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特表2024-505746黒鉛負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】黒鉛負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20240131BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548315
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2022126770
(87)【国際公開番号】W WO2023124447
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111620334.5
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉▲セン▼
(72)【発明者】
【氏名】樊小華
(72)【発明者】
【氏名】周海輝
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】賀雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB08
5H050EA10
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本開示は、黒鉛負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池に関する。黒鉛負極材料は、球状黒鉛と、元素Mを含有する変性基を含む炭素被覆層とを含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。黒鉛負極材料の調製方法は、球状黒鉛と、被覆剤と、元素Mを含有する化合物を含む変性添加剤と、を含む混合物に対して熱重合処理を行い、前駆体を得るステップと、保護雰囲気下で前駆体を炭化処理し、黒鉛負極材料を得るステップとを含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。本開示による黒鉛負極材料は、天然黒鉛の膨張を改善し、サイクル性能を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛と、
前記黒鉛の少なくとも一部の表面に存在する炭素被覆層とを含み、
前記炭素被覆層が元素Mを含有する変性基を含み、Mが、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種であり、前記変性基の影響因子τの範囲が0.5≦τ≦10を満たす
ことを特徴とする黒鉛負極材料。
【請求項2】
a.前記黒鉛は、球状黒鉛を含むこと、
b.前記黒鉛は、球状黒鉛を含み、前記球状黒鉛は、天然黒鉛であること、
c.前記黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmであること、
d.前記黒鉛と前記炭素被覆層の質量比は、(1~99):1であること、
e.前記黒鉛負極材料は、タップ密度が0.6g/cm~1.5g/cmであること、
f.前記黒鉛負極材料は、比表面積が0.1m/g~10m/gであること、
g.前記黒鉛負極材料は、メジアン径が5μm~30μmであること、
h.前記炭素被覆層は、厚さが0.01μm~5μmであること、
i.前記黒鉛負極材料は、炭素の質量含有量が95%~100%であること、
の条件a~iの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛負極材料。
【請求項3】
a.前記変性基の影響因子τ=1.3σ+4.7σ+3.5σであり、σ、σ、σ≧0であり、σは前記黒鉛負極材料のBを含有する変性基の影響因子、σは前記黒鉛負極材料のPを含有する変性基の影響因子、σは前記黒鉛負極材料のNを含有する変性基の影響因子であること、
b.σ、σ、σの3つが同時に0となることはないこと、
c.前記黒鉛負極材料のラマンスペクトルにおいて、1350cm-1にあるピーク面積Iと1580cm-1にあるピーク面積Iの比であるI/Iの値をnとして、0<n≦5となること、
d.前記変性基は、-C-M-基、-M-O-基のうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記Bを含有する変性基は、-C-B-基、-C-B-基及び-BCO-基のうちの少なくとも1種を含むこと、
f.前記Pを含有する変性基は、-P-O-基、-P-C-基のうちの少なくとも1種を含むこと、
g.前記Nを含有する変性基は、ピリジン窒素基、ピロール窒素基及び-C-N-基のうちの少なくとも1種を含むこと、
の条件a~gの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛負極材料。
【請求項4】
a.前記炭素被覆層は、無定形炭素被覆層であること、
b.前記炭素被覆層は、無定形炭素であり、前記無定形炭素は、歴青、石油コークス、無煙炭、ピッチコークス、石炭系コークス、樹脂、油脂、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種に由来すること、
c.前記炭素被覆層は、無定形炭素であり、前記無定形炭素は、歴青に由来し、前記歴青は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチから選ばれる少なくとも1種であること、
の条件a~cの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛負極材料。
【請求項5】
黒鉛と、被覆剤と、元素Mを含有する化合物を含む変性添加剤と、を含む混合物に対して熱重合処理を行い、前駆体を得るステップと、
保護雰囲気下で前記前駆体に対して炭化処理を行い、黒鉛負極材料を得るステップとを含み、
前記被覆剤と前記変性添加剤の質量比が(1~99):1であり、前記Mが、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする黒鉛負極材料の調製方法。
【請求項6】
a.前記被覆剤は、歴青、石油コークス、無煙炭、ピッチコークス、石炭系コークス、樹脂、油脂、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記元素Mを含有する化合物は、元素Mを含有する有機物、元素Mを含有する酸、元素Mを含有する塩のうちの少なくとも1種を含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種であること、
c.元素Mを含有する有機物は、アミン系有機物、N-ビニルアミド重合体類有機物、ボラン系有機物、アルキルボラン系有機物、エステル系有機物、ホスフィン系有機物、カルボラン系有機物のうちの少なくとも1種を含むこと、
d.前記元素Mを含有する無機酸は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、硝酸、亜硝酸、次亜硝酸、ホウ酸、ボロン酸、次ホウ酸から選ばれる少なくとも1種であること、
e.元素Mを含有する塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩のうちの少なくとも1種を含むこと、
の条件a~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
a.前記黒鉛は、球状黒鉛を含むこと、
b.前記黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmであること、
c.前記黒鉛は、炭素の質量含有量が95%以上であること、
d.前記被覆剤は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチのうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記被覆剤は、軟化点が80℃~400℃であること、
f.前記被覆剤は、残炭率が10%~80%であること、
g.前記黒鉛と前記被覆剤の質量比は、(1~99):1であること、
h.前記元素Mを含有する化合物は、元素Mを含有する有機物、元素Mを含有する酸、元素Mを含有するアンモニウム塩のうちの少なくとも1種を含むこと、
i.前記元素Mを含有する有機物は、メラミン、ポリビニルピロリドン、尿素、N-メチルピロリドン、ボラン、アルキルボラン、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ペンタフェニルホスフィン、メチレントリアルキルホスフィン、カルボランのうちの少なくとも1種を含むこと、
j.前記元素Mを含有する酸は、リン酸、硝酸、ホウ酸から選ばれる少なくとも1種であること、
k.前記元素Mを含有するアンモニウム塩は、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であること、
l.前記変性添加剤は、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、リン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含むこと、
の条件a~lの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項8】
a.前記熱重合処理の反応温度は150℃~700℃であること、
b.前記熱重合処理の反応時間は1h~5hであること、
c.前記熱重合処理の昇温速度は1℃/min~5℃/minであること、
の条件a~cの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項9】
a.前記炭化処理の反応温度は600℃~1500℃であること、
b.前記炭化処理の反応時間は1h~10hであること、
c.前記炭化処理の昇温速度は1℃/min~5℃/minであること、
d.前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記保護雰囲気の気体流速は2ml/s~100ml/sであること、
の条件a~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項10】
a.前記調製方法は、天然の鱗片状の黒鉛に対して整形処理を行い、球状黒鉛を得るステップをさらに含むこと、
b.前記整形処理は、粉砕、球形化、分級のうちの少なくとも1種を含むこと、
c.前記球状黒鉛は、タップ密度が0.6g/cm~1.5g/cmであること、
の条件a~cの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか1項に記載の黒鉛負極材料の調製方法により調製される黒鉛負極材料。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の黒鉛負極材料又は請求項5~10のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料の調製方法で製造された黒鉛負極材料を含む負極。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の黒鉛負極材料又は請求項5~10のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料の調製方法で製造された黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、黒鉛負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池に関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本開示は、2021年12月28日に中国専利局に提出された出願番号がCN202111620334.5であり、名称が「黒鉛負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容は、参照として本開示に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
天然黒鉛は、リチウムイオン電池の主要な黒鉛負極材料の1つであり、容量が高く、タップ密度が高く、環境にやさしく、価格が低いなどの利点を有し、3C(デジモノ)製品、電動工具などの分野で広く使用されている。近年、リチウムイオン電池の使用が徐々に動力装置に拡大し、リチウムイオン電池のサイクル性能及び耐環境性能に対する要求が高くなっているが、従来の天然黒鉛は、鱗片状の黒鉛を機械的粉砕して得られるものであるため、その粒子の内部に多くの細孔構造が存在している。これらの細孔構造により、材料と電解液との接触面積が同じ粒度の人造黒鉛よりも遥かに大きくなるため、副反応が大幅に増加し、電池の性能劣化も大幅に加速され、動力装置分野の要求を満たすことが難しくなる。そのため、如何に天然黒鉛の内部の細孔構造を減らし、サイクル寿命を延長させることが、天然黒鉛の改良の重要な一環となっている。
【0004】
現在、業界では、主に少なくとも一部の表面を被覆する方法により球形天然黒鉛の変性を行う。コアが天然黒鉛、シェルがソフトカーボンとなるコアシェル構造を構築し、電解液と天然黒鉛との直接接触を減らすことで、天然黒鉛と電解液の副反応を減らし、天然黒鉛負極の初回クーロン効率と膨張性能を改善する。しかしながら、これらの従来の方法は、導入されたシェルと電解液の副反応による材料全体の初回クーロン効率が依然として低いという問題を解決していない。また、従来のコアシェル構造では、サイクル過程中において、電解液が浸潤により材料粒子の内部に浸透してコアの天然黒鉛と反応し続け、またアニオンと溶媒分子との共挿入による激しい体積膨張を伴い、それにより、サイクルが悪化し、寿命が縮むという問題を防ぐことができない。
【0005】
したがって、サイクル性能が優れて、体積膨張が低い黒鉛負極材料及びその調製方法を開発することは、依然として所属分野の技術的問題である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、黒鉛負極材料を提供する。前記黒鉛負極材料は、黒鉛と、前記黒鉛の少なくとも一部の表面に存在する炭素被覆層とを含み、前記炭素被覆層が元素Mを含有する変性基を含み、Mが、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種であり、前記変性基の影響因子τの範囲が0.5≦τ≦10を満たす。
【0007】
任意で、前記黒鉛は、球状黒鉛を含む。
【0008】
任意で、前記球状黒鉛は、天然黒鉛である。
【0009】
任意で、前記黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmである。
【0010】
任意で、前記黒鉛と前記炭素被覆層の質量比は、(1~99):1である。
【0011】
任意で、前記黒鉛負極材料は、タップ密度が0.6g/cm~1.5g/cmである。
【0012】
任意で、前記黒鉛負極材料は、比表面積が0.1m/g~10m/gである。
【0013】
任意で、前記黒鉛負極材料は、メジアン径が5μm~30μmである。
【0014】
任意で、前記炭素被覆層は、厚さが0.01μm~5μmである。
【0015】
任意で、前記黒鉛負極材料は、炭素の質量含有量が95%~100%である。
【0016】
任意で、前記変性基の影響因子τ=1.3σ+4.7σ+3.5σであり、σ、σ、σ≧0であり、σは前記黒鉛負極材料のBを含有する変性基の影響因子、σは前記黒鉛負極材料のPを含有する変性基の影響因子、σは前記黒鉛負極材料のNを含有する変性基の影響因子である。
【0017】
任意で、σ、σ、σの3つが同時に0となることはない。
【0018】
任意で、前記黒鉛負極材料のラマンスペクトルにおいて、1350cm-1にあるピーク面積Iと1580cm-1にあるピーク面積Iの比であるI/Iの値をnとして、0<n≦5となる。
【0019】
任意で、前記変性基は、-C-M-基、-M-O-基のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
任意で、前記Bを含有する変性基は、-C-B-基、-C-B-基及び-BCO-基のうちの少なくとも1種を含む。
【0021】
任意で、前記Pを含有する変性基は、-P-O-基、-P-C-基のうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
任意で、前記Nを含有する変性基は、ピリジン窒素基、ピロール窒素基及び-C-N-基のうちの少なくとも1種を含む。
【0023】
任意で、前記炭素被覆層は、無定形炭素被覆層である。
【0024】
任意で、前記炭素被覆層は、無定形炭素であり、前記無定形炭素は、歴青、石油コークス、無煙炭、ピッチコークス、石炭系コークス、樹脂、油脂、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種に由来する。
【0025】
任意で、前記炭素被覆層は、無定形炭素であり、前記無定形炭素は、歴青に由来し、前記歴青は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチから選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
本開示は、黒鉛負極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、黒鉛と、被覆剤と、元素Mを含有する化合物を含む変性添加剤と、を含む混合物に対して熱重合処理を行い、前駆体を得るステップと、保護雰囲気下で前記前駆体に対して炭化処理を行い、黒鉛負極材料を得るステップと、を含み、前記被覆剤と前記変性添加剤の質量比は(1~99):1であり、前記Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。
【0027】
任意で、前記被覆剤は、歴青、石油コークス、無煙炭、ピッチコークス、石炭系コークス、樹脂、油脂、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種を含む。
【0028】
任意で、前記元素Mを含有する化合物は、元素Mを含有する有機物、元素Mを含有する酸、元素Mを含有する塩のうちの少なくとも1種を含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
任意で、前記元素Mを含有する有機物は、アミン系有機物、N-ビニルアミド重合体類有機物、ボラン系有機物、アルキルボラン系有機物、エステル系有機物、ホスフィン系有機物、カルボラン系有機物のうちの少なくとも1種を含む。
【0030】
任意で、前記元素Mを含有する無機酸は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、硝酸、亜硝酸、次亜硝酸、ホウ酸、ボロン酸、次ホウ酸から選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
任意で、前記元素Mを含有する塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0032】
任意で、前記黒鉛は、球状黒鉛を含む。
【0033】
任意で、前記黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmである。
【0034】
任意で、前記球状黒鉛は、炭素の質量含有量が95%以上である。
【0035】
任意で、前記被覆剤は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチのうちの少なくとも1種を含む。
【0036】
任意で、前記被覆剤は、軟化点が80℃~400℃である。
【0037】
任意で、前記被覆剤は、残炭率が10%~80%である。
【0038】
任意で、前記黒鉛と前記被覆剤の質量比は、(1~99):1である。
【0039】
任意で、前記元素Mを含有する化合物は、元素Mを含有する有機物、元素Mを含有する酸、元素Mを含有するアンモニウム塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0040】
任意で、前記元素Mを含有する有機物は、メラミン、ポリビニルピロリドン、尿素、N-メチルピロリドン、ボラン、アルキルボラン、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ペンタフェニルホスフィン、メチレントリアルキルホスフィン、カルボランのうちの少なくとも1種を含む。
【0041】
任意で、前記元素Mを含有する酸は、リン酸、硝酸、ホウ酸から選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
任意で、前記元素Mを含有するアンモニウム塩は、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種である。
【0043】
任意で、前記変性添加剤は、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、リン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0044】
任意で、前記熱重合処理の反応温度は150℃~700℃である。
【0045】
任意で、前記熱重合処理の反応時間は1h~5hである。
【0046】
任意で、前記熱重合処理の昇温速度は1℃/min~5℃/minである。
【0047】
任意で、前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0048】
任意で、前記保護雰囲気の気体流速は2ml/s~100ml/sである。
【0049】
任意で、前記炭化処理の反応温度は600℃~1500℃である。
【0050】
任意で、前記炭化処理の反応時間は1h~10hである。
【0051】
任意で、前記炭化処理の昇温速度は1℃/min~5℃/minである。
【0052】
任意で、前記方法は、天然の鱗片状の黒鉛に対して整形処理を行い、球状黒鉛を得るステップをさらに含む。
【0053】
任意で、前記整形処理は、粉砕、球形化、分級のうちの少なくとも1種を含む。
【0054】
任意で、前記球状黒鉛は、タップ密度が0.6g/cm~1.5g/cmである。
【0055】
本開示は、上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料の調製方法によって調製される黒鉛負極材料を提供する。
【0056】
本開示は、上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料又は上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料の調製方法で製造された黒鉛負極材料を含む負極を提供する。
【0057】
本開示は、上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料又は上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料の調製方法で製造された黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、本開示による黒鉛負極材料の調製方法のプロセスフローチャートである。
図2図2は、本開示の実施例1による黒鉛負極材料の電子顕微鏡による走査像である。
図3図3は、本開示の実施例2による黒鉛負極材料の電子顕微鏡による走査像である。
図4図4は、本開示の実施例1による黒鉛負極材料の異なるポイントのラマンスペクトルのデータ図である。
図5図5は、本開示の実施例2による黒鉛負極材料の異なるポイントのラマンスペクトルのデータ図である。
図6図6は、本開示の実施例1による黒鉛負極材料の容量-電圧曲線の模式図である。
図7図7は、本開示の実施例2による黒鉛負極材料の容量-電圧曲線の模式図である。
図8図8は、本開示の実施例1による黒鉛負極材料のサイクル曲線の模式図である。
図9図9は、本開示の実施例2による黒鉛負極材料のサイクル曲線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本開示をよりよく説明し、本開示の技術案を簡単にするため、以下、本開示をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本開示の簡単な例にすぎず、本開示の保護範囲を限定するものではなく、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0060】
本開示の一実施形態は、黒鉛負極材料を提供する。前記黒鉛負極材料は、黒鉛と、前記黒鉛の少なくとも一部の表面に存在する炭素被覆層とを含み、前記炭素被覆層が元素Mを含有する変性基を含み、Mが、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種であり、前記変性基の影響因子τの範囲が0.5≦τ≦10を満たす。
【0061】
本開示の一実施形態による黒鉛負極材料は、黒鉛と、炭素被覆層と、を含み、炭素被覆層は、前記黒鉛の少なくとも一部の表面に存在し、前記黒鉛を被覆する被覆面積の比率が10%-100%である。前記炭素被覆層は、元素Mを含有する変性基を含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種であり、前記変性基の影響因子τの範囲は0.5≦τ≦10を満たす。
【0062】
いくつかの実施形態において、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は10%~100%である。例えば、20%~95%、30%~90%、40%~85%、70%~100%などであり、より具体的には、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%である。
【0063】
本開示による黒鉛負極材料は、コアシェル構造を構築すると同時に、炭素被覆層に特定の基を導入して変性を行い、それぞれの基の影響因子の範囲を制御することで、炭素被覆層における被覆層と電解液の副反応を減らし、黒鉛負極材料の初回クーロン効率を向上させる。また、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛は、球状黒鉛を含むがこれに限定されない。球状黒鉛は天然黒鉛である。天然黒鉛は、鱗片状の天然の顕晶質黒鉛であり、その形が魚の鱗と似ており、六方晶系に属し、層状構造となっており、良好な耐熱性、電気伝導性、熱伝導性、潤滑性、可塑性、耐酸性、耐アルカリ性などを有する。いくつかの実施形態において、前記黒鉛は人造黒鉛を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、球形化中に分級された天然の鱗片状の黒鉛を整形することで得られる。整形された球状黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmである。例えば、10μm~25μm、5μm~20μm、15μm~25μmであり、より具体的には、例えば、5μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、14μm、15μm、16μm、19μm、20μm、25μmなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、メジアン径が7μm~20μmである。本願明細書において、用語「メジアン径」は、即ちD50であり、粒度の累積分布曲線においてちょうど50%の積算値に対応する粒度の直径を指す。
【0066】
いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、球形化中に分級された天然の鱗片状の黒鉛を整形することで得られる。整形された球状黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmである。例えば、10μm~25μm、5μm~20μm、15μm~25μmであり、より具体的には、例えば、5μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、14μm、15μm、16μm、19μm、20μm、25μmなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。複数回の実験の結果によれば、球状黒鉛のメジアン径を上記範囲内に抑えることで、球状黒鉛の比表面積を低減し、球状黒鉛と電解液の接触を減らし、副反応の発生を抑制するのに有利であることがわかった。いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、メジアン径が7μm~20μmである。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛は、平均粒子径が5μm~25μmである。いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料は、メジアン径が5μm~30μmである。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記球状黒鉛は、炭素の質量含有量が95%以上である。質量含有量は、例えば、95%~99%、97%~99%、95%~97%であり、より具体的には、例えば、95%、96%、97%、97.5%、98.3%、98.8%、99%などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、炭素の質量含有量が99.95%以上である。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記球状黒鉛と前記炭素被覆層の質量比は、(1~99):1である。例えば、(50~99):1、(1~50):1、(20~80):1であり、より具体的には、例えば、1:1、2:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、99:1などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。炭素被覆層の質量比が大きすぎると、リチウムイオンの輸送効率が低下し、材料の高倍率充放電に不利であり、負極材料の総合性能が劣る。炭素被覆層の質量比が小さすぎると、負極材料の電気伝導性の向上に不利であり、材料の体積膨張を抑制しにくいため、長サイクル性能が低下する。いくつかの実施形態において、球状黒鉛と炭素被覆層の質量比は、(5~99):1である。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料は、タップ密度が0.6g/cm~1.5g/cmである。例えば、1.0g/cm~1.5g/cm、0.6g/cm~1.0g/cm、0.8g/cm~1.2g/cmであり、より具体的には、例えば、0.6g/cm、0.7g/cm、0.75g/cm、0.8g/cm、0.85g/cm、0.9g/cm、0.95g/cm、1.0g/cm、1.2g/cm、1.5g/cmなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。球状黒鉛の細孔が炭素材料の充填及び被覆により充填されまたは塞がれ、黒鉛負極材料の空隙率が低下する。低い空隙率は、充放電時に発生する副反応を効果的に低減できるため、副反応による極片の膨張やサイクル性能の低下を抑制できる。
【0071】
前記黒鉛負極材料は、比表面積が0.1m/g~10m/gである。例えば、1m/g~10m/g、0.1m/g~5m/g、0.5m/g~8m/gであり、より具体的には、例えば、0.1m/g、0.3m/g、0.5m/g、1.0m/g、1.8m/g、2.6m/g、3.5m/g、5.3m/g、6.0m/g、7.8m/g、10m/gなどである。なお、上記範囲内の他の数値であってもよく、ここで限定しない。本発明者らは、複数回の実験により、黒鉛負極材料の比表面積を上記範囲内に抑えることで、この負極材料からなるリチウム電池のサイクル性能の向上に寄与することを見出した。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料のラマンスペクトルにおいて、1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/IG(area)の値をnとして、0<n≦5となる。I/Iの値nは、例えば、1<n≦5、0<n≦4、2<n≦4であり、より具体的には、例えば、0.5、1、2、3、4.5、4.8、5などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。比の値が高すぎると、負極材料の表面欠陥が多いことを示し、固体電解質界面(SEI)膜の形成が進み、リチウムイオンがより多く消耗され、電池の初回クーロン効率が低下する。
【0073】
いくつかの実施形態において、変性基は、-C-M-基、-M-O-基のうちの少なくとも1種を含む。
【0074】
X線光電子分光法(XPS)を用いて、その分析結果によりそれぞれの基の種類や含有量を決める。XPSPEAK41ソフトウェアを用いて異なる元素データに対してピークフィッティングを行い、フィッティングしたピーク面積の積分によりそれぞれの変性基の含有量を算出する。半値全幅FWHMが最大で1.8eVであり、Lorentzian-Gaussian法によりフィッティングする。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Bを含有する変性基を含み、前記Bを含有する変性基は、質量含有量がm%である-C-B-基、質量含有量がm%である-C-B-基、質量含有量がm%であるの-BCO-基、質量含有量がm%であるの-BCO-基のうちの少なくとも1種を含む。前記Bを含有する変性基の影響因子σ=(0.2m+0.2m+0.7m+0.5m)n/(m+m+m+m)で、n=I/Iである。-C-B-基は188.9ev±0.1evに、-C-B-基は190.0ev±0.1evに、-BCO-基は191.5ev±0.1evに、特徴的なピークを有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Pを含有する変性基を含み、前記Pを含有する変性基は、質量含有量がm%である-P-O-基と質量含有量がm%である-P-C-基を含む。前記Pを含有する変性基の影響因子σ=(0.3m+0.7m)n/(m+m)である。-P-O-基は133.7ev±0.1evに、-P-C-基は132.7ev±0.1evに、特徴的なピークを有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する変性基を含み、前記Nを含有する変性基は、質量含有量がm%であるピリジン窒素基、質量含有量がm%であるピロール窒素基、質量含有量がm%である-C-N-基のうちの少なくとも1種を含む。前記Nを含有する変性基の影響因子σ=(0.2m+0.3m+0.1m)n/(m+m+m)である。ピリジン窒素基は398.4ev±0.1evに、ピロール窒素基は399.7ev±0.1evに、-C-N-基は400.6ev±0.1evに、特徴的なピークを有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記変性基の影響因子τ=1.3σ+4.7σ+3.5σで、σ、σ、σ≧0を満たし、且つ0.5≦τ≦10を満たす。例えばτの値は、0.5~10、1~10、1~9、0.67~8.43、0.99~8.43、0.99~6.11であり、より具体的に、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、1、1.5、2.5、2.9、3.9、4.8、5.6、6.7、8、8.8、9、10などである。なお、上記範囲内の他の数値であってもよく、ここで限定しない。τの値が大きすぎると、被覆層における変性基の含有量が高くなり、長サイクル過程におけるアニオンの共挿入に有効であるが、過剰な変性基が存在すると、被覆層の構造のディスオーダー化が引き起こされ、空隙率が著しく高くなるため、リチウムイオンの初めての挿入脱離反応である不可逆反応が著しく増加し、製品の初回充放電効率を低下させる。τの値が小さすぎると、被覆層における有効な変性基が少なくなり、基の変性機能を発揮できないため、製品の初回クーロン効率が低く、長サイクル過程において容量維持率が悪化しやすいおそれがある。
【0079】
いくつかの実施形態において、炭素被覆層は、無定形炭素被覆層である。無定形炭素は電解液との共存性がよく、材料の充放電過程における電気特性の安定性を確保することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、炭素被覆層は、厚さが0.01μm~5μmである。例えば、0.1μm~5μm、0.01μm~4μm、0.1μm~4.5μmであり、より具体的に、例えば、0.01μm、0.5μm、1μm、1.8μm、2.4μm、3.5μm、3.9μm、4.7μm、5μmなどである。ここで限定しない。
いくつかの実施形態において、炭素被覆層中の無定形炭素は、歴青、石油コークス、無煙炭、ピッチコークス、石炭系コークス、樹脂、油脂、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種に由来するものである。
【0081】
いくつかの実施形態において、歴青は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチから選ばれる少なくとも1種である。
【0082】
いくつかの実施形態において、炭素被覆層中の無定形炭素は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチのうちの少なくとも1種に由来することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料は、炭素の質量含有量が95%~100%である。例えば、95%~99%、96%~100%、96%~99%であり、より具体的に、例えば、99.00%、99.50%、99.60%、99.75%、99.80%、99.90%、99.95%、99.98%などである。なお、上記範囲内の他の数値であってもよく、ここで限定しない。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料は、メジアン径が5μm~30μmである。例えば、8μm~30μm、5μm~25μm、8μm~28μmであり、より具体的に、例えば、5μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、14μm、15μm、16μm、19μm、20μm、25μm、30μmなどである。ここで限定しない。
【0085】
本開示の一実施形態は、黒鉛負極材料の調製方法を提供する。前記調製方法は、黒鉛と、被覆剤と、元素Mを含有する化合物を含む変性添加剤と、を含む混合物に対して熱重合処理を行い、前駆体を得るステップと、前記前駆体に対して炭化処理を行い、黒鉛負極材料を得るステップと、を含み、前記被覆剤と前記変性添加剤の質量比が(1~99):1であり、前記Mが、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。
【0086】
図1に示すように、本開示の一実施形態による黒鉛負極材料の調製方法は、以下のステップを含む。
【0087】
ステップS100:黒鉛と、被覆剤と、元素Mを含有する化合物を含む変性添加剤と、を含む混合物に対して熱重合処理を行い、前駆体を得る。前記被覆剤と前記変性添加剤の質量比は(1~99):1であり、前記Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。
【0088】
ステップS200:前記前駆体に対して炭化処理を行い(例えば、保護雰囲気下で)、黒鉛負極材料を得る。
【0089】
本開示による黒鉛負極材料の調製方法は、熱重合処理時に変性添加剤が被覆剤と反応し、炭素被覆層に元素Mを含有する基を導入することで、初回サイクル過程における負極材料と電解液との不可逆反応を減らし、天然黒鉛の初回クーロン効率を向上させることができる。また、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。
【0090】
いくつかの実施形態において、ステップS100の前に、前記調製方法は、天然の鱗片状の黒鉛に対して整形処理を行い、球状黒鉛を得るステップをさらに含む。
【0091】
天然の鱗片状の黒鉛は、天然の顕晶質黒鉛であり、その形が魚の鱗と似ており、六方晶系に属し、層状構造となっており、良好な耐熱性、電気伝導性、熱伝導性、潤滑性、可塑性、耐酸性、耐アルカリ性などを有する。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記整形処理は、粉砕、球形化、分級のうちの少なくとも1種を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、球形化の方法を用いて天然黒鉛を整形することができる。球形化速度が500r/min~5000r/minであり、球形化の時間が0.2~10hである。
【0094】
いくつかの実施形態において、整形された球状黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmである。例えば、5μm~20μm、10μm~25μm、8μm~24μmであり、より具体的には、例えば、5μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、14μm、15μm、16μm、19μm、20μm、25μmなどである。但し、挙げられた数値に限定しない。いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、メジアン径が7μm~20μmであってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、整形された球状黒鉛は、メジアン径が5μm~25μmである。例えば、5μm~20μm、10μm~25μm、8μm~24μmであり、より具体的には、例えば、5μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、14μm、15μm、16μm、19μm、20μm、25μmなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。複数回の実験の結果によれば、球状黒鉛のメジアン径を上記範囲内に抑えることで、球状黒鉛の比表面積を低減し、球状黒鉛と電解液の接触を減らし、副反応の発生を抑制するのに有利であることがわかった。いくつかの実施形態において、球状黒鉛は、メジアン径が7μm~20μmであってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、黒鉛は、球状黒鉛を含む。前記黒鉛は、炭素の質量含有量が95%以上である。例えば、95%~99%、96%~99%、95%~98%であり、より具体的には、例えば、95%、96%、97%、97.5%、98.3%、98.8%、99%などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。
【0097】
ステップS100:黒鉛と、被覆剤と、元素Mを含有する化合物を含む変性添加剤と、を含む混合物に対して熱重合処理を行い、前駆体を得る。前記Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。
【0098】
いくつかの実施形態において、被覆剤は、歴青、石油コークス、無煙炭、ピッチコークス、石炭系コークス、樹脂、油脂、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種に由来するものである。
【0099】
いくつかの実施形態において、歴青は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチのうちの少なくとも1種に由来するものである。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記被覆剤は、石油ピッチ、石炭ピッチ、改質アスファルト、メソフェーズピッチ、重質油、コールタールのうちの少なくとも1種を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛と前記被覆剤の質量比は、(1~99):1である。例えば、(1~80):1、(10~99):1、(5~90):1であり、より具体的には、例えば、1:1、2:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、99:1などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。被覆剤が多すぎると、黒鉛上に形成された被覆層の厚さが増加し、リチウムイオンの輸送効率が低下し、材料の高倍率充放電に不利であり、負極材料の総合性能が劣る。被覆剤が少なすぎると、黒鉛上に形成された被覆層の厚さが減少し、負極材料の電気伝導性の向上に不利であり、材料の体積膨張を抑制しにくいため、長サイクル性能が低下する。いくつかの実施形態において、黒鉛と被覆剤の質量比は、(5~30):1であってもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、被覆剤は、軟化点が80℃~400℃である。例えば、100℃~400℃、80℃~350℃、90℃~390℃であり、より具体的には、例えば、80℃、89℃、99℃、120℃、150℃、180℃、220℃、250℃、300℃、350℃、400℃などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。
【0103】
いくつかの実施形態において、被覆剤は、残炭率が10%~80%である。例えば、15%~80%、10%~75%、12%~78%であり、より具体的には、例えば、10%、20%、35%、45%、50%、55%、60%、70%、78%、80%などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。被覆剤の残炭率が低すぎると、熱処理過程において、ガスが大量に生成し、被覆層の空隙率が増加するので、さらに製品の初回クーロン効率やサイクル性能に影響を及ぼす。被覆剤の残炭率が高すぎると、熱処理過程において、被覆剤がコア材料の表面で広がらず、完全かつ有効な被覆層を形成できないため、一部の黒鉛コア材料の表面は、露出してサイクル過程において電解液と直接接触し、副反応を起こすとともに、電解液における溶媒分子の共挿入も起こし、サイクルが悪化する。
【0104】
いくつかの実施形態において、前記元素Mを含有する化合物は、元素Mを含有する有機物、元素Mを含有する酸、元素Mを含有する塩のうちの少なくとも1種を含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。
【0105】
いくつかの実施形態において、元素Mを含有する塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記元素Mを含有する化合物は、元素Mを含有する有機物、元素Mを含有する酸、元素Mを含有するアンモニウム塩のうちの少なくとも1種を含み、Mは、B、N及びPから選ばれる少なくとも1種である。いくつかの実施形態において、元素Mを含有する有機物は、アミン系有機物、N-ビニルアミド重合体類有機物、ボラン系有機物、アルキルボラン系有機物、エステル系有機物、ホスフィン系有機物、カルボラン系有機物のうちの少なくとも1種を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、アミン系有機物は、メラミンおよび尿素のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態において、N-ビニルアミド重合体類有機物は、ポリビニルピロリドンを含むが、これに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態において、エステル系有機物は、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステルのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態において、ホスフィン系有機物は、ペンタフェニルホスフィンおよびメチレントリアルキルホスフィンのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、元素Mを含有する有機物は、アザシクロアルカン化合物、アザシクロアルケン化合物、アザ芳香族化合物をさらに含み、例えば、ピロリドン系化合物であり、例えば、N-メチルピロリドン(窒素ーメチルピロリドン)である。
【0112】
いくつかの実施形態において、元素Mを含有する有機物は、メラミン、ポリビニルピロリドン、尿素、N-メチルピロリドン、ボラン、アルキルボラン、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ペンタフェニルホスフィン、メチレントリアルキルホスフィン、カルボランのうちの少なくとも1種を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、元素Mを含有する無機酸は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、硝酸、亜硝酸、次亜硝酸、ホウ酸、ボロン酸、次ホウ酸から選ばれる少なくとも1種である。
【0114】
いくつかの実施形態において、元素Mを含有するアンモニウム塩は、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種である。
【0115】
いくつかの実施形態において、元素Mを含有するナトリウム塩は、ホウ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定する。
【0116】
いくつかの実施形態において、変性添加剤は、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸、リン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、被覆剤と変性添加剤の質量比は、(1~99):1である。例えば、(5~99):1、(1~80):1、(10~90):1であり、より具体的には、例えば、1:1、2:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、99:1などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。変性添加剤が多すぎると、添加剤と被覆剤の反応がより激しくなり、被覆層の構造のディスオーダー化が引き起こされ、製品の初回クーロン効率やサイクル性能に悪影響を及ぼす。変性添加剤が少なすぎると、被覆剤と効果的にドーピング反応を行うことができないため、有効な変性基を十分に形成できず、製品の性能を向上させることが困難である。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記熱重合処理の反応温度は150℃~700℃である。例えば、200℃~700℃、150℃~650℃、210℃~690℃であり、より具体的には、例えば、150℃、170℃、200℃、300℃、450℃、580℃、600℃、630℃、700℃などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。熱重合処理の反応温度が高すぎると、変性添加剤が自己分解または縮合重合する場合が多くなり、被覆剤と効果的に反応しなくなる。熱重合処理の反応温度が低すぎると、反応に必要な活性化エネルギーに達しないため、反応が起こらない。また、温度が低いと被覆剤が液化しないため、有効接触の反応面積が小さくなり、反応效率が低下する。いくつかの実施形態において、熱重合処理の反応温度は200℃~500℃である。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記熱重合処理の反応時間は1h~5hである。例えば、1h~4.5h、1.5h~5h、1.5h~4.5hであり、より具体的には、例えば、1h、2h、3h、3.2h、4.8h、5hなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。
任意で、熱重合処理の昇温速度は1℃/min~5℃/minである。例えば、2℃/min~5℃/min、1℃/min~4℃/min、2℃/min~4.5℃/minであり、より具体的には、例えば、1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/minなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。
【0120】
上記の熱重合処理過程において、軟化した被覆剤は黒鉛の細孔内に浸透することができる。また、変性添加剤は、元素Mを含有する化合物が被覆剤と反応して変性基を形成するように、被覆剤と反応する。具体的に、変性基は、Bを含有する変性基、Pを含有する変性基、Nを含有する変性基であってもよい。これらの特性基を適切な含有量で被覆剤にドーピングすることで、その後の二次熱処理後に被覆層炭素に対する変性を行うことができ、被覆剤が炭化されて形成した変性被覆層の電解液との共存性を改善し、被覆層と電解液の副反応を減らし、初回クーロン効率を向上させる。なお、理論にとらわれずに、上記の「黒鉛の細孔」とは、厳密には黒鉛の表面の細孔を指す。即ち、異種元素のドーピングとは、主に黒鉛の表面の被覆層にドーピングすることである。これらの細孔内部の官能基は、表面の官能基の役割と同じで、影響因子の数値範囲をも満たす。
【0121】
ステップS200:保護雰囲気下で前記前駆体に対して炭化処理を行い、黒鉛負極材料を得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記炭化処理の反応温度は600℃~1500℃である。例えば、700℃~1500℃、600℃~1000℃、800℃~1500℃であり、より具体的には、例えば、600℃、650℃、670℃、700℃、800℃、950℃、1080℃、1300℃、1400℃、1500℃などである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。炭化処理の温度が高すぎると、変性基が熱分解するおそれがあり、変性基の流出により、材料を変性させることができなくなる。炭化処理の温度が低すぎると、被覆剤の硬化や炭化が不完全になり、被覆層の導電率が大幅に低下し、製品のインピーダンスが著しく上昇し、製品性能が低下する。いくつかの実施形態において、炭化処理の反応温度は700℃~1200℃である。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記炭化処理の反応時間は1h~10hである。例えば、1h~8h、3h~10h、2h~8hであり、より具体的には、例えば、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、10hなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。
【0124】
任意で、炭化処理の昇温速度は1℃/min~5℃/minである。例えば、1.5℃/min~5℃/min、1℃/min~4.5℃/min、1.5℃/min~4.5℃/minであり、より具体的には、例えば、1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/minなどである。但し、挙げられた数値に限定されず、この数値範囲内で他の挙げられていない数値についても適用可能である。
【0125】
いくつかの実施形態において、保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記保護雰囲気の気体流速は2ml/s~100ml/sである。例えば、5ml/s~100ml/s、2ml/s~80ml/s、5ml/s~90ml/sであり、より具体的には、例えば、2ml/s、5ml/s、10ml/s、15ml/s、20ml/s、30ml/s、50ml/s、60ml/s、70ml/s、89ml/s、100ml/sなどである。ここで限定しない。
【0127】
いくつかの実施形態において、一次熱処理が攪拌されながら行われ、攪拌速度は10r/min~500r/minである。例えば、100r/min~500r/min、10r/min~400r/min、50r/min~490r/minであり、より具体的には、例えば、10r/min、50r/min、70r/min、100r/min、120r/min、150r/min、200r/min、300r/min、350r/min、400r/min、500r/minなどである。ここで限定しない。攪拌しながら一次熱処理を行うことで、変性添加剤と被覆剤とがより均一に混合され、反応もより均一になる。しかしながら、攪拌速度が遅すぎると、均一に変性できないため、最終的に負極材料の均一性が悪くなる。攪拌速度が速すぎると、設備要求が厳しくなり、コストが高くなる。
【0128】
いくつかの具体的な実施形態において、一次熱処理は、攪拌機を備える高温反応釜で行われる。
【0129】
本開示は、上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料又は上記のいずれか1項に記載された調製方法による黒鉛負極材料を含む負極を提供する。
【0130】
本開示は、上記のいずれか1項に記載された黒鉛負極材料又は上記のいずれか1項に記載された調製方法による黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0131】
従来技術における上記の問題について、本開示は、黒鉛負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池を提供する。本開示に係る黒鉛負極材料は、優れた電気化学サイクル性能や膨張抑制性能を有するため、リチウムイオン電池の寿命を延ばし、製造コストを低減することができる。
【0132】
本開示は、以下の有益な効果を有する。
本開示による黒鉛負極材料は、コアシェル構造を構築すると同時に、炭素被覆層に特定の基を導入して変性を行い、それぞれの基の影響因子の範囲を制御することで、炭素被覆層における被覆層と電解液の副反応を減らし、黒鉛負極材料の初回クーロン効率を向上させる。また、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。
【0133】
一方、本開示による黒鉛負極材料の調製方法は、熱重合処理時に変性添加剤が被覆剤と反応し、炭素被覆層に元素Mを含有する基を導入することで、初回サイクル過程における負極材料と電解液との不可逆反応を減らし、天然黒鉛の初回クーロン効率を向上させることができる。また、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。
【0134】
実施例
以下、複数の実施例を用いて本開示の実施例をさらに説明する。なお、本開示の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されず、保護範囲内において、適切に変更して実施してもよい。
【0135】
実施例1
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤であるリン酸二水素アンモニウムを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を3hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0136】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.7μm、タップ密度が1.08g/cm、比表面積が2.4m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.4μm、炭素含有量が99.90%である。
【0137】
図2図4は、本開示の実施例1による黒鉛負極材料の電子顕微鏡による走査像とラマンスペクトルのデータ図である。図2図4に示すように、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆しており、完全に被覆された黒鉛粒子の表面が滑らかで、鱗片によるシワが目立たない(図2を参照)。異なるポイントのラマンスペクトルのデータI/Iの値が安定であり、図4は、黒鉛負極材料の100箇所の異なるポイントのラマンスペクトルのデータ(即ちI/Iのラマンスペクトルのデータ)を統計した図である。
【0138】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.44である。
【0139】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、PとNを含有する基を含む。また、前記Pを含有する変性基の影響因子σ=0.530であり、Nを含有する変性基の影響因子σ=0.423である。また、τ=4.7σ+3.5σ=3.97である。図6は、下記の電気化学試験における実施例1の容量-電圧曲線を示し、図8は、電気化学サイクル-膨張率の曲線を示す。
【0140】
実施例2
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤である尿素を質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0141】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.2μm、タップ密度が1.01g/cm、比表面積が3.5m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.2μm、炭素含有量が99.93%である。
【0142】
図3図5は、本開示の実施例2による黒鉛負極材料の電子顕微鏡による走査像とラマンスペクトルのデータ図である。図3図5に示すように、炭素被覆層が同様に球状黒鉛の表面を均一に被覆しており、被覆層の表面が滑らかで、鱗片によるシワが目立たない(図5を参照)。異なるポイントのラマンスペクトルのデータI/Iの値が安定であり、図5は、黒鉛負極材料の100箇所の異なるポイントのラマンスペクトルのデータ(即ちI/Iのラマンスペクトルのデータ)を統計した図である。
【0143】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは1.9である。
【0144】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する基を含む。また、前記Nを含有する基の影響因子τ=5.32である。
【0145】
図7は、下記の電気化学試験における実施例2の容量-電圧曲線を示し、図9は、電気化学サイクル-膨張率の曲線を示す。また、以下の実施例において、炭素被覆層が完全又は部分的に黒鉛を被覆しているかどうかにかかわらず、炭素被覆層は、同様に球状黒鉛の表面を均一に被覆でき、被覆層の表面が同様に滑らかで、鱗片によるシワが目立たない。
【0146】
実施例3
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤である硝酸アンモニウムを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い。前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0147】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.5μm、タップ密度が3.8g/cm、比表面積が2.9m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.4μm、炭素含有量が99.87%である。
【0148】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度IGの比であるI/IGの値nは1.8である。
【0149】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する基を含む。また、前記Nを含有する基の影響因子τ=5.33である。
【0150】
実施例4
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が11μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点180℃、残炭量65%)を質量比95/5で混合し、被覆剤と変性添加剤である尿素を質量比92/8で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を600℃、処理時間を3hとして、熱重合処理をい、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を900℃、処理時間を3hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0151】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面をほとんど被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約96%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が11.8μm、タップ密度が0.94g/cm、比表面積が5.1m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.1μm、炭素含有量が99.91%である。
【0152】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.5である。
【0153】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する基を含む。また、前記Nを含有する基の影響因子τ=6.01である。
【0154】
実施例5
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が18μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点180℃、残炭量65%)を質量比95/5で混合し、被覆剤と変性添加剤である尿素を質量比80/20で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を600℃、処理時間を3hとして、熱重合処理をい、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を1000℃、処理時間を3hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0155】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面をほとんど被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約92%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が18.4μm、タップ密度が1.19g/cm、比表面積が4.2m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が2.8μm、炭素含有量が99.95%である。
【0156】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.9である。
【0157】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する基を含む。また、前記Nを含有する基の影響因子τ=6.11である。
【0158】
実施例6
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が11μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点250℃、残炭量75%)を質量比95/5で混合し、被覆剤と変性添加剤であるホウ酸ナトリウムを質量比80/20で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を600℃、処理時間を3hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を950℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0159】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面をほとんど被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約95%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が11.2μm、タップ密度が0.88g/cm、比表面積が3.6m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が2.5μm、炭素含有量が99.87%である。
【0160】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.5である。
【0161】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Bを含有する基を含む。また、前記Bを含有する基の影響因子τ=0.67である。
【0162】
実施例7
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が11μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点180℃、残炭量65%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤である硫酸アンモニウムを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を450℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を3hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0163】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が11.6μm、タップ密度が0.92g/cm、比表面積が3.3m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.7μm、炭素含有量が99.96%である。
【0164】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは0.8である。
【0165】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する基を含む。また、前記Nを含有する基の影響因子τ=0.99である。
【0166】
実施例8
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤である硝酸アンモニウムを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を120℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を600℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0167】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.9μm、タップ密度が0.86g/cm、比表面積が0.8m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が1.2μm、炭素含有量が98.30%である。
【0168】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは4.7である。
【0169】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Nを含有する基を含む。また、前記Nを含有する基の影響因子τ=8.43である。
【0170】
実施例9
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤であるホウ酸ナトリウムを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0171】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.4μm、タップ密度が0.89g/cm、比表面積が3.1m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.37μm、炭素含有量が99.92%である。
【0172】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.1である。
【0173】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Bを含有する基を含む。また、前記Bを含有する基の影響因子τ=4.52である。
【0174】
実施例10
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤であるリン酸モノエステルを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0175】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.6μm、タップ密度が0.92g/cm、比表面積が2.9m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.45μm、炭素含有量が99.89%である。
【0176】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.7である。
【0177】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Pを含有する基を含む。また、前記Pを含有する基の影響因子τ=5.12である。
【0178】
実施例11
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤であるホウ酸を質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0179】
本実施例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.5μm、タップ密度が0.94g/cm、比表面積が3.2m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.54μm、炭素含有量が99.91%である。
【0180】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは2.4である。
【0181】
赤外分光分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、Bを含有する基を含む。また、前記Bを含有する基の影響因子τ=4.81である。
【0182】
比較例1
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点180℃、残炭量65%)を質量比90/10で混合し、変性添加剤を添加せず、混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を600℃、処理時間を5hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を1000℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0183】
本比較例による黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.9μm、タップ密度が1.03g/cm、比表面積が2.9m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.3μm、炭素含有量が99.98%である。炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。
【0184】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク強度Iの比であるI/Iの値nは1.6である。
【0185】
比較例2
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤であるリン酸二水素アンモニウムを質量比90/0.8で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を3hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0186】
本比較例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.7μm、タップ密度が1.08g/cm、比表面積が2.1m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.4μm、炭素含有量が99.97%である。
【0187】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク面積Iの比であるI/Iの値nは1.82である。
【0188】
XPS分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、PとNを含有する基を含む。また、前記PとNを含有する基の影響因子τ=0.3である。
【0189】
比較例3
(1)100メッシュの篩を通過でき、炭素含有量が95%である鱗片状の黒鉛を用いて、粉砕、球形化、分級、精製を経て球状黒鉛を得た。球状黒鉛は、メジアン径D50が15μmである。
(2)前記球状黒鉛と被覆剤である石油ピッチ(軟化点150℃、残炭量45%)を質量比90/10で混合し、被覆剤と変性添加剤であるスルフィドを質量比90/10で混合した。混合した後、高温反応釜で、保護ガスとして高純度の窒素ガスを反応釜に入れ、熱重合処理温度を550℃、処理時間を3hとして、熱重合処理を行い、前駆体を得た。
(3)空気雰囲気下で、気体流速を20ml/s、炭化処理温度を800℃、処理時間を5hとして、前記前駆体に対して炭化炉で炭化処理を行い、前記黒鉛負極材料を得た。
【0190】
本比較例による黒鉛負極材料は、球状黒鉛及び変性基を有する炭素被覆層を含み、炭素被覆層が球状黒鉛の表面を完全に被覆し、炭素被覆層の黒鉛の表面積を占める割合は約100%である。黒鉛負極材料は、メジアン径(D50)が15.5μm、タップ密度が0.96g/cm、比表面積が2.7m/gである。黒鉛負極材料は、炭素被覆層が0.38μm、炭素含有量が99.94%である。
【0191】
ラマンスペクトルによれば、前記黒鉛負極材料の1350cm-1にあるピーク強度Iと1580cm-1にあるピーク面積Iの比であるI/Iの値nは2.8である。
【0192】
XPS分析によれば、前記黒鉛負極材料の炭素被覆層は、C-S、S-SO-C、S-SO3-Cを含有する基を含む。
【0193】
実験例
上記の実施例と比較例による黒鉛負極材料に対し、形態特徴や電気化学性能の測定を行うことで、その性能特性を比較した。
【0194】
測定方法
1)負極材料の粒径
粒子の粒度の測定方法は、GB/T 19077-2016を参照する。粒度測定は、英国マルバーン社製のMastersizer 3000レーザ回折式粒度分布測定装置のようなレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて容易に測定することができる。
【0195】
2)負極材料の比表面積の測定方法
一定の低温下で、異なる相対圧力における固体表面へのガスの吸着量を測定し、ブルナウアー-エメット-テラーの吸着理論及びその公式(BET公式)に基づき試料の単分子層の吸着量を求めることで、材料の比表面積を算出した。
【0196】
3)タップ密度の測定方法
タップ密度計を用いて、一定量のサンプルを秤量し、300回/minで、3000回振動させてタップ密度を測定した。
【0197】
4)炭素含有量の測定方法
フーリエ変換赤外分光光度計を用いて酸素含有量を測定し、熱重量分析法により炭素層含有量を測定した。
【0198】
5)SEM測定
走査型電子顕微鏡の特性評価は透過型電子顕微鏡で行われ、動作電圧が200kVである。負極材料の構造を観察し、炭素被覆層の厚さを測量した。
【0199】
6)ラマンスペクトル測定
ラマンスペクトル測定はJobin Yvon社製のLabRAM HR分光装置を用いて、光源の波長が532nmであり、測定範囲が0cm-1~4000cm-1である。100μm×100μmの測定範囲で、100個のI/Iの値を統計することでI/Iの平均値を得た(図4図5は、黒鉛負極材料の100箇所の異なるポイントのI/Iの値を統計したものを代表的に示した)。
【0200】
7)XPS測定
X線光電子分光装置(XPS)は、米国Thermo Scientific社製のESCALAB 250Xiエネルギー分光装置を用いた。X線源がAlKaであり,真空度が約10-9Torrである。炭素被覆層に対するXPS分析では、ピーク位置からそれぞれの基の種類及び含有量を測定し、データに対してピークフィッティングを行い、ピーク面積に対してフィッティングを行ってそれぞれの基の含有量を算出し、各元素を含有する基の影響因子τを算出した。
【0201】
8)電気化学測定
下記の方法で、電気化学サイクル性能を測定した。固形分を50%にコントロールするように、調整された負極材料と導電性カーボンブラックと粘着剤(アクリル樹脂)とを75:15:10の質量比で溶剤に溶解させて混合し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥して負極片を製造した。金属リチウムシートを対電極として、アルゴンガス雰囲気のグローブボックスの中でボタン電池を製造した。0.1Cの電流密度、0.01~1.5Vの充放電区間で充放電測定を行った。リチウムイオン電池の極片の初期厚さをH0としてマイクロメーターで測量し、サイクル充放電を行い、初回可逆比容量、初回充電容量および初回放電容量とを得た。初回クーロン効率=初回放電容量/初回充電容量である。
20サイクルを繰り返し、この時点でのリチウムイオン電池の極片の厚さをH1としてマイクロメーターで測量し、20サイクル後の膨張率=(H1-H0)/H0×100%である。
【0202】
上記性能測定の結果は以下である。
まず、得られた極片に対し、ボタン電池測定を行った。電池の組み立てがアルゴンガス雰囲気のグローブボックスの中で行われ、負極が金属リチウムシートであり、電解液が 1mol/L LiPF6+EC+EMCであり,セパレータがポリエチレン/ポリプロピレン複合微多孔膜である。電気化学性能の測定は電池測定装置で行われた。電池容量が標準の480mAh/gであり、充放電電圧が0.01~1.5Vであり、充放電速度が0.1Cである。
【0203】
9)粉体導電率
粉体導電率は、MCP-PD51粉末導電率測定システムを用いて測定した。4探針法により8KN又は4、8、12、16、20KNの5つの圧力でサンプルの導電率を測定し、フィッティングを行った後、9KNの圧力に対応する粉体導電率を取得した。
【0204】
10)アルゴンイオンスパッタリング時間
アルゴンイオンスパッタリング技術により負極材料の表面をエッチングし、エッチング時間を5秒間ずつ増加させた。異なるエッチング時間(深さ)での材料内部の化学組成をXPSにより検出した。XPSによりFとLiがなくなったと検出した時点までのエッチング時間を統計し、このエッチング時間は、被覆層への電解液の浸透深さを反映できる。アルゴンイオンスパッタリング時間が比較的短い場合は、変性基の阻害効果により、粒子の内部への電解液の浸透深さが低下し、電解液と被覆層との副反応を減らしたことを表す。アルゴンイオンスパッタリング時間が比較的長い場合は、電解液が深く浸透し、被覆層との副反応が多いことを表す。
【0205】
【表1】
【0206】
表1から分かるように、実施例1~11による黒鉛負極材料は、一次熱処理時に変性添加剤が被覆剤と反応し、炭素被覆層に元素Mを含有する基を導入することで、初回サイクル過程における負極材料と電解液との不可逆反応を減らし、天然黒鉛の初回クーロン効率を向上させることができる。また、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。なお、アルゴンイオンスパッタリング時間からも分かるように、本開示に係る黒鉛負極材料のアルゴンイオンスパッタリング時間が比較的短いことは、本開示の実施例による黒鉛負極材料が、元素Mを含有する変性基を含む炭素被覆層に被覆され、且つ、変性基の影響因子τの範囲が0.5≦τ≦10を満たすため、被覆層と電解液との副反応を減らし、黒鉛負極材料の初回クーロン効率を向上させ、並びに電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止でき、天然黒鉛の膨張を効果的に改善し、サイクル性能を向上させることができることを表した。実施例8と実施例1の違いは熱重合処理温度にある。実施例1は、実施例8よりも熱重合処理温度が高いため、変性添加剤におけるNが被覆層とより反応しやすく、被覆層に対してより効果的なドーピング変性を形成できる。そして、実施例1は、炭化処理温度も高いため、被覆剤の縮合重合、硬化、炭化がより完全に行われ、最終製品の炭素含有量がさらに高まった。また、変性添加剤の反応もより完全に行われることができるため、残留する変性添加剤が負極材料の化学的性能に影響を及ぼすことをさらに回避でき、膨張を回避しつつ製品の容量と効率をさらに高めた。
【0207】
比較例1は、変性添加剤を添加しなかったため、炭素被覆層に対して変性処理が行われず、その可逆容量、初回クーロン効率がいずれも実施例1の製品より低く、且つ、極片の膨張率が大幅に高まった。
【0208】
実施例1と比較例2を比較すれば分かるように、実施例1において、黒鉛と添加された変性添加剤の質量比が(1~99):1の範囲内にあり、変性添加剤と被覆剤の反応性をさらに向上させ、有効な変性基を十分に形成して製品の性能をさらに高めることができる。そのため、可逆容量、初回クーロン効率及び極片の膨張率を比較例と比べて著しく向上させた。
【0209】
実施例1と比較例3を比較すれば分かるように、本開示に係る変性添加剤を用いて調製された黒鉛負極材料は、硫黄ドーピングによる変性などの他の基変性と比べ、炭素被覆層にB、N及びPから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する基(上記実施例に係る変性剤に含まれる)を導入することで、初回サイクル過程における負極材料と電解液との不可逆反応を減らし、天然黒鉛の初回クーロン効率を向上させることができる。また、アルゴンイオンスパッタリング時間が比較的短いことは、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できることを表し、その阻害効果が顕著なほど、電解液の浸透が少なく、副反応が少なくなるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。
【0210】
本明細書に記載された実施例は、本開示を説明するためのものであり、記載された具体的な物質、配合割合及び反応条件は、本開示の上記の物質、配合割合及び反応条件の具体的な体現にすぎず、本開示を限定するものではない。即ち、本開示を実施するために上記の詳細方法に頼る必要がない。当業者により、本開示の上記内容をもとに、実現された技術がいずれも本開示の範囲に属し、本開示に対する任意の改良、本開示に係る製品の各原料に対する均等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択なども、本開示の保護範囲及び開示範囲に属する。
【0211】
産業上の利用可能性
本開示による黒鉛負極材料は、黒鉛負極材料の初回クーロン効率を向上させるとともに、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。一方、本開示による黒鉛負極材料の調製方法は、熱重合処理時に変性添加剤が被覆剤と反応し、炭素被覆層に元素Mを含有する基を導入することで、初回サイクル過程における負極材料と電解液との不可逆反応を減らし、天然黒鉛の初回クーロン効率を向上させることができる。また、変性された炭素被覆層も、電解液におけるアニオン及び溶媒が粒子の内部に入ることを効果的に阻止できるため、天然黒鉛の膨張が改善され、サイクル性能が向上する。よって、本開示による黒鉛負極材料、その調製方法及びそれを含むリチウムイオン電池は、いずれも優れた実用価値を有し、市場の応用可能性が期待されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】