(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームから原料を回収する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/10 20060101AFI20240131BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20240131BHJP
C08G 18/63 20060101ALI20240131BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
C08G18/76
C08G18/75
C08G18/73
C08G18/48
C08G18/42
C08G18/44
C08G18/42 044
C08G18/62 016
C08G18/63
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547890
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022052931
(87)【国際公開番号】W WO2022171586
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツマン ディルク
(72)【発明者】
【氏名】シュルフ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー ミカエル
【テーマコード(参考)】
4F401
4J034
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、化学分解を含む、ポリウレタンフォームから原料(すなわち、ポリオール及び任意に付加的にアミン)を回収する方法に関する。化学分解は、ポリウレタンフォームを130℃~195℃の温度、触媒の存在下にてアルコール及び水と反応させ、(全)アルコール及び(全)水とポリウレタンフォームとの質量比(すなわち、m(アルコール+水)/m(ポリウレタンフォーム)、ここで「m」は質量である)が0.5~2.5であり、水の質量がアルコールの質量の4.0%~10%であることを特徴とする。触媒は炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩又は該金属塩の2つ以上の混合物から選択される金属塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームから原料を回収する方法であって、
(A)イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタンフォームを準備する工程と、
(B)前記ポリウレタンフォームを130℃~195℃の範囲の温度、触媒の存在下にてアルコール及び水で化学分解して、
前記イソシアネート成分のイソシアネートに対応するアミンと、
ポリオールと、
アルコールと、
水と、
を含有する第1の生成物混合物を得る工程と、
なお、一方のアルコール及び水と他方のポリウレタンフォームとの質量比は、0.5~2.5の範囲であり、
水の質量は、アルコールの質量の4.0%~10%であり、
前記触媒は炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩又は上述の金属塩の2つ以上の混合物から選択される金属塩を含む;
(C)前記第1の生成物混合物を後処理して、ポリオールを含有するポリオール相と、アミン、水及びアルコールを含有するアミン相とを得る工程と、
(D)前記ポリオール相から前記ポリオールを回収する工程と、
(E)任意に前記アミン相から前記アミンを回収する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記イソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート、又はトリレンジイソシアネートとジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネートとの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イソシアネート成分がトリレンジイソシアネートを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イソシアネート成分が、トリレンジイソシアネートに加えて更なるイソシアネートを含まない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリエーテルカーボネートポリオールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオール成分が、スチレン-アクリロニトリルコポリマー充填ポリエーテルポリオールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール又は上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属塩がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属塩が炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸一水素塩、オルトリン酸塩又は上述の金属塩の2つ以上の混合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属塩が列挙した金属塩の1つのみを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒の質量が、工程(B)で用いられる前記ポリウレタンフォームの質量の0.1%~3.5%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(C)が、
前記第1の生成物混合物をポリオール相とアミン相とに相分離すること、
を含むか、
又は工程(C)が、
前記第1の生成物混合物を工程(B)で用いられるアルコールと完全に混和しない有機溶媒と合わせるとともに、ポリオール相とアミン相とに相分離すること、
を含むか、
又は工程(C)が、
(C.I)工程(B)で得られた前記第1の生成物混合物を、工程(B)で用いられるアルコールと混和する有機溶媒と混合して、第2の生成物混合物を得ることと、
(C.II)工程(C.I)で得られた前記第2の生成物混合物を水性洗浄液で洗浄するとともに、アミン相とポリオール相とに相分離することと、
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(D)が、蒸留及び/又はストリッピングガス(特に窒素又は蒸気、好ましくは窒素等)によるストリッピングを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(E)を行い、工程(E)が、アミン相からアルコール及び水を蒸留除去し、続いて蒸留除去後に残存するアミンを蒸留精製することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学分解を含む、ポリウレタンフォームから原料(すなわち、ポリオール及び任意に更にアミン)を回収する方法に関する。化学分解において、ポリウレタンフォームを130℃~195℃の範囲の温度、触媒の存在下にてアルコール及び水と反応させ、ここで、一方の(用いられる全ての)アルコール及び(用いられる全ての)水と他方のポリウレタンフォームとの質量比(すなわち、m(アルコール+水)/m(ポリウレタンフォーム)、ここで「m」は質量である)は、0.5~2.5の範囲であり、水の質量は、アルコールの質量の4.0%~10%である。触媒は炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩又は上述の金属塩の2つ以上の混合物から選択される金属塩を含む。初めにアルコール及び触媒のみをポリウレタンフォームと混合し、ポリウレタンフォームが溶解してから水を続けて添加することも可能である。化学分解の開始時に水の一部をアルコール及び触媒とともに添加し、ポリウレタンフォームが溶解してから残りの量の水を添加することも可能である。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、産業及び日常生活において様々な用途を有する。通例、ポリウレタンフォームと、「CASE」製品として知られるものとは区別され、「CASE」は、ポリウレタンコーティング(例えば塗料)、接着剤、シーラント及びエラストマーの総称である。ポリウレタンフォームは通例、硬質フォームと軟質フォームとに分けられる。それらの異質性にも関わらず、基本ポリウレタン構造がこれらの製品全てに共通し、これは多官能性イソシアネートとポリオールとの重付加反応によって形成され、例えばジイソシアネートO=C=N-R-N=C=O及びジオールH-O-R’-O-H(ここで、R及びR’は有機基を表す)をベースとするポリウレタンの場合には、
~~~[O-R’-O-(O=C)-HN-R-NH-(C=O)]~~~
として表すことができる。
【0003】
ポリウレタン製品の大きな経済的成功こそが、多量のポリウレタン廃棄物(例えば古いマットレス又は椅子(seating furniture)から)が生じる原因であり、これを合理的に使用する必要がある。技術的に実行が最も簡単な再利用方法は焼却であり、放出される燃焼熱が他のプロセス、例えば工業プロセスに利用される。しかしながら、これでは原料ループを閉じることができない。別の再利用方法は、ポリウレタン廃棄物を機械的に粉砕し、新たな製品の製造に使用する、いわゆる「フィジカルリサイクル」である。このタイプのリサイクルには当然ながら限界があるため、ポリウレタン結合の逆切断(retrocleavage)によってポリウレタン製造の基本原料を回収する試み(いわゆる「ケミカルリサイクル」)がなくなることはない。回収すべきこれらの原料は、主にポリオール(すなわち、上記の例においては、H-O-R’-O-H)を含む。加えて、ウレタン結合の加水分解的切断によってアミンを回収することも可能であり(すなわち、上記の例においては、H2N-R-NH2)、これを後処理後にホスゲン化し、イソシアネートを得る(上述の例においては、O=C=N-R-N=C=Oを得る)ことができる。
【0004】
様々なケミカルリサイクルアプローチがこれまでに開発されている。最も重要な3つは、以下のように簡潔にまとめられる:
1. 水との反応によってアミン及びポリオールが回収され、二酸化炭素が形成される、ウレタンの加水分解。
2. ウレタン基に組み込まれたポリオールが、用いられるアルコールに置き換えられることで遊離する、アルコールとの反応によるウレタンのグリコール分解(Glycolysis)。このプロセスは、文献中で一般にエステル交換(より正確にはウレタン交換(transurethanization))と称される。使用されるアルコールの正確な性質に関わらず、このケミカルリサイクルの方法は、文献中でグリコール分解と呼ばれており、これは実際にはグリコールのみに適用される用語である。したがって、本発明の文脈においては、概してアルコール分解という用語を用いる。グリコール分解に続いて加水分解を行ってもよい。未だ変化していないグリコール分解混合物の存在下で加水分解を行う場合、加水グリコール分解と称される。
3. アルコール及び水との反応によるウレタン結合の加水グリコール分解(Hydroglycolysis)。当然ながら最初からアルコール及び水を添加することも可能であり、その場合、上記のグリコール分解及び加水分解のプロセスが並行して進行する。
【0005】
既知のポリウレタンリサイクル方法の概要は、非特許文献1による総説に与えられる。非特許文献1は、グリコール分解(上記の2.)が特に重要であると強調している。グリコール分解においては、アルコールとの反応で得られる粗生成物が2つの相に分離するか否かに応じて、「二相性」レジームと「一相性」レジームとが区別される。これは特に、使用するアルコールの選択及びプロセス条件(特に、反応混合物中の使用するアルコールの割合及び温度)に依存する。非特許文献1では、粗グリセロール(例えばバイオディーゼル製造からの廃棄物)を用いた二相性レジームが、高品質の製品を低い生産コストで回収する可能性が最も高いとされているため好まれる(ポリオールの回収が明らかに焦点である)。
【0006】
水の付加的な使用の結果として、加水グリコール分解(上記の3.)の生成物は、常に二相性となる。非特許文献2は、水の除去(実験室規模の相分離によるか、又は工業規模の用途に推奨され、「フォード加水グリコール分解プロセス」として知られるプロセスでの蒸発による)と、ヘキサデカンによる残りの有機相の抽出とを含み、アミンが回収され得るアルコール相と、ポリオールが回収され得るヘキサデカン相とが形成される、かかる生成物の後処理を記載している。アミンを回収する選択肢が言及されるが、非特許文献2ではポリオールの回収にも重点が置かれている。
【0007】
これらの原理に基づいて機能するプロセスの特許が、特許文献1に付与されている。ポリウレタンからポリエーテルポリオールを回収するプロセスであって、
(a)このポリウレタンを、非酸化雰囲気にて185℃~220℃の温度で225℃~280℃の沸点を有する飽和アルコールに溶解して、溶液を形成する工程と、
(b)この溶液を175℃~220℃の温度に保持しながら、非酸化雰囲気にてアルカリ金属水酸化物触媒の存在下で所要時間この溶液を水と反応させて、加水分解性溶解生成物の大半をアミン及びアルコールに加水分解する工程と、
なお、このアルカリ金属水酸化物触媒は、このポリウレタンフォームの質量に対して少なくとも0.1質量%の範囲の量で溶液に添加する;
(c)非酸化雰囲気にて、この溶液から加水分解後に残存する水を除去する工程と、
(d)非酸化雰囲気にて、このアルコールと実質的に混和せず、230℃~300℃の沸点を有するアルカン(特にヘキサデカン)を用いて、このポリオールを加水分解溶液から抽出する工程と、
(e)抽出されたポリオールを230℃未満の温度での真空精製に供する工程と、
を含む、プロセスが特許文献1に記載されている。
【0008】
工程(a)においては、ポリウレタンを飽和アルコールのアルコール基と反応させ、ポリオール、尿素及びカルバメートを形成する(第3欄42行~46行を参照されたい)。
【0009】
工程(b)においては、水及びアルカリ金属水酸化物触媒を、工程(a)で得られた溶液に別個に又は触媒水溶液の形態で添加し、カルバメート及び尿素をアミン及びアルコールに分解する。工程(a)及び工程(b)は、アルコール及び水の交互の添加による加水グリコール分解(より正確には加水アルコール分解(hydroalcoholysis))とまとめて記載されることもある。溶液が175℃~200℃の温度で沸騰するような量で水を添加する。アルコールとしてジエチレングリコールを用いる場合、用いられるジエチレングリコールの質量の2.4%~0.6%、好ましくは1.1%の量の水を添加する(第4欄39行~46行を参照されたい)。加水分解で消費された水は、含水量を一定に保つために更なる水の添加によって補充される。加水分解が完了した後、工程(e)の抽出を行う前に用いられた水を工程(c)で除去する必要がある(第5欄、31行~33行)。
【0010】
文献から知られているケミカルリサイクルプロセスのうち、工業規模で持続的に稼働しているものはごく僅かであり、多くはパイロット規模にさえ達していない(非特許文献1)。環境意識の一般的な高まり及び産業プロセスを可能な限り持続可能なものとする努力の高まりを考えると、どちらも基本的にはケミカルリサイクルを支持しているが、ポリウレタン製品のケミカルリサイクルが技術的及び経済的な観点から未だ決して成熟していないことが明らかに示される。特に回収された生成物の純度に関して課題がある。ポリウレタンフォームの製造に再利用する場合、例えば発泡特性に悪影響を与えないためには、可能な限りアミン不純物を含まないポリオールを回収する必要がある。アミンの回収を更に目的とする場合、これらも当然ながら最大純度で得る必要がある。加えて、再利用されるポリウレタン製品は、通常は様々な助剤及び添加剤(安定剤、触媒等)を依然として含有しており、これらを経済的に実行可能かつ環境に優しい方法で実際のリサイクル対象製品から分離し、廃棄する必要がある。さらに、経済的なリサイクルプロセスでは、使用した試薬(例えば、使用したアルコール)を可能な限り完全に回収し、再利用し得る(すなわちクローズドループに従う)ことを確実にする必要がある。使用済みのポリウレタンフォーム(例えばマットレス、椅子、自動車のシート等)から生じる大量のポリウレタン廃棄物のために、ポリウレタンフォームのリサイクルは特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Simon, Borreguero, Lucas and Rodriguez in Waste Management 2018, 76, 147 - 171
【非特許文献2】Braslaw and Gerlock, Ind. Eng. Chem. Process Des. Dev. 1984, 23, 552 - 557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、ポリウレタンフォームのケミカルリサイクルの分野において更なる改善が必要とされている。特に、ポリウレタンフォームからポリオール、好ましくは更にアミンを高純度かつ効率的に、特に工業規模での使用を経済的に価値のあるものとする方法で回収し得ることが望ましい。さらに、経済的及び環境的な観点から許容され得る、ポリウレタン製品中に存在する助剤及び添加剤の利用可能な出口を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この要件を考慮すると、本発明は、ポリウレタンフォームから原料(すなわち、ポリオール及び任意に更にアミン)を回収する方法であって、
(A)(化学分解の準備)イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタンフォームを準備する工程と、
(B)(化学分解の実行)ポリウレタンフォームを130℃~195℃の範囲、好ましくは135℃~190℃の範囲、特に好ましくは140℃~190℃の範囲、最も好ましくは165℃~185℃の範囲の温度、触媒の存在下にてアルコール及び水で化学分解して、
イソシアネート成分のイソシアネートに対応する(少なくとも)1つのアミンと、
ポリオール(すなわち、ポリオール成分を構成するポリオール及び/又はアルコールとの反応中に元のポリオール成分から任意に形成されるポリオール)と、
(超化学量論的に用いられるため、不完全に変換された)アルコールと、
(超化学量論的に用いられるため、不完全に変換された)水と、
を含有する第1の生成物混合物を得る工程と、
なお、一方の(用いられる全ての)アルコール及び(用いられる全ての)水と他方のポリウレタンフォームとの質量比(すなわち、m(アルコール+水)/m(ポリウレタンフォーム)、ここで「m」は質量を意味する)は、0.5~2.5の範囲であり、
水の質量は、アルコールの質量の4.0%~10%であり、
触媒は炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩又は上述の金属塩の2つ以上の混合物から選択される金属塩を含む(好ましくはそれらのみからなる);
(C)(ポリオール及びアミンの分離)第1の生成物混合物を後処理して、ポリオールを含有するポリオール相と、アミン、水及びアルコールを含有するアミン相とを得る工程と、
(D)(ポリオールの単離)ポリオール相からポリオールを回収する工程と、
(E)(アミンの単離)任意に(好ましくは)アミン相からアミンを回収する工程と、を含む、方法を提供する。
【0015】
驚くべきことに、ウレタン基とアルコールとの反応によるウレタン交換と、その後の水との反応によるカルバメート中間体のin situ加水分解との両方が、列挙した触媒の1つの同じものを用いて触媒され得ることが見出された。列挙した触媒は、反応中に形成される二酸化炭素による炭化によって不活性化されないため、ウレタン交換及び加水分解の両方を触媒するという特徴を有する。
【0016】
本発明の文脈におけるポリウレタンフォームは、発泡剤の存在下で多官能性イソシアネート(=ポリウレタン製造におけるイソシアネート成分)とポリオール(=ポリウレタン製造におけるポリオール成分)との反応によって形成される重付加生成物(場合により、完全には正しくないが、重縮合生成物とも称される)である。ポリウレタンフォームは概して、上で概説したポリウレタン基本構造だけでなく、他の構造、例えば尿素結合を有する構造も含む。ポリウレタン構造に加えた、純粋なポリウレタン基本構造から逸脱したかかる構造の存在は、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0017】
本発明の専門用語においては、イソシアネートという用語は、ポリウレタン化学と関連して当業者に既知の全てのイソシアネート、例えば、特にトリレンジイソシアネート(TDI;トリレンジアミン(TDA)から製造される)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI;ジフェニルメタン系のジアミン及びポリアミン(MDA)から製造される)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI;ペンタン-1,5-ジアミン(PDA)から製造される)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI;ヘキサメチレン-1,6-ジアミン(HDA)から製造される)、イソホロンジイソシアネート(IPDI;イソホロンジアミン(IPDA)から製造される)、並びにキシリレンジイソシアネート(XDI;キシリレンジアミン(XDA)から製造される)を包含する。「イソシアネート」という表現は、例えば「厳密に1つのイソシアネート」という表現による別段の明示的な記載がない限り、2種以上の異なるイソシアネート(例えば、MDIとTDIとの混合物)がポリウレタン製品の製造に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。ポリウレタン製品の製造に用いられる全てのイソシアネートが、(ポリウレタンフォームの)イソシアネート成分と総称される。イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネートを含む。同様に、ポリウレタンフォームの製造に使用される全てのポリオールが、(ポリウレタンフォームの)ポリオール成分と総称される。ポリオール成分は、少なくとも1つのポリオールを含む。
【0018】
本発明の専門用語において、ポリオールという用語は、ポリウレタン化学に関連して当業者に既知の全てのポリオール、例えば、特にポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール及びポリエーテルカーボネートポリオールを包含する。「ポリオール」という表現は、2種以上の異なるポリオールがポリウレタン製品の製造に用いられている実施の形態も当然ながら包含する。したがって、例えば「ポリエーテルポリオール」(又は「ポリエステルポリオール」等)に言及する場合、この専門用語は、2種以上の異なるポリエーテルポリオール(又は2種以上の異なるポリエステルポリオール等)がポリウレタンフォームの製造に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。
【0019】
本発明の専門用語におけるカルバメートは、工程(B)においてアルコールとの反応によって形成されるウレタンである。
【0020】
イソシアネートに対応するアミンとは、R-NH2+COCl2→R-N=C=O+2HClに従い、ホスゲン化してイソシアネートを得ることができるアミンである。同様に、アミンに対応するニトロ化合物は、R-NO2+3H2→R-NH2+2H2Oに従い、還元してアミンを生じることができるニトロ化合物である。
【0021】
本発明による方法の文脈において、水及びアルコールは、超化学量論的量で用いられる。これは、ポリウレタン結合の全てを加水分解して、二酸化炭素の遊離によりアミン及びポリオールを得るのに理論的に十分な量の水が用いられることを意味すると理解される。同様に、超化学量論的量のアルコールの使用は、ポリウレタン結合の全てを変換して、アルコール及びポリオールのカルバメートを形成するのに理論的に十分な量の該アルコールが用いられることを意味すると理解される。本発明に従って要求される水及びアルコールの質量分率を用いる場合、通常は上記の両方が当てはまる。
【0022】
「アルコール及び水による触媒の存在下でのポリウレタンフォームの化学分解」という表現は、工程(B)で用いられる水の全てを工程(B)の開始時に即座に添加する必要があることを必ずしも意味する訳ではない。それどころか、工程(B)の開始時に、初めは水を添加しないか、又は水の一部のみを添加し、反応時間中に水/残りの水を続けて添加する実施の形態が本発明に包含される。この場合、アルコールの質量に対して4.0%~10%、好ましくは5.0%~7.0%の規定量が、工程(B)の反応時間の終了前に添加される水の量を指す。原則として、アルコール又はアルコール-水混合物を続けて添加することも考えられる。いずれにせよ、工程(B)と関連する規定量は、それぞれの場合に、この工程の反応時間の終了までに添加される総量に関する。
【0023】
工程(B)における水に関する量的表示は、加水分解的カルバメート切断の試薬として添加される水を指す。用いられるアルコール及び/又は用いられるポリウレタンフォーム中の水分から既に存在する任意の量の水は、比較的少ない。用いられるアルコール/用いられるポリウレタンフォーム中の水分は、工業規模で生じ得るような微量の水分を意味すると理解される。アルコールを加水分解的カルバメート切断に用いられる水と予め混合するか、又はポリウレタンフォームを加水分解的カルバメート切断に用いられる水で濡らすことが当然可能である。かかる実施の形態は、本発明の範囲から逸脱せず、このようにして添加される水は、当然ながら工程(B)の量的表示に考慮され、すなわち、必要に応じて付加的に添加される水の量は、相応して低減される。触媒が水溶液として用いられる場合、溶媒として用いられる水も同様に工程(B)の量的表示に考慮され、すなわち、必要に応じて付加的に添加される水の量は、相応して低減される。
【0024】
本発明は、「触媒が炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩又は上述の金属塩の2つ以上の混合物から選択される金属塩を含む(好ましくはそれらのみからなる)、アルコール及び水による触媒の存在下での(..)ポリウレタンフォームの化学分解」を行うことを含む。このため、本発明によると、工程(B)の開始時に、ポリウレタンフォームをアルコール又はアルコール-水混合物及び列挙した金属塩の少なくとも1つと混合して、反応混合物を得て、これを続いて必要に応じて(混合工程において水が既に全て添加されていないという条件で)水の添加により上述の範囲の温度で反応させる。
【0025】
オルトリン酸塩は、オルトリン酸H3PO4の塩であり、ここでは全ての水素イオンが除去されている(=PO4
3-)。オルトリン酸一水素塩は、オルトリン酸の塩であり、ここでは2つの水素イオンが除去されている(=HPO4
2-)。メタリン酸塩は、実験式[(PO3)-]nを有するオルトリン酸の縮合生成物であり、ここでnは自然数(特に3又は4)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
初めに、本発明の様々な考え得る実施形態の概要を続けて示す。
【0027】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第1の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート(TDI;トリレンジアミン(TDA)から製造される)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI;ジフェニルメタン系のジアミン及びポリアミン(MDA)から製造される)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI;ペンタン-1,5-ジアミン(PDA)から製造される)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI;ヘキサメチレン-1,6-ジアミン(HDA)から製造される)、イソホロンジイソシアネート(IPDI;イソホロンジアミン(IPDA)から製造される)、キシリレンジイソシアネート(XDI;キシリレンジアミン(XDA)から製造される)又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含む。
【0028】
第1の実施形態の特定の構成である本発明の第2の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート又はトリレンジイソシアネートとジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネートとの混合物を含む。
【0029】
第2の実施形態の特定の構成である本発明の第3の実施形態においては、イソシアネート成分はトリレンジイソシアネートを含む。
【0030】
第3の実施形態の特定の構成である本発明の第4の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネートに加えて更なるイソシアネートを含まない。
【0031】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第5の実施形態においては、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリエーテルカーボネートポリオールを含む。ポリオール成分は、好ましくはポリエーテルポリオールである。より好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである(すなわち、ポリエーテルポリオール以外のポリオールを含有しない;しかし、2種以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が包含され、本実施形態の範囲から外れることはない)。
【0032】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第6の実施形態においては、ポリオール成分は、スチレン-アクリロニトリルコポリマー充填ポリエーテルポリオールを含む。
【0033】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第7の実施形態においては、アルコールは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール又は上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択される。
【0034】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第8の実施形態においては、金属塩はアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩である。
【0035】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第9の実施形態においては、金属塩は炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸一水素塩、オルトリン酸塩又は上述の金属塩の2つ以上の混合物を含む。
【0036】
第9の実施形態の特別な構成である本発明の第10の実施形態においては、金属塩は、列挙した金属塩の1つのみを含み、好ましくは更なる金属塩を含まない。
【0037】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第11の実施形態においては、一方の(用いられる全ての)アルコール及び(用いられる全ての)水と他方のポリウレタンフォームとの質量比(m(アルコール+水)/m(ポリウレタンフォーム))は、1.0~1.3の範囲である。
【0038】
他の全ての実施形態、特に第11の実施形態と組み合わせることができる本発明の第12の実施形態においては、水の質量は、アルコールの質量の5.0%~7.0%である。
【0039】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第13の実施形態においては、工程(B)における反応は、1.0時間~10時間、好ましくは1.5時間~7.5時間、特に好ましくは2.0時間~6.0時間、非常に特に好ましくは2.5時間~5.5時間の反応時間にわたって行われる。
【0040】
第13の実施形態の特別な構成である本発明の第14の実施形態においては、工程(B)において、初めにアルコール及び触媒のみをポリウレタンフォームと混合し、水を工程(B)の更なる過程で反応時間にわたって添加するか、又は工程(B)において、初めにアルコール、触媒及び工程(B)で用いられる全ての水の量の2%~4%をポリウレタンフォームと混合し、残りの量の水を工程(B)の更なる過程で反応時間にわたって添加する。水を添加する時間は、両方の代替形態において、特に1.0時間~5.0時間である。したがって、最後の水の添加は、先に規定した反応時間の終了前に行う。
【0041】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第15の実施形態においては、工程(B)を900mbar(abs.)~1800bar(abs.)の範囲の圧力、特に周囲圧力で行う。
【0042】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第16の実施形態においては、触媒は、その質量が工程(B)で用いられるポリウレタンフォームの質量の0.1%~3.5%に相当するような量で添加される。
【0043】
以下に規定する第18及び第19の実施形態を除く他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第17の実施形態においては、工程(C)は、
第1の生成物混合物をポリオール相とアミン相とに相分離すること、
を含む。
【0044】
第17及び下記の第19の実施形態の代替形態であるが、そうでなければ他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第18の実施形態においては、工程(C)は、
第1の生成物混合物を工程(B)で用いられるアルコールと完全に混和しない有機溶媒と合わせるとともに、ポリオール相とアミン相とに相分離すること、
を含む。
【0045】
第17及び第18の実施形態の代替形態であるが、そうでなければ他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第19の実施形態においては、工程(C)は、
(C.I)工程(B)で得られた第1の生成物混合物を、工程(B)で用いられるアルコールと混和する有機溶媒と混合して、第2の生成物混合物を得ることと、
(C.II)工程(C.I)で得られた第2の生成物混合物を水性洗浄液で洗浄するとともに、アミン相とポリオール相とに相分離することと、
を含む。
【0046】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第20の実施形態においては、工程(D)は、蒸留及び/又はストリッピングガス(特に窒素又は蒸気、好ましくは窒素等)によるストリッピングを含む。
【0047】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第21の実施形態においては、工程(E)を行い、工程(E)は、アミン相からアルコール及び水を蒸留除去し、続いて蒸留除去後に残存するアミンを蒸留精製することを含む。
【0048】
本発明の上で簡単に概説した実施形態及び考え得る更なる構成を、以下でより詳細に明らかにする。当業者にとって逆のことが文脈から明らかに見て取れないか、又は明示的に記載されない限り、上記の全ての実施形態及び下記の本発明の更なる構成を所望に応じて互いの間及び互いに組み合わせることができる。
【0049】
ケミカルリサイクル用のポリウレタンフォームの準備
本発明による方法の工程(A)は、化学分解の準備において化学的にリサイクルされるポリウレタンフォームを準備することを含む。
【0050】
ポリウレタンフォームは、原則としてどのような種類であってもよく、特に軟質フォーム及び硬質フォームの両方が好適であり、軟質フォーム(例えば使用済みのマットレス、家具のクッション材、又は自動車のシートからのもの)が好ましい。かかるポリウレタンフォームは通例、発泡剤としてペンタン、クロロフルオロカーボン、ジクロロメタン及び/又は二酸化炭素を用いて製造される。
【0051】
加えて、イソシアネート成分に関して、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、並びに上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートをベースとするポリウレタンフォームが好ましい。イソシアネート成分に関してTDIとMDIとの混合物をベースとするポリウレタンフォームが特に好ましい。イソシアネート成分に関してTDIのみをベースとするポリウレタン製品が非常に特に好ましい。
【0052】
ポリオール成分に関しては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、又は上述のポリオールの2つ以上の混合物から選択されるポリオールをベースとするポリウレタンフォームが好ましい。ポリオール成分は、好ましくはポリエーテルポリオールである。より好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである(すなわち、ポリエーテルポリオール以外のポリオールを含有しない;しかし、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が包含され、本実施形態の範囲から外れることはない)。ポリエーテルポリオールは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SANコポリマー)で充填されたものであってもよい。それをかかるポリオール成分にも使用し得ることが本発明の利点の1つである。ポリオール成分がSANコポリマー充填ポリエーテルポリオールをベースとするポリウレタンフォームの化学分解における問題は、化学分解中の微細なポリマー粒子としてSANコポリマーが放出されることである。これは、選択される化学分解プロセスに関係なく当てはまる。反応混合物中の微細なポリマー粒子として存在するSANポリマーは、例えばその後の抽出プロセスによる分離に問題を引き起こす。さらに、ポリマー粒子の細かさにより、フィルターが急速に詰まり、更なる除去が可能ではなくなるため、濾過は殆ど不可能である。本発明による加水アルコール分解の利点は、ポリエーテルポリオールからの遊離後に、SANポリマーが加水分解により部分的に可溶型となるため、抽出による化学分解後の反応混合物の後処理を問題なく進めることができることである。
【0053】
最も好ましくは、ポリウレタンフォームは、イソシアネート成分がトリレンジイソシアネート(TDI)、並びにジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI)、特にTDIのみを含有し、ポリオール成分がポリエーテルポリオールを含有する(特にポリエーテルポリオールであり、すなわちポリエーテルポリオール以外の更なるポリオールを含有しないが、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が含まれ、本実施形態の範囲から逸脱しない)、フォームである。
【0054】
好ましくは、工程(A)は更に、工程(B.II)におけるウレタン結合の切断のための準備工程を含む。これは特に、ポリウレタンフォームの機械的粉砕である。かかる準備工程は、当業者に既知である。例えば非特許文献1を参照されたい。ポリウレタンフォームの特性によっては、粉砕操作を容易にするために機械的粉砕の前にポリウレタンフォームを「凍結」することが有利であり得る。
【0055】
機械的粉砕の前、最中又は後に、ポリウレタンフォームを水性又はアルコール性消毒剤での処理に供してもよい。かかる消毒剤は、好ましくは過酸化水素、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ナトリウムN-クロロ-(4-メチルベンゼン)スルホンアミド(クロラミンT)及び/又は過酢酸(水性消毒剤)、又はエタノール、イソプロパノール及び/又は1-プロパノール(アルコール性消毒剤)である。
【0056】
上記の準備工程を化学分解の位置から空間的に離れた位置で行うことも考えられる。その場合、準備されたフォームを更なる輸送のために好適な輸送車両、例えばサイロ車両に移す。更なる輸送のために、準備されたフォームを付加的に圧縮し、より高い質量対体積比を達成してもよい。次いで、フォームを化学分解の位置で化学分解のために準備された反応装置に移す。用いられる輸送車両を反応装置に直接接続することも考えられる。
【0057】
第1の生成物混合物を得るためのポリウレタンフォームの化学分解
本発明による方法の工程(B)は、工程(A)で準備されたポリウレタンフォームの化学分解を含む。
【0058】
化学分解は、酸素の非存在下で行うのが好ましい。これは、反応が不活性ガス雰囲気(特に窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気)で行われることを意味すると理解される。不活性ガス飽和により、用いられる化学分解試薬(水及びアルコール)から酸素を除去することも好ましい。
【0059】
本発明によると、工程(B)は、加水アルコール分解として行われる。ここで使用される加水アルコール分解という用語は通常、文献では加水グリコール分解と記載されている(上記の3番参照)。しかしながら、アルコールとしてグリコールを使用する場合にのみ加水グリコール分解という用語が正しいため、本発明の文脈においては、より包括的な用語である加水アルコール分解を使用する。
【0060】
用いられるアルコールは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-1,3-プロパンジオール又は上述のアルコールの2つ以上の混合物であるのが好ましい。ジエチレングリコール及びプロピレングリコールが特に好ましい。水及びアルコールを予め混合してもよいが、その必要はない。
【0061】
触媒として使用される金属塩は、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩であり、ナトリウム塩が特に好ましい。金属塩の陰イオンに関しては、炭酸イオン、炭酸水素イオン、オルトリン酸一水素イオン、オルトリン酸イオン及びこれらの2つ以上の混合物が特に好ましい。炭酸イオン、炭酸水素イオン又はオルトリン酸イオンを用いることが非常に特に好ましい(すなわち、混合物ではなく、上述の化合物の1つのみを使用する)。上述していない更なる触媒を反応に用いないことが特に好ましい。その質量が工程(B)で変換されるポリウレタンフォームの質量の0.1%~3.5%に相当するような量で触媒を添加するのが有利であることが証明されている。
【0062】
本発明によると、130℃~195℃の範囲の反応温度が工程(B)において維持される。反応温度は、好ましくは135℃~190℃、特に好ましくは140℃~190℃、非常に特に好ましくは165℃~185℃である。選択された温度に関わらず、反応を周囲圧力で行うのが好ましい。しかしながら、より低圧(特に最大900mbar(abs.))又はより高圧(特に最大1800mbar(abs.))が同様に可能である。工程(B)における反応は、概して1.0時間~10時間、好ましくは1.5時間~7.5時間、特に好ましくは2.0時間~6.0時間、非常に特に好ましくは2.5時間~5.5時間の期間内に完了し、すなわち、この期間内の反応時間の後、更なる反応は、あるとしてもごく僅かしか起こらない。
【0063】
上述のように、工程(B)の加水アルコール分解に用いられる水又は少なくともその全体を、反応の開始時に即座に添加しないことが有利である。(B)で用いられる全ての水の量の、あるとしてもごく一部、すなわち2%~4%を残りの反応物(アルコール、触媒及びポリウレタンフォーム)と初めに混合し、工程(B)の更なる過程で反応時間にわたって残り又は全ての量の水を添加するのが有利であることが証明されている。中間体として形成されたカルバメートの加水分解的切断のための水の添加は、反応混合物の沸点が常に規定の範囲、特に165℃~185℃の特に好ましい範囲に維持されるような間隔で連続的に又は少量ずつ行われる。水の添加時間は、(用いられるアルコールの沸点に応じて)1.0時間~5.0時間の範囲であるのが好ましい。
【0064】
好ましい実施形態においては、1.1~1.3の範囲の一方の(用いられる全ての)アルコール及び(用いられる全ての)水と他方のポリウレタンフォームとの質量比(m(アルコール+水)/m(ポリウレタンフォーム))が用いられる。水を一度にではなく、上記のように徐々に添加する場合、これは、工程(B)で用いられる全ての水の量に当てはまる。
【0065】
工程(B)で用いられる水の量は、工程(B)で用いられるアルコールの質量の5.0%~7.0%であるのが好ましい。これは、質量比(m(アルコール+水)/m(ポリウレタンフォーム))の1.0~1.3の上述の範囲に関して特に当てはまる。水を一度にではなく、上記のように徐々に添加する場合、これは、工程(B)で用いられる全ての水の量に当てはまる。
【0066】
工程(B.II)は、当該技術分野においてかかる目的のために知られている任意の反応器内で行うことができる。特に好適な化学分解反応器は、撹拌タンク(撹拌反応器)及び管状反応器である。
【0067】
第1の生成物混合物の後処理
工程(B)は、
イソシアネート成分のイソシアネートに対応する(少なくとも)1つのアミンと、
ポリオール(すなわち、ポリオール成分を構成するポリオール及び/又はアルコールとの反応中に元のポリオール成分から任意に形成されるポリオール)と、
(超化学量論的に用いられるため、不完全に変換された)アルコールと、
(超化学量論的に用いられるため、不完全に変換された)水と、
を含有する第1の生成物混合物をもたらす。
【0068】
工程(C)においては、この第1の生成物混合物を後処理して、ポリオールを含有するポリオール相と、アミン、水及びアルコールを含有するアミン相とを得る(ポリオール及びアミンの分離)。当業者にとっては、この分離が、ポリオールの全てがポリオール相に移行し、アミンの全て(並びに水の全て及びアルコールの全て)がアミン相に移行するという意味で完全に進行する必要がないことは言うまでもない。例えば、一般的な溶解度平衡の結果として、少量のアミンがポリオール相に移行する(又は少量のポリオールがアミン相に移行する)場合、これは当然ながら本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0069】
加水アルコール分解としての工程(B)における反応様式のために、第1の生成物混合物は、通常は二相性である。2つの相は、アルコール-水相及び有機相である。用いられるポリウレタンフォーム及び工程(B)で用いられるアルコールの正確な性質に応じて、第1の生成物混合物中に存在する有機相がポリオールを含有し、第1の生成物混合物中に存在するアルコール-水相がアミンを含有することは、それぞれの場合に、工程(C)におけるアミンとポリオールとの分離が、第1の混合物を有機相とアルコール-水相とに単純に分離することにより実現され得るような割合で可能である。この場合、第1の生成物混合物中に存在する有機相は、工程(C)で求められるポリオール相であり、工程(D)に直接供給してもよい。同様に、第1の生成物混合物中に存在するアルコール-水相は、この場合、工程(C)で求められるアミン相であり、アミンの回収が求められる限りにおいて、工程(E)に直接供給してもよい。この実施形態は、例えばTDIフォームの場合、TDAが水に容易に溶解し、同様に水溶性のジエチレングリコールとともにアルコール-水相を形成する一方で、回収されたポリオールが有機相を形成することから、アルコールとしてジエチレングリコールを用いて加水アルコール分解を行う場合に考えられる。この実施形態が用いられ得るかは、当業者による検討又は単純な予備実験によって容易に決定することができる。
【0070】
しかしながら、工程(B)で得られた第1の生成物混合物の単純な相分離では、十分なポリオール/アミン比を有するポリオール相及びアミン相が得られない可能性もある。このような場合には、第1の生成物混合物全体を有機溶媒で抽出するのが好ましい。これには多数の選択肢がある。
【0071】
好ましい実施形態においては、工程(C)は、工程(B)で得られた第1の生成物混合物を、工程(B)で用いられるアルコールと完全に混和しない有機溶媒と合わせるとともに、アルコールだけでなく、アミン及び水も含有し、この実施形態においてはアミン相に相当するアルコール相と、抽出に使用される溶媒だけでなく、ポリオールも含有し、この実施形態においてはポリオール相に相当する溶媒相とに相分離することを含む。工程(C)に使用される有機溶媒が、工程(B)で用いられるアルコールと完全に混和しないという要件は、工程(C)に用いられる温度及び有機溶媒と工程(B)からのアルコールとの比率の条件下で、相分離が可能になるような混和性のギャップが存在しなければならないことを意味する。これは例えば、有機溶媒が脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素(例えばシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン)及び上述の有機溶媒の2つ以上の混合物から選択され、アルコールがメタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-1,3-プロパンジオール及び上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択される場合に当てはまる。
【0072】
更なる好ましい実施形態においては、工程(C)は、
(C.I)工程(B)で得られた第1の生成物混合物を、工程(B)で用いられるアルコールと混和する有機溶媒と混合して、第2の生成物混合物を得ることと、
(C.II)工程(C.I)で得られた第2の生成物混合物を水性洗浄液で洗浄するとともに、水だけでなく、アルコール及びアミンも含有し、この実施形態においてはアミン相に相当する水相と、抽出に用いられる溶媒だけでなく、ポリオールも含有し、この実施形態においてはポリオール相に相当する溶媒相とに相分離することと、
を含む。
【0073】
工程(C.I)で用いられる有機溶媒が、工程(B)で用いられるアルコールと混和するという要件は、工程(C.I)に用いられる温度及び有機溶媒と工程(B)からのアルコールとの比率の条件下で、有機溶媒と工程(B)からのアルコールとの混合物が自然に2相に分離しないことを意味する。これは例えば、工程(C.I)の有機溶媒がハロゲン置換脂肪族炭化水素、ハロゲン置換脂環式炭化水素、ハロゲン置換芳香族炭化水素及び上述の有機溶媒の2つ以上の混合物から選択され、工程(B)のアルコールがメタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-1,3-プロパンジオール及び上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択される場合に当てはまる。
【0074】
ポリオール相の後処理
工程(D)においては、工程(C)で得られる有機ポリオール相を後処理して、ポリオールを回収する(ポリオールの単離)。これは、蒸留及び/又はストリッピングガス(特に窒素又は蒸気、好ましくは窒素等)によるストリッピングによって行うのが好ましい。これは、好ましくは流下膜式蒸発器、薄膜蒸発器、フラッシュ蒸発器、上昇膜蒸発器、自然循環蒸発器、強制循環蒸発器又はタンク蒸発器から選択される蒸発器内で蒸留を行うことを含む。蒸留に続いて蒸気によるストリッピング操作を行うことが特に好ましい。
【0075】
蒸気によるストリッピングは、それ自体が既知のストリッピングカラムに蒸気を通すことによって行うことができる。しかしながら、蒸気によるストリッピングは、水を液体形態でポリオール相(任意に蒸留で予備精製された)に添加し、混合物を続いて過熱し(圧力弁を用いて水を液体に保つのに十分な逆圧を維持しながら)、圧力弁の下流で減圧するように行うこともでき、その結果、ポリオール中に存在する水が蒸発し、ストリッピング効果が生じる。
【0076】
アミン相の後処理
工程(E)において、工程(C)で得られた水性アミン相を後処理し、アミンを回収することが好ましい(アミンの単離)。
【0077】
アミンの回収は、初めにアルコール及び水をアミン相から蒸留除去することを含むのが好ましい。これは、既知の蒸留技術によって達成することができる。残りの粗アミンを、好ましくは蒸留によって更に後処理する。粗アミンと、同じアミンの新たな製造から得られるアミンの粗生成物画分とを混合することにより、アミンの回収を新たに生成するアミンの後処理に組み込むことが特に好ましい。この実施形態は、ポリウレタン製品から生じる経済的で環境に優しい不純物の出口をもたらす。これは国際公開第2020/260387号により詳細に記載されている。
【実施例】
【0078】
反応変換率は、加水グリコール分解後の反応混合物のアミン価を決定することによって検証した。酸価は、1gの物質中に存在する遊離有機アミンを中和するのに何mgの水酸化カリウムが必要とされるかを示す。第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基が捕捉される。アミノ基は弱塩基である。用いられる溶媒は、濃酢酸(氷酢酸、99%~100%)である。アミンは、溶媒によってプロトン化されることで、対応する酸に変換され、氷酢酸の脱プロトン化された酸とのイオン対として存在する。混合物を続いて0.1モルの過塩素酸を滴定液として滴定し、過塩素酸が溶媒(氷酢酸)の陰イオンに置き換わる。プロセス中に消費される過塩素酸は、水酸化カリウムの消費量に等しい。アミン価は通例、分析サンプル1g当たりのKOHのミリグラム数で報告され、
AZ/(mg・g-1)=(V/ml・[bi/(mol・l-1)]・[M(KOH)/(g・mol-1)]・f)/(m/g)
(式中、
AZは、アミン価を表し、
Vは、消費された過塩素酸溶液の体積を表し、
mは、滴定サンプルの質量を表し、
M(KOH)は、KOHのモル質量(56.11g×mol-1)を表し、
biは、過塩素酸溶液のモル濃度であり、
fは、過塩素酸溶液の無次元係数(力価)を表す)に従って算出される。
【0079】
実施例1:
撹拌機、温度計及び冷却器を取り付けた1000mLの4つ口フラスコに、300gのジエチレングリコール及び5.5gの炭酸ナトリウムを初めに投入し、窒素下で180℃に加熱する。表1に報告する組成を有する300gの軟質PUフォームを添加し、撹拌しながら溶解する。溶解後に混合物を180℃で2時間撹拌した後、反応温度が170℃を下回らないように1時間かけて16.5gの水を添加する。水の添加の完了後に、混合物を180℃で更に2時間撹拌し、上記のようにアミン価によって反応変換率を決定する。全てのアミンを完全に回収した場合に理論的に予想される反応混合物のアミン価は、86.0mg KOH/gである。
反応混合物のアミン価(測定値):93.0mg KOH/g
【0080】
反応混合物の1H-NMRスペクトルにおいては、TDIベースの炭酸塩はもはや検出されず、TDAのみが検出された。
【0081】
【0082】
実施例3~実施例7:
実施例1とは別の触媒を用い、それ以外は同じ手順を用いて更なる実験を行った。結果を表2にまとめる。
【0083】
【0084】
比較例5においては、固体沈殿物が反応容器に形成され、変換は不完全であった。比較例7においては、アミン価が過度に低かった。
【0085】
実施例8:r-ポリエーテルポリオールからの軟質フォームの製造
ポリオールを、実施例1で生成した反応混合物(「r-ポリエーテルポリオール」)から以下のように回収した:
【0086】
反応混合物を3重量部のシクロヘキサンと混合し、激しく均質化した。分液漏斗で混合物を有機シクロヘキサン-ポリエーテル相及びジエチレングリコール-アミン相の2相に分離した。有機相を分離し、溶媒を蒸留によって除去することで、r-ポリオールを回収した。得られたr-ポリエーテルポリオールを用いて軟質フォームを生成し、これらを元のポリエーテルポリオールArcol 1108のみをベースとする軟質フォームと比較した。用いた配合を表3に報告し、表4で結果を比較する。
【0087】
【0088】
【0089】
凡例:
クリーム時間(Cream time):混合物が木型内にある時点で決定する。これは、混合(ポリオール成分とイソシアネート成分)の開始から目に見える発泡の開始までの経過時間である。
立ち上がり時間:混合物が木型内にある時点で決定する。これは、混合(ポリオール成分とイソシアネート成分)の開始からフォームの最終高さに達するまでの経過時間である。
ブローオフ:フォームの最終高さに達した後のガス発生及び連続気泡特徴の形成を指す。
RT(室温)での収縮:1=フォームの側面が僅かに収縮している。
通気性:通気性の測定に用いた装置は、0~350のミリメートル目盛りを有し、内径が36mmのガラス円筒と、内径7mmの内管とからなる。この内管は、先端がT字形であり、片側に給気口が取り付けられ、もう片側に測定ヘッドを有するホースが取り付けられている。測定ヘッド用のホースは、内径が12mm、長さが1.80mである。ガラス円筒は、底が閉じており、背面に取り付けられた漏斗から水を充填することができる。試験装置は、2つの蛇口と、減圧器と、任意の長さ及び任意の直径のホースを介して圧縮空気源に接続され、減圧器を約3.0bar(abs.)に設定する。
【0090】
明らかなように、回収されたr-ポリオールは、ケミカルリサイクルプロセス後にポリエーテルポリオールとして軟質フォーム配合物に最大100%の量で再使用することができる。r-ポリオールを用いた場合の実施例の視覚特性、並びにクリーム時間及び立ち上がり時間は、参照例と比べて同等の挙動を示す。r-ポリオールの弾力性及び圧縮強度等の機械的特性は、参照ポリエーテルポリオールと同等である。r-ポリオールを用いた実施例8及び実施例10の通気性のより低い値は、参照例6及び参照例9と比較して高い連続気泡含量を示す。
【国際調査報告】