(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマーの製造方法及びそれにより得られるポリマー複合体
(51)【国際特許分類】
C08G 63/66 20060101AFI20240131BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240131BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C08G63/66
C08L67/02
C08K3/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547824
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 US2022015039
(87)【国際公開番号】W WO2022173641
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】アラン ティエラン
(72)【発明者】
【氏名】マルク ベ.デルボー
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン エヌ.ステップ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002CF101
4J002CL081
4J002DJ016
4J002FB096
4J002FB246
4J002FD016
4J002GB00
4J002GC00
4J002GM01
4J002GN00
4J002GT00
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC03
4J029AE01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA08
4J029BA09
4J029BA10
4J029BB04A
4J029BB05
4J029BB10A
4J029BB12A
4J029BB13A
4J029BC05A
4J029BD04A
4J029BD07A
4J029BF25
4J029BF27
4J029BH01
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CB12A
4J029CC05A
4J029CC06A
4J029CF08
4J029DA07
4J029DA10
4J029DB13
4J029JA293
4J029JB131
4J029JB193
4J029JD01
4J029JD03
4J029JE182
4J029JF321
(57)【要約】
熱可塑性エラストマーの製造方法は、数平均分子量が400以上6000以下である、第1のジオール末端ポリエーテルと、その表面にC1~C8アルキルシリル基又はアクリル酸エステル基若しくはメタクリル酸エステル基を有する、最大15重量%のヒュームドシリカと、を少なくとも含むポリエーテル組成物を提供することと、ポリエーテル組成物を、任意の追加の第1のポリエーテル、及びa)少なくとも1種のジカルボン酸及び分子量が250未満の少なくとも1種の有機ジオール、又はb)少なくとも1種のジカルボキシレート末端ポリアミド、のいずれかと組み合わせて、プレポリマー組成物を形成することと、プレポリマー組成物を重合させて、熱可塑性エラストマーを形成することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーの製造方法であって、
数平均分子量が400以上6000以下である、第1のジオール末端ポリエーテルと、その表面にC1~C8アルキルシリル基又はアクリル酸エステル基若しくはメタクリル酸エステル基を有する、最大15重量%のヒュームドシリカと、を少なくとも含むポリエーテル組成物を提供することと、
前記ポリエーテル組成物を、任意の追加の第1のポリエーテル、及びa)少なくとも1種のジカルボン酸及び分子量が250未満の少なくとも1種の有機ジオール、又はb)少なくとも1種のジカルボキシレート末端ポリアミド、のいずれかと組み合わせて、プレポリマー組成物を形成することと、
前記プレポリマー組成物を重合させて、熱可塑性エラストマーを形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記重合が前記プレポリマー組成物に触媒を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒュームドシリカが、50m
2/g以上400m
2/g以下の表面積を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカが、前記表面にC1~C3アルキルシリル基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プレポリマー組成物が、1つ以上の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核剤、溶剤、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤、又は紫外線安定剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマー中のポリエーテルの量が、全ポリマーの割合として20%以上80%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法に従って製造された、熱可塑性エラストマー。
【請求項8】
最大12重量%の前記ヒュームドシリカを含む、請求項7に記載の熱可塑性エラストマー。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマー中のポリエーテルの量が、全ポリマーの割合として20%以上80%以下である、請求項7又は8に記載の熱可塑性エラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー、特に熱可塑性ポリエーテルエステル及び熱可塑性ポリエーテルアミドにシリカ充填剤を配合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、エラストマーの柔軟性と熱可塑性プラスチックの加工の容易さを併せ持つ、重要な種類のポリマーである。熱可塑性ポリエーテルエステルや熱可塑性ポリエーテルアミドなどのTPEの機械的特性は、ハードセグメントとソフトセグメントが、化学的に結合しているが空間的には二相に分離している、ミクロ構造によって決定される。このような材料は、ホース、パイプ、糸、成形部品、自動車のドア、及び窓まわりなど、様々な用途に使用されている。CN1775852には、シリカをポリエステルオリゴマーでグラフト化し、押出機で溶融した熱可塑性ポリエーテルエステルと組み合わせた、熱可塑性ポリエーテルエステル組成物が記載されている。しかしながら、破断伸度と、引裂強度や硬度などの特性との間などの、熱可塑性ポリエーテルエステル及び熱可塑性ポリエーテルアミドの機械的特性のトレードオフを解消することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、熱可塑性エラストマーの製造方法は、数平均分子量が400以上6000以下である、第1のジオール末端ポリエーテルと、その表面にC1~C8アルキルシリル基又はアクリル酸エステル基若しくはメタクリル酸エステル基を有する、最大15重量%のヒュームドシリカと、を少なくとも含むポリエーテル組成物を提供することと、ポリエーテル組成物を、任意の追加の第1のポリエーテル、及びa)少なくとも1種のジカルボン酸及び分子量が250未満の少なくとも1種の有機ジオール、又はb)少なくとも1種のジカルボキシレート末端ポリアミド、のいずれかと組み合わせて、プレポリマー組成物を形成することと、プレポリマー組成物を重合させて、熱可塑性エラストマーを形成することと、を含む。プレポリマー組成物に触媒を添加することを含んでもよいことを許容する。ヒュームドシリカは、50m2/g以上400m2/g以下の表面積を有してもよく、及び/又は表面にC1~C3アルキルシリル基を有してもよい。プレポリマー組成物は、1つ以上の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核剤、溶剤、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤、又は紫外線安定剤を更に含んでもよい。熱可塑性エラストマー中のポリエーテルの量は、全ポリマーの割合として20%以上80%以下であってもよい。
【0004】
別の実施形態では、熱可塑性エラストマーは、これらの選択肢の任意の組み合わせ又はサブコンビネーションに従って製造され、最大12重量%のヒュームドシリカを含むことができる。熱可塑性エラストマー中のポリエーテルの量は、全ポリマーの割合として20%以上80%以下であってもよい。
【0005】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の本発明の更なる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一実施形態では、熱可塑性ポリエーテルエステル又は熱可塑性ポリエーテルアミドの製造方法は、ヒュームドシリカをポリエーテル成分の前駆体と組み合わせて、シリカ-ポリエーテル分散液を形成することを含む。シリカ-ポリエーテル分散液は、a)少なくとも1種のジカルボン酸及び少なくとも1種の低分子量ジオール、又はb)少なくとも1種のポリアミドオリゴマー、触媒、及び任意で追加のポリエーテルと組み合わせて、重合させることを可能にする。好ましくは、ヒュームドシリカは、C1~C8アルキルシリル基及び/又はアクリル酸エステル基若しくはメタクリル酸エステルを表面に残す表面処理を使用して、疎水化される。
【0007】
ヒュームドシリカは、通常、燃料、例えば、メタン又は水素、酸素、及び揮発性ケイ素化合物を含むガス状原料をバーナーに供給する、発熱性プロセスを介して製造される。酸素中での燃料の燃焼により形成された水は、液状又は気体状のいずれかの揮発性ケイ素化合物と反応して、二酸化ケイ素粒子を生成する。これらの粒子は、合体して凝集し、ヒュームドシリカを形成する。ヒュームドシリカの非限定的な例としては、Cabot Corporationから入手可能なCAB-O-SIL(登録商標)ヒュームドシリカ、Wacker Chemie AGから入手可能なHDK(登録商標)ヒュームドシリカ製品、及びEvonik Industries、エッセン、ドイツから入手可能なAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカが挙げられる。
【0008】
熱可塑性エラストマーの形成中、シリカとポリマーとの間の水素結合の形成と、ポリマー自体の形成とを調整するために、配合物の特性のバランスをとることが望ましい。シリカの表面積を増加させることにより、ポリマーと相互作用するための利用可能な表面積が増加する。したがって、好ましい実施形態では、本明細書で使用されるヒュームドシリカは、窒素吸着(ASTM D1993)によって測定される表面積が、少なくとも50m2/g、例えば、少なくとも90m2/g、少なくとも150m2/g、少なくとも175m2/g、少なくとも200m2/g、又は150m2/g以上300m2/g以下である。
【0009】
製造されたヒュームドシリカは、表面に複数のSi-OH基を有する親水性である。これらのシラノール基は、ポリエーテルのオキシアルキレン基、及びポリアミドやポリエステルのカルボキシル基と非共有結合を形成する。これらの相互作用は、ポリマーの結晶化度、特にハードセグメントに影響を与え、最終ポリマーの微細構造及び強化に影響を与える。シリカの分岐構造によってもたらされるチキソトロピー性との組み合わせにおいて、シラノール基とプレポリマー配合物の親水性成分との相互作用はまた、粘度を増加させる可能性がある。表面に短いアルキルシリル基を残す薬剤で疎水化したヒュームドシリカは、長いアルキルシリル基と比較して、プレポリマー成分の粘度を低下させるが、それでもシリカが、熱可塑性ポリエーテルアミド及びエステルにおける結晶化挙動を変化させ、機械的特性を向上させることができることが、予想外に発見された。
【0010】
適切な表面処理は、表面にC1~C8、好ましくはC1~C3のアルキルシリル基、例えばトリメチルシリル基、ジメチルシリル基、エチルシリル基、アルキレンシリル基、ビニルシリル基、又はメチルエチルシリル基を残す。あるいは又は追加で、表面処理は、表面にアクリル酸エステル基、又はメタクリル酸エステル基を残すことができる。典型的には、このようなエステル基は、1~6個の炭素を有してよいアルキルリンカーによって、シリル基に結合される。シリル基は、1個、2個、又は3個のシロキサン結合によってヒュームドシリカの表面に結合してもよく、又はシロキサン結合を介して1個又は2個の隣接するアルキルシラン基に結合してもよい。したがって、ヒュームドシリカは、ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン、又はジメチルジクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、エチルメチルジクロロシラン、並びにその他のC1~C8直鎖及び分岐アルキルシランなどのアルキルシランで疎水化することができる。アルキルシリル基又はアルキルリンカーの適切なアルキル鎖の長さは、ポリオールの親水性/親油性のバランスによって変化する。シリカ粒子は、ポリオール分子との相互作用が主体ではなく、ポリオール中で別個のネットワークを形成し、それによって粘度を増大させるような疎水性であってはならない。
【0011】
熱可塑性ポリエーテルコポリエステル又は熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーとも呼ばれる、熱可塑性ポリエーテルエステルは、ハードで柔軟性のないセグメント又はブロック、及びソフトセグメントの両方を含むブロックコポリマーである。ハードセグメントの繰り返し単位は、通常、少なくとも1種の低分子量(MW)有機ジオール、及び少なくとも1種のジカルボン酸又はエステルで調製される。低分子量ジオールは、非環式、シクロ脂肪族、又は芳香族アルキレンジオールであってよく、典型的には2個以上15個以下の炭素原子、例えば2個以上6個以下又は2個以上4個以下の炭素原子を含む。例示的な低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-トリメチレングリコール、ブチレングリコール、例えば、1,4-ブチレングリコール及びイソブチレングリコール、1,4-ペンタメチレングリコール、2,2-ジメチルトリメチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタメチレングリコール、1,10-デカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-シクロヘキシレンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0012】
ジカルボン酸は、芳香族、脂肪族、又はシクロ脂肪族ジカルボン酸であってよい。例示的なジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ビ安息香酸、ベンゼン核を2個持つ置換ジカルボキシ化合物、例えばビス(p-カルボキシフェニル)メタン、エチレンビスp-安息香酸、1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香酸)、エチレンビス(p-オキシ安息香酸)、1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香酸)、p-オキシ-1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-スルホニルジ安息香酸、並びにこれらのC1~C12アルキル及び環置換誘導体、例えばハロ、アルコキシ、及びアリール誘導体が挙げられる。ジカルボン酸の組み合わせも、同様に使用することができる。
【0013】
典型的なポリエステル(ハード)セグメントとしては、ポリ(ブチレンテレフタラート)(PBT)、ポリ(エチレンテレフタラート)(PET)、ポリ(トリメチレンテレフタラート)(PTT)、ポリ(ブチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)、D,L-ラクチド、不飽和アルキレンジカルボキシレートとのPBTコポリマー、及びポリ(ブチレン-コ-イソフタラート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
ソフトセグメントの繰り返し単位は、典型的には、数平均分子量が400以上6000以下、例えば400以上4000以下又は500以上2500以下のアモルファスポリエーテルであり、異なる長さのアルキレンオキシドの混合物を含む、炭素原子数2個以上6個以下、例えば炭素原子数2個以上4個以下のアルキレンオキシドを用いて調製される。例示的なポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、例えば、ポリ(1,2-プロピレンオキシド)及びポリ(1,3-プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(3-アルキルテトラヒドロフラン、例えば、ポリ(3-メチルテトラヒドロフラン)、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)、ポリ(ネオペンチレンオキシド-コ-テトラメチレンオキシド)、ビスフェノール類のオキシエチル化によって得られるポリエーテル、例えば、ビスフェノールA、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリアルキレンオキシドのジオール末端バージョンを使用して、ソフトセグメントを熱可塑性ポリエーテルエステルに組み込むことができる。
【0015】
ポリエーテルエステルは、ヒュームドシリカ、低分子量ジオール、ジカルボン酸、ポリエーテル、及び触媒を組み合わせ、当業者に公知の方法で重縮合を行うことにより、製造することができる。シリカは、それ自体では補強を提供しないため、例えば0.1重量%以上15重量%以下、例えば0.5重量%以上10重量%以下、又は1重量%以上7重量%以下という少量が採用され得る。熱可塑性ポリエーテルエステルの製造のために、当業者に公知の触媒を採用することができ、例えば、テトラブチルオルトチタネート又はテトラブチルチタネートが挙げられる。酸化防止剤、例えば、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルヒドロシンナメート))メタン(BASFからIrganox 1010として入手可能)及び1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASFからIrganox 1330として入手可能)を同様に含むことができる。当業者に公知の他の触媒及び触媒混合物を使用することもできる。適切な熱可塑性ポリエーテルエステルとしては、US6764753、US5731380、US4355155、US8329269、US20190162244、EP1545857、及びWO2012119057に記載されているもの(これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)、並びに当業者に公知の他の熱可塑性ポリエーテルエステルが挙げられる。
【0016】
得られたシリカ充填熱可塑性ポリエーテルエステルは、自動車用途(例えば、ブーツ、ベローズ、エアダクト、エアバッグカバー)、電線及びケーブル用途(例えば、ジャケッティング、ホース、チューブ、カバー)、光ファイバーカバー、保護コーティング、及び医療機器などを含むがこれらに限定されない、様々な最終用途に採用することができる。
【0017】
熱可塑性ポリエーテルアミドとも呼ばれる、熱可塑性ポリアミドポリエーテルは、柔らかいポリエーテルセグメントと、より硬いポリアミドブロックとを含むブロックコポリマーである。適切なポリエーテルセグメントとしては、上述した熱可塑性ポリエステルポリエーテルに使用するのに適したものや、エトキシル化第一級アミンが挙げられる。ポリエーテルは、ブロックコポリマーに組み込むために、典型的には-OH末端(すなわち、ジオール)である。例示的なエトキシル化第一級アミンとしては、式H(OCH2CH2)m-N(CH2CH2O)n-Hを有するものが挙げられ、式中、m及びnは1以上20以下であり、xは8以上18以下であり、例えば、ArkemaからNoramoxの名称で入手可能である。あるいは又は追加で、熱可塑性ポリアミドポリエーテルのソフトブロックは、二量化脂肪酸を含むポリエステルを含むことができる。
【0018】
ポリアミドブロックは、ジカルボン酸とジアミンとの縮合から生じてもよい。適切なジカルボン酸としては、例えば、4個以上36個以下、例えば6個以上18個以下の炭素原子を有する、脂肪族、シクロ脂肪族及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。例示的な芳香族二酸には、熱可塑性ポリエステルポリエーテルに関連して上記に列挙したものが含まれる。例示的な脂肪族及びシクロ脂肪族二酸としては、ブタンジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、二量化脂肪酸、及び1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ポリアミドブロックは、二酸末端である。
【0019】
適切なジアミンとしては、例えば、2個以上20個以下の炭素原子、例えば、6個以上15個以下の炭素原子を有する、脂肪族、シクロ脂肪族、及び芳香族ジアミンが挙げられる。例示的なジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及びトリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパンのいずれかの異性体、イソホロンジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、及びピペラジン(Pip)、並びに上記のジアミンのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0020】
あるいは又は追加で、ポリアミドブロックは、少なくとも1つのα、ω-アミノカルボン酸及び/又は少なくとも1つのラクタム、例えば、6個以上12個以下の炭素原子を含む、例えば、カプロラクタム、オエナントラクタム、ラウリルラクタム、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、又は12-アミノドデカン酸の縮合から生じてもよい。あるいは又は追加で、ポリアミドは、少なくとも1つのα、ω-アミノカルボン酸及び/又はラクタムと、少なくとも1つのジアミン及び/又は少なくとも1つのジカルボン酸との縮合から生じてもよい。二酸末端ポリアミドブロックは、アジピン酸などのジカルボン酸の存在下での縮合によって達成することができる。
【0021】
適切なポリアミドブロックとしてはまた、PA 4.6、PA 4.9、PA 4.10、PA 4.12、PA 4.14、PA 4.16、PA 4.18、PA6、PA 6.6、PA 6.9、PA 6.10、PA 6.12、PA 6.14、PA 6.16、PA 6.18、PA 9.12、PA 10.6、PA 10.9、PA 10.10、PA 10.12、PA 10.13、PA 10.14、PA 10.16、PA 10.18、PA BMACM.6、PA BMACM.9、PA BMACM.10、PA BMACM.12、PA BMACM.14、PA BMACM.16、PA BMACM.18、PA BACM.6、PA BACM.9、PA BACM.10、PA BACM.12、PA BACM.14、PA BACM.16、PA BACM.18、PA Pip.6、PA Pip.9、PA Pip.10、PA Pip.12、PA Pip.14、PA Pip.16、PA Pip.18、PA 11、PA 12、PA 6、PA 6.6/6、PA 6.6/Pip.10/12、PA 6.6/6.10/11/12、PA 10.10/11、PA 6/11、PA 11/12、PA 10.10/1.2、PA 10.10/10.14、PA 11/10.36、PA 11/6.36、PA 10.10/10.36、PA 6.10/11、PA10.12/11、PA 10.10/11/12、PA 6.10/10.10/11、PA 6.10/6.12/11、及びPA 6.10/6.12/10.10が挙げられる。典型的なポリアミドブロックは、分子量が500g/mol以上5000g/mol以下であるが、分子量を調整して、硬度などの機械的特性を調整することができる。
【0022】
シリカ充填熱可塑性ポリアミドポリエーテルは、シリカ、二酸末端ポリアミドオリゴマー、及びポリエーテルジオールを組み合わせ、触媒の存在下で重縮合を行うことにより、製造することができる。特定の実施形態では、シリカはまず、0.1重量%以上15重量%以下、例えば0.5重量%以上10重量%以下又は1重量%以上7重量%の量で、ポリエーテルジオールと組み合わされる。典型的には、重縮合は高温、例えば100℃以上00℃以下、例えば200℃以上250℃以下、真空下で行われる。適切な触媒としては、熱可塑性ポリエーテルエステルの重縮合のために上述したようなテトラアルキルオルトチタネートが挙げられる。熱可塑性ポリアミドポリエーテルの製造のために、当業者に公知の適切な酸化防止剤、例えばIrganox 1010又はIrganox 245酸化防止剤を採用することもできる。例示的な熱可塑性ポリアミドポリエーテル及びその製造方法には、WO2010089902、US4331786、US4230838、及びUS4252920に開示されているもの(これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)、並びに当業者に公知の他の熱可塑性ポリエステルアミドが含まれる。
【0023】
シリカを充填した熱可塑性ポリエーテルアミドは、スキーのビンディングやブーツ、靴のアウトソール、カテーテルなどの医療器具、高速ベルト、面ファスナー用結びベンド、及び通気性フィルムを含む、様々な最終用途に使用できる。
【0024】
熱可塑性ポリエーテルアミド及び熱可塑性ポリエーテルエステルの両方について、このような材料に使用するために、当業者に知られている追加の成分を採用することもできる。例示的な添加剤としては、界面活性剤、充填剤、難燃剤、核剤、溶剤、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤、及び紫外線安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエーテルと、ポリアミド又はポリエステルとの比率は、重量基準で80/20から20/80であってもよい。したがって、最終ポリマー中の所望のシリカの量は、ポリエーテル中のシリカ担持量、及び配合物に添加する追加のニートポリエーテルの量を調整することによって、容易に調整することができる。あるいは又は追加で、シリカは、ポリエーテルと組み合わせる前に、ポリエステル又はポリアミド成分と組み合わせることもできる。最終ポリマー配合物中のシリカの適切な量は、0.02重量%以上12重量%以下、例えば0.05重量%以上10重量%以下、0.1重量%以上7重量%以下、0.5重量%以上5重量%以下又は1重量%以上4重量%以下の範囲であってもよい。
【0025】
本発明は、本質的に例示的であることのみを意図する以下の実施例によって更に明らかにされるであろう。
【実施例】
【0026】
実施例1
シリカ(約90m
2/gの表面積を有し、表面にトリメチルシリル基を残すために、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)で処理した、フュームドシリカ、又は220m
2/gの表面積を有し、表面にジメチルシリル基を残すために、ジメチルジクロロシラン(DMD)で処理した、フュームドシリカのいずれか)を、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMG、Mn=1000)中に、10重量%でFlackTek DAC600 Speedmixerで分散させる。熱可塑性ポリエーテルエステルを、Gabrielseら、Macromolecules(2001)34:1685に記載されている手順を使用して、触媒として0.2重量%のテトラブチルチタネート(TBT)、及び酸化防止剤として0.5重量%のIrganox 1010を用いて、PTMG、ジメチルテレフタラート(DMT)、及び1,4-ブタンジオール(BDO)の溶融エステル化交換反応及びその後の重縮合によって製造する。重縮合は、真空下、250℃の温度で200分間行う。以下の表1に示す配合は、異なる量のシリカ補強材をもたらすが、60%(重量基準)のポリエーテルセグメントを有するTPEEをもたらす。重合後、得られたポリマーをストランドとして押し出し、ペレット化する。ポリマー顆粒を、100℃で2時間乾燥し、その後140℃で5時間追加乾燥する。得られた材料は、シリカを含まない対照と比較して、またシリカを含まない対照と乾燥シリカを溶融混練して調製した同様の配合物と比較して、優れた引張特性及び硬度特性を有することが期待される。
【表1】
【0027】
実施例2
11-アミノウンデカン酸をアジピン酸の存在下で重縮合し、分子量(Mn)が2000のジカルボン酸末端ポリアミドを調製する。実施例1の各シリカを、ポリエチレングリコール(PEG、Mn=1000)中に、10重量%でFlackTek DAC600 Speedmixerで分散させる。熱可塑性ポリエーテルアミドを、US4230838の実施例1に記載されている手順を使用して、1.5gのテトラブチルオルトチタネートを触媒として用いて、以下の表2に示す量のポリエチレングリコールと11-ジカルボン酸ポリアミドとのその後の重縮合により製造する。重縮合は、真空下、260℃の温度で7時間行う。得られた材料は、シリカを含まない対照と比較して、またシリカを含まない対照と乾燥シリカを溶融混練して調製した同様の配合物と比較して、優れた引張特性及び硬度特性を有することが期待される。
【表2】
【0028】
本発明の好ましい実施形態に関する前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。これは、網羅的であること、又は開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。修正及び変形は、上記の教示に照らして可能であり、又は本発明の実施から獲得され得る。実施形態は、当業者が、企図される特定の用途に適した様々な実施形態で、様々な変更を加えて本発明を利用することができるように、本発明の原理及びその実際の適用を説明するために選択され、説明された。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されることが意図される。
【0029】
特許請求の範囲については、以下に示す。
【国際調査報告】