(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置のための加熱チャンバ
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20240201BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20240201BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535947
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2022051543
(87)【国際公開番号】W WO2022167259
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライト, アレク
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AB22
4B162AC12
4B162AC22
(57)【要約】
エアロゾル発生装置(100)のための加熱チャンバ(200)を製造する方法(300)が開示される。本方法(300)は、加熱チャンバ(200)であって、熱伝導性シェル(202)と、加熱チャンバ(200)内にエアロゾル基材を受け入れるための開口部(204)とを含む加熱チャンバ(200)を提供することと、真空蒸着を使用して、加熱チャンバ(200)の熱伝導性シェル(202)の外面(203)上に電気絶縁性材料の層(206)を堆積させることと、加熱要素(208)を、加熱要素(208)が電気絶縁性材料の層(206)と接触するように加熱チャンバ(200)に取り付けることとを含み、電気絶縁性材料の層(206)は、加熱要素(208)と熱伝導性シェル(202)との間のいかなる接触も防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置のための加熱チャンバを製造する方法であって、
加熱チャンバであって、熱伝導性シェルと、前記加熱チャンバ内にエアロゾル基材を受け入れるための開口部とを含む加熱チャンバを提供することと、
真空蒸着を使用して、前記加熱チャンバの前記熱伝導性シェルの外面上に電気絶縁性材料の層を堆積させることと、
加熱要素を、前記加熱要素が前記電気絶縁性材料の層と接触するように前記加熱チャンバに取り付けることと、を含み、
前記電気絶縁性材料の層は、前記加熱要素と前記熱伝導性シェルとの間のいかなる接触も防止する、方法。
【請求項2】
真空蒸着を使用して前記電気絶縁性材料の層を堆積させることは、化学蒸着を使用して前記電気絶縁性材料の層を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気絶縁性材料は、
酸化ケイ素、
ダイヤモンド、及び
ダイヤモンド状炭素(DLC)
の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気絶縁性材料は、a-SiOx:CH
Yを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電気絶縁性材料の堆積層の厚さは、0.3μm~5μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱要素と、前記加熱要素が支持される可撓性バッキングフィルムとを含む薄膜ヒータを提供することと、
前記加熱要素を前記電気絶縁性材料の層に押し当てて、前記薄膜ヒータを前記加熱チャンバに取り付けることと、
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記可撓性バッキングフィルムは、ポリイミド又はポリエーテルケトン(PEEK)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱チャンバは、管状の熱伝導性シェルを含む管状の加熱チャンバであり、前記方法は、前記加熱要素を前記電気絶縁性材料の層に押し当てて前記加熱要素を前記加熱チャンバの周りに巻き付けることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱チャンバは、管状の熱伝導性シェルを含む管状の加熱チャンバであり、前記方法は、前記加熱要素を前記電気絶縁性材料の層に押し当てて前記薄膜ヒータを前記加熱チャンバの周りに巻き付けることを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱要素を前記加熱チャンバに固定するために前記加熱チャンバの周りに熱収縮フィルムを巻き付けることを更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
プラズマ強化化学蒸着を使用して前記電気絶縁性材料の層を堆積させることを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
無線周波数電気励起源と、CH
4を含むキャリアガスとを使用して、ダイヤモンド状炭素(DLC)又はダイヤモンドを含む薄膜を堆積させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
マイクロ波周波数電気励起源と、シランを含むキャリアガスとを使用して、酸化ケイ素を含む薄膜を堆積させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって製造される、エアロゾル発生装置のための加熱チャンバ。
【請求項15】
請求項14に記載の加熱チャンバを含むエアロゾル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置及びエアロゾル発生装置のための加熱チャンバを製造する方法に関する。本開示は、詳細には、自己完結型であり且つ低温であり得る携帯型エアロゾル発生装置に適用可能である。そのような装置は、タバコ又は他の好適なエアロゾル基材材料を、燃やすのではなく、伝導、対流及び/又は放射によって加熱して、吸入のためのエアロゾルを発生させ得る。
【背景技術】
【0002】
(気化器としても知られる)リスク低減装置又はリスク修正装置の人気及び使用は、紙巻きタバコ、葉巻、シガリロ及びローリングタバコなどの従来のタバコ製品の喫煙を止めることを望む常習的喫煙者を支援するための補助として、ここ数年で急速に成長してきた。従来のタバコ製品においてタバコを燃やすのとは対照的に、エアロゾル化可能物質を加熱又は加温する様々な装置及びシステムが利用可能である。
【0003】
一般に利用可能なリスク低減装置又はリスク修正装置は、基材加熱式エアロゾル発生装置又は加熱非燃焼式(HNB)装置である。このタイプの装置は、湿った葉タバコ又は他の好適なエアロゾル化可能材料を典型的に含むエアロゾル基材(すなわち消耗品)を典型的には150℃~300℃の範囲の温度に加熱することにより、エアロゾル又は蒸気を発生させる。エアロゾル基材を、燃焼させるか又は燃やすのではなく、加熱することにより、ユーザが求める成分を含むが、燃焼による望ましくない副生成物を含まないエアロゾルが放出される。加えて、タバコ又は他のエアロゾル化可能材料を加熱することにより生成されるエアロゾルは、ユーザにとって不快となり得る、燃焼によって生じ得る焦げた味又は苦味を典型的には含まない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の加熱非燃焼式装置内において、装置の信頼性の高い動作も保証しながら、加熱プロセスの効率を向上させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル生成装置のための加熱チャンバを製造する方法が提供され、本方法は、加熱チャンバであって、熱伝導性シェルと、加熱チャンバ内にエアロゾル基材を受け入れるための開口部とを含む加熱チャンバを提供することと、真空蒸着を使用して、加熱チャンバの熱伝導性シェルの外面上に電気絶縁性材料の層を堆積させることと、加熱要素を、加熱要素が電気絶縁性材料の層と接触するように加熱チャンバに取り付けることとを含み、電気絶縁性材料の層は、加熱要素と熱伝導性シェルとの間のいかなる接触も防止する。
【0006】
このようにして、既知のエアロゾル発生装置と比較してより効率的な加熱アセンブリが提供される。真空蒸着の使用により、熱伝導性シェルと加熱要素との間に電気絶縁性材料の非常に薄く均一な層を堆積させることが可能になる。さらに、真空蒸着により、高い絶縁破壊電圧だけでなく、高い熱伝導率を有する材料を堆積させることが可能になり、電気絶縁性材料の層を通した加熱チャンバへの効率的な熱伝達を保証することが可能になる。電気絶縁性材料層の配置及び特性は、熱伝導性シェルと加熱要素との間の短絡を防止するように機能し、電気絶縁性材料層の厚さを薄くすることで、熱伝導性シェルへの熱エネルギー伝達が最適化される。そのため、この製造方法は、効率及び信頼性を向上させて動作することができる、エアロゾル発生装置のための加熱チャンバを提供する。真空蒸着を使用して、加熱チャンバの熱伝導性シェルの外面上に電気絶縁性材料の層を堆積させるステップは、物理蒸着及び化学蒸着の一方又は両方を用いて層を堆積させることを含み得る。
【0007】
好ましくは、方法は、化学蒸着を使用して電気絶縁性材料の層を堆積させることを含む。このようにして、電気絶縁性材料の層を高い純度及び密度で堆積させることができる。そのうえ、化学蒸着により、熱伝導性シェルの表面全体にわたって一様な厚さで電気絶縁性材料を堆積させることが可能になり、それにより層全体にわたって一貫した熱的及び電気的特性を保証することが可能になる。
【0008】
好ましくは、電気絶縁性材料は、酸化ケイ素、ダイヤモンド及びダイヤモンド状炭素(DLC)の少なくとも1つを含む。このようにして、熱伝導性シェルと加熱要素とを分離する電気絶縁性材料の層は、高い絶縁破壊電圧及び高い熱伝導率を有する。これにより、熱伝導性シェルと加熱要素との間に短絡が起こる可能性がさらに低減され、熱伝導性シェルへの熱エネルギー伝達の効率も向上する。一例では、電気絶縁層は、官能化されたシリカ様コーティング、例えばDursan(商標)と呼ばれることもあるa-SiOX:CHYを含み得る。
【0009】
好ましくは、電気絶縁性材料の層の厚さは、0.3μm~5μmである。例えば、電気絶縁性材料の堆積層の厚さは、0.3μm、0.4μm、0.5μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、4μm又は5μmであり得る。特に、a-SiOX:CHYを含む電気絶縁性材料の層は、好ましくは、0.4μm~1.6μmの厚さを有する。
【0010】
好ましくは、方法は、加熱要素と、加熱要素が支持される可撓性バッキングフィルムとを含む薄膜ヒータを提供することと、加熱要素を電気絶縁性材料の層に押し当てて、薄膜ヒータを加熱チャンバに取り付けることとをさらに含む。このようにして、熱的又は電気的特性に関して妥協することなく、コンパクトな加熱チャンバが生産される。
【0011】
好ましくは、バッキングフィルムは、ポリイミド又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。PEEKは、耐熱性に優れた材料であり、熱源付近に配置されるコンポーネントでの使用に理想的である。PEEKは、加熱コンポーネントと直接接触するコンポーネントに使用されるとき、装置内の他のコンポーネントへの熱伝導を低減する。
【0012】
好ましくは、加熱チャンバは、管状の熱伝導性シェルを含む管状の加熱チャンバである。一実施形態では、方法は、加熱要素を電気絶縁性材料の層に押し当てて、加熱要素を加熱チャンバの周りに巻き付けることを含む。別の実施形態では、方法は、加熱要素を電気絶縁性材料の層に押し当てて、薄膜ヒータを加熱チャンバの周りに巻き付けることを含む。
【0013】
好ましくは、方法は、加熱要素を加熱チャンバに固定するために、加熱チャンバの周りに熱収縮フィルムを巻き付けることをさらに含む。このようにして、加熱アセンブリのコンパクトな配置も維持しながら、加熱要素が確実に加熱チャンバと接触したままになる。
【0014】
好ましくは、方法は、プラズマ強化化学蒸着を使用して電気絶縁性材料の層を堆積させることをさらに含む。このようにして、プラズマ強化化学蒸着により、より低い成膜温度の使用、より一様な膜厚及び3次元構造の膜層を形成する能力の向上が可能になる。
【0015】
好ましくは、プラズマ強化化学蒸着を使用して電気絶縁性材料の層を堆積させることは、無線周波数電気励起源と、CH4を含むキャリアガスとを使用して、ダイヤモンド状炭素、DLC又はダイヤモンドを含む薄膜を堆積させることを含む。
【0016】
好ましくは、プラズマ強化化学蒸着を使用して電気絶縁性材料の層を堆積させることは、マイクロ波周波数電気励起源と、シランを含むキャリアガスとを使用して、酸化ケイ素、例えば二酸化ケイ素又はa-SiOX:CHYを含む薄膜を堆積させることを含む。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の方法によって製造される、エアロゾル発生装置のための加熱チャンバが提供される。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様の加熱チャンバを含むエアロゾル発生装置が提供される。
【0019】
ここで、図面を参照して本発明の実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による例示的なエアロゾル発生装置である。
【
図2】本発明の一実施形態による加熱チャンバの概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による加熱チャンバを製造するための方法ステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生装置100を例示する。エアロゾル発生装置100は、内部コンポーネントが見える状態で、組み立てられた構成において例示される。エアロゾル発生装置100は、タバコ蒸気装置とも呼ばれることがある加熱非燃焼式装置であり、エアロゾル発生材料、例えばタバコのロッドなどのエアロゾル基材を受け入れるように構成された加熱チャンバ200を含む。加熱チャンバ200は、エアロゾル発生材料のロッドを燃やさずに加熱して、ユーザが吸入するための蒸気又はエアロゾルを生成するように動作可能である。当然のことながら、当業者であれば、
図1に描写されたエアロゾル発生装置100が単に本発明による例示的なエアロゾル発生装置であることを理解するであろう。他のタイプ及び構成のタバコ蒸気製品、気化器又は電子タバコも本発明によるエアロゾル発生装置として使用することができる。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態による加熱チャンバ200の断面図を示す。加熱チャンバ200は、その中にエアロゾル基材(消耗品とも呼ばれる)を保持するように構成された熱伝導性シェル202を含む。特に、熱伝導性シェル202は、エアロゾル基材のロッドがその中に位置決めされ得る円筒キャビティを画定する。熱伝導性シェル202は、管状、例えば円筒形であり、熱伝導性シェル202の長手方向端部に位置する開口部204を有する。使用時、ユーザは、エアロゾル基材が加熱チャンバ200内に位置決めされ、熱伝導性シェル202の内面201と接するように、加熱チャンバ200の開口部204を通してエアロゾル基材を挿入することができる。熱伝導性シェル202の長さは、エアロゾル基材の一部が熱伝導性シェル202の開口部204を通して(すなわち加熱チャンバ200から外に)突出し、ユーザの口に受け入れられ得るように構成され得る。
【0023】
熱伝導性シェル202は、好ましくは、十分な構造安定性を維持しながら、熱伝導性シェル202の側壁を通したエアロゾル基材への効率的な熱伝達を可能にする材料を含む。このような材料の例としては、鋼又はステンレス鋼が挙げられる。
【0024】
当業者であれば、加熱チャンバ200(及び熱伝導性シェル202)が管状であることに限定されないことを理解するであろう。例えば、熱伝導性シェル202は、立方体状、円錐状、半球状又は他の形状のキャビティとして形成され、相補的な形状のエアロゾル基材を受け入れるように構成され得る。そのうえ、いくつかの実施形態では、熱伝導性シェル202は、エアロゾル基材を完全に取り囲むのではなく、代わりにエアロゾル基材の限定されたエリアとのみ接触することがある。
【0025】
電気絶縁性材料の層206が熱伝導性シェル202の外面203を取り囲む。特に、電気絶縁性材料の層206は、熱伝導性シェル202の外周面203に隣接している(すなわち当接、接触する)。
図2では、電気絶縁性材料の層206は、熱伝導性シェル202の外面203の長さ全体に沿って延在するように描写されている。しかしながら、当業者であれば、他の実施形態では、電気絶縁性材料の層206は、熱伝導性シェル202の長さの一部に沿ってのみ延在し得ることを理解するであろう。
【0026】
電気絶縁性材料の層206は、真空蒸着技術を使用して堆積され、好ましくは化学蒸着又はプラズマ強化化学蒸着を使用して堆積される。したがって、電気絶縁性材料の層206は、高い純度及び均質性を呈しながら、例えば0.3μm~5μmの薄層として堆積され得る。
【0027】
薄膜ヒータ207が電気絶縁性材料の層206を取り囲む。薄膜ヒータ207は、可撓性バッキングフィルム210上に搭載された加熱要素208を含む。加熱要素208は、可撓性バッキングフィルム210の表面全体にわたって延在する1つ又は複数のヒータトラックを含み得る。加熱要素208は、電気エネルギーを熱に変換するのに適した加熱材料(ステンレス鋼、チタン、ニッケル、ニクロム、ニッケル基合金、銀など)を含む。使用時、加熱要素208の温度が上昇し、熱エネルギーが電気絶縁性材料の層206にわたって熱伝導性シェル202に伝達されるように、バッテリ(図示せず)などの電力源から加熱要素208に電力が供給され得る。加熱チャンバ200内に受け入れられたエアロゾル基材は、熱伝導性シェル202によって伝導加熱されて、ユーザが吸入するためのエアロゾルを生成する。
【0028】
可撓性バッキングフィルム210は、好ましくは、ポリイミド又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など、高い誘電能力及び低い熱質量を有する可撓性材料を含む。
【0029】
薄膜ヒータ207は、加熱要素208が電気絶縁性材料の層206に隣接する(すなわち当接、接触する)ように、加熱チャンバ200の周りに周方向に巻き付けられる。すなわち、電気絶縁性材料の層206は、加熱要素208と熱伝導性シェル202との間の接触が防止されるように、加熱要素208と熱伝導性シェル202とを分離する障壁として機能する。可撓性バッキングフィルム210は、電気絶縁性材料の層206に対して加熱要素208の反対側にあり、すなわち、加熱要素208は、加熱チャンバ200に関して可撓性バッキングフィルム210の内面に搭載される。
【0030】
当業者であれば、代替的実施形態では、加熱チャンバ200が薄膜ヒータ207を含まないことがあることを理解するであろう。換言すれば、加熱要素208は、薄膜ヒータとして形成されないことがあり、加熱チャンバは、可撓性バッキングフィルム210を含まないことがある。例えば、加熱要素208は、電気絶縁性材料の層206に直接適用される、例えば接着される独立型加熱要素208であり得る。特に、加熱要素208は、加熱要素208が電気絶縁性材料の層206と接するように、加熱チャンバ200の周りに例えば周方向に巻き付けることができる。
【0031】
電気絶縁性材料の層206は、好ましくは、高い絶縁破壊電圧及び高い熱伝導率を有する材料を含む。したがって、電気絶縁性材料の層206は、加熱要素208から熱伝導性シェル202への効率的な熱の伝達を可能にしながら、加熱要素208と熱伝導性シェル202との間に起こる短絡を防止する。当業者であれば、熱伝導性シェル202が抵抗ヒータではなく、そのため、電流を受けるべきではないことを理解するであろう。電気絶縁性材料の層206は、加熱要素208と熱伝導性シェル202とを分離し、加熱要素208から熱伝導性シェル202に電流が流れないことを保証する。そのうえ、当業者であれば、電気絶縁性材料の層206の厚さが薄いため、加熱要素208から熱伝導性シェル202への熱伝達の効率が高いままであることを理解するであろう。
【0032】
電気絶縁性材料の層206に適した材料の例としては、シリカ(SiO2)、ダイヤモンド及びダイヤモンド状炭素(DLC)が挙げられ、それらは、すべてその高温安定性及び脱ガスに対する耐性のために化学蒸着を使用して堆積させることができる。
【0033】
熱収縮フィルム212は、好ましくは、加熱要素208が電気絶縁性材料の層206に対して固定されるように、加熱要素208(例えば、薄膜ヒータ207)の周りに周方向に巻き付けられる。換言すれば、熱収縮フィルム212は、加熱チャンバ200の外側を取り囲む外層として機能し、それにより構造を固め、加熱要素208が電気絶縁性材料の層206との間の接触を維持することを保証する。いくつかの例では、熱収縮フィルム212は、ポリイミド又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含み得る。このような材料は、加熱チャンバ200の外層に望ましい高い電気伝導率及び熱伝導率を提供する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による加熱チャンバを製造する方法300であるフローチャートを例示する。
【0035】
方法300は、ステップ302において始まり、熱伝導性シェル202と、加熱チャンバ200内にエアロゾル基材を受け入れるための開口部204とを含む加熱チャンバ200が提供される。ステップ304において、電気絶縁性材料の層206は、真空蒸着を使用して熱伝導性シェル202の外面203上に堆積される。真空蒸着は、大気圧を著しく下回って、すなわち真空で実行される。好ましくは、電気絶縁性材料の層206は、化学蒸着を使用して堆積される。しかしながら、いくつかの例では、電気絶縁性材料の層206は、物理蒸着を使用して堆積され得る。
【0036】
化学蒸着は、基板が真空(又は低圧プラズマ)環境で1つ又は複数の揮発性前駆体に曝露され、それが基板の表面上で反応及び/又は分解して薄膜堆積物を生成する技術である。この場合、基板は、熱伝導性シェル202であり、電気絶縁性材料の層206は、薄膜堆積物である。
【0037】
いくつかの実施形態では、プラズマ強化蒸着を使用して、電気絶縁性材料の層206を形成することができる。プラズマ強化蒸着は、プラズマを利用して、堆積反応が起こるために必要なエネルギーの一部を提供する。特に、堆積は、平行な電極間に反応ガスを導入することによって達成され、電極間の容量結合により反応ガスがプラズマに励起される。これにより、化学反応が誘発され、その結果、反応生成物(すなわち電気絶縁性材料206)が基板(すなわち熱伝導性シェル202)上に堆積される。有利には、プラズマ強化蒸着は、他の化学蒸着技術よりも低い温度で行われる。
【0038】
一例では、2つの電極間の無線周波数放電を使用して、CH4を含むキャリアガスからプラズマを作り出すことができる。結果として生じる化学反応により、ダイヤモンド又はダイヤモンド状炭素(DLC)を含む薄膜が熱伝導性シェル202上に堆積される。薄膜は、電気絶縁性材料の層206に対応する。
【0039】
別の例では、2つの電極間のマイクロ波周波数放電を使用して、酸素を励起してプラズマを形成することができる。次に、アルゴンなどのキャリアガス中で希釈されたシラン(SiH4)の混合物がプラズマの残光に導入される。例えば、アルゴン中の5%シランの混合物が導入され得る。結果として生じる化学反応により、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)を含む薄膜が熱伝導性シェル202上に堆積される。薄膜は、電気絶縁性材料の層206に対応する。例えば、堆積された薄膜は、官能化されたシリカ様コーティング、例えばa-SiOX:CHYを含み得る。
【0040】
化学蒸着プロセスは、例えば、0.5μm~5μmの所望の厚さの電気絶縁性材料の層206が堆積されるまで継続される。
【0041】
ステップ306において、加熱要素208は、加熱要素208が電気絶縁性材料の層206と接触するように加熱チャンバ200に取り付けられる。すなわち、加熱要素208は、加熱要素208が電気絶縁性材料の層206と接するように、電気絶縁性材料の層206の外面に隣接して位置決めされる。使用時、加熱要素208は、電気絶縁層206にわたって熱伝導性シェル202に熱を伝達するように動作させることができる。電気絶縁性材料の層206は、加熱要素208と熱伝導性シェル202とを、それらが接触しないように分離し、それにより加熱要素208から熱伝導性シェル202に電流が流れることを防止する。
【0042】
図2に描写された実施形態などのいくつかの実施形態では、加熱要素208は、薄膜ヒータ207内に含まれる。この場合、方法300は、加熱要素208と、加熱要素208が支持される可撓性バッキングフィルム210とを含む薄膜ヒータ207を提供することと、加熱要素208を電気絶縁性材料の層206に押し当てて、薄膜ヒータ207を加熱チャンバ200に取り付けることとをさらに含む。代わりに、他の実施形態では、加熱要素208は、独立型加熱要素208であり得、薄膜ヒータ207は、提供されないことがある。
【0043】
加熱チャンバ200が管状である、
図2の描写された実施形態では、加熱要素208は、加熱チャンバ200の電気絶縁性材料の層206の周りに周方向に巻き付けられる。特に、加熱要素208及び可撓性バッキングフィルム210を含む薄膜ヒータ207は、加熱チャンバ200の電気絶縁性材料の層206の周りに巻き付けられる。可撓性バッキングフィルム210は、電気絶縁性材料の層206に対して加熱要素208の反対側に設置され、それにより構造的支持を提供する。当然のことながら、当業者であれば、加熱要素208が薄膜ヒータ207内に含まれない実施形態では、加熱要素208は、可撓性バッキングフィルム210なしで加熱チャンバ200の周りに巻き付けられ得ることを理解するであろう。いくつかの例では、加熱要素208は、キャリアフィルム上に支持され、加熱要素208は、キャリアフィルムを使用して加熱チャンバ200の周りに巻き付けられ得る。加熱要素208が電気絶縁性材料の層206に対して正しく位置決めされると、キャリアフィルムを除去することができる。
【0044】
ステップ308において、加熱要素208を加熱チャンバ200に固定するために、熱収縮フィルム212が好ましくは加熱チャンバ200の周りに巻き付けられる。例えば、加熱チャンバ200が薄膜ヒータ207を含む実施形態では、熱収縮フィルム212は、加熱要素208が取り付けられる可撓性バッキングフィルム210を取り囲むように操作される。代わりに、加熱要素208が薄膜ヒータ207内に含まれない実施形態では、熱収縮フィルム212は、加熱要素208を取り囲み、加熱要素208と接するように操作され得る。
図2に描写されるように、熱収縮フィルム212は、加熱要素208及び/又は可撓性バッキングフィルム210の長さを越えて延在し、電気絶縁性層の層206と重なることもできる。
【0045】
加熱チャンバ200及び加熱要素208が熱収縮フィルム212で包まれると、熱収縮フィルム212が加熱チャンバ200の周りで収縮して締まるように、熱収縮フィルム212に熱を加えることができる。これにより、加熱要素208(例えば、薄膜ヒータ207)が加熱チャンバ200、特に電気絶縁性材料の層206に確実に取り付けられることが保証される。
【国際調査報告】