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特表2024-505651トコトリエノール類誘導体、その方法及び使用
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  • 特表-トコトリエノール類誘導体、その方法及び使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】トコトリエノール類誘導体、その方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20240131BHJP
   A61K 31/4433 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240131BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240131BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C07D405/12 CSP
A61K31/4433
A61P17/00
A61P43/00
A61P29/00
A61K8/49
A61K9/06
A61K9/107
A61Q19/00
A61K9/70 401
A61Q19/08
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023546573
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 IB2021059248
(87)【国際公開番号】W WO2022074622
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200872.8
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523131829
【氏名又は名称】グローバル サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケルン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミルカニ、ケント
(72)【発明者】
【氏名】アセンサン アロソ、イヴォ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】デ サ ベッサ、リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサウヴェス ドス レイス、ルイ ルイス
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB07
4C063CC79
4C063DD12
4C063EE01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC18
4C076FF70
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE12
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA03
4C086BC19
4C086GA02
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB11
(57)【要約】
本開示は医薬品、動物用医薬品及び化粧料、すなわちトコトリエノール類の安定化により、特に化粧料製剤において皮膚における機能を妨害することのない、トコトリエノール類の使用の態様に関する。特に本開示はニコチン酸によるトコトリエノール類の修飾、分子の安定化及びヒト皮膚における浸透に関する。本対象の化合物及び組成物は医療、動物用医療及び化粧料産業において、すなわち皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法及び治療に、もしくはざ瘡、脂漏性皮膚炎の療法又は治療として、もしくは抗老化剤として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(式中、R、R、R及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
は、
【化2】

からなる群から選択され、
はジエステル残基又はアミドエステル残基である。)
の化合物であって、皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法又は治療における、あるいは抗老化剤としての使用のための化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のための化合物であって、式(II)
【化3】

(式中、R、R、及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHである)である化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の使用のための化合物であって、式(III)
【化4】

(式中、R、R、R及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
は水H又はCHであり、
はジエステル残基又はアミドエステル残基である。)である化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物であって、Rはグリコール酸ジエステル残基、コハク酸ジエステル残基、フェルラ酸ジエステル残基又はグリシンアミドエステル残基である化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物であって、下記群
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

から選択される化合物。
【請求項6】
下記一般式(I)
【化9】

(式中、R、R、R及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
は、
【化10】

から選択され、
はジエステル残基又はアミドエステル残基である。)
の化合物。
【請求項7】
医療、動物用医療における、又は化粧料としての使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法若しくは治療における、又は抗老化剤としての使用のための、請求項6又は7に記載の化合物。
【請求項9】
皮膚炎症疾患、皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法若しくは治療における、又は抗老化剤としての使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
ざ瘡、酒さ又は脂漏性皮膚炎の予防、療法又は治療における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、医薬用に又は化粧料用に許容できる少なくとも1種の賦活剤と組み合わせて含む医薬又は化粧料組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を組成物の全質量に対して20質量%以下含む、請求項11に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、組成物の全質量に対して0.01~10質量%含む、請求項11又は12に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、組成物の全質量に対して0.1~5質量%含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を組成物の全質量に対して0.1~2質量%含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項16】
外用組成物である、請求項11~15のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項17】
前記外用組成物が、ジェル、クリーム、ローション、軟膏、美容液、ペースト、泡である、請求項11~16のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物又は組成物を含む貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療、動物用医療又は化粧料産業における安定化トコトリエノール類の使用に関する。特に、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、酒さ等の皮膚疾患又は障害の予防、療法又は治療における、又は抗老化剤としての、安定化トコトリエノール類の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンEはトコクロマノール類、類似の化学構造を有する8個の分子の一群を指し、それぞれが飽和(フィチル)鎖が結合したメチル化度の異なるクロマノール環(α、β、γ、δ)からなる4個のトコフェロール類と、それぞれが不飽和(フィチル)側鎖が結合したメチル化度の異なるクロマノール環(α、β、γ、δ)からなる4個のトコトリエロール類である。ビタミンEは全植物種及び一部のシアノバクテリアにおいて自然発生する(非特許文献1)。各異性体の濃度は、生物体、植物種及び植物の部分(葉、根、種子等)によって決まる。トコクロマノール類の重要な供給源はパーム油、ぬか及びアナト-油である。
【0003】
トコクロマノール類は強力な抗酸化物質である。トコクロマノール類は、連鎖反応を停止させ、ペルオキシルラジカルを捕捉し、また一重項酸素を抑制することのできる強力な抗酸化物質として知られている。トコクロマノール類の抗酸化力を溶液中又はリポソーム膜で検査した場合、トコフェロール類及びトコトリエノール類のいずれも類似の異性体では同一の抗酸化力を示すが、異なる異性体間では抗酸化力はα>β=γ>δの順で低下する(非特許文献1)。トコトリエノール類は不飽和脂肪酸鎖により、膜内及び膜間での移動度が高く、脂質ラジカルとの相互作用が制限されにくいため、強い抗酸化力を示す可能性があることが示唆される。さらに、トコトリエノール類は、トコフェロール類とは異なり、膜の剛性を高めない(非特許文献2)。
【0004】
抗酸化効果に加え、ビタミンEは抗炎症(非特許文献3)、抗腫瘍及び抗血管新生効果を示すことが明らかにされている。抗炎症効果は、これらの分子がサイトゾルシクロオキシゲナーセ2(COX-2)及び誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の産生のみならず、TNF-α及びIL-1βの分泌を阻止できることによる。これらの生体因子は全て炎症反応細胞信号伝達カスケードに大きな影響を与える。また、全ての異性体のうちδ-トコトリエノールは、リポ多糖に誘導される、TNF-α、IL-1β、IL-6及びiNOSの遺伝子発現を阻止する能力も有し、抗炎症目的に最も効果的であることも見出された(非特許文献4)。
【0005】
皮膚において、ビタミンEは抗酸化物質及び抗炎症物質として働き、ペルオキシルラジカルや一重項酸素などの活性酸素種(ROS)を捕捉し、内因性グルタチオンを還元型に再生(GSH)することにより、酸化ストレス損傷を防ぐ。α-トコフェロールに比べてトコトリエノール類は更なる抗炎症経路を活性化するため、より強い抗酸化力と抗炎症効果を有する。しかしながら、トコトリエノール類はニート形態で安定性が低く、生物学的利用能が不良であるため、自然のままの提供には、大きな問題点がある。
【0006】
トコクロマノール類、最も一般的にはα-トコフェロールは、細胞膜や血漿など人体に存在する(1個の低密度リポタンパク質(LDL)集合体は、平均して5~12個のα-トコフェロール分子及び1個未満のトコトリエノール又はその他の抗酸化分子を含む)。ヒトはトコクロマノール分子を合成することが出来ず、食料源から取得しなくてはならない。したがって、トコクロマノール類は必須栄養素と見なされる(非特許文献5)。
【0007】
トコクロマノール類の吸収過程はα-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)の援助により促進されるが、α-TTPはトコフェロールのα異性体により高い親和性を示しており、それによりビタミンEの他の異性体及び形態の経口生物学的利用能が低いことが部分的に説明される(非特許文献6)。
【0008】
ビタミンEの生物学的利用能及び生体での局在化は投与経路に大きく依存する。経口投与は生物体の内部器官系へのビタミン類の提供には効率がよいが、体表面の疾患の治療においてビタミンEが最も必要な皮膚の外層への提供には効率が落ちる。それは分子の親油性と大きさのためである。したがって、皮膚のビタミンE含有量の急速な回復のためには外用提供が好まれることが多い。
【0009】
α-トコフェロール以外の、他のビタミンE異性体は全て、経口生物学的利用能がかなり低い。少量のトコトリエノール類の異性体は拡散によりα-TTPを素通りするが、組織に非常に低濃度でそれでも存在する。α-トコフェロールを補充すると他のビタミンE異性体(特にトコトリエノール類)の生物学的利用能及び内在濃度が大きく引き下げられ、随伴する優れた効果が減少することが明らかにされている(非特許文献7)。
【0010】
体表面に塗布すると、ビタミンEは親油性のため角質層への親和力が強く、皮膚により深く浸透するのが難しい。したがって、体表面に提供されたビタミンEは皮膚の外層における滞留時間が長いと考えられるが、皮膚の外層ではビタミンEは酸化因子にさらされ、急速に分解し機能を失いかねない。これは体表面への適用の重要な制限因子であり、さらに提供効率を低下させる。
【0011】
トコクロマノール類の分解率が高いのはこれらの分子の抗酸化性のためであり、トコクロマノール類は大気中に存在する一重項酸素及びその他のROSと即座に反応する。さらに、全てのビタミンE異性体に存在するクロマン環はUV分解する傾向がある。
【0012】
薬用化粧料製剤においてビタミンEの分解を低減するために、多くの方策が開発されてきている。例えば、犠牲的な補助抗酸化物質(ビタミンC等)の包含、コロイドカプセル化方式及び分子の化学的修飾が挙げられる。
【0013】
皮膚への浸透と分子の安定性問題の両方を回避できる変性ビタミンE分子を簡単かつ容易に得られるため、化学修飾が最も広く方策として用いられている。これらの修飾は通常、修飾が最も容易で最も生物学的に合理的な場所である、クロマン環のヒドロキシ基を標的としている。体表面の皮膚への適用を目的とした多くのO-変性トコフェロール類が創造されてきている。例えば、リン酸トコフェロール、トコフェロールリン酸塩、アスコルビルリン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、クロロ酢酸トコフェロール、プロピオン酸トコフェロール、トコフェロールアミノ酸塩及びサリチル酸トコフェロールが挙げられる(非特許文献8)。現在の皮膚疾患治療用製剤で最も使用されているものは酢酸α-トコフェロール及びコハク酸α-トコフェロールである。
【0014】
α-トコフェロールと付加された修飾化合物との間のエステル結合は特に重要である。ヒドロキシ基において変性されるとビタミンEは抗酸化性を失うが(非特許文献1)、化学的分解に対する抵抗性を得る。ビタミンEの抗酸化力は、ROSからヒドロキシ基にラジカルを移転し、体内代謝過程でより容易に処理されるトコフェリル又はトコトリエニルラジカルを形成することによって発揮される。
【0015】
ヒドロキシ基でのエステル結合は非常に興味深い。なぜなら皮膚にはエステル化したトコフェロール又はトコトリエノールを加水分解して、元のニートのトコフェロール又はトコトリエノール及び元のニートの修飾化合物を生ずる非特異的エステラーゼのような酵素が存在するからである。加水分解による生成物は正常な化学的及び生物学的活性を維持している。これらの非特異的エステラーゼの活性は皮膚全体にわたって均一であるわけではなく、角質層と顆粒層の間、活動中の毛包の外毛根鞘、新しい皮脂線細胞及び古い蓄積した皮脂等のいくつかの領域において活性がより高いと報告されている(非特許文献9、10)。最後の領域はざ瘡の症例における皮脂の蓄積のため特に興味深い。エステル修飾は中性製剤では非常に安定であるが、pHがあまりに酸性であったりアルカリ性であったりするとエステルの固有の性質により分解する傾向にある。トコクロマノール分子の化学的修飾は、分子の極性を変えることにより浸透力を高めることができ、トコクロマノール分子をより簡単に角質層中に浸透できる。
【0016】
エステル結合で変性したトコフェロール及びトコトリエノール分子がエステラーゼによって分解される場合、修飾化合物もまた皮膚に放出される。このことは、副作用、拮抗作用、相乗作用及び細胞毒性の可能性があるため、考慮しなくてはいけない重要な因子である。リン酸エステル及びコハク酸エステルなどの市販されている最も一般的な修飾は、出来るだけ副作用を減ずるように通常の代謝で用いられる化合物を放出する。しかしながら、治療効果に乏しい修飾分子を用いることは、多面的又は相乗的な効果を期待した、製剤の外用治療に対する有効性をさらに高める機会を無駄にしてしまう。
【0017】
ビタミンB3は、アミド(ナイアシンアミド)又はカルボン酸(ニコチン酸)形態のいずれも、細胞エネルギー代謝、DNA合成の調節及び転写過程などの多数の代謝過程の必須の補酵素の前駆体である。このビタミンが正常値より低いと、光線過敏性皮膚炎、下痢及び精神異常を特徴とする疾患であるペラグラ病に至る場合がある(非特許文献11,12)。しかしながら、今日では平均的な食事をとっている人にとってはまれな疾患である。なぜなら魚、肉及び小麦はこのビタミンが豊富に含まれているからである。
【0018】
ビタミンB3はまた、皮脂の生産、しわ、紫外線誘導免疫抑制及び皮膚の色素形成を低減する、神経保護及び抗酸化効果を有する(非特許文献12)。
【0019】
ナイアシンアミド又は同類の化合物を含む薬用化粧料は皮膚疾患の治療に効果的である。しかしながら、ナイアシンアミド及びその同類の化合物は、血流に入り込むことが出来る高い浸透能力のため、適用した場所の発赤及び全身性炎症等の副作用をおこす場合もある(非特許文献13)。
【0020】
これらの事実は本開示が対処する技術的問題を説明するために開示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本開示は医療、動物用医療又は化粧料産業における安定化トコトリエノール類の使用に関する。特に、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、酒さ等の皮膚疾患又は障害の予防、療法又は治療における、又は抗老化剤としての使用に関する。
【0022】
本開示は、ニコチン酸によるトコトリエノール類の修飾、リンカーとニコチン酸又はニコチニルアルコールによるトコトリエノール類の修飾、化粧料製剤における変性トコトリエノール類の高い安定性、変性トコトリエノール類のヒトの皮膚中への浸透及び変性トコトリエノール類の元のトコトリエノールとニコチン酸への転化、それによりトコトリエノール類とニコチン酸を効果的に同時に体表面に提供することが出来ることを記載する。
【0023】
トコトリエノール類とトコフェロール類はビタミンEと総称されている分子群の一部であり、「トコール類」とも称される。ニコチン酸は、ビタミンB3を示し、ビタミンB3は、ナイアシンアミドの前駆体で、他の重要な代謝分子の合成に携わる。
【0024】
一態様では、α-トコフェロールとニコチン酸の結合は、α-トコフェロールのヒドロキシ基とニコチン酸のカルボキシ基の反応から生じるエステル結合より得られる。得られた分子は、以下、ニコチン酸α-トコフェリル(α―トリフェロ―ルニコチン酸エステル)と称する。
【0025】
一態様では、種々のトコトリエノール類とニコチン酸の結合は、トコトリエノール類のヒドロキシ基とニコチン酸のカルボキシ基の反応から生じるエステル結合より得られる。ニコチン酸とα-トコトリエノール、γ-トコトリエノール及びδ-トコトリエノールとの結合より得られた分子は、以下、それぞれニコチン酸α-トコトリエニル、ニコチン酸γ-トコトリエニル及びニコチン酸δ-トコトリエニルと称する。これらは変性トコトリエノール類と総称する。
【0026】
一態様では、α-トコトリエノールと、ニコチン酸又はニコチニルアルコール及びその間のその他の分子(以下「リンカー」と称する)との結合は、反応に携わる様々な分子のヒドロキシ基、アミン基及びカルボキシ基間のエステル結合又はアミド結合より得られる。本発明で用いるリンカーはグリコール酸、フェルラ酸、グリシン及びコハク酸である。前記のリンカーは説明のために用いた例であるが、反応には他のリンカーを使用してもよい。ニコチン酸と、グリコール酸、フェルラ酸及びグリシンリンカーと、α-トコトリエノールとの結合により得られた分子は、以下、それぞれグリコリルニコチン酸α-トコトリエニル、フェリルニコチン酸α-トコトリエニル及びグリシニルニコチン酸α-トコトリエニルと称する。ニコチニルアルコールと、コハク酸リンカーと、α-トコトリエノールとの結合で得られた分子は、以下、ニコチニルコハク酸α-トコトリエニルと称する。これらはリンカーを有する変性α-トコトリエノール類と総称する。
【0027】
一態様では、リンカーを有する他のトコトリエノール異性体(γ、δ)とニコチン酸又はニコチニルアルコールの修飾は、異性体のいずれかを選択して同じ合成経路でなされ、リンカーを有する変性トコトリエノールをそれぞれ得ることが出来る。
【0028】
一態様では、トコトリエノール類とニコチン酸のエステル化は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)カップリング反応でなされる。選択した反応の種類及び反応条件は、本明細書では変性トコトリエノール類分子を得る一例として記載する。変性トコトリエノール分子の合成に成功し、構造と純度は様々な分析方法で確認した。
【0029】
一態様では、トコトリエノール類とニコチン酸のエステル化はハロゲン化アシルカップリング反応で、特に塩化ニコチノイルを用いてなされる。選択した反応の種類及び反応条件は、本明細書では変性トコトリエノール類分子を得る一例として記載する。変性トコトリエノール分子の合成に成功し、構造と純度は様々な分析方法で確認した。
【0030】
一態様では、α-トコトリエノール、リンカー及びニコチン酸/ニコチニルアルコールのエステル化/アミド化は各化合物に特異的なそれぞれの合成経路でなされる。
【0031】
一態様では、グリコリルニコチン酸α-トコトリエニル及びフェリルニコチン酸α-トコトリエニルの合成は、ハロゲン化アシルカップリング反応で、特に塩化ニコチノイルを用いて、グリコール酸又はフェルラ酸とニコチン酸とをエステル化し、得られた中間分子とα-トコトリエノールとをEDC/DMAPカップリング反応でエステル化することを含む。
【0032】
一態様では、グリシリルニコチン酸α-トコトリエニルの合成は、α-トコトリエノールとBOC-グリシン-OHとをEDC/DMAPカップリング反応でエステル化し、次にトリフルオロ酢酸を用いたBOC基の選択的加水分解により得られた中間分子を脱保護し、得られた中間生成物とニコチン酸とをEDC/DMAPカップリング反応でアミド化することを含む。
【0033】
一態様では、ニコチニルコハク酸α-トコトリエニルの合成は、酸触媒無水物カップリング反応で、特に硫酸と無水コハク酸を用いてニコチン酸とコハク酸をエステル化し、得られた中間分子とα-トコトリエノールとをEDC/DMAPカップリング反応でエステル化することを含む。
【0034】
一態様では、選択した反応の種類と反応条件はリンカーを有する変性α-トコトリエノール類分子を得る例である。
【0035】
一態様では、得られた変性トコトリエノール類及びリンカーを有する変性α-トコトリエノール類の構造と純度は通常の分析方法で確認した。
【0036】
一態様では、変性トコトリエノール類及びリンカーを有する変性α-トコトリエノール類分子のヒト皮膚中への浸透及びヒト皮膚内での転化を、フランツ拡散セルを用いた透過実験で評価した。転化の様相は透過溶液中のニコチン酸及びニコチニルアルコールを測定して評価し明確にした。
【0037】
一態様では、変性トコトリエノール類及びリンカーを有する変性α-トコトリエノール類分子の皮膚浸透及び透過をニコチン酸α-トコフェリルと比較した。
【0038】
一態様では、変性トコトリエノール類及びニコチン酸α-トコフェリルの浸透を一定期間後の皮膚中に存在する非変性分子の量を計測することにより評価した。
【0039】
実験結果より、変性トコトリエノール分子、リンカーを有する変性α-トコトリエノール類及びニコチン酸α-トコフェリルもまた皮膚中に浸透し、当初のトコトリエノール(又はトコフェロール)、ニコチン酸及びニコチニルアルコール分子に転化して戻ったことが確認された。また、ニコチン酸の放出速度は異なる変性トコトリエノール分子によって違うことが見いだされた。ニコチン酸α-トコトリエニルの放出はニコチン酸γ-トコトリエニル又はδ-トコトリエニルの3倍速かった。また、ニコチン酸α-トコトリエニルからのニコチン酸の放出はニコチン酸α-トコフェリルからよりも速かった。
【0040】
一態様では、化粧料製剤中のニコチン酸α-トコフェリル、変性トコトリエノール類、いくつかのリンカーを有する変性α-トコトリエノール類、非変性トコトリエノール類及びα-トコフェロールの化学的安定性を加速劣化試験(45℃)で評価した。
【0041】
一態様では、変性トコトリエノール類、リンカーを有する変性α-トコトリエノール類、ニコチン酸α-トコフェリルの化学的安定性及びα-トコフェロール、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノール及びδ-トコトリエノール分子の化学的安定性を評価し、比較した。変性及び非変性分子はそれぞれ化粧料製剤に混合し加速劣化試験に供した。結果、これらの状態で3か月後非変性α-トコフェロール、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノール及びδ-トコトリエノールは50%以上減少していたが、変性分子は当初の質量の95%を超えて残存することが示された。リンカーを有する変性α―トコトリエノール類については、フェリルニコチン酸α-トコトリエニルは不安定で、低い保管温度でさえ分解したが、グリコリルニコチン酸α-トコトリエニル、グリシニルニコチン酸α-トコトリエニル及びニコチニルコハク酸α-トコトリエニルは当初の質量の95%を超えて残存することが結果により示された。したがって、フェリルニコチン酸α-トコトリエニルの例外はあるが、変性分子は試験した化粧料製剤において非常に安定であり、重要なことに、非変性トコール類より高い安定性を示すことが示された。
【0042】
一態様では、変性分子はヒトの皮膚へ浸透し、元の分子に転化することが示された。ニコチン酸α-トコトリエニル、好ましくはグリコリルニコチン酸α-トコトリエニルは他の変性トコトリエノール類よりも高い割合で転化した。
【0043】
本開示の他の態様は、本開示の式(I)、(II)又は(III)の化合物を少なくとも1個を、医薬用に又は化粧料用に許容できる賦活剤少なくとも1個と組み合わせて含む医薬又は化粧料組成物に関する。
【0044】
本開示の一態様は、下記一般式(I)
【化1】

(式中、R、R、R及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、

【化2】

からなる群から選択され、
はジエステル残基又はアミドエステル残基であり、は結合部位を表す。)
の化合物に関する。
【0045】
本開示の化合物は、好ましくは医薬品に用いられ、より好ましくは皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法又は治療に、あるいは抗老化剤として用いられる。
【0046】
一態様では、Rはリンカー、好ましくはニコチン酸(又はニコチノイルアルコール)又はトコトリエノールと共有結合的に結合して、ジエステル又はエステル及びアミドを形成する適切なリンカーの分子残基である。
【0047】
一部の態様では、ジエステル残基又はアミドエステル残基(R)は、好適で、少なくとも二官能性の分子、その分子中の反応性基の少なくとも1個がカルボン酸である分子のどれでもから、適切なエステル化反応によって得られる。残りの官能基はカルボン酸基(-COOH)、ヒドロキシ基(-OH)又はアミノ基(-NH)から選択される反応性基の少なくとも1個を含まなくてはならない。
【0048】
一部の態様では、下記一般式(II)
【化3】

(式中、R、R、及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHである)の化合物。
【0049】
一態様では、化合物は式(III)
【化4】

(式中、R、R、R及びRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はジエステル残基又はアミドエステル残基である。)である。
【0050】
一態様では、Rはグリコール酸ジエステル残基、コハク酸ジエステル残基、フェルラ酸ジエステル残基又はグリシンアミドエステル残基である。
【0051】
一態様では、化合物は下記分子
【化5】

ニコチン酸α-トコトリエニル
【化6】

ニコチン酸γ-トコトリエニル
【化7】

ニコチン酸δ-トコトリエニル
【化8】

グリシニルニコチン酸α-トコトリエニル
【化9】

グリコリルニコチン酸α-トコトリエニル
【化10】

フェリルニコチン酸α-トコトリエニル
【化11】

ニコチニルコハク酸α-トコトリエニル
から選択することができる。
【0052】
一態様では、本開示の化合物は、医療、動物用医療に、又は化粧料として用いてもよい。すなわち、皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法又は治療あるいは抗老化に用いる。好ましくは、皮膚炎症疾患の予防、療法又は治療用であり、より好ましくは、ざ瘡又は脂漏性皮膚炎の予防、療法又は治療に用いる。
【0053】
一態様では、本開示の医薬又は化粧料組成物は、式(I)の化合物の少なくとも1個を、組成物の全質量に対して20質量%以下含んでいてもよい。
【0054】
一態様では、組成物は、式(I)の化合物の少なくとも1種を、組成物の全質量に対して0.01~10質量%含んでいてもよく、より好ましくは組成物の全質量に対して0.1~5質量%含んでいてもよく、更により好ましくは組成物の全質量に対して0.1~2質量%含んでいてもよい。
【0055】
本開示の他の態様は、ざ瘡、酒さ又は脂漏性皮膚炎の予防、療法又は治療のための方法に関し、当該方法は、本主題の化合物、化粧料/医薬品組成物及び/又は貼付剤の皮膚への適用を含む。
【0056】
一態様では、組成物は、外用組成物であってもよい。好ましくは、外用組成物は、とりわけジェル、クリーム、ローション、軟膏、美容液、ペースト、泡である。
【0057】
ざ瘡又は脂漏性皮膚炎の化粧処置のための方法についても開示しており、方法は化粧料/医薬品組成物の皮膚への適用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0058】
下記の図は本明細書を説明するための好ましい態様を提供するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
図1図1は、変性トコトリエノール、化粧料製剤への混合、ヒト皮膚中への浸透及び元の分子への転化の概略図である。
【0060】
図2図2は、合成及び精製過程後のニコチン酸α-トコトリエニル、ニコチン酸γ-トコトリエニル及びニコチン酸δ-トコトリエニルのクロマトグラムである。
【0061】
図3図3は、透過実験に用いたフランツ拡散セルの写真である。1はドナーコンパートメント、2は皮膚試料、3はレセプターコンパートメント、4はサンプリング通路、5は恒温水槽である。
【0062】
図4図4Aは、5%m/mのニコチン酸α-トコフェリル、ニコチン酸α-トコトリエニル及びニコチン酸γ-トコトリエニルの、透過時間の経過に伴う透過溶液中のニコチン酸の濃度の変化のグラフである。図4Bは、10%m/mのニコチン酸α-トコフェリル(α-T-N)、ニコチン酸α-トコトリエニル(α-T3-N)、ニコチン酸γ-トコトリエニル(γ-T3-N)、フェリルニコチン酸α-トコトリエニル(N-Fer-T3)、グリシニルニコチン酸α-トコトリエニル(N-Gly-T3)、グリコリルニコチン酸α-トコトリエニル(N-Glc-T3)及びニコチニルコハク酸α-トコトリエニル(N-Suc-T3)の、透過48時間後の最後の透過溶液中のニコチン酸の濃度の並列比較のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本開示を、特に本開示の態様を用いて更に詳細に説明する。したがって、開示は提供した記載及び説明に限定されない。これらの態様は開示が十分に詳細で包括的であるよう用いられる。さらに、図面は、説明を目的としており、限定を目的としていない。
【0064】
本開示は医療、動物用医療及び化粧料におけるトコトリエノール類の使用、すなわちトコトリエノール類の安定化により、特に化粧料製剤において皮膚における機能を妨害することのない、使用についての態様に関する。特に本開示はニコチン酸によるトコトリエノール類の修飾、分子の安定化及びヒト皮膚における浸透の様相に関する。
【0065】
本対象の化合物及び組成物は医療、動物用医療及び化粧料産業において、すなわち皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法及び治療に、もしくはざ瘡、脂漏性皮膚炎の療法又は治療として、もしくは抗老化剤として有用である。
【0066】
一態様では、一般的な方法に記載された方法に従って、α-トコフェロール、α-トコトリエノール、γ-トコトリエノール及びδ-トコトリエノールとニコチン酸を反応させた(図1)。
【0067】
一態様では、トコトリエノール類及びトコフェロールの修飾をEDC/DMAPカップリングで実施した。反応の進展は薄膜クロマトグラフィー(TLC)で観察し、生成物は液液抽出後回収し、カラムクロマトグラフィーで精製した。新しい分子の構造及び純度は、プロトン磁気共鳴(H-NMR)、質量分析(MS)、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した。
【0068】
一態様では、トコトリエノール類及びトコフェロールのニコチン酸による修飾はカップリング剤EDCに基づき、DMAPによって触媒される反応方法でなされた。
【0069】
一態様では、EDC(1mol eq.)及びDMAP(0.05mol eq.)をジクロロメタン(DCM)に加え、完全に溶解するまで(約20分間で通常十分である)室温で攪拌する。次にこの溶液を氷水浴で0℃まで冷却し、ニコチン酸の塊(1mol eq.)を加え、完全に溶解することを観察する。次に、取り扱いやすいようにあらかじめDCMに溶解しておいた、大部分のトコトリエノール又はトコフェロールを反応混合物に加え、すぐにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(1mol eq.)を加える。次に、反応混合物を一晩中攪拌し続ける。所望の生成物が良好に形成されていることをTLC分析で観察する。
【0070】
一態様では、得られた反応生成物を精製した。規定の反応時間後、反応混合物は、水に溶ける、反応していない試薬及び不要な副生成物を取り除くため、水による液液抽出を行った。抽出の進展はTLCにより観察した。
【0071】
一態様では、有機画分は残りの水を無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を蒸発させて除去した。固体の残留物は回収し、順相カラムフラッシュクロマトグラフィーでさらに精製した。収集した画分はTLCで分析し、それに応じて混ぜ合わせた。次に溶媒をロータリーエバポレーターで真空下で除去し、高真空室で一晩中乾燥させた。
【0072】
一態様では、ニコチン酸α-トコトリエニルの合成をニコチン酸、EDC、DIEA及びDMAPを用いて行った。ニコチン酸、EDC、DIEA及びDMAPの使用量はα-トコトリエノールに対して過多であった。一部の方法では、α-トコトリエノール1745mgとニコチン酸1251mgを、DCM30mL中のEDC4164mg、DIEA1745μL及びDMAP85mgを用いて反応させた。ニコチン酸α-トコトリエニルの精製は、シリカゲル60及びDCM/メタノール 40:1の溶離液のカラムクロマトグラフィーで行った。
【0073】
一態様では、ニコチン酸γ-トコトリエニル合成をニコチン酸、EDC、DIEA及びDMAPを用いて行った。ニコチン酸、EDC、DIEA及びDMAPの使用量はγ-トコトリエノールに対して過多であった。一部の方法では、γ-トコトリエノール1326mgとニコチン酸985mgを、DCM30mL中のEDC2160mg、DIEA1380μL及びDMAP85mgを用いて反応させた。ニコチン酸γ-トコトリエニルの精製は、シリカゲル60及びDCM/メタノール 40:1の溶離液のカラムクロマトグラフィーで行った。
【0074】
一部の態様では、ニコチン酸δ-トコトリエニル合成をニコチン酸、EDC、DIEA及びDMAPを用いて行った。ニコチン酸、EDC、DIEA及びDMAPの使用量はδ-トコトリエノールに対して過多であった。一部の方法では、δ-トコトリエノール584mgとニコチン酸566mgを、DCM30mL中のEDC1607mg、DIEA778μL及びDMAP53.2mgを用いて反応させた。ニコチン酸δ-トコトリエニルの精製は、シリカゲル60及びDCM/メタノール 30:1の溶離液のカラムクロマトグラフィーで行った。
【0075】
一態様では、リンカーを有する変性α-トコトリエノール類の合成は、特定の分子それぞれの実務的な必要及び考慮する点に従って多くの異なる合成経路で行った。
【0076】
一態様では、反応の進展はTLCにより観察した。
【0077】
一態様では、新しい分子の構造及び純度は、H-NMR、MS、FTIR及びHPLCにより確認した。
【0078】
一態様では、グリコリルニコチン酸α-トコトリエニルの合成は2段階法で行った。第一段階は、グリコール酸とニコチン酸のエステル化で以下の通りである。塩化ニコチノイル塩酸塩500mg、グリコール酸640mg(3eq.)及びアセトニトリル20mLを丸底フラスコに、エタノール氷浴、攪拌下で加えた。混合物は温度が-10℃になるまで攪拌し、DIEA1mLを加え、1時間反応させた。所定の反応時間後、塩化パルミトイル2.5mLを反応媒体に加え、すぐにDIEA2mLを加えた。混合物は更に30分反応させた。次に脱イオン水10mLを反応媒体に加え、媒体は一晩中攪拌した。次に反応媒体はろ過し、ろ液を回収した。ろ液中のアセトニトリルを真空下約45℃でロータリーエバポレーターを用いて除去し、凍結乾燥して残った水を除去した。第二段階では、第一段階で得られた粗生成物を更に精製しないで用いた。粗生成物400mg、EDC540mg(6eq.)、DMAP5mg及びDCM20mLを攪拌下丸底フラスコ内で混合した。DCM0.5mLに溶解したα-トコトリエノール200mgを混合物に加え、DIEA0.5mLを加えた。攪拌しながら18~25℃の範囲の温度で1時間反応させた。引き続いて反応媒体は5%クエン酸30mL及び脱イオン水50mLで3回抽出した。有機画分を回収し、混合して硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒は真空下約45℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。新しい分子の構造及び純度は、H-NMR、MS、FTIR及びHPLCにより確認した。
【0079】
一態様では、フェリルニコチン酸α-トコトリエニルの合成は2段階法で行った。第一段階では、丸底フラスコ中のアセトニトリル20mLにフェルラ酸720mg(1.5eq.)を溶解し、エタノール氷浴で-10℃に冷却した。塩化ニコチノイル塩酸塩980mgを反応容器に加え、混合物を5分間攪拌した。次に、1分間激しく攪拌しながらDIEA2mLを滴下して加えた。反応液をさらに2時間攪拌し、確実に反応を完成させた。次に、反応媒体は引き続いて脱イオン水50mLで3回抽出した。有機画分を回収し、混合し硫酸ナトリウムで乾燥させた。次に、溶媒は真空下約30℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。得られた粗生成物は最小量の5%ギ酸アセトニトリル溶液に再溶解し、逆相系分取HPLC(ウォーターズアトランティスC18分取カラム、19×250mm10μm、アセトニトリル:水 60:40、20mL/min)で精製した。第二段階では、第一段階で得られた中間体50mgを、DCM10mL中のEDC96mg(3eq.)及びDMAP5mgとともに丸底フラスコに加え、10分間徹底的に攪拌した。取り扱いしやすいようにDCM5mLに溶解したα-トコトリエノール70mgを反応容器に加え、激しく攪拌しながらすぐにDIEA0.2mLを加えた。反応液は2時間攪拌し、確実に反応を完成させた。次に反応媒体は引き続いて5%(w/v)クエン酸溶液30mL及び脱イオン水50mL3回で抽出した。有機画分は混合し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒は真空下約30℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。得られた粗生成物は最小量の5%ギ酸アセトニトリル溶液に再溶解し、逆相系分取HPLC(ウォーターズアトランティスC18分取カラム、19×250mm10μm、アセトニトリル100%、20mL/min)で精製した。
【0080】
一態様では、グリシニルニコチン酸α-トコトリエニルの合成は3段階法で行った。第一段階では、BOC-グリシン-OH120mg(1.5eq.)、EDC410mg(4.5eq.)、DMAP20mg及びDCM15mLを激しく攪拌しながら丸底フラスコ内に加えた。取り扱いしやすいようにDCM5mLに溶解したα-トコトリエノール120mgを反応容器に加え、激しく攪拌しながらすぐにDIEA3mLを加えた。反応液はさらに2時間攪拌し、確実に反応を完成させた。反応媒体は引き続いて5%クエン酸水溶液30mL及び脱イオン水50mLで2回抽出した。有機画分を回収し、混合し硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒は真空下約40℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。粗生成物は更に精製しないで次の段階で用いた。第2段階ではDCM3mLとトリフルオロ酢酸(TFA)3mLを含む溶液を攪拌下で粗生成物に加え、1時間反応させBOC保護基を確実に取り外した。反応媒体はメタノールと共に真空下約40℃でロータリーエバポレーターを用いて共沸蒸発させた。粗生成物はDCMに再溶解し、脱イオン水50mL3回で抽出した。有機画分を回収し、混合し硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。第3段階では、第2段階のろ過した有機画分を丸底フラスコに入れ激しく攪拌し、あらかじめ新たに調製した、DCM5mL中のニコチン酸120mg(2eq.)、EDC1.2g(6eq.)及びDMAP5mgを加え、さらに10分間攪拌した。DIEA1mLを反応媒体に加え、反応液を室温で更に1時間攪拌し、確実に反応を完成させた。反応液は引き続いて5%クエン酸30mL及び脱イオン水50mL3回で抽出した。有機画分を回収し、混合し硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒は真空下約40℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。得られた粗生成物は最小量のDCMに再溶解し順相カラムフラッシュクロマトグラフィーで精製した。カラムにはDCM:メタノール 10:1の溶液に分散させて50gのシリカゲル60が充填されており、第3段階で得られた粗生成物全量をカラムに入れ、DCM:メタノール 10:1の溶液で溶出した。
【0081】
一態様では、ニコチニルコハク酸α-トコトリエニルの合成は2段階で行った。第1段階では、無水コハク酸770mg、ニコチニルアルコール1.9g(1.9eq.)及びアセトニトリル20mLを丸底フラスコに加え、10分間攪拌した。次に98%硫酸200μLを激しく攪拌しながら混合物に加え、反応は急速に進展し、白色及び淡黄色の沈殿物の塊を形成しているが、反応液をさらに1時間攪拌して、確実に反応を完成させた。反応媒体をろ過し、ろ液を回収し、攪拌下で丸底フラスコに移した。塩化パルミトイル4mL及びDIEA2.5mLを反応容器に加え、混合物をさらに1時間攪拌した。反応媒体を再びろ過し、ろ液を回収した。次に、ろ液はヘキサン30mLで3回抽出した。アセトニトリル画分を回収し、溶媒は真空下約40℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。得られた粗生成物を脱イオン水50mLに溶解し、焼結ガラスフィルター(サイズ4)でろ過した。ろ液を回収し、凍結乾燥して、さらなる精製はせず次の段階に用いた。第2段階では、DCM15mL中の、前段階で得られた粗生成物296mg、EDC542mg(6eq.)及びDMAP20mgを丸底フラスコで混合した。次に、DCM5mLに溶解したα-トコトリエノール200mgを反応媒体に加え、激しく攪拌しながら、すぐにDIEA4mLを加えた。反応液を更に2時間攪拌し、確実に反応を完成させた。次に、反応液は引き続き5%クエン酸溶液及び脱イオン水50mLで3回抽出した有機画分を回収し、混合し硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒は真空下約40℃でロータリーエバポレーターを用いて除去した。得られた粗生成物は最小量の5%ギ酸アセトニトリル溶液に再溶解し、逆相系分取HPLC(ウォーターズアトランティスC18分取カラム、19×250mm10μm、100%アセトニトリル、20mL/min)で精製した。
【0082】
一態様では、TLC分析を、アルミニウム支持体の、蛍光指示薬F254を含浸したシリカゲル60プレート(メルク株式会社)で行った。プレートは長さ8cmで、試料のランレングスは7.5cmであった。展開したプレートは、どの展開液(呈色試薬)でも適用する前に紫外線(254nm及び365nm)下で視覚化した。使用した呈色剤(TLC呈色剤、ゼーバッハ呈色剤、ドラーゲンドルフ呈色剤)は化合物の共通識別用及び化合物の選択的検出用であった。
【0083】
一態様では、反応生成物はさらに、FTIR、HPLC、MS及びH-NMRで特徴づけた。FTIR測定は島津製作所製のIRPrestige-21分光光度計で、圧縮臭化カリウム(KBr)ペレットウインドウを用いて行った。スペクトルは透過モード、波数4000~400cm-1の範囲内、分解4cm-1で32個の個別測定の平均として得た。HPLC分析は3個のモジュール、すなわち、Smartline manager 5000、Smartline pump 1000及びSmartline UV Detector 2600からなるナウアー(Kanuer)クロマトグラフで行った。紫外線検出器は190~450nmでの連続的な観察ができるフォトダイオードアレイ(PDA)に備えられている。カラムシステムはプレカラム(逆相C18アトランティスT3 5μm、4.6×20mm)及びカラム(逆相C18アトランティスT3 5μm、4.6×250mm)からなり、専用オーブンを用いて30℃に維持した。溶出はアセトニトリル(0.1%v/vの酢酸を含む)を用いて1mL/minで行い、投入量は50μLであった。MSスペクトルはトリプル四重極クワトロ微小質量分析計(ウォーターズ社)で、試料を含む溶液を直接投入して得た。脱溶媒温度及びガス(N2)流量は、プローブは300℃及び600L/hに、キャピラリーは120℃及び20L/hに設定した。キャピラリーの電圧は4.00keV及びコーンの電圧は40Vに設定した。スペクトルは衝突ガスとしてアルゴン(Ar)を用いた娘モードで記録した。選択、それぞれの分子イオンm/zの固定及び衝突エネルギーの調節後、50~600のm/z範囲で記録した。対象の分子はアセトニトリル:メタノール 1:1に溶解し、20μL/minで注入した。
【0084】
一態様では、完全に溶媒を除去した後、変性分子をさらに以下に記載した手順で特徴づけた。FTIRの結果、エステル結合に特有である約1740cm-1に強い吸収帯が存在し、ヒドロキシル基及びカルボキシ基に特有の2750~3500cm-1の範囲には吸収帯が存在しなかった。それぞれの精製した生成物のHPLCクロマトグラム(図2)では、1個ピークのみを示した。MSスペクトルでは、期待された分子イオンピークの存在が示された(表Iにより)。H-NMRスペクトルピークは、期待された構造に一致した。変性トコトリエノール及びリンカーを有する変性α-トコトリエノール類分子は97%m/m以上の純度で得られた。
【表1】
【0085】
一態様では、変性化合物の皮膚透過を評価した。透過試験はヒト皮膚全層で行った。試料は地域の病院で美容整形を行った健康なドナーから得た。切除した皮膚は、抗生物質を10%含むPBS溶液中で保管し、実験室でのさらなる加工まで、4℃に保った。皮膚試料を受け取ると下にある脂肪組織を取り除き廃棄した。残りの皮膚(真皮は及び表皮層)は約1.5×1.5cmの片に切断した。透過実験を新鮮な皮膚で行う場合は試料を直ちに使用した。そうでない場合はカット済みの皮膚試料は-80℃で凍結し、今後の利用のために保管した。凍結した皮膚試料を再生利用する場合は、更なる処置の前に保管庫から移し、1時間室温に解凍した。
【0086】
透過実験はフランツ拡散セルで行った。拡散セルは、透過する分子を含む製剤を配置するドナーコンパートメントと、レセプター液を収容し、透過する分子が集められ、最後には蓄積するレセプターコンパートメントからなる。皮膚試料はドナーコンパートメントとレセプターコンパートメントの間に配置され、セルを分解せずに試料(一定のレセプター液)を回収できるサンプリング通路も備わっており、継続的に透過実験を行うことができる(図3)。
【0087】
実験の開始時にレセプターコンパートメントをレセプター液で満たし、皮膚試料をその下に気泡が出来ないように注意して適切な位置に配置した。ドナーコンパートメントを適切な位置に配置し、クランプで固定した。次に組み立て品を恒温浴槽(37℃)に30分間置き、温度平衡させた。平衡時間後、レセプター液の高さを必要に応じて調節した。レセプターコンパートメントには磁気ミキサーを装備し、透過実験の進行中確実に溶液を均質にした。
【0088】
一態様では、透過溶液中の、変性トコフェロール及びトコトリエノール類分子から放出されたニコチン酸の有無を観察した。ニコチン酸の量はイオンペアリング法を用いたHPLCで計測した。ニコチン酸の濃度は、同じ条件で計測した既知のニコチン酸濃度溶液の標準検量線より算出した。HPLC分析は3個のモジュール、Smartline manager 5000、Smartline pump 1000及びSmartline UV Detector 2600からなるナウアー(Kanuer)クロマトグラフで行った。紫外線検出器は190~450nmでの連続的な観察ができるフォトダイオードアレイ(PDA)に備えられている。オンラインクロマトグラムは254nmで観察した。溶離液は、10%アセトニトリルを含むイオンペアリング溶離剤(リン酸水素二ナトリウム(NaPO)でpHを7.4に調整した、50mM水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)を含み、流量は1mL/minであった。カラムは、アトランティス T3 4.6×250mm(同じ型の4.6×20mmのガードカラムと共に)を30℃で使用した。
【0089】
一態様では、皮膚透過実験は、異なる濃度の変性トコトリエノール及びトコフェロール分子を含む製剤で行った。変性分子は、同量の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールとプロピレングリコールの混合液に、5%及び10%m/mの濃度で溶解し、この溶液150μLを皮膚試料に適用した。5%m/m濃度のドナー液を用いた実験の透過溶液中に存在するニコチン酸の濃度を異なる時点(8,24,33及び48時間)で計測した。10%m/m濃度のドナー液を用いた実験では、透過48時間後に透過溶液中のニコチン酸の濃度を計測した。得られた結果を表II及び図4に示す。
【表2】
【0090】
一態様では、皮膚透過実験は、異なる濃度のリンカー分子を有する変性α-トコトリエノールを含む製剤で行った。変性分子は、同量の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールとプロピレングリコールの混合液に、10%m/mの濃度で溶解し、この溶液150μLを皮膚試料に適用した。フェリルニコチン酸α-トコトリエニル、グリコリルニコチン酸α-トコトリエニル及びグリシニルニコチン酸α-トコトリエニルを用いた実験の透過溶液中に存在するニコチン酸の濃度を前記のイオンペアリング法を用いたHPLCで計測した。ニコチニルコハク酸α-トコトリエニルの透過液中のニコチニルアルコールの濃度は同じシステム構成であるが、溶離液は水を用いたHPLCで計測した。ニコチン酸及びニコチニルアルコールの濃度は透過24及び48時間後に測定した。得られた結果は表IIIに示す。
【表3】
【0091】
一態様では、皮膚の内部の変性トコトリエノール又は変性トコフェロール化合物の量を透過実験の最後に計測した。このため、濃度10%m/mのドナー溶液の透過実験の最後に皮膚試料を回収し、フランツ拡散セルのドナーコンパートメントに残存する製剤を蒸留水で洗浄し、完全に除去した。皮膚試料を5mLのアセトニトリルで3回抽出し、抽出液を混合し、変性化合物を、化合物の純度を決定するために記載された分析条件に従ってHPLCで計測した。変性化合物の量は異なる化合物間で同等で、皮膚の面積1cmあたり約0.600mgであることが見出された。
【0092】
一態様では、リンカーの無い分子に関してはニコチン酸α-トコトリエニルの透過溶液中に、リンカーを有する分子に関してはグリコリルニコチン酸α-トコトリエニルの透過溶液中に、最も高濃度でニコチン酸が認められた。
【0093】
一態様では、変性分子の化学的安定性を加速劣化試験で評価した。このため、試験分子は化粧料に相応する製剤とし、3カ月間劣化を評価した。
【0094】
一態様では、化粧料製剤は水、ホホバ種子油、ブチレングリコール、スクアラン、ヒアルロン酸ナトリウム、セテアリルアルコール及びカルボマーを含んでよい。
【0095】
一態様では、化粧料製剤は、化粧料製剤中にさらなる所望の特性を得るために好適な成分をさらに含んでよい。
【0096】
一態様では、試験分子は0.1%m/m濃度で化粧料製剤に加えられ、確実に均一に分散するように完全に均質化し、閉鎖したガラス瓶に入れ45℃のオーブン内で3カ月間保管した。均一性と安定性を評価するため、調製直後及び評価する各時点で、任意の場所から3試料回収した。試験分子の定量化はHPLCで行った。
【0097】
一態様では、安定性の評価のための混合物の調製は以下の実験手順に従って行った。化合物の質量を計測し、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(同様に計測した)に溶解し、質量が既知の保湿剤製品に加えた。混合物を均質化し、3試料を回収し、変性分子の均質な分散と最初の濃度を確認した。次に混合物を45℃のオーブンに入れ3か月間保管した(表IV)。
【0098】
一態様では、化粧料製剤中の試験分子の安定性を測定した。試験混合物は任意の区域から3回同じ方法で試料を取った。試料は分析のためにアセトニトリルに溶解して調製し、変性及び非変性トコフェロ―ルならび変性トコトリエノール分子の定量化をHPLCで行った。最初の化合物の濃度(%)を表IVに記載する。変性トコトリエノール類は保管の間は減少しなかった一方で、非変性トコトリエノール類は最初の量の約半分以下に減少した。リンカーを有する変性トコトリエノールは分子によって異なる振る舞いを示した。グリシニルニコチン酸α-トコトリエニル、グリコリルニコチン酸α-トコトリエニルの及びニコチニルコハク酸α-トコトリエニルは優れた安定性を示した一方で、フェリルニコチン酸α-トコトリエニルは低温の保管条件でさえ不安定であった。
【表4】
【0099】
本明細書で用いられるいかなる場合の「含む」という単語は明言された特徴、整数、段階、成分が存在することを意図するが、1個以上の他の特徴、整数、段階、成分又はそれらの群が存在すること、又はそれらを追加することの排除を意図したものではない。
【0100】
請求項の列挙において単数形の要素又は特徴が用いられている所は、複数形もまた含まれ、明確に排除していない限り逆も同様である。例えば、単語「化合物(a compound)」は「その化合物(the compound)」はまた複数形「化合物類(compounds)」又は「その化合物類(the compounds)」を含み、逆も同様である。請求項において「a」「an」「the」などの冠詞は反対のものを指さない、あるいはそうでなければ文脈より明らかでない限り、1つ又は1つを超えることを意味してもよい。群中の1つはそれ以上の要素の間の「又は」を含む請求項又は記載は、反対のものを指さない、あるいはそうでなければ文脈より明らかでない限り、1つ、1つを超える又はすべての群の要素が特定の生成物又は工程に存在する、用いられる、あるいはそうでなければ関係するとみなされる。開示は、群中の正確に1つの要素が特定の生成物又は工程に存在する、用いられる、あるいはそうでなければ、関係する態様を含む。開示はまた、1つを超える、又はすべての群の要素が特定の生成又は工程に存在する、用いられる、あるいはそうでなければ関係する態様を含む。
【0101】
さらに、開示は、1つ以上の限定、要素、条項、記述用語等が、1つ以上の請求項又は1つ以上の明細書の関係する部分から、別の請求項に導入されている、全ての変異、組み合わせ及び交換を含むことを理解すべきである。例えば、他の請求項に従属したどんな請求項も、同じベースの請求項に従属した他のどんな請求項にみられる1つ以上の限定を含むように変更できる。
【0102】
さらに、請求項が組成物を説明する所では、別段の指示が無く、あるいは矛盾又は不一致が生じることが当該技術分野の通常の技術を有する人のうちのひとりにとって明らかでない限り、本明細書で開示されるいかなる目的に対する、組成物の使用方法、又は本明細書で開示されるいかなる作成方法、又は当技術分野で周知の別の方法に従う組成物の作成方法が含まれることは理解すべきである。
【0103】
範囲が示されたところは、終点を含む。さらに、別段の指示がない限り、あるいは文脈及び/又は当該技術分野の通常の技術を有する人のうちのひとりの理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、発明の異なる態様における既定の範囲内のいかなる特定の値を、文脈が明らかに別の指示をしていない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、想定できることを理解すべきである。また、別段の指示が無く、あるいは文脈及び/又は当該技術分野の通常の技術を有する人ののうちのひとりの理解から明らかでない限り、範囲として表された値は、所定の範囲内のいかなる部分範囲を想定でき、部分範囲の終点は、範囲の下限の単位の10分の1と同程度の正確さまで表されることは理解すべきである。
【0104】
開示は記載された態様に限定された方法で見られるべきでなく、当該技術分野の通常の技術を有する人が多くの、その改良可能性を予見することが出来る。
【0105】
上記の態様は結合することが出来る。
【0106】
引用文献

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは互いに独立に選択され、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
はH又はCHであり、
は、
【化2】


からなる群から選択され、
はグリコール酸ジエステル残基、コハク酸ジエステル残基又はグリシンアミドエステル残基である。)
の化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、
下記群
【化3】

から選択される化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物であって、医療、動物用医療における使用のための化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の化合物であって、皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法又は治療における、あるいは抗老化剤としての使用のための化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物であって、皮膚炎症疾患、皮膚疾患、皮膚障害の予防、療法又は治療における、あるいは抗老化剤としての使用のための化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物であって、ざ瘡、酒さ又は脂漏性皮膚炎の予防、療法又は治療における使用のための化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、医薬又は化粧料として許容できる少なくとも1種の賦活剤と組み合わせて含む、医薬又は化粧料組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、前記組成物の全質量に対して20質量%以下含む、請求項7に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、前記組成物の全質量に対して0.01~10質量%含む、請求項7又は8に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、前記組成物の全質量に対して0.1~5質量%含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1種を、前記組成物の全質量に対して0.1~2質量%含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項12】
前記組成物が外用組成物である、請求項7~11のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項13】
前記外用組成物が、ジェル、クリーム、ローション、軟膏、美容液、ペースト、泡、の形態である、請求項7~12のいずれか一項に記載の医薬又は化粧料組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又は組成物を含む貼付剤。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の化合物の、化粧料における使用。
【国際調査報告】