(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ペンタフルオロフェニルエステルを含む高分子およびそれを含む電気化学的バイオセンサ
(51)【国際特許分類】
C08F 20/22 20060101AFI20240201BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20240201BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20240201BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08F20/22
C08F8/42
G01N27/327 353R
G01N27/416 338
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540611
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2021095143
(87)【国際公開番号】W WO2022146115
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189140
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510115030
【氏名又は名称】アイセンス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522242111
【氏名又は名称】ソガン ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ディベロプメント ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SOGANG UNIVERSITY RESEARCH & BUSINESS DEVELOPMENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】35 Baekbeom-ro,Mapo-gu,Seoul 04107(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョンソ
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ボンジン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヘジュン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100AM19Q
4J100BA35H
4J100BB07P
4J100BC43P
4J100BD04H
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC07
4J100GC26
4J100GC35
4J100HA61
4J100HC45
4J100HC88
4J100HE14
4J100JA43
(57)【要約】
【要約】本発明は電気化学センサの製造に使用されるポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体であって、アミン官能基との高い反応性を有して、加水分解が起こりにくく、有機溶媒に汎用的に良い溶解度を有するだけでなく類似構造を有する高分子と比較する時立体障害および毒性や副作用の問題が低く、特に持続血糖モニタリングセンサのように人体内にセンサの一部が入る挿入型装置に有用である。
【図面】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペンタフルオロフェニルエステル系の酸化-還元高分子材料製造用重合体。
【請求項2】
前記ポリペンタフルオロフェニルエステルに1次および2次アミン系化合物を使用してアミノリシス(aminolysis)により導入することを特徴とする、請求項1に記載の酸化-還元高分子材料製造用重合体。
【請求項3】
前記重合体はポリペンタフルオロフェニルアクリレート(PPFPA)単一重合体、ポリペンタフルオロフェニルメタクリレート(PPFPM)単一重合体、ポリペンタフルオロフェニルアクリレート-ポリジメチルアクリルアミド(PPFPA-PDMA)共重合体、ポリペンタフルオロフェニルメタクリレート-ポリジメチルアクリルアミド(PPFPM-PDMA)共重合体、ポリペンタフルオロフェニルアクリレート-ポリアクリルアミド(PPFPA-PAA)共重合体、ポリペンタフルオロフェニルメタクリレート-ポリアクリルアミド(PPFPM-PAA)共重合体からなる群より選ばれる重合体を含む、請求項1に記載の酸化-還元高分子材料製造用重合体。
【請求項4】
下記化学式1または2の構造を有する、請求項1に記載の酸化-還元高分子材料製造用重合体:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
前記化学式1または2において、
R
TおよびR
Lはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数1~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~30のエチレングリコール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数3~30のヘテロアリーレン基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基および置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基からなる群より選ばれ;
前記nは10~300の整数である。
【請求項5】
前記R
TおよびR
Lはそれぞれ独立して分子量1,000g/mol~50,000g/molのポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルイミダゾール(PVI)、ポリビニルピリジン(PVP)およびポリシロキサン(PDMS)からなる群より選ばれる、請求項4に記載の酸化-還元高分子材料製造用重合体。
【請求項6】
1,000g/mol~500,000g/mol範囲の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の酸化-還元高分子材料製造用重合体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項による重合体を含む、電気化学的センサ用酸化-還元高分子材料。
【請求項8】
前記重合体に1次および2次アミン基およびアンモニウム基からなる群より選ばれる機能基および遷移金属錯体が結合されたことを特徴とする、請求項7に記載の酸化-還元高分子材料。
【請求項9】
前記遷移金属錯体は下記化学式3または4の構造を有する、請求項8に記載の酸化-還元高分子材料:
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
前記化学式3または4において、
MはOs、Rh、Ru、Ir、FeおよびCoからなる群より選ばれる1種の遷移金属であり;
前記化学式3において、L
G1およびL
G2は互いに合わさって下記化学式5~6から選ばれる二座配位子を形成し;
L
G3およびL
G4は互いに合わさって下記化学式5~6から選ばれる二座配位子を形成し;L
G5およびL
G6はそれぞれ互いに合わさって下記化学式5~6から選ばれる二座配位子を形成し;
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
前記化学式5において、L
Cは窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり、2位でベンゼンの化学式と連結され;
前記化学式6において、L
Nは窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり、L
N1とL
N2はそれぞれ2位で互いに連結されており;
R
Lはヘテロ環化合物L
C、L
N1およびL
N2のすべての官能基であり;
前記R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
Lはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のエチレングリコール基置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群より選ばれるものであり;
前記化学式4のL
H1、L
H3およびL
H4はL
H2を中心に互いに合わさって下記化学式7で表される四座配位子を形成し;
この時、L
H5およびL
H6はそれぞれ化学式8で表されるように遷移金属Mに対する単座配位子を形成するか;L
H5およびL
H6はそれぞれ互いに合わさって下記化学式9で表されるように遷移金属Mに対する二座配位子を形成し;
[化学式7]
【化7】
前記化学式7において、
C
a、C
bおよびC
cはそれぞれ独立して窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり、前記ヘテロ環化合物は2位でアミン基とメチレン基で連結され、前記3個のヘテロ環が有する3個の窒素と、前記3個のヘテロ環を互いに連結する中心の1個の窒素が遷移金属Mと連結され、R
1、R
2、R
3はヘテロ環化合物C
a、C
b、C
cのすべての官能基として、前記R
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のエチレングリコール基置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群より選ばれ;
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
前記化学式8において、
L
H5およびL
H6はそれぞれ単座配位子であり、それぞれ独立して-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-NCCH
3、-CO、-OH
2、-NH
3または窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり;
前記化学式9において、
L
H5-L
H6は二座配位子であり、カテコール、アセチルアセトン、2-ピコリン酸、2-ピリジンカルボキサミド、2,2-ビピリジンまたは2,2-ビチアゾールであり;
前記L
1は独立して置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数1~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のエチレングリコール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基、および置換または非置換の炭素数3~30のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれ;
前記A
aはアミン基およびアンモニウム基からなる群より選ばれる。
【請求項10】
請求項7による酸化-還元重合体材料を電極にコートした後、コートされた電極を硬化させる段階を含む、酸化-還元高分子材料薄膜の製造方法。
【請求項11】
請求項10による製造方法によって製造された酸化-還元高分子材料薄膜。
【請求項12】
請求項10による製造方法によって製造された酸化-還元高分子材料薄膜を含む、電気化学的バイオセンサ。
【請求項13】
液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素;および
請求項7による電子伝達メディエータを含む電気化学的バイオセンサ用センシング膜。
【請求項14】
前記酵素は、
脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、およびエステル化酵素(esterase)からなる群より選ばれた1種以上の酸化還元酵素;または
脱水素酵素、酸化酵素、およびエステル化酵素からなる群より選ばれた1種以上の酸化還元酵素とフラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide,FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide,NAD)、およびピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone,PQQ)からなる群より選ばれた1種以上の補助因子を含む、請求項13に記載の電気化学的バイオセンサ用センシング膜。
【請求項15】
請求項14による電気化学的バイオセンサ用センシング膜を含む、電気化学的バイオセンサ。
【請求項16】
前記センサは持続血糖モニタリングセンサである、請求項15に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項による酸化-還元高分子材料製造用重合体を含む、装置。
【請求項18】
前記装置は電気化学的バイオセンサである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記装置は挿入可能である、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年12月31日付韓国特許出願第10-2020-0189140号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は電子伝達メディエータおよび酸化還元酵素を電気化学的バイオセンサのような装置中の電極表面に固定させるために有用なペンタフルオロフェニルエステルを含む高分子およびそれを含む電気化学的バイオセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は高い血糖数値が長い間持続した時現れる疾患として心血管疾患、脳卒中、腎臓疾患などの合併症を誘発する。高い血糖数値に対応してインシュリン注入により血糖数値を減少させる過程が必要であるが、もし、インシュリンが過多注入されると、低血糖症が発生してこれによりショックまたは死亡に至る場合もある。これを防止するために糖尿病患者は適切な血糖数値を維持する目的で血糖測定センサを用いて持続的に体内血糖濃度を測定することが必須である。
【0004】
最近では、持続血糖測定システム(Continuous Glucose Monitoring System、CGMS)が適用された血糖センサが多く研究されて商用化されている。CGMSセンサは皮下組織に挿入されて血液でない細胞間液を通して連続してブドウ糖の濃度を測定する装置である。指採血方式の場合は一日に5~6回の血糖測定では正確な血糖数値変化を確認することが難しいことに対して、CGMSは一日に血糖数値変化と傾向性を確認できる長所がある。これにより患者が高血糖症または低血糖症を早く認知することができ、血糖管理能力をより改善することができる。
【0005】
バイオセンサは選択的に生体試料を感知し、これを特定の信号に切り替える機器を意味する。特に電気化学的方式を用いた酵素系のバイオセンサは酵素によって選択性が向上するだけでなく小型化が可能であり、測定の正確性を有することから多く好まれる。電気化学方式を用いた血糖バイオセンサは大きく1世代と2世代方式に分けられる。1世代血糖センサはクラーク(Clark)とリヨン(Lyon)により初めて開発され、酵素の酸化-還元反応を経て減少した酸素濃度および発生した過酸化水素の濃度変化により血糖数値を測定する方式であり、2世代血糖センサは酵素の酸化-還元反応により発生した電子を電子伝達メディエータにより電極に伝達する方式である。2世代センサは1世代センサより酸素濃度による誤差が少なく、媒介体による電子伝達反応が効率的でかつ早いという点で多くの長所を有している。このような理由から、電子伝達メディエータを含む2世代センサ方式がCGMS血糖センサに適用されている。
【0006】
電気化学方式の酵素系の血糖バイオセンサは一般的に酵素、電子伝達メディエータ、電極で構成されている。最初は酵素によってブドウ糖がグルコノラクトン(gluconolactone)に酸化され、次に還元された酵素は酸化されて電子伝達メディエータに電子を供与する。その次に還元された媒介体が酸化されて電極に電子を伝達する過程を経る。このような一連の過程から血糖数値を電気的信号により確認することができる。
【0007】
血糖センサを製作するにあたって電極表面に電子伝達メディエータと酵素を固定する方法は非常に重要である。これまでは電子伝達メディエータを含む酸化-還元水和高分子を酵素と混ぜて架橋剤を添加して電極に固定させる方法が研究されてきた。中でもポリビニルピリジン(polyvinylpyridine)とポリビニルイミダゾール(polyvinylimidazole)が酸化-還元高分子マトリックスとして良く知られている。しかし、このような既存の酸化-還元高分子は下記反応式1で見るように、最終材料の合成段階が長く複雑であり、遷移金属錯体の低い固定化効率を示すだけでなく、高分子に他の機能性の導入が難しいという問題を有していた。したがって、現在までも優れた性能の酸化-還元高分子の開発のために既存材料の限界を超える新しい素材の開発が求められている実情である。
【0008】
このような背景下で、本発明者らは電気化学的バイオセンサのための電子伝達メディエータおよび酵素を固定するのに有用な高分子に対して研究を重ねた結果、ペンタフルオロフェニル(Pentafluorophenyl,PFP)エステルを含む高分子を使用する場合、アミン官能基との高い反応性を有し、加水分解が起こりにくく、有機溶媒に汎用的に良い溶解度を有するだけでなく類似構造を有する高分子と比較する時立体障害と毒性が少ないことを確認して特に持続血糖モニタリングセンサのように人体内にセンサの一部が入る挿入型装置に有用であることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的はペンタフルオロフェニルエステルを含む酸化-還元高分子材料製造用重合体を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、前記遷移金属錯体および前記酸化-還元高分子材料製造用重合体を含む酸化-還元高分子材料薄膜および電気化学的バイオセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような目的を解決するための一つの様態として、本発明はペンタフルオロフェニルエステルを含む酸化-還元高分子材料製造用重合体、前記重合体および遷移金属錯体を含む電気化学的バイオセンサ用酸化-還元高分子、これから製造された電気化学的バイオセンサ用酸化-還元高分子を含む酸化-還元高分子材料薄膜およびそれを含む電気化学的バイオセンサ、例えば血糖センサに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体は電気化学的センサに用いる場合、アミン官能基との高い反応性を有し、加水分解が起こりにくく、有機溶媒に対する高い溶解度を有し、立体障害および毒性や副作用の問題が低く、特に持続血糖モニタリングセンサのように人体内にセンサの一部が入る挿入型装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるPFPA高分子P1にオスミウム錯体22を添加した後
19F NMRによる反応モニタリング結果を示すグラフである。
【
図2a】PFPA高分子(36)とオスミウム錯体(22,33)の最終反応が行われた時の
19F NMR、そしてこれに基づいて予想した酸化-還元高分子(37,38)の比率を確認したグラフである。
【
図2b】PFPA高分子(36)とオスミウム錯体(22,33)の最終反応が行われた時の
19F NMR、そしてこれに基づいて予想した酸化-還元高分子(37,38)の比率を確認したグラフである。
【
図3】実施例1-4のC-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子の合成を確認した
19F NMRデータである。
【
図4】実施例1-5のC-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子の合成を確認した
19F NMRデータである。
【
図5】酸化-還元重合体および酵素の組成とSPCEs電極表面上の架橋方法の模式図である。
【
図6a】本発明による酸化-還元高分子(37および38)を200秒ごとにブドウ糖濃度を0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、4、8、16、32、64、100mMに増加させた時に現れた電流の変化(上)、ブドウ糖濃度に応じた電流の変化(下)、低濃度区間(0~1mM)(左)、全体区間(0~100mM)(右)を示すグラフである。
【
図6b】本発明による酸化-還元高分子(C-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子1)を200秒ごとにブドウ糖濃度を0.01、0.05、0.1、0.5mMに増加させた時に現れた電流の変化(上-左側)、ブドウ糖濃度に応じた電流の変化(上-右側)および200秒ごとにブドウ糖濃度を0、1、5、10、50、100mMに増加させた時現れた電流の変化(下-左側)、ブドウ糖濃度に応じた電流の変化(下-右側)を示すグラフである。
【
図6c】本発明による酸化-還元高分子(C-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子1)を200秒ごとにブドウ糖濃度を0.01、0.05、0.1、0.5mMに増加させた時に現れた電流の変化(上-左側)、ブドウ糖濃度に応じた電流の変化(上-右側)および200秒ごとにブドウ糖濃度を0、1、5、10、50、100mMに増加させた時に現れた電流の変化(下-左側)、ブドウ糖濃度に応じた電流の変化(下-右側)を示すグラフである。
【
図7a】本発明による酸化-還元高分子(37、38およびC-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子1および2)の循環電圧電流試験前後の電流変化を測定した結果を示すグラフである。
図7aにおけるCVは電極完成直後に測定したものを示し、after CVはPBS溶液内で1時間攪拌した後測定した値を示す。
【
図7b】本発明による酸化-還元高分子(37、38およびC-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子1および2)の循環電圧電流試験前後の電流変化を測定した結果を示すグラフである。
図7bにおけるCVは電極完成直後に測定したものを示し、after CVはPBS溶液内で1時間攪拌した後測定した値を示す。
【
図7c】本発明による酸化-還元高分子(37、38およびC-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子1および2)の循環電圧電流試験前後の電流変化を測定した結果を示すグラフである。
図7cにおけるCVは電極完成直後に測定したものを示し、after CVはPBS溶液内で1時間攪拌した後測定した値を示す。
【
図7d】本発明による酸化-還元高分子(37、38およびC-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元高分子1および2)の循環電圧電流試験前後の電流変化を測定した結果を示すグラフである。
図7dにおけるCVは電極完成直後に測定したものを示し、after CVはPBS溶液内で1時間攪拌した後測定した値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
本発明による酸化-還元高分子材料製造用重合体は、ポリペンタフルオロフェニルエステルに基づくものであり、具体的にはペンタフルオロフェニルエステルに由来する繰り返し単位を含む、酸化-還元高分子材料の高分子前駆体として使用される。好ましくは、前記重合体はアミン基を含む反応基を有する架橋物質および遷移金属錯体とともに電子伝達メディエータ用酸化-還元高分子材料を形成することができる。
【0016】
一実施例として、本発明による酸化-還元高分子材料製造用重合体は、前記ポリペンタフルオロフェニルエステルに、アミン基を含む架橋物質として1次および2次アミン系化合物を使用してアミノリシス(アミノ分解、aminolysis)により導入することを特徴とする、酸化-還元高分子材料製造用重合体であり得る。
【0017】
前記酸化-還元高分子材料用重合体の非制限的な例としては、ポリペンタフルオロフェニルアクリレート(PPFPA)単一重合体、ポリペンタフルオロフェニルメタクリレート(PPFPM)単一重合体、ポリペンタフルオロフェニルアクリレート-ポリジメチルアクリルアミド(PPFPA-PDMA)共重合体、ポリペンタフルオロフェニルメタクリレート-ポリジメチルアクリルアミド(PPFPM-PDMA)共重合体、ポリペンタフルオロフェニルアクリレート-ポリアクリルアミド(PPFPA-PAA)共重合体およびポリペンタフルオロフェニルメタクリレート-ポリアクリルアミド(PPFPM-PAA)共重合体からなる群より選ばれる1種以上の重合体であり得るが、これに限定されるものではない。
【0018】
一実施例で、本発明による酸化-還元高分子材料製造用重合体は下記化学式1または2の構造を有するものであり得る:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
前記化学式1または2において、
R
TおよびR
Lはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数1~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~30のエチレングリコール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数3~30のヘテロアリーレン基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基および置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基からなる群より選ばれ;
前記nは10~300の整数である。
【0019】
本発明における「置換」は本発明で特に言及しない限り、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子(例えばF、Cl、Br、またはI)、シアノ基、ヒドロキシル基、チオール基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、オキソ基、カルボニル基、カルバミル基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸やその塩、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のハロアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数2~6のハロアルキニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、1~9の炭素環員を有するヘテロシクロアルキル基、1~9の炭素環員を有するヘテロシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、1~9の炭素環員を有するヘテロアルキル基、1~9の炭素環員を有するヘテロアリールオキシ基および炭素数1~9の炭素環員を有するヘテロアリールチオ基からなる群より選ばれる1種~3種であり得る。
【0020】
好ましくは、前記RTおよびRLはそれぞれ独立して分子量1,000g/mol~50,000g/molのポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルイミダゾール(PVI)、ポリビニルピリジン(PVP)およびポリシロキサン(PDMS)からなる群より選ばれるものであり得る。
【0021】
一例として本発明による酸化-還元高分子材料製造用重合体は、1,000g/mol~500,000g/mol範囲の重量平均分子量を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0022】
また他の様態として、本発明は前記ポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体に遷移金属錯体が導入された電気化学的センサ用酸化-還元高分子材料に関するものである。
【0023】
例えば、このような酸化-還元高分子材料は前記ポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体をアミン基、アンモニウム基、ハロゲン基、エポキシ基、アジド基、アクリレート基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、イソシアネート、アルコール基、およびシラン基からなる群より選ばれる機能基を含む化合物を導入して機能化させ、このように機能化された重合体に遷移金属錯体を結合させて製造することもできる。
【0024】
また、前記酸化-還元高分子材料は前記ポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体を機能化させる代わりに、遷移金属錯体のリガンドに置換反応および添加反応によりアミン基、アンモニウム基、チオール基、アルコール基などの前記架橋物質のような機能基を導入して機能化させて、このように機能化された遷移金属錯体と前記本発明による重合体を結合させて製造することもできる。
【0025】
または前記高分子材料はポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体および遷移金属錯体をすべてアミン基、アンモニウム基、ハロゲン基、エポキシ基、アジド基、アクリレート基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、イソシアネート、アルコール基、およびシラン基からなる群より選ばれる機能基を含む架橋物質を使用して機能化させて互いに結合させて製造することもできる。
【0026】
好ましくは、本発明による酸化-還元高分子材料は前記ポリペンタフルオロフェニルエステル系の重合体に1次および2次アミン基およびアンモニウム基からなる群より選ばれる機能基および遷移金属錯体が結合されたものであり得る。
【0027】
具体的には、前記遷移金属錯体は下記化学式3または4の構造を有するものであり得る。
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
前記化学式3または4において、
MはOs、Rh、Ru、Ir、FeおよびCoからなる群より選ばれる1種の遷移金属であり;
前記化学式3において、L
G1およびL
G2は互いに合わさって下記化学式5~6から選ばれる二座配位子を形成し;
L
G3およびL
G4は互いに合わさって下記化学式5~6から選ばれる二座配位子を形成し;L
G5およびL
G6はそれぞれ互いに合わさって下記化学式5~6から選ばれる二座配位子を形成し;
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
前記化学式5において、L
Cは窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり、好ましくは2位でベンゼンの化学式と連結され得、
前記化学式6において、L
Nは窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり、好ましくはL
N1とL
N2はそれぞれ2位で互いに連結されている。
【0028】
RLはヘテロ環化合物LC、LN1およびLN2のすべての官能基である。
【0029】
一様態で、前記R1、R2、R3、R4、R5およびRLはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のエチレングリコール基置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群より選ばれるものである。
【0030】
一様態で、前記化学式4のLH1、LH3およびLH4はLH2を中心に互いに合わさって下記化学式7で表される四座配位子を形成することができる。
【0031】
この時、L
H5およびL
H6はそれぞれ化学式8で表されるように遷移金属Mに対する単座配位子を形成するか;L
H5およびL
H6はそれぞれ互いに合わさって下記化学式9で表されるように遷移金属Mに対する二座配位子を形成し;
[化学式7]
【化7】
前記化学式7において、C
a、C
bおよびC
cはそれぞれ独立して窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり、好ましくは、前記ヘテロ環化合物はその2位でメチルアミンと連結され得、前記3個のヘテロ環が有する3個の窒素と、前記3個のヘテロ環を互いに連結する中心の1個の窒素が遷移金属Mと連結されることができる。
【0032】
R1、R2、R3はヘテロ環化合物Ca、Cb、Ccのすべての官能基を意味する。
【0033】
一様態で、前記R
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のエチレングリコール基置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群より選ばれることができる。好ましくはそれぞれ独立して高分子に連結できる反応基が導入されることができる。
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
【0034】
前記化学式8において、
LH5およびLH6はそれぞれ単座配位子であり、それぞれ独立して-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-NCCH3、-CO、-OH2、-NH3または窒素原子を一つ以上含むヘテロ環化合物であり得る。
【0035】
前記化学式9において、
LH5-LH6は二座配位子であり、カテコール、アセチルアセトン、2-ピコリン酸、2-ピリジンカルボキサミド、2,2-ビピリジンまたは2,2-ビチアゾールであり得る。
【0036】
前記L1は独立して置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数1~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のエチレングリコール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基、および置換または非置換の炭素数3~30のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれ;
前記Aaはアミン基およびアンモニウム基からなる群より選ばれる。
【0037】
本発明の一様態は前記重合体を含む酸化-還元重合体材料を電極にコートした後、コートされた電極を硬化させる段階を含む、酸化-還元高分子材料薄膜の製造方法およびこれによって製造された酸化-還元高分子材料薄膜およびそれを含む電気化学的バイオセンサに関するものである。
【0038】
また、本発明の追加一様態は、液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素と前記遷移金属錯体を含む電子伝達メディエータを含む電気化学的バイオセンサ用センシング膜に関するものである。
【0039】
酸化還元酵素は生体の酸化還元反応を触媒する酵素を総称するものであり、本発明では測定しようとする対象物質、例えばバイオセンサの場合は測定しようとする対象物質と反応して還元される酵素を意味する。このように還元された酵素は電子伝達メディエータと反応し、この時発生した電流変化などの信号を測定して対象物質を定量する。本発明に使用可能な酸化還元酵素は、各種脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、エステル化酵素(esterase)等からなる群より選ばれた1種以上のものであり得、酸化還元または検出対象物質によって、前記酵素群に属する酵素の中で前記対象物質を基質とする酵素を選択して使用することができる。
【0040】
より具体的には、前記酸化還元酵素は、グルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase)、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase)、グルコース酸化酵素(glucose oxidase)、コレステロール酸化酵素(cholesterol oxidase)、コレステロールエステル化酵素(cholesterol esterase)、乳酸酸化酵素(lactate oxidase)、アスコルビン酸酸化酵素(ascorbic acid oxidase)、アルコール酸化酵素(alcohol oxidase)、アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)、ビリルビン酸化酵素(bilirubin oxidase)等からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0041】
一方、前記酸化還元酵素は測定しようとする対象物質(例えば、対象物質)から酸化還元酵素が奪い取った水素を保管する役割をする補助因子(cofactor)を共に含み得るが、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide,FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide,NAD)、ピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone,PQQ)等からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0042】
例えば、血中のグルコース濃度を測定しようとする場合、前記酸化還元酵素としてグルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase,GDH)を使用でき、前記グルコース脱水素酵素は補助因子としてFADを含むフラビンアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(flavin adenine dinucleotide- glucose dehydrogenase,FAD-GDH)、および/または補助因子としてFAD-GDHを含むニコチンアミドアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(nicotinamide adenine dinucleotide- glucose dehydrogenase)であり得る。
【0043】
具体例で、前記使用可能な酸化還元酵素はFAD-GDH(例えば、EC 1.1.99.10等)、NAD-GDH(例えば、EC 1.1.1.47等)、PQQ-GDH(例えば、EC1.1.5.2等)、グルタミン酸脱水素酵素(例えば、EC 1.4.1.2等)、グルコース酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.4等)、コレステロール酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.6等)、コレステロールエステル化酵素(例えば、EC 3.1.1.13等)、乳酸酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.2等)、アスコルビン酸酸化酵素(例えば、EC 1.10.3.3等)、アルコール酸化酵素(例えば、EC 1.1.3.13等)、アルコール脱水素酵素(例えば、EC 1.1.1.1等)、ビリルビン酸化酵素(例えば、EC 1.3.3.5等)等からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0044】
最も好ましくは、前記酸化還元酵素は37℃緩衝液で1週間70%以上の活性度を維持できるグルコース脱水素酵素である。
【0045】
本発明によるセンシング膜は酸化還元酵素100重量部を基準として酸化-還元重合体20~700重量部、例えば60~700重量部または30~340重量部を含有することができる。前記酸化-還元重合体の含有量は酸化還元酵素の活性度に応じて適宜調節することができる。
【0046】
さらに、本発明によるセンシング膜は膜性能を高めるためにカーボンナノチューブをさらに含むことができる。具体的には、カーボンナノチューブは遷移金属錯体、特にオスミウムと共に使用時に電子伝達速度が増加してセンシング膜の性能をより高めることができる。
【0047】
また、本発明によるセンシング膜は架橋剤をさらに含むことができる。
【0048】
一方、本発明によるセンシング膜は界面活性剤、水溶性高分子、4次アンモニウム塩、脂肪酸、粘増剤などからなる群より選ばれた1種以上の添加剤を試薬溶解時の分散剤、試薬製造時の粘着剤、長期保管の安定剤などの役割のために追加で含むことができる。
【0049】
前記界面活性剤は組成物を分注する時組成物が電極上でまんべんなく広がって均一な厚さで分注されるようにする役割をするものであり得る。前記界面活性剤としてトリトンX-100(Triton X-100)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、パーフルオロオクタンスルホネート(perfluorooctane sulfonate)、ソジウムステアレート(sodium stearate)等からなる群より選ばれた1種以上を使用することができる。本発明による試薬組成物は、試薬を分注する時試薬が電極上でまんべんなく広がって試薬が均一な厚さで分注されるようにする役割を適切に行うようにするために、前記界面活性剤を酸化還元酵素100重量部を基準として3~25重量部、例えば10~25重量部の量で含有することができる。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として界面活性剤10~25重量部を含有することができ、酸化還元酵素の活性度がこれより高くなると、界面活性剤の含有量をこれより低く調節することができる。
【0050】
前記水溶性高分子は試薬組成物の高分子支持体として酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割をするものであり得る。前記水溶性高分子としてはポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone;PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、ポリフルオロスルホネート(polyperfluoro sulfonate)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose;HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose;HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose;CMC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、ポリアミド(polyamide)等からなる群より選ばれた1種以上を使用することができる。本発明による試薬組成物は、酸化還元酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を十分かつ適切に発揮するようにするために、前記水溶性高分子を酸化還元酵素100重量部を基準として10~70重量部、例えば30~70重量部の量で含有することができる。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として水溶性高分子30~70重量部を含有することができ、酸化還元酵素の活性度がこれより高くなると、水溶性高分子の含有量をこれより低く調節することができる。
【0051】
前記水溶性高分子は支持体および酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を効果的に行うために重量平均分子量が2,500g/mol~3,000,000g/mol程度、例えば、5,000g/mol~1,000,000g/mol程度であり得る。
【0052】
前記粘増剤は試薬を電極に堅固に付着するようにする役割をする。前記粘増剤としてはナトロゾール、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド(DEAE-Dextran hydrochloride)等からなる群より選ばれた1種以上を使用することができる。本発明による電気化学的センサは、本発明による酸化-還元重合体が電極に堅固に付着するようにするために、前記粘増剤を酸化還元酵素100重量部を基準として10~90重量部、例えば30~90重量部の量で含有することができる。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として粘増剤30~90重量部を含有することができ、酸化還元酵素の活性度がこれより高くなると、粘増剤の含有量をこれより低く調節することができる。
【0053】
また他の様態として、本発明はこのような有機電子伝達メディエータを含む装置、好ましくは、挿入可能な装置、例えば人体内に挿入可能な装置であり得る。また好ましくは、前記装置は電気化学的バイオセンサであり得、より好ましくは電気化学的グルコース(血糖)センサであり得る。
【0054】
具体的には、前記電気化学的バイオセンサの種類には制限がないが、好ましくは持続血糖モニタリングセンサであり得る。
【0055】
このような持続血糖モニタリングセンサの構成として、本発明は、例えば電極、絶縁体(insulator)、基板、前記酸化-還元重合体および酸化還元酵素を含むセンシング膜(sensing layer)、拡散膜(diffusion layer)、保護膜(protection layer)等を含むことができる。電極の場合、作動電極および対向電極のような2種の電極を含むこともでき、作動電極、対向電極および基準電極のような3種の電極を含むこともできる。一実施形態で、本発明によるバイオセンサは、少なくとも二つ、好ましくは二つまたは三つの電極を備えた基板に、前記化学式1の有機系電子伝達メディエータを含む酸化-還元重合体と液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素を含む試薬組成物を塗布した後乾燥して製作した電気化学的バイオセンサであり得る。例えば、電気化学的バイオセンサにおいて作動電極および対向電極が基板の互いに反対面に備えられ、前記作動電極の上に本発明による有機系電子伝達メディエータを有する酸化-還元重合体が含まれるセンシング膜が積層され、作動電極および対向電極が備えられた基板の両側面に順に絶縁体、拡散膜および保護膜が積層されることを特徴とする平面形電気化学的バイオセンサが提供される。
【0056】
具体的な様態として、前記基板はPET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)およびPI(polyimide)からなる群より選ばれる1種以上の素材からなるものであり得る。
【0057】
また、作動電極は炭素、金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができる。
【0058】
また、2電極を有する電気化学的バイオセンサの場合、対向電極が基準電極の役割までともにするので、対向電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、基準電極まで含む3電極の電気化学的バイオセンサの場合、基準電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、対向電極として炭素電極を使用することができる。
【0059】
拡散膜としてはNafion、セルロースアセテート(cellulose acetate)、シリコーンゴム(silicone rubber)を使用することができ、保護膜としてはシリコーンゴム(silicone rubber)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリウレタン(polyurethane)系の共重合体などを使用できるが、これに制限されるものではない。
【0060】
非制限的な例として、2電極である場合、対向電極が基準電極の役割までともにするので塩化銀または銀が使用され得、3電極の場合、基準電極が塩化銀または銀が使用され、対向電極は炭素電極を使用することができる。
【0061】
本発明の具体例は電気化学的バイオセンサの適用可能な例としてグルコースを測定するためのバイオセンサを例示しているが、本発明の試薬組成物に含まれる酵素の種類を異にすることによってコレステロール、ラクテート、クレアチニン、過酸化水素、アルコール、アミノ酸、グルタメートのような多様な物質の定量のためのバイオセンサに適用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を下記の実施例によってより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0063】
実験材料
参考例1.試薬および試料
【0064】
Aldrich社とAcros社、TCI社、Alfa aesar社から商業的に購入した試薬は格別な精製を行わずに使用し、エチレンジアミン、ピリジン、1-メチルイミダゾール、トリエチルアミンの場合には10mLピペットにベーシックアルミナを満たした後濾して使用した。Daejung社とSamjun社から購入した次のいくつかの溶媒は精製して使用した。無水ジクロロメタンと無水N,N-ジメチルホルムアミドは水素化カルシウムを入れて蒸留して得て、無水アセトニトリルはP2O5を用いて蒸留して得た。ジエチルエーテルはソジウムとベンゾフェノンを使用して蒸留した。分析用薄層クロマトグラフィーはMerck silica gel 60 F254glass plateを使用し、二重の短波長(254nm)/長波長(365nm)UVランプを用いて蛍光を観察した。カラムクロマトグラフィーにはAldrich basic aluminum oxideまたはAlfa neutral aluminum oxideを使用した。Screen printed carbon electrodes(SPCEs)はZensor社のSE102製品を使用した。
【0065】
参考例2.装備
【0066】
水素核磁気共鳴(1H NMR)、炭素核磁気共鳴(13C NMR)およびフッ素核磁気共鳴(19F NMR)スペクトルはVarian Inova 400(400 MHz for 1H、and 100 MHz for 13C) spectrometerを用いて得た。すべての化学的移動はテトラメチルシラン(δ0.00)や重水素化クロロホルム(δ7.26 for CDCl3 in 1H NMR,δ77.2 for CDCl3 in 13C NMR)、重水素化ジメチルスルホキシド(δ2.50 for DMSO in 1H NMR,δ39.52 for DMSO in 13C NMR)、重水素化アセトニトリル(δ1.94 for CD3CN in 1H NMR)を基準としてppm単位で示した。フッ素核磁気共鳴(19F NMR)の場合は、重水素化メタノールにトリフルオロトルエン(CF3-Ar,δ-69.27 for CD3OD in 19F NMR)を少量添加してこれを基準としてppm単位で示した。Cyclic voltammograms(CV)の測定はCH Instruments社のCHI1040Cのモデルにより測定した。よく洗浄された直径3mm炭素ガラス電極を作業電極として用いてAg/AgCl電極を基準電極として、Pt電極を相対電極として10~50mV/sの走査速度で測定した。質量スペクトルは西江大学校の有機化学研究センターでThermoFisher Scientific社のLTQ XLモデルの低分解能の場合はESI-Iontrap、高分解能の場合はESI-orbitrap質量分析器により得た。単結晶X-ray回折分析は韓国化学研究院に依頼してBruker SMART APEX IIモデルを使用して結晶構造を把握することができた。
【0067】
実施例1.PFPA高分子マトリックスを用いた酸化-還元高分子の合成
この実験の目的はペンタフルオロフェニルアクリレート(PFPA)系の高分子マトリックスから末端にアミン(-NH2)基を含む電子伝達メディエータと反応により酸化-還元高分子を合成しようとした。先にAIBNを使用してペンタフルオロフェニルアクリレート(PFPA)とジメチルアクリルアミド(DMA)を5:5の比率でラジカル重合によってDMA:PFPA高分子(P1)を合成した。
【0068】
1-1.Poly(N,N-dimethyl acrylamide-co-pentafluorophenyl acrylate)(P1)の合成
【化10】
【0069】
[DMA:PFPA高分子の合成]
ガラス培養チューブにN,N-ジメチルアクリルアミド(150mg、1.51mmol)、ペンタフルオロフェニルアクリレート(360mg、1.51mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、7mg、0.043mmol)を入れてアセトニトリル(8mL)を入れて混合溶液を作る。その後、アルゴン気体を10分間吹き込んでガラス培養チューブの中をアルゴン雰囲気に作った後80℃で12時間還流する。反応が終わった後、回転蒸発乾燥器を用いて溶媒を除去し、CH2Cl2を入れて混合溶液を作る。n-ヘキサンに混合溶液をゆっくり落として沈殿を得ることを3回繰り返して生成された高分子を精製する。沈殿物を濾してn-ヘキサンで洗浄して得た高分子を真空状態で6時間以上乾燥して白色固体形態の生成物P1を得た。(482 mg, 95%) 1H
NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.81 to 3.34 ppm (br, 7H, -CH- in the
backbone of PPFPA and -N(CH3)2 from PDMA), 2.47 to 2.65
ppm (br, 1H, -CH- in the backbone of PDMA), 1.13 to 2.22 ppm (br, 4H, -CH2-
in the backbone of PDMA and PPFPA), 19F NMR (400 MHz, CDCl3)
δ -152.90 (br, ortho), -157.21 (br, para), -162.15 (br, meta)
【0070】
合成した高分子はメタノール、アセトニトリル、アセトン、ジクロロメタンでは良い溶解度を示したが、水とジエチルエーテルでは全く溶解しなかった。
【0071】
1-2.PFPA高分子が電子伝達メディエータとGDHを固定できる高分子マトリックスとして機能できるかどうかの確認
前記実施例1-1で合成した高分子P1と末端にアミン基を含むオスミウム錯体22の間の反応進行の有無を確認するために
19F NMRにより観察した。
【化11】
【0072】
22番錯体は双性イオンがCl
-である形態で反応して錯体と高分子をすべて溶解させ得る重水素化メタノール溶媒下でNMRピークを確認した。また、22番錯体のアミン基がアンモニウム(-NH
4
+)形態で存在する場合、PFPエステルと反応できないので錯体の当量だけトリエチルアミン(TEA)を添加した。結果を
図1に示した。
図1で確認できるように、最初に
19F NMRにより高分子P1のみを確認した結果、PFPAに該当する広い形態のピーク3個が示された。その次、22番錯体を添加するとすぐにとがった形状のペンタフルオロフェノール(PFPOH)ピーク3個がさらに示されたことを観察した。これは22番錯体末端のアミンが反応して生成される副産物であるPFPOHのピークである。時間が経過するとともにPFPOHのピークが大きくなり、PFPAのピークが減る変化が示され、約36時間後にすべてのPFPAのピークが消えてPFPOHのピークだけが残った。この結果によりTPMA系のオスミウム錯体を含むアミン基ともPFPエステルが反応することができ、PFPA高分子が電子伝達メディエータとGDHを固定できる高分子マトリックスとして機能することができると判断した。
【0073】
1-3.酸化-還元重合体の合成(Redox polymer(36)および(37))
アミン官能基を含むTPMA系のオスミウム錯体22と33をPFPA高分子36と反応して酸化-還元高分子を合成した(
図2)。全体高分子鎖でオスミウム錯体を25~30%程度含み得る酸化-還元高分子を得るために当量比を計算して反応を行った。
【0074】
【0075】
NMRチューブに開始物質22(6mg、0.009mmol)を重水素化メタノール(0.5mL)に溶かす。溶かした溶液を重水素化メタノール(0.5mL)に溶けている開始物質P1(5mg)に入れて次にトリエチルアミン(1.24μL、0.009mmol)を入れる。反応進行の有無を19F NMRにより確認した後、反応溶液をジエチルエーテルにゆっくり落として沈殿を得ることを3回繰り返して生成された高分子を精製する。生成された沈殿物を濾してジエチルエーテルで洗浄した後真空状態で4時間以上乾燥して茶色固体形態の生成物36を得た。(6 mg, 64%) 19F
NMR (400 MHz, CD3OD) δ -153.38 (br, ortho), -159.74 (br,
para), -163.53 (br, meta)
【0076】
【0077】
NMRチューブに開始物質33(6.5mg、0.009mmol)を重水素化メタノール(0.5mL)に溶かす。溶かした溶液を重水素化メタノール(0.5mL)に溶けている開始物質P1(5mg)に入れて次にトリエチルアミン(1.22μL、0.009mmol)を入れる。反応進行の有無を19F NMRにより確認した後、反応溶液をジエチルエーテルにゆっくり落として沈殿を得ることを3回繰り返して生成された高分子を精製する。生成された沈殿物を濾してジエチルエーテルで洗浄した後真空状態で4時間以上乾燥して茶色固体形態の生成物37を得た。(7.2 mg, 73%) 19F
NMR (400 MHz, CD3OD) δ -154.57 (br, ortho), -160.27 (br,
para), -164.95 (br, meta)
【0078】
添加した錯体とPFPA高分子の間の反応は19F NMRによりこれ以上ピークの変化がないときまで確認して酸化-還元高分子の比率を判断した。添加したオスミウム錯体がすべて反応するのに約24~36時間が必要とされた。19F NMRにより二つの酸化-還元高分子の比率を確認した結果、酸化-還元高分子37はPFPA:PFPOHの比率が2:3で示され、オスミウム錯体が全体鎖の30%を占めて、38はPFPA:PFPOHの比率が2.2:2.8で示され、オスミウム錯体が28%程度が高分子マトリックスに含まれたものとして間接的に判断することができた。二つの高分子はすべてジエチルエーテルに沈殿により得、開始物質36高分子とは異なり酸化-還元高分子はすべて水に溶ける性質を示した。また、以下で確認したようにCVを測定した時、オスミウム錯体単量体と類似の酸化-還元電位を示した。このような結果により成功的にTPMA系のオスミウム錯体を含む酸化-還元高分子を合成したと判断した。
【0079】
1-4.C-Nリガンドを含む遷移金属錯体およびPFP高分子を含む酸化-還元重合体の合成1
【化14】
【0080】
NMRチューブに開始物質としてC-Nリガンドを含むオスミウム錯体である[Os(2-(2-pyridinyl-κN)-5-methaneamine-phenyl-κC)(4,4’-dimethyl-2,2’-bipyridine)
2]Cl
2(11mg、0.014mmol)を重水素化メタノール(0.5mL)に溶かす。溶かした溶液を重水素化メタノール(0.5mL)に溶けている開始物質PFP polymer(7:3)(17mg)に入れて次にトリエチルアミン(3.8μL、0.028mmol)を入れた。反応進行の有無を
19F NMRにより確認した後(
図3)、反応溶液をジエチルエーテルにゆっくり落として沈殿を得ることを3回繰り返して生成された高分子を精製した。生成された沈殿物を濾してジエチルエーテルで洗浄した後真空状態で4時間以上乾燥して茶色固体形態の生成物を得た。
【0081】
1-5.C-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元重合体の合成2
【化15】
【0082】
NMRチューブに開始物質[Os(2-(2-pyridinyl-κN)-5-methaneamine-phenyl-κC)(4,4’-dimethoxy-2,2’-bipyridine)
2]Cl
2(9.7mg、0.012mmol)を重水素化メタノール(0.5mL)に溶かす。溶かした溶液を重水素化メタノール(0.5mL)に溶けている開始物質PFP polymer(7:3)(15mg)に入れて次にトリエチルアミン(3.1μL、0.024mmol)を入れる。反応進行の有無を
19F NMRにより確認した後(
図4)、反応溶液をジエチルエーテルにゆっくり落として沈殿を得ることを3回繰り返して生成された高分子を精製する。生成された沈殿物を濾してジエチルエーテルで洗浄した後真空状態で4時間以上乾燥して茶色固体形態の生成物を得た。
【0083】
実施例2.酸化-還元高分子と酵素の固定およびブドウ糖に対する感応試験
オスミウム錯体を含む酸化-還元高分子と糖脱水素酵素(GDH)を混ぜた溶液をSPCEs電極の上に固定させてブドウ糖濃度による感応を確認するために次の試験を行った。
【0084】
2-1.酸化-還元高分子と糖脱水素酵素が固定された電極の製造
酸化-還元高分子0.4mgを蒸留水50μLに溶かした溶液と糖脱水素酵素(GDH)0.8mgを蒸留水50μLに溶かした溶液を混ぜた混合溶液を製造した(v/v 1:1)。この混合溶液をSPCEsの上に前記混合溶液を酸化-還元高分子37および38の場合は0.83μL、そしてC-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元高分子1および2の場合は1μLを均一に載置して常温でゆっくり乾燥させた。乾燥が終了すると混合溶液を酸化-還元高分子37および38の場合は0.83μL、そしてC-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元高分子1および2の場合は1μLを再び載置してこの過程を2回さらに繰り返した。合計2.5μL(高分子37および38)および3μL(C-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元高分子1および2)の混合溶液が載置された電極を12時間以上常温で乾燥して電極を製造した。媒介体と酵素の組成とSPCEs電極表面上の架橋方法を概略的に
図5に示した。
【0085】
2-2.ブドウ糖濃度による電流の測定
前記実施例2-1で製造された、酸化-還元高分子と糖脱水素酵素が固定された電極を10mM PBS溶液50mLに攪拌棒を入れて150rpmで攪拌してi-t curveを測定した。200秒ごとにブドウ糖を10mM PBSに溶かした溶液を一定量添加して0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、4、8、16、32、64、100mM濃度下で電流を測定して電流の変化を確認した。その結果を
図6aに示した。
【0086】
試験結果、それぞれ37および38番酸化-還元高分子を酵素と架橋させた電極はブドウ糖濃度が徐々に増加するにつれて電流も大きさが徐々に増加した。まず電流-時間グラフでは二つの電極がいずれも100mM濃度まで階段式に徐々に増加することが示され、低濃度区間(0~1mM)でもその変化が明らかに示された。また、濃度に応じて発生した電流の平均を出して電流-濃度グラフを図示した時、ブドウ糖の濃度別に発生する電流の大きさに対する相関関係を確認した。低濃度区間では一定電流の量が直線に増加したことに対して濃度が徐々に増加して16mM以上の高濃度区間では電流増加量が徐々に減少して電流値が一定に示された。これは電極で糖が酸化できる最大値に到達して電流の増加量が徐々に減少して限界触媒電流(imax)に到達したことがわかる。また、37番酸化-還元高分子が架橋した電極は1.5μA程度の最大電流を示したことに対して、38番酸化-還元高分子が架橋した電極は最大電流が0.5μA程度で37番系の電極より1/3水準で低く示された。
【0087】
前記実施例2-1で製造された、酸化-還元高分子と糖脱水素酵素が固定された電極を10mM PBS溶液50mLに攪拌棒を入れて150rpmで攪拌してi-t curveを測定した。C-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元高分子1および2を酵素と架橋させた電極は200秒ごとにブドウ糖を10mM PBSに溶かした溶液を一定量添加して0.01、0.05、0.1、0.5mMに増加する低濃度区間下で、そして1、5、10、50、100mMに増加する高濃度区間下でそれぞれ電流を測定して電流の変化を確認した。その結果を
図6b~6cに示した。
【0088】
試験結果、二つの電極はいずれも低濃度区間(0~0.5mM)と高濃度区間(0~100mM)ですべて階段式に電流の大きさが徐々に増加した。低濃度区間では一定の電流の量が直線に増加したことに対して高濃度区間では濃度が徐々に増加して50mM以上の濃度からは電流値が一定に示された。これは電極で糖が酸化できる最大値に到達したことであり、C-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元高分子1が架橋した電極は約1.0μA程度の最大電流を示し、C-Nリガンドを含む遷移金属錯体を含む酸化-還元高分子2が架橋した電極は最大電流が約0.2μA程度で示された。
【0089】
さらに、循環電圧電流の試験前後の電流変化を測定した。具体的には電流変化のために10mM PBSでの-0.5~+0.1Vで、C-Nリガンドを含む電子伝達メディエータおよびPFPAを含む酸化-還元高分子1および2の場合は-0.3~+0.4Vで測定し、その結果を
図7a~7dに示した。
図7a~7dでCVは電極完成直後に測定したものを示し、after CVはPBS溶液内で1時間攪拌した後測定した値を示す。
【0090】
以上のように、PFPAを含む酸化-還元高分子が酵素と電極表面によく固定されて低濃度区間でも明らかな感応を示し、一定の濃度までも直線の電流変化を確認することができた。また、架橋電極が100mM濃度でそれぞれ1.5μA、0.5μA、1.0μA、0.2μAの限界触媒電流を示した。これによりTPMA-オスミウム錯体系の電子伝達メディエータまたはC-Nリガンド-オスミウム錯体系の電子伝達メディエータとPFPA高分子マトリックスを用いた固定方式が血糖センサとして機能できることを証明した。
【図】
【国際調査報告】