(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】超音波感受性リポソームを有効成分として含む血液脳関門透過用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/24 20060101AFI20240131BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240131BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240131BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240131BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240131BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240131BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240131BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240131BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240131BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20240131BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20240131BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A61K47/24
A61K9/127
A61K47/28
A61K47/26
A61P25/00
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/08
A61P9/10
A61K47/04
A61K45/00
A61K41/00
A61K31/475
A61K31/704
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547581
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 KR2022001847
(87)【国際公開番号】W WO2022169329
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0017524
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0015104
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516270991
【氏名又は名称】アイエムジーティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ヒョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンソク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ウン ア
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン リョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD08
4C076DD24
4C076DD31
4C076DD43
4C076DD46
4C076DD63
4C076DD70
4C084AA11
4C084AA17
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4C084ZA061
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4C084ZA152
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4C086AA01
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4C086MA02
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4C086MA65
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4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、血液脳関門透過用超音波感受性リポソームに関し、前記超音波感受性リポソームは、薬物の封入効率および超音波による薬物放出効果に優れているだけでなく、超音波刺激時に血液脳関門を効果的に透過することができる。特に、本発明による超音波感受性リポソームは、体内で長時間循環が可能で、血液脳関門透過効率にさらに優れており、脳腫瘍細胞に対する親和力が高く、腫瘍部位への伝達効果に優れる。したがって、本発明による超音波感受性リポソームは、脳疾患治療剤などを脳に伝達するための薬物伝達体として活用することができる。特に、本発明者らは、前記超音波感受性リポソームの薬物伝達効果をさらに向上させるために、血液脳関門を安定して開放できる最適な空洞現象(cavitation)の条件を発掘したところ、本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームと前記空洞現象の条件を結びつける場合、様々な脳疾患において優れた治療効果を得ることが期待される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門(blood-brain barrier)透過用組成物。
【請求項2】
前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCが、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項3】
前記DSPCが、全リポソームに対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEが、全リポソームに対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールが、全リポソームに対して0.05~40乾燥重量%、および
前記lyso-PCが、全リポソームに対して0.5~10乾燥重量%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項4】
前記超音波感受性リポソームが、スフィンゴリピド(sphingolipid)およびポリソルベート(polysorbate)からなる群から選ばれた1つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項5】
DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用組成物。
【請求項6】
前記DOPEが、全リポソームに対して5~80のモル比(%)で含まれ、
前記スフィンゴリピドが、全リポソームに対して5~80のモル比(%)で含まれることを特徴とする、請求項5に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項7】
前記超音波感受性リポソームが、DSPE-mPEG2000をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項8】
前記DSPE-mPEG2000が、全リポソームに対して1~20モル比(%)で含まれることを特徴とする、請求項7に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項9】
前記超音波感受性リポソームが、下記からなる群から選ばれた1つ以上の特徴を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物:
(a)100~200nmの粒度;および
(b)添加される全薬物に対して前記リポソームに担持される薬物の割合が50~100%である。
【請求項10】
前記超音波感受性リポソームが、超音波に露出したとき、血液脳関門を通過することを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項11】
前記組成物が、薬物を脳内に伝達するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項12】
前記薬物が、脳疾患治療剤であることを特徴とする、請求項11に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項13】
前記脳疾患が、脳腫瘍、細菌またはウイルスによる脳感染、パーキンソン病、脳炎、脳卒中、中風、アルツハイマー病、ルーゲリック病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、てんかん、血栓症、塞栓症、脳梗塞、中風、小梗塞、および脳循環代謝障害からなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項14】
前記脳疾患治療剤が、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、ビンデシン、ビノレルビン、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、テセタキセル、イクサベピロン、ロムスチン、プロカルバジン、リツキシマブ、トシリズマブ、テモゾロミド、カルボプラチン、エルロチニブ、イリノテカン、エンザスタウリン、ボリノスタット、ドキソルビシン、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ロイプロリド、プルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、バルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、マイトマイシン、プレドニゾン、アフィニトール、ミトキサントロン、レボドパ、カルビドパ、エンタカポン、トルカポン、ドーパミンアゴニスト、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、抗コリン剤、およびアマンタジンからなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項12に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項15】
前記超音波感受性リポソームが、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、または、TEA-SOSで水和されたことを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項16】
前記組成物が、超音波処理と順次にまたは同時に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項17】
前記超音波が、下記からなる群から選ばれた1つ以上の特徴を満たすことを特徴とする、請求項16に記載の血液脳関門透過用組成物:
(a)超音波の周波数は20kHz~3MHzである;および
(b)デューティサイクルは0.5~20%である。
【請求項18】
前記超音波処理が、マイクロバブルの投与と順次にまたは同時に行われることを特徴とする、請求項16に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項19】
DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用薬物伝達体。
【請求項20】
下記段階を含む、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物の製造方法:
(S1)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCからなる群から選ばれた1つ以上を第1有機溶媒に溶解する段階;
(S2)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム薄膜を製造する段階;および
(S3)前記リポソーム薄膜を水溶液で水和させる段階。
【請求項21】
前記第1有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール、およびエーテルからなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記段階(S1)の第1有機溶媒が、ポリソルベートが添加されたことを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項23】
薬物が担持された超音波感受性リポソームの有効量をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、脳に薬物を伝達する方法であって、前記超音波感受性リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCを含むことを特徴とする、方法。
【請求項24】
脳を標的とする薬物伝達体を製造するための、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCを含む超音波感受性リポソームの用途。
【請求項25】
DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCを含む超音波感受性リポソームの脳への薬物伝達用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波感受性リポソームを含む血液脳関門透過用組成物などに関する。
【0002】
本出願は、2021年2月8日に出願された韓国特許出願第10-2021-0017524号および2022年2月4日に出願された韓国特許出願第10-2022-0015104号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
現在、脳腫瘍、細菌あるいはウイルスなどによる脳感染、および神経系疾患などの発病頻度が増加するに伴い、脳に正確に薬物を伝達できる技術に対する需要が増加している。特に脳腫瘍を治療するために現在最も多く実施される治療法は、頭蓋骨を切開して腫瘍部位を切除する手術的治療である。
【0004】
しかしながら、頭蓋骨の切開は、患者に負担を与えるだけでなく、手術時に神経細胞の損傷に対する副作用の恐れがある。しかしながら、それにもかかわらず、手術的治療が用いられることは、脳を標的化する薬物を使用しても、脳を保護する血液脳関門(Blood-Brain Barriers,BBB)により薬物伝達が阻害されるためである。したがって、脳腫瘍のような脳疾患の治療のために使用される抗癌治療剤は、優先的に血液脳関門の透過が可能な製剤に制限され、これも、正確に疾患部位への伝達効果を奏することが難しいので、完全な治療効果を達成しにくい。したがって、脳組織に薬物を正確に伝達する技術の開発が急務である。
【0005】
最近、超音波を用いて脳に薬物を伝達する技術に対する研究が全世界的に行われている。超音波および超音波造影剤のマイクロバブル(microbubbles)により発生する空洞現象(cavitation)は、血液脳関門を一時的に開放することができ、薬物伝達手段として脳疾患の治療に適用されている。このために、マイクロバブルを注入した後、超音波を3次元的に集束させることによって、脳腫瘍部位に正確に超音波を放出させると、血液脳関門の近くに位置するマイクロバブルが局所的に血液脳関門を開放し、これによって、薬物が脳組織に伝達され、脳疾患治療機序を誘発する。しかしながら、現在使用される抗がん剤は、小分子(small molecule)の化学治療剤であり、体内注入時に体外への排出が速く、正常組織への吸収が速いため、脳への伝達効果が劣る限界を示す。
【0006】
したがって、血液脳関門透過効率が高く、長時間血液循環が可能な薬物伝達体を開発し、超音波およびマイクロバブルと共に適用する場合、薬物をさらに効果的に脳に伝達することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点を解決するために鋭意研究した結果、本発明者らは、血液脳関門を効果的に通過できるだけでなく、体内で長時間循環が可能で、血液脳関門透過効率がさらに向上し、脳腫瘍細胞に対する高い親和力を有し、腫瘍部位への薬物伝達効果が最大化された超音波感受性リポソーム(IMP302)を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、前記超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記超音波感受性リポソームを含む、血液脳関門透過用薬物伝達体を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記超音波感受性リポソームを含む、脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記血液脳関門透過用超音波感受性リポソームを製造する方法を提供することにある。
【0012】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門(blood-brain barrier)透過用組成物を提供する。前記組成物は、薬学的組成物を含む。
【0014】
本発明の一具現例において、前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに限らない。
【0015】
本発明の他の具現例において、前記DSPCは、全リポソームに対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEは、全リポソームに対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールは、全リポソームに対して0.05~40乾燥重量%、および
前記lyso-PCは、全リポソームに対して0.5~10乾燥重量%で含まれ得るが、これに限らない。
【0016】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波感受性リポソームは、スフィンゴリピド(sphingolipid)およびポリソルベート(polysorbate)からなる群から選ばれた1つ以上をさらに含んでもよいが、これに限らない。
【0017】
また、本発明は、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の具現例において、前記DOPEは、全リポソームに対して5~80のモル比(%)で含まれ、前記スフィンゴリピドは、全リポソームに対して5~80のモル比(%)で含まれ得るが、これに限らない。
【0019】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波感受性リポソームは、DSPE-mPEG2000をさらに含んでもよいが、これに限らない。
【0020】
本発明のさらに他の具現例において、前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して1~20モル比(%)で含まれ得るが、これに限らない。
【0021】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波感受性リポソームは、下記からなる群から選ばれた1つ以上の特徴を満たすことができるが、これに限らない:
(a)100~200nmの粒度;および
(b)添加される全薬物に対して前記リポソームに担持される薬物の割合は50~100%である。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波感受性リポソームは、超音波に露出したとき、血液脳関門を通過できるが、これに限らない。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、薬物を脳内に伝達するためのものであってもよいが、これに限らない。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬物は、脳疾患治療剤であってもよいが、これに限らない。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記脳疾患は、脳腫瘍、細菌またはウイルスによる脳感染、パーキンソン病、脳炎、脳卒中、中風、アルツハイマー病、ルーゲリック病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、てんかん、血栓症、塞栓症、脳梗塞、中風、小梗塞、および脳循環代謝障害からなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記脳疾患治療剤は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、ビンデシン、ビノレルビン、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、テセタキセル、イクサベピロン、ロムスチン、プロカルバジン、リツキシマブ、トシリズマブ、テモゾロミド、カルボプラチン、エルロチニブ、イリノテカン、エンザスタウリン、ボリノスタット、ドキソルビシン、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ロイプロリド、プルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、バルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、マイトマイシン、プレドニゾン、アフィニトール、ミトキサントロン、レボドパ、カルビドパ、エンタカポン、トルカポン、ドーパミンアゴニスト、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、抗コリン剤、およびアマンタジンからなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波感受性リポソームは、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、またはTEA-SOSで水和されたものであってもよいが、これに限らない。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、超音波処理と順次にまたは同時に投与することができるが、これに限らない。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波は、下記からなる群から選ばれた1つ以上の特徴を満たすことができるが、これに限らない:
(a)超音波の周波数は20kHz~3MHzである;および
(b)デューティサイクルは0.5~20%である。
【0030】
本発明のさらに他の具現例において、前記超音波処理は、マイクロバブルの投与と順次にまたは同時に行われ得るが、これに限らない。
【0031】
また、本発明は、DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用薬物伝達体を提供する。
【0032】
また、本発明は、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用薬物伝達体を提供する。
【0033】
また、本発明は、下記段階を含む、前記血液脳関門透過用組成物の製造方法を提供する:
(S1)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCからなる群から選ばれた1つ以上を第1有機溶媒に溶解する段階;
(S2)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム薄膜を製造する段階;および
(S3)前記リポソーム薄膜を水溶液で水和させる段階。
【0034】
本発明の一具現例において、前記第1有機溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール、およびエーテルからなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0035】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(S1)の第1有機溶媒は、ポリソルベートが添加されたものであってもよいが、これに限らない。
【0036】
また、本発明は、前記超音波感受性リポソームを有効成分として含む脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。好ましくは、前記超音波感受性リポソームは、薬物が担持されたものである。
【0037】
また、本発明は、前記超音波感受性リポソームの有効量をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、脳疾患の予防または治療方法を提供する。好ましくは、前記方法は、超音波を処理する段階および/またはマイクロバブルを投与する段階をさらに含んでもよい。
【0038】
また、本発明は、前記超音波感受性リポソームの脳疾患の予防または治療用途を提供する。
【0039】
また、本発明は、脳疾患治療用薬剤製造のための前記組成物の用途を提供する。
【0040】
また、本発明は、薬物が担持された前記超音波感受性リポソームの有効量をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、脳に薬物を伝達する方法を提供する。好ましくは、前記方法は、超音波を処理する段階および/またはマイクロバブルを投与する段階をさらに含んでもよい。
【0041】
また、本発明は、前記超音波感受性リポソームの脳への薬物伝達用途を提供する。
【0042】
また、本発明は、脳を標的とする薬物伝達体を製造するための前記超音波感受性リポソームの用途を提供する。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、血液脳関門透過用超音波感受性リポソームに関し、前記超音波感受性リポソームは、薬物の封入効率および超音波による薬物放出効果に優れているだけでなく、超音波刺激時に血液脳関門を効果的に透過することができる。特に、本発明による超音波感受性リポソームは、体内で長時間循環が可能で、血液脳関門透過効率にさらに優れており、脳腫瘍細胞に対する親和力が高く、腫瘍部位への伝達効果に優れる。したがって、本発明による超音波感受性リポソームは、脳疾患治療剤などを脳に伝達するための薬物伝達体として活用することができる。特に、本発明者らは、前記超音波感受性リポソームの薬物伝達効果をさらに向上させるために、血液脳関門を安定して開放できる最適な空洞現象(cavitation)の条件を発掘したところ、本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームと前記空洞現象の条件を結びつける場合、様々な脳疾患において優れた治療効果を得ることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソーム、Doxilリポソーム、およびMarquiboリポソームの脳腫瘍細胞に対する浸透度をFACSで定量分析した結果を示す。
【
図2a】本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームおよびDoxilリポソームの脳腫瘍細胞浸透効果を共焦点蛍光顕微鏡で観察した結果を示す(赤色:リポソーム、青色:核、倍率:10X)。
【
図2b】本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームおよびDoxilリポソームの脳腫瘍細胞浸透効果を共焦点蛍光顕微鏡で観察したさらに他の結果を示す(赤色:リポソーム、青色:核、倍率:10X)。
【
図3】脳腫瘍細胞に対する本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソーム、Doxilリポソーム、およびフリードックス(freeDOX)の超音波処理の有無によるがん細胞死滅効果をMTT分析で確認した結果を示す。
【
図4a】マイクロバブル数によるEvans-blue(EB)染料の血液脳関門透過による脳組織内浸透イメージ、および浸透効率の定量分析結果を示す。
【
図4b】マイクロバブル数による脳組織の安定性を確認するためのH&E染色結果を示す。
【
図5a】超音波条件によるEvans-blue染料の血液脳関門透過による脳組織内浸透イメージを示す。
【
図5b】超音波条件によるEvans-blue染料の血液脳関門透過による浸透効率の定量分析結果を示す。
【
図5c】超音波条件による脳組織の安定性を確認するためのH&E染色結果を示す。
【
図6】本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソーム、およびMarquiboリポソームのマウスの血液脳関門透過による脳組織伝達効果および主要臓器別分布様式を確認した結果を示す。
【
図7】スフィンゴミエリンが添加されていないリポソーム(IMP302-004)およびスフィンゴミエリンが含まれたリポソーム(IMP302-005)の超音波条件別主要臓器別分布様式を確認した結果を示す。
【
図8】本発明による超音波感受性リポソーム(IMP302-004)およびDoxilリポソームの血液脳関門透過効果を比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、血液脳関門透過用組成物などに関し、薬物の封入効率および超音波による薬物放出効果に優れているだけでなく、超音波刺激時に血液脳関門を効果的に透過できる超音波感受性リポソームを開発して完成されたものである。
【0046】
具体的には、本発明の一実施例では、前記リポソームの水和溶液の種類(硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、およびTEA-SOS)に応じたリポソームの物性を比較した結果、3種のリポソームの全てが約200nmの粒度を示し、優れた薬物封入率を有し、特に硫酸アンモニウムまたはクエン酸アンモニウムを水和溶液として用いて60℃で2時間薬物を積載することが、リポソームの薬物封入に最も最適化した条件であることを確認した(実施例1)。
【0047】
本発明の他の実施例では、リポソームを構成する脂質の種類に応じたリポソームの物性および特性を比較した結果、(i)DOPE;および(ii)DSPC、DSPE-mPEG2000、コレステロール、lyso-PC、およびスフィンゴミエリンからなる群から選ばれた1つ以上で製造されたリポソームが、薬物の封入率および超音波感受性の点から最も優れていることを確認した(実施例2)。
【0048】
本発明のさらに他の実施例では、本発明による超音波感受性リポソームを脳腫瘍細胞株と共に培養した結果、前記超音波感受性リポソームが脳腫瘍細胞の内部に効果的に浸透することができることを確認した(実施例3および4)。
【0049】
本発明のさらに他の実施例では、抗がん剤が担持された前記超音波感受性リポソームを脳腫瘍細胞株と共に培養しながら超音波を処理した結果、前記超音波感受性リポソームが脳腫瘍細胞に対して優れた抗がん効果を有することを確認した(実施例5)。
【0050】
本発明のさらに他の実施例では、本発明の超音波感受性リポソームの脳への薬物伝達効果をさらに向上させるために、血液脳関門を安定して開放できる超音波処理およびマイクロバブルの空洞現象の条件を発掘した(実施例6および7)。
【0051】
本発明のさらに他の実施例では、マウスモデルで超音波およびマイクロバブルを処理し、血液脳関門を開放しながら本発明による超音波感受性リポソームを投与した結果、前記リポソームが脳組織内に効果的に浸透したことを確認した(実施例8および9)。
【0052】
すなわち、本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームは、血液脳関門を効果的に通過し、封入した薬物を脳に正確に伝達できることが確認されたところ、様々な疾患の治療のための薬物伝達体として活用されることが期待される。
【0053】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0054】
本発明は、DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、lyso-PC(lysophosphatidylcholine)、およびスフィンゴリピド(sphingolipid)からなる群から選ばれた1つ以上を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門(blood-brain barrier)透過用組成物および/または薬物伝達体を提供する。前記組成物は、薬学的組成物を含む。
【0055】
好ましくは、本発明は、
i)DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門(blood-brain barrier)透過用組成物;
ii)DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用組成物;および/または、
iii)DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、スフィンゴリピド(sphingolipid)、およびDSPE-mPEG2000を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用組成物を提供する。
【0056】
本発明の一具現例において、前記超音波感受性リポソームは、ポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0057】
本発明において、「DOPE」は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)の略語であり、前記脂質は、薬物伝達ビヒクルに使用されるDOTAPと異種リポソームを形成することが知られている。
【0058】
本発明において、「DSPC」は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)の略語であり、ホスホコリン頭部基(head group)に付着した2つのステアリン酸で構成されたリン脂質を指す。
【0059】
本発明において、「DSPE-mPEG2000」は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ-ポリ(エチレングリコール-2000)(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanol amine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))の略語であり、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-PE(DSPE)のペグ化した誘導体を指す。
【0060】
本発明において、「コレステロール(cholesterol)」は、ステロール(sterol;変形ステロイド)の1つであり、すべての動物細胞の細胞膜で発見される脂質を指す。本発明によるコレステロールは、コレステロールの誘導体を含む。コレステロールの誘導体は、例えば、シトステロール、エルゴステロール、スチグマステロール、4,22-スチグマスタジエン-3-オン、スチグマステロールアセテート、ラノステロール、シクロアルテノール、またはこれらの組み合わせであってもよい。コレステロールは、脂質二重層に位置し、当該量を調節することによって、透過度を低減または増加させることができ、リポソーム内割合に関係なく使用することができる。
【0061】
本発明において、「Lyso-PC」は、リゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine)の略語であり、頭部基がコリンからなるホスホコリン(phosphocholine)に由来するリン脂質であり、アシル鎖が1つからなる脂質の代表語であり、様々な種類のlyso-PCが知られている。
【0062】
本発明において、前記lyso-PCは、下記化学式1または2で表示されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。好ましくは、前記lyso-PCは、下記化学式1または2で表示される1-LPC(lysophosphatidylcholine)または2-LPCであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
【0064】
【0065】
(前記化学式1または2中、前記Rは、C6~C26のアルキル基、C6~C26のアルケニル基、C6~C26のアルキニル基、置換または非置換のC6~C26のシクロアルキル、置換または非置換のC6~C26のアリール基、置換または非置換のC7~C26のアリールアルキル基、またはHである。)
【0066】
本発明において、前記lyso-PCは、lyso-PC(6:0)、lyso-PC(7:0)、lyso-PC(8:0)、lyso-PC(9:0)、lyso-PC(10:0)、lyso-PC(11:0)、lyso-PC(12:0)、lyso-PC(13:0)、lyso-PC(14:0)、lyso-PC(15:0)、lyso-PC(16:0)、2-lyso-PC(16:0)、lyso-PC(17:0)、lyso-PC(17:1)、lyso-PC(18:0)、lyso-PC(18:1)、lyso-PC(18:2)、2-lyso-PC(18:0)、2-lyso-PC(18:1)、lyso-PC(19:0)、lyso-PC(20:1)、lyso-PC(20:4)、lyso-PC(22:0)、lyso-PC(22:5)、lyso-PC(24:0)、lyso-PC(26:0)およびlyso-PC(20:5)からなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
また、好ましくは、前記lyso-PCは、MSPC(1-Stearoyl-2-lyso-sn-glycero-3-phosphocholine)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
本発明において、「スフィンゴリピド(sphingolipid)」は、アミド結合を介して脂肪酸が付着することができるスフィンゴイド塩基(sphingoid bases)の骨格および1次ヒドロキシルの頭部基を含む脂質を意味する。スフィンゴリピドは、すべての動物、植物、菌類、および一部の原核生物やウイルスで発見され、細胞膜の構造と機能を維持し、細胞間シグナルを伝達するのに重要な役割をすることが知られている。本発明において、スフィンゴリピドは、具体的な種類が限定されるものではないが、好ましくは、スフィンゴシン(sphingosine)、セラミド(ceramide)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)、セレブロシド(cerebroside)、およびガングリオシド(ganglioside)からなる群から選ばれた1種以上であってもよい。
【0069】
好ましくは、本発明によるスフィンゴリピドは、スフィンゴミエリンである。本発明において、「スフィンゴミエリン(Sphingomyelin)」は、ホスホコリンおよびセラミド、または、ホスホエタノールアミン頭部基からなるスフィンゴリン脂質(sphingophospholipid)を指す。自然的なスフィンゴミエリンは、動物細胞の膜、特に、神経細胞の軸索(axons)を囲んでいる膜性鞘(membranous sheath)で発見される。
【0070】
本発明において、「ポリソルベート(polysorbate)」は、脂肪酸でエステル化したエトキシル化ソルビタン(sorbitan)から派生した非イオン性補助界面活性剤を指す。ポリソルベートは、一般的にリポソームの乳化補助剤および可溶化剤の役割をすることが知られている。本発明による超音波感受性リポソームの場合、ポリソルベートをさらに含むことによって、血液脳関門透過効率が向上することができる。本発明においてポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80から選択することができるが、これに限らない。好ましくは、前記ポリソルベートは、ポリソルベート80である。
【0071】
本発明の一具現例において、前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。本発明者らは、具体的な実験を通じて前記組成比を満たすリポソームが優れた薬物封入率、超音波感受性、および血液脳関門透過率を有することを確認した。
【0072】
より具体的には、前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)、1~50:1~10:5~68:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)、1~50:10~15:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)、1~50:1~20:5~70:0.1~35:0.1~15のモル比(mole%)、1~50:1~10:5~70:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)、1~40:1~9:35~80:0.1~40:1~10のモル比(mole%)、1~40:1~10:20~70:0.1~50:1~10のモル比(mole%)、1~40:1~10:20~68:0.1~50:1~8のモル比(mole%)、1~30:1~10:10~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)、1~30:1~9:5~70:0.1~40:0.1~20のモル比(mole%)、1~30:1~9:5~68:0.1~40:0.1~20のモル比(mole%)、1~30:1~10:20~80:0.1~50:2~10のモル比(mole%)、1~30:1~20:20~68:0.1~40:1~11のモル比(mole%)、1~20:1~10:15~80:1~48:1~12のモル比(mole%)、10~40:3~7:40~68:0.1~45:0.1~11のモル比(mole%)、0.1~20:1~8:63~67:0.1~32:3~11のモル比(mole%)、5~15:1~7:60~67:10~32:1~11のモル比(mole%)、8~12:3~6:50~66:10~32:5~11のモル比(mole%)、または0.1~20:1~8:53~57:0.1~30:5~10のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0073】
また、本発明において、前記DSPCは、全リポソームに対して1~50モル比(mole%)、1~40モル比(mole%)、1~30モル比(mole%)、1~25モル比(mole%)、1~20モル比(mole%)、1~15モル比(mole%)、1~7モル比(mole%)、5~50モル比(mole%)、5~40モル比(mole%)、5~35モル比(mole%)、5~30モル比(mole%)、5~25モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、7~12モル比(mole%)、25~35モル比(mole%)、27~32モル比(mole%)、または35~45モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
また、本発明において、前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して1~10モル比(mole%)、1~9モル比(mole%)、1~8モル比(mole%)、1~7モル比(mole%)、1~6モル比(mole%)、1~5モル比(mole%)、2~9モル比(mole%)、2~8モル比(mole%)、2~7モル比(mole%)、2~6モル比(mole%)、2~5モル比(mole%)、3~8モル比(mole%)、3~7モル比(mole%)、または4~6モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
また、本発明において、前記DOPEは、全リポソームに対して5~80モル比(mole%)、5~75モル比(mole%)、5~70モル比(mole%)、5~68モル比(mole%)、10~75モル比(mole%)、10~70モル比(mole%)、10~68モル比(mole%)、20~75モル比(mole%)、20~70モル比(mole%)、20~68モル比(mole%)、30~75モル比(mole%)、30~70モル比(mole%)、30~68モル比(mole%)、40~80モル比(mole%)、40~75モル比(mole%)、40~70モル比(mole%)、40~68モル比(mole%)、45~80モル比(mole%)、45~70モル比(mole%)、50~80モル比(mole%)、50~70モル比(mole%)、または50~68モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0076】
また、本発明において、前記コレステロールは、全リポソームに対して0.1~50モル比(mole%)、0.1~45モル比(mole%)、1~45モル比(mole%)、5~45モル比(mole%)、5~40モル比(mole%)、5~35モル比(mole%)、5~30モル比(mole%)、5~25モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、10~40モル比(mole%)、10~35モル比(mole%)、10~30モル比(mole%)、10~25モル比(mole%)、10~20モル比(mole%)、20~40モル比(mole%)、20~35モル比(mole%)、25~40モル比(mole%)、25~35モル比(mole%)、27~32モル比(mole%)、30~40モル比(mole%)、5~10モル比(mole%)、または40~50モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0077】
また、本発明において、前記lyso-PCは、全リポソームに対して0.1~20モル比(mole%)、0.1~15モル比(mole%)、0.1~10モル比(mole%)、1~20モル比(mole%)、1~10モル比(mole%)、1~9モル比(mole%)、1~8モル比(mole%)、1~7モル比(mole%)、1~6モル比(mole%)、3~20モル比(mole%)、3~15モル比(mole%)、3~10モル比(mole%)、3~7モル比(mole%)、2~10モル比(mole%)、3~7モル比(mole%)、2~6モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、5~10モル比(mole%)、7~20モル比(mole%)、7~15モル比(mole%)、7~12モル比(mole%)、8~12モル比(mole%)、9~11モル比(mole%)、4~6モル比(mole%)、または6~8モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
本発明の他の具現例において、前記DSPCは、全リポソームに対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEは、全リポソームに対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールは、全リポソームに対して0.05~40乾燥重量%、および
前記lyso-PCは、全リポソームに対して0.5~10乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
本発明において、前記DSPCは、全リポソームに対して0.1~50乾燥重量%、0.1~45乾燥重量%、0.1~40乾燥重量%、1~40乾燥重量%、1~30乾燥重量%、1~20乾燥重量%、1~15乾燥重量%、1~13乾燥重量%、3~20乾燥重量%、5~20乾燥重量%、7~20乾燥重量%、5~15乾燥重量%、7~13乾燥重量%、または9~11乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0080】
本発明において、前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して3~50乾燥重量%、5~40乾燥重量%、10~30乾燥重量%、10~25乾燥重量%、10~20乾燥重量%、15~30乾燥重量%、15~25乾燥重量%、15~20乾燥重量%、16~19乾燥重量%、または17~19乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
本発明において、前記DOPEは、全リポソームに対して1~80乾燥重量%、5~80乾燥重量%、10~80乾燥重量%、15~80乾燥重量%、20~80乾燥重量%、25~80乾燥重量%、30~80乾燥重量%、30~75乾燥重量%、30~70乾燥重量%、30~65乾燥重量%、30~60乾燥重量%、30~55乾燥重量%、30~50乾燥重量%、40~80乾燥重量%、40~70乾燥重量%、50~80乾燥重量%、50~70乾燥重量%、55~65乾燥重量%、60~65乾燥重量%、60~63乾燥重量%、または60~62乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
本発明において、前記コレステロールは、全リポソームに対して0.05~40乾燥重量%、1~40乾燥重量%、1~30乾燥重量%、1~20乾燥重量%、1~15乾燥重量%、1~13乾燥重量%、1~10乾燥重量%、3~20乾燥重量%、3~15乾燥重量%、3~13乾燥重量%、3~10乾燥重量%、5~20乾燥重量%、5~15乾燥重量%、5~13乾燥重量%、5~10乾燥重量%、6~8乾燥重量%、10~40乾燥重量%、10~35乾燥重量%、10~30乾燥重量%、10~25乾燥重量%、10~20乾燥重量%、15~40乾燥重量%、15~30乾燥重量%、15~25乾燥重量%、15~22乾燥重量%、または20~30乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0083】
本発明において、前記lyso-PCは、全リポソームに対して0.5~10乾燥重量%、0.5~8乾燥重量%、0.5~7乾燥重量%、0.5~6乾燥重量%、0.5~5乾燥重量%、0.5~4乾燥重量%、1~8乾燥重量%、1~7乾燥重量%、1~6乾燥重量%、1~4乾燥重量%、2~8乾燥重量%、2~7.5乾燥重量%、2~6乾燥重量%、2~5乾燥重量%、2~4乾燥重量%、2.5~7.5乾燥重量%、2.5~7乾燥重量%、2.5~6.5乾燥重量%、3~8乾燥重量%、3~7乾燥重量%、3~6乾燥重量%、3~5乾燥重量%、3~4乾燥重量%、5~10乾燥重量%、5~9乾燥重量%、5~8乾燥重量%、5~7乾燥重量%、5~6乾燥重量%、または5~5.5乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0084】
本発明による超音波感受性リポソームは、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を有効成分として含み、DSPC、コレステロール、およびLyso-PCを含まないことを特徴とする。
【0085】
好ましくは、本発明による超音波感受性リポソームは、DOPE、DSPE-mPEG2000,およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を有効成分として含み、DSPC、コレステロール、およびLyso-PCを含まないことを特徴とする。
【0086】
本発明の一具現例において、前記DOPEは、全リポソームに対して5~80モル比(mole%)、5~75モル比(mole%)、5~70モル比(mole%)、5~60モル比(mole%)、5~50モル比(mole%)、5~45モル比(mole%)、5~40モル比(mole%)、5~35モル比(mole%)、5~33モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~10モル比(mole%)、10~80モル比(mole%)、10~70モル比(mole%)、10~60モル比(mole%)、10~50モル比(mole%)、20~80モル比(mole%)、20~70モル比(mole%)、20~60モル比(mole%)、20~50モル比(mole%)、30~80モル比(mole%)、30~70モル比(mole%)、30~60モル比(mole%)、35~55モル比(mole%)、または40~55モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限らない。
【0087】
本発明の他の具現例において、前記スフィンゴリピドは、全リポソームに対して5~80モル比(mole%)、5~75モル比(mole%)、5~70モル比(mole%)、5~60モル比(mole%)、5~50モル比(mole%)、5~45モル比(mole%)、5~40モル比(mole%)、5~35モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~10モル比(mole%)、10~80モル比(mole%)、10~70モル比(mole%)、10~60モル比(mole%)、10~50モル比(mole%)、20~80モル比(mole%)、20~70モル比(mole%)、20~60モル比(mole%)、20~50モル比(mole%)、30~80モル比(mole%)、30~70モル比(mole%)、30~60モル比(mole%)、35~55モル比(mole%)、または40~55モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限らない。
【0088】
本発明のさらに他の具現例において、前記DSPE-mPEG2000は、1~20モル比(mole%)、1~18モル比(mole%)、1~16モル比(mole%)、1~14モル比(mole%)、1~12モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、6~20モル比(mole%)、7~20モル比(mole%)、8~20モル比(mole%)、9~20モル比(mole%)、7~15モル比(mole%)、7~13モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、5~13モル比(mole%)、または8~12モル比(mole%)で含まれ得るが、これに限らない。
【0089】
本発明の他の具現例において、前記DOPE、スフィンゴリピド、およびDSPE-mPEG2000は、20~60:20~60:1~20のモル比(mole%)、20~70:20~70:5~15のモル比(mole%)、30~60:20~70:5~20のモル比(mole%)、35~50:35~50:8~15のモル比(mole%)、25~60:25~60:8~15のモル比(mole%)、または40~55:40~55:8~15のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0090】
また、本発明において前記DOPEは、全リポソームに対して1~80乾燥重量%で含まれ、前記スフィンゴリピドは、全リポソームに対して1~80乾燥重量%で含まれ、前記DSPE-mPEG2000は、含まれないか、または全リポソームに対して3~50乾燥重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0091】
前記本発明のリポソームは、リン脂質を含む両親媒性化合物によって形成される。このような両親媒性化合物は、典型的に水性媒質と本質的に水不溶性の有機溶媒間の界面に配列され、乳化された溶媒微細滴を安定化させる。前記両親媒性化合物は、水性媒質と反応できる親水性極性ヘッド部(例:極性またはイオン性基)および例えば有機溶媒と反応しうる疎水性有機テール部(例:炭化水素鎖)を有する分子を有する化合物を含む。両親媒性化合物は、非混和性の2種の液体(例:水とオイル)の混合物、液体と気体の混合物(例:水中に気体マイクロバブル)または液体と不溶性粒子の混合物(例:水中に金属ナノ粒子)のように、他の方法では通常混合できない物質の混合物を安定化させることができる化合物である。
【0092】
また、本発明による超音波感受性リポソームは、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、または、TEA-SOSで水和されたものであってもよい。すなわち、前記リポソームの内部バッファー(inner buffer)は、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、または、TEA-SOSであってもよい。好ましくは、本発明による超音波感受性リポソームは、硫酸アンモニウムまたはクエン酸アンモニウムで水和されたものである。
【0093】
本発明による超音波感受性リポソームは、血液脳関門を透過(すなわち、通過または移動)できることを特徴とする。すなわち、前記超音波感受性リポソームは、血液脳関門を透過し、脳組織内に移動することができる。特に、本発明による超音波感受性リポソームは、該物性と特性を維持しながら血液脳関門を透過することができる。したがって、本発明による超音波感受性リポソームは、薬物を脳内に、すなわち脳組織内に伝達するための担体として使用することができる。すなわち、本発明による血液脳関門透過用組成物は、前記超音波感受性リポソームに担持された薬物を脳組織内に伝達するためのものであってもよい。
【0094】
本発明において、「血液脳関門(Blood-Brain Barrier,BBB)」は、脳と血液を隔離させる血管障壁であり、色素、薬物、毒物など異物が脳組織に入ることを遮断し、脳を保護する障壁を指す。血液脳関門は、脳細胞を取り囲む脳血管に全体的に分布するが、脳毛細血管内皮細胞が血液脳関門に密着して結合しており、周辺を膠細胞が隙間なく取り囲んでいる密着構造を通じて薬物や代謝産物が内部に入らないようにする。血液脳関門を構成する物質は、ほとんどがリン脂質で形成されている。
【0095】
本発明によるリポソームは、超音波に露出したとき、血液脳関門を通過することを特徴とする。
【0096】
本発明において使用される用語「超音波(ultrasound)」は、一般的に人の耳が聞くことができる音波の周波数である16Hz~20kHzの周波数を越える音波を意味し、強力集束超音波は、連続的かつ強力超音波エネルギーを焦点に提供する集束型超音波を導入し、エネルギーと振動数によって瞬間熱効果(65~100℃)、空洞化(cavitation)効果、機械的効果および音響化学的(sonochemical)効果を奏することができる。超音波は、人体組織を通過するとき、有害でないが、焦点を形成する強力超音波は、組織の種類に関係なく、凝固壊死および熱焼灼効果を起こすことができる程の十分なエネルギーを発生する。
【0097】
本発明において、リポソームは、超音波感受性リポソームである。超音波感受性リポソームとは、超音波に露出したとき、リポソームの透過性が増加することを意味し得る。したがって、リポソームが超音波に露出する場合、リポソームに含まれた薬物が放出され得る。または、超音波感受性リポソームとは、超音波に露出したとき、リポソームの血液脳関門透過能が増加することを意味し得る。したがって、リポソームが超音波に露出すれば、リポソームが血液脳関門を通過し、脳に伝達され得る、同様に、超音波によってリポソームに担持されていた薬物が脳に伝達され得る。
【0098】
本発明において、前記超音波は、可聴周波数の範囲である16Hz~20kHzより周波数が大きい音波をいう。超音波は、強力集束超音波(high intensity focused ultrasound:HIFU)、強力非集束超音波、またはこれらの両方の組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。HIFUは、強力超音波エネルギーを1ヶ所に集めて集束した焦点を作る超音波をいう。どんな映像を見ながら強力集束超音波治療をするかによって、超音波誘導強力集束超音波(Ultrasound-guided HIFU)と磁気共鳴映像誘導強力集束超音波(MRI-guided HIFU)がある。超音波の周波数は、例えば、1kHz~100kHz、1kHz~90kHz、1kHz~80kHz、1kHz~70kHz、1kHz~60kHz、1kHz~50kHz、1kHz~40kHz、1kHz~30kHz、1kHz~20kHz、1kHz~10kHz、20kHz~3.0MHz、40kHz~2.0MHz、60kHz~2.0MHz、80kHz~2.0MHz、100kHz~2.0MHz、150kHz~2.0MHz、200kHz~2.0MHz、250kHz~2.0MHz、300kHz~2.0MHz、350kHz~2.0MHz、400kHz~2.0MHz、450kHz~2.0MHz、500kHz~2.0MHz、550kHz~2.0MHz、600kHz~2.0MHz、650kHz~2.0MHz、700kHz~2.0MHz、750kHz~2.0MHz、800kHz~2.0MHz、850kHz~2.0MHz、900kHz~2.0MHz、950kHz~2.0MHz、600kHz~1.5MHz、650kHz~1.5MHz、700kHz~1.5MHz、750kHz~1.5MHz、800kHz~1.5MHz、850kHz~1.5MHz、900kHz~1.5MHz、950kHz~1.5MHz、1MHz~1.5MHz、600kHz~1.3MHz、650kHz~1.3MHz、700kHz~1.3MHz、750kHz~1.3MHz、800kHz~1.3MHz、850kHz~1.3MHz、900kHz~1.3MHz、950kHz~1.3MHz、600kHz~1.1MHz、650kHz~1.1MHz、700kHz~1.1MHz、750kHz~1.1MHz、800kHz~1.1MHz、850kHz~1.1MHz、900kHz~1.1MHz、950kHz~1.1MHz、600kHz~1MHz、650kHz~1MHz、700kHz~1MHz、750kHz~1MHz、800kHz~1MHz、850kHz~1MHz、900kHz~1MHz,または950kHz~1MHzであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0099】
前記リポソームは、安定性(stability)が確保されたものであってもよい。前記安定性というのは、超音波に露出していない状態では、血中リポソーム内封入した薬物が放出されないことを意味する。本発明者らは、本発明による超音波感受性リポソームが常温(20~25℃)で60分間ボルテックス条件下で20分ごとに60分間リポソーム内封入した薬物の放出率を測定したとき、最大30%以下の薬物放出率を示すことを確認した。すなわち、本発明によるリポソームは、超音波がない環境では、安定した構造を維持するので、薬物がほとんど放出されない。
【0100】
本発明によるリポソームの粒度は、例えば、直径50nm~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nm、60nm~200nm、70nm~200nm、80nm~200nm、90nm~200nm、100nm~200nm、110nm~190nm、120nm~180nm、130nm~170nm、140nm~170nm、140nm~160nm、または約150nmであってもよい。具体的な実施例によれば、100nm~200nmであってもよい。リポソームの粒度分布は、リポソームを10倍希釈した後、動的光散乱(DLS)分析法でZetasizerナノZS(Zetasizer Nano ZS,Malvern)を用いて測定することができる。しかしながら、リポソームの粒度分布測定方法は、これに限定されず、当業界に一般的に知られている他の方法によって測定することができ、同等なレベルの値に変換することができる。
【0101】
本発明による超音波感受性リポソームは、薬物を担持することができる。前記「担持」は、用語「封入」または「積載」と相互交換的に使用することができる。
【0102】
本発明において使用される用語「薬物」は、目的とする生物学的活性を有する任意の化合物を指す。目的とする生物学的活性は、ヒトまたは他の動物において疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防に有用な活性を含む。
【0103】
本発明において、薬物と超音波感受性リポソームの混合割合は、好ましくは、1:2~1:50質量比(w/w%)であってもよく、より好ましくは、1:2~1:40、1:2~1:35、1:2~1:30、1:2~1:25、1:10~1:50、1:10~1:40、1:10~1:35、1:10~1:30、1:10~1:35、1:2~1:20、1:2~1:18、1:2~1:16、1:2~1:14、1:2~1:12、1:2~1:10.5、1:2.5~1:10.5、1:2.5~1:5、1:2~1:4、1:2.5~1:4.5、1:2.5~1:4、1:2.5~1:3、1:1:5~1:10.5、1:5.5~1:10.5、1:6~1:10.5、1:6.5~1:10.5、1:7~1:10.5、1:7~1:10、1:7~1:9、または約1:8の質量比(w/w%)であってもよいが、薬物が効率的にリポソームに封入することができる割合であれば、これに限らない。
【0104】
本発明によるリポソームに薬物を担持するために薬物をリポソームに処理したとき、添加された全薬物に対してリポソームに担持される薬物の割合は、50~100%であってもよい。すなわち、本発明によるリポソームは、薬物の封入率が30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、65%~100%、70%~100%、75%~100%、76%~100%、77%~100%、80%~100%、85%~100%、87%~100%、88%~100%、90%~100%、または95%~100%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0105】
前記封入率は、添加した薬物の量に対する積載率を意味し得るが、これに限定されるものではない。リポソームの薬物封入率の測定方法は、薬物をリポソームに処理した後、封入しない薬物をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法を用いて分離し、封入した薬物と封入しない薬物の吸光度を測定することによって計算することができる。しかしながら、薬物封入率の測定方法は、これに限らず、当業界に一般的に知られている他の方法によって測定することができ、同等なレベルの値に変換することができる。
【0106】
本発明において、前記薬物が封入した超音波感受性リポソームは、10%~100%、50 %~100%、60%~100%、65%~100%、70%~100%、または75%~100%の薬物放出率を有するものであってもよいが、これに限定されるものではない。前記薬物放出率は、添加した薬物の量に対する放出率を意味し得るが、これに限定されるものではない。ここで、放出率測定方法は、リポソームに超音波を処理した後、リポソームから放出された薬物および薬物が放出されたリポソームをSEC方法で分離し、薬物の吸光度を測定することによって定量することができる。しかしながら、薬物放出率の計算方法は、これに限らず、当業界に一般的に知られている他の方法によって測定することができ、同等なレベルの値に変換することができる。
【0107】
本発明において、前記薬物が封入した超音波感受性リポソームは、血中内で、超音波未処理状態で0.1%~100%、0.1%~80%、0.1%~60%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、または30%以下の薬物放出率を有するものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0108】
本発明による組成物は、薬物を血液脳関門を透過し、脳内に伝達するための用途に使用することができる。すなわち、本発明は、本発明による超音波感受性リポソームを有効成分として含む血液脳関門透過用薬物伝達体を提供する。
【0109】
本発明において、前記「薬物」は、脳で作用する薬物であれば、制限なく含まれ得る。すなわち、前記薬物は、脳に伝達されることを目的とする薬物であれば、具体的な種類や成分に制限されずに含まれ得る。好ましくは、前記薬物は、脳疾患治療剤であってもよい。
【0110】
本発明において、「脳疾患」は、脳組織、脳血管、および脳神経損傷などによって脳組織の機能または構造が可逆的/非可逆的に低下または消失する病的状態を意味する。好ましくは、前記脳疾患は、脳腫瘍、細菌またはウイルスによる脳感染、パーキンソン病、脳炎、脳卒中、中風、アルツハイマー病、ルーゲリック病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、てんかん、血栓症、塞栓症、脳梗塞、中風、小梗塞、および脳循環代謝障害からなる群から選はれる得るが、これに限らず、脳と関連した疾患であれば、全て含まれる。
【0111】
最も好ましくは、前記脳疾患は、脳腫瘍(脳がん)であってもよい。好ましくは、前記脳腫瘍は、星細胞腫、神経膠腫、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫、膠芽細胞腫、希突起膠腫、多形成膠芽細胞腫、乏突起神経膠腫、乏突起星細胞腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、血管芽細胞腫、髄膜腫、脳下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、および脈絡叢乳頭腫などから選択されるが、これに限定されるものではない。
【0112】
本発明において使用される用語「がん(cancer)」または、「腫瘍(tumor)」は、細胞が正常な成長限界を無視し、分裂および成長する侵襲(aggressive)特性、周囲組織に浸潤する浸潤(invasive)特性、および体内の他の部位に広がる転移(metastatic)特性を有する細胞による病気を総称する意味である。
【0113】
「脳疾患治療剤」は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、ビンデシン、ビノレルビン、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、テセタキセル、イクサベピロン、ロムスチン、プロカルバジン、リツキシマブ、トシリズマブ、テモゾロミド、カルボプラチン、エルロチニブ、イリノテカン、エンザスタウリン、ボリノスタット、ドキソルビシン、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ロイプロリド、プルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、バルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、マイトマイシン、プレドニゾン、アフィニトール、ミトキサントロン、レボドパ、カルビドパ、エンタカポン、トルカポン、ドーパミンアゴニスト、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、抗コリン剤、およびアマンタジンから選択された1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0114】
また、本発明は、本発明による超音波感受性リポソームを有効成分として含む脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。好ましくは、前記超音波感受性リポソームは、脳疾患治療剤が担持されたものである。
【0115】
本発明において、「予防」とは、本発明による組成物の投与によって脳疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0116】
本発明において、「治療」とは、本発明による組成物の投与によって脳疾患の症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0117】
本発明において用語「薬学的組成物」は、脳疾患の予防または治療を目的に製造されたものを意味し、それぞれ、通常の方法によって様々な形態で剤形化して使用することができる。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口型剤形で剤形化することができ、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟こう剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの皮膚外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用することができる。
【0118】
前記組成物には、本発明による超音波感受性リポソームの他にも、抗がん剤、映像造影剤、抗生剤、抗炎症剤、タンパク質、サイトカイン、ペプチド、および抗体からなる群から選ばれる1つ以上がさらに含まれ得る。
【0119】
また、本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。この際、組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤では、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0120】
本発明の薬学的組成物は、個体に様々な経路で投与することができる。投与のすべての方式は、予想され得るが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄の周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を通した噴霧、皮膚投与、経皮投与などにより投与することができる。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物感受性、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定することができる。
【0122】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記した要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定することができる。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。
【0123】
本発明において、「投与」は、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0124】
本発明において、「個体」は、病気の治療を必要として本発明の組成物が投与され得る対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどの哺乳類を意味する。
【0125】
本発明による組成物は、超音波処理と順次にまたは同時に投与することができる。好ましくは、前記組成物は、超音波処理直後に投与することができる。特に、超音波は、脳に処理されてもよい。本発明者らは、脳組織の損傷を誘発することなく、血液脳関門を開放できる安全な超音波条件を確認したところ、前記条件で超音波を放出させながら薬学的組成物を投与する場合、本発明によるリポソームの脳への薬物伝達効率がさらに向上することができる。
【0126】
好ましくは、前記超音波の周波数は、20kHz~3MHz、20kHz~2MHz、20kHz~1.5MHz、または20kHz~1MHzであってもよいが、これに限らない。
【0127】
好ましくは、前記超音波の強度は、0.1~5W、0.1~4W、0.1~3W、0.1~2W、0.1~1.5W、0.5~3W、0.5~2W、または0.7~1.5Wであってもよいが、これに限らない。
【0128】
また、前記超音波のデューティサイクル(duty cycles)は、0.5~20%、0.5~15%、0.5~12%、0.5~10%、0.5~7%、0.7~10%、0.8~10%、0.9~10%、1~10%、1~9%、1~8%、1~7%、1~6%、1~5%、1~4%、1~3%、2~10%、3~10%、または4~10%であってもよいが、これに限らない。
【0129】
また、前記超音波は、10秒~300秒、10秒~250秒、10秒~200秒、10秒~150秒、10秒~120秒、10秒~100秒、10秒~90秒、10秒~80秒、10秒~70秒、20秒~100秒、30秒~100秒、40秒~100秒、50秒~100秒、50秒~90秒、50秒~80秒、または50秒~70秒間放出されるものであってもよいが、これに限らない。
【0130】
また、前記超音波処理は、マイクロバブルの投与と順次にまたは同時に行われるものであってもよい。好ましくは、前記超音波処理は、マイクロバブルの投与直後に行われるものであってもよい。本発明において、マイクロバブル(microbubbles)は、超音波造影剤として作用する平均1~10μmサイズの気泡であり、超音波と共に空洞現象(cavitation)を起こして、血液脳関門を一時的に開放する。
【0131】
好ましくは、前記マイクロバブルは、個体の全重量を基準として10~1×1010個/g、10~1×109個/g、10~1×108個/g、10~1×107個/g、10~1×106個/g、10~1×105個/g、10×102~1×108個/g、10×103~1×108個/g、10×104~1×108個/g、1×106~9×106個/g、1×106~8×106個/g、1×106~7×106個/g、1×106~6×106個/g、2×106~7×106個/g、または4×106~7×106個/gが注入され得るが、これに限らない。
【0132】
また、本発明は、下記段階を含む、前記超音波感受性リポソームの製造方法を提供する:
(S1)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCからなる群から選ばれた1つ以上を第1有機溶媒に溶解する段階;
(S2)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム薄膜を製造する段階;および
(S3)前記リポソーム薄膜を水溶液で水和させる段階。
【0133】
本発明において、前記第1有機溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール、およびエーテルからなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0134】
本発明において、前記水溶液は、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、または、TEA-SOSであってもよいが、これに限らず、前記リポソームに担持される薬物の種類によって適切に選択することができる。最も好ましくは、前記水溶液は、硫酸アンモニウムである。
【0135】
本発明において、前記段階(S1)の第1有機溶媒は、ポリソルベートが添加されたものであってもよいが、これに限らない。
【0136】
前記製造方法は、前記段階(S3)後、水和したリポソームを押出器を介して押出する段階をさらに含んでもよい。前記リポソームの押出のための温度は、常温で各物質の相転移温度範囲まで多様に調節することができ、押出回数は、リポソームのサイズを均一にするために、適切な回数で繰り返し行うことができる。
【0137】
また、本発明は、脳疾患治療剤および前記超音波感受性リポソームを撹拌する段階を含む、血液脳関門透過用超音波感受性リポソームに脳疾患治療剤を担持する方法を提供する。
【0138】
好ましくは、前記撹拌段階は、25~70℃、30~70℃、40~70℃、50~70℃、55~70℃、50~65℃、または55~65℃で行われ得る。
【0139】
また、前記撹拌段階は、30分~5時間、30分~4時間、30分~3時間、1時間~5時間、1時間~4時間、または1時間~3時間行われ得る。
【0140】
本発明において使用される用語は、本発明での機能を考慮しつつ、できるだけ現在広く使用される一般的な用語を選択したが、これは、当分野に従事する技術者の意図または判例、新しい技術の出現等によって変わり得る。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する説明の部分で詳細にその意味を記載する。したがって、本発明において使用される用語は、単純な用語の名称でなく、その用語が有する意味と本発明の全般にわたる内容に基づいて定義されなければならない。
【0141】
本願明細書の全体において、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。本願明細書の全体において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有な製造および物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使用され、本発明の理解を助けるために、正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用するのを防止するために使用される。
【0142】
本願明細書の全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組合せ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選ばれる一つ以上の混合または組合せを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選ばれる一つ以上を含むことを意味する。
【0143】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、ただ本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0144】
本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの製造に使用された物質は、下記表に記載された通りである。
【表1】
【0145】
[実施例1.血液脳関門透過および薬物伝達のためのリポソーム製造および薬物の封入]
脳腫瘍の治療に最適化した超音波感受性リポソーム(IMP302)を製造した。まず、薬物積載率に影響を及ぼす溶媒を評価するために、下記表1の脂質組成を有するリポソームを製造し、実験を進めた。
【0146】
【0147】
(1-1.脂質薄膜の製造および水和)
脂質の総量は、試料別に32mgに固定し、2mlのクロロホルム(chloroform)で全部溶解させた後、ロータリーエバポレーター(rotary evaporator)を用いてクロロホルムを完全に蒸発させることによって、脂質薄膜(thin film)を製造した。その後、濃度250mMの硫酸アンモニウム(ammonium sulfate)、クエン酸アンモニウム(ammonium citrate)、または、TEA-SOSを内部バッファー(interior buffer)として利用して各脂質薄膜を水和させた。水和は、50℃で脂質薄膜および前記各溶液を200rpmで撹拌することによって行われ、32mg/mLの脂質濃度で水和させた。
【0148】
(1-2.サイズ押出(size extrusion)を用いたリポソームサイズ調節)
前記実施例1-1を通じて製造されたリポソーム(liposome)は、多重ラメラ(multi-lamella)構造を示し、サイズ分布も、多分散(polydisperse)している状態である。リポソームを単一ラメラ(uni-lamellar)構造に変形し、サイズを100~200nmに調節するために、ポリカーボネートフィルターが装着された押出器(size extruder mini;Avanti)を使用した。サイズ押出は、フィルターの孔(pore)のサイズが200nmのポリカーボネートフィルターを用いて調節した。シリンジ(Syringe)で往復10~20回の押出を実施して、単分散(monodisperse)状態のリポソームを得た。
【0149】
(1-3.外部バッファー(exterior buffer)の交換)
Remote loadingを誘導するために製造されたリポソームの外部バッファー(exterior buffer)をPD-10カラムを用いて脱イオン水(deionized water,DW)に交換した。交換は、PD-10カラムに2mLのリポソーム溶液を積載した後、4mLのDWを用いて溶出することによって行われ、これを通じて、外部バッファーが脱イオン水に交替されたリポソームを収得した。
【0150】
(1-4.硫酸ビンクリスチン(Vincristin sulfate)の封入)
収得したリポソームに硫酸ビンクリスチン(Vincristine sulfate)を封入させるために、硫酸ビンクリスチンおよび脂質を1:20(w/w%)の割合で脱イオン水で混合した後、37℃または60℃の温度で150rpmで2時間撹拌した。その後、封入しない硫酸ビンクリスチンは、PD-10 columnを使用して上記で説明したのと同じ方法で除去した。ビンクリスチンのリポソーム内封入率(積載率、loading efficiency)は、UV-visを用いて294nmにおける吸光度を測定することによって定量分析した。
【0151】
(1-5.血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの特性確認および最適な製造方法の確認)
前記実施例によって脂質薄膜水和(lipid thin film hydration)法で製造された血液脳関門透過用超音波感受性リポソームを収得した。リポソームの製造に使用された水和溶液の種類に応じたリポソームの特性を確認するために、水和溶液の種類によるリポソームサイズ分布および硫酸ビンクリスチンの封入率を比較した。結果を下記の表2に示した。
【0152】
【0153】
表2から分かるように、各内部バッファーを使用して製造された血液脳関門透過用超音波感受性リポソームのサイズ分布は、全て約200nmのサイズを示した。また、各リポソームに対する硫酸ビンクリスチンの封入率(w/w%)は、商用化したリポソーム製剤であるMarqiboに対する封入率に相当するレベルであることが示された。
【0154】
また、クエン酸アンモニウムで製造した血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの硫酸ビンクリスチンの積載のための最適な条件を確認するために、硫酸ビンクリスチンおよびリポソームの撹拌段階における温度および時間に応じた積載率をUV-visを用いて比較評価した。それぞれの温度または時間条件に対する積載効果は下記の通りである。
【0155】
【0156】
温度に応じた硫酸ビンクリスチンの積載率は、それぞれ、37℃で3.5%、60℃で4.7%を示した。すなわち、60℃の温度で硫酸ビンクリスチンを積載することが積載率の点から効果的であることが示された。また、2時間および24時間の積載時間条件を比較した結果、2時間および24時間がいずれも同様の積載率を示し、硫酸ビンクリスチンの積載工程中にリポソームのサイズ分布は変化なく安定に維持されることが示された。
【0157】
前記実施例を通じて、最終的に硫酸ビンクリスチンが積載された、血液脳関門透過用超音波感受性リポソームは、内部バッファーとしてクエン酸アンモニウム(pH3.2)または硫酸アンモニウム(pH6.4)で製造することが、ビンクリスチンの積載に最も効果的であり、さらに効果的な積載のための条件として、60℃で2時間リポソームに前記薬物を積載することが最も最適化した条件であることが確認された。
【0158】
[実施例2.脂質成分による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの特性比較]
脳腫瘍治療用超音波感受性リポソームの最適な組成を確認するために、リポソームを構成する脂質の種類に応じた物性および特性を比較評価した。比較実験のために製造した各リポソームの組成は下記の表4の通りである。
【0159】
【0160】
各リポソームは、前記実施例1の製造方法によって製造し、ただし明確な比較のためにリポソームに対する積載率がビンクリスチンより高いドキソルビシン(doxorubicin)-HClを使用した。ポリソルベート80(Polysorbate 80)が含有された004Pおよび013P剤形(formulation)の製造は、溶媒に0.1%(v/v)のポリソルベート80を添加して製造した。
【0161】
(2-1.ドキソルビシン-HClのリポソーム内封入および封入率の分析)
ドキソルビシン-HClの封入は、ドキソルビシン-HClおよびリポソームを1:8の重量比で混合した後、37℃で2時間150rpmで撹拌して行われた。積載されていないドキソルビシン-HClは、PD-10カラムを用いて除去した。リポソームに積載されたドキソルビシン-HClは、UV-visを用いて475nmの吸光度を分析して定量した。
【0162】
基本的な物性分析を通じて脳腫瘍治療のための超音波感受性リポソームの候補組成を1次選別し、超音波による薬物放出試験を行うことで、最適な組成を導き出そうとした。血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの成分別サイズ分布およびドキソルビシン-HClの封入効果を下記の表5に示した。
【0163】
【0164】
表5による組成で製造された各リポソームは、全体的に100~150nmのサイズ分布を示し、0.1の多分散性指標(polydisperse index)を示し、均一なサイズ分布を有した。また、ドキソルビシン-HClの積載率も、添加されたドキソルビシン用量の90%以上がリポソームに積載される優れた積載率を示した。例外的に、008組成のみが製造段階で粒子が不安定な状態を示し、短時間内に凝集(aggregates)し、時間が経つにつれて凝集が激しくなる傾向を示した。しかしながら、その他の組成は、時間が経ても粒子の凝集や薬物の流出がなかった。前記リポソームのうち最も最適化した組成を選定するために、薬物の封入効率が最も高く、DOPEの含有量が高く、優れた超音波感受性と長時間循環(long circulation)を示すことが予想される004、005、および013番の組成を候補組成として選定した。
【0165】
(2-2.超音波による薬物放出効果の分析)
候補組成に選定された004、005、および013番の組成を用いてリポソームの超音波感応試験を行った。超音波による薬物放出率の分析は、超音波装置(ultrasonicator)で行ったが、薬物が封入したリポソームを超音波装置に入れた後、24kHzの周波数の超音波を20%の振幅(amplitude)(92W/cm2)の強度で60秒間処理し、リポソームから放出された薬物は、PD-10カラムで分離し、UV-visで295nmの吸光度を測定し、定量分析した。実験対照群としては、超音波感受性リン脂質が相対的に少なく含有された011組成、および商用化製品であるDoxil組成のリポソームに硫酸ビンクリスチンまたはドキソルビシン-HClが積載されたものを使用した。
【0166】
各リポソーム別硫酸ビンクリスチンまたはドキソルビシン-HClの積載率および超音波による薬物放出率を下記表6に示した。
【0167】
【0168】
まず、積載率を比較してみれば、ドキソルビシン-HClの場合、004、005、011、およびDoxil組成では、添加された薬物の90%以上が封入される高い積載率を示した。ただ013組成の場合にのみ、ドキソルビシン-HClを積載する過程でリポソームの凝集が発生するにつれて51.8%の多少低い積載率を示した。しかしながら、硫酸ビンクリスチンの場合、すべての組成が70~80%の高い積載率を示した。
【0169】
超音波感応による薬物放出率は、超音波刺激によって各リポソームから放出された薬物を定量分析することによって評価した。ドキソルビシン-HClを含有するリポソームの場合、DOPEの組成比が高い順に超音波感応による薬物放出率が高いことが示されたところ、DOPEの組成比がリポソームの超音波感受性に比例することを確認した。硫酸ビンクリスチンが含有された超音波感受性リポソームの場合、同じ超音波条件下でほとんどのリポソームが同様のレベルの超音波感受性を示した。
【0170】
したがって、前記実験結果に基づいて、脳腫瘍の治療のための薬物であるビンクリスチンが最も効率的に積載され、ドキソルビシンを積載したとき、最も優れた超音波感受性を示す004組成および013組成のリポソームを物性、薬物封入効率、および超音波感受性の点から最も優れた最適のリポソーム組成と判断した。特に、013組成の場合、ドキソルビシンに対する積載率が多少低かったが、ビンクリスチンの場合、その他の組成と同様のレベルで高い積載率を示したので、最適のリポソーム組成に共に含んでいる。
【0171】
(2-3.リポソームの超音波感受性に対するポリソルベート80の影響の確認)
さらに、血液脳関門透過用超音波感受性リポソームに対するポリソルベート80の影響を評価するために、硫酸ビンクリスチンおよびドキソルビシン-HClの放出量が最も優れた004および013組成のリポソームにポリソルベート80を追加した後、リポソームの物性および超音波感受性を評価した。本発明において、ポリソルベート80は、リポソーム製剤のBBBの透過率を高めるための構成として添加される。ポリソルベート80は、溶媒に0.1%(v/v)含有されるようにしてリポソームを製造し、その他の工程は全部同一に行った。ポリソルベート80が含有されたリポソームの物性および超音波感応によるドキソルビシン-HCl放出率は下記の表7の通りである。
【0172】
【0173】
表7から確認できるように、004または013リポソーム組成にポリソルベート80を添加した場合、粒度分布は、それぞれ、128.2および146.2nmであることが示され、超音波感応による薬物放出率は、それぞれ、73.9%および65.9%を示した。ポリソルベート80は、リポソームのBBB透過率を高めるために添加されたものであり、前記実験結果は、ポリソルベート80が超音波感受性リポソームの血液脳関門透過を促進する前に、前記リポソームの物性に影響を及ぼさないことを示す。
【0174】
[実施例3.FACS分析を通した血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの脳腫瘍細胞株浸透能の評価]
リポソームの組成に応じた脳腫瘍細胞株浸透能を評価するために、脳腫瘍細胞株U87MGを用いた実験を進めた。前記細胞株に各リポソームが浸透する効果を定量分析するためにFACS分析を行い、実験に使用された血液脳関門透過用超音波感受性リポソームは、蛍光染料であるDiIで標識し、赤色波長帯を検出した。DiI染料は、赤色波長帯である549/565nmのexcitation/emission波長の蛍光を示す。
【0175】
実験は、次のように行った。リポソーム処理前に、U87MG細胞株を血清(serum)が添加されていない細胞培養液で培養し、枯渇(starvation)を1時間行った。枯渇を終えた細胞に各リポソーム溶液を400μg/mlの濃度で処理し、2時間または4時間リポソームとインキュベーションした後、FACS分析を行った。使用された細胞の数は、3×10
5個である。リポソームの脳腫瘍細胞浸透能を定量分析した結果を
図1に示した。本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームのうち004および013組成、およびDoxil組成のリポソームは、U87MG細胞に処理された後2時間以内にほとんどのリポソームが細胞内に浸透したところ、高い細胞内エンドサイトーシス効率を示した。U87MGに対する浸透効率は、Doxil、004、013、および011リポソームの順に高いことが示された。
【0176】
また、脳腫瘍細胞とリポソームを4時間インキュベーションしたときには、004、013、およびDoxil組成のリポソームは、時間が経つにつれて細胞浸透率が増加し、100%に近い浸透効率を示し、011組成のリポソームも、細胞内エンドサイトーシス効率が時間によって持続的に増加することが示された。特に、本発明による超音波感受性リポソームの脳腫瘍細胞株浸透効果は、ビンクリスチン薬物の積載に使用される商用リポソームであるMarqiboと比較して、約2倍以上であることが示された。
【0177】
前記結果は、本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームが脳腫瘍細胞に効果的に浸透し、薬物を伝達することができることを示す。
【0178】
[実施例4.共焦点蛍光顕微鏡を用いた血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの細胞透過能の検証]
脳腫瘍の治療のための最適なリポソーム組成を選別するために、脳腫瘍細胞株であるU87MG細胞株に様々な組成のリポソームを処理した後、各リポソームの時間に応じた細胞浸透効果を共焦点蛍光顕微鏡を用いて評価した。各リポソームの細胞内位置を蛍光で確認するためにDiI蛍光染料でリポソームを標識し、赤色波長で発光させてリポソームを検出した。U87MG細胞を細胞培養チャンバーにシーディング(seeding)した後、一晩中インキュベーションし、リポソームをそれぞれ処理する前に1時間無血清(serum-free)培養液で枯渇させた。枯渇を終えた細胞に各リポソームを400μg/mlの濃度で処理し、2時間または4時間インキュベーションして細胞の取り込み(cellular uptake)を誘導した後、粒子を洗浄した。その後、共焦点顕微鏡撮影のために4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定した後、顕微鏡撮影を行った。リポソーム組成に応じた脳腫瘍細胞内浸透度および浸透機序を分析するために、共焦点蛍光顕微鏡を用いてイメージングした。蛍光撮影のためにDiIで標識されたリポソームを赤色波長(ex/em:549/565nm)で撮影し、細胞の核は、DAPIで染色し、青色で現れるようにした(ex/em:358/461nm)。細胞の形態(morphology)は、DICで光学撮影して確認した。本発明の004および013組成のリポソーム、およびDoxil組成のリポソームの時間に応じたU87MG細胞内浸透結果を撮影した結果を
図2aおよび
図2bに示した。
【0179】
共焦点蛍光顕微鏡を用いて脳腫瘍細胞内の各リポソーム粒子の時間に応じた浸透効果を撮影した結果、本発明による004および013組成のリポソームがいずれも2時間以内にU87MG細胞内に2時間効果的に浸透したことが示され、前記実施例3のFACS分析結果と一致する結果を示した。各組成のリポソームは、全てU87MG細胞の細胞質に正確に位置し、ドット形態の蛍光を示したところ、リポソームが粒子の形態を維持しつつ、細胞内エンドサイトーシスしたことを示す。U87MG細胞の形態を本発明によるリポソームまたはDoxil組成のリポソームを処理したグループと未処理対照群に分けて比較した結果、特別な変化がないことが示された。このような結果は、本発明による超音波感受性リポソーム自らの細胞毒性が非常に低いことを示唆する。
【0180】
[実施例5.血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの脳腫瘍細胞死滅効果の検証]
本発明による超音波感受性リポソームの脳腫瘍治療効果を確認するために、脳腫瘍細胞であるU87MG細胞を用いて抗がん効果を検証した。U87MG細胞を96ウェルプレートに各ウェル当たり5×104個の細胞をシーディングした後、24時間培養した。細胞培養液として10%のFetal Bovine Serum(FBS)および1%の抗生剤が含有されたDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)を使用した。薬効の評価のために、ドキソルビシンが積載された004組成のリポソーム、Doxil組成のリポソーム、およびフリードキソルビシン(free doxorubicin)を様々な濃度(0、1.25、2.5、5、10μg/mL)で細胞に添加し、超音波照射の有無によるがん細胞死滅程度を比較分析するために、超音波を照射したリポソームおよび超音波を未処理したリポソームを指定されたウェルにそれぞれ処理した。薬物を処理した後4時間インキュベーションし、添加した薬物を全部除去した後、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)(0.01M、pH7.4)で3回洗浄し、前記細胞培養液で72時間培養しつつ、がん細胞の増殖程度を比較した。がん細胞死滅効果は、MTT分析を行うことで、波長570nmにおける吸光度を測定し、定量分析した。
【0181】
各リポソームのがん細胞死滅効果を確認した結果を
図3に示した。本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの場合、超音波処理前に比べて、超音波を処理した後に、がん細胞死滅効果が明確に増加した。一方、超音波感受性がないDoxilの場合、超音波処理前と処理後のがん細胞死滅効果に差異がなかった。特に、本発明による004組成リポソームは、Doxilリポソームに比べて、抗がん効果が約2倍以上さらに高いことが示された。前記結果は、本発明による血液脳関門透過用超音波リポソームが脳腫瘍細胞に対して優れた抗がん効果を有することを示す。
【0182】
[実施例6.血液脳関門開放のためのマイクロバブル条件の探索およびそれによるEvans blue透過効率の比較分析]
血液脳関門(BBB)の開放のための最適な超音波条件を導き出すために、Evans blueを用いて血液脳関門の開放程度を比較分析した。Evans blueは、961 Daの分子量を有する非常に小さいサイズの染料であり、血液脳関門の開放程度の分析に広く使用される。正常BALB/cヌードマウスで実験を行い、静脈注射を介してマイクロバブルを注入した後、強力集束超音波装置VIFU2000を用いて超音波を放出した。超音波とマイクロバブルの空洞現象(cavitation)を通じて血液脳関門を一時的に開放した後、Evans blue(3%、w/w)を直ちに静脈注射して体内注入し、24時間後に脳を摘出した。脳の摘出前に血液により発生しうる変数を除去するために、生理食塩水灌流(normal saline perfusion)を通じて血液を排出した。ホルムアミド(formamide)に脳組織を浸漬し、70℃で一晩中インキュベーションして、脳組織内のEvans blueを抽出し、UV-visを用いて波長670nmおよび740nmにおける吸光度を測定することによって、血液脳関門の開放程度を定量分析した。
【0183】
血液脳関門を開放させる機序である超音波とマイクロバブルの空洞現象に影響を及ぼすことができる要因としては、超音波の周波数、強度、デューティサイクル(duty cycle)、超音波放出時間などの超音波条件があり、また、マイクロバブルの数も影響を及ぼす。したがって、血液脳関門の開放が可能な超音波条件およびマイクロバブル数を確認するために、まず、マイクロバブルの数に応じた血液脳関門の開放程度を定量分析した。下記表8は、マイクロバブル数による血液脳関門開放程度の比較実験デザインを示す。
【0184】
【0185】
前記表8の各開放条件で血液脳関門を透過して脳内に蓄積されたEvans blueの浸透効率分析結果を
図4aに示した。
図4aのイメージおよびグラフから確認できるように、マイクロバブルの数が増加するほど血液脳関門の開放程度が増加し、Evans blueの浸透効率を向上させた。前記結果は、マイクロバブルの数が増加するほど超音波と共鳴するマイクロバブルの数が増加し、結果的に、空洞現象が起こり、染料の脳組織内浸透効率が増加すると判断される。また、Evans blueが浸透した脳組織に対してH&E染色を行った結果、Evans blue脳組織浸透による毒性がないことが確認された(
図4b)。
【0186】
[実施例7.血液脳関門開放のための超音波条件の探索およびそれによるEvans blue透過効率の比較分析]
実施例6に引き続いて、血液脳関門の開放のための超音波条件を確認するために、超音波条件(強度、周波数、およびデューティサイクル)および超音波処理時間に応じたEvans blueの透過効率を定量分析した。下記表9は、超音波条件による血液脳関門開放程度の比較実験デザインを示す。注入されたマイクロバブルの数は、5×106個/gに統一した。
【0187】
【0188】
マイクロバブルを静脈注射で投与した後直ちに超音波を処理し、超音波処理が完了した後、3%(w/w)Evans blueを静脈注射で投与した。24時間後、生理食塩水灌流を通じて血液が完全に除去された脳を摘出した。Evans blueの定量分析は、前記実施例5で行った方法と同一に行った。
【0189】
超音波条件によるEvans blueの浸透効果の分析結果を
図5aに示した。図示のように、超音波の強度および放出時間が増加するにつれて全般的に血液脳関門の開放効果が増加し、Evans blueの浸透効果も比例して増加することが示された。最も低い強度の超音波を処理した実験群(実験群1)でも、超音波に露出した部位でEvans blueが組織内に効果的に浸透した様相を示し、露出時間が増加するにつれて持続的に増加する様相を示した。また、超音波の強度およびデューティサイクルが増加するにつれてEvans blueの浸透効果が増加したことが示された。
【0190】
定量分析の結果、超音波の放出時間よりは、超音波強度の増加が、Evans blueの浸透効果をさらに向上させる要因であることが示された。また、デューティサイクルの増加は、超音波露出時間を増加させることと同様の様相のEvans blue浸透効率増加パターンを示した(
図5b)。
【0191】
ただし、上記の実験群のうち一部の個体の死亡が発生したところ、Evans blueの脳組織浸透が血液脳関門が安全に一時的に開放されて行われたか、または脳組織の損傷によって行われたかを調べてみるために、さらにH&E染色を行い、各超音波条件の脳組織安定性を評価した。その結果、
図5cに示されたように、強い強度の超音波に露出した実験群(実験群6および7)は、脳の全面積および超音波露出面積と比較して、非常に小さい領域で出血様相が観察されたが、低い強度の超音波に露出した実験群(実験群1~5)では、出血が発生しなかった。前記結果を基に、脳組織損傷を誘発しない安全な超音波条件は、実験群1、2、および6の超音波条件であることを確認した。
【0192】
[実施例8.血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの血液脳関門透過効率の分析]
本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームの血液脳関門透過効率を分析するために、近赤外線(NIR)波長を示すDiD蛍光染料でリポソームを標識し、in vivo Imaging System(IVIS)で蛍光分析を実施した。血液脳関門の開放のために、前記実施例7を通じて導き出した超音波条件である1W、1%-duty cycle、および1Hz-PRFの条件で60秒間超音波を放出させた。血液脳関門の開放は、前記実施例6および7に記載されたのと同じ方式で行い、超音波放出が終了し次第、リポソームを静脈投与で注入させた。リポソーム注入後24時間が経過した後に各臓器を摘出し、IVISで蛍光撮影を行った。蛍光イメージを分析し、各臓器別蛍光強度を定量分析することによって、血液脳関門の透過に最も最適なリポソーム組成を探索した。
【0193】
実験に使用されたリポソームのうち、004組成のリポソームを除いた残りのリポソームは、スフィンゴリピド(sphingolipid)の代表的な種類であるスフィンゴミエリン(sphingomyelin)が含有された組成である。スフィンゴミエリンは、血液脳関門を透過できることが知られており、血流内で長時間循環(long circulation)が可能であり、半減期が高いことが知られている。したがって、血液脳関門を効果的に通過して脳に蓄積され得る最適組成のリポソームを探すために、スフィンゴミエリンの組成比に応じたリポソーム別血液脳関門透過効率を比較分析した。実験に使用された各リポソームの組成は下記の表10の通りである。
【0194】
【0195】
表10による組成で製造されたリポソームをそれぞれ正常マウスに注入した後、実施例7で脳組織に安全な条件で確認された1W、1%DC、および60sの超音波条件で超音波を放出させた。各リポソーム別血液脳関門透過効率および臓器別分布結果を
図6に示した。
【0196】
臓器別分布様式を分析した結果、本実験に使用されたリポソームは、共通して肝臓で最も多く蓄積される傾向を示し、脾臓でも相当なレベルで蓄積されたことが示された。前記結果は、リポソームが約100~200nmのサイズを有することにより、肝臓でリポソームを外部物質として認識して体外に排出するためと判断される。また、DOPEが脾臓で蓄積される傾向があることが、以前の研究を通じて報告されたこともある。
【0197】
まず、超音波を放出しない実験群の脳を観察した結果、すべての組成のリポソームが検出されなかった。すなわち、リポソームの脳組織への浸透が血液脳関門により阻害されたことが示された。これは、一般的に血液脳関門が小分子(small molecules)レベルの物質のみを能動透過させるので、約100~200nmの大きいサイズを有するリポソームは、スフィンゴミエリンの透過機能にもかかわらず、血液脳関門を通過しないと判断される。
【0198】
一方、超音波およびマイクロバブルを用いて血液脳関門の開放を誘導した場合、リポソームの組成と関係なく、超音波に露出した部分でリポソームが検出された。スフィンゴミエリンの含有量の増加による脳組織内伝達効率の増加様相は特に観察されなかった。従来知られたスフィンゴミエリンの血液脳関門透過効果と比較してみれば、本発明によるリポソームは、約2~3倍ほどのサイズが大きい様相を示した。サイズが約20~50nmのリポソームの場合、血液脳関門を透過できる可能性があるが、100nmに達するリポソームは、血液脳関門を透過することが容易でなく、これを克服するために血液脳関門の開放を誘導した場合、血液脳関門の開放された経路が100nm以上の間隔を示さなければならないと判断される。
【0199】
また、スフィンゴミエリンがリポソームの血液脳関門透過効果に及ぼす影響を確認するために、まず、スフィンゴミエリンが添加されていない004組成のリポソームとその他スフィンゴミエリンを含む005組成のリポソームを比較分析した結果、同様のレベルで血液脳関門を透過することを確認した(
図7)。
【0200】
さらに、超音波条件のうちデューティサイクルを1または5%に設定し、004および005組成のリポソームの比較実験を進めた。その他の条件は、実施例7で確認した安全な超音波条件に設定した。その結果、
図7から確認できるように、1%デューティサイクルよりも、5%デューティサイクルが、2種のリポソームの両方の透過効率を向上させることが示された。また、持続時間(duration time)を増加させるほど蛍光強度が増加し、リポソームの血液脳関門透過効果が向上したことが分かった。前記結果は、デューティサイクル程度および超音波持続時間が増加するほどリポソームの血液脳関門透過率をさらに高めることができることを示す。
【0201】
[実施例9.血液脳関門透過用超音波感受性リポソームおよびDoxilリポソームの血液脳関門透過効果の比較]
本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームと非感応性リポソームであるDoxilの脳への伝達効果を比較するために、004組成のリポソームとDoxil組成のリポソームを製造して比較実験を進めた。実験方法は、前記実施例と同一に行い、IVISで蛍光強度を測定して、脳組織伝達程度を定量分析した。
【0202】
実験結果を
図8に示した。本発明による超音波感受性リポソーム(004組成のリポソーム)と非感応性リポソームのDoxilが全て超音波が放出された部位で蛍光が検出されたところ、超音波およびマイクロバブルの空洞現象によって2種のリポソームが全て血液脳関門を透過したことを確認した。しかしながら、本発明による超音波感受性リポソームの場合、Doxilリポソームと比較して、脳への伝達効果が2倍近く向上したことが示された。前記結果は、本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームが優れた超音波感受性を有するだけでなく、脳組織への浸透効果がさらに高いので、脳組織にさらに効果的に伝達され得ることを示す。
【0203】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は、血液脳関門透過用超音波感受性リポソームに関し、前記超音波感受性リポソームは、薬物の封入効率および超音波による薬物放出効果に優れているだけでなく、超音波刺激時に血液脳関門を効果的に透過することができる。特に、本発明による超音波感受性リポソームは、体内で長時間循環が可能で、血液脳関門透過効率にさらに優れ、脳腫瘍細胞に対する親和力が高く、腫瘍部位への伝達効果に優れる。したがって、本発明による超音波感受性リポソームは、脳疾患治療剤などを脳に伝達するための薬物伝達体として活用することができる。特に、本発明者らは、前記超音波感受性リポソームの薬物伝達効果をさらに向上させるために、血液脳関門を安定して開放できる最適な空洞現象(cavitation)の条件を発掘したところ、本発明による血液脳関門透過用超音波感受性リポソームと前記空洞現象の条件を結びつける場合、様々な脳疾患において優れた治療効果を得ることが期待される。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門(blood-brain barrier)透過用組成物。
【請求項2】
前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCが、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項3】
前記DSPCが、全リポソームに対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全リポソームに対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEが、全リポソームに対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールが、全リポソームに対して0.05~40乾燥重量%、および
前記lyso-PCが、全リポソームに対して0.5~10乾燥重量%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項4】
前記超音波感受性リポソームが、スフィンゴリピド(sphingolipid)およびポリソルベート(polysorbate)からなる群から選ばれた1つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項5】
DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)およびスフィンゴリピド(sphingolipid)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用組成物。
【請求項6】
前記DOPEが、全リポソームに対して5~80のモル比(%)で含まれ、
前記スフィンゴリピドが、全リポソームに対して5~80のモル比(%)で含まれることを特徴とする、請求項5に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項7】
前記超音波感受性リポソームが、DSPE-mPEG2000をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項8】
前記DSPE-mPEG2000が、全リポソームに対して1~20モル比(%)で含まれることを特徴とする、請求項7に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項9】
前記超音波感受性リポソームが、下記からなる群から選ばれた1つ以上の特徴を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物:
(a)100~200nmの粒度;および
(b)添加される全薬物に対して前記リポソームに担持される薬物の割合が50~100%である。
【請求項10】
前記超音波感受性リポソームが、超音波に露出したとき、血液脳関門を通過することを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項11】
前記組成物が、薬物を脳内に伝達するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項12】
前記薬物が、脳疾患治療剤であることを特徴とする、請求項11に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項13】
前記脳疾患が、脳腫瘍、細菌またはウイルスによる脳感染、パーキンソン病、脳炎、脳卒中、中風、アルツハイマー病、ルーゲリック病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、てんかん、血栓症、塞栓症、脳梗塞、中風、小梗塞、および脳循環代謝障害からなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項14】
前記脳疾患治療剤が、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、ビンデシン、ビノレルビン、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、テセタキセル、イクサベピロン、ロムスチン、プロカルバジン、リツキシマブ、トシリズマブ、テモゾロミド、カルボプラチン、エルロチニブ、イリノテカン、エンザスタウリン、ボリノスタット、ドキソルビシン、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ロイプロリド、プルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、バルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、マイトマイシン、プレドニゾン、アフィニトール、ミトキサントロン、レボドパ、カルビドパ、エンタカポン、トルカポン、ドーパミンアゴニスト、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、抗コリン剤、およびアマンタジンからなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項12に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項15】
前記超音波感受性リポソームが、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、または、TEA-SOSで水和されたことを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項16】
前記組成物が、超音波処理と順次にまたは同時に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項17】
前記超音波が、下記からなる群から選ばれた1つ以上の特徴を満たすことを特徴とする、請求項16に記載の血液脳関門透過用組成物:
(a)超音波の周波数は20kHz~3MHzである;および
(b)デューティサイクルは0.5~20%である。
【請求項18】
前記超音波処理が、マイクロバブルの投与と順次にまたは同時に行われることを特徴とする、請求項16に記載の血液脳関門透過用組成物。
【請求項19】
DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール、およびlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含む超音波感受性リポソームを有効成分として含む、血液脳関門透過用薬物伝達体。
【請求項20】
下記段階を含む、請求項1に記載の血液脳関門透過用組成物の製造方法:
(S1)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCからなる群から選ばれた1つ以上を第1有機溶媒に溶解する段階;
(S2)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム薄膜を製造する段階;および
(S3)前記リポソーム薄膜を水溶液で水和させる段階。
【請求項21】
前記第1有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール、およびエーテルからなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記段階(S1)の第1有機溶媒が、ポリソルベートが添加されたことを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項23】
脳を標的とする薬物伝達体を製造するための、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール、およびlyso-PCを含む超音波感受性リポソームの
使用。
【国際調査報告】