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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ねじりばね駆動固定用量注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240131BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/315 550X
A61M5/24 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542982
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022050769
(87)【国際公開番号】W WO2022152864
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21152143.0
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン, ニコライ エウセビウス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066HH03
4C066HH13
4C066HH22
(57)【要約】
本発明は、実質的に等しくサイズ設定された用量体積の液剤を分注するための医療注射装置に関する。注射は、ねじりばねを回転駆動構造に接続するコネクタ要素の回転によって各用量放出の前に引っ張られるねじりばねによって、駆動される。用量放出は、コネクタ要素が特定の回転位置に回転したときにのみ軸方向に移動することができる、回転駆動構造の軸方向移動によって制御される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の数の、かつ等しくサイズ設定された固定用量体積の液剤を分注するためのねじりばね駆動注射装置であって、
分注されるべき前記液剤を収容するカートリッジ(10)を固定する、ハウジング構造(1、20)と、
前記カートリッジ(10)から前記液剤を押し出すためのピストンロッド(15)と、
前記ピストンロッド(15)が少なくとも投与中に回転可能な駆動構造(30)とともに回転するように、前記ピストンロッド(15)と動作可能に係合する、回転可能な駆動構造(30)と、
少なくとも投与中に前記ハウジング構造(1、20)に固定され、かつピストンロッド(15)が、ナット要素(25)に対する相対的な前記ピストンロッド(15)の回転時に螺旋状に移動するように、前記ピストンロッド(15)に対してねじ込まれる(16、26)、ナット要素(25)と、
前記ハウジング構造(1、2)に対してコネクタ要素(50)が相対的に回転することを可能にするラチェットインターフェース(7、51)によって、前記ハウジング構造(1、2)に結合される、コネクタ要素(50)と、
前記回転可能な駆動構造(30)に対する相対的な前記コネクタ要素(50)の回転によってトルクが前記ねじりばね(95)に蓄積されるように、前記回転可能な駆動構造(30)と前記コネクタ要素(50)との間に動作可能に結合されたねじりばね(95)であって、前記ハウジング構造(1、20)と前記コネクタ要素(50)との間の前記ラチェットインターフェース(7、51)が、前記ねじりばね(95)の前記トルクに抗して前記コネクタ要素(50)をその回転位置に保持することができる、ねじりばね(95)と、を備え、
前記回転可能な駆動構造(30)が、第1の位置と第2の位置との間で軸方向に移動可能であり、
前記第1の位置が、前記回転可能な駆動構造が前記ハウジング構造(1、20)に対して回転不可能に固定されている位置であり、
前記第2の位置が、前記回転可能な駆動構造が、前記ハウジング構造(1、20)から解放され、かつ前記ねじりばね(95)に保存される前記トルクの影響下で回転することができる位置であり、
前記ねじりばね(95)が、前記回転可能な駆動構造(30)が前記第1の位置に維持され、前記コネクタ要素(50)が初期位置から用量位置に回転可能である状態で、前記回転可能な駆動構造(30)に対する相対的な前記コネクタ要素(50)の回転によって、前記所定の数の、かつ等しくサイズ設定された固定用量体積のうちの1つを選択するときに引っ張られ、
前記所定の数の、かつ等しくサイズ設定された固定用量体積のうちの前記選択された1つが、前記回転駆動構造(30)が前記第1の位置から、かつ前記第2の位置へと軸方向に移動するときに、前記回転可能な駆動構造(30)が前記ねじりばね(95)の影響下で、前記用量位置から前記初期位置に回転することを可能にするように、個別に放出され、
前記回転可能な駆動構造(30)および前記コネクタ要素(50)に、前記回転可能な駆動構造(30)が前記用量位置に回転したとき、および前記用量位置に位置付けられたときに、前記回転可能な駆動構造(30)が前記第1の位置から前記第2の位置へと軸方向に移動されることを可能にする係合手段(35、56)が提供される、ねじりばね駆動注射装置。
【請求項2】
吐出されるべき前記所定の数の、かつ等しくサイズ設定された固定用量体積のうちの1つを回転可能に選択するための回転選択要素(40)が、前記ハウジング構造(1、20)の近位端に提供される、請求項1に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項3】
前記回転選択要素(40)が、前記所定の、かつ等しくサイズ設定された固定用量体積を選択するときに、前記コネクタ要素(50)が前記選択要素(40)とともに回転されるように、前記コネクタ要素(50)に対して回転可能に結合され、前記選択要素(40)が、前記コネクタ要素(50)に対して相対的に軸方向に移動可能であり、その結果、前記選択要素(40)が、前記コネクタ要素(50)に対して軸方向に移動することが可能である、請求項2に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項4】
前記回転選択要素(40)が、前記選択要素(40)および前記回転可能な駆動構造(30)が前記軸方向にともに移動して、前記回転可能な駆動構造(30)を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させて、それによって、前記回転可能な駆動構造(30)を解放するように、前記回転可能な駆動構造(30)に対して軸方向に結合されており、前記選択要素(40)および前記回転可能な駆動構造(30)が、互いに対して回転することが可能である、請求項2または3に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項5】
圧縮ばね(90)が、前記近位方向に前記選択要素(40)および前記回転可能な駆動構造(30)を付勢する、請求項2、3、または4に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項6】
前記回転用量選択要素(40)が、前記ハウジング構造(1、2)内の誘導手段(5、6)によって軸方向に誘導される、請求項2~5のいずれか一項に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項7】
前記回転可能な駆動構造(30)が、半径方向突起部(35)を備える長手方向駆動管(30)を備える、請求項1~6のいずれかに記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項8】
前記コネクタ要素(50)が、第1の軸方向開口部(56)を備える、請求項7に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項9】
前記駆動管(30)上に提供される前記半径方向突起部(35)が、前記第1の軸方向開口部(56)および前記半径方向突起部(35)が整列して、それによって、吐出を開始するときに、前記コネクタ要素(50)の前記第1の軸方向開口部(56)を通って軸方向に通過することができる、請求項8に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項10】
前記コネクタ要素(50)が、第2の軸方向開口部(57)を備える、請求項9に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項11】
前記回転可能な駆動管(30)上に提供される前記半径方向突起部(35)が、前記第2の軸方向開口部(57)および前記半径方向突起部(35)が吐出の終了時に整列するときに、前記コネクタ要素(50)の前記第2の軸方向開口部(57)を通って軸方向に通過することができる、請求項10に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項12】
前記ピストンロッド(15)が、外ねじ(16)と、溝などの長手方向誘導面(17)と、を備える、請求項7~11のいずれかに記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項13】
前記ハウジング構造が、前記ピストンロッド(15)上の前記外ねじ(16)と係合する内ねじ(26)を有するナット要素(25)を内部に担持し、前記回転可能な駆動管(30)が、前記ピストンロッド(15)が前記回転可能な駆動管(30)とともに回転可能であり、かつ前記駆動管(30)および前記ピストンロッド(15)が前記ナット要素(25)に対して相対的に回転するときに螺旋状に移動されるように、前記ピストンロッド(15)上の前記長手方向誘導面(17)と係合する係合手段を備える、請求項12に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項14】
前記ナット要素(25)が、軸方向に移動可能であり、かつ前記回転可能な駆動管(30)に結合されて、軸方向に前記駆動管(30)とともに移動される、請求項13に記載のねじりばね駆動注射装置。
【請求項15】
前記ナット要素(25)が、前記回転可能な駆動管(30)の前記第1の位置で前記ハウジング構造から回転可能に解放され、かつ前記回転可能な駆動管(30)の前記第2の位置で前記ハウジング構造に回転可能に固定される、請求項14に記載のねじりばね駆動注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの実質的に等しくサイズ設定された用量体積の液剤を排出するためのねじりばね駆動注射装置に関し、特に、排出される用量が、注射装置の製造業者によって予め決められ、かつ各個々の用量が実質的に同じ体積を有するような体積に固定される、ねじりばね駆動注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、液剤の用量体積を自動的に注射するためのばね駆動注射装置が広く知られている。これらの注射装置のうちのいくつかは、用量体積を押し出すために圧縮ばねを使用し、その他の装置は、ねじりばねを使用する。
【0003】
例えば、インスリンを含有する液体溶液を注射する場合、通常、注射ごとに個々のユーザに必要な用量体積を正確に注射するために、ユーザが、中から選ぶために利用可能な広範囲にわたる異なる用量体積を有することが重要であると考慮される。それゆえに、例えば、特許文献1に例示されるような注射装置は、用量設定機構を備えて提供され、用量設定機構によりユーザは、注射される個々の用量体積のサイズを段階的に選択することができる。特許文献1では、用量排出機構は、自動であり、圧縮ばねまたはねじりばねのいずれかであり得るばねによって駆動される。
【0004】
しかしながら、GLP-1またはこれに類するものなどの他のタイプの液剤の場合、毎回注射のたびに1回のおよび同じ用量体積を注射する必要がある。こうした注射装置は、用量体積が注射装置の製造業者によって固定されるので、固定用量装置としばしば呼ばれる。
【0005】
1つの態様では、これは、所定のおよび固定されたサイズを有する1つの単回用量体積を排出することができる単回使用注射装置を有することによって実行され得る。したがって、ユーザは、注射を行い、単回使用注射装置を使用したら廃棄する。
【0006】
しかしながら、複数のかかる単回使用固定用量装置を使用する代替案は、複数の所定のおよび等しくサイズ設定された用量体積を排出するために専用の1つの注射装置を使用することである。かかる注射装置は、複数回使用固定用量注射装置と呼ばれる場合がある。
【0007】
複数の所定のおよび等しくサイズ設定された用量体積を排出するためのかかる複数回使用固定用量装置の例は、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に開示されている。
【0008】
これらの注射装置に共通するのは、毎回注射を行う前に、ユーザが用量選択ボタンを回転させる必要があるということであり、これにより、所定のサイズ設定された用量体積を選択し、かつまた、力がばねに蓄積および貯蔵されるように、ばねを引っ張る。したがって、ユーザは、ばねを手動で引っ張って、一度に1つの単回注射を行う際に、各注射を行う前に注射装置を回転可能に装備する必要がある。
【0009】
特許文献4では、ユーザは、用量選択ボタンを回転させることによってねじりばねを引っ張り、注射装置上の近位側に提供された注射ボタンを押して、ねじりばねの貯蔵されたトルクを解放し、この後、このトルクが、ピストンロッドを遠位方向に駆動し、そのため、所定のサイズ設定された用量体積が、注射装置から押し出される。
【0010】
しかしながら、特許文献4に開示されている複数回使用の固定用量注射装置は、多数の複雑な部品を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,899,699号
【特許文献2】国際公開第2017/098460号
【特許文献3】国際公開第2018/007259号
【特許文献4】国際公開第2020/089167号
【発明の概要】
【0012】
次に、本発明の目的は、より簡略化された構造を有する複数回使用固定用量注射装置を提供することである。
【0013】
本発明は、請求項1に定義されている。有利な実施形態は、従属請求項にさらに定義されている。
【0014】
したがって、本発明の一態様において、所定の数の、かつ実質的に等しくサイズ設定された固定用量体積の液剤を吐出するためのねじりばね駆動注射装置は、
分注されるべき液剤を収容するカートリッジを固定する、ハウジング構造と、
好ましくは、遠位方向にピストンロッドを移動させることによって、カートリッジから液剤を押し出すためのピストンロッドと、
ピストンロッドが投与中に回転可能な駆動構造とともに回転するように、ピストンロッドと係合する、回転可能な駆動構造と、
少なくとも投与中にハウジング構造に固定され、かつピストンロッドが、ナット要素に対する相対的なピストンロッドの回転時に螺旋状に移動するように、ピストンロッドに対してねじ込まれる、ナット要素と、
ハウジング構造に対してコネクタ要素が相対的に回転することを可能にするラチェットインターフェースによって、ハウジング構造に結合される、コネクタ要素と、
回転可能な駆動構造に対する相対的なコネクタ要素の回転によってトルクがねじりばねに蓄積されるように、回転可能な駆動構造とコネクタ要素との間に動作可能に結合されたねじりばねであって、ハウジング構造とコネクタ要素との間のラチェットインターフェースが、ねじりばねのトルクに抗してコネクタ要素をその回転位置に保持することができる、ねじりばねと、を備え、
回転可能な駆動構造は、第1の位置と第2の位置との間で軸方向に移動可能であり、
第1の位置は、回転可能な駆動構造がハウジング構造に対して回転不可能に固定されている係止位置であり、
第2の位置は、回転可能な駆動構造がハウジング構造から解放され、かつねじりばねに保存されるトルクの影響下で回転することができる、解放位置であり、
ねじりばねは、回転可能な駆動構造が第1の位置に維持され、コネクタ要素が初期位置から用量位置に回転可能である状態で、回転可能な駆動構造に対する相対的なコネクタ要素の回転によって、所定の数の、かつ実質的に等しくサイズ設定された固定用量体積のうちの1つを選択するときに引っ張られ、
所定の数の、かつ実質的に等しくサイズ設定された固定用量体積のうちの選択された1つは、回転可能な駆動構造が第1の位置から、かつ第2の位置へと軸方向に移動するときに、回転可能な駆動構造がねじりばねの影響下で、用量位置から初期位置に回転することを可能にするように、個別に放出され、
回転可能な駆動構造およびコネクタ要素は、回転可能な駆動構造が用量位置に回転したとき、および用量位置に位置付けられたときに、回転可能な駆動構造が第1の位置から第2の位置へと軸方向に移動されることを可能にする手段を提供される。
【0015】
したがって、吐出される固定用量は、回転駆動構造に対して相対的にコネクタ要素を回転させることによって選択され、それによって、ねじりばねが引っ張られる。この目的のために、回転駆動構造およびコネクタ要素は、手段が整列されるときに、回転駆動構造が第1の位置から第2の位置へと移動することを可能にするこれらの手段が提供される。こうした手段は、一実施例では、部品のいずれかに提供される軌道および突起部であってもよく、または手段は、両方の部品に提供される突起部のみであってもよい。回転駆動構造が、正しい回転位置、すなわち、画定された用量位置で軸方向に移動することができる限り、他の種類の機械的手段を想定することができる。したがって、回転中に、回転駆動構造を第2の解放位置に移動させることはできない。完全固定用量が選択され、かつコネクタ要素が特定の用量位置に回転したときにのみ、回転駆動構造を第1の係止位置から第2の解放位置へと移動させ、したがって、固定用量を放出することができる。
【0016】
したがって、コネクタ要素および駆動構造の2つの相対的な回転位置(初期位置および用量位置)が指定され、用量のサイズは、これら2つの位置間の回転距離によって予め定められ、したがって、初期位置および用量位置は、固定用量のサイズを画定する。
【0017】
したがって、ユーザは、用量設定中、回転駆動構造がハウジングに対して係止されている間、初期位置から用量位置にコネクタ要素を回転させる。この回転は、ねじりばねを引っ張る。用量放出中、コネクタ要素は、ハウジングに対して係止され、回転可能な駆動構造は、用量位置から回転し、ねじりばねによって初期位置に戻る。
【0018】
本明細書における固定用量体積は、液剤の固定計量体積を意味することが理解される。しかしながら、固定用量の各々の体積の小さな変動が、所定の固定用量体積という用語の下で許容されるように、特定の許容誤差が適用される。
【0019】
ユーザにより良いグリップを提供するために、好ましくは、ハウジング構造の近位端で、吐出されるべき固定用量を回転選択するための回転選択要素が提供される。一実施例では、回転選択要素は、ユーザが回転選択要素の回転によって固定用量を選択したときに、コネクタ要素が選択要素と一対一で回転するように、コネクタ要素に対して回転可能に係止される。選択要素は、選択要素がコネクタ要素に対して軸方向に移動することができるように、コネクタ要素に対して相対的にさらに軸方向に移動可能である。
【0020】
回転選択要素は、選択要素および回転駆動構造が軸方向にともに移動されて、回転駆動構造を第1の位置から第2の位置へと移動させて、それによって、回転駆動構造を解放するように、回転駆動構造に対して軸方向に結合されることによって、用量放出要素としてさらに使用され得、選択要素および回転駆動構造は、互いに対して回転することが可能である。したがって、回転選択要素を軸方向に押すことによって、回転駆動構造を係止位置から解放位置に移動させることができる。回転選択要素と回転駆動構造との間の接続は、2つの部品間の相対的な回転を可能にするが、2つの部品が軸方向に同時に移動するように係止することを可能にする、いかなる種類の結合であってもよい。これは、例えば、フランジの後ろで係合または掴むような隆起部であってもよく、一実施例では、2つの部品間の相対的回転中に摩擦を低減する針もしくはボールベアリングまたは他の手段を含んでもよい。
【0021】
回転駆動構造を移動させて、第1の係止位置に戻すために、回転選択要素および回転駆動構造を近位方向に付勢する圧縮ばねが提供されることが好ましい。さらに、選択要素を誘導するための誘導手段は、ハウジング構造内に提供されることが好ましい。こうした誘導手段は、1つ以上の軌道に誘導される好ましいスプラインである。
【0022】
1つの特定の実施例では、回転駆動構造は、駆動管が第1の位置から第2の位置へと軸方向に移動することを可能にする手段のうちの1つとして半径方向突起部が提供される、長手方向駆動管を備える。管について、ここでは、好ましくは、必ずしもではないが、中空または少なくとも部分的に中空である長手方向形状の要素を意味する。半径方向突起部は、好ましくは、外面上に位置し、かつ好ましくは、駆動管の近位端の近傍に位置する。
【0023】
好ましくは、駆動管は、半径方向突起部がコネクタ要素と係合することができるように、コネクタ要素を通って延在する。
【0024】
コネクタ要素は、第1の軸方向開口部が提供されるさらなる実施例であり、1つの手段として、駆動管が第1の位置から第2の位置へと軸方向に移動することを可能にし、その開口部を通して、第1の軸方向開口部および半径方向突起部が整列する(用量位置)ときに、駆動管上に提供された半径方向突起部が移動され、それによって、吐出を開始することができる。したがって、この特定の用量位置において、第1の係止位置から第2の解放位置に駆動管を移動させることができる。
【0025】
コネクタ要素はまた、好ましくは、第2の軸方向開口部および半径方向突起部が吐出の端部で整列される(初期位置)ときに、駆動管上に提供された半径方向突起部がコネクタ要素内の第2の軸方向開口部を軸方向に通過することができるように、第2の軸方向開口部を提供される。したがって、駆動管は、固定用量の吐出後に、第2の解放位置からこの初期位置の第1の係止位置へと移動可能である。
【0026】
固定用量を排出するために使用されるピストンロッドは、好ましくは、螺旋状の外ねじ、および溝または平坦な表面などの長手方向の誘導構造を提供される。こうした構造では、ピストンロッドは、ピストンロッドが駆動構造とともに回転するように、駆動構造などの要素が、キー様係合において長手方向誘導構造と係合することによって回転することができる。
【0027】
ピストンロッドが回転すると、ハウジング構造によって担持されるナット要素との係合によって、ピストンロッドが遠位方向に移動する。ナット要素は、ピストンロッド上の外ねじと係合する内ねじを有し、ピストンロッド上の長手方向誘導構造と係合する係合手段を備えた駆動管が回転するたびに、ピストンロッドは、螺旋状運動で遠位方向に前方にねじ込まれる。
【0028】
一実施例では、ナット要素は、軸方向に移動可能であり、駆動管に結合されて、駆動管と軸方向にともに移動する。したがって、ハウジングに結合され、かつハウジングから分離され得る、いわゆる浮動ナットを得ることが可能である。こうした浮動ナットの原理は、EP2,906,271にさらに詳述されている。しかし、ナット要素はまた、ハウジングに永久的に接続され得る。
【0029】
ナット要素を駆動管に結合することによって、駆動管の第1の位置のハウジング構造からナット要素を回転可能に解放し、駆動管の第2の位置のハウジング構造に対してナット要素を回転可能に固定することができる。したがって、ナット要素は、用量の排出中のみハウジングに結合されるが、用量選択中およびカートリッジの交換中に自由に回転する。
【0030】
定義:
「注射ペン」は典型的に、ものを書くためのペンに幾分似ている楕円形または細長い形状を有する注射器具である。かかるペンは通常、管状断面を有するが、三角形、長方形、もしくは正方形、またはこれらもしくは他の幾何学的形状に基づく任意の変化形状などの異なる断面を容易に有することができる。
【0031】
「針カニューレ」という用語は、注射中に皮膚の貫通を行う実際の導管を説明するために使用される。針カニューレは通常、例えば、ステンレス鋼などの金属材料から作製され、かつ好ましくは、好適な材料、例えば、ポリマーから作製されたハブに接続される。ただし、針カニューレは高分子材料またはガラス材料からも作製され得る。ハブに装着され、かつ注射針または針組立品と呼ばれる針カニューレは、注射装置に交換可能または永久的のいずれかで取り付けることができる。特殊針組立品は、針カニューレの一部が、注射装置にペン針が付着すると、この近位部分がカートリッジ内に貫通することができるように、ハブの基部から近位方向に延在する、いわゆる「ペン針」である。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「液剤」という用語は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液などの制御された方法で中空針カニューレなどの送達手段を通過することができる任意の薬剤含有流動性医薬品を包含することを意味する。代表的な薬剤としては、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリンアナログおよびC-ペプチド)、ならびにホルモンなどの医薬品、生物由来の活性薬または活性薬、ホルモンおよび遺伝子に基づく薬、栄養処方および固体(調剤)または液体形態の他の物質が挙げられ得る。
【0033】
「カートリッジ」とは、液剤を実際に収容する一次容器を説明するために使用される用語である。カートリッジは通常、ホウケイ酸ガラスなどのガラスから作製されるが、代替的に任意の好適なポリマーから成形することもできる。カートリッジまたはアンプルは、例えば、針カニューレの非患者側端によって穿刺することができる、「隔壁」と呼ばれる穿刺可能な膜によって一端で密封されることが好ましい。かかる隔壁は通常、自己密封式であり、これは、針カニューレを隔壁から取り外すと、貫通中に生成された開口部が固有の弾性によって自動的に密封されることを意味する。カートリッジの反対側の端は典型的には、ゴム組成物または好適なポリマーから作製されたプランジャまたはピストンによって閉止される。プランジャまたはピストンは、カートリッジの内側で摺動可能に移動することができる。穿刺可能な膜と移動可能なプランジャとの間の空間は、プランジャが液剤を保持する空間の体積を減少させる際に押し出される液剤を保持する。
【0034】
カートリッジは通常、内部にプランジャを移動することができない、狭い遠位首状部分を有するので、カートリッジ内側に収容される液剤の全てを実際に排出することができるわけではない。したがって、「初期量」または「実質的に使用される」という用語は、カートリッジ内に収容された注射可能な内容量を指し、かつそれゆえ、必ずしも全内容量を指すものではない。カートリッジ内の注射可能な内容量は、排出される複数の所定のサイズ設定された用量体積を構成する体積と少なくとも等しくなければならない。1つの実施例では、複数回使用固定用量注射装置が、例えば、0.3mlの体積を各々が有する3つの固定用量を収容することになっている場合、カートリッジの注射可能な内容量は、少なくとも0.9mlである必要があり、したがって、カートリッジの全体積は、狭い首状部品により排出することができない体積も含むように、より大きくなければならない。
【0035】
「予め充填された」注射装置という用語は、注射装置を永久的に破壊することなく取り外すことができないように、液剤を収容するカートリッジが注射装置内に永久的に埋め込まれている注射装置を意味する。カートリッジ内の所定の量の液剤が使用されると、ユーザは通常、注射装置全体を廃棄する。通常、製造業者によって特定の量の液剤で充填されたカートリッジは、カートリッジを交換することができないように、後でハウジング構造体内に永久的に接続されるカートリッジホルダ内に固定されている。
【0036】
これは、空になったときはいつもユーザ自身で液剤を収容するカートリッジに交換することができる、「耐久性」注射装置とは反対である。予め充填された注射装置は通常、2つ以上の注射装置を含むパッケージ入りで販売されるが、耐久性注射装置は通常、一度に1つずつ販売される。予め充填された注射装置を使用するとき、平均的なユーザは年間50~100個の注射装置を必要とする可能性があり、一方で耐久性注射装置を使用する場合は、単一の注射装置を数年間使用できる可能性があるが、しかしながら平均的なユーザは年に50~100個の新しいカートリッジを必要とすることになる。
【0037】
「複数回使用固定用量」注射装置とは、体積が実質的に同一である、予め規定された複数の(すなわち、2つ以上の)用量を送達することができる注射装置を規定することを意味する。したがって、カートリッジ内に収容された初期量の液剤は、いくつかの実質的に同一の用量体積で排出される。1つの実施例では、カートリッジは、例えば、各々が0.5mlである6つの同一の用量で排出され得る、例えば、3mlの初期注射可能量の液剤を有することができる。等しくサイズ設定された用量体積の数は、多くの場合、2~8つ、および好ましくは4~6つの同一の用量体積である。複数回使用固定用量注射装置は、予め規定された数の用量体積が排出された後に注射装置全体が廃棄されるように予め充填されているか、またはユーザがカートリッジを交換して、新しいカートリッジから、新しい一連の等しくサイズ設定された用量体積を排出することを可能にする耐久性注射装置であり得るかのいずれかであってもよい。
【0038】
注射装置と併せて「自動」という用語を使用する場合、これは、注射装置が投薬中に液剤を排出するのに必要な力を注射装置のユーザが送達しなくても、注射装置が注射を行うことができることを意味する。力は典型的には、電気モーター駆動またはばね駆動によって、(自動的に)送達される。ばね駆動用の実際のばねは、例えば、用量設定中にユーザによって引っ張られるが、かかるばねは通常、非常に小さい用量を送達する問題を回避するために、低い力で予め引っ張られる。代替的に、ばねは、いくつかの用量を通してカートリッジ内に収容された液剤の初期全内容量(すなわち、注射可能な内容量全体)を排出するのに十分な予め負荷された力が、製造業者によって完全に予め負荷されていてもよい。典型的には、注射を行う際、ユーザは、注射装置のハウジングの表面上または注射装置の近位端のいずれかに提供されている解放機構を稼働させて、ばね内に蓄積されている力の一部を部分的に解放する。代替的に、注射装置は、移動可能なシールドの稼働により、用量を排出するために必要な力を解放するように、シールドトリガ式であってもよい。
【0039】
本説明で使用される「永久的に接続された」または「永久的に埋め込まれた」という用語は、部品および特にカートリッジが、ハウジング構造内に永久的に埋め込まれ、分離するために工具の使用が必要となること、およびこれらの部品を分離した場合、これらの部品のうちの少なくとも1つが永久的に損傷し、それに伴って、注射装置が動作することができなくなることになることを意味することを意図する。
【0040】
本明細書に引用された刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考資料は、あたかも各参考試料が個別におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に示されるのと同程度に、その全体が参照により組み込まれる。
【0041】
全ての見出しおよび小見出しは、本明細書では便宜上使用されているだけであり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0042】
本明細書で提示するいっさいの例または例示的な語句(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより明瞭にするという意図しかなく、特に明記しない限り、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいずれの語句も、特許請求されないいかなる要素も本発明の実施に必須であることを示すと解釈すべきではない。
【0043】
本明細書の特許文書の引用および組み込みは、便宜上行われているだけであり、かかる特許文書の有効性、特許性および/または執行可能性のいっさいの観点を反映するものではない。
【0044】
本発明は、適用法により許可される範囲で、添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての修正および均等物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明を、好ましい実施形態に関連して、また図面を参照しながら、以下により詳細に説明する。
【0046】
図1】本発明の開示される実施例による注射装置の分解組立図を示す。
図2A-2B】図1に開示された注射装置の断面図を示す。図2Bは、図2Aの囲まれた部分の拡大である。
図3A-3B】コネクタ要素の2つの異なる斜視図を示す。図3Aは、近位位置から見たものである。
図4】駆動管の斜視図を示す。
図5A-5B】セレクタ要素の2つの異なる図を示す。図5Aは、断面図である。
図6A-6B】ハウジング部分とコネクタ要素との間のインターフェースの2つの異なる斜視図を示す。
図7】駆動機構の断面図を示す。
【0047】
図は、概略図であり、かつ明確化のために単純化されており、またそれらは本発明の理解に必要不可欠な詳細を示すだけであり、一方でその他の詳細は省略している。全体を通して、同じ参照番号が同一または対応する部分に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の用語で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」または同様の相対表現が使用される場合、これらは単に添付図を参照するだけであり、必ずしも実際の使用状況を示すものではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成、およびそれらの相対寸法は、例示的な目的のみを果たすことが意図される。
【0049】
その文脈において、添付の図面における「遠位端」という用語は、針カニューレを通常担持する注射装置の端を指すことを意味するのに対して、「近位端」という用語は、図2Aに描かれるように、通常は用量選択ボタンを担持する反対側の端を指すことを意味すると定義するのが便利であり得る。遠位および近位とは、図2Aにも示されているように、医療容器の長手方向軸(X)に沿って延在する軸の向きに沿っていることを意味する。
【0050】
以下の実施例において、時計回り方向および逆または反時計回り方向を指す場合、注射装置が、注射装置の遠位にある位置から見られていることが理解される。したがって、時計回り方向は、通常の時計上のアームに続く回転であり、反時計回り方向は、その反対方向の回転である。
【0051】
実施例で記載される注射装置で行われる様々な運動を説明するために、以下の詳細な説明全体を通して以下の用語が使用される。
【0052】
「並進運動」とは、いかなる回転も伴わない、厳密に線形の運動であることを意味する。
【0053】
「回転運動」とは、中心を中心とした任意の回転の運動であり、その中心は、すなわち、長手方向延長部を有する、すなわち、1つの平面軸または中心軸の中心点であってもよい。
【0054】
「軸方向運動」とは、軸方向における任意の運動を意味する。かかる運動は、厳密に並進運動であり得るか、または回転運動を含み得、ひいては「螺旋状の運動」となる。これは、螺旋状の運動が軸方向運動と回転運動との組み合わせであることを意味するためである。
【0055】
「伸縮自在」とは、移動可能な要素が基部要素から外に、および/または基部要素内へと移動する状況を網羅することを意味する。伸縮自在な運動とは、並進であっても、または回転を含んでもよいため、伸縮自在な運動は螺旋状になる。
【0056】
図1は、本発明の第1の実施例による注射装置の分解組立図を開示し、図2Aは、断面図でそれを示す。
【0057】
注射装置は、ハウジング部分1およびカートリッジホルダ20から構成された、ハウジング構造を備える。ハウジング部分1は、図2Bの拡大バージョンに示される投与機構を含み、カートリッジホルダ20は、カートリッジ10を含む。ハウジング部分1およびカートリッジホルダ20は、永久的に取り付けられるため、予め充填された注射装置を構成するか、またはカートリッジホルダ20を、カートリッジ10の交換のためにハウジング部分1から取り外すことができる。したがって、これは耐久性のある注射装置となる。
【0058】
本開示の実施例では、注射装置は耐久性のある注射装置であり、カートリッジホルダ20は、カートリッジホルダ20の一体部分を構成する輪形状要素21を近位に提供し、一実施例では、カートリッジホルダ20の残りの部分と一体的に成形され得る。カートリッジホルダ20の内面、またはむしろ輪形状要素21は、ハウジング部分1上に設けられた誘導突起部2と係合する、したがって、バヨネット結合を構成することができる軌道22を備える。軌道22および誘導突起部2の両方は、対で提供されることが好ましい。以後、ユーザは、カートリッジ10の交換時に、カートリッジホルダ20をハウジング部分1から切り離すことができる。
【0059】
カートリッジ10は、本開示の実施例において、穿刺可能な隔壁11によって遠位に封止され、かつ移動可能なプランジャ12によって近位に閉じられる、標準的なガラスカートリッジである。本開示の実施例では、カートリッジ10は、図示されていないペン針がねじ14に取り付けられ得るように、ねじ14を担持するアダプタトップ13を遠位に提供されている。アダプタトップ13は、カートリッジ10に押し付けられ、当技術分野で一般的に知られているように装着されたときにカートリッジホルダ2によって回転可能に固定されることが好ましい。別の方法として、ねじ14は、注射装置のハウジング構造上に設けられ得る。ねじ14は、ペン針をカートリッジ10またはハウジング構造に取り付けるためのバヨネット結合またはルアー結合などの代替的結合手段によってさらに置換され得る。
【0060】
カートリッジ10は、装着されると、遠位にスライダ70に当接し、かつハウジング構造に対して近位に当接する遠位圧縮ばね71によって、カートリッジホルダ20に当接するために遠位方向に付勢される。このスライダ70は、スライダ71がハウジング部分1に対して並進的に摺動することしかできないが回転することはできないように、ハウジング部分1の長手方向軌道3(例えば、図7を参照)と係合する、一対の放射状アーム72を提供されている。
【0061】
ハウジング部分1内の駆動機構は、遠位方向に移動して、それによって、カートリッジ10内で移動可能なプランジャ12を前方に移動させることができる、ピストンロッド15を備える。ピストンロッド足部18は、ピストンロッド15と移動可能なプランジャ12との間に提供されて、力を移動可能なプランジャ12上により良好に分配することができる。本開示の実施例では、ピストンロッド足部18は、ピストンロッド15の遠位端まで半径方向にクリックされる2つの部分から作製される。
【0062】
ピストンロッド15は、外面上に外ねじ16および長手方向軌道構造17(図7で最もよく分かる)を提供される。ピストンロッド15上の外ねじ16は、説明されるように、ピストンロッド15がナット要素25に対して相対的に回転したときにピストンロッド15が螺旋状に移動するように、ナット要素25内に提供された内ねじ26と係合する。
【0063】
ピストンロッド15内の長手方向軌道構造17は、用量管30が回転するたびに、ピストンロッド15が用量管30と一緒に回転するように、長手方向軌道衝突構造17と係合する内部係合手段を有する用量管30によって係合される。一実施例では、軌道構造17は、キー様構造で用量管30によって係合される平坦な表面を備える。
【0064】
図4に開示されている用量管30は、用量セレクタ40によって係合される円形の隆起部31を近位に提供されている。図5Aおよび図5Bに開示される用量セレクタ40は、その目的のために、用量セレクタ40および用量管30が軸方向にともに移動するが、互いに対して相対的に回転することができるように、用量管30上の円形の隆起部31と係合する内側上のいくつかの近位クリックアーム41を提供される。
【0065】
遠位において、用量セレクタ40は、用量セレクタ40がハウジング部分1に対して相対的に軸方向に摺動することができるが、ハウジング構造から完全に解放されないように、ハウジング部分1と係合する複数の遠位弾性アーム42を提供される。好ましくは、これらの弾性アーム42は、ハウジング部分1上の複数の外側に向いたリブ5の後ろで係合し、その使用が説明される。
【0066】
用量セレクタ40は、用量セレクタ40とコネクタ要素50との間に包含される圧縮ばね90によって近位方向に付勢され、図2Bで最もよく分かるように、遠位弾性アーム42を外側に向いたリブ5の近位表面に対して当接するように強制される。
【0067】
図3Aおよび図3Bに開示されているコネクタ要素50は、その反対の遠位端で、コネクタ要素50および駆動管30が説明されるように、互いに対して相対的に回転するときにトルクがねじりばね95に蓄積されるように、駆動管30に結合される、ねじりばね95に接続される。
【0068】
コネクタ要素50および駆動管40の両方は、ねじりばね95を固定するためのL字型軌道96、97を備える。ねじりばね95の端部は、その目的のために、L字形状の軌道96、97の長手方向部分を通る移動を誘導し、それぞれの部分と係合するように回転することができる、内側に向いたフックを好ましくは備える。
【0069】
コネクタ要素50とハウジング部分1との間の係合は、図6Aおよび図6Bに開示されている。分かるように、ハウジング部分1は、注射中に用量セレクタ40の並進を誘導することができる誘導軌道6によって軸方向に分離された、いくつかの外側に向いたリブ5を近位に提供される。
【0070】
ハウジング部分1の近位端には、図3Bで最もよく分かるように、コネクタ要素50の遠位端面上に設けられたいくつかの同様の遠位ラチェット歯51と係合する、いくつかの軸方向に向いた近位V字形状のラチェット歯7が提供される。圧縮ばね90がハウジング部分1に対してコネクタ要素50を付勢すると、説明されるように、コネクタ要素50上に設けられた軸方向に向いた近位V字形状のラチェット歯7と遠位のラチェット歯51との間のラチェットインターフェース(7、51)は、ねじりばね95のトルクを保持することができる。
【0071】
駆動機構は、図7に開示されており、ピストンロッド15、駆動管30、およびナット部材20を備える。
【0072】
図4でさらに詳細に開示されている駆動管30は、注射の間にハウジング部分1の内面上に提供されている同様の歯8と係合する、いくつかの半径方向歯32を遠位に提供されている。この係合(32、8)は、駆動管30をハウジング部分1に対する相対的な回転に対して固定する。
【0073】
内部的にピストンロッド15の外ねじ16にねじ込まれる内ねじ26が提供されているナット部材25は、ナット要素25が駆動管30とともに軸方向に移動可能であるが、駆動管30に対して相対的に回転することができるように、クリック要素60によって駆動管30に結合される。クリック要素60は、その目的のために、図4および図7に開示されているように、駆動管30上に設けられた遠位シェルフ33の後ろを掴む、いくつかの近位に向いたクリックアーム61を提供される。
【0074】
外面上で、ナット要素25は、ハウジングリング75内に提供され、ハウジング部分1に回転可能に、かつ軸方向に固定され、したがって、ハウジング構造内に含まれる、同様の内部スプライン76と係合することができる、いくつかのスプライン27を提供される。図1および図2Bで最もよく分かるように、ハウジングリング75は、舌および溝接続によってハウジング部分1に取り付けられる。代替的実施形態では、ハウジングリング75は、ハウジング部分1の一体構造として成形される。
【0075】
注射の間、ナット要素25は固定されず、自由に回転することができる。結果として、ナット要素20にねじ込まれた(16、26)ピストンロッド15は、軸方向に自由に移動する。注射の間、駆動管30は、ハウジング部分1の内部歯8と駆動管30上の半径方向歯32との係合によって回転に対して固定され、ピストンロッド15の並進運動(回転を伴わない)が可能である。ピストンロッド15のこうした並進運動の間、ナット要素25は、強制的に回転し、また自由に回転する。結果として、カートリッジ10の内容物が、例えば、凍結への曝露によって拡張する場合、ピストンロッド15は、カートリッジ10内部の移動可能なプランジャ12によって近位に移動することができる。
【0076】
注射中、駆動管30は、説明されるように、ハウジング部分1との係合(32、8)から遠位に押し出される。駆動管30に軸方向に結合されるナット部材25は、駆動管30の軸方向移動に従い、スプライン(27、76)を介してハウジングリング75に結合する。駆動管30がハウジング部分1との係合から外れるときに、ねじりばね95は、駆動管30を回転させる。駆動管30の回転、およびそれゆえ、この状況でのピストンロッド15は、ハウジングリング75との係合(27、76)によって回転不可能に固定されるナット要素20とのねじ込み係合(16、26)により、ピストンロッド15を螺旋状に前方(=遠位)に移動させる。
【0077】
図3Aおよび図3Bにさらに詳細に示されるコネクタ要素50は、図6Aに開示されるように駆動管30を囲み、長方形の開口部53によって分離された複数の外側に向いた歯52が提供されている外面上にある。
【0078】
これらの長方形の開口部53は、用量セレクタ40の回転がコネクタ要素50の同様の回転に変換されるように、図5Aおよび図5Bに開示される用量セレクタ40に提供された内側スプライン43によって係合される。長方形の開口部53と内側スプライン43との間の係合は、用量セレクタ40とコネクタ要素50が両回転方向で一対一でともに回転するような係合であり、しかしながら、用量セレクタ40は、コネクタ要素50に関連して並進運動で移動することができる。
【0079】
コネクタ要素50は、図3Aおよび図3Bに開示するように、内部リブ54および長手方向フランジ55をさらに備える。長手方向フランジ55と内側リブ54との間の開放領域は、2つの開口部56、57を画定する。第1の注射開口部56および第2の解放開口部57について、その使用は、以下で説明される。注射開口部56および解放開口部57の両方は、駆動管30上に近位に設けられた半径方向突起部35がこれらの開口部56、57を通って並進的に通過することができるような幅を有する。
【0080】
注射を実施するために、ユーザは、まずカートリッジ10をカートリッジホルダ20に挿入し、バヨネット結合(22、2)を使用してカートリッジホルダ20をハウジング部分に接続する必要がある。液剤を収容するカートリッジ10が挿入されると、注射装置は使用準備が整う。
【0081】
注射装置が用量選択の準備ができているとき、近位圧縮ばね90は、駆動管30上の半径方向歯32がハウジング部分1内の内部歯8と係合して、駆動管30が回転に対して固定されるように、用量セレクタ40および駆動管30を近位方向に付勢する。この位置は、図7に開示されている。
【0082】
次に、ユーザは、注射装置の遠位の位置から見たときに、用量セレクタ40およびコネクタ要素50を、反時計回り方向に回転させる。これは、図6Aおよび図6Bの矢印「D」によって示されており、用量機構は、注射装置の近位の位置から見られているため、矢印は時計回り方向を向いている。
【0083】
図6Bは、半径方向突起部35が解放開口部57の上方に位置し、フランジ55に第1の側面で当接する位置(初期位置)を開示する。この初期位置から離れたコネクタ要素50の回転(「D」)の間、コネクタ要素50上のリブ54は、駆動管30上の半径方向突起部35の下に摺動し、これにより、ユーザが駆動管30を遠位方向に移動させることが防止される。ねじりばね95は、コネクタ要素50と駆動管30との間で動作するため、駆動管30がハウジング部分1に係止されている間のコネクタ要素50の回転は、ねじりばね95にトルクが蓄積されるようにねじりばね95を引っ張る。
【0084】
ねじりばね95に蓄積するトルクは、前述のように、ハウジング部分1上のV字形状のラチェット歯7と、コネクタ要素50上に遠位に提供される遠位のラチェット歯51との間の係合によって固定される。用量セレクタ50とコネクタ要素50との間で動作可能な圧縮ばね90によってハウジング部分1に対して付勢される、コネクタ要素55。
【0085】
リブ54、フランジ55、および注射開口部56が、駆動管30上の半径方向突起部35が注射開口部56(用量位置)と整列する位置に回転すると、駆動管30を遠位方向に並進させることが可能である。この注射位置では、半径方向突起部35は、好ましくは、フランジ55の第2の対向側55a上のフランジ55に当接する。注射位置または用量位置は、半径方向突起部35が折れ線で示されている図3Aに示されている。
【0086】
注射開口部56および半径方向突起部35が整列されると、所定の固定用量が選択される。選択された固定用量を排出するために、ユーザは、用量ダイヤル40を遠位方向に押す。用量ダイヤル40のこの並進移動の間、内側スプライン43は、ハウジング部分1の軸方向誘導軌道6と係合し、これは、用量の排出中に、用量セレクタ40およびコネクタ50の両方をハウジング構造に対して相対的に回転しないように固定する。
【0087】
用量セレクタ40の遠位移動は、半径方向歯32がハウジング部分1の内部歯8から係合しなくなるように、駆動管30の同様の並進移動に伝達される。同時に、ナット要素25上のスプライン27は、ハウジングリング75内の内部スプライン76と係合し、それによって、ナット要素25をハウジング部分1に係止する。
【0088】
半径方向歯32がハウジング部分1の内部歯8と係合しない場合、ねじりばね95に保存されたトルクは、駆動管30を回転させる。ねじりばね95に保存されたトルクは、用量排出中にコネクタ要素50が、コネクタ要素50の長方形開口部53およびハウジング部分1の誘導軌道6の両方に同時に係合する用量セレクタ40上の内側スプライン43によって、ハウジング部分1に固定される際に、駆動管30の回転に伝達される。さらに、コネクタ要素50は、ハウジング部分1に対してしっかりと押し付けられ、それによって、コネクタ要素50上の近位V字形状のラチェット歯7と遠位のラチェット歯51との間のインターフェースを完全に固定する。
【0089】
駆動管30が、ねじりばね95によって回転するように自由に設定されると、駆動管30は、半径方向突起部35が再びフランジ55に当接するまで回転し続ける。この位置において、ユーザが用量セレクタ40から指を取り外すとき、突起部35は、駆動管30および用量セレクタ40を近位方向に付勢する近位圧縮ばね90によって解放開口部57を通って近位上に移動する。終了位置を図6Bに示す。その位置は、注射の終了位置であることに加えて、送達される新しい固定用量を選択するための開始位置でもあるため、初期位置とも呼ぶ。
【0090】
したがって、各用量選択に対する駆動管30の回転は360度より少し小さく、固定用量の体積は、ピストンロッド15とナット要素25との間のねじ込み係合(16、26)上のピッチの選択を介して注射装置の製造によって決定される。この選択は、ピストンロッド15が各用量放出に対して遠位方向に移動される距離を決定する。
【0091】
ピストンロッド15およびプランジャ12がカートリッジ10の遠位端に移動し、カートリッジ10の内容物が排出されると、ユーザは、カートリッジ10を新しいフルカートリッジ10と交換しなければならない。これは、最初にカートリッジホルダ20を取り外し、空のカートリッジ10を破棄することによって行われる。その後、新しいカートリッジ10をカートリッジホルダ20内に挿入し、ピストンロッド15をその初期位置に押し戻す必要がある。
【0092】
ピストンロッド15を近位方向に押すときに、ピストンロッド15と駆動管30との間のキー係合は、ピストンロッド15が回転することなく並進移動するように固定する。これは、駆動管30とハウジング部分1との間の歯の係合(8、32)によるものであり、これは、駆動管30の回転を妨げる。
【0093】
ピストンロッド15の近位方向への非回転並進運動の間、ナット要素25は、ナット要素25の内ねじ26とピストンロッド15上の外ねじ16との間のねじ込み係合(16、26)により、強制的に回転する。
【0094】
通常、ユーザが指の使用でピストンロッド15を近位に押す場合、ピストンロッド足部18がハウジング部分1と整列する位置までピストンロッド15を押すだけである。その後、カートリッジホルダ20がバヨネット結合(2、22)を介してハウジング部分1に取り付けられたときに、螺旋状の軌道22と誘導突起部2との間の螺旋状の係合は、カートリッジ10内部のプランジャ12がピストンロッド15を最後の部分まで押すようにし、その結果、ピストンロッド足部18が新しいカートリッジ10の開始位置にプランジャ12と当接し、それによって、任意のエアギャップを回避し、また後でエアショットを実施する必要性を排除する。
【0095】
いくつかの好ましい実施形態を上記に示してきたが、本発明はこれらに限定されず、以下の特許請求の範囲に規定される主題の範囲内で他の方式で具現化することができることを強調しておく。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】