(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】改良型ガラス輸送システム
(51)【国際特許分類】
C03B 5/167 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
C03B5/167
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547832
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022014510
(87)【国際公開番号】W WO2022173604
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ハラー,ミッチェル ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ハウルス,ジェイソン アーサー
(72)【発明者】
【氏名】マック,マーク エドウィン リー
(57)【要約】
前進するガラス漏出流にシリカ含有構造用部品を組み込むまたはシリカ含有材料を導入して、溶融ガラスをシリカ含有材料中のシリカと相互作用させ、ガラス漏出の流れを減速させるか停止させるのに十分に溶融ガラスの粘度を増加させることによって、損傷を与えるガラス漏出を軽減するか停止させるように作られたガラス輸送システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス輸送システムであって、
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、
前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造、
前記支持構造を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料層、および
前記シリカ含有材料層を取り囲む断熱材料、
を備え、
前記溶融ガラスが前記金属容器と前記支持構造から漏出し、前記シリカ含有材料層に流入したときに、該シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システム。
【請求項2】
前記シリカ含有材料層が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む、請求項1記載のガラス輸送システム。
【請求項3】
前記金属容器が、溶融ガラスを送達する働きをする導管である、請求項1記載のガラス輸送システム。
【請求項4】
前記金属容器が白金から作られている、請求項1記載のガラス輸送システム。
【請求項5】
前記支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、請求項1記載のガラス輸送システム。
【請求項6】
前記耐火材料がジルコニアまたはアルミナを含む、請求項1記載のガラス輸送システム。
【請求項7】
前記ジルコニアが合成ジルコンを含む、請求項6記載のガラス輸送システム。
【請求項8】
ガラス輸送システムであって、
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、
前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料から作られた第1の支持構造、および
前記支持構造を取り囲む断熱材料、
を備え、
前記溶融ガラスが前記金属容器から漏出し、前記第1の支持構造に流入したときに、前記シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システム。
【請求項9】
前記シリカ含有材料が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む、請求項8記載のガラス輸送システム。
【請求項10】
前記金属容器が、溶融ガラスを送達する働きをする導管である、請求項8記載のガラス輸送システム。
【請求項11】
前記金属容器が白金から作られている、請求項8記載のガラス輸送システム。
【請求項12】
前記支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、請求項8記載のガラス輸送システム。
【請求項13】
前記金属容器と前記第1の支持構造との間に耐火材料から作られた第2の支持構造をさらに含み、該第2の支持構造が該金属容器を少なくとも部分的に取り囲む、請求項8記載のガラス輸送システム。
【請求項14】
前記第2の支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、請求項13記載のガラス輸送システム。
【請求項15】
前記耐火材料がジルコニアまたはアルミナを含む、請求項13記載のガラス輸送システム。
【請求項16】
前記ジルコニアが合成ジルコンを含む、請求項15記載のガラス輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年2月9日に出願された米国仮特許出願第63/147471号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、溶融ガラス送達システムに関する。詳しくは、本開示は、溶融ガラス送達システムであって、溶融ガラスが漏出したときにそのシステムの壊滅的な破損を緩和する溶融ガラス送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
現行の高温溶融ガラス輸送システムは、白金製導管を支持する断熱材料層およびキャスタブル材料の絶縁性能を損ない得るガラス漏出を被る。本出願の発明者等は、ガラス漏出を経験したいくつかの溶融システムを観察した。Pt製送達システムにおけるガラス漏出は、大抵、1640℃を超える高温で生じる。経年劣化、溶融汚染、設計上の欠陥、および人為的ミスも、ガラス漏出に寄与し得る。これらのガラス漏出は、ほとんどが清澄槽の周りに集中する、断熱の劣化、システムの完全性の損失、気泡、およびガラス汚染によって、最終的に溶融システムの寿命を減少させてしまう。しかしながら、溶融ガラス輸送システムの他の部品の周りの漏出も、様々な問題を引き起こし得る。溶融ガラス輸送システムにおけるガラス漏出は、そのシステムの寿命を縮めることになり、非常に費用がかかり得る修理を要するかもしれないので、望ましくない。
【0004】
Pt製送達システムのいくつかの構成要素は、耐火材料で囲まれている。これには、Pt製清澄槽の支持材料と断熱レンガが含まれる。現在、漏出を食い止め、Pt製清澄槽を支持する目的で、耐食性バリアとして、送達システムの周りに合成ジルコン製クレードルが設けられている。クレードルが設けられた後、クレードルとPt製清澄槽との間の間隙を満たすキャスタブル材料が設けられる。Pt製システムに漏出が生じたときに、ガラスはキャスタブル材料および合成ジルコン製クレードルと相互作用する。これらのジルコン材料は、溶融ガラスに曝露された場合の耐食性については理想的であるが、クレードルは、熱分解と熱衝撃を受けやすい高密度物質であり、ガラス漏出を常に十分に食い止めることにはならない。破損したPt製システムの破損解析により、Pt製システムにおけるピンホール漏出によるガラスは、亀裂を通じてクレードルの周りを移動し、防御の第2の環である、周囲のキャスタブル材料と反応し得ることが示された。漏出したガラスがキャスタブル材料を通ると、周りの断熱材料に損傷を与え、断熱特性を低下させ得る。このことは、システムに有害である。断熱がなくなると、Pt製導管輸送容器内の溶融ガラスから熱が失われ、ガラスを溶融状態に維持するために益々電気を必要とすることになる。これにより、生産費が上昇し、システムの寿命が減少し、最終的に、熱損失が大きすぎると、溶融ガラスの温度を維持できなくなるので、システムが故障することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、改善された溶融ガラス輸送システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ガラス輸送システムであって、溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器;金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造;支持構造を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料;およびシリカ含有材料を取り囲む断熱材料を備え、溶融ガラスが金属容器と支持構造から漏出し、シリカ含有材料に流入したときに、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システムが開示されている。
【0007】
また、ガラス輸送システムであって、溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器;金属容器を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料から作られた第1の支持構造;およびその支持構造を取り囲む断熱材料を備え、溶融ガラスが金属容器から漏出し、第1の支持構造に流入したときに、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システムが開示されている。
【0008】
また、ガラス輸送システムであって、溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器;金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造;支持構造を取り囲む第1の断熱材料;第1の断熱材料を取り囲む耐火層;耐火層を取り囲む第2の断熱材料;および第1の断熱材料中に延在し、シリカ含有材料を第1の断熱材料中に注入するように作られた1つ以上の注入管を備え、溶融ガラスが金属容器と支持構造から漏出し、第1の断熱材料に流入したときに、シリカ含有材料が第1の断熱材料中に注入されて、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システムが開示されている。
【0009】
また、ガラス輸送システムであって、溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器;金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造;支持構造を取り囲む断熱材料;および支持構造中に延在し、シリカ含有材料を支持構造中に注入するように作られた1つ以上の注入管を備え、溶融ガラスが金属容器から漏出し、支持構造に流入したときに、シリカ含有材料が支持構造中に注入されて、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、ガラス漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システムが開示されている。
【0010】
また、溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、および金属容器を少なくとも部分的に取り囲む支持構造を備えたガラス輸送システムにおけるガラス漏出を軽減する方法において、支持構造をシリカ含有材料で少なくとも部分的に取り囲み、それによって、溶融ガラスが金属容器と支持構造から漏出し、シリカ含有材料に流入したときに、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、ガラス漏出を軽減するか停止させる工程を有してなる方法が開示されている。
【0011】
また、溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、金属容器を少なくとも部分的に取り囲む支持構造、およびその支持構造を取り囲む断熱材料を備えたガラス輸送システムにおけるガラス漏出を軽減する方法において、溶融ガラスの金属容器からの漏出が検出されたきに、シリカ含有材料をガラス輸送システム中に注入し、それによって、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、ガラス漏出を軽減するか停止させる工程を有してなる方法が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
これらの図面は、説明目的のために提供される。それは、ここに開示され、議論された実施の形態が、図示された配置および手段に限定されないことを理解の上でである。図面は、概要であり、一定の縮尺で描かれていない。図面は、寸法や実際の比率を示す意図はない。
【
図1】ある実施の形態によるガラス輸送システムの断面図の一般化された略図
【
図2A】別の実施の形態によるガラス輸送システムの断面図の一般化された略図
【
図2B】別の実施の形態によるガラス輸送システムの断面図の一般化された略図
【
図3】別の実施の形態によるガラス輸送システムの断面図の一般化された略図
【
図4】別の実施の形態によるガラス輸送システムの断面図の一般化された略図
【
図5】1620℃でのEagle XG(登録商標)ガラスの粘度(P)対SiO
2(モル%)のモデル化プロット
【発明を実施するための形態】
【0013】
改善されたガラス成形過程の様々な実施の形態が、図面を参照して記載される。図面において、理解し易くするために、同様の要素に同様の数字表示が与えられている。
【0014】
特に明記のない限り、「上部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と解釈されるべきではないことも理解されよう。それに加え、群が、複数の要素とその組合せの群の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別で、または互いとの組合せでのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含んでも、またはいくつから実質的になっても、またはいくつからなっても差し支えない。
【0015】
同様に、群が、複数の要素とその組合せの群の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別で、または互いとの組合せでのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなっても差し支えない。特に明記のない限り、値の範囲は、挙げられている場合、その範囲の上限と下限の両方を含む。ここに用いられているように、名詞は、特に明記のない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。
【0016】
本開示の有益な結果をまだ得ながら、記載された実施の形態に多くの変更を行えることが、当業者に認識されるであろう。本開示の所望の恩恵のいくつかは、記載された特徴のいくつかを選択することにより、他の特徴を使用せずとも、得られることも明白であろう。したがって、多くの改変および適用が可能であり、ある環境では望ましいことさえあり得、本開示の一部であることが、当業者に認識されるであろう。それゆえ、以下の記載は、本開示の原理の説明に役立つものとして与えられ、それを限定するものではない。
【0017】
溶融ガラス送達システムであって、戦略的位置にシリカを導入して、どのような漏出ガラスの粘度も変化させて、漏出ガラスの流れを軽減するかまたは停止させて、このシステムの壊滅的な破損を防ぐ、溶融ガラス送達システムがここに開示されている。高シリカ材料が、ガラス漏出に陥りやすい戦略的位置で溶融ガラス送達システムに含まれる。次に、どのような漏出したガラス流も、シリカに曝露されて、シリカをガラスに溶かし、ガラスの粘度を増加させることになる。ガラスが漏出しやすい区域は、典型的に、互いに接続する金属容器/管の2つのセクションを含むシステムを通じて溶融ガラスを移動させる金属容器/管に沿った任意の部分、または金属容器/管のセクションが曲がり、角を形成するところである。
【0018】
高シリカ材料のいくつかの例としては、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土鉱物、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せが挙げられる。したがって、ここに開示された様々な実施の形態において、使用されるシリカ含有材料は、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土鉱物、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含み得る。高シリカ材料は、レンガ、キャスタブル、セメント、モルタルなどの形態で、溶融ガラス送達システムに提供することができる。粘度がより高くなると、漏出したガラスの流れが最小になるか、または停止して、外側の断熱材料が保護されることになる。
【0019】
図1を参照すると、実施の形態によるガラス輸送システム100Aが開示されている。ガラス輸送システム100Aは、溶融ガラスGを搬送するための金属容器10、支持構造20、支持構造20を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料層30、およびシリカ含有材料層30を取り囲む断熱材料層40を備える。支持構造20は、金属容器10を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られる。支持構造20に使用される耐火材料は、一般に、耐食性であるように選択される。
【0020】
シリカ含有材料層30は、支持構造20と断熱材料層40との間に存在する唯一の材料である必要はない。本発明は、層形態で、または他の適切な構造で、他の耐火材料がシリカ含有材料層30と共に存在し得る変更例を包含する。このことは、他の概要の
図2A~4に示された実施の形態についても当てはまる。シリカ含有材料をガラス輸送システムに導入できるところはどこでも、そのシリカ含有材料は、存在する唯一の材料である必要はなく、層形態で、または他の適切な構造で、他の耐火材料が存在し得る。
【0021】
いくつかの実施の形態において、支持構造20は、金属容器10を支持するためのクレードルを構成する。そのクレードルは、金属容器10を支持する樋状構造として作ることができる。いくつかの実施の形態において、支持構造20は、金属容器10を完全に取り囲むことができる。
【0022】
実際のガラス輸送システム100Aでは、支持構造20は、シリカ含有材料層30と断熱材料層40に広がり、場合によっては、床または壁に固定されて、金属容器10を支持するいくつかの部分を含み得ることが、当業者に容易に理解されるであろう。そのような部分は、構造的梁、控え壁などの形態にあり得る。このことは、他の概要の
図2A~4に示された実施の形態において示された支持構造についても当てはまる。
【0023】
この構造により、溶融ガラスGが金属容器10と支持構造20から漏出し、シリカ含有材料層30に流入したときに、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスGの粘度を上昇させて、ガラス漏出の流れを遅くし、その漏出を軽減するか、または停止させる。
【0024】
いくつかの実施の形態において、シリカ含有材料層30は、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む材料から製造される。シリカ含有材料層中のシリカの量は、溶融ガラスの粘度を効果的に上昇させるのに十分であるように選択される。ここに開示されたガラス輸送システムの全ての実施の形態100A、100B、100C、100D、100Eにおいて、ここに使用されるシリカ含有材料は、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含み得る。
【0025】
ここに開示されたガラス輸送システムの実施の形態の全てにおいて、金属容器10は、溶融ガラスGを送達する働きをする導管である。いくつかの実施の形態において、金属容器10は、白金および/またはその合金から作られる。
【0026】
いくつかの実施の形態において、耐食性支持構造20の耐火材料は、ジルコニアまたはアルミナ系耐火材料を含むことがある。ジルコニア系耐火材料は、合成ジルコンであり得る。
【0027】
図2Aを参照すると、別の実施の形態によるガラス輸送システム100Bが開示されている。ガラス輸送システム100Bは、溶融ガラスGを搬送するための金属容器10、シリカ含有材料から作られた第1の支持構造20a、および断熱材料層40を備える。第1の支持構造20aは、金属容器10を少なくとも部分的に取り囲む。ガラス輸送システム100Bの構造により、溶融ガラスGが金属容器10から漏出し、第1の支持構造20aに流入したときに、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスと相互作用し、溶融ガラスGの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる。
【0028】
シリカ含有材料が支持構造20aに使用されているので、ガラス輸送システム100Bは、溶融温度が1400℃未満のガラスなど、低温ガラスに適している。いくつかの実施の形態において、金属容器10は、Ptなどの耐火金属から製造される。
【0029】
ガラス輸送システム100Bのいくつかの実施の形態において、第1の支持構造20aは、金属容器10を支持するためのクレードルを構成する。そのクレードルは、金属容器10を支持する樋状構造として作ることができる。いくつかの実施の形態において、第1の支持構造20aは、金属容器10の全外周を取り囲むことができる。
【0030】
図2Bを参照すると、溶融ガラスが、溶融温度が1400℃を超えるガラスなど、高温ガラスである実施の形態において、ガラス輸送システム100Cは、金属容器10と、シリカ含有材料の第1の支持構造20aとの間に設けられた高強度耐火材料から形成された第2の支持構造20bをさらに備える。第2の支持構造20bは、金属容器を少なくとも部分的に取り囲む。いくつかの実施の形態において、第2の支持構造20bの耐火材料は、ジルコニアまたはアルミナ系耐火材料を含む。ジルコニア系耐火材料は、合成ジルコンであり得る。第2の支持構造20bは、金属容器10を支持するクレードルを構成し得る。いくつかの実施の形態において、第2の支持構造20bは、金属容器10の全外周を取り囲むことができる。
【0031】
図3を参照すると、別の実施の形態によるガラス輸送システム100Dが開示されている。ガラス輸送システムDは、溶融ガラスGを搬送するように作られた金属容器10、金属容器10を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造20、支持構造20を取り囲む第1の断熱材料層32、第1の断熱材料層32を取り囲む耐火層35、耐火層35を取り囲む第2の断熱材料層40、およびシリカ含有材料を第1の断熱材料層32中に注入するための、第1の断熱材料層32中に延在する1つ以上の注入管60を備える。注入管60は、アルミナ、およびシリカ系耐火物を含むどの耐火材料から製造されても差し支えない。このシリカ含有材料は、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミック、またはその組合せの1つ以上を含む。注入できるシリカ含有材料は、液体中に懸濁されたコロイドまたは粉末シリカなど、ペースト形態にあり得る。支持構造20は、ジルコニアまたはアルミナ系耐火材料から構成され得る。
【0032】
ガラス輸送システム100Dの構造により、溶融ガラスGが金属容器10と支持構造20から漏出し、第1の断熱材料層32に流入し、漏出が検出されたときに、シリカ含有材料が、1つ以上の注入管60を介して第1の断熱材料層32中に注入されて、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスGと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる。そのようなガラスの漏出を検出できる方法の1つは、ガラス輸送システムを流れる溶融ガラスの温度を維持するための電力の消費量を注意深く監視することによるものである。漏出ガラスが、断熱材料がある領域に流れ込んだときに、断熱材料の絶縁特性が、相当、劇的に低下し、その結果、そのシステムは、加熱素子に電力を供給するために劇的に相当多くの電力を消費しなければならない。それゆえ、消費電力を監視することによって、システム内のガラス漏出を検出することができる。
【0033】
図4を参照すると、別の実施の形態によるガラス輸送システム100Eが開示されている。ガラス輸送システム100Eは、溶融ガラスGを搬送するように作られた金属容器10、金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造20、支持構造20を取り囲む断熱材料層40;およびシリカ含有材料を支持構造20中に注入するために、支持構造20中に延在する1つ以上の注入管62を備える。注入管60と同様に、1つ以上の注入管62は、アルミナ、およびシリカ系耐火材料を含むどの耐火材料から製造されても差し支えない。
【0034】
ガラス輸送システム100Eの構造により、溶融ガラスGが金属容器10から漏出し、支持構造20に流入したときに、シリカ含有材料が支持構造20中に注入されて、シリカ含有材料中のシリカが溶融ガラスGと相互作用し、溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる。このガラス輸送システム100Eでは、注入管60が、支持構造20内でガラス漏出を受けやすい区域中に伸びるように位置付けられている。
【0035】
いくつかの実施の形態において、そのガラス輸送システムは、両方の実施の形態100Dと100Eのシリカ含有材料注入特徴を組み込んだ構造を有し得る。そのようなガラス輸送システムは、シリカ含有材料を、支持構造20および第1の断熱材料層32のいずれかまたは両方に独立して注入できるように位置付けられた注入管を備え得る。ガラス漏出が検出されたときに、シリカ含有材料は、支持構造20、第1の断熱材料層32、または所望であれば両方に注入することができる。
【0036】
ここに開示された本発明のガラス輸送システムの様々な実施の形態において、漏出した溶融ガラスの粘度は、ガラス輸送システム内に提供されたシリカ含有材料との遭遇によりシリカが溶解すること、並びに漏出した溶融ガラスが金属容器10から離れて流れるにつれて溶融ガラスが冷却されることにより、増加する。いくつかの実施の形態において、漏出した溶融ガラスの粘度は、約107.6ポアズである、漏出ガラスの軟化点粘度に到達する。ガラスの軟化点は、直径が1ミリメートル未満のガラス繊維が、垂直に吊り下げられたときに毎分1ミリメートルの速度で自重により伸びる温度である。
【実施例】
【0037】
実験データ
Corningの「Eagle XG」ガラスに対してCorning 7980溶融シリカ粒子を使用したシリカ溶解度を含むいくつかの実験を行った。溶解度試験は、72時間に亘りほぼ清澄槽の温度(1620℃)で行った。EPMA(電子プローブマイクロアナライザ)による分析で、「Eagle XG」ガラス中のシリカ含有量の48.9%の増加(約30質量%のSiO2)が示された。このデータが表1に示されている。
【0038】
【0039】
このデータに基づいて、シリカは、清澄槽の温度で「Eagle XG」ガラス中に容易に溶け込み、ガラス組成および粘度などの性質を著しく変化させた。
図5は、1620℃での「Eagle XG」ガラスの粘度(P)対SiO
2(モル%)のモデル化プロットを示す。データにより、1620℃でシリカの含有量が増加すると、「Eagle XG」ガラスの粘度が増加することが示される。このことは、漏出状況でガラスの流れを減少させる上で大きな意味を持つであろう。
【0040】
当業者には、本開示の精神と範囲から逸脱せずに、ここに記載された例示の実施の形態に対して多くの改変が可能であることが認識されるであろう。それゆえ、その説明は、与えられた実施例に限定されることは意図されておらず、そのように解釈されるべきではなく、付随の特許請求の範囲とその等価物により与えられる保護の全範囲に認められるべきである。それに加え、本開示の特徴のいくつかは、他の特徴を対応して使用せずに、使用することが可能である。したがって、例示のまたは説明に役立つ実施の形態の先の説明は、本開示の原理を説明する目的のために与えられ、その限定の目的ではなく、それに対する改変やその変更を含み得る。
【0041】
本開示の好ましい実施の形態を記載してきたが、記載された実施の形態は、説明のためであること、および本発明の範囲は、本明細書を熟読することにより当業者に当然に想起される多くの変更および改変、等価性の全範囲が与えられる場合、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解すべきである。
【0042】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0043】
実施形態1
ガラス輸送システムであって、
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、
前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造、
前記支持構造を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料層、および
前記シリカ含有材料層を取り囲む断熱材料、
を備え、
前記溶融ガラスが前記金属容器と前記支持構造から漏出し、前記シリカ含有材料層に流入したときに、該シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システム。
【0044】
実施形態2
前記シリカ含有材料層が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む、実施形態1に記載のガラス輸送システム。
【0045】
実施形態3
前記金属容器が、溶融ガラスを送達する働きをする導管である、実施形態1に記載のガラス輸送システム。
【0046】
実施形態4
前記金属容器が白金から作られている、実施形態1に記載のガラス輸送システム。
【0047】
実施形態5
前記支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、実施形態1に記載のガラス輸送システム。
【0048】
実施形態6
前記耐火材料がジルコニアまたはアルミナを含む、実施形態1に記載のガラス輸送システム。
【0049】
実施形態7
前記ジルコニアが合成ジルコンを含む、実施形態6に記載のガラス輸送システム。
【0050】
実施形態8
ガラス輸送システムであって、
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、
前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲むシリカ含有材料から作られた第1の支持構造、および
前記支持構造を取り囲む断熱材料、
を備え、
前記溶融ガラスが前記金属容器から漏出し、前記第1の支持構造に流入したときに、前記シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システム。
【0051】
実施形態9
前記シリカ含有材料が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む、実施形態8に記載のガラス輸送システム。
【0052】
実施形態10
前記金属容器が、溶融ガラスを送達する働きをする導管である、実施形態8に記載のガラス輸送システム。
【0053】
実施形態11
前記金属容器が白金から作られている、実施形態8に記載のガラス輸送システム。
【0054】
実施形態12
前記支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、実施形態8に記載のガラス輸送システム。
【0055】
実施形態13
前記金属容器と前記第1の支持構造との間に耐火材料から作られた第2の支持構造をさらに含み、該第2の支持構造が該金属容器を少なくとも部分的に取り囲む、実施形態8に記載のガラス輸送システム。
【0056】
実施形態14
前記第2の支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、実施形態13に記載のガラス輸送システム。
【0057】
実施形態15
前記耐火材料がジルコニアまたはアルミナを含む、実施形態13に記載のガラス輸送システム。
【0058】
実施形態16
前記ジルコニアが合成ジルコンを含む、実施形態15に記載のガラス輸送システム。
【0059】
実施形態17
ガラス輸送システムであって、
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、
前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造、
前記支持構造を取り囲む第1の断熱材料、
前記第1の断熱材料を取り囲む耐火層、
前記耐火層を取り囲む第2の断熱材料、および
前記第1の断熱材料中に延在し、シリカ含有材料を該第1の断熱材料中に注入するように作られた1つ以上の注入管、
を備え、
前記溶融ガラスが前記金属容器と前記支持構造から漏出し、前記第1の断熱材料に流入したときに、前記シリカ含有材料が該第1の断熱材料中に注入されて、該シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システム。
【0060】
実施形態18
前記シリカ含有材料が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土鉱物、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む、実施形態17に記載のガラス輸送システム。
【0061】
実施形態19
前記金属容器が、溶融ガラスを送達する働きをする導管である、実施形態17に記載のガラス輸送システム。
【0062】
実施形態20
前記金属容器が白金から作られている、実施形態17に記載のガラス輸送システム。
【0063】
実施形態21
前記支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、実施形態17に記載のガラス輸送システム。
【0064】
実施形態22
前記支持構造の前記耐火材料がジルコニアまたはアルミナを含む、実施形態17に記載のガラス輸送システム。
【0065】
実施形態23
前記ジルコニアが合成ジルコンを含む、実施形態22に記載のガラス輸送システム。
【0066】
実施形態24
ガラス輸送システムであって、
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、
前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料から作られた支持構造、
前記支持構造を取り囲む断熱材料、および
前記支持構造中に延在し、シリカ含有材料を該支持構造中に注入するように作られた1つ以上の注入管、
を備え、
前記溶融ガラスが前記金属容器から漏出し、前記支持構造に流入したときに、前記シリカ含有材料が前記支持構造中に注入されて、該シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、ガラス漏出を軽減するか停止させる、ガラス輸送システム。
【0067】
実施形態25
前記金属容器が、溶融ガラスを送達する働きをする導管である、実施形態24に記載のガラス輸送システム。
【0068】
実施形態26
前記金属容器が白金から作られている、実施形態24に記載のガラス輸送システム。
【0069】
実施形態27
前記支持構造が、前記金属容器を支持するように作られたクレードルを構成する、実施形態24に記載のガラス輸送システム。
【0070】
実施形態28
前記耐火材料がジルコニアまたはアルミナを含む、実施形態24に記載のガラス輸送システム。
【0071】
実施形態29
前記ジルコニアが合成ジルコンを含む、実施形態28に記載のガラス輸送システム。
【0072】
実施形態30
前記シリカ含有材料が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土鉱物、非酸化物セラミック、酸化物セラミックなど、またはその組合せの1つ以上を含む、実施形態24に記載のガラス輸送システム。
【0073】
実施形態31
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、および前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲む支持構造を備えたガラス輸送システムにおけるガラス漏出を軽減する方法において、
前記支持構造をシリカ含有材料で少なくとも部分的に取り囲み、それによって、前記溶融ガラスが前記金属容器と前記支持構造から漏出し、該シリカ含有材料に流入したときに、該シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、ガラス漏出を軽減するか停止させる工程、
を有してなる方法。
【0074】
実施形態32
前記シリカ含有材料が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミック、またはその組合せの1つ以上を含む、実施形態31に記載の方法。
【0075】
実施形態33
溶融ガラスを搬送するように作られた金属容器、前記金属容器を少なくとも部分的に取り囲む支持構造、および前記支持構造を取り囲む断熱材料を備えたガラス輸送システムにおけるガラス漏出を軽減する方法において、
前記溶融ガラスの前記金属容器からの漏出が検出されたきに、シリカ含有材料を前記ガラス輸送システム中に注入し、それによって、該シリカ含有材料中のシリカが該溶融ガラスと相互作用し、該溶融ガラスの粘度を上昇させて、ガラス漏出を軽減するか停止させる工程、
を有してなる方法。
【0076】
実施形態34
前記シリカ含有材料が、溶融シリカ、石英、クリストバライト、高シリカ粘土、非酸化物セラミック、酸化物セラミック、またはその組合せの1つ以上を含む、実施形態33に記載の方法。
【0077】
実施形態35
前記シリカ含有材料がペースト形態にある、実施形態33に記載の方法。
【0078】
実施形態36
前記シリカ含有材料が前記支持構造に注入される、実施形態33に記載の方法。
【0079】
実施形態37
前記シリカ含有材料が前記断熱材料に注入される、実施形態33に記載の方法。
【0080】
実施形態38
前記シリカ含有材料が、前記支持構造と前記断熱材料の両方に注入される、実施形態33に記載の方法。
【符号の説明】
【0081】
G 溶融ガラス
10 金属容器
20 支持構造
20a 第1の支持構造
20b 第2の支持構造
30 シリカ含有材料層
32 第1の断熱材料層
35 耐火層
40 断熱材料層
60、62 注入管
100A、100B、100C、100D、100E ガラス輸送システム
【国際調査報告】