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特表2024-505810テトラデンテート窒素供与体リガンドを含む遷移金属錯体およびこれを含む電気化学的バイオセンサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】テトラデンテート窒素供与体リガンドを含む遷移金属錯体およびこれを含む電気化学的バイオセンサー
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/36 20060101AFI20240201BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20240201BHJP
   A61B 5/1473 20060101ALI20240201BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20240201BHJP
   C07D 213/79 20060101ALI20240201BHJP
   C07D 213/68 20060101ALI20240201BHJP
   C07D 213/81 20060101ALI20240201BHJP
   C07D 213/84 20060101ALI20240201BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20240201BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C07D213/36
A61B5/1486
A61B5/1473
C07F15/00 D
C07D213/79
C07D213/68
C07D213/81
C07D213/84 Z
C07D417/14
C12M1/34 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540608
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2021020070
(87)【国際公開番号】W WO2022145982
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189139
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】510115030
【氏名又は名称】アイセンス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522242111
【氏名又は名称】ソガン ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ディベロプメント ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SOGANG UNIVERSITY RESEARCH & BUSINESS DEVELOPMENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】35 Baekbeom-ro,Mapo-gu,Seoul 04107(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョンソ
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ボンジン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヘジュン
【テーマコード(参考)】
4B029
4C038
4C055
4C063
4H050
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB16
4B029CC01
4B029FA12
4B029GB09
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KY06
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA06
4C055BA27
4C055BB02
4C055CA01
4C055DA01
4C055DA06
4C055DA16
4C055DA42
4C055DA57
4C055DA58
4C055DA59
4C055DB02
4C055DB10
4C055EA02
4C055GA02
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC62
4C063DD12
4C063EE10
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB91
4H050AC90
4H050WB13
4H050WB14
4H050WB17
4H050WB21
(57)【要約】
【要約】本発明は、電気化学的センサーをはじめとする多様な装置に用いられるテトラデンテート窒素供与体リガンドを含む新規な遷移金属錯体およびこれを含む装置、好ましくは電気化学的センサーに関する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子伝達メディエータとして有用な、下記化学式1または2で表されるテトラデンテート窒素供与体リガンドを含む、遷移金属錯体:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
前記化学式1または化学式2中、
MはFe、Co、Ru、Os、RhおよびIrからなる群より選択される1つであり;
、CおよびCはそれぞれ独立して、窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり、好ましくは前記環化合物の2位でアミン基とメチレン基に連結されており;
m1およびLm2はそれぞれ独立して、配位されたモノデンテートリガンドであり;
は窒素または酸素を含むバイデンテートリガンドであり;
mは-1~-5または1~5を示す負電荷あるいは正電荷であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して、高分子に連結できる反応基が導入されたリンカーで構成された構造であり;
Xは対イオン(counter ion)であり;
nは対イオンの数を意味し、1~5である。
【請求項2】
前記遷移金属錯体は、下記化学式3で表されるテトラデンテートリガンドを含む、請求項1に記載の遷移金属錯体:
[化学式3]
【化3】
上記式中、C、CおよびCはそれぞれ独立して、窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して、高分子に連結できる反応基が導入されたリンカーである。
【請求項3】
前記化学式3のテトラデンテートリガンドは、以下の構造を有するリガンドのうちの1つである、請求項2に記載の遷移金属錯体:
【化4】
【請求項4】
前記化学式1~3中のR、RおよびRはそれぞれ独立して、-H;-F;-Cl;-Br;-I;-NO;-CN;-COH;-SOH;-NHNH;-SH;-OH;-NH;-CHOH;-CONHCHCHNH;または置換または非置換のアルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカニルアミノ、アリールカルボキサミド、ヒドラジノ、アルキルヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、アルキルチオ、アルケニル、アリールまたはアルキルである、請求項1または2に記載の遷移金属錯体。
【請求項5】
前記Lm1およびLm2はそれぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO、-NCCH、-CO、-OH、-NHまたは窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物である、請求項1に記載の遷移金属錯体。
【請求項6】
前記L-Lは、カテコール、アセチルアセトン、2-ピコリン酸、2-ピリジンカルボキサミド、2,2’-ビピリジンまたは2,2’-ビチアゾールである、請求項1に記載の遷移金属錯体。
【請求項7】
前記ヘテロ環化合物はイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾールおよびジアザフルオレノンからなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の遷移金属錯体。
【請求項8】
前記化学式1または2の遷移金属錯体は、以下の遷移金属錯体のうちの1つである、請求項1に記載の遷移金属錯体:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【請求項9】
a)化学式3で表されるテトラデンテートトリス-ピリジンメチルアミン系リガンドを化学式5のハロゲン化オスミウムのアンモニウム塩に導入して化学式6のオスミウム錯体を合成する段階;および
b)化学式6のオスミウム錯体にN-Nリガンド、N-リガンド、N-OリガンドおよびO-Oリガンドからなる群より選択される1種または2種のモノデンテートリガンドまたはバイデンテートリガンドを導入する段階を含む、請求項1に記載の化学式1または2の遷移金属錯体の製造方法:
[化学式3]
【化5】
[化学式5]
[(NHOsCl
[化学式6]
【化6】
上記式中、C、CおよびCはそれぞれ独立して、窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して、高分子に連結できる反応基が導入されたリンカーである。
【請求項10】
前記段階b)で、化学式6のオスミウム錯体に1個のN-Nリガンド、2個のNリガンド、1個のNリガンド、1個のN-Oリガンドまたは1個のO-Oリガンドが導入され、下記化学式7または10の遷移金属錯体を製造する、請求項9に記載の方法:
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
[化学式10]
【化10】
[化学式11]
【化11】
【請求項11】
前記Nリガンドは、-NO、-NCCH、-NHまたは窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり、
前記N-Nリガンドは、2-ピリジンカルボキサミド、2,2’-ビピリジンまたは2,2’-ビチアゾールであり、
前記N-Oリガンドは2-ピコリン酸であり、
前記O-Oリガンドはカテコールまたはアセチルアセトンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の遷移金属錯体を電子伝達メディエータとして含む、装置。
【請求項13】
前記装置は電気化学的バイオセンサーである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は挿入可能である、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
液体性生体試料を酸化還元させることができる酵素;および
請求項1~8のいずれか一項に記載の遷移金属錯体を電子伝達メディエータとして含む、電気化学的バイオセンサー用センシング膜。
【請求項16】
前記酵素は、脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、およびエステル化酵素(esterase)からなる群より選択される1種以上の酸化還元酵素;または、
脱水素酵素、酸化酵素、およびエステル化酵素からなる群より選択される1種以上の酸化還元酵素とフラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、NAD)、およびピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone、PQQ)からなる群より選択される1種以上の補助因子を含む、請求項15に記載の電気化学的バイオセンサー用センシング膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月31日付の韓国特許出願第10-2020-0189139号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、電子伝達メディエータとして有用なテトラデンテート窒素供与体リガンドを含む遷移金属錯体およびこれを含む電気化学的バイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は高い血糖数値が長い間持続した時現れる疾患で、心血管疾患、脳卒中、腎臓疾患などの合併症を誘発する。高い血糖数値に対応してインシュリン注入により血糖数値を減少させる過程が必要であるが、もし、インシュリンが過多注入されると、低血糖症状が発生し、これによりショックまたは死亡に至る場合もある。これを防止するために糖尿病患者は適切な血糖数値を維持する目的で血糖測定センサーを用いて持続的に体内血糖濃度を測定することが必須である。
【0004】
最近では、持続血糖測定システム(Continuous Glucose Monitoring System、CGMS)が適用された血糖センサーが多く研究されて商用化されている。CGMSセンサーは皮下組織に挿入され、血液ではなく細胞間液により連続してブドウ糖の濃度を測定する装置である。指採血方式の場合、一日に5~6回の血糖測定では正確な血糖数値変化を確認することが難しい反面、CGMSは一日に血糖数値変化と傾向性を確認できる長所がある。これにより、患者は高血糖症状または低血糖症状を迅速に認識することができ、血糖管理能力をさらに改善することができる。
【0005】
バイオセンサーは選択的に生体試料を感知し、これを特定の信号に切り替える機器を意味する。特に、電気化学的方式を用いた酵素ベースのバイオセンサーは、酵素によって選択性が向上するだけでなく、小型化が可能で、測定の正確性のために使用することが好ましい。
【0006】
電気化学方式を用いた血糖バイオセンサーは大きく1世代と2世代方式に分けられる。1世代血糖センサーは、クラーク(Clark)とリヨン(Lyon)により最初に開発され、酵素の酸化-還元反応を経て減少した酸素濃度および発生した過酸化水素の濃度変化により血糖数値を測定する方式であり、2世代血糖センサーは、酵素の酸化-還元反応により発生した電子を電子伝達メディエータにより電極に伝達する方式である。第2世代センサーは、第1世代センサーより酸素濃度による誤差が少なく、媒介体による電子伝達反応が効率的でかつ速いという点で多くの長所を有している。このような理由から、電子伝達メディエータを含む第2世代センサー方式がCGMS血糖センサーに適用されている。
【0007】
電気化学方式の酵素ベースの血糖バイオセンサーは、一般に酵素、電子伝達メディエータ、および電極で構成されている。最初は酵素によってブドウ糖がグルコノラクトン(gluconolactone)に酸化され、次いで、還元された酵素は酸化され、電子伝達メディエータに電子を供与する。その後、還元された媒介体が酸化され、電極に電子を伝達する過程を経る。このような一連の過程から血糖数値を電気的信号により確認することができる。
【0008】
血糖センサーに適用される酵素は、一般にグルコース酸化酵素(glucose oxidase、GOx)とグルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase、GDH)がある。GOxは選択的にグルコースを酸化させ、低い価格と高い安定性のために血糖センサーに幅広く適用されている。しかし、GOxは酸化過程で酸素によって大きく影響を受けるため、GOxベースの血糖センサーは高度が高いかまたは気圧が低い地域で実際の数値よりも高い血糖数値が測定される誤差が現れることが知られている。GOxとは異なり、GDHは酸素濃度とは関係なく、グルコースを選択的に酸化させることができるという特徴がある。特に、FAD(flavin adenine dinucleotide)を含むGDHは酸素の影響を受けず、優れた熱安定性のために血糖センサーに適用されることに大きな利点を有する。しかし、厚いタンパク質膜がFAD活性部位を囲んでいるため、GDHが電極表面に直接電子を伝達することは困難である。このような問題を解決するために、酵素と電極表面との間に電子伝達反応を容易にする電子伝達メディエータの役割が非常に重要である。
【0009】
電子伝達メディエータの電気化学的特性は、血糖センサー内で迅速な電子伝達、選択性および感度にも影響を与えられる核心的な要素である。媒介体の電位により生体内の妨害物質の干渉を避けることができ、隣接する電極間の媒介体が繰り返し酸化/還元反応で電流の誤差を発生させる現象であるレドックスシャトル(redox shuttling)を熱力学的に避けることができる。したがって、電子伝達メディエータが効率的な機能を行うためには適切に低い酸化-還元電位(-0.2V~0V vs Ag/AgCl)を有することが理想的である。さらに、酸化種と還元種はいずれも化学的に安定で、体内で毒性があってはならない。
【0010】
これまで多く研究されている電子伝達メディエータは、フェロセン(ferrocene)誘導体、フェリシアニド(ferricyanide)、テトラチアフルバレン(tetrathiafulvalene)、および遷移金属錯体などがある、最近では鉄、ルテニウム、オスミウムを中心金属とした錯体が電子伝達メディエータとして多く研究されているが、依然として高い効率性を有し、安定で体内での毒性のない新たな電子伝達メディエータが求められる。
【0011】
このような背景下で、本発明者らは電気化学的バイオセンサーのための電子伝達メディエータとして有用な遷移金属錯体に対して研究を重ねた結果、四座リガンド(テトラデンテートリガンド)としてトリス-2-ピリジルメチルアミン(tris(2-pyridylmethyl)amine、TPMA)を導入する場合、従来の単座または二座リガンドに比べて優れた安定性を示し、これらから製造された遷移金属錯体は容易に合成が可能で、安定した電気化学的特徴を示すことを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、テトラデンテート窒素供与体リガンドを含む電子伝達メディエータ用新規な遷移金属錯体を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記遷移金属錯体を含む酸化-還元重合体を含む電気化学的バイオセンサーを提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記遷移金属錯体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面によれば、電子伝達メディエータとして有用な、テトラデンテート窒素供与体リガンドを含む遷移金属錯体が提供される。
【0016】
本発明の一側面によれば、前記遷移金属錯体を製造する方法が提供される。
【0017】
本発明の一側面によれば、前記遷移金属錯体を電子伝達メディエータとして含む装置が提供される。
【0018】
本発明の一側面によれば、液体性生体試料を酸化還元させることができる酵素;および前記遷移金属錯体を電子伝達メディエータとして含む電気化学的バイオセンサー用センシング膜が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るテトラデンテート窒素供与体リガンドを含む遷移金属錯体は、電気化学的センサーに用いる場合、電気化学的センサーの性能を優れるように向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の遷移金属錯体を製造するためのテトラデンテートリガンドを製造するための多様な合成方法を示す図である。
図2】[Os(TPMA)Cl(PF )錯体およびこれから合成できる多様な誘導体の合成方法を示す反応式である。
図3】[Os(TPMA)Cl(PF )の結晶構造を示す図である。
図4】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF )n錯体およびこれから合成できる多様な誘導体の合成方法を示す反応式である。
図5】ヒドロキシメチルTPMAオスミウム錯体のESI-MS上で確認される質量シグナルの変化を示す図である。
図6】[Os(TPMA)Cl(X)(18)のCVデータを示すグラフである。
図7a】TPMA系のオスミウム錯体の構造と酸化/還元電位を示す図である。
図7b】TPMA系のオスミウム錯体の構造と酸化/還元電位を示す図である。
図7c】TPMA系のオスミウム錯体の構造と酸化/還元電位を示す図である。
図8a】置換基による[Os(TPMA)Cl(PF )錯体の循環電流電圧法による電位値を比較したグラフである。図8aはEDGを有する錯体と比較(18、21、23したグラフである。濃度に関係なく錯体の電位値を比較するために電流値を18に合わせて補正し、0.1M TPMP in CHCN溶液で10mV/sで走査して測定した。
図8b】置換基による[Os(TPMA)Cl(PF )錯体の循環電流電圧法による電位値を比較したグラフである。図8bはEWGを有する錯体と比較(18、19、20、22)したグラフである。濃度に関係なく錯体の電位値を比較するために電流値を18に合わせて補正し、0.1M TPMP in CHCN溶液で10mV/sで走査して測定した。
図9】[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(19)のCVデータを示すグラフである。
図10】[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(20)のCVデータを示すグラフである。
図11】[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(21)のCVデータを示すグラフである。
図12】[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(22)のCVデータを示すグラフである。
図13】[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(23)のCVデータを示すグラフである。
図14】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(24)のCVデータを示すグラフである。
図15】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(25)のCVデータを示すグラフである。
図16】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(26)のCVデータを示すグラフである。
図17】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(27)のCVデータを示すグラフである。
図18】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(28)のCVデータを示すグラフである。
図19】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(29)のCVデータを示すグラフである。
図20】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(30)のCVデータを示すグラフである。
図21】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(31)のCVデータを示すグラフである。
図22】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(32)のCVデータを示すグラフである。
図23】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(33)のCVデータを示すグラフである。
図24】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(34)のCVデータを示すグラフである。
図25】[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(35)のCVデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態は、電子伝達メディエータとして有用なテトラデンテート窒素供与体リガンドを含む遷移金属錯体を提供する。
【0022】
一例として、前記遷移金属錯体は、下記化学式1または2で表される。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
【0023】
前記化学式1または化学式2中、
MはFe、Co、Ru、Os、RhおよびIrからなる群より選択される1つであり;
、CおよびCはそれぞれ独立して、窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり、好ましくは前記環化合物の2位でアミン基とメチレン基に連結されており;
m1およびLm2はそれぞれ独立して、配位されたモノデンテートリガンドであり;
は窒素または酸素を含むバイデンテートリガンドであり;
mは-1~-5または1~5を示す負電荷あるいは正電荷であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して、高分子に連結できる反応基が導入されたリンカー、酸化/還元電位を調節するための電子供与基(electron donating group、EDG)または電子求引基(electron withdrawing group、EWG)の官能基であり;
Xは対イオン(counter ion)であり、好ましくはF、Cl、Br、IおよびPFからなる群より選択される対イオンであり;
nは対イオンの数を意味し、1~5である。
【0024】
一例として、前記遷移金属錯体は、下記化学式3で表されるテトラデンテートリガンドを含むものであり得る。
[化学式3]
【化3】
【0025】
上記式中、C、CおよびCはそれぞれ独立して、窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して、高分子に連結できる反応基が導入されたリンカー、酸化/還元電位を調節するための電子供与基(electron donating group、EDG)または電子求引基(electron withdrawing group、EWG)の官能基である。
【0026】
一実施形態で、前記化学式3のテトラデンテートリガンドは、以下の構造を有するリガンドのうちの1つであり得る:
【化4】
【0027】
好ましくは、前記ヘテロ環化合物は2位でアミン基とメチレン基に連結され、前記3個のヘテロ環が有する3個の窒素と、前記3個のヘテロ環を互いに連結する中心の1個の窒素が遷移金属Mと連結される。
【0028】
具体的には、前記化学式1~3中のR、RおよびRはそれぞれ独立して、-H;-F;-Cl;-Br;-I;-NO;-CN;-COH;-SOH;-NHNH;-SH;-OH;-NH;-CHOH;-CONHCHCHNH;または置換または非置換のアルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカニルアミノ、アリールカルボキサミド、ヒドラジノ、アルキルヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、アルキルチオ、アルケニル、アリールまたはアルキルであり得る。
【0029】
具体的には、前記Lm1およびLm2はモノデンテートリガンドであって、それぞれ独立して-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO、-NCCH、-CO、-OH、-NHまたは窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり得る。
【0030】
具体的には、前記L-Lはバイデンテートリガンドであり、カテコール、アセチルアセトン、2-ピコリン酸、2-ピリジンカルボキサミド、2,2’-ビピリジンまたは2,2’-ビチアゾールであり得る。
【0031】
具体的な一様態として、前記ヘテロ環化合物はイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾールおよびジアザフルオレノンからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0032】
具体的な一様態として、前記アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカニルアミノ、アリールカルボキサミド、ヒドラジノ、アルキルヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、アルキルチオ、アルケニル、アリール、アルキルおよび3員ヘテロ環が置換される場合、これらは-F、-Cl、-Br、-I、-OH、oxo、炭素数1~3のアルキル基および炭素数1~3のアルコキシ基からなる群より選択される1つ以上、好ましくは1~3で置換され得る。
【0033】
具体的な一様態として、本発明に係る化学式1または2の遷移金属錯体は、下表1に示す遷移金属錯体のうちの1つであり得る:
[表1]
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0034】
さらに他の様態として、本発明は、前記電子伝達メディエータとして有用な遷移金属錯体の製造方法を提供する。
【0035】
本発明に係る前記電子伝達メディエータに有用な遷移金属錯体は遷移金属塩、好ましくはオスミウム塩を用いて製造することができる。具体的な一例として、前記遷移金属塩は、下記化学式4のハロゲン化された遷移金属のアンモニウム塩であり、
[化学式4]
[(NHMX
【0036】
上記式中、
MはFe、Co、Ru、Os、RhおよびIrからなる群より選択される1つであり;
XはF、Cl、BrまたはIである。
【0037】
好ましくは、前記化学式4のハロゲン化された遷移金属のアンモニウム塩は、化学式5のアンモニウムヘキサクロロオスメートであり、これは商業的に入手可能である。
[化学式5]
[(NHOsCl
【0038】
一実施形態で、本発明に係る遷移金属錯体の製造方法は、トリス-ピリジンメチルアミン系リガンドとハロゲン化遷移金属のアンモニウム塩を使用して合成することができる。具体的な例として、オスミウムを含む錯体の場合、次の段階を含み得る:
a)化学式3で表されるテトラデンテートトリス-ピリジンメチルアミン系リガンドを化学式5のハロゲン化オスミウムのアンモニウム塩に導入して化学式6のオスミウム錯体を合成する段階;および
b)化学式6のオスミウム錯体にN-Nリガンド、N-リガンド、N-OリガンドおよびO-Oリガンドからなる群より選択される1種または2種のモノデンテートリガンドまたはバイデンテートリガンドを導入する段階。
【0039】
一例として、前記遷移金属錯体は、下記化学式3で表されるテトラデンテートリガンドを含むものであり得る。
[化学式3]
【化5】
【0040】
上記式中、C、CおよびCはそれぞれ独立して、窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して、高分子に連結できる反応基が導入されたリンカーである。
【0041】
第1段階は、4価イオン状態である化学式5のオスミウム塩に化学式3のトリス-ピリジンメチルアミン系リガンドを導入して、3価イオン状態である化学式6で表されるオスミウム錯体の形態で合成する段階である。
[化学式6]
【化6】
【0042】
第2段階は、第1段階で合成されたオスミウム錯体にN-Nリガンド、N-リガンド、N-OリガンドおよびO-Oリガンドからなる群より選択される1種または2種のモノデンテートリガンドまたはバイデンテートリガンドを導入して化学式7~11のうちのいずれか1つで表されるオスミウム錯体を合成する段階である。好ましくは、第2段階では合成された化学式6のオスミウム錯体に1個のN-Nリガンド、2個のNリガンド、1個のNリガンド、1個のN-Oリガンド、1個のO-Oリガンドを導入することができる。
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
[化学式10]
【化10】
[化学式11]
【化11】
【0043】
一例として、前記Nリガンドは、-NO、-NCCH、-NHまたは窒素原子を1つ以上含むヘテロ環化合物であり得る。
【0044】
一例として、前記N-Nリガンドは、2-ピリジンカルボキサミド、2,2’-ビピリジン、2,2’-ビチアゾールまたは2-ピリジルメチルアミンであり得る。
【0045】
一例として、前記N-Oリガンドは、2-ピコリン酸、2-アミノフェノールまたは2-ヒドロキシメチルピリジンであり得る。
【0046】
一例として、前記O-Oリガンドは、カテコールまたはアセチルアセトンであり得る。
【0047】
本発明に係る電子伝達メディエータ遷移金属錯体は、酸化還元酵素が還元(グルコース酸化)されて得られた電子を伝達する役割を果たすもので、ポリビニルピリジン(Poly(vinylpyridine):PVP)あるいはポリビニルイミダゾール(Poly(vinylimidazole):PVI)、ポリアリルグリシジルエーテル(Poly allyl glycidyl ether:PAGE)からなる群より選択される1種以上などの重合体骨格(backbone)に相当する高分子マトリックスと連結された酸化-還元重合体の形態で使用することができる。
【0048】
したがって、本発明の追加一様態は、前記電子伝達メディエータ用遷移金属錯体および重合体骨格を含む酸化-還元重合体に関する。
【0049】
一例として、前記酸化-還元重合体は、前記重合体骨格と有機系電子伝達メディエータを連結するリンカー構造を含むものであり得る。
【0050】
また、本発明の追加一様態は、液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素と前記遷移金属錯体を含む電子伝達メディエータを含む電気化学的バイオセンサー用センシング膜に関する。
【0051】
酸化還元酵素は生体の酸化還元反応を触媒する酵素を総称するものであり、本発明では測定しようとする対象物質、例えばバイオセンサーの場合は測定しようとする対象物質と反応して還元される酵素を意味する。このように還元された酵素は電子伝達メディエータと反応し、この時発生した電流変化などの信号を測定して対象物質を定量する。本発明に使用可能な酸化還元酵素は、各種脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、エステル化酵素(esterase)などからなる群より選択される1種以上のものであり、酸化還元または検出対象物質によって、前記酵素群に属する酵素の中で前記対象物質を基質とする酵素を選択して使用することができる。
【0052】
より具体的には、前記酸化還元酵素は、グルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase)、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase)、グルコース酸化酵素(glucose oxidase)、コレステロール酸化酵素(cholesterol oxidase)、コレステロールエステル化酵素(cholesterol esterase)、乳酸酸化酵素(lactate oxidase)、アスコルビン酸酸化酵素(ascorbic acid oxidase)、アルコール酸化酵素(alcohol oxidase)、アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)、ビリルビン酸化酵素(bilirubin oxidase)などからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0053】
一方、前記酸化還元酵素は測定しようとする対象物質(例えば、対象物質)から酸化還元酵素が奪い取った水素を保管する役割をする補助因子(cofactor)を共に含み得るが、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、NAD)、ピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone、PQQ)などからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0054】
例えば、血中のグルコース濃度を測定しようとする場合、前記酸化還元酵素としてグルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase、GDH)を使用することができ、前記グルコース脱水素酵素は補助因子としてFADを含むフラビンアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(flavin adenine dinucleotide-glucose dehydrogenase、FAD-GDH)、および/または補助因子としてFAD-GDHを含むニコチンアミドアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(nicotinamide adenine dinucleotide-glucose dehydrogenase)であり得る。
【0055】
具体例には、前記使用可能な酸化還元酵素はFAD-GDH(例えば、EC 1.1.99.10など)、NAD-GDH(例えば、EC 1.1.1.47など)、PQQ-GDH(例えば、EC1.1.5.2など)、グルタミン酸脱水素酵素(例えば、EC 1.4.1.2など)、グルコース酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.4など)、コレステロール酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.6など)、コレステロールエステル化酵素(例えば、EC 3.1.1.13など)、乳酸酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.2など)、アスコルビン酸酸化酵素(例えば、EC 1.10.3.3など)、アルコール酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.13など)、アルコール脱水素酵素(例えば、EC 1.1.1.1など)、ビリルビン酸化酵素(例えば、EC 1.3.3.5など)などからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0056】
最も好ましくは、前記酸化還元酵素は37℃の緩衝液で1週間70%以上の活性度を維持できるグルコース脱水素酵素である。
【0057】
本発明に係るセンシング膜は、酸化還元酵素100重量部を基準として酸化-還元重合体20~700重量部、例えば、60~700重量部または30~340重量部を含有することができる。前記酸化-還元重合体の含有量は、酸化還元酵素の活性度に応じて適宜調節することができる。
【0058】
さらに、本発明に係るセンシング膜は膜性能を高めるためにカーボンナノチューブをさらに含むことができる。具体的には、カーボンナノチューブは遷移金属錯体、特にオスミウムと共に使用時に電子伝達速度が増加してセンシング膜の性能をより高めることができる。
【0059】
また、本発明に係るセンシング膜は、架橋剤をさらに含むことができる。
【0060】
一方、本発明に係るセンシング膜は界面活性剤、水溶性高分子、第4級アンモニウム塩、脂肪酸、粘増剤などからなる群より選択される1種以上の添加剤を試薬溶解時の分散剤、試薬製造時の粘着剤、長期保管の安定剤などの役割のためにさらに含むことができる。
【0061】
前記界面活性剤は、組成物を分注する時組成物が電極上でまんべんなく広がって均一な厚さで分注されるようにする役割を果たすものであり得る。前記界面活性剤としてはトリトンX-100(Triton X-100)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、パーフルオロオクタンスルホネート(perfluorooctane sulfonate)、ステアリン酸ナトリウム(sodium stearate)などからなる群より選択される1種以上を使用することができる。本発明に係る試薬組成物は、試薬を分注する時試薬が電極上でまんべんなく広がって試薬が均一な厚さで分注されるようにする役割を適切に果たすために、前記界面活性剤を酸化還元酵素100重量部を基準として3~25重量部、例えば、10~25重量部の量で含有することができる。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として界面活性剤10~25重量部を含有することができ、酸化還元酵素の活性度がこれより高くなると、界面活性剤の含有量をこれより低く調節することができる。
【0062】
前記水溶性高分子は、試薬組成物の高分子支持体として酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を果たすものであり得る。前記水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone;PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、ポリフルオロスルホネート(polyperfluoro sulfonate)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose;HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose;HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose;CMC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、ポリアミド(polyamide)などからなる群より選択される1種以上を使用することができる。本発明に係る試薬組成物は、酸化還元酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を十分かつ適切に発揮するために、前記水溶性高分子を酸化還元酵素100重量部を基準として10~70重量部、例えば、30~70重量部の量で含有することができる。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として水溶性高分子30~70重量部を含有することができ、酸化還元酵素の活性度がこれより高くなると、水溶性高分子の含有量をこれより低く調節することができる。
【0063】
前記水溶性高分子は、支持体および酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を効果的に果たすために重量平均分子量が2,500g/mol~3,000,000g/mol程度、例えば、5,000g/mol~1,000,000g/mol程度であり得る。
【0064】
前記粘増剤は、試薬を電極に堅固に付着する役割を果たす。前記粘増剤としてはナトロゾール、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド(DEAE-Dextran hydrochloride)などからなる群より選択される1種以上を使用することができる。本発明に係る電気化学的センサーは、本発明に係る酸化-還元重合体が電極に堅固に付着するために、前記粘増剤を酸化還元酵素100重量部を基準として10~90重量部、例えば、30~90重量部の量で含有することができる。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として粘増剤30~90重量部を含有することができ、酸化還元酵素の活性度がこれより高くなると、粘増剤の含有量をこれより低く調節することができる。
【0065】
さらに他の様態として、本発明は、このような有機電子伝達メディエータを含む装置、好ましくは、挿入可能な装置、より具体的には人体内に挿入可能な装置であり得る。また好ましくは、前記装置は電気化学的バイオセンサーであり得、より好ましくは電気化学的グルコース(血糖)センサーであり得る。
【0066】
具体的には、前記電気化学的バイオセンサーの種類には制限がないが、好ましくは、持続血糖モニタリングセンサーであり得る。
【0067】
このような持続血糖モニタリングセンサーの構成として、本発明は、例えば電極、絶縁体(insulator)、基板、前記酸化-還元重合体および酸化還元酵素を含むセンシング膜(sensing layer)、拡散膜(diffusion layer)、保護膜(protection layer)などを含むことができる。電極の場合、作動電極および対向電極などの2種の電極を含むこともでき、作動電極、対向電極および基準電極などの3種の電極を含むこともできる。一実施形態で、本発明に係るバイオセンサーは、少なくとも二つ、好ましくは二つまたは3つの電極を備えた基板に、前記化学式1の有機系電子伝達メディエータを含む酸化-還元重合体と液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素を含む試薬組成物を塗布した後、乾燥して製作した電気化学的バイオセンサーであり得る。例えば、電気化学的バイオセンサーにおいて作動電極および対向電極が基板の互いに反対面に備えられ、前記作動電極の上に本発明に係る有機系電子伝達メディエータを有する酸化-還元重合体が含まれるセンシング膜が積層され、作動電極および対向電極が備えられた基板の両側面に順に絶縁体、拡散膜および保護膜が積層されることを特徴とする平面形電気化学的バイオセンサーが提供される。
【0068】
具体的な様態として、前記基板はPET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)およびPI(polyimide)からなる群より選択される1種以上の素材からなるものであり得る。
【0069】
また、作動電極は炭素、金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができる。
【0070】
また、2電極を有する電気化学的バイオセンサーの場合、対向電極が基準電極の役割までともに果たすので、対向電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、基準電極まで含む3電極の電気化学的バイオセンサーの場合、基準電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、対向電極として炭素電極を使用することができる。
【0071】
拡散膜としてはNafion、セルロースアセテート(cellulose acetate)、シリコーンゴム(silicone rubber)を使用することができ、保護膜としてはシリコーンゴム(silicone rubber)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリウレタン(polyurethane)系の共重合体などを使用できるが、これに制限されるものではない。
【0072】
非制限的な例として、2電極である場合、対向電極が基準電極の役割までともに果たすので塩化銀または銀を使用することができ、3電極の場合、基準電極が塩化銀または銀が使用され、対向電極は炭素電極を使用することができる。
【0073】
本発明の実施形態は電気化学的バイオセンサーの適用可能な例としてグルコースを測定するためのバイオセンサーを例示しているが、本発明の試薬組成物に含まれる酵素の種類を異にすることによってコレステロール、ラクテート、クレアチニン、過酸化水素、アルコール、アミノ酸、グルタメートなどの多様な物質の定量のためのバイオセンサーに適用することができる。
【実施例
【0074】
以下、本発明を下記の実施例によってより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0075】
実験材料
商業的に購入した溶媒と試薬はそれ以上の精製過程を経ずに使用した。金属錯体の精製のためのアルミナの場合、Aldrich社製の中性アルミナを10mLのピペットを用いてろ過した。錯体のクロライド双性イオン交換のための樹脂の場合、Aldrich社製のDowex 1×4 chloride form、50-100meshを使用した。
【0076】
H-NMRおよび13C-NMRスペクトルは、Varian Inova 400(Hに対して400MHz、13Cに対して100MHz)を用いて得た。すべての化学的移動はテトラメチルシランのピーク(δ0.00)または重水素化クロロホルム(H NMRでCDCl3に対してδ7.26、13C NMRでCDCl3に対してδ77.16)、重水素化ジメチルアセトアミド(H NMRでDMSOに対してδ2.50、13C NMRでDMSOに対してδ39.52)に比例して決定した。質量スペクトルは西江大学校の有機化学研究センターでThermoFisher Scientific社製のLTQ XLモデルの低分解能の場合ESI-Iontrap、高分解能の場合ESI-orbitrap質量分析装置を用いて得た。
【0077】
実施例1.TPMAリガンドの合成
多様な官能基を有するTPMAリガンドを図1に示す合成経路により合成した。ビス-2-ピリジルメチルアミン(1)とトリス-2-ピリジルメチルアミン(10)は2-ピリジルアルデヒドと2-ピリジルメチルアミンとの間のreductive aminationにより合成した。他のリガンド(11、12、15、16)は文献に知られている方法(Kojima、T.;Fukuzumi,S.Chem.Eur.J.2007,13,8212-8222)を若干変形して合成した。4位で多様な官能基を有する2-クロロメチルピリジンヒドロクロリドをビス-2-ピリジルメチルアミン(1)と1:1の比率でSn2反応または2-ピリジルメチルアミンと1:2の比率でSn2反応して合成した。また、13番はエステルを還元して合成し、14番は過剰のエチレンジアミンとaminolysis反応を経て合成した。合成した大部分のTPMAリガンドは3つのピリジン環を持つため、強い塩基性を帯びてシリカを利用したカラムクロマトグラフィーによっては精製できず、塩基性または中性アルミナを利用したカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0078】
1-1.Bis(2-pyridiylmethyl)amine(1)
【化12】
【0079】
丸底フラスコに2-ピリジルアルデヒド(3.0g、27mmol)と2-アミノメチルピリジン(3.0g、27mmol)を入れてメタノール(25mL)を入れた。常温で3時間攪拌し、NaBH(3.1g、81mmol)を0℃でゆっくり入れた。添加が終わると常温で4時間攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら10%塩酸水溶液を入れて反応を終結させた。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、NaCO飽和水溶液を添加してpHを9まで合わせた。分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより黄色オイル形態の生成物1を得た。(5.4g、98%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.57(d、J=4.8Hz、2H)、7.65(dd、J=7.2、4.8Hz、2H)、7.37(d、J=7.6Hz、2H)、7.17(d、J=5.2、7.2Hz、2H)、3.99(s、4H)
【0080】
1-2.2,4-Diethoxycarbonylpyridine(2)
【化13】
【0081】
丸底フラスコに2,4-ピリジンジカルボン酸(5g、30mmol)を入れてエタノール(250mL)を入れて溶かした。反応フラスコに濃硫酸(3.28mL)を入れた後、還流管を設置し、24時間80℃で還流しながら攪拌した。反応フラスコを常温まで冷却した後、回転蒸発乾燥装置を用いてエタノールを除去した。NaCO飽和水溶液を添加し、分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより白色固体生成物2を得た。(6.5g、97%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.92(d、J=5.6Hz、1H)、8.65(s、1H)、8.04(d、J=6.0Hz、1H)、4.52(q、J=6.4Hz、2H)、4.46(q、J=5.6Hz、2H)、1.48(t、J=6.0Hz、3H)、1.43(t、J=6.0Hz、3H)
【0082】
1-3.4-Ethoxycarbonyl-2-hydroxymethylpyridine(3)
【化14】
【0083】
丸底フラスコに開始物質(2)(6.0g、27mmol)とNaBH(0.664g、35mmol)を入れてエタノール(50mL)を入れて溶かした。反応フラスコにCaCl(3.0g、27mmol)をエタノールに溶かして0℃でゆっくり入れた。添加が終わると0℃で2時間30分間攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら濃硫酸を入れて反応を終結させた。ガラスフィルターを用いて白い沈殿物をろ過し、回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮した。NaCO飽和水溶液を添加し、分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより淡い黄色固体生成物3を得た。(3.1g、64%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.96(d、J=5.6Hz、1H)、8.42(s、1H)、8.34(d、J=5.6Hz、1H)、5.22(s、2H)、4.53(q、J=7.2Hz、2H)、1.47(t、J=6.8Hz、3H)
【0084】
1-4.4-Ethoxycarbonyl-2-chloromethylpyridine hydrochloride(4)
【化15】
【0085】
丸底フラスコに開始物質(3)(2.9g、16mmol)を入れてCHCl(30mL)を入れて溶かした。反応フラスコに塩化チオニル(9.5g、80mmol)をCHCl(15mL)に希釈した後、ゆっくり入れた。添加が終わると常温で一晩攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら回転蒸発乾燥装置を用いて溶媒を除去した。これにより白色固体生成物4を得た。(3.616g、90%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.82(d、J=6.0Hz、1H)、8.55(s、1H)、8.35(d、J=6.4Hz、1H)、5.24(s、2H)、4.54(q、J=7.6Hz、2H)、1.48(t、J=7.2Hz、3H)
【0086】
1-5.4-Methoxy-2-hydroxymethylpyridine(5)
【化16】
【0087】
丸底フラスコに4-メトキシピリジン-2-カルボキシレート(4.95g、29mmol)とNaBH(1.45g、44mmol)を入れてエタノール(40mL)を入れて溶かした。反応フラスコにCaCl(3.28g、29mmol)をエタノールに溶かして0℃でゆっくり入れた。添加が終わると-5℃で2時間30分間攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら濃硫酸を入れて反応を終結させた。ガラスフィルターを用いて白い沈殿物をろ過し、回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮した。NaCO飽和水溶液を添加し、分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより白色固体生成物5を得た。(2.14g、53%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.37(d、J=4.0Hz、1H)、6.78(s、1H)、6.74(d、J=3.2Hz、1H)、4.71(s、2H)、3.86(s、3H)
【0088】
1-6.4-Methoxy-2-chloromethylpyridine hydrochloride(6)
【化17】
【0089】
丸底フラスコに開始物質(5)(1.60g、11mmol)を入れてCHCl(20mL)を入れて溶かした。反応フラスコに塩化チオニル(6.83g、57mmol)をCHCl(10mL)に希釈した後、ゆっくり入れた。添加が終わると常温で一晩攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら回転蒸発乾燥装置を用いて溶媒を除去した。これにより白色固体生成物6を得た。(2.11g、95%);H NMR(400MHz、CDCN)δ8.42(d、J=6.8Hz、1H)、7.43(s、1H)、7.31(d、J=6.4Hz、1H)、4.98(s、2H)、4.06(s、3H)
【0090】
1-7.2-(Hydroxymethyl)-4-pyridinecarboxamide(7)
【化18】
【0091】
丸底フラスコに開始物質(3)(1.60g、11mmol)を入れてエタノール(10mL)を入れて溶かした。反応フラスコに30%アンモニア水(30mL)をゆっくり入れた。添加が終わると常温で24時間攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら回転蒸発乾燥装置を用いて溶媒を除去した。その後、追加の精製過程なしに次の反応に使用した。これにより白色固体生成物7を得た。(0.78g、90%);H NMR(400MHz、DMSO)δ8.60(d、J=4.0Hz、1H)、8.42(d、J=4.0Hz、1H、NH)、7.89(s、1H)、7.63(d、J=4.0Hz、1H)、7.53(d、J=4.0Hz、1H、NH)、4.61(s、2H)
【0092】
1-8.4-Cyano-2-chloromethylpyridine(8)
【化19】
【0093】
丸底フラスコに開始物質(7)(94mg、0.55mmol)を入れて蒸留して精製したDMF(3mL)を入れて溶かした。反応フラスコに塩化チオニル(325mg、2.8mmol)をDMF(6mL)に希釈した後、0℃でゆっくり入れた。添加が終わると常温で12時間攪拌した。NaCO飽和水溶液を添加して中和して反応を終結した。フラスコの生成物を分別漏斗に移した後、水層を酢酸エチルで3回抽出した。その後、有機層をDMFが全て除去されるまで水で洗浄した。集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。反応が完全に行われたことを確認したら回転蒸発乾燥装置を用いて溶媒を除去した。これにより茶色オイル形態の生成物8を得た。(695mg、70%);H NMR(400MHz、CDCl)δ7.76(d、J=4.8Hz、1H)、7.76(s、1H)、7.50(d、J=4.8Hz、1H)、4.73(s、2H)、13C NMR(100MHz、CDCl)δ158.28、150.32、124.46、124.29、121.47、116.12および45.63
【0094】
1-9.2-thiazoylmethylamine(9)
【化20】
【0095】
丸底フラスコにNHOH・HCl(2.3g、30mmol)、2-チアゾールカルボキシアルデヒド(2.5g、20mmol)、NaOH(2.6g、60mmol)を入れてエタノール(20mL)と蒸留水(4mL)を入れて溶かした。反応フラスコに還流管を設置し、30分間80℃で攪拌しながら還流した。常温まで冷却した後、2N塩酸を添加してpH4になるまで酸性化した。フラスコの生成物を分別漏斗に移した後、水層をEtOで2回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより白色固体の中間生成物を得た。この中間生成物にエタノール(30mL)と30%アンモニア水(60mL)を入れて溶かした。Zinc dust(10.1g、200mmol)と酢酸アンモニウム(1.3g、20mmol)を順次入れて還流管を設置し、30分間80℃で攪拌しながら還流した。常温まで冷却した後、ガラスフィルターを用いてろ過した。ろ過した溶液を水を添加して希釈し、分別漏斗に移した後、CHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより黄色オイル形態の生成物9を得た。(0.8g、35%);H NMR(400MHz、DMSO)δ7.68(d、J=3.2Hz、1H)、7.55(d、J=3.2Hz、1H)、3.98(s、2H)、2.32(br、2H)
【0096】
1-10.Tris(2-pyridiylmethyl)amine(10)
【化21】
【0097】
丸底フラスコに開始物質(1)(1.05g、5.3mmol)と2-ピリジルアルデヒド(0.63g、5.3mmol)を入れてメタノール(15mL)を入れた。常温で2時間攪拌し、NaBH(0.61g、16mmol)を0℃でゆっくり入れた。添加が終わると常温で12時間攪拌した。反応が完全に行われたことを確認したら10%塩酸水溶液を入れて反応を終結させた。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、NaCO飽和水溶液を添加してpHを9まで合わせた。分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。その後、EtOで再結晶によって精製して無色結晶の生成物10を得た。(1.2g、78%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.53(d、J=4.4Hz、3H)、7.65(dd、J=5.0、7.6Hz、3H)、7.58(d、J=7.6Hz、3H)、7.15(dd、J=5.6、7.2Hz、3H)、3.88(s、6H)
【0098】
1-11.2-(Bis(4,4’-ethoxycarbonyl-2,2’-pyridinyl)methylamino)methylpyridine(11)
【化22】
【0099】
丸底フラスコに開始物質(4)(1.0g、4.25mmol)、2-ピリジルメチルアミン(0.21g、1.93mmol)、NaCO(4.5g、42.5mmol)とacetonitrile(20mL)を入れた。反応フラスコに還流帯を設置し、80℃で12時間攪拌しながら還流した。反応が終わると常温まで冷却した後、ガラスフィルターを用いて過剰のNaCOを除去した。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、濃い赤色オイル形態の混合物をhexane:EtOAc=2:5の組成を有する展開液を使用して塩基性アルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで精製して赤色オイル形態の生成物11を得た。(0.55g、65%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.68(d、J=5.2Hz、2H)、8.54(d、J=5.0Hz、1H)、8.10(s、2H)、7.70(d、2H)、7.69(dd、1H)、7.60(d、J=3.6Hz、1H)、7.16(dd、J=6.0、7.2Hz、1H)、4.42(q、J=7.2Hz、4H)、3.99(s、2H)、3.93(s、4H)、1.42(t、J=7.2Hz、6H)
【0100】
1-12.2-(Bis(2-pyridinyl)methylamino)methyl-4-ethoxycarbonylpyridine(12)
【化23】
【0101】
丸底フラスコに開始物質(1)(0.35g、1.77mmol)、開始物質(4)(0.5g、1.94mmol)、NaCO(2.2g、19.4mmol)とacetonitrile(15mL)を入れた。反応フラスコに還流帯を設置し、80℃で12時間攪拌しながら還流した。反応が終わると常温まで冷却した後、ガラスフィルターを用いて過剰のNaCOを除去した。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、濃い赤色オイル形態の混合物をacetonitrileを展開液として使用して塩基性アルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで精製して濃い樺色オイル形態の生成物12を得た。(0.53g、82%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.68(d、J=4.8Hz、1H)、8.54(d、J=4.0Hz、2H)、8.12(s、1H)、7.69(d、J=4.0Hz、1H)、7.65(dd、2H)、7.60(d、J=7.6Hz、2H)、7.15(dd、J=6.0、7.2Hz、2H)、4.42(q、J=6.8Hz、2H)、3.96(s、2H)、3.89(s、4H)、1.42(t、J=6.8Hz、3H)
【0102】
1-13.2-(Bis(2-pyridinyl)methylamino)methyl-4-hydroxymethylpyridine(13)
【化24】
【0103】
丸底フラスコに開始物質(12)(100mg、0.28mmol)を入れてエタノール(10mL)を入れて溶かした。NaBH(21mg、0.84mmol)を0℃でゆっくり入れ、全て添加したら常温で12時間攪拌した。12時間後に飽和アンモニウムクロリド水溶液を入れて反応を終結させた。ガラスフィルターを用いて白い沈殿物をろ過し、回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮した。NaCO飽和水溶液を添加し、分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより淡い黄色オイル形態の生成物13を得た。(40mg、45%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.51(d、J=4.8Hz、2H)、8.47(d、J=5.2Hz、1H)、7.64(dd、J=3.6、4.0Hz、2H)、7.59(d、J=5.2Hz、2H)、7.55(s、1H)、7.16(d、J=5.2Hz、1H)、7.13(dd、J=3.2、3.2Hz、2H)、4.73(s、2H)、3.88(s、2H)、3.86(s、4H)
【0104】
1-14.2-(Bis(2-pyridinyl)methylamino)methyl-4-(2-aminoethyl)pyridine carboxamide(14)
【化25】
【0105】
丸底フラスコに開始物質(12)(1.35g、3.7mmol)を最小量のCHClに溶かして精製されたエチレンジアミン(22.5g、370mmol)にゆっくり加えた。反応フラスコに還流帯を設置し、80℃で16時間攪拌した。反応が終わると常温まで冷却した後、水30mLを注いだ。フラスコの生成物を分別漏斗に移した後、水層をCHClで3回抽出した。その後、集めた有機層に無水MgSOを入れて水を除去し、減圧下でガラスフィルターを用いて乾燥剤をろ過した。回転蒸発乾燥装置を用いて有機溶媒を除去した。これにより淡い黄色オイル形態の生成物14を得た。(1.20g、86%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.62(d、J=4.0Hz、1H)、8.54(d、J=8.0Hz、2H)、8.23(s、1H)、7.64(dd、J=8.0Hz、2H)、7.55(d、J=4.0Hz、1H)、7.49(d、J=8.0Hz、2H)、7.43(br、1H)、7.15(dd、J=6.0、6.0Hz、2H)、3.93(s、2H)、3.87(s、4H)、3.55(t、J=8.0Hz、2H)、2.98(t、J=8.0Hz、2H)
【0106】
1-15.2-(bis(4,4’-methoxy-2,2’-pyridinyl)methylamino)methylpyridine(15)
【化26】
【0107】
丸底フラスコに開始物質(6)(1.0g、5.18mmol)、2-ピリジルメチルアミン(0.28g、2.59mmol)、NaCO(2.7g、25.9mmol)とacetonitrile(20mL)を入れた。反応フラスコに還流帯を設置し、80℃で12時間攪拌しながら還流した。反応が終わると常温まで冷却した後、ガラスフィルターを用いて過剰のNaCOを除去した。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、濃い赤色オイル形態の混合物をacetonitrileを展開液として使用して中性アルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで精製して樺色オイル形態の生成物15を得た。(0.54g、60%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.55(d、J=4.8Hz、1H)、8.34(d、J=5.6Hz、2H)、7.64(dd、J=4.8、4.4Hz、1H)、7.58(d、J=4.0Hz、1H)、7.21(s、2H)、7.15(dd、J=5.2、4.4Hz、1H)、6.68(d、J=3.2Hz、2H)、3.90(s、2H)、3.85(s、4H)3.84(s、6H)
【0108】
1-16.2-(bis(4,4’-cyano-2,2’-pyridinyl)methylamino)methylpyridine(16)
【化27】
【0109】
丸底フラスコに開始物質(8)(54mg、0.345mmol)、2-ピリジルメチルアミン(17mg、0.157mmol)、NaCO(166mg、1.57mmol)とacetonitrile(10mL)を入れた。反応フラスコに還流帯を設置し、80℃で12時間攪拌しながら還流した。反応が終わると常温まで冷却した後、ガラスフィルターを用いて過剰のNaCOを除去した。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、濃い赤色オイル形態の混合物をacetonitrileを展開液として使用して中性アルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで精製して黄色オイル形態の生成物16を得た。(36mg、68%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.73(d、J=5.2Hz、2H)、8.58(d、J=4.4Hz、1H)、7.80(s、2H)、7.70(dd、J=6.8、5.2Hz、1H)、7.46(d、J=5.2Hz、1H)、7.41(d、J=4.4Hz、2H)、7.20(dd、J=7.2、4.4Hz、1H)、3.99(s、4H)、3.91(s、2H)
【0110】
1-17.2-(bis(4,4’-ethoxycarbonyl-2,2’-pyridinyl)methylamino)methylthiazole(17)
【化28】
【0111】
丸底フラスコに開始物質(4)(0.45g、1.929mmol)、開始物質(9)(0.1g、0.877mmol)、NaCO(2.04g、19.3mmol)とacetonitrile(15mL)を入れた。反応フラスコに還流帯を設置し、80℃で36時間攪拌しながら還流した。反応が終わると常温まで冷却した後、ガラスフィルターを用いて過剰のNaCOを除去した。回転蒸発乾燥装置を用いて溶液を濃縮させ、樺色オイル形態の混合物をacetoneを展開液として使用して中性アルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで精製して黄色オイル形態の生成物17を得た。(0.22g、57%);H NMR(400MHz、CDCl)δ8.69(d、J=7.2Hz、2H)、8.18(s、2H)、7.73(d、J=4.0Hz、1H)、7.72(d、J=7.2Hz、2H)、7.31(d、J=4.0Hz、2H)、4.43(q、J=7.2Hz、4H)、4.16(s、2H)、4.04(s、4H)、1.43(t、J=7.2Hz、6H)
【0112】
実施例2.TPMA系のオスミウム錯体の合成
実施例1(1-1~1-17)から合成したリガンドから[Os(TPMA)Cl(PF )錯体と該誘導体を合成した。合成した錯体は全てヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(ammonium hexachloroosmate)から合成することができる。この時、4価イオン状態であるオスミウム塩を3価イオン状態であるオスミウム錯体形態に還元される段階で、反応後、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NHPF)水溶液に沈殿を得て、初期に全てPFを双性イオンとして有する錯体の形態で得た。このような合成反応schemeを図2に示す。
【0113】
[Os(TPMA)Cl(PF )錯体は全て常磁性体(paramagnetic)特徴を有するため、H-NMRにより観察できなかった。これは常磁性体物質が有する不対電子が核スピンと相互作用しながら弛緩時間(relaxation time)を短くするためである。したがって、生成されたオスミウム錯体はESI-MSにより合成結果と物質の酸化状態を決定した。そして、[Os(TPMA)Cl(PF )(18)錯体は単結晶X-ray回折分析(Single crystal X-ray diffraction)により結晶構造を確認することができ、これを図3に示す。
【0114】
追加的な段階で合成した[Os(TPMA)Cl(PF )系錯体と多様な単座リガンド(モノデンテートリガンド)または二座リガンド(バイデンテートリガンド)を反応させ、様々な種類のTPMA系のオスミウム錯体を合成した。1-メチルイミダゾール、ピリジンなどの単座リガンドと4-メトキシ-2-ピリジルカルボキサミド、ピコリン酸、カテコール、アセチルアセトンなどの二座リガンドは[Os(TPMA)Cl(PF )と反応して塩素(Cl)リガンドと交換反応を経て[Os(TPMA)(L)1~2(PF )系錯体を合成することができた。このような合成反応schemeを図4に示す。
【0115】
合成した[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF 系錯体は[Os(TPMA)Cl(PF )錯体と同様に全て常磁性体(paramagnetic)特徴を有するため、H-NMRにより観察できず、ESI-MSにより合成結果と物質の酸化状態を決定した。[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF 系錯体のうち、カテコール、アセチルアセトン、ピコリン酸などの酸素が配位する化合物(27~33)の場合、反応時トリエチルアミン(triethylamine、TEA)またはナトリウムヒドロキシド(NaOH)などの塩基を添加して反応を行った。
【0116】
合成したTPMA系の錯体のうち、21、31、32のようにTPMAリガンドにヒドロキシメチル(-CHOH)基がある錯体の場合にはESI-MSで特徴的にヒドロキシ(-OH)基が除去された質量シグナルを確認した。これは反応性の高いピリジルメチル(-PyCH)基が容易にイオンされ安定性を有するため、ヒドロキシ基が脱離した質量シグナルが観測されると判断される(図5)。
【0117】
単座リガンドである1-メチルイミダゾールを[Os(TPMA)Cl(PF )と反応させた26、34、35の錯体の場合、2~10当量の1-メチルイミダゾールとエチレングリコール溶媒下で130~180℃、3~12hの条件で反応させると高い収率で得ることができた。しかし、1-メチルイミダゾールが単座配位した[Os(TPMA)(imi)Cl]n+(PF 錯体の場合には1当量の1-メチルイミダゾールのみを反応させると反応が全く行われず、2当量を添加すると2つのイミダゾールリガンドが配位するなど、これを選択的に得ることができなかった。
【0118】
合成した全てのTPMA系のオスミウム錯体は、初期に全てPF 双性イオン形態で得られ、Clイオン交換樹脂を用いて[Os(TPMA)Cl(Cl)または[Os(TPMA)(L)1~2n+(Cl形態の錯体を得ることができた。ほとんどのTPMA系のオスミウム錯体は双性イオンの形態により大きな溶解度の差を示した。PF が双性イオン形態であるとき、アセトニトリルとアセトン溶媒で良好な溶解度を示す反面、水とメタノールにおいては良くない溶解度を示した。反対に、Cl双性イオン形態であるとき、水とメタノールで良好な溶解度を示し、アセトニトリルとアセトンなどの有機溶媒ではほとんど溶解しなかった。
【0119】
2-1.[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(18)
【化29】
【0120】
ガラス培養チューブにヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(30mg、0.068mmol)と開始物質(10)(20mg、0.068mmol)を入れてエチレングリコール(2mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で6時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である緑色固体生成物18を得た(35mg、73%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]1818ClOs:552.05 Found:552.16[M]
【0121】
2-2.[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(19)
【化30】
【0122】
ガラス培養チューブにヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(129mg、0.293mmol)と開始物質(11)(120mg、0.293mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で6時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物19を得た(220mg、95%)。双性イオンをClに変換するためにはPF6生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2426ClOs:696.09 Found:696.25[M]
【0123】
2-3.[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(20)
【化31】
【0124】
ガラス培養チューブにヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(327mg、0.744mmol)と開始物質(12)(270mg、0.744mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で6時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物20を得た(521mg、91%)。双性イオンをClに変換するためにはPF6生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2122l2Os:624.07 Found:624.25[M]
【0125】
2-4.[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(21)
【化32】
【0126】
ガラス培養チューブにヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(62mg、0.141mmol)と開始物質(13)(45mg、0.141mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で6時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物21を得た(51mg、50%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]1920ClOOs:582.06 Found:566.2500[M-OH]
【0127】
2-5.[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(22)
【化33】
【0128】
ガラス培養チューブにヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(326mg、0.742mmol)と開始物質(14)(280mg、0.742mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で16時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色または黒色固体生成物22を得た(355mg、61%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(High resolution):Calcd for cation[M]2124ClOOs:638.10 Found:638.0998[M]、319.5538[M]2+
【0129】
2-6.[Os(TPMA)Cl(PF )Complex(23)
【化34】
【0130】
ガラス培養チューブにヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム(129mg、0.293mmol)と開始物質(15)(120mg、0.293mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で6時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物23を得た(220mg、95%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2022ClOs:612.07 Found:612.16[M]
【0131】
2-7.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(24)
【化35】
【0132】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(60mg、0.086mmol)と4-メトキシ-2-ピリジンカルボキサミド(65mg、0.430mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、130℃で12時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物24を得た(32mg、40%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2526Os:634.17 Found:634.2500[M]、317.1667[M]2+
【0133】
2-8.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(25)
【化36】
【0134】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(30mg、0.043mmol)とN-メチルイミダゾール(35mg、0.430mmol)を入れてエチレングリコール(1.5mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、130℃で3時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物25を得た(34mg、85%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2630Os:646.22 Found:323.08[M]2+
【0135】
2-9.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(26)
【化37】
【0136】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(100mg、0.143mmol)とピリジン(11mg、0.143mmol)を入れてエチレングリコール(4mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、180℃で15時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物26を得た(31mg、29%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2323ClNOs:596.13 Found:596.3333[M]
【0137】
2-10.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(27)
【化38】
【0138】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(100mg、0.143mmol)と4-ブロモピコリニックアシッド(173mg、0.861mmol)、トリエチルアミン(145mg、1.430mmol)を入れて蒸留水(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、100℃で3時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物27を得た(89mg、75%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2421BrNOs:682.05 Found:682.1667[M]
【0139】
2-11.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(28)
【化39】
【0140】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(30mg、0.043mmol)とカテコール(47mg、0.430mmol)、KCO(59mg、0.430mmol)を入れて蒸留水(1.5mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、100℃で12時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である黒色固体生成物28を得た(19.6mg、62%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2422Os:590.14 Found:590.2500[M]
【0141】
2-12.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(29)
【化40】
【0142】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(200mg、0.287mmol)と4-ブロモピコリニックアシッド(70mg、0.569mmol)、トリエチルアミン(29mg、0.287mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で3時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物29を得た(113mg、53%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(High resolution):Calcd for cation[M]2422Os:604.14 Found:604.13824[M]
【0143】
2-13.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(30)
【化41】
【0144】
ガラス培養チューブに開始物質(18)(30mg、0.043mmol)とアセチルアセトン(43mg、0.430mmol)、NaOH(8mg、0.215mmol)を入れて蒸留水(1.5mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、100℃で4時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である黒色固体生成物30を得た(16mg、50%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2325Os:581.16 Found:581.3333[M]、290.6666[M]2+
【0145】
2-14.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(31)
【化42】
【0146】
ガラス培養チューブに開始物質(21)(100mg、0.137mmol)とピコリニックアシッド(67mg、0.548mmol)、トリエチルアミン(56mg、0.548mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で4時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物31を得た(54mg、51%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2524Os:634.15 Found:618.3333[M-OH]
【0147】
2-15.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(32)
【化43】
【0148】
ガラス培養チューブに開始物質(21)(100mg、0.137mmol)と4-メチルピコリニックアシッド(76mg、0.550mmol)、トリエチルアミン(56mg、0.550mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、140℃で4時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物32を得た(58mg、53%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2626Os:648.17 Found:632.4167[M-OH]
【0149】
2-16.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(33)
【化44】
【0150】
ガラス培養チューブに開始物質(22)(40mg、0.051mmol)と4-メチルピコリニックアシッド(28mg、0.204mmol)、トリエチルアミン(15mg、153mmol)を入れてエチレングリコール(3mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、120℃で5時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物33を得た(12mg、28%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(High resolution):Calcd for cation[M]280NOs:704.20 Found:704.2019[M]、352.6044[M]2+
【0151】
2-17.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(34)
【化45】
【0152】
ガラス培養チューブに開始物質(22)(40mg、0.051mmol)とN-メチルイミダゾール(42mg、0.510mmol)を入れてエチレングリコール(2mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、130℃で3時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物34を得た(50mg、96%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(High resolution):Calcd for cation[M]293610OOs:732.27 Found:367.1182[M+2]2+
【0153】
2-18.[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF Complex(35)
【化46】
【0154】
ガラス培養チューブに開始物質(23)(30mg、0.040mmol)とN-メチルイミダゾール(32mg、0.400mmol)を入れてエチレングリコール(1.5mL)を入れて混合溶液を作った。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後、130℃で3時間還流した。蒸留水に過剰のヘキサフルオロリン酸アンモニウムを入れて飽和された溶液に反応が終わった溶液をゆっくり滴下した。溶液に生じた沈殿物をろ過し、蒸留水と過剰のジエチルエーテルで洗浄して双性イオンがPF である茶色固体生成物35を得た(31mg、80%)。双性イオンをClに変換するためにはPF 生成物を少量(~1mL)のアセトニトリルに溶かした後、Clイオン交換樹脂と共に過剰の蒸留水(25mL)混合物を作って一晩攪拌した。残っているCl樹脂をろ過し、濾液を集めて減圧蒸留を用いて溶媒を除去して双性イオンがClである生成物を得た。ESI-MS(Low resolution):Calcd for cation[M]2834Os:706.24 Found:353.2500[M]2+
【0155】
実施例3.本発明に係るTPMA系のオスミウム錯体の電気化学的特性分析
合成したTPMA系のオスミウム錯体の電気化学的特性を分析するために循環電圧電流法(Cyclic voltammetry、CV)を用いた。よく洗浄した直径3mmの炭素ガラス電極を作業電極として使用し、Ag/AgCl電極を基準電極、Pt電極を相対電極として10mV/sの走査速度で測定した。PF 双性イオン形態の錯体は0.1MのTBAPのアセトニトリル溶液で3mg/mLの濃度で測定した。Cl双性イオン形態の錯体は酸化還元ピークの位置のみを確認するためにClの物質は陰イオン交換の過程中の溶液状態で測定し、物質別に濃度は一定でない状態で測定した。合成した全てのTPMA系のオスミウム錯体の酸化/還元電位を図7a~図7cに示す。[Os(TPMA)Cl(Cl)(18)はいかなる置換基も持たない最も基本的なTPMAオスミウム錯体で、E1/2=-0.339Vの酸化/還元電位を示し、その結果を図6に示す。該錯体を中心にして置換基および配位したリガンドの種類による酸化/還元電位の変化を分析した。
【0156】
18番錯体と同様の配位構造を有し、かつそれぞれ異なる置換基を含む19~23番錯体と互いに酸化/還元電位を比較した。エチルエステル(-COOEt)基を2個含む19番錯体と1個含む20番錯体、およびアミド(-COONH)基を含む22番錯体のような電子求引基(electron withdrawing group、EWG)を含む錯体は18番錯体の酸化/還元電位よりも正の値で現れた。反面、メチル(-CH-)基を含む21番とメトキシ(-OMe)基を2個含む23番のような電子供与基(electron donating group、EDG)を含む錯体は18番錯体よりも負の値で現れた。このような結果は、EWGが中心金属の電子密度を低下させ、還元が良くなる傾向により電位が正の方向に移動したものであり、EDGは電子密度を増加させ、酸化が良好になる傾向により電位がさらに負の方向で現れるとみなされる。20番、22番錯体は、18番錯体の酸化/還元電位より約0.102~0.103V程度が正の方向に移動し、2つの錯体はいずれも類似した酸化/還元電位を示すことから、カルボニル基を含むエステル基とアミド基が類似した電気化学的な影響を与えると判断した。19番錯体は、18番錯体の酸化/還元電位より約0.176Vが正の方向に移動し、エステル基などのEWGが多ければ多いほどさらに大きな電気化学的な影響を与えることを確認した。ヒドロキシメチル基を含む21番錯体は0.031Vだけ負の方向に僅かに移動し、もっと良いEDGであるメトキシ基が2個含まれている23番錯体は0.125Vだけ負の方向に移動し、EDGの種類と個数によってさらに大きな影響を与えると判断した。この結果により、TPMA系のオスミウム錯体が置換基に応じて傾向のある電位の変形が可能であり、これにより理想的な酸化/還元電位を有する電子伝達メディエータとして適用および改善の可能性を確認した。
【0157】
多様なリガンドが配位された[Os(TPMA)(L)1~2n+(PF 系錯体(24~30)は、全て18番錯体よりも正の方向に増加した酸化/還元電位を示した。アセチルアセトン、1個のピリジン、4-ブロモピコリン酸、ピコリン酸、2個の1-メチルイミダゾール、4-メトキシ-2-ピリジルカルボキサミド、カテコールの順に酸化/還元電位が正の方向に益々大きな増加量を示した。それぞれ4-メトキシ-2-ピリジルカルボキサミドとカテコールが配位された25番、28番錯体は2個以上の可逆的な酸化/還元ピークが現れ、安定した1個の酸化還元電位を示さないことから、電子伝達メディエータとして好ましくないと判断した。しかし、ピコリン酸が配位されたTPMAオスミウム化合物は適当に正の方向に電位値が移動し、Ag/AgCl電極を基準として0Vに近い理想的な酸化/還元電位を示すので、電子伝達メディエータに適用される可能性のある適切なTPMA系のオスミウム錯体と判断された。また、特徴的に[Os(TPMA)Cl(X)系の18~23番錯体は、双性イオン形態による互いに異なる溶媒の条件下でほぼ類似した酸化還元電位を示したが、これらを除いた[Os(TPMA)(L)1~2n+(X系錯体は全てPF 双性イオン形態である時よりもCl双性イオン形態である時、最小36mVから最大210mVまでさらに負の領域で酸化/還元電位が現れた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】