(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】創傷ケア製品の製造方法及び創傷ケア製品
(51)【国際特許分類】
A61L 15/28 20060101AFI20240131BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20240131BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240131BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240131BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240131BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240131BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240131BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240131BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/14 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/10 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/12 20060101ALI20240131BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A61L15/28
A61K31/785
A61P17/02
A61P17/00 101
A61K9/70 405
A61K47/38
A61K9/70
A61K47/18
A61K47/08
A61K47/26
A61L15/14
A61L15/10
A61L15/20 100
A61L15/42 100
A61L15/44
A61L15/12
A61L15/22 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547109
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021085616
(87)【国際公開番号】W WO2022128996
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020133583.0
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514227232
【氏名又は名称】ローマン ウント ラウシェル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レープ, ティナ
(72)【発明者】
【氏名】ロルジック, ミリヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】パンホルツル, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シパリ, シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ハルライター, ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ビュッフェガー, パトリツィア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA76
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD39
4C076DD49
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE33
4C076FF34
4C081AA03
4C081AA08
4C081BB06
4C081CD021
4C081CD022
4C081CE01
4C081DA05
4C081DB01
4C081DC06
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA03
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZA90
(57)【要約】
水分活性成分、特に繊維を含有する布帛が加工される創傷ケア製品の製造方法であって、それにより、布帛の加工が、水分活性成分に抗菌手段を適用することを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分活性成分、特に繊維を含有する布帛が加工される創傷ケア製品の製造方法であって、前記布帛の前記加工が、前記水分活性成分に抗菌手段を適用することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記抗菌手段が、好ましくは水溶液中に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗菌手段を含有する前記溶液が、好ましくは前記布帛の両面に、特に少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、10
-4mg以上、特に4×10
-3mg以上の前記抗菌手段が適用されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、1.0mg以下、特に0.7mg以下の前記抗菌的に有効な手段が適用されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗菌手段がPHMBを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
PHMBが、0.1~9重量%の範囲、特に4~9重量%の範囲の濃度で水溶液中に存在し、それにより、前記布帛のそれぞれの面に1cm
2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの前記溶液が適用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
キレート剤が、前記水分活性成分に適用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キレート剤が、前記好ましくは水溶液中に適用され、特に噴霧されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、5×10
-4mg以上、特に10
-2mg以上の前記キレート剤が適用されることを特徴とする、請求項8又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、1.2mg以下、特に0.8mg以下の前記キレート剤が適用されることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記キレート剤が、EDTA、特にEDTA二ナトリウム塩を有することを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
EDTAが、0.5~15重量%の範囲、特に5~10.4重量%の範囲の濃度で前記水溶液中に存在し、それにより、前記布帛のそれぞれの面に1cm
2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの前記溶液が適用されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの界面活性剤、例えばEHG、及び/又はポリソルベートが、前記水分活性成分に適用されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記界面活性剤が、前記好ましくは水溶液中に適用され、特に噴霧されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、10
-4mg以上、特に5×10
-4mg以上、より好ましくは10
-3mg以上の前記界面活性剤が適用されることを特徴とする、請求項14又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、0.6mg以下、特に0.1mg以下の前記界面活性剤が適用されることを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記界面活性剤が、0.1~7重量%、特に0.1~5重量%の範囲の濃度で前記水溶液中に存在し、それにより、前記布帛のそれぞれの面に1cm
2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの前記水溶液が適用されることを特徴とする、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記水分活性成分が、カルボキシメチルセルロース及び/又はセルロースエチルスルホネートを有することを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記布帛中の水分活性成分の割合が、50重量%以上、特に75重量%以上、より好ましくは約80重量%であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくともいくつかの水分活性成分が抗菌手段を備えていることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法を使用して、水分活性成分、特に繊維を有する布帛を用いて製造される、創傷ケア製品。
【請求項22】
0.1~9重量%のPHMB、0.5~15重量%のEDTA二ナトリウム塩、0.1~5重量%のEHG及び0~2.5重量%のTween20を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を実施するための水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分活性成分、特に繊維を含有する布帛が加工される創傷ケア製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布材料、発泡体、スポンジ及び布の形態の包帯が、創傷のケアのために使用される。これらは通常、布帛である。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、布帛は、平らに置かれたときに、縦方向又は横方向の伸びの20%以下の厚さ方向の伸びを有する三次元製品であると理解される。
【0003】
特許文献1によれば、創傷ケア製品がPHMBを含有する水溶液などの抗菌手段で飽和されている場合、創傷ケアの転帰を改善することができる。このようにして飽和された創傷ケア製品は、創傷をケアするときに細菌を死滅させることを可能にする。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、細菌を死滅させることができる任意の手段は抗菌として記載され、細菌は病気(病原体)を引き起こす任意の微生物であると理解される。
【0004】
別の治療概念によれば、水分活性成分を含む創傷ケア製品が使用される。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、成分は、水と接触してゲルを形成する場合、水分活性として記載される。ゲル中の水は、水素結合によって結合を形成する場合がある。創傷ケア製品が水分活性成分を有する場合、特に急性及び慢性創傷の治療において、創傷の過度の乾燥及び創傷の浸軟の両方を防ぐ所望の創傷環境を作り出すことができる。水分活性成分を含有する創傷ケア製品の製造において、織布若しくは不織布材料の形態の布帛、又はさらには水分活性成分を有するスポンジを製造し、続いて特定のサイズに切断し、次いで滅菌パックに詰めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/137419号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/015208号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/306157号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/107555号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3088010号明細書
【特許文献6】国際公開第2003/022317号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2013/150451号明細書
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、水分活性成分を含有し、従来の方法で製造された創傷ケア製品が使用される場合、多くの場合、創傷はゆっくりと治癒することしか観察されないことが急性創傷の治療において見出されているが、慢性創傷の治療においては、場合によっては、転帰はあまり満足のいくものではない。
【0007】
先行技術におけるこれらの問題を考慮して、本発明の目的は、急性及び慢性創傷の治療において満足のいく転帰を得ることができる、水分活性成分を含有する布帛の形態の創傷ケア製品を提供することである。
【0008】
本発明によれば、この目的は、水分活性成分を有する創傷ケア製品の製造の一部としての布帛の加工が、水分活性成分に抗菌手段を適用することを含むことを本質的に特徴とする公知の方法のさらなる開発によって、及び対応する方法を使用して得られる創傷ケア製品によって達成される。
【0009】
本発明は、抗菌手段を備えた創傷ケア製品の水分活性成分が、創傷流体と接触すると、該流体が結合したゲルが形成される前に、抗菌成分を放出するという驚くべき発見から生じたものである。創傷ケア製品の水分活性成分のゲル形成の一部としての創傷流体又は水との接触時の抗菌手段の安定化、したがって失活がより起こりそうであったため、この結果は予想外である。本発明に従って製造された創傷ケア製品が使用される場合に布帛の水分活性成分に適用される抗菌手段の実際に観察される放出は、創傷中の細菌を死滅させることを可能にし、したがって創傷の治癒を改善する。
【0010】
驚くべきことに、この抗菌手段が好ましくは水溶液中で布帛に適用される場合、水分活性成分に適用される抗菌手段の所望の放出が促進されることが分かった。抗菌手段を含有する溶液は、好ましくはそれぞれの面、すなわち布帛の両面に噴霧され得、それにより、本発明の文脈では、溶液が少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧される場合が特に好ましい。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、高周波振動を使用してノズル先端部に作用し、流体膜に毛細管波を発生させる超音波ノズルが、そのような噴霧ノズルとして説明される。毛細管波の振幅が臨界高さに達するとすぐに、これらの波は大きくなりすぎて自身を支えることができなくなる。これにより、個々の波の先端から小さな液滴が落下し、噴霧化につながる。最初に生成される液滴サイズに影響を及ぼす主な要因は、振動周波数、表面張力、及び流体の粘度である。空気圧噴霧システムと比較して、超音波噴霧システムは、液滴サイズ、分布及び速度をより良好に調整することを可能にする。
【0011】
抗菌手段の水溶液が水分活性成分に噴霧される場合、溶媒として使用される十分に少量の水が蒸発するように液滴サイズを設定することができ、これは布帛の水分活性成分の早期の膨潤又は早期のゲル形成を抑制することができることを意味する。これは同時に、抗菌手段が水分活性成分に結合しているが、結合力が非常に低いままであるため、予想に反して、創傷流体又は水と接触すると、創傷滲出液の影響下でゲルが形成される前に抗菌手段の放出が起こるという効果をもたらす。
【0012】
特に、50重量%超、特に約80重量%の水分活性成分からなる布帛の場合、抗菌手段が、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、10-4mg以上、特に4×10-3mg以上の量で適用される場合、本発明の文脈において特に好都合であることが判明した。抗菌手段がより少ない量で適用される場合、所望の抗菌効果はほとんど観察されない。
【0013】
抗菌手段を適用するために使用される水溶液の安定性を考慮して、抗菌手段が、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、1.0mg以下、特に0.7mg以下の量で適用される場合に好都合であることが判明した。PHMB(ポリヘキサニド)などの従来の抗菌手段の水への溶解度は制限されているため、より多量の抗菌的に有効な手段を適用することは困難であり得、したがって、より多量の抗菌手段の適用は、布帛の水分活性成分への流体のより大きな侵入に関連し、ひいては早期のゲル形成をもたらすであろう。
【0014】
上記の説明から既に決定され得るように、本発明による方法の実施における抗菌手段は、好ましくはPHMBを含む。水溶液中のPHMBは、0.1~9重量%の範囲、特に4~9重量%の範囲の濃度で存在し得、それにより、布帛のそれぞれの面に1cm2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの溶液が適用される。PHMBがより低い濃度で存在する場合、水分活性成分への十分な量の適用は、過剰な流体を必要とし得、早期のゲル形成をもたらし得る。溶液中のPHMBの濃度が9重量%を超える場合、溶液は全体的に不安定になり始める。
【0015】
多くの場合、慢性感染創傷の治癒を損なう細菌は、バイオフィルムとして知られるものとして存在する。排泄された細胞外高分子物質(EPS)は、水と結合してヒドロゲルを形成し、栄養素及びその他の物質が溶解した粘液マトリックスが生成される。多くの場合、無機粒子又は気泡もマトリックスによって封入される。この形態では、細菌は、免疫系又は抗生物質又は抗菌手段による攻撃などの外部の影響から保護される。細胞外マトリックスによる細菌の保護を考慮して、バイオフィルムに対して作用する創傷ケア製品は、以下の要件を満たさなければならない。
1.細胞外マトリックスを分解する
2.細菌を死滅させる
【0016】
従来の抗菌手段は、細胞外マトリックスを分解するための不十分な特性しか示さないので、抗菌手段に加えて、水分活性成分を含有する創傷ケア製品が製造されるときに、キレート剤が水分活性成分にも適用される場合、本発明にとって特に好都合であることが判明した。
【0017】
キレート剤は、特に陽イオンの結合によって細胞外マトリックスを弱めることを可能にし、その結果、マトリックス中に生存する細菌を抗菌手段の助けを借りて死滅させることができる。本発明の文脈では、キレート剤は、好ましくは抗菌手段も含有する好ましくは水溶液中に適用され、特に布帛の水分活性成分に噴霧され、より好ましくは少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧される。
【0018】
キレート剤は、好都合には、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、5×10-4mg以上、特に10-2mg以上の量で適用される。キレート剤の量が少ない場合、所望のマトリックス脆弱化効果はほとんど達成されない。また、バイオフィルムのマトリックスに対する脆弱化効果のさらなる改善は、キレート剤が布帛のそれぞれの面の1cm2当たり1.2mgを超える量で適用される場合にはほとんど達成されないことが観察された。この理由から、キレート剤が布帛のそれぞれの面の1cm2当たり1.2mg以下、特に0.8mg以下の量で適用される場合も、本発明の文脈において好都合であることが判明した。これに関しても、記載された限界値は、特に、水分活性成分が約80重量%の布帛を形成する場合、50重量%を超える布帛が水分活性成分によって形成されるような布帛において特に好ましい。
【0019】
キレート剤がEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、特にEDTAの二ナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(C10H14N2Na2O8 2H2O))を含む場合、本発明の文脈において特に好都合であることが判明した。あるいは、以下のEDTA塩変異体も使用することができる。
-エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム塩(C10H12N2O8CaNa2)
-エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩水和物(C10H13N2Na3O8 xH2O)
-エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩二水和物(C10H12N2Na4O8 2H2O)
-エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(Na2H2EDTA、エデト酸ナトリウム、INS386)
-エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(Na4EDTA)
-エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(CaNa2EDTA、E385)
【0020】
しかしながら、二ナトリウム塩は、本発明の文脈において特に好ましいことが判明した。このエチレンジアミン四酢酸の塩を用いて、所望の溶解度(高濃度)の水溶液において、pH値を7未満にすることができる。他のEDTA変異体では、通常、より低い溶解度と共により高いpH値が観察される。最終生成物が40℃を超える温度で貯蔵される場合にも、色の変化が達成される。低いpH値の設定は、所望の抗菌効果を強化する。さらに、EDTA、特にその二ナトリウム塩が使用される場合、このキレート剤の独立した抗菌有効性も観察される。EDTAは、PHMBがわずかに低い効果しか有さない細菌を死滅させる効果を有し得る。しかしながら、本発明による創傷ケア製品の製造に使用される溶液へのEDTAの添加の主な目的は、マトリックスを弱め、処方及びプロセスを安定化する効果である。抗菌手段に加えて、並びに適切な場合にはキレート剤、界面活性剤、例えばEHG(エチルヘキシルモノグリセリンエーテル)及び/又はポリソルベート、例えばTween20も水分活性成分に適用される場合、布帛の水分活性成分への抗菌手段及びキレート剤の適用、並びに記載された物質の適用のために本発明による方法を使用して製造された水溶液の安定化の両方に関して、好都合であることが判明した。好ましくは水溶液中の界面活性剤は、適用、特に噴霧、より好ましくは少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧され得る。
【0021】
本発明の文脈では、特に50重量%超が水分活性成分から構成される布帛が使用される場合、界面活性剤は、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、好ましくは10-4mg以上、特に5×10-4mg以上、より好ましくは10-3mg以上の量で適用される。少なくとも1つの界面活性剤がより少ない量で適用される場合、所望の効果はもはや達成されない。溶液の他の物質の不活性化を回避するために、及び生体適合性を考慮して、特にホルムアルデヒドの形成を回避することを考慮して、本発明の文脈では、界面活性剤が、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、0.6mg以下、特に0.1mg以下の量で適用されることがより好ましい。
【0022】
本発明による方法の実施において、水溶液中の界面活性剤は、0.1~7.5重量%、特に0.1~5重量%の範囲の濃度で存在し得、それにより、布帛のそれぞれの面に1cm2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの水溶液が適用される。EHGが界面活性剤として使用される場合、水溶液中のこの界面活性剤の濃度は、好ましくは0.1~5重量%である。Tween20が追加の又は代替の界面活性剤として水溶液に添加される場合、この界面活性剤の濃度は、好ましくは0~2.5重量%である。より高濃度のEHGの添加は、ホルムアルデヒドの形成をもたらし得る。より高濃度のTween20の添加は、PHMBなどの抗菌手段の不活性化をもたらし得る。
【0023】
界面活性剤が示されている量よりも少ない量で適用される場合、これは噴霧プロセスにおける規則性の喪失につながる。溶液の安定化効果の喪失も観察される。EHGとTween20の両方は、溶液の安定化に加えて抗菌効果を示す。濃度が示された下限を下回るとすぐに、これは抗菌効果の喪失につながる。さらに、Tween20の場合、バイオフィルムの細胞外マトリックスに対する不安定化効果も観察される。水溶液中のTween20の量が0.5重量%未満に低下する場合、この効果はもはや観察されない。
【0024】
本発明による方法を実施するための特に好ましい水溶液は、好ましくは以下の成分を含む。
1.PHMB:0.1~9重量%、好ましくは4~9重量%
2.EDTA:0.5~15重量%、好ましくは5~10.4重量%
3.EHG:0.1~5重量%、好ましくは2~5重量%
4.Tween20:0~2.5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%
5.水:残り及び不可避的汚染
【0025】
本発明による方法の実施において、驚くべきことに、水溶液中のEDTA二ナトリウム塩などのキレート剤の濃度に対する水溶液中のPHMBなどの抗菌手段の濃度の割合が0.6以上である場合、バイオフィルムの形成を伴う慢性創傷の治療における所望の成功が特に良好に達成されることが見出された。比較的高い割合のPHMBなどの抗菌手段は、布帛の水分活性成分と水との接触時に、細菌を死滅させるためにバイオフィルムのマトリックスがキレート剤によって弱められた後に利用可能な十分な量の抗菌手段の放出をもたらす。
【0026】
従来の包帯を飽和させるために使用される水溶液の公知の組成を考慮すると、これも驚くべきことである。これらの公知の溶液では、かなり大きな割合のキレート剤が必要とされる。水溶液中のキレート剤の濃度に対する抗菌手段の濃度の割合を設定することから本発明による方法において生じる利点は、キレート剤が、驚くべきことに、抗菌手段よりも水又は創傷滲出液と接触したときに布帛の水分活性成分からより良好に放出されることで説明され得る。
【0027】
本発明の全ての実施形態では、噴霧プロセス中に抗菌手段を適用するために使用される水溶液が、溶解度を高めるために35℃~70℃の一定温度に保たれ、水溶液が連続的に撹拌される容器内に保持される場合が特に好ましい。
【0028】
水分活性成分を含む布帛を有する本発明による創傷ケア製品は、水分活性成分が抗菌手段を備えていることを本質的に特徴とする。本発明による創傷ケア製品の好ましい実施形態では、抗菌的に有効な手段の量は、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、10-4mg~1.0mg、好ましくは4×10-3mg~0.7mgである。抗菌手段は、PHMBを含み得る。さらに、本発明による創傷ケア製品はまた、その水分活性成分の領域にキレート剤を備えることができる。キレート剤の量は、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、好ましくは5×10-4mg~1.2mg、特に10-2~0.8mgである。本発明の文脈では、本発明による創傷ケア製品のキレート剤は、好ましくはEDTA二ナトリウム塩である。
【0029】
キレート剤に加えて、又はキレート剤の代替として、本発明による創傷ケア製品の水分活性成分はまた、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、10-4~0.6mg、特に5×10-4~0.1mgの量で適用され得る界面活性剤、例えばEHG又はポリソルベートを備えることができる。本発明による創傷ケア製品の布帛は、好ましくは、50重量%以上、特に約80重量%の水分活性成分から構成される。
【0030】
本発明による創傷ケア製品の水分活性成分は、セルロースエチルスルホネート、特にセルロースエチルスルホネート繊維及び/又はカルボキシメチルセルロース、特にカルボキシメチルセルロース繊維であり得る。布帛は、セルロース繊維もさらに含み得る。
【0031】
本発明による布帛は、アルギン酸塩繊維製品又は発泡体の形態でも存在し得る。布帛が繊維で形成される場合、繊維が不織布材料を形成する場合が好都合であることが判明した。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分活性成分、特に繊維を含有する布帛が加工される創傷ケア製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布材料、発泡体、スポンジ及び布の形態の包帯が、創傷のケアのために使用される。これらは通常、布帛である。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、布帛は、平らに置かれたときに、縦方向又は横方向の伸びの20%以下の厚さ方向の伸びを有する三次元製品であると理解される。
【0003】
特許文献1によれば、創傷ケア製品がPHMBを含有する水溶液などの抗菌手段で飽和されている場合、創傷ケアの転帰を改善することができる。このようにして飽和された創傷ケア製品は、創傷をケアするときに細菌を死滅させることを可能にする。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、細菌を死滅させることができる任意の手段は抗菌として記載され、細菌は病気(病原体)を引き起こす任意の微生物であると理解される。
【0004】
別の治療概念によれば、水分活性成分を含む創傷ケア製品が使用される。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、成分は、水と接触してゲルを形成する場合、水分活性として記載される。ゲル中の水は、水素結合によって結合を形成する場合がある。創傷ケア製品が水分活性成分を有する場合、特に急性及び慢性創傷の治療において、創傷の過度の乾燥及び創傷の浸軟の両方を防ぐ所望の創傷環境を作り出すことができる。水分活性成分を含有する創傷ケア製品の製造において、織布若しくは不織布材料の形態の布帛、又はさらには水分活性成分を有するスポンジを製造し、続いて特定のサイズに切断し、次いで滅菌パックに詰めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/137419号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/015208号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/306157号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/107555号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3088010号明細書
【特許文献6】国際公開第2003/022317号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2013/150451号明細書
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、水分活性成分を含有し、従来の方法で製造された創傷ケア製品が使用される場合、多くの場合、創傷はゆっくりと治癒することしか観察されないことが急性創傷の治療において見出されているが、慢性創傷の治療においては、場合によっては、転帰はあまり満足のいくものではない。
【0007】
抗菌手段を布地の加水分解性成分上に塗布する創傷ケア製品の製造方法は、特許文献2~6に開示されている。さらに、特許文献7は相乗的な殺生物活性を有する抗菌組成物を開示している。
【0008】
先行技術におけるこれらの問題を考慮して、本発明の目的は、急性及び慢性創傷の治療において満足のいく転帰を得ることができる、水分活性成分を含有する布帛の形態の創傷ケア製品を提供することである。
【0009】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴部分に規定されているように、公知の方法をさらに発展させることによって達成される。
【0010】
本発明は、請求項1に規定される抗菌手段を備えた創傷ケア製品の水分活性成分が、創傷流体と接触すると、該流体が結合したゲルが形成される前に、抗菌成分を放出するという驚くべき発見から生じたものである。創傷ケア製品の水分活性成分のゲル形成の一部としての創傷流体又は水との接触時の抗菌手段の安定化、したがって失活がより起こりそうであったため、この結果は予想外である。本発明に従って製造された創傷ケア製品が使用される場合に布帛の水分活性成分に適用される抗菌手段の実際に観察される放出は、創傷中の細菌を死滅させることを可能にし、したがって創傷の治癒を改善する。
【0011】
驚くべきことに、この抗菌手段が好ましくは水溶液中で布帛に適用される場合、水分活性成分に適用される抗菌手段の所望の放出が促進されることが分かった。抗菌手段を含有する溶液は、好ましくはそれぞれの面、すなわち布帛の両面に噴霧され得、それにより、本発明の文脈では、溶液が少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧される場合が特に好ましい。本明細書及び特許請求の範囲の文脈では、高周波振動を使用してノズル先端部に作用し、流体膜に毛細管波を発生させる超音波ノズルが、そのような噴霧ノズルとして説明される。毛細管波の振幅が臨界高さに達するとすぐに、これらの波は大きくなりすぎて自身を支えることができなくなる。これにより、個々の波の先端から小さな液滴が落下し、噴霧化につながる。最初に生成される液滴サイズに影響を及ぼす主な要因は、振動周波数、表面張力、及び流体の粘度である。空気圧噴霧システムと比較して、超音波噴霧システムは、液滴サイズ、分布及び速度をより良好に調整することを可能にする。
【0012】
抗菌手段の水溶液が水分活性成分に噴霧される場合、溶媒として使用される十分に少量の水が蒸発するように液滴サイズを設定することができ、これは布帛の水分活性成分の早期の膨潤又は早期のゲル形成を抑制することができることを意味する。これは同時に、抗菌手段が水分活性成分に結合しているが、結合力が非常に低いままであるため、予想に反して、創傷流体又は水と接触すると、創傷滲出液の影響下でゲルが形成される前に抗菌手段の放出が起こるという効果をもたらす。
【0013】
特に、50重量%超、特に約80重量%の水分活性成分からなる布帛の場合、抗菌手段が、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、10-4mg以上、特に4×10-3mg以上の量で適用される場合、本発明の文脈において特に好都合であることが判明した。抗菌手段がより少ない量で適用される場合、所望の抗菌効果はほとんど観察されない。
【0014】
抗菌手段を適用するために使用される水溶液の安定性を考慮して、抗菌手段が、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、1.0mg以下、特に0.7mg以下の量で適用される場合に好都合であることが判明した。PHMB(ポリヘキサニド)などの従来の抗菌手段の水への溶解度は制限されているため、より多量の抗菌的に有効な手段を適用することは困難であり得、したがって、より多量の抗菌手段の適用は、布帛の水分活性成分への流体のより大きな侵入に関連し、ひいては早期のゲル形成をもたらすであろう。
【0015】
本発明による方法の実施における抗菌手段は、PHMBを含む。水溶液中のPHMBは、0.1~9重量%の範囲、特に4~9重量%の範囲の濃度で存在し得、それにより、布帛のそれぞれの面に1cm2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの溶液が適用される。PHMBがより低い濃度で存在する場合、水分活性成分への十分な量の適用は、過剰な流体を必要とし得、早期のゲル形成をもたらし得る。溶液中のPHMBの濃度が9重量%を超える場合、溶液は全体的に不安定になり始める。
【0016】
多くの場合、慢性感染創傷の治癒を損なう細菌は、バイオフィルムとして知られるものとして存在する。排泄された細胞外高分子物質(EPS)は、水と結合してヒドロゲルを形成し、栄養素及びその他の物質が溶解した粘液マトリックスが生成される。多くの場合、無機粒子又は気泡もマトリックスによって封入される。この形態では、細菌は、免疫系又は抗生物質又は抗菌手段による攻撃などの外部の影響から保護される。細胞外マトリックスによる細菌の保護を考慮して、バイオフィルムに対して作用する創傷ケア製品は、以下の要件を満たさなければならない。
1.細胞外マトリックスを分解する
2.細菌を死滅させる
【0017】
従来の抗菌手段は、細胞外マトリックスを分解するための不十分な特性しか示さないので、抗菌手段に加えて、水分活性成分を含有する創傷ケア製品が製造されるときに、キレート剤が水分活性成分にも適用される場合、本発明にとって特に好都合であることが判明した。
【0018】
キレート剤は、特に陽イオンの結合によって細胞外マトリックスを弱めることを可能にし、その結果、マトリックス中に生存する細菌を抗菌手段の助けを借りて死滅させることができる。本発明の文脈では、キレート剤は、好ましくは抗菌手段も含有する好ましくは水溶液中に適用され、特に布帛の水分活性成分に噴霧され、より好ましくは少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧される。
【0019】
キレート剤は、好都合には、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、5×10-4mg以上、特に10-2mg以上の量で適用される。キレート剤の量が少ない場合、所望のマトリックス脆弱化効果はほとんど達成されない。また、バイオフィルムのマトリックスに対する脆弱化効果のさらなる改善は、キレート剤が布帛のそれぞれの面の1cm2当たり1.2mgを超える量で適用される場合にはほとんど達成されないことが観察された。この理由から、キレート剤が布帛のそれぞれの面の1cm2当たり1.2mg以下、特に0.8mg以下の量で適用される場合も、本発明の文脈において好都合であることが判明した。これに関しても、記載された限界値は、特に、水分活性成分が約80重量%の布帛を形成する場合、50重量%を超える布帛が水分活性成分によって形成されるような布帛において特に好ましい。
【0020】
本発明によれば、キレート剤はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、特にEDTAの二ナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(C10H14N2Na2O8 2H2O))を含む。
【0021】
二ナトリウム塩は、本発明の文脈において特に好ましいことが判明した。このエチレンジアミン四酢酸の塩を用いて、所望の溶解度(高濃度)の水溶液において、pH値を7未満にすることができる。他のEDTA変異体では、通常、より低い溶解度と共により高いpH値が観察される。最終生成物が40℃を超える温度で貯蔵される場合にも、色の変化が達成される。低いpH値の設定は、所望の抗菌効果を強化する。さらに、EDTA、特にその二ナトリウム塩が使用される場合、このキレート剤の独立した抗菌有効性も観察される。EDTAは、PHMBがわずかに低い効果しか有さない細菌を死滅させる効果を有し得る。しかしながら、本発明による創傷ケア製品の製造に使用される溶液へのEDTAの添加の主な目的は、マトリックスを弱め、処方及びプロセスを安定化する効果である。本発明によれば、抗菌手段に加えてキレート剤であるEHG(エチルヘキシルモノグリセリンエーテル)及びポリソルベート、すなわちTween20も水分活性成分に適用される場合、布帛の水分活性成分への抗菌手段及びキレート剤の適用、並びに記載された物質の適用のために本発明による方法を使用して製造された水溶液の安定化の両方に関して、好都合であることが判明した。好ましくは水溶液中の界面活性剤は、適用、特に噴霧、より好ましくは少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧され得る。
【0022】
本発明の文脈では、特に50重量%超が水分活性成分から構成される布帛が使用される場合、界面活性剤は、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、好ましくは10-4mg以上、特に5×10-4mg以上、より好ましくは10-3mg以上の量で適用される。少なくとも1つの界面活性剤がより少ない量で適用される場合、所望の効果はもはや達成されない。溶液の他の物質の不活性化を回避するために、及び生体適合性を考慮して、特にホルムアルデヒドの形成を回避することを考慮して、本発明の文脈では、界面活性剤が、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、0.6mg以下、特に0.1mg以下の量で適用されることがより好ましい。
【0023】
本発明による方法の実施において、水溶液中の界面活性剤は、0.1~7.5重量%、特に0.1~5重量%の範囲の濃度で存在し得、それにより、布帛のそれぞれの面に1cm2当たり、好ましくは0.1~8mg、特に2~8mgの水溶液が適用される。EHGが界面活性剤として使用される場合、水溶液中のこの界面活性剤の濃度は、好ましくは0.1~5重量%である。Tween20は追加の界面活性剤として水溶液に添加され、この界面活性剤の濃度は、0.5~2.5重量%である。より高濃度のEHGの添加は、ホルムアルデヒドの形成をもたらし得る。より高濃度のTween20の添加は、PHMBなどの抗菌手段の不活性化をもたらし得る。
【0024】
界面活性剤が示されている量よりも少ない量で適用される場合、これは噴霧プロセスにおける規則性の喪失につながる。溶液の安定化効果の喪失も観察される。EHGとTween20の両方は、溶液の安定化に加えて抗菌効果を示す。濃度が示された下限を下回るとすぐに、これは抗菌効果の喪失につながる。さらに、Tween20の場合、バイオフィルムの細胞外マトリックスに対する不安定化効果も観察される。水溶液中のTween20の量が0.5重量%未満に低下する場合、この効果はもはや観察されない。
【0025】
本発明による方法を実施するための水溶液は、好ましくは以下の成分を含む。
1.PHMB:0.1~9重量%、好ましくは4~9重量%
2.EDTA:0.5~15重量%、好ましくは5~10.4重量%
3.EHG:0.1~5重量%、好ましくは2~5重量%
4.Tween20:0.5~2.5重量%
5.水:残り及び不可避的汚染
【0026】
本発明による方法の実施において、驚くべきことに、水溶液中のEDTA二ナトリウム塩などのキレート剤の濃度に対する水溶液中のPHMBなどの抗菌手段の濃度の割合が0.6以上である場合、バイオフィルムの形成を伴う慢性創傷の治療における所望の成功が特に良好に達成されることが見出された。比較的高い割合のPHMBなどの抗菌手段は、布帛の水分活性成分と水との接触時に、細菌を死滅させるためにバイオフィルムのマトリックスがキレート剤によって弱められた後に利用可能な十分な量の抗菌手段の放出をもたらす。
【0027】
従来の包帯を飽和させるために使用される水溶液の公知の組成を考慮すると、これも驚くべきことである。これらの公知の溶液では、かなり大きな割合のキレート剤が必要とされる。水溶液中のキレート剤の濃度に対する抗菌手段の濃度の割合を設定することから本発明による方法において生じる利点は、キレート剤が、驚くべきことに、抗菌手段よりも水又は創傷滲出液と接触したときに布帛の水分活性成分からより良好に放出されることで説明され得る。
【0028】
本発明の全ての実施形態では、噴霧プロセス中に抗菌手段を適用するために使用される水溶液が、溶解度を高めるために35℃~70℃の一定温度に保たれ、水溶液が連続的に撹拌される容器内に保持される場合が特に好ましい。
【0029】
水分活性成分を含む布帛を有する、本発明による方法によって得られる創傷ケア製品は、水分活性成分が抗菌手段を備えていることを本質的に特徴とする。本発明による創傷ケア製品の好ましい実施形態では、抗菌的に有効な手段の量は、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、10-4mg~1.0mg、好ましくは4×10-3mg~0.7mgである。抗菌手段は、PHMBを含み得る。さらに、本発明による創傷ケア製品はまた、その水分活性成分の領域にキレート剤を備えることができる。キレート剤の量は、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、好ましくは5×10-4mg~1.2mg、特に10-2~0.8mgである。本発明の文脈では、本発明による創傷ケア製品のキレート剤は、EDTA二ナトリウム塩である。
【0030】
キレート剤に加えて、又はキレート剤の代替として、本発明による創傷ケア製品の水分活性成分はまた、布帛のそれぞれの面の1cm2当たり、10-4~0.6mg、特に5×10-4~0.1mgの量で適用され得る界面活性剤、すなわちEHG又はポリソルベートを備えることができる。本発明による創傷ケア製品の布帛は、好ましくは、50重量%以上、特に約80重量%の水分活性成分から構成される。
【0031】
本発明による創傷ケア製品の水分活性成分は、セルロースエチルスルホネート繊維及び/又はカルボキシメチルセルロース繊維である。布帛は、セルロース繊維もさらに含み得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分活性成
分を含有する布帛が加工される創傷ケア製品の製造方法であって、
前記水分活性成分が、カルボキシメチルセルロース繊維及び/又はセルロースエチルスルホネート繊維であり、
前記布帛の前記加工が、前記水分活性成分に抗菌手段を適用することを含
み、
前記抗菌手段が、0.1~9重量%のポリヘキサニド(PHMB)、0.5~15重量%のEDTA二ナトリウム塩、0.1~5重量%のエチルヘキシルモノグリセリンエーテル(EHG)、及び0.5~2.5重量%のTween20を含む水溶液中に適用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記抗菌手段を含有する前記溶液が
、前記布帛の両面に
、少なくとも1つの超音波ノズルを用いて噴霧されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、10
-4mg以
上の前記抗菌手段が適用されることを特徴とする、請求項
1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、1.0mg以
下の前記抗菌的に有効な手段が適用されることを特徴とする、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
PHMBが
、4~9重量%の範囲の濃度で水溶液中に存在し、それにより、前記布帛のそれぞれの面に1cm
2当たり
、0.1~8m
gの前記溶液が適用されることを特徴とする、請求項
1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
EDTAが、0.5~15重量%の範
囲の濃度で前記水溶液中に存在し、それにより、前記布帛のそれぞれの面に1cm
2当たり
、0.1~8m
gの前記溶液が適用されることを特徴とする、請求項
1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、10
-4mg以
上のEHGが適用されることを特徴とする、請求項
1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記布帛のそれぞれの面の1cm
2当たり、0.6mg以
下のEHGが適用されることを特徴とする、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記布帛中の水分活性成分の割合が、50重量%以
上であることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】