(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】摺動面要素の製造方法、摺動面要素、および膝関節内部人工器官の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20240201BHJP
C08J 5/16 20060101ALI20240201BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240201BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20240201BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61L27/16
C08J5/16 CES
C08J7/00 305
A61L27/40
A61L27/36 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536553
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2022051594
(87)【国際公開番号】W WO2022171431
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021103016.1
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ベルナ
(72)【発明者】
【氏名】グルップ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ムリーツ,マリー アンネ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴィーザウ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ボリンガー,アルトゥール
【テーマコード(参考)】
4C081
4F071
4F073
【Fターム(参考)】
4C081AB03
4C081AB05
4C081BB07
4C081BB08
4C081CA021
4C081CC06
4C081CE11
4C081DC12
4C081EA03
4C081EA11
4F071AA15
4F071AA81
4F071AA82
4F071AC11
4F071AE05
4F071AF05Y
4F071AF15Y
4F071AF21Y
4F071AF23Y
4F071AG05
4F071AG14
4F071AG21
4F071AH19
4F071BB03
4F071EA01
4F073AA07
4F073BA07
4F073BA43
4F073CA41
4F073HA11
(57)【要約】
本発明は、関節内部人工器官のためのUHMWPEをベースとする摺動面要素を製造する方法であって、粉末状のUHMWPEと0.09~0.11重量%の抗酸化剤とを混合する工程、抗酸化剤と混合したUHMWPEを成形体に圧縮する工程、材料除去加工によって、成形体から1つ以上の摺動面要素を製造する工程、および、UHMWPEを架橋させるために、ガンマ線またはX線を25~45kGyの放射線量で摺動面要素に照射する工程、を包含し、方法は、照射された摺動面要素の熱的な後処理を包含しない方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節内部人工器官のためのUHMWPEをベースとする摺動面要素を製造する方法であって、
粉末状のUHMWPEと0.09~0.11重量%の抗酸化剤とを混合する工程、
前記抗酸化剤と混合したUHMWPEを成形体に圧縮する工程、
材料除去加工によって、前記成形体から1つ以上の摺動面要素を製造する工程、および、
UHMWPEを架橋させるために、ガンマ線またはX線を25~45kGyの放射線量で前記摺動面要素に照射する工程、を包含し、
前記方法は、照射された前記摺動面要素の熱的な後処理を包含しない、方法。
【請求項2】
UHMWPEが5×10
6~10
7g/molの範囲の分子量と、0.92~0.95g/cm
3の範囲の密度と、を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗酸化剤が、トコフェロール、トコトリエノール、アスコルビン酸、および、例えばフラボノイド、ブチルヒドロキシトルオール、ブチルヒドロキシアニソールのようなポリフェノール系抗酸化剤、から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗酸化剤が、α-トコフェロールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗酸化剤と混合されたUHMWPEを、圧縮成形またはRAM押出によって、好ましくは前記成形体の密度が0.92g/cm
3以上になるまで圧縮する、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記放射線量が27~33kGy、好ましくは約30kGyである、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記摺動面要素の照射が、4~6時間の期間にわたってガンマ線で、または1~10分の期間にわたってX線で行われる、請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
照射前に、前記摺動面要素をプラスチックフィルムで防菌包装する、請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記摺動面要素の照射が、1m
3あたり最大250kgの総充填量を有する受容空間内で行われる、請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の方法に従って製造される、関節内部人工器官のためのUHMWPEをベースとする摺動面要素。
【請求項11】
前記摺動面要素は、膝関節内部人工器官、特に膝関節内部人工器官の脛骨コンポーネントまたは膝蓋骨コンポーネントのための摺動面要素である、請求項10に記載の摺動面要素。
【請求項12】
前記摺動面要素は、400%以上、好ましくは450%以上の破断伸度を有する、請求項10または11に記載の摺動面要素。
【請求項13】
前記摺動面要素は、50MPa以上、好ましくは55MPa以上の引張強度を有する、請求項10から12のいずれか1つに記載の摺動面要素。
【請求項14】
前記摺動面要素は、20MPa以上、好ましくは22MPa以上の降伏応力を有する、請求項10から13のいずれか1つに記載の摺動面要素。
【請求項15】
前記摺動面要素は、100kJ/m
2以上、好ましくは110kJ/m
2以上のアイゾット衝撃強度を有する、請求項10から14のいずれか1つに記載の摺動面要素。
【請求項16】
前記摺動面要素は、ASTM F 2214:2016に従って決定される、4を超える膨潤比を有する、請求項10から15のいずれか1つに記載の摺動面要素。
【請求項17】
大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとを備える膝関節内部人工器官であって、
請求項10から16のいずれか1つに記載の摺動面要素が前記脛骨コンポーネントに固定され、かつ、前記大腿骨コンポーネントと協働し、
前記膝関節内部人工器官の可動範囲にわたって互いに接触する前記大腿骨コンポーネントおよび前記摺動面要素の表面領域の半径比が1~7の範囲である、膝関節内部人工器官。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節内部人工器官(joint endoprosthesis)、特に膝関節内部人工器官のためのUHMWPEをベースとする摺動面要素を製造する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、この方法に従って製造される、関節内部人工器官のための摺動面要素に関する。
【0003】
さらに、本発明は、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとを備え、そのような摺動面要素が脛骨コンポーネントに固定された、膝関節内部人工器官に関する。
【背景技術】
【0004】
関節内部人工器官は古くから知られており、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)製の摺動面要素を備える。ここで、UHMWPE製の摺動面要素は、通常、金属材料製の対応する要素と協働し、この材料の組み合わせにより、低い摩擦係数が得られる。UHMWPE製の摺動面要素は、股関節内部人工器官では、通常、股関節頭インプラントのインレーとして形成されるが、膝関節内部人工器官では、通常、脛骨コンポーネントに固定され、半月板要素とも称される。UHMWPE製の摺動面は、膝頭プロテーゼ(膝蓋骨プロテーゼ)にも使用され得る。
【発明の概要】
【0005】
摺動面要素は、その機械的特性、耐摩耗性および耐老化性に関して一定の要件を満たさなければならない。したがって、この目的に求められるUHMWPEの材料特性は部分的に相反する。耐摩耗性を高めるために、例えば欧州特許出願公開第0995450号(EP0995450A1)に記載されているように、UHMWPEを電離放射線で架橋させることができる。しかし同時に、架橋は材料の延性を低下させ、構造材料の疲労、剥離、場合によっては摺動面要素の破損の危険性を増大させる。
【0006】
UHMWPEの放射線架橋中にフリーラジカルが生成され、その一部が材料中に残ることで、酸化プロセスによって耐老化性が低下する傾向がある。この問題は、例えば、α-トコフェロール(ビタミンE)のような抗酸化剤の添加によって少なくとも部分的に打ち消され得る。抗酸化剤は、成形体の製造前にUHMWPEに添加されるか、架橋後にのみ拡散によって成形体中に導入される(例えば、欧州特許出願公開第3111895号(EP3111895A1)参照)。若年層の患者が関節内部人工器官による治療を受けることが多くなり、同時に寿命が延び、患者が高齢になっても活動的であるという事実を考慮すると、関節内部人工器官におけるUHMWPEの耐老化性がますます重要となっている。
【0007】
また、UHMWPEの特性プロファイルに対する要求は、関節内部人工器官の種類によって異なる。股関節内部人工器官では、協働する摺動面は実質的に一致(半球状)しており、発生する力を多かれ少なかれ接触面全体に均等に分散させることができる。したがって、材料の延性はここでは重要な役割を果たさない。膝関節内部人工器官の条件はかなり異なっており、(矢状面および前額面における)関節の動きの望ましい自由度を実現するためには、協働する摺動面の一致度はかなり低くなる。股関節とは対照的に、滑り運動と転がり運動とが同時に行われるため、時間通りの力(punctual force)の影響(効果)や応力のピークが発生する。これらは、股関節の場合よりも最大で10倍程度高くなる。高架橋UHMWPE製で延性が低すぎる摺動面要素では、亀裂、剥離、そして最終的には摺動面要素の破壊や破損につながり得ることが示されている。
【0008】
したがって、本発明の根底にある目的は、機械的強度、延性、耐摩耗性、耐老化性の点で有利な特性を有し、要求される動きの自由度を考慮すると、特に膝関節内部人工器官に使用可能な、UHMWPEをベースとした摺動面要素およびその製造方法を提案することである。
【0009】
この目的は、関節内部人工器官のためのUHMWPEをベースとする摺動面要素を製造する方法であって、粉末状のUHMWPEと0.09~0.11重量%の抗酸化剤とを混合する工程、抗酸化剤と混合したUHMWPEを成形体に圧縮する工程、材料除去加工によって、成形体から1つ以上の摺動面要素を製造する工程、および、UHMWPEを架橋させるために、ガンマ線またはX線を25~45kGyの放射線量で摺動面要素に照射する工程、を包含し、照射された摺動面要素の熱的な後処理を包含しない、方法によって達成される。
【0010】
驚くべきことに、上記の方法パラメータの組み合わせにより、高い耐摩耗性、耐老化性、機械的強度、および延性を有する摺動面要素を製造することが可能になることが示された。特に、ベータ線と比較して強度および吸収が著しく低いガンマ線またはX線を用いて、比較的低い放射線量で、UHMWPEを中程度にのみ架橋することが決定的である。さらに、本発明による方法では、照射された摺動面要素に対して、好ましくない材料変化や強度の低下が生じ得る熱的な後処理を施さない。このような後処理を省くことにより、本方法ではより高い費用対効果が得られる。
【0011】
本発明の範囲内で使用されるUHMWPEは、典型的には、5×106~107g/molの範囲の分子量(固有粘度から決定される)と、0.92~0.95g/cm3の範囲の密度と、を有する。粉末状の適したUHMWPEは、例えばTicona GmbHからGUR 1020という名称で、または、抗酸化剤(酸化防止剤)としての0.1重量%のα-トコフェロールとの混合物としてGUR 1020-Eという名称で入手可能である。
【0012】
UHMWPEに混合される抗酸化剤として、医療分野での使用も認められている様々な抗酸化剤を使用することができる。酸化防止剤は、好ましくは、トコフェロール、トコトリエノール、アスコルビン酸、および、例えばフラボノイド、ブチルヒドロキシトルオール(BTH)、およびブチルヒドロキシアニソール(BTA)のようなポリフェノール系酸化防止剤から選択される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、抗酸化剤は、α-トコフェロールである。これはビタミンEとも呼ばれる。ビタミンEという用語は、広義には、すべてのトコフェロール、トコトリエノール、さらに脂溶性の抗酸化物質を含む。
【0014】
UHMWPEの成形体への圧縮は、典型的には圧縮成形またはRAM押出によって、好ましくは成形体の密度が0.92g/cm3以上、すなわち実質的にUHMWPEの理論密度に達するまで行われる。圧縮成形体は、典型的には、各空間方向に50mm以上、好ましくは100mm以上の寸法を有し、このブランクから、材料除去加工、特にフライス加工によって複数の摺動面要素を製造することができる。
【0015】
本発明によれば、その後、最終的な幾何学的形状を有する完成した摺動面要素への照射が行われる。これにより、最初に成形体をブランクとして照射してから各コンポーネントの製造を行うような方法とは対照的に、特に摺動面要素の表面領域において、均一な架橋を実現することができる。
【0016】
放射線量は、好ましくは27~33kGyであり、さらに好ましくは約30kGyである。この程度の放射線量であれば、相反する要件、特に摺動面要素の耐摩耗性と延性との間で最適なバランスを達成できることが示されている。
【0017】
ガンマ線による摺動面要素への照射は、好ましくは、4時間から6時間かけて行われる。30kGyの好ましい放射線量では、これは、5~7.5kGy/h(時間)の範囲の線量率に相当する。
【0018】
X線による摺動面要素への照射は、好ましくは、1分間~10分間にわたって行われる。30kGyの好ましい放射線量では、これは、0.05~0.5kGy/s(秒)の範囲の線量率に相当する。
【0019】
特に、照射前に摺動面要素をプラスチックフィルムで防菌(germ-tight)包装しておくと好ましい。ガンマ線は、架橋に加えて、密閉された包装内の摺動面要素を滅菌することもできる。
【0020】
摺動面要素への照射は、好ましくは、1m3あたり最大250kgの総充填量を有する受容(receiving)室内で行われる。
【0021】
本発明の更なる主題の態様は、本発明による方法に従って製造される、関節内部人工器官のためのUHMWPEをベースとする摺動面要素である。
【0022】
本発明による摺動面要素の特定の利点及び好ましい実施形態は、本発明による方法と関連して既に説明されている。
【0023】
本発明による摺動面要素が、膝関節内部人工器官、特に膝関節内部人工器官の脛骨コンポーネントまたは膝蓋骨コンポーネントのための摺動面要素である場合、特に有利である。この文脈では、摺動面要素を、半月板(meniscus)要素と呼ぶこともできる。
【0024】
本発明による製造方法を適用した結果得られ、膝関節内部人工器官への使用を可能にする摺動面要素の有利な機械的特性は、特に以下のパラメータの1つ以上によって特徴付けられ得る。
【0025】
摺動面要素は、好ましくは400%以上、さらに好ましくは450%以上の破断伸度を有する。
【0026】
摺動面要素は、好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは55MPa以上の引張強度を有する。
【0027】
摺動面要素は、好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは22MPa以上の降伏応力を有する。
【0028】
摺動面要素は、好ましくは100kJ/m2以上、さらに好ましくは110kJ/m2以上のアイゾット衝撃強度を有する。
【0029】
膨潤比は、UHMWPEの架橋度の尺度として使用され得る。膨潤比は、架橋が増加すると減少する。本発明による摺動面要素は、好ましくは、4を超える膨潤比を有する。これは、本発明による方法において中程度(moderate)にのみ架橋させることによって生じる。ここで、膨潤比は、ASTM F 2214:2016規格(o-キシレン中での膨潤による架橋UHMWPEの体積変化の決定)に従って決定される。
【0030】
本発明の更なる主題の態様は、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとを備える膝関節内部人工器官であって、本発明による摺動面要素が脛骨コンポーネントに固定され、かつ、大腿骨コンポーネントと協働する。膝関節内部人工器官の可動範囲にわたって互いに接触する大腿骨コンポーネントおよび摺動面要素の表面領域の半径比は、1~7の範囲である。
【0031】
本発明による膝関節内関節内部人工器官における半径比が広い範囲であることは、大腿骨コンポーネントと摺動面要素との間で一致性が低い(例えば、股関節内部人工器官と比較して)ことを示す。低い一致性は、矢状面および前額面における関節の動作中に所望の動きの自由度を達成するために、膝関節内部人工器官で必要とされるものである。
【0032】
本発明による膝関節内部人工器官では、摺動面要素に作用する圧縮応力、特に点荷重は、通常、最大25MPaである。本発明による摺動面要素の機械的特性によれば、これらの値は重大(致命的)なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明について、図を参照して以下の例でより詳細に説明する。
【
図1】様々なUHMWPE材料の特性プロファイルを示すレーダーチャートである。
【
図2】本発明による摺動面要素を備えた膝関節内部人工器官における圧縮応力曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<架橋型UHMWPEの特性プロファイル>
図1のレーダーチャートは、本発明による摺動面要素の中程度に架橋したUHMWPE(実線)、ビタミンEを添加した高度に架橋したUHMWPE(破線)、ビタミンEを添加しない標準的なUHMWPE(点線)の典型的な特性プロファイルを模式的に示す。
【0035】
図の5つの軸は、材料の次のような特性を表す。
V:耐摩耗性
D:延性
U:応力ピークに対する鈍感さ(影響の受けにくさ)
B:(関節の一致度が低いことによる)動きの自由度
A:耐老化性
【0036】
この図は、本発明による摺動面要素では、要求されるすべての特性を高い程度で達成できることを模式的に示す。これは、先行技術のUHMWPE材料では、特に高い架橋度による相反する効果により不可能である。この効果によって、高い耐摩耗性および耐老化性を実現するものの、材料の延性が低下し、応力ピークの影響を受けやすくなる(応力ピークに対して敏感になる)。さらに、本発明による摺動面要素によると、一致度の低い関節パートナーで生じる高い点荷重に耐えることによって、関節内部人工器官の運動学的な自由度を特に高くすることが可能になる。
【0037】
<実施例>
本発明による摺動面要素を製造するために、粉末UHMWPE(GUR 1020、Ticona GmbH)を0.1重量%のビタミンE(α-トコフェロール)と均質に混合し、プレートに押し込んだ。このブランクから膝関節内部人工器官の脛骨コンポーネントのための摺動面要素を削り出した。この摺動面要素をフィルムで包装した後、UHMWPEを架橋すると同時に滅菌するために、摺動面要素をガンマ線で約5時間照射した。ここでの放射線量は30±3kGyであった。
【0038】
以下の表に、本発明に従って製造された摺動面要素の関連する機械的特性、および比較のために市販の架橋UHMWPE材料の対応する値(文献から)を示す。
【表1】
【0039】
この比較から、本発明による摺動面要素は、特に破断伸度については、先行技術よりも著しく優れていることがわかる。また、本発明によるUHMWPEの引張強度も、3つの既知の材料すべてより高い。
【0040】
膝関節内部人工器官の荷重を決定するために、本発明による摺動面要素を、半月板コンポーネントとして大腿骨コンポーネントと組み合わせた。このとき、関節の可動範囲にわたって互いに接触するこれらのコンポーネントの表面領域の半径比は1~7の範囲である。
【0041】
1秒間のサイクル時間における摺動面要素と大腿骨コンポーネントとの間の圧縮応力のプロファイルを、
図2に示す。これらの値は一貫して25MPa未満であり、本発明による摺動面要素の機械的特性にとって重大な値ではない。
【国際調査報告】