(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ポリオキサゾリン-脂質コンジュゲート並びにそれらを含む脂質ナノ粒子及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20240131BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240131BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240131BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C08G73/02
A61K47/34
A61K9/51
A61K39/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547812
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022015314
(87)【国際公開番号】W WO2022173667
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509241915
【氏名又は名称】セリナ・セラピユーテイツクス・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェイ・ミルトン
(72)【発明者】
【氏名】ベントレー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ビエガス,タシー
(72)【発明者】
【氏名】モレディス,ランドル
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ロバート・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,クンサン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジーハオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイマー,レベッカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4J043
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC06
4C076EE13A
4C076EE16
4C076FF31
4C085AA03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG10
4J043PA04
4J043PB05
4J043PB07
4J043PB11
4J043PB14
4J043PB17
4J043PB21
4J043QA08
4J043RA08
4J043SA36
4J043SB01
4J043UA511
4J043XA18
4J043XB06
4J043XB09
4J043YB08
4J043YB32
4J043YB35
4J043ZB60
(57)【要約】
カプセル化されたペイロードの送達を促進するために使用されるPOZ-脂質コンジュゲート及びPOZ-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子(LNP)。POZ-脂質コンジュゲート及び核酸ペイロード、例えば限定される物ではないがmRNA又は修飾mRNAを含むLNPが開示される。そのようなLNPは、免疫原性を有しないか、又はPEG-脂質を含む対応するLNPと比較して低減された免疫原性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
R-POZ-L-脂質 I
であって、式中、
Rは、開始基を含み、
POZは、ポリオキサゾリンポリマーを含み、
Lは、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
脂質は、少なくとも1つの疎水性部分を含む非荷電脂質を含む、前記化合物。
【請求項2】
POZが、
-{[N(COX)CH
2CH
2]
o-[N(COR
2)CH
2CH
2]
n}
a-
であって、ここで、Xは、アルキン基、結合したカルボン酸を有するトリアゾール、又はそれらの組合せを含む官能基を含み、oは、0~10の範囲内であり、nは、1~1000の範囲内であり、R
2は、水素、置換若しくは非置換アルキル、アルキン置換アルキル、又は置換若しくは非置換アラルキル基を含み、aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
POZが、約1.01~約1.20の多分散指数を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
POZが、500ダルトン~5,000ダルトンの分子量を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Rが、水素、置換若しくは非置換アルキル、アルキン置換アルキル、結合したカルボン酸を有するトリアゾール、又は置換若しくは非置換アラルキル基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Lが、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
脂質が、2つの疎水性部分を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
脂質が、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式Iが、以下:
【化1】
のうちの1つであって、式中、mは、1~2であり、nは、1~1000の範囲内であり、pは、1~10の範囲内である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Lによって少なくとも部分的に決定される加水分解速度を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分以下である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約120時間以上である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
式IIの化合物:
脂質-L
1-(POZ)
n
a-T II
であって、式中、
脂質は、少なくとも1つの疎水性部分を含む非荷電脂質を含み、
L
1は、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
POZは、構造[N(COR
2)CH
2CH
2]のポリオキサゾリンポリマーを含み、ここで、R
2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルキン置換アルキル、又は活性官能基から独立に選択され、
nは、1~1,000の範囲内であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
Tは、停止末端の基を含む、前記化合物。
【請求項15】
L
1が、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せを含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
L
1が、トリアゾールを含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
Tが、Z-B-Qを含み、ここで、Zが、S、O、又はNを含み、Bは、任意選択の連結基であり、Qは、停止求核体の一部分である、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
脂質が、2つの疎水性部分を含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
脂質が、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せを含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項20】
脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せを含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項21】
式IIが、以下:
【化2】
のうちの1つであって、式中、mは、1~2であり、nは、1~1000の範囲内であり、oは、1~5の範囲内である、請求項14に記載の化合物。
【請求項22】
Lによって少なくとも部分的に決定される加水分解速度を有する、請求項14に記載の化合物。
【請求項23】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分以下である、請求項14に記載の化合物。
【請求項24】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約120時間以上である、請求項14に記載の化合物。
【請求項25】
式IIIの化合物:
R-(POZ)
n
a-Z-L
2-脂質 III
であって、式中、
Rは、開始基を含み、
POZは、構造[N(COR
2)CH
2CH
2]のポリオキサゾリンポリマーを含み、ここで、R
2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル(heterocycylalkyl)基、アルキン置換アルキル、又は活性官能基から独立に選択され、
nは、1~1,000の範囲内であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
Zが、S、O、又はNを含み、
L
2は、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
脂質は、少なくとも1つの疎水基を含む非荷電脂質を含む、前記化合物。
【請求項26】
L
2が、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せを含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
脂質が、2つの疎水性部分を含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
脂質が、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せを含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項29】
脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せを含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項30】
Rが、水素、又は置換若しくは非置換アルキルを含み、nが、15~35の範囲内である、請求項25に記載の化合物。
【請求項31】
Lによって少なくとも部分的に決定される加水分解速度を有する、請求項25に記載の化合物。
【請求項32】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分以下である、請求項25に記載の化合物。
【請求項33】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約120時間以上である、請求項25に記載の化合物。
【請求項34】
式IVの化合物:
【化3】
であって、式中、
Rは、開始基を含み、
L
3は、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
脂質は、少なくとも1つの疎水性部分を含む非荷電脂質を含み、
nは、1~5の範囲内であり、
R
2は、各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルキン置換アルキル、又は活性官能基から独立に選択され、
mは、1~100の範囲内であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
Tは、停止末端の基を含む、前記化合物。
【請求項35】
L
3が、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せを含む、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
L
3が、トリアゾールを含む、請求項34に記載の化合物。
【請求項37】
Tが、Z-B-Qを含み、ここで、Zが、S、O、又はNを含み、Bは、任意選択の連結基であり、Qは、停止求核体の一部分である、請求項34に記載の化合物。
【請求項38】
脂質が、2つの疎水性部分を含む、請求項34に記載の化合物。
【請求項39】
脂質が、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せを含む、請求項34に記載の化合物。
【請求項40】
脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せを含む、請求項34に記載の化合物。
【請求項41】
Lによって少なくとも部分的に決定される加水分解速度を有する、請求項34に記載の化合物。
【請求項42】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分以下である、請求項34に記載の化合物。
【請求項43】
50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約120時間以上である、請求項34に記載の化合物。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物を含む組成物。
【請求項45】
カチオン性又はイオン化脂質をさらに含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
動物における防御免疫応答を惹起する方法であって、動物に有効量の請求項45に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項47】
前記投与するステップが、前記組成物を動物に皮下、静脈内、筋肉内、皮内又はエアロゾル経路を介して送達するステップを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
動物における障害又は疾患を治療する方法であって、動物に有効量の請求項45に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項49】
請求項14に記載の化合物を含む組成物。
【請求項50】
カチオン性又はイオン化脂質をさらに含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
動物における防御免疫応答を惹起する方法であって、動物に有効量の請求項50に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項52】
前記投与するステップが、脂質ナノ粒子組成物を動物に皮下、静脈内、筋肉内、皮内又はエアロゾル経路を介して送達するステップを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
動物における障害又は疾患を治療する方法であって、動物に有効量の請求項50に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項54】
請求項25に記載の化合物を含む組成物。
【請求項55】
カチオン性又はイオン化脂質をさらに含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
動物における防御免疫応答を惹起する方法であって、動物に有効量の請求項55に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項57】
前記投与するステップが、脂質ナノ粒子組成物を動物に皮下、静脈内、筋肉内、皮内又はエアロゾル経路を介して送達するステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
動物における障害又は疾患を治療する方法であって、動物に有効量の請求項55に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項59】
請求項34に記載の化合物を含む組成物。
【請求項60】
カチオン性又はイオン化脂質をさらに含む、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
動物における防御免疫応答を惹起する方法であって、動物に有効量の請求項60に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項62】
前記投与するステップが、脂質ナノ粒子組成物を動物に皮下、静脈内、筋肉内、皮内又はエアロゾル経路を介して送達するステップを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
動物における障害又は疾患を治療する方法であって、動物に有効量の請求項60に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオキサゾリン-脂質コンジュゲート、これらのコンジュゲートの合成方法並びに脂質ナノ粒子及び医薬組成物における使用に関する。生細胞への送達のための、mRNAやDNA、siRNAなどのオリゴヌクレオチドを組み込んでいる脂質ナノ粒子も企図される。
【背景技術】
【0002】
核酸(特にmRNA)をベースとしたワクチンは、他のワクチン技術より有利な点をいくつかもたらす。例えば、核酸をベースとしたワクチンは、オリゴヌクレオチドペイロードに関係なくよく見られる製造プラットフォーム及び精製方法を使用することによって、開発時間及びコストを削減して、迅速に生成することができる。さらに、mRNAをベースとしたワクチンは、コードされるタンパク質を翻訳することができる細胞によって取り込まれると、ポリペプチドを抗原として提示することができることがある。これらの細胞には、マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞が含まれる。
【0003】
しかし、現在の核酸をベースとしたワクチンは、いくつかの欠点をもつ。例えば、mRNAは、体内においてヌクレアーゼによって急速に分解され、プロタミンなどのポリアミンに複合体化しているだけである場合、大部分の細胞型には容易に取り込まれない。さらに、DNAとmRNAの両ワクチンの開発を妨害する主要因は、重篤な有害事象なく反復投与できる強力で忍容性が良好な非免疫原性送達システムの欠如である。
【0004】
これらの欠点に対処する試みでは、mRNAペイロード(及び他のオリゴヌクレオチドペイロード)を脂質ナノ粒子(LNP)にカプセル化し、それによって、mRNAを酵素的分解から保護し、細胞取込み及び発現をポリアミンに複合体化しているmRNAと比べて最大で1000倍増強させる。そのようなLNPは、典型的にイオン化可能な脂質(オリゴヌクレオチドと複合体化する)、コレステロール(柔軟性をもたらす)、ポリエチレングリコール(PEG)部分を含む脂質(脂質ナノ粒子を安定化し、他のナノ粒子との融合を防止する)、及びジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などのヘルパー脂質(構造的統合性をもたらす)から構成される。例えば、米国特許出願公開第2020/0230058号明細書には、目的の免疫原をコードするRNAがカプセル化されているリポソームであって、リポソームが少なくとも1つのPEG-脂質を含み、PEGがリポソームの外部に存在し、1kDa~3kDaの平均分子質量を有する、リポソームが開示される。
【0005】
低分子干渉RNA(siRNA)を扱う早期の研究は、イオン化可能な脂質を効力に必須である主要成分の1つとして同定した。イオン化可能な脂質は、LNPが細胞においてエンドソームコンパートメントを通ってトラフィッキングするようになったなら、エンドソーム脱出にとって極めて重要である。
【0006】
LNPは、一般的にオリゴヌクレオチドペイロードを運ぶのに許容される安全性プロファイル及び能力を有する生体適合性ナノ担体であると考えられる。それにもかかわらず、上に簡潔に述べられたように、動物及びヒトに投与されるときいくつかのLNPの免疫原性に関する問題が認められてきた。特に、LNPにおいてよく使用されるPEG-脂質は、抗PEG免疫応答の影響のためにワクチン安全性を損なう可能性がある。実際は、PEG-脂質を含めてPEG化成分で患者を治療することによって、PEGを特異的に認識し、PEGに結合する抗体(すなわち、抗PEG抗体)の形成を招く可能性があることがますます認識される。その上、抗PEG抗体は、PEG化薬物で治療されたことはないが、PEGを含む製品(例えば、化粧品及び食品)に暴露された患者に見られる。
【0007】
したがって、予め形成された抗PEG抗体を有する患者を、PEG-脂質を含むLNPで治療することによって、PEG-脂質を含むLNPの血液クリアランスを加速し、有効性を低減し/損ない、PEGに対して過敏反応、場合によっては重度アレルギー反応を生じる可能性がある。PEGのこの免疫原性は、対象がPEG-脂質を含むLNPによる反復ワクチン接種をある程度の時間にわたって受けると、又は対象がPEGを含む製品に以前に暴露されていた場合に、重篤な有害事象を引き起こすおそれがある。実際、SARS-CoV-2(「COVID-19」)に対して世界規模で行われたPfizer/BioNTech社及びModerna社からのmRNAワクチン接種の初期の高まりにおいて、介護者が、アナフィラキシーを含めて生命を脅かすような副反応の異常に高い罹患率を報告した。アナフィラキシーの大部分は、女性において起こり(約90%)、PEGに対する抗体が原因であることが示された。アナフィラキシーを媒介する正確な機構はまだ知られていないが、生命を脅かすような免疫応答は、PEGを含む化粧品、食品、又は医薬品への曝露によりPEGに以前に感作された患者における好塩基球脱顆粒が原因である可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0230058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、現在のLNP技術の欠点に取り組み、核酸ワクチンを送達する方法を改善する必要が残っている。特に、免疫原性が著しく低減された又は欠如しているLNP製剤を特定することは有利なはずである。LNPの初期投与後及びその後の投与後に許容される反応源性プロファイルを有するLNP製剤を特定することも有利なはずである。さらに、LNP製剤におけるポリマー-脂質の細胞内安定性の役割はまだ十分に探求されておらず、オリゴヌクレオチドの細胞への細胞取り込み及びその後の放出の詳細はまだ不十分にしか理解されていないが、LNPにおけるポリマー-脂質は、ペイロードが細胞へ放出されるためにLNPから脱落する必要があると一般的に考えられる(とはいえ、この点は議論の余地がある。)。このような理由などで、LNP技術の分野では、低減された免疫原性又は非免疫原性のポリマー脂質を、さまざまなインビボ安定性をもたらすのに利用できることが不可欠である。本開示のPOZ-脂質コンジュゲートは、現在のLNP製剤において使用されるPEG-脂質に対する低減された免疫原性又は非免疫原性の代替物を与え、したがってワクチン送達システムにおいて使用するための改善された非免疫原性LNPも与える。さらに、本開示に従って作製されたLNPは、限定されるものではないが粒子サイズ、多分散性、凍結/解凍安定性、オリゴヌクレオチドカプセル化効率、オリゴヌクレオチドの完全性の維持、エンドソーム脱出、トランスフェクション効率などを含めて、当技術分野にとって潜在的に有益な複数の特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本開示は、脂質に結合しているポリオキサゾリン(POZ)を含み、生体系において当該ポリマーと当該脂質の間で可変安定度を有する新規ポリマー脂質に関する。この態様において、ポリオキサゾリン-脂質(POZ-脂質)コンジュゲートは、POZと脂質の間のリンケージを介して制御可能な分解性を有する。POZ-脂質コンジュゲートは、脂質ナノ粒子に組み込まれ、そうする際に、独自の特性を脂質ナノ粒子に付与することができる。
【0011】
一実施形態において、本開示の脂質ナノ粒子組成物は、本明細書に記載されたPOZ-脂質を含むことができる。別の実施形態において、本開示の組成物は、本明細書に記載されたPOZ-脂質、カチオン性又はイオン化可能な脂質、及び任意選択の追加の脂質を含む。さらに別の実施形態において、本開示の組成物は、本明細書に記載されたPOZ-脂質、追加の脂質、例えばリン脂質や構造的脂質、コレステロール、オリゴヌクレオチドペイロード、及びそれらの組合せを含む。オリゴヌクレオチドペイロードをカプセルに入れる脂質ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子を取り入れる好適な細胞型においてペイロードの発現をもたらすことができ、したがってペイロードに対する治療的応答をもたらす。一実施形態において、オリゴヌクレオチドペイロードには、SARS-CoV-2、狂犬病、インフルエンザなどの感染症に対するmRNAワクチンが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態において、脂質ナノ粒子組成物は、限定されるものではないががん免疫療法、遺伝子療法、酵素補充、及びそれらの組合せを含めて、さまざまな治療手段においても使用されうる。
【0012】
本開示はまた、式Iの化合物:
R-POZ-L-脂質 I
にも関し、式中、
Rは、開始基を含み、
POZは、ポリオキサゾリンポリマーを含み、
Lは、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
脂質は、少なくとも1つの疎水性部分を含む非荷電脂質を含む。
【0013】
一実施形態において、式I中のPOZは、
-{[N(COX)CH2CH2]o-[N(COR2)CH2CH2]n}a-
であり、
ここで、Xは、アルキン基、結合したカルボン酸を有するトリアゾール、又はそれらの組合せを含めて、官能基を含み、oは、0~10の範囲内であり、nは、1~1000の範囲内であり、R2は、水素、置換若しくは非置換アルキル、アルキン置換アルキル、又は置換若しくは非置換アラルキル基を含み、aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockである。
【0014】
別の実施形態において、POZは、約1.01~約1.20の多分散指数を有する。さらに別の実施形態において、POZは、500ダルトン~5,000ダルトンの分子量を有する。さらに別の実施形態において、Rには、水素、置換若しくは非置換アルキル、アルキン置換アルキル、結合したカルボン酸を有するトリアゾール、又は置換若しくは非置換アラルキル基が含まれる。Lには、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、(限定されるものではないがカルバミン酸エチル(ウレタン)を含めて)カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せが含まれうる。別の実施形態において、脂質は、2つの疎水性部分を含むことができる。例えば、脂質には、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せを含む。
【0015】
本開示のこの態様において、式Iは、以下のうちの1つとすることができる:
【0016】
【化1】
式中、mは、1~2であり、nは、1~1000の範囲内であり、oは、1~5の範囲内であり、pは、1~10の範囲内である。
本開示はまた、式IIの化合物
脂質-L
1-(POZ)
n
a-T II
にも関し、式中、
脂質は、少なくとも1つの疎水性部分を含む非荷電脂質を含み、
L
1は、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
POZは、構造[N(COR
2)CH
2CH
2]のポリオキサゾリンポリマーを含み、ここで、R
2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アルキン置換アルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、又は活性官能基から独立に選択され、
nは、1~1,000の範囲内であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
Tは、停止末端の基を含む。
【0017】
この態様において、L1には、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、(限定されるものではないがカルバミン酸エチル(ウレタン)を含めて)カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、L1は、トリアゾールである。別の実施形態において、Tは、Z-B-Qを含み、ここで、Zは、S、O、又はNを含み、Bは、任意選択の連結基であり、Qは、停止求核体又はその一部分である。
【0018】
この態様において、脂質は、2つの疎水性部分を含むことができる。例えば、脂質には、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、脂質には、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せが含まれる。
【0019】
一実施形態において、式IIは、以下のうちの1つである:
【0020】
【化2】
式中、mは、1~2であり、nは、1~1000の範囲内であり、oは、1~5の範囲内である。
【0021】
本開示はまた、式IIIの化合物
R-(POZ)n
a-Z-L2-脂質 III
にも関し、式中、
Rは、開始基を含み、
POZは、構造[N(COR2)CH2CH2]のポリオキサゾリンポリマーを含み、ここで、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アルキン置換アルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル(heterocycylalkyl)基、又は活性官能基から独立に選択され、
nは、1~1,000の範囲内であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
Zは、S、O、又はNを含み、
L2は、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
脂質は、少なくとも1個の疎水基を含む非荷電脂質を含む。
【0022】
この態様において、L2には、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、(限定されるものではないがカルバミン酸エチル(ウレタン)を含めて)カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、脂質は、2つの疎水性部分を含む。例えば、脂質には、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、脂質には、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せが含まれる。
【0023】
一実施形態において、Rには、水素、又は置換若しくは非置換アルキルが含まれ、nは、15~35の範囲内である。
【0024】
本開示はまた、式IVの化合物
【0025】
【化3】
にも関し、式中、
Rは、開始基を含み、
L
3は、生理的媒体中で制御可能な分解性を有する連結基を含み、
脂質は、少なくとも1つの疎水性部分を含む非荷電脂質を含み、
nは、1~5の範囲内であり、
R
2は、各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アルキン置換アルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、又は活性官能基から独立に選択され、
mは、1~100の範囲内であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
Tは、停止末端の基を含む。
【0026】
この態様において、L3には、エーテル、エステル、カルボン酸エステル、炭酸エステル、カルバメート、アミン、アミド、ジスルフィド、及びそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、L3は、トリアゾールを含む。別の実施形態において、Tは、Z-B-Qを含み、ここで、Zは、S、O、又はNを含み、Bは、任意選択の連結基であり、Qは、停止求核体又はその一部分である。
【0027】
脂質は、2つの疎水性部分を含むことができる。例えば、脂質には、リン脂質、グリセロ脂質、ジアルキルアミン、又はそれらの組合せが含まれうる。一実施形態において、脂質には、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール、又はそれらの組合せが含まれうる。
【0028】
一実施形態において、上記の式I~IVの化合物のいずれも、L、L1、L2、又はL3(適用できる場合)によって少なくとも部分的に決定される加水分解速度を有する。別の実施形態において、上記の式I~IVの化合物のいずれも、50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分以下である。さらに別の実施形態において、上記の式I~IVの化合物のいずれも、50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約120時間以上である。
【0029】
上記の式I~IVの化合物のいずれかを含む組成物が形成されうる。一実施形態において、そのような組成物は、カチオン性又はイオン化可能な脂質をさらに含むことができる。別の実施形態において、本開示は、動物における障害又は疾患を治療する方法であって、動物に有効量のそのような組成物を投与するステップを含む方法に関する。さらに別の実施形態において、本開示は、動物における防御免疫応答を惹起する方法であって、動物に有効量のそのような組成物を投与するステップを含む方法に関する。どちらの場合についても、投与するステップは、そのような組成物を動物に皮下、静脈内、筋肉内、皮内又はエアロゾル経路を介して送達するステップを含むことができる。
【0030】
本発明の別の特徴及び効果は、以下に記載される図面と関連させて提示された以下の詳細な説明から確認されうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示の実施形態による脂質ナノ粒子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、本開示のさまざまな新規POZ-脂質コンジュゲート及びPOZ-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子(LNP)を提供する。LNPは、生物活性治療分子の細胞内送達を促進するために使用されうる。一実施形態において、LNPは、カプセル化ペイロード、例えば限定するものではないがmRNA又は修飾mRNAを含めて核酸ペイロードを送達するために使用されうる。本開示のPOZ-脂質コンジュゲートを含むLNPは、免疫原性を有しないか、又はPEG-脂質を含む対応するLNPと比較して低減された免疫原性を有するので、そのようなLNPは、核酸ワクチンを送達する、より安全な方法を提供する。さらに、特定の理論に拘束されないが、新規POZ-脂質はLNPの成分として、PEG-脂質と比べると独自の特性を付与することもでき、得られたLNPは治療薬として投与されると、独自の取り込み、分布及び有効性を示すことができると予想される。さらに、本開示のPOZ-脂質は、さまざまな安定度を有し、POZ-脂質を含むLNPを「設計する」際に追加の柔軟性をもたらすことが有利でありうる。本開示はまた、そのようなLNPを含み、治療有効量の生物活性分子を患者の細胞に送達するのに有用である医薬組成物にも関する。
【0033】
ポリオキサゾリン(POZ)は生体適合性ポリマーであり、多くの親水性及び疎水性溶媒に対して良好な溶解度を保持する。POZは酸化的分解反応に抵抗性でもあり、生物蓄積を受けない。POZは、シリカ粒子、金粒子、ZnOナノ結晶、及び磁性粒子にグラフト化されたとき、ステルス能力及び良好な粘膜組織透過を付与する。
【0034】
LNPは、水性コアを包む1つ以上の脂質層によって形成された、約20nm~数ミクロンの範囲内であるサイズの両親媒性球状ベシクルである。先行技術のLNPは、一般的にカチオン性又はイオン化可能な脂質を(i)二重層構造を支え、飲食作用を促進するヘルパー脂質;(ii)LNPの脂質二重層を安定化するためのステロール脂質(すなわち、コレステロール);及び(iii)水和性層を有するLNPを提供するためのPEG-脂質と組み合わせて含むことで、コロイド安定性を改善し、新生粒子の融着を妨げ、タンパク質吸着及び非特異的取り込みを低減し、網内系クリアランスを妨げる。しかし、上に記載されたように、これらのLNP中のPEG-脂質は、抗PEG免疫応答の可能性のために患者の安全を損なうことがある。LNP、特に核酸送達のためのLNPにおいて使用されたことがない本開示のPOZ-脂質を使用することは、PEG化LNPの免疫原性の問題に対して解決策をもたらし、治療薬として投与されたとき(PEG化LNPと比較して)独自の取り込み、分布、及び有効性を有するLNPも提供する。
【0035】
定義
本明細書に引用されたすべての特許出願、特許、及び印刷刊行物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。ただし、いずれかの定義、主題の放棄又は否定、及び組み込まれた資料が本明細書における明確な開示と一致しない範囲を除いては、この限りでなく、その場合には本開示における文言が優先する。
【0036】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書では当該冠詞の文法的目的語の1つ又は1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つより多くの要素を意味する。
【0037】
用語「約」及び「およそ」は、一般的に測定の性質又は精度を考慮して、測定された量の誤差又は変動の許容される範囲を意味するものとする。本明細書に記載された数量は別段の記載がない限り近似であり、用語「約」又は「およそ」は、明記されていないとき推測されうるということを意味する。
【0038】
本明細書では用語「活性の」又は「活性化された」は特定の官能基に関連して使用されたとき、別の分子の求電子体又は求核体と容易に反応する官能基を指す。これは、反応するために触媒又は非現実的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」又は「不活性」基)とは対照的である。
【0039】
本明細書では用語「生理学的に分解可能な」又は「生理学的に放出可能な」は、切断可能な部分を含むリンケージを指す。分解可能な及び放出可能なという用語は、リンカーが切断される特定の機構をいずれも含意しない。
【0040】
本明細書では用語「連結する」、「転結された」、「リンケージ」又は「リンカー」はPOZポリマー、POZコンジュゲート、作用剤、若しくは本明細書に記載された化合物、又はそれらの成分に対して使用されたとき、通常は化学反応の結果として形成される結合を指し、典型的には共有結合である。
【0041】
本明細書では用語「脂質ナノ粒子」又は「LNP」は、身体に放出されるべき分子を含むコアを取り囲んでいる脂質層によって形成された、リポソームを含めて多くのタイプのナノ粒子のいずれも包含するために使用される。リポソームは、一般的に水性コアをカプセル化している近接した1つ以上の脂質二重層を有する。リポソーム様ナノ担体の他の形は、脂質単層又は近接していない二重層を有することがあり、水性コアを有することもあれば有しないこともある。
【0042】
本明細書では用語「親水性の」は例えば親水基に関して、水との相互作用が油又は他の疎水性溶媒との相互作用より熱力学的に有利である化合物若しくは分子、又はそれらの一部分を指す。親水性化合物は、水に溶解することができ、又は分散されうる。
【0043】
本明細書では用語「疎水性の」は例えば疎水性部分に関して、水との相互作用が油又は他の疎水性溶媒との相互作用より熱力学的に有利でない化合物若しくは分子、又はそれらの一部分を指す。疎水性化合物は、油若しくは他の疎水性溶媒に溶解することができ、又は分散されうる。
【0044】
本明細書では用語「不活性な」又は「非反応性の」は特定の官能基に関連して使用されたとき、別の分子の求電子体又は求核体と容易に反応せず、反応するために触媒又は非現実的な反応条件を必要とする官能基を指す。
【0045】
本明細書では用語「ペンデント基」は、POZポリマーに結合しているPOZポリマーの部分を指す。
【0046】
本明細書では用語「ペンデント部分」は、POZポリマー部分に連結基を介して連結している置換基を指す。ペンデント部分は、本明細書に記載された式IVのR2により例示される。
【0047】
本明細書では用語「薬学的に許容される」は、組成物の他の成分と相溶性がある化合物であって、当該化合物又は組成物を受けている対象に有害でない化合物を指す。いくつかの実施形態において、用語「薬学的に許容される」は、米国連邦若しくは州政府の規制当局により認可され、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に動物、さらに特にヒトにおける使用で列挙されていることを意味する。
【0048】
本明細書では用語「薬学的に許容される形」は、限定されるものではないが化合物の溶媒和物、水和物、プロドラッグ、同形体、多形体、偽形体、中性の形、及び塩の形を含めて、対象に投与されうる化合物又はPOZコンジュゲートの公知の形を含むことになっている。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される形は、プロドラッグ、同形体及び/又は偽形体を除外する。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される形は、薬学的に許容される塩、中性の形、溶媒和物及び水和物に限定される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される形は、薬学的に許容される塩及び中性の形に限定される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される形は、薬学的に許容される塩に限定される。
【0049】
本明細書では用語「アルキル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含めて、任意選択的に置換されていてよい1個以上のヘテロ原子(O、S又はNなど)を任意選択的に含む飽和脂肪族基を指す。いくつかの実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキルは、その主鎖中に約30個以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC1~C30、分枝鎖ではC3~C30)、あるいは約20個以下又は10個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、用語「アルキル」は、C1~C10直鎖アルキル基又はC1~C3直鎖アルキル基を指す。いくつかの実施形態において、用語「アルキル」は、C3~C12分枝鎖アルキル基を指す。いくつかの実施形態において、用語「アルキル」は、C3~C8分枝鎖アルキル基を指す。アルキルの代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びn-ヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、用語「アルキル」は、炭素原子の代わりに、任意選択的に置換されていてよい1個以上のヘテロ原子(O、S又はNなど)を含むC1~C10直鎖アルキル基を指す。いくつかの実施形態において、用語「アルキル」は、OH、NH2及び=Oからなる群から選択される基で5個まで置換されているC1~C10直鎖アルキル基を指す。
【0050】
本明細書では用語「アルケニル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、2~30個の炭素を含み、水素2個を除去することによって形成された少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む直鎖又は分枝鎖炭化水素基を含めて、任意選択的に置換されていてよい1個以上のヘテロ原子(O、S又はNなど)を任意選択的に含む不飽和脂肪族基を指す。アルケニルの代表例には、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブチニル、4-ペンチニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、及び3-デセニルが含まれるが、これらに限定されない。アルケニル基の不飽和結合は、部分のどこに位置していてもよく、二重結合について(Z)又は(E)立体配置を有することができる。
【0051】
本明細書では用語「アルキニル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、2~30個の炭素原子を含み、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む直鎖又は分枝鎖炭化水素基を含めて、任意選択的に置換されていてよい1個以上のヘテロ原子(O、S又はNなど)を任意選択的に含む不飽和脂肪族基を指す。アルキニルの代表例には、アセチレニル、1-プロピニル、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ペンチニル、4-ペンチニル、及び1-ブチニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書では用語「置換アルキル」、「置換アルケニル」、及び「置換アルキニル」は、炭素又は水素への1個以上の結合が、非水素又は非炭素原子への結合、例えば限定されるものではないがFやCl、Br、Iなどのハリド中のハロゲン原子;カルボニルやカルボキシル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、エステル基などの基中の酸素原子;チオール基やアルキル及びアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、スルホキシド基などの基中の硫黄原子;アミンやアミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミド、エナミン、イミン、オキシム、ヒドラゾン、ヘテロシクリルアミン、(アルキル)(ヘテロシクリル)-アミン、(アリール)(ヘテロシクリル)アミン、ジヘテロシクリルアミン、トリアゾール、ニトリルなどの基中の窒素原子;トリアルキルシリル基やジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基などの基中のケイ素原子;並びにさまざまな他の基中の他のヘテロ原子への結合によって置き換えられている、上に定義されたようなアルキル、アルケニル及びアルキニル基を指す。具体的実施形態において、「極性アルキル」、「極性アルケニル」、及び「極性アルキニル」は、極性共有結合を生じる原子で置換されているアルキル、アルケニル、及びアルキニル基を指す。別の具体的実施形態において、「極性アルキル」、「極性アルケニル」、及び「極性アルキニル」は、極性共有結合を生じる原子で置換されているC1~C5アルキル、アルケニル、及びアルキニル基を指す。具体的実施形態において、「極性アルキル」、「極性アルケニル」、及び「極性アルキニル」は、-OH基及び/又は-C(O)-OH基で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル基、例えばC1~C5アルキルやアルケニル、アルキニル基を指す。
【0053】
本明細書では用語「ハロ」又は「ハロゲン」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、-F、-Cl、-Br、又は-Iを指す。
【0054】
本明細書では用語「アルコキシ」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、酸素原子を通して親分子部分に付加されている、本明細書に定義されたアルキル基を指す。アルコキシの代表例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、及びヘキシルオキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書では用語「アラルキル」又は「アリールアルキル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、アリール基で置換されているアルキル基を指し、当該部分は、アルキル基を通して親分子に付加されている。アリールアルキル基は、任意選択的に置換されていてよい。「置換アラルキル」は、非置換アラルキル基に対して、置換アリール基が非置換アリール基に対して有したのと同じ意味を有する。しかし、置換アラルキル基は、アルキル部分の炭素又は水素結合が非炭素又は非水素原子への結合によって置き換えられている基も含む。
【0056】
本明細書では用語「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアリールアルキル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、ヘテロアリール基で置換されているアルキル基を指し、当該部分は、アルキル基を通して親分子部分に付加されている。ヘテロアリールアルキルは、任意選択的に置換されていてよい。用語「置換ヘテロアリールアルキル」は、非置換ヘテロアリールアルキル基に対して、置換アリール基が非置換アリール基に対して有したのと同じ意味を有する。
【0057】
本明細書では用語「ヘテロシクリルアルキル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、非置換又は置換アルキル、アルケニル又はアルキニル基の水素又は炭素結合がヘテロシクリル基への結合で置き換えられている非置換又は置換アルキル、アルケニル又はアルキニル基を指す。ヘテロシクリルアルキルは、任意選択的に置換されていてよい。用語「置換ヘテロシクリルアルキル」は、非置換ヘテロシクリルアルキル基に対して、置換アリール基が非置換アリール基に対して有したのと同じ意味を有する。しかし、置換ヘテロシクリルアルキル基は、非水素原子が、ヘテロシクリルアルキル基のヘテロシクリル基中のヘテロ原子、例えば限定されるものではないがピペリジニルアルキル基のピペリジン環中の窒素原子に結合している基も含む。
【0058】
本明細書では用語「アリール」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、単環式、二環式及び多環式芳香族炭化水素基、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びピレンを指す。芳香族環は、環の1つ以上の位置において1個以上の置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、フルオロアルキル(トリフルオロメチル(trifluromethyl)など)、シアノで置換されていてよい。用語「アリール」は、2つの隣接環に2個以上の炭素が共有されている(環は「縮合環」である)2つ以上の環式環を有する多環式環系も含み、環の少なくとも1つが芳香族炭化水素であり、例えば他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってよい。いくつかの実施形態において、用語「アリール」はフェニル基を指す。アリール基は、任意選択的に置換されていてよい。
【0059】
本明細書では用語「シクロアルキル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、3~6個の環炭素原子を含む飽和炭素環式基を指し、そのような環は、置換若しくは非置換アルキル基又は置換アルキル基のために記載された置換基で任意選択的に置換されていてよい。例示的なシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-メチルシクロブチル及び4-エチルシクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書では用語「ヘテロアリール」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、環構造中に1個以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄を含めて合計3~30個の原子を有する単環式、二環式、及び多環式芳香族基を指す。例示的なヘテロアリール基には、アザインドリル、ベンゾ(b)チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、フラニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、インドリル、インドリニル、インダゾリル、イソインドリニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピロロ[2,3-d]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル、キノリニル、キナゾリニル、トリアゾリル、チアゾリル、チオフェニル、テトラヒドロインドリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、トリアゾリル又はトロパニルなどが含まれる。「ヘテロアリール」は、環の1つ以上の位置において1個以上の置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、フルオロアルキル(トリフルオロメチルなど)、シアノなどで置換されていてよい。用語「ヘテロアリール」は、2つの隣接環に2個以上の炭素が共有されている(環は「縮合環」である)2つ以上の環式環を有する多環式環系も含み、環の少なくとも1つが環構造中に1個以上のヘテロ原子を有する芳香族基であり、例えば他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってよい。
【0061】
本明細書では用語「ヘテロシクリル」は単独で使用されようと置換基の部分として使用されようと、専門用語であり、完全に飽和されていてよく、又は1つ若しくは複数の不飽和単位を含んでよいが、誤解を避けるために、不飽和度は芳香族環系を生じず、少なくとも1個のヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄を含めて3~15個の原子を有する、限定されるものではないが単環式、二環式、及び三環式環を含めて、非芳香族環系の基を指す。本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでなく、例示を目的として、以下のアジリジニル、アジリニル、オキシラニル、チイラニル、チイレニル、ジオキシラニル、ジアジリニル、ジアゼパニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオラニル、1,3-ジチアニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、アゼチル、オキセタニル、オキセチル、チエタニル、チエチル、ジアゼチジニル、ジオキセタニル、ジオキセテニル、ジチエタニル、ジチエチル、ジオキサラニル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、アゼピン、アゼチジニル、モルホリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、キヌクリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル、及びトリチアニルは、ヘテロ環式環の例である。ヘテロシクリル基は、環の1つ以上の位置において1個以上の置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、フルオロアルキル(トリフルオロメチルなど)、シアノなどで置換されていてよい。
【0062】
本明細書では用語「治療」、「治療する」、及び「治療すること」は、疾患又は病態の症状、様相又は特徴を予防、除去、又は低減するように一連の行動(本明細書に記載されたコンジュゲート又は本明細書に記載されたコンジュゲートを含む医薬組成物を投与することなど)を指す。そのような治療は、有用であるために絶対的である必要はない。一実施形態において、治療は、疾患又は病態の症状、様相、又は特徴の発生と同時に又はその後に開始された一連の行動を含む。一実施形態において、治療は、疾患又は病態の症状、様相、又は特徴の発生前に開始された一連の行動を含む。
【0063】
本明細書では用語「治療を必要とする」は、介護者によって下された、患者が治療を必要とし、又はそれから恩恵を被るという判断を指す。この判断は、介護者の専門知識の領域であるさまざまな要因に基づいて下されるが、本開示の方法又は化合物によって治療可能な疾患又は病態の結果として、患者が病気であり、又は病気であろうという知識を含む。
【0064】
本明細書では用語「個体」、「対象」、又は「患者」は、哺乳類、例えばマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類、及びヒトを含めていずれの動物でも指す。用語は、雄性若しくは雌性又は両方を指定することができ、あるいは雄性又は雌性を除外することができる。好ましい実施形態において、用語「個体」、「対象」、又は「患者」は、ヒトを指す。
【0065】
本明細書では用語「治療有効量」は、疾患又は病態のいずれかの症状、様相、又は特徴にいずれかの検出可能なプラス効果をもつことができるコンジュゲート単独又は医薬組成物の部分としてのコンジュゲートの量を指す。そのような効果は、有益であるために絶対的である必要がない。
【0066】
「置換」又は「で置換されている」は、そのような置換が置換原子及び置換基の許容原子価に従い、置換が、安定な化合物、例えば転位、断片化、分解、環化、脱離、又は他の反応などによる転換を自発的に受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されよう。
【0067】
基が化合物の部分として指定されているとき、基の置換は、特定の結合を収容するように調整されうることが理解されよう。例えば、アルキル基が他の2個の基に連結されているとき、アルキル基はアルキレン基と考えられる。
【0068】
用語「置換された」は、有機化合物の許容されるすべての置換基を包むことも企図される。広範な態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状の置換基、炭素環式及びヘテロシクリル、芳香族及び非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基には、例えば本明細書で上に記載されたものが含まれる。本開示では、酸素又は窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載された有機化合物の水素置換基及び/又はいずれか許容される置換基を有することができる。例示的な置換には、ヒドロキシ、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、フルオロアルキル(トリフルオロメチルなど)、シアノなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明は、いかなる形でも有機化合物の許容される置換基によって限定されることを意図したものではない。
【0069】
本明細書における他の化学用語は、参照により本明細書に組み込まれるThe McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker, S.編、1985、McGraw-Hill、San Francisco)によって例示されるように、当技術分野における通常の用法に従って使用される。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0070】
本明細書では用語「薬学的に許容される塩」は、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マロン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ナフタレン-2-スルホン酸、及び他の酸を含めて無機酸又は有機酸に由来する塩を含む。薬学的に許容される塩の形は、塩を含む分子の比が1:1でない形を含むことができる。例えば、塩は、塩基1分子当たり無機酸又は有機酸を1分子超、例えばコンジュゲート1分子当たり塩酸2分子を含むことができる。別の例として、塩は、塩基1分子当たり無機酸又は有機酸1分子未満、例えば無機酸又は有機酸1分子当たりコンジュゲート2分子を含むことができる。
【0071】
本明細書では用語「担体」及び「薬学的に許容される担体」は、化合物が一緒に投与され、又は投与のために一緒に製剤化される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような薬学的に許容される担体の非限定例には、水や生理食塩水、油などの液体、及びアラビアゴムやゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などの固形物が含まれる。さらに、補助剤、安定化剤、粘稠化剤、等浸透剤、凍結保存剤、滑沢剤、矯味剤、及び着色剤が使用されうる。好適な医薬用担体の他の例については、Remington’s Science and Practice of Pharmacy (第23版、ISBN 9780128200070)及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(第8版、978-0-85-711271-2)に記載されており、それぞれ参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
本明細書では用語「ターゲット分子」は、治療的若しくは診断的適用又はターゲティング機能を有する任意の分子、あるいは化合物が一緒に投与され、又は投与のために一緒に製剤化されるビヒクルを指し、限定されるものではないが治療剤(例えば、限定されるものではないが薬物)、診断剤、ターゲティング剤、有機低分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ヘパリン若しくはヒアルロン酸などの炭水化物、又はグリセロ脂質、糖脂質、若しくはリン脂質などの脂質を含めて、ターゲット分子は、本開示のPOZポリマー又はPOZ誘導体の活性官能基とリンケージを形成することができる。
【0073】
本明細書では「脂質」又は「脂質部分」は、(i)脂肪酸のエステル又はその誘導体を含み、水に不溶であるが、多くの有機溶媒に可溶であることによって特徴づけられ、脂肪や油、ロウなどの単純脂質、リン脂質や糖脂質、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質などの複合脂質、及びステロイドなどの誘導脂質が含まれるがこれらに限定されない有機化合物、並びに(ii)脂肪酸のエステルを含まないが、そのような有機化合物をその両親媒性により模倣する有機化合物を意味し、すなわち、疎水性部分と親水性部分を両方所有し、したがって水性環境において特異的な形で凝集して、層、ベシクル及びLNPを形成することができる。
【0074】
本明細書では「低分子干渉RNA(siRNA)」は、特異的遺伝子の発現に干渉するRNA干渉(RNAi)経路に関与する、16~40個のヌクレオチドの長さの二本鎖RNA分子のクラスを意味する。siRNAは、RNAi経路における役割に加えて、RNAi関連経路においても働く。
【0075】
本明細書では「RNA」は、siRNA、アンチセンスRNA、一本鎖RNA、マイクロRNA、mRNA、非コードRNA、及び多価RNAを含めて少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」は、β-D-ribo-フラノース部分の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離RNA、例えば部分精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生RNA、並びに1種以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は改変により天然RNAと異なる改変RNAを含む。
【0076】
POZ-脂質コンジュゲート
本開示のPOZ-脂質コンジュゲートは、ポリオキサゾリンポリマーに連結している脂質部分を含む。POZ-脂質コンジュゲートの成分については、以下にさらに詳述される。
【0077】
POZ部分
さまざまなPOZポリマーが、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートにおいて使用されてよく、以下にさらに詳述される。しかし、一般的には、POZポリマーは、単一のタイプ又はクラスの官能基を含むことができ、あるいは一つより多いタイプ又はクラスの官能基を含むことができる。POZは、線状POZポリマー、分枝状POZポリマー、ペンデントPOZポリマー又はマルチアーム型POZポリマーとすることができる。代表的なPOZポリマーについては、米国特許第7,943,141号、同第8,088,884号、同第8,110,651号、同第8,101,706号、同第8,883,211号、同第9,284,411号、及び米国特許出願第13/003,306号、同第13/549,312号、同第13/524,994号に記載されており、これらはそれぞれ、そのような教示のために参照によりその全体が組み込まれる。ポリオキサゾリンポリマーは、ホモポリマーとすることができる。同様に、ポリオキサゾリンポリマーは、1単位以上の第2のポリオキサゾリンポリマーによって分離されている1単位以上の第1のポリオキサゾリンポリマーを含むランダム又はブロックコポリマーとすることができる。同様に、POZは、かなり親水性であるポリ(メチルオキサゾリン)(PMOZ)、又はあまり親水性でないポリ(エチルオキサゾリン)(PEOZ)とすることができる。
【0078】
一実施形態において、POZポリマーは、リビングカチオン重合によって調製される。当技術分野において公知である他の方法を使用して、POZポリマーを調製することもできる。以下にさらに詳述するように、POZを脂質に直接コンジュゲートすることができ、又はリンカー部分を介して脂質に連結することができる。限定されるものではないがエステルを含まないリンカー部分及びエステルを含むリンカー部分を含めて、POZを脂質にカップリングさせるのに適したいずれのリンカー部分も使用することができる。また、以下にさらに詳述するように、POZポリマーを、開始剤若しくはポリマーの停止末端の適切な化学基を介して、又はポリマーのペンダント位置における適切な化学基を介して脂質部分にコンジュゲートすることができる。
【0079】
本開示では、ポリオキサゾリン誘導体又はポリオキサゾリンポリマーが記載されているときは常に、ポリオキサゾリンポリマーは、低多分散(PD)値及び/又は純度上昇で特徴づけられたものとすることができ、したがってポリマーは、医薬品適用において有用である。特定の実施形態において、本開示の方法は、増加した分子量(MW)値において低PD値を有するポリオキサゾリン誘導体を提供する。例えば、一実施形態において、POZ部分は、約500~約10000ダルトンの分子量を有する。別の実施形態において、POZ部分は、約500~約5000ダルトンの分子量を有する。さらに別の実施形態において、POZ部分は、約1,000ダルトン~約2,500ダルトンの分子量を有する。さらに別の実施形態において、POZ部分は、約2,000ダルトン~約5,000ダルトンの分子量を有する。さらに別の実施形態において、POZ部分は、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンの分子量を有する。そのような実施形態において、少なくとも1つのポリオキサゾリンポリマー鎖は、1.2以下、1.1以下、又は1.05以下の多分散値を有する。低PD値を有するポリオキサゾリンポリマー及びそれらの誘導体を合成する方法については、国際出願PCT/US2008/002626号及び同PCT/US2008/078159号に述べられており、それらは、そのような教示のために参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0080】
脂質部分
一実施形態において、POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分は、少なくとも1つの疎水性部分を含む。別の実施形態において、脂質部分は、2つの疎水性部分を含む。この態様において、疎水性部分は、アシル鎖、アルキル鎖、又はそれらの組合せとすることができる。アシル及びアルキル鎖は、長さがさまざまであってよい。さらに、アシル及びアルキル鎖は、飽和であってよく、又は1つ以上の不飽和領域(1個以上の二重結合など)を含むことができる。
【0081】
疎水性部分の数にかかわらず、脂質部分は、POZポリマーの化学基とリンケージを形成することができる化学基も含む。この態様において、化学基は、アミン基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボン酸基、及びそれらの組合せとすることができるが、他の化学基を除外しない。一実施形態において、脂質部分は、POZポリマーとリンケージを形成するために使用することができる反応性アミノ基を含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、脂質の化学基は、親水性ヘッド基の位置に配置されていることがある。また、上に記載されたように、POZポリマーを、開始剤若しくはポリマーの停止末端の適切な化学基を介して、又はポリマーのペンダント位置における適切な化学基を介して脂質にコンジュゲートすることができる。
【0083】
以下にさらに詳述されるように、リンケージの性質は、POZポリマーに存在する化学基及び脂質部分に存在する化学基によって決まる。いくつかの実施形態において、リンケージは、いくつかの酵素の存在下で分解可能である。他の実施形態において、リンケージは、同じこれらの酵素の存在下で安定である。
【0084】
一実施形態において、POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分は非荷電脂質である。例えば、層、ベシクル及び/又はLNP組成物を単独で又は他の脂質成分と組み合わせて形成することができるいずれの非荷電脂質も、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートを形成する際における使用に適している。別の実施形態において、脂質部分は、合成でも、天然でもよい。
【0085】
POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分は、本明細書に記載されたLNPに所望の特徴を付与するように選択されうる。例えば、脂質の不飽和度は、本明細書に記載されたLNPに所望の特性をもたらすように選択されうる。例えば、脂質部分の不飽和度を上げることによって、LNP組成物に流動性を付与することができる。さらに、不飽和領域の周囲のcis立体配置が、LNP組成物に増大した流動性を付与することもできる。同様に、飽和脂質部分が、LNP組成物に硬さを付与することができる。流動性及び/又は硬さは、LNP組成物の安定性及び/又はLNP組成物からのPOZ-脂質コンジュゲートの放出率を少なくとも部分的に制御するように選択されうる。
【0086】
一実施形態において、POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分はリン脂質である。例えば、POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分は、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、又はそれらの組合せとすることができる。
【0087】
別の実施形態において、POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分はグリセロ脂質である。例えば、脂質部分は、αβ-ジアシルグリセロールとすることができる。
【0088】
別の実施形態において、POZ-脂質コンジュゲートの脂質部分はジアルキルアミンである。例えば、脂質部分は、ジミリスチルアミンとすることができる。
【0089】
ある態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分の2つのアシル又はアルキル鎖の少なくとも1つは飽和である。ある態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖はそれぞれ飽和である。さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖の一方は飽和であり、他方のアシル又はアルキル鎖は不飽和である。さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖はそれぞれ不飽和である。POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の1つ以上のアシル又はアルキル鎖が不飽和であるとき、アシル又はアルキル鎖は、1~6つ、1~4つ、1~3つ、又は1~2つの不飽和領域を含むことができる。二重結合が存在する場合、cis若しくはtrans立体配置、又はcis及びtrans立体配置の混合物とすることができる。
【0090】
一態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖の少なくとも1つは、1~5個の炭素の長さ、6~10個の炭素の長さ、11~16個の炭素の長さ、又は17~21個の炭素の長さである。別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、1~5個の炭素の長さ、6~10個の炭素の長さ、11~16個の炭素の長さ、又は17~21個の炭素の長さである。そのようなアシル又はアルキル鎖は長さにかかわらず、偶数と奇数両方の鎖長を含み、上に記載されたように飽和でも、不飽和でもよい。
【0091】
特定の一態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分の2つのアシル又はアルキル鎖の少なくとも1つは、6~10個の炭素の長さである。別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、6~10個の炭素の長さである。そのようなアシル又はアルキル鎖は長さにかかわらず、偶数と奇数両方の鎖長を含み、上に記載されたように飽和でも、不飽和でもよい。
【0092】
別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分の2つのアシル又はアルキル鎖の少なくとも1つは、11~16個の炭素の長さである。別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、11~16個の炭素の長さである。そのようなアシル又はアルキル鎖は長さにかかわらず、偶数と奇数両方の鎖長を含み、上に記載されたように飽和でも、不飽和でもよい。
【0093】
さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖の少なくとも1つは、17~21個の炭素の長さである。さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、17~21個の炭素の長さである。そのようなアシル又はアルキル鎖は長さにかかわらず、偶数と奇数両方の鎖長を含み、上に記載されたように飽和でも、不飽和でもよい。
【0094】
一態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21個の炭素の長さであり、それらのアシル又はアルキル鎖は、飽和又は不飽和である。別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアルキル又はアシル鎖のそれぞれは、11、12、13、14、15、又は16個の炭素の長さのアシル鎖であり、それらのアシル鎖は、飽和又は不飽和である。さらなる態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、12、13、14、又は15個の炭素の長さのアシル鎖であり、それらのアシル鎖は、飽和又は不飽和である。さらにさらなる態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、13又は14個の炭素の長さのアシル鎖であり、それらのアシル鎖は、飽和又は不飽和である。さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアルキル又はアシル鎖のそれぞれは、11、12、13、14、15、又は16個の炭素の長さのアルキル鎖であり、それらのアルキル鎖は、飽和又は不飽和である。さらなる態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、12、13、14又は15個の炭素の長さのアルキル鎖であり、それらのアルキル鎖は、飽和又は不飽和である。さらにさらなる態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質の2つのアシル又はアルキル鎖のそれぞれは、13又は14個の炭素の長さのアルキル鎖であり、それらのアルキル鎖は、飽和又は不飽和である。
【0095】
さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分のそれぞれのアシル又はアルキル鎖は、同じ長さを有し、不飽和である。例えば、アシル又はアルキル鎖は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくは21個の炭素の長さ、11、12、13、14、15、若しくは16個の炭素の長さ、12、13、14、若しくは15個の炭素の長さ、又は13若しくは14個の炭素の長さであり、不飽和であってよい。
【0096】
別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール又は1,2-ジラウロイル-sn-グリセロールである。さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分は、ジ(テトラデシル)アセトアミド又はジ(ドデシル)アセトアミドである。さらに別の態様において、POZ-脂質コンジュゲートにおける脂質部分は、N,N-ジ(テトラデシル)アセトアミド又はN,N-ジ(ドデシル)アセトアミドである。さらに別の態様において、脂質部分は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)(DSPE)とすることができる。
【0097】
POZ-脂質コンジュゲート
一般に、POZの脂質への共有結合は、POZポリマーの活性化学基と脂質の相補的化学基の反応によって行われる。POZポリマー及び/又は脂質の化学基は、反応(例えば限定されるものではないが、保護基が存在するならばその除去)より前に活性化されうる。ヒドロキシル、アミン又はカルボキシル基は、とりわけN-ヒドロキシスクシンイミドやエチルクロロホルメート、DCCD、ウッドワード試薬K、シアヌル酸、トリフルオロメタンスルホニルクロリドなど単官能性の活性化剤によるカップリングのために活性化されうる。いくつかのジイソシアネートなどさまざまな反応性を有する基を含むいくつかの二官能性の架橋試薬も使用されうる。
【0098】
POZ-脂質コンジュゲートに含めるための特異的脂質は、以上及び本明細書に記載される。
【0099】
一実施形態において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート、又はその薬学的に許容される形、例えば限定されるものではないが薬学的に許容される塩は、脂質がポリマー鎖に停止末端において結合している一般式I:
R-POZn-L-脂質 I
によって表すことができ、式中、
Rは、開始基であり、
POZは、ポリオキサゾリンポリマーであり、
nは、1~1,000であり、ポリオキサゾリンポリマーを含むモノマー単位の数を表し、
Lは、切断速度が制御される切断可能な部分を任意選択的に含む連結基であり、脂質の反応性基とポリマーの反応性基を通じた直接リンケージを表し、直接リンケージが、切断速度が極めて不安定から安定まで制御されうる切断可能な部分を形成することができ、
脂質は、本明細書に記載された脂質部分を表す。
【0100】
構造Iの一実施形態において、POZポリマーは、脂質又は連結基とリンケージを形成することができる少なくとも1個の反応性基を含む。(直接リンケージであろうと連結基を利用しているリンケージであろうと)ポリマーと脂質の間のリンケージは、末端位置又は(末端における)ペンデント位置における反応性基を含めてポリマー主鎖のいずれかの反応性基と脂質の反応性基の間に形成されうる。一態様において、連結基とポリマーの間のリンケージは、ポリマーの停止末端において形成されうる。別の態様において、連結基とポリマーの間のリンケージは、ポリマーのペンデント位置において形成されうる。さらに、リンケージ(直接リンケージであろうと連結基を利用しているリンケージであろうと)は、ポリマー又は脂質に元々存在していた反応性基の成分を含むことができる。リンケージ(直接リンケージであろうと連結基を利用しているリンケージであろうと)は、生理学的に分解可能でありうる。この態様において、リンケージは、切断可能な部分を含むことができる。好適な連結基には、エーテル、エステル、アミン、アミド、及びそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
この実施形態の一態様において、Lは、安定なリンケージである。この実施形態の別の態様において、Lは、生理学的に分解可能であり、切断可能な部分を含む。例えば、一実施形態において、Lは、エステル、カルボン酸エステル(-C(O)-O-)、炭酸エステル(-O-C(O)-O-)、カルバメート(-O-C(O)-NH-)及びアミド(-C(O)-NH-)から選択されうる。この実施形態のさらに別の態様において、Lは、切断可能な部分を含まないリンケージである。
【0102】
例示的なR基には、水素、アルキル及び置換アルキルが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、開始基は、アルキル基、例えばC1~C4アルキル基である。上記の具体的実施形態において、開始基はメチル基である。別の実施形態において、開始基はHである。いくつかの態様において、開始基は、活性官能基を欠いているように選択されうる。他の態様において、開始基は、活性官能基を含むように選択されうる。追加の好適な開始基は、米国特許第7,943,141号、同第8,088,884号、同第8,110,651号、同第8,101,706号、同第8,883,211号、同第9,284,411号、及び米国特許出願第13/003,306号、同第13/549,312号、同第13/524,994号に開示されており、これらはそれぞれ、そのような教示のために参照によりその全体が組み込まれる。
【0103】
いくつかの実施形態において、Rは、H又はCH3である。
【0104】
一態様において、構造IにおけるPOZポリマーは、[N(COR2)CH2CH2]nによって表されるポリマーとすることができ、ここで、R2は、POZポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アラルキル及びヘテロシクリルアルキル基から独立に選択され、Rは、H又はCH3であり、重合度「n」は、15~35、20~30の範囲内であり、又は25でありうる。
【0105】
別の態様において、構造IにおけるPOZポリマーは、[N(COR2)CH2CH2]nによって表されるポリマーとすることができ、ここで、R2は、POZポリマーの各繰り返し単位について非置換及び置換アルキルから独立に選択され、Rは、H又はCH3であり、nは、15~35、20~30の範囲内であり、又は25でありうる。
【0106】
さらに別の態様において、構造IにおけるPOZポリマーは、[N(COR2)CH2CH2]nによって表されるポリマーであり、ここで、R2は、POZポリマーの各繰り返し単位について-CH3及び-CH2-CH3から独立に選択され、任意選択的にRは、H又はCH3であり、nは、15~35、20~30の範囲内であり、又は25でありうる。
【0107】
POZポリマーが[N(COR2)CH2CH2]nによって表されるポリマーであるとき、コンジュゲートのPOZポリマーは、水性環境において可溶である。ペンデント基(R2)の性質は、溶解度をある程度変えることができる。例えば、(PMOZのように)R2がメチルであるとき、ポリマーは高水溶性であり、(PEOZのように)R2がエチルであるとき、ポリマーは水溶性のままであるが、その程度はPMOZより低い。POZポリマーの溶解度は、POZポリマーがリポソーム表面を超えてリポソーム外の環境に広がることを可能にする。そのような形で、POZポリマーは、リポソーム表面を効果的に遮蔽することができる。
【0108】
上記の構造Iの具体的実施形態には、以下にI(a)(1)及びI(a)(2)で示されたアミダーゼで切断可能なアミドであるLが含まれるが、これに限定されない。
【0109】
【0110】
構造Iの代替実施形態において、同じ脂質基が、以下にI(b)で示された(アミドではなく)安定なアミンとして組み込まれうる。
【0111】
【0112】
構造Iのさらに別の実施形態において、同様の脂質が、以下にI(c)及びI(d)で示された比較的不安定なエステルリンケージを介してカップリングされうる。
【0113】
【0114】
構造Iのさらに別の実施形態において、脂質が、以下にI(e)及びI(f)で示された比較的不安定なエーテルリンケージを介してカップリングされうる。
【0115】
【0116】
一実施形態において、構造I(a)~I(f)について(適用できる場合)、mは、1又は2であり、nは、1~1000の範囲内であり、oは、1~5の範囲内であり、pは、1~10の範囲内である。
【0117】
以下に実施例の項で明示されるように、構造I(I(a)~I(f))の上記の実施形態は、血漿中さまざまな速度で加水分解し、したがって本開示の新規POZ-脂質コンジュゲートの重要な要素の1つを例示する。
【0118】
上記の構造Iの他の具体的実施形態には、以下にI(g)及びI(h)で示されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
【0120】
一実施形態において、構造I(g)~I(h)について、mは、1又は2であり、nは、1~1000の範囲内である。
【0121】
本発明の別の実施形態において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート、又はその薬学的に許容される形、例えば限定されるものではないが薬学的に許容される塩は、脂質がポリマー鎖に式Iのように停止末端ではなく開始剤末端において結合している一般式II:
脂質-L1-(POZ)n
a-T II
によって表すことができ、式中、
POZは、構造[N(COR2)CH2CH2]のポリオキサゾリンポリマーであり、
L1は、切断速度が制御されうる切断可能な部分を任意選択的に含む連結基であり、又は脂質の反応性基とポリマーの反応性基を通じた直接リンケージを表し、直接リンケージが、切断速度が制御されうる切断可能な部分を形成することができ、
R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アルキン置換アルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、又は活性官能基から独立に選択され、
Tは、停止末端の基であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
nは、1~1,000の整数である。
【0122】
ペンデント基(R2)の性質は、溶解度をある程度変えることができる。POZポリマーの溶解度は、POZポリマーがリポソーム表面を超えてリポソーム外の環境に広がることを可能にする。そのような形で、POZポリマーは、リポソーム表面を効果的に遮蔽し、LNP形成時において凝集を防止することができる。さらに、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、POZ-脂質コンジュゲートは、核酸ペイロードを効率的に送達するために投与後にLNP表面から「脱落」されなければならないと思われる。いくつかの態様において、高親水基のPOZ-脂質コンジュゲートへのR2位における付加は、LNP形成及び/若しくは投与時における追加の遮蔽並びに/又はPOZ-脂質コンジュゲートのLNPからの脱落の増強を可能にして、ペイロードの送達を促進する。一実施形態において、R2は、少なくとも1個の親水基を含む。別の実施形態において、R2は、複数の親水基を含む。
【0123】
L1(直接リンケージであろうと連結基であろうと)は、ポリマー又は脂質に元々存在していた反応性基の成分を含むことができる。好適な連結基が本明細書に記載されている。L1は、切断可能な部分、例えば限定されるものではないがエステルやカルボン酸エステル(-C(O)-O-)、炭酸エステル(-O-C(O)-O-)、カルバメート(-O-C(O)-NH-)、アミド(-C(O)-NH-)を任意選択的に含むことができる。
【0124】
例示的な活性官能基には、アルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば限定されるものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、活性官能基は親水基である。いくつかの実施形態において、活性官能基は、例えばアルキン又はアジド活性官能基を使用するクリックケミストリーなどにより、親水基をPOZ-脂質コンジュゲートに付加するために使用される。
【0125】
この実施形態の一態様において、L1は、安定なリンケージである。この実施形態の別の態様において、L1は、生理学的に分解可能であり、切断可能な部分を含む。この実施形態の代替態様において、L1は、切断可能な部分を含まないリンケージである。好適なリンケージL1が、本明細書に記載されている。
【0126】
この実施形態の一態様において、L1は、以下にさらに詳述されるトリアゾール連結基である。
【0127】
この実施形態の別の態様において、Tは停止求核体である。例えば、Tは、Z-B-Qとすることができ、ここで、Zは、S、O、又はNであり、Bは、任意選択の連結基であり、Qは、停止求核体又は求核体の終端部分である。
【0128】
B基には、アルキレン基が含まれうるが、これに限定されない。特定の実施形態において、Bは、-(CH2)y-であり、ここで、yは、1~16から選択される整数である。
【0129】
特定の態様において、ZはSである。本明細書に記載された硫黄基を含むPOZ-脂質コンジュゲートは、POZカチオンをメルカプチド試薬、例えば限定されるものではないがメルカプト-エステル(例えば、-S-CH2CH2-CO2CH3)又はメルカプト保護アミン(例えば、-S-CH2CH2-NH-tBoc)で終結させることによって調製されうる。そのようなPOZコンジュゲートは、(第二級アミンを除去するのに)効果的で大規模なイオン交換クロマトグラフィー精製を行い、さらには多分散値の制御(多分散値1.10以下)及びより高分子量のPOZポリマーとのコンジュゲートの創造を可能にする。別の態様において、ZはNである。別の態様において、ZはOである。
【0130】
いくつかの態様において、Qは不活性である(すなわち、官能基を含まない)。Qが不活性基であるとき、限定されるものではないが-C6H5、アルキル、及びアリールメルカプチド基を含めて、いずれの不活性基でも使用されうる。代替態様において、Qは活性官能基であり、又はそれを含む。Qが活性官能基であり、又はそれを含むとき、好適な官能基には、アルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば限定されるものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)が含まれるが、これらに限定されない。Qが活性官能基であり、又はそれを含むとき、QはR2と同じでもよく、R2と異なってもよい(すなわち、QとR2は、互いに化学的に直交することができる)。
【0131】
この実施形態の特定の一態様において、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換又は置換アルキルから独立に選択され、任意選択的に、Rは、H又はCH3であり、nは、15~35、20~30、22~28、又は25である。この実施形態の別の態様において、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位についてCH3及びCH2-CH3から独立に選択され、任意選択的に、Rは、H又はCH3であり、nは、15~35、20~30、22~28、又は25である。上記の態様のいずれにおいても、Tは、Z-B-Qであり、ここで、ZはSであり、Bは-(CH2)y-であり、Qは、不活性基、例えば限定されるものではないが-C6H5やアルキル、アリールメルカプチド基である。あるいは、上記の態様のいずれにおいても、Tは、Z-B-Qであり、ここで、ZはSであり、Bは-(CH2)y-であり、Qは、官能基、例えば限定されるものではないがアルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば、限定するものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)であり、又はそれを含む。
【0132】
上記の構造IIの具体的実施形態には、脂質が開始剤末端において結合されており、停止求核体が硫黄である、以下の構造II(a)が含まれるが、これに限定されない。
【0133】
【0134】
以下にII(b)で示された構造IIの代替実施形態において、脂質は、開始剤末端に結合しており、停止求核体は-OHである。
【0135】
【0136】
以下にII(c)で示された構造IIの代替実施形態において、脂質は、開始剤末端に結合しており、停止求核体は窒素であり、脂質は、2-プロピオン酸エステルを介して結合している。
【0137】
【0138】
化合物II(a)~II(c)は、以下に示されたようにアジドのペンデントアルキン基への「クリック」反応によって作製される。
【0139】
【0140】
以下にII(d)で示された構造IIのさらに別の代替実施形態において、脂質は、開始剤末端に結合しており、停止求核体は硫黄であり、脂質は、酢酸エステルによって結合されている。
【0141】
【0142】
II(d)は、以下に示されたようにアジドのアルキン開始基への「クリック」反応によって作製される。
【0143】
【0144】
一実施形態において、構造II(a)~II(d)について(適用できる場合)、mは、1~2であり、nは、1~1000の範囲内であり、oは、1~5の範囲内である。
【0145】
別の実施形態において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート、又はその薬学的に許容される形、例えば限定されるものではないが薬学的に許容される塩は、一般式IIIによって表されうる:
R-(POZ)n
a-Z-L2-脂質 III
式中、
POZは、構造[N(COR2)CH2CH2]のポリオキサゾリンポリマーであり、
L2は、切断速度が制御されうる切断可能な部分を任意選択的に含む連結基であり、又は脂質の反応性基とポリマーの反応性基を通じた直接リンケージを表し、直接リンケージが、切断速度が制御されうる切断可能な部分を形成することができ、
Rは、開始基であり、
R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アルキン置換アルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル(heterocycylalkyl)基、又は活性官能基から独立に選択され、
Zは、S、O、又はNであり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
nは、1~1,000の整数である。
【0146】
構造IIと同様に、ペンデント基(R2)の性質は、溶解度をある程度変えることができる。ポリオキサゾリンポリマーの溶解度は、ポリオキサゾリンポリマーがリポソーム表面を超えてリポソーム外の環境に広がることを可能にする。そのような形で、ポリオキサゾリンポリマーは、リポソーム表面を効果的に遮蔽することができる。さらに、POZ-脂質コンジュゲートは、核酸ペイロードを効率的に送達するために投与後にLNP表面から「脱落」されなければならない。いくつかの態様において、高親水基のPOZ-脂質コンジュゲートへのR2位における付加は、LNP形成及び/若しくは投与時における追加の遮蔽並びに/又はPOZ-脂質コンジュゲートのLNPからの脱落の増強を可能にして、ペイロードの送達を促進する。
【0147】
L2(直接リンケージであろうと連結基であろうと)は、ポリマー又は脂質に元々存在していた反応性基の成分を含むことができる。好適な連結基が本明細書に記載されている。L2は、切断可能な部分、例えば限定されるものではないがエステルやカルボン酸エステル(-C(O)-O-)、炭酸エステル(-O-C(O)-O-)、カルバメート(-O-C(O)-NH-)、アミド(-C(O)-NH-)を任意選択的に含むことができる。
【0148】
R基には、水素、アルキル及び置換アルキルが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、開始基は、アルキル基、例えばC1~C4アルキル基である。上記の具体的な実施形態において、開始基はメチル基である。別の実施形態において、開始基はHである。開始基は、活性官能基を欠いているように選択されうる。あるいは、開始基は、活性官能基を含むように選択されうる。追加の例示的な開始基は、米国特許第7,943,141号、同第8,088,884号、同第8,110,651号、同第8,101,706号、同第8,883,211号、同第9,284,411号、及び米国特許出願第13/003,306号、同第13/549,312号、同第13/524,994号に開示されており、これらはそれぞれ、そのような教示のために参照によりその全体が組み込まれる。
【0149】
活性官能基には、アルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば限定されるものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、活性官能基は親水基である。いくつかの実施形態において、活性官能基は、例えばアルキン又はアジド活性官能基を使用するクリックケミストリーなどにより、親水基をPOZ-脂質コンジュゲートに付加するために使用される。
【0150】
この実施形態の一態様において、L2は、安定なリンケージである。この実施形態の別の態様において、L2は、生理学的に分解可能であり、切断可能な部分を含む。この実施形態の代替態様において、L2は、切断可能な部分を含まないリンケージである。好適なリンケージL2が本明細書に記載されている。
【0151】
特定の態様において、ZはSである。本明細書に記載された硫黄基を含むPOZコンジュゲートは、POZカチオンをメルカプチド試薬、例えば限定されるものではないがメルカプト-エステル(例えば、-S-CH2CH2-CO2CH3)又はメルカプト保護アミン(例えば、-S-CH2CH2-NH-tBoc)で終結させることによって調製されうる。そのようなPOZコンジュゲートは、(第二級アミンを除去するのに)効果的で大規模なイオン交換クロマトグラフィー精製を行い、さらには多分散値の制御(多分散値1.10以下)及びより高分子量のPOZポリマーとのコンジュゲートの創造を可能にする。別の態様において、ZはNである。別の態様において、ZはOである。
【0152】
この実施形態の態様において、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換又は置換アルキルから独立に選択され、任意選択的に、Rは、H又はCH3であり、nは、15~35、20~30、又は25である。
【0153】
この実施形態の別の態様において、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位についてCH3及びCH2-CH3から独立に選択され、任意選択的に、Rは、H又はCH3であり、nは、15~35、20~30、又は25である。
【0154】
別の実施形態において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート、又はその薬学的に許容される形、例えば限定されるものではないが薬学的に許容される塩は、一般式IVによって表されうる:
【0155】
【化15】
式中、
Rは、開始基であり、
R
2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換若しくは置換アルキル、アルケニル、アルキン置換アルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル(heterocycylalkyl)基、又は活性官能基から独立に選択され、
L
3は、切断速度が制御されうる切断可能な部分を任意選択的に含む連結基であり、又は脂質の反応性基とポリマーの反応性基を通じた直接リンケージを表し、直接リンケージが、切断速度が制御されうる切断可能な部分を形成することができ、
脂質は脂質であり、
Tは、停止末端の基であり、
aは、ランダムコポリマーを表すran、又はブロックコポリマーを表すblockであり、
mは、0~100の整数であり、
nは、1~5の整数である。
【0156】
一態様において、nは1であり、このモノマー単位は、Rに隣接した初期単位である。
【0157】
ペンデント基(R2)の性質は、溶解度をある程度変えることができる。ポリオキサゾリンポリマーの溶解度は、ポリオキサゾリンポリマーがリポソーム表面を超えてリポソーム外の環境に広がることを可能にする。そのような形で、ポリオキサゾリンポリマーは、リポソーム表面を効果的に遮蔽することができる。さらに、POZ-脂質コンジュゲートは、核酸ペイロードを効率的に送達するために投与後にLNP表面から「脱落」されなければならない。いくつかの態様において、高親水基のPOZ-脂質コンジュゲートへのR2位における付加は、LNP形成及び/若しくは投与時における追加の遮蔽並びに/又はPOZ-脂質コンジュゲートのLNPからの脱落の増強を可能にして、ペイロードの送達を促進する。
【0158】
L3(直接リンケージであろうと連結基であろうと)は、ポリマー又は脂質に元々存在していた反応性基の成分を含むことができる。好適な連結基が本明細書に記載されている。L3は、切断可能な部分、例えば限定されるものではないがエステルやカルボン酸エステル(-C(O)-O-)、炭酸エステル(-O-C(O)-O-)、カルバメート(-O-C(O)-NH-)、アミド(-C(O)-NH-)を任意選択的に含むことができる。
【0159】
R基には、水素、アルキル及び置換アルキルが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、開始基は、アルキル基、例えばC1~C4アルキル基である。上記の具体的な実施形態において、開始基はメチル基である。別の実施形態において、開始基はHである。開始基は、活性官能基を欠いているように選択されうる。あるいは、開始基は、活性官能基を含むように選択されうる。追加の例示的な開始基は、米国特許第7,943,141号、同第8,088,884号、同第8,110,651号、同第8,101,706号、同第8,883,211号、同第9,284,411号、及び米国特許出願第13/003,306号、同第13/549,312号、同第13/524,994号に開示されており、これらはそれぞれ、そのような教示のために参照によりその全体が組み込まれる。
【0160】
活性官能基には、アルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば限定されるものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、活性官能基は親水基である。いくつかの実施形態において、活性官能基は、例えばアルキン又はアジド活性官能基を使用するクリックケミストリーなどにより、親水基をPOZ-脂質コンジュゲートに付加するために使用される。
【0161】
この実施形態の一態様において、L3は、安定なリンケージである。この実施形態の別の態様において、L3は、生理学的に分解可能であり、切断可能な部分を含む。この実施形態の代替態様において、L3は、切断可能な部分を含まないリンケージである。好適なリンケージL3が本明細書に記載されている。
【0162】
この実施形態の一態様において、Tは停止求核体である。この実施形態の一態様において、Tは、Z-B-Qであり、ここで、Zは、S、O、又はNであり、Bは、任意選択の連結基であり、Qは、停止求核体又は求核体の終端部分である。
【0163】
B基には、アルキレン基が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、Bは、-(CH2)y-であり、ここで、yは、1~16から選択される整数である。
【0164】
特定の態様において、ZはSである。本明細書に記載された硫黄基を含むPOZコンジュゲートは、POZカチオンをメルカプチド試薬、例えば限定されるものではないがメルカプト-エステル(例えば、-S-CH2CH2-CO2CH3)又はメルカプト保護アミン(例えば、-S-CH2CH2-NH-tBoc)で終結させることによって調製されうる。そのようなPOZコンジュゲートは、(第二級アミンを除去するのに)効果的で大規模なイオン交換クロマトグラフィー精製を行い、さらには多分散値の制御(多分散値1.10以下)及びより高分子量のPOZポリマーとのコンジュゲートの創造を可能にする。別の態様において、ZはNである。別の態様において、ZはOである。
【0165】
いくつかの態様において、Qは不活性である(すなわち、官能基を含まない)。Qが不活性基であるとき、限定されるものではないが-C6H5、アルキル、及びアリールメルカプチド基を含めて、いずれの不活性基でも使用されうる。他の態様において、Qは活性官能基であり、又はそれを含む。Qが活性官能基であり、又はそれを含むとき、例示的な基には、アルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば限定されるものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)が含まれるが、これらに限定されない。Qが活性官能基であり、又はそれを含むとき、QはR2と同じでもよく、R2と異なってもよい(すなわち、QとR2は、互いに化学的に直交する)。
【0166】
この実施形態の態様において、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位について非置換又は置換アルキルから独立に選択され、任意選択的に、Rは、H又はCH3であり、mは、15~35、20~30、又は25であり、nは1である。この実施形態の別の態様において、R2は、ポリオキサゾリンポリマーの各繰り返し単位についてCH3及びCH2-CH3から独立に選択され、任意選択的に、Rは、H又はCH3であり、mは、15~35、20~30、又は25であり、nは1である。これらの態様のいずれにおいても、Tは、Z-B-Qであり、ここで、ZはSであり、Bは-(CH2)y-であり、Qは、不活性基、例えば限定されるものではないが-C6H5やアルキル、アリールメルカプチド基である。これらの態様のいずれにおいても、Tは、Z-B-Qであり、ここで、ZはSであり、Bは-(CH2)y-であり、Qは、官能基、例えば限定されるものではないがアルキン、アルケン、アミン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、チオール、ケタール、マレイミド、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば限定されるものではないがN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)や1-ベンゾトリアジン活性エステル)、活性カーボネート、クロロホルメート、アルコール、アジド、ビニルスルホン、又はオルトピリジルジスルフィド(OPSS)であり、又はそれを含む。
【0167】
一般式IVの具体的な実施形態において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートは、下記を含む。
【0168】
【0169】
同様の化合物群が、以下に示されたようにアジドを開始アルキン基にカップリングさせることによって作製される。
【0170】
【0171】
これらの化合物は、トリアゾール環を含む。このトリアゾール環は特権的足場であり、それに結合しているリガンドを細胞内におけるポリペプチドの切断を担う酵素である26Sプロテアーゼを通して輸送することができるという証拠がある。これらのいわゆるタンパク質分解標的キメラ(PROTACS)は、PROTACの一端に結合し、切断のために26Sプロテアーゼを通してシャトルするタンパク質のレベルを「ノックダウン」することが示されている有望な薬物群である。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、トリアゾール環を組み込むPOZポリマーは、POZポリマーを26Sプロテアーゼを通してシャトルさせることができ、したがってタンパク質切断を受けないPOZポリマーの免疫提示を防止することが企図される。注目すべきことに、分解可能なエステルリンケージの加水分解によって、脂質を放出すると、ポリマーに結合しているペンデント酸基が残る。本発明者らは、これらの残留しているペンデント基がトリアゾール環を介して結合している可溶性POZは、皮下コンパートメントにおける樹状細胞によって取り込まれるにもかかわらず非免疫原性であることを見い出した。さらに、ロチゴチンが結合しているC14標識20kD POZポリマーの標識研究から、ポリマーコンジュゲートは、皮下注射部位のドレーン治療を行うリンパ管を介して取り込まれたことが示された。標識コンジュゲートは、結局脾臓に出現し、そこで赤脾髄(マクロファージコンパートメント)によってほぼ選択的に取り込まれる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、本開示のPOZ-脂質LNPは、樹状細胞によっても選択的に取り込まれうることが企図される。この同じ文脈で、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、本開示のPOZ-脂質LNPは、マクロファージによって選択的に取り込まれうることが企図される。そうであれば、LNP中のオリゴヌクレオチドペイロードは、樹状細胞/マクロファージコンパートメントにおいて優先的に発現される可能性があり、免疫提示のために意味を有することがある。一態様において、追加のトリアゾール-ペンデント酸が、上記の構造におけるR基として直接結合されうることを認識する価値はある。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、これらの基は、LNPに含まれているPOZ-脂質の免疫原性の低減にさらに寄与することができる。
【0172】
追加のPOZ-脂質コンジュゲートは、以下に式V~VIIで表され、POZポリマーが、L、L1、L2、又はL3によって脂質に連結されている:
【0173】
【化18】
式中、
アルキル
1及びアルキル
2は、それぞれ独立に5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくは21個の炭素の長さ、11、12、13、14、15、16個の炭素の長さ、12、13、14、15個の炭素の長さ、又は13若しくは14個の炭素の長さの飽和又は不飽和アルキル鎖であり、好ましくは、アルキル
1及びアルキル
2は、同数の炭素原子を有し、それぞれ不飽和であり、
アシル
1及びアシル
2は、それぞれ独立に5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20若しくは21個の炭素の長さ、11、12、13、14、15、16個の炭素の長さ、12、13、14、15個の炭素の長さ、又は13又は14個の炭素の長さの飽和又は不飽和アシル鎖であり、好ましくは、アシル
1及びアシル
2は、同数の炭素原子を有し、それぞれ不飽和であり、
jは、1~8の整数である。
【0174】
切断可能な連結基
上に述べられたように、上に記載された実施形態のいくつかにおいて、脂質は、切断可能なリンケージを介してPOZポリマーに連結されうる。一態様において、連結基が、切断可能な部分を含むかたちで、POZポリマーと脂質の間にもたらされる。言い換えれば、連結基は、特異的環境において切断されうるという点で生理学的に分解可能なリンケージを含む。例えば、リンケージは、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート又はPOZ-脂質コンジュゲートを含むLNP組成物を対象に投与した後、対象においてインビボで切断されうる。
【0175】
一実施形態において、切断可能な部分は、化学反応によって切断される。この実施形態の態様において、切断は、容易に還元される基、例えば限定されるものではないがジスルフィドの還元によって行われる。別の実施形態において、切断可能な部分は、対象に自然に存在し、又は対象に存在するように誘導される物質によって切断される。この実施形態の態様において、そのような物質は、酵素又はポリペプチドである。したがって、一実施形態において、切断可能な部分は、酵素反応によって切断される。さらに別の実施形態において、切断可能な部分は、上記の組合せによって切断される。連結基は、POZポリマーの一部分及び/又は脂質の一部分を含むことができる。というのは、以下に述べられるように、そのような一部分が反応して、連結基を形成するからである。
【0176】
この態様において、好適な切断可能な部分には、エステル、カルボン酸エステ(-C(O)-O-)、炭酸エステル(-O-C(O)-O-)、カルバメート(-O-C(O)-NH-)及びアミド(-C(O)-NH-、ペプチドにおけるアミド基を含める)が含まれるが、これらに限定されない。他の放出可能な部分が本明細書で述べられている。特定の実施形態において、切断可能な部分はエステルである。別の特定の実施形態において、切断可能な部分は、炭酸エステル又はカルボン酸エステルである。さらに、連結基は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、又は1種以上の天然及び/若しくは非天然アミノ酸を含むポリマーとすることができる。連結基は、ポリマー鎖及び/又は脂質に由来するいくつかの基を含むことができる。
【0177】
式I~IVのPOZ-脂質コンジュゲートのいくつかの態様において、L、L1、L2、及びL3は、生理学的に分解可能なリンケージであり、出現する毎に、エステル、カルボン酸エステル(-C(O)-O-)、炭酸エステル(-O-C(O)-O-)、カルバメート(-O-C(O)-NH-)、アミド(-C(O)-NH-)、及びそれらの組合せから独立に選択される切断可能な部分を含む。
【0178】
式I~IVのPOZ-脂質コンジュゲートの他のいくつかの態様において、L、L1、L2、及びL3は、出現する毎に、-(CH2)f-(切断可能な部分)-(CH2)g-から独立に選択され、ここで、f及びgは、それぞれ0~10、1~9、1~8、1~7、1~6、又は1~5から独立に選択される整数である。一態様において、f及びgは、それぞれ1~4から独立に選択される整数である。別の態様において、L、L1、L2、及びL3のいずれも、本明細書に記載された二置換トリアゾールとすることができる。
【0179】
式I~IVのPOZ-脂質コンジュゲートのいくつかの態様において、L、L1、L2、及びL3は、出現する毎に、-(CH2)f-C(O)-(CH2)g-、-(CH2)f-C(O)-(CH2)h-NHC(O)-(CH2)g-、-(CH2)f-NH(CO)-(CH2)h-C(O)-(CH2)g-、-(CH2)f-NHC(O)-(CH2)g-、-(CH2)f-C(O)NH-(CH2)g-、-(CH2)f-NHOC(O)-(CH2)g-、-(CH2)f-OC(O)NH-(CH2)g-、-(CH2)f-OC(O)ONH-(CH2)g-、-(CH2)f-NHOC(O)O-(CH2)g-、O-(CH2)h、(CH2)h-O又は(CH2)hから独立に選択され、ここで、f、g及びhは、それぞれ0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、又は0~5から独立に選択される整数である。この特定の実施形態の一態様において、f、g、及びhはそれぞれ、0~4とすることができる。
【0180】
式I~IVのPOZ-脂質コンジュゲートの別の態様において、L、L1、L2、及びL3は、出現する毎に、R3又はR4基の一方に切断可能な部分を含む二置換トリアゾールから独立に選択される。切断可能な部分は、好ましくはR4基に存在する。具体的な態様において、二置換トリアゾールは、以下の構造を有する:
【0181】
【化19】
ここで、
R
3は、トリアゾール部分をポリマー鎖に連結するリンカーである。R
3は、ポリマー鎖の官能基によって部分的に規定されうる。言い換えれば、R
3は、ポリマー鎖の官能基の部分を含むことがある。一態様において、R
3は、-C(O)-R
5-であり、ここで、R
5は存在しないか、又は1~10個の炭素の長さの置換若しくは非置換アルキルである。
【0182】
R4は、トリアゾール部分を脂質に連結するリンカーである。R4は、この作用剤の官能基によって部分的に規定されうる。言い換えれば、R4は、脂質の官能基の部分を含むことがある。一態様において、R4は、-R6-R7-R8-であり、ここで、R6は、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アラルキルであり、R7は、切断可能な部分又は切断可能な部分の一部分を含む基であり、R8は存在しないか、又はO、S、CRc、若しくはNRcであり、Rcは、H又は置換若しくは非置換アルキルである。いくつかの態様において、R7及びR8を組み合わせて、切断可能な部分を形成することができる。一実施形態において、R7は、-Ra-(O)-Rb-、-Ra-O-C(O)-Rb-、-Ra-C(O)-NH-サイクリック-O-C(O)-Rb-(ここで、サイクリックは、置換又は非置換アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクル又はシクロアルキルを表す)、-Ra-C(O)-NH-(C6H4)-O-C(O)-Rb-、-Ra-C(O)-Rb-、-Ra-C(O)-O-Rb-、-Ra-O-C(O)-O-Rb-、-Ra-O-C(O)-NR15-Rb-(ここで、R15は、H又は置換若しくは非置換C1~C5アルキルである)、-Ra-CH(OH)-O-Rb-、-Ra-S-S-Rb-、-Ra-O-P(O)(OR11)-O-Rb-(ここで、R11は、H又は置換若しくは非置換C1~C5アルキルである)、又は-Ra-C(O)-NR15-Rb-(ここで、R15は、H又は置換若しくは非置換C1~C5アルキルである)であり、Ra及びRbは、それぞれ独立に、存在しないか又は置換若しくは非置換アルキルである。別の実施形態において、Ra及びRbは、それぞれ独立に、存在しないか又はC2~C16置換若しくは非置換アルキルである。上記の一実施形態において、R6は、直鎖置換若しくは非置換C1~C8アルキル又は分枝状置換若しくは非置換C1~C8アルキルであり、R7は、-Ra-C(O)-O-Rb-であり、R8は存在しない。上記の別の実施形態において、R6は、直鎖置換若しくは非置換C1~C4アルキル又は分枝状置換若しくは非置換C1~C4アルキルであり、R7は、-Ra-C(O)-O-Rb-であり、R8は存在しない。上記の一実施形態において、R6は、-CH2-、-CH2-CH2-、又は-CH2(CH3)-であり、R7は、-C(O)-O-であり、R8は存在しない。
【0183】
特定の実施形態において、R3は、-C(O)-(CH2)3であり、R4は、-CH2-C(O)-O-、-CH2-CH2-C(O)-O-又は-CH2(CH3)-C(O)-O-である。
【0184】
特定の実施形態において、R3は、-C(O)-(CH2)3であり、R4は、-CH2-CH2-O-C(O)、-CH2-CH2-CH2-O-C(O)、-CH2-CH2-CO-NH-(C6H4)-O-C(O)-である。
【0185】
式I~IVのPOZ-脂質コンジュゲートのいくつかの態様において、L、L1、L2、及びL3は、出現する毎に、上に記載された切断可能な部分の1つ以上から独立に選択される。特定の態様において、1つより多いリンケージL、L1、L2、又はL3がPOZ-脂質コンジュゲートに存在するとき、L、L1、L2、及びL3は、それぞれ同じである。別の特定の態様において、1つより多いリンケージL、L1、L2、又はL3がPOZ-脂質コンジュゲートに存在するとき、少なくとも1つのL、L1、L2、及びL3は、残りのリンケージと異なる。
【0186】
以下の実施例37及び38から、本開示に従って作製されたいくつかのPOZ-脂質は、血漿酵素及びアミダーゼに曝露されると分解することが明らかになる。特に、POZを脂質に連結するエステルリンケージは、切断を減速又は加速して、血漿中においてPOZ-脂質から脂質を放出するように制御されうる。他のPOZ-脂質のいくつか、特にアミドリンケージを有するものは、血漿中では分解しないように見えるが、ある種の組織に存在するアミダーゼに曝露されたときには分解する。他のPOZ-脂質、例えばアミンリンケージを有するものは、血漿に対してもアミダーゼに対しても安定であるように見える。
【0187】
したがって、本開示は、血漿中において安定なPOZ-脂質(例えば、アミン、アミド)、血漿中において所望の速度で分解するように調整又は制御されうるPOZ-脂質(例えば、エステル)、及び血漿中において安定であるが、特異的環境において分解するPOZ-脂質を含む。実際、崩壊速度の実質的に正確な制御は、POZと脂質の間のリンケージを慎重に選択することによって実現することができる。この態様において、本開示のPOZ-脂質は、生理学的媒体において制御可能な分解性を有することができる。例えば、一実施形態において、連結基の制御可能な分解性によって、生理学的媒体において安定なPOZ-脂質になる。この態様において、POZ-脂質の加水分解速度、すなわち(通常その半減期によって測定される)POZ-脂質を分解するのに要する時間は、POZと脂質の間のリンケージの安定性/分解性の指標である。一態様において、POZポリマーと脂質の間の連結基により、50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が少なくとも約120時間であるPOZ-脂質が得られる。
【0188】
別の実施形態において、連結基の制御可能な分解性によって、生理学的媒体において経時的に分解するPOZ-脂質になる。いくつかの態様において、POZポリマーと脂質の間の連結基により、50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分以下であるPOZ-脂質が得られる。例えば、POZポリマーと脂質の間の連結基は、POZ-脂質の50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約3分~約7分であるように選択されうる。他の態様において、POZポリマーと脂質の間の連結基は、POZ-脂質の50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約10分超であるように選択される。例えば、POZポリマーと脂質の間の連結基は、POZ-脂質の50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約11分~約8時間であるように選択されうる。一実施形態において、POZ-脂質は、50%ヒト血漿中における加水分解の半減期が約2時間~約5時間である。
【0189】
POZ-脂質を含む組成物
脂質は両親媒性であり、すなわち疎水性部分と親水性部分を両方含むので、これらの分子は、水性環境において特異的な形で凝集して、層、ベシクル及びLNPを形成することができる。例えば、リン脂質は、そのような両親媒性を有するタイプの脂質であり、すなわち、リン脂質のヘッド基が親水性であり、テール基が疎水性である。親水性ヘッド基は、負に帯電したホスフェート基を含み、他の極性基を含むことができる。疎水性テール基は、一般的に長い脂肪酸炭化水素鎖を含む。リン脂質は水性環境に置かれると、リン脂質の特異的特性に応じてさまざまな構造を形成する。
【0190】
したがって、本開示のPOZ-脂質は、特にLNP組成物を形成するのによく適している。また、本明細書に記載されたPOZ-脂質コンジュゲートを組み込んでいる本開示のLNP組成物は、本開示のPOZ-脂質ポリマーを組み込まない同様のLNP組成物に対していくつかの利点を備える。例えば、本開示のLNP組成物は、実質的に非免疫原性である。一態様において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートは本明細書に記載されたLNP組成物に組み込まれると、限定されるものではないがPOZに特異的なIgM及び/又はIgG抗体の生成を含めて、著しい免疫応答を引き起こさない。別の態様において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートは本明細書に記載されたLNP組成物に組み込まれると、PEG-脂質コンジュゲートを組み込んでいる対応するLNP組成物と比較して、限定されるものではないがポリマー部分に特異的なIgM及び/又はIgG抗体の生成を含めて、免疫応答を低減させる。別の態様において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートを含むLNP組成物は、2回目の投与後に1回目の投与と比較して、対象の血液又は組織中に少なくとも75%、例えば80%、85%、90%、95%、又はそれ以上の濃度で存在する。別の態様において、本開示のPOZ-脂質コンジュゲートを含むLNP組成物は、加速的血液クリアランスの影響を受けない。
【0191】
本開示のPOZ-脂質コンジュゲートのいずれもが、LNP組成物を本開示に従って調製する際に使用されうる。一実施形態において、LNP組成物は、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート及びカチオン性又はイオン化可能な脂質の少なくとも1つで形成されうる。例えば、組成物は、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート及びカチオン性脂質で形成されうる。別の実施形態において、組成物は、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート及びイオン化可能な脂質で形成されうる。さらに別の実施形態において、本開示による組成物は、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート、カチオン性又はイオン化可能な脂質、並びにベシクル及び/又はリポソームを形成することができる他の(ポリオキサゾリン成分を欠く)脂質成分(非誘導体化脂質)を含む。好適な非誘導体化脂質の例には、ヘルパー脂質、及び組成物を安定化する脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0192】
一態様において、本開示に従って形成されたLNPは、本開示のPOZ-脂質コンジュゲート、カチオン性又はイオン化可能な脂質、並びに(i)構造支持を実現し、飲食作用を促進するヘルパー脂質及び/又は(ii)安定性のためのステロール脂質を含む。
【0193】
本開示に従って形成されたLNPは、ペイロードも含むことができる。この態様において、ペイロードは、オリゴヌクレオチド、タンパク質、又はそれらの組合せとすることができる。例えば、
図1で示された具体的な実施形態において、本開示のLNPは、(i)イオン化可能な脂質;(ii)ヘルパー脂質;(iii)ステロール脂質;(iii)本開示のPOZ-脂質;及び(iv)オリゴヌクレオチドを含むことができる。別の具体的な実施形態(図示せず)において、本開示のLNPは、カチオン性脂質、ヘルパー脂質、ステロール脂質、本開示のPOZ-脂質、及びオリゴヌクレオチドを含むことができる。さらに別の具体的な実施形態(図示せず)において、本開示のLNPは、カチオン性又はイオン化可能な脂質、ヘルパー脂質、ステロール脂質、本開示のPOZ-脂質、及びタンパク質を含むことができる。
【0194】
一実施形態において、オリゴヌクレオチドは、DNA、siRNA、自己複製mRNA、修飾ヌクレオシドからなるmRNA、及び天然ヌクレオシドからなるmRNAを含む。一態様において、オリゴヌクレオチドはDNAである。別の態様において、オリゴヌクレオチドはsiRNAである。さらに別の態様において、オリゴヌクレオチドは、自己複製mRNA、修飾ヌクレオシドからなるmRNA、又は天然ヌクレオシドからなるmRNAである。
【0195】
一実施形態において、POZ-脂質コンジュゲートはLNP組成物に組み込まれると、LNP組成物の脂質層中に約0.25~約5モル%のモル比、LNP組成物の脂質層中に約0.5~約3モル%のモル比、LNP組成物の脂質層中に約0.75~約2モル%のモル比、又はLNP組成物の脂質層中に約0.8~約1.5モル%のモル比で存在する。
【0196】
本発明による使用に適したカチオン性脂質の非限定的な例には、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)がある。好適なイオン化可能な脂質には、MC3 98、Lipid 319、C12-200、5A2-SC8、306Oi10、Moderna Lipid 5、Moderna Lipid H、SM-102、Acuitas A9 [59]、Arcturus Lipid 2,2 (8,8) 4C CH3、Genevant CL1が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、カチオン性又はイオン化可能な脂質は、TNS色素結合アッセイによって測定して、6~7の範囲のpKaを有する。
【0197】
ヘルパー脂質は、疎水性及び極性ヘッド基部分を有し、リン脂質によって例示されるように水中で自発的に二重層ベシクルに成ることができ、又は脂質二重層に安定に組み込まれ、疎水性部分が二重層膜の内側疎水性領域と接触しており、極性ヘッド基部分が膜の外側極性表面に向かって配向されている両親媒性脂質を指す。そのようなヘルパー脂質は、典型的に1つ又は2つの疎水性アシル炭化水素鎖又はステロイド基を含み、極性ヘッド基に化学的反応性基、例えばアミン、酸、エステル、アルデヒド又はアルコールを含むことができる。非限定的な例には、ホスファチジルコリン(PC)やホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリン(SM)などのリン脂質が含まれ、2つの炭化水素鎖が典型的に約14~22個の炭素原子の長さであり、可変不飽和度を有する。他の好適なヘルパー脂質には、セレブロシドやガングリオシドなどの糖脂質が含まれるが、これらに限定されない。一態様において、ヘルパー脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、及び1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)の少なくとも1つである。
【0198】
本開示による使用に適したステロール脂質はコレステロールである。特定の一実施形態において、本開示によるLNPは、カチオン性又はイオン化可能な脂質を(i)DSPC;(ii)コレステロール;(iii)本開示のPOZ-脂質;及び(iv)オリゴヌクレオチドと組み合わせて含む。
【0199】
本開示のLNP組成物への変更又は添加は(実にささいな変更又は添加でさえ)、LNPの構造だけでなく、カプセル化ペイロードの送達にも影響する可能性があることに留意することは重要である。例えば、コレステロールなどのステロール脂質がLNP組成物にイオン化可能な脂質及び本開示のPOZ-脂質とともに含まれるとき、得られたLNPは、単一二重層を有する。植物ステロールが添加される場合、LNPの構造はより複雑になり、したがってペイロードを異なるかたちで送達することができる。この文脈で、POZ-脂質コンジュゲートを含む本開示の組成物は、単層でも、非単層でもよい。
【0200】
本開示に従って作製されたLNPの粒子サイズはさまざまでありうる。一実施形態において、本開示に従って形成されたLNPは、水性コアを包む1つ以上の脂質二重層によって形成された、約10nm~約10ミクロンの範囲内であるサイズの両親媒性球状ベシクルである。別の実施形態において、本開示に従って形成されたLNPは、約25nm~約8ミクロンの粒子サイズを有する。さらに別の実施形態において、本開示に従って形成されたLNPは、約30nm~約5ミクロンの粒子サイズを有する。この態様において、LNPの粒子サイズは、約20nm~約3ミクロンとすることができる。別の実施形態において、LNPは、約10nm~約1000nm、約25nm~約500nm、約35nm~約250nm、約40nm~約150nm、又は約45nm~約100nmとすることができる。サイズ分画方法が本明細書に開示されている。しかし、いくつかの態様において、サイズ分画は必要とされない。
【0201】
本開示のLNP組成物は、さまざまな方法によって調製されうる。一実施形態において、リポソームは、逆相蒸発法によって調製される(Szokaら、PNAS 1978、75巻、4194-4198;Smirnovら、Byulleten’ Eksperimental’noi Biologii i Meditsiny、1984、98巻、249~252頁;米国特許第4,235,871号)。この方法では、連結されたターゲット分子を有する又は有しないポリオキサゾリン-脂質コンジュゲートを含むことができる、リポソーム形成性脂質の有機溶液を、より小さい体積の水性媒体と混合し、混合物を分散させて、油中水型乳濁液を、好ましくはパイロジェンフリー成分を使用して形成する。送達対象のターゲット分子は、親油性ターゲット分子の場合には脂質溶液に、又は水溶性ターゲット分子の場合には水性媒体に添加される。脂質溶媒は蒸発除去され、得られたゲルは、リポソームに変換される。逆相蒸発ベシクル(REV)は、約0.2~0.4ミクロンの典型的な平均サイズを有し、圧倒的にオリゴラメラであり、すなわち1個又は数個の脂質二重層シェルを含む。REVは、以下に述べられるように、好ましくは約0.05~0.2ミクロンの選択されたサイズを有するオリゴ層ベシクルを得るために、押出によって容易にサイジングされうる。
【0202】
さらに、多層ベシクル(MLV)が創造されうる。この方法では、本明細書に記載されたように、連結されたターゲット分子を有する又は有しないポリオキサゾリン-脂質コンジュゲートを含むことができる、リポソーム形成性脂質の混合物を、好適な溶媒に溶解し、容器中で溶媒を蒸発させて、薄膜を形成する。次いで、薄膜は水性媒体で覆われる。脂質フィルムは水和して、MLVを形成する。MLVは、一般的に約0.1~10ミクロンのサイズを示す。MLVは、押出及び本明細書に記載された他の方法によって所望のサイズ範囲にまでサイジングされうる。
【0203】
REV及びMLVに効果的な1つのサイジング方法は、リポソームの懸濁水溶液を、選択された均一な孔径、典型的に0.05、0.08、0.1、0.2、又は0.4ミクロンを有するポリカーボネート膜を通して押し出すものである(Szokaら、PNAS 1978、75巻、4194-4198)。膜の孔径は、その膜を通して押出により生成されたリポソーム、特に調製物が2回以上同じ膜を通して押し出されたものである場合の最大サイズにおおむね合致する。より大きいサイズのMLVをサイジングする方法が、Zhuらによって提供されている(PLoS One. 2009;4(4):e5009. Epub 2009 Apr 6)。
【0204】
小さい粒子サイズが望まれているとき、REV又はMLV調製物は、0.04~0.08ミクロン範囲のサイズによって特徴づけられる小さい単層ベシクル(SUV)を生成するように処理されうる。そのような粒子は、粒子が毛細血管壁を通して吸収されうる場合、腫瘍組織又は肺組織をターゲティングする際に有用となることがある(0.1ミクロンより大きい粒子は吸収されない可能性がある)。
【0205】
さらに、POZ-脂質コンジュゲートは、上に記載された技法を使用してリポソームが形成された後、LNP組成物に導入されうる。この手法では、予備成形されたリポソームは、POZ-脂質コンジュゲートの存在下でインキュベートされる。POZ-脂質コンジュゲートは、拡散によりリポソームに組み込まれる。溶液状態で自由に存在している又はリポソームによって取り込まれたPOZ-脂質コンジュゲートの濃度をモニタリングすることができ、LNP組成物中のPOZ-脂質コンジュゲートが所望の濃度に到達すると、方法を終えることができる。インキュベーション溶液は、POZ-脂質コンジュゲートのLNP組成物への拡散を促進するために界面活性剤又は他の作用剤を含むことができる。
【0206】
LNP組成物は、使用前に外来成分を除去するように処理されうる。例えば、上に述べられたように界面活性剤が使用された場合、過剰な界面活性剤は、使用前に除去されうる。さらに、上に述べられたオリゴヌクレオチドなどのペイロードがLNP組成物に捕捉されている場合、過剰な又は捕捉されていないペイロードは、使用前に除去されうる。この作業を行う分離技法は、当技術分野において公知であり、特定の方法の選択は、除去される成分の性質に依存することができる。好適な方法には、遠心、透析及び分子ふるいクロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されない。組成物は、通常の0.22ミクロンデプスフィルターを通す濾過により滅菌されうる。
【0207】
LNPは、POZ-脂質コンジュゲート、イオン化可能な脂質、ヘルパー脂質、及びコレステロールを含む脂質フィルムを水和するものである伝統的な方法によって調製されうる。この方法は、これらの材料をクロロホルム又はジクロロメタンなどの有機溶媒に溶解し、次いで溶媒を蒸発させて、薄膜を生成するものである。次いで、薄膜を、薬物又は核酸を含む緩衝水溶液で水和して、ペイロードを受動的にカプセル化する。低カプセル化の不均一粒子であるLNPが、通常は形成され、押出又は超音波処理によるサイズ減少を必要とする。
【0208】
別の好適な技法では、マイクロ流動化装置を用いた迅速混合を使用する。脂質ストック溶液は、脂質をエタノールなどの有機溶媒に溶解することによって調製される。ストック水溶液は、既知のpH、イオン強度及び緩衝能を有する緩衝液に溶解した核酸を含む。2つのストック溶液をマイクロミキサーに所定の速度で通して、カチオン性脂質が負に帯電した核酸と相互作用することを可能にし、より高いカプセル化効率(すなわち、>90%)及び均一サイズ分布が得られる。混合プロセス中の水性溶媒対有機溶媒の比は重要である。有機溶媒は、透析、接線流濾過若しくは遠心、又は他の技法により除去される。規定サイズのLNPが、マイクロ流体操作パラメータを制御することによって生成され、低多分散性及び均一な粒子サイズを有するLNPを生じる。LNPの平均粒子直径(<100nm)、多分散性(<0.40及び、さらに詳細には<0.20)、及びゼータ電位は、調製物を特徴づけるために使用される3つの方法である。
【0209】
水和製剤の最適なサイズ、高ペイロード放出及びトランスフェクション、並びに改善された安定性を可能にするために、POZ-脂質対イオン性脂質対コレステロールの比を変えることができる。一実施形態において、LNP中のPOZ-脂質のmol%は、約0.5~60%である。別の実施形態において、POZ-脂質のmol%は、約1~約40%である。さらに別の実施形態において、POZ-脂質は、LNP中の脂質の全量の約10%未満の量で存在する。この態様において、POZ-脂質は、約0.5~約5%、約1~約4%、又は約1.5~約3.5%の量で存在することができる。この態様において、LNP組成物の残部は、約35~約50%のステロール脂質、約30%~約70%のカチオン性脂質、及び約5%~約15%のヘルパー脂質とすることができる。
【0210】
一実施形態において、LNP組成物では、少なくとも1つのPOZ-脂質コンジュゲートを含む脂質二重層が、オリゴヌクレオチドを含む水性コアをカプセル化し、POZの平均分子量が約0.5~5kDaである。別の実施形態において、LNP組成物では、少なくとも1つのPOZ-脂質コンジュゲートを含む脂質二重層が、オリゴヌクレオチドを含む水性コアをカプセル化し、POZの平均分子量が約2~5kDaである。
【0211】
オリゴヌクレオチドは、高効率でLNPにカプセル化されうる。一実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも90%の効率でLNPにカプセル化される。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、約90~約99%の効率でLNPにカプセル化される。さらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、約90~約95%の効率でLNPにカプセル化される。さらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、約95%超の効率でLNPにカプセル化される。
【0212】
投与
本開示のLNPは、細胞に送達されうる。LNPをインビボで投与した後、オリゴヌクレオチドが放出される。この態様において、障害又は疾患に対する治療を誘発することができる医薬組成物に、本開示のLNPを含めることができる。例えば、本開示に従って作製されたLNPを含む医薬組成物を使用して、限定されるものではないがSARS-CoV-2、狂犬病、インフルエンザなどを含めて、感染症を予防又は治療することができる。さらに、本開示に従って作製されたLNPを含む医薬組成物を、がん及び遺伝病の治療薬として使用することができる。そのような医薬組成物は、LNPに加えて薬学的に許容される担体も含むことができる。
【0213】
一実施形態において、有効量の本開示のLNPを含む医薬組成物は、動物に送達されうる。この態様において、有効量の本開示のLNPの送達は、皮下、静脈内、筋肉内、皮内又はエアロゾル経路を介して行われうる。一実施形態において、動物はヒトである。
【実施例】
【0214】
以下の非限定的な例は、本発明の好ましい実施形態の例示にすぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきでなく、その範囲は特許請求の範囲で定められる。
【0215】
材料
1,2-ジミリストイル-rac-グリセロール(DMG)は、Bachem社から購入した。PEOZ-プロパルギルアミド2K、3-アジドプロピオニルクロリド、3-(2-アミノエトキシ)プロパン-1,2-ジオールは、Serina Therapeutics, Inc.によって合成された。ソルケタール(1,2-イソプロピリジングリセロール)、ミリスチン酸、ヨウ化銅(I)、トリエチルアミン(TEA)、及び無水ピリジンは、Sigma-Aldrich社から購入した。無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、及びジエチルエーテルは、EMD Millipore社から購入した。塩化ナトリウム(NaCl)は、Fluka社から購入した。Ambersep M4195(又はDowex M4195)は、Supelco社から購入した。カラム精製用のSNAP Ultra 25gカラム及びIsolera Systemは、Biotage社から購入した。
【0216】
実施例1. PMOZ-ジミリスチルアミド(2.2kDの化合物15a)の合成
【0217】
【0218】
炉乾燥した250mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPMOZ-COOH(12.00グラム、5.45mmol、1.00当量)、次にDCM(50mL)、N-ヒドロキシスクシンイミド(1.25グラム、10.9mmol、2.00当量)、最後にDMAP(0.033グラム、0.28mmol、0.05当量)を投入した。DCC(2.25g、10.9mmol、2.00当量)を一度に添加し、得られた溶液を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を粗焼結ガラスフリットで濾過し、次にフリットを追加のDCMですすいだ。次いで、得られた溶液を、Et2O(2000mL)の撹拌溶液が入っているビーカーにゆっくり移した。沈殿物を真空濾過によって回収し、固形物を真空乾燥した。次いで、固形物を、アルゴン雰囲気下に撹拌子を装備した250mLの乾燥した丸底フラスコ中のDCM(50mL)に溶解した。次いで、反応混合物に、ジミリスチルアミン(4.46g、10.9mmol、2.00当量)、次にNEt3(1.52mL、10.9mmol、2.00当量)を投入し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間が経過した後、反応混合物を、2000mLのジエチルエーテルの撹拌溶液が入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。次いで、固形物を200mLの脱イオン水に溶解し、200グラムのAmberlite IR-67及び200グラムのAmberlite IR-120Hが入っているアンバーライトカラムに通した。濾液は、水溶液がPAA試験で陰性を示すまで回収した。次いで、得られた溶液を1000mLのDEAEカラムに通し、脱イオン水で、PAA試験が陰性の結果を示すまで溶離した。得られた水溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。残渣をジクロロメタン(100mL)に溶解し、硫酸ナトリウムで脱水し、2000mLのEt2Oの撹拌溶液が入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、10.9グラムの表題化合物を得た。
1H NMR分析はPMOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.92 (m, NH末端シグナル); 3.34 (CH2CH2骨格); 3.21 (N-CH2); 2.75-2.72 (S-CH2); 1.98 (-CH3); 1.80 (CH2-CO2R).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.41(N-(CH2)2);1.24(CH2);0.85(CH3)に存在した。
【0219】
実施例2. PEOZ(2.2kD)-ジミリスチルアミド-2.2kD化合物2b.
【0220】
【0221】
化合物15Bを調製するために使用された同じ手順を介して、化合物2Bを調製した。この反復で、1.3グラムの材料を単離した。
1H NMR. HNMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.64 (CH2CH2骨格); 3.27 (N-CH2); 2.72 (S-CH2); 2.32-2.19 (C(O)-CH2); 1.12 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.54(N-(CH2)2);1.27(CH2);0.87(CH3)に存在した。ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、事前にポリマー出発物質から1.21であると算出された。
【0222】
実施例3- PMOZ-ジミリスチルアミド、化合物16aの合成、1.3ペンダント基、2.2kD.
【0223】
【0224】
この化合物は、PMOZ 2.2kD ジミリスチルアミド(dymyristylamide)について上に記載されたのと類似した形で調製した。7.7gを単離した。
1H NMR分析はPMOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.90 (m, NH末端シグナル); 3.33 (CH2CH2骨格); 3.21 (N-CH2); 2.75-2.72 (S-CH2); 1.98 (-CH3); 1.80 (CH2-CO2R).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.41(N-(CH2)2);1.24(CH2);0.85(CH3)に存在した。ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、ポリマー主鎖の積分値とペンダント基のシグナルの比較を介して算出された。この場合、ペンダント基の数は、1.35であると判断された。
【0225】
実施例4. PEOZ-ジミリスチルアミド、化合物16bの合成、1.5ペンダント基、2.2kD
【0226】
【0227】
この化合物は、PMOZ 2.2kD ジミリスチルアミド(dymyristylamide)について上に記載されたのと類似した形で調製した。7.0を単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.64 (CH2CH2骨格); 3.27 (N-CH2); 2.72 (S-CH2); 2.32-2.19 (C(O)-CH2); 1.12 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.54(N-(CH2)2);1.27(CH2);0.87(CH3)に存在した。ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、ポリマー主鎖の積分値とペンダント基のシグナルの比較を介して算出された。この場合、ペンダント基の数は、1.50であると判断された。
【0228】
実施例5. PEOZ-ジミリストイルグリセロールエーテル、化合物17bの合成、5kD.
【0229】
【0230】
NHSエステル(2.6グラム、0.49mmol、1.00当量、米国特許第7,943,141号と同様にして合成)を、アルゴン雰囲気下に撹拌子を装備した250mLの乾燥丸底フラスコ中のDCM(30mL)に溶解した。次いで、反応混合物に、3-(2-アミノエトキシ)プロパン-1,2-ジオール(0.200グラム、1.48mmol、3.00当量)及びNEt3(0.68mL、4.9mmol、10当量)の3mLのDMF中の溶液を投入し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間が経過した後、反応混合物を、2000mLのジエチルエーテルの撹拌溶液が入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。2.3グラムの材料を単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).ビス-ヒドロキシアミド部分について追加のシグナルが、δ 4.59(OH)及び4.46(OH)に存在した。
【0231】
【0232】
上に記載されたアミド(2.3グラム、0.43mmol、1.00当量)を、アルゴン雰囲気下で100mLの丸底フラスコに投入した。材料を30mLのDCMに溶解した。ミリスチン酸(0.49グラム、2.123mmol、5.00当量)、次にDMAP(0.01g、0.09mmol、0.2当量)、最後にDCC(0.44グラム、2.13mmol、5.00当量)を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下に終夜撹拌させておいた。翌朝、反応混合物を濾過し、1600mLのジエチルエーテルが入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(1.2グラム)を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.10(CH);4.25(CH2);4.08(CH2);1.48(C(O)CH2);1.22(CH2);0.84(CH3)に存在した。
【0233】
実施例6. 化合物15bの合成
【0234】
【0235】
炉乾燥した250mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPEOZ-COOH(7.00グラム、3.18mmol、1.00当量)、次にDCM(50mL)、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.48グラム、4.14mmol、1.30当量)、最後にDMAP(0.04グラム、0.31mmol、0.1当量)を投入した。DCC(0.854g、4.14mmol、1.30当量)を一度に添加し、得られた溶液を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を粗焼結ガラスフリットで濾過し、次にフリットを追加のDCMですすいだ。次いで、得られた溶液を、Et2O(2000mL)の撹拌溶液が入っているビーカーにゆっくり移した。沈殿物を真空濾過によって回収し、固形物を真空乾燥した。次いで、固形物を、アルゴン雰囲気下に撹拌子を装備した250mLの乾燥した丸底フラスコ中のDCM(50mL)に溶解した。次いで、反応混合物に、ジミリスチルアミン(2.6g、6.36mmol、2.00当量)、次にNEt3(0.89mL、6.36mmol、2.00当量)を投入し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間が経過した後、反応混合物を、2000mLのヘキサンの撹拌溶液が入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。次いで、固形物を200mLの脱イオン水に溶解し、200グラムのAmberlite IR-67及び200グラムのAmberlite IR-120Hが入っているアンバーライトカラムに通した。得られた水溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。残渣をジクロロメタン(100mL)に溶解し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、4.5グラムの表題化合物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.64 (CH2CH2骨格); 3.27 (N-CH2); 2.72 (S-CH2); 2.32-2.19 (C(O)-CH2); 1.12 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.54(N-(CH2)2);1.27(CH2);0.87(CH3)に存在した。
【0236】
実施例7. 化合物17aの合成
【0237】
【0238】
PMOZ 5K NHSエステルは、PEOZ 5K NHSについて上に記載されたのと類似した形で調製した。3.0グラムを単離した。
1H NMR分析はPMOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.92 (m, NH末端シグナル); 3.34 (CH2CH2骨格); 3.21 (N-CH2); 2.75-2.72 (S-CH2); 1.98 (-CH3); 1.80 (CH2-CO2R).NHS部分について追加のシグナルが、δ 2.81(CH2)に存在した。
【0239】
【0240】
PMOZ 5Kアミドは、上に記載されたのと類似した形で調製した。HNMR分析から、生成物材料は、生成物と出発物NHSエステルの約50:50の分離不可能な混合物であることが明らかになった。この混合物をさらに精製することなく、次のステップに進めた。
1H NMR分析はPMOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.92 (m, NH末端シグナル); 3.34 (CH2CH2骨格); 3.21 (N-CH2); 2.75-2.72 (S-CH2); 1.98 (-CH3); 1.80 (CH2-CO2R).ジオール部分について追加のシグナルが、δ 4.61(CH)及び4.48(CH2)に存在した。
【0241】
【0242】
PMOZ 5kジミリストイルグリセロールエーテルは、上に記載されたのと類似した形で調製した。740グラムを単離した。
1H NMR. HNMR分析はPMOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.92 (m, NH末端シグナル); 3.34 (CH2CH2骨格); 3.21 (N-CH2); 2.75-2.72 (S-CH2); 1.98 (-CH3); 1.80 (CH2-CO2R).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.10(CH);4.26(CH2);4.08(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。
【0243】
実施例8. 化合物17cの合成
【0244】
【0245】
PEOZ 2Kジミリストイルグリセロールエーテルは、PEOZ 5Kジミリストイルグリセロールエーテルについて記載されたのと同一の形で調製した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.10(CH);4.25(CH2);4.08(CH2);1.48(C(O)CH2);1.22(CH2);0.84(CH3)に存在した。
【0246】
実施例9. 化合物18aの合成
【0247】
【0248】
NHSエステル(前に記載された合成、1.4グラム、0.67mmol、1.00当量)を、アルゴン雰囲気下に撹拌子を装備した250mLの乾燥丸底フラスコ中のDCM(30mL)に溶解した。次いで、反応混合物に、エタノールアミン(0.15mL、2.00mmol、3.00当量)、次にトリエチルアミン(0.28mL、2.00mmol、3.00当量)を投入し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間が経過した後、反応混合物を、1500mLのジエチルエーテルの撹拌溶液が入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。1.1グラムの材料を単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).エタノールアミンアミドについて追加のシグナルが、δ 4.63(OH);3.08(N-CH2);2.69(HO-CH2)に存在した。
【0249】
【0250】
上に記載されたアミド(1グラム、0.45mmol、1.00当量)を、アルゴン雰囲気下で100mLの丸底フラスコに投入した。材料を30mLのDCMに溶解した。ミリスチン酸(0.52グラム、2.27mmol、5.00当量)、次にDMAP(0.01g、0.09mmol、0.2当量)、最後にDCC(0.47グラム、2.27mmol、5.00当量)を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下に終夜撹拌させておいた。翌朝、反応混合物を濾過し、1600mLのジエチルエーテルが入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.740グラム)を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.45 (CH2CH2骨格); 2.74 (S-CH2); 2.40-2.30 (C(O)-CH2); 1.12 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 4.10(O-CH2);2.85(N-CH2);1.99(脂質CH2);1.58(脂質CH2);1.24(脂質CH2);0.87(脂質CH3)に存在した。
【0251】
実施例10. 化合物19aの合成
【0252】
【0253】
NHSエステル(前に記載された合成、6.00グラム、2.86mmol、1.00当量)を、アルゴン雰囲気下に撹拌子を装備した250mLの乾燥丸底フラスコ中のDCM(100mL)に溶解した。次いで、反応混合物に、プロパルギルアミン(0.55mL、8.57mmol、3.00当量)、次にトリエチルアミン(1.19mL、8.57mmol、3.00当量)を投入し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間が経過した後、反応混合物を2500mLのジエチルエーテルの撹拌溶液が入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。1.8グラムの材料を単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).プロパルギルアミドについて追加のシグナルが、δ 3.85(N-CH2);3.75(CCH)に存在した。
【0254】
【0255】
100mLの丸底フラスコに、上に記載されたアミド(0.92g、0.44mmol、1.00当量)、次にアジドアセテート(0.39g、0.66mmol、1.50当量)、THF(50mL)、CuI(0.34g、1.76mmol、4.00当量)、最後にトリエチルアミン(0.62mL、4.40mmol、10.0当量)を投入した。得られた混合物を50℃に加熱し、終夜撹拌した。この時間に続いて、反応混合物を室温に冷却し、0.1M HCl(30mL)の添加によってクエンチして、10分間撹拌した。得られた混合物を、予め調製された60mLのDowexカラムに通した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで35℃にて濃縮し、続いて分液漏斗に移した。ブライン(20mL)を添加し、混合物を1回20mLのDCMで3回抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.540グラム)を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 7.71 (NH末端); 3.45 (CH2CH2骨格); 2.72 (S-CH2); 2.40-2.30 (C(O)-CH2); 1.12 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 5.16(CH);4.43(CH2);4.11(CH2);2.29(N-CH2);1.61(脂質CH2);1.25(脂質CH2);0.88(脂質CH3)に存在した。トリアゾール部分について追加のシグナルが、δ 5.29(トリアゾールCH);4.53(エステルCH2);4.23(HN-CH2)に存在した。
【0256】
実施例11. 化合物1bの合成
【0257】
【0258】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPhCl(300mL)、次に撹拌子及び2-(5-ペンチニル)-2-オキサゾリン(5.40mL、39.79mmol、1.20当量)を投入した。TfOH(2.94mL、33.16mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で10分間撹拌させておいた。この時間に続いて、2-エチル-2-オキサゾリン(60.15g、605.3mmol、18.30当量)を添加し、得られた混合物を室温で10分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。別個の炉乾燥した1000mLの丸底フラスコに、PhCl(300mL)、次にNaH(3.97g、油中の60%分散体、99.22mmol、3.00当量)を投入した。次いで、メチル-3-メルカプトプロピオネート(22.00mL、198.42mmol、6.00当量)を滴下して加え、混合物を使用前に少なくとも5時間撹拌させておいた。次いで、重合混合物を室温に冷却し、続いてアルゴン雰囲気下で10分間かけて終結混合物に移した。反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を減圧下で濃縮した。0.1M NaOH(水溶液)(1000mL)を添加し、混合物を2時間撹拌した。得られた水溶液をAmberlite IRA-67(200 g)とAmberlite IR120H(200グラム)の混合カラムに通した。生成物の酸をDEAE Sepharoseクロマトグラフィーを介して精製し、得られた水溶液をpH=3に酸性化し、CH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、46.2グラムの生成物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、ポリマー主鎖の積分値とペンダント基のシグナルの比較を介して算出された。この場合、ペンダント基の数は、1.21であると判断された。
【0259】
実施例12. 化合物1aの合成
【0260】
【0261】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPhCl(300mL)、次に撹拌子及び2-(5-ペンチニル)-2-オキサゾリン(2.70mL、19.85mmol、1.20当量)を投入した。TfOH(1.46mL、16.54mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で10分間撹拌させておいた。この時間に続いて、2-エチル-2-オキサゾリン(30.0g、302.63mmol、18.30当量)を添加し、得られた混合物を室温で10分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。別個の炉乾燥した1000mLの丸底フラスコに、PhCl(150mL)、次にNaH(1.98g、油中の60%分散体、49.61mmol、3.00当量)を投入した。次いで、メチルチオグリコレート(8.86mL、99.24mmol、6.00当量)を滴下して加え、混合物を使用前に少なくとも5時間撹拌させておいた。次いで、重合混合物を室温に冷却し、続いてアルゴン雰囲気下で10分間かけて終結混合物に移した。反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を減圧下で濃縮した。0.1M NaOH(水溶液)(1000mL)を添加し、混合物を2時間撹拌した。得られた水溶液をAmberlite IRA-67(200g)とAmberlite IR120H(200グラム)の混合カラムに通した。生成物の酸をDEAE Sepharoseクロマトグラフィーを介して精製し、得られた水溶液をpH=3に酸性化し、CH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、27.6グラムの生成物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).終端基のα-メチレンは、ポリマー主鎖のシグナルの下にあると結論づけられた。ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、ポリマー主鎖の積分値とペンダント基のシグナルの比較を介して算出された。この場合、ペンダント基の数は、1.32であると判断された。
【0262】
実施例13. 化合物3aの合成
【0263】
【0264】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下で2-エチル-2-オキサゾリン(32.14g、324.22mmol、19.00当量)、次PhCl(150mL)及び撹拌子を投入した。TfOH(1.51mL、17.06mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で5分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。別個の炉乾燥した1000mLの丸底フラスコに、PhCl(150mL)、次にNaH(1.91g、油中の60%分散体、47.8mmol、3.00当量)を投入した。次いで、メチルチオグリコレート(8.55mL、95.60mmol、6.00当量)を滴下して加え、混合物を使用前に少なくとも5時間撹拌させておいた。次いで、重合混合物を室温に冷却し、続いてアルゴン雰囲気下で10分間かけて終結混合物に移した。反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を減圧下で濃縮した。0.1M NaOH(水溶液)(1000mL)を添加し、混合物を2時間撹拌した。得られた水溶液をAmberlite IRA-67(200g)とAmberlite IR120H(200グラム)の混合カラムに通した。生成物の酸をDEAE Sepharoseクロマトグラフィーを介して精製し、得られた水溶液をpH=3に酸性化し、CH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、8.0グラムの生成物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).終端基のα-メチレンは、ポリマー主鎖のシグナルの下にあると結論づけられた。
【0265】
実施例14. 化合物4の合成
【0266】
【0267】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPhCl(300mL)、次に撹拌子及び2-(5-ペンチニル)-2-オキサゾリン(5.47mL、40.27mmol、1.20当量)を投入した。TfOH(2.97mL、33.56mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で10分間撹拌させておいた。この時間に続いて、2-エチル-2-オキサゾリン(60.88g、614.14mmol、18.30当量)を添加し、得られた混合物を室温で10分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。次いで、重合混合物を室温に冷却し、Na2CO3(22.5g、212.3mmol、7.00当量)のH2O(400mL)中の水溶液を添加した。反応混合物を少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を分液漏斗に移し、ブライン(400mL)で希釈した。得られた混合物をCH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、57グラムの生成物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 4.83-4.65 (CH2CH2OH末端); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、事前にポリマー出発物質から1.13であると算出された。
【0268】
実施例15. 化合物5の合成
【0269】
【0270】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下で2-エチル-2-オキサゾリン(30.46g、307.3mmol、19.00当量)、次にPhCl(150mL)及び撹拌子を投入した。TfOH(1.43mL、16.17mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で5分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。次いで、重合混合物を室温に冷却し、イソニペコト酸エチル(4.98mL、32.34mmol、2.00当量)を添加した。反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を分液漏斗に移し、ブライン(400mL)で希釈した。得られた混合物をCH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのジエチルエーテルが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。この反復で、25グラムを単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 4.05 (エチルエステルCH2); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 2.81 (CH2-N); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 2.04 (末端ピペリジンのCH); 1.78 (末端ピペリジンのCH2); 1.50 (末端ピペリジンのCH2); 1.16 (エチルエステルCH3); 0.96(CH3).
以上で回収された材料から、6.00グラムのエチルエステルを250mLの丸底フラスコに移し、1M NaOH(水溶液)(30mL)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、そこで混合物をpH=3に酸性化した。回転蒸発を介して□を除去し、残渣をDMFに溶解し、濾過し、硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。得られたゲルをCH2Cl2に溶解し、硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。次いで、生成物を2000mLのジエチルエーテルが入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。5.80グラムの材料を単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18(N-CH2); 2.96 (CH2-N); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 2.06 (末端ピペリジンのCH); 1.86 (末端ピペリジンのCH2); 0.96(CH3).
【0271】
実施例16. 化合物7の合成
【0272】
【0273】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPhCl(150mL)、次に撹拌子及び2-(5-ペンチニル)-2-オキサゾリン(2.7mL、19.85mmol、1.20当量)を投入した。TfOH(1.46mL、16.54mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で10分間撹拌させておいた。この時間に続いて、2-エチル-2-オキサゾリン(30.00g、302.6mmol、18.30当量)を添加し、得られた混合物を室温で10分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。次いで、重合混合物を室温に冷却した。次いで、イソニペコト酸エチル(4.98mL、33.08mmol、2.00当量)を添加した。反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を分液漏斗に移し、ブライン(400mL)で希釈した。得られた混合物をCH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。25グラムの材料を単離した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 4.05 (エチルエステルCH2); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 2.81 (CH2-N); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 2.04 (末端ピペリジンのCH); 1.78 (末端ピペリジンのCH2); 1.50 (末端ピペリジンのCH2); 1.16 (エチルエステルCH3); 0.96(CH3).ペンダント基のシグナルが、δ 1.65ppm(CH2)に存在した。ペンダント基の数は、事前にポリマー出発物質から0.9であると算出された。
【0274】
実施例17. 化合物8の合成
【0275】
【0276】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でクロロベンゼン(150mL)、次に撹拌子及び2-エチル-2-オキサゾリン(30g、302.63mmol、19.00当量)を投入した。プロパルギルトシレート(2.76mL、15.93mmol、1.0当量)を添加し、反応混合物を110℃に温め、40分間撹拌した。別個の炉乾燥した1000mLの丸底フラスコに、クロロベンゼン(150mL)、次にNaH(1.91g、油中の60%分散体、47.79mmol、3.00当量)を投入した。次いで、メチル-3-メルカプトプロピオネート(10.48mL、95.58mmol、6.00当量)を滴下して加え、混合物を5時間撹拌させておいた。次いで、重合混合物を室温に冷却し、40分間保持した後、続いてアルゴン雰囲気下で10分間かけて終結混合物に移した。反応混合物を室温で12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を減圧下で濃縮した。0.1M NaOH(水溶液)(1000mL)を添加し、混合物を2時間撹拌した。得られた水溶液をAmberlite IRA-67(200g)とAmberlite IR120H(200グラム)の混合カラムに通した。生成物の酸をDEAE Sepharoseクロマトグラフィーを介して精製し、得られた水溶液をpH 3に酸性化し、CH2Cl2(2回×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、300mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を3500mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、15.2グラムの生成物を得た。HPLC分析によって、分析純度98%を決定した。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02 (S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).アルキニル基のシグナルが、δ 4.22-3.82ppm(CH2及びCH)に存在した。
【0277】
実施例18. 化合物9の合成
【0278】
【0279】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でPhCl(75mL)、次に撹拌子及び2-エチル-2-オキサゾリン(15.41g、155.47mmol、20.00当量)を投入した。プロパルギルトシレート(1.34mL、7.77mmol、1.0当量)を添加し、反応混合物を110℃に温め、1時間撹拌した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、Na2CO3(6.00g、57.00mmol、7.00当量)のH2O(100mL)中の水溶液を添加した。反応混合物を少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物を分液漏斗に移し、ブライン(200mL)で希釈した。得られた混合物をCH2Cl2(2回×200mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を15000mLの体積に濃縮した。次いで、溶液を2000mLのEt2Oが入っている4Lのビーカー中に沈殿させ、固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥して、6.05グラムの生成物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 4.83-4.65 (CH2CH2OH末端); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96 (CH3).アルキニル基のシグナルが、δ 4.17ppm(CH2及びCH)に存在した。
【0280】
実施例19. 化合物10の合成
【0281】
【0282】
ポリ(エチルオキサゾリン)(OHを末端基とする、0.5グラム、0.27mmol、1.00当量)を30mLのTHFに溶解し、炉乾燥した250mLの丸底フラスコに移した。カリウムtert-ブトキシド(0.09g、0.81mmol、3.00当量)を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌させておいた。この時間に続いて、ブロモ酢酸tert-ブチル(0.24mL、1.62mmol、6.00当量)を添加し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間に続いて、反応混合物をブライン(50mL)とともに分液漏斗に移した。混合物をCH2Cl2(2回×25mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。得られた固体を1M NaOH水溶液(20mL)に溶解し、室温で少なくとも12時間撹拌した。次いで、溶液をpH=3に酸性化し、CH2Cl2(2回×30mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮して、0.4グラムの中間体カルボン酸を得た。それをさらに精製することなく、そのまま使用した。
【0283】
100mLの丸底フラスコに、上記のカルボン酸(1g、0.45mmol、1.00当量)、次にCH2Cl2(30mL)、DMAP(0.01g)、最後にNHS(0.04グラム、0.36mmol、2.00当量)を投入した。次いで、DCC(0.08g、036mmol、2.00当量)を添加し、反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。次いで、得られた混合物を濾過し、濃縮して、中間体NHSエステルを得た。それをさらに精製することなく、そのまま使用した。次いで、NHSエステルを100mLの丸底フラスコに移し、CH2Cl2(30mL)を添加した。ジミリスチルアミン(0.56グラム、1.36mmol、3.00当量)を添加し、次にトリエチルアミン(0.20mL、1.36mmol、3.00当量)を添加した。反応混合物を少なくとも12時間撹拌し、そこで混合物をブライン(20mL)で希釈し、分液漏斗に移した。混合物をCH2Cl2(2回×20mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。生成物を逆相クロマトグラフィー(C18、アセトニトリル:メタノール)によって精製して、0.27グラムの表題化合物を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 4.27-3.93 (CH2O及びO-CH2-N) ; 3.35 (CH2CH2骨格); 2.96 (N-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.54(N-(CH2)2);1.27(CH2);0.87(CH3)に存在した。
【0284】
実施例20. 化合物11aの合成
【0285】
【0286】
100mLの丸底フラスコに、上に記載された酸(0.68g、0.31mmol、1.00当量)、次にアジドアセテート(0.27g、0.46mmol、1.50当量)、THF(50mL)、CuI(0.24g、1.24mmol、4.00当量)、最後にトリエチルアミン(0.64mL、4.60mmol、10.0当量)を投入した。得られた混合物を50℃に加熱し、終夜撹拌した。この時間に続いて、反応混合物を室温に冷却し、0.1M HCl(30mL)の添加によってクエンチして、10分間撹拌した。得られた混合物を、予め調製された60mLのDowexカラムに通した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで35℃にて濃縮し、続いて分液漏斗に移した。ブライン(20mL)を添加し、混合物を1回20mLのDCMで3回抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.18グラム)を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.10(CH);4.26(CH2);4.08(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。トリアゾール部分について追加のシグナルが、δ 5.34(トリアゾールCH);4.35(エステル CH2);4.11(HN-CH2)に存在した。
【0287】
実施例21. 化合物11bの合成
【0288】
【0289】
Ptyn-PEOZ 2K酸(0.500g、0.227mmol、1.0当量、Mn 2199Da)及びDMG-(2-アジドプロピオネート(0.166g、0.273mmol、1.2当量)のTHF(10mL)中の溶液に、CuI(0.0217g、0.114mmol、0.5当量)及びTEA(0.0634mL、0.455mmol、2.0当量)を添加した。得られた混合物を室温で5分間撹拌し、次いで50℃で18時間撹拌させておき、曇った黄色溶液を得た。室温に冷却した後、0.1N HCl水溶液(6mL)を添加し、次に5分間撹拌することによって反応混合物をクエンチした。混合物をDowex(登録商標) M4195カラムに通し、次いでロータリーエバポレーターを使用して、濾液からTHFを除去した。得られた水溶液を20mLのジクロロメタンとともに、0.5gのNaCl(水体積の5w/v%)を使用して撹拌した。有機相を回収し、Na2SO4で脱水し、濾過し、濃縮した。残渣を5mLのDCMに溶解し、ジエチルエーテル(60mL)に添加することによって沈殿させ、濾過し、真空中で乾燥した。得られた淡黄色結晶を、Biotage(SNAP ultra C-18カラム、MeCN/MeOH)を使用してさらに精製して、ポリマー不純物を除去した。画分5~21を回収し、濃縮して、所望の生成物(0.20g、純度99.8%で収率31.3%)を白色結晶として得た。
【0290】
DMG-(2-アジドプロピオネート)の結合は、普通のポリマー主鎖ピークに加えて、DMGプロトンを0.84ppm(t、6H、J=6.5Hz、-(CH2)10CH3)、1.23ppm(m、40H、-(CH2)10CH3)、1.49ppm(m、4H、-CH2(CH2)10CH3)、1.81ppm(d、3H、J=5.0Hz、トリアゾール-CH(CH3)C(=O)O-)、2.28ppm(m、4H、-CH2CH2(CH2)10CH3)、3.07ppm、4.23ppm及び4.33ppm(m、4H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、5.18ppm(m、1H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、5.59ppm(m、1H、トリアゾール-CH(CH3)C(=O)O-)、及び8.09ppm(s、1H、トリアゾール環、「クリック」反応に起因)に示す1H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL DMSO-d6)スペクトルによって判明した。
【0291】
実施例22. 化合物11cの合成
【0292】
【0293】
100mLの丸底フラスコに、上に記載された酸(1.42g、0.65mmol、1.00当量)、次にアジドプロピオネート(0.59g、0.97mmol、1.50当量)、THF(50mL)、CuI(0.5g、2.6mmol、4.00当量)、最後にトリエチルアミン(0.91mL、6.50mmol、10.0当量)を投入した。得られた混合物を50℃に加熱し、終夜撹拌した。この時間に続いて、反応混合物を室温に冷却し、0.1M HCl(30mL)の添加によってクエンチして、10分間撹拌した。得られた混合物を、予め調製された60mLのDowexカラムに通した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで35℃にて濃縮し、続いて分液漏斗に移した。ブライン(20mL)を添加し、混合物を1回20mLのDCMで3回抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.34グラム)を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.10(CH);4.51(CH2);4.26(CH2);4.08(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。トリアゾール部分について追加のシグナルが、δ 4.35(エステルCH2);4.11(HN-CH2)に存在した。
【0294】
実施例23. 化合物12aの合成
【0295】
【0296】
100mLの丸底フラスコに、上に記載された酸(0.82g、0.37mmol、1.00当量)、次にアジドアセテート(0.40g、0.67mmol、1.80当量)、THF(50mL)、CuI(0.28g、1.48mmol、4.00当量)、最後にトリエチルアミン(0.52mL、3.70mmol、10.0当量)を投入した。得られた混合物を50℃に加熱し、終夜撹拌した。この時間に続いて、反応混合物を室温に冷却し、0.1M HCl(30mL)の添加によってクエンチして、10分間撹拌した。得られた混合物を、予め調製された60mLのDowexカラムに通した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで35℃にて濃縮し、続いて分液漏斗に移した。ブライン(20mL)を添加し、混合物を1回20mLのDCMで3回抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.22グラム)を得た。
1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.20(CH);4.26(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。トリアゾール部分について追加のシグナルが、δ 5.35(エステルCH2);4.11(HN-CH2)に存在した。
【0297】
実施例24. 化合物19bの合成
A. DMG-(2-アジドプロピオネート)の合成
【0298】
【0299】
DMG(1.02g、1.900mmol、1.0当量)のトルエン(20mL)中の溶液に、2-アジドプロピオン酸(0.289g、2.280mmol、1.2当量、90.8重量%)及びDMAP(0.0232g、0.019mmol、0.1当量)を添加した。DCC(0.470g、2.280mmol、1.2当量)を添加した後、得られた混合物を室温で2時間撹拌させておいた。得られた混合物を、シリンジフィルターを使用して濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。Biotage(SNAP ultra-シリカゲルカラム、EtOAc/Hex)を使用して、残渣を精製して、所望の生成物(1.09g、収率93.9%、純度99.9%)を得た。
【0300】
2-アジドプロピオン酸の結合は、プロトンを0.85ppm(t、6H、J=6.5Hz、-(CH2)10CH3)、1.23ppm(m、40H、-(CH2)10CH3)、1.32ppm(m、3H、N3CH(CH3)C(=O)O-)、1.50ppm(m、4H、-CH2(CH2)10CH3)、2.28ppm(m、4H、-CH2CH2(CH2)10CH3)、4.15ppm及び4.35ppm(m、4H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、4.29ppm(m、1H、N3CH(CH3)C(=O)O-)、並びに5.24ppm(m、1H、-OCH2CH(O-)CH2O-)に示す1H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL DMSO-d6)スペクトルによって判明した。
【0301】
B. PEOZ 2K DMG-(トリアゾール-2-プロピオネート)の合成
【0302】
【0303】
PEOZ 2Kアセチレン(1.01g、0.450mmol、1.0当量、Mn 2249Da)及びDMG-(2-アジドプロピオネート(0.302g、0.495mmol、1.1当量)のTHF(10mL)中の溶液に、CuI(0.0429g、0.225mmol、0.5当量)及びTEA(0.125mL、0.900mmol、2当量)を添加した。得られた混合物を室温で4分間撹拌し、次いで50℃で18時間撹拌させておいた。室温に冷却した後、0.1N HCl水溶液(12mL)を添加し、次に5分間撹拌することによって反応混合物をクエンチした。混合物をDowex(登録商標) M4195カラムに通し、ロータリーエバポレーターを使用して、濾液からTHFを除去した。得られた水溶液を30mLのジクロロメタンとともに、2gのNaCl(水体積の10w/v%)を使用して撹拌した。有機相を回収し、Na2SO4で脱水し、濾過し、濃縮した。残渣を6mLのDCMに溶解し、ジエチルエーテル(70mL)に添加することによって沈殿させ、濾過し、真空中で乾燥した。得られた淡黄色結晶を、Biotage(SNAP ultra C-18カラム、MeCN/MeOH)を使用してさらに精製して、ポリマー不純物を除去した後、凍結乾燥して、所望の生成物(0.560g、純度99.8%で収率43.8%)を白色結晶として得た。
【0304】
DMG-(2-アジドプロピオネート)の結合は、普通のポリマー主鎖ピークに加えて、DMGプロトンを0.84ppm(t、6H、J=6.5Hz、-(CH2)10CH3)、1.23ppm(m、40H、-(CH2)10CH3)、1.49ppm(m、4H、-CH2(CH2)10CH3)、1.71ppm(d、3H、J=7.5Hz、トリアゾール-CH(CH3)C(=O)O-)、2.28ppm(m、4H、-CH2CH2(CH2)10CH3)、4.06ppm及び4.28ppm(m、4H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、5.18ppm(m、1H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、5.64ppm(m、1H、トリアゾール-CH(CH3)C(=O)O-)、及び8.00ppm(s、1H、トリアゾール環、「クリック」反応によって得られた)に示す1H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL DMSO-d6)スペクトルによって判明した。
【0305】
実施例25. 化合物19cの合成
ステップ1-1,2-ジミリストイル-3-アジドプロピオニル-rac-グリセロール(DMG-3-アジドプロピオネート)の合成
【0306】
【0307】
1,2-ジミリストイル-rac-グリセロール(DMG、1.00gm、1.95mmol、1.0当量)を無水DCM(50mL)に溶解した。アルゴン下に、無水ピリジン(632μL、7.80mmol、4.0当量)を添加し、次に3-アジドプロピオニルクロリド(521mg、3.90mmol、2.0当量)を添加した。反応混合物を室温でアルゴン下に撹拌させておいた。1時間反応した後、溶液を蒸発乾固した。残渣をDCM(100mL)に溶解し、それを0.05M HCl(2回×40mL)で洗浄した。DCM相を無水MgSO4(4g)で脱水した。混合物を濾過した。清澄な濾液を蒸発乾固し、1.228gの粗生成物(黄色液体)を得た。粗生成物は、Biotage SNAP Ultra 25gカラム、Biotage Isolera Systemで、ヘキサン及び酢酸エチルを移動相として使用して、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。カラム精製した後、生成物画分の移動相を蒸発させ、残渣を終夜真空中でさらに乾燥し、0.72gの無色液体/白ロウを得た。TLC(シリカゲル60)は1個のスポットを示す。
1H NMR (Varian, 500 MHZ, 4 mg/mL DMSO-d6, δ, ppm, TMS): 0.85 (t, 2 × 3H, -CH3), 1.23 (m, 不十分な分割, 2 × 20H, -(CH2)10-), 1.50 (m, 2 × 2H, -(C=O)CH2CH2-), 2.28 (t, 2 × 2H, -(C=O)CH2-), 2.61 (t, 2H, N3CH2CH2-), 3.54 (t, 2H, N3CH2-), 4.14, 4.20 (qq, 2H, -CH2O(C=O)C13H27), 4.28 (d, 2H, -CH2O(C=O)C2H4N3), 5.20 (m, 1H, -(OCH2)2CH-O-).
【0308】
ステップ2-PEOZ-(トリアゾール-3-プロピオニル-DMG) 2K、19cのクリック反応による合成
【0309】
【0310】
H-PEOZ-プロパルギルアミド2K(1.0gm、0.67mmol、1当量)を、50mLの丸底フラスコ中の25mLのTHFにDMG-3-アジドプロピオネート(0.464gm、0.76mmol、1.1当量)とともに溶解した。溶液を緩慢なアルゴン流下で撹拌した。次いで、CuI(72.4mg、0.38mmol、0.5当量)をフラスコに添加し、次にTEA(185.4μL、1.33mmol、1.9当量)を添加した。緑色がかった溶液を、アルゴン雰囲気下に油浴中50℃で終夜撹拌させておいた。反応は、反応混合物の逆相HPLC分析で示されて完了した。溶液を26.6mLの50mM HCl(1.33mmole)及びTHF(25mL)と混合した。溶液をガラスカラムに充填されたAmbersep M4195媒体に通すことによって、溶液中の銅を除去した。カラムをTHF-2mM HCl(2:1(v/v))で溶離した。溶離液(150mL)を、THFが除去されるまで蒸発させた。残留している白色の曇った水溶液にNaCl(5g)を添加し、DCM(4回×50mL)で抽出した。DCM相を無水硫酸マグネシウム(3g)及び無水硫酸ナトリウム(20g)で脱水した。濾過して、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムを除去した後、濾液をほぼ乾固まで濃縮し、次いで4mLのDCMに再溶解し、次にジエチルエーテル(160mL)中に沈殿させた。濾過した後、沈殿物を回収し、真空中で乾燥し、0.87gのコハク色粉末(PEOZ-(トリアゾール-3-プロピオニル-DMG)2K)を得た。逆相HPLCによる純度は99.7%である。
1H NMR (Varian, 500 MHZ, 10 mg/mL DMSO-d6, δ, ppm, TMS): 0.85 (t, 2 × 3H, -C13H24CH3), 1.23 (m, 不十分な分割, 2 × 20H, -(CH2)10-), 1.49 (m, 2 × 2H, -(C=O)CH2CH2-), 2.04 (t, 2 × 2H, -(C=O)CH2-), 2.97 (t, 2H, -トリアゾール-CH2CH2-), 4.10, 4.16 (mm, 2H, -CH2O(C=O)C13H27), 4.28 (d, 2H, -CH2O(C=O)C2H4-トリアゾール), 4.54 (t, 2H, -トリアゾール-CH2-), 5.17 (m, 1H, -(OCH2)2CH-O-), 7.90 (s, 1H, トリアゾール環上の-CH-), 8.51 (t, 不十分な分割, 1H, -(C=O)NH-CH2-トリアゾール-) PEOZ骨格ピークは、0.95(中) (s, 3nH, CH3CH2(C=O)NH-)、2.27 (小) (s, 2nH, -CH2(C=O)NH-)、及び3.35 (大) (s, 4nH, -NCH2CH2N-)にある。
【0311】
実施例26. 化合物20aの合成
【0312】
【化52】
PMOZ 2K DMGエステルの合成
PMOZ 2K酸(1.08g、0.500mmol、1.0当量、Mn 2166Da)のDCM(12mL)中の溶液に、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロール(0.283g、0.525mmol、1.05当量、95%)及びDMAP(0.0062g、0.050mmol、0.1当量)を添加した。45℃で、DCC(0.108g、0.525mmol、1.05当量)を添加し、得られた混合物を1時間撹拌させておいた。混合物に追加のDMG(0.283g、0.525mmol、1.05当量、95%)及びDCC(0.108g、0.525mmol、1.05当量)を新たに添加した。45℃で16時間撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、シリンジフィルターを使用して濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。Biotage(SNAP ultra C18カラム、MeCN/MeOH)を使用して、残渣を精製して、所望の生成物(0.40g、収率30%、純度99.8%)を得た。
【0313】
DMGの結合は、普通のポリマー主鎖ピークに加えて、DMGプロトンを0.85ppm(t、6H、J=6.5 Hz、-(CH2)10CH3)、1.23ppm(m、40H、-(CH2)10CH3)、1.50ppm(m、4H、-CH2(CH2)10CH3)、2.72ppm(t、4H、J=6.5 Hz、- CH2CH2(CH2)10CH3)、4.15ppm及び4.27ppm(m、2H それぞれ、-OCH2CH(O-)CH2O-)、並びに5.19ppm(m、1H、-OCH2CH(O-)CH2O-)で示す1H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL DMSO-d6)スペクトルによって判明した。
【0314】
実施例27. 化合物20bの合成
【0315】
【0316】
PEOZ 2K DMGエステルの合成
PEOZ 2K酸(0.660g、0.300mmol、1.0当量、Mn 2200Da)のDCM(12mL)中の溶液に、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロール(0.170g、0.315mmol、1.05当量、95%)及びDMAP(0.0037g、0.030mmol、0.1当量)を添加した。DCC(0.065g、0.315mmol、1.05当量)を添加した後、得られた混合物を18時間撹拌させておいた。シリンジフィルターを使用して、混合物を濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。Biotage(SNAP ultra C18カラム、MeCN/MeOH)を使用して、残渣を精製して、所望の生成物(0.624g、収率78%、純度>99.9%)を得た。
【0317】
DMGの結合は、普通のポリマー主鎖ピークに加えて、DMGプロトンを0.85ppm(t、6H、J=6.5 Hz、-(CH2)10CH3)、1.23ppm(m、40H、-(CH2)10CH3)、1.50ppm(m、4H、-CH2(CH2)10CH3)、2.70ppm(t、4H、J=6.5Hz、-CH2CH2(CH2)10CH3)、4.15ppm及び4.26ppm(m、2H それぞれ、-OCH2CH(O-)CH2O-)、及び5.19ppm(m、1H、-OCH2CH(O-)CH2O-)に示す1H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL DMSO-d6)スペクトルによって判明した。
【0318】
実施例28. 化合物21の合成
【0319】
【0320】
Ptyn-PEOZ 2Kイソニペコテート(化合物7、0.500g、0.274mmol、1.0当量、Mn 1823Da)及びDMG-(2-アジドプロピオネート(0.277g、0.455mmol、1.6当量)のTHF(15mL)中の溶液に、CuI(0.0433g、0.227mmol、0.83当量)及びTEA(0.095mL、0.682mmol、2.5当量)を添加した。得られた混合物を室温で5分間撹拌し、次いで50℃で18時間撹拌させておき、曇った黄色溶液を得た。室温に冷却した後、0.1N HCl水溶液(8mL)を添加し、次に5分間撹拌することによって反応混合物をクエンチした。混合物をDowex(登録商標) M4195カラムに通し、次いでロータリーエバポレーターを使用して、濾液からTHFを除去した。得られた水溶液を20mLのジクロロメタンとともに、0.5gのNaCl(水体積の5w/v%)を使用して撹拌した。有機相を回収し、Na2SO4で脱水し、濾過し、濃縮した。残渣を5mLのDCMに溶解し、ジエチルエーテル(60mL)に添加することによって沈殿させ、濾過し、真空中で乾燥した。得られた淡黄色結晶を、Biotage(SNAP ultra C-18カラム、アセトニトリル/メタノール)を使用してさらに精製して、ポリマー不純物を除去した。画分5~21を回収し、濃縮して、所望の生成物(0.140g、純度99.8%で収率21%)を黄色結晶固体として得た。
【0321】
DMG-(2-アジドプロピオネート)の結合は、普通のポリマー主鎖ピークに加えて、DMGプロトンを0.84ppm(t、6H、J=6.5Hz、-(CH2)10CH3)、1.23ppm(m、40H、-(CH2)10CH3)、1.49ppm(m、4H、-CH2(CH2)10CH3)、1.72ppm(d、3H、J=7.0Hz、トリアゾール-CH(CH3)C(=O)O-)、2.28ppm(m、4H、-CH2CH2(CH2)10CH3)、4.08ppm、4.23ppm及び4.33ppm(m、4H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、5.18ppm(m、1H、-OCH2CH(O-)CH2O-)、5.59ppm(m、1H、トリアゾール-CH(CH3)C(=O)O-)、及び8.00ppm(s、1H、トリアゾール環、「クリック」反応によって得られた)に示す1H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL DMSO-d6)によって判明した。
【0322】
実施例29. 化合物22の合成
【0323】
【0324】
炉乾燥した500mLの丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下で2-エチル-2-オキサゾリン(30g、302.63mmol、19.00当量)、次にPhCl(150mL)及び撹拌子を投入した。TfOH(1.41mL、15.93mmol、1.00当量)を滴下して加え、混合物を室温で5分間撹拌させておいた。次いで、反応を110℃に温め、35分間撹拌した。次いで、重合混合物を室温に冷却し、ジミリスチルアミン(13.00グラム、31.86mmol、2.00当量)を添加した。反応混合物を室温で少なくとも12時間撹拌させておいた。この時間が完了すると、反応混合物をブライン(300mL)で希釈し、分液漏斗に移した。混合物をCH2Cl2(2回×150mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で濃縮して、25.6グラムの粗製材料を得た。粗製材料の試料2グラムを、逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.55グラム)を得た。
1H NMR. 1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.42 (CH2CH2骨格); 3.27 (N-CH2); 2.37-2.25 (C(O)-CH2); 1.11 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 2.74(N-(CH2)2);2.50(N-CH2);1.66(CH2);1.35(CH2);1.22(脂質アルキル鎖);0.85(CH3)に存在した。
【0325】
実施例30. 化合物13の合成
【0326】
【0327】
化合物13を化合物15Bと類似した形で調製した。1.4グラムを単離した。
1H NMR. 1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.43 (CH2CH2骨格); 3.24 (N-CH2); 2.8 (S-CH2); 2.32-2.19 (C(O)-CH2); 1.12 (CH3).脂質部分について追加のシグナルが、δ 1.49-1.65(N-(CH2)2);1.27(CH2);0.87(CH3)に存在した。
【0328】
実施例31. 化合物14の合成
【0329】
【0330】
カルボン酸(2.00グラム、0.91mmol、1.00当量)を250mLの丸底フラスコに移し、アセトニトリルと共沸させた。このプロセスを繰り返し、残渣を1時間真空乾燥した。残渣をCH2Cl2(30mL)に溶解し、HOBT(0.05g、0.36mmol、0.4当量)、次にジミリスチルアミン(1.12グラム、2.73mmol、3.00当量)、最後にDCC(0.6グラム、2.73mmol、3.00当量)を添加した。反応混合物を少なくとも12時間撹拌させておき、そこで混合物を濾過し、1600mLのヘキサンが入っているビーカー中に沈殿させた。固形物を真空濾過によって回収し、真空乾燥した。生成物を逆相C18クロマトグラフィーでアセトニトリル及びメタノールを溶離液として使用して精製して、表題化合物(0.47グラム)を得た。
1H NMR. 1H NMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, CDCl3) δ 3.42 (CH2CH2骨格); 2.93 (N-CH2); 2.39-2.27 (C(O)-CH2); 1.11 (CH3).ピペリジン部分について追加のシグナルが、δ 2.92(N-CH);1.83(CH2);1.76(CH2);1.74(CH2);1.63(CH2)に存在した。脂質部分について追加のシグナルが、δ 3.25(N-CH2);3.19(N-CH2);2.05(CH2);1.52-1.46(CH2);1.25(脂質アルキル鎖);0.86(CH3)に存在した。
【0331】
実施例32. 化合物23の合成
【0332】
【0333】
化合物23を化合物12Aと類似した形で調製した。この場合、0.19gを単離した。HPLC分析によって、分析純度93%を決定した。
1HNMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 3.35 (CH2CH2骨格); 2.71 (S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.19(CH);4.26(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。トリアゾール部分について追加のシグナルが、δ 5.46(エステルCH2);4.07(HN-CH2)に存在した。
【0334】
実施例33- N,N-ジメチルテトラデシルアミン(DMA)を含む脂質ナノ粒子の調製
1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニウム)プロパン[DOTAP](Sigma D6182)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[DSPC](Bachem 4005619)、コレステロールウルトラピュア(VWR 0433)及び2Kポリマー(PEG、PMOZ又はPEOZ)コンジュゲートDMA(以上の実施例で記載)の新鮮な脂質ストック溶液をエタノール中でストック溶液として調製した。最終の脂質混合物ストックが1.30mg/mLのDOTAP、0.28mg/mLのDSPC、0.59mg/mLのコレステロール及び0.19mg/mLのポリマーDMAを含むように、ストック溶液を混合した。溶液は、2.38mg/mLの全脂質を含むものであった。次いで、70μLのストック溶液をピペットで1.5mLのLoBind遠心管(エッペンドルフ型022431081)に入れ、スピード真空システム(GeneVac EZ-2)を使用して、エタノール溶液を蒸発させた。乾燥した試料を、ベントスノーケル下でさらに10分間乾燥させておいた。乾燥した脂質ミックスを250μLのクエン酸緩衝液(pH 4.0)で水和させ、混合し、約10分間音波処理して、脂質ナノ粒子(LNP)を調製した。
【0335】
プラスミドDNA(phMGFP、Promega E6421)ストック溶液をクエン酸緩衝液(pH 4.0)と、100μLの濃度0.34μg/μLと66.7μLのクエン酸緩衝液の比で全体積が166.7μLであるように混合した。10μgのDNAを含むプラスミド溶液の一定分量50μLを、250μLの脂質ナノ粒子混合物に添加し、ピペット混合し、1分未満音波処理して、半透明様懸濁液を得た。チューブを14,000rpmで30分間遠心した(エッペンドルフ型マイクロ遠心機)。上澄み約300μLをLNPペレットから分け、1.2%アガロースゲル及びQubit定量を使用して、いずれか残留DNAについてアッセイした。結果は、上澄み中にDNAが存在していないことを示し、完全なカプセル化が示唆された。
【0336】
ペレットを300μLの5mM HEPES緩衝液(pH 7.40)に再懸濁し、ピペットチップで2分間よく混合した。各ポリマーDMA製剤のDNAカプセル化を検証するために、一定分量のLNP懸濁液をTriton X-100で溶解した。最初に、10% Tritonストック溶液をHEPES緩衝液中で作製した。この溶液3μLをLNP懸濁液27μLに、最終体積が30μLであり、Triton X-100界面活性剤の濃度が1%であるように添加した。懸濁液を2分間ボルテックスで混合し、4℃で終夜放置した。1.2%アガロースゲル及びQubit定量を使用して、混合物をいずれかの残留DNAについてアッセイした。結果は、混合物中のDNAの濃度が高いことを示し、各LNP製剤のカプセル化効率が>90%であることが示唆された。懸濁液は、0.22及び0.1μmのPVDF低タンパク質結合33mm-シリンジフィルター(Millex-W及びMillex-GV、Millipore社)を通して容易に濾過される。
【0337】
実施例34- 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール(DMG)を含む脂質ナノ粒子の調製
1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニウム)プロパン[DOTAP](Sigma D6182)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[DSPC](Bachem 4005619)、コレステロールウルトラピュア(VWR 0433)並びに2K及び5Kポリマー(PEG、PMOZ又はPEOZ)コンジュゲートDMG(以上の実施例で記載)の新鮮な脂質ストック溶液をエタノール中でストック溶液として調製した。最終の脂質混合物ストックが1.48mg/mLのDOTAP、0.28mg/mLのDSPC、0.57mg/mLのコレステロール及び0.15mg/mLの2KポリマーDMGを含むように、ストック溶液を混合した。溶液は、2.49mg/mLの全脂質を含むものであった。5KポリマーDMGコンジュゲートが選択されたとき、濃度は0.32mg/mLであり、溶液は、2.67mg/mLの全脂質を含むものであった。次いで、62μLのストック溶液をピペットで1.5mLのLoBind遠心管(エッペンドルフ型 022431081)に入れ、スピード真空システム(GeneVac EZ-2)を使用して、エタノール溶液を蒸発させた。乾燥した試料をベントスノーケル下でさらに10分間乾燥させておいた。乾燥した脂質ミックスを275μLのクエン酸緩衝液(pH 4.0)で水和させ、混合し、約10分間音波処理して、脂質ナノ粒子(LNP)を調製した。
【0338】
プラスミドDNA(phMGFP、Promega E6421)ストック溶液をクエン酸緩衝液(pH 4.0)と、80μLの濃度2.7μg/μLと190μLのクエン酸緩衝液の比で全体積が270μLであるように混合した。20μgのDNAを含むプラスミド溶液の一定分量25μLを、275μLの脂質ナノ粒子混合物に添加し、ピペット混合し、1分未満音波処理して、半透明様懸濁液を得た。チューブを14,000rpmで30分間遠心した(エッペンドルフ型マイクロ遠心機)。上澄み約300μLをLNPペレットから分け、1.2%アガロースゲル及びQubit定量を使用して、いずれか残留DNAについてアッセイした。結果は、上澄み中にDNAが存在していないことを示し、完全なカプセル化が示唆された。
【0339】
ペレットを300μLの5mM HEPES緩衝液(pH 7.40)に再懸濁し、ピペットチップで2分間よく混合した。各ポリマーDMA製剤のDNAカプセル化を検証するために、一定分量のLNP懸濁液をTriton X-100で溶解した。最初に、10% Tritonストック溶液をHEPES緩衝液中で作製した。この溶液3μLをLNP懸濁液27μLに、最終体積が30μLであり、Triton X-100界面活性剤の濃度が1%であるように添加した。懸濁液を2分間ボルテックスで混合し、4℃で終夜放置した。1.2%アガロースゲル及びQubit定量を使用して、混合物をいずれか残留DNAについてアッセイした。結果は、混合物中のDNAの濃度が高いことを示し、各LNP製剤のカプセル化効率が>90%であることが示唆された。懸濁液は、0.22及び0.1μmのPVDF低タンパク質結合33mm-シリンジフィルター(Millex-W及びMillex-GV、Millipore社)を通して容易に濾過される。
【0340】
別の実験では、遠心されたペレットを、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及びスクロースを含む緩衝液(pH 7.4)に再懸濁した。懸濁液を凍結乾燥して、均一で安定な乾燥ケークを得た。それを注射用水中で容易に復元した。
【0341】
実施例35. LNPから、HEK-293細胞でのDNAのトランスフェクション
HEK-293は、トランスフェクション研究の細胞生物学においてよく使用されるヒト胎児腎臓細胞系である。細胞は、ATCC(CRL-1573)から供給され、>85%のトランスフェクション効率を有することが実証された。研究プロトコルにおいて、低継代(<5)細胞は、トランスフェクションより24時間前に、アッセイプレートに1ウェル当たり100μLの抗生物質不含培地(EMEM+10%FBS)中細胞20,000個という密度で播種される。トランスフェクションの直前に、完全培地交換が行われ、新鮮な100μLの抗生物質不含培地(EMEM+10%FBS)を各ウェルに添加する。
【0342】
ポリマーDMA脂質を含む調製されたLNP及びカプセル化されたプラスミドDNAを各ウェルに2.6~20.8μLの体積で添加して、1ウェル当たり50~450ngのDNA phMGFPを送達する。
【0343】
陽性対照は、3:1の比のFuGENE-HD(Promega E3211)とDNAである。DNA溶液は、無血清培地(Opti-MEM)に希釈する。96ウェルのPCRプレートで、両溶液を3:1の比(1ウェル当たり0.3μLの試薬対100ngのプラスミドDNA)で混合することを3回繰り返し、Opti-MEMを7.33μLの体積に添加する。プレートを室温で25分間インキュベートする。7.33μLのDNA/トランスフェクション混合物を各ウェル中の細胞に添加する。
【0344】
供給された蓋でプレートを覆い、37℃、5%CO2、95%RHのインキュベータに入れる。それらを24~48時間インキュベートする。タイムポイントのそれぞれにおいて、プレートをEvos顕微鏡で読み取る。すべてのGFPフィルター写真を4倍で読み取り、すべての透過光写真を10倍で読み取る。GFP蛍光を発した細胞の数を以下に表1で示す。透過光写真は、すべてのポリマーDMA脂質製剤について試験された最高濃度でいくつかの病的細胞を示した。特に、PEG DMA脂質については、GFP蛍光を発した細胞が最多であった。
【0345】
【0346】
48時間のタイムポイントで、蛍光は高く、観察では、蛍光を発した細胞30~35%(陽性対照);10%(PMOZ DMA脂質では、466ng DNA);10%(PEOZ DMA脂質では、350ng DNA);及び5%(PEG DMA脂質では、450ng DNA)で、細胞死最多であった。
【0347】
実施例36. LNPから、HepG2細胞でのDNAのトランスフェクション
HepG2は、トランスフェクション研究においてよく使用されるヒト肝細胞癌細胞系である。細胞は、ATCC(HB-8065)から供給され、95%という高いトランスフェクション効率を有することが実証された。研究プロトコルにおいて、低継代(<5)細胞は、トランスフェクションより24時間前に、アッセイプレートに1ウェル当たり100μLの抗生物質不含培地(DMEM+10%FBS)中細胞40,000個という密度で播種される。トランスフェクションの直前に、完全培地交換が行われ、新鮮な100μLの抗生物質不含培地(DMEM+10%FBS)を各ウェルに添加する。
【0348】
ポリマーDMG脂質を含む調製されたLNP及びカプセル化されたプラスミドDNAを各ウェルに1.9~11.7μLの体積で添加して、1ウェル当たり100~1000ngのDNA phMGFPを送達する。
【0349】
陽性対照は、3:1の比のFuGENE-HD(Promega E3211)とDNAである。DNA溶液は、無血清培地(Opti-MEM)に希釈する。96ウェルのPCRプレートで、両溶液を3:1の比(1ウェル当たり0.3μLの試薬対100ngのプラスミドDNA)で混合することを3回繰り返し、Opti-MEMを7.33μLの体積に添加する。プレートを室温で25分間インキュベートする。7.33μLのDNA/トランスフェクション混合物を各ウェル中の細胞に添加する。
【0350】
供給された蓋でプレートを覆い、37℃、5%CO2、95%RHのインキュベータに入れる。それらを、48~72時間インキュベートする。タイムポイントのそれぞれにおいて、プレートをEvos顕微鏡で読み取る。すべてのGFPフィルター写真を4倍で読み取り、すべての透過光写真を10倍で読み取る。GFP蛍光を発した細胞の数を以下に表2で示す。透過光写真は、細胞毒性の徴候を示さなかった。
【0351】
【0352】
実施例37. POZ-脂質コンジュゲートの加水分解速度論
本開示のいくつかのPOZ-脂質コンジュゲートの加水分解速度は、リン酸-生理食塩水緩衝液、pH 7.4(PBS)並びにPBSに希釈された100%又は50%のラット及びヒト血漿を含む生物学的培地において決定した。POZ-脂質試料を正確に秤量し、PBSに溶解して、ストック溶液を調製した。これらの溶液をPBS又はラット若しくはヒト血漿の培地に加え、37℃でインキュベートさせておいた。試料を加水分解培地からさまざまな時間間隔で除去し、冷却したメタノール中0.2%ギ酸を添加することによってクエンチした。試料を遠心し、上澄みを水中0.1%ギ酸に移し入れ、次いで高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で逆相カラム(300SB C3)並びに移動相として水中0.1%ギ酸アンモニウム及びメタノール中0.1%ギ酸アンモニウムの勾配流を使用して、試料を分析した。POZ-脂質コンジュゲートを、210nmにおけるUV吸収により検出し、その崩壊及び分解代謝物を検出し、次に質量分析を行った。50%のPOZ-脂質が分解するのにかかる時間は、濃度-時間曲線から外挿し、以下に表3で報告する。
【0353】
【0354】
結果は、エステルリンケージを有する化合物(化合物19a、19b、19c、20a及び20b)が、血漿中で、エーテルリンケージを有する化合物(化合物17a、17b及び17c)より高速で加水分解したことを示す。
【0355】
実施例38. ポリマー脂質コンジュゲートのアミダーゼ加水分解
この実験の目的は、PBS、ラット血漿、又はヒト血漿(上記の実施例)中で明らかな反応(加水分解)を示さなかったさまざまなポリマー脂質コンジュゲートが、リポ-アミダーゼ酵素の存在下で反応するかどうかを決定することであった。化合物13、15a、及び15bは、POZと脂質の間にアミドリンケージを有する。化合物22は、アミンリンケージを有する。POZ-脂質試料を正確に秤量し、PBSに溶解して、ストック溶液を調製した。選択されたアミダーゼは、Bio-Vision社から供給された、≧9mU/mgの比活性を有する「脂肪酸アミドヒドロラーゼ1、活性ヒト組換え(FAAH1)」であった。アミダーゼは、PBS pH 8.0をアミダーゼの各バイアルに添加し、穏やかに混合し、37℃の水浴に2時間入れることによって活性化した。アミダーゼ溶液の濃度は約2μg/μLであった。一定分量のPOZ-脂質ストック溶液を、活性化したリポ-アミダーゼ溶液に添加し、穏やかに混合し、37℃で終夜インキュベートさせておいた。終夜加水分解した後、メタノールを添加し、試料を遠心し、上澄みをHPLCバイアルに移した。試料は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で逆相カラム(300SB C3)並びに移動相として水中0.1%ギ酸アンモニウム及びメタノール中0.1%ギ酸アンモニウムの勾配流を使用して分析した。ポリマー脂質コンジュゲートのピーク面積は、210nmにおけるUV吸収により測定した。初期及び終夜のアミダーゼインキュベーションにおけるピーク面積を比較し、その結果を以下に表4で示す。
【0356】
【0357】
結果は、アミドリンケージを有する化合物(化合物15a、15b、及び13)が、終夜加水分解後のPOZ-DMAピーク面積の低下、すなわち30~50%の変化で観察されたように、リポ-アミダーゼ酵素によって影響を受けたことを示す。対照的に、アミンリンケージを有する化合物22は、ピーク面積のわずかな減少を示したが、それは有意ではなく、実験条件の誤差の範囲内、すなわち±10%であった。
【0358】
実施例39. 化合物24の合成
ステップ1.
【0359】
【0360】
PEOZ 2K(1.21p)NHSエステルは、前に記載されたのと類似した形で調製した。
1H NMR. HNMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02 (S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).NHS部分について追加のシグナルが、δ 2.81((CH2)2)に存在した。アルキン部分のCH2シグナルが、δ 1.63ppmに検出された。
【0361】
ステップ2.
【0362】
【0363】
PEOZ 2K(1.21p)エタノールアミングリセロールアミドは、前に記載されたのと類似した形で調製した。
1H NMR. HNMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96 (CH3).アルキン部分のCH2シグナルが、δ 1.63ppmに検出された。ジオール部分について追加のシグナルが、δ 4.56(CH2);4.53(CH)に存在した。
【0364】
ステップ3.
【0365】
【0366】
PEOZ 2K(1.21p) DMGは、前に記載されたのと類似した形で調製した。
1H NMR. HNMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.20(CH);4.26(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。アルキン部分のCH2シグナルが、δ 1.63ppmに検出された。
【0367】
ステップ4.
【0368】
【0369】
PEOZ 2K(1.21p)DMG(3-アジドプロピオネート)、化合物24は、前に記載されたのと類似した形で調製した。
1H NMR. HNMR分析はPEOZの標準的骨格シグナルを示した (500 MHz, DMSO) δ 7.82 末端NH); 3.35 (CH2CH2骨格); 3.18 (N-CH2); 3.02(S-CH2); 2.32-2.27 (C(O)-CH2); 0.96(CH3).脂質誘導体部分について追加のシグナルが、δ 5.20(CH);4.26(CH2);1.49(C(O)CH2);1.23(CH2);0.84(CH3)に存在した。トリアゾール部分について追加のシグナルが、δ 7.78(トリアゾールCH);4.54(エステルCH2)に存在した。
【0370】
本明細書に記載された及び特許請求されたPOZ-脂質、LNP、及び医薬組成物は、本明細書に開示されている具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきでない。というのは、これらの実施形態は、本開示のいくつかの態様の例示として意図されているからである。いかなる均等な実施形態も、本開示の範囲内であるように意図される。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、式及び構造のさまざまな修正形態が、上記の説明から当業者には明らかになるであろう。そのような修正形態も、添付の特許請求の範囲内に入るように意図される。上記の本文に引用される特許及び特許出願はすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。本明細書におけるいかなる項目見出しも、構造的序列を規定する37 C.F.R. § 1.77又はその他の方法の示唆との一貫性のために記載されているにすぎない。これらの見出しは、本明細書に記載された本発明を限定も特徴付けもしてはならない。
【国際調査報告】