(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】連続式ワイヤアニール装置
(51)【国際特許分類】
C22F 1/08 20060101AFI20240131BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20240131BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
C22F1/08 Y
C22F1/04 M
C22F1/00 625
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547473
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2022052361
(87)【国際公開番号】W WO2022167424
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021201104.7
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599046737
【氏名又は名称】マシーネンファブリーク・ニーホフ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ニクスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・コール
(57)【要約】
連続プロセスにてワイヤ(12)をアニール処理及び再結晶化するワイヤアニール装置(1)は、間に延在する第1のワイヤ部分の接触のための2つの接触ディスク(2,3)と、両ディスク(2,3)間に配置されたアニール区間(8)と、区間(8)にて第1のワイヤ部分を処理するためのアニール手段、特に伝導又は誘導的手段であって区間(8)にて第1のワイヤ部分で第1の再結晶化部分プロセスが行われるアニール手段を有する。第2のディスク(3)下流には再結晶化区間(11)が配置され、第1のワイヤ部分は区間(8)下流で第2のワイヤ部分として区間(11)を通過し、第2のワイヤ部分において第2の再結晶化部分プロセスが行われる。ワイヤ(12)には区間(8)を離れた後、さらなる熱供給を行わずに引き続き再結晶化の機会が与えられる。再結晶化時間の延長により再結晶化温度は減少する。このためワイヤ(12)が区間(8)を離れた直後に冷却される場合より少ないエネルギーで同等の再結晶化が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続プロセスにおいてワイヤ(12)、特に金属ワイヤをアニール処理及び再結晶化するための連続式ワイヤアニール装置(1)であって、
-少なくとも2つの接触ディスク(2、3)であって、第1の接触ディスク(2)が、前記第1の接触ディスク(2)と第2の接触ディスク(3)との間に延在する第1のワイヤ部分の、ワイヤの進行方向に見て後端に接触し、前記第2の接触ディスク(3)が、ワイヤの進行方向に見て前端に接触するように設定されている接触ディスク(2、3)と、
-前記第1の接触ディスク(2)と前記第2の接触ディスク(3)との間に配置され、前記第1のワイヤ部分がアニール区間(8)を通過するように設定されたアニール区間(8)と、
-前記アニール区間(8)において前記第1のワイヤ部分をアニール処理するためのアニール手段であって、これによって、前記アニール区間(8)において、前記第1のワイヤ部分で第1の再結晶化部分プロセスが行われるアニール手段と、を有している連続式ワイヤアニール装置において、
ワイヤの進行方向に見て、前記第2の接触ディスク(3)の下流に再結晶化区間(11)が配置されており、前記再結晶化区間は、以前に前記第1のワイヤ部分として前記アニール区間(8)を通過した第2のワイヤ部分が前記再結晶化区間(11)を通過し、前記第2のワイヤ部分において第2の再結晶化部分プロセスが行われるように設定されていることを特徴とする連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項2】
前記アニール手段が、前記第1のワイヤ部分を伝導加熱するための手段であり、前記第1の接触ディスク(2)及び前記第2の接触ディスク(3)はそれぞれ、前記第1のワイヤ部分に電流を供給する、又は、前記第1のワイヤ部分から電流を放出するように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項3】
前記アニール手段が、前記第1のワイヤ部分を誘導加熱するための手段であることを特徴とする、請求項1に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項4】
前記再結晶化区間(11)が、前記第2のワイヤ部分を保護ガス下に置くように設定されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項5】
前記アニール区間(8)と前記再結晶化区間(11)との間にワイヤ(12)のための冷却区間を有していないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項6】
前記第2の接触ディスク(3)を冷却するための冷却装置(9)を有していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項7】
前記冷却装置(9)が、前記第2の接触ディスク(3)を冷却するために、前記第2の接触ディスク(3)に冷却剤、特にエマルション又は油を噴霧するための手段を有していることを特徴とする、請求項6に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項8】
ワイヤの進行方向に見て前記再結晶化区間(11)の下流に、冷却区間(4)及び/又は冷却槽(13)が配置されており、前記冷却区間及び/又は冷却槽は、以前に第2のワイヤ部分として前記再結晶化区間(11)を通過した第3のワイヤ部分が前記冷却区間(4)及び/又は前記冷却槽(13)を通過し、前記冷却区間及び/又は前記冷却槽において冷却剤によって冷却されるように設定されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項9】
前記冷却区間(4)を有しており、前記冷却区間(4)は、第3のワイヤ部分に冷却剤、特にエマルション又は油を噴霧するための手段を有していることを特徴とする、請求項8に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項10】
前記冷却区間(4)が、前記冷却区間(4)において冷却剤の体積流量を調節するための少なくとも1つの装置を有しており、前記装置は、特に前記冷却区間(4)に冷却剤を導入するための少なくとも1つの弁を有しており、少なくとも1つの前記弁は、調整可能であり、特に比例弁として構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の連続式ワイヤアニール装置(1)での連続プロセスにおいて、ワイヤ(12)、特に金属ワイヤをアニール処理及び再結晶化するための方法において、第1のワイヤ部分がアニール区間(8)を通過し、前記アニール区間においてアニール処理され、第1のワイヤ部分において第1の再結晶化部分プロセスが行われること、及び、以前に第1のワイヤ部分として前記アニール区間(8)を通過した第2のワイヤ部分が再結晶化区間(11)を通過し、第2のワイヤ部分において第2の再結晶化部分プロセスが行われることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張出願DE102021201104.7の全内容は、参照により本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、連続プロセスでワイヤをアニール処理及び再結晶化するための連続式ワイヤアニール装置に関する。ワイヤは、特に金属ワイヤであり、好ましくは銅又はアルミニウム又は複数の金属の合金から成る。
【0003】
ワイヤを製造する際、一般的に、横断面を縮小するために、複数の段階に分けてワイヤの伸線が行われる。すなわち、通過するワイヤの直径よりもわずかに小さい直径を有する開口部を備えた伸線ダイスをそれぞれ通るように、ワイヤは誘導される。このようにして、ワイヤ材料が変形し、ワイヤの直径は、伸線ダイスの開口部の直径にまで減少する。このような伸線プロセスの場合、一度で縮小することができるワイヤの横断面はわずかなものなので、所望のワイヤ直径が得られるまで、ワイヤの直径を連続的に減少させる伸線プロセスが、複数回連続して行われる。
【0004】
しかしながら、ワイヤ材料の成形によって、伸線プロセスにおいてワイヤの直径が減少する他にも、ワイヤ材料のひずみ硬化も同時に生じる。これは、ワイヤの延性の減少と残留ひずみの減少とをもたらす。つまり、伸線後のワイヤは伸線前よりも、ひずみが生じた場合には速く断線し、又は、伸長が生じた場合には速く断裂する。
【0005】
この理由から、ワイヤは、伸線後に熱供給によって再結晶化する。すなわち、伸線によって格子構造に転位の形で格子欠陥を有するワイヤ材料の結晶格子が再生され、これによって「補修」される。
【0006】
再結晶化は、基本的に3つのパラメータ、すなわち変形度、温度及び保持時間によって決定される:
-変形度が高くなるほど、再結晶化がより効果的に行われる。
-温度が高くなるほど、再結晶化がより効果的に行われるが、材料に依存する特定の限界値を超過することはできない。
-温度の保持時間が長くなるほど、再結晶化がより効果的に行われる。
【0007】
この際、いわゆる変形度は、伸線プロセスによって結晶構造が変化する程度、特にワイヤの横断面が縮小する程度である。
【0008】
再結晶化に加えて、熱供給によって、ワイヤ材料の粒状構造の再生も行われる。この際、熱供給が長くなると、粒成長が促進される。粒が大きくなると、ワイヤの残留ひずみが改善され、ワイヤが断線するまでの延性が増大する。
【0009】
再結晶化は高温(例えば550℃)で行われ、この際にワイヤがアニール処理されるので、付属する設備は「ワイヤアニール装置」とも呼ばれる。
【0010】
再結晶化のための熱供給は、一方では「オフライン」で行うことができる。すなわち、伸線され硬化したワイヤは、定置型の熱処理装置、特に再結晶炉内で加熱され、これによって再結晶化が行われる。この際、再結晶化プロセスは、特に経時的な温度曲線によって、特にランプアップ時間、保持時間、保持温度及び冷却時間等のプロセスパラメータによって決定される。
【0011】
他方、ワイヤの再結晶化は、連続プロセスにおいて、すなわち、ワイヤが速度を減少させずに伸線機を通過する間に行うことができる。これは、技術的には実現が難しいものの、効率及び生産性を向上させることが可能である。なぜなら、再結晶化が伸線プロセスの下流において別の作業工程で行われることはないからであり、別の作業工程のためには、ワイヤを機械から取り出してリールに巻き、場合によってはさらなる処理工程のために伸線機に巻き戻す必要があるからである。
【0012】
連続プロセスでは、ワイヤの送り速度が毎秒50メートルにまでなるので、再結晶化は一秒の何分の一かのうちに行われなければならない。
【0013】
再結晶化の後、ワイヤを再び冷却する必要があるが、これも同様に連続プロセスで行われ、連続ワイヤアニール装置という1つの設備に統合されている。これもまた、一秒の何分の一かのうちに行われる。
【0014】
冷却は通常、再結晶化の直後に、ワイヤを冷却剤、特にエマルション又は油に浸漬することによって行われる。ワイヤを冷却剤に直接浸漬することによって、表面の変色も防止される。
【0015】
当該方法の欠点は、ワイヤに導入された熱エネルギーが、再結晶化の直後にワイヤを冷却液に浸漬することによって、再びワイヤから取り出されることにある。これによって、温度の保持時間が短くなるが、これは、より高い熱入力によって補償されなければならない。これによって、連続式ワイヤアニール装置のエネルギー消費が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、連続式ワイヤアニール装置のエネルギー消費を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本課題は、請求項1に記載の連続式ワイヤアニール装置によって、又は、請求項11に記載のワイヤのアニール処理及び再結晶化のための方法によって解決される。本発明のさらなる有利な構成は、従属請求項に含まれている。
【0018】
本発明は、連続プロセスにおいてワイヤ、特に金属ワイヤをアニール処理及び再結晶化するための連続式ワイヤアニール装置に基づいており、当該装置は、
-少なくとも2つの接触ディスクであって、第1の接触ディスクが、第1の接触ディスクと第2の接触ディスクとの間に延在する第1のワイヤ部分の、ワイヤの進行方向に見て後端に接触し、第2の接触ディスクが、ワイヤの進行方向に見て前端に接触するように設定されている接触ディスクと、
-第1の接触ディスクと第2の接触ディスクとの間に配置され、第1のワイヤ部分がアニール区間を通過するように設定されたアニール区間と、
-アニール区間において第1のワイヤ部分をアニール処理するためのアニール手段であって、これによって、アニール区間において、第1のワイヤ部分で第1の再結晶化部分プロセスが行われるアニール手段と、を有している。
【0019】
この際、第1及び/又は第2の接触ディスクは、好ましくは、ワイヤのためのそれぞれ回転可能に取り付けられたプーリとして構成されている。好ましくは、このようなプーリは、その外周にワイヤのための凹型軌道を有しており、当該軌道内でワイヤは、プーリの周りを、部分的に回転、又は、1回転以上完全に回転している。
【0020】
本発明は、アニール区間を離れた後のワイヤをすぐには冷却せず、さらなる熱供給を行わずに引き続き再結晶化する機会を与えることによって、再結晶化の作用時間(「オフラインプロセス」における上述の保持時間に相当)を延長するという考えに基づいている。この際、場合によっては、冷却区間が、ワイヤの進行方向においてさらに後方に移される。
【0021】
したがって、本発明によると、ワイヤの進行方向に見て、第2の接触ディスクの下流に再結晶化区間が配置されており、当該再結晶化区間は、以前に第1のワイヤ部分としてアニール区間を通過した第2のワイヤ部分が再結晶化区間を通過し、第2のワイヤ部分において第2の再結晶化部分プロセスが行われるように設定されている。
【0022】
この際、「第1の再結晶化部分プロセス」及び「第2の再結晶化部分プロセス」という概念は、再結晶化が第1の再結晶化部分プロセスの後に停止し、第2の再結晶化部分プロセスが新しく開始すると理解されるべきではない。むしろ、物理的な観点からは、第1及び第2の再結晶化部分プロセスは共に、連続的で中断のない再結晶化プロセスを形成しており、当該再結晶化プロセスは、単に概念的に2つの部分プロセスに分割されているに過ぎない。言い換えれば、再結晶化プロセス全体は、第1の再結晶化部分プロセスによって開始され、第2の再結晶化部分プロセスによって延長される。
【0023】
本発明に係る方法によって、特に、再結晶化が行われる区間全体が延長され、したがって再結晶化の時間も延長される。同時に、場合によって、後続の冷却区間は、ワイヤの進行方向においてさらに後方に移される。
【0024】
再結晶化時間の延長によって、同じ残留ひずみを得る場合に再結晶化温度を下げることが可能であり、これによって、エネルギーの直接的な節約がもたらされる。
【0025】
第2の再結晶化部分プロセスは、さらなる熱供給をせずに行われるので、同じ程度の再結晶化が、全体として明らかに減少したエネルギー供給で得られる。現実的には、本出願人の認識によると、20%までの大きさの省エネルギーが期待できる。
【0026】
逆に、エネルギー投入量を減少させないことも可能である。本発明によると、再結晶化区間が延長され、したがって再結晶化時間が長くなるので、このようにワイヤの残留ひずみが改善される。この場合、本発明に係る方法では、炉内でのひずみ値と略同じ程度のひずみ値が得られる。
【0027】
本発明を適用する際、連続式ワイヤアニール装置のオペレータは、エネルギーを節約するか、又は、ワイヤの残留ひずみを改善させるかを選択することができる。
【0028】
本発明の好ましい態様では、アニール手段は、第1のワイヤ部分を伝導加熱するための手段であり、第1の接触ディスク及び第2の接触ディスクはそれぞれ、第1のワイヤ部分に電流を供給する、又は、第1のワイヤ部分から電流を放出するように設定されている。
【0029】
第1のワイヤ部分の伝導加熱によって、高効率が生じる。なぜなら、第1のワイヤ部分の電気(オーム)抵抗の結果、電気エネルギーが熱エネルギーに直接変換されるからである。
【0030】
直近に記載した態様に対して代替的な、本発明に係る別の好ましい態様では、アニール手段は、第1のワイヤ部分を誘導加熱する手段である。
【0031】
この際、第1のワイヤ部分は、両端が導電的に接続され、短絡されたループ又はコイルの形で配置される。このワイヤループ又はコイルは、誘導エネルギー伝達のための二次コイルとして機能し、交流電流が流れる一次コイルの近傍に配置されているので、電磁誘導によってワイヤループ又はコイルにおいて交流電圧が誘導され、これによって渦電流が発生し、過電流は、その電気(オーム)抵抗を通じて、第1のワイヤ部分を加熱する。
【0032】
このように、第1のワイヤ部分の加熱は非接触で行われ、したがって摩耗も生じないが、エネルギー伝達の効率は、ワイヤの伝導加熱よりも低い。
【0033】
本発明の別の好ましい態様では、再結晶化区間は、第2のワイヤ部分を保護ガス下に置くように設定されている。
【0034】
保護ガスとして好ましいのは、水蒸気、窒素、水素、又は窒素と水素との混合気である。保護ガスは、大気中の酸素を置換するゆえに、ワイヤ表面の酸化、したがってその変色を防止する。
【0035】
本発明の別の好ましい態様では、連続式ワイヤアニール装置は、アニール区間と再結晶化区間との間にワイヤの冷却装置を有していない。
【0036】
アニール区間と再結晶化区間との間に冷却装置を有さないことによって、エネルギーをさらに節約することができる。なぜなら、アニール区間を離れる際に第1のワイヤ部分に存在する略全ての残留熱を、再結晶化区間において第2の再結晶化部分プロセスに用いることができるからである。
【0037】
直近に記載した実施形態に対して代替的な、本発明に係る別の好ましい態様では、連続式ワイヤアニール装置は、第2の接触ディスクを冷却するための冷却装置を有している。
【0038】
第2の接触ディスクの冷却装置が必要な場合がある。第2の接触ディスクには、アニール区間から流出する第1のワイヤ部分の熱が連続的に導入され、第2の接触ディスクはこれによって強く加熱されるからである。アニール区間における第1のワイヤ部分の温度が比較的高い(例えば550℃)ことを考慮すると、このような冷却装置が設けられていない場合、第2の接触ディスクの熱的過負荷がもたらされる可能性がある。
【0039】
直近に記載した本発明に係る態様の変型例では、第2の接触ディスクを冷却するための冷却装置は、第2の接触ディスクに冷却剤、特にやはりエマルション又は油を噴霧するための手段を有している。
【0040】
既知の冷却装置では、例えば第2の接触ディスクは、第2の接触ディスクに接触するワイヤ部分と共に、冷却剤を満たした冷却槽に完全に浸漬され、これによって、第2の接触ディスクだけでなく、当該ワイヤ部分も強く冷却される。
【0041】
これに対して、冷却剤の噴霧によって第2の接触ディスクを冷却する場合、第2の接触ディスクは効果的に冷却されるが、第2の接触ディスクに接触するワイヤ部分は、わずかに冷却されるのみである。さらに、この方法では、冷却剤を問題なく供給及び排出できる。時間単位当たりに供給される冷却剤の量を容易に制御し、放出される熱量に適応させることも可能である。
【0042】
冷却剤のジェット噴霧を第2の接触ディスク、特にその外周の接触ストリップの部分で、ワイヤが巻かれていない部分に向けることによって、第2の接触ディスクの外周に巻き付いているワイヤ部分が強く冷却されることを回避することができる。
【0043】
本発明の別の好ましい態様では、ワイヤの進行方向に見て再結晶化部分の下流に、冷却区間及び/又は冷却槽が配置されており、当該冷却区間及び/又は冷却槽は、以前に第2のワイヤ部分として再結晶化区間を通過した第3のワイヤ部分が冷却区間及び/又は冷却槽を通過し、冷却区間及び/又は冷却槽において冷却剤によって冷却されるように設定されている。
【0044】
このような冷却区間又は冷却槽は、ワイヤが再結晶化区間を離れた後、さらなる処理、特にリールに巻き付けるためには依然として温かすぎる場合に必要であり得る。好ましくは、冷却区間は、冷却剤で満たされたハウジングとして形成されており、第3のワイヤ部分は、冷却槽に浸漬され、冷却槽内を通過する。これに対して、好ましくは、冷却槽内の第3のワイヤ部分は、上述した第2の接触ディスクのための冷却装置と同様に、冷却剤によって噴霧されるのみである。
【0045】
直近に記載した本発明に係る態様の変型例では、連続式ワイヤアニール装置は冷却区間を有しており、冷却区間は、第3のワイヤ部分に冷却剤、特にやはりエマルション又は油を噴霧するための手段を有している。
【0046】
この際、特に好ましくは、冷却区間は、冷却区間において冷却剤の体積流量を調節するための少なくとも1つの装置を有している。特に、当該装置は、冷却区間に冷却剤を導入するための少なくとも1つの弁を有しており、少なくとも1つの弁は、調整可能であり、特に比例弁として構成されている。
【0047】
比例弁の使用によって、時間単位当たりに弁を通じて冷却区間に導入される冷却剤の量を正確に調整することが可能になる。このようにして、冷却区間における冷却作用を、放出されるべき熱量に適合させることができる。この熱量は、特に第3のワイヤ部分におけるワイヤ材料の体積に依存し、したがって第3のワイヤセクションにおけるワイヤの直径に依存する。
【0048】
比例弁の代わりに、体積流量を調節するための装置は、例えば、ハンドレバー弁を有することも可能である。より大きい体積流量を用いて冷却作用を改善するために、周波数制御されたポンプを用いることも考えられる。
【0049】
本発明に係る連続式ワイヤアニール装置での連続プロセスにおいて、ワイヤ、特に金属ワイヤをアニール処理及び再結晶化するための本発明に係る方法では、第1のワイヤ部分がアニール区間を通過し、アニール区間においてアニール処理され、第1のワイヤ部分において第1の再結晶化部分プロセスが行われる。さらに、以前に第1のワイヤ部分としてアニール区間を通過した第2のワイヤ部分が再結晶化区間を通過し、第2のワイヤ部分において第2の再結晶化部分プロセスが行われる。
【0050】
本発明のさらなる利点、特徴及び適用可能性は、図に関連した以下の説明から明らかにある。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】再結晶化区間を有さない、先行技術に係る連続式ワイヤアニール装置を示す図である。
【
図2】再結晶化区間を有する、本発明に係る連続式ワイヤアニール装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、先行技術に係る連続式ワイヤアニール装置1を示しており、連続式ワイヤアニール装置1は、アニール区間8と冷却区間4とを有するが、再結晶化区間は有していない。
【0053】
伸線機(図示せず)で特定の直径まで伸線され、硬化されたワイヤ12は、硬化を概ね停止させ、したがって特に残留ひずみ、すなわちワイヤが断裂する前の最大延性を増大させるために、連続式ワイヤアニール装置1内で加熱され、これによって再結晶化する。
【0054】
ワイヤ12は、連続式ワイヤアニール装置1の左端から連続式ワイヤアニール装置1に挿入され、最初にプーリ10の周りを通過する。
図1及び
図2に係る連続式ワイヤアニール装置1の全ての接触ディスクは、同様にプーリとして構成されている。さらに、ワイヤ12は、複数のさらなるプーリを通過する。ワイヤ12が連続式ワイヤアニール装置1を通過する速度は、例えば30m/sである。
【0055】
その後、ワイヤ12は、第1の接触ディスク2に到達し、第1の接触ディスク2の周りを通過してアニール区間8に流れ込み、アニール区間8で加熱される。アニール区間8は、(ワイヤ12の入口及び出口を除いて)閉じたハウジングとして構成されており、これによって、加熱されたワイヤから周囲に漏れ得る熱エネルギーを可能な限り少なくなる。
図1に係る連続式ワイヤアニール装置1におけるアニール区間8の長さは、例えば、2000mmである。ワイヤ12のうち、アニール区間8を通過する部分は、第1のワイヤ部分と呼ばれる。アニール区間8におけるワイヤの進行方向は、アニール区間8の上方に矢印で示されている。
【0056】
第1のワイヤ部分の加熱は、第1の接触ディスク2及び第2の接触ディスク3に電圧、好ましくは直流電圧、特に好ましくは交流電圧を印加し、その結果、直流電流又は交流電流が第1のワイヤ部分を流れ、直流電流又は交流電流が、そのオーム抵抗に基づいて第1のワイヤ部分を加熱することによって行われる。この場合、ワイヤ12は、冷却槽9の入口冷却ノズル7に入る際に、例えば550℃の温度に達している。
【0057】
アニール区間8では、第1のワイヤ部分の加熱によって、第1のワイヤ部分内で第1の再結晶化部分プロセスが行われ、これによって、先行する伸線プロセスで生じた第1のワイヤ部分における硬化が略停止する。
【0058】
ワイヤ12は、冷却槽9の入口でアニール区間8を離れ、入口冷却ノズル7に進入する。冷却槽9の入口冷却ノズル7では、ワイヤ12に冷却剤、好ましくはエマルション又は油が噴霧又は噴射され、これによって、すでに当該位置において、熱エネルギーの一部がワイヤ12から放出される。次に、ワイヤ12は、冷却槽9内で、第2の接触ディスク3の周りに巡らされる。冷却槽9は、さらなる冷却剤で満たされるので、第2の接触ローラ3及び第2の接触ローラ3を囲むワイヤ12の部分が、完全に冷却剤に浸漬される。冷却槽9内の冷却剤は、当該ワイヤ部分から熱を放出させる。加熱された冷却剤は、連続的又は一定の時間的間隔を置いて排出され、低温の冷却剤と交換される。最後に、ワイヤ12は、出口冷却ノズル6を通って再び冷却槽9を離れ、出口冷却ノズル6内でワイヤ12は、再び冷却剤を噴霧又は噴射される。
【0059】
その後、ワイヤ12は、さらに冷却区間4を通過する。冷却区間4も、(ワイヤ12の入口及び出口を除いて)閉じられたハウジングを有しており、当該ハウジングにはさらなる冷却剤が流入し、当該ハウジング内でワイヤ12が完全に浸漬される。冷却区間4におけるワイヤの進行方向は、冷却区間4の上に矢印で示されている。
【0060】
冷却ノズル6及び7を有する冷却槽9並びに冷却区間4によって、ワイヤ12は、さらなる処理、特にリールに巻き付けることが可能である温度まで冷却される。しかし、この際、巻き付けの際に必要な最終温度(約50℃)を確保するために、ワイヤ12からは可能な限り少ない熱エネルギーのみが取り出される。
【0061】
最後に、冷却剤によって依然として湿らされているワイヤ12は、乾燥区間5を通過し、乾燥区間5において、好ましくは乾燥区間5に吹き込まれる空気によって乾燥される。
【0062】
その後、ワイヤ12は、連続式ワイヤアニール装置1の右端の複数のさらなるプーリを通じて、連続式ワイヤアニール装置1の外に誘導され、連続式ワイヤアニール装置1の外でさらに処理され、特にリール(図示せず)に巻き付けられる。
【0063】
図2は、再結晶化区間11を有する本発明に係る連続式ワイヤアニール装置1を示している。
【0064】
図2に示された本発明に係る連続式ワイヤアニール装置1は、
図1に示された先行技術に係る連続式ワイヤアニール装置1に基づいており、先行技術に係る連続式ワイヤアニール装置1に対していくつかの変更が加えられている。したがって、2つの連続式ワイヤアニール装置1の互いに対応する要素については、再度説明しない。
【0065】
図1と同様に、ワイヤ12はアニール区間8に誘導され、アニール区間8において加熱され、これによって第1のワイヤ部分において第1の再結晶化部分プロセスが行われ、その後同様に冷却槽9に進入する。
【0066】
冷却槽9の入口に入口冷却ノズルが存在する場合は、入口冷却ノズルを使用しないことが好ましい。冷却槽9の出口に出口冷却ノズルが存在する場合も同様である。冷却槽9の内部では、ワイヤ12は再び第2の接触ディスク3(
図2には示されていない)の周りに巡らされる。
【0067】
冷却槽9では、ワイヤ12は、わずかに冷却されるか、又は、全く冷却されない。好ましくは、第2の接触ディスク3のみにさらなる冷却剤が噴霧されて冷却が行われ、ワイヤ12は概ね冷却されないままである。好ましくは、冷却槽9にも冷却剤を満たすことができるが、冷却槽9は、好ましくはわずかに循環し交換されるか、又は、全く循環せず交換されないので、冷却剤によって放出される熱エネルギーはわずかである。冷却槽9に存在しなければならない冷却剤の量、すなわち冷却槽9の充填レベルは、実験によって決定することが可能であり、環境に応じて異なる場合がある。
【0068】
ワイヤ12は、次に再結晶化区間11を通過するが、再結晶化区間11は、
図1の対応する位置に配置された冷却区間4と同様に、大部分が閉じられたハウジングを有している。しかしながら、再結晶化区間11では、ワイヤ12は冷却されない。したがって、ワイヤ12は、冷却槽9を離れた後でも、再結晶化区間11において第2の再結晶化部分プロセスが実施可能である程度の温度を有している。
【0069】
このようにして、アニール区間(ワイヤ12で再結晶化が行われる区間という意味)は、いわば延長され、例えば2倍にさえなるが、エネルギー投入は、本来のアニール区間8の第1の部分のみで行われる。
【0070】
したがって、達成される再結晶化の程度が同じである場合に、アニール区間8への熱エネルギー投入を減少させることが可能であり、結果として、上述のように最大20%の省エネルギーを実現することができる。
【0071】
再結晶化区間11のハウジング内には、ワイヤ12の表面の酸化と、それに伴う変色とを防止するために、好ましくは窒素又は水蒸気から成る保護ガス雰囲気が存在する。
【0072】
最後に、ワイヤ12の温度をさらなる処理に適した温度まで低下させるために、ワイヤ12は、冷却区間4及び冷却槽13をさらに通過する。
図2に係る実施例では、冷却区間4及び冷却槽13は、スペースの理由から、少なくとも部分的に、付加的なハウジング15内に配置されており、ハウジング15は、連続式ワイヤアニール装置1のハウジング14に対してフランジ状に取り付けられている。しかしながら、冷却区間4及び冷却槽13は、連続式ワイヤアニール装置1のハウジング14と一体的に構成されていてもよい。冷却区間4のみ、又は、冷却槽13のみを設けることも可能である。
【0073】
冷却区間4において、ワイヤ12は、
図1の連続式ワイヤアニール装置1におけるのと同じように、冷却剤に浸漬される。冷却剤の体積流量は、冷却区間4において調節することが可能であり、これによって、ワイヤ12に対する冷却作用も、ワイヤ12の直径及び送り速度に依存して調節され得る。これは、好ましくは、少なくとも1つの比例弁(図示せず)を通じて行われる。
【0074】
冷却槽13内では、ワイヤ12も同様に冷却剤に浸漬されるか、又は、単に冷却剤を噴霧される。
【符号の説明】
【0075】
1 連続式ワイヤアニール装置
2 第1の接触ディスク
3 第2の接触ディスク
4 冷却区間
5 乾燥区間
6 出口冷却ノズル
7 入口冷却ノズル
8 アニール区間
9 冷却槽
10 プーリ
11 再結晶化区間
12 ワイヤ
13 冷却槽
14 連続式ワイヤアニール装置のハウジング
15 冷却区間及び冷却槽のハウジング
【国際調査報告】