投与、又は吸入若しくは吹き込みによる投与のための、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液若しくは懸濁液、又は坐剤などの単位剤形であり得る。
【0104】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主な活性成分を、薬学的担体、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はゴムなどの従来の錠剤成分、及び他の薬学的希釈剤、例えば、水と混合して、本発明の化合物の均一な混合物、又はその非毒性の薬学的に許容される塩を含有する固体予備製剤組成物を形成することができる。これらの予備製剤組成物を均一なものとして言及する場合、活性成分が組成物全体に均一に分散され、組成物が、錠剤、丸薬、及びカプセルなどの等しく有効な単位剤形に容易に細分化され得ることを意味する。次いで、この固体予備製剤組成物は、本発明の活性成分を0.1~約500mg含有する上記のタイプの単位剤形に細分化される。新規の組成物の錠剤又は丸薬は、コーティングされるか、又はそうでなければ複合されて、長期作用の利点を提供する剤形を提供することができる。例えば、錠剤又は丸薬は、内部投与量及び外部投与量成分を含み得、後者は、前者を覆うエンベロープの形態である。これら2つの成分は、胃の中での崩壊に耐え、内部成分が十二指腸へ通過するか又はその放出を遅延させることができるように作用する腸溶性層によって分離され得る。様々な材料は、このような腸溶性層又はコーティングに使用することができ、このような材料は、多数のポリマー酸、及びセラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの材料とのポリマー酸の混合物を含む。
【0105】
好適な表面活性剤としては、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80、又は85)及び他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80、又は85)などの非イオン性剤が挙げられる。表面活性剤を有する組成物は、0.05~5%の表面活性剤を好都合に含み、0.1~2.5%であり得る。必要に応じて、他の成分、例えば、マンニトール又は他の薬学的に許容されるビヒクルを添加し得ることが理解されるであろう。
【0106】
好適なエマルションは、市販の脂肪エマルション、例えば、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)、及びLipiphysan(商標)を使用して調製してもよい。活性成分は、予め混合されたエマルション組成物中に溶解されてもよく、又は代替的に、油(例えば、大豆油、紅花油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、又はアーモンド油)並びにリン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質、又は大豆レシチン)及び水と混合したときに形成されたエマルション中に溶解されてもよい。例えば、グリセロール又はグルコースの他の成分を添加して、エマルションの張度を調節することができることが理解されるであろう。好適なエマルションは、典型的には、最大20%、例えば、5~20%の油を含む。脂肪エマルションは、0.1~1.0μm、特に0.1~0.5μmの脂肪液滴を含み得、5.5~8.0の範囲のpHを有する。
【0107】
吸入又は吹き入れのための薬学的組成物としては、薬学的に許容される水溶液若しくは有機溶媒、又はこれらの混合物、及び粉末中の溶液及び懸濁液が挙げられる。液体又は固体組成物は、上記に記載されるような好適な薬学的に許容される賦形剤を含有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、局所的又は全身的な効果のために、経口又は経鼻呼吸器経路によって投与される。
【0108】
好ましくは、無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接呼吸されてもよく、又は噴霧装置は、フェイスマスク、テント、又は断続的な陽圧呼吸器に取り付けられ得る。溶液、懸濁液、又は粉末組成物は、好ましくは経口的又は経鼻的に、製剤を適切な方法で送達するデバイスから投与され得る。
【0109】
(ii)がん療法
いくつかの実施形態では、1つ以上の式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、若しくは574)又はその薬学的に許容される塩(例えば、メシル酸塩)、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体若しくは抗PD-L1抗体などのPD1アンタゴニスト)、及び任意選択的に、本明細書に開示されるものとして1つ以上の放射線剤を含む、併用がん治療方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、若しくは574)又はその薬学的に許容される塩(例えば、メシル酸塩)、本明細書に開示されるものとしての1つ以上の放射線剤、及び任意選択的に1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体若しくは抗PD-L1抗体などのPD1アンタゴニスト)を含む、併用がん治療方法が、本明細書で提供される。具体的な例では、本明細書に開示される併用がん治療は、1つ以上の式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、若しくは574)又はその薬学的に許容される塩(例えば、メシル酸塩)、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体若しくは抗PD-L1抗体などのPD1アンタゴニスト)、及び本明細書に開示するものとしての1つ以上の放射線剤を含む。
【0110】
式(I)の化合物は、併用療法のうちのいずれかにおいて使用される場合、チェックポイント阻害剤及び任意選択的に放射線療法の有効性を増加させ得る。いくつかの場合において、他の薬物療法に関連する有害事象の頻度及び/又は重症度を低減させ得る、他の治療の用量を低減させることを可能にする。例えば、放射線療法(例えば、経口又は胃腸粘膜炎、皮膚炎、肺炎、又は疲労)の副作用は、本発明の化合物を含まない標準的な全用量放射線療法を受けている患者と比較して、本発明の化合物を含む併用療法及び低用量放射線療法を受けている患者において低減させ得る(例えば、有害事象の発生率は、少なくとも1%、5%、10%、又は20%低減させ得る)。更に、本発明の化合物を含まない標準的な全用量放射線療法を受けている患者と比較して、本発明の化合物及び低用量放射線療法を含む併用療法を受けている患者において低減され得る(例えば、有害事象の発生率は、少なくとも1%、5%、10%、又は20%低減させ得る)他の有害事象は、放射線療法の晩期影響、例えば、放射線誘発性肺線維症、心臓損傷、腸閉塞、神経損傷、血管損傷、リンパ浮腫、脳壊死、又は放射線誘発性がんであり得る。同様に、本化合物が別の抗がん薬(例えば、本明細書に記載されるもの)との併用療法で投与される場合、併用療法は、他の抗がん薬の用量が低下しても、同じ又は更には増加した腫瘍細胞死を引き起こし得る。したがって、他の抗がん剤の低減した投与量は、他の抗がん剤によって引き起こされる有害事象の重症度を低減させ得る。
【0111】
式(I)の化合物を含む治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む治療の前に、対象に実施され得る。代替的に、式(I)の化合物を含む治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む治療の後に、対象に実施され得る。他の場合において、式(I)の化合物を含む治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む治療と同時に対象に実施され得る。
【0112】
併用がん療法が放射線療法を更に含む場合、放射線療法は、式(I)の化合物を含む治療及び/又は免疫チェックポイント阻害剤を含む治療の前、後、又は同時に実施され得る。
【0113】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物を投与することを含み、対象は、免疫チェックポイント阻害剤で治療されているか、又は現在、免疫チェックポイント阻害剤を含む抗腫瘍治療を受けている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、治療を必要とする対象に、有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含み、その対象は、式(I)の化合物で治療されているか、又は現在、式(I)の化合物を含む抗腫瘍治療を受けている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、治療を必要とする対象に、(i)有効量の式(I)の化合物、及び(ii)有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む。本明細書に開示される方法のうちのいずれかは、対象に、有効量の放射線剤を投与することを更に含み得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、単独で、又は1つ以上の他の活性剤と組み合わせて、対象に、治療効果を与えるために必要な各活性剤の量を指す。治療効果を達成した抗体の量の決定は、当業者には明らかであろう。有効量は、当業者によって認識されるように、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別、及び体重を含む個々の患者パラメータ、治療の期間、同時治療の性質(もしあれば)、特定の投与経路、及び医療従事者の知識及び専門知識内の同様の因子に応じて変化する。これらの因子は、当業者に周知であり、日常的な実験以外で対処することはできない。一般に、個々の成分又はそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断による最高安全用量が使用されることが好ましい。
【0115】
半減期などの経験的考慮事項は、一般に、投与量の決定に寄与する。例えば、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合する抗体は、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系によって攻撃されるのを防ぐために使用され得る。投与頻度は、治療過程にわたって決定及び調整され得、一般的に、必ずしもではないが、標的疾患/障害の治療及び/又は抑制及び/又は改善及び/又は遅延に基づいている。代替的に、抗体の持続的連続放出製剤は、適切であり得る。持続放出を達成するための様々な製剤及びデバイスは、当該技術分野において既知である。
【0116】
一実施例では、本明細書に記載される式(I)の化合物、免疫チェックポイント阻害剤、又は放射線剤の投与量は、治療剤の1つ以上の投与を受けた個体において経験的に決定され得る。個体には、アゴニストの増分投与量が与えられる。アゴニストの有効性を評価するために、疾患/障害の指標を、追跡することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、1日1回又は1日2回、対象に、経口投与され得る。市販のチェックポイント阻害剤(例えば、上の表1に列挙されているもの)、及び任意選択的に市販の放射線剤を、式(I)の化合物と併用する場合、投与量及び投与スケジュールは、通常の業務に従い得る。いくつかの場合において、併用療法で使用される各治療剤の用量は、単剤療法の投与量よりも低くてもよい。
【0118】
本開示の目的のために、本明細書に記載される治療剤の適切な投与量は、使用される特定の薬剤(又はその組成物)、疾患/障害のタイプ及び重症度、薬剤が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の臨床歴及びアゴニストに対する反応、並びに主治医の裁量に応じて異なる。典型的には、臨床医は、所望の結果を達成する投与量に達するまで、抗体を投与する。いくつかの実施形態では、所望の結果は、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫反応の増加である。投与量が所望の結果をもたらしたかどうかを決定する方法は、当業者には明らかであろう。1つ以上の治療剤の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的であるか予防的であるか、及び当業者に既知の他の因子に応じて、連続的又は断続的であり得る。抗体の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、又は一連の間隔を置いた用量であってもよく、例えば、標的疾患又は障害の発症前、発症中、又は発症後のいずれかであってもよい。
【0119】
本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、標的疾患若しくは障害、疾患/障害の症状、又は疾患/障害に向かう素因を有する対象に、障害、疾患の症状、又は疾患若しくは障害に向かう素因を治癒する(cure)、治癒する(heal)、緩和する(alleviate)、緩和する(relieve)、変化させる(alter)、修復する、改善する(ameliorate)、改善する(improve)、又は影響を与える目的で、1つ以上の活性剤を含む組成物を適用又は投与することを指す。
【0120】
標的疾患/障害を緩和することは、疾患の発達若しくは進行を遅らせること、又は疾患の重症度を低下させること、又は生存期間を延長することを含む。疾患の緩和又は生存期間の延長は、必ずしも治癒結果を必要としない。本明細書に使用される場合、標的疾患又は障害の発症を「遅延させる」とは、疾患の進行を延期する、妨害する、遅延する(slow)、遅延する(retard)、安定化する、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療されている個体に応じて、様々な長さの時間であり得る。疾患の発症を「遅延させる」若しくは緩和する、又は疾患の発症を遅延させる方法は、方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠内で疾患の1つ以上の症状を発症する確率を低減させ、かつ/又は所与の時間枠内で症状の程度を低減させる方法である。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な結果を与えるのに十分な数の多くの対象を使用して、臨床研究に基づいている。
【0121】
疾患の「発症」又は「進行」は、疾患の初期兆候及び/又はそれに続く進行を意味する。疾患の発症は、当該技術分野で周知の標準的な臨床技術を使用して検出可能であり、評価することができる。しかしながら、発症はまた、検出不可能であり得る進行を指す。本開示の目的のため、発症又は進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」には、発生、再発、及び発病が含まれる。本明細書で使用される場合、標的疾患又は障害の「発病」又は「発生」は、初期発病及び/又は再発を含む。
【0122】
本明細書に記載される方法によって治療される対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトであり得る。哺乳動物としては、農場動物、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、及びラットが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される方法によって治療される対象は、腫瘍学的疾患(がん)、例えば、前悪性腫瘍又は悪性腫瘍を有するか、有する疑いがあるか、又はその危険性があるヒト患者であり得る。いくつかの場合において、ヒト患者は、固形腫瘍又は血液がんを有し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、治療用のがんは、血液がん、例えば、白血病及びリンパ腫である。がんの非限定的な例としては、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性巨核性白血病、前骨髄性白血病、赤血球性白血病、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病、慢性好中球性白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及び濾胞性リンパ腫が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、治療用のがんは、固形腫瘍である。固形腫瘍の非限定的な例としては、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠腫、グリア芽腫、髄芽腫、又は上皮腫)、膀胱がん、乳がん、中枢神経系がん、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、消化管間質腫瘍、胃がん、頭頸部がん、口腔がん、口のがん、肝細胞がん、肺がん、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、上咽頭がん、神経芽細胞腫、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、唾液腺がん、肉腫、精巣がん、尿路上皮がん、外陰がん、及びウィルム腫瘍が挙げられる。好ましくは、本発明の方法は、肺がん、頭頸部がん、膵臓がん、直腸がん、グリア芽腫、肝細胞がん、胆管がん、転移性肝病変、黒色腫、骨肉腫、軟部肉腫、子宮内膜がん、子宮頸がん、前立腺がん、又はメルケル細胞がんの治療に使用される。
【0125】
なお更なる実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して治療されるがんの例は、転移及び転移性がんに限定されない。例えば、がんを治療するための本明細書に開示される方法及び使用は、原発腫瘍及び転移の両方の治療を伴ってもよい。
【0126】
標的がんを有する対象は、日常的な診察、例えば、臨床検査、臓器機能検査、CTスキャン、又は超音波検査によって同定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって治療される対象は、抗がん療法、例えば、化学療法、放射線療法、免疫療法、又は手術を受けた、又は受けているヒトがん患者であり得る。
【0127】
そのような標的疾患/障害のうちのいずれかを有することが疑われる対象は、疾患/障害の1つ以上の症状を示し得る。疾患/障害のリスクがある対象は、その疾患/障害のリスク因子のうちの1つ以上を有する対象であり得る。
【0128】
医学分野の当業者に既知の従来の方法は、治療される疾患のタイプ又は疾患の部位に応じて、対象に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、免疫チェックポイント阻害剤、及び任意選択的に放射線剤を投与するために使用することができる。これらの治療剤のうちのいずれも、他の従来の経路を介して投与され、例えば、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、経鼻的に、口腔的に、膣的に、又は移植されたリザーバを介して投与され得る。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、病変内、及び頭蓋内の注射又は注入技術を含む。加えて、それは、例えば、1、3、若しくは6カ月のデポ注射可能な又は生分解可能な材料及び方法を使用して、注射可能なデポ投与経路から、対象に投与され得る。いくつかの実施例では、薬学的組成物は、眼内又は硝子体内に投与される。
【0129】
注射可能な組成物は、様々な担体、例えば、植物油、ジメチルアクトアミド(dimethylactamide)、ジメチホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)を含有してもよい。静脈内注射の場合、水溶性抗体は、滴加方法によって投与され得、それにより、抗体及び生理学的に許容される賦形剤を含有する薬学的製剤が、注入される。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー溶液、又は他の好適な賦形剤を含み得る。筋肉内製剤、例えば、抗体の好適な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、又は5%グルコース溶液などの薬学的賦形剤に溶解して、投与することができる。
【0130】
一実施形態では、治療剤のうちのいずれかを、部位特異的又は標的化局所送達技術を介して投与することができる。部位特異的又は標的局所送達技術の例としては、抗体又は局所送達カテーテルの様々な移植可能なデポ供給源、例えば、注入カテーテル、留置カテーテル、又は針カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャント及びステント、又は他の移植可能デバイス、部位特異的担体、直接注射、又は直接適用が挙げられる。例えば、PCT公開第00/53211号及び米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0131】
本明細書に記載される方法で使用される特定の投与量レジメン、すなわち、用量、タイミング、及び反復は、特定の対象及びその対象の病歴に応じて異なる。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される併用療法は、対象(例えば、ヒト患者)の腫瘍サイズを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%縮小してもよく、又は(例えば、治療開始時の腫瘍サイズに対して、又は本発明の化合物の代わりにプラセボを受ける参照対象に対して)腫瘍を除去してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象の腫瘍負荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少させてもよく、又は(例えば、治療開始時の腫瘍負荷に対して、又は本発明の化合物の代わりにプラセボを受ける参照対象に対して)腫瘍を除去してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象の平均生存時間を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、又は200%(例えば、本発明の化合物の代わりにプラセボを受ける参照対象と比較して)増加させてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象の疼痛又は他の症状をより長い平均時間、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、又は200%(例えば、本発明の化合物の代わりにプラセボを受ける参照対象と比較して)緩和する放射線療法又は薬物療法の能力を増加させてもよい。
【0133】
標的疾患/障害に対する治療有効性は、当該技術分野において周知の方法によって評価することができる。
【0134】
II.治療用途のためのキット
本開示はまた、本明細書に記載されるような血液がん又は固形腫瘍などの標的がんを治療又は緩和するために使用するためのキットも提供する。そのようなキットは、本明細書に開示される1つ以上の式(I)の化合物(例えば、化合物568、569、570、若しくは574)又はその薬学的に許容される塩(例えば、メシル酸塩)を含む1つ以上の容器と、PD1アンタゴニスト(例えば、上の表1に列挙されるもの)などの1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む1つ以上の容器と、を含むことができる。任意選択的に、キットは、放射線剤を含む容器を更に含み得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかに従って使用するための説明書を含むことができる。含まれる説明書は、本明細書に記載されるような標的がんを治療し、発病を遅らせ、又は緩和するための、式(I)の化合物及び免疫チェックポイント阻害剤、並びに任意選択的に放射線剤の投与の説明を含むことができる。キットは、その個体が標的がんを有するかどうかを特定することに基づいて、治療に好適な個体を選択すること、例えば、当該技術分野で既知の診断方法を適用することの説明を更に含み得る。更に他の実施形態では、説明書は、標的がんのリスクがある個体に治療剤を投与することの説明を含む。
【0136】
式(I)の化合物、免疫チェックポイント阻害剤、及び任意選択的に放射線剤の使用に関する説明書は、概して、意図される治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)又はサブユニット用量であり得る。本発明のキットに供給される説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた説明書であるが、機械可読の説明書(例えば、磁気又は光学記憶ディスクに運ばれる説明書)も許容される。
【0137】
ラベル又は添付文書は、組成物が、がん又は免疫障害(例えば、自己免疫疾患)などの疾患を治療し、発病を遅らせ、及び/又は軽減するために使用されることを示す。本明細書に記載される方法のうちのいずれかを実践するための説明書が、提供されてもよい。
【0138】
本明細書に開示されるキットは、好適な包装である。好適な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密閉されたMylar又はビニール袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、鼻腔内投与デバイス(例えば、アトマイザー)又はミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせて使用するための包装もまた、企図されている。キットは、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。容器はまた、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載されるような抗CD19抗体である。
【0139】
キットは、任意選択的に、バッファー及び解釈情報などの追加の構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上の又は容器に不随したラベル又は添付文書と、を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0140】
一般的な技術
本開示の実施は、別段の指示がない限り、(組換え技術を含む)分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を利用し、それは、当該技術分野の技能の範囲内にある。そのような技術は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introuction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti andJ.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985
【数1】
、Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984
【数2】
、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986
【数3】
、Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986
【数4】
、及びB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubel et al.(eds.)などの文献において完全に説明されている。
【0141】
更に詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるものであり、本開示の残りの部分を何ら限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で引用される目的又は主題に関して、参照により組み込まれる。
【0142】
実施例1:例示的な式(I)の化合物の調製及び特徴付け
例示的な式(I)の化合物568、569、570、又は574を、以下のように合成した。本明細書に提供される合成スキームも参照されたい。
【0143】
メチル1-(6-ブロモ-7-フルオロ-3-ニトロキノリン-4-イル)シクロブタン-1-カルボキシレート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化21】
【0144】
テトラヒドロフラン(5.00mL)中のメチルシクロブタンカルボキシレート(0.73g、6.38mmol)の溶液を、-78℃で、窒素雰囲気下で、テトラヒドロフラン(45.0mL)中の新たに調製したジイソプロピルアミドリチウム(6.38mmol)で1時間処理し、続いて2分間にわたって6-ブロモ-4-クロロ-7-フルオロ-3-ニトロキノリン(1.50g、4.91mmol)を少量ずつ添加した。周囲温度で更に1時間撹拌した後、反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液(60.0mL)でクエンチし、水(120mL)で希釈した。得られた混合物を、酢酸エチル(3×60.0mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(2×50.0mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の1%~2%の酢酸エチルで溶出して、無色固体として表題化合物(240mg、13%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ9.14(s,1H),8.20(d,J=7.2 Hz,1H),7.90(d,J=8.8 Hz,1H),3.84(s,3H),3.12-2.99(m,1H),2.58-2.48(m,3H),1.91-1.83(m,1H),1.45-1.27(m,1H);MS:[(M+1)]=383.17,385.17。
【0145】
8’-ブロモ-7’-フルオロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-2’(3’H)-オン:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化22】
【0146】
酢酸(10.0mL)中のメチル1-(6-ブロモ-7-フルオロ-3-ニトロキノリン-4-イル)シクロブタン-1-カルボキシレート(240mg、0.63mmol)及び鉄粉末(350mg、6.26mmol)の混合物を、周囲温度で18時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(5×100mL)で洗浄した。濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の1%~2%のメタノールで溶出し、淡黄色固体として表題化合物(100mg、50%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 10.75(s,1H),8.68(s,1H),8.52(d,J=7.5 Hz,1H),7.98(d,J=10.1 Hz,1H),2.90-2.75(m,2H),2.50-2.37(m,4H);MS:[(M+1)]=321.15,323.15。
【0147】
8’-ブロモ-7’-フルオロ-3’-メチルスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-2’(3’H)-オン:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化23】
【0148】
N,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)中の8-ブロモ-7-フルオロ-2,3-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1-ピロロ[2,3-c]キノリン]-2-オン(100mg、0.31mmol)の溶液を、窒素雰囲気下で、0℃で30分間、水素化ナトリウム(19.9mg、0.50mmol、鉱油中に60%分散)で処理し、続いてヨードメタン(66.3mg、0.47mmol)を添加した。周囲温度で、更に40分間撹拌した後、反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(10.0mL)によってクエンチした。得られた混合物を、水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3×30.0mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(2×20.0mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、分取TLC(DCM/MeOH=20/1、v:v)によって精製して、無色固体として表題化合物(102mg、98%)を得た:H NMR(400MHz,CDOD)δ 8.78(s,1H),8.61(d,J=7.4 Hz,1H),7.85(d,J=9.8 Hz,1H),3.36(s,3H),2.94-2.85(m,2H),2.72-2.61(m,3H),2.56-2.48(m,1H);MS:[(M+1)]=335.00,337.00。
【0149】
tert-ブチルN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(プロパン-2-イル)カルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化24】
【0150】
メタノール(300mL)中の2-[(プロパン-2-イル)アミノ]エタン-1-オール(40.0g、388mmol)の溶液に、ジ-tert-ブチルジカーボネート(127g、586mmol)を0℃で滴加した。得られた混合物を、周囲温度で2時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の0%~4%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮して、無色油として表題化合物(65.0g、82%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ 4.17(s,1H),3.71(t,J=5.4 Hz,2H),3.30(t,J=5.4 Hz,2H),1.47(s,9H),1.12(d,J=6.8 Hz,6H)。
【0151】
tert-ブチルN-[2-[(5-ブロモ-3-ニトロピリジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-(プロパン-2-イル)カルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化25】
【0152】
無水テトラヒドロフラン(250mL)中のtert-ブチルN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(プロパン-2-イル)カルバメート(15.4g、75.8mmol)の溶液を、窒素雰囲気下で、0℃で1時間、水素化ナトリウム(3.30g、82.1mmol、鉱油中に60%w/w分散)で処理し、続いて、0℃で2分間、5-ブロモ-2-クロロ-3-ニトロピリジン(15.0g、63.2mmol)を添加した。25℃で更に2時間後、反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(50.0mL)でクエンチし、水(500mL)で希釈した。水層を、酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(2×100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の1%~18%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮して、淡黄色油として表題化合物(18.0g、71%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ 8.42(d,J=2.4 Hz,1H),8.37(d,J=2.4 Hz,1H),4.57(t,J=6.3 Hz,2H),4.32(s,1H),3.51(t,J=6.3 Hz,2H),1.47(s,9H),1.15(d,J=6.9 Hz,6H);MS:[(M+1)]=404.00,406.00。
【0153】
tert-ブチルN-[2-[(3-アミノ-5-ブロモピリジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-(プロパン-2-イル)カルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化26】
【0154】
酢酸(150mL)中のtert-ブチルN-[2-[(5-ブロモ-3-ニトロピリジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-(プロパン-2-イル)カルバメート(15.0g、37.1mmol)の溶液に、周囲温度で、鉄粉末(20.7g、371mmol)を添加した。周囲温度で、更に1時間撹拌した後、得られた混合物を濾過し、濾過したケーキを、テトラヒドロフラン(4×100mL)で洗浄した。濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の20%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮して、無色固体として表題化合物(12.0g、86%)を得た:H NMR(400MHz,CDOD)δ 7.40(d,J=2.2 Hz,1H),7.04(d,J=2.2 Hz,1H),4.40(t,J=6.3 Hz,2H),4.25-3.99(m,1H),3.52(t,J=6.3 Hz,2H),1.46(s,9H),1.17(d,J=6.8 Hz,6H);MS:[(M+1)]=374.10,376.10。
【0155】
tert-ブチル(2-((5-ブロモ-3-(メチルスルホンアミド)ピリジン-2-イル)オキシ)エチル)(イソプロピル)カルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化27】
【0156】
ピリジン(400mL)中のtert-ブチルN-[2-[(3-アミノ-5-ブロモピリジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-(プロパン-2-イル)カルバメート(18.8g、50.3mmol)の溶液に、周囲温度で、塩化メタンスルホニル(8.63g、75.4mmol)を滴加した。周囲温度で6時間撹拌した後、得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の3%~25%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮し、オフカラーレス(off-colorless)固体として表題化合物(16.3g、72%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 9.41(s,1H),8.05(d,J=2.2 Hz,1H),7.79(d,J=2.2 Hz,1H),4.35(t,J=6.3 Hz,2H),4.15(s,1H),3.43(t,J=6.3 Hz,2H),3.11(s,3H),1.39(s,9H),1.09(d,J=6.8 Hz,6H);MS:[(M+1)]=452.00,454.00。
【0157】
tert-ブチル(2-((5-ブロモ-3-(エチルスルホンアミド)ピリジン-2-イル)オキシ)エチル)(イソプロピル)カルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化28】
【0158】
ピリジン(120mL)中のtert-ブチル(2-((3-アミノ-5-ブロモピリジン-2-イル)オキシ)エチル)(イソプロピル)カルバメート(5.00g、13.4mmol)の撹拌溶液に、エタンスルホニルクロリド(5.15g、40.1mmol)を、窒素雰囲気下で、周囲温度で滴加した。窒素雰囲気下で、周囲温度で6時間撹拌した後、得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の3%~25%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮して、淡黄色固体として表題化合物(3.78g、61%)を得た:H NMR(400MHz,CDOD)δ7.92(s,1H),7.87(s,1H),4.48(t,J=6.6 Hz,2H),4.25-4.20(m,1H),3.54(t,J=6.6 Hz,2H),3.13(t,J=7.3 Hz,2H),1.49(s,9H),1.35(t,J=7.4 Hz,3H),1.19(d,J=6.8 Hz,6H);MS:[(M+1)]=466.10,468.10。
【0159】
tert-ブチルN-[2-[(5-ブロモ-3-ヨードピリジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-イソプロピルカルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化29】
【0160】
無水テトラヒドロフラン(300mL)中の5-ブロモ-3-ヨードピリジン-2-オール(10.0g、33.3mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(11.4g、43.3mmol)、tert-ブチルN-(2-ヒドロキシエチル)-N-イソプロピルカルバメート(8.80g、43.3mmol)、及びジイソプロピルアゾジホルメート(8.80g、43.4mmol)を0℃で滴加した。得られた混合物を、窒素雰囲気下で、周囲温度で更に16時間撹拌した。得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の2%~10%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮し、無色油として表題化合物(14.0g、87%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ 8.14(s,2H),4.43(t,J=6.4 Hz,2H),4.38-3.96(m,1H),3.50(t,J=6.4 Hz,2H),1.49(s,9H),1.19(d,J=6.8 Hz,6H);MS:[(M+1)]=484.95,486.95。
【0161】
tert-ブチル(2-((5-ブロモ-3-((1-メチルエチル)スルホンアミド)ピリジン-2-イル)オキシ)エチル)(イソプロピル)カルバメート:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化30】
【0162】
トルエン(125mL)中のtert-ブチル(2-((5-ブロモ-3-ヨードピリジン-2-イル)オキシ)エチル)(イソプロピル)カルバメート(5.00g、10.3mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(1.80g、3.10mmol)及びプロパン-2-スルホンアミド(1.50g、12.4mmol)の混合物に、周囲温度で、リン酸三カリウム(10.9g、51.5mmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム-クロロホルム付加物(1.10g、1.10mmol)を添加した。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下で、100℃で48時間撹拌した。周囲温度に冷却した後、得られた混合物を濾過した。濾過ケーキを、酢酸エチル(3×20mL)で洗浄した。濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の1%~20%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮して、無色固体として表題化合物(1.90g、39%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.94(d,J=2.1 Hz,1H),7.89(d,J=2.2 Hz,1H),4.44(t,J=6.3 Hz,2H),4.11(s,1H),3.48(t,J=6.3 Hz,2H),3.24-3.30(m,1H),1.48(s,9H),1.41(d,J=6.8 Hz,6H),1.14(d,J=6.8 Hz,6H);MS:[(M+1)]=480.20,482.20。
【0163】
N-(5-ブロモ-2-[2-[(プロパン-2-イル)アミノ]エトキシ]ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化31】
【0164】
ジクロロメタン(5.00mL)中のtert-ブチルN-[2-[(5-ブロモ-3-メタンスルホンアミドピリジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-(プロパン-2-イル)カルバメート(3.00g、6.63mmol)の溶液に、周囲温度で、塩化水素(20.0mL、1,4-ジオキサン中に4M)で40分間処理した。得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(30.0mL)でpH=8に塩基性化した。得られた混合物を、酢酸エチル(6×200mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の1%~10%メタノールで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮し、無色固体として表題化合物(1.20g、50%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 7.68(d,J=2.3 Hz,1H),7.61(d,J=2.3 Hz,1H),5.75(s,1H),4.36(t,J=5.2 Hz,2H),3.19-3.12(m,1H),3.07(t,J=5.1 Hz,2H),2.84(s,3H),1.15(d,J=6.4 Hz,6H);MS:[(M+1)]=352.10,354.10。
【0165】
N-(5-(7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)プロパン-2-スルホンアミド(化合物568):
化合物568を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した:
【化32】
【0166】
1,4-ジオキサン(50.0mL)中のN-[5-ブロモ-2-[2-(イソプロピルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド(2.00g、5.26mmol)の溶液に、ビス(ピナコラート)ジボロン(4.01g、15.8mmol)、酢酸カリウム(2.06g、21.1mmol)、及びビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(0.34g、0.42mmol)を周囲温度で添加した。得られた混合物を、窒素雰囲気下で、90℃で3時間撹拌した。得られた混合物を周囲温度まで冷却し、続いて8-ブロモ-7-フルオロ-3-メチルスピロ[シクロブタン-1,1-ピロロ[2,3-c]キノリン]-2-オン(1.26g、3.76mmol)、水(12.5mL)、炭酸ナトリウム(0.80g、7.55mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.43g、0.38mmol)を添加した。得られた混合物を、窒素雰囲気下で、85℃で6時間撹拌した。周囲温度に冷却した後、得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、以下の条件で逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製した:カラム:球状C18、20~40μm、120g;移動相A:水(+10mM NHHCO);移動相B:アセトニトリル;流速:45mL/分;勾配(B%):5%、2分;5%~25%、8分;25%~39%、9分;39%、10分;39%~95%;3分;95%、2分;検出器:UV 254nm;Rt:21分。所望の生成物を含有する画分を回収し、減圧下で濃縮し、無色固体として表題化合物(1.66g、80%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.88(s,1H),8.35-8.31(m,2H),8.07(s,1H),7.99(s,1H),7.96(s,1H),4.55(br,1H),4.44(t,J=5.2 Hz,2H),3.35-3.30(m,4H),2.93-2.79(m,5H),2.55-2.38(m,4H),1.29(d,J=7.2 Hz,6H),1.02(d,J=6.0 Hz,6H);MS:[(M+1)]=556.30。
【0167】
N-(5-(7’-フルオロ-3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)-2-(2-(イソプロピルアミノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)プロパン-2-スルホンアミド塩化水素:
化合物568の塩酸塩を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した:
【化33】
【0168】
希釈した塩酸水溶液(392mL、3.14mmol、0.008M)及びアセトニトリル(79.0mL)中のN-(5-[7-フルオロ-3-メチル-2-オキソスピロ[シクロブタン-1,1-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8-イル]-2-[2-(イソプロピルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル)プロパン-2-スルホンアミド(1.66g、2.99mmol)の溶液を凍結乾燥させ、黄色の固体として表題化合物(1.76g、100%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.45(s,1H),9.02(br,2H),8.90(s,1H),8.40(s,1H),8.32(d,J=8.4 Hz,1H),8.16(s,1H),8.00(d,J=8.4 Hz,1H),4.65(t,J=4.4 Hz,2H),3.54-3.40(m,3H),3.31(s,3H),2.91(t,J=11.2 Hz,2H),2.55-2.45(m,5H),1.34-1.30(m,12H);MS:[(M+1)]=556.30。
【0169】
同様の方法で、又はパラジウム(II)カップルを、中間体CC108及びCC110で影響し、以下の化合物実施例569及び実施例570を得た。下の表2を参照されたい。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0170】
例示的な式(I)の化合物574を、以下のように合成した。本明細書に提供される合成スキームも参照されたい。そのMS:[(M+1)]+及び1H NMR特徴も、上の表2に提供される。
【0171】
1-(5-ブロモ-3-ニトロピリジン-2-イル)-N,N-ジメチルアゼチジン-3-アミン:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化34】
【0172】
テトラヒドロフラン(40.0mL)中のN,N-ジメチルアゼチジン-3-アミン塩酸塩(0.27g、2.08mmol)及び5-ブロモ-2-クロロ-3-ニトロピリジン(0.49g、2.08mmol)の撹拌溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.67g、5.19mmol)を周囲温度で添加した。得られた混合物を、3時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル中の3%~9%酢酸エチルで溶出した。所望の画分を回収し、減圧下で濃縮し、黄色固体として表題化合物(0.50g、59%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ8.37(d,J=2.2 Hz,1H),8.29(d,J=2.2 Hz,1H),4.20(ddd,J=10.0,7.0,1.2 Hz,2H),3.93(ddd,J=9.9,5.1,1.2 Hz,2H),3.16(tt,J=7.0,5.1 Hz,1H),2.20(s,6H);MS:[(M+1)]=301.00,303.00。
【0173】
1-(5-ブロモ-3-ニトロピリジン-2-イル)-N,N-ジメチルアゼチジン-3-アミン:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化35】
【0174】
1-(5-ブロモ-3-ニトロピリジン-2-イル)-N,N-ジメチルピペリジン-4-アミン(6.20g、20.7mmol)の酢酸溶液(90.0mL)に、鉄粉末(11.5g、206mmol)を周囲温度で添加した。得られた混合物を、周囲温度で2時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾過ケーキを、テトラヒドロフラン(3×100mL)で洗浄した。濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、飽和炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で取り込み、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、ブライン(3×100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の2%~4%メタノールで溶出し、灰色固体として表題化合物(5.20g、92%)を得た:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.74(d,J=2.0Hz,1H),6.93(d,J=2.0Hz,1H),4.19-4.04(m,2H),3.93-3.88(m,2H),3.21-3.14(m,1H),2.24(s,6H);MS:[(M+1)]=271.00,273.00。
【0175】
N-(5-ブロモ-2-(3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化36】
【0176】
ピリジン(70.0mL)中の5-ブロモ-2-[3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル]ピリジン-3-アミン(2.10g、7.77mmol)及びN,N-4-ジメチルアミノピリジン(77.0mg、0.63mmol)の撹拌溶液に、塩化メタンスルホニル(1.77g、15.5mmol)を周囲温度で滴加した。窒素雰囲気下で、周囲温度で3時間撹拌した後、得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、以下の条件で逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製した:カラム:球状C18、20~40μm、330g;移動相A:水(+10mM NHHCO);移動相B:アセトニトリル;流速:65mL/分;勾配(B%):5%~20%、8分;20%~40%、20分;40%~95%、2分;95%、5分;検出器:UV 254nm。所望の画分を19分で回収し、減圧下で濃縮し、無色固体として表題化合物(1.40g、52%)を得た:H NMR(400MHz,CDOD)δ7.92(d,J=2.2 Hz,1H),7.61(d,J=2.2 Hz,1H),4.27(dd,J=8.8,7.2 Hz,2H),3.96(dd,J=9.0,5.6 Hz,2H),3.24-3.16(m,1H),3.00(s,3H),2.20(s,6H);MS:[(M+1)]=349.00,351.00。
【0177】
N-(2-(3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化37】
【0178】
1,4-ジオキサン(30.0mL)中のN-[5-ブロモ-2-[3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル]ピリジン-3-イル]メタンスルホンアミド(1.00g、2.86mmol)及び4ビス(ピナコラート)ジボロン(2.18g、8.59mmol)の溶液に、酢酸カリウム(1.12g、11.5mmol)、及びビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(351mg、0.43mmol)を周囲温度で添加した。得られた混合物を、窒素雰囲気下で、85℃で2時間撹拌した。得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、以下の条件で逆フラッシュクロマトグラフィーによって精製した:カラム:球状C18、20~40μm、330g;移動相A:水(+10mM NHHCO);移動相B:アセトニトリル;流速:65mL/分;勾配(B%):5%~20%、7分;20%~40%、12分;40%~95%、2分;95%、5分;検出器:UV 254nm。所望の画分を20分で収集し、減圧下で濃縮して、黄色固体として表題化合物(800mg、71%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.78(s,1H),8.18(d,J=1.5 Hz,1H),7.50(d,J=1.6 Hz,1H),4.19(t,J=8.0 Hz,2H),3.93(dd,J=8.9,5.0 Hz,2H),3.12-3.04(m,1H),2.99(s,3H),2.09(s,6H),1.27(s,12H);MS:[(M+1)]=397.20。
【0179】
N-(2-( 3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)-5-(3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド:
この中間体を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した。
【化38】
【0180】
1,4-ジオキサン(13.0mL)及び水(2.00mL)中の8-ブロモ-3-メチル-2,3-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1-ピロロ[2,3-c]キノリン]-2-オン(320mg、1.01mmol)及びN-[2-[3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル]-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-3-イル]メタンスルホンアミド(600mg、1.51mmol)の溶液に、炭酸ナトリウム(160mg、1.51mmol)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(175mg、0.15mmol)を添加した。窒素雰囲気下で、85℃で2時間撹拌した後、得られた混合物を、減圧下で濃縮した。残渣を、分取TLC(DCM/MeOH=8/1、v/v)によって精製して、淡黄色固体として表題化合物(350mg、69%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.07(s,1H),8.80(s,1H),8.58(s,1H),8.33(s,1H),8.13(d,J=8.9 Hz,1H),7.95(d,J=9.2 Hz,1H),7.91(d,J=2.1 Hz,1H),4.28-4.21(m,2H),4.02-3.95(m,2H),3.30(s,3H),3.14(s,4H),2.98-2.90(m,2H),2.60-2.52(m,4H),2.13(s,6H);MS:[(M+1)]=507.20。
【0181】
N-(2-(3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)-5-(3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド塩酸塩(化合物574):
化合物574を、以下の合成スキームに従って、下記のように合成した:
【化39】
【0182】
希釈した塩酸水溶液(115mL、0.69mmol、0.006M)及びアセトニトリル(20.0mL)中のN-(2-(3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)-5-(3’-メチル-2’-オキソ-2’,3’-ジヒドロスピロ[シクロブタン-1,1’-ピロロ[2,3-c]キノリン]-8’-イル)ピリジン-3-イル)メタンスルホンアミド(350mg、0.69mmol)の溶液を、直接凍結乾燥させ、オレンジ色固体として表題化合物(375mg、100%)を得た:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ10.77(s,1H),9.24(s,1H),8.83(s,1H),8.64(d,J=2.1 Hz,1H),8.35(s,1H),8.17(d,J=8.9 Hz,1H),8.02-7.94(m,2H),4.50-4.41(m,2H),4.39-4.32(m,2H),4.27-4.16(m,1H),3.31(s,3H),3.18(s,3H),2.99-2.88(m,2H),2.82(d,J=4.1 Hz,6H),2.63-2.52(m,4H);MS:[(M+1)]=507.20。
【0183】
実施例2:例示的な式(I)の化合物の標的及びオフ標的阻害活性
例示的な式(I)の化合物(568、569、570、及び574)を、以下に記載される条件に従って、標的酵素(ATM及びDNA-PK)並びにオフ標的酵素(mTOR、PI3Kα/δ、及びhERG)に対する阻害活性について試験した。
【0184】
方法
ATM In Cell Westernアッセイ:
MCF-7乳がん細胞を、10,000細胞/ウェル(Corning、#356663)の密度で、ウェル当たり25μLの細胞を384ウェルプレートに配置した。翌日、ピンツール(Echo 550)を使用して、3倍の連続希釈(合計10用量)によって1μMの最終濃度まで化合物をプレートに添加した。次いで、エトポシド(Sigma、#E1383)を、100μMの最終濃度に添加した。プレートを、37℃で1時間インキュベートし、細胞を、25μLの固定溶液(8%パラホルムアルデヒド)を周囲温度で20分間添加することによって固定した。細胞を、0.1% Triton X-100を含有する1×PBS(リン酸塩緩衝生理食塩水)で5回洗浄することによって透過させた。各洗浄は、5分の長さであった。細胞を、周囲温度で振盪しながら、384ウェルプレート中に50μLのOdysseyブロッキングバッファー(LI-COR、#927-40000)を1.5時間添加することによってブロックした。次いで、ブロックバッファーを除去し、20μLの抗pKAP1抗体(Bethyl Laboratories、#A300-767A)(1/2000)溶液を384ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、次いで、1×PBST(0.1% Tween-20を含有する1×PBS)で5回洗浄した。DNA染色DRAQ5(CST、#4084L)(1/5,000)を含有する二次抗体(IRDye 800CW ヤギ抗ウサギIgG、LI-COR、#926-32211)(1/5,000)溶液(20μL)を、プレート内の各ウェルに添加し、暗闇で穏やかに振盪しながら、プレートを1時間インキュベートした。細胞を、暗闇で穏やかに振盪しながら、周囲温度で1×PBST(0.1% Tween-20を含有する1×PBS)で5回洗浄した。最後の洗浄の後、洗浄液を除去し、プレートを薄いペーパータオル上に逆さまにし、1000rpmで1分間遠心分離して、全ての洗浄バッファーを吸収した。プレートの底部を、湿った糸くずの出ない紙で洗浄した。プレートを、ODYSSEY CLx(LI-COR)を使用して直ちにスキャンした。
【0185】
DNA-PK酵素結合免疫吸着アッセイ:
1日目に、96ウェルプレート(ThermoFisher、カタログ番号:442404)を、0.1MのNaCO/NaHCO(pH9.6)で各ウェル中の3μgのGST-p53を希釈することによって、GST-p53(1-101)ペプチド(Pharmaron、BCS部門によって精製)でコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。2日目に、コーティングバッファーを除去し、プレートをPBST(0.1% Tween-20を含有する1×PBS)で2回洗浄した。次いで、DNA-PK酵素溶液(Invitrogen、#PR9107A;最終DNA-PK濃度:0.1μg/mL)を添加した。化合物を、最終最大濃度が100nM(3倍連続希釈、合計10用量)になるまで連続希釈し、ATP溶液(最終ATP濃度:20μM)をプレートに添加した。プレートを25℃で1時間インキュベートする。プレートをPBST(0.1% Tween-20を含有する1×PBS)で3回洗浄し、PBST及び1% BSAの溶液で4℃で一晩ブロックした。3日目に、プレートをPBST(0.1% Tween-20を含有する1×PBS)で4回洗浄した。抗リン-p53一次抗体(細胞シグナル伝達技術、#9286、リン-p53(Ser15)(16G8)マウスmAb)(1/1000)を、各ウェルに添加した。プレートを密封し、37℃で1時間インキュベートし、PBST(0.1%Tween-20を含有する1×PBS)で4回洗浄した。HRP結合二次抗体(細胞シグナル伝達技術、#7076、抗マウスIgG、HRP結合抗体)(1/1000)(100μL)を、各ウェルに添加した。プレートをテープで密封し、37℃で30分間インキュベートし、PBST(0.1%Tween-20を含有する1×PBS)で4回洗浄した。この時、100μLのTMB(細胞シグナル伝達技術、#7004)基質を、各ウェルに添加した。プレートをテープで密封し、プレートを37℃で10分間インキュベートした。停止液(細胞シグナル伝達技術、#7002)(100μL)を、各ウェルに添加し、プレートを450nmで吸収検出した。
【0186】
mTOR生化学アッセイ:
mTORキナーゼ反応を、低体積384ウェルプレートにおいて10μLの体積で実施した。典型的には、PerkinElmerモデル6008260プレートを使用した。1×キナーゼ反応バッファーの組成は、50mMのHEPES pH7.5、0.01% Tween20、1mMのEGTA、10mMのMnCl、及び2mMのDTTであった。mTOR酵素の溶液(ThermoFisher、#PR8683B;最終mTOR濃度:0.5μg/mL)を添加し、化合物を、最終最大濃度が100nM(3倍連続希釈、合計10用量)になるまで連続希釈した。GFP-4E-BP1(最終濃度:0.4μM)及びATP溶液(最終ATP濃度:3μM)を、384ウェルプレートに添加した。プレートを25℃で1時間インキュベートし、TR-FRET希釈バッファー中の10μLのEDTA溶液(20mM)及びTb標識抗p4E-BP1抗体(4nM)を各ウェルに添加した。プレートを密封し、25℃で30分間インキュベートし、LanthaScreen(商標)TRFRET用に構成されたプレートリーダーで読み取った。
【0187】
PI3Kα及びPI3Kδ生化学アッセイ:
PI3Kα及びPI3Kδキナーゼ反応を、低体積384ウェルプレートにおいて5μLの体積で実施した。典型的には、PerkinElmerモデル6008280プレートを使用した。1×キナーゼ反応バッファーは、50mMのHEPES pH7.5、3mMのMgCl、0.03%のCHAPS、1mMのEGTA、100mMのNaCl、及び2mMのDTTからなった。PI3Kα(ThermoFisher、#PV4788、最終PI3Kα濃度:120ng/mL)又はPI3Kδ酵素溶液(ThermoFisher、#PV6451、最終PI3Kδ濃度:250ng/mL)をプレートに添加し、化合物を、最終最大濃度が100nM(3倍連続希釈、合計10用量)になるまで連続希釈し、PIP2:3PS(最終濃度:10μg/mL)及びATP溶液(最終ATP濃度:10μM)を384ウェルプレートに添加した。プレートを25℃で1時間インキュベートした。ADP-Glo試薬バッファー(5μL)を各ウェルに添加した。プレートを密封し、25℃で40分間インキュベートした。ADP-Glo検出緩衝液(10μL)を各ウェルに添加し、プレートを25℃で40分間インキュベートし、発光用に構成されたプレートリーダー上で読み取った。
【0188】
インビトロhERG阻害アッセイ:
hERG-T-REx(商標)HEK293細胞(Invitrogen、K1236)は、Tet調節発現ベクターpT-Rex-DEST30内のhERGコード配列を、Tetリプレッサーを発現する細胞(T-Rex(商標)HEK293)にトランスフェクトすることによって産生され、それによって、高レベルのhERGチャネルを発現するように誘導され得る細胞を産生した。細胞を、85%のDMEM、10%の透析FBS、0.1mMのNEAA、25mMのHEPES、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン、5μg/mLのブラストサイジン、及び400μg/mLのゲネチシンを含有する培地中で培養した。週に約3回、TrypLE(商標)Express(Gibco、12604)を使用して細胞を分割し、約40%~約80%のコンフルエンス間で維持した。アッセイの前に、細胞を1μg/mLのドキシサイクリン(Sigma、D9891)で48時間誘導した。実験日に、誘導細胞を再懸濁し、使用前に6cmの細胞培養皿当たり5×10細胞でカバースリップにプレートした。hERGチャネル媒介電流は、増幅器(HEKA、EPC10及び分子デバイス、マルチクランプ700B)及び逆位相コントラスト顕微鏡(Olympus、IX51/71/73)を備えた手動パッチクランプ記録システムによって取得した。ガラスピペットは、マイクロピペットプラー(Sutter、P97及びNarishige、PC-10)によって調製され、2~4MOhmの範囲のピペット抵抗によって適合された。内部ピペット溶液は、140mMのKCl、2mMのMgCl、10mMのEGTA、5mMのMgATP、及び10mMのHEPES(KOHを用いて7.35に調節されたpH)であり、外部緩衝液は、132mMのNaCl、4mMのKCl、3mMのCaCl、0.5mMのMgCl、11.1mMのグルコース、及び10mMのHEPES(NaOHを用いて7.35に調節されたpH)であった。全細胞構成を、アクセス抵抗を連続的にモニタリングしながら維持した(<15MOhms)。hERG電流は、膜を+30mVに4.8秒間脱分極し、電圧を-50mVに5.2秒間戻して不活性化を取り除き、不活性化のテール電流を測定した。テール電流サイズの最大量を、hERG電流振幅を決定するために使用した。hERG阻害を評価するために、空ビヒクル及び被験物質を、液体灌流システム(ALA、VM8重力流送達システム)を介して全細胞記録構成下で細胞に灌流した。用量反応アッセイでは、被験物質を低濃度から高濃度まで累積的に細胞に適用した。陽性対照(ドフェチリド)を、方法確認の主要部分として、細胞及び操作の性能を確保するために、実験に使用した。用量濃度に対してhERG電流阻害率を適合させて、用量反応曲線を構築し、IC50を決定した。
【0189】
結果
この実施例では、化合物568、569、570、及び574を調査した。結果を、以下の表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0190】
結果は、例示的な式(I)がATM及びDNA-PKを選択的に阻害するが、mTOR、PI3Kα/δ、及びhERGに対する阻害活性が低いか、又は全く示さないことを示す。
【0191】
実施例3:クローン原性及びインビボ有効性アッセイ
化合物569は、この実施例では、クローン原性活性及びインビボ有効性を測定するための例示的な式(I)の化合物として使用された。
【0192】
方法
ヒトがん細胞培養
MCF-7ヒト乳がん細胞株及びA549ヒト肺がん細胞株、並びにHCT116 p53野生型及びHCT116 p53-/-細胞株を含むヒトがん細胞株は、ATCCから得られた。MCF7及びHCT116細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM(Gibco#11995-065)で培養した。MDA-MB-231ヒトトリプル陰性乳がん細胞株及びFADU(ヒト頭頸部扁平上皮がん細胞株)は、Charles River Laboratories(Morrisville,NC)から得られた。MDA-MB-231及びA549細胞を、RPMI1640培地(Gibco、11875-093)で培養した。FADU細胞を、1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco、11360-070)、1×MEM非必須アミノ酸(Gibco、11140-050)を補充した最小必須培地α(MEM α)(Gibco、12571-063)で培養した。全ての細胞株を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Corning、35-010-CV)及び1×抗生物質-抗真菌剤(Gibco #15240-062)で補充し、5% CO2中で37℃で増殖させた。全ての細胞株を、短いタンデム反復プロファイリングによって認証し、マイコプラズマについて陰性であることを試験した。
【0193】
ATM及びDNA-PKcの抗体
リン酸化/活性化ATM(S1981、#ab81292)及びDNA-PKcs(S2056、#ab18192)を認識する抗体を、Abcam Biotechnology(Cambridge,MA)から購入した。ATMに対する抗体(#A1106)及びDNA-PKcsに対する抗体(#ab1832)は、それぞれ、Sigma及びAbcamからのものであった。リン-KAP1(S824、#A300-767A)及びKAP1(A700-014)抗体は、Bethyl Labs(Montgomery,TX)からのものであった。リン-TBK1(#5483)、cGAS(#15102)、及びpSTING(S366、#19781S)抗体は、細胞シグナル伝達技術(CST)(Danvers,MA)からのものであった。STING(PA5-23381)抗体は、ThermoFisher Scientific(Waltham,MA)からのものであり、アクチン(#A5316)抗体は、Sigmaからのものであった。1×TBST(1×TBS-10×TBS、(Corning、46-012-CM)、0.05% Tween-20(P7949)Sigma及び1% BSA中でアクチンを1:3000に希釈したことを除き、全ての抗体を1:1000に希釈した。使用した二次抗体は、(a)Li-Cor法-ヤギ抗ウサギ(926-3221)及びヤギ抗マウス(926-68020)Li-Cor(b)ECL法:抗ウサギIgG、HRP結合型(#7074S)、CSTであった。
【0194】
免疫ブロット試験
細胞を、20、100、500、又は1000nMの化合物569又はDMSOで30分間前処理し、次いで、図1に示すように、0又は10Gy(XRAD 160、精密X線)で照射した。図3では、細胞を、1μMの化合物569、1μMのATMi(AZD0156)、単剤としての1μMのDNA-PKi(ペポセルチブ)又はDMSO、又はATMi及びDNA-PKiを各々、0.5ミクロモル又は各々1ミクロモルで30分間組み合わせて前処理し、次いで、図1に示すように0又は10Gy(XRAD160、精密X線)で照射した。IRの1時間後、細胞を、RIPAバッファー(50nMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1%IGEPAL(登録商標)CA-630(Sigma、I8896))中、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche、#04693159001及び#04906837001)の存在下で、4℃で20分間溶解した。細胞溶解物を、4℃で10分間、13,200gで遠心分離し、BCAアッセイ(Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット、カタログ番号23227、ThermoFisher Waltham,MA 02451)を使用して上清をタンパク質含有量について分析し、その後の免疫ブロット分析のために等量のタンパク質/レーンを使用した。2.5%の最終濃度でβ-メルカプトエタノールを含有するNuPAGE LSD試料バッファー[4X](Invitrogen、NP0007)を添加することによってタンパク質を変性させ、試料を5分間沸騰させた。試料を、NuPAGE 3~8%のトリス-酢酸タンパク質ゲル(Invitrogen、EA03785BOX)に充填し、1×Tris-酢酸SDSランニングバッファー(Invitrogen、LA0041)で電気泳動させたか、又はNuPAGE 4~12%のビス-トリスタンパク質ゲル(Invitrogen、NP0336BOX)に充填し、1×MOPS SDS泳動バッファー(Invitrogen、NP0001)で電気泳動させた。
【0195】
タンパク質を、ニトロセルロース膜(Amersham、10600003)に一晩移した。膜を、1×TBST中の5%非脂肪乾燥乳で1時間ブロックし、4℃で一次抗体とともに一晩インキュベートした。膜を、室温で1×TBSTで4×10分洗浄し、次いで、二次抗体で、室温で1時間インキュベートし、続いて室温で1×TBSTで3×10分洗浄した。膜は、ODYSSEY CLXシステム、又はECL(ECLブロット基質、Pierce、32209、34075、34095)を用いて可視化した。
【0196】
クローン原性生存アッセイ
このアッセイを、例示的な式(I)の化合物として化合物569を用いて行った。細胞を、IR対照なしの場合は250個の細胞、2GyのIRの場合は5000個の細胞、4GyのIRの場合は10000個の細胞の異なる密度で6ウェルプレートにプレートし、一晩培養した。翌日、MCF7細胞を、漸増用量のIR(0、2、又は4Gy)に曝露する前に、100、250、500、又は1000nMの化合物569又はDMSOを用いて30分間プレインキュベートした。A549細胞を、漸増用量のIR(0、2、又は4Gy)に曝露する前に、化合物569を用いて500又は1000nMで、又はDMSOと30分間インキュベートした。IRの後、細胞を、DMSO又は化合物569を用いて5時間連続的にインキュベートした後、培養培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄した。細胞を、阻害剤の不在下で、完全培地中で9日間培養した。次いで、細胞を、(PBS、0.0037%v/vホルムアルデヒド、0.1%クリスタルバイオレット)で染色し、水ですすぎ、乾燥させた。
【0197】
マウスモデルにおける腫瘍研究
雌NCr nu/nuマウス(Crl:NU(NCr)-Foxn1nu、株490)は、5~6週齢でCharles Riverから得られた。
【0198】
FADU又はMDA-MB-231細胞を、インビボ移植のために、対数相成長中に採取した。再懸濁された細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3回洗浄した後、PBS中の作動希釈を調製した。FADU細胞を、1×10細胞/mLに希釈し、MDA-MB-231細胞を、5×10細胞/mLに希釈した。各マウスに、100μLの細胞懸濁液を右側脇腹に皮下注射した。腫瘍が少なくとも100mmの標的体積に達するまで、腫瘍成長をモニタリングし、この時点で、マウスを4つの処置群に無作為に層別化した。
【0199】
腫瘍細胞株の移植後、マウスを、腫瘍発生を毎週1回モニタリングした。検出時に、腫瘍は、デジタルキャリパーを使用して2次元で測定された。腫瘍は、少なくとも100mmに達した後に処置され、処置群のうちの1つに登録した後、週に2~3回測定された。研究エンドポイントは、処理時の体積から腫瘍が5倍になることとして定義した。
【0200】
この研究で使用したビヒクルは、0.5%(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(HPMC)であり、0.2% Tween80を脱イオン水に溶解した。ビヒクルのpHを、7.0~8.0になるまで調整し、ビヒクルを4℃で保存した。インビボ処理の各日に、試験化合物の適切な質量を、室温でビヒクルに添加した。混合物を、必要に応じてボルテックスして、1.6mg/mLの最終濃度を生成した。
【0201】
薬力学(PD)アッセイ
腫瘍研究は、以下のように行った。FADU又はMDA-231腫瘍を有するマウスに、ビヒクル単独又は化合物569単独を3、6、及び10mg/kgで予め投与した。次いで、腫瘍を、ビヒクル又は化合物569の投与の45分後に10Gyで照射するか、又は非照射のままにした(ビヒクル及び化合物569を10mg/kgで)。腫瘍は、放射線療法から1時間後に採取した。
【0202】
薬力学分析のための組織ホモジネートを回収し、以下のように処理した。FADU又はMDA-MB-231腫瘍由来の腫瘍組織を、液体窒素中で急速凍結させ、組織粉砕機を使用してドライアイス上で粉砕した。腫瘍粉末の一部をマイクロチューブに移し、続いて500μLのRIPAバッファー[50nMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1% IGEPAL(登録商標)CA-630(Sigma、I8896)]を添加した。10mlのRIPAバッファーに、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤(Roche、#04693159001及び#04906837001)の各々2錠、200μLの0.1MのPMSF及び160μLのアプロチニン(Sigma、A6279)を添加した。懸濁液を、ペレット乳棒モーター(KONTES)を用いて氷上で均質化し、氷上で30分間インキュベートした。細胞溶解物を、13,200rpmで4℃で15分間遠心分離し、上清を新しいチューブに移し、BCAキット(Pierce、23227)を用いてタンパク質濃度について分析し、続いて免疫ブロット法を行った。
【0203】
インビボ腫瘍増殖遅延研究を、以下のように行った。腫瘍細胞株の移植後、マウスを、腫瘍発生を毎週1回モニタリングした。少なくとも100mmを測定する腫瘍の発生時に、1群当たり5匹のマウスを利用して、腫瘍を有するマウスを4つの群のうちの1つに層別化した。腫瘍体積は、100~500mmであった。ビヒクル又は化合物569(10mg/kg)を、単独で、又は焦点放射線と組み合わせて、1日1回、3日間連続して(qd×3)強制経口投与した。ビヒクル又は化合物569の送達体積を、個々の動物の体重に基づいて調整した。放射線療法群に層別化されたマウスは、ビヒクル又は化合物569の投与から45分後に、3日間連続して(qd×3)、1日に3Gyを投与された。マウスを、X-RAD 225Cx小動物画像誘導照射器(精密X線)を用いて実施した放射線処置中にイソフルランで麻酔した。40mm×40mmの照射野は、蛍光透視法を介して腫瘍を有する脚を中心とした。マウスを、0.3mmのCuフィルターを使用して、225kVp、13mAの平行対向前後電界で、300cGy/分の平均用量速度で照射した。
【0204】
群1のマウスに、ビヒクルqd×3を投与した。
【0205】
群2マウスに、10mg/kgの化合物569 qd×3を投与した。
【0206】
群3マウスに、3Gyの焦点照射qd×3の45分前にビヒクルを投与した。
【0207】
群4マウスに、3Gyの焦点照射qd×3の45分前に、10mg/kgの化合物569を投与した。
【0208】
インビボデータの統計的及び画像分析
PRISM(GraphPad)を、図的提示のために使用した。SAS9.4及びR3.6.1を、統計的分析のために使用した。4つの処置群間の腫瘍成長率を比較した。処置の開始時の異なる腫瘍サイズを調整するために、相対腫瘍体積を、各時間点での腫瘍体積をベースラインでの体積で除算することによって計算した。線形プロットを使用して、経時的な相対腫瘍体積の中央値を示した(図6及び8)。腫瘍5倍化のために動物が研究を終了したとき、動物について記録された最終腫瘍体積を、その後の時点で体積の中央値を計算するために使用されるデータとともに含めた。カプランマイヤープロットを使用して、経時的に研究に残っている各処置群におけるマウスの割合を示した(図7及び9)。5倍化するエンドポイントに到達する前に死亡していることが判明したマウスを、右側打ち切りに供した。4つの処置群間の無5倍生存率の差を対数ランク検定で評価した。0.05未満のP値は、統計的に有意であるとみなされた。
【0209】
結果
図1は、放射線療法の有無にかかわらず、MCF7細胞に対する化合物569の効果を評価するインビトロ実験からの免疫ブロットの画像を示す。免疫ブロットは、腫瘍細胞における化合物569による、ATM及びDNA-PKキナーゼの放射線誘導性自己リン酸化の阻害、並びにATM基質であるKAP1の放射線誘導性リン酸化を示す。ヒト乳がん細胞株であるMCF7を、20、100、500、及び1000nMの濃度で、化合物569で30分間前処理した。DMSOを、陰性対照として使用した。次いで、細胞を、0又は10Gyのイオン化放射線(IR)に曝露し、1時間後に、細胞を免疫ブロット分析のために採取した。化合物569は、Ser2056でのDNA-PKcsの放射線誘導性リン酸化及びSer1981でのATMの強力な用量依存的阻害(両方の自己リン酸化事象)を示し、ATM基質KAP1(ser824)は、化合物569が細胞内のDNA-PK及びATMキナーゼの両方を阻害したことを実証した。
【0210】
図2A及び図2Bは、インビトロでのクローン原性生存アッセイにおける化合物569の放射線増感特性を示す。MCF7細胞を、ビヒクル又は化合物569を用いて、100、250、500、及び1000nMで30分間前処理した後、漸増用量のIR(0、2、及び4Gy)で照射した。5時間後、培地を除去し、阻害剤を含まない新たな培地を細胞に添加し、9日間培養してから、固定し、染色し、コロニーを数えた。化合物569への細胞の5時間の曝露は、MCF7細胞におけるIRの不在下で、細胞毒性の証拠なしに、有意な程度の放射線増感を誘導した(図2A、表4A)。
【0211】
図2Aは、インビトロでのクローン原性生存アッセイにおける化合物569の放射線増感特性を示す。A549細胞を、ビヒクル又は化合物569を用いて、500nM及び1000nMで30分間前処理した後、漸増用量のIR(0、2、及び4Gy)で照射した。5時間後、培地を除去し、阻害剤を含まない新たな培地を細胞に添加し、9日間培養してから、固定し、染色し、コロニーを数えた。化合物569への細胞の5時間の曝露は、A549細胞におけるIRの不在下で、細胞毒性の証拠なしに、有意な程度の放射線増感を誘導した(図2B、表4B)。
【0212】
図3は、野生型p53を発現するHCT116細胞又はp53発現が陰性であったHCT116細胞における、化合物569、AZD0156(選択的ATM阻害剤;ATMi)、ペポセルチブ(選択的DNA-PK阻害剤;DNA-PKi)、及びAZD0156とペポセルチブ(Ai+Di)の組み合わせによる、TBK1のリン酸化の誘導を示す免疫ブロットである。TBK1のリン酸化は、I型インターフェロン反応の活性化のマーカーであり、免疫チェックポイント遮断療法に対する腫瘍反応の増強に関連している。2つの選択的化学阻害剤(AZD0156及びペポセルチブ)を一緒に組み合わせることによるATM及びDNA-PKcsの二重阻害は、選択的阻害剤単独のいずれかよりもTBK1のより深い活性化をもたらした。同様に、ATM及びDNA-PKcsの二重阻害剤である化合物569への細胞の曝露は、単一標的キナーゼ阻害剤のいずれかよりもTBK1リン酸化のより強力な活性化剤であり、p53状態とは無関係であった。化合物569によるTBK1の活性化及びATM及びDNA-PKcsの二重阻害は、cGAS及びリン-STING誘導とは独立しているように見えた。
【化40】
【0213】
インビボで化合物569の薬力学的活性を評価するために、FADU細胞及びMDA-MB-231細胞を、ヌードマウスにおける腫瘍異種移植片として増殖させた。ビヒクル又は化合物569は、単独で、又は焦点放射線と組み合わせて、強制経口投与した。マウスに、ビヒクル又は化合物569を3、6、及び10mg/kgで投与した。次いで、腫瘍は、45分後に10Gyの焦点照射を受けたか、又は非照射のまま放置した(0Gy、ビヒクル及び0Gy+化合物569、10mg/kg)。腫瘍は、放射線療法から1時間後に採取した。これらの腫瘍からの溶解物の免疫ブロットは、pDNA-PKの放射線誘導性自己リン酸化、及びATMの下流標的であるKAP1の放射線誘導性リン酸化、並びに放射線+化合物569で処置したFADU及びMDA231腫瘍におけるこれらのリン酸化事象の用量依存的阻害を示す。DNA-PKの放射線誘導性自己リン酸化及びKAP1の放射線誘導性リン酸化の腫瘍レベルは、それぞれ、10mg/kgで約55%及び80%超の有意に阻害された(図4及び5、表6~8)。DNA-PKの基底リン酸化もまた、腫瘍における化合物569によって阻害された。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】

【表9】
【0214】
FADU腫瘍への影響
群1のマウスに、ビヒクルqd×3を投与した。この群における凝集腫瘍成長は、進行性であった。エンドポイントまでの中央値の時間は、14日間であり、範囲は11~14日間であった(図6及び7)。群2のマウスに、10mg/kg、qd×3の用量で化合物569を投与した。エンドポイントまでの中央値の時間は、14日であり、範囲は11~17日間であった。群2の動物の腫瘍成長曲線及び無5倍生存率は、群1のものとほぼ同一である(図6及び7)。群3のマウスは、ビヒクル及び3Gyの焦点放射線量を受け、これは、ビヒクルの投与の45分後に送達された。ビヒクルと放射線療法の両方が、qd×3であった。原因不明のため、16日目に1匹の動物が死亡したことが判明した。エンドポイントまでの中央値の時間は、21日であり、範囲は19~25日間であった。全生存率は、群1及び群2と比較して有意に改善した(P<0.01、logrank)。群1及び群2に対する群3の凝集腫瘍成長の遅延及び無5倍生存率の増加を、図6及び7に示す。群4のマウスは、化合物569及び3Gyの焦点放射線量を受け、これは、化合物の投与の45分後に送達された。化合物569及び放射線の両方が、qd×3で投与された。エンドポイントまでの中央値の時間は、42日であり、範囲は31~51日間であった。全生存率は、群1、群2、及び群3と比較して有意に改善した(P<0.01、logrank)。全ての他の群に対する群4の凝集腫瘍成長の遅延及び無5倍生存率の増加を、図6及び7に示す。全ての処置は、良好な耐容性を示した。
【0215】
MDA-MB-231腫瘍への影響
群1のマウスに、ビヒクルqd×3を投与した。エンドポイントまでの中央値の時間は、12日であり、範囲は12~17日間であった。群2のマウスに、10mg/kg、qd×3の用量で化合物569を投与した。エンドポイントまでの中央値の時間は、17日であり、範囲は12~22日間であった。群2の動物の腫瘍成長曲線及び無5倍生存率は、群1のものとほぼ同一である(図8及び9)。群3のマウスは、ビヒクル及び3Gyの焦点放射線量を受け、これは、ビヒクルの投与の45分後に送達された。ビヒクルと放射線療法の両方が、qd×3であった。エンドポイントまでの中央値の時間は、22日であり、範囲は16~22日間であった。全生存率は、ビヒクル単独で処置された群1の動物と比較して有意に改善された(P<0.01、logrank)。群1及び群2に対する群3の無5倍生存率の増加を、図9に示す。群4のマウスは、10mg/kgの化合物569及び3Gyの焦点放射線量を受け、これは、化合物の投与の45分後に送達された。化合物569及び放射線の両方が、qd×3で投与された。原因不明のため、35日目に1匹の動物が死亡したことが判明した。エンドポイントまでの中央値の時間は、43日であり、範囲は37~58日間であった。全生存率は、群1、群2、及び群3と比較して有意に改善した(P<0.01、logrank)。全ての他の群に対する群4の凝集腫瘍成長の遅延及び無5倍生存率の増加を、図8及び9に示す。全ての処置は、良好な耐容性を示した。
【0216】
実施例4.マウスモデルにおける化合物569の耐容性研究。
マウスモデルを使用して、以下の手順に従って化合物569の耐容性を試験する。
マウスを2つの群に分け、1つを9mg/kgの化合物569(群1;メシル酸塩)で処置し、1つを10mg/kgの化合物569(群2;メシル酸塩)で処置する。群及び処置条件を、下の表9に提供する。
【表10】
【0217】
化合物569のビヒクルは、脱イオン水中の0.5% HPMC及び0.1% Tween80である。化合物569は、毎日調製されるメシル酸塩として使用される。投薬量は10ml/kgで、体重に合わせて調整される。日常のモニタリングのために、全ての研究動物は、可動性、食物及び水の消費(ゲージ側からの確認のみ)、体重(BW)、眼/毛の艶のなさ、並びに任意に他の異常な影響などの挙動についてモニタリングされる。任意の死亡及び/又は異常な臨床徴候は、毎日記録され、伝達される。全ての動物の体重は、研究を通して毎日測定され、記録される。
【0218】
実施例5.マウスモデルにおける化合物569を単独で、及び抗PD1抗体と組み合わせて有効性を判定するための研究。
この実施例は、単独で、又は免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて(一例として抗PD1抗体を使用して)、マウスモデルにおける化合物569(例示的な式(I)の化合物として;メシル酸塩)の抗腫瘍有効性を調べる。
【0219】
8~12週齢のC57BL/6マウスに、0%マトリゲルscの0.1ml/マウス中の5×10個のMC38腫瘍細胞を脇腹に注射する。腫瘍が約80~120mmに達すると、腫瘍サイズに基づいてマウスを対にする。無作為化は1日目に行い、BID投薬スケジュールをサポートするために、投薬は2日目に開始する。体重は、6日間毎日測定され、その後、研究の終了まで隔週で測定される。腫瘍サイズは、研究を通して隔週でキャリパーによって測定される。動物は、腫瘍体積が1500mm又は45日に達するまで、いずれか早い方まで個別にモニタリングされるが、反応する動物は、より長く測定され得る。
【0220】
表10に示すように、各マウス群の投薬レジメンが、選択される。化合物569を抗PD1抗体とともに投与する日に、化合物569を最初に投与する。用量は、脱イオン水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び0.1% Tween80の水溶液中に溶解した化合物569のメシル酸塩形態から調製される。抗PD1 RMP1-14抗体用量は、リン酸緩衝生理食塩水中で調製される。RMP1-14のクローンは、RMP1-14 ICHOR SKU:IHC1132である。ラットIgG2aは、リン酸緩衝生理食塩水中で調製される。ラットIgG2aのクローンは、2A3ラットIgG2aアイソタイプ対照:BioXcell カタログ番号BE0089である。
【表11】
【0221】
実施例6.MC38マウスモデルにおける抗PD1抗体、放射線療法、又はその両方と組み合わせた化合物569の有効性を判定するための研究。
この研究は、抗PD1抗体及び/又は放射線療法と組み合わせた化合物569の抗腫瘍効果を調査する。
【0222】
方法
同系マウス腫瘍モデル
マウス結腸腺がん細胞株、MC38-NCI.TD1(MC38)を、5% CO2中の37℃で、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%ウシ胎仔血清(FBS)、25μg/mlのゲンタマイシン、2mMのL-グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン中で培養した。細胞を、ハンクスの平衡塩溶液中の0.25%トリプシン/2.21mMのエチレンジアミン四酢酸中で解離させ、DMEM中で5×10細胞/200μLの密度にした。腫瘍は、雌C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)の右腋窩に細胞懸濁液を皮下注射することによって開始した。全てのマウスを、腫瘍負荷のキャリパー推定に基づいて7つの研究群(n=10)に分類した。全ての群の平均腫瘍負荷が、研究集団の全平均腫瘍負荷(90mm)の10%以内であることを確実にするようにマウスを分布させた。マウスを臨床徴候について毎日モニタリングし、体重を量り、週に3回測定した。研究エンドポイントは、病期分類から30日後、又は腫瘍負荷が2000mm超であった場合であった。
【0223】
製剤及び投与
化合物569のビヒクルは、脱イオン水に溶解した0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び0.1% Tween80であった。化合物569のビヒクル及び化合物569(12mg/kg)を、焦点放射線と組み合わせて、1日1回、病期分類の日から開始して2日間連続して(qd×2)強制経口投与した。放射線療法群に層別化されたマウスは、ビヒクル又は化合物569の投与から60分後に、2日連続して(qd×2)、1日に5Gyを投与された。マウスを、放射線処置中にイソフルランで麻酔し、Xstrahl Life Sciences小動物放射線研究プラットフォーム(Xstrahl,Inc.)を用いて実施した。マウスを、2.5Gy/分の平均用量速度で照射した。
【0224】
アイソタイプ対照(クローン2A3)抗マウスPD-1(抗mPD-1;Bio X Cell)及び抗mPD-1(クローンRMP1-14;Bio X Cell)のビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であった。アイソタイプ対照抗mPD-1(10mg/kg)及び抗mPD-1(10mg/kg)を、病期分類後2日目から開始して2週間、毎週2回腹腔内投与した。様々な群の動物の処置スケジュールを、下に要約する:
・群1のマウスは、ビヒクルqd×2+10mg/kgのアイソタイプ対照(q3d×2、3日オフ)×2を投与し、病期分類から2日後に開始した。
・群2のマウスは、10mg/kgの抗mPD-1(q3d×2、3日オフ)×2を投与し、病期分類から2日後に開始した。
・群3のマウスは、焦点照射5Gy qd×2+10mg/kgのアイソタイプ対照(q3d×2、3日オフ)×2を投与し、病期分類から2日後に開始した。
・群4のマウスは、焦点照射5Gy qd×2+10mg/kgの抗mPD-1(q3d×2、3日オフ)×2を投与し、病期分類から2日後に開始した。
・群5のマウスは、12mg/kgの化合物569をqd×2(焦点照射の1時間前)+5Gy qd×2を投与した。
・群6のマウスは、12mg/kgの化合物569 qd×2+10mg/kgの抗mPD-1(q3d×2、3日オフ)×2を投与し、病期分類から2日後に開始した。
・群7のマウスは、12mg/kgの化合物569 qd×2(焦点照射の1時間前)+5Gy qd×2+10mg/kgの抗mPD-1(q3d×2、3日オフ)×2を投与し、病期分類から2日後に開始した。
【0225】
データ分析
・ΔC及びΔT-以下のように、各マウスについて計算される個々のマウスエンドポイントである:
ΔT=T-T及びΔC=C-C
式中、T及びTは、それぞれ、時間t又は投与開始時の処置マウスの腫瘍負荷である。ΔCは、対照マウスについての同様の計算を反映する。
・中央値ΔT/ΔC-群エンドポイントである。これは、治療の各日に次のように計算される:
【数5】
結果は、%として提示される。中央値ΔT/ΔCが陰性である(中央値処置された腫瘍負荷が退縮している)場合、中央値ΔT/ΔCは報告されず、代わりに中央値%退縮が報告される。
・%退縮-群エンドポイントである。これは、ベースラインからの中央値腫瘍体積の減少率を示す。以下のように計算される:
【数6】
【0226】
病期分類後20日目は、腫瘍負荷による殺処分の前に全ての動物が試験に参加していた最終日であったため、ΔT/ΔCについて選択された。
・完全退縮(CR)-動物は、その腫瘍負荷が、最初の処置後の任意の時点で測定不可能な体積に低減された場合、完全退縮とみなされる。CRを少なくとも2回連続して測定するために維持する必要がある。
・無腫瘍生存者(TFS)-TFSは、研究終了まで生存し、研究終了時に疾患の信頼できる測定可能な証拠を有さない任意の動物である。
【0227】
統計的分析は、一元配置分散分析、続いてDunnの多重比較検定を使用して実施した。
【0228】
結果
アイソタイプ対照(群1)と組み合わせたビヒクルによる処置は、全体的な研究対照として使用された。単剤としての抗mPD-1(群2)による処置は、対照よりわずかに良好であり、結果として、20日目の中央値ΔT/ΔC値は、83%(p>0.05)であった。図10を参照されたい。抗mPD-1と組み合わせた化合物569(群6)の添加は、単剤抗mPD-1処置と比較して有効性の限られた増加を示し(20日目の中央値ΔT/ΔC値は64%、p>0.05)、化合物569と抗mPD-1抗体との組み合わせは、対照群と比較して有効性の増加を示した。
【0229】
アイソタイプ対照(群3)と組み合わせた放射線療法による処置は、20日目の中央値ΔT/ΔC値が20%(p>0.05)の抗がん活性を生じたが、有意な腫瘍退縮をもたらさなかった。
【0230】
二重放射線併用処置群のマウスは、様々な程度の抗腫瘍活性を示した。放射線療法と組み合わせた抗mPD-1(群4)又は569(群5)の添加により、抗腫瘍活性の有意な増強が見られ、20日目の退縮値は、それぞれ、64%(p<0.05)及び22%(p<0.05)であった。群4における処置は、完全退縮(CR)及び無腫瘍生存者(TFS)の50%の発生率をもたらした。群5における処置は、CRの50%の発生率及びTFSの30%の発生率をもたらした。
【0231】
抗mPD1、569、及び放射線(群7)によるトリプル併用処置は、最も実質的な抗腫瘍活性をもたらし、全ての他の単剤又は二剤処置と比較して有効性の増加を示した。処置により、99%(p<0.05)の20日目の回帰値が得られた。群7におけるマウスも、CR及びTFSの90%の発生率を示した。
【0232】
全ての処置は、最小限の体重減少をもたらした。対照群(群1)及び化合物569及び抗mPD-1併用処置群(群6)の両方とも、1匹の死亡(10%の発生率)を示した。
【0233】
要約すると、化合物569、抗PD1抗体、及び放射線療法の組み合わせは、抗PD1抗体又は放射線療法のいずれかと組み合わせた化合物569と比較して、動物モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を示した。
【0234】
その他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等、又は同様の目的を果たす代替的特徴によって置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示される各特徴は、同等又は同様の特徴の一般的シリーズのほんの一例である。
【0235】
上記の説明から当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正を行い、それを様々な使用及び条件に適用させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0236】
等価物
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載され、例示されているが、当業者は、機能を実行するための及び/又は本明細書に記載される結果及び/又は利点のうちの1つ以上を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定され、かかる変形及び/又は修正の各々は、本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が、例示的であることを意味すること、並びに実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される具体的な用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験を超えないものを用いて、本明細書に記載される具体的な本発明の実施形態の多くの等価物を認識し、あるいは確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、ほんの一例として提示されていること、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載されかつ特許請求されるものとは異なるように実施されてよいことが理解されるべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記載される各々の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0237】
本明細書で定義及び使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を制御すると理解されたい。
【0238】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許、及び特許出願は、各々が引用されている主題に関して参照により組み込まれ、いくつかの場合において、本明細書の全体を包含し得る。
【0239】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、明確に反対の意味を示さない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0240】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「一方又は両方」、すなわち、いくつかの場合においては結合的に存在し、他の場合においては分離して存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」で解釈されるべきである。他の要素は、具体的に識別される要素に関連するか否かにかかわらず、「及び/又は」という語句によって具体的に識別される要素以外に任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含むこと(comprising)」などの限定のない言語と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0241】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を持つと理解されるべきである。例えば、リストの項目を区切るとき、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であると解釈され、すなわち、複数の要素又はリストの要素のうち、少なくとも1つを含むが、1つ以上も含み、並びに任意選択的に、リストにない追加項目を含むと解釈されるべきである。「1つのみの(only one of)」又は「正確に1つの(exactly one of)」、又は特許請求の範囲において使用される場合、「からなる(consisting of)」など、反対の意味を持つことが明確に示される用語のみが、複数の要素又はリストの要素のうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、「いずれか(either)」、「1つの(one of)」、「1つのみの(only one of)」、又は「正確に1つの(exactly one of)」などの排他的な用語が先行する場合、排他的な代替物(すなわち、「一方又は他方であって両方ではない(one or the other but not both)」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。「から本質的になる(Consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
【0242】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、1つ以上の要素のリストを参照して、「少なくとも1つの(at least one)」という語句は、要素のリスト内の任意の1つ以上の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙された各要素及び全ての要素の少なくとも1つを含み、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しないと理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つの(at least one)」という語句が言及する要素のリストの中に、具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するか否かにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、等価的に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は、等価的に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在せず(及び任意選択的にB以外の要素を含む)、複数のAを任意選択的に含む少なくとも1つを指すことができ、別の実施形態では、Aが存在せず(及び任意選択的にA以外の要素を含む)、複数のBを任意選択的に含む少なくとも1つを指すことができ、更に別の実施形態では、複数のAを任意選択的に含む少なくとも1つを指すことができ、並びに複数のBを任意選択的に含む少なくとも1つを指すことができる(及び任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0243】
明確に反対の意味を示さない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む本明細書に特許請求される任意の方法において、本方法のステップ又は行為の順序は、本方法のステップ又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことを理解されるべきである。

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】