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▶ セラティチット オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】側フライスカッター
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/28 20060101AFI20240131BHJP
   B23C 5/08 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B23C5/28
B23C5/08 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547396
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2022052178
(87)【国際公開番号】W WO2022171471
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21156179.0
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500005837
【氏名又は名称】セラティチット オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ヴェントゥリーニ,レムス
(72)【発明者】
【氏名】ゲベール,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022JJ01
3C022JJ04
(57)【要約】
側フライスカッター(100)は、第1の端部(11)から所定の回転軸(R)に沿って延び、フリーの第2の端部(12)に回転駆動接続するためのインターフェースを有する本体(10)を備え、その上にディスク状カッターホルダ(20)のための座面(14)が構成され、第2の端部(12)に固定され、本体(10)に面する第1の主面(21)で支持され、座面(14)上に、外周が本体(10)から半径方向に突出し、ディスク状カッターホルダ(20)を軸方向に貫通する中央貫通開口部(23)を有するディスク状カッターホルダ(20)を備える。本体(10)の第2の端部(12)に冷却材を送給するための複数の冷却材供給チャネル(60)が本体(10)内に構成されている。カッターホルダ(20)の外周に冷却材を供給するための複数の冷却材分配チャネル(50)がディスク状カッターホルダ(20)に形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動機構に接続するためのインターフェースを備えた第1の端部(11)からフリーの第2の端部(12)に向って所定の回転軸(R)に沿って延び、ディスク状カッターホルダ(20)のための座面(14)が形成されている本体(10)と、
前記第2の端部(12)に締結され、前記本体(10)に対向する第1の主面(21)で前記座面(14)に支持され、前記座面(14)の外周が放射状に前記本体(10)から突出し軸方向に貫通する中央貫通開口部(23)を有するディスク状カッターホルダ(20)と、
を備えた側フライスカッター(100)において、
前記本体(10)に、前記本体(10)の前記第2の端部(12)に冷却材を供給するための複数の冷却材供給チャネル(60)が形成され、前記ディスク状カッターホルダ(20)に冷却材を前記カッターホルダ(20)の外周に供給するための複数の冷却材分配チャネル(50)が形成され、前記複数の冷却材分配チャネル(50)のうち少なくとも2つが、前記本体(10)と前記ディスク状カッターホルダ(20)の間に形成される共通の冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)から分岐し、前記冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)に前記複数の冷却材供給チャネル(60)の少なくとも2つのチャネルが開口している、
側フライスカッター。
【請求項2】
前記共通の冷却材分配チャンバ(70; 55、61、62)が回転軸(R)を中心として環状に延びている、請求項1に記載の側フライスカッター。
【請求項3】
前記冷却材分配チャネル(50)がそれぞれ前記カッターホルダ(20)の内部を走行する第1のチャネル部(52)を有し、
前記第1のチャネル部(52)が前記カッターホルダ(20)の第1の主面(21)の側面と前記第1の主面(21)に対向する第2の主面(22)の側面で閉鎖されて形成され、
前記カッターホルダ(20)の外周に少なくとも1つの出口開口部(51)を有し、かつ前記貫通開口部(23)及び前記第1の主面(21)に向かって開口し、かつ前記貫通開口部(23)の領域内で前記カッターホルダ(20)の厚さの一部だけに延びる入口部(53)を有する、
請求項1又は2に記載の側フライスカッター。
【請求項4】
前記冷却材分配チャネル(50)がそれぞれ前記入口部(53)を前記第1のチャネル部(52)に接続する接続部(54)を有し、前記接続部(54)が前記貫通開口部(23)の方向にかつ前記第2の主面(22)に対して閉じた配置である、請求項3に記載の側フライスカッター。
【請求項5】
前記貫通開口部(23)に向かって開口している前記入口部(53)の軸方向の高さが、最大で前記貫通開口部(23)において前記ディスク状カッターホルダ(20)の厚さの3分の1である、請求項3又は4に記載の側フライスカッター。
【請求項6】
前記冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)のディスク状カッターホルダ側部分が、第1の主面(21)と貫通開口部(23)とに隣接するとともに、前記冷却材分配チャネル(50)のそれぞれの入口部(53)の間に延びる、前記ディスク状カッターホルダ(20)内の凹部(55)によって形成される、請求項3から5のいずれか1項に記載の側フライスカッター。
【請求項7】
前記冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)のカッターホルダ部分の軸方向高さが、前記貫通開口部(23)における前記ディスク状カッターホルダ(20)の厚さの最大で3分の1である、請求項6に記載の側フライスカッター。
【請求項8】
前記本体(10)の前記第2の端部(12)に配置され、前記座面(14)から軸方向に突出するセンタリングピン(16)を有し、前記カッターホルダ(20)内の貫通開口部(23)が前記センタリングピン(16)の外側輪郭に適合されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の側フライスカッター。
【請求項9】
前記センタリングピン(16)を貫通して前記第2の端部(12)に開口する貫通孔(17)を有する、請求項8に記載の側フライスカッター。
【請求項10】
前記センタリングピン(16)の外周面(16a)にカッターホルダ(20)の貫通開口部(23)の内周面(23a)が密着して当接する、請求項8又は9に記載の側フライスカッター。
【請求項11】
前記複数の冷却材供給チャネル(60)が、前記センタリングピン(16)の半径方向外側で前記共通の冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)に放射状に開口している、請求項8から10のいずれか1項に記載の側フライスカッター。
【請求項12】
前記冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)が、前記センタリングピン(16)の周囲に前記座面(14)に対して凹んで形成された溝(61)によって形成される第1の本体側部分を有する、請求項8から11のいずれか1項に記載の側フライスカッター。
【請求項13】
前記冷却材分配チャンバ(70;55、61、62)が、前記センタリングピン(16)によって形成される円周状の凹部(62)によって形成される第2の本体側部分を有する、請求項8から12のいずれか1項に記載の側フライスカッター。
【請求項14】
交換可能なカッターインサート(40)を受け入れるために前記ディスク状カッターホルダ(20)の円周上に分散配置された複数の座部(25)を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の側フライスカッター。
【請求項15】
前記座部(25)が、前記ディスク状カッターホルダ(20)からそれぞれ軸方向両側に突出するように交換可能なカッターインサート(40)を受け入れるように構成されている、請求項14に記載の側フライスカッター。
【請求項16】
前記座部(25)に締結され、前記本体(10)から軸方向に最も遠くに突出する側フライスカッターの領域を形成する前記交換可能な複数のカッターインサート(40)を備える、請求項14又は15に記載の側フライスカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動装置に連結するためのインターフェースを有する第1の端部からディスク状カッターホルダ用の座面が構成されたフリーの第2の端部まで所定の回転軸に沿って延在する本体と、第2の端部に締結されたディスク状カッターホルダとを備えた側フライスカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
工作物に溝又はスリットを形成し主として金属材料を切断するためにしばしば側フライスカッターが使用されるが、この側フライスカッターでは、回転駆動装置に連結するように構成された本体にディスク状カッターホルダが配置され、その円周上に複数のカッターが分散配置される。この場合、カッターは特にカッターインサートによって形成することができ、これらのインサートはカッターホルダの対応する座部に保持され、典型的には本体及びディスク状カッターホルダよりも硬くて耐摩耗性の高い材料から形成される。例えば本体及びディスク状カッターホルダは工具鋼から形成することができ、カッターは超硬金属、サーメット、セラミック又は例えばPCD(多結晶ダイヤモンド)又はCBN(立方晶窒化ホウ素)のような超硬質材料から形成することができる。
【0003】
特許文献1には、本体とこれに固定されるディスク状カッターホルダを備えた側フライスカッターが記載されている。本体には複数の冷却材供給チャネルが形成されており、これら冷却材供給チャネルはそれぞれ端部側の細長い冷却材分配チャンバに通じており、このチャンバを介して冷却材がそれぞれディスク状カッターホルダの複数の入口開口部に移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国実用新案第202017105606号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、カッターへの冷却材の供給が改善され、かつディスク状カッターホルダの構成に関連して設計の自由度が増した、改良された側フライスカッターを提供することである。
【0006】
以下の明細書において軸方向、半径方向又は接線方向という用語が使用される場合、これらの用語は、特定の文脈から別の意味が生じない限り、それぞれ側フライスカッターの回転軸に関連するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の側フライスカッターによって解決される。有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0008】
側フライスカッターは、回転駆動装置に接続するためのインターフェースを備えた第1の端部からフリーの第2の端部に向かって所定の回転軸に沿って延びディスク状カッターホルダ用の座面が形成されている本体と、第2の端部に締結され本体に対向する第1の主面で座面に支持されて外周が本体から放射状に突出し軸方向に貫通する中央貫通開口部を有するディスク状カッターホルダとを有する。本体には、本体の第2の端部に冷却材を供給するための複数の冷却材供給チャネルが形成されている。ディスク状カッターホルダには、カッターホルダの外周に冷却材を供給するための複数の冷却材分配チャネルが形成されている。複数の冷却材分配チャネルの少なくとも2つは共通の冷却材分配チャンバから分岐し、この分配チャンバは本体とディスク状カッターホルダとの間に形成され、複数の冷却材供給チャネルの少なくとも2つがこの分配チャンバに開口している。
【0009】
共通の冷却材分配チャンバが設けられその中に複数の冷却材供給チャネルのうち少なくとも2つの冷却材供給チャネルが開口しいているので、例えば冷却材供給チャネルが汚染物によって詰まるときでも、冷却材をカッターホルダの外周部に確実に供給することができる。ディスク状カッターホルダを軸方向に貫通する中央貫通開口部が設けられているので、側フライスカッターは差込み形側フライスカッターとして形成することができ、この側フライスカッターはフリーの第2の端部から回転駆動装置に中央締付ねじによって締結することができ、この回転駆動装置に側フライスカッターが第1の端部に構成されているインターフェースを介して結合される。複数の冷却材供給チャネルの全ての冷却材供給チャネルが1つの共通の冷却材分配チャンバに開口し、カッターホルダの全ての冷却材分配チャネルが1つの共通の冷却材分配チャンバから分岐するようにできるので有利である。
【0010】
別の実施形態によれば、共通の冷却材分配チャンバは回転軸を中心に環状に延びている。この場合全ての冷却材分配チャネルへの冷却材の特に均質な分配が達成される。
【0011】
別の実施形態によれば、冷却材分配チャネルはそれぞれカッターホルダの内部を走行する第1のチャネル部で、カッターホルダの第1の主面の側面とこの第1の主面に対向する第2の主面の側面との両方で閉鎖されて形成され、カッターホルダの第1の主面に対向して横たわりかつカッターホルダの外周に少なくとも1つの出口開口部を有するものと、貫通開口部に向かってかつ第1主面に向かって開口し貫通開口部の領域でカッターホルダの厚みの一部のみに亘って延びる入口部とを有する。この場合ディスク状カッターホルダ内に冷却材を移送するために、入口部を介して比較的大きな断面を設けることができるので、流動抵抗を低く保つことができる。
【0012】
別の実施形態によると、冷却材分配チャネルはそれぞれ入口部を第1のチャネル部に接続する接続部を有し、この接続部は貫通開口部の方向にかつ第2の主面に対して閉構成とされている。接続部が設けられるので、貫通開口部に向かって開口する入口部の軸方向の高さは貫通開口部の軸方向の長さの比較的小さな部分にすぎないように選択することができ、従って貫通開口部の軸方向の長さの残りの部分は望ましくない冷却材の漏れに対してシールするために利用可能である。
【0013】
貫通開口部に向かって開口する入口部の軸方向の高さが貫通開口部におけるディスク状カッターホルダの厚さの最大で3分の1である場合、貫通開口部の軸方向の高さの残りの大部分を介して望ましくない冷却材の漏れに対して確実にシールすることができる。貫通開口部におけるカッターホルダの厚さは、例えばカッターインサートの座部領域におけるカッターホルダの厚さに対応することができる。特にカッターホルダが貫通開口部の領域で段付き構成である場合、その結果として座面上に支持される第1の主面の領域が突起として又は凹みとして構成される場合には、貫通開口部でのカッターホルダの厚さはその外周でのカッターホルダの厚さとは異なることになる。
【0014】
別の実施形態によると、冷却材分配チャンバは、ディスク状カッターホルダにあって第1の主面と貫通開口部とに隣接し各冷却材分配チャネルの入口部の間に延びる凹みによって形成されるカッターホルダ側の部分を有する。この場合カッターホルダの円周上に冷却材の均一な分配が達成され、全体として冷却材分配チャネル内への冷却材の流入のための大きな流れ断面が提供され得る。
【0015】
冷却材分配チャンバのカッターホルダ側の軸方向高さが貫通開口部におけるディスク状カッターホルダの厚さの最大3分の1である場合、貫通開口部の軸方向高さが円周方向の領域に残存するのに十分であり、冷却材分配チャンバのカッターホルダ部分の凹部が形成されている円周方向の領域でも望ましくない冷却材の漏洩を確実に密封することを保証される。
【0016】
冷却材分配チャンバのカッターホルダ側部分の軸方向の高さ、すなわち凹みの軸方向の高さは、入口部の軸方向の高さにほぼ対応できることが好ましく、貫通開口部に向かって開口する冷却材分配チャネルの軸方向の高さにほぼ対応するようにすると好適である。
【0017】
別の実施形態によると、座面から軸方向に突出するセンタリングピンが本体の第2の端部に形成され、カッターホルダの貫通開口部がセンタリングピンの外側輪郭に適合されている。この場合貫通開口部とセンタリングピンの外側輪郭との相互作用によって、望ましくない冷却材の漏れを確実に防止することができる。
【0018】
別の実施形態によれば、第2の端部で開放されている貫通孔がセンタリングピンを通って延びている。この場合、側フライスカッターの回転駆動機構への固定は、第2の端部から始まる貫通孔へのアクセスによって簡単に行うことができる。例えばねじ込み工具による貫通孔への係合が行われ得る。
【0019】
カッターホルダの貫通開口部の内周面は、好ましくはセンタリングピンの外周面に対して密封するように当接する。この場合不所望な冷却材の漏洩を確実に防止できる。貫通開口部の内周面とセンタリングピンの外周面とは、例えば密封嵌合を可能とするために研磨することができる。貫通開口部の内周面とセンタリングピンの外周面とは回転軸を中心に回転対称な構成とすることが好ましい。センタリングピンの外周面と貫通開口部の内周面は例えば円錐形状とすることができ、内周面は中空円筒形とすることが好ましいが、外周面はこれに対応して円筒形とすることができ、これにより特に簡便で安価な製造が可能となるからである。
【0020】
別の実施形態によれば、複数の冷却材供給チャネルは、センタリングピンの外側で共通の冷却材分配チャンバに放射状に開口している。この場合共通の冷却材分配チャンバは、流れ抵抗が最小限に抑えられ冷却材が全周にわたって確実かつ均一に分配されるように、特に単純かつ安価に構成することができる。
【0021】
別の実施形態によれば、冷却材分配チャンバは、第1の本体側面を有し、この側面は、センタリングピンの周囲を走行しかつ座面に対して深くなるように形成された溝部を有している。この場合冷却材分配チャンバの十分な横断面を特に簡単で安価な方法で設けることができ、冷却材の均一な分配がセンタリングピンの全周にわたって達成される。
【0022】
別の実施形態によれば、冷却材分配チャンバはセンタリングピンに形成された円周方向の凹部を介して形成された第2の本体側面を有する。この場合冷却材分配チャンバの横断面を特に簡単な方法で拡大することができ、その結果流れ抵抗を低く抑えることができる。凹部は、ディスク状カッターホルダ用のセンタリングピンのシール外周面と座面との間の領域に構成することが好ましい。
【0023】
別の実施形態によれば、カッターホルダは、交換可能なカッターインサートを受け入れるために、ディスク状カッターホルダの円周上に分配された複数の座部を有する。この場合カッターホルダは、例えば工具鋼から安価に製造することができ、かつ機械加工される被加工物と接触するカッターを有するカッターインサートのみが、例えば炭化物(超硬合金)のような特に硬質で耐摩耗性の材料から形成されなければならない。
【0024】
別の実施形態によれば、座部は交換可能なカッターインサートを各々が円板形のカッターホルダから両側に軸方向に突出するように受け入れるように構成されている。この場合比較的狭いスリットもまた側フライスカッターを介して構成することができ、及び/又は材料の切断は比較的小さいスリット幅で行うことができる。
【0025】
側フライスカッターが、座部に固定され本体から最も軸方向に突出する側フライスカッターのその領域を形成する複数の交換可能なカッターインサートを有する場合、溝も例えば凹所の底部に非常に近接する凹所内に構成することもできる。
【0026】
本発明のさらなる利点及び合目的的性は、添付の図面を参照して実施例の以下の説明に基づいて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態による側フライスカッターの概略斜視図である。
図2】各座部に取り付けられた多数の交換可能なカッターインサートを有する図1に対応する側フライスカッターの斜視図である。
図3図2の側フライスカッターの概略斜視図である。
図4】この実施形態の本体のフリーの第2の端部の平面図である。
図5図4のC―C線に沿った断面図である。
図6図5のDの詳細拡大図である。
図7】カッターインサートを配置したディスク状カッターホルダの下側面の概略斜視図である。
図8】破線を用いた隠線を有するディスク状カッターホルダの概略斜視図である。
図9】破線を用いた陰線を有するカッターホルダの下側面の概略斜視図である。
図10図9の円でマークされたEの詳細拡大図である。
図11】破線を用いた陰線を有するカッターホルダの概略図である。
図12図11の線D-Dに沿った断面図である。
図13】破線を用いた陰線を有しフリーの第2の端部の方向に見た側フライスカッターの概略平面図である。
図14図13のF-F線に沿った断面図である。
図15図14に丸で示されたGの拡大詳細図である。
図16図13に対応する平面図である。
図17図16のH―H線に沿った断面図である。
図18図17に丸で囲ったIの詳細拡大図である。
図19図13に相当する図である。
図20図19のJ―J線に沿った断面図である。
図21図20に丸で囲った部分の詳細拡大図である。
図22】一変形例に係るディスク状カッターホルダの概略斜視図である。
図23】破線を用いて示された隠線による変形例に係るディスク状カッターホルダの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
側フライスカッターの一実施形態を図1図21を参照して以下により詳細に説明する。
【0029】
具体的実施形態では、側フライスカッター100はいわゆる載置形側フライスカッターとして、機械加工具の回転駆動装置に端面取付けするように形成される。
【0030】
側フライスカッター100は、特に図4図5及び図6に詳細に示す本体10と、特に図7乃至図10に詳細に示すディスク状カッターホルダ20とを有する。
【0031】
本体10は、特に図5に示すように、第1の端部11からフリーの第2の端部12まで所定の回転軸Rに沿って延びている。第1の端部11には回転駆動装置に接続するためのインターフェースが形成される。具体的な実施例では第1の端部11に特に2つの凹部13がトルク伝達のために、回転駆動装置上の対応する駆動機構と相互作用するように形成される。
【0032】
本体10のフリーの第2の端部12には、ディスク状カッターホルダ20に対する座面14がディスク状カッターホルダ20を支承するために形成されている。座面14はこの実施例では、本体10の環状構成の平坦面的な端部側によって形成され、回転軸Rに対して垂直な平面内に延在している。
【0033】
本体10の第2の端部12を起点として座面14には、ディスク状カッターホルダ20を本体10に締結するための締付ねじ30を収容するため複数のねじ孔15が設けられている。図示の実施形態では合計4つのねじ孔15及び4つの締付ねじ30が備えられているが、締付ねじ30及びねじ孔15の数は、4より少なくても又は4より大きくてもよい。
【0034】
座面14に対して軸方向に突出するセンタリングピン16が本体10の第2の端部12に形成されており、そのセンタリングピン16の機能については以下に詳細に説明する。特に図3及び図5から分かるように、センタリングピン16は円筒状の外周面16aを有する。
【0035】
特に図5から分かるように、本体10内には貫通孔17が形成され、第2の端部12から第1の端部11まで回転軸Rに沿って延びている。貫通孔17はまた特にセンタリングピン16を通って延び、第2の端部12で開放されている。貫通孔17は締結手段(図示せず)を受け入れるように構成され、その手段によって側フライスカッター100は、第1の端部11に設けられるそのインターフェースを介して回転駆動装置に締結することができる。貫通孔17の内壁は特に段付き構成であり、回転軸Rに対して実質的に垂直に延在し、締結手段がシール状に支持されることができる肩部17aを備えて、側フライスカッター100を回転駆動装置に締結する。ここで締結手段の動作は、本体10のフリーの第2の端部12又は側フライスカッター100を起点として行うことができる。
【0036】
以下にディスク状カッターホルダ20についてさらに詳しく説明する。特に図1乃至図3図7及び図8に示すように、ディスク状カッターホルダ20は第1の主面21とこれに平行な第2の主面22とを有する比較的薄い円板形状をしている。側フライスカッター100の組み立て状態では、第1の主面21及び第2の主面22はそれぞれ回転軸Rに対して垂直に延びる。第1の主面21は本体10に対向するように形成され、座面14に環状領域を介して支持されるように構成される。環状領域は、例えば好ましくは第1の主面21の残りと共に平面構成とすることができる。ただし環状領域については、第1の主面21の残りの部分に対して特に突起物として段差構成とすることも可能である。第2の主面22は本体10とは反対を向くように配置される。ディスク状カッターホルダ20の厚さとセンタリングピン16の軸方向の高さとは、特に図1及び図2に示すように、側フライスカッター100の組み立て状態において、センタリングピン16が端部側に突出せず、むしろカッターホルダ20の第2の主面22と実質的に同一平面となるように、互いに適合されている。
【0037】
特に図7及び図8から分かるように、カッターホルダ20を第2の主面22から第1の主面21に向かって貫通する貫通開口部23がカッターホルダ20の中央に形成されている。この貫通開口部23は、回転軸Rに対して同軸に延び、センタリングピン16の外周面16aの形状に的確に合わせた内周面23aを有している。この実施例では内周面23aは中空円筒形状を有する。カッターホルダ20の内周面23aと、センタリングピン16の外周面16aとは、それらが冷却材に対して互いに密封状態になるように互いに適合されているが、これについては以下にさらに詳細に説明する。
【0038】
貫通開口部23の外側の半径方向には、特に図7及び図8に示すように、カッターホルダ20内に締付ねじ30を収容するための孔24が形成されている。特に図8に示すように、孔24は第2の主面22に隣接するようにベベル形状であり、その結果図1及び図2に示す装着状態では締付ねじ30の頭部は第2の主面22から突出しない。
【0039】
カッターホルダ20は、本体10から放射状に突出し本体10よりも実質的に大きい外径を有する。交換可能なカッターインサート40を受け入れるための複数の座部25が、特に図1に示すように、カッターホルダ20の外周にわたって分散して構成されている。この実施例では全部で8個の座部25がそれらに配置されたカッターインサート40とともに設けられる例が示されているが、例えば8つより少ないか又はそれより多い座部25を用意することもできる。この座部の数は、特に例えばカッターホルダ20の外径に依存して変えることができる。座部25は、その上に配置されたカッターインサート40が、カッターホルダ20から半径方向に刃先41が突出するように構成される。
【0040】
この実施例では座部25は、カッターインサート40の刃先41が各々カッターホルダ20から両側に軸方向に突出するように、すなわち図12に示すように、第2の主面22を越えて軸方向に突出するとともに第1の主面21を越えて軸方向に突出するように構成される。ここで軸方向における刃先の幅は、1.5mmから12mmの間であり、好ましくは2mmから10mmの間である。カッターホルダ20の厚さ、すなわち第1の主面21と第2の主面22との間隔は刃先の幅よりも幾分小さい(例えばミリメートルの1/10の範囲)ので、十分な自由運動が保証される。
【0041】
刃先41は側フライスカッター100において第2の端部22において側フライスカッター100全体で最も軸方向に突出する領域を形成する。
【0042】
この実施例では交換可能なカッターインサート40は、カッターホルダ20の材料内に形成され弾性的に撓むことができるクランプフィンガーを介して座部25上に保持される。座部25に隣接してカッターホルダ20の外周には、特に図7及び図8に示すように、切屑溝26が形成されている。
【0043】
この実施形態の側フライスカッター100は、座部25の領域への冷却材の供給を目的とした内部冷却材供給構造を有している。冷却材供給構造は、それぞれ座部25もしくはそれに取り付けられたカッターインサート40に割り当てられた冷却材出口が設けられるように構成される。内部冷却材供給構造の構成については、以下にさらに詳しく説明する。
【0044】
まず、図7図10を用いて、ディスク状カッターホルダ20に形成された冷却材分配チャネル50について詳細に説明する。
【0045】
複数の個々の冷却材分配チャネル50がカッターホルダ20に形成される。この実施形態では冷却材分配チャネル50の数は、交換可能なカッターインサート40の座部25の数に対応しており、その結果各座部25には個々の冷却材分配チャネル50が割り当てられている。
【0046】
この実施例では、各冷却材分配チャネル50はカッターホルダ20の外周に出口開口部51を有し、この出口開口部51を介してそこから漏出する冷却材を座部25又はそこに配置されたカッターインサート40の領域に供給することができる。この実施例では出口開口部51がそれぞれ切屑溝26の最深部の領域に配置されているが、他の実施形態も可能である。例えば出口開口部51は、それぞれのカッターインサート40の切削面により近くに、又はそれぞれのカッターインサート40の開放面に対して隣接配置することができる。図示されている実施例では冷却材分配チャネル50はそれぞれ1つの出口開口部51しか有していないが、例えば冷却材分配チャネル50が分岐し、それぞれが例えば切削面の方向に向けられる出口開口部と、開放面の方向に向けられる出口開口部とのような複数の出口開口部51を有することもできる。
【0047】
カッターホルダ20内の冷却材分配チャネル50は、特に図8に示すように、それぞれ出口開口部51に向かってカッターホルダ20の内部を走る第1のチャネル部52を有している。この第1のチャネル部52は、第1の主面21の側面並びにその対向側の第2の主面22の側面で共に閉ざされるようにカッターホルダ20の内部を走行する。第1のチャネル部52は、カッターホルダ20の第1の主面21と第2の主面22との間の少なくともほぼ中央に形成されることが好ましい。
【0048】
特に図9の囲み円Eの拡大図である図10の詳細図から分かるように。冷却材分配チャネル50はそれぞれカッターホルダ20の半径方向内側領域に入口部53を有し、この入口部53は第1の主面21に対して及び貫通開口部23に対して開放されている。カッターホルダ20の第1の主面21を起点として、入口部53は貫通開口部23の領域においてカッターホルダ20の厚さの一部に亘ってのみ延在し、特に貫通開口部23においてはディスク状カッターホルダ20の厚さの高々3分の1に亘って延在する。換言すれば、入口部53の軸方向の高さは貫通開口部23におけるカッターホルダ20の厚さの多くとも3分の1である。この入口部53は、例えば第1の主面21及び貫通開口部23を起点とした切削によって形成することができる。
【0049】
特に図10及び図12から分かるように、入口部53はその接続部分54を介して第1のチャネル部52に接続されている。接続部分54は、例えば特に第1の主面21から始まる横孔によって構成することができ、この横孔は第1の主面21に開口している入口部53をカッターホルダ20の内部に位置する第1のチャネル部52に接続する。接続部分54は第2の主面22に対してかつ貫通開口部23の方向に閉塞されているので、センタリング突起16の外周面16aに対してシールする内周面23aがカッターホルダ20の厚さの少なくとも3分の2に亘って入口部53の領域に延在する。これらの特徴はまた、特に図12の入口部53の領域における断面図に見ることができる。
【0050】
同様に図10及び図12に示されるように、隣接する冷却材分配チャネル50のそれぞれ隣接する入口部53の間には第1の主面21と貫通開口部23に接する凹部55が形成されるが、その機能はなお詳細に説明される。凹部55はこの実施形態では、隣接する入口部53をそれぞれ接続する面取り面又は斜面により形成される。このようにして凹部55は、入口部53の形成の前後に円周方向の面取りによって特に簡単に作ることができる。カッターホルダ20の厚さ方向において、凹部55も貫通開口部23の領域において最大でカッターホルダ20の厚さの1/3にわたって延在し、その結果シーリング内周面23aもカッターホルダ20の厚さの少なくとも2/3に亘って凹部55の領域に延在する。
【0051】
本体10には複数の冷却材供給チャネル60が形成されており、その構造については図4図5及び図6を参照して以下に詳細に説明する。この実施例ではカッターホルダ20内の冷却材分配チャネル50の数に対応する、合計8つの冷却材供給チャネル60が示されているが、冷却材供給チャネル60の数はまた8つより多くても少なくてもよく、特に冷却材分配チャネル50の数又はカッターホルダ20上の座部25の数と一致する必要はない。
【0052】
特に図5に示すように、図示の実施例では冷却材供給チャネル60は貫通孔17から始まって分岐し、これを介して回転駆動装置の側面から始まって冷却材が供給される。特に図4及び図5に示すように、冷却材供給チャネル60はセンタリングピン16の半径方向外側で、ねじ孔15の位置の半径方向内側で本体10の第2の端部に通じている。ここで冷却材供給チャネル60の開口部は、センタリングピン16の外周に亘って環状に配置されており、即ち開口部はセンタリングピン16の周りに環状に延びる領域に配置されている。
【0053】
冷却材供給チャネル60が開口する環状領域では、特に図4及び図6に示すように、座面14によりも深く形成された溝61が、センタリングピン16の周りに円周方向に形成される。溝61はこの実施例では、センタリングピン16の方向、すなわち半径方向内側に、座面14上で深くなる中空部として構成され、これにより特に簡単な製造が可能になる。しかし環状円周溝61の他の形状も可能である。
【0054】
図6に同様に最もよく示されるように、センタリングピン16には外周面16aと座面14に形成された環状溝61との間の領域に円周状の凹部62が作られ、センタリングピン16の外周はこの領域において局所的に減少させられる。言い換えると、この円周状の凹部62により座面14に隣接するセンタリングピン16の領域上に環状の凹みが形成される。
【0055】
以下に図13図21を用いて、本体10とカッターホルダ20との内部冷却材供給構造を形成する相互作用について説明する。
【0056】
カッターホルダ20が本体10に締結されると、カッターホルダ20の第1の主面21の領域が本体10の座面14に当接し、かつセンタリングピン16の外周面16aが貫通開口部23の内周面23aに密着して当接する。各図を合わせてみると分かるように、図15図18及び図21はそれぞれ回転軸Rを含む面の断面図で周方向の異なる点でのセクションの詳細図を示す。図15は冷却材供給チャネル60が開口せず、また冷却材分配チャネル50の入口部53が存在しない領域の部分詳細断面図である。図18は、冷却材分配チャネル50の入口部53が配置されている領域内のセクションの詳細図を示している。図21は、冷却材供給チャネル60が開口している領域の詳細断面図である。
【0057】
図15図18及び図21から分かるように、冷却材分配チャンバ70は、本体10とカッターホルダ20との間の領域に形成されている。冷却材分配チャンバ70は、座面14内の環状溝61と、センタリングピン16の円周状の凹部62と、カッターホルダ20の凹部55との相互作用によって形成される。したがってこの共通の冷却材分配チャンバ70は、回転軸R又はセンタリングピン16の周りを環状に延びている。その結果共通の冷却材分配チャンバ70は、カッターホルダ20上の凹部55によって形成されたカッターホルダ側の部分を有する。座面14に対して深くなった溝61は、共通の冷却材分配チャンバ70の第1の本体側部分を形成している。センタリングピン16の円周状の凹部62は、共通の冷却材分配チャンバ70の第2の本体側部分を形成している。
【0058】
図21に示すように、冷却材供給チャネル60は、それぞれ凹部62、溝61及び凹部55によってこの領域に形成された共通の冷却材分配チャンバ70内に開口している。図15に示すように、冷却材は次に冷却材分配チャンバ70を介して周方向に分配されることができる。それぞれの冷却材分配チャネル50の入口部53が位置する領域では、図18に示すように、冷却材は次に共通の冷却材分配チャンバ70からそれぞれの冷却材分配チャネル50に入ることができる。
【0059】
側フライスカッター100の作動中、冷却材は本体10の第1の端部11から貫通孔17を経て冷却材供給チャネル60に供給される。貫通孔17を介した第2の端部12における冷却材の軸方向の端部側の流出は、回転駆動装置上で本体のために内部に受け入れられた締結手段(図示せず)を介して防止される。冷却材供給チャネル60を介して、冷却材は共通の冷却材分配チャンバ70に供給され、後者を介してそれぞれの冷却材分配チャネル50に周方向に分配される。センタリングピン16と貫通開口部23との間の第2の端部12における冷却材の端部側の流出は、貫通開口部23の内周面23aがセンタリングピン16の対応する外周面16aに対してシールすることによって防止される。カッターホルダ20内の冷却材分配チャネル50を介して、冷却材はそれぞれの座部25の領域内に、所期の方法で送られる。
【0060】
共通の冷却材分配チャンバ70の環状構成、及びこの分配チャンバがねじ孔15及び締付ねじ30の半径方向内側に配置されるということにより、冷却材分配チャネル50の入口部53の貫通開口部23の円周上の分配は、センタリングピン16の円周上の冷却材供給チャネル60の開口部の数及び分配とは無関係である。このようにして複数のカッターホルダ20を同じ本体10上で使用することができ、これらのカッターホルダ20は例えばその外径及び/又は座部25及び冷却材分配チャネル50の数の点で互いに異なっている。
【0061】
図22及び図23は、上述の本体10に同様に使用することができるカッターホルダの変形例を示す。
【0062】
図22及び図23から分かるように、変形例によるカッターホルダ20’は、それに締結されたカッターインサート40を備えたより多数の座部25を有し、それに対応してより多数の冷却材分配チャネル50を有するという点で、上述したカッターホルダ20とは異なる。カッターホルダ20’は、その他の点では上述したカッターホルダ20と相違しないので、同一の参照符号を使用し、カッターホルダの個々の特徴についての詳細な説明は繰り返さない。
【0063】
共通の冷却材分配チャンバ70の環状構成のため、本変形例によるカッターホルダ20’はカッターインサート40に確実に冷却材が供給されるように、本体10に容易に使用することができる。
【0064】
共通の冷却材分配チャンバ70がカッターホルダ側面(凹部55)と第1の本体側面(溝61)と第2の本体側面(凹部62)との両方を有する実施例について説明してきたが、この実施例は特に満足すべき冷却材分配を行うと同時に簡単な製作を可能とするものであるが、例えばこれらのいずれか一方のみ、又はこれらのいずれか一方のみを設けることも可能である。この場合も冷却材を円周上に分配させることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】