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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】組織切片を移送する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/06 20060101AFI20240131BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01N1/06 Z
G01N1/00 101A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547149
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022014582
(87)【国際公開番号】W WO2022173609
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/147,392
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】シュライファー,カイル
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ワークマン,リチャード,ケイ.
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA23
2G052BA25
2G052CA45
2G052EC03
2G052EC22
2G052FA10
2G052GA32
(57)【要約】
本発明は、組織切片をスライスしてスライドに移送することを含む、自動化組織切片化の装置及び方法に関する。本発明は、接着ストリップを使用して組織切片をスライド上へと移送する自動化システム及び方法にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織コレクタ及び/又は接着ストリップを用いて組織切片を収集することと、
前記組織コレクタ及び/又は前記接着ストリップを移動させて、前記組織切片の少なくとも一部をスライドと接触させることと、
前記組織切片と前記スライドとの接触箇所において前記組織切片に物理的な力、熱、又はそれらの両方を印加することと
を含む、組織切片をスライド上へと移送する方法。
【請求項2】
前記組織切片の前記接触箇所を約40℃~約90℃の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織切片は包埋媒体を含み、前記熱は、前記包埋媒体を少なくとも部分的に溶融させるのに十分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
約275kPA以下の物理的な力を前記組織切片の前記接触箇所に印加することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触箇所は前記組織切片の25%以下を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接着ストリップを前記組織コレクタの収集端部上に位置決めすることを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接着ストリップに接着させることによって前記組織切片を収集することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接着ストリップは第1のリール上に設けられ、前記接着ストリップは、前記第1のリールから前記収集端部を横切って第2のリールに延伸する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記接着ストリップの第1のセクションが組織切片をスライドに移送するために使用された後に、前記収集端部を横切って前記接着ストリップを前進させることを含み、それにより、前記接着ストリップの第2のセクションが前記収集端部上に位置決めされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接着ストリップは低粘着性の感圧接着剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組織切片を収集するようになっている組織コレクタと、
スライドを保持するようになっているスライドホルダであって、前記組織コレクタ及び/又は前記スライドホルダは、前記組織コレクタによって収集された組織切片と、前記スライドホルダによって保持されたスライドとが、互いに接触箇所において接触するように、移動するように構成される、スライドホルダと、
前記接触箇所に位置決めされるか、又は前記接触箇所に移動するように構成される加熱素子と
を備える、組織切片をスライドに移送する装置。
【請求項12】
前記加熱素子は前記組織コレクタ内に収容される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記加熱素子は前記スライドホルダ内に収容される、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記加熱素子は前記組織切片及び前記スライドホルダの外側にあり、前記加熱素子は前記スライドホルダによって保持されたスライドの第1の面上に位置決めされるか又は前記第1の面上の位置に移動可能であり、前記接触箇所は前記スライドの第2の対向する面である、請求項11~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
接着材料のディスペンサを更に備える、請求項11~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
組織切片を収集するようになっている組織コレクタと、
スライドを保持するようになっているスライドホルダと、
ここで、前記組織コレクタ及び/又は前記スライドホルダは、前記組織コレクタによって収集された組織切片と、前記スライドホルダによって保持されたスライドとが、互いに接触箇所において接触するように移動するように構成されており、
前記組織コレクタの前記収集端部において接着ストリップを供給することが可能な接着ストリップディスペンサと
を備える、組織切片をスライドに移送する装置。
【請求項17】
前記接着ストリップディスペンサは前記収集端部の両側に少なくとも2つのリールを備え、接着ストリップは第1のリールから前記収集端部を横切って第2のリールに延伸し、前記第1のリールは新品の接着ストリップを巻き戻すことが可能であり、前記第2のリールは使用済み接着ストリップを巻き付けることが可能である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記組織コレクタの前記収集端部は延伸可能である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記組織コレクタは、物理的な力及び/又は熱を前記スライドホルダに又はその付近に印加することによって、前記組織切片を移送するように構成される、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記組織コレクタ又は前記スライドホルダは加熱素子を備える、請求項16~19のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動化システム及び方法を含む、組織切片をミクロトームからスライドに移送する装置及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年2月9日付出願の米国特許出願第63/147,392号の優先権及び利益を主張し、その内容は、全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
ミクロトーム(microtome)は、透過光又は電子放射下での顕微鏡観察のために、組織切片として知られる組織の極薄のスライスを切断するために使用される。ミクロトームにより、極めて鋭利なナイフを使用して、サンプルから所望の厚さの薄い組織切片をスライスする。ナイフは、選択した厚さで切断するように調整することができるナイフホルダ(knife holder)によって保持される。その後、組織切片は、通常は、手動での回収によって、オペレータが把持工具を使用すること等によってミクロトームから回収し、スライドに移送し、光学若しくは電子顕微鏡を用いて又は他の技法によって検査することができる。組織切片が極薄であり、中にはサブミクロンの厚さを有するものもあるため、損傷又は汚染を伴うことなく収集及び移送を行うことは困難でありうる。
【0004】
Leica社のRM2125 RTS等の回転式ミクロトームは、保持されたサンプルがナイフによってスライスされるように、サンプルホルダを下向きに移動させるハンドホイールを備える。回転式ミクロトームは、ナイフホルダ、サンプルホルダ、ハンドホイール及び他の要素が全て組み付けられ、移動片を適所に保持する様々なクランプを有するハウジングを有する。ナイフホルダは、典型的には、フロントプレートを備え、スライスされた組織切片は、スライス後にフロントプレート上に置くことができる。スライスは手作業の動作であり、各切片はハンドホイールの回転によってスライスされる。
【0005】
Thiemらによる特許文献1は、ミクロトームハウジング及びナイフホルダが配置されるベース部を有する回転式ミクロトームを開示している。収集要素がナイフホルダを3辺で囲み、U字形状のベース外形を有する。いくつかのクランプレバーがナイフ及びナイフホルダに関連付けられ、ナイフホルダに対するクランプレバーは、収集要素の外側にあり、ナイフホルダに対するレバーの数が削減されて洗浄が単純化される。収集要素は、組織切片を容易に除去することができるように、また、ユーザが収集要素又はミクロトームハウジングに巻き込まれることがないように構成される。
【0006】
Walterらによる特許文献2は、組織学的切片をスライドに適用するデバイスを開示している。組織学的切片は、ミクロトームのブレードによって行われる切断作用によって生成される。このデバイスは、軸受に回転可能に取り付けられるとともに、スライドを受けて保持するレセプタクルを有する構成要素を有する位置決めデバイスを備え、位置決めデバイスは、レセプタクル内に受けられたスライドを、回転可能に取り付けられた構成要素の回転軸の周りに回転させることができるように設計される。
【0007】
Schmittによる特許文献3は、ミクロトームを用いて生産された組織学的切片を分離する装置及び方法を開示している。前に生産された組織学的切片と現在生産されている組織学的切片とが接続されて、切片ストリップ(section strip)を形成する。前に生産された組織学的切片と現在生産されている組織学的切片との互いの分離を単純化するために、ノズルデバイスが設けられ、そのノズルデバイスにより、ブレードホルダ上に位置決めされた組織学的切片は、前に生産された切片ストリップの組織学的切片が、ブレードホルダ上に位置決めされた現在生産されている組織学的切片から分離され、ブレードホルダから除去されるように、方向及び強度を調整した空気流を受ける。
【0008】
Magaviらによる特許文献4は、ミクロトームによって切片化された組織サンプルの一部をハンドリングする装置及び方法を開示している。この装置は、コンテナと、コンテナ内の組織サンプルホルダと、コンテナから流体を流すように構成される1つ以上の出口とを備える。出口を通る流れにより、ミクロトームによって切片化された組織サンプルの一部は出口へと移動する。この方法は、組織サンプルの1つ以上の部分を切片化することと、組織サンプルに流体を流して、組織サンプルの1つ以上の部分を組織サンプルから少なくとも1つの流体出口に向かって移動させることとを含む。
【0009】
Williamsonらによる特許文献5は、ミクロトームの切片化可能支持体上に収容される組織サンプルをハンドリング及び包埋するための自動化機械を開示している。この機械は、組織包埋動作の前にミクロトームの複数の切片化可能支持体を保持するように構成される入力部材を備える。出力部材は、組織包埋動作の後にミクロトームの複数の切片化可能支持体を保持するように構成される。冷却ユニットは、組織包埋動作中にミクロトームの切片化可能支持体のうちの少なくとも1つを保持するように構成されている。電動キャリアアセンブリは、ミクロトームの切片化可能支持体のうちの少なくとも1つを保持するように移動させる及び構成されるように取り付けられる。キャリアアセンブリは、支持体を入力部材から冷却ユニットに移動させ、最終的に出力部材に移動させる。供給デバイスは、包埋動作中、包埋材料をミクロトームの切片化可能支持体と、ミクロトームの切片化可能支持体が支える少なくとも1つの組織サンプルとの上へと供給する。
【0010】
ミクロトームを使用して組織切片をスライスする伝統的な手法は、組織サンプル(パラフィン内に包埋される組織等)から組織切片のストリップ又はリボンを作製することを伴う。組織切片が作製された後、切片の後縁部はナイフに接着することで、スライスされた組織切片とその後にスライスされる切片との間の付着部位を許容するなどし、これにより、組織切片のリボンが作製される。ミクロトームによってスライスされる第1の切片が損傷を伴うことなく操作することが難しいため、実際には、リボンからの1つ又は2つの切片のみが使用され、スライド上に取り付けられることが多い。これにより、第1の切片は犠牲切片となり、サンプルの浪費となる。リボンの第1の切片はカール(curl:丸まる)するか又はナイフホルダと衝突することが多く、ミクロトームのユーザは、組織切片を除去するために介入することが必要となる。サンプルブロックからスライスされた第1の切片がこのユーザによる介入を伴うことなく取得されうる場合、第1の切片を直接使用することができ、リボンを作製する必要が排除される。
【0011】
Studerによる特許文献6は、透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscopy)において使用するために、切片リボンを標本ホルダに移送するデバイスを論じており、切片リボンは、ミクロトーム装置内のイオン化デバイスによって標本ホルダに移送される。
【0012】
Orfieldらによる特許文献7は、組織切片をスライド上に取り付けるシステムを改善する必要性を論じている。一般に、生物学研究所において、顕微鏡を使用して組織切片を検査する目的、着色料又は染料を用いて組織切片を処理する目的、及び他の目的のためには、組織切片をスライドに取り付けることが望ましい。標本をスライド上に取り付ける従来のシステム及び方法は、組織切片を十分な深さの水槽に配置することを含み、標本は水面上に浮遊する。そのとき、スライドの狭い側を、水槽の縁の上に静置し、スライドを、水中に部分的に浸水するように水中へと下方に角度付けする。その後、小型ブラシ又はガラス毛細管を使用して、組織切片をスライド上へと操作する。典型的には、追加の組織切片がスライド上に配置されるにつれて、スライドを徐々に水中から引き出す。従来の方法の別の変形例において、組織をパラフィン蝋(paraffin wax)内に包埋し、ミクロトームを用いてスライスし、その後、包埋された組織の選択した切片を、加熱した水槽に移送する。温水槽は、標本の周りのパラフィンを部分的に溶融し、その後、被着剤によって処理したガラススライドを使用して、組織切片を温水槽からすくい上げる。したがって、標本をスライド上に取り付ける従来の方法は困難であり、時間を消費し、労力集約的である。
【0013】
Orfieldは、さらに、切片を基板上に取り付けるシステム及び方法も論じている。このシステムは、流体チャネルであって、流体チャネル入口の近くに位置決めされるサンプル切片化モジュールによって、バルク包埋サンプルから処理された切片を受ける流体チャネル入口と、流体チャネル入口の下流にある切片取付け領域と、切片取付け領域の下流にある流体チャネル出口とを備える流体チャネルと、流体チャネル出口と流体連通するリザーバと、リザーバに流体結合され、流体をリザーバから流体チャネル入口に送達することにより、流体チャネル入口から切片取付け領域に向かう切片の送達を駆動する流体の流れを伝達するマニホールドとを備えている。
【0014】
Angrosによる特許文献8は、顕微鏡スライドとパラフィン包埋生物標本との間から浮遊液を除去する方法を論じている。パラフィン包埋生物標本が浮遊する顕微鏡スライドは、スライド支持要素上に位置決めされる。スライド支持要素が回転すると、顕微鏡スライド及びパラフィン包埋生物標本は、顕微鏡スライドとパラフィン包埋生物標本との間に配置される浮遊液が、顕微鏡スライドとパラフィン包埋生物標本との間から除去されるように移動する。
【0015】
Limらによる特許文献9は、組織切片のスライス及びミクロトームからの移送を含む、自動化組織切片化の装置及び方法を論じている。この公開特許公報は、組織切片のスライス及びスライド上への移送の自動化システム及び方法も論じている。
【0016】
Limによる特許文献10は、組織切片を第1の場所から第2の場所に移送する方法及び装置を論じている。熱可塑性材料が、組織切片移送装置の少なくとも1つのピンに適用される。熱可塑性材料は、少なくとも部分的に溶融しながら組織切片に接触し、冷却されると、実質的に固形の熱可塑性材料は、組織切片を少なくとも1つのピンに保持する。組織切片移送装置は、加熱器ブロックと、熱源と、加熱器ブロックに取り付けられてそこから延在する少なくとも1つのピンとを備える。
【0017】
Ornsteinによる特許文献11は、第1の感圧接着層によって基板に付着された薄い組織切片を、重合可能材料による第2の感圧接着層を支持する顕微鏡スライドに移送する方法を論じている。組織切片は第2の接着層に接触して積層体を形成する。第2の層を重合して、組織切片と顕微鏡スライドとの間の確実な結合を形成した後、基板及び第1の接着層は完全に除去され、後の処理のために、重合した第2の接着層によって現時点では顕微鏡スライドに付着された組織切片が露出することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第20040261597号
【特許文献2】米国特許出願公開第20100216221号
【特許文献3】米国特許出願公開第20090181457号
【特許文献4】米国特許出願公開第20150168277号
【特許文献5】米国特許出願公開第20150198509号
【特許文献6】米国特許出願公開第20140345433号
【特許文献7】米国特許出願公開第20150168275号
【特許文献8】米国特許出願公開第20140287456号
【特許文献9】米国特許出願公開第20170284904号
【特許文献10】米国特許出願公開第20180246017号
【特許文献11】米国特許第4,545,831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
自動的にミクロトームから組織切片を収集してスライドに移送する装置及び方法、特に、組織切片を高品質に維持しながら速度及び効率を増大させた装置及び方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの態様として、組織切片をスライド上へと移送する方法が提供される。本方法は、組織コレクタ及び/又は接着ストリップ(adhesive strip)(つまり、組織コレクタ又は接着ストリップあるいはそれらの両方)を用いて組織切片を収集することを含む。本方法は、組織コレクタ及び/又は接着ストリップを移動させて、組織切片の少なくとも一部をスライドと接触させること、組織切片とスライドとの接触箇所において組織切片に物理的な力、熱又は両方を印加することも含む。本方法を使用すると、組織切片との手動での接触を伴うことなく、組織切片を容易に信頼性高くスライドに移送することができる。
【0021】
本方法は、接着ストリップを組織コレクタの収集端部上に位置決めすることを含むことができ、組織切片は、接着ストリップに接着させることによって収集することができる。いくつかの実施の形態において、接着ストリップは、第1のリール上に設けられ又は巻き付けられ、接着ストリップは、第1のリールから収集端部を横切って第2のリールに延伸する又は巻き戻し(unwind:巻いてあるものをほどく)をされる。接着ストリップは、接着ストリップの第1のセクションが組織切片をスライドに移送するために使用された後に(第1のリールから一部を巻き戻し、第2のリール上に一部を巻き付けること等によって)収集端部を横切って前進させることができる。このようにして、接着ストリップの第2の未使用のセクションは、収集端部上に位置決めすることができる。
【0022】
別の態様として、組織切片をスライドに移送する装置が提供される。本装置は、組織切片を収集するようになっている組織コレクタと、スライドを保持するようになっているスライドホルダと、加熱素子とを備える。組織コレクタ及び/又はスライドホルダ(つまり、組織コレクタ又はスライドホルダあるいはそれらの両方)は、組織コレクタによって収集された組織切片と、スライドホルダによって保持されたスライドとが、接触箇所において接触するように移動するように構成する。加熱素子は、接触箇所に位置決めされる、又は接触箇所に移動するように構成される。組織コレクタ及び/又はスライドホルダは、回転動作、直線動作、又はそれらの両方を行うように構成することができる。いくつか実施の形態において、組織コレクタ及び/又はスライドホルダは、自動的に移動するように構成される。
【0023】
いくつかの実施の形態において、加熱素子は、組織コレクタ又はスライドホルダ内に収容される。付加的又は代替的に、加熱素子は、組織切片及びスライドホルダの外側にあり、加熱素子は、スライドホルダによって保持されたスライドの第1の面上に位置決めされ又は第1の面上の位置に移動可能であり、接触箇所は、スライドの第2の対向する面である。加熱素子は、熱を組織切片の頂部に提供するように構成及び位置決めすることができる。いくつかの実施の形態において、本装置は、接着材料のディスペンサ(dispenser)を更に備える。
【0024】
更に別の態様として、組織切片をスライドに移送する装置であって、組織切片を収集するようになっている組織コレクタと、スライドを保持するようになっているスライドホルダと、組織コレクタの収集端部において接着ストリップを供給することが可能な接着ストリップディスペンサとを備える、装置が提供される。組織コレクタ及び/又はスライドホルダは、組織コレクタによって収集された組織切片と、スライドホルダによって保持されたスライドとが、接触箇所において接触するように移動するように構成することができる。いくつかの実施の形態において、接着ストリップディスペンサは、収集端部の両側に少なくとも2つのリールを備え、接着ストリップは、第1のリールから収集端部を横切って第2のリールに延伸する。第1のリールは、新品の接着ストリップを巻き戻すことが可能であり、第2のリールは、使用済み接着ストリップを巻き付けることが可能である。組織コレクタの収集端部は、組織切片の収集を容易にするために延伸可能であることが有利であるため、接着ストリップディスペンサは、収集端部の延伸に干渉しない又はこれを防止しないように構成するべきである。いくつかの実施の形態において、組織コレクタは、物理的な力及び/又は熱(つまり、物理的な力又は熱あるいはそれらの両方)をスライドホルダに又はその付近に印加することによって、組織切片を移送するように構成される。いくつかの実施の形態において、組織コレクタ又はスライドホルダは、加熱素子を備える。
【0025】
上記の装置は、サンプルホルダと、ナイフホルダと、ナイフホルダによって保持されてサンプルホルダに対向するナイフとを備えるミクロトームを更に備えることができ、サンプルホルダが直線的に移動するとき、サンプルホルダによって保持されるサンプルは、ナイフによってスライスされて組織切片を形成するようになっている。上記の装置は、スライド槽も備えることができ、スライドホルダは、スライドをスライド槽内に浸水させるように構成することができる。
【0026】
本方法は、ミクロトームを用いて組織サンプルから組織切片をスライスすること、ミクロトームから組織切片を収集するように組織コレクタを延伸させること、及び/又は接着剤、減圧、摩擦、又は他の力を使用してスライスした組織切片を組織コレクタに接着させることを(つまり、ミクロトームを用いて組織サンプルから組織切片をスライスすること、ミクロトームから組織切片を収集するように組織コレクタを延伸させること、又は、接着剤、減圧、摩擦、又は他の力を使用してスライスした組織切片を組織コレクタに接着させること、あるいはそれらの全てを)更に含むことができる。本方法及び装置は、スライドホルダ及び接着した組織切片を液体を収容するスライド槽に移動させること、及び/又はスライド及び接着した組織切片を液体内に浸水させることを(つまり、スライドホルダ及び接着した組織切片を液体を収容するスライド槽に移動させること、又はスライド及び接着した組織切片を液体内に浸水させること、あるいはそれらの両方を)更に含むことができる。
【0027】
上記の装置及び方法は、加熱器による組織切片の加熱を自動化するように構成される制御システムを備えることもできる。上記の装置及び方法は、コントローラと通信するユーザインタフェースを備えることもでき、ユーザインタフェースは、接着材料の可用性を表示又は報告するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】加熱素子を備える組織コレクタの一例示的な実施形態を示す図である。
図2】加熱素子を備えるスライドホルダの一例示的な実施形態を示す図である。
図3】自動的に組織切片をスライスして組織切片をスライドに移送する装置の一例示的な実施形態の斜視図である。
図4】接着ストリップディスペンサを備える、組織切片を保持する組織コレクタの一例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、組織切片をミクロトームから収集してスライドに移送する手動ステップを削減又は排除することに少なくとも部分的に基づく。本発明のいくつかの実施形態は、組織切片をスライドに取り付ける改善方法にも基づく。組織切片とは、顕微鏡検査に好適でありうる組織の極薄スライス、例えば、約1μm~約100μm、代替的に約1μm~約30μm、代替的に約3μm~約10μmの厚さを有するスライスである。組織切片をスライドに手作業で移送するには、注意及び熟練が必要である。
【0030】
本方法及び装置のいくつかの実施形態において、熱、物理的な力、又はそれらの両方を組織切片とスライドとの間の接触箇所に印加することによって、組織切片はスライドに取り付けられる。熱、物理的な力、又はそれらの両方は、組織コレクタ及び/又はスライドホルダ(組織コレクタ又はスライドホルダあるいはそれらの両方)によって印加することができる。組織コレクタは、組織サンプルから組織切片をスライスするために使用されたミクロトームから組織切片を収集する。組織コレクタは、ミクロトームではない他のデバイス又は場所から、例えば保管場所から組織切片を収集してもよい。組織コレクタは、組織切片を移動させてスライドと接触させた後に、組織切片に熱、物理的な力、又はそれらの両方を印加するように構成することができる。スライドは、スライドホルダによって保持することができ、いくつかの実施形態において、スライドホルダ上又は内に配置される加熱素子は、熱を組織切片に印加することができる。組織コレクタ及びスライドホルダは、組織コレクタ及び/又はスライドホルダの自動化をもたらす、より大きい装置の部分とすることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、組織切片は、接触箇所において、約40℃~約90℃の任意の温度、又は包埋媒体(embedding medium)を少なくとも部分的に溶融させるのに十分である温度に加熱される。代替的又は付加的に、約275kPA以下、例えば、いくつかの実施形態においては約200kPA以下又は約125kPA以下である、任意の物理的な力を組織切片の接触箇所に印加すること等によって、物理的な力が組織切片に印加される。いくつかの実施形態において、物理的な力は、少なくとも5kPA、又は少なくとも25kPAである。いくつかの実施形態において、組織切片の接触箇所に物理的な力は印加されない。組織切片がパラフィン等の包埋媒体を含む場合には、熱は包埋媒体を少なくとも部分的に溶融させるのに十分であること、及び/又は物理的な力は包埋媒体を変形又は圧縮させるのに十分であること(つまり、熱は包埋媒体を少なくとも部分的に溶融させるのに十分であること、又は物理的な力は包埋媒体を変形又は圧縮させるのに十分であること、あるいはそれらの両方)が望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、包埋媒体は、接触箇所において少なくとも部分的に溶融されて固化され、及び/又は接触箇所において少なくとも部分的に圧縮されて(つまり、接触箇所において少なくとも部分的に溶融されて固化され、又は接触箇所において少なくとも部分的に圧縮され、あるいはそれらの両方により)解放される。
【0032】
接触箇所は、任意のサイズ、形状、又は他の構成の領域とすることができる。例えば、接触箇所は、頂端部における又はその付近の組織切片の薄い直線部分とすることができ、組織切片の1つの側から反対側に、又は組織切片の幅にわたって延在することができる。いくつかの実施形態において、組織切片は、頂部、底部、及び頂部と底部との間に延在する側部を有するものとみなすことができ、組織切片をこのようにみなすのは、組織切片の頂部が保持され、残りの部分が重力に起因して下向きに延在する場合に特に有用でありうる。いくつかの実施形態において、組織切片又はその一部は、スライド上の包埋媒体を溶融させること等によって、スライドの接触箇所に取り付けられる。この状況において、組織切片は、組織切片及びスライドが組織槽に移動する際に、スライド上に留まっていれば、取り付けられている。この取付けは、恒久的である必要も、特に強力である必要もない。スライドが鉛直である場合、又は重力によって組織切片をスライドから分離する位置にある場合には、取付けが重力に打ち勝てば、概して十分である。
【0033】
いくつかの実施形態において、接触箇所及び/又は取付け部分(つまり、接触箇所又は取付け部分あるいはそれらの両方)は、組織切片の頂部に又はその付近にある。接触箇所及び/又は取付け部分は、組織切片の端部又は縁部を含む場合に頂部にあり、端部又は縁部が接触箇所の外側にある場合に付近にある。例えば、直線接触箇所は、頂縁部の下の1mm又は2mmにあるとき、頂部の付近にある。接触箇所は、組織切片の領域全体よりも小さくなるように、又は包埋媒体のみを含み、いずれの組織も含まないように、選択又は予め決定することができる。いくつかの実施形態において、接触箇所の外側にある組織切片に物理的な力又は熱が印加されない。いくつかの実施形態において、接触箇所及び/又は取付け部分は、組織切片の50%以下の領域、又は40%以下、又は25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は7.5%以下、又は5%以下、又は2.5%以下、又は1%以下を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本方法は、ミクロトームを用いて組織サンプルから組織切片をスライスすること、ミクロトームから組織切片を収集するように組織コレクタを延伸させること、及び/又は接着剤、減圧、摩擦、又は他の力を使用してスライスした組織切片を組織コレクタに接着させること(つまり、ミクロトームを用いて組織サンプルから組織切片をスライスすること、ミクロトームから組織切片を収集するように組織コレクタを延伸させること、又は接着剤、減圧、摩擦、又は他の力を使用してスライスした組織切片を組織コレクタに接着させること、あるいはそれらの全て)を更に含むことができる。いくつかの実施形態において、本方法は、スライドホルダ及び接着した組織切片を液体を収容するスライド槽に移動させること、及び/又はスライド及び接着した組織切片を液体内に浸水させること(つまり、スライドホルダ及び接着した組織切片を液体を収容するスライド槽に移動させること、又はスライド及び接着した組織切片を液体内に浸水させること、あるいはそれらの両方)を更に含むことができる。他のステップ及び使用は、本方法及び装置の以下の説明から明らかであろう。
【0035】
図1は、組織コレクタ102が組織切片104の頂端部を保持する一例示的な実施形態を示している。組織切片104は、実質的に鉛直の向きにあり、大抵は自由であるか又は制約されず、組織コレクタ102が保持する頂部108から緩く吊るされる。組織切片104は、パラフィン等の包埋媒体112内の組織110を含む。組織コレクタ102は、動作可能であり、図1に示す配置又は向きにおいて、スライド106に向かって略水平な動作において延伸する。いくつかの実施形態において、組織コレクタ102は、接触スライド106において組織切片104に物理的な力を印加して、組織切片104をスライド106に取り付ける。例えば、約275kPA以下の物理的な力、又はスライドを損傷することなく取付けを生じさせるのに十分な任意の量の物理的な力を印加することができる。組織切片104は、変形、圧縮、又は他の機械作用の結果としてスライド106に取り付けることができる。物理的な力の印加の代替として又はこれに加えて、組織コレクタ102は、熱を組織切片104に印加して、組織切片104をスライド106に取り付けてもよい。熱は、局所化されるか又は大半が頂部108に制限されることが好ましい。例えば、取付けを生じさせるのに十分な熱は、いくつかの実施形態において、頂部108を約40℃~約60℃の温度に加熱すること等によって供給される。いくつかの実施形態において、印加される熱を頂部に局所化するために、ヒートシンクをスライドの頂部と接触して配置することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、印加される熱がスライドの下に拡散して、平滑化の前にスライドに組織切片のより多くが接着することを防止する。
【0036】
図2は、図1の実施形態と同様であるが、加熱素子210がスライド206の組織切片204とは反対側に位置する本方法及び装置の別の例示的な実施形態を示している。組織切片204は、パラフィン等の包埋媒体212内の組織210を含む。組織コレクタ202は加熱素子を含まないが、装置は、スライドの両側に、組織コレクタ202及び加熱素子210内に加熱器/加熱素子を有してもよいことが想定される。図2において、組織コレクタ202は、組織切片204を保持し、ミクロトームから搬送し、組織切片204とスライド206とが物理的に接触するまで、組織切片204をスライド206に向かって延伸させる。加熱素子210は、熱をスライド206に印加し、熱は組織切片204に移る。図1について説明したように、熱は、スライドを損傷することなく、それ自体で又は組織コレクタ202によって印加される物理的な力との組合せで、取付けを生じさせるのに十分なものであるべきである。
【0037】
図3は、自動的に組織切片をスライスしてスライドに移送する装置の一例示的な実施形態の斜視図である。本装置は、既存の設計、又は本開示の装置及び方法との使用に適合される新設計とすることができる回転式ミクロトーム302を備える。例えば、回転式ミクロトーム302は、ベース304と、ベース304上に設けられるミクロトームハウジング306とを備えることができる。ベース304上にはナイフホルダ308が位置する。サンプルホルダ310は、ミクロトームハウジング306上に設けられるハンドホイール312によって上下に移動させることができる。ナイフホルダ308及びサンプルホルダ310は、互いに対向して配置される。ナイフホルダ308は、圧力をナイフ314に印加するフロントプレート316(ナイフ圧力プレートとも呼ばれる)を支持する。ナイフホルダ308は、様々なクランプ、支持体及びレールによって支持される。サンプルホルダ310は、組織サンプルからスライスされる厚さを選択するように調整することができる。サンプルホルダ310は、ナイフ314が組織サンプルに接触する角度の調整も可能にする。
【0038】
装置は以下のように動作する。組織サンプルをサンプルホルダ310内にしっかりとクランプ又は挿入し、ナイフ314の周りに移動させて適所に係止する。ナイフホルダ308を、所望の厚さの組織切片をスライスする所望の位置に移動させ、適所に係止又はクランプする。オペレータは、その後、ハンドホイール312を転回させ、組織サンプルがナイフ314に係合するようにサンプルホルダ310を下げる。図3において、組織切片341はミクロトームによってスライス済みであり、フロントプレート316からの収集を待機する。
【0039】
本装置は、自動的に組織切片をフロントプレート316から収集するようになっている組織コレクタ332を備える。図3において、組織切片330は収集済みである。本装置は、組織コレクタがスライス後の組織切片に接触することができるように、ナイフに関して移動するようになっている自動化組織コレクタを備えることができる。例えば、組織コレクタは、(1)組織切片が組織コレクタによって収集されるように、組織コレクタの収集端部が組織切片と接触する又は組織切片に十分近い位置に移送するように、且つ(2)収集端部上の組織切片がスライドホルダによって保持されるスライドと接触する位置に移動するように適合することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、組織コレクタは、接着材料を採用するのではなく、むしろ、吸引、接着、摩擦、又は他の力によって組織切片を収集するように構成される。例えば、組織コレクタ332は、減圧(吸引をもたらす)を提供する1つ以上の開口を有することができる。開口は、空気圧源に流体接続される。組織コレクタ332は、組織切片330に接触又は接近するアーム336等の延伸可能部分を備えることができる。組織コレクタ332又はその一部(アーム等)が組織切片330と接触する又は組織切片330に十分近い場合、組織切片330は、開口における減圧によって組織コレクタ332に保持される。「減圧(reduced pressure)」とは、周囲環境よりも小さい準周囲圧力(sub-ambient pressure)の圧力を指し、「正圧(positive pressure)」とは、周囲環境よりも大きい、例えば大気圧よりも大きい圧力を指す。正圧と周囲圧力との間の圧力勾配により、組織切片は正圧から減圧領域に向かって推進される。「吸引(suction)」とは、部分真空又は減圧領域へと入る気体の流れを指す。この領域と周囲圧力との間の圧力勾配により、物質は減圧領域に向かって移動する。或る特定の実施形態において、準大気圧(sub-atmospheric pressure)は減圧である。
【0041】
いくつかの実施形態において、組織コレクタは、減圧の代わりに又はこれに加えて、接着材料を採用する。接着材料は、接着ストリップ等の任意の形態で提供することができる。「ストリップ(strip)」という用語は、本明細書において使用される場合、テープ、バンド、パッチ、及び他の比較的平坦な形態を包含する。組織切片の収集に使用されるのに望ましい接着剤は、移動に対して十分強力な接着をもたらすが、除去する際に組織切片を損傷しない程度の強度で接着する接着剤である。そのような接着剤の例としては、低粘着性の感圧接着剤、例えば、アクリロニトリル共重合体(例えば、ブタジエンアクリロニトリル重合体(BACN重合体)、ブタジエンアクリロニトリルイソプレン重合体(BACNI重合体));スチレン共重合体(例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)重合体)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS重合体)、及びスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS重合体);及びアクリレート共重合体が挙げられる。所望に応じてポリマー材料の配合物及び混合物を使用してもよい。感圧接着剤は、十分な抗酸化剤、UV安定剤及び架橋剤も含みうる。接着ストリップは、ミネソタ州メイプルウッド所在の3M Company社、インディアナ州モンティセロ所在のPolymer Science, Inc.社、及びペンシルベニア州グレンロック所在のAdhesives Research, Inc.社を含む、様々な企業から入手可能である。
【0042】
接着ストリップは、開口における減圧によって、接着剤によって、それらの両方によって、及び/又は他の手段によって(つまり、開口における減圧によって、接着剤によって、それらの両方によって、又は他の手段によって、あるいはそれらの全てによって)、組織コレクタ上に、又はその延伸可能部分上に位置決めすることができる。例えば、図3において、組織コレクタ332は、収集端部上に配置される接着ストリップ338を有する。組織コレクタ332は、接着ストリップ338を巻き戻し、組織切片330を収集するために使用した後に再巻き付けすることができるスプール337を備える。より詳細には、新品の接着ストリップが第1のリール337上にあり、組織コレクタ332の収集端部にわたって延伸するように構成される。接着ストリップ338の一部が組織切片を収集するために使用された後、接着ストリップはリール間を前進し、接着ストリップの使用済み部分は第2のリール(図3においては見えない)上に巻き付けられる。接着ストリップ338は、組織切片330に接触し、これに接着される。いくつかの実施形態において、接着材料は、組織切片の一部、好ましくは、包埋媒体のみであり組織を含まない一部のみに接触する。換言すれば、接着材料の第1の部分は組織切片に取り付けられ、接着材料の第2の部分は、組織コレクタ上にあるが、組織切片に取り付けられない又は接触しない。
【0043】
組織コレクタ332は、ミクロトーム又は他の場所から組織切片を収集し、スライドに移送することができるように移動するようになっている。例えば、本装置は、回転支持体に取り付けられる自動化組織コレクタを備えることができ、回転支持体が回転することで自動化組織コレクタの位置が変化する。図3に示す実施形態において、組織コレクタ332は、シャフト340によって支持体342に取り付けられるため、回転運動を行うようになっている。支持体342は、手動で、又はコントローラ等によって自動で動作させることができ、組織コレクタ332の配線を収容しうるシャフト340を回転させることができる。支持体342は、様々な動作が行われる第1の位置、第2の位置、及びそれ以上の位置に組織コレクタ332を移動させることができる。上述のように、組織コレクタ332は、ミクロトームから組織切片330を収集する位置に配置することができる。その後、組織コレクタは、組織切片をスライド344に移送する位置となるように、回転させるか、又はそうでなければ移動させることができる。
【0044】
組織切片を獲得した後、アーム336は、組織切片がスライド344付近に位置決めされるように移動する。アームは、回転動作及び/又は直線動作(つまり、回転動作又は直線動作あるいはそれらの両方)を行うように適合することができる。アーム又はその一部は、組織切片330及び任意選択的に接着材料がスライドと接触することで、組織切片をスライドに取り付けることができるように、再び延伸する。
【0045】
図3において、組織コレクタ332は回転し、アームは延伸した後であり、組織切片330及び接着材料338は、スライドホルダ346によって保持されたスライド344への接触に向かって移動している。組織切片330は、スライド344の面に接触し、接着ストリップ338は、スライド344に、特に、組織切片に取り付けられない接着ストリップの一部にも取り付けることができる。熱及び/又は物理的な力(つまり、熱又は物理的な力あるいはそれらの両方)を組織切片330又はその一部、例えば、組織切片とスライドとの接触箇所に、スライド344への組織切片330の取付けを容易にする又は増大させるのに十分な量及び時間で印加することができる。アーム336は後退し、組織切片330がスライド344上に残る。いくつかの実施形態において、接着ストリップ338も、接着ストリップ338の両側を切断又は解放することによって、又は単に接着材料338を組織コレクタに保持する減圧を止めることで、接着ストリップ338を組織コレクタ332から解放すること等によって、スライド344上に残すことができる。いくつかの実施形態において、特に接着ストリップ338がリール上に設けられる場合、接着材料338は、(手動で、又はアーム336が後退するときに自動で)スライドから除去され、接着剤を伴わずに組織切片330はスライド344に取り付けられたままとなる。
【0046】
組織切片がスライドに移送された後、本装置は次の使用に向けて準備することができる。組織コレクタ332は、次の組織切片341を収集するようにミクロトーム302に回転させるか、又はそうでなければ移動させることができる。接着材料のディスペンサ(dispenser)は、クリーンな接着材料を収集端部に供給することができる。接着材料が連続ストリップとして設けられる実施形態において、使用済み接着ストリップは組織コレクタの収集端部から離され、クリーンな接着ストリップが収集端部上へと移動させられる。例えば、接着ストリップがリール対リール構成において設けられる場合、例えば、接着ストリップが第1のリール上に設けられる又は巻き付けられる場合には、接着ストリップは、第1のリールから収集端部を横切って第2のリールへと延伸するか、又は巻き戻される。接着ストリップは、接着ストリップの第1のセクションが組織切片をスライドに移送させるために使用された後、収集端部を横切って前進させる(第1のリールから一部を巻き戻し、第2のリール上に一部を巻き付ける)ことができ、それにより、接着ストリップの第2のセクションは収集端部上に位置決めされる。組織コレクタは、次の組織切片のスライス前、最中又は後に回転させるか、又はそうでなければ移動させることができる。組織コレクタ、スライドホルダ及びスライドは、任意選択的に、組織切片がスライドに取り付けられるとき、図3に示す以外の軸において方向付けることができる。
【0047】
上述したように、組織コレクタ、又はその一部、例えばアームは、組織切片に接触する及び/又はこれを収集する(つまり、組織切片に接触する、又はこれを収集する、あるいはそれらの両方をする)位置となるように移動するように適合することができる。組織コレクタ又はアームの外面は、平坦、円筒形、八角形、又は別の形状とすることができ、追加の移動を行うように適合することができる。例えば、組織コレクタのアームは、組織コレクタ332の本体における軌道に沿って延伸及び後退するように適合することができ、アーム336は、組織切片又はスライドに延伸させ、組織切片又はスライドと接触し、後退させることができ、これにより、組織が組織コレクタによって収集されるように、組織コレクタの収集端部を組織切片に接触させる又はその十分近くに移す。いくつかの実施形態において、アームは回転動作が可能であり、この端部を、組織切片に接触する及び/又はこれを収集する(つまり、組織切片に接触する、又はこれを収集する、あるいはそれらの両方をする)位置と、組織切片をスライド上に置く位置との間で回転させることができる。任意選択的に、アーム又は組織コレクタは、他の機能又はステップが行われる他の位置へと回転を行うようになっている。
【0048】
本装置のいくつかの実施形態において、スライドは、同様に自動化されうるスライドホルダ346によって保持される。スライドホルダ346は、スライドホルダベース350に沿って回転させるか、又はそうでなければ移動させることもできるし、そのような移動を提供するスライドホルダベース350に取り付けることもできる。例えば、スライドホルダベース350は、軌道352に沿って槽360の近くへと移動することができる。スライドホルダ346又はスライドホルダベース350は、槽360に接触する位置となるように、移動するように適合することができる。いくつかの実施形態において、スライドホルダ346又はスライドホルダベース350は回転動作が可能であり、スライド344の角度を変更することができる。任意選択的に、スライドホルダ346又はスライドホルダベース350は、他の機能又はステップが行われる他の位置へと回転を行うようになっている。図3の装置は、スライドホルダベース350及び組織コレクタ332と信号通信するコントローラ370を更に備える。
【0049】
スライドホルダは、スライド344をスライド槽360に搬送することができ、スライド槽360は、温水を含んでもよく、又は冷水若しくは室温水(若しくは他の液体)で充填した後に温水(若しくは他の液体)によって充填するという順番としてもよい。いくつかの実施形態において、本装置は、2つ以上のスライド槽を備え、これらは、同じ温度若しくは異なる温度としてもよく、又は同じ液体若しくは異なる液体を収容してもよい。例えば、2つの別個の水槽を、1つは室温で、1つは高温で設けることができる。他のスライド槽構成を使用してもよい。スライドホルダ346は、組織コレクタの位置のうちの一方の付近に配置し、保持されたスライドをスライド槽内に浸水させるように移動可能とすることができる。スライド上の組織切片を温水に接触させると、スライド上の組織切片が平坦になる。スライド上の組織切片を冷水に接触させた後に温水に接触させるという一連の流れにより、バンチング(bunching)又は気泡を伴わずにスライド上の組織切片の平坦化が促進される。接着ストリップは、(除去済みでない場合)除去することができ、又は、接着材料の一部が組織の分析に干渉しない限り、スライド上に残すことができる。スライド上で平坦になった組織切片は、概して他の処理(脱パラフィン、ストリンジェンシ洗浄(stringency washing)、カバースリップ装着(cover slipping)、染色、酵素処理等)に向けて準備済みである。
【0050】
図4は、接着ストリップをその収集端部に設けるように構成される組織コレクタの一例示的な実施形態を示している。組織コレクタ402は、回転運動及び直線運動が可能である。組織コレクタ402の収集端部403は、所望の任意のサイズ又は形状、例えば、実質的に平坦で、任意選択的に丸みを帯びた縁部を有するものとすることができる。本装置は、組織コレクタ402の収集端部403に近い接着材料ディスペンサも備え、組織コレクタの収集端部403は、その上に接着ストリップ405を有することになる。より詳細には、接着ストリップ405は、収集端部403を横切って第1のリール412からホイール414にわたって第2のリール416に延在する。ホイール414は、リールと収集端部との間で接着ストリップ405を締める又は緩めるように移動させることができる。いくつかの実施形態において、ホイール414は、接着ストリップのどの程度を前進させたかの測定値を提供するタコメータである。第1のリール412は、クリーンな未使用の接着ストリップ405が巻き付けられ、第2のリール416は、使用済み接着ストリップが巻き付けられる。接着ストリップのうち収集端部を覆う部分が組織又はデブリを収集するために使用された後、接着ストリップをリールによって前進させることができ、使用済み接着ストリップが第2のリール416上に巻き付けられる。図4に示すのとは異なる多様な追加の要素を利用して、張力を接着ストリップに印加することができる。いくつかの実施形態において、本装置は、ホイール414が収集端部403にわたってより多くの接着ストリップをスプールに巻いていない場合、未使用の接着ストリップを収集端部403の表面(スライドに面する頂面又は側面等)にクランプするアクチュエータを備える。
【0051】
組織コレクタ402は、スライド406に向かう直線運動が可能であり、組織切片が収集端部403において収集されると、組織コレクタは、組織切片をスライドホルダ418によって保持されたスライド406と接触させることができる。スライド406の反対側に、加熱素子410が存在し、スライド406に向かう直線動作が可能である。加熱素子410は、所望の温度に維持することもできるし、又は使用に望ましいときには素早く加熱するように構成することもできる。加熱素子410は、組織切片と接触する側とは対向するスライド406の面に接触する。加熱素子410は、スライドの一部にのみ接触するように構成することができる。反対側から熱を印加することにより、組織切片が損傷するリスクが低減する。
【0052】
加熱素子410は、スライドホルダ406及び組織コレクタ402が両者全てを接触させるように移動する間に静止したままであることも想定される。加熱素子410を省いてもよく、及び/又は収集端部403は加熱素子を備え(つまり、加熱素子410を省いてもよく、又は収集端部403は加熱素子を備え、あるいはそれらの両方により)、収集端部403から組織切片に熱を印加することができることも想定される。組織切片に面する組織コレクタ402及び加熱素子410上の表面は、組織コレクタ402内に旋回軸422を、加熱素子410内に旋回軸420を有すること等によって、回転を行うように構成することができる。
【0053】
本明細書に記載の装置及び方法を使用することにより、組織切片に手動で作用させることなく自動的に、組織切片をミクロトームからスライドに移送することができる。組織切片との手動での接触を伴わずに、例えば、ユーザが組織切片を手で又は手持ち式器具を用いて把持する手動での接触を伴わずに、組織切片を移送することができる。より詳細には、手動での接触を伴わずにスライスしたばかりの組織切片をミクロトームから除去することができ、及び/又は、手動での接触を伴わずに組織切片をスライド上に配置することができる(つまり、手動での接触を伴わずにスライスしたばかりの組織切片をミクロトームから除去することができ、又は、手動での接触を伴わずに組織切片をスライド上に配置することができ、あるいはそれらの両方をすることができる)。また、本装置及び方法は、良好な2次元安定性を有し、バンチング又はカールを伴う組織切片のスライス及び移送を可能にし、組織切片の浪費を回避する。
【0054】
[例示的な実施形態]
ここで開示されている主題により提供される例示的な実施形態は、以下を含むが、これらに限定されない。
【0055】
実施形態1.組織切片をスライド上へと移送する方法であって、組織コレクタ及び/又は接着ストリップを用いて組織切片を収集することと、前記組織コレクタ及び/又は前記接着ストリップを移動させて、前記組織切片の少なくとも一部をスライドと接触させることと、前記組織切片と前記スライドとの接触箇所において前記組織切片に物理的な力、熱又はそれらの両方を印加することとを含む、方法。
【0056】
実施形態2.前記組織切片の前記接触箇所を約40℃~約90℃の温度に加熱することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0057】
実施形態3.前記組織切片は包埋媒体を含み、前記熱は、前記包埋媒体を少なくとも部分的に溶融させるのに十分である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0058】
実施形態4.約275kPA以下の物理的な力を前記組織切片の前記接触箇所に印加することを含む、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
【0059】
実施形態5.前記接触箇所は前記組織切片の25%以下を占める、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0060】
実施形態6.前記接着ストリップを前記組織コレクタの収集端部上に位置決めすることを更に含む、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0061】
実施形態7.前記接着ストリップに接着させることによって前記組織切片を収集することを含む、実施形態6に記載の方法。
【0062】
実施形態8.前記接着ストリップは第1のリール上に設けられ、前記接着ストリップは、前記第1のリールから前記収集端部を横切って第2のリールに延伸する、実施形態6に記載の方法。
【0063】
実施形態9.前記接着ストリップの第1のセクションが組織切片をスライドに移送するために使用された後に、前記収集端部を横切って前記接着ストリップを前進させる(前記第1のリールから一部を巻き戻し、前記第2のリール上に一部を巻き付ける)ことを含み、それにより、前記接着ストリップの第2のセクションが前記収集端部上に位置決めされる、実施形態8に記載の方法。
【0064】
実施形態10.前記接着ストリップは低粘着性の感圧接着剤を含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法。
【0065】
実施形態11.組織切片をスライドに移送する装置であって、前記組織切片を収集するようになっている組織コレクタと、スライドを保持するようになっているスライドホルダであって、前記組織コレクタ及び/又は前記スライドホルダは、前記組織コレクタによって収集された組織切片と、前記スライドホルダによって保持されたスライドとが、互いに接触箇所において接触するように、移動するように構成される、スライドホルダと、前記接触箇所に位置決めされるか、又は前記接触箇所に移動するように構成される加熱素子とを備える、装置。
【0066】
実施形態12.前記加熱素子は前記組織コレクタ内に収容される、実施形態11に記載の装置。
【0067】
実施形態13.前記加熱素子は前記スライドホルダ内に収容される、実施形態11に記載の装置。
【0068】
実施形態14.前記加熱素子は前記組織切片及び前記スライドホルダの外側にあり、前記加熱素子は前記スライドホルダによって保持されたスライドの第1の面上に位置決めされ又は前記第1の面上の位置に移動可能であり、前記接触箇所は前記スライドの第2の対向する面である、実施形態11~13のいずれか一つに記載の装置。
【0069】
実施形態15.接着材料のディスペンサを更に備える、実施形態11~14のいずれか一つに記載の装置。
【0070】
実施形態16.組織切片をスライドに移送する装置であって、前記組織切片を収集するようになっている組織コレクタと、スライドを保持するようになっているスライドホルダであって、前記組織コレクタ及び/又は前記スライドホルダは、前記組織コレクタによって収集された組織切片と、前記スライドホルダによって保持されたスライドとが、互いに接触箇所において接触するように移動するように構成される、スライドホルダと、前記組織コレクタの前記収集端部において接着ストリップを供給することが可能な接着ストリップディスペンサとを備える、装置。
【0071】
実施形態17.前記接着ストリップディスペンサは前記収集端部の両側に少なくとも2つのリールを備え、接着ストリップは第1のリールから前記収集端部を横切って第2のリールに延伸し、前記第1のリールは新品の接着ストリップを巻き戻すことが可能であり、前記第2のリールは使用済み接着ストリップを巻き付けることが可能である、実施形態16に記載の装置。
【0072】
実施形態18.前記組織コレクタの前記収集端部は延伸可能である、実施形態17に記載の装置。
【0073】
実施形態19.前記組織コレクタは、物理的な力及び/又は熱を前記スライドホルダに又はその付近に印加することによって、前記組織切片を移送するように構成される、実施形態17又は18に記載の装置。
【0074】
実施形態20.前記組織コレクタ又は前記スライドホルダは加熱素子を備える、実施形態16~19のいずれか一つに記載の装置。
【0075】
例示的又は好ましい実施形態の上記の説明は、実施形態によって規定されたように本発明を限定するものではなく例示したものとして解釈されるべきである。容易に理解されるように、上述した特徴の数多の変形及び組合せを、実施形態において記載した本発明から逸脱することなく利用することができる。そのような変形は、本発明の範囲からの逸脱とはみなされず、全てのそのような変形は、以下の実施形態の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に引用した全ての参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】