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特表2024-505776アデノシンが関与するNMN半合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】アデノシンが関与するNMN半合成方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/30 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
C12P19/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527248
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2022100140
(87)【国際公開番号】W WO2023273960
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110728702.1
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523160173
【氏名又は名称】康盈紅莓(中山)生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】金 彩科
(72)【発明者】
【氏名】趙 媛
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AE02
4B064AF23
4B064CA06
4B064CA21
4B064CC30
4B064CD01
4B064CD04
4B064CD06
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA20
(57)【要約】
同一の反応系において、(A)アデノシン、リン酸塩、及び酵母細胞により代謝できる糖類を酵母細胞の触媒作用で反応させてATPを生成するステップと、(B)NRとATPをNRKの触媒作用で反応させてNMN及びADPを生成することに対応するNRの酵素によるリン酸化ステップとを含む、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供し、このようにしてATPの生成及び循環利用の過程においてNMNの効率的な合成を実現し、プロセスを簡略化するとともに排出を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の反応系において、(A)アデノシン、リン酸塩、及び酵母細胞により代謝できる糖類を酵母細胞の触媒作用で反応させてATPを生成するステップと、(B)NRとATPをNRKの触媒作用で反応させてNMN及びADPを生成することに対応するNRの酵素によるリン酸化ステップとを含む、ことを特徴とするアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項2】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NR原料は、市販のNR純品、市販のNRC純品、NRを含有する固体、NRCを含有する固体、NRを含有する液体及びNRCを含有する液体から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項3】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞により代謝できる糖類は、グルコース、スクロース、デンプン及びグリセリンから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項4】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NRK酵素は、液体酵素形態及び固定化酵素形態のうちの少なくとも1種の初期形態で存在する、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項5】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、酸化的リン酸化代謝を行うことができる酵母細胞である、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項6】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、ピキア酵母及び出芽酵母から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項7】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、金属イオンがさらに添加される、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項8】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、添加された金属イオンは、マグネシウムイオン及びマンガンイオンから選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項9】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、アデノシンとNRのモル比の範囲は、0.01~1である、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項10】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NRとリン酸塩のモル比の範囲は、1~20である、請求項9に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項11】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、冷凍保存された湿潤酵母である、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項12】
前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、トルエン、n-ブタノール及びツイーン20のうちの少なくとも1種の有機試薬がさらに添加される、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項13】
前記ステップ(A)を前記ステップ(B)の前に行うことにより、前記ステップ(B)の反応にATPを提供して、前記ステップ(A)と前記ステップ(B)が同一の反応系において互いに促進する反応状態を形成する、請求項1に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【請求項14】
ADP及びリン酸塩を用いて酵母細胞の作用でATPを再生するステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)合成の技術分野に関し、特にアデノシンが関与するNMN半合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を体内で合成するための直接前駆体であり、NMNを補充することは、体内のNADの含有量レベルを向上させる最も効果的な方法であり、体の正常な新陳代謝を促進することに対して広く深くて大きな健康上の意義を有する。高齢者のNADレベルが減少する一方、食物から十分なNMNを得ることができないため、NMNは、大規模に適用されるサプリメントとなることが期待される。
【0003】
現在、NMNの従来の合成技術には、発酵法、化学合成法、半合成法及び全酵素法という4種の方法がある。発酵法について、NMNを生成する微生物菌種を構築する必要があり、この微生物を大量に培養し繁殖させる過程において、菌体細胞でNMNを合成する。様々な種が下等単細胞生物を含めてNMNを体内で触媒合成する重要な酵素(NAMPT、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)の基本的な活性が一般的に低いため、NMNを効率的に発現する菌種を構築することは、非常に困難であり、またNMNの合成経路が長く、多酵素系及び天然の分解酵素系に関するため、NMNを発酵法で効率的で大規模に製造する製造方法は、非常に困難であり、プロセスコストが高く、製品の市場競争力がない。化学合成法について、ニコチンアミド(又はニコチン酸)、テトラアセチルリボース、トリフェニルホスフィンオキシドなどを基礎原料とし、まず化学的方法でニコチンアミドリボシド(NR)を合成し、さらにNRをリン酸化してNMNを得る。該方法の主な問題として、第2ステップの化学的リン酸化ステップが燃えやすく爆発しやすく毒性が高いことに関わり、大規模に産業化すれば環境保護及び安全生産の監督管理上の深刻な問題に直面し、化学的鏡像体の不純物、毒性原料及び溶媒が残留するなどの問題も存在し、その製品の人体への長期適用に関する安全性上の心配が消費者にとって解消しにくい問題である。半合成法は、NRを化学的に合成することを基にNRを酵素法でリン酸化してNMNを得ることであり、該方法は、化学法及び酵素法の長所及び短所を兼備し、その主な問題は、化学法における溶媒及び毒性成分が残留するリスクを有し、また酵素法におけるリン酸化ステップに高価なアデノシン三リン酸(ATP)を必要とし、コストが高いことである。全酵素法は、ニコチンアミド、リボース及びATP(アデノシン三リン酸)などを基礎原料とし、一連の酵素で連続的に触媒してNMNを形成することである。該方法は、環境保護で安全という利点があり、様々な酵素の発現、精製及び固定化に関するという難点があり、従来の技術では規模化製造が困難であり、酵素のコストが高すぎる。
【0004】
従来の4種のNMNの合成方法のうち、半合成法は、現在の主流のNMN合成方法である。該方法は、ニコチンアミド(又はニコチン酸)及びテトラアセチルリボースを出発原料としてもよく、まず化学的方法でNRを合成し、さらにNRとATPを用いて特定のキナーゼの触媒でNMNを生成するか、又は直接的にNRを原料として酵素反応を行ってNMNを製造することである。半合成法のコアステップは、NRの酵素によるリン酸化であり、ATPからリン酸基をNRに提供してNMNを形成し、ATPがアデノシン二リン酸(ADP)になり、反応式がNR+ATP→NMN+ADPであり、この反応を触媒する酵素がニコチンアミドリボシドキナーゼ(NRK)である。ATPの使用量を減少させるために、一般的に、ADPとポリリン酸塩(例えば、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム又はヘキサメタリン酸ナトリウム)に対してさらに酵素反応を行ってATPに転化し、ATPの繰り返し利用を実現し、反応式がADP+PPi(ピロリン酸)→ATP+Pi(リン酸塩)であり、この反応を触媒する酵素がアデニレートホスホトランスフェラーゼ(PPK2)である。この2つのステップの酵素反応(NRのリン酸化及びATPの再生)は、別々に行われてもよいし、合わせて行われてもよい。そのプロセスの難点は、主に2つあり、1つの難点として、反応中に大量のリン酸塩が蓄積されてさらなる反応を干渉し、リン酸塩の分離及び除去のプロセスの難度が高く、またATPの回収率にも影響を与えることであり、もう1つの難点として、反応系が2種の酵素に関し、酵素の使用量が大きく、コストが高く、また不可避的にもたらされた不純物となる酵素が多く、NR、NMN、ATP、ADPなどの分解副反応の程度も高く、反応系内に副反応により生成されたニコチンアミド、リボース、ADP、AMP、NR、アデノシン、アデニン及びリン酸塩などが存在するため、系における成分が複雑になり、制御しにくく、NMN製品の精製プロセスが困難になり、コストが高く、製品の品質の安定性も制御しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の半合成法比べて、NMN製品の精製プロセスを簡略化して、コストを低くすることができる、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供することを1つの目的とする。
本発明は、化学法及び酵素法の利点を両立させ、NMN製品の合成効率を保証するとともに排出を低減することができ、それに対応してより低い製造コスト及び環境コストを有する、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供することを1つの目的とする。
本発明は、従来の半合成法に比べて、ATPの代わりに安価なアデノシンを用い、かつ反応中に酵母細胞を導入してエネルギー代謝に応じてアデノシンをATPに転化するという方式を用いることにより、従来のNRのリン酸化過程を合わせてATPの繰り返し利用を実現してATPの回収プロセスを省略し、従来のNRのリン酸化過程において形成されたリン酸塩を反応物としてリン酸塩の除去プロセスを省略することができ、このようにして上記アデノシンの関与によりNMN製品の精製プロセスを簡略化する、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供することを1つの目的とする。
本発明は、従来の半合成法に比べて、ATPの代わりに安価なアデノシンを用い、かつ反応中に酵母細胞を導入してエネルギー代謝に応じてアデノシンをATPに転化するという方式を用いることにより、従来のNRのリン酸化過程を合わせてATPの繰り返し利用を実現して、上記アデノシンのモル使用量を減少させることができ、かつ上記アデノシンの価格がATPの価格よりはるかに低いため、対応するNMN製品の原料コストが顕著に低減されて、より低い製造コストを有する、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供することを1つの目的とする。
本発明は、従来の半合成法に比べて、ATPの代わりに安価なアデノシンを用い、かつ反応中に酵母細胞を導入してエネルギー代謝に応じてアデノシンをATPに転化するという方式を用いることにより、従来のNRのリン酸化過程を合わせてATPの繰り返し利用を実現し、従来のNRのリン酸化過程において形成されたリン酸塩を反応物とすることができ、すなわちNMN製品を分離し精製した後の他の反応物と生成物を繰り返して利用して、排出を低減することができ、対応するNMN製品の製造が環境にやさしく、環境コストはより低く、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供することを1つの目的とする。
本発明は、NR、リン酸塩、アデノシン及びスクロースを原料とし、NRK及び酵母細胞を触媒とし、ATPの生成、NRのリン酸化及びATPの利用を1つの反応系内に統一して行って、NMNの効率的な合成を完了することができ、NMN製品の合成効率を保証するという化学法の利点を両立させるとともに、様々な反応物(NR、リン酸塩、アデノシン、スクロースなど)が基本的に完全に消費されて、排出を低減するという酵素法の利点を両立させることができるため、従来の半合成法に比べて簡単で実現しやすく、コストが低い、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、本発明に係るアデノシンが関与するNMN半合成方法は、同一の反応系において、
(A)アデノシン、リン酸塩、及び酵母細胞により代謝できる糖類を酵母細胞の触媒作用で反応させてATPを生成するステップと、
(B)NRとATPをNRKの触媒作用で反応させてNMN及びADPを生成することに対応するNRの酵素によるリン酸化ステップとを含む。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NR原料は、市販のNR純品、NRを含有する固体及びNRを含有する液体から選択される少なくとも1種である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞により代謝できる糖類は、グルコース、スクロース、デンプン及びグリセリンから選択される少なくとも1種である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NRK酵素は、液体酵素形態及び固定化酵素形態のうちの少なくとも1種の初期形態で存在する。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、酸化的リン酸化代謝を行うことができる酵母細胞である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、ピキア酵母及び出芽酵母から選択される少なくとも1種である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、金属イオンがさらに添加される。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、添加された金属イオンは、マグネシウムイオン及びマンガンイオンから選択される少なくとも1種である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、アデノシンとNRのモル比の範囲は、0.01~1である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NRとリン酸塩のモル比の範囲は、1~20である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、冷凍保存された湿潤酵母である。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、トルエン、n-ブタノール及びツイーン20のうちの少なくとも1種の有機試薬がさらに添加される。
一実施例では、前記ステップ(A)を前記ステップ(B)の前に行うことにより、前記ステップ(B)の反応にATPを提供して、前記ステップ(A)と前記ステップ(B)が同一の反応系において互いに促進する反応状態を形成する。
一実施例では、前記アデノシンが関与するNMN半合成方法は、ADP及びリン酸塩を用いて酵母細胞の作用でATPを再生するステップをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明は、本発明を開示して当業者が本発明を実現することができるためのものである。以下の説明における好ましい実施例は、例示的なものにすぎず、当業者であれば他の明らかな変形を想到することができる。以下の説明に定義される本発明の基本的な原理は、他の実施形態、変形例、改良例、均等例、及び本発明の要旨及び範囲を逸脱しない他の技術手段に適用することができる。
当業者であれば理解すべきこととして、本発明の開示において、用語「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などで示す方向又は位置関係は、本発明を説明しやすく説明を簡略化するためのものにすぎず、示された装置又は素子が特定の方向を有し、特定の方向で構成され動作しなければならないことを示すか又は示唆するものではないため、上記用語は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
なお、用語「一」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」であると理解すべきであり、すなわち一実施例では、1つの素子の数は、1つであってもよく、別の実施例では、上記素子の数は、複数であってもよく、用語「一」は、数を限定するものであると理解すべきではない。
【0008】
本発明は、従来の半合成法に比べて、ATPの代わりに安価なアデノシンを用い、かつ反応中に酵母細胞を導入してエネルギー代謝に応じてアデノシンをATPに転化するという方式を用いることにより、従来のNRのリン酸化過程を合わせてATPの繰り返し利用を実現し、従来のNRのリン酸化過程において形成されたリン酸塩を反応物とする、アデノシンが関与するNMN半合成方法を提供する。
【0009】
具体的には、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法では、NR、リン酸塩、アデノシン、及び酵母細胞により代謝できる糖類(例えば、グルコース、スクロース及びグリセリンなど)を原料とし、NRK及び酵母細胞を触媒とし、ATPの生成、NRのリン酸化及びATPの利用を1つの反応系内に統一して行うことにより、NMNの効率的な合成を完了することができ、反応式がNR+スクロース+アデノシン+リン酸塩+O2→NMN+ATP+CO2+H2Oである。該反応系において、酵母細胞は、酸化的リン酸化代謝過程で、糖の酸化によりエネルギーを提供し、リン酸塩とアデノシンの結合を促進して、アデニル酸(AMP)を生成し、続いてADP及びATPを生成し、ATPがNRのリン酸化に関与してADPに変化した後に、ATPに自動的に転化して反応に関与し続ける。すなわち、反応系におけるアデノシン、AMP及びADPなどは、いずれもNRのリン酸化に関与できるATPに迅速に転化することができ、従来の半合成法に比べて、NRのリン酸化過程において形成されたリン酸塩を反応物としてリン酸塩の除去プロセスを省略することができ、かつATPの繰り返し利用を実現してATPの回収プロセスを省略することができ、このようにして上記アデノシンの関与によりNMN製品の精製プロセスを簡略化する。
【0010】
さらに、本発明の一実施例では、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法では、NR、リン酸塩、アデノシン、スクロース及びマグネシウムイオンを原料とし、NRK(液体酵素又は固定化酵素に限定されない)及び酵母細胞を触媒とし、水溶液において、開始pHを中性範囲とし、空気に接触しながら撹拌し、反応させる。このように、ATPの生成、NRのリン酸化及びATPの利用は、1つの反応系内に行われ、様々な反応物(NR、リン酸塩、アデノシン、スクロースなど)は、基本的に完全に消費され、対応する反応系は、簡単で実現しやすく、コストが低く、かつ環境にやさしく、環境コストはより低い。
【0011】
本発明の別の実施例では、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法では、NR及びアデノシンを基質とし、酵母及びニコチンアミドリボシドキナーゼを用いてワンポット法でNMNを製造する。例示的に、1Lの反応系に最終濃度が100mMのNRC、最終濃度が50mMのアデノシン、最終濃度が330mMのリン酸水素二カリウム、最終濃度が70mMのリン酸二水素カリウム、最終濃度が120mMのスクロース、最終濃度が50mMの塩化マグネシウム、最終濃度が5mMの塩化マンガン、300gの酵母、500mgのニコチンアミドリボシドキナーゼ粗酵素の凍結乾燥粉末を順に添加し、十分に撹拌し溶解させた後、反応温度を37℃に制御し、300rpmで撹拌し反応させ、反応過程において高速液体クロマトグラフィーでNMNの濃度を検出し、反応が6時間内に終了し、反応により29.84gのNMNを得て、反応収率が89.3%であった。
【0012】
本発明の別の実施例では、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法では、NR及びアデノシンを基質とし、出芽酵母及びニコチンアミドリボシドキナーゼ磁性固定化酵素を用いてワンポット法でNMNを製造する。例示的に、1Lの反応系に最終濃度が50mMのアデノシン、最終濃度が330mMのリン酸水素二カリウム、最終濃度が70mMのリン酸二水素カリウム、最終濃度が120mMのスクロース、最終濃度が50mMの塩化マグネシウム、最終濃度が5mMの塩化マンガン、300gの湿潤出芽酵母を順に添加し、十分に撹拌し溶解させた後、反応温度を37℃に制御し、1時間静置し発酵させた。上記酵母発酵液に最終濃度が100mMのNRC及び300gのニコチンアミドリボシドキナーゼ磁性固定化酵素を添加し、300rpmで撹拌し反応させ、反応温度を37℃に制御し、自動滴定装置を用いて、3Mの水酸化ナトリウムで反応pHを6.0に制御した。反応過程において高速液体クロマトグラフィーでNMNの濃度を検出し、反応が2時間内に終了し、反応により31.58gのNMNを得て、反応転化率が94.5%であった。
【0013】
本発明をさらに説明するために、本発明に記載のアデノシンが関与するNMN半合成方法は、同一の反応系において、
(A)アデノシン、リン酸塩、及び酵母細胞により代謝できる糖類を酵母細胞の触媒作用で反応させてATPを生成するステップと、
(B)NRとATPをNRKの触媒作用で反応させてNMN及びADPを生成することに対応するNRの酵素によるリン酸化ステップとを含む。
なお、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NR原料は、市販のNR純品、市販のニコチンアミド塩化物(NRC)純品、NRを含有する固体、NRCを含有する固体、NRを含有する液体及びNRCを含有する液体のうちの少なくとも1種である。
【0014】
さらに、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞により代謝できる糖類は、グルコース、スクロース、デンプン及びグリセリンのうちの単一の糖類又は混合糖類を含むが、それらに限定されない。
特に、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NRK酵素は、液体酵素であってもよく、固定化酵素であってもよく、本発明はこれを限定しない。
さらに、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、酸化的リン酸化代謝を行うことができる様々な酵母細胞であり、例えば、ピキア酵母又は出芽酵母である。
【0015】
好ましくは、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、マグネシウムイオン、マンガンイオンなどの金属イオンがさらに添加されてもよい。
好ましくは、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、アデノシンとNRのモル比の範囲は、0.01~1である。
好ましくは、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、NRとリン酸塩のモル比の範囲は、1~20である。
【0016】
注意すべきこととして、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、酵母細胞は、冷凍保存された湿潤酵母であってもよい。
特に、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法の反応系において、トルエン、n-ブタノール及びツイーン20のうちの少なくとも1種の有機試薬がさらに添加されてもよい。
注意すべきこととして、本発明のいくつかの実施例では、反応進行において、上記ステップ(A)を上記ステップ(B)の前に行うことにより、上記ステップ(B)の反応にATPを提供して、上記ステップ(A)と上記ステップ(B)が同一の反応系において互いに促進する反応状態を形成する。
特に、本発明のこれらの実施例では、上記アデノシンが関与するNMN半合成方法は、ADP及びリン酸塩を用いて酵母細胞の作用でATPを再生するステップをさらに含む。
【0017】
当業者であれば理解されるように、以上の実施例は、例示的なものにすぎず、異なる実施例の特徴を互いに組み合わせることにより、本発明に開示した内容に基づいて容易に想到できるが上記説明において明確に指摘されない実施形態を得ることができる。
当業者であれば理解すべきこととして、上記説明に示す本発明の実施例は、例示的なものにすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の目的は、既に完全で効果的に達成される。本発明の機能及び構造原理は、実施例に示され、かつ説明され、上記原理から逸脱することなく、本発明の実施形態に対して任意の変形又は修正を行うことができる。
【国際調査報告】