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特表2024-505710胆汁酸塩バクトセンサー並びに診断及び治療目的のその使用
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  • 特表-胆汁酸塩バクトセンサー並びに診断及び治療目的のその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】胆汁酸塩バクトセンサー並びに診断及び治療目的のその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240131BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240131BHJP
   C12N 15/66 20060101ALI20240131BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240131BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240131BHJP
   C07K 7/04 20060101ALI20240131BHJP
   C07K 14/245 20060101ALI20240131BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240131BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20240131BHJP
   A61K 38/02 20060101ALN20240131BHJP
   A61K 47/62 20170101ALN20240131BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/31
C12N15/66 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C07K19/00
C07K7/04
C07K14/245
C07K16/18
C12Q1/02
A61P3/04
A61P1/04
A61P35/00
A61P1/16
A61K47/46
A61K48/00
A61K47/59
A61K38/02
A61K47/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547647
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022052877
(87)【国際公開番号】W WO2022167653
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21305165.9
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513246469
【氏名又は名称】インサーム(インスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フン ジュ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA01X
4B065AA21X
4B065AA23X
4B065AA26X
4B065AA30X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE57
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC50
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZB261
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
血清及び尿の胆汁酸塩は、肝機能障害を早期に診断するためのバイオマーカーに相当するが、その現行の検出方法は実用的でなく、計量が困難である。本明細書において、本発明者らは、二量体化すると転写を活性化するE.コリのCadCシステムに接続したセンシングドメインとしてのVtrAを使用して合成胆汁酸塩受容体を設計した。システムの性能を、種々の選択したプロモーターに対してアッセイし、これらは、胆汁酸塩受容体の発現レベルの変化によって達し得る微調整可能な応答を示すことができる。本発明者らは、複数のラウンドのVtrAセンサーの誘導的進化を行うことによって、検出限界がより低く感受性がより高い一群の変異体を得た。最後に、本発明者らは、肝機能障害を有する患者からの試料における病的な胆汁酸塩濃度をこのバクトセンサーが検出できることを示す。本発明は、胆汁酸塩バクトセンサー並びに診断及び治療目的のその使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1における134番目のアミノ酸残基から253番目のアミノ酸残基の範囲であるアミノ酸配列と90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する「VtrA」ポリペプチドがDNA結合ドメインと融合された、融合タンパク質。
【請求項2】
前記DNA結合ドメインは、配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、EコリのCadC転写活性化因子DNA結合ドメインである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記VtrAポリペプチドは、前記DNA結合ドメインと直接又はリンカーを介してのいずれかで融合される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記VtrAポリペプチドは、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるリンカーを介して、EコリのCadC転写活性化因子DNA結合ドメインに融合される、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含み、原核生物の宿主細胞における発現を可能にする制御配列に作動可能に連結された、発現カセット。
【請求項8】
プロモーターは、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示す核酸配列をそれぞれが有するp14、p10、又はp9プロモーターからなる群より選択される、請求項7に記載の発現カセット。
【請求項9】
請求項6に記載のポリヌクレオチド又は請求項7に記載の発現カセットによって遺伝子学的に操作された原核生物の宿主細胞。
【請求項10】
バクテロイデス(Bacteroides)属、クロストリジウム(Clostridium)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)属、ユーバクテリウム(Eubacterium)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、エシェリキア(Escherichia)属、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属の細菌から選択される、請求項9に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項11】
E.コリである、請求項9に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項12】
配列番号2に示すアミノ酸配列を有するVtrCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、任意で前記ポリヌクレオチドは、配列番号9に示す核酸配列を有するプロモーターp5に作用可能に連結される、請求項9に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項13】
発現が請求項1に記載の融合タンパク質の制御下にあるアウトプット分子をコードする、少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドを含む、請求項9に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項14】
配列番号10のCadBAプロモーターに作用可能に連結したアウトプット分子をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項9に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項15】
前記アウトプット分子は蛍光タンパク質などの検出タンパク質である、請求項14に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項16】
前記アウトプット分子は治療用ポリペプチドである、請求項14に記載の原核生物の宿主細胞。
【請求項17】
試料における胆汁酸塩の存在を検出する方法であって、(i)少なくとも1つの請求項15に記載の原核生物の宿主細胞を準備すること、(b)結合する前記融合タンパク質のオリゴマー化、及びその後の前記検出タンパク質の発現を可能にするのに十分な時間、前記原核生物の宿主細胞を、前記胆汁酸塩を含むことが疑われる前記試料に接触させること、並びに(c)前記検出タンパク質の発現レベルを検出し、前記発現レベルは前記試料において存在する前記胆汁酸塩の量に相関することを含む、方法。
【請求項18】
対象が肝機能障害を有するか又は肝機能障害を有するリスクがあるかを判定する方法であって、(i)少なくとも1つの請求項9に記載の原核生物の宿主細胞を準備すること、(b)結合する前記融合タンパク質のオリゴマー化、及びその後の検出タンパク質の発現を可能にするのに十分な時間、前記原核生物の宿主細胞を、前記対象から得た試料に接触させること、並びに(c)前記検出タンパク質の発現レベルを検出し、前記発現レベルは前記試料に存在する胆汁酸塩の量に相関し、前記胆汁酸塩の量は、前記対象が肝機能障害を有するか又は肝機能障害を有するリスクがあるかを示すことを含む、方法。
【請求項19】
治療を必要とする対象における治療の方法であって、治療有効量の請求項16に記載の原核生物の宿主細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項20】
肥満、炎症性腸疾患、結腸直腸がん、肝疾患、及び肝胆道疾患を処置するための、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数の試験物質をスクリーニングする方法であって、(i)所定量の胆汁酸塩の存在下において、請求項15に記載の原核生物の宿主細胞の集団を前記複数の試験物質と接触させること、及び(ii)前記アウトプット分子の発現を調節することができる前記試験物質を選択することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、特に合成生物学及び肝臓学の分野のものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、代謝プロセス、解毒プロセス、及び免疫学的プロセスを連係して働かせる重要な器官である。肝炎、肝硬変、脂肪肝疾患、及びがんを含む肝疾患は、主要な公衆衛生上の問題であり、予防、診断、及び治療上のモニタリングのために大規模のスクリーニング方法を必要とする。肝臓の生検及び超音波に基づくエラストグラフィーは、肝疾患の診断及び進行のモニタリングの最も一般的な方法である。しかしながら、これらの技術は、高性能の設備や熟練した技術者を必要とすることから未だ限定的である。また、肝機能は、血清の酵素活性及びビリルビンを定量することによってモニタリングすることができるが、これらのマーカーは、損傷が既に進行しているときに検出可能であり、全面的に特異的ではない。肝機能は、複数の酵素活性を共に定量することによって通常モニタリングされ、これは、それらに特異性がないためである。血清及び尿の胆汁酸塩は、肝機能障害を早期に診断するための別のバイオマーカーであるが、その現行の検出方法は実用的でなく、計量が困難である。特許文献1は、胆汁酸塩センサー、特に、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)のBreR及びVFA0359などの胆汁センサータンパク質を使用する、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)における胆汁酸塩の転写センサーを公開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/049362号
【発明の概要】
【0004】
本発明は特許請求の範囲によって規定される。より具体的には、本発明は、胆汁酸塩バクトセンサー並びに診断及び治療目的のその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、VtrACバイオセンサーのアーキテクチャ及び機構を示す。CadCのDBDをVtrAの膜貫通ドメイン及びペリプラズムドメインと融合させる。CadC-VtrA及びVtrCはそれぞれP9及びP5プロモーターの制御下にある。VtrA/VtrCヘテロ二量体複合体と結合した胆汁酸塩は、CadC-VtrAのオリゴマー化を促進し、下流におけるGFPレポーターの発現を活性化する。
図2図2は、VtrACバイオセンサーの用量反応曲線を示す。濃度が増加する胆汁酸塩のタウロデオキシコール酸(TDCA)に対するVtrAC-EMeRALD受容体の伝達関数である。実験は、別々の3日においてトリプリケートで行った3つの実験の平均値である。エラーバー:+/-SD。RPU:参照プロモーター単位。
図3図3は、様々なタイプの胆汁酸塩に対するCadC-VtrACシステムの応答を示す。活性化細胞及び非活性化細胞をさらにゲートによって識別した。プロファイリングに使用した様々な胆汁酸塩を左側のy軸において表示する。
図4図4は、VtrAC-EMeRALDシステムの胆汁酸塩特異性プロファイルを示す。一晩の培養物からの細胞を、80μMの濃度で各胆汁酸塩を含むLB中で1:100に希釈し、37℃で16時間増殖させた後、フローサイトメトリーによって分析した。値はフローサイトメトリーデータの幾何平均値を示す。すべての実験は、別々の3日においてトリプリケートで行った3つの実験の平均値である。エラーバー:+/-SD。RPU:参照プロモーター単位。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(定義)
本明細書において使用するように、「アミノ酸残基」という用語は、任意の自然又は合成のアミノ酸残基を含むように用いられ、20個の自然起源のアミノ酸からなる群に含まれる、すなわち、アラニン(Ala又はA)、システイン(Cys又はC)、アスパラギン酸(Asp又はD)、グルタミン酸(Glu又はE)、フェニルアラニン(Phe又はF)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、リジン(Lys又はK)、ロイシン(Leu又はL)、メチオニン(Met又はM)、アスパラギン(Asn又はN)、プロリン(Pro又はP)、グルタミン(Gln又はQ)、アルギニン(Arg又はR)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、バリン(Val又はV)、トリプトファン(Trp又はW)、及びチロシン(Tyr又はY)残基からなる群より選択されるアミノ酸残基を示すように主に用いられる。
【0007】
本明細書において使用するように、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すように、本明細書において互換的に使用される。また、該用語は、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、又は標識成分とのコンジュゲーションなど、修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。ポリペプチドは、遺伝子治療の文脈で記載するとき、それぞれのインタクトなポリペプチド、又は、インタクトなタンパク質の望ましい生化学的機能を保持する任意のフラグメント若しくは遺伝子学的に操作したその誘導体を指す。
【0008】
本明細書において使用するように、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド又若しくはリボヌクレオチドを含む任意の長さのヌクレオチドの重合形態、又はその類似体を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドなどの修飾したヌクレオチド、及びヌクレオチド類似体を含み得、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ヌクレオチド構造の修飾は、存在する場合、ポリマーの形成前又は後になされ得る。ポリヌクレオチドという用語は、本明細書において使用するように、二本鎖及び一本鎖分子を互換的に指す。特定又は要求されない限り、ポリヌクレオチドである、本明細書に記載する本発明のいずれの実施形態も、二本鎖形態、及び二本鎖形態を構成することが既知である又は予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0009】
本明細書において使用するように、「同一性」という用語は、それぞれ2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列における、ヌクレオチド対ヌクレオチド又はアミノ酸対アミノ酸の厳密な対応関係を指す。同一性パーセントは、配列をアライメントし、アライメントした2つの配列間の厳密な一致数をカウントし、より短い配列の長さで除算し、その結果に100を乗算することで、2つの分子間の配列情報を直接比較することによって、決定することができる。本発明において、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するということは、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の同一性を有するということを意味する。配列同一性は多くの場合、同一性(又は類似性又は相同性)のパーセンテージとして判定され、そのパーセンテージが高いほど2つの配列の類似性が高い。比較のための配列アライメントの方法は当該技術において周知である種々のプログラム及びアライメントアルゴリズムが、Smith及びWaterman、Adv.Appl.Math.、2:482、1981;Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.、48:443、1970;Pearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:2444、1988;Higgins及びSharp、Gene、73:237-244、1988;Higgins及びSharp、CABIOS、5:151-153、1989;Corpet等、Nuc.Acids Res.、16:10881-10890、1988;Huang等、Comp.Appls Biosci.、8:155-165、1992;並びにPearson等、Meth.Mol.Biol.、24:307-31、1994)に記載されている。Altschul等、Nat.Genet.、6:119-129、1994には、配列アライメント法及び相同性の算出に関する詳細な考察が記載されている。一例として、アライメントツールであるALIGN(Myers and Miller,CABIOS 4:11-17,1989)又はLFASTA(Pearson and Lipman,1988)を用いて配列比較を行うことができる(Internet Program(商標),1996,W.R.Pearson and the University of Virginia,fasta20u63 version 2.0u63,1996年12月に公開)。ALIGNでは配列全体を互いに比較し、LFASTAでは局所類似の領域を比較する。これらのアライメントツール及びそれぞれのチュートリアルは、例えばインターネット上のNCSAウェブサイトで入手可能である。あるいは、約30個を超えるアミノ酸のアミノ酸配列の比較には、デフォルトのパラメーター(ギャップ存在コスト11、残基あたりのギャップコスト1)に設定したデフォルトのBLOSUM62マトリックスを用いて、Blast2 sequences機能を使用することができる。短いペプチド(約30個より少ないアミノ酸)のアライメントを行う際には、デフォルトのパラメーター(開始ギャップペナルティ9、伸長ギャップペナルティ1)に設定したPAM30マトリックスを用いて、Blast2 sequences機能を使用してアライメントを行う必要がある。BLAST配列比較システムは、例えばNCBIウェブサイトから利用可能であり、Altschul等、J.Mol.Biol.、215:403-410、1990;Gish及びStates、Nature Genet.、3:266-272、1993;Madden等、Meth.Enzymol.、266:131-141、1996;Altschul等、Nucleic Acids Res.、25:3389-3402、1997;並びにZhang及びMadden、Genome Res.、7:649-656、1997も参照される。
【0010】
本明細書において使用するように、「由来する」という表現は、第1の成分(例えば第1のポリペプチド)又は第1の成分の情報が別の第2の成分(例えば第1のポリペプチドとは異なる第2のポリペプチド)を単離する、導き出す、又は作製するために使用されるプロセスを指す。
【0011】
本明細書において使用するように、「融合タンパク質」という用語は、単一の天然ポリペプチドには通常存在しない、少なくとも2つのポリペプチドドメインを有する、単一のポリペプチド鎖を指す。したがって、自然起源のタンパク質は、本明細書において使用するように、「融合タンパク質」ではない。好ましくは、目的のポリペプチド(例えばVtrA)は、ペプチド結合を介して少なくとも1つの異種ポリペプチド(例えばDNA結合ドメイン)と融合され、融合タンパク質はまた、別個のタンパク質由来のアミノ酸部分同士の間のアミノ酸の連結領域を含むことができる。
【0012】
本明細書において使用するように、「異種ポリペプチド」という用語は、上述の異種ポリペプチドが融合した同じタンパク質由来ではないポリペプチドを指す。
【0013】
本明細書において使用するように、「リンカー」という用語は、融合タンパク質において目的のポリペプチドを異種ポリペプチドに連結する少なくとも1つのアミノ酸の配列を指す。そうしたリンカーは、立体障害を防ぐために有用であり得る。典型的に、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、又は70個のアミノ酸を含む。
【0014】
本明細書において使用するように、「VtrA」という用語は、オリゴマー化を介して活性化される、ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)の膜結合型調節因子を指す。また、VtrAのC末端ドメインは、胆汁酸塩と結合するVtrCと複合体を形成することが示されている。したがって、VtrA/VtrC複合体が胆汁酸塩を感知してVtrAのDNA結合ドメインを活性化することが提案されている。VtrAの例のアミノ酸配列を配列番号1として示し、VtrCの例のアミノ酸配列を配列番号2として示す。
配列番号1>tr|Q87GI4|Q87GI4_VIBPA Putative transcriptional regulator ToxR OS=Vibrio parahaemolyticus serotype O3:K6 (strain RIMD 2210633) OX=223926 GN=VPA1332 PE=1 SV=1。膜貫通ドメインを、丸括弧、角括弧、及び亀甲括弧にて示す。ペリプラズムセンシングドメインを丸括弧及び山括弧にて示す。
MTSKKYRIDQKILSSDSPFLISLGSQDRVKLGTHEHLVLLALCEQPGTLLDKETLIEKGWPGKFVTDSSLTQAIRNIRAHLNDNGKSQKHIKTIAKKGYLIEKDYVQSLEVIDDKNINETESIRKLVTLTKRN([〔ILLISIILQLAFIIYVAYSY〕]〈TSIFVSSTAKDDYPSLSFQQDYVYIFSSDFQLSEELGVALINALSAKEIVPERLYVMLNDKTISFSFISKNKKSKNRVLSTEKKLNYKHISEYIVNEIEY〉)
配列番号2>VtrC sequence
MKLNIKRLHLSLTLMSVVMLLVIIYNNFFQPVHFYETSYKYQAADSTYMHDVAINVSIKGNHFTSDIIIRELVKSENKNYYNVIGHGDIIQKNTHQYYLNFDNIDVYTGTNKANMKPYKEPTSISSLINKSNNIRVVYLSEEYVVVEFFFYDGQIITLHRY
【0015】
本明細書において使用するように、「DNA結合ドメイン」は、特定のDNA配列(例えばゲノムDNA配列)に結合できるモチーフを指すが、これに限定されない。DNA結合ドメインは、一本鎖又は二本鎖のDNAを認識して結合する少なくとも1つのモチーフを有する。DNA結合ドメインは、配列特異的又は非配列特異的にDNAと相互作用することができる。
【0016】
本明細書において使用するように、「CadC転写活性化因子」という用語は、当該技術におけるその一般的な意味を有し、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)の膜内在性転写調節因子CadCを指す。CadCは、適度な酸性ストレスに適応させる同時に利用可能なリジンによって、外部低pHにおいてcadBAオペロンの発現を活性化する。CadCは、単一のポリペプチド内の感覚性シグナル伝達とDNA結合活性とを組み合わせたToxR様タンパク質の代表的なものである。特に、CadCは、C末端のペリプラズムpHセンシングドメイン、単一の膜貫通ヘリックス、及びN末端の細胞質翼状ヘリックスターンヘリックスDNA結合ドメインから構成される(Buchner S,Schlundt A,Lassak J,Sattler M,Jung K.Structural and Functional Analysis of the Signal-Transducing Linker in the pH-Responsive One-Component System CadC of Escherichia coli.J Mol Biol.2015 Jul 31;427(15):2548-61)。CadCは、そのC末端のペリプラズムpHセンシングドメインを介して二量体化する。したがって、「EコリのCadC転写活性化因子DNA結合ドメイン」という表現は、そのC末端の融合ドメインのオリゴマー化を介してその機能を回復することができるCadCの細胞質ドメインを指す。
【0017】
本明細書において使用するように、「組換え」という用語は、例えば、化学合成、又は遺伝子工学技術によるアミノ酸若しくは核酸の単離セグメントの操作による、2つ別個の配列セグメントの人工的な組合せを指す。
【0018】
本明細書において使用するように、「発現カセット」という用語は、適切な場合において、上述の発現カセットに組み込んだ目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を促すことができる核酸配列を指す。発現カセットは、宿主細胞に導入すると、なかでも、目的のポリペプチドをコードする組み込んだポリヌクレオチドをRNAに転写して、その後、通常さらにプロセシングして、最後に目的のポリペプチドへと翻訳するように、細胞の機構を誘導することができる。発現カセットは、以下にさらに詳細に記載するように、発現ベクター中に含むことができる。本発明における発現カセットの個々の要素を、後で詳細に説明する。
【0019】
本明細書において使用するように、「プロモーター」という用語は、目的のポリヌクレオチドの転写を促す核酸配列を指す。プロモーターは、目的のポリヌクレオチドに作動可能に連結される。また、プロモーターは、プロモーター/エンハンサー成分の一部を形成し得る。「プロモーター」成分と「エンハンサー」成分との物理的な境界は常に明確であるわけではないが、「プロモーター」という用語は、通常、RNAポリメラーゼ及び/又は任意の付随する因子が結合して転写を開始する核酸分子の部位を指す。エンハンサーは、一時的かつ空間的に、プロモーター活性を増強する。広範囲の細胞型で転写活性のある多くのプロモーターが、先行技術において既知である。
【0020】
本明細書において使用するように、「作用可能に連結する」という用語は、2つのポリヌクレオチド間、特に発現調節配列(例えばプロモーター)と目的のポリヌクレオチドとを連結することを指す。
【0021】
本明細書において使用するように、「ベクター」という用語は、核酸配列を標的細胞に導入することができる物質を指す(例えば、非ウイルスベクター、微粒子状担体、及びリポソーム)。典型的に、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、及び「遺伝子導入ベクター」は、目的の核酸の発現を誘導することができ、核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸コンストラクトを意味する。したがって、上述の用語は、クローニング及び発現媒体、並びにウイルスベクターを含む。
【0022】
本明細書において使用するように、「宿主細胞」という用語は、原核生物の宿主細胞を含む、外来性ポリペプチド又はタンパク質の作製において一般に使用する数多くの細胞のいずれかとし得る。
【0023】
本明細書において使用するように、「プロバイオティクス」という用語は、十分な量で取り込まれ、従来の栄養上の効果を超えて健康、快適性、及びウェルネスにポジティブな効果を及ぼす、生存微生物を指すことを意味する。プロバイオティクス微生物は、「適切な量で投与したときホストに健康上の恩恵を与える生存微生物」として定義されている(FAO/WHO、2001)。
【0024】
本明細書において使用するように、「遺伝子導入」という用語は、例えばエレクトロポレーション、カルシウム-リン酸沈殿、DEAE-デキストラン遺伝子導入など、原核生物又は真核生物の宿主細胞に外来性DNAを導入するために一般に使用する多種多様な技術を指す。当業者に既知である任意の従来の手段によって、宿主細胞に本発明のベクターで「遺伝子導入」することができる。例えば、遺伝子導入は一時的な遺伝子導入とすることができる。
【0025】
本明細書において使用するように、「胆汁酸塩」という用語は、当該技術におけるその一般的な意味を有し、コレステロールから肝臓において合成され、グリシン又はタウリンとコンジュゲートし、コレステロール及びレシチンとともに胆汁に分泌される。例の胆汁酸塩は、ジヒドロキシコール酸、例えば、デオキシコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸、及びタウロケノデオキシコール酸、並びにトリヒドロキシコール酸、例えばコール酸、グリココール酸、及びタウロコール酸の塩を含む。アルカリ塩は、ナトリウム及びカリウムを含む。
【0026】
本明細書において使用するように、「アウトプット分子」という用語は、特定のシグナル、例えば胆汁酸塩の存在に対応して発現されるポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。
【0027】
本明細書において使用するように、「治療用ポリペプチド」という用語は、対象に治療作用を及ぼす任意の種類のタンパク質又はポリペプチドを指す。「治療用ポリヌクレオチド」という用語は、対象に治療作用を及ぼす任意の種類のポリヌクレオチドを指す。
【0028】
本明細書において使用するように、「対象」という用語は本明細書において使用するように任意の哺乳動物生体を指す。対象という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿並びにサル種、家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ、飼育哺乳動物、例えばイヌ及びネコ、げっ歯動物を含む実験動物、例えばマウス、ラット、及びモルモット等を含むが、これらに限定されない。上述の用語は、特定の年齢又は性別を指すものではない。したがって、成人及び新生児の対象、並びに胎児は、雄性又は雌性でも、その範囲に含むことを意図する。
【0029】
本明細書において使用するように、「試料」という用語は、測定される胆汁酸塩が溶液中に存在することができる、任意の体積の液体又は懸濁液を指す。
【0030】
本明細書において使用するように、「肝(liver)機能障害」又は「肝(hepatic)機能障害」という用語は、肝機能が正常な状態に対して低下した状態を指す。肝(hepatic)機能障害は、肝疾患において特徴的である。
【0031】
本明細書において使用するように、「非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease)」という用語は、当該技術におけるその一般的な意味を有し、極端に多いアルコール摂取の履歴のない個体の肝細胞における脂肪の蓄積からもたらされる障害のスペクトルを指すように用いられる。NAFLDは、最も軽度な形態では、脂肪肝を指す。また、NAFLDという用語は、また、より重度で進行した形態の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝細胞癌、及びウイルス誘発(例えばHIV、肝炎)脂肪肝疾患を包含するように用いられる。
【0032】
本明細書において使用するように、「薬剤誘発性肝疾患」又は「中毒性肝傷害」という用語は、活性剤が肝臓に傷害を引き起こした場合を表すように使用される。
【0033】
本明細書において使用するように、「アルコール性肝疾患」又は「アルコール性肝傷害」という用語は、少なくとも部分的にアルコール摂取によって引き起こされる肝細胞における脂肪蓄積に起因する疾患を指す。例として、アルコール性単純性脂肪肝、アルコール性脂肪性肝炎(alcoholic steatohepatitis)(ASH)、アルコール性肝線維症、及びアルコール性肝硬変等の疾患を含むが、これらに限定されない。アルコール性脂肪性肝炎(alcoholic steatohepatitis)はまた、アルコール性脂肪肝炎(alcoholic fatty hepatitis)とも呼ばれ、アルコール性肝線維症を含むことに留意する必要がある。
【0034】
本明細書において使用するように、「リスク」という用語は、本発明の文脈では、ある事象が特定の期間において起こる確率に関し、対象の「絶対」リスク又は「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、関連する期間コホートにおいて実際の測定後観察に対して、または関連する期間に追跡した統計学的に有効な歴史的コホートから生じた指標値に対してのいずれかで、測定することができる。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクのいずれかと比較した、対象の絶対リスクの比率を指し、臨床的リスク因子をどのように評価するかによって変化し得る。また、所定の試験結果における陰性事象に対する陽性事象の割合であるオッズ比も、非変換に一般に使用される(オッズは式p/(1-p)に従うものであり、式中pは事象の確率であり、(1-p)は事象なしの確率である)。「リスク評価」又は「リスクの評価」は、本発明の文脈において、事象又は疾患状態が生じ得る確率、オッズ、又は尤度や、事象又は1つの疾患状態から別の状態へのコンバージョンの発生率を予測することを包含する。また、リスク評価は、これまでに測定した集団に対して絶対的又は相対的な意味で、将来の臨床上のパラメーター、従来の実験室におけるリスク因子の値、又は再発の他の指標の予測を含むこともできる。本発明の方法は、コンバージョンのリスクの連続的又はカテゴリー的測定を行って、コンバージョンのリスクがあると規定された対象のカテゴリーのリスクスペクトルを診断し規定するために使用してもよい。カテゴリー的場合では、本発明は、正常な対象コホートとより高いリスクにあるその他の対象コホートとを区別するために使用することができる。一部の実施形態において、本発明は、正常であるものからリスクがあるものを区別するために使用してもよい。
【0035】
本明細書において使用するように、「肝移植」という用語は、当該技術における一般的な意味を有し、ドナーの肝臓を部分的又は全体的に切除して、レシピエントに部分的又は全体的に移植する、部分又は全体肝移植を含む。部分肝移植は、手術方法によって、同所性部分肝移植及び異所性部分肝移植等に分類され、本発明はそれらのいずれにも適用することができる。部分肝移植では、レシピエントにおける通常の肝臓の体積の約30~50%に対応する、ドナーの肝移植片又は部分肝移植片を、典型的に、肝臓を全体的に切除したレシピエントにグラフトとして移植する。
【0036】
本明細書において使用するように、「移植片拒絶」という用語は、本明細書で使用するように、レシピエントにより発現される活性免疫応答による器官の機能的及び構造的劣化として規定され、器官機能障害の非免疫学的原因とは別である。移植片拒絶は急性又は慢性であり得る。「急性拒絶」という用語は、本明細書において使用するように、移植後の最初の5~60日後に発症する移植器官の拒絶を指す。これは、一般に細胞媒介免疫傷害の徴候である。遅延型過敏症及び細胞毒性機構の両方が関与すると考えられる。免疫傷害は、HLA、並びに場合によっては尿細管上皮及び血管内皮によって発現される他の細胞特異的抗原を対象とする。「慢性拒絶」という用語は、本明細書において使用するように、移植後の最初の30~120日後に発症する移植器官の拒絶を指す。また、「慢性拒絶」という用語は、移植後数ヶ月又は数年で起こるとともに、最終的に進行性腎機能喪失と関連するアログラフトの線維症及び硬化症を引き起こす、免疫学的傷害(例えば、慢性拒絶)及び非免疫学的損傷(例えば、高血圧性腎硬化症又はシクロスポリンAのような免疫抑制剤の腎毒性)の組合せの結果を指す。
【0037】
本明細書において使用するように、「処置」又は「処置する」という用語は、疾患にかかるリスクを有する又は疾患にかかったと疑われる患者、及び病気である又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の処置を含む、予防又は抑止処置、及び根治又は疾患修飾処置の両方を指し、臨床における再発の抑制を含む。処置は、障害若しくは再発の障害の発症を抑止、治癒、遅延する、障害若しくは再発の障害の重篤度を軽くする、若しくは障害若しくは再発の障害の1つ以上の症状を改善するため、又はそうした処置が存在しない場合に予想される生存を超えて患者の生存を延長させるため、医学的障害を有する又は最終的にそうした障害に罹患し得る患者に行うことができる。「治療レジメン」は、病気の処置のパターン、例えば治療時に使用する投薬のパターンを意味する。治療レジメンは、誘導レジメン及び維持レジメンを含むことができる。「誘導レジメン」又は「誘導期間」という表現は、疾患の初期の処置に使用する治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。誘導レジメンの全体的な目的は、処置レジメンの初期期間に高レベルの薬剤を患者に提供することである。誘導レジメンは、「負荷レジメン」を(部分的又は全体的に)用いることができ、これは、医師が維持レジメン時に使用し得るものより多い用量の薬剤を投与すること、医師が維持レジメン時に薬剤を投与し得るより頻回で薬剤を投与すること、又はその両方を含むことができる。「維持レジメン」又は「維持期間」という表現は、例えば患者を長期間(数か月又は数年)寛解の状態に維持するため、病気の処置時に患者の維持に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、持続的治療(例えば、薬剤を一定の間隔で、例えば毎週、毎月、毎年等投与すること)、または断続的治療(例えば、中断を含む処置、断続的処置、再発における処置、もしくは所定の特定の条件[例えば痛み、疾患の徴候等]を満たした上での処置)を用いることができる。
【0038】
本明細書において使用するように、「有効量」という用語は、有益な効果を得るための原核生物の宿主細胞の十分な量を指す。
【0039】
本明細書において使用するように、「バイオセンサーデバイス」という用語は、当該技術におけるその一般的な意味を有し、センサーと認識分子との相互作用を、電気信号などの信号に変換して、標的を測定又は検出するデバイスを指す。
【0040】
本明細書において使用するように、「エンドヌクレアーゼ」という用語は、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する酵素を指す。デオキシリボヌクレアーゼIなどその一部は、比較的非特異的に(配列に関係なく)DNAを切断するが、典型的に制限エンドヌクレアーゼ又は制限酵素と呼ばれる多くのものが、極めて特異的なヌクレオチド配列においてのみ切断する。エンドヌクレアーゼに基づいたゲノム不活化の背後にある機序は、一般に、DNAの一本鎖又は二本鎖の切断という第一ステップを必要とし、これはその後、DNA修復のための2つの別個の細胞性機序(エラーを起こしがちな非相同末端結合(NHEJ)及び高忠実度の相同組換え修復(HDR))を誘発し得、これがDNAの不活化に利用され得る。DNA標的エンドヌクレアーゼは、自然起源のエンドヌクレアーゼ(例えば、細菌メガヌクレアーゼ)とすることができ、又は、人工的に作製することができる(例えば、とりわけ操作したメガヌクレアーゼ、TALEN、若しくはZFN)。本明細書において使用するように、「TALEN」という用語は、当該技術におけるその一般的な意味を有し、標的遺伝子の編集に使用することができる人工的なヌクレアーゼである転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼを指す。本明細書において使用するように、「ZFN」又は「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」という用語は、当技術におけるその一般的な意味を有し、標的遺伝子の編集に使用することができる人工的ヌクレアーゼであるジンクフィンガーヌクレアーゼを指す。本明細書において使用するように、「CRISPR関連エンドヌクレアーゼ」という用語は、当技術におけるその一般的な意味を有しており、短い反復塩基配列を含有している原核生物DNAのセグメントである、関連している規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列を指す。
【0041】
本明細書において使用するように、「食品」という用語は、液体(すなわち、飲料)、固体、又は半固体の食餌用組成物、特に、追加の栄養摂取又は食品補助組成物を必要としない総合食品組成物(代替食品)を指す。本明細書において使用するように、「食品成分」又は「飼料成分」という用語は、栄養補助剤として機能性食品又は機能性食材に添加する又は添加することができる製剤を含む。「栄養食品」又は「栄養補助」食品若しくは「機能性」食品は、健康に有益な効果をもたらす成分又は生理学的機能を改善することが可能な成分を含有する食材を意味する。「食品補助剤」とは、通常の食事を補完する目的を有する食材を意味する。
【0042】
(ポリペプチド)
本発明の第1の目的は、配列番号1における134番目のアミノ酸残基から253番目のアミノ酸残基の範囲であるアミノ酸配列と90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する「VtrA」ポリペプチドをDNA結合ドメインと融合させた、融合タンパク質に関する。
【0043】
一部の実施形態において、VtrAポリペプチドは、DNA結合ドメインと直接又はリンカーを介してのいずれかで融合される。一部の実施形態において、DNA結合ドメインのC末端はVtrAポリペプチドのN末端と融合される。
【0044】
一部の実施形態において、DNA結合ドメインはEコリのCadC転写活性化因子DNA結合ドメインである。一部の実施形態において、EコリのCadC転写活性化因子DNA結合ドメインは、配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
配列番号3>E. Coli CadC transcription activator DNA binding domain
MQQPVVRVGEWLVTPSINQISRNGRQLTLEPRLIDLLVFFAQHSGEVLSRDELIDNVWKRSIVTNHVVTQSISELRKSLKDNDEDSPVYIATVPKRGYKLMVPVIWY
【0045】
一部の実施形態において、VtrAポリペプチドは、リンカーを介してEコリのCadC転写活性化因子DNA結合ドメインと融合される。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号4に示すアミノ酸配列からなる。
配列番号4>Linker
SEEEGEEIMLSSPPPIPEAVPATDSPSHSLNIQNTATPPEQSPVKSKR
【0046】
一部の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。
配列番号5>〔CadC DNA binding domain〕 - linker - ([〔transmembrane domain〕] - periplasmic sensing domain)
〔MQQPVVRVGEWLVTPSINQISRNGRQLTLEPRLIDLLVFFAQHSGEVLSRDELIDNVWKRSIVTNHVVTQSISELRKSLKDNDEDSPVYIATVPKRGYKLMVPVIWY〕{SEEEGEEIMLSSPPPIPEAVPATDSPSHSLNIQNTATPPEQSPVKSKR}([〔ILLISIILQLAFIIYVAYSY〕]〈TSIFVSSTAKDDYPSLSFQQDYVYIFSSDFQLSEELGVALINALSAKEIVPERLYVMLNDKTISFSFISKNKKSKNRVLSTEKKLNYKHISEYIVNEIEY〉)
【0047】
本明細書に開示するポリペプチドは、以下のものに限らないが、単独又は組合せの、任意の化学的、生物学的、遺伝学的、又は酵素学的技術など、当該技術においてそれ自体既知の任意の技術によって作製することができる。当業者は、所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、ポリペプチドの作製のための標準的方法によって上述のポリペプチドを容易に作製できる。例えば、これは、好ましくは市販で入手可能なペプチド合成装置(Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)により製造されているものなど)を使用して、周知の固相法を使用して、製造者の説明書に従って合成することができる。あるいは、本発明のポリペプチド及び融合タンパク質は、現在当該技術において周知であるような組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、これらのフラグメントは、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込むこと、及び、該所望のポリペプチドを発現する適切な真核又は原核の宿主にそうしたベクターを導入すること、そこから後に周知の技術を使用して単離することの後に、DNA発現生成物として得ることができる。
【0048】
(ポリヌクレオチド)
本発明のさらなる目的は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0049】
本発明のさらなる目的は、本発明の融合タンパク質をコードするとともに、原核生物の宿主細胞における発現を可能にする制御配列に作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットに関する。
【0050】
適切な発現制御配列は、標的の宿主生物体に適用可能なプロモーターを含む。原核生物体の多様な宿主のためのそうしたプロモーターは当業者に周知であり、文献に記載されている。例えば、そうしたプロモーターは、自然起源の遺伝子から単離することができる、又は合成若しくはキメラプロモーターとすることができる。同様に、プロモーターは、標的のゲノムに既に存在し得、例えば相同組換えなど、当該技術において既知の適切な技術によってポリヌクレオチドに連結し得る。
【0051】
一部の実施形態において、プロモーターは、それぞれ配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示す核酸配列を有するp14、p10、又はp9プロモーターからなる群より選択される。
配列番号6>P14
TTGACAATTAATCATCCGGCTCGTATAATGTGTGGA
配列番号7>P10
TTTCAATTTAATCATCCGGCTCGTATAATGTGTGGA
配列番号8>P9
TTGCCTCTTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGA
【0052】
本発明における発現カセットは、特に、ベクター又はゲノムDNAなどの標的ポリヌクレオチドへの簡便な挿入を意図している。この目的で、発現カセットは、例えば、制限酵素認識部位又は例えばリコンビナーゼによって触媒されるような相同組換えの標的配列など、特定の配列位置からの除去又はそれへの挿入を促進する、その5’及び3’隣接部のヌクレオチド配列を好ましくは備える。
【0053】
(ベクター及び宿主細胞)
本発明のさらなる目的は、遺伝子工学において従来より使用される、本発明のポリヌクレオチド及び発現カセットを含むベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルス、及びバクテリオファージに関する。
【0054】
一部の実施形態において、本発明のベクターは、原核生物の宿主細胞の形質転換に適する。組換えベクターを作製するため、当業者には周知である方法を使用することができる。本発明のポリヌクレオチド又は発現カセットに加え、ベクターは、適切な宿主細胞において適切な条件下での上述のベクターの選択を可能にするさらなる遺伝子、例えばマーカー遺伝子を含むことができる。一般に、ベクターはまた、1つ以上の複製起点を含む。遺伝子工学において、例えば原核生物の宿主細胞では、本発明のポリヌクレオチド又はこれらの分子の一部をプラスミドに導入することができる。発現ベクターは文献に広く記載されている。一般に、それは選択マーカー遺伝子及び選択した宿主における複製を保証する複製起点だけでなく、細菌性プロモーター及び多くの場合転写の終止シグナルを含む。一般に、プロモーターと終止シグナルとの間に、コードするヌクレオチド配列の挿入が可能な少なくとも1つの制限部位又はポリリンカーが存在する。遺伝子発現の意図的な制御を可能とする、遺伝子及び誘導性プロモーターの恒常的発現を保証するプロモーターの使用が可能である。これらの特性を有する細菌性プロモーター配列は、文献において詳細に記載されている。微生物(例えばE.コリ)における発現のための調節配列は、文献において十分に記載されている。また、誘導性プロモーターも可能である。このプロモーターは、多くの場合、恒常性プロモーターよりも高いタンパク質収量をもたらす。
【0055】
本発明のさらなる目的は、本発明の融合タンパク質を発現可能な原核生物の宿主細胞を作製する方法に関し、該方法は、上述の本発明のポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターで細胞を遺伝子学的に操作することを含む。
【0056】
本発明のさらなる目的は、上述の本発明のポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターで遺伝子学的に操作した原核生物の宿主細胞、及び、そうした形質転換された細胞に由来し、本発明のポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターを含む細胞、及び、上述のこれを作製する方法によって得られる細胞に関する。
【0057】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌のなかから選択される。
【0058】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、非病原性細菌のなかから選択される。一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、細菌フローラなどの通常の体内エコシステムに由来する細菌のなかから選択される。一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、消化管の通常の体内エコシステムに由来する非病原性細菌のなかから選択される。消化管の通常のフローラの一部である非病原性細菌の非限定的な例は、バクテロイデス(Bacteroides)属、クロストリジウム(Clostridium)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)属、ユーバクテリウム(Eubacterium)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、エシェリキア(Escherichia)属、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属を含む。
【0059】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、嫌気性細菌細胞(例えば、増殖に酸素を必要としない細胞)のなかから選択される。嫌気性細菌細胞は、例えばバクテロイデス種及びクロストリジウム種などの偏性嫌気性細胞を含む。ヒトにおいて、例えば、嫌気性細菌細胞は消化管において最も多く見受けられる。
【0060】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、食品グレードの細菌から選択される。一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、プロバイオティクスである。
【0061】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、E.コリである。
【0062】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、ゲノムに安定的に組み込んだ、導入ポリヌクレオチドを含むように、遺伝子学的に操作される。本発明におけるポリヌクレオチド又はベクターによる原核生物の宿主細胞の形質転換は、標準的方法によって行うことができる。例えば、塩化カルシウムによる遺伝子導入を、原核生物の宿主細胞に一般に利用することができる。特にpH値、温度、塩濃度、曝気、抗生剤、ビタミン、微量元素などに関して、使用する特定の原核生物の宿主細胞の要件を満たす栄養性培地において、原核生物の宿主細胞を培養する。
【0063】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するVtrCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、上述のポリヌクレオチドは、配列番号9に示す核酸配列を有するプロモーターp5に作用可能に連結される。
配列番号9>P5 promoter
TTGACAATTAATCATCCGGCTCGTAATTTATGTGGA
【0064】
一部の実施形態において、本発明の原核生物の宿主細胞は、その発現が本発明の融合タンパク質の制御下にあるアウトプット分子をコードする、少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドを含む。
【0065】
特に、融合タンパク質に胆汁酸塩が結合することで、そのオリゴマー化を誘発するので、CadC転写活性化因子DNA結合ドメインをオリゴマー化し、その後、これが、CadBAプロモーターの制御下に置かれたアウトプット分子をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドの発現を活性化することができる。
【0066】
したがって、本発明の原核生物の宿主細胞は、CadBAプロモーターに作用可能に連結したアウトプット分子をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。CadBAプロモーターの例の核酸は、配列番号10によって示される。
配列番号10>PCadBA
ATCCATTGTAAACATTAAATGTTTATCTTTTCATGATATCAACTTGCGATCCTGATGTGTTAATAAAAAACCTCAAGTTCTCACTTACAGAAACTTTTGTGTTATTTCACCTAATCTTTAGGATTAATCCTTTTTTCGTGAGTAATCTTATCGCCAGTTTGG
【0067】
一部の実施形態において、アウトプット分子はポリペプチドである。
【0068】
一部の実施形態において、アウトプット分子は、生物学的又は物理的手段によって検出することができる検出タンパク質である。
【0069】
一部の実施形態において、検出タンパク質は蛍光タンパク質である。蛍光タンパク質の出現により、光学的手段で容易に検出可能な非侵襲的細胞内標識を可能とした。オワンクラゲ(Aequorea Victoria)由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)は、現在、多くの生物体で最も広く使用されているレポーター遺伝子である。様々なスペクトル特性を有する複数の変異体が開発されている。一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、識別される蛍光を与えるエネルギー移動を示す蛍光タンパク質の様々な組合せを含む。一部の実施形態において、検出タンパク質は発光タンパク質のなかから選択される。特定の細菌(例えば、ビブリオ・フィシェリ)は、ルシフェリンを切断して青色光を発光させるルシフェラーゼを発現する、自己誘導性発光遺伝子を有する。細菌は、シグナル分子であるN-アシルホモセリンラクトン(N-acyl homoseine lactone)(AEL)を生成し、これは、細菌細胞に入って、AHLシンセターゼをコードする遺伝子LuxI及びAHL依存性転写活性化因子をコードするLuxRの転写活性化を誘導する。細胞内のAHL濃度が十分に高いと、LuxR活性化因子への結合及び発光遺伝子の転写が引き起こされる。
【0070】
あるいは、検出タンパク質は、検出可能な特性を有し、かつ、細胞から分泌される、融合タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質-Fv)とすることができる。したがって、本発明の融合タンパク質に結合する胆汁酸塩によって分泌を誘発することができる。この場合、検出タンパク質は、胆汁酸塩の結合に比例するのではなく過剰に生成される。
【0071】
一部の実施形態において、蛍光プローブに特異的に結合するRNAアプタマーを使用して検出を行うことができる。アプタマーにプローブが結合すると、その蛍光が増加し、遺伝子発現の検出が可能になる。
【0072】
一部の実施形態において、アウトプット分子は、検出可能な分子又は治療用分子の発現を誘導する転写因子である。一部の実施形態において、アウトプット分子は、検出可能な分子又は治療用分子の発現を抑制するリプレッサー因子である。
【0073】
一部の実施形態において、アウトプット分子はエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、目的のトランス遺伝子生成物は、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンを行うエンドヌクレアーゼであり、例えば、エンドヌクレアーゼは遺伝性疾患に関連するアレルをノックアウトする。例えば、優性アレルが、野生型の場合に構造タンパク質である及び/又は正常な機能をなす遺伝子の欠陥コピーをコードする場合、部位特異的エンドヌクレアーゼは欠陥アレルを標的として、欠陥アレルをノックアウトすることができる。また、部位特異的ヌクレアーゼは、欠陥アレルをノックアウトすることに加え、欠陥アレルによってコードされるタンパク質の機能的コピーをコードするドナーDNAとの相同組換えを刺激するために使用することができる。したがって、例えば、本発明の原核生物の宿主細胞が、欠陥アレルをノックアウトする部位特異的エンドヌクレアーゼを送達するため、及び、欠陥アレルの機能的コピーを送達するための両方に使用されて、欠陥アレルの修復をもたらし、それによって機能的タンパク質を作製することができる。一部の実施形態において、本発明のDNA標的エンドヌクレアーゼはTALENである。一部の実施形態において、本発明のDNA標的エンドヌクレアーゼはZFNである。一部の実施形態において、本発明のDNA標的エンドヌクレアーゼはCRISPR関連エンドヌクレアーゼである。細菌において、CRISPR/Cas遺伝子座は、可動遺伝因子(ウイルス、転位因子、および接合性プラスミド)に対する、RNAによってガイドされる適応免疫系をコードする。3つのタイプ(I~VI)のCRISPRシステムが同定されている。CRISPRクラスターは、先行する可動因子に相補的な配列である、スペーサーを含む。CRISPRクラスターは、成熟CRISPR(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)RNA(crRNA)に転写されてプロセシングされる。CRISPR関連エンドヌクレアーゼのCas9及びCpf1は、II型及びV型CRISPR/Casシステムに属し、標的DNAを切断するという強力なエンドヌクレアーゼ活性を有する。Cas9は、約20個のヌクレオチドの固有の標的配列(スペーサーと呼ばれる)を含む成熟crRNA、及び前駆crRNAのリボヌクレアーゼIII支援プロセッシングのためのガイドとして機能するトランス活性化型低分子RNA(tracrRNA)によってガイドされる。crRNA:tracrRNA二本鎖は、crRNAのスペーサーと標的DNAの相補配列(プロトスペーサーと呼ばれる)との間の相補塩基対を介してCas9を標的DNAに誘導する。Cas9は、トリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識して、切断部位(PAMから3つ目又は4つ目のヌクレオチド)を特定する。crRNA及びtracrRNAは別個に発現される、又は合成ステムループを介して人工融合低分子ガイドRNA(sgRNA)に導入して、自然のcrRNA/tracrRNA二本鎖を模倣することができる。そうしたsgRNAは、shRNAのように、直接のRNA遺伝子導入のために合成若しくはインビトロで転写する、又はU6若しくはH1促進RNA発現ベクターから発現させることができる。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。Cas9ヌクレアーゼは、野生型化膿レンサ球菌(Streptococcus pyrogenes)配列と同一のヌクレオチド配列を有することができる。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、他の種、例えば、他のレンサ球菌種、例えばサーモフィルス(thermophilus)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomona aeruginosa)、エシェリキア・コリ、又は他の配列決定された細菌ゲノム及び古細菌、又は他の原核生物の微生物からの配列とすることができる。あるいは、野生型化膿レンサ球菌のCas9配列を改変することができる。核酸配列は、哺乳動物細胞における発現を効果的にするためコドン最適化、すなわち「ヒト化」することができる。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cpf1ヌクレアーゼである。
【0074】
一部の実施形態において、アウトプット分子は治療用分子、特に治療用ポリペプチド又は治療用ポリヌクレオチドである。
【0075】
本発明の意味における治療用ポリペプチドは、未修飾成長因子などの自然に存在するタンパク質であるか、又は、自然起源のタンパク質若しくはその変異体の一本鎖可変フラグメントなどの設計した治療用タンパク質のいずれかである。治療用ポリペプチドは、様々な治癒機序を介してその生物学的活性を発現する。治療用ポリペプチドは、成長因子だけでなく、生物学的活性を有する他のタンパク質、例えばこれらに限定されないがプロテアーゼ阻害剤又は免疫受容体拮抗剤でもある。このイノベーションに使用する治療用ポリペプチドは、自然に存在するものと同一のアミノ酸配列並びにタンパク質の二次及び三次構造の形態のものであり得る、又は作用を向上させるため修飾若しくは設計してもよい。例えば、キメラタンパク質を、様々な治療用ポリペプチドの融合によって形成することができる。また、治療用ポリペプチドは、自然に存在しない生物活性分子、例えば一本鎖可変フラグメント、組換え抗体、拮抗剤として作用するペプチド、抗体(例えば中和抗体)、ナノボディ、又は可溶性受容体である。一部の実施形態において、治療用ポリペプチドは、腫瘍壊死因子(TNF)若しくはTNF受容体を結合するタンパク質、インテグリン若しくはインテグリン受容体を結合するタンパク質、又は線維芽細胞成長因子19(FGF19)である。TNF又はTNF受容体を結合するタンパク質の例は、アダリムマブ(adalimumumab)、セルトリズマブ、ゴリムマブ、及びインフリキシマブ、並びに抗TNFナノボディを含む。
【0076】
一部の実施形態において、アウトプット分子は、ポリヌクレオチド、特に治療用分子である。一部の実施形態において、アウトプット分子はリボ核酸(RNA)である。一部の実施形態において、アウトプット分子は干渉RNA(RNAi)である。
【0077】
他の種類のアウトプットシグナルは、特定のオペロン(ビオラセインオペロン等、若しくはトリプトファンをインディゴに変換するフラビンモノオキシダーゼの発現)を介した、又は、例えばベータガラクトシダーゼ酵素及びその基質であるX-gal等の、外因的に供給した基質を発色生成物に変換する酵素の発現による、色素の生成を含む。
【0078】
細胞コンピュテーションの分野で開発された技術を使用して、より高レベルの機能を有するより複雑な原核生物の宿主細胞を作り出すことができる。これらの方法では、細胞は、内部論理ゲートを使用して胆汁酸塩の結合などのインプットを処理してアウトプットを生成する、生化学的コンピュータとして機能する。複数のインプットに対する複雑な条件応答は、例えば、E.コリ細胞においてAND、NOT、OR、XOR、及びIMPLIESの論理ゲートを実行することによって操作されている。例えば、DNA結合タンパク質を使用してこれらのゲートを実行して、組換えベクターの発現を調節することができる。リコンビナーゼベースの論理ゲート、核酸ベースの論理ゲート、又はタンパク質ベースの論理ゲートなどであるがこれらに限定されない他のシステムを使用することができる。細胞コンピューティングのさらなる情報については、すべて参照により本明細書に援用する、R.Weiss、「Cellular Computation and Communications using Engineered Genetic Regulatory Networks」、Ph.D. Thesis、MIT、2001;M.L.Simpson等、「Whole-cell biocomputing」、Trends Biotechnol.19:317-323(2001);Yaakov Benenson、<Biomolecular computing systems:principles,progress and potential>、<Nature Reviews Genetics、13(7):455{468、2012;Bonnet等、「Amplifying genetic logic gates」、Science、340(6132):599{603、2013;Brophy JAN及びVoigt CA.<Principles of genetic circuit design>、Nature methods、11(5):508{520、2014が参照される。
【0079】
(診断方法)
本発明の原核生物の宿主細胞は、胆汁酸塩の検出及び定量に適し得るホールセルバイオセンサー(「バクトセンサー」)を構成する。
【0080】
したがって、本発明のさらなる目的は、試料における胆汁酸塩の存在を検出する方法に関し、該方法は、(i)少なくとも本発明の原核生物の宿主細胞を準備すること、(b)結合する融合タンパク質のオリゴマー化、及びその後の検出タンパク質の発現を可能にするのに十分な時間、上述の胆汁酸塩を含むことが疑われる試料に上述の原核生物の宿主細胞を接触させること、並びに(c)検出タンパク質の発現レベルを検出し、該発現レベルは試料において存在する胆汁酸塩の量に相関することを含む。
【0081】
一部の実施形態において、試料は体液試料である。一部の実施形態において、試料は、血液試料(血清又は血漿試料を含む)、尿試料、脳脊髄試料、涙試料、唾液試料、及び滑液試料からなる群より選択される。
【0082】
本発明の方法により、数桁のモル範囲にわたって、試料に溶解した胆汁酸塩の濃度を測定することが可能である。
【0083】
検出タンパク質は、胆汁酸塩に対してアッセイして、これを定量するために検出される。典型的に、検出タンパク質が蛍光タンパク質であるとき、フローサイトメトリー、レーザー走査サイトメトリー、又はイメージング顕微鏡などの当技術において既知の方法によって各細胞における蛍光強度を読み取ることができる。このようにして、各個々の細胞においてすべての所望の波長範囲における蛍光強度を検出することができる。標準的方法を使用して、試料における胆汁酸塩の量又は濃度を測定することができる。一部の実施形態において、既知の濃度の胆汁酸塩を含有する試料を細胞と合わせたとき、検出タンパク質の発現(すなわち、その蛍光)を測定することによって、較正曲線を構成する。再現可能な曲線を構成することができる限り、応答が線形である必要はない。また、較正曲線を使用して、アッセイ時の測定した検出タンパク質の蛍光強度を試料中の胆汁酸塩の濃度と相関させることができる。
【0084】
本発明の方法は、生物学的及び非生物学的試料中の胆汁酸塩の検出、同定、及び定量、例えば、医学又は獣医科学における疾患の診断において使用できることが当業者には理解され得る。これらの用途は、商業目的(ルーチン分析の意味で)である、又は、純粋な研究目的に貢献することができる。本発明の方法は、実質的に無限の様々なモダリティを使用して利用することができるので、数千の異なる胆汁酸塩の特異的検出が可能になる。ホールセルセンサーが破壊されない程度まで再使用することができる。特に、本発明のホールセルセンサーは、インビトロアッセイの場合、医学的診断法及び疾患管理として使用される。
【0085】
特に、本発明のホールセルセンサーは、対象における肝機能障害の診断に特に適する。
【0086】
したがって、本発明のさらなる目的は、対象が肝機能障害を有するか又は肝機能障害を有するリスクがあるかを判定する方法に関し、該方法は、(i)少なくとも本発明の原核生物の宿主細胞を準備すること、(b)結合する融合タンパク質のオリゴマー化、及びその後の検出タンパク質の発現を可能にするのに十分な時間、上述の原核生物の宿主細胞を、対象から得た試料に接触させること、並びに(c)検出タンパク質の発現レベルを検出し、該発現レベルは試料において存在する胆汁酸塩の量に相関し、上述の胆汁酸塩の量は、対象が肝機能障害を有するか又は肝機能障害を有するリスクがあるかを示すことを含む。
【0087】
数多くの急性又は慢性の病的状態が肝機能障害をまねく。これらは、肝膿瘍、原発性又は転移性のいずれかの肝がん、肝硬変、例えばアルコール摂取に起因する肝硬変若しくは原発性胆汁性肝硬変、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆道閉鎖症、播種性コクシジオイデス症、門脈圧亢進症、肝感染症(例えばA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、若しくはE型肝炎ウイルス)、ヘモクロマトーシス、肝細胞癌腫、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、硬化性胆管炎、ウィルソン病、薬物性肝毒性、又は劇症肝不全若しくは急性肝不全を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態において、肝疾患は非アルコール性脂肪性肝疾患である。一部の実施形態において、肝疾患は薬物性肝疾患である。一部の実施形態において、肝疾患はアルコール性肝疾患である。
【0088】
一部の実施形態において、肝機能障害はウイルス感染からもたらされ得る。肝臓は、例えば、肝臓において複製するとともに肝臓を主な標的とする肝臓指向性ウイルスによる感染に関与する。これらは、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、及びE型肝炎ウイルスを含む。これらの感染すべてにおいて、肝炎及び肝機能障害は、肝臓内のウイルスに対する免疫応答及び修復機序(例えば線維症)の結果として生じる。さらに、肝臓は、他の組織、特に上気道を主に標的とするウイルスに、全身性宿主感染の一部として冒され得る。ウイルスの例は、ヘルペスウイルス(エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス[CMV]、及び単純ヘルペスウイルス)、パルボウイルス、アデノウイルス、並びに重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス(例えばSARS-Cov-2)を含む。
【0089】
一部の実施形態において、本明細書に記載の診断の方法は、肝機能障害のすべての起こり得る原因を除外するルーチンのスクリーニングを受けることなく肝機能障害の症状を示す対象に適用する。本明細書に記載の方法は、黄疸、腹部痛及び膨張、脚及び足首の腫れ、皮膚の痒み、暗色尿、薄色便、血色便、黒色便、慢性倦怠感、悪心又は嘔吐、食欲不振、あざができやすい…などの肝機能障害の症状を示す対象に行うルーチンの一式の試験の一部とすることができる。本発明の方法は、超音波評価(例えばエラストグラフィー)、生検、及び/又は、血液のAST、ALT、ALP、TTT、ZTT、総ビリルビン、総タンパク質、アルブミン、乳酸デヒドロゲナーゼ、及びコリンエステラーゼ等のレベルなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの定量を含む他の診断用ツールに加えて行うことができる。
【0090】
一部の実施形態において、対象は肝移植を受けたものである。したがって、本発明は、肝移植の対象が移植片拒絶を有するか又は移植片拒絶を有するリスクがあるかを判定することに特に適する。
【0091】
一部の実施形態において、本発明の方法は、肝疾患に罹患する対象が治療に対して応答するかどうかを判定することに特に適する。この方法は、したがって、応答者を非応答者から区別することに特に適する。本開示の文脈における応答者は、応答をし得る対象、すなわち、寛解にある対象、及びより具体的には肝機能障害に罹患していない対象を指す。非応答対象は、疾患が処置後に軽減又は改善を示さない(例えば肝機能障害が安定して保たれる又は低下する)対象を含む。本発明において、処置は、肝機能障害の処置に適切であり得る任意の方法又は薬剤に基づく。いくつかの肝臓の問題は、典型的に肝機能を慎重にモニタリングすることを含む医療プログラムの一部としてのライフスタイルの変化、例えばアルコール使用の停止又は体重減少によって処置することができる。各肝疾患には、その独自の特定の処置レジメンがあり得る。例えば、A型肝炎は、身体の免疫系が感染と戦って消散させる間、水分補給を保つように支援的な看護を必要とする。胆石症を有する患者は、胆嚢を取り除く手術を必要とし得る。他の疾患は、それらの疾患の結果を管理するとともに極力小さくするため、長期の医療を必要とし得る。肝硬変及び末期の肝疾患を有する患者において、食事において吸収するタンパク質の量を調節するため、薬剤を必要とし得る。他の例は、門脈圧亢進症の処置に必要な手術を含む。
【0092】
本発明の方法は、治療の効率をモニタリングすることに特に適する。典型的に、結合能力の低下(例えば異なる時間間隔で行った測定間における)は、対象が治療に応答していないことを示す。反対に、結合能力の上昇(例えば異なる時間間隔で行った測定間における)は、対象が治療に応答していることを示す。
【0093】
また、本発明の方法は、前臨床又は臨床における研究時に肝臓傷害を生じることにおいて開発下の薬剤の効果を評価することに特に適する。
【0094】
(バイオセンサー)
また、本発明のホールセルセンサーは、微小環境若しくはマイクロフルイディクスデバイス、又はマルチチップモジュール若しくは分散型ワイヤレスネットワークにおける一群のこれらデバイスに展開するため、本発明のホールセルセンサーを使用して形成可能なバイオセンサーデバイスに変換することができ得る。バイオセンサーデバイスは、1つ以上の特定の化学的及び/又は物理的インプット(例えば、熱又は電流)に応答することができ、検出タンパク質の形態でアウトプットを生成し、熱量測定、電気化学、又は好ましくは蛍光生物発光の手段によって物理的トランスデューサーと通信する。バイオセンサーは、したがって、ホールセンサー細胞を含む検出部品、及び検出部品によって生成した物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するためのトランスデューサー部品を含むことができる。バイオマーカー検出の機構において、本発明のバイオセンサーに使用し得る5つのタイプのトランスデューサー、すなわち光学(比色分析、蛍光、発光、及び干渉)トランスデューサー、質量に基づく(圧電、及び弾性波)トランスデューサー、磁界に基づくトランスデューサー、電気化学(電流測定、電位差測定、及び伝導度測定)トランスデューサー、並びに熱量測定トランスデューサーが存在する。一部の実施形態において、デバイスは、他の目的のパラメーターを測定するためのさらなる測定デバイスを含むことができる。典型的に、システムは、生理学的表現型を測定することに適するさらなるデバイスを含む。生理学的表現型は、生理学的なパラメーター、例えば体温、脈拍数、血圧、呼吸数、及び水分補給状態等を含むことができる。一部の実施形態において、システムは、インプット/アウトプットモジュール、分析モジュール、及びリポート生成モジュールを含む。インプット/アウトプットモジュールは、任意で付随する通信デバイスを介して任意でさらなるパラメーターと組み合わせた胆汁酸塩の量を受信するように構成される。分析モジュールは、胆汁酸塩の量を含む様々なパラメーターを分析するように構成される。リポート生成モジュールは、様々なパラメーターの分析における対象のプロファイルを生成するように構成される。一部の実施形態において、システムは、生成した対象のプロファイルの比較に基づいて、1つ以上の予めフォーマットしたメッセージを1人以上の関係者と共有する共有モジュールを含む。一部の実施形態において、システムは、対象に肝機能障害を有するリスクについて注意喚起するため、対象に推奨事項を提供することを含む。一部の実施形態において、システムは、対象が肝機能障害を有する又は肝機能障害を有するリスクがあることを注意喚起するため、外部の作業者(例えば医師)にもう1つのメッセージの送信を可能にすることを含む。したがって、一部の実施形態において、デバイスは通信デバイスを含む。通信デバイスの例は、携帯電話、タブレット、及びデスクトップコンピュータ等を含むがこれらに限定されなくともよい。インターネット、イントラネット、Bluetooth(登録商標)、及びWi-Fi等を含む種々の媒体を接続に使用することができる。一部の実施形態において、通信デバイスはサーバに接続される。測定デバイスによって測定される1つ以上のパラメーターの測定値は、実際に、マイクロプロセッサを含むハンドヘルドデバイスに無線で送信することができる。ハンドヘルドデバイスは、スマートフォン、タブレットデバイス、携帯電話、移動インターネットデバイス、ネットブック、ノートブック、携帯情報端末、インターネット電話、ホログラムデバイス、ホログラム電話、ケーブルインターネットデバイス、衛星インターネットデバイス、インターネットテレビ、DSLインターネットデバイス、及び遠隔コントロールとすることができる。
【0095】
(キット)
本発明のさらなる目的は、本明細書に開示の方法を行うためのキットに関する。キットは、上述のような1つ以上の複数のホールセルセンサー、及び検出タンパク質の発現レベルを測定するための手段を含む。また、特定のタイプのアッセイのための試薬を本発明のキット内に提供することができる。一部の実施形態において、キットは、上述のようなバイオセンサーなどのデバイスを含む。さらに、キットは、種々の希釈剤及びバッファー、特異的な免疫複合体を検出するための標識したコンジュゲート又は他の薬剤を含むことができる。キットにおける他の構成要素は、当業者が容易に決定することができる。
【0096】
(治療方法)
また、原核生物の宿主細胞は、治療目的に特に適する。特に、本発明における操作した原核生物の宿主細胞は、腸内で機能することに適し、胆汁酸塩が存在する腸の微小環境に到達すると特異的に活性化し得る。上述の原核生物の宿主細胞は、腸内で治療用分子(ポリヌクレオチド又はポリペプチド)を発現することに特に適する。胆汁酸塩の存在下で、アウトプット治療用分子の発現を誘発することができる。
【0097】
したがって、本発明のさらなる目的は、治療を必要とする対象における治療の方法に関し、該方法は、治療用分子をコードするポリヌクレオチドを含む治療有効量の本発明の原核生物の宿主細胞を対象に投与することを含む。
【0098】
本発明の方法によって処置することができる疾患の例は、肥満、炎症性腸疾患、結腸直腸がん、肝疾患、及び肝胆道疾患を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態において、この疾患又は障害は、消化性潰瘍疾患、肝硬変、炎症性腸疾患、感染症、がん、血管障害、及び薬剤の有害作用、又は血液凝固障害である。一部の実施形態において、対象は、炎症性腸疾患を有する又は炎症性腸疾患を有するリスクがある。炎症性腸疾患(IBD)は、小腸及び結腸の炎症状態の群を指す。一部の実施形態において、IBDは、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、空置性大腸炎、ベーチェット病、又は非定型的大腸炎である。
【0099】
一部の実施形態において、原核生物の宿主細胞は、腸に投与する。
【0100】
一部の実施形態において、本発明の原核生物の宿主細胞は、胃に対して保護するため封入される。したがって、一部の実施形態において、本発明の原核生物の宿主細胞は、その生存時間を有意に向上させるため封入形態で組成物に製剤化される。そうした場合、カプセルの存在により、消化管において原核生物の宿主細胞の分解を特に遅延又は抑止することができる。本実施形態の組成物は、腸溶コーティングした徐放性のカプセル剤または錠剤にカプセル化することができるということが理解され得る。腸溶コーティングにより、カプセル剤/錠剤が消化管を通過するとき、腸管に達するときまで、カプセル剤/錠剤を未変化(すなわち未溶解)に保つことができる。生存細菌細胞をカプセル化する方法は、当技術において周知である(例えば、General Mills Inc.の米国特許、例えば米国特許第6,723,358号明細書などを参照されたい)。例えば、封入は、好ましくは、Eudragit(登録商標)ポリマーなどのメタクリル酸-アルキルアクリレートコポリマーである腸溶コーティングで行うことができる。ポリ(メタ)アクリレートは、コーティング材料として特に適することが分かっている。
【0101】
一部の実施形態において、本発明の原核生物の宿主細胞は、食品組成物の形態で対象に投与される。一部の実施形態において、食品組成物は、完全食品組成物、食品補助剤、及びニュートラシューティカルズ組成物等から選択される。本発明の組成物は、食品成分及び/又は飼料成分として使用してもよい。食品成分は、使用及び/又は適用モード及び/又は投与モードに応じて、溶液の形態又は固体とすることができる。食品組成物及び栄養補助組成物は、例えば、好ましくは1日1回以上経口で投与又は摂取する、発酵乳製品又は乳製品を主体とする製品である。発酵乳製品は、製造工程に本発明における細菌を直接用いて、例えば、それ自体既知の方法を用いて食品主成分に添加することによって、製造することができる。こうした方法において、本発明の菌株を、通常使用する微生物に加えて使用してもよく、及び/又は通常使用する微生物の1つ以上若しくは一部と置き換えてもよい。発酵乳製品は、乳を主体とする製品、例えば(特に限定されないが)デザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、クワルク、ケフィア、発酵乳を主体とする飲料、バターミルク、チーズ、ドレッシング、低脂肪スプレッド、フレッシュチーズ、ダイズを主体とする飲料、アイスクリームなどを含む。あるいは、食品組成物及び/又は食品補助組成物は、非乳製品又は非発酵乳製品(例えば、非発酵乳又は他の食品培地中の菌株又は無細胞培養培地)であってもよい。非発酵乳製品は、アイスクリーム、栄養補助バー、及びドレッシング等を含むことができる。非乳製品は、粉末飲料及び栄養補助バー等を含むことができる。
【0102】
一部の実施形態において、本発明の原核生物の宿主細胞を含む食品組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクス、すなわち、腸管において本発明の原核生物の宿主細胞の増殖を促進するために用いられる食品物質を含有する。プレバイオティクスは、オリゴ糖類からなる群より選択することができ、任意でフルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズ、ならびに/またはイヌリン、および/もしくは食物繊維を含む。
【0103】
本発明の文脈において、対象に投与する原核生物の宿主細胞の量は、一般的な健康状態、年齢、性別、体重などの個人の特徴によって決まり得る。当業者は、これらと他の因子に応じて適切な投与量を決定することができ得る。例えば、コロニーを生成することができ得る原核生物の宿主細胞が、対象に有益な効果をもたらすために十分である。原核生物の宿主細胞を食品製品の形態で投与する場合、典型的に、食品組成物の乾燥重量のグラムあたり、10~1012cfuの本発明の原核生物の宿主細胞を含むことができる。
【0104】
(スクリーニング方法)
また、本発明の原核生物の宿主細胞は、スクリーニング目的に特に適する。特に、本発明の原核生物の宿主細胞は、例えば病原体シグナリング経路の阻害に適する薬剤のスクリーニングに特に適する。この場合、システムは、ビブリオ・パラヘモリチカス病原性活性化経路のリワイヤ型である。E.コリなどの非病原性の原核生物の宿主細胞において構築され、活性化を検出可能なアウトプット分子の検出によって容易にモニタリングできるとき、このシステムは、治療剤として使用でき得るビブリオ・パラヘモリチカス病原性の新しい阻害剤(又は活性化剤)を同定するため、化合物ライブラリの高スループットスクリーニングのプラットフォームとして機能することができる。
【0105】
したがって、本発明のさらなる目的は、複数の試験物質をスクリーニングする方法に関し、該方法は、(i)所定量の胆汁酸塩の存在下において、本発明の原核生物の宿主細胞の集団を上述の複数の試験物質と接触させること、及び(ii)アウトプット分子の発現を調節することができる試験物質を選択することを含む。
【0106】
本発明の試験物質は、これまでに合成した物質のライブラリ、又はデータベースにおいて構造が決定されている物質のライブラリ、又はde novoで合成した物質のライブラリから選択することができる。試験物質は、(a)タンパク質又はペプチド、(b)核酸、及び(c)有機物質又は化学物質の群より選択することができる。
【0107】
一部の実施形態において、この方法は、アウトプット分子(例えば検出タンパク質)の発現レベルを試験物質が存在しない場合に測定した発現レベルと比較すること、及び、アウトプット分子の発現レベルにおける減少又は増加をもたらす試験物質の正の選択をすることからなるステップを含む。
【0108】
本発明を以下の図面及び実施例によってさらに記載する。しかしながら、これらの実施例および図面は、本発明の範囲を限定するとしていかようにも解釈されるべきでない。
【実施例
【0109】
(材料と方法)
プラスミド及び株
すべてのコンストラクトを、等温ギブソンアセンブリによって複製起点p15a及びクロラムフェニコール抵抗性遺伝子を有するプラスミドJ64100_p15Aにクローニングした。すべての実験はE.コリ株NEB10β(New England Biolabs)を使用して行った。プラスミド及び材料はAddgeneを介して利用可能にすることになっている。
【0110】
sfGFP蛍光アウトプットを有する合成胆汁酸塩受容体の機能的特性評価
恒常性プロモーターを有するコンストラクトの実験では、様々なコンストラクトをコードするプラスミドを、化学的にコンピテントなE.コリNEB10β(New England Biolabs)に形質転換して、25μg/mLのクロラムフェニコールを添加したLBカンテンプレートにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。各測定では、3つの新しいコロニーを選び、5mLのLB/クロラムフェニコールに播種して、16~18時間激しく振とうさせながら37℃で増殖させた。翌日、培養物を、96ディープウェルプレート(Greiner bio-one)において様々な濃度の胆汁酸塩を含む1mLのLB/クロラムフェニコール培地に1:100で希釈し、さらに4時間激しく振とうさせながら37℃でインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。すべての実験は、別々の3日においてトリプリケートで少なくも3回行った。胆汁酸塩特異性のプロファイルでは、80μMの濃度の各胆汁酸塩を使用して実験を行った。誘導性プロモーターを有するコンストラクトの実験では、一晩の培養物を、96ディープウェルプレートにおいて様々な濃度のIPTG、1.5mMの安息香酸、及び様々な濃度の胆汁酸塩を含む1mLのLB/クロラムフェニコール培地に1:100で希釈した。そして、恒常的プロモーターを有するコンストラクトと同じ手順に従った。この研究に使用したすべての化学物質はSigma-Aldrich社から購入した。
【0111】
相対プロモーター単位(RPU)の算出
様々な実験のなかでも蛍光強度測定値は、参照コンストラクトを含むとともに各実験で並行して増殖させたE.コリ株NEB10βの蛍光強度に従ってノーマライズすることによってRPUに変換された。プラスミドpSB4K5において、インビボの参照基準として恒常性プロモーターJ23101及びRBS_B0032を使用し、レポーター遺伝子としてスーパーフォルダーGFPを配置した。フローサイトメトリーデータの蛍光強度の幾何平均値(MFI)を定量し、以下の式に従ってRPUを算出した。
RPU=(MFI試料)/(MFI参照プロモーター
【0112】
フローサイトメトリー分析
高スループットのオートサンプラーと連結したAttune(登録商標)NxTサイトメーター(Thermo Fisher Scientific)及びAttune NxTバージョン2.7ソフトウェアを使用して、フローサイトメトリーを行った。各データポイントにおいて全部で30,000細胞を採取した。Attune NxTにおける実験を、96ウェルプレートにおいて、FSC:200V、SSC:380V、緑色強度BL1:440V(488nmレーザー及び510/10nmフィルター)の設定で行った。FlowJo10.0.8r1(Treestar Inc.、アッシュランド、米国)を使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。
【0113】
(結果)
肝臓は、代謝プロセス、解毒プロセス、及び免疫学的プロセスを連係して働かせる重要な器官である。肝炎、肝硬変、脂肪肝疾患、及びがんを含む肝疾患は、主要な公衆衛生上の問題であり、予防、診断、及び治療上のモニタリングのために大規模のスクリーニング方法を必要とする。また、肝機能は、血清酵素活性及びビリルビンを定量することによって通常モニタリングされるが、これらのマーカーは、障害が既に進行しているときに検出可能であり、全面的に特異的ではない。肝機能は、複数の酵素活性を共に定量することによって通常モニタリングされ、これは、それらに特異性がないためである。血清及び尿の胆汁酸塩は、肝機能障害を早期に診断するための別のバイオマーカーであるが、その現行の検出方法は実用的でなく、計量が困難である。本明細書において、臨床試料における病的な胆汁酸塩の濃度を検出する非病原性E.コリに基づいた細菌バイオセンサーを設計した。病原体が腸に入ったとき病原性オペロンの活性化を制御する、細菌の一成分であるビブリオ・パラヘモリチカスのVtrA胆汁酸塩センシングドメインを別の目的で用いた。二量体化すると転写を活性化するE.コリのCadCシステムに接続したセンシングドメインとしてのVtrAを使用して合成胆汁酸塩受容体を設計した(図1)。このバクトセンサーが試料における胆汁酸塩濃度を検出できることを示す(図2図3図4)。この研究により、肝機能障害のための、感受性が高く、スケーラブルであり、安価なスクリーニングプラットフォームへの道が敷かれることになり、ポイントオブケア(point-of-care)又は自宅での場に配備することができ、肝臓関連疾患を大規模にモニタリングすることができる。また、合成生物学が、基本的な細胞機構、この場合は病原体シグナリングを解明して標的とするツールを提供しながら、どのように世界の医療における課題に取り組む助けとなり得るかを、この研究が示している。
【0114】
(参考文献)
本願において、種々の参考文献によって、本発明が属する技術の現状が記載されている。これらの参考文献の開示は、本明細書において言及によって本開示に援用される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024505710000001.app
【国際調査報告】