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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】部分的早老症の治療に対する化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240131BHJP
   C07K 5/10 20060101ALI20240131BHJP
   C07K 5/08 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C07K7/06
C07K5/10
C07K5/08
A61K38/06
A61K38/07
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532582
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021082873
(87)【国際公開番号】W WO2022112357
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20306430.8
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20306431.6
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523195050
【氏名又は名称】プロジュライフ
(71)【出願人】
【識別番号】515121759
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】523193089
【氏名又は名称】エコール ナショナル スーペリウール ドゥ シミ ドゥ モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ピエール コー
(72)【発明者】
【氏名】エリック デソー
(72)【発明者】
【氏名】ミュリエル アンブラール-コーシル
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ベルディ
(72)【発明者】
【氏名】ジル シュブラ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ドゥフー
(72)【発明者】
【氏名】クレール ナバーロ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ ペラン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA23
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB21
4C084ZC01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、以下の式(I)の化合物に関し:
特に、個人の疾患を予防又は治療する方法における使用のための化合物、
より詳しくは、プロジェリン又はプレラミンAと関連している疾患を予防又は治療するための化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、nは、0、1、又は2を表し;
は、アルデヒド基又は保護されたアルデヒド基を表し;
、R及びRは、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR基が同一又は異なってもよいという条件で、
H;
任意に、1又は複数のアミノ基又はカルボン酸基で置換されている、1~6の炭素原子を有するアルキル基;
又は、任意に1又は複数のアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基で置換されている、5~10の炭素原子を有するアルカリル基又はアリール基を表し;
、R及びRは、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR基が同一又は異なってもよいという条件で、H、アルギニン(Arg、R)官能基、ロイシン(Leu, L)官能基、ノルロイシン(Nle)官能基、メチオニン(Met、M)官能基、フェニルアラニン(Phe、F)官能基、バリン(Val、V)官能基、ノルバリン(Nva)官能基、又はチロシン(Tyr、Y)官能基を表し;そして、
は以下を表す:
保護基又は
以下の式(II)の基であって:
【化2】
ここで、mは、0、1、又は2を表し;
、R11 及びR13は、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR11基が同一又は異なってもよいという条件で、
H;任意に、1又は複数のアミノ基又はカルボン酸基で置換されている、1~6の炭素原子を有するアルキル基;又は、任意に1又は複数のアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基で置換されている、5~10の炭素原子を有するアルカリル基又はアリール基を表し;
10、R12及びR14は、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR12基が同一又は異なってもよいという条件で、H、アルギニン(Arg、R)官能基、ロイシン(Leu、L)官能基、ノルロイシン(Nle)官能基、メチオニン(Met、M)官能基、フェニルアラニン(Phe、F)官能基、バリン(Val、V)官能基、ノルバリン(Nva)官能基、又はチロシン(Tyr、Y)官能基を表し;
は、結合部分を表し:そして、
15は、アルデヒド基又は保護されたアルデヒド基を表し、n=1である場合は、Rは、アルデヒド基、R、R及びRはすべてHを表し、Rは、Z保護基であり、そして、R及びRの両方は、ロイシン官能基を表し、その時、Rは、ロイシン官能基、ノルバリン官能基、フェニルアラニン官能基を表さない、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
以下の群:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
から選択された、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
疾患、特に、プロジェリン又はプレラミンAに関連する疾患を予防又は治療する方法に使用するための請求項1又は請求項2に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
前記方法は、プロジェリン又はプレラミンAの個人の細胞濃度を低下する、請求項3に記載の使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
前記疾患が、部分的早老症である、請求項3又は請求項4に記載の使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
前記疾患が、早老症、特にハッチンソン・ギルフォード・早老性症候群(HGPS)、
HGPS様症候群、拘束性皮膚障害、下顎骨端異形成症B型(mandibuloacral dysplasia type B)、異常早老性症候群(an atypical progeroid syndrome)、異常ウェルナー症候群、及び
Nestor-Guillermo早老性症候群からなる群より選択される、請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
前記疾患が、早老症又はハッチンソン・ギルフォード・早老性症候群(HGPS)である、請求項3~請求項6のいずれか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、任意に、薬学的に許容されるキャリア又は賦形剤を伴う、医薬品組成物。
【請求項9】
疾患の予防又は治療のための方法における使用のための、請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
前記疾患が、プロジェリン又はプレラミンAに関連する、請求項9に記載の使用のための医薬品組成物。
【請求項11】
前記方法は、プロジェリン又はプレラミンAの個人の細胞濃度を低下する、請求項9又は請求項10に記載の使用のための医薬品組成物。
【請求項12】
前記疾患が、部分的早老症である、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の使用のための医薬品組成物。
【請求項13】
前記疾患が、早老症、特にハッチンソン・ギルフォード・早老性症候群(HGPS)、
HGPS様症候群、拘束性皮膚障害、下顎骨端異形成症B型(mandibuloacral dysplasia type B)、異常早老性症候群(an atypical progeroid syndrome)、異常ウェルナー症候群、及び
Nestor-Guillermo早老性症候群からなる群より選択される、請求項9~請求項12のいずれか1項記載の使用のための医薬品組成物。
【請求項14】
前記疾患が、早老症又はハッチンソン・ギルフォード・早老性症候群(HGPS)である、請求項9~請求項13のいずれか1項に使用のための医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的早老症の治療に有用な新規化合物及びそのような疾患の治療に対するそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
部分的早老性症候群は、核膜の組織化、並びに核質内の核マトリックスの組織化及び機能を制御するタンパク質の変異と関連する。部分的早老性症候群において変異が生じたタンパク質は、ラミンA/Cがコード化されたLMNA、核膜内のそれらのタンパク質パートナー、及びLMNA遺伝子産物の翻訳後処理に関与するタンパク質である。
【0003】
部分的早老性症候群の中で、早老症又はハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS; OMIM #176670)は、4~800万人に1人の子どもに生じる希少な遺伝的障害であり、成長障害、極めて薄い肌、皮下脂肪の減少、脱毛症、骨粗鬆症、心臓病及びアテローム性動脈硬化症を含む、通常の大人の老化に似た症状を伴い、短縮された寿命及び約13.5歳での死をもたらす。
【0004】
この症候群は、ラミンAをコードするLMNA遺伝子のエクソン11内のde novoミスセンス点突然変異c.1824 C>Tによって引き起こされる。この変異は、カルボキシ末端の球状ドメインで50アミノ酸の欠損をもたらすエクソン11内の潜在的なドナースプライス部位(cryptic donor splice site)を活性化し、プロジェリンと呼ばれるプレラミンAの607-656残基を欠損した切り詰めされたタンパク質をもたらす。しかし、プロジェリンはファルネシル化の標的であるC-末端のCAAXボックスを保持している。ZMPTE24のエンドタンパク質分解の切断部位が失われているため、切り詰め型ラミン/プロジェリンは永久にファルネシル化される。
【0005】
ラミンA/Cは、B型ラミンとともに、核内膜の基礎にある繊維状のネットワークである核ラミナの主要構成要素である。このように、細胞レベルでは、HGPS早老症は、核膜構造の劇的な欠陥、核形状の大規模な変化、小疱形成、「ヘルニア」、核の一方の極からいくつかの内部核膜(INM)タンパク質の喪失、及び根底にあるヘテロクロマチンの破壊によって特徴づけられる。ラミンAは核内マトリックスの構成要素でもあることから、HGPS患者細胞におけるその変化は、核小体、スペックル、及び核内構造体などの核機能領域の分布及び/又は構造構成に影響を及ぼすかもしれない。核マトリックス組成の異常は、DNA修復からRNAの転写やスプライシングに至るまで、ゲノムの不安定化をもたらすDNAやRNAの代謝段階における欠損をももたらす。核の代謝異常、並びに細胞周期、代謝経路、細胞コンパートメント機能へのその影響は、細胞の老化につながる。
【0006】
プレラミンAの成熟に影響を与える他のLMNA変異は、HGPS様早老性症候群をもたらし、その重症度は生成されたプロジェリン/プレラミンAアイソフォーム量に本質的に依存する(Barthelemyら(2015).Eur J Hum Genet 23(8): 1051-1061).また、周産期致死性の遺伝性皮膚症である拘束性皮膚障害(RD)と、比較的軽度の早老性症候群であるB型下顎骨端異形成症(type B mandibuloacral dysplasia)の2つの他の症候群は、プレラミンAの病理的蓄積に関連しており、主にZMPSTE24の変異に起因する。さらに、HGPSや他のプレラミンA関連疾患と臨床的特徴が重なるいくつかの異常早老性症候群(atypical progeroid syndromes APS)又は異常ウェルナー症候群(atypical Werner syndrome AWS)は、LMNA遺伝子のミスセンス変異と関連している(Grelet et al. (2019).そのほか、Nestor-Guillermo早老性症候群は、ラミンAやエメリンの核内タンパク質パートナーで、そして、クロマチンと核膜をつなぐ、BAFをコードするBANF1の変異によって起こる他の早老性疾患である(Cabanillas et al. Am J Med Genet A 155A: 2617-2625)。
【0007】
近年、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)であるロナファルニブが、ハッチンソン-ギルフォード早老性症候群による死亡リスクの低減、および特定の処理不全早老性ラミノパチー(processing-deficient progeroid laminopathies)の治療に対して、米国連邦医薬品局(FDA)に承認された。実際、ロナファルニブ治療は、プロジェリア患者の死亡率低下と関連することが示されている(Gordon et al. (2018) JAMA 319: 1687-1695)。しかしながら、インスリン抵抗性、脂肪異栄養症、関節拘縮、皮膚など、本疾患のいくつかの側面は、本治療によって改善されない(Gordonら(2012)Proc. Natl.Acad. Sci. USA 109:16666-16671)。
【0008】
そのため、部分的早老性症候群の代替治療のニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、最近、HPGS個人の細胞中のプロジェリンレベルを低下させるのに有効である新規化合物を合成した。
【0010】
従って、本発明は、下記式(I)の化合物:
【化1】
nは、0、1、又は2を表し;
R0は、アルデヒド基又は保護されたアルデヒド基を表し;
R2、R4及びR6は、同一又は異なって、n=2の時、当該2つR4基が同一又は異なってもよいという条件で、
H(水素原子);
任意に、1又は複数のアミノ基又はカルボン酸基で置換されている、1~6の炭素原子を有するアルキル基;
又は、任意に1又は複数のアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基で置換されている、5~10の炭素原子を有するアルカリル基又はアリール基を表し;
特に、イソブチル基、イソペンチル基、フェニルエチル基またはヒドロキシフェニルエチル基を表し;
R1、R3 及びR5は、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR3基が同一又は異なってもよいという条件で、
H(水素原子)、アルギニン(Arg, R)官能基、ロイシン(Leu, L)官能基、ノルロイシン(Nle)官能基、 メチオニン(Met、M)官能基、 フェニルアラニン(Phe, F)官能基、 バリン(Val、V)官能基、 ノルバリン(Nva)官能基、又はチロシン(Tyr、Y)官能基を表し;そして、
R7は以下を表す:
保護基又は
以下の式(II)の基であって:
【化2】
ここで、mは、0、1、又は2を表し;
R9、R11 及びR13は、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR11基が同一又は異なってもよいという条件で、
H(水素原子);
任意に、1又は複数のアミノ基又はカルボン酸基で置換されている、1~6の炭素原子を有するアルキル基;
又は、任意に1又は複数のアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基で置換されている、5~10の炭素原子を有するアルカリル基又はアリール基;
特に、イソブチル基、イソペンチル基、フェニルエチル基またはヒドロキシフェニルエチル基を表し;
R10、R12 及びR14は、同一又は異なって、n=2の時、当該2つのR12基が同一又は異なってもよいという条件で、
H(水素原子)、アルギニン(Arg, R)官能基、ロイシン(Leu, L)官能基、ノルロイシン(Nle)官能基、 メチオニン(Met、M)官能基、 フェニルアラニン(Phe, F)官能基、 バリン(Val、V)官能基、 ノルバリン(Nva)官能基、又はチロシン(Tyr、Y)官能基を表し;
R8は、リンカー部分を表し:そして、
R15は、アルデヒド基又は保護されたアルデヒド基を表し:
又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0011】
好ましい実施形態において、本発明は、n=1である場合は、Rは、アルデヒド基、R, R及びRはすべてH(水素原子)を表し、Rは、Z保護基であり、そして、R及びRの両方は、ロイシン官能基を表し、その時、Rは、ロイシン官能基、ノルバリン官能基、フェニルアラニン官能基を表さない、上記で定義された式(I)の化合物に関する。
【0012】
他の好ましい実施形態において、本発明は、上記の式(I)の化合物に関するが、ただし以下のものとは異なる:
【化3】
【0013】
本発明はまた、医薬品としての使用、または疾患、特に個体におけるプロジェリンまたはプレラミンAに関連する疾患を予防または治療するための方法における使用のための、上で定義された式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩に関する。
【0014】
本発明はまた、疾患、特に個人におけるプロジェリンまたはプレラミンAに関連する疾患の予防または治療を意図した医薬品の製造のための、上記で定義された式(I)の化合物、またはその医薬的に許容できる塩の使用に関する。
【0015】
本発明はまた、任意に少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を伴って、好ましくは、疾患、特に個人におけるプロジェリンまたはプレラミンAに関連する疾患の予防または治療方法における使用のための、有効成分として、上記で定義された式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬品組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、疾患、特に固体におけるプロジェリンまたはプレラミンAに関連する疾患の予防または治療のための方法であって、上記で定義した式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、または上記で定義した医薬組成物の有効量を当該個体に投与することを含む方法に関する。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本明細書で意図されるように、「含む(comprising)」という語は、「含む(include)」又は「含む(contain)」と同義である。主題物が1つ又はいくつかの特徴を含む(comprise)と言われる場合、言及された特徴以外の特徴も主題物に含まれ得ることを意味する。逆に、「から構成される(constituted of)」という表現は、「からなる(consisting of)」と同義である。ある主題が1つまたはいくつかの特徴からなる(consist of)と言われる場合、言及された特徴以外の特徴がその主題に含まれないことを意味するものである。
【0018】
化合物
式(I)の化合物は、当業者によって、特に固相ペプチド合成(SPPS)によって容易に合成することができる。
【0019】
ペプチドのN末端を保護するための保護基は当業者によく知られており、そして、任意のそのような保護基を本発明に従って使用されてもよい。しかしながら、本発明による保護基は、カルボキシベンジル(ZまたはCbz)、アセチル(Ac)、ジクロロベンジル、ピラジニルカルボニル、ジフルオロフェニルからなる群から選択されることが好ましい。
【0020】
本明細書で意図されるように、アルデヒド基は、以下の式:
【化4】
の基である。
【0021】
保護されたアルデヒド基は、当業者によく知られており、そして、任意のそのような保護されたアルデヒド基を本発明に従って使用されてもよい。しかしながら、本発明による保護されたアルデヒド基は、アミド、カルボン酸、セミカルバゾン、イミン、オキシム、ヒドラゾン、重亜硫酸ナトリウムおよびチアゾリジンからなる群から選択されることが好ましい。
より好ましくは、本発明による前記保護されたアルデヒド基は、以下の式で表される基から選択される:
【化5】
ここで、R’はH(水素原子)又は1~100の炭素原子、好ましくは、1~50の炭素原子であり、そして、より好ましくは、1~20の炭素原子を含む基を表す。
R’が1~20、50または100個の炭素原子を含む基を表す場合、それは好ましくは極性基またはポリマーライゲーション基である。最も好ましくは、本発明による保護されたアルデヒド基は、以下の式で表される:
【化6】
【0022】
本明細書で意図されるように、リンカー部分は、2つのアミン基を架橋することができる任意の基を意味する。好ましくは、当該リンカー部分は、3~20の炭素原子を有し、そして、少なくとも2のカルボン酸基を含む。当業者にとって明らかであるとおり、前記好ましいリンカー部分の2つのカルボン酸基は、2つのアミン基と、アミド結合を形成し、当該リンカー部分は架橋をしている。より好ましくは、前記リンカー部分は、前記2つのアミン基を架橋している時は、以下の式を持っている基から選択される:
【化7】
【0023】
当業者にとって明らかである通り、Rが式(II)の基を表すとき、前記式(I)の化合物は、以下の式(III)で表せられ得る:
【化8】
【0024】
好ましくは、本発明による式(I)の化合物は、以下の群からなる基から選択される:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0025】
疾患
本明細書で意図されるように、プレラミンAまたはプロジェリンに関連する疾患は、プレラミンAまたはプロジェリン、すなわちプレラミンAのファルネシル化切り詰め型、特に残基607-656を欠く形態の細胞蓄積によって引き起こされる疾患に関する。
【0026】
好ましくは、本発明による疾患は、部分的早老症、特にラミンA/CをコードするLMNAに関連し、より好ましくは、早老症、ハッチンソン・ギルフォード・早老性症候群(HGPS)、HGPS様症候群、拘束性皮膚障害、下顎骨端異形成症B型(mandibuloacral dysplasia type B)、異常早老性症候群(an atypical progeroid syndrome)、異常ウェルナー症候群、及びNestor-Guillermo早老性症候群からなる群より選択される。より好ましくは、本発明に関する前記疾患は、早老症又はハッチンソン・ギルフォード・早老性症候群(HGPS)である。
【0027】
治療
好ましくは、本発明による方法は、プロジェリンまたはプレラミンAの個人の細胞内濃度を減少させる。
【0028】
「減少」は、本発明による方法が個人に適用される前の状況を基準として定義される。タンパク質の細胞内濃度を決定するための多数の方法は、当業者に知られている。例として、個人から得られた生検材料の細胞抽出物に対してELISAアッセイを実施することができる。間接的には、定量的RT-PCRによって、タンパク質をコードするmRNAの濃度を決定することも可能である。
【0029】
個人
好ましくは、上記で定義された個人は、ヒトである。好ましくは、上記で定義された個人は、プロジェリンまたはプレラミンAに関連する疾患、特に早老症またはHGPSに罹患するリスクがあるか、または罹患している。
【0030】
医薬品組成物
本発明による式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤を含むことができる医薬組成物中に含まれ得る。薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤は、分散剤、可溶化剤、ネブライザー、安定剤、防腐剤などから選択することができる。その上、製剤、特に液体及び/又は注射剤に使用されることができる薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤は、好ましくは、スクロース、ラクトース、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ラクトース一水和物、マグネシウムステアレート、微結晶セルロース、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油、アカシアガム、リポソーム等から選択される。
【0031】
投与
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩又は上記で定義される医薬組成物は、経口、非経口、粘膜性または皮膚性で投与されてもよい。非経口経路は、好ましくは、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内投与を含むが、後者はむしろ動物に留保される。粘膜経路は、好ましくは、鼻腔内投与、口腔咽頭投与、肺内投与又は直腸粘膜を介した投与を含む。皮膚経路は、有利には、経皮経路、特に経皮デバイス、典型的にはパッチを介した経路を含む。
【0032】
本発明による式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩又は上記で定義された医薬組成物は、注射液または懸濁液、ゲル、オイル、錠剤、座薬、粉末、ゲルカプセル、カプセル、エアゾールなどの形態で、任意にガレノス製剤または徐放性および/または遅延放出をもたらすデバイスによって処方されてもよい。このタイプの製剤には、セルロース、炭酸塩、デンプン、または承認されたバイオポリマー(例えばPEG、キトサン、ヒアルロン酸ポリマー)のような薬剤が有利に使用される。バイオポリマーと薬物のコンジュゲートで構成されたガレノス形態は、封入後にさらに静脈注射される患者の赤血球に封入することができ、それにより薬物放出の徐放及び/又は遅延が可能となる。
【0033】
本発明による式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩または上記で定義された医薬組成物は、上記で定義された個人に、上記で定義された式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の0.1mg~1000mg、好ましくは0.1mg~100mg、より好ましくは1mg~100mgを投与されてもよい。もちろん、当業者は、治療される個人の体重または体表面積に応じて、上記で定義された式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の用量を調整してもよい。好ましくは、本発明による式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の用量範囲は、0.1mg/日~1000mg/日、好ましくは0.1mg/日~100mg/日、より好ましくは1mg/日~100mg/日の間である。
【0034】
本発明は、以下の非制限的な実施例によりさらに明確に述べられる。
【実施例
【0035】
実施例1―4
以下の化合物を合成した:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
代表的な化合物の合成は以下で詳述する。
【0036】
一般的な方法
すべてのペプチジルアルデヒドは、Weinreb amide結合リンカー(N-Fmoc-N-メトキシ-3-アミノプロピオン酸)を用いて固相ペプチド合成(SPPS)により調製した。リチウムアルミニウムによるこのアミドの還元は、ペプチジルアルデヒドをもたらす(Fehrentz et al., Tet. Let. 36, 143, 7871-7874 (1995))。2の異なるレジンを使用している:SPPS工程の前に合成したFmoc-N-メトキシ-3-アミノプロピオン酸で機能化した、メルク社で購入した市販のワインレブAMレジンと、アジレント・テクノロジー社で購入したRAM amphisphereレジン。異なるN-保護基およびアミノ酸を有するペプチジルアルデヒドを、実施例1および2で定義したとおりに調製した。ペプチド-ペプトイドハイブリッドを実施例3で示した手順に従って調製し、そして、ペプチジルアルデヒドのダイマーを実施例4に従って調製した。すべての化合物をプロトン核磁気共鳴(NMR H)によって特徴付け、そして、それらの純度は質量分析(MS)に結合した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定した。
【0037】
すべてのFmoc-アミノ酸誘導体および(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HATU)はIris Biotech GmbHから購入した。ピペリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(TIS)、ジクロロメタン(DCM)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリルおよび1,2-ジクロロエタン(DCE)はSigma Aldrichより提供された。Fmoc Rink amide AmphiSpheres(登録商標)40 RAM 0.39mmol/g 75-150μmレジンは、アジレント・テクノロジー社から購入した。HPLCおよびLCMSに使用したすべての溶媒は、Sigma Aldrichから勾配グレードまたは試薬の品質で購入した。すべての最終化合物は逆相HPLCで精製し、そして、LC-MSで当該純度を評価した。
【0038】
LC-MS分析用のサンプルは、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水混合液(50:50、v/v)で調製した。当該LC-MSシステムは、Water Micromass ZQ分光計(エレクトロスプレーイオン化モード、ESI+)と結合したWaters Alliance 2695 HPLCで構成されていた。すべての分析は、Phenomenex Onyx逆相カラム(25x4.6mm)を使用して実施した。流速3mL/分、2.5分かけてBを0%から100%まで勾配を使用した。溶離液A:水/0.1%ギ酸;溶離液B:アセトニトリル/0.1%ギ酸。UV検出は214nmで行った。正イオンエレクトロスプレーマススペクトルは、溶媒流速100~500μL/分で取得した。窒素をネブライジングガス及び乾燥ガスの両方に使用した。当該データは0.1秒間隔のスキャンモードで取得し、10のスキャンを合計して最終スペクトルを得た。
【0039】
Fmoc-N-メトキシ-3-アミノプロピオン酸の合成
ベンジル3-アミノ-N-メトキシプロパノエイトの調製
3.34g(40mmol)メトキシルアミン塩酸塩を100mLのアセトニトリル及び13mLのDIEA(80mmol)に溶解した。その後、3.04mLのベンジルアクリレート(20mmol)を添加した。前記混合物を還流で20時間攪拌した。その後、当該溶媒を減圧下で濃縮して乾燥させ、そして、酢酸エチルを添加した。得られた有機溶液を水で2回、塩化ナトリウム(NaCl)の飽和溶液で1回洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして、減圧下で濃縮して、粗収率76%のわずかに茶色の油状物3.2gを得た。
【0040】
ベンジル3-アミノ-N-Fmoc-N-メトキシ-プロパノエイトの調製
水(20mL)中の3.2gの3-アミノ-N-メトキシプロパノエイト(15mmol)に、2.085mLのトリエチルアミン(15mmol, 1eq.)と15mLのジオキサンに可溶なl3.48gのFmoc-C(13.5mmol,0.9eq.)を加えた。室温で2時間撹拌した後、酢酸エチル(100mL)を加え、そして、得られた溶液を0.1MのHCl、飽和KHSOおよび飽和NaClの溶液で2回洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして真空下で濃縮した。4.88g(11.3mmol)がわずかに茶色のオイルとして得られ(粗収率:75%)、そして、次の化合物の調製にさらに処理せずに使用した。
【0041】
3-アミノ-N-Fmoc-メトキシ-プロパン酸の調製
4.88gの3-アミノ-N-Fmoc-N-メトキシ-プロパノエイト(11.3mmol)を、10%Pd/C触媒の存在下、EtOH(50mL)中で室温で28時間水素添加した。その後、触媒をセライト上での濾過により除去し、そして、得られた溶液を真空下で濃縮して、3.62g(10.61mmol、粗収率:94%)のわずかに茶色のオイルを得た。次に、この生成物をフラッシュクロマトグラフィー(移動相としてジクロロメタンおよびメタノール)で精製して、1.8グラム(5.3mmol)の純粋な3-アミノ-N-Fmoc-N-メトキシプロピオン酸(最終収率:25%)を得た。
【0042】
実施例1:Weinreb Linkerで機能を持たせたAmphisphere RAMレジン上での化合物6(Z-ロイシン-フェニルアラニン-ロイシナール)の調製
【化13】
256mg(0.1mmol)のAmphisphere RAMレジン(0.39mmol/g.75-150μm)をジクロロメタン(DCM)中で15分間膨潤した。次に、レジンのアミンをPip/DMF20%混合液中でそのFmoc基から脱保護した(2×5分)。当該レジンをジメチルホルムアミド(DMF)およびDCMで洗浄した。
【0043】
160mgの3-アミノ-N-Fmoc-N-メトキシ-プロパン酸(0.5mmol、5eq.)を2mLのDMFに溶解させ、そして、レジンを含むシリンジに添加した。170μLのDIPEA(10eq.)と1mLの0.5MのHATU(0.5mmol, 5eq.)を添加した。当該反応を室温で1時間撹拌した。カイザーテスト(一級アミンの検出)でモニターした反応の完了後、当該レジンをDMFおよびDCMで洗浄した。次に、DMF中の20%ピペリジンでのレジンの処理(2×2.5分)によりFmoc保護基を除去し、そして、当該レジンをDMFおよびDCMで洗浄した。
【0044】
その後、HATU/DIPEAをカップリング試薬として用い、Fmoc SPPSによりペプチドをレジン上に伸長させた。アミノ酸カップリングは、アミノ酸溶液(0.5M)、DIPEA及びHATU溶液(0.5M)を用いて行った。1mLのアミノ酸溶液(0.5mmol、5eq.)を最初に導入し、次に180μLのDIPEA(1mmol、10eq.)と1mLの0.5MのHATU溶液(0.5mmol,5eq.)を加えた。前記カップリング反応を2回行い、その後、20%Pip/DMF混合液でFmoc基を脱保護した。
【表2】
その後、当該レジンをDMF及びDCMにより洗浄し、そして乾燥させた。
【0045】
次に、レジンを20mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中で適度な攪拌とアルゴンバブリング下、0℃で15分間膨潤させた。無水THF中の市販の800μLの1M(8eq.)LiAlHをゆっくりと導入し、そして、当該反応を0℃で45分間撹拌した後、30mLの5%KHSO水溶液でクエンチし、そして、15分間撹拌下に放置した。その後、懸濁液を濾過し、そして、DCMで洗浄した。次いで、ペプチドアルデヒドを水溶液からDCMで抽出した(4回)。次に、合わせた有機相を飽和NaCl水溶液で1回洗浄し、そして、MgSO上で乾燥させた。当該溶液を濾過し、そして、前記有機溶媒を減圧下で蒸発させた。45mgの生成物を得た。Z-Leu-Phe-ロイシナールペプチドを、移動相としてアセトニトリル/水0.1%トリフルオロ酢酸を用いる分取逆相液体クロマトグラフィーにより精製した。純度100%の25.5mgのZ-Leu-Phe-ロイシナールを得た(収率:50%)
【0046】
実施例2:市販のWeinreb Resin上での化合物4(Z-フェニルアラニン-ロイシン-ロイシナール)の調製。
370mg(0.2mmol)の市販のWeinreb Resin(0.54mmol/g、100~200μm)をDCM中で15分間膨潤した。DMF中20%ピペリジンでレジンを処理することによりFmoc保護基を除去し(2×2.5分)、そして、レジンをDMFおよびDCMで洗浄した。
【0047】
当該ペプチドの伸長は、上述の通り実行した。
【表3】
【0048】
次に、レジンを15mLの無水THFで、適度な攪拌とアルゴンバブリング下、0℃で15分間膨潤した。無水THF中の市販の1mL(5eq)の1MのLiAlHをゆっくりと導入し、そして、当該反応を0℃で30分間撹拌下に放置した後、1MのKHSO水溶液の数滴でクエンチし、そして、15分間撹拌した。その後、懸濁液を濾過し、THFおよび酢酸エチルで洗浄した。当該溶液を酢酸エチルで希釈し、5%KHSO、1MのNaHCOおよび飽和NaClの水溶液で洗浄した後、MgSO上で乾燥した。当該溶液を濾過し、そして、前記有機溶媒を減圧下で蒸発させた。粗化合物61mgを得て、そして、アセトニトリル/水0.1%トリフルオロ酢酸を移動相とする分取逆相液体クロマトグラフィーで精製し、純度100%の表題アルデヒドZ-Fe-Leu-ロイシナール(収率:18%)18.16mgを得た。
【0049】
実施例3:市販のWeinreb Resin上での化合物11(Z-Leu-Leu-N(イソペンチルアミン)グリシナール)の調製
252mg(0.2mmol)の市販のWeinreb Resin(0.62mmol/g, 75-150μm)をDCM中で15分間膨潤した。DMF中20%ピペリジンでレジンを処理(2x2.5分)することによりFmoc保護基を除去し、そして、当該レジンをDMFおよびDCMで洗浄した。前記反応はクロラニルテストでモニターした。
【0050】
278mg(2mmol、10eq)のブロモ酢酸を2mLのDMFに可溶化し、そして、レジンを入れたシリンジに導入した。208μLのN,N′-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(2mmol,10 eq.)と1mLの0.2M(1eq.)4-ジメチルアミノピリジン (DMAP)を加え、そして、当該懸濁液を1時間撹拌下に放置した。前記反応を、同条件で2回目を繰り返した。前記レジンをDMSO、DMF、及びDCMで洗浄し、その後、クロラニルテストで2級メトキシルアミンがアシル化されたかどうかを確認した。
【0051】
DMSO中の2mLの1.5M(1.0mmol,5eq.)イソペンチルアミンを前記レジンに加え、そして、前記反応を室温で一晩攪拌した。その後、前記レジンをDMFおよびDCMで洗浄し、そして、クロラニルテストで2級アミンの存在をモニターした。
【0052】
1mLのDMF中の1M(1.0mmol,5eq.)Boc-Leu-OH.HOをシリンジに加えて、続いて320μLのDIPEA(10eq.)と2mLの0.5M(1.0mmol,5eq.)HATUを加えた。前記反応は1時間30分撹拌した。前記カップリングを、同条件で2回目を繰り返した。当該レジンをDMFとDCMで洗浄し、そして、カイザーテストを実施して反応の完了をモニターした。
【0053】
当該レジンを4mLのTFA/DCM(1/1)で90分間処理することにより、Boc保護を除去した。その後、当該レジンをイソプロパノール、DMF、及びDCMで洗浄した。
【0054】
DMF(2mL)中の0.5M(5eq.)Z-Leu-OHを208μLのDIC と15分間反応させた。次に、2mLの0.5Mのoxyma pure溶液を加え、そして、前記反応混合物をさらに15分間撹拌して、対応する活性エステルを生成させた。次に、予め活性化したZ-Leu-OHをレジンに添加し、そして、前記反応を一晩放置した。その後、当該レジンをDMFとDCMで洗浄し、そして、カイザーテストで遊離アミノ基のアシル化をモニターした。
【0055】
Weinreb amide還元は、5eq.のLiAlHを用いて前述と同様に実施した。処理後、オイルとして59mgの粗化合物を得た。
【0056】
分取HPLCによる精製の後、1.8mgの純粋Z-Leu-Leu-N(イソペンチルアミン)グリシナールを得た。(収率:2%)
【0057】
実施例4:化合物14(ダイマー)の調製
当該ペプチジルFmoc-Leu-Leu-Leu-レジンは、実施例1に記載されたように、従来のSPPSによってWeinreb Linkerで機能を持たせたRAM amphisphere上で調製した。
【0058】
次に、0.8gのペプチジルレジン(0.2mmolペプチド当量)を、Fmoc除去のためにPip/DMF 20:80混合液2×5分により処理した。次に、レジンをTFA/DCM 50:50混合物(6mL)によって1時間30分処理した。前記懸濁液を濾過し、そして、DCMで3回洗浄した。前記有機溶液を減圧下で蒸発させ、そして、当該残留物をエーテル中で沈殿させ、そして、遠心分離した。エーテルを除去し、そして、86mgの粗化合物を回収した(0.18mmol)。当該0.18mmolのH-Leu-Leu-Weinreb amideを2mLのDMFに溶解した。次に、m-フェニル16mg(0.08mmol, 0.45eq.)酢酸,160μL(5eq.)DIEPAおよびDMF(2.5eq.)中の0.9mLの0.5MのHATUを加え、そして、当該溶液を24時間撹拌した。
【0059】
その後、当該溶液を水で希釈し、そして、当該生成物をDCMで抽出した。有機相をMgSO上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。次に、当該生成物を分取HPLCで精製し、そして、凍結乾燥して、22mgのタイトルのダイマーを得た。
【0060】
22mg(0.002mmol)の前記精製物をアルゴンバブリング下で10mL無水THFに溶解し、そして、15分間攪拌した。無水THF中の市販の0.64mL(16eq.)の1MのLiAlHをゆっくりと導入し、そして、前記反応を0℃で1時間撹拌下に放置した後、1MのKHSO水溶液の数滴でクエンチし、15分間撹拌下に放置し、その後、1MのKHSO水溶液の数滴でクエンチし、15分間攪拌した。当該溶液をDCMで希釈し、そして、有機相を5%のKHSO、飽和NaHCOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして、減圧下で蒸発した。43mgの生成物が得られ、そして、分取HPLCで精製して、純度90%の所望のダイマーペプチド4.13mg(収率=5%)を得た。
【0061】
実施例5:プロジェリンー減少効果
材料と方法
繊維芽細胞培養と処置
継代18~24までのHGPSドナーからの線維芽細胞を、15%FBS(Life Technologies)、2mM L-グルタミン(Life Technologies)および100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を含むDMEM低グルコース(Life Technologies, Courtaboeuf, France)において、5%COを含む湿潤環境下で37℃において培養した。
【0062】
線維芽細胞を、本発明による化合物3、4、6、7、8、12、13、14および16の存在下で72時間培養し、48時間後に更新した。比較化合物1(Z-Leu-Leu-ロイシナール)をコントロールとして添加した。すべての分子をDMSOで10mMに希釈した。100μM~0.0001nMの濃度を用いて、96ウェルプレートで細胞生存率を試験した。薬物効率は6ウェルプレートで評価した。
【0063】
細胞生存率及び毒性の評価
アッセイは96ウェルマイクロプレートで実施した。処理から72時間後、当該細胞を100μLのDPBS(カルシウムなし、マグネシウムなし)で1回洗浄した。その後、DPBSで10%に希釈した100μl PrestoBlue溶液(Life Technologies)を各ウェルに添加した。プレートは37℃で30分間インキュベートした。蛍光強度は、マルチウェルプレートリーダー(Glomax microplate reader, Promega, Charbonnieres les Bains, France)で、グリーンフィルター(励起525nm/放出580-640nm)を用いて測定した。蛍光強度の値は、Prism Software(GraphPad, San Diego, CA)にペーストし、用量反応解析を実施した。CV25は、HGPS線維芽細胞の生存率が25%である薬物濃度に相当する。CV75は、HGPS線維芽細胞の生存率が75%である薬物濃度に対応する。
【0064】
タンパク質抽出
全繊維芽細胞タンパク質は、1Xプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Life Technologies)を含む100μLのNP40(Invitrogen)中での72時間処理後に抽出した。ライセートを、10分間隔でボルテックスしながら、30分間氷上でインキュベートした。最後に、それらを4回超音波処理(各20秒)し、そして、その後、13000rpmで4℃、10分間遠心分離した。
【0065】
タンパク質濃度を、BCA(登録商標)タンパク質アッセイ(Life Technologies)を用いて決定した。
【0066】
ウェスタンブロット
タンパク質ライセートをNupage Novex 4-12% Bis-Tris Midi precast gels(Life Technologies)上で分離し、そして、Immobilon-FL PVDF membrane (Millipore, Molsheim, France)に移した。膜を近赤外蛍光ウェスタンブロッティング用の1:1希釈ブロッキングバッファー(Rockland, Le Perray, France)で1時間ブロッキングした。ブロックした膜を一次抗体と4℃で一晩インキュベートし、その後それらを洗浄し、そして、IR-Dyeコンジュゲート二次抗体とRTで一時間インキュベートした。結合した抗体は、Odysseyイメージングシステム(Li-COR Biosciences, Bad Homburg, Germany)を用いて、メーカーの説明書に従って検出及び解析した。Revert Protein Stain (Li-COR Biosciences)を、2つの従来のタンパク質ローディングコントロールGAPDHとアクチンに加えて、総タンパク質ローディングコントロールとして使用した。プロジェリンおよびSRSF1レベルは、Li-CORが開発したImage Studio Lite(登録商標)ソフトウェアを使用して、Revert染色により定量化および正規化した。
【0067】
抗体
本研究では以下の抗体を使用した:ウサギモノクローナル抗ラミンA/C(ab108922, 1/1000, Abcam, Amsterdam, Netherlands)、ウサギモノクローナル抗SRSF1(SF2)(ab129108,1/1000,Abcam)、マウスモノクローナル抗GAPDH(MAB374,1/40000,Millipore,Molsheim,France)およびマウスモノクローナル抗アクチン(MAB1501R,1/10000,Millipore)。IR-Dye 800CWまたは680とコンジュゲートした二次抗体は、メーカーの説明書に従って使用した(926-32213および926-68072,1/5000,Li-COR Biosciences)。
【0068】
結果
CV25で試験した化合物による、T=72時間のHGPS細胞でのプロジェリン発現の平均減少(DMSOコントロールで測定した濃度のパーセンテージで表示)を、ウェスタンブロット分析で決定し、そして、タンパク質の総量(Revert protein stain)に対して正規化(n=3(範囲)の平均)したものを、次の表に示した:
【表4】
【0069】
CV75で試験した化合物による、T=72時間のHGPS細胞でのプロジェリン発現(DMSOコントロールで測定した濃度のパーセンテージで表示)の平均変化(減少(-)または増加)を、ウェスタンブロット分析で決定し、そして、タンパク質の総量(Revert protein stain)に対して正規化(n=3(範囲)の平均)したものを、次の表に示した:
【表5】
【0070】
本発明による化合物は、早老症の治療効果を示す強力な抗プロジェリン活性を有することが示されうる。
【国際調査報告】