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特表2024-505806遺伝子BBD29_11265を改造してL-グルタミン酸を生産する組換え菌株及びその構築方法と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】遺伝子BBD29_11265を改造してL-グルタミン酸を生産する組換え菌株及びその構築方法と応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20240201BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240201BHJP
   C12P 13/14 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240201BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240201BHJP
   C07K 14/34 20060101ALN20240201BHJP
   C07K 14/345 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C12N15/31
C12N1/21 ZNA
C12N15/63 Z
C12P13/14
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C07K14/195
C07K14/34
C07K14/345
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540088
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2021141993
(87)【国際公開番号】W WO2022143639
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011631250.7
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515213652
【氏名又は名称】ニンシャー エッペン バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,アイイン
(72)【発明者】
【氏名】モン,ガン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,チュングァン
(72)【発明者】
【氏名】ジャ,フゥイピン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ホウブォ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リーポン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シァオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】マー,フォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ,シァオチュン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AE19
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA22X
4B065AA22Y
4B065AA24X
4B065AA24Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA25
4B065BC01
4B065CA17
4B065CA41
4B065CA44
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は遺伝子BBD29_11265を改造してL-グルタミン酸を生産する組換え菌株及びその構築方法と応用を開示する。この組換え菌株は、L-グルタミン酸を生産する細菌であり、かつSEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドの発現が改善されることを有する。この改善された発現は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドが点変異を有し且つ発現が増強されていることであってもよい。本発明では、BBD29_112665遺伝子配列の70番目の塩基がグアニンからアデニンに変異し、コードされた対応するアミノ酸配列の24番目のアラニンがトレオニンで置換される遺伝子工学菌、及びBBD29_112665遺伝子またはBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学菌を構築する。この細菌はL-グルタミン酸の生産量と転化率を高めるのに役立つ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-グルタミン酸生産細菌であって、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドの発現が改善されており、
好ましくは、前記改善された発現は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドの発現が増強されていること、又はSEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドが点変異を有していること、又はSEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドが点変異を有し且つ発現が増強されていることである、ことを特徴とするL-グルタミン酸生産細菌。
【請求項2】
SEQ ID NO:3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの点変異により、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列の24番目のアラニンは、異なるアミノ酸で置換され、好ましくは、24番目のアラニンは、トレオニンで置換される、ことを特徴とする請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
SEQ ID NO:3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の細菌。
【請求項4】
前記点変異を有するポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基の変異により形成され、
好ましくは、前記変異は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への変異を含み、
好ましくは、点変異を有するポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項5】
前記細菌は、コリネバクテリウム属細菌であり、好ましくは、コリネバクテリウム・アセトアシドフィルム(Corynebacterium acetoacidophilum)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ペキネンシス(Corynebacterium pekinense)、ブレビバクテリウム・サッカロリチカム(Brevibacterium saccharolyticum)、ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)、ブレビバクテリウム・チオゲニタイス(Brevibacterium thiogenitalis)であり、さらに好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220又はATCC 13869である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項6】
ポリヌクレオチド配列であって、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含むポリヌクレオチドをコードすることを含み、ここで、24番目のアラニンは、異なるアミノ酸で置換され、好ましくは、24番目のアラニンは、トレオニンで置換され、
好ましくは、前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID N0:4に示されるアミノ酸配列を含むポリヌクレオチドをコードすることを含み、
好ましくは、前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基の変異により形成され、好ましくは、前記変異は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への変異であり、
好ましくは、前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とするポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
前記配列は、SEQ ID N0:4に示される、ことを特徴とするアミノ酸配列。
【請求項8】
請求項6に記載のポリヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とする組換えベクター。
【請求項9】
請求項6に記載のポリヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とする組換え菌株。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の細菌を培養し、前記培養物からL-グルタミン酸を回収することを含む、L-グルタミン酸の生産方法。
【請求項11】
前記タンパク質は、
A1)アミノ酸配列がSEQ ID No.4であるタンパク質と、
A2)SEQ ID No.4に示されるアミノ酸配列を、アミノ酸残基の置換及び/又は欠失及び/又は添加を経て得られた、A1)に示されるタンパク質と80%以上の同一性を有し且つ同じ機能を有するタンパク質と、
A3)A1)又はA2)のN端及び/又はC端にタグを連結して得られた、同じ機能を有する融合タンパク質とのうちのいずれか一つである、ことを特徴とするタンパク質。
【請求項12】
前記核酸分子は、
B1)請求項11に記載のタンパク質をコードする核酸分子と、
B2)コード配列がSEQ ID No.2に示されるDNA分子と、
B3)ヌクレオチド配列がSEQ ID No.2に示されるDNA分子とのうちのいずれか一つである、ことを特徴とする核酸分子。
【請求項13】
前記生体材料は、
C1)請求項12に記載の核酸分子を含む発現カセットと、
C2)請求項12に記載の核酸分子を含む組換えベクター、又はC1)に記載の発現カセットを含む組換えベクターと、
C3)請求項12に記載の核酸分子を含む組換え微生物、又はC1)に記載の発現カセットを含む組換え微生物、又はC2)に記載の組換えベクターを含む組換え微生物とのうちのいずれか一つである、ことを特徴とする生物材料。
【請求項14】
F1)D1)~D8)のうちのいずれか一つの微生物のL-グルタミン酸の生産量の制御における応用と、
F2)D1)~D8)のうちのいずれか一つのL-グルタミン酸生産の遺伝子工学的菌の構築における応用と、
F3)D1)~D8)のうちのいずれか一つのL-グルタミン酸の製造における応用とのうちのいずれか一つにおけるD1)~D8)のうちのいずれか一つの応用であって、
ここで、前記D1)~D8)は、
D1)請求項11に記載のタンパク質、
D2)請求項12に記載の核酸分子、
D3)請求項13に記載の生物材料、
D4)ヌクレオチド配列がSEQ ID No.1であるDNA分子、
D5)SEQ ID No.1に示されるヌクレオチド配列を、修飾及び/又は一つ又は複数のヌクレオチドの置換及び/又は欠失及び/又は添加を経て得られた、SEQ ID No.1に示されるDNA分子と90%以上の同一性を有し、且つ同じ機能を有するDNA分子、
D6)D4)又はD5)に記載のDNA分子を含む発現カセット、
D7)D4)又はD5)に記載のDNA分子を含む組換えベクター、又はD6)に記載の発現カセットを含む組換えベクター、
D8)D4)又はD5)に記載のDNA分子を含む組換え微生物、又はD6)に記載の発現カセットを含む組換え微生物、又はD7)に記載の組換えベクターを含む組換え微生物である、D1)~D8)のうちのいずれか一つの応用。
【請求項15】
微生物におけるL-グルタミン酸の生産量を向上させる方法であって、
E1)目的微生物における請求項12に記載の核酸分子の発現量又は、含有量を向上させ、L-グルタミン酸の生産量が前記目的微生物よりも高い微生物を得ることと、
E2)目的微生物における請求項14におけるD4)又はD5)に記載のDNA分子の発現量又は、含有量を向上させ、L-グルタミン酸の生産量が前記目的微生物よりも高い微生物を得ることと、
E3)前記目的微生物におけるヌクレオチド配列がSEQ ID No.1であるDNA分子を変異させ、L-グルタミン酸の生産量が前記目的微生物よりも高い微生物を得ることとのうちのいずれか一つを含む、ことを特徴とする微生物におけるL-グルタミン酸の生産量を向上させる方法。
【請求項16】
前記変異は、点変異である、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記点変異は、SEQ ID No.1に示されるDNA分子がコードするアミノ酸配列の24番目のアラニン残基を別のアミノ酸残基に変異することである、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記点変異は、SEQ ID No.1に示されるDNA分子がコードするアミノ酸配列の24番目のアラニンをトレオニンに変異させ、アミノ酸配列がSEQ ID No.4である変異タンパク質を得ることである、ことを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
請求項13又は14に記載の組換え微生物を構築する方法であって、
F1)請求項12に記載の核酸分子を目的微生物に導入し、前記組換え微生物を得ることと、
F2)SEQ ID No.1に示されるDNA分子を目的微生物に導入し、前記組換え微生物を得ることと、
F3)遺伝子編集手段を用いてSEQ ID No.1に示されるDNA分子を編集し、目的微生物にSEQ ID No.2に示されるDNA分子を含ませることとのうちの少なくともいずれか一つを含む、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の組換え微生物を構築する方法。
【請求項20】
請求項13又は14に記載の組換え微生物を用いてL-グルタミン酸を生産することを含む、ことを特徴とするL-グルタミン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学と微生物技術分野に属し、具体的にL-グルタミン酸を生産する組換え菌株及びその構築方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
L-グルタミン酸は、重要なアミノ酸であり、食品、臨床薬物及びその他の方面に応用されている。従来、L-グルタミン酸は、主として発酵によりブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属等の菌属に属するL-グルタミン酸を生産する細菌又はその変異体を用いて生産した。
【0003】
L-グルタミン酸は、微生物細胞内クエン酸循環の中間生成物であるα-ケトグルタル酸から生物合成される。α-ケトグルタル酸からアンモニウムイオンの同化作用によりL-グルタミン酸を形成する生物合成経路は、2つある。そのうちの1つの経路は、高濃度のアンモニウムイオンが存在する場合、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase、GDH)の触媒によりL-グルタミン酸を合成することである。もう1つの経路(GS/GOGAT経路)は、グルタミン合成酵素及びグルタミン-ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼによりL-グルタミン酸を合成することである。グルタミン合成酵素(glutamine synthetase、GS)は、L-グルタミン酸とアンモニウムイオンをグルタミンに形質転換する反応を触媒し、グルタミン-ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(glutamine-oxoglutaric acid amino transferase)は、「グルタミン酸合成酵素」(glutamate synthase、GOGAT)とも呼ばれ、L-グルタミン酸合成反応を触媒し、該反応において、既にGSにより合成された1分子のグルタミンと1分子のα-ケトグルタル酸分子から2分子のL-グルタミン酸を合成する。
【0004】
発酵法によるL-アミノ酸生産の改良は、発酵技術、例えば攪拌と酸素供給などに関してもよく、又は栄養培地の組成、例えば発酵中の糖濃度に関し、又は発酵液を適切な製品形態に加工することに関し、例えば乾燥と造粒発酵液又はイオン交換クロマトグラフィーにより、又は関連する微生物自体の固有性能特性に関してもよい。
【0005】
これらの微生物の性能特性を改善するための方法は、変異誘導、変異体の選択とスクリーニングを含む。このようにして得られた菌株は、代謝物に対して耐性を有するか、または調節的に重要な代謝物に対して栄養欠損型であり、L-アミノ酸等を産生する。
【0006】
L-グルタミン酸の生産能力を向上させる方法は、すでに大量にあるが、日増しに増加する需要を満たすために、L-グルタミン酸の生産方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、細菌のL-グルタミン酸生産能力を改善するための新技術を開発することにより、有効なL-グルタミン酸の生産方法を提供することである。
【0008】
上記目的を実現するために、本発明の発明者らは、細菌における遺伝子BBD29_11265又はその相同遺伝子を、前記遺伝子を修飾するか又はその発現を改善することにより、細菌のL-グルタミン酸生産能力を改善できることを研究によって発見した。これらの発見に基づいて、本発明を完了した。
【0009】
本発明は、L-グルタミン酸生産細菌を提供し、ここで、SEQ ID NO:3(配列表における配列3)のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドの発現が改善されている。本発明は、前記微生物を用いたL-グルタミン酸の生産方法をさらに提供した。
【0010】
本発明の第一の態様によれば、L-グルタミン酸生産細菌を提供し、この細菌は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドの発現が改善されている。本発明によれば、前記改善された発現は、前記ポリヌクレオチド発現が増強されていること、又はSEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドが点変異を有していること、又はSEQ ID NO:3のアミノ酸配列又はその相同配列をコードするポリヌクレオチドが点変異を有し且つ発現が増強されていることである。
【0011】
前記SEQ ID N0:3のアミノ酸配列又はその相同配列は、遺伝子BBD29_11265又はその相同遺伝子がコードするタンパクである。
【0012】
前記細菌は、未修飾菌株と比べて増強されたL-グルタミン酸生産能力を有する。
【0013】
本発明において、用語である「L-グルタミン酸生産能力を有する細菌」とは、細菌が培地で培養される時にL-グルタミン酸を収集できるように、培地及び/又は細菌の細胞において以下の程度で目的L-グルタミン酸を生産、蓄積能力を有する細菌を指す。L-グルタミン酸生産能力を有する細菌は、未修飾菌株の取得可能な量よりも多い量で培地及び/又は細菌の細胞において目的L-グルタミン酸を蓄積できる細菌であってもよい。
【0014】
用語である「未修飾菌株」とは、特定の特徴を有するように修飾されていない対照菌株を指す。即ち、未修飾菌株の例は、野生型菌株と親株を含む。
【0015】
L-グルタミン酸生産能力を有する細菌は、培地において好ましくは0.5g/L以上、さらに好ましくは1.Og/L以上の量で目的L-グルタミン酸を蓄積できる細菌であってもよい。
【0016】
本発明において、別段の説明がない限り、用語である「L-グルタミン酸」とは、遊離形態のL-グルタミン酸、その塩又はその混合物を指す。
【0017】
前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列と約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、又は約99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコードすることができる。本明細書で使用されるように、用語である「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチドモジュール間のパーセンテージ同一性を指す。当分野で既知の方法であるモジュールと別のモジュールとの間の配列相同性を測定することができる。例えば、BLASTアルゴリズムによってこのような配列相同性を測定することができる。
【0018】
ポリヌクレオチドの発現は、置換又は変異(Mutation)による発現調節配列、ポリヌクレオチド配列への変異導入、染色体挿入又はベクターを介して導入されるポリヌクレオチドコピー数の増加、又はその組み合わせなどによって増強されることができる。
【0019】
ポリヌクレオチドの発現調節配列を修飾してもよい。発現調節配列は、それに操作可能に連結されたポリヌクレオチドの発現を制御し、且つ例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、サイレンサーなどを含んでもよい。ポリヌクレオチドは、開始コドンの変化を有してもよい。ポリヌクレオチドを染色体の特定の部位に配合することによって、コピー数を増加させてもよい。本明細書において、特定の部位は、例えばトランスポゾン部位又は遺伝子間部位を含んでもよい。また、ポリヌクレオチドを発現ベクターに配合し、前記発現ベクターを宿主細胞に導入することによって、コピー数を増加させてもよい。
【0020】
本発明の一つの実施の形態において、ポリヌクレオチド又は点変異を有するポリヌクレオチドを微生物染色体の特定の部位に配合することによって、コピー数を増加させる。
【0021】
本発明の一つの実施の形態において、プロモーター配列付きポリヌクレオチド又は点変異を有するプロモーター配列付きポリヌクレオチドを微生物染色体の特定の部位に配合することによって、前記アミノ酸配列を過剰発現させる。
【0022】
本発明の一つの実施の形態において、ポリヌクレオチド又は点変異を有するポリヌクレオチドを発現ベクターに配合し、前記発現ベクターを宿主細胞に導入することによって、コピー数を増加させる。
【0023】
本発明の一つの実施の形態において、プロモーター配列付きポリヌクレオチド又は点変異を有するプロモーター配列付きポリヌクレオチドを発現ベクターに配合し、前記発現ベクターを宿主細胞に導入することによって、前記アミノ酸配列を過剰発現させる。
【0024】
本発明の一つの具体的な実施の形態において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0025】
本発明の一つの実施の形態において、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが点変異を有していることによって、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列の24番目のアラニンは、異なるアミノ酸で置換される。
【0026】
本発明によれば、好ましくは、24番目のアラニンは、トレオニンで置換される。
【0027】
本発明によれば、SEQ ID N0:3に示されるアミノ酸配列であって、24番目のアラニンは、トレオニンで置換された後のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示される。
【0028】
本発明の一つの実施の形態において、前記点変異を有するポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基の変異により形成される。
【0029】
本発明によれば、前記変異は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への変異を含む。
【0030】
本発明の一つの実施の形態において、前記点変異を有するポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語である「操作可能な連結」とは、調節配列とポリヌクレオチド配列との間の機能的連結を指し、それによって調節配列は、ポリヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を制御する。調節配列は、ポリヌクレオチドの発現レベルを向上させることができる強力なプロモーターであってもよい。調節配列は、コリネバクテリウム属に属する微生物由来のプロモーターであってもよく、又は他の微生物由来のプロモーターであってもよい。例えば、プロモーターは、trcプロモーター、gapプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、araBADプロモーター又はcj7プロモーターであってもよい。
【0032】
本発明の一つの具体的な実施の形態において、前記プロモーターは、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(BBD29_11265遺伝子)のプロモーターである。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語である「ベクター」とは、遺伝子の調節配列と遺伝子配列を含み且つ適切な宿主細胞において標的遺伝子を発現するように構成されたポリヌクレオチド構築体を指す。又は、ベクターは、相同組換えに利用可能な配列を含むポリヌクレオチド構築体をさらに指してもよく、それによって宿主細胞に導入されたベクターにより、宿主細胞のゲノムにおける内因性遺伝子の調節配列を変更することができ、又は発現可能な標的遺伝子を宿主のゲノムの特定の部位に挿入することができる。この点では、本発明で使用されるベクターは、ベクターの宿主細胞への導入又はベクターの宿主細胞の染色体への挿入を決定する選択マーカーをさらに含んでもよい。選択マーカーは、選択可能な表現型、例えば薬物耐性、栄養欠損型、細胞毒剤に対する耐性、又は表面タンパクの発現を与えるマーカーを含んでもよい。このような選択剤で処理された環境では、選択マーカーを発現させた細胞のみが生存できるか又は異なる表現型性状を示すため、形質転換された細胞を選択してもよい。本明細書に記載のベクターは、当業者に公知のものであり、プラスミド、ファージ(例えば、λファージ又はM13糸状ファージなど)、コスミド(即ちCosmid)又はウィルスベクターを含むが、それらに限定されない。
【0034】
本発明のいくつかの具体的な実施の形態において、使用されるベクターは、pK18mobsacBプラスミド、pXMJ19プラスミドである。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語である「形質転換」とは、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することによって、ポリヌクレオチドがゲノム外素子とするか又は宿主細胞に挿入されたゲノムで複製できることを指す。本発明で使用されるベクターを形質転換する方法は、核酸を細胞に導入する方法を含んでもよい。また、関連技術に開示されるように、宿主細胞に応じて電気パルス法を実施することができる。
【0036】
本明細書において、前記微生物は、酵母、細菌、藻又は真菌であってもよい。
【0037】
本発明によれば、前記細菌は、コリネバクテリウム属に属する微生物、例えばコリネバクテリウム・アセトアシドフィルム(Corynebacterium acetoacidophilum)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ペキネンシス(Corynebacterium pekinense)、ブレビバクテリウム・サッカロリチカム(Brevibacterium saccharolyticum)、ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)ブレビバクテリウム・チオゲニタイス(Brevibacterium thiogenitalis)などであってもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記コリネバクテリウム属に属する微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869である。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記コリネバクテリウム属に属する微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)YPGLU001であり、該菌は、多収型グルタミン酸であり、保存情報は、以下のとおりである。菌種名:コリネバクテリウム・グルタミクム、ラテン名:Corynebacterium glutamicum、菌株番号:YPGLU001、保存機構:中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センター、保存機構略称:CGMCC、住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号、保存日:2020年11月23日、保存センター登録簿番号:CGMCC No.21220。
【0040】
本発明によれば、前記細菌は、L-グルタミン酸の生産量の向上に関連する他の改良、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミンシンセターゼ、グルタミン-ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼなどの酵素の活性又は遺伝子の増強又は低下の発現をさらに有してもよく、又は遺伝子を外来遺伝子に置換させてもよい。
【0041】
本発明の第二の態様によれば、ポリヌクレオチド配列、該ポリヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列、前記ポリヌクレオチド配列を含む組換えベクター、前記ポリヌクレオチド配列を含む組換え菌株を提供する。
【0042】
本発明によれば、前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記配列の24番目のアラニンは、異なるアミノ酸で置換される。
【0043】
本発明によれば、好ましくは、24番目のアラニンは、トレオニンで置換される。
【0044】
本発明によれば、SEQ ID N0:3に示されるアミノ酸配列であって、24番目のアラニンがトレオニンで置換された後のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示される。
【0045】
本発明によれば、好ましくは、前記SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0046】
本発明の一つの実施の形態において、前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目の塩基の変異により形成される。
【0047】
本発明によれば、前記変異とは、前記部位の塩基/ヌクレオチドが変化することを指し、前記変異方法は、変異誘導、PCR固定点変異法、及び/又は相同組換えなどの方法から少なくとも一つを選択してもよい。本発明において、好ましくは、PCR固定点変異法及び/又は相同組換えを採用する。
【0048】
本発明によれば、前記変異は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列の70番目のグアニン(G)からアデニン(A)への変異を含む。
【0049】
本発明の一つの実施の形態において、前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0050】
本発明によれば、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0051】
本発明によれば、前記組換えベクターは、前記ポリヌクレオチド配列をプラスミドに導入して構築される。
【0052】
本発明の一つの実施の形態において、前記プラスミドは、pK18mobsacBプラスミドである。
【0053】
本発明の別の実施の形態において、前記プラスミドは、PXMJ19プラスミドである。
【0054】
具体的には、NEBuider組換え系を介して前記ポリヌクレオチド配列と前記プラスミドを組換えベクターとして構築してもよい。
【0055】
本発明によれば、前記組換え菌株は、前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0056】
本発明の一実施形態として、前記組換え菌株の出発菌は、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220である。
【0057】
本発明の一実施形態として、前記組換え菌株の出発菌は、ATCC 13869である。
本発明の第三の態様によれば、L-グルタミン酸を生成する組換え菌株の構築方法をさらに提供する。
【0058】
本発明によれば、前記構築方法は、
宿主菌株におけるSEQ ID NO:1に示される野生型BBD29_11265遺伝子のポリヌクレオチド配列を改造し、その70番目の塩基に変異を生じさせ、変異BBD29_11265コード遺伝子を含む組換え菌株を得るステップを含む。
【0059】
本発明の構築方法によれば、前記改造は、変異誘導、PCR固定点変異法、及び/又は相同組換えなどの方法のうちの少なくとも一つを含む。
【0060】
本発明の構築方法によれば、前記変異とは、SEQ ID NO:1における70番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への変異を指し、具体的には、前含変異BBD29_11265コード遺伝子を含むポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2に示される。
【0061】
さらに、前記構築方法は、
SEQ ID NO:1に示される野生型BBD29_11265遺伝子のヌクレオチド配列を改造し、その70番目の塩基に変異を生じさせ、変異BBD29_11265遺伝子ポリヌクレオチド配列を得るステップ(1)と、
前記変異多核酸配列とプラスミドとを連結して、組換えベクターを構築するステップ(2)と、
前記組換えベクターを宿主菌株に導入し、前記変異BBD29_11265コード遺伝子を含む組換え菌株を得るステップ(3)とを含む。
【0062】
本発明の構築方法によれば、前記ステップ(1)は、点変異のBBD29_11265遺伝子の構築を含み、即ち、未修飾菌株のゲノム配列に基づいて、BBD29_11265遺伝子断片を増幅するプライマーP1とP2及びP3とP4を2組合成し、PCR固定点変異法によって野生型BBD29_11265遺伝子SEQ ID NO:1に点変異を導入し、点変異BBD29_11265遺伝子ヌクレオチド配列SEQ ID N0:2を得、BBD29_11265G70Aとする。
【0063】
本発明の一つの実施の形態において、前記未修飾菌株ゲノムは、ATCC 13869菌株に由来してもよく、そのゲノム配列は、NCBIサイトから取得されてもよい。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記ステップ(1)において、前記プライマーは、以下のとおりである。
P1: 5’ CAGTGCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAGCGGTGCCAGACACTGTCAAG 3’(SEQ ID NO:5)
P2: 5’ ACGATGACAA TCGTTGCGAT CCCGCCCATG 3’(SEQ ID NO:6)
P3: 5’ CATGGGCGGG ATCGCAACGA TTGTCATCGT 3’(SEQ ID NO:7)
P4: 5’ CAGCTATGACCATGATTACGAATTCGAGCTCGGTACCC CGTCAGCCCC TGACCGTTCT 3’(SEQ ID NO:8)
本発明の一実施形態において、前記PCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、及び72℃で45秒間の伸長(30サイクル)、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われる。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記オーバーラップPCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、及び72℃で90秒間の伸長(30サイクル)、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われる。
【0066】
本発明の構築方法によれば、前記ステップ(2)は、組換えプラスミドの構築を含み、分離精製されたBBD29_11265G70AとpK18mobsacBプラスミドを、NEBuider組換え系により組み立て、組換えプラスミドを得ることを含む。
【0067】
本発明の構築方法によれば、前記ステップ(3)は、組換え菌株の構築を含み、即ち組換えプラスミドを宿主菌株に形質転換し、組換え菌株を得る。
【0068】
本発明の一実施形態において、前記ステップ(3)の形質転換は、電気変換法である。
【0069】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、ATCC 13869である。
【0070】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220である。
【0071】
本発明の一つの実施の形態において、前記組換えは、相同組換えによって実現される。
【0072】
本発明の第四の態様によれば、L-グルタミン酸を生成する組換え菌株の構築方法をさらに提供する。
【0073】
本発明によれば、前記構築方法は、
BBD29_11265の上下流相同アーム断片、BBD29_11265遺伝子コード領域及びそのプロモーター領域配列を増幅し、相同組換えの方式で宿主菌株のゲノムにBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を導入し、前記菌株がBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させることを実現するステップを含む。
【0074】
本発明の一つの実施の形態において、上流相同アーム断片を増幅するプライマーは、以下のとおりである。
P7: 5’ CAGTGCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAG GACCCGCTTG CCATACGAAG 3’(SEQ ID NO:11)
P8: 5’ CCCAGAACAC GACAAAAGGT ATCTACTCAT CTGAAGAATC 3’(SEQ ID NO:12)
本発明の一つの実施の形態において、下流相同アーム断片を増幅するプライマーは、以下のとおりである。
P11: 5’ ACTGGCCTCC TACGCAATAA TTCGTGGGCA CTCTGGTTTG 3’(SEQ ID NO:15)
P12: 5’ CAGCTATGACCATGATTACGAATTCGAGCTCGGTACCCCATAAGAAAC AACCACTTCC 3’(SEQ ID NO:16)
本発明の一つの実施の形態において、前記遺伝子コード領域及びそのプロモーター領域配列を増幅するプライマーは、以下のとおりである。
P9: 5’ GATTCTTCAG ATGAGTAGAT ACCTTTTGTC GTGTTCTGGG 3’(SEQ ID NO:13)
P10: 5’ CAAACCAGAG TGCCCACGAA TTATTGCGTA GGAGGCCAGT 3’(SEQ ID NO:14)
本発明の一つの実施の形態において、さらに前記P7/P12をプライマーとし、増幅された上流相同アーム断片、下流相同アーム断片、遺伝子コード領域及びそのプロモーター領域配列断片の三つの断片混合物をテンプレートとして増幅し、統合相同アーム断片を得る。
【0075】
本発明の一つの実施の形態において、採用されたPCR系は、l0×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(各2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(lOpM)各2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総容積50μLであり、PCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、72℃で120秒間の伸長(30サイクル)、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われる。
【0076】
本発明の一つの実施の形態において、NEBuider組換え系を採用し、シャトルプラスミドPK18mobsacBと統合相同アーム断片を組み立て、統合プラスミドを得る。
【0077】
本発明の一つの実施の形態において、統合プラスミドを宿主菌株にトランスフェクトし、相同組換えの方式で宿主菌株のゲノムにBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を導入する。
【0078】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220である。
【0079】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、ATCC 13869である。
【0080】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、SEQ ID N0:2に示されるポリヌクレオチド配列を有する菌株である。
【0081】
本発明の第五の態様によれば、L-グルタミン酸を生産する組換え菌株の構築方法をさらに提供する。
【0082】
本発明によれば、前記構築方法は、
BBD29_11265遺伝子コード領域及びプロモーター領域配列、又はBBD29_11265G70A遺伝子コード領域及びプロモーター領域配列を増幅し、過剰発現プラスミドベクターを構築し、前記ベクターを宿主菌株に導入し、前記菌株がBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させることを実現するステップを含む。
【0083】
本発明の一つの実施の形態において、前記遺伝子コード領域及びそのプロモーター領域配列を増幅するプライマーは、以下のとおりである。
P17:5’ GCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAGAGGATCCCCACCTTTTGTC GTGTTCTGGG 3’(SEQ ID N0:21)
P18:5’ ATCAGGCTGAAAATCTTCTCTCATCCGCCAAAAC TTATTGCGTA GGAGGCCAGT 3’(SEQ ID NO:22)
本発明の一つの実施の形態において、前記PCR系は、lO×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(各2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(l0pM)各2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総容積50μLであり、前記PCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、72℃で45秒間の伸長(30サイクル)、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われる。
【0084】
本発明の一つの実施の形態において、NEBuider組換え系を採用し、シャトルプラスミドpXMJ19と自己プロモーターを持つBBD29_11265又はBBD29_11265G70A断片を組み立て、過剰発現プラスミドを得る。
【0085】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220である。
【0086】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、ATCC 13869である。
【0087】
本発明の一つの実施の形態において、前記宿主菌株は、SEQ ID N0:2に示されるポリヌクレオチド配列を有する菌株である。
【0088】
本発明で得られた組換え菌株は、単独でL-グルタミン酸の発酵生産に応用されてもよく、L-グルタミン酸を生産する他の細菌と混合してL-グルタミン酸を発酵生産してもよい。
【0089】
本発明の別の態様によれば、L-グルタミン酸の生産方法を提供し、該方法は、前記細菌を培養し、且つ培養物からL-グルタミン酸を得ることを含む。
【0090】
当分野の既知の培養条件で適切な培地において細菌の培養を行うことができる。培地は、炭素源、窒素源、微量元素、及びその組み合わせを含んでもよい。培養において、培養物のpHを調整してもよい。また、培養の際に、気泡の発生を防止することを含んでもよく、例えば消泡剤を用いて気泡の発生を防止する。また、培養の際に、培養物にガスを注入することを含んでもよい。ガスは、培養物の好気条件を維持できる任意のガスを含んでもよい。培養において、培養物の温度は、20~45℃であってもよい。生成されたL-グルタミン酸を培養物から回収し、即ち硫酸又は塩酸などで培養物を処理し、そして例えばアニオン交換クロマトグラフィー、濃縮、晶析と等電点沈殿の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0091】
本発明において、
SEQ ID NO:1:BBD29_11265野生型ORF配列
ATGGCTTTAG GCGGCGCAGA ACTGTTAATT CTTTTTATCC TGTTTATTCT GTTCATGGGC GGGATCGCA CGATTGTCAT CGTTATCGTT AAGTTGACCC AGCGGTCTAA CAGTCGTGGT GCCTCAACTA CGTCCACAAT TAACATTGAT CCGAGTATTC ATGCTGCATT GACAGAGATC GCAGCTAGGG ACGGGGTACC GGCGTCTAGC GTGGTTAACG GTCTTCTGAA CGATTACATC AATAAGCGCA GGTACTGGCC TCCTACGCAA TAA
SEQ ID N0:2:BBD29_11265G70A ORF配列
ATGGCTTTAG GCGGCGCAGA ACTGTTAATT CTTTTTATCC TGTTTATTCT GTTCATGGGC GGGATCGCA CGATTGTCAT CGTTATCGTT AAGTTGACCC AGCGGTCTAA CAGTCGTGGT GCCTCAACTA CGTCCACAAT TAACATTGAT CCGAGTATTC ATGCTGCATT GACAGAGATC GCAGCTAGGG ACGGGGTACC GGCGTCTAGC GTGGTTAACG GTCTTCTGAA CGATTACATC AATAAGCGCA GGTACTGGCC TCCTACGCAA TAA
SEQ ID N0:3:BBD29_11265野生型コードタンパクアミノ酸配列
MALGGAELLI LFILFILFMG GIAAIVIVIV KLTQRSNSRG ASTTSTINID PSIHAALTEI AARDGVPASS VVNGLLNDYI NKRRYWPPTQ
SEQ ID N0:4:BBD29_11265A24Tコードタンパクアミノ酸配列
MALGGAELLI LFILFILFMG GIATIVIVIV KLTQRSNSRG ASTTSTINID PSIHAALTEI AARDGVPASS VVNGLLNDYI NKRRYWPPTQ
BBD29_11265A24T は、BBD29_11265A24Tである。
【0092】
本発明は、タンパク質をさらに提供し、名称がタンパク質BBD29_11265A24Tであり、前記タンパク質は、
A1)アミノ酸配列がSEQ ID No.4であるタンパク質と、
A2)SEQ ID No.4に示されるアミノ酸配列を、アミノ酸残基の置換及び/又は欠失及び/又は添加を経て得られた、A1)に示されるタンパク質と80%以上の同一性を有し且つ同じ機能を有するタンパク質と、
A3)A1)又はA2)のN端及び/又はC端にタグを連結して得られた、同じ機能を有する融合タンパク質とのうちのいずれか一つであってもよい。
【0093】
本発明は、核酸分子をさらに提供し、名称がBBD29_11265G70Aであり、前記核酸分子BBD29_11265G70Aは、
B1)コード前記タンパク質BBD29_11265A24Tの核酸分子と、
B2)コード配列がSEQ ID No.2に示されるDNA分子と、
B3)ヌクレオチド配列がSEQ ID No.2に示されるDNA分子とのうちのいずれか一つであってもよい。
【0094】
SEQ ID No.2に示されるDNA分子は、本発明に記載のBBD29_11265G70A遺伝子である。
【0095】
SEQ ID No.2に示されるDNA分子(BBD29_11265G70A遺伝子)は、SEQ ID No.4に示されるタンパク質BBD29_11265A24Tをコードする。
【0096】
前記タンパク質BBD29_11265A24Tのアミノ酸配列(SEQ ID No.4)における24番目のトレオニン(T)は、アラニン(A)を変異させたものである。
本発明は、生物材料をさらに提供し、前記生物材料は、
C1)前記核酸分子BBD29_11265G70Aを含む発現カセットと、
C2)前記核酸分子BBD29_11265G70Aを含む組換えベクター、又はC1)に記載の発現カセットを含む組換えベクターと、
C3)前記核酸分子BBD29_11265G70Aを含む組換え微生物、又はC1)に記載の発現カセットを含む組換え微生物、又はC2)に記載の組換えベクターを含む組換え微生物とのうちのいずれか一つであってもよい。
【0097】
本発明は、
F1)D1)~D8)のうちのいずれか一つの微生物のL-グルタミン酸の生産量の制御における応用と、
F2)D1)~D8)のうちのいずれか一つのL-グルタミン酸生産の遺伝子工学的菌の構築における応用と、
F3)D1)~D8)のうちのいずれか一つのL-グルタミン酸の製造における応用とのうちのいずれか一つにおけるD1)~D8)のうちのいずれか一つの応用をさらに提供し、
ここで、前記D1)~D8)は、
D1)前記タンパク質BBD29_11265A24T
D2)前記核酸分子BBD29_11265G70A
D3)前記生物材料、
D4)ヌクレオチド配列がSEQ ID No.1であるDNA分子、
D5)SEQ ID No.1に示されるヌクレオチド配列を、修飾及び/又は一つ又は複数のヌクレオチドの置換及び/又は欠失及び/又は添加を経て得られた、SEQ ID No.1に示されるDNA分子と90%以上の同一性を有し、且つ同じ機能を有するDNA分子、
D6)D4)又はD5)に記載のDNA分子を含む発現カセット、
D7)D4)又はD5)に記載のDNA分子を含む組換えベクター、又はD6)に記載の発現カセットを含む組換えベクター、
D8)D4)又はD5)に記載のDNA分子を含む組換え微生物、又はD6)に記載の発現カセットを含む組換え微生物、又はD7)に記載の組換えベクターを含む組換え微生物である。
SEQ ID No.1に示されるDNA分子は、本発明に記載のBBD29_11265遺伝子である。
SEQ ID No.1に示されるDNA分子(BBD29_11265遺伝子)は、SEQ ID No.3に示されるタンパク質をコードする。
【0098】
本明細書において、同一性とは、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の同一性を指す。国際インターネット上の相同性検索サイト、例えばNCBIホームページサイトのBLASTページを用いて、アミノ酸配列の同一性を測定することができる。例えば、Advanced BLAST2.1では、blastpをプログラムとして使用し、Expect値を10に設定し、すべてのFilterをOFFに設定し、BL0SUM62をMatrixとして使用し、Gap existence cost、Per residue gap costとLambda ratioをそれぞれ11、1と0.85(デフォルト値)に設定して1組のアミノ酸配列の同一性を検索して計算することにより、同一性の値(%)を得ることができる。
【0099】
本明細書において、前記80%以上の同一性は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性であってもよい。
【0100】
本明細書において、前記90%以上の同一性は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性であってもよい。
【0101】
本明細書に記載の微生物のL-グルタミン酸の生産量の制御は、微生物におけるL-グルタミン酸の蓄積量(即ちL-グルタミン酸の生物合成を促進又は抑制する)を向上又は低下させることであってもよい。
【0102】
本発明は、微生物におけるL-グルタミン酸の生産量を向上させる方法をさらに提供し、前記方法は、
E1)目的微生物における前記核酸分子BBD29_11265G70Aの発現量又は含有量を向上させ、L-グルタミン酸の生産量が前記目的微生物よりも高い微生物を得ることと、
E2)目的微生物におけるD4)又はD5)に記載のDNA分子の発現量又は、含有量を向上させ、L-グルタミン酸の生産量が前記目的微生物よりも高い微生物を得ることと、
E3)前記目的微生物におけるヌクレオチド配列がSEQ ID No.1であるDNA分子を変異させ、L-グルタミン酸の生産量が前記目的微生物よりも高い微生物を得ることとのうちのいずれか一つを含む。
【0103】
上記方法において、前記変異は、点変異(point mutation)、即ち単一ヌクレオチドの変異であってもよい。
【0104】
上記方法において、前記点変異は、SEQ ID No.1に示されるDNA分子がコードするアミノ酸配列の24番目のアラニン残基を別のアミノ酸残基に変異させるものであってもよい。
【0105】
上記方法において、前記点変異は、SEQ ID No.1に示されるDNA分子がコードするアミノ酸配列の24番目のアラニンをトレオニンに変異させ、アミノ酸配列がSEQ ID No.4である変異タンパク質BBD29_11265A24Tを得るものであってもよい。
【0106】
前記変異とは、固定点変異により遺伝子におけるいずれか一つ又は複数の塩基を変化させることにより、対応するタンパク質アミノ酸組が変化し、新たなタンパク質を生産し又は元のタンパク質に新たな機能を発生させ、即ち遺伝子固定点変異を指す。遺伝子の固定点変異技術、例えばオリゴヌクレオチドプライマーを介した固定点変異、PCRを介した固定点変異又はカセット変異などは、当業者には周知である。
【0107】
本明細書に記載の点変異は、一塩基置換、一塩基挿入または一塩基欠失であってもよく、具体的には一塩基置換であってもよい。前記一塩基置換は、対立遺伝子置換であってもよい。
【0108】
前記点変異は、BBD29_11265遺伝子(SEQ ID No.1)の70番目のグアニン(G)の核酸改造であってもよい。
【0109】
具体的には、前記点変異は、BBD29_11265遺伝子(SEQ ID No.1)の70番目のグアニン(G)をアデニン(A)に変異させ、SEQ ID No.2に示されるDNA分子を得るものであってもよい。
【0110】
本明細書において、前記組換えベクターは、具体的に組換えベクターpK18-BBD29_11265G70A、PK18mobsacB-BBD29_11265、PK18mobsacB-BBD29_11265G70A、pXMJ19-BBD29_11265又はpXMJ19-BBD29_11265G70Aであってもよい。
【0111】
前記組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aは、pK18mobsacBベクターのXba Iと/BamH I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.29の37-1495番目に示されるDNA断片に置換し、pK18mobsacBベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。前記組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aは、SEQ ID No.2に示される変異の遺伝子BBD29_11265G70Aの1~273番目に示されるDNA分子を含む。
【0112】
前記組換えベクターPK18mobsacB-BBD29_11265は、外来遺伝子BBD29_11265を宿主染色体に統合し、菌生産中に野生型BBD29_11265遺伝子を過剰発現させるために用いられる。前記組換えベクターPK18mobsacB-BBD29_11265は、pK18mobsacBベクターのXba Iと/BamH I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.30の37~1966番目に示されるDNA 断片に置換し、pK18mobsacBベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0113】
前記組換えベクターPK18mobsacB-BBD29_11265G70Aは、外来遺伝子BBD29_11265G70Aを宿主染色体に統合し、菌生産中に変異型遺伝子BBD29_11265G70Aを過剰発現させるために用いられる。前記組換えベクターPK18mobsacB-BBD29_11265G70Aは、pK18mobsacBベクターのXba Iと/BamH I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.31の37-1966番目に示されるDNA断片に置換し、pK18mobsacBベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0114】
前記組換えベクターpXMJ19-BBD29_11265は、プラスミドを介して外来遺伝子BBD29_11265を染色体外に発現させ、さらに菌生産中に野生型BBD29_11265遺伝子を過剰発現させるために用いられる。前記組換えベクターpXMJ19-BBD29_11265は、pXMJ19ベクターのEcoR IとKpn I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.32の37~486番目に示されるDNA断片に置換し、pXMJ19ベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0115】
前記組換えベクターpXMJ19-BBD29_11265G70Aは、プラスミドを介して外来遺伝子BBD29_11265G70Aを染色体外に発現させ、さらに菌生産中に変異型遺伝子BBD29_11265G70Aを過剰発現させるために用いられる。前記組換えベクターpXMJ19-BBD29_11265G70Aは、pXMJ19ベクターのEcoR IとKpn I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.33の37~486番目に示されるDNA断片に置換し、pXMJ19ベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0116】
前記組換えベクターpK18-BBD29_11265G70A、PK18mobsacB-BBD29_11265、PK18mobsacB-BBD29_11265G70A、pXMJ19-BBD29_l1265とpXMJ19-BBD29_11265G70Aは、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【0117】
本明細書において、前記組換え微生物は、具体的に組換え菌YPG-013、YPG-014、YPG-015、YPG-016又はYPG-017であってもよい。
【0118】
前記組換え菌YPG-013は、前記組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aをコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacteriuin glutainicum)CGMCC No.21220に形質転換して得られた組換え菌であり、前記組換え菌YPG-013は、SEQ ID No.2に示される変異の遺伝子BBD29_11265G70Aを含む。
【0119】
前記組換え菌YPG-014は、2コピーのSEQ ID No.1に示されるBBD29_11265遺伝子を含み、2コピーBBD29_11265遺伝子を含む組換え菌は、BBD29_11265遺伝子の発現量を顕著かつ安定的に増加させることができる。組換え菌YPG-014は、ゲノム上の野生型BBD29_11265遺伝子を過剰発現させる工学的菌である。
【0120】
前記組換え菌YPG-015は、SEQ ID No.2に示される変異のBBD29_11265G70A遺伝子を含み、組換え菌YPG-015は、ゲノム上の変異型BBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌である。
【0121】
前記組換え菌YPG-016は、2コピーSEQ ID No.1に示されるBBD29_11265遺伝子を含み、組換え菌YPG-016は、プラスミド上の野生型BBD29_11265遺伝子を過剰発現させる工学的菌であり、即ちプラスミドpXMJ19-BBD29_11265が染色体外に過剰発現を行う。
【0122】
前記組換え菌YPG-017は、SEQ ID No.2に示される変異のBBD29_11265G70A遺伝子を含み、組換え菌YPG-017は、プラスミド上の変異型BBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌であり、即ちプラスミドpXMJ19-BBD29_11265G70Aが染色体外に過剰発現を行う。
【0123】
前記組換え菌 YPG-013、YPG-014、YPG-015、YPG-016とYPG-017は、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【0124】
本発明は、前記組換え微生物を構築する方法をさらに提供し、前記方法は、
F1)前記核酸分子BBD29_11265G70Aを目的微生物に導入し、前記組換え微生物を得ることと、
F2)SEQ ID No.1に示されるDNA分子を目的微生物に導入し、前記組換え微生物を得ることと、
F3)遺伝子編集手段(例えば一塩基の遺伝子編集)を用いてSEQ ID No.1に示されるDNA分子を編集し、目的微生物にSEQ ID No.2に示されるDNA分子を含ませることとのうちの少なくともいずれか一つを含む。
【0125】
前記導入は、化学形質転換法又は電気ショック形質転換法などの既知の形質転換方法により本発明DNA分子を担持したベクターを宿主菌に形質転換することであってもよい。導入されたDNA分子は、シングルコピーであってもよくマルチコピーであってもよい。前記導入は、外来遺伝子を宿主染色体に統合してもよく、プラスミドが染色体外に発現してもよい。
【0126】
本発明は、L-グルタミン酸の製造方法をさらに提供し、前記方法は、本明細書におけるいずれか一つの前記組換え微生物を用いてL-グルタミン酸を生産することを含む。
【0127】
上記方法において、前記方法は、発酵法によるL-グルタミン酸の製造であってもよく、前記組換え微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacteriuin)であってもよく、具体的にコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)及びその変異体であってもよい。
【0128】
保存情報:菌種名:コリネバクテリウム・グルタミクム、ラテン名:Corynebacterium glutamicum、菌株番号:YPGLU001、保存機構:中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センター、保存機構略称:CGMCC、住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号、保存日:2020年11月23日、保存センター登録簿番号:CGMCC No.21220。
【発明を実施するための形態】
【0129】
以下では、具体的な実施形態を結び付けながら本発明についてさらに詳細に記述するが、これらの実施例は、ただ本発明を記述するにすぎず、本発明の範囲を制限するものではない。以下に提供される実施例は、当業者によるさらなる改良のためのガイドラインとすることができ、いかなる方式でも本発明の制限を構成するものではない。
【0130】
下記の実施例における実験方法は、別段の説明がない限り、通常の方法であり、本分野内の文献に記述された技術又は条件又は製品説明書に従って行われる。下記の実施例で使用される材料、試薬などは、別段の説明がない限り、いずれも商業的に入手することができる。
【0131】
以下の実施例において前記菌株を培養するために使用される基礎培地の組成が同じであり、この上に培地組成に必要のある該当するショ糖、カナマイシン又はクロラムフェニコールなどを添加し、基礎培地の組成を表1に示す。
【表1】
下記の実施例におけるコリネバクテリウム・グルタミッカム(Corynebacterium glutamicum)YPGLU001 CGMCC No.21220は、2020年11月23日に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センター(CGMCCと略称され、住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所)に保存されており、保存登録番号がCGMCC No.21220である。コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)YPGLU001は、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220とも呼ばれる。
【0132】
実施例1 点変異のBBD29_11265遺伝子コード領域を含む形質転換ベクターpK18-BBD29_11265G70Aの構築
NCBIにより公表されたコリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869ゲノム配列に基づいて、BBD29_11265遺伝子コード領域配列を増幅するプライマーを2組設計して合成し、アレル置換の方式で菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No. 21220(シークエンスにより該菌株染色体上のBBD29_11265遺伝子コード領域とATCC 13869とが一致していることが確認された)に点変異を導入し、対応するコードタンパクのアミノ酸配列は、SEQ ID N0:3であり、BBD29_11265遺伝子のヌクレオチド配列の70番目のグアニン(G)は、アデニン(A)(SEQ ID NO:2:BBD29_11265G70A)に変化し、対応するコードタンパクのアミノ酸配列の24番目のアラニン(A)は、トレオニン(T)(SEQ ID N0:4:BBD29_11265A24T)に変化した。
【0133】
前記点変異は、BBD29_11265遺伝子のヌクレオチド配列(SEQ ID No.1)における70番目のグアニン(G)をアデニン(A)に変異させ、SEQ ID No.2に示されるDNA分子(変異BBD29_11265遺伝子、名称がBBD29_11265G70Aである)を得るものである。
【0134】
ここで、SEQ ID No.1に示されるDNA分子コードアミノ酸配列は、SEQ ID No.3のタンパク質である(前記タンパク質名は、タンパク質BBD29_11265である)。
【0135】
SEQ ID No.2に示されるDNA分子コードアミノ酸配列は、SEQ ID No.4の変異タンパク質である(前記変異タンパク質名は、BBD29_11265A24Tである)。前記変異タンパク質BBD29_11265A24Tアミノ酸配列(SEQ ID No.4)における24番目のトレオニン(T)は、アラニン(A)が変異したものである。
【0136】
オーバーラップPCR(Overlap PCR)技術を用いて遺伝子固定点変異を行い、プライマー設計は、以下のとおりであり(上海invitrogen公司により合成された)、太字フォントの塩基は、変異位置である。
P1:5’ CAGTGCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAGCGGTGCCAGACACTGTCAAG 3’(SEQ ID NO:5)
P2:5’ ACGATGACAA TCGTGCGAT CCCGCCCATG 3’(SEQ ID NO:6)
P3:5’ CATGGGCGGG ATCGCACGA TTGTCATCGT 3’(SEQ ID NO:7)
P4:5’ CAGCTATGACCATGATTACGAATTCGAGCTCGGTACCC CGTCAGCCCC TGACCGTTCT 3’(SEQ ID NO:8)
構築方法:以コリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869をテンプレートとし、それぞれプライマーP1とP2、P3とP4で、PCR増幅を行い、大きさがそれぞれ775bpと788bpである、それぞれ変異塩基付きの2つのBBD29_11265遺伝子コード領域のDNA断片(BBD29_11265 UpとBBD29_11265 Down)を取得した。
【0137】
PCR系:l0×Ex Taq Buffer 5 μL、dNTP Mixture(各2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(l0pM)各2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総容積50μL。
【0138】
前記PCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、72℃で45秒間の伸長、30サイクル、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われ、BBD29_11265遺伝子コード領域を含む、大きさがそれぞれ775bpと788bpである2つのDNA断片(BBD29_11265 UpとBBD29_11265 Down)を取得した。
【0139】
上記2つのDNA断片(BBD29_11265 UpとBBD29_11265 Down)をアガロースゲル電気泳動により分離精製した後、目的ストリップを回収し、さらに上記2つのDNA断片をテンプレートとし、P1とP4をプライマーとし、オーバーラップPCR増幅により長さ1533bpの断片を得、名称がBBD29_11265 Up-Downである(配列は、SEQ ID No.29に示される)。SEQ ID No.29に示されるDNA断片のうち、693~965番目は、変異部位を含むBBD29_11265G70A遺伝子断片(即ちSEQ ID No.2の1~273番目)である。
【0140】
オーバーラップPCR系:lO×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(各2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(lO pM)各2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総容積50μL。
【0141】
前記オーバーラップPCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、72℃で90秒間の伸長、30サイクル、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われた。
【0142】
このDNA断片BBD29_11265 Up-Down(SEQ ID No.29)は、変異部位を含み、コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220中BBD29_11265遺伝子コード領域の70番目に核酸改造を導入するために用いられ、具体的には菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220におけるBBD29_11265遺伝子コード領域の70番目のグアニン(G)をアデニン(A)に変化させ、最終的にコードタンパクの24番目のアミノ酸をアラニン(A)からトレオニン(T)に変化させた。pK18mobsacBプラスミド(Addgene社から購入)をXba I/BamH I酵素で切断した後、アガロースゲル電気泳動でBBD29_11265G70Aと線形化したpK18mobsacBプラスミドを分離精製し、さらにNEBuider組換え系で組立、ベクターpK18-BBD29_11265G70Aを得、該プラスミドには、カナマイシン抵抗性マーカーが含まれる。そしてベクターpK18-BBD29_11265G70Aをシーケンシング会社に送ってシーケンシング鑑定し、正しい点変異(G-A)を含むベクターpK18-BBD29_11265G70Aを保存して予備した。
【0143】
具体的には、前記DNA断片(BBD29_11265 Up-Down)をアガロースゲル電気泳動により分離した後に精製し、酵素切断(Xba I/BamH I)を経て精製されたpK18mobsacBプラスミド(Addgene社から購入され、Xba I/BamH I酵素で切断する)とNEBuilder酵素(NEB社から購入)により50℃で30分間連結し、連結産物をDH5a(TAKARA社から購入)に形質転換した後に成長したモノクローナルをPCR鑑定して陽性組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aを得、該組換えベクターにはカナマイシン抵抗性(Kan)マーカー、が含まれる。酵素切断の正しい組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aをシーケンシング会社に送ってシーケンシング鑑定し、正しい点変異(G-A)を含む組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aを保存して予備した。
【0144】
前記組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aは、pK18mobsacBベクターのXba Iと/BamH I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.29の37~1495番目に示されるDNA断片に置換し、pK18mobsacBベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0145】
前記組換えベクターpK18-BBD29_11265G70Aは、SEQ ID No.2に示される変異を含む遺伝子BBD29_11265G70Aの第1~273位に示されるDNA分子である。
【0146】
実施例2 点変異を含むBBD29_11265G70Aの工学的菌株の構築
構築方法:実施例1におけるアイソサイト置換プラスミドpK18-BBD29_11265G70Aを電気転換によりコリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220に導入し、培地で培養し、培地成分と培養条件は表1を参照し、培養により生じた単一コロニーは、それぞれプライマーP1と汎用プライマーM13Rにより鑑定され、大きさ約1560bpバンドを増幅できた菌株は、陽性菌株である。陽性菌株は、15%のショ糖を含む培地板上で培養され、培養により生じた単一コロニーは、それぞれカナマイシンを含む培地板とカナマイシンを含まない培地板上で培養され、カナマイシンを含まない培地上で成長するが、カナマイシンを含む培地上で成長しない菌株を選択してさらに以下のプライマー(上海invitrogen公司により合成され)を採用してPCR鑑定され、
P5:5’ TTTTCTGACT GCTCTGAACC 3’(SEQ ID NO:9)
P6:5’ GACCGTTAAC CACGCTAGAC 3’(SEQ ID NO:10)
上記PCR増幅産物は、高温変性、氷浴後にSSCP電気泳動(プラスミドpK18-BBD29_11265G70Aの増幅断片を陽性対照とし、ATCC 13869の増幅断片を陰性対照、水を空白対照とする)を行い、SSCP電気泳動のPAGEの製造及び電気泳動条件は、表2を参照し、断片構造が異なり、電気泳動位置が異なるため、断片の電気泳動位置が陰性対照断片の位置と一致せず且つ陽性対照断片の位置と一致する菌株を、アイソサイト置換に成功した菌株とする。アイソサイト置換に成功した菌株の目的断片を、さらにプライマーP5とP6でPCR増幅を行い、PMD19-Tベクターに連結してシークエンスを行い、配列比較により、塩基配列に変異を生じさせた配列検証菌株のアイソサイト置換に成功し、YPG-013と命名された。
組換え菌YPG-013は、SEQ ID No.2に示される変異を含む遺伝子BBD29_11265G70Aである。
【表2】
実施例3 ゲノムにおいてBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌株の構築
菌生産中に野生型BBD29_11265遺伝子又はその変異遺伝子BBD29_11265G70Aを過剰発現させることでL-グルタミン酸の生産量を増加させることができることをさらに研究検証するために、外来遺伝子を宿主染色体に統合し、ゲノムにおいてBBD29_11265遺伝子又はBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌株を構築した。
【0147】
NCBIにより公表されたコリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869ゲノム配列に基づいて、上下流相同アーム断片及びBBD29_11265遺伝子コード領域及びプロモーター領域配列を増幅するプライマーを3組設計して合成し、相同組換えの方式で菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220にBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を導入した。
【0148】
プライマー設計は、以下のとおりである(上海invitrogen公司により合成され)、
P7:5’ CAGTGCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAG GACCCGCTTG CCATACGAAG 3’(SEQ ID NO:11)
P8:5’ CCCAGAACAC GACAAAAGGT ATCTACTCAT CTGAAGAATC 3’(SEQ ID NO:12)
P9:5’ GATTCTTCAG ATGAGTAGAT ACCTTTTGTC GTGTTCTGGG 3’(SEQ ID NO:13)
P10:5’ CAAACCAGAG TGCCCACGAA TTATTGCGTA GGAGGCCAGT 3’(SEQ ID NO:14)
P11:5’ ACTGGCCTCC TACGCAATAA TTCGTGGGCA CTCTGGTTTG 3’(SEQ ID NO:15)
P12:5’ CAGCTATGACCATGATTACGAATTCGAGCTCGGTACCCCATAAGAAAC AACCACTTCC 3’(SEQ ID NO:16)
構築方法:それぞれ以コリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869又はYPG-013をテンプレートとし、それぞれプライマーP7/P8、P9/P10、P11/P12でPCR増幅を行い、上流相同アーム断片約806bp、BBD29_11265遺伝子コード領域及びプロモーター領域断片490bp又はBBD29_11265G70A遺伝子コード領域及びプロモーター領域断片約490bp及び下流相同アーム断片約788bpを得た。さらにP7/P12をプライマーとし、以上の増幅した3つの断片をテンプレートとして混合して増幅し、統合相同アーム断片1と2(統合相同アーム断片1の大きさは、2004bpであり、配列は、SEQ ID No.30に示され、統合相同アーム断片2の大きさは、2004bpであり、配列は、SEQ ID No.31に示される)を得た。PCR反応終了後、増幅産物を電気泳動により回収し、カラム型DNAゲル回収キットを用いて(TIANGEN)必要な約2004bpのDNA断片を回収し、NEBuider組換え系を採用してXba I酵素切断により回収されたシャトルプラスミドPkl8mobsacBと連結し、統合プラスミド(即ち組換えベクター)PK18mobsacB-BBD29_11265又はPK18mobsacB-BBD29_11265G70Aを得、プラスミドには、カナマイシン抵抗性マーカーが含まれ、カナマイシンスクリーニングによりプラスミドがゲノムに統合された組換え子を得ることができる。
【0149】
前記組換えベクターPK18mobsacB-BBD29_11265は、pK18mobsacBベクターのXba Iと/BamH I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.30の37~1966番目に示されるDNA断片に置換し、pK18mobsacBベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0150】
前記組換えベクターPK18mobsacB-BBD29_11265G70Aは、pK18mobsacBベクターのXba Iと/BamH I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.31の37~1966番目に示されるDNA断片に置換し、pK18mobsacBベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0151】
PCR系:l0×Ex Taq Buffer 5 μL、dNTP Mixture(各2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4 μL、プライマー(l0pM)各2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総容積50μL。
【0152】
前記PCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、72℃で120秒間の伸長(30サイクル)、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われた。
【0153】
2つの統合プラスミド(PK18mobsacB-BBD29_11265とPK18mobsacB-BBD29_11265G70A)をそれぞれ電気転換により菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220に導入し、培養により生じた単一コロニーは、P13/P14プライマーPCRで鑑定され、PCRが増幅できた大きさ約1190bpの断片を含むのは、陽性菌株であり、断片を増幅できなかったのは、原菌である。陽性菌株は、15%のショ糖スクリーニングを経てた後に、それぞれカナマイシンを含む培地板とカナマイシンを含まない培地板上で培養され、カナマイシンを含まない培地上で成長するが、カナマイシンを含む培地上で成長しない菌株は、さらにP15/P16プライマーを採用してPCR鑑定され、増幅できた大きさ約1200bpの菌は、BBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子をコリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220ゲノムに統合した菌株であり、YPG-014(変異点を除く)とYPG-015(変異点を含む)と命名された。
【0154】
組換え菌YPG-014は、2コピーのSEQ ID No.1に示されるBBD29_11265遺伝子を含み、2コピーBBD29_11265遺伝子を含む組換え菌は、BBD29_11265遺伝子の発現量を顕著かつ安定的に増加させることができる。組換え菌YPG-014は、ゲノム上の野生型BBD29_11265遺伝子を過剰発現させる工学的菌である。
【0155】
組換え菌YPG-015は、SEQ ID No.2に示される変異のBBD29_11265G70A遺伝子を含み、組換え菌YPG-015は、ゲノム上の変異型BBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌である。
【0156】
PCR鑑定プライマーは、以下に示される、
P13:5’ GTCCAAGGTG ACGGCCGCAC 3’(SEQ ID NO:17)
P14:5’ TGCGATCTCT GTCAATGCAG 3’(SEQ ID NO:18)
P15:5’ CTGGGATAGT TTCAAGCCTT 3’(SEQ ID NO:19)
P16:5’ ATATTCGGCC CAGCAGCAGC 3’(SEQ ID NO:20)
実施例4 プラスミドにおいてBBD29_11265又はBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌株の構築
NCBIにより公表されたコリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869ゲノム配列に基づいて、BBD29_11265遺伝子コード領域及びプロモーター領域配列を増幅するプライマーを1組設計して合成し、プライマー設計は、以下のとおりである(上海invitrogen公司により合成された)。
P17:5’ GCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAGAGGATCCCCACCTTTTGTC GTGTTCTGGG 3’(SEQ ID N0:21)
P18:5’ ATCAGGCTGAAAATCTTCTCTCATCCGCCAAAAC TTATTGCGTA GGAGGCCAGT 3’(SEQ ID NO:22)
構築方法:それぞれYPG-0014又はYPG-0013をテンプレートとし、プライマーP17/P18でPCR増幅を行い、BBD29_11265遺伝子及びそのプロモーター断片520bp(SEQ ID No.32)又はBBD29_11265G70A遺伝子及びそのプロモーター断片520bp(SEQ ID No.33)を得、増幅産物を電気泳動により回収し、カラム型DNAゲル回収キットを用いて必要な520bpのDNA断片を回収し、NEBuider組換え系を採用してEcoR I酵素切断により回収されたシャトルプラスミドpXMJ19と連結し、過剰発現プラスミド(即ち組換えベクター)pXMJ19-BBD29_11265又はpXMJ19-BBD29_11265G70Aを得た。プラスミドには、クロラムフェニコール耐性マーカーが含まれ、クロラムフェニコールスクリーニングにより得られたプラスミドを菌株に形質転換することができる。
【0157】
前記組換えベクターpXMJ19-BBD29_11265は、pXMJ19ベクターのEcoR IとKpn I認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.32の37~486番目に示されるDNA断片に置換し、pXMJ19ベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0158】
前記組換えベクターpXMJ19-BBD29_11265G70Aは、pXMJ19ベクターのEcoR IとKpn I 認識部位間の断片(小断片)を配列表におけるSEQ ID No.33の37~486番目に示されるDNA断片に置換し、pXMJ19ベクターの他の配列をそのまま維持し、得られた組換えベクターである。
【0159】
PCR系:l0×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(各2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(l0pM)各2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総容積50μL。
【0160】
前記PCR増幅は、94℃で5分間の予備変性、94℃で30秒間の変性、52℃で30秒間のアニール、72℃で45秒間の伸長(30サイクル)、72℃で10分間の過剰伸長の方式で行われた。
【0161】
2つのプラスミド(pXMJ19-BBD29_11265とpXMJ19-BBD29_11265G70A)をそれぞれ電気転換により菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220に導入し、培養により生じた単一コロニーは、M13R(-48)とP18プライマーでPCR鑑定され、PCRが増幅できた大きさ約569bpの断片を含むのは、転入菌株であり、YPG-016(点変異を除く)とYPG-017(点変異を含む)と命名された。
【0162】
組換え菌YPG-016は、2コピーSEQ ID No.1に示されるBBD29_11265遺伝子を含み、組換え菌YPG-016は、プラスミド上の野生型BBD29_11265遺伝子を過剰発現させる工学的菌であり、即ちプラスミドpXMJ19-BBD29_11265が染色体外に過剰発現を行う。
【0163】
組換え菌YPG-017は、SEQ ID No.2に示される変異のBBD29_11265G70A遺伝子を含み、組換え菌YPG-017は、プラスミド上の変異型BBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌であり、即ちプラスミドpXMJ19-BBD29_11265G70Aが染色体外に過剰発現を行う。
【0164】
実施例5 ゲノムにおいてBBD29_11265遺伝子を欠失させた工学的菌株の構築
NCBIにより公表されたコリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869のゲノム配列に基づき、BBD29_11265遺伝子コード領域両端の断片を増幅するプライマーを2組合成し、上下流相同アーム断片とする。プライマー設計は、以下のとおりである(上海英俊公司により合成された)。
P19:5’ CAGTGCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACTCTAG GATTTCGCCA CGCCATCTAC 3’(SEQ ID NO:23)
P20:5’ AGCCCCTTTTAGATGGGGTGGTTTTCTCCTTAAATAACGG 3’(SEQ ID NO:24)
P21:5’ CCGTTATTTAAGGAGAAAACCACCCCATCTAAAAGGGGCT 3’(SEQ ID NO:25)
P22:5’ CAGCTATGACCATGATTACGAATTCGAGCTCGGTACCCCGAGGGTGAG CCGGGTGCAT 3’(SEQ ID NO:26)
構築方法:コリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13869をテンプレートとし、それぞれプライマーP19/P20とP21/P22でPCR増幅を行い、上流相同アーム断片773bp及び下流相同アーム断片778bpを得た。さらにプライマーP19/P22でPCRをオーバーラップして相同アーム断片1511bp全体を得た。PCR反応終了後、増幅産物を電気泳動により回収し、カラム型DNAゲル回収キットを用いて必要な1511bpのDNA断片を回収し、NEBuider組換え系によってXba I/BamH I酵素切断により回収されたシャトルプラスミドpkl8mobsacBプラスミドと連結し、ノックアウトプラスミドを得た。該プラスミドには、カナマイシン抵抗性マーカーが含まれた。
【0165】
ノックアウトプラスミドを電気変換により菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220において、培養により生じた単一コロニーは、それぞれ以下のプライマー(上海英俊公司により合成された)でPCR鑑定され、
P23:5’ GATTTCGCCA CGCCATCTAC 3’(SEQ ID N0:27)
P24:5’ CGAGGGTGAG CCGGGTGCAT 3’(SEQ ID N0:28)
上記PCR増幅できた大きさ1437bp及び1710bpのバンドの菌株は、陽性菌株であり、1710bpバンドのみを増幅できた菌株は、原菌である。陽性菌株は、15%のショ糖培地上でスクリーニングした後に、それぞれカナマイシンを含む培地板とカナマイシンを含まない培地板上で培養され、カナマイシンを含まない培地上で成長するが、カナマイシンを含む培地上で成長しない菌株は、さらにP23/P24プライマーを採用してPCR鑑定され、増幅できた大きさ1437bpバンドの菌株は、BBD29_11265遺伝子コード領域がノックアウトされた遺伝子工学的菌株であり、YPG-018(コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220上のゲノムにおけるBBD29_11265遺伝子がノックアウトされた)と命名された。
【0166】
実施例6 L-グルタミン酸発酵実験
上記実施例2~5で構築された菌株(YPG-013、YPG-014、YPG-015、YPG-016、YPG-017、YPG-018)とオリジナル菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCGMCC No.21220をBLBI0-5GC-4-H型番の発酵槽(上海百崙生物科技有限公司から購入された)で、表3に示される培地と表4に示される発酵制御プロセスに従って発酵実験を行った。各菌株は3回繰り返し、結果を表5に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
結果は、表5に示すように、コリネバクテリウム・グルタミクムにおいてBBD29_11265遺伝子を過剰発現させ、又はBBD29_11265遺伝子コード領域に対して点変異BBD29_11265G70A及び/又はBBD29_11265遺伝子又はその変異遺伝子BBD29_11265G70Aを過剰発現させることにより、L-グルタミン酸生産量の向上に有利であるが、BBD29_11265遺伝子を弱化又はノックアウトすることにより、L-グルタミン酸の蓄積に不利である。
【0167】
以上、本発明について詳細に記述した。当業者にとって、本発明の主旨と範囲を逸脱することなく、及び不必要な実験を行うことなく、同等のパラメータ、濃度と条件で、より広範囲内で本発明を実施することができる。本発明は、特別な実施例を与えるが、本発明をさらに改良できると理解されるべきである。要すると、本発明の原理によれば、本出願は、任意の変更、用途又は本発明の改良を含むことが望ましく、本出願において開示された範囲から逸脱し、本分野で既知の従来技術を用いた変更を含む。以下に付随する請求項の範囲によれば、いくつかの基本的特徴の応用を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、BBD29_11265遺伝子の弱化又はノックアウトにより、該遺伝子のコードする産物がL-グルタミン酸生産能力に影響を与え、コード配列に点変異を導入し、又は該遺伝子のコピー数を増加又は過剰発現させて組換え菌株を得ることにより、得られた菌株が未改造の菌株と比べて、高濃度のグルタミン酸を生産するのに有利であることを発見した。
具体的には、本発明は、まずアレル置換の方式でコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)CGMCC No.21220のBBD29_11265遺伝子コード領域(SEQ ID No.1)に点変異を導入し、点変異(G-A)を含む遺伝子工学的菌YPG-013を構築した。菌生産中に野生型BBD29_11265遺伝子又はその変異遺伝子BBD29_11265G70Aを過剰発現させることでL-グルタミン酸の生産量を向上させることができることをさらに研究検証するために、それぞれ外来遺伝子を宿主染色体に統合し又はプラスミド染色が体外に発現させ、ゲノム上とプラスミド上においてBBD29_11265遺伝子又はBBD29_11265G70A遺伝子を過剰発現させる工学的菌YPG-014、YPG-015、YPG-016とYPG-017を構築した。実験によると、BBD29_11265遺伝子及びその変異体は、L-グルタミン酸の生物合成に関与しており、BBD29_11265遺伝子の過剰発現又はノックアウト、又は固定点変異(例えば点変異)を行うことにより、L-グルタミン酸の微生物における蓄積量を制御することができる。BBD29_11265遺伝子コード領域に対して点変異又は菌生産中にBBD29_11265遺伝子又はその変異遺伝子BBD29_11265G70Aを過剰発現させることにより、L-グルタミン酸生産量及び形質転換率の向上に有利であるが、BBD29_11265遺伝子に対してノックアウト又は弱化を行うことは、L-グルタミン酸の蓄積に不利である。BBD29_11265遺伝子及びその変異体(例えばBBD29_11265G70A遺伝子)を利用してL-グルタミン酸を生産する遺伝子工学的菌種を構築し、L-グルタミン酸生産量の向上を促進することができ、工業化生産に適合する高生産、高品質の菌種を育成し、L-グルタミン酸の工業化生産に対して広範な応用価値と重要な経済意義を持つ。
【受託番号】
【0169】
菌種名:コリネバクテリウム・グルタミクム:Corynebacterium glutamicum、菌株番号:YPGLU001、受託番号:CGMCC 21220
【配列表】
2024505806000001.app
【国際調査報告】