(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板
(51)【国際特許分類】
C23C 22/08 20060101AFI20240201BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240201BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240201BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C23C22/08
C23C28/00 C
C09D201/00
C09D5/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537261
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 KR2021019315
(87)【国際公開番号】W WO2022131866
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179011
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523225243
【氏名又は名称】ユニコ精密化学株式会社
【氏名又は名称原語表記】UNICOH SPECIALTY CHEMICALS CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 チャンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジョンクク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ホチョル
【テーマコード(参考)】
4J038
4K026
4K044
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038DG001
4J038HA216
4J038HA456
4J038JA35
4J038JC32
4J038KA06
4J038NA03
4J038PC02
4K026AA02
4K026AA07
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4K026CA33
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4K026CA39
4K026DA03
4K026DA06
4K044AA02
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4K044AB02
4K044BA10
4K044BA11
4K044BA12
4K044BA14
4K044BA15
4K044BB03
4K044BC02
4K044CA11
4K044CA16
4K044CA18
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、鋼板に平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性、耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性を付与し、異物欠陷を改善することができる表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板について開示する。本発明による鋼板の表面処理用組成物は、3価クロム化合物;シラン化合物を含む密着性向上剤;酸を含む酸度調節剤;ケイ酸塩化合物を含む架橋剤;バナジウム系孔食腐食改善剤;高分子樹脂;及び溶剤を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価クロム化合物;
シラン化合物を含む密着性向上剤;
酸を含む酸度調節剤;
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤;
バナジウム系孔食腐食改善剤;
高分子樹脂;及び、
溶剤を含む、
鋼板の表面処理用組成物。
【請求項2】
前記3価クロム化合物は、硫酸クロム、硝酸クロム、リン酸クロム、フッ化クロム、及び塩化クロムのうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項3】
前記シラン化合物を含む密着性向上剤は、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタグリオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシトリメチルジメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン(AEAPTMS)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエポキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及びN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項4】
前記酸を含む酸度調節剤は、リン酸、硝酸、硫酸、フッ酸、塩酸、リン酸アンモニウム((NH
4)
2HPO
4、(NH
4)H
2PO
4)、第1リン酸塩(NaH
2PO
4)、第2リン酸塩(Na
2HPO
4)、フィチン酸(Phytic acid)、グリコール酸、乳酸、及び酢酸のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項5】
前記ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、ソジウムシリケート(Sodium silicate)、カルシウムシリケート(Calcium silicate)、カリウムシリケート(Potassium silicate)、ケイ酸アルミニウム(Aluminium silicate)、リチウムポリシリケート(Lithium polysilicate)、テトラメチルオルトシリケート(Tetramethyl orthosilicate)、及びテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate)のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項6】
前記バナジウム系孔食腐食改善剤は、5酸化バナジウム(V
2O
5)、メタバナジウム酸(HVO
3)、メタバナジウム酸アンモニウム、メタバナジウム酸カリウム、メタバナジウム酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウム(VOCl
3)、三酸化バナジウム(V
2O
3)、二酸化バナジウム(VO
2)、オキシ硫酸バナジウム(VOSO
4)、オキシシュウ酸バナジウム[VO(COO)
2]、バナジウムオキシアセチルアセトナート[VO(OC(CH
3)=CHCOCH
3))
2]、バナジウムアセチルアセトナート[V(OC(CH
3)=CHCOCH
3))
3]、三塩化バナジウム(VCl
3)、硫酸バナジウム(VSO
4・8H
2O)、二塩化バナジウム(VCl
2)、及び酸化バナジウム(VO)のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項7】
前記高分子樹脂は、カチオン性ポリウレタン樹脂、非イオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性アクリル樹脂、及び非イオン性アクリル樹脂のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項8】
溶剤100重量部に対して
3価クロム化合物0.5~17重量部;
シラン化合物を含む密着性向上剤0.1~40重量部;
酸を含む酸度調節剤0.5~11重量部;
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤2~20重量部;
バナジウム系孔食腐食改善剤0.1~14.3重量部;及び、
高分子樹脂0.5~25重量部を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項9】
鋼板母材;
前記鋼板母材上に配置される亜鉛メッキ層;及び、
前記亜鉛メッキ層上に配置される表面処理層を含み、
前記表面処理層は、
3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、及び高分子樹脂を含む、
鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3価クロム化合物を含む鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐食溶融メッキ材は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)を含むことで、赤錆(Red Rust)耐食性に優れる素材と知られている。
【0003】
しかし、高耐食溶融メッキ材は、露出面がほとんどZn又はZn合金からなっているため、湿潤雰囲気に露出したとき、表面に孔食腐食性欠陷が発生しやすくて、外観が悪くなる短所がある。
【0004】
また、近年、リン加工工程において、前記高耐食溶融メッキ材がロールを通過しながら、メッキ材成分がロールに付く異物欠陷も発生している。
【0005】
かかる問題点を解決するために従来は、メッキ処理された鋼板を、6価クロムを主成分とする溶液に投入して被膜を形成するクロメート処理を行うことで、耐食性及び耐黒変性を確保してきた。
【0006】
しかし、これら6価クロムは、有害な環境物質及び発がん物質と指定されて現在は、6価クロムの使用に対する規制が強化されている。
【0007】
一方、2価クロム、4価クロム及び5価クロムは、比較的に不安定であることから、表面処理用溶液組成物ではあまり活用されていない。
【0008】
最近は、有毒性が低いかつ安定的な3価クロムを含有する表面処理用溶液組成物を鋼板上にコーティングして、メッキ鋼板の耐食性及び耐黒変性を確保する方法が適用されている。
【0009】
例えば、特許文献の韓国公開特許10-2006-0123628、韓国公開特許10-2005-0052215、及び韓国公開特許10-2009-0024450では、3価クロムを含有する組成物に鋼板を浸漬して化成処理する方式で耐食性及び黒変性を確保している。
【0010】
しかし、前記化成処理する方式は、鉄鋼社の連続工程に適用するには浸漬時間が長く、耐指紋性が低下するなどの問題がある。
【0011】
また、韓国公開特許10-2004-0046347、日本特開2002-069660号公報では、3価クロムを含有する組成物を塗面鋼板上にスプレー又はロールコーター方式でコーティングすることで、鉄鋼社の連続ラインへの適用が可能であり、耐指紋性を確保している。
【0012】
しかし、前記組成物には、吸湿する性質が強い多孔質のシリカ成分が含まれるため、Mg、Al、Zn合金鋼板には急激な変色の発生を引き起こす問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、鋼板の平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性、及び異物欠陷を改善させることができる鋼板の表面処理用組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、鋼板の耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性を改善させるため鋼板の表面処理用組成物を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、耐食性、耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性に優れ、かつ、異物欠陷の改善した鋼板を提供することである。
【0016】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による鋼板の表面処理用組成物は、3価クロム化合物;シラン化合物を含む密着性向上剤;酸を含む酸度調節剤;ケイ酸塩化合物を含む架橋剤;バナジウム系孔食腐食改善剤;高分子樹脂;及び溶剤を含む。
【0018】
本発明による鋼板は、鋼板母材;前記鋼板母材上に配置される亜鉛メッキ層;及び前記亜鉛メッキ層上に配置される表面処理層を含み、前記表面処理層は、3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、及び高分子樹脂を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明による鋼板は、平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性、及び異物欠陷を改善する効果がある。
【0020】
また、本発明による鋼板は、耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性に優れる効果がある。
【0021】
また、本発明による鋼板は、製品の寿命が向上して、鋼板のリン加工など、流通過程における問題点を改善する効果がある。
【0022】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】孔食腐食が発生した高耐食メッキ鋼板(左)と、本発明の表面処理用組成物でコーティングされた高耐食メッキ鋼板(右)の写真である。
【
図2】本発明の表面処理層(被膜層)の微細な組織写真である。
【
図3】本発明の表面処理層(被膜層)のEDS成分分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想を容易に実施することができる。本発明を説明するにあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0025】
以下における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0026】
以下では、本発明の幾つかの実施形態による鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板を説明することとする。
【0027】
本発明では、高耐食メッキ鋼板の表面にコーティングされる表面処理用組成物の成分と組成比を調節することにより、鋼板の外観耐食性を向上させ、異物欠陷を改善して、製品の寿命を向上させるだけでなく、鋼板のリン加工など、流通過程における問題点を解決した。
【0028】
また、本発明の表面処理用組成物は、有害環境物質であり発がん物質である6価クロム化合物の代りに、有毒性の低い3価クロム化合物を含むことで、人体に対する被害と環境汚染の問題点を防止する効果がある。
【0029】
そして、本発明の鋼板の表面処理用組成物は、多孔質のシリカ成分を含まないため、急激な変色の発生を引き起こす現象を防止する効果がある。
【0030】
本発明の鋼板の表面処理用組成物は、3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、高分子樹脂、及び溶剤を含む。
【0031】
前記3価クロム化合物は、有毒性が低いかつ安定的であり、鋼板の表面で主に不溶性被膜を形成して、バリア効果(Barrier effect)によって耐食性を提供する役割を担う。
【0032】
3価クロム化合物は、溶剤100重量部に対して0.5~17重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して3価クロム化合物0.8~17重量部を含むことができ、1~16重量部、1.1~16.9重量部、1.2~16.7重量部、1.2~16.5重量部、又は1.3~16.1重量部を含むことができる。
【0033】
3価クロム化合物が0.5重量部未満であると、堅固な不溶性被膜を十分に形成することができないため、鋼板の表面に浸透する水分を効果的に遮断することができず、耐食性を確保することができないことがある。
【0034】
逆に、3価クロム化合物が17重量部を超えると、多過ぎるクロム成分によって異物欠陥が発生し得る。
【0035】
3価クロム化合物は、硫酸クロム、硝酸クロム、リン酸クロム、フッ化クロム、及び塩化クロムのうち1種以上を含むことができる。
【0036】
前記シラン化合物を含む密着性向上剤は、架橋剤及び樹脂などと結合し、鋼板とも結合して、表面処理層の密着性及び耐食性などを向上させる役割を担う。また、シラン化合物は、表面処理層の乾燥を促進して、高耐食性を付与する。
【0037】
シラン化合物を含む密着性向上剤は、溶剤100重量部に対して0.1~40重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して密着性向上剤0.1~38重量部を含むことができ、0.5~37重量部、1~36重量部を含むことができ、1.1~35.9重量部、又は1.2~35.7重量部を含むことができる。
【0038】
密着性向上剤が0.1重量部未満であると、鋼板との密着性を十分確保することができず、耐食性などを確保することができないことがある。
【0039】
逆に、密着性向上剤が40重量部を超えると、塗膜の形成後、残存する多量の未反応シランによって耐食性などを確保することができないことがある。
【0040】
シラン化合物を含む密着性向上剤は、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタグリオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシトリメチルジメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン(AEAPTMS)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエポキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及びN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのうち1種以上を含むことができる。
【0041】
前記酸を含む酸度調節剤は、組成物のpHを調節して、表面処理用組成物内の成分等が溶液内に安定して存在し、コーティング条件下で適宜反応して、被膜を安定的に形成するようにする。
【0042】
酸を含む酸度調節剤は、溶剤100重量部に対して0.5~11重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して酸度調節剤0.8~10重量部を含むことができ、1~9重量部、1.1~8.8重量部、1.2~8.4重量部、又は1.2~8.1重量部を含むことができる。
【0043】
酸を含む酸度調節剤が0.5重量部未満であると、pHが高くなり、溶液の安定性が低下し得る。逆に、酸を含む酸度調節剤が11重量部を超えると、低過ぎるpHにより耐食性などを確保することができないことがある。
【0044】
酸を含む酸度調節剤は、リン酸、硝酸、硫酸、フッ酸、塩酸、リン酸アンモニウム((NH4)2HPO4、(NH4)H2PO4)、第1リン酸塩(NaH2PO4)、第2リン酸塩(Na2HPO4)、フィチン酸(Phytic acid)、グリコール酸、乳酸、及び酢酸のうち1種以上を含むことができる。
【0045】
前記ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、密着性向上剤及び樹脂などと反応して、組成物の架橋度を高め、コーティング鋼板の耐食性を向上させる役割を担う。
【0046】
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、溶剤100重量部に対して2~20重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して架橋剤2~19重量部を含むことができ、2~18重量部、2.2~17.8重量部、2.4~17.6重量部、又は2.5~17.3重量部を含むことができる。
【0047】
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤が2重量部未満であると、表面処理層の架橋度を充分確保することができず、耐食性などを確保することができないことがある。
【0048】
逆に、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤が20重量部を超えると、塗膜の形成後、残存する多量の未結合ケイ酸塩によって耐食性などを確保することができないことがある。
【0049】
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、ソジウムシリケート(Sodium silicate)、カルシウムシリケート(Calcium silicate)、カリウムシリケート(Potassium silicate)、ケイ酸アルミニウム(Aluminium silicate)、リチウムポリシリケート(Lithium polysilicate)、テトラメチルオルトシリケート(Tetramethyl orthosilicate)、及びテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate)のうち1種以上を含むことができる。
【0050】
前記バナジウム系孔食腐食改善剤は、樹脂と架橋剤、密着性向上剤の架橋反応が低い温度でも行われるように、温度を低くして、微細な孔食腐食の生成を抑制する役割を担う。
【0051】
バナジウム系孔食腐食改善剤は、溶剤100重量部に対して0.1~14.3重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して孔食腐食改善剤2~14.0重量部を含むことができ、2.8~13.9重量部、2.6~13.9重量部、2.5~13.9重量部を含むことができる。
【0052】
バナジウム系孔食腐食改善剤が0.1重量部未満であると、表面処理層の架橋度を充分確保することができず、耐食性などを確保することができないことがある。
【0053】
逆に、バナジウム系孔食腐食改善剤が14.3重量部を超えると、高過ぎる固形分によって溶液安定性が低下し得る。
【0054】
バナジウム系孔食腐食改善剤は、五酸化バナジウム(V2O5)、メタバナジウム酸(HVO3)、メタバナジウム酸アンモニウム、メタバナジウム酸カリウム、メタバナジウム酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウム(VOCl3)、三酸化バナジウム(V2O3)、二酸化バナジウム(VO2)、オキシ硫酸バナジウム(VOSO4)、オキシシュウ酸バナジウム[VO(COO)2]、バナジウムオキシアセチルアセトナート[VO(OC(CH3)=CHCOCH3))2]、バナジウムアセチルアセトナート[V(OC(CH3)=CHCOCH3))3]、三塩化バナジウム(VCl3)、硫酸バナジウム(VSO4・8H2O)、二塩化バナジウム(VCl2)、及び酸化バナジウム(VO)のうち1種以上を含むことができる。
【0055】
前記高分子樹脂は、鋼板の表面で3価クロム化合物、密着性向上剤、架橋剤と共に、堅固な被膜層を形成するために添加される。
【0056】
無機系成分だけでは、耐食性に優れかつ堅固な被膜層を形成し難い。これによって、本発明の組成物に柔軟性を付与する有機系高分子樹脂を添加することにより、精密な被膜形成作用を向上させて、耐アルカリ性、造管油侵害性などを向上させることができる。
【0057】
溶剤100重量部に対して高分子樹脂0.5~25重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して高分子樹脂0.7~23重量部を含むことができ、1~20重量部、1.8~18重量部、1.6~16重量部、又は1.4~15.8重量部を含むことができる。
【0058】
高分子樹脂が0.5重量部未満であると、被膜の形成不十分であり、造管油侵害性、耐アルカリ性などを確保し難い。逆に、高分子樹脂が25重量部を超えると、相対的に3価クロム化合物の含量が減り、耐食性などを確保することができないことがある。
【0059】
高分子樹脂は、エマルジョン状の樹脂であって、カチオン性ポリウレタン樹脂、非イオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性アクリル樹脂、及び非イオン性アクリル樹脂のうち1種以上を含むことができる。
【0060】
エマルジョン状の樹脂は、蒸留水との相溶性がない物質と、蒸留水との混合物を指し、分散性と貯蔵性に優れるため、長く放置しても、層分離現象が発生しない長所がある。
【0061】
カチオン性ポリウレタン樹脂及びカチオン性アクリル樹脂は、それぞれ第1~3アミノ基、第4級アンモニウム塩基のうち1種以上を含むカチオン性官能基を含むことができる。
【0062】
例えば、カチオン性官能基は、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基、及びトリエチルアミノ基のうち1種以上を含むことができる。
【0063】
非イオン性ポリウレタン樹脂は、非イオン性乳化剤で乳化した樹脂であるか、非イオン性ポリオールを用いて形成することができる。
【0064】
非イオン性アクリル樹脂は、非イオン性乳化剤で乳化した樹脂であるか、非イオン系フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのうち1種以上を含むことができる。
【0065】
本発明の鋼板の表面処理用組成物に含まれる溶剤は、組成物の成分等を希釈するために添加されるものであって、エタノール、蒸留水、脱イオン水のうち1種以上を含むことができる。
【0066】
一方、前記溶剤は、鋼板の表面処理用組成物の全体100重量%を基準としたとき、残部として含まれるものであって、組成物全体100重量%に対して約50~85重量%の溶剤を含むことができる。
【0067】
本発明では、溶剤、3価クロム化合物、密着性向上剤、酸度調節剤、架橋剤、孔食腐食改善剤、高分子樹脂を混合及び攪拌して、鋼板の表面処理用組成物を製造することができる。混合及び攪拌温度は、24~80℃であってもよいものの、これに制限されるものではない。
【0068】
このように、本発明の鋼板の表面処理用組成物は、少量の3価クロム化合物、密着性向上剤、酸度調節剤、架橋剤、孔食腐食改善剤、高分子樹脂を含み、多量の溶剤を含む組成物である。本発明の組成物は、成分と組成比を調節することにより、鋼板に耐食性などを付与して、異物欠陷をさらに改善する効果がある。
【0069】
本発明の鋼板の表面処理用組成物を用いた鋼板は、次のとおりである。
【0070】
前記鋼板は、鋼板母材、前記鋼板母材上に配置される亜鉛メッキ層と、前記亜鉛メッキ層上に配置される表面処理層とを含む。
【0071】
鋼板母材は、冷延鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム合金板、リン酸塩が塗布された亜鉛メッキ鋼板、又は熱延鋼板などを用いることができるものの、特にこれに制限するものではない。
【0072】
亜鉛メッキ層は、溶融亜鉛メッキ方式又は電気亜鉛メッキ方式で形成することができる。
【0073】
溶融亜鉛メッキは、ホットディープガルバナGIと呼ばれ、亜鉛を高温で加熱して溶かした後、メッキ製品を入れて冷凍させる方式である。
【0074】
電気亜鉛メッキは、亜鉛が含有されているメッキ液にメッキ製品を入れた後、電気分解でメッキする方式である。
【0075】
前記表面処理層は、鋼板の表面処理用組成物から形成された被膜であって、組成物に含まれた溶剤は除去され、残り成分等のみ存在するようになる。
【0076】
具体的に、表面処理層は、溶剤100重量部に対して3価クロム化合物0.5~17重量部、シラン化合物を含む密着性向上剤0.1~40重量部、酸を含む酸度調節剤0.5~11重量部、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤2~20重量部、バナジウム系孔食腐食改善剤0.1~14.3重量部、及び高分子樹脂0.5~25重量部を含む、鋼板の表面処理用組成物から形成することができる。
【0077】
これによって、表面処理層は、3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、及び高分子樹脂を含むことができる。
【0078】
表面処理層は、3価クロム化合物が約10~70mg/m2となるように形成することができる。好ましくは、約30~60mg/m2となるように形成することができる。
【0079】
表面処理層は、3価クロム化合物を基準に約10~70mg/m2を満足することで、優れた物性を示すのに有利な利点を得ることができる。
【0080】
前記表面処理層は、略0.1~50μmに形成することができるものの、これに制限されるものではない。
【0081】
前記表面処理層(被膜層)の物性及び成分分析に関連して、
図2は、本発明の表面処理層の微細な組織写真であり、下記の表A及び
図3は、本発明の表面処理層のEDS成分分析の結果である。
【0082】
【0083】
表A、
図2及び
図3を参照すると、表面処理層(被膜層)の断面形状を観察して、表面処理層を構成する成分等を分析した。
【0084】
これら分析の結果から、表面処理層に3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、高分子樹脂などが存在することを確認することができる。
【0085】
本発明の鋼板を製造する方法は、鋼板母材上に亜鉛メッキ層を形成した後、表面処理用組成物をコーティング及び乾燥する段階を含むことができる。
【0086】
表面処理用組成物をコーティングする方法は、通常に行われるコーティング方法であれば制限されない。
【0087】
例えば、コーティング方法は、ロールコート、バーコート、スプレー、浸漬、スプレースクイージング、浸漬スクイージングのいずれか方法で行うことができる。
【0088】
表面処理用組成物をコーティングした後、乾燥は、通常に行われる条件であれば制限されない。例えば、乾燥は、略40~200℃で行うことができる。
【0089】
本発明の表面処理用組成物を用いた鋼板は、溶液安定性の評価基準で△V=(Vl-Vi)/Vi×100(%)であるとき、△Vが20(%)未満であるが、目視観察時、ゲル化現象が見えなかった。
【0090】
また、前記鋼板は、平板耐食性の評価基準でASTM B117に基づいて、鋼板の白錆発生率を測定したとき、白錆発生時間が144時間以上を示す。
【0091】
例えば、白錆発生時間が144~300時間を示し、144~250時間、144~200時間を示すことができる。
【0092】
また、前記鋼板は、加工部耐食性の評価基準で白錆が発生しないか、白錆が発生しても、非常に微細に発生した。
【0093】
また、前記鋼板は、造管油侵害性の評価基準で△E≦2を満足した。
【0094】
例えば、0<△E≦2、0<△E≦1.5を満足することができる。
【数1】
【0095】
数式におけるL*:明度、a*:green、red系座標、b*:yellow、blue系座標(CIE Lab色空間基準)である。
【0096】
また、前記鋼板は、耐アルカリ性の評価基準で△E≦2を満足した。例えば、0<△E≦2、0<△E≦1.5を満足することができる。
【0097】
また、前記鋼板は、孔食腐食耐食性の評価基準で表面の孔食欠陥個数が20個以下と示された。例えば、孔食欠陥個数が0個~20個、0個~15個、0個~10個、0個~7個、又は0個~4個と示されていてもよい。
【0098】
また、前記鋼板は、異物欠陥の評価基準で摩擦した後、ガーゼの白色度(△L=Lbefore-Lafter)であるとき、△L≦2.5を満足した。例えば、0<△L≦2.5、0<△L≦2.0、0<△L≦1.8、0<△L≦1.4を満足することができる。
【0099】
図1は、孔食腐食が発生した高耐食メッキ鋼板(左)と、本発明の表面処理用組成物でコーティングされた高耐食メッキ鋼板(右)の写真である。
【0100】
図1を参照すると、本発明の表面処理された高耐食メッキ鋼板は、孔食腐食が発生せず、異物欠陷も発生していないことが確認できる。
【0101】
このように、鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板について、その具体的な実施例を考察すると、次のとおりである。
【0102】
1.鋼板の表面処理用組成物の製造
実施例及び比較例
下記の表1及び表2の組成比に従って、先ず、蒸留水100重量部に対して酸度調節剤のリン酸を入れて、約40℃で、3価クロム化合物である硝酸クロムを添加した後、約30分間攪拌した。
【0103】
同じ方式で密着性向上剤であるGlycidoxypropyltrimethoxysilane、架橋剤であるPotassium silicate、孔食腐食改善剤であるメタバナジウム酸アンモニウム、有機樹脂であるAcrylic Emulsionを30分間隔で添加しつつ攪拌して、表面処理用組成物を製造した。
【0104】
【0105】
【0106】
2.物性評価方法及びその結果
試験用試片を製作するために、上記製造された表面処理用組成物を用いて次のように製作した。
【0107】
高耐食溶融亜鉛メッキ鋼板(Zn-Al-Mg)を7cm×15cm(横×縦)に切断して脱脂した後、被膜付着量がCrを基準に約50mg/m2となるようにバーコートして、試片を製作した。
【0108】
1)溶液安定性
上記方法によって製造されたコーティング組成物を製造した直後、それぞれ初期粘度(Vi)を測定し、50℃のオーブンに120時間保管してから、さらに25℃に冷凍した後、25℃での後期粘度(Vl)を測定した後、下記の数式1に代入した。その結果を下記の評価基準に従って評価した。
【0109】
[数式1]△V=(Vl-Vi)/Vi×100(%)
【0110】
<溶液安定性の評価基準>
○:△Vが20(%)未満であるか目視観察時、ゲル化現象が見えなかった。
X:△Vが20(%)以上であるか目視観察時、ゲル化現象が見えた。
【0111】
2)平板耐食性
ASTM B117に規定する方法に基づいて、3価クロム表面処理組成物を処理した後、時間の経過による鋼板の白錆発生率を測定した。
【0112】
<平板耐食性の評価基準>
○:白錆発生時間が144時間以上、△:白錆発生時間が96時間以上~144時間未満、X:白錆発生時間が96時間未満と評価した。
【0113】
3)加工部耐食性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板をErichsen testerを用いて6mmの高さに押し上げた後、24時間経過したときに白錆発生の程度を測定した。
【0114】
<平板耐食性の評価基準>
○:白錆が発生していないか、白錆が発生していても非常に微細である場合、△:円に微細な白錆が発生して一部流れたが、円の外に流れ出ていない場合、X:白錆が発生して、円の外に流れ出た場合
【0115】
4)造管油侵害性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板を常温で造管油に浸漬して、24時間維持した後、浸漬の前/後色差を測定した。造管油は、国内バムウのBW WELL MP-411を10%水に希釈して使用した。
【0116】
<造管油侵害性の評価基準>
○:△E≦2、△:2<△E≦3、X:3<△E
【0117】
5)耐アルカリ性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板をアルカリ脱脂溶液に60℃、2分間浸漬した後に水洗、Air blowing後の前/後色差を測定した。
【0118】
アルカリ脱脂溶液は、大韓パカライジング社のFinecleaner L 4460A:20g/2.4L+L4460B12g/2.4L(pH=12)で用いた。
【0119】
<耐アルカリ性の評価基準>
○:△E≦2、△:2<△E≦4、X:4<△E
【0120】
6)孔食腐食耐食性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板の表面に、噴霧器などを活用して、露が結ぶようにした後、2つの鋼板を互いに突き合わせて包装した後、恒温恒湿機に入れて、高温高湿(42℃、95%)で6時間、低温低湿(15℃、60%)で6時間を8サイクル行った後、表面の孔食欠陥個数を数えた。
【0121】
腐食性孔食欠陷数を数えるために、鋼板のスキャン面積は、100×50mm2であり、100倍に拡大して、腐食性孔食欠陥面積が29500μm2以上であるものの個数のみ数えた。
【0122】
<孔食腐食耐食性の評価基準>
○:孔食数≦20、△:20<孔食数≦40、X:40<孔食数
【0123】
7)異物欠陥
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板の異物欠陥を評価するために、表面積が約4cm2であるプローブに白いガーゼを被せた後、プローブ上に重さ10kgの重りを載せて、100回を往復摩擦した後、摩擦前後ガーゼの白色度(△L=Lbefore-Lafter)値を測定した。
【0124】
このとき、高湿条件を模写するために、鋼板とプローブなどは、いずれも湿度チャンバを作って、加湿器などで湿度を95%以上維持して、摩擦評価を行った。
【0125】
<異物欠陥評価の基準>
○:△L≦2.5、△:2.5<△L≦5、X:5<△L
【0126】
上記製造された表面処理鋼板に対する物性測定の結果を下記の表3と表4に記載した。
【0127】
【0128】
【0129】
上記表3に示されたように、本発明による実施例1~15の場合、溶液安定性、平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性、耐アルカリ性、孔食腐食耐食性に非常に優れ、異物欠陥が改善したことが分かる。
【0130】
しかし、表4のように、比較例1の場合、3価クロム化合物の含量が不足しており、バリア効果(Barrier effect)による耐食性に劣り、平板耐食性、加工部耐食性及び孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0131】
比較例2の場合、3価クロム化合物の含量が多過ぎて、異物欠陥が発生していることが分かる。
【0132】
比較例3の場合、密着性向上剤の含量が不足し、平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足し、異物欠陥が発生していることが分かる。
【0133】
比較例4の場合、密着性向上剤の含量が多過ぎて、残存する未反応シランによって加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0134】
比較例5の場合、酸度調節剤の含量が不足しており、溶液安定性が不足し、これにより、コーティングしても平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性が不足することが分かる。
【0135】
比較例6の場合、酸度調節剤の含量が多過ぎて、加工部耐食性と孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0136】
比較例7の場合、架橋剤の含量が不足しており、加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足し、異物欠陥が発生していることが分かる。
【0137】
比較例8の場合、架橋剤の含量が多過ぎて、未結合ケイ酸塩によって溶液安定性が不足するだけでなく、コーティングしても平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0138】
比較例9の場合、孔食腐食改善剤の含量が不足し、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0139】
比較例10の場合、孔食腐食改善剤の含量が高過ぎて、溶液安定性が不足し、コーティングしても平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0140】
比較例11の場合、有機樹脂の含量が不足しており、被膜形成が不十分であり、加工部耐食性、造管油侵害性、耐アルカリ性が不足することが分かる。
【0141】
比較例12の場合、有機樹脂の含量が多過ぎて、相対的に不足している3価クロム化合物によって平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0142】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者によって様々な変形が行うことができることは明からである。さらに、本発明の実施例を前述しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3価クロム化合物を含む鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐食溶融メッキ材は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)を含むことで、赤錆(Red Rust)耐食性に優れる素材と知られている。
【0003】
しかし、高耐食溶融メッキ材は、露出面がほとんどZn又はZn合金からなっているため、湿潤雰囲気に露出したとき、表面に孔食腐食性欠陷が発生しやすくて、外観が悪くなる短所がある。
【0004】
また、近年、リン加工工程において、前記高耐食溶融メッキ材がロールを通過しながら、メッキ材成分がロールに付く異物欠陷も発生している。
【0005】
かかる問題点を解決するために従来は、メッキ処理された鋼板を、6価クロムを主成分とする溶液に投入して被膜を形成するクロメート処理を行うことで、耐食性及び耐黒変性を確保してきた。
【0006】
しかし、これら6価クロムは、有害な環境物質及び発がん物質と指定されて現在は、6価クロムの使用に対する規制が強化されている。
【0007】
一方、2価クロム、4価クロム及び5価クロムは、比較的に不安定であることから、表面処理用溶液組成物ではあまり活用されていない。
【0008】
最近は、有毒性が低いかつ安定的な3価クロムを含有する表面処理用溶液組成物を鋼板上にコーティングして、メッキ鋼板の耐食性及び耐黒変性を確保する方法が適用されている。
【0009】
例えば、特許文献の韓国公開特許10-2006-0123628、韓国公開特許10-2005-0052215、及び韓国公開特許10-2009-0024450では、3価クロムを含有する組成物に鋼板を浸漬して化成処理する方式で耐食性及び耐黒変性を確保している。
【0010】
しかし、前記化成処理する方式は、鉄鋼社の連続工程に適用するには浸漬時間が長く、耐指紋性が低下するなどの問題がある。
【0011】
また、韓国公開特許10-2004-0046347、日本特開2002-069660号公報では、3価クロムを含有する組成物をメッキ鋼板上にスプレー又はロールコーター方式でコーティングすることで、鉄鋼社の連続ラインへの適用が可能であり、耐指紋性を確保している。
【0012】
しかし、前記組成物には、吸湿する性質が強い多孔質のシリカ成分が含まれるため、Mg、Al、Zn合金鋼板には急激な変色の発生を引き起こす問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、鋼板の平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性、及び異物欠陷を改善させることができる鋼板の表面処理用組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、鋼板の耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性を改善させるため鋼板の表面処理用組成物を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、耐食性、耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性に優れ、かつ、異物欠陷の改善した鋼板を提供することである。
【0016】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による鋼板の表面処理用組成物は、3価クロム化合物;シラン化合物を含む密着性向上剤;酸を含む酸度調節剤;ケイ酸塩化合物を含む架橋剤;バナジウム系孔食腐食改善剤;高分子樹脂;及び溶剤を含む。
【0018】
本発明による鋼板は、鋼板母材;前記鋼板母材上に配置される亜鉛メッキ層;及び前記亜鉛メッキ層上に配置される表面処理層を含み、前記表面処理層は、3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、及び高分子樹脂を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明による鋼板は、平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性、及び異物欠陷を改善する効果がある。
【0020】
また、本発明による鋼板は、耐黒変性、造管油侵害性、耐アルカリ性に優れる効果がある。
【0021】
また、本発明による鋼板は、製品の寿命が向上して、鋼板のリン加工など、流通過程における問題点を改善する効果がある。
【0022】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】孔食腐食が発生した高耐食メッキ鋼板(左)と、本発明の表面処理用組成物でコーティングされた高耐食メッキ鋼板(右)の写真である。
【
図2】本発明の表面処理層(被膜層)の微細な組織写真である。
【
図3】本発明の表面処理層(被膜層)のEDS成分分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想を容易に実施することができる。本発明を説明するにあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0025】
以下における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0026】
以下では、本発明の幾つかの実施形態による鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板を説明することとする。
【0027】
本発明では、高耐食メッキ鋼板の表面にコーティングされる表面処理用組成物の成分と組成比を調節することにより、鋼板の外観耐食性を向上させ、異物欠陷を改善して、製品の寿命を向上させるだけでなく、鋼板のリン加工など、流通過程における問題点を解決した。
【0028】
また、本発明の表面処理用組成物は、有害環境物質であり発がん物質である6価クロム化合物の代りに、有毒性の低い3価クロム化合物を含むことで、人体に対する被害と環境汚染の問題点を防止する効果がある。
【0029】
そして、本発明の鋼板の表面処理用組成物は、多孔質のシリカ成分を含まないため、急激な変色の発生を引き起こす現象を防止する効果がある。
【0030】
本発明の鋼板の表面処理用組成物は、3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、高分子樹脂、及び溶剤を含む。
【0031】
前記3価クロム化合物は、有毒性が低いかつ安定的であり、鋼板の表面で主に不溶性被膜を形成して、バリア効果(Barrier effect)によって耐食性を提供する役割を担う。
【0032】
3価クロム化合物は、溶剤100重量部に対して0.5~17重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して3価クロム化合物0.8~17重量部を含むことができ、1~16重量部、1.1~16.9重量部、1.2~16.7重量部、1.2~16.5重量部、又は1.3~16.1重量部を含むことができる。
【0033】
3価クロム化合物が0.5重量部未満であると、堅固な不溶性被膜を十分に形成することができないため、鋼板の表面に浸透する水分を効果的に遮断することができず、耐食性を確保することができないことがある。
【0034】
逆に、3価クロム化合物が17重量部を超えると、多過ぎるクロム成分によって異物欠陥が発生し得る。
【0035】
3価クロム化合物は、硫酸クロム、硝酸クロム、リン酸クロム、フッ化クロム、及び塩化クロムのうち1種以上を含むことができる。
【0036】
前記シラン化合物を含む密着性向上剤は、架橋剤及び樹脂などと結合し、鋼板とも結合して、表面処理層の密着性及び耐食性などを向上させる役割を担う。また、シラン化合物は、表面処理層の乾燥を促進して、高耐食性を付与する。
【0037】
シラン化合物を含む密着性向上剤は、溶剤100重量部に対して0.1~40重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して密着性向上剤0.1~38重量部を含むことができ、0.5~37重量部、1~36重量部を含むことができ、1.1~35.9重量部、又は1.2~35.7重量部を含むことができる。
【0038】
密着性向上剤が0.1重量部未満であると、鋼板との密着性を十分確保することができず、耐食性などを確保することができないことがある。
【0039】
逆に、密着性向上剤が40重量部を超えると、塗膜の形成後、残存する多量の未反応シランによって耐食性などを確保することができないことがある。
【0040】
シラン化合物を含む密着性向上剤は、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタグリオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシトリメチルジメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン(AEAPTMS)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエポキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及びN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのうち1種以上を含むことができる。
【0041】
前記酸を含む酸度調節剤は、組成物のpHを調節して、表面処理用組成物内の成分等が溶液内に安定して存在し、コーティング条件下で適宜反応して、被膜を安定的に形成するようにする。
【0042】
酸を含む酸度調節剤は、溶剤100重量部に対して0.5~11重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して酸度調節剤0.8~10重量部を含むことができ、1~9重量部、1.1~8.8重量部、1.2~8.4重量部、又は1.2~8.1重量部を含むことができる。
【0043】
酸を含む酸度調節剤が0.5重量部未満であると、pHが高くなり、溶液の安定性が低下し得る。逆に、酸を含む酸度調節剤が11重量部を超えると、低過ぎるpHにより耐食性などを確保することができないことがある。
【0044】
酸を含む酸度調節剤は、リン酸、硝酸、硫酸、フッ酸、塩酸、リン酸アンモニウム((NH4)2HPO4、(NH4)H2PO4)、第1リン酸塩(NaH2PO4)、第2リン酸塩(Na2HPO4)、フィチン酸(Phytic acid)、グリコール酸、乳酸、及び酢酸のうち1種以上を含むことができる。
【0045】
前記ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、密着性向上剤及び樹脂などと反応して、組成物の架橋度を高め、コーティング鋼板の耐食性を向上させる役割を担う。
【0046】
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、溶剤100重量部に対して2~20重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して架橋剤2~19重量部を含むことができ、2~18重量部、2.2~17.8重量部、2.4~17.6重量部、又は2.5~17.3重量部を含むことができる。
【0047】
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤が2重量部未満であると、表面処理層の架橋度を充分確保することができず、耐食性などを確保することができないことがある。
【0048】
逆に、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤が20重量部を超えると、塗膜の形成後、残存する多量の未結合ケイ酸塩によって耐食性などを確保することができないことがある。
【0049】
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、ソジウムシリケート(Sodium silicate)、カルシウムシリケート(Calcium silicate)、カリウムシリケート(Potassium silicate)、ケイ酸アルミニウム(Aluminium silicate)、リチウムポリシリケート(Lithium polysilicate)、テトラメチルオルトシリケート(Tetramethyl orthosilicate)、及びテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate)のうち1種以上を含むことができる。
【0050】
前記バナジウム系孔食腐食改善剤は、樹脂と架橋剤と密着性向上剤との架橋反応が低い温度でも行われるように、温度を低くして、微細な孔食腐食の生成を抑制する役割を担う。
【0051】
バナジウム系孔食腐食改善剤は、溶剤100重量部に対して0.1~14.3重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して孔食腐食改善剤2~14.0重量部を含むことができ、2.8~13.9重量部、2.6~13.9重量部、2.5~13.9重量部を含むことができる。
【0052】
バナジウム系孔食腐食改善剤が0.1重量部未満であると、表面処理層の架橋度を充分確保することができず、耐食性などを確保することができないことがある。
【0053】
逆に、バナジウム系孔食腐食改善剤が14.3重量部を超えると、高過ぎる固形分によって溶液安定性が低下し得る。
【0054】
バナジウム系孔食腐食改善剤は、五酸化バナジウム(V2O5)、メタバナジウム酸(HVO3)、メタバナジウム酸アンモニウム、メタバナジウム酸カリウム、メタバナジウム酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウム(VOCl3)、三酸化バナジウム(V2O3)、二酸化バナジウム(VO2)、オキシ硫酸バナジウム(VOSO4)、オキシシュウ酸バナジウム[VO(COO)2]、バナジウムオキシアセチルアセトナート[VO(OC(CH3)=CHCOCH3
)
2]、バナジウムアセチルアセトナート[V(OC(CH3)=CHCOCH3
)
3]、三塩化バナジウム(VCl3)、硫酸バナジウム(VSO4・8H2O)、二塩化バナジウム(VCl2)、及び酸化バナジウム(VO)のうち1種以上を含むことができる。
【0055】
前記高分子樹脂は、鋼板の表面で3価クロム化合物、密着性向上剤、架橋剤と共に、堅固な被膜層を形成するために添加される。
【0056】
無機系成分だけでは、耐食性に優れかつ堅固な被膜層を形成し難い。これによって、本発明の組成物に柔軟性を付与する有機系高分子樹脂を添加することにより、精密な被膜形成作用を向上させて、耐アルカリ性、造管油侵害性などを向上させることができる。
【0057】
溶剤100重量部に対して高分子樹脂0.5~25重量部を含むことができる。好ましくは、溶剤100重量部に対して高分子樹脂0.7~23重量部を含むことができ、1~20重量部、1.8~18重量部、1.6~16重量部、又は1.4~15.8重量部を含むことができる。
【0058】
高分子樹脂が0.5重量部未満であると、被膜の形成不十分であり、造管油侵害性、耐アルカリ性などを確保し難い。逆に、高分子樹脂が25重量部を超えると、相対的に3価クロム化合物の含量が減り、耐食性などを確保することができないことがある。
【0059】
高分子樹脂は、エマルジョン状の樹脂であって、カチオン性ポリウレタン樹脂、非イオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性アクリル樹脂、及び非イオン性アクリル樹脂のうち1種以上を含むことができる。
【0060】
エマルジョン状の樹脂は、蒸留水との相溶性がない物質と、蒸留水との混合物を指し、分散性と貯蔵性に優れるため、長く放置しても、層分離現象が発生しない長所がある。
【0061】
カチオン性ポリウレタン樹脂及びカチオン性アクリル樹脂は、それぞれ第1~3アミノ基、第4級アンモニウム塩基のうち1種以上を含むカチオン性官能基を含むことができる。
【0062】
例えば、カチオン性官能基は、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基、及びトリエチルアミノ基のうち1種以上を含むことができる。
【0063】
非イオン性ポリウレタン樹脂は、非イオン性乳化剤で乳化した樹脂であるか、非イオン性ポリオールを用いて形成することができる。
【0064】
非イオン性アクリル樹脂は、非イオン性乳化剤で乳化した樹脂であるか、非イオン系フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのうち1種以上を含むことができる。
【0065】
本発明の鋼板の表面処理用組成物に含まれる溶剤は、組成物の成分等を希釈するために添加されるものであって、エタノール、蒸留水、脱イオン水のうち1種以上を含むことができる。
【0066】
一方、前記溶剤は、鋼板の表面処理用組成物の全体100重量%を基準としたとき、残部として含まれるものであって、組成物全体100重量%に対して約50~85重量%の溶剤を含むことができる。
【0067】
本発明では、溶剤、3価クロム化合物、密着性向上剤、酸度調節剤、架橋剤、孔食腐食改善剤、高分子樹脂を混合及び攪拌して、鋼板の表面処理用組成物を製造することができる。混合及び攪拌温度は、24~80℃であってもよいものの、これに制限されるものではない。
【0068】
このように、本発明の鋼板の表面処理用組成物は、少量の3価クロム化合物、密着性向上剤、酸度調節剤、架橋剤、孔食腐食改善剤、高分子樹脂を含み、多量の溶剤を含む組成物である。本発明の組成物は、成分と組成比を調節することにより、鋼板に耐食性などを付与して、異物欠陷をさらに改善する効果がある。
【0069】
本発明の鋼板の表面処理用組成物を用いた鋼板は、次のとおりである。
【0070】
前記鋼板は、鋼板母材、前記鋼板母材上に配置される亜鉛メッキ層と、前記亜鉛メッキ層上に配置される表面処理層とを含む。
【0071】
鋼板母材は、冷延鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム合金板、リン酸塩が塗布された亜鉛メッキ鋼板、又は熱延鋼板などを用いることができるものの、特にこれに制限するものではない。
【0072】
亜鉛メッキ層は、溶融亜鉛メッキ方式又は電気亜鉛メッキ方式で形成することができる。
【0073】
溶融亜鉛メッキは、ホットディープガルバナGIと呼ばれ、亜鉛を高温で加熱して溶かした後、メッキ製品を入れて冷凍させる方式である。
【0074】
電気亜鉛メッキは、亜鉛が含有されているメッキ液にメッキ製品を入れた後、電気分解でメッキする方式である。
【0075】
前記表面処理層は、鋼板の表面処理用組成物から形成された被膜であって、組成物に含まれた溶剤は除去され、残り成分等のみ存在するようになる。
【0076】
具体的に、表面処理層は、溶剤100重量部に対して3価クロム化合物0.5~17重量部、シラン化合物を含む密着性向上剤0.1~40重量部、酸を含む酸度調節剤0.5~11重量部、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤2~20重量部、バナジウム系孔食腐食改善剤0.1~14.3重量部、及び高分子樹脂0.5~25重量部を含む、鋼板の表面処理用組成物から形成することができる。
【0077】
これによって、表面処理層は、3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、及び高分子樹脂を含むことができる。
【0078】
表面処理層は、3価クロム化合物が約10~70mg/m2となるように形成することができる。好ましくは、約30~60mg/m2となるように形成することができる。
【0079】
表面処理層は、3価クロム化合物を基準に約10~70mg/m2を満足することで、優れた物性を示すのに有利な利点を得ることができる。
【0080】
前記表面処理層は、略0.1~50μmに形成することができるものの、これに制限されるものではない。
【0081】
前記表面処理層(被膜層)の物性及び成分分析に関連して、
図2は、本発明の表面処理層の微細な組織写真であり、下記の表A及び
図3は、本発明の表面処理層のEDS成分分析の結果である。
【0082】
【0083】
表A、
図2及び
図3を参照すると、表面処理層(被膜層)の断面形状を観察して、表面処理層を構成する成分等を分析した。
【0084】
これら分析の結果から、表面処理層に3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、高分子樹脂などが存在することを確認することができる。
【0085】
本発明の鋼板を製造する方法は、鋼板母材上に亜鉛メッキ層を形成した後、表面処理用組成物をコーティング及び乾燥する段階を含むことができる。
【0086】
表面処理用組成物をコーティングする方法は、通常に行われるコーティング方法であれば制限されない。
【0087】
例えば、コーティング方法は、ロールコート、バーコート、スプレー、浸漬、スプレースクイージング、浸漬スクイージングのいずれか方法で行うことができる。
【0088】
表面処理用組成物をコーティングした後、乾燥は、通常に行われる条件であれば制限されない。例えば、乾燥は、略40~200℃で行うことができる。
【0089】
本発明の表面処理用組成物を用いた鋼板は、溶液安定性の評価基準で△V=(Vl-Vi)/Vi×100(%)であるとき、△Vが20(%)未満であるが、目視観察時、ゲル化現象が見えなかった。
【0090】
また、前記鋼板は、平板耐食性の評価基準でASTM B117に基づいて、鋼板の白錆発生率を測定したとき、白錆発生時間が144時間以上を示す。
【0091】
例えば、白錆発生時間が144~300時間を示し、144~250時間、144~200時間を示すことができる。
【0092】
また、前記鋼板は、加工部耐食性の評価基準で白錆が発生しないか、白錆が発生しても、非常に微細に発生した。
【0093】
また、前記鋼板は、造管油侵害性の評価基準で△E≦2を満足した。
【0094】
例えば、0<△E≦2、0<△E≦1.5を満足することができる。
【数1】
【0095】
数式におけるL*:明度、a*:green、red系座標、b*:yellow、blue系座標(CIE Lab色空間基準)である。
【0096】
また、前記鋼板は、耐アルカリ性の評価基準で△E≦2を満足した。例えば、0<△E≦2、0<△E≦1.5を満足することができる。
【0097】
また、前記鋼板は、孔食腐食耐食性の評価基準で表面の孔食欠陥個数が20個以下と示された。例えば、孔食欠陥個数が0個~20個、0個~15個、0個~10個、0個~7個、又は0個~4個と示されていてもよい。
【0098】
また、前記鋼板は、異物欠陥の評価基準で摩擦した後、ガーゼの白色度(△L=Lbefore-Lafter)であるとき、△L≦2.5を満足した。例えば、0<△L≦2.5、0<△L≦2.0、0<△L≦1.8、0<△L≦1.4を満足することができる。
【0099】
図1は、孔食腐食が発生した高耐食メッキ鋼板(左)と、本発明の表面処理用組成物でコーティングされた高耐食メッキ鋼板(右)の写真である。
【0100】
図1を参照すると、本発明の表面処理された高耐食メッキ鋼板は、孔食腐食が発生せず、異物欠陷も発生していないことが確認できる。
【0101】
このように、鋼板の表面処理用組成物、及びこれを用いた鋼板について、その具体的な実施例を考察すると、次のとおりである。
【0102】
1.鋼板の表面処理用組成物の製造
実施例及び比較例
下記の表1及び表2の組成比に従って、先ず、蒸留水100重量部に対して酸度調節剤のリン酸を入れて、約40℃で、3価クロム化合物である硝酸クロムを添加した後、約30分間攪拌した。
【0103】
同じ方式で密着性向上剤であるGlycidoxypropyltrimethoxysilane、架橋剤であるPotassium silicate、孔食腐食改善剤であるメタバナジウム酸アンモニウム、有機樹脂であるAcrylic Emulsionを30分間隔で添加しつつ攪拌して、表面処理用組成物を製造した。
【0104】
【0105】
【0106】
2.物性評価方法及びその結果
試験用試片を製作するために、上記製造された表面処理用組成物を用いて次のように製作した。
【0107】
高耐食溶融亜鉛メッキ鋼板(Zn-Al-Mg)を7cm×15cm(横×縦)に切断して脱脂した後、被膜付着量がCrを基準に約50mg/m2となるようにバーコートして、試片を製作した。
【0108】
1)溶液安定性
上記方法によって製造されたコーティング組成物を製造した直後、それぞれ初期粘度(Vi)を測定し、50℃のオーブンに120時間保管してから、さらに25℃に冷凍した後、25℃での後期粘度(Vl)を測定した後、下記の数式1に代入した。その結果を下記の評価基準に従って評価した。
【0109】
[数式1]△V=(Vl-Vi)/Vi×100(%)
【0110】
<溶液安定性の評価基準>
○:△Vが20(%)未満であるか目視観察時、ゲル化現象が見えなかった。
X:△Vが20(%)以上であるか目視観察時、ゲル化現象が見えた。
【0111】
2)平板耐食性
ASTM B117に規定する方法に基づいて、3価クロム表面処理組成物を処理した後、時間の経過による鋼板の白錆発生率を測定した。
【0112】
<平板耐食性の評価基準>
○:白錆発生時間が144時間以上、△:白錆発生時間が96時間以上~144時間未満、X:白錆発生時間が96時間未満と評価した。
【0113】
3)加工部耐食性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板をErichsen testerを用いて6mmの高さに押し上げた後、24時間経過したときに白錆発生の程度を測定した。
【0114】
<加工部耐食性の評価基準>
○:白錆が発生していないか、白錆が発生していても非常に微細である場合、△:円に微細な白錆が発生して一部流れたが、円の外に流れ出ていない場合、X:白錆が発生して、円の外に流れ出た場合
【0115】
4)造管油侵害性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板を常温で造管油に浸漬して、24時間維持した後、浸漬の前/後色差を測定した。造管油は、国内バムウのBW WELL MP-411を10%水に希釈して使用した。
【0116】
<造管油侵害性の評価基準>
○:△E≦2、△:2<△E≦3、X:3<△E
【0117】
5)耐アルカリ性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板をアルカリ脱脂溶液に60℃、2分間浸漬した後に水洗、Air blowing後の前/後色差を測定した。
【0118】
アルカリ脱脂溶液は、大韓パカライジング社のFinecleaner L 4460A:20g/2.4L+L4460B12g/2.4L(pH=12)で用いた。
【0119】
<耐アルカリ性の評価基準>
○:△E≦2、△:2<△E≦4、X:4<△E
【0120】
6)孔食腐食耐食性
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板の表面に、噴霧器などを活用して、露が結ぶようにした後、2つの鋼板を互いに突き合わせて包装した後、恒温恒湿機に入れて、高温高湿(42℃、95%)で6時間、低温低湿(15℃、60%)で6時間を8サイクル行った後、表面の孔食欠陥個数を数えた。
【0121】
腐食性孔食欠陷数を数えるために、鋼板のスキャン面積は、100×50mm2であり、100倍に拡大して、腐食性孔食欠陥面積が29500μm2以上であるものの個数のみ数えた。
【0122】
<孔食腐食耐食性の評価基準>
○:孔食数≦20、△:20<孔食数≦40、X:40<孔食数
【0123】
7)異物欠陥
3価クロム表面処理組成物で処理された鋼板の異物欠陥を評価するために、表面積が約4cm2であるプローブに白いガーゼを被せた後、プローブ上に重さ10kgの重りを載せて、100回を往復摩擦した後、摩擦前後ガーゼの白色度(△L=Lbefore-Lafter)値を測定した。
【0124】
このとき、高湿条件を模写するために、鋼板とプローブなどは、いずれも湿度チャンバを作って、加湿器などで湿度を95%以上維持して、摩擦評価を行った。
【0125】
<異物欠陥評価の基準>
○:△L≦2.5、△:2.5<△L≦5、X:5<△L
【0126】
上記製造された表面処理鋼板に対する物性測定の結果を下記の表3と表4に記載した。
【0127】
【0128】
【0129】
上記表3に示されたように、本発明による実施例1~15の場合、溶液安定性、平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性、耐アルカリ性、孔食腐食耐食性に非常に優れ、異物欠陥が改善したことが分かる。
【0130】
しかし、表4のように、比較例1の場合、3価クロム化合物の含量が不足しており、バリア効果(Barrier effect)による耐食性に劣り、平板耐食性、加工部耐食性及び孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0131】
比較例2の場合、3価クロム化合物の含量が多過ぎて、異物欠陥が発生していることが分かる。
【0132】
比較例3の場合、密着性向上剤の含量が不足し、平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足し、異物欠陥が発生していることが分かる。
【0133】
比較例4の場合、密着性向上剤の含量が多過ぎて、残存する未反応シランによって加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0134】
比較例5の場合、酸度調節剤の含量が不足しており、溶液安定性が不足し、これにより、コーティングしても平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性が不足することが分かる。
【0135】
比較例6の場合、酸度調節剤の含量が多過ぎて、加工部耐食性と孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0136】
比較例7の場合、架橋剤の含量が不足しており、加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足し、異物欠陥が発生していることが分かる。
【0137】
比較例8の場合、架橋剤の含量が多過ぎて、未結合ケイ酸塩によって溶液安定性が不足するだけでなく、コーティングしても平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0138】
比較例9の場合、孔食腐食改善剤の含量が不足し、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0139】
比較例10の場合、孔食腐食改善剤の含量が高過ぎて、溶液安定性が不足し、コーティングしても平板耐食性、加工部耐食性、造管油侵害性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0140】
比較例11の場合、有機樹脂の含量が不足しており、被膜形成が不十分であり、加工部耐食性、造管油侵害性、耐アルカリ性が不足することが分かる。
【0141】
比較例12の場合、有機樹脂の含量が多過ぎて、相対的に不足している3価クロム化合物によって平板耐食性、加工部耐食性、孔食腐食耐食性が不足することが分かる。
【0142】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者によって様々な変形が行うことができることは明からである。さらに、本発明の実施例を前述しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価クロム化合物;
シラン化合物を含む密着性向上剤;
酸を含む酸度調節剤;
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤;
バナジウム系孔食腐食改善剤;
高分子樹脂;及び、
溶剤を含む、
鋼板の表面処理用組成物。
【請求項2】
前記3価クロム化合物は、硫酸クロム、硝酸クロム、リン酸クロム、フッ化クロム、及び塩化クロムのうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項3】
前記シラン化合物を含む密着性向上剤は、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタグリオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシトリメチルジメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン(AEAPTMS)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエポキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及びN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項4】
前記酸を含む酸度調節剤は、リン酸、硝酸、硫酸、フッ酸、塩酸、リン酸アンモニウム((NH
4)
2HPO
4、(NH
4)H
2PO
4)、第1リン酸塩(NaH
2PO
4)、第2リン酸塩(Na
2HPO
4)、フィチン酸(Phytic acid)、グリコール酸、乳酸、及び酢酸のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項5】
前記ケイ酸塩化合物を含む架橋剤は、ソジウムシリケート(Sodium silicate)、カルシウムシリケート(Calcium silicate)、カリウムシリケート(Potassium silicate)、ケイ酸アルミニウム(Aluminium silicate)、リチウムポリシリケート(Lithium polysilicate)、テトラメチルオルトシリケート(Tetramethyl orthosilicate)、及びテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate)のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項6】
前記バナジウム系孔食腐食改善剤は、5酸化バナジウム(V
2O
5)、メタバナジウム酸(HVO
3)、メタバナジウム酸アンモニウム、メタバナジウム酸カリウム、メタバナジウム酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウム(VOCl
3)、三酸化バナジウム(V
2O
3)、二酸化バナジウム(VO
2)、オキシ硫酸バナジウム(VOSO
4)、オキシシュウ酸バナジウム[VO(COO)
2]、バナジウムオキシアセチルアセトナート[VO(OC(CH
3)=CHCOCH
3
)
2]、バナジウムアセチルアセトナート[V(OC(CH
3)=CHCOCH
3
)
3]、三塩化バナジウム(VCl
3)、硫酸バナジウム(VSO
4・8H
2O)、二塩化バナジウム(VCl
2)、及び酸化バナジウム(VO)のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項7】
前記高分子樹脂は、カチオン性ポリウレタン樹脂、非イオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性アクリル樹脂、及び非イオン性アクリル樹脂のうち1種以上を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項8】
溶剤100重量部に対して
3価クロム化合物0.5~17重量部;
シラン化合物を含む密着性向上剤0.1~40重量部;
酸を含む酸度調節剤0.5~11重量部;
ケイ酸塩化合物を含む架橋剤2~20重量部;
バナジウム系孔食腐食改善剤0.1~14.3重量部;及び、
高分子樹脂0.5~25重量部を含む、
請求項1に記載の鋼板の表面処理用組成物。
【請求項9】
鋼板母材;
前記鋼板母材上に配置される亜鉛メッキ層;及び、
前記亜鉛メッキ層上に配置される表面処理層を含み、
前記表面処理層は、
3価クロム化合物、シラン化合物を含む密着性向上剤、酸を含む酸度調節剤、ケイ酸塩化合物を含む架橋剤、バナジウム系孔食腐食改善剤、及び高分子樹脂を含む、
鋼板。
【国際調査報告】