(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質およびその製造方法並びにこれを用いて製造された負極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20240131BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240131BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240131BHJP
C01B 32/205 20170101ALI20240131BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
C01B32/05
C01B32/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529921
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2021016929
(87)【国際公開番号】W WO2022108341
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153656
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】523180436
【氏名又は名称】ポスコヒューチャーエム株式会社
【氏名又は名称原語表記】POSCO FUTURE M CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ムンキュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ガン ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 シ ミン
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ジョン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 ジュン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、 ヒュン―チョル
(72)【発明者】
【氏名】ユン、 ジョン フン
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA02
4G146AA19
4G146AB01
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AD25
4G146BA18
4G146BA24
4G146BA27
4G146BB10
4G146BB15
4G146BB17
4G146BC03
4G146BC34B
5H050AA02
5H050BA17
5H050CB08
5H050HA01
5H050HA14
(57)【要約】
本開示は、負極活物質用母材をコーティング材でコーティングする段階;および得られたコーティング生成物を熱処理する段階;を含み、前記コーティング材は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であり、前記コーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれるものである、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法およびこれから製造された負極活物質並びにこれを負極に含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質用母材をコーティング材でコーティングする段階;および
前記コーティング材でコーティングされた生成物を熱処理する段階;
を含むリチウム二次電池用負極活物質の製造方法であって、
前記コーティング材は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であり、
前記コーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれるものである、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記負極活物質用母材は、コークスを黒鉛化した母材である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを70重量部以上、か焼コークスを残部として含む、請求項2に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記グリーンコークスは、石炭系グリーンコークス、石油系グリーンコークス、またはこれらの組み合わせである、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記コーティングする段階は、別途の溶媒が添加されない乾式コーティングである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング材は、常温での粘度が3,000cPs以下で常温粘弾性特性を有するものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記コーティング材は、石炭系コールタール、石油系残渣油、フェノール樹脂および木タールからなる群の中から選択された1種以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記石油系残渣油は、熱分解燃料油(pyrolyzed fuel oil、PFO)、ナフサ分解残渣油(Naphtha cracking bottom oil、NCB)、エチレン分解残渣油(Ethylene cracker bottom oil、EBO)、減圧残渣油(Vacuum residue、VR)、脱アスファルト油(De-asphalted oil、DAO)、常圧残渣油(Atmospheric residue、AR)、FCC-DO(Fluid catalytic cracking decant oil)、RFCC-DO(Residue fluid catalytic cracking decant oil)、および重質芳香族油(Heavy aromatic oil)からなる群の中から選択された1種以上である、請求項7に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~40重量部である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
負極活物質用母材;および
前記母材をコーティングするコーティング層を含み、
前記コーティング層は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であり、
前記コーティング層のコーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれるものである、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項11】
前記負極活物質用母材は、黒鉛化コークスである、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項12】
前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを70重量部以上、か焼コークスを残部として含む、請求項11に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項13】
前記グリーンコークスは、石炭系グリーンコークス、石油系グリーンコークス、またはこれらの組み合わせである、請求項12に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項14】
前記コーティング材は、常温での粘度が3,000cPs以下である常温粘弾性特性を有するカーボン類である、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項15】
前記コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~40重量部である、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項16】
前記リチウム二次電池用負極活物質は、ラマンスペクトル測定値のId/Igが0.300~0.450であり、
前記Idは波長1350cm
-1で測定されるピーク強度、Igは波長1575cm
-1で測定されるピーク強度である、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項17】
正極;
負極;および
電解質を含み、
前記負極は、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法で製造されたリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム二次電池用負極活物質およびその製造方法に関する。また、本開示は、これから製造された負極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池(lithium ion secondary battery、LIB)は、環境問題が国際的に浮上している中、次世代エネルギー貯蔵デバイスとして多くの関心が集中している。リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル金属ハイドライド電池のような代表的な二次電池システムと比較して高い作動電圧およびエネルギー密度、メモリ効果の面で優れた特性を有するので、多様な応用分野に拡大適用されている。リチウムイオン二次電池は、Ni-Cd、Ni-MH高エネルギー密度リチウム二次電池の需要が増加するにつれ、負極活物質として、炭素系物質より10倍以上の有効容量を有するケイ素系またはケイ素酸化物系物質の使用が増大している。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、分離膜、および電解質で構成され、電池の性能は構成要素の特性全部に密接な関連性を有する。なかでも、負極を構成する負極活物質は、リチウムイオン二次電池が開発された1991年から30年にわたる期間で炭素材料のハードカーボン/ソフトカーボンまたは黒鉛系の素材が用いられてきており、現在、大部分の商用電池は黒鉛素材を主に使用し、電池メーカー(あるいはセル企業)により多様な組み合わせの黒鉛の組成を適用している。
【0004】
現在、リチウムイオン二次電池用負極活物質として最も普遍的に使用されている黒鉛素材は、低い作動電圧(working voltage)、安定した寿命特性、効率、価格の面でのメリットおよび環境配慮のメリットを有しているが、理論容量が最大372mAh/gに制限されるというデメリットがある。このような理論容量の限界のため、電気自動車の走行距離の確保が難しく、また、多様な応用分野への適用が難しい問題点がある。これに対し、最近、二次電池産業界においては、充電出力、寿命特性を高めるために、負極活物質上への表面処理による機能性の必要性が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高速充放電特性を改善したリチウム二次電池用負極活物質およびその製造方法並びにこれを含む二次電池を提供しようとする。
【0006】
具体的には、本発明は、負極活物質用母材をコーティングして高速充放電特性を改善したリチウム二次電池用負極活物質およびその製造方法並びにこれを含む二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、負極活物質用母材をコーティング材でコーティングする段階;および前記コーティング材でコーティングされたコーティング生成物を熱処理する段階;を含むリチウム二次電池用負極活物質の製造方法であって、前記コーティング材は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であり、前記コーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれるものである。
【0008】
前記負極活物質用母材は、コークスを黒鉛化した母材であってもよい。
【0009】
前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを70重量部以上、か焼コークスを残部として含むことができる。
【0010】
前記グリーンコークスは、石炭系グリーンコークス、石油系グリーンコークス、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
前記コーティングする段階は、別途の溶媒が添加されない乾式コーティングであってもよい。
【0012】
前記コーティング材は、常温での粘度が3,000cPs以下で常温粘弾性特性を有するものであってもよい。
【0013】
前記コーティング材は、石炭系コールタール、石油系残渣油、フェノール樹脂および木タールからなる群の中から選択された1種以上であってもよい。
【0014】
前記石油系残渣油は、熱分解燃料油(pyrolyzed fuel oil、PFO)、ナフサ分解残渣油(Naphtha cracking bottom oil、NCB)、エチレン分解残渣油(Ethylene cracker bottom oil、EBO)、減圧残渣油(Vacuum residue、VR)、脱アスファルト油(De-asphalted oil、DAO)、常圧残渣油(Atmospheric residue、AR)、FCC-DO(Fluid catalytic cracking decant oil)、RFCC-DO(Residue fluid catalytic cracking decant oil)、および重質芳香族油(Heavy aromatic oil)からなる群の中から選択された1種以上であってもよい。
【0015】
前記コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~40重量部であってもよい。
【0016】
本開示の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質は、負極活物質用母材;および前記母材をコーティングするコーティング層;を含み、前記コーティング層は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であり、前記コーティング層のコーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれるものである。
【0017】
前記負極活物質用母材は、黒鉛化コークスであってもよい。
【0018】
前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを70重量部以上、か焼コークスを残部として含むことができる。
【0019】
前記グリーンコークスは、石炭系グリーンコークス、石油系グリーンコークス、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
前記コーティング材は、常温での粘度が3,000cPs以下である常温粘弾性特性を有するカーボン類であってもよい。
【0021】
前記コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~40重量部であってもよい。
【0022】
前記リチウム二次電池用負極活物質は、ラマンスペクトル測定値のId/Igが0.300~0.450であってもよく、ここで、Idは波長1350cm-1で測定されるピーク強度、Igは波長1575cm-1で測定されるピーク強度である。
【0023】
本開示の一実施形態のリチウム二次電池は、正極;負極;および電解質を含み、前記負極は、前記開示された方法で製造されたリチウム二次電池用負極活物質を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、初期効率が大きく劣ることなく高速充放電特性も有する負極活物質およびその製造方法を提供することができる。
【0025】
また、本発明によれば、残炭率が制御されたコーティング材で母材をコーティングすることによって、割れが防止された負極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の一実施形態の負極材表面のコーティング前後をTEMで観察したことを示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態のコーティングされた負極材をSEMで観察した図である。
【
図3】本開示の一実施形態のラマンスペクトル測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されてもよい。
【0028】
ここで使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0029】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及した場合、これは直に他の部分の上にあってもよいし、あるいはその間に他の部分が伴っていてもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及した場合、その間に他の部分が介在しない。
【0030】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0031】
他に定義しないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0032】
以下、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0033】
以下、各段階について具体的に説明する。
【0034】
リチウム二次電池の負極材は、使用により膨張および収縮を繰り返すにつれ、その表面に割れ(Crack)が発生して比表面積が増加し、これによって電池特性に劣ることがある。そこで、本発明は、充放電による割れを防止すべく、負極材の表面をコーティングする方法を考案した。
【0035】
本開示の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、負極活物質用母材をコーティング材でコーティングする段階;および前記コーティング材でコーティングされたコーティング生成物を熱処理する段階;を含むことができる。
【0036】
前記コーティング材は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であってもよい。また、前記コーティング材は、常温での粘度が3,000cPs以下、具体的には、粘度が1~3,000cPs、より具体的には、粘度が1~2,000cPsであってもよい。つまり、本開示の一実施形態のコーティング材は、常温で粘弾性特性を有することができる。具体的には、コーティング材の軟化点は、0超過~50℃以下、0超過~41℃以下、0超過~30℃以下、または20~30℃以下であってもよい。
【0037】
具体的には、コーティング材は、石炭系コールタール、石油系残渣油、フェノール樹脂および木タールからなる群の中から選択された1種以上であってもよい。ここで、前記石油系残渣油は、熱分解燃料油(pyrolyzed fuel oil、PFO)、ナフサ分解残渣油(Naphtha cracking bottom oil、NCB)、エチレン分解残渣油(Ethylene cracker bottom oil、EBO)、減圧残渣油(Vacuum residue、VR)、脱アスファルト油(De-asphalted oil、DAO)、常圧残渣油(Atmospheric residue、AR)、FCC-DO(Fluid catalytic cracking decant oil)、RFCC-DO(Residue fluid catalytic cracking decant oil)、および重質芳香族油(Heavy aromatic oil)からなる群の中から選択された1種以上であってもよい。
【0038】
前記コーティング材が石炭系コールタール、石油系残渣油、フェノール樹脂および木タールからなる群の中に含まれていても、コーティング材は、軟化点が50℃以下であって常温で粘弾性特性を示さなければならない。
【0039】
これはコーティングする方法とも関連がある。
【0040】
負極活物質をコーティングする方法には、湿式コーティングと、乾式コーティングとがある。湿式コーティングは、コーティングしようとする負極活物質用母材を、コーティング材を含有する溶液に浸漬してコーティングさせる方法であり、乾式コーティングは、別途に溶媒を添加せず、母材とコーティング材とを混合機(剪断力(Shearing force)が加えられた混合機を含む)などの方法で直ちに均一に混合してコーティングさせる方法である。本開示では、コーティング材は、乾式コーティング方法によりコーティングされる。
【0041】
本開示の一実施形態の常温粘弾性特徴があるコーティング材は、液体の性質である流動性を有しているため、流動性がほとんどない一般の固体コーティング材に比べて、負極材の表面をコーティングするcoverage特性が良い。つまり、常温粘弾性特性を有するコーティング物質が負極材の表面に均一に付着し、熱処理により炭化して非晶質カーボンコーティング層が負極材の表面に形成される。例えば、コーティング材がコールタールであれば、コールタールからコールタールピッチ、コールタールピッチからソフトカーボンに相変化し、フェノールの場合は、ハードカーボンに相変化する。
【0042】
最終的に、非晶質カーボンコーティング層が負極材の表面に形成される。負極材の表面に形成される非晶質カーボンコーティング層は、電気化学的に活性が大きい黒鉛のedge面と電解液との直接的な接触を回避すると同時に、Liイオンと溶媒の黒鉛層内への同時挿入反応を抑制可能で不可逆反応を減少させることができる。
【0043】
常温粘弾性物質をコーティング材として用いることは、湿式コーティングと乾式コーティングの利点を同時に取るものである。湿式コーティングの均一なコーティング層形成は常温粘弾性により達成しつつ、コーティング方法としては乾式コーティングを用いることで費用効率性と大量生産性をすべて達成することができるのである。
【0044】
また、前記コーティング材は、蒸留工程で除去可能な低分子量(重量平均分子量(Mw)が60~150)成分を20重量%以下の含有量で含むことができる。
【0045】
本開示の一実施形態は、コーティング材の含有量に関連して残炭量により定義している。つまり、本開示の一実施形態のコーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれる。具体的には、コーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量2~4重量部、より具体的には、コーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量3~4重量部となるように含まれる。
【0046】
コーティング材の残炭量が当該範囲を超える場合には、炭化後に生成されるカーボン層がむしろLiイオン移動の抵抗として作用して充電特性に悪影響を及ぼすことがある。これに対し、残炭量が過度に低いというのは、コーティング材の量が不足するというもので、コーティングされない母材の表面が露出して技術的利点がわずかというデメリットがある。
【0047】
また、コーティング材は、母材100重量部に対して、2.5重量部~50重量部含まれる。具体的には、コーティング材は、母材100重量部に対して、5重量部~25重量部、より具体的には15~20重量部含まれる。
【0048】
前記コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~40重量部であってもよい。具体的には、コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~30重量部であってもよく、より具体的には、コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が15~25重量部であってもよい。
【0049】
本開示の一実施形態の負極活物質用母材は、黒鉛化コークスである。以下、母材として使用可能なコークスについて具体的に説明する。
【0050】
本開示の一実施形態のコークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを70重量部以上、か焼コークスを残部として含むことができる。具体的には、前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを80重量部以上、か焼コークスを残部、より具体的には、前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを90重量部以上、か焼コークスを残部、さらに具体的には、前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを100重量部含むことができる。
【0051】
か焼コークスに比べてグリーンコークスを黒鉛化する場合、黒鉛構造中、グラフェン(Graphene)層のより多いordering(La)とstacking(Lc)が可能であり、これによって気孔分布中のmicro(~2nm)、meso(2~50nm)ポア領域をさらに低くすることができる。これによって、グリーンコークスの含有量が高くなるほど、黒鉛化後に良質の人造黒鉛が形成され、長期充放電特性が改善できる。
【0052】
また、前記グリーンコークスは、石炭系グリーンコークス、石油系グリーンコークス、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0053】
これと共に、本開示の黒鉛化コークスは、前記コークスの範囲に該当すれば良いし、黒鉛化条件は、一般的なコークスの黒鉛化条件に従う。
【0054】
前記コーティング材でコーティングされた生成物を熱処理する段階;を経て、最終的にリチウム二次電池用負極活物質を得る。コーティングされた生成物は、熱処理段階を経て、コーティング材が炭化する。
【0055】
熱処理段階の温度範囲は、1000~1400℃、具体的には1100~1300℃、より具体的には1200~1300℃であってもよい。熱処理段階の時間範囲は、1時間~4時間、具体的には1時間~3時間、好ましくは約2時間であってもよい。
【0056】
本開示の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質は、負極活物質用母材;および前記母材をコーティングするコーティング層を含み、前記コーティング層は、易黒鉛化性カーボン類であって、軟化点が50℃以下であり、前記コーティング材は、負極活物質用母材100重量部に対して、残炭量1~5重量部となるように含まれる。コーティング材および母材については、前記製造方法の説明で詳しく説明したので、以下、省略する。
【0057】
前記負極活物質用母材は、黒鉛化コークスであってもよい。
【0058】
前記コークスは、全体コークス100重量部に対して、グリーンコークスを70重量部以上、か焼コークスは残部として含まれる。
【0059】
前記グリーンコークスは、石炭系グリーンコークス、石油系グリーンコークス、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0060】
前記コーティング材は、常温での粘度が3,000cPs以下である常温粘弾性特性を有するカーボン類であってもよい。
【0061】
前記コーティング材は、コーティング材100重量部に対して、残炭量が10~40重量部であってもよい。
【0062】
前記リチウム二次電池用負極活物質は、ラマンスペクトル測定値のId/Igが0.300~0.450であってもよい。具体的には0.340~0.400、より具体的には0.350~0.390であってもよい。ここで、前記Idは波長1350cm-1で測定されるピーク強度、Igは波長1575cm-1で測定されるピーク強度である。
【0063】
前記本開示の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質は、比表面積が0.9~2.7m2/g、容量が350~380mAh/g、初期効率が90~93%、3C rate(CC)、-0.1V cut off充電特性が160~250mAh/gであってもよい。具体的には、比表面積が1.1~2.6m2/g、容量が350~355mAh/g、初期効率が91~93%、3C rate(CC)、-0.1V cut off充電特性が160~200mAh/gであってもよい。
【0064】
本開示の一実施形態のリチウム二次電池は、正極;負極;および電解質を含み、前記負極は、前記開示された方法で製造されたものである。
【0065】
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例】
【0066】
下記表のような組成でコークスおよびコーティング材を用意した。表1は、コークスの組成であり、表2は、コーティング材の組成である。
【0067】
本実験例で使用したコールタールは、コールタール100重量部に対して、残炭率が20重量部であり、軟化点が25~30℃であり、固定炭素21.94重量%、フェノール樹脂は、フェノール樹脂100重量部に対して、残炭率が40重量部であり、軟化点が37~50℃であり、固定炭素40.05重量%を含むものを使用した。
【0068】
【0069】
【0070】
前記表1、2のように母材およびコーティング材を用意した。当該母材をコーティング材で乾式コーティングした。その組み合わせは、下記表3の通りである。
【0071】
乾式コーティング方法は、planetary mixerを用いて25rpmで5分間混合し、再び100rpmで30分間混合して乾式コーティングした。1250℃で2時間コーティング層を炭化して負極活物質を得た。
【0072】
製造された負極活物質の粒度、比表面積、タップ密度、初期容量、初期効率およびId/Ig Ratioおよび急速充放電を評価して、下記表3に示した。
【0073】
それぞれの測定方法は、次の通りである。
【0074】
-粒度:Laser回折方式、粒度span=(D90-D10)/D50
【0075】
-ラマン:顕微鏡倍率:x20、range:20x20μm、532nm Laser、Power:2.31mW、mode:XY 2D-mapping、exp.Time:1sec、accumulation:1回、ND filter:172で測定後、Id/Ig ratioを計算した。ここで、Idは波長1350cm-1領域での非晶質カーボンのピーク強度、Igは波長1575cm-1の領域での結晶質カーボンのピーク強度を意味する。
【0076】
-比表面積:BET法(Surface area and Porosity analyzer)(Micromeritics、ASAP2020)を用いて比表面積を測定した。
【0077】
-初期容量:充電CC-CV0.1C&5mV(0.005C cutoff)、放電0.1C1.5V cut-off3回測定後の、放電容量(mAh/g)
【0078】
-初期効率:充電CC-CV0.1C&5mV(0.005C cutoff)、放電0.1C1.5V cut-off1回測定後の、(放電容量/充電容量)x100
【0079】
-急速充電特性:充電CC-CV0.1C&5mV(0.005C cutoff)、放電0.1C1.5V cut-off3回測定後、3C-rate CC充電時に-0.1Vで出会う時点の時間(sec)&容量(mAh/g)を測定
【0080】
【0081】
上記の結果、コーティングされないコークス母材の負極活物質に比べて易黒鉛化性カーボン類つまり、コールタールでコーティングされたものが初期容量、比表面積および充電特性に優れており、ラマンId/Ig Ratioが大きくなって表面の非晶質化を確認することができた。
【0082】
これに対し、難黒鉛化性カーボン類のフェノール樹脂をコーティングした場合には、残炭量の制御程度に応じてコーティングされない負極材に比べて急速充電特性が改善されたことが分かる。
【0083】
また、コールタールでコーティングされてもコークス母材のグリーンコークスの比率に応じて初期容量、初期効率、比表面積および充電特性が異なるが、表面の非晶質化はコーティング材によって大きな変化はないことを、ラマンId/Ig Ratioを通して知ることができた。このため、グリーンコークスとコーティング材の適切な含有量の調節により充電特性が向上する傾向性を知ることができた。
【0084】
本発明は実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はすべての面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。
【国際調査報告】