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特表2024-505639ヘキサフルオロリン酸塩、五フッ化リン、その調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ヘキサフルオロリン酸塩、五フッ化リン、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/455 20060101AFI20240131BHJP
   C01B 25/10 20060101ALI20240131BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240131BHJP
【FI】
C01B25/455
C01B25/10
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543399
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022142458
(87)【国際公開番号】W WO2023131011
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210007727.7
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523024990
【氏名又は名称】深▲セン▼市研一新材料有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】岳敏
(72)【発明者】
【氏名】張春暉
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AM01
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ15
(57)【要約】
【課題】本願は、ヘキサフルオロリン酸塩、五フッ化リン、その調製方法および使用を開示する。本願は、五フッ化リンを原料として用いてヘキサフルオロリン酸塩を調製することがなく、フッ化水素を原料として用いて五フッ化リンを生産することも回避し、生産の安全リスクを低減するとともに、供給源が広い五酸化二リン、三酸化硫黄の化学試薬を原料として用い、原料コストを低減し、工業的大規模生産に有利している。
【手段】前記ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法は、不活性ガス雰囲気で五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物とを混合させ、反応後に蒸発濃縮、溶解、濾過および乾燥を順次行った後、前記ヘキサフルオロリン酸塩を取得することを含む。本願に係る調製方法で得られたヘキサフルオロリン酸塩を採用して前記五フッ化リンを調製する方法は、ヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とを混合させ、触媒反応後に凝縮と、加圧液化と、吸着による不純物除去とを順次行った後、前記五フッ化リンを取得することを含む。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法であって、
不活性ガス雰囲気で五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物とを混合させ、反応後にヘキサフルオロリン酸塩前駆体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸塩前駆体に対して蒸発濃縮、溶解、濾過および乾燥を順次行った後、前記ヘキサフルオロリン酸塩を取得するステップ(2)と、を含む、
ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の五酸化二リンのリン酸溶液は、五酸化二リンとリン酸との混合液であり、
前記五酸化二リンとリン酸とのモル比は1:(0.01~1.0)である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記五酸化二リンとステップ(1)に記載の三酸化硫黄とフッ化物内のフッ素イオンとのモル比は1:(5.0~10.0):(12.0~24.0)であり、
ステップ(1)に記載のフッ化物は、アルカリ金属イオンのフッ化物、アルカリ土類金属イオン含有フッ化物、遷移金属含有フッ化物、またはアンモニウムイオン含有フッ化物のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
ステップ(1)に記載のフッ化物は、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、またはフッ化バリウムのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
ステップ(1)に記載の反応の反応温度は60.0~150.0℃であり、
ステップ(2)に記載の溶解過程で使用される溶媒はエタノールまたはアセトンを含む、
請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
不活性ガス雰囲気で五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物とを混合させ、60.0~150.0℃温度で10.0~15.0h反応した後にヘキサフルオロリン酸塩前駆体を取得し、前記五酸化二リンのリン酸溶液が五酸化二リンとリン酸との混合液であり、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比が1:(0.01~1.0)であり、前記五酸化二リンとステップ(1)に記載の三酸化硫黄とフッ化物内のフッ素イオンとのモル比が1:(5.0~10.0):(12.0~24.0)であるステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸塩前駆体を80.0~100.0℃の温度で蒸発濃縮し、さらにエタノールまたはアセトンで溶解してから濾過して濾液を取得し、80.0~100.0℃の温度で濾液を乾燥した後、前記ヘキサフルオロリン酸塩を取得するステップ(2)と、を含む、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の調製方法により得られる、
ヘキサフルオロリン酸塩。
【請求項6】
前記ヘキサフルオロリン酸塩は、リチウムイオン電池用の電解液添加剤として使用される、
請求項5に記載のヘキサフルオロリン酸塩の使用。
【請求項7】
五フッ化リンの調製方法であって、
ヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とを混合させ、触媒反応を行った後、五フッ化リンガス粗体を取得するステップ(a)と、
ステップ(a)で得られた五フッ化リンガス粗体に対して凝縮と、加圧液化と、吸着による不純物除去とを順次行った後、前記五フッ化リンを取得するステップ(b)と、を含み、
ステップ(1)に記載のヘキサフルオロリン酸塩は、請求項6に記載のヘキサフルオロリン酸塩である、
五フッ化リンの調製方法。
【請求項8】
ステップ(a)に記載の触媒は、硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄の硫酸溶液、五酸化二リンの硫酸溶液、三酸化硫黄のリン酸溶液、またはクラウンエーテルのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記クラウンエーテルは、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、または18-クラウン-6-エーテルのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
ステップ(a)に記載の触媒反応の温度は150~400℃であり、
ステップ(a)に記載のヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とのモル比は1:(5.0~20.0)であり、
ステップ(b)に記載の凝縮の圧力は0.1~0.2MPaであり、
ステップ(b)に記載の凝縮の温度は-50~-40℃であり、
ステップ(b)に記載の加圧液化過程における圧力は0.6~1.0MPaであり、
ステップ(b)に記載の吸着による不純物除去過程で使用される吸着剤は、アルカリ金属イオン含有フッ化物、アルカリ土類金属イオン含有フッ化物、またはアンモニウムイオン含有フッ化物のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
五フッ化リンであって、
前記五フッ化リンは、請求項7または8に記載の調製方法により得られ、
前記五フッ化リンの純度≧99.9%である、
五フッ化リン。
【請求項10】
前記五フッ化リンは、リチウムイオン電池用のヘキサフルオロリン酸リチウムまたはジフルオロリン酸リチウムの調製に使用される、
請求項9に記載の五フッ化リンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウムイオン電池用の電解液添加剤の技術分野に関し、例えば、ヘキサフルオロリン酸塩、五フッ化リン、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新型な移動用携帯電源として、リチウムイオン電池は、従来の鉛蓄電池およびアルカリ電池よりも高い比容量および放電電圧を有し、環境に対して汚染が少ない。現在、リチウムイオン電池は、携帯移動電源および携帯電話の電池として広く適用され、電気自動車、自動車等の動力電池として広く適用される。国家政策上の強力なサポートにより、近年、リチウムイオン電池技術の蓄積に伴い、リチウムイオン電池産業は、大きな発展を遂げ、政策奨励および技術進歩により、必ず持続的な発展を迎えている。
【0003】
ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンは、リチウムイオン電池分野における重要な原料であり、その収量および品質への要求は日々増加している。現在、ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法には、主に気-固反応法、フッ化水素溶媒法、有機溶媒法およびイオン交換法がある。通常、五フッ化リンを原料として用いる必要があるが、五フッ化リンは毒性を有し、環境中の水分と分解反応して毒性および腐食性を有するフッ化水素を生成しやすい。
【0004】
CN113353958Aでは、ヘキサフルオロリン酸塩のクリーンな生産プロセスが開示され、前記プロセスは、五塩化リンを無水フッ化水素酸またはフッ化水素ガスと反応させ、五フッ化リンを調製し、反応後に得られたガス混合物をフッ化リチウムで吸着し、脱着後に精製された五フッ化リンガスを取得し、吸着されていない塩化水素およびフッ化水素ガスを更に温度・圧力スイングにより吸着分離した後、塩化水素ガスおよびフッ化水素ガスをそれぞれ取得するステップ(1)と、ヘキサフルオロリン酸塩の調製については、得られた精製後の五フッ化リンをリチウム源またはナトリウム源と反応させてヘキサフルオロリン酸塩を調製したステップ(2)と、ステップ(1)で分離されたフッ化水素を原料として五フッ化リンの調製ステップに導入して再利用するステップ(3)とを含む。
【0005】
CN105776168Aでは、ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法が開示され、前記方法は、三塩化リンと、三塩化リンに対して過剰な無水フッ化水素とを割合で気液混合器に徐々に加え、50~60℃で反応させて三フッ化リンおよび塩化水素を生成するステップ(1)と、ステップ(1)で生成された三フッ化リン、塩化水素および余分なフッ化水素ガスを、五フッ化リン反応生成器に連続的に導入するとともに、塩素ガスを連続的に導入し、反応系を35~70℃の乾燥環境に保持し、反応器内の三フッ化リン、塩素ガスおよびフッ化水素ガスが連続的に反応されて五フッ化リンガスを生成するステップ(2)と、-10~-30℃で、五フッ化リンガスをフッ化塩に導入し、反応させてヘキサフルオロリン酸塩を生成し、-20~-30℃で2~4時間結晶化し、濃縮、乾燥を経てヘキサフルオロリン酸塩製品を取得するステップ(3)とを含む。前記2種の方法は、いずれも五フッ化リンを原料として用い、且つ、毒性および腐食性を有するフッ化水素が得られ、デバイスおよびプロセスへの要求が高い。
【0006】
五フッ化リン(PF5)は、常温常圧において無色で刺激臭のあるガスであり、融点が-93.8℃で、沸点が-84.6℃である。PF5は、水およびアルカリに触るとすぐに加水分解され、ウェット空気中で激しく発煙し、乾燥状態でガラスを腐食せず、アミン、エチルエーテル、硝酸塩、スルホキシド等と錯体を形成可能であり、また、価格も高くて入手しにくい。関連技術において、通常、五塩化リンおよび無水フッ化水素を原料として使用して反応させて五フッ化リンを合成するが、このような反応は放熱が激しく、収率が低く、副生成物PF3Cl2を生成しやすく、不純物が多い。
【0007】
CN104261369Aでは、高純度五フッ化リンの調製方法が開示され、ポリリン酸および無水フッ化水素を開始原料とし、ヘキサフルオロリン酸水溶液を調製したステップIと、ステップIで調製されたヘキサフルオロリン酸水溶液と三酸化硫黄とを反応させ、ヘキサフルオロリン酸と硫酸との混合物を取得するステップIIと、分離せずにステップIIで得られたヘキサフルオロリン酸と硫酸との混合物を直接加熱し、発生した五フッ化リン蒸気を凝縮し、五フッ化リン粗体を取得するステップIIIと、五フッ化リン粗体を精製し、純度>99.5%の高純度五フッ化リンを取得するステップIVとを含む。フッ化水素ガスを原料として用いるため、原料が高価で、且つフッ化水素ガスが強い腐食性を有するため、反応缶および配管等を損傷しやすく、デバイスの防食性および高圧密封性への要求が高く、プロセス過程が比較的複雑である。
【0008】
CN101353161Aでは、五フッ化リンガスを調製する方法および該ガスでヘキサフルオロリン酸リチウムを調製する方法が開示され、ここで、エーテル、アセトニトリル、カーボネート、または酢酸エチル等の溶媒の存在下で五塩化リンと無水フッ化水素とを反応させることにより、五フッ化リンを調製し、また、固体フッ化リチウムと五フッ化リンガスとを接触反応させることにより、ヘキサフルオロリン酸リチウムを調製する。フッ化水素ガスを原料として採用するため、原料が高価で強い腐食性を有し、このような反応は放熱が激しく、収率が低く、副生成物PF3Cl2を生成しやすく、不純物が多い。
【0009】
従い、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを調製するためのグリーンかつ安全な方法を提供することは、既に本分野の早急に解決すべき問題の1つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下は、本文について詳細に説明する主題の概要である。本概要は、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0011】
本願の実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩、五フッ化リン、その調製方法および使用を提供する。ここで、ヘキサフルオロリン酸塩の調製過程において、五フッ化リンを原料として用いる必要がなく、フッ化水素を原料として用いて五フッ化リンを生産することも回避し、生産の安全リスクを低減し、且つ、原料の供給源が広く、原料コストを低減し、工業的大規模生産に有利している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
態様1において、本願の実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法であって、
不活性ガス雰囲気で五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物とを混合させ、反応後にヘキサフルオロリン酸塩前駆体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸塩前駆体に対して蒸発濃縮、溶解、濾過および乾燥を順次行った後、前記ヘキサフルオロリン酸塩を取得するステップ(2)と、を含む、
ヘキサフルオロリン酸塩の調製方法を提供する。
【0013】
本願に係るヘキサフルオロリン酸塩の調製方法において、五酸化二リンおよび三酸化硫黄を原材料とし、その供給源が広く、コストが低く、工業的大規模生産に有利している。また、前記調製方法は、五フッ化リンおよびフッ化水素を原材料として用いることを回避し、生産の安全リスクを低減する。
【0014】
本願に係る五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物との混合は、水分含有量が10ppmよりも低い反応缶で混合し、その混合は、まず、室温でリン酸を加え、その後、五酸化二リンをリン酸に徐々に加え、撹拌して溶解してから三酸化硫黄液体を滴下し、系の温度を制御し、滴下終了後にフッ化物を徐々に加え、均一に混合撹拌した後、反応缶を閉鎖する過程を含む。
【0015】
好ましくは、ステップ(1)に記載の五酸化二リンのリン酸溶液は、五酸化二リンとリン酸との混合液である。
【0016】
好ましくは、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比は1:(0.01~1.0)であり、例えば、1:0.01、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、または1:1.0であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用され、1:(0.1~1.0)であることが更に好ましい。
【0017】
好ましくは、前記五酸化二リンとステップ(1)に記載の三酸化硫黄とフッ化物内のフッ素イオンとのモル比は1:(5.0~10.0):(12.0~24.0)であり、例えば、1:5.0:12.0、1:10.0:24.0、1:8.0:18.0、1:7.5:19.5、または1:6.0:20.0であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0018】
好ましくは、ステップ(1)に記載のフッ化物は、アルカリ金属イオン含有フッ化物、アルカリ土類金属イオン含有フッ化物、遷移金属含有フッ化物、またはアンモニウムイオン含有フッ化物のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、アルカリ金属イオン含有フッ化物とアルカリ土類金属イオン含有フッ化物との組み合わせ、遷移金属含有フッ化物とアンモニウムイオン含有フッ化物との組み合わせ、またはアルカリ金属イオン含有フッ化物とアルカリ土類金属イオン含有フッ化物と遷移金属含有フッ化物との組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0019】
好ましくは、ステップ(1)に記載のフッ化物は、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、またはフッ化バリウムのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、フッ化カリウムとフッ化リチウムとの組み合わせ、フッ化カリウムとフッ化ナトリウムとの組み合わせ、フッ化リチウムとフッ化カルシウムとの組み合わせ、フッ化リチウムとフッ化マグネシウムとの組み合わせ、またはフッ化カリウムとフッ化マグネシウムとの組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0020】
本願の好ましい技術案として、本願のステップ(1)に記載のフッ化物は、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、またはフッ化マグネシウムのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、フッ化カリウムとフッ化リチウムとの組み合わせ、フッ化カリウムとフッ化ナトリウムとの組み合わせ、フッ化カリウムとフッ化マグネシウムとの組み合わせ、フッ化リチウムとフッ化ナトリウムとフッ化マグネシウムとの組み合わせ、またはフッ化カリウムとフッ化リチウムとフッ化ナトリウムとフッ化マグネシウムとの組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)に記載の反応の反応温度は60.0~150.0℃であり、例えば、60.0℃、80.0℃、100.0℃、120.0℃、140.0℃、または150.0℃であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用され、60.0~120.0℃であることが更に好ましい。
【0022】
好ましくは、ステップ(1)に記載の反応の反応時間は10.0~15.0hであり、例えば、10.0h、11.0h、12.0h、13.0h、14.0h、または15.0hであってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0023】
本願のステップ(1)に記載の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、またはネオンガスのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0024】
本願のステップ(2)に記載の濃縮蒸発は、常圧で十分に行われてもよいし、減圧で行われてもよく、例えば、0.01~0.05MPaの圧力で濃縮蒸発を十分に行う。濃縮蒸発の温度については、所期の濃縮効果を取得でき、且つ目標生成物が分解して不要な不純物を生成することを招来しなければ、特に限定せず、例えば、80.0~100.0℃であってもよい。蒸発濃縮により、溶媒としてのリン酸および過剰な三酸化硫黄を蒸発除去することができる。
【0025】
好ましくは、ステップ(2)に記載の溶解過程で使用される溶媒はエタノールまたはアセトンを含む。
【0026】
本願のステップ(2)に記載の溶解過程は、エタノールまたはアセトンを加えて十分に溶解させた後に濾過することにより、難溶性の硫酸塩およびフッ化塩を除去することができる。ヘキサフルオロリン酸塩は、エタノールまたはアセトンに溶解でき、ほとんど濾液に溶解される。純度を更に高めるために、2回および2回以上の溶解および濾過操作を行うことができる。
【0027】
本願のステップ(2)に記載の乾燥の温度および時間については、所期の乾燥効果を取得でき、且つ目標生成物が分解して不要な不純物を生成することを招来しなければ、特に限定せず、例えば、80.0~100.0℃で乾燥を十分に行ってもよい。
【0028】
本願の態様1に記載の調製方法の好ましい技術案として、前記調製方法は、
不活性ガス雰囲気で五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物とを混合させ、60.0~150.0℃温度で10.0~15.0h反応した後にヘキサフルオロリン酸塩前駆体を取得し、前記五酸化二リンのリン酸溶液が五酸化二リンとリン酸との混合液であり、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比が1:(0.01~1.0)であり、前記五酸化二リンとステップ(1)に記載の三酸化硫黄とフッ化物内のフッ素イオンとのモル比が1:(5.0~10.0):(12.0~24.0)であるステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸塩前駆体を80.0~100.0℃の温度で蒸発濃縮し、さらにエタノールまたはアセトンで溶解してから濾過して濾液を取得し、80.0~100.0℃の温度で濾液を乾燥した後、前記ヘキサフルオロリン酸塩を取得するステップ(2)と、を含む。
【0029】
態様2において、本願の実施例は、態様1に記載の調製方法により調製されたヘキサフルオロリン酸塩を提供する。
【0030】
本願に係るヘキサフルオロリン酸塩は白色粉末である。
【0031】
態様3において、本願の実施例は、態様1に記載の調製方法により調製されたヘキサフルオロリン酸塩の使用を提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩は、リチウムイオン電池用の電解液添加剤として使用される。
【0032】
態様4において、本願の実施例は、五フッ化リンの調製方法であって、
ヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とを混合させ、触媒反応を行った後、五フッ化リンガス粗体を取得するステップ(a)と、
ステップ(a)で得られた五フッ化リンガス粗体に対して凝縮と、加圧液化と吸着による不純物除去とを順次行った後、前記五フッ化リンを取得するステップ(b)と、を含み、
ステップ(1)に記載のヘキサフルオロリン酸塩は、請求項6に記載のヘキサフルオロリン酸塩である、
五フッ化リンの調製方法を提供する。
【0033】
本願は、凝縮により高沸点不純物を除去し、高純度の五フッ化リンを取得する。前記高沸点不純物は、三酸化硫黄、二酸化硫黄、フッ化ホスホリル、フッ化水素、またはリン酸蒸気のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。それらは、五フッ化リンに対して沸点が高く、高沸点不純物に属する。
【0034】
好ましくは、ステップ(a)に記載の触媒は、硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄の硫酸溶液、五酸化二リンの硫酸溶液、三酸化硫黄のリン酸溶液、またはクラウンエーテルのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、硫酸と三酸化硫黄との組み合わせ、三酸化硫黄と三酸化硫黄の硫酸溶液と五酸化二リンの硫酸溶液と三酸化硫黄のリン酸溶液との組み合わせ、または硫酸とクラウンエーテルとの組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0035】
更に好ましくは、ステップ(a)に記載の触媒は、硫酸、三酸化硫黄、または三酸化硫黄の硫酸溶液のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、硫酸と三酸化硫黄との組み合わせ、硫酸と三酸化硫黄の硫酸溶液との組み合わせ、三酸化硫黄と三酸化硫黄の硫酸溶液との組み合わせ、または硫酸と三酸化硫黄と三酸化硫黄の硫酸溶液との組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0036】
好ましくは、前記クラウンエーテルは、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、または18-クラウン-6-エーテルのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、12-クラウン-4-エーテルと15-クラウン-5-エーテルとの組み合わせ、15-クラウン-5-エーテルと18-クラウン-6-エーテルとの組み合わせ、12-クラウン-4-エーテルと18-クラウン-6-エーテルとの組み合わせ、または12-クラウン-4-エーテルと15-クラウン-5-エーテルと18-クラウン-6-エーテルとの組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0037】
好ましくは、ステップ(a)に記載の触媒反応の温度は150~400℃であり、例えば、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、または400℃であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0038】
ステップ(a)に記載のヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とのモル比は1:(5.0~20.0)であり、例えば、1:5.0、1:8.0、1:10.0、1:12.0、1:14.0、1:16.0、1:18.0、または1:20.0であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用され、1:(10.0~15.0)であることが更に好ましい。
【0039】
なお、本願に係るヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とのモル比は、特に限定されず、対応する触媒効果を取得できればよい。
【0040】
好ましくは、ステップ(a)に記載の触媒反応の時間は8~12hであり、例えば、8h、9h、10h、11h、または12hであってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0041】
好ましくは、ステップ(b)に記載の凝縮の圧力は0.1~0.2MPaであり、例えば、0.1MPa、0.12MPa、0.14MPa、0.16MPa、0.18MPa、または0.2MPaであってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0042】
好ましくは、ステップ(b)に記載の凝縮の温度は-50~-40℃であり、例えば、-50℃、-48℃、-46℃、-44℃、-42℃、または-40℃であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0043】
好ましくは、ステップ(b)に記載の加圧液化過程における圧力は0.6~1.0MPaであり、例えば、0.6MPa、0.7MPa、0.8MPa、0.9MPa、または1.0MPaであってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用され、0.6~0.8MPaであることが更に好ましい。
【0044】
好ましくは、ステップ(b)に記載の吸着による不純物除去過程で採用される吸着剤は、アルカリ金属イオン含有フッ化物、アルカリ土類金属イオン含有フッ化物、またはアンモニウムイオン含有フッ化物のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、典型的な組み合わせは、アルカリ金属イオン含有フッ化物とアルカリ土類金属イオン含有フッ化物との組み合わせ、遷移金属含有フッ化物とアンモニウムイオン含有フッ化物との組み合わせ、またはアルカリ金属イオン含有フッ化物とアルカリ土類金属イオン含有フッ化物と遷移金属含有フッ化物との組み合わせを含むが、これに制限的なものではない。
【0045】
好ましくは、前記吸着剤は、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、またはフッ化バリウムのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、更に好ましくは、前記吸着剤は、フッ化カリウム、フッ化リチウム、またはフッ化マグネシウムのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0046】
本願に係る吸着剤は、吸着により不純物を除去することができ、例えば、残留する可能性のある少量のフッ化水素等を除去することができる。
【0047】
態様5において、本願の実施例は、態様3に記載の調製方法により調製された五フッ化リンを提供する。
【0048】
好ましくは、前記五フッ化リンの純度≧99.9%であり、例えば、99.9%、99.91%、99.92%、99.93%、99.94%、99.96%、または99.98%であってもよいが、列挙された数値に限らず、数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0049】
本願に係る五フッ化リンの純度≧99.9%であり、そのうち、無水フッ化水素の含有量≦10ppmで、水分含有量≦10ppmで、金属イオンの含有量≦5ppmである。
【0050】
態様6において、本願の実施例は、態様4に記載の調製方法により調製された五フッ化リンの使用を提供し、前記五フッ化リンは、リチウムイオン電池用のヘキサフルオロリン酸リチウムまたはジフルオロリン酸リチウム等のリン酸塩系電解液添加剤の調製に使用される。
【0051】
本願の好ましい技術案として、本願に係る五フッ化リンの調製方法は、
不活性ガス雰囲気で五酸化二リンのリン酸溶液と三酸化硫黄とフッ化物とを混合させ、60.0~150.0℃の温度で10.0~15.0h反応した後にヘキサフルオロリン酸塩前駆体を取得し、前記五酸化二リンのリン酸溶液が五酸化二リンとリン酸との混合液であり、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比が1:(0.01~1.0)であり、前記五酸化二リンとステップ(1)に記載の三酸化硫黄とフッ化物内のフッ素イオンとのモル比が1:(5.0~10.0):(12.0~24.0)であるステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸塩前駆体を80.0~100.0℃の温度で蒸発濃縮し、さらにエタノールまたはアセトンで溶解してから濾過して濾液を取得し、80.0~100.0℃の温度で濾液を乾燥した後、前記ヘキサフルオロリン酸塩を取得するステップ(2)と、
ヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とを混合させ、150~400℃で触媒反応を行った後に五フッ化リンガス粗体を取得し、前記ヘキサフルオロリン酸塩と触媒溶液とのモル比が1:(5.0~20.0)であるステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた五フッ化リンガス粗体を0.1~0.2MPaの圧力で-50~-40℃温度にて凝縮し、0.6~1.0MPaの圧力で加圧液化してから、吸着剤で吸着して不純物を除去した後に前記五フッ化リンを取得するステップ(4)と、を含む。
【0052】
本願に係る数値範囲は、上記挙げられた点値を含むだけでなく、挙げられていない上記数値範囲間の任意の点値も含み、紙面の都合と簡明のために、本願では前記範囲に含まれる具体的な点値を網羅的に列挙しない。
【発明の効果】
【0053】
関連技術と比べ、本願の実施例の有益な効果は以下のとおりである。
【0054】
(1)本願の実施例に係るヘキサフルオロリン酸塩の調製方法で使用される原料は、五フッ化リンを含まず、フッ化水素を原料として用いて五フッ化リンを調製することも回避し、生産中の安全リスクを低減する。
【0055】
(2)本願の実施例に係るヘキサフルオロリン酸塩の調製方法で、五酸化二リン、三酸化硫黄を原材料とし、前記原材料は安価で、供給源が広いため、生産コストを低減し、工業的生産に有利している。
【0056】
(3)本願の実施例に係るヘキサフルオロリン酸塩の調製方法および五フッ化リンの調製方法は、反応が温和で、転化率が高く、不純物の発生量が少なく、プロセス過程を制御しやすい。
【0057】
詳細な説明を閲読して理解してから、他の態様も理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、具体的な実施形態により本願の技術案について更に説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解するためのものに過ぎず、本願の具体的な制限と見なされるべきではない。
【0059】
下記実施例および比較例における一部の成分の供給源は、以下のとおりである。
五酸化二リン、塩化カリウムは、Shanghai Macklin Biochemical CO.,LTD.から購入し、三酸化硫黄は、衢州市合茂化学工業有限公司から購入し、ヘキサフルオロリン酸塩は、Shanghai Macklinから購入し、リン酸、硫酸等の溶媒は、Aladdin試薬サイトから購入した。
【0060】
本願の実施例および比較例で使用された原料または試薬は、いずれも市場の主流メーカーから購入し、メーカーが明記されていないものまたは濃度が明記されていないものは、いずれも通常の入手可能な分析用純度(Analytical Reagent)の原料または試薬であり、所期の作用を果たすことができれば、特に限定しない。本実施例で使用された反応缶およびロータリーエバポレーター等の器械デバイスは、いずれも市場の主要メーカーから購入し、所期の作用を果たすことができれば、特に限定しない。本実施例における具体的な技術または条件が明記されていないものは、本分野内の文献に記述された技術または条件に従い、または製品の説明書に従って行った。
【実施例1】
【0061】
本実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、以下のステップを含む。
【0062】
ステップ(1)窒素ガス雰囲気で1.1molの五酸化二リンのリン酸溶液と、0.5molの三酸化硫黄と、1.2molのフッ化カリウムとを混合させ、120.0℃温度で10.0h反応した後にヘキサフルオロリン酸カリウム前駆体を取得し、前記五酸化二リンのリン酸溶液が五酸化二リンとリン酸との混合液であり、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比が0.1:1.0であった。
【0063】
ステップ(2)ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸カリウム前駆体を100.0℃の温度で蒸発濃縮し、リン酸溶媒等を除去し、固形粉体混合物を析出し、また、5.0molのエタノールで溶解してから濾過して濾液を取得し、生成した硫酸カリウムおよび残留する可能性のあるフッ化カリウム等の不溶性固形粉体を除去し、100.0℃の温度で濾液を乾燥した後、0.181molの前記ヘキサフルオロリン酸カリウムを取得した。
【0064】
ステップ(3)0.1molのステップ(2)で得られたヘキサフルオロリン酸カリウムと1.0molの硫酸とを混合させ、150.0℃で触媒反応を12h行った後、五フッ化リンガス粗体を取得した。
【0065】
ステップ(4)ステップ(3)で得られた五フッ化リンガス粗体を0.1MPaの圧力で-50℃の温度にて凝縮し、高沸点不純物ガスを液体に凝縮して除去し、凝縮により不純物を除去した後のガスを0.6MPaの圧力で加圧液化してから、フッ化カリウムで吸着して不純物を除去し、含まれる少量のフッ化水素を除去し、高純度五フッ化リンを取得した。
【0066】
本実施例に記載の調製方法を用いて0.181molのヘキサフルオロリン酸カリウムを調製しており、前記ヘキサフルオロリン酸カリウムの収率は90.5%で、前記ヘキサフルオロリン酸カリウムの純度は99.90%であった。
【0067】
本実施例に記載の調製方法で調製された五フッ化リンの純度は99.96%であった。
【実施例2】
【0068】
本実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、以下のステップを含む。
【0069】
ステップ(1)アルゴンガス雰囲気で0.2molの五酸化二リンのリン酸溶液と、1.0molの三酸化硫黄と、2.4molのフッ化リチウムとを混合させ、60.0℃温度で15.0h反応した後にヘキサフルオロリン酸リチウム前駆体を取得し、前記五酸化二リンのリン酸溶液が五酸化二リンとリン酸との混合液であり、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比が1.0:1.0であった。
【0070】
ステップ(2)ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸リチウム前駆体を80.0℃の温度で蒸発濃縮し、リン酸溶媒および過剰な三酸化硫黄等を除去し、固形粉体混合物を析出し、また、8.0molのアセトンで溶解してから濾過して濾液を取得し、生成した硫酸リチウムおよび残留したフッ化リチウム等の不溶性固形粉体を除去し、80.0℃の温度で濾液を乾燥した後、0.186molの前記ヘキサフルオロリン酸リチウムを取得した。
【0071】
ステップ(3)0.1molのステップ(2)で得られたヘキサフルオロリン酸リチウムと1.0molの三酸化硫黄の硫酸溶液とを混合させ、400℃で触媒反応を8h行った後、五フッ化リンガス粗体を取得し、前記三酸化硫黄の硫酸溶液のモル濃度が20mol%であった。
【0072】
ステップ(4)ステップ(3)で得られた五フッ化リンガス粗体を0.2MPaの圧力で-40℃温度にて凝縮し、1.0MPaの圧力で加圧液化してから、フッ化リチウムで吸着して不純物を除去し、高純度五フッ化リンを取得した。
【0073】
本実施例に記載の調製方法を用いて0.186molのヘキサフルオロリン酸リチウムを調製しており、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの収率は93.0%で、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの純度は99.92%であった。
【0074】
本実施例に記載の調製方法で調製された五フッ化リンの純度は99.98%であった。
【実施例3】
【0075】
本実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、以下のステップを含む。
【0076】
ステップ(1)窒素ガス雰囲気で1.1molの五酸化二リンのリン酸溶液と、0.75molの三酸化硫黄と、1.8molのフッ化マグネシウムとを混合させ、90.0℃温度で12.0h反応した後にヘキサフルオロリン酸マグネシウム前駆体を取得し、前記五酸化二リンのリン酸溶液が五酸化二リンとリン酸との混合液であり、前記五酸化二リンとリン酸とのモル比が0.1:1.0であった。
【0077】
ステップ(2)ステップ(1)で得られたヘキサフルオロリン酸マグネシウム前駆体を90.0℃の温度で蒸発濃縮し、リン酸溶媒および三酸化硫黄等を除去し、固形粉体混合物を析出し、また、8.0molのアセトンで溶解してから濾過して濾液を取得し、硫酸マグネシウムおよびフッ化マグネシウム等の不溶性固形粉体を除去し、90.0℃の温度で濾液を乾燥した後、0.091molの前記ヘキサフルオロリン酸マグネシウムを取得した。
【0078】
ステップ(3)0.05molのヘキサフルオロリン酸マグネシウムと1.0molの三酸化硫黄の硫酸溶液とを混合させ、300.0℃で触媒反応を10.0h行った後、五フッ化リンガス粗体を取得し、前記三酸化硫黄の硫酸溶液のモル濃度が20mol%であった。
【0079】
ステップ(4)ステップ(3)で得られた五フッ化リンガス粗体を0.15MPaの圧力で-45℃温度にて凝縮し、0.8MPaの圧力で加圧液化してから、吸着剤で吸着して不純物を除去し、高純度五フッ化リンを取得した。
【0080】
本実施例に記載の調製方法を用いて0.091molのヘキサフルオロリン酸マグネシウムを調製しており、前記ヘキサフルオロリン酸マグネシウムの収率は91.0%で、前記ヘキサフルオロリン酸マグネシウムの純度は99.91%であった。
【0081】
本実施例に記載の調製方法で調製された五フッ化リンの純度は99.98%であった。
【実施例4】
【0082】
本実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、ステップ(1)のフッ化カリウムをフッ化ナトリウムに置き換えた以外、いずれも実施例1と同じである。
【実施例5】
【0083】
本実施例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、ステップ(3)に記載の触媒溶液を、1.0molのモル濃度20mol%の三酸化硫黄の硫酸溶液と0.5molの12-クラウン-4-エーテルとの混合液に置き換えた以外、いずれも実施例1と同じである。
【比較例1】
【0084】
本比較例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、ステップ(1)の三酸化硫黄のモル量を2.0molに置き換えた以外、いずれも実施例1と同じである。
【比較例2】
【0085】
本比較例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、ステップ(1)に記載の反応温度を30.0℃に変更した以外、いずれも実施例1と同じである。
【比較例3】
【0086】
本比較例は、ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンを提供し、前記ヘキサフルオロリン酸塩および五フッ化リンの調製方法は、ステップ(1)に記載の反応温度を160.0℃に変更した以外、いずれも実施例1と同じである。実施例1~5および比較例1~3に係るヘキサフルオロリン酸塩に対して製品性能の検出を行った。Metrohm930イオンクロマトグラフを用いてその純度を検出し、Metrohm888電位滴定装置を用いて遊離酸(HF)含有量を検出し、Metrohmコンパクトオーブン(885)-水分測定計(917)併用装置を用いてカールフィッシャー法に従って製品内の水分の含有量を検出し、誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-OES)を用いて製品内の不純物金属イオンの含有量を検出した。得られた検出結果は、表1に示すとおりである。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例1~5および比較例1~3に係る五フッ化リンに対して製品性能の検出を行った。液体クロマトグラフィおよびフーリエ変換赤外分光計を用いて五フッ化リンの純度を検出し、Metrohm888電位滴定装置を用いて遊離酸(HF)含有量を検出し、Metrohmコンパクトオーブン(885)-水分測定計(917)併用装置を用いてカールフィッシャー法に従って製品内の水分の含有量を検出し、誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-OES)を用いて製品内の不純物金属イオンの含有量を検出した。得られた検出結果は、表2に示すとおりである。
【0089】
【表2】
【0090】
表1および表2から分かるように、本願の実施例1~5におけるヘキサフルオロリン酸塩の収率が90%よりも高く、純度が比較例よりも明らかに優れ、遊離酸含有量が12ppm以下で、水分含有量が10ppm以下で、不純物金属含有量が33ppm以下であり、本願の実施例1~5における五フッ化リンの純度が高く、いずれも比較例よりも優れ、99.95%以上であり、遊離酸含有量が10ppm以下で、水分含有量が10ppm以下で、不純物含有量が5ppmであった。
【0091】
実施例1~5と比較例1とを比較して、比較例1におけるステップ(1)の三酸化硫黄が過剰で本願の好ましい範囲を超えることで、ヘキサフルオロリン酸塩の純度が低下し、遊離酸含有量が上昇し、水分含有量も上昇し、五フッ化リンの純度も低下してしまった。
【0092】
実施例1~5と比較例2とを比較して、比較例2のステップ(1)の反応温度が低すぎて本願の好ましい範囲よりも低いことで、反応が不完全になり、未反応物が多く残り、ヘキサフルオロリン酸塩の収率および純度が著しく低下し、遊離酸含有量が増加し、水分含有量も上昇し、五フッ化リンの純度が著しく低下し、遊離酸含有量および水分含有量が増加してしまった。
【0093】
表1および表2から分かるように、実施例1~5と比較例3とを比較して、比較例2のステップ(1)の反応温度が高すぎて本願の好ましい範囲よりも高いことで、反応が過剰で副生成物が発生し、ヘキサフルオロリン酸塩の純度が著しく低下し、遊離酸含有量が著しく上昇し、不純物金属イオン含有量も上昇し、五フッ化リンの純度が著しく低下し、遊離酸含有量が著しく上昇し、水分含有量および不純物金属イオン含有量も上昇してしまった。
【0094】
以上をまとめ、本願は、新しい技術案を採用し、五酸化二リン、三酸化硫黄およびフッ化物を原料として用い、反応のモル比および反応条件を精密に制御することにより、予想外に良好な収率および純度を得た。本願は、五フッ化リンを原料として採用してヘキサフルオロリン酸塩を調製することがなく、フッ化水素を原料として用いて五フッ化リンを生産することも回避し、生産の安全リスクを大きく低減し、新しい生産プロセスを提供し、且つ、原料供給源が広く、原料コストを低減し、収率および純度が高く、不純物含有量が少なく、工業的大規模生産に有利している。
【0095】
以上の具体的な実施例は、本願の目的、技術案および有益な効果について更に詳細に説明し、以上は、本願の具体的な実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神および原則内で行われる任意の修正、均等置換および改良等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれているべきであることが理解されるべきである。
【国際調査報告】