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特表2024-505767窒化ガリウムナノ超構造及びその作製方法並びに窒化ガリウム系レーザー発振器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】窒化ガリウムナノ超構造及びその作製方法並びに窒化ガリウム系レーザー発振器
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240201BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514961
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2022125543
(87)【国際公開番号】W WO2023130794
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210009700.1
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ミャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】易 覚民
(72)【発明者】
【氏名】王 建峰
(72)【発明者】
【氏名】徐 科
【テーマコード(参考)】
2H149
2H249
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AA24
2H149AB03
2H149BA23
2H149BA24
2H149BB26
2H149FA43W
2H149FD46
2H149FD47
2H249AA13
2H249AA34
2H249AA37
2H249AA46
2H249AA59
2H249AA60
(57)【要約】
本発明は、窒化ガリウムナノ超構造及びその作製方法並びに当該窒化ガリウムナノ超構造を設けた窒化ガリウム系レーザー発振器に関し、当該窒化ガリウムナノ超構造は、窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するために利用される。窒化ガリウムナノ超構造は、下方から上方に、基板と、誘電体膜層と、ナノ回折格子構造層とをこの順に含み、前記ナノ回折格子構造層の回折格子の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、回折格子の周期の範囲は、100~280nmであり、回折格子の高さの範囲は、100~300nmであり、回折格子の線幅は、50~200nmである。本発明の窒化ガリウムナノ超構造は、効率的な円偏光出射の機能を実現でき、窒化ガリウム系レーザー発振器に用いる場合に当該窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造において、下方から上方に、基板と、誘電体膜層と、ナノ回折格子構造層とをこの順に含み、前記ナノ回折格子構造層の回折格子の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、回折格子の周期の範囲は、100~280nmであり、回折格子の高さの範囲は、100~300nmであり、回折格子の線幅は、50~200nmである、
ことを特徴とする窒化ガリウムナノ超構造。
【請求項2】
前記窒化ガリウムナノ超構造の基板の材料は、窒化ガリウム、サファイアのうちの1種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウムナノ超構造。
【請求項3】
前記窒化ガリウムナノ超構造の誘電体膜層の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、前記誘電体膜層の厚さの範囲は、0.1~100μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウムナノ超構造。
【請求項4】
前記窒化ガリウムナノ超構造のサイズは、10~1000μmであり、その輪郭の形状は、円形、正方形を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウムナノ超構造。
【請求項5】
サファイア基板に窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜を成長させるステップと、
薄膜にフォトレジストをスピンコーティングし、フォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製するステップと、
金属回折格子のマスク構造を作製するステップと、
窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜をエッチングして、窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食するステップと、を含む、
ことを特徴とする窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【請求項6】
窒化ガリウム基板にフォトレジストをスピンコーティングし、フォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製するステップと、
金属回折格子のマスク構造を作製するステップと、
窒化ガリウム基板をエッチングして、窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食するステップと、を含む、
ことを特徴とする窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【請求項7】
前記フォトレジストの厚さの範囲は、100~300nmであり、前記フォトエッチングの方法は、電子ビーム露光、UV光直接描画、ダブルビーム干渉を含む、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【請求項8】
金属回折格子のマスク構造を作製する前記ステップは、
金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロムの薄膜を蒸着し、厚さは30~80nmであり、アセトンに浸漬して残留フォトレジストを剥離して、金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロム材料による回折格子を形成させることを含む、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【請求項9】
エッチングして窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食する前記ステップは、
ICPドライエッチング技術でエッチングし、回折格子のエッチングする深さは100~300nmであり、クロム腐食液及び/又はニッケル腐食液で余分なクロム及び/又はニッケルを洗い落とし、脱イオン水での超音波洗浄を行うことを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【請求項10】
窒化ガリウム系レーザー発振器本体と請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化ガリウムナノ超構造とを含み、前記窒化ガリウムナノ超構造は、前記窒化ガリウム系レーザー発振器本体の光出射端面の前端に設けられ、且つ前記窒化ガリウムナノ超構造の回折格子のワイヤーグリッドの方向と前記窒化ガリウム系レーザー発振器本体の出射光の偏光方向との夾角は45°である、
ことを特徴とする窒化ガリウム系レーザー発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2022年1月5日に中国国家知識産権局へ提出された、出願番号が202210009700.1で、発明の名称が「窒化ガリウムナノ超構造及びその作製方法並びに窒化ガリウム系レーザー発振器」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、マイクロ・ナノ製造の技術分野に関し、特に、窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造及びその作製方法並びに窒化ガリウム系レーザー発振器に関する。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム系青緑色レーザー発振器は、高レーザー効率、狭線幅、高い演色評価数などの利点からレーザー・ディスプレイ、レーザー投影、可視光通信などの分野で重要な用途が実現されている。さらにホログラフィック・ディスプレイ、生体イメージング、水中光通信、量子通信などの分野に用いる場合には、特定の光学素子(例えば、1/4波長板)を追加して、直線偏光出射のはずの窒化ガリウム系レーザー発振器を円偏光出射に変換する必要がある。一般には、円偏光出射を得るために利用される1/4波長板はバルク材料によるレンズで、その厚さは一般にミリメートルレベルであり、光学系で体積が大きいため、デバイスの集積化と超小型化を妨げ、特に、コンパクトなミニプロジェクタやヘッドマウントディスプレイに利用することはできない。マイクロ・ナノ構造に基づいて波長板の機能を実現するという方法は、レーザー発振デバイスの超小型化とオンチップ集積化の実現を可能にする。N.F.Yuらが、表面プラズモン共鳴を利用して金属回折格子構造で中赤外帯域の円偏光出射レーザー発振器を実現している。
【0004】
バルク材料で作製した1/4波長板を窒化ガリウム系青緑色レーザー発振器に用いると、円偏光出射を実現できるが、全体として体積が大きく、高集積化と超小型化には向かない。金属回折格子で円偏光出射レーザー発振器を作製するという方法の一番大きな問題は、金属による吸収損失が大きいため、出射光のエネルギー利用率が低いことである。
【0005】
背景技術の部分で開示している情報は、本発明の背景への理解を深めるためのものに過ぎず、当該情報が当業者に知られている従来技術を構成すると認めたり、何らかの形でそれを示唆するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、効率的な円偏光出射の機能を実現できる窒化ガリウムナノ超構造を提供することであり、窒化ガリウム系レーザー発振器に用いる場合に当該窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例は、上記の目的を達成するために、窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造を提供し、前記窒化ガリウムナノ超構造は、下方から上方に、基板と、誘電体膜層と、ナノ回折格子構造層とをこの順に含み、前記ナノ回折格子構造層の回折格子の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、回折格子の周期の範囲は、100~280nmであり、回折格子の高さの範囲は、100~300nmであり、回折格子の線幅は、50~200nmである。
【0008】
本発明の一つ又は複数の実施形態において、前記窒化ガリウムナノ超構造の基板の材料は、窒化ガリウム、サファイアのうちの1種を含む。
【0009】
本発明の一つ又は複数の実施形態において、前記窒化ガリウムナノ超構造の誘電体膜層の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、前記誘電体膜層の厚さの範囲は、0.1~100μmである。
【0010】
本発明の一つ又は複数の実施形態において、前記窒化ガリウムナノ超構造のサイズは、10~1000μmであり、その輪郭の形状は、円形、正方形を含む。
【0011】
本発明は、さらに、サファイア基板に窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜を成長させるステップと、薄膜にフォトレジストをスピンコーティングし、フォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製するステップと、金属回折格子のマスク構造を作製するステップと、窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜をエッチングして、窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食するステップとを含む、窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、窒化ガリウム基板にフォトレジストをスピンコーティングし、フォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製するステップと、金属回折格子のマスク構造を作製するステップと、窒化ガリウム基板をエッチングして、窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食するステップとを含む、窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法を提供する。
【0013】
本発明の一つ又は複数の実施形態において、前記フォトレジストの厚さの範囲は、100~300nmであり、前記フォトエッチングの方法は、電子ビーム露光、UV光直接描画、ダブルビーム干渉を含む。
【0014】
本発明の一つ又は複数の実施形態において、金属回折格子のマスク構造を作製する前記ステップは、金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロムの薄膜を蒸着し、厚さは30~80nmであり、アセトンに浸漬して残留フォトレジストを剥離して、金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロム材料による回折格子を形成させることを含む。
【0015】
本発明の一つ又は複数の実施形態において、エッチングして窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食する前記ステップは、ICPドライエッチング技術でエッチングし、回折格子のエッチングする深さは100~300nmであり、クロム腐食液及び/又はニッケル腐食液で余分なクロム及び/又はニッケルを洗い落とし、脱イオン水での超音波洗浄を行うことを含む。
【0016】
本発明は、さらに、窒化ガリウム系レーザー発振器本体と前記窒化ガリウムナノ超構造とを含む窒化ガリウム系レーザー発振器を提供し、前記窒化ガリウムナノ超構造は、前記窒化ガリウム系レーザー発振器本体の光出射端面の前端に設けられ、且つ前記窒化ガリウムナノ超構造の回折格子のワイヤーグリッドの方向と前記窒化ガリウム系レーザー発振器本体の出射光の偏光方向との夾角は45°である。
【発明の効果】
【0017】
従来技術に比べて、本発明の実施形態の窒化ガリウムナノ超構造は、効率的な円偏光出射の機能を実現でき、窒化ガリウム系レーザー発振器に用いる場合に当該窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現できる。窒化ガリウム系レーザー発振器は、それ自体の特性により出射光が高度な直線偏光であるが、出射面の前端に窒化ガリウムナノ超構造を集積させ且つナノ回折格子のワイヤーグリッドとレーザーの偏光方向との夾角の正負を変えることにより左円偏光又は右円偏光の出射を実現する。
【0018】
本発明の実施形態の窒化ガリウムナノ超構造は、高い光透過率、高い偏光変換効率を有している。窒化ガリウムナノ超構造は、可視光帯域で吸収が起こらないのに加え、表面にナノ回折格子構造を作製することにより空気との大きな屈折率差による低出射効率を効果的に緩和しているため、窒化ガリウム系レーザー発振器の出射光に対して高い透過率を実現でき、また、ナノ超構造のパラメータを合理的に設計することにより、1/4波長板の機能を実現して、高い直線偏光度を有するレーザーを円偏光出射レーザーに効率的に変換することで、エネルギー損失が非常に小さい。
【0019】
本発明の実施形態の窒化ガリウムナノ超構造は、集積度が高く、安定性が高い。窒化ガリウムナノ超構造は、そのナノ構造の厚さが百ナノレベルだけであるように設計されるのに加え、基板の厚さが百ミクロンレベルだけであるため、高集積化したコンパクトなデバイスの実現には特に好適である。また、窒化ガリウム材料自体は硬さが高く、耐放射線性で、耐高温であり且つ分解しにくいため、それを使って作製した窒化ガリウムナノ超構造はより良い安定性を有しており、宇宙、深海、高温環境などの極端な条件でも依然として良好な物性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態の窒化ガリウムナノ超構造の断面図である。
図2図2は、本発明の実施例1の窒化ガリウムナノ超構造の上面図である。
図3図3は、本発明の実施例2の窒化ガリウムナノ超構造の上面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態の窒化ガリウムナノ超構造の作製方法のプロセスの概略図である。
図5a図5aは、本発明の実施例3で作製した窒化ガリウムナノ超構造の緑色光のスペクトルの広い帯域における位相差と振幅比である。
図5b図5bは、本発明の実施例3で作製した窒化ガリウムナノ超構造の緑色光のスペクトルの広い帯域における透過率曲線である。
図6a図6aは、本発明の実施例4で作製した窒化ガリウムナノ超構造の緑色光のスペクトルの広い帯域における位相差と振幅比である。
図6b図6bは、本発明の実施例4で作製した窒化ガリウムナノ超構造の緑色光のスペクトルの広い帯域における透過率曲線である。
図7図7は、本発明の実施形態の窒化ガリウム系レーザー発振器の構造概略図である(窒化ガリウムナノ超構造の取付け位置が異なる)。
図8図8は、本発明の実施形態の窒化ガリウム系レーザー発振器の構造概略図である(窒化ガリウムナノ超構造の取付け位置が異なる)。
図9図9は、本発明の実施形態の窒化ガリウム系レーザー発振器の構造概略図である(窒化ガリウムナノ超構造の取付け位置が異なる)。
図10図10は、本発明の実施形態の窒化ガリウム系レーザー発振器の構造概略図である(窒化ガリウムナノ超構造の取付け位置が異なる)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の特定の実施形態を詳しく説明し、ただし、本発明の保護範囲は当該特定の実施形態に限定されないということを理解されたい。
【0022】
他に明記しない限り、明細書と特許請求の範囲の全体において、用語「含む」とその変形(例えば、備える、含有するなど)は、列挙されている素子又は構成要素を含み、しかも他の素子や構成要素を除外しないように理解される。
【0023】
背景技術で述べたように、窒化ガリウム系レーザー発振器は、直線偏光出射であり且つ偏光度が非常に高い。従来技術で円偏光を実現するための方法は様々で、一般なのは直接1/4波長板で円偏光への変換を実現することであるが、当該種の波長板はサイズが大きいため、集積しにくい。本発明は、窒化ガリウム系レーザー発振器の基本的な特性を踏まえて、窒化ガリウムナノ超構造で窒化ガリウム系レーザー発振器自体の直線偏光から円偏光出射に変換することを実現するという新規な技術案を提供している。
【0024】
(実施例1)
図1及び図2に示されるとおり、本発明の一実施形態は、窒化ガリウム系レーザー発振器のチップに集積させて窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造Bを提供し、窒化ガリウムナノ超構造は、下方から上方に、基板10と、誘電体膜層20と、ナノ回折格子構造層30とをこの順に含む。窒化ガリウムナノ超構造のサイズは、10~1000μmであり、輪郭の形状は円形であってもよいし、正方形であってもよい。窒化ガリウムナノ超構造の基板10は、窒化ガリウム、サファイアのうちの1種である。誘電体膜層20の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種であり、厚さの範囲は、0.1~100μmである。窒化ガリウムナノ超構造のナノ回折格子構造層30の回折格子の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種であり、回折格子の周期Pの範囲は、100~280nmであり、回折格子の高さHの範囲は、100~300nmであり、回折格子の線幅Wは、50~200nmである。当該窒化ガリウムナノ超構造の機能は、入射した直線偏光レーザーを当該構造デバイスによって円偏光に変換して出射させることであり、1/4波長板の機能に相当する。
【0025】
(実施例2)
前記窒化ガリウムナノ超構造を集積化窒化ガリウム系レーザー発振器に用いる場合に、作製されたナノ回折格子構造層30のワイヤーグリッドの方向は、レーザーチップの出射の偏光方向と45°の夾角を保ち、窒化ガリウムナノ超構造を窒化ガリウム系レーザー発振器に集積させるステップの簡素化のために、図3に示されるように、作製された窒化ガリウムナノ超構造は輪郭が正方形である場合に、誘電体膜層20に基板の直辺との夾角を45°とするナノ回折格子構造層30を直接作製してもよい。
【0026】
図4に示されるとおり、本発明は、さらに、サファイア基板を使用し、サファイア基板10に窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜20を成長させるステップを含む(窒化ガリウム基板を使用する場合に、当該ステップを飛ばして直接次のステップに入る)、窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法を提供する。前記基板10又は薄膜20にフォトレジスト40をスピンコーティングし、フォトレジストの厚さの範囲は100~300nmであり、電子ビーム露光、UV光直接描画、ダブルビーム干渉のうちのいずれかの方法でフォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製する。金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロムの薄膜を蒸着し、厚さは30~80nmであり、次にアセトンに浸漬して残留フォトレジストを剥離して、金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロム材料による回折格子50を形成させる。ICPドライエッチング技術でサンプルをエッチングし、回折格子のエッチングする深さは100~300nmであり、次にクロム腐食液及び/又はニッケル腐食液で余分なクロム及び/又はニッケルを洗い落とし、脱イオン水でサンプルの超音波洗浄を行う。
【0027】
作製した窒化ガリウムナノ超構造と窒化ガリウム系レーザー発振器を結合又は光学接着又はパッケージキャップの出射穴との組み合わせなどにより当該レーザー発振器の光出射端面の前端に集積させ、且つ回折格子の方向とレーザー発振器の出射光の偏光方向との夾角は45°とする。集積ステップの簡素化のために、基板が正方形である場合に、基板又は薄膜に回折格子を作製するときは集積しやすいように、正方形の基板に向きを45°とする回折格子を作製してもよい。基板が円形である場合に、同じことは求められないが、集積しやすいように回折格子の方向を示す必要がある。
【0028】
(実施例3)
最初に、サファイア基板10に成長させたGaN薄膜又はGaN単結晶基板に、直接200nmのフォトレジストをスピンコーティングする。電子ビームフォトエッチング又はダブルビームUV露光により、周期が220nmで、幅が140nmである回折格子パターンを得て、現像する。電子ビーム蒸着又はマグネトロンスパッタリングで前記構造に厚さ50nmの金属クロムを蒸着し、アセトンに浸漬してフォトレジスト構造を超音波除去し、この時に、金属クロム回折格子の幅は80nmである。ドライエッチング(ICP)で窒化ガリウムをエッチングする深さは225nmであり、幅は80nmであり、クロム腐食液で残留クロムを洗い落とす。作製した窒化ガリウムナノ超構造の青色光のスペクトルの広い帯域における位相差と振幅比、透過率曲線は、図5a、図5bに示すとおりである。
【0029】
(実施例4)
最初に、サファイア基板に成長させたGaN薄膜又はGaN単結晶基板に、直接200nmのフォトレジストをスピンコーティングする。電子ビームフォトエッチング又はダブルビームUV露光により、周期が180nmで、幅が110nmである回折格子パターンを得て、現像する。電子ビーム蒸着又はマグネトロンスパッタリングで前記構造に厚さ50nmの金属クロムを蒸着し、アセトンに浸漬してフォトレジスト構造を超音波除去し、この時に、金属クロム回折格子の幅は75nmでる。ドライエッチング(ICP)で窒化ガリウムをエッチングする深さは185nmであり、幅は70nmであり、クロム腐食液で残留クロムを洗い落とす。作製した窒化ガリウムナノ超構造の青色光のスペクトルの広い帯域における位相差と振幅比、透過率曲線は、図6a、図6bに示すとおりである。
【0030】
本発明は、さらに、窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aと前記窒化ガリウムナノ超構造Bとを含む窒化ガリウム系レーザー発振器を提供し、窒化ガリウムナノ超構造Bは、窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aの光出射端面の前端に設けられ、且つ窒化ガリウムナノ超構造Bの回折格子のワイヤーグリッドの方向と窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aの出射光の偏光方向との夾角は45°である。本発明の窒化ガリウム系レーザー発振器は、窒化ガリウムナノ超構造Bの回折格子のワイヤーグリッドの方向と窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aの出射光の偏光方向との夾角の正負を変えることにより左偏光又は右偏光の出射を実現する。
【0031】
窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aは、コア100と、ヒートシンク200と、高度化ヒートシンク300と、LDチップ400と、パッケージキャップ500とを含む。前記部品を組み合わせて垂直キャビティ面発光レーザー発振器(図7図8)又は端面出射レーザー発振器(図9図10)を形成させることができる。垂直キャビティ面発光レーザー発振器である場合に、図7図8に示されるように、窒化ガリウムナノ超構造BをLDチップ400の上面に直接貼り付けてもよいし(デバイスの内部の出射面に集積させる)、パッケージキャップ500の上面に直接貼り付けてもよい、端面出射レーザー発振器である場合に、窒化ガリウムナノ超構造Bは、図9図10に示されるように、ヒートシンク200又はパッケージキャップ500の上面に集積させてもよい。
【0032】
窒化ガリウムナノ超構造Bと窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aは、結合又は光学接着又はパッケージキャップと出射穴との組み合わせなどにより当該窒化ガリウム系レーザー発振器本体Aの光出射端面の前端に集積される。集積に際し、窒化ガリウムナノ超構造Bを45°回転させる必要があり、基板に作製した回折格子が図2に示されるように基板の直辺と45°の夾角を有する場合に、向きを回転させることなく、レーザー出射面の前端に直接集積させてもよい。
【0033】
従来技術に比べて、本発明の実施形態の窒化ガリウムナノ超構造は、効率的な円偏光出射の機能を実現でき、窒化ガリウム系レーザー発振器に用いる場合に当該窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現できる。窒化ガリウム系レーザー発振器は、それ自体の特性により出射光が高度な直線偏光であるが、出射面の前端に窒化ガリウムナノ超構造を集積させ且つナノ回折格子のワイヤーグリッドとレーザーの偏光方向との夾角の正負を変えることにより左円偏光又は右円偏光の出射を実現する。
【0034】
本発明の実施形態の窒化ガリウムナノ超構造は、高い光透過率、高い偏光変換効率を有している。窒化ガリウムナノ超構造は、可視光帯域で吸収が起こらないのに加え、表面にナノ回折格子構造を作製することにより空気との大きな屈折率差による低出射効率を効果的に緩和しているため、窒化ガリウム系レーザー発振器の出射光に対して高い透過率を実現でき、また、ナノ超構造のパラメータを合理的に設計することにより、1/4波長板の機能を実現して、高い直線偏光度を有するレーザーを円偏光出射レーザーに効率的に変換することで、エネルギー損失が非常に小さい。
【0035】
本発明の実施形態の窒化ガリウムナノ超構造は、集積度が高く、安定性が高い。窒化ガリウムナノ超構造は、そのナノ構造の厚さが百ナノレベルだけであるように設計されるのに加え、基板の厚さが百ミクロンレベルだけであるため、高集積化したコンパクトなデバイスの実現には特に好適である。また、窒化ガリウム材料自体は硬さが高く、耐放射線性で、耐高温であり且つ分解しにくいため、それを使って作製した窒化ガリウムナノ超構造はより良い安定性を有しており、宇宙、深海、高温環境などの極端な条件でも依然として良好な物性を保つことができる。
【0036】
本発明の特定の例示的な実施形態についての上記の説明は、説明と例示が目的である。その説明は、開示されている特定の形態そのものに本発明を限定することを意図せず、しかも上記の教示からの様々な変形と変化があり得るということが自明である。例示的な実施例の選択と説明は、当業者が本発明の様々な異なる例示的な実施形態及び様々な異なる選択と変形を実現し、それらを利用できるように、本発明の特定の原理とその実際の用途を説明することを目的とする。本発明の範囲は、特許請求の範囲又はその均等物から限定されるものとする。
【0037】
(付記)
(付記1)
窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造において、下方から上方に、基板と、誘電体膜層と、ナノ回折格子構造層とをこの順に含み、前記ナノ回折格子構造層の回折格子の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、回折格子の周期の範囲は、100~280nmであり、回折格子の高さの範囲は、100~300nmであり、回折格子の線幅は、50~200nmである、
ことを特徴とする窒化ガリウムナノ超構造。
【0038】
(付記2)
前記窒化ガリウムナノ超構造の基板の材料は、窒化ガリウム、サファイアのうちの1種を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の窒化ガリウムナノ超構造。
【0039】
(付記3)
前記窒化ガリウムナノ超構造の誘電体膜層の材料は、窒化ガリウム、n型窒化ガリウム、p型窒化ガリウムのうちの1種を含み、前記誘電体膜層の厚さの範囲は、0.1~100μmである、
ことを特徴とする付記1に記載の窒化ガリウムナノ超構造。
【0040】
(付記4)
前記窒化ガリウムナノ超構造のサイズは、10~1000μmであり、その輪郭の形状は、円形、正方形を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の窒化ガリウムナノ超構造。
【0041】
(付記5)
サファイア基板に窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜を成長させるステップと、
薄膜にフォトレジストをスピンコーティングし、フォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製するステップと、
金属回折格子のマスク構造を作製するステップと、
窒化ガリウム又はn型窒化ガリウム又はp型窒化ガリウムの薄膜をエッチングして、窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食するステップと、を含む、
ことを特徴とする窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【0042】
(付記6)
窒化ガリウム基板にフォトレジストをスピンコーティングし、フォトエッチング及び現像を行ってフォトレジストによる回折格子パターンを作製するステップと、
金属回折格子のマスク構造を作製するステップと、
窒化ガリウム基板をエッチングして、窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食するステップと、を含む、
ことを特徴とする窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【0043】
(付記7)
前記フォトレジストの厚さの範囲は、100~300nmであり、前記フォトエッチングの方法は、電子ビーム露光、UV光直接描画、ダブルビーム干渉を含む、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【0044】
(付記8)
金属回折格子のマスク構造を作製する前記ステップは、
金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロムの薄膜を蒸着し、厚さは30~80nmであり、アセトンに浸漬して残留フォトレジストを剥離して、金属ニッケル又はクロム又はニッケル+クロム材料による回折格子を形成させることを含む、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【0045】
(付記9)
エッチングして窒化ガリウム回折格子を形成させ、余分な金属回折格子を腐食する前記ステップは、
ICPドライエッチング技術でエッチングし、回折格子のエッチングする深さは100~300nmであり、クロム腐食液及び/又はニッケル腐食液で余分なクロム及び/又はニッケルを洗い落とし、脱イオン水での超音波洗浄を行うことを含む、
ことを特徴とする付記8に記載の窒化ガリウム系レーザー発振器の円偏光出射を実現するための窒化ガリウムナノ超構造の作製方法。
【0046】
(付記10)
窒化ガリウム系レーザー発振器本体と付記1~4のいずれか1つに記載の窒化ガリウムナノ超構造とを含み、前記窒化ガリウムナノ超構造は、前記窒化ガリウム系レーザー発振器本体の光出射端面の前端に設けられ、且つ前記窒化ガリウムナノ超構造の回折格子のワイヤーグリッドの方向と前記窒化ガリウム系レーザー発振器本体の出射光の偏光方向との夾角は45°である、
ことを特徴とする窒化ガリウム系レーザー発振器。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】