(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】水素及び/又はヘリウムなどの流体を液化するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20240201BHJP
F25J 1/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F25J1/00 C
F25J1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543080
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2022050974
(87)【国際公開番号】W WO2022171391
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルジュー,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】デュランド,ファビアン
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA02
4D047AA03
4D047AB03
4D047AB07
4D047CA03
4D047CA09
4D047CA12
4D047CA13
4D047CA19
4D047EA00
(57)【要約】
【解決手段】 流体を液化するための装置であって、冷却される流体回路(3)を含み、冷却される流体回路(3)と熱交換する熱交換器組立体(6、7、8、9、10、11、12、13)、熱交換器組立体(6、7、8、9、10、11、12、13)の少なくとも一部と熱交換する少なくとも1つの第1の冷却システム(20)を含み、第1の冷却システム(20)は、主にヘリウムを含むサイクルガスを冷凍するためのサイクルを有する冷凍機であり、前記冷凍機(20)は、サイクル回路(14)内において、サイクルガスを圧縮するための機構(15)と、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材(16、5、6、8、10、12)と、サイクルガスを膨張させるための機構(17)と、膨張されたサイクルガスを再加熱するための少なくとも1つの部材(13、12、11、10、9、8、7、6、5)とを直列に含み、圧縮機構は、遠心圧縮機組立体(15)で構成された直列の少なくとも4つの圧縮段(15)を含み、圧縮段(15)は、モータ組立体(18)によって回転駆動されるシャフト(19、190)に取り付けられ、膨張機構は、求心タービン(17)のセットで構成された直列の少なくとも3つの膨張段を含み、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材(16、5、6、8、10、12)は、タービン(17)の少なくとも1つの出口においてサイクルガスを冷却するように構成され、タービン(17)の少なくとも1つは、膨張中に生じた機械的仕事を圧縮段(15)に供給するために、少なくとも1つの圧縮段(15)と同じシャフト(19)に結合される、装置が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び/又はヘリウムなどの流体を液化するための装置であって、ガス状流体の供給源(2)に接続されるように意図された上流側端部と、前記液化流体を回収するための部材(4)に接続されるように意図された下流側端部(23)とを有する、冷却される流体のための回路(3)を含み、冷却される流体のための前記回路(3)と熱交換関係にある熱交換器(6、7、8、9、10、11、12、13)の組立体を含み、前記熱交換器(6、7、8、9、10、11、12、13)の組立体の少なくとも一部と熱交換関係にある少なくとも1つの第1の冷却システム(20)を含み、前記第1の冷却システム(20)は、主にヘリウムを含むサイクルガスに対して冷凍サイクルを行う冷凍機であり、前記冷凍機(20)は、サイクル回路(14)内に直列に配置された以下のもの:前記サイクルガスを圧縮するための機構(15)と、前記サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材(16、5、6、8、10、12)と、前記サイクルガスを膨張させるための機構(17)と、前記膨張されたサイクルガスを加熱するための少なくとも1つの部材(13、12、11、10、9、8、7、6、5)とを含み、前記圧縮機構は、遠心型の圧縮機(15)の組立体で構成された直列の少なくとも4つの圧縮段(15)を含み、前記圧縮段(15)は、モータ(18)の組立体によって回転駆動されるシャフト(19、190)に取り付けられ、前記膨張機構は、求心型のタービン(17)の組立体で構成された直列の少なくとも3つの膨張段を含み、前記サイクルガスを冷却するための前記少なくとも1つの部材(16、5、6、8、10、12)は、前記タービン(17)の少なくとも1つの出口において前記サイクルガスを冷却するように構成され、前記タービン(17)の少なくとも1つは、前記膨張中に生じた機械的仕事を前記圧縮段(15)に供給するために、少なくとも1つの圧縮段(15)と同じシャフト(19)に結合され、前記サイクル回路(14)は、前記圧縮機構の入口における低い圧力と、前記圧縮機構の出口におけるより高い圧力との間の中間圧力レベルで前記サイクルガスの流れの一部を前記圧縮機構に戻すために、下流方向における最後のタービン以外の前記タービン(17)の1つの出口に接続された第1の端部と、上流方向における第1の圧縮段(15)以外の前記圧縮段(15)の1つの入口に接続された第2の端部とを有する戻り管(22)を含むことである、装置。
【請求項2】
前記戻り管(22)は、前記サイクルガスを冷却するための前記少なくとも1つの部材(5、6、8、10、12)及び/又は前記膨張されたサイクルガスを加熱するための前記部材(13、12、11、10、9、8、7、6、5)と熱交換関係にあることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧縮機構は、遠心型の圧縮機(15)のみを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記サイクルガスを冷却するための前記少なくとも1つの部材は、前記タービン(17)の少なくともいくつかの出口に配置された熱交換器(8、10、12)の組立体を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記サイクルガスの循環方向に沿って直列の最後のタービン(17)を除く前記タービン(17)の少なくともいくつかの出口に配置されている、熱交換器などの前記サイクルガスを冷却するためのシステム(8、10、12)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記サイクルガスの前記循環方向に沿って、直列の少なくとも2つのタービン(17)は、その直列配置の逆の順序で考慮される圧縮段(15)にそれぞれ結合され、すなわち、例えば、少なくとも1つのタービン(17)は、前記サイクル回路(14)内でそれに先行する別のタービン(17)に結合された圧縮段(15)の上流に位置する圧縮段(15)に結合されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
圧縮段(15)に結合された少なくとも1つのタービン(17)の作動圧力は、前記少なくとも1つのタービンが結合されている前記圧縮段を含む前記圧縮機(15)の作動圧力に調整され、すなわち、前記タービン(17)に入る前記サイクルガスの圧力は、前記少なくとも1つのタービンが結合されている前記圧縮機(15)の入口圧力と40%以下、好ましくは30%又は20%以下だけ異なることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
同一のシャフト(19)への前記タービン(17)及び前記圧縮段(15)の機械的結合は、結合される前記タービン(17)及び前記圧縮段(15)の同一の回転速度を確保するように構成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置がタービン(17)を含むよりも多くの圧縮段(15)を含み、各タービン(17)は、それぞれのモータ(18)によって駆動される単一のそれぞれの圧縮段(15)と同じシャフト(19)に結合され、タービン(17)に結合されない他の圧縮段(15)は、別個のそれぞれのモータ(18)によって駆動される回転シャフト(190)にのみ取り付けられることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
タービン(17)に結合される前記圧縮段(15)と、タービン(17)に結合されない前記圧縮段とは、前記サイクル回路内で直列に交互であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
16個の圧縮段(15)及び8つのタービン(17)、又は12個の圧縮段(15)及び6つのタービン(17)、又は8つの圧縮段(15)及び4つのタービン(17)、又は6つの圧縮段(15)及び3つのタービン(17)、又は4つの圧縮段(15)及び3つのタービン(17)を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記サイクル回路(14)は、タービン(17)の上流に接続された第1の端部と、下流に位置する別のタービン(17)の入口に接続された第2の端部とを有する、サイクルガスの流れのための部分的バイパス管(24)を含み、前記バイパス管(24)は、前記サイクルガスの流れの一部を最低温の下流側タービンの入口に直接移送するように構成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記熱交換器の組立体は、直列に配置される複数の熱交換器(5、6、7、8、9、10、11、12、13)であって、前記サイクル回路(14)の2つの別個の部分がそれぞれ前記サイクルガスの前記冷却及び前記加熱のために向流動作で同時に循環を行う、複数の熱交換器(5、6、7、8、9、10、11、12、13)を含み、前記複数の熱交換器は、前記サイクルガスを冷却するための部材と、前記サイクルガスを加熱するための部材(16、5、6、8、10、12)とを形成することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記熱交換器(5、6、7、8、9、10、11、12、13)の組立体の少なくとも一部と熱交換関係にある第2の冷却システムを含み、前記第2の冷却システム(21)は、液体窒素又は冷媒の混合物などの伝熱流体のための回路(25)を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の装置(1)を使用して、極低温の水素、特に液化水素を生成する方法であって、前記サイクルガスを圧縮するための前記機構(15)の前記入口における前記サイクルガスの圧力は、2~40バール(絶対圧)であり、特に8~35バール(絶対圧)である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び/又はヘリウムなどの流体を液化するための装置及び方法に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、水素及び/又はヘリウムなどの流体を液化するための装置であって、ガス状流体の供給源に接続されるように意図された上流側端部と、液化流体を回収するための部材に接続されるように意図された下流側端部とを有する、冷却される流体のための回路を含み、冷却される流体のための回路と熱交換関係にある熱交換器の組立体を含み、熱交換器の組立体の少なくとも一部と熱交換関係にある少なくとも1つの第1の冷却システムを含み、第1の冷却システムは、主にヘリウムを含むサイクルガスに対して冷凍サイクルを行う冷凍機であり、前記冷凍機は、サイクル回路内に直列に配置された以下のもの:サイクルガスを圧縮するための機構と、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材と、サイクルガスを膨張させるための機構と、膨張されたサイクルガスを加熱するための少なくとも1つの部材とを含み、圧縮機構は、遠心型の圧縮機の組立体で構成された直列の少なくとも4つの圧縮段を含み、圧縮段は、モータの組立体によって回転駆動されるシャフトに取り付けられ、膨張機構は、求心型のタービンの組立体で構成された直列の少なくとも3つの膨張段を含む、装置に関する。
【背景技術】
【0003】
水素(H2)を液化するための先行技術の解決策は、(約60%~65%の)比較的低い等温効率を得るが、かなりの投資及び高額なメンテナンス費用を費やして比較的僅かな容積のみを有するサイクル圧縮機を組み込むものである
【0004】
欧州特許出願公開第3368630A1号明細書は、水素を液化するための既知の方法を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上で概説した従来技術の欠点の全て又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的を達成するために、他の点では上記の前文で与えられた一般的な定義に従う、本発明による装置は、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材が、タービンの少なくとも1つの出口においてサイクルガスを冷却するように構成され、タービンの少なくとも1つが、膨張中に生じた機械的仕事を圧縮段に供給するために、少なくとも1つの圧縮段と同じシャフトに結合されることを本質的に特徴とする。
【0007】
その結果、容積型のサイクル圧縮機を用いて高い圧縮率を達成するように意図された先行技術の方法とは対照的に、本発明は、比較的低い圧縮率にもかかわらず、著しく高い等温効率(例えば、70%を超える、典型的には75~80%に近い)を得ることを可能にする遠心圧縮を利用する。
【0008】
加えて、先行技術とは対照的に、本発明は、特に80K~20Kのサイクルガスの膨張仕事の能動的な回収を可能にし、それにより設備の効率を高める。
【0009】
好ましくは、サイクルガスの圧縮は、完全に遠心による圧縮であり、主にヘリウムを含むか又は純粋なヘリウムで構成されたサイクル流体を使用する。これにより、このタイプの圧縮機の有利な使用と、圧縮ステーションに直接接続されたタービンの膨張仕事の機械的統合とが可能となる。
【0010】
本発明の実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数も有し得る。
- 圧縮機構は、遠心型の圧縮機のみを含み、
- サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材は、タービンの少なくともいくつかの出口に配置された熱交換器の組立体を含み、
- 装置は、サイクルガスの循環方向に沿って直列の最後のタービンを除くタービンの少なくともいくつかの出口に配置されている、熱交換器などのサイクルガスを冷却するためのシステムを含み、
- サイクルガスの循環方向に沿って、直列の少なくとも2つのタービンは、その直列配置の逆の順序で考慮される圧縮段にそれぞれ結合され、すなわち、例えば、少なくとも1つのタービンは、サイクル回路内でそれに先行する別のタービンに結合された圧縮段の上流に位置する圧縮段に結合され、
- 圧縮段に結合された少なくとも1つのタービンの作動圧力は、前記少なくとも1つのタービンが結合されている圧縮段を含む圧縮機の作動圧力に調整され、すなわち、タービンに入るサイクルガスの圧力は、前記少なくとも1つのタービンが結合されている圧縮機の入口圧力と40%以下、好ましくは30%又は20%以下だけ異なり、
- 同一のシャフトへのタービン及び圧縮段の機械的結合は、結合されるタービン及び圧縮段の同一の回転速度を確保するように構成され、
- 装置は、装置がタービンを含むよりも多くの圧縮段を含み、各タービンは、それぞれのモータによって駆動される単一のそれぞれの圧縮段と同じシャフトに結合され、タービンに結合されない他の圧縮段は、別個のそれぞれのモータによって駆動される回転シャフトにのみ取り付けられ、
- タービンに結合される圧縮段と、タービンに結合されない圧縮段とは、サイクル回路内で直列に交互であり、
- 装置は、16個の圧縮段及び8つのタービン、又は12個の圧縮段及び6つのタービン、又は8つの圧縮段及び4つのタービン、又は6つの圧縮段及び3つのタービン、又は4つの圧縮段及び3つのタービンを含み、
- サイクル回路は、圧縮機構の入口における低い圧力と、圧縮機構の出口におけるより高い圧力との間の中間圧力レベルでサイクルガスの流れの一部を圧縮機構に戻すために、タービンの1つの出口に接続された第1の端部と、第1の圧縮段以外の圧縮段の1つの入口に接続された第2の端部とを有する戻り管を含み、
- 戻り管は、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材及び/又は膨張されたサイクルガスを加熱するための部材と熱交換関係にあり、
- サイクル回路は、タービンの下流に接続された第1の端部と、下流に位置する別のタービンの入口に接続された第2の端部とを有する、サイクルガスの流れのための部分的バイパス管を含み、前記バイパス管は、サイクルガスの流れの一部を最低温の下流側タービンの入口に直接移送するように構成され、
- 熱交換器の組立体は、直列に配置される複数の熱交換器であって、サイクル回路の2つの別個の部分がそれぞれサイクルガスの冷却及び加熱のために向流動作で同時に循環を行う、複数の熱交換器を含み、前記複数の熱交換器は、サイクルガスを冷却するための部材と、サイクルガスを加熱するための部材とを形成し、
- 装置は、熱交換器の組立体の少なくとも一部と熱交換関係にある第2の冷却システムを含み、前記第2の冷却システムは、液体窒素又は冷媒の混合物などの伝熱流体のための回路を含み、
- サイクルガスは、ヘリウム又は少なくとも50%のヘリウムを含む混合物で構成され、
- サイクル回路は、タービンの少なくとも1つの入口において、所定の動作点への流体の流量を調節するように構成された入口案内翼(「IGV」)を含み、
- タービンの作動圧力は、タービンに入るサイクルガスの圧力が、前記タービンが結合されている直列の2つの圧縮機の出口圧力と30%以下、好ましくは20%以下だけ異なるように、前記タービンが結合されている圧縮機の作動圧力にそれぞれ設定される。
【0011】
本発明は、上記又は下記の特徴のいずれか1つによる装置を使用して、極低温の水素、特に液化水素を生成する方法であって、サイクルガスを圧縮するための機構の入口におけるサイクルガスの圧力は、2~40バール(絶対圧)であり、特に8~35バール(絶対圧)である、方法にも関する。
【0012】
本発明は、特許請求の範囲内の上記又は下記の特徴の任意の組み合わせを含む任意の代替的な装置又は方法にも関し得る。
【0013】
更なる特定の特徴及び利点は、図を参照して与えられる以下の説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の可能な例示的な第1の実施形態の構造及び動作を図示する部分概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の可能な例示的な第2の実施形態の構造及び動作を図示する部分概略図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の可能な例示的な第3の実施形態の構造及び動作を図示する部分概略図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の可能な例示的な第4の実施形態の構造及び動作を図示する部分概略図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の可能な例示的な第5の実施形態の構造及び動作を図示する部分概略図を示す。
【
図6】
図6は、装置の電動ターボ圧縮機の構造及び動作の可能な例を図示する、本発明の可能な例示的な第4の実施形態の詳細を図示する部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す、流体を液化するための装置1は、水素の液化を目的とするが、他のガス、特にヘリウム又は任意の混合物に適用することができる。
【0016】
装置1は、ガス状流体の供給源2に接続されるように意図された上流側端部と、液化流体を回収するための部材4に接続されるように意図された下流側端部23とを有する、冷却される流体(特に水素)のための回路3を含む。供給源2は、典型的には、電解槽、水素分配ネットワーク、水蒸気メタン改質(SMR)ユニット又は他の任意の好適な供給源を含み得る。
【0017】
装置1は、冷却される流体のための回路3と熱交換関係で直列に配置された熱交換器6、7、8、9、10、11、12、13の組立体を含む。
【0018】
装置1は、熱交換器5、6、7、8、9、10、11、12、13の組立体の少なくとも一部と熱交換関係にある少なくとも1つの冷却システム20を含む。
【0019】
この第1の冷却装置20は、主にヘリウムを含むサイクルガスに対して冷凍サイクルを行う冷凍機である。この冷凍機20は、サイクル回路14(好ましくは閉ループ)内に直列に配置された以下のもの:サイクルガスを圧縮するための機構15と、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材16、5、6、8、10、12と、サイクルガスを膨張させるための機構17と、膨張されたサイクルガスを加熱するための少なくとも1つの部材13、12、11、10、9、8、7、6、5とを含む。
【0020】
結果として、液化される流体(例えば、水素)は、サイクルガスの流体(例えば、ヘリウム及び場合により1つ又は複数の他の成分)とは別の流体である。
【0021】
したがって、好ましくは、これらの2つの回路は、別個のものである。
【0022】
図示のように、液化される水素を冷却する熱交換器の組立体は、好ましくは、直列に配置された1つ又は複数の向流熱交換器5、6、8、10、12であって、サイクル回路14の2つの別個の部分が(それぞれサイクルガスの別々の流れの冷却及び加熱のために)向流動作で循環を同時に行う、1つ又は複数の向流熱交換器5、6、8、10、12を含む。
【0023】
すなわち、この複数の向流熱交換器は、サイクルガスを冷却するための部材(例えば、圧縮後及び膨張段後)と、サイクルガスを加熱するための部材(膨張後及び圧縮機構に戻る前)との両方を形成する。
【0024】
圧縮機構は、直列に(場合により並列に)配置される遠心型の圧縮機の組立体で構成された少なくとも4つの圧縮段15を含む。
【0025】
圧縮段15は、電動式遠心圧縮機のホイールで構成され得る。
【0026】
圧縮段15(すなわち圧縮機ホイール)は、モータ18(少なくとも1つのモータ)の組立体によって回転駆動されるシャフト19、190に取り付けられる。好ましくは、全ての圧縮機15が遠心型である。
【0027】
膨張機構に関しては、少なくとも一部が直列に配置される求心型タービン17で形成された少なくとも3つの膨張段を含む。例えば、圧縮段の数(例えば、圧縮ホイールの数)は、膨張段の数(例えば、膨張ホイールの数)よりも多い。好ましくは、全てのタービン17は、求心型であり、主に直列に配置される。
【0028】
サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材16、5、6、8、10、12は、特に、タービン17の少なくとも1つの出口においてサイクルガスを冷却するように構成される。すなわち、タービン17内での膨張後、サイクルガスは、典型的には、2K~30Kの値だけ冷却することができる。
【0029】
加えて、タービン17の少なくとも1つは、膨張中に生じた機械的仕事を圧縮機に供給するために、圧縮機の圧縮段15と同じシャフト19に結合される。
【0030】
この特定の技術的特徴(遠心圧縮、求心膨張、タービンから圧縮機への仕事の伝達など)の組み合わせは、ヘリウムを含むサイクルガスで可能である。具体的には、これにより、伝熱流体(ヘリウム系のサイクルガス)を用いる方法と、液化される流体(例えば、水素)の送出温度とを無相関(無関係)にすることが可能となる。これにより、特にサイクル回路14において、サイクルガスの低圧レベルの値を既知の装置での値よりも高い圧力まで高めることが可能となる。これは、サイクルガスの比較的低い全体的な圧縮率にもかかわらず可能である。この遠心圧縮技術は、一般に、1段当たりの圧縮率に制限があるため、先行技術では水素の液化に推奨されない。
【0031】
結果として、装置1は、1つ又は複数の電動ターボ圧縮機を圧縮ステーションの一部に含み得る。電動ターボ圧縮機は、モータを含む組立体であり、そのシャフトは、圧縮段(ホイール)の組立体と、膨張段(タービン)の組立体とを直接駆動する。この電動ターボ圧縮機は、サイクルガスの1つ又は複数の圧縮機において機械的膨張仕事を直接利用する。
【0032】
例えば、図示のように、装置1は、タービン17よりも多い、例えば2倍又は約2倍の圧縮段15を含む。各タービン17は、それぞれのモータ18によって駆動される単一のそれぞれの圧縮機ホイール15と同じシャフト19に結合することができる。タービン17に結合されない1つ又は複数の他の圧縮機ホイール(段)15は、別個のそれぞれのモータ18(電動圧縮機)によって駆動される回転シャフト190にのみ取り付けることが可能である。
【0033】
図示のように、タービン17に結合される圧縮段15と、タービン17に結合されない圧縮機とは、サイクル回路14内で直列に交互であり得る。
【0034】
好ましくは、圧縮機構は、直列の7つ以上の圧縮段を含む。当然のことながら、これは、例えば、水素の液化を可能にする、直列の3つの圧縮段を備えたあまり有効でない構成を想定することも可能であるため、決して限定的ではない。水素の液化を達成するための最小圧縮率(遠心技術による)は、好ましくは、約1.3~1.6であるべきである。
【0035】
直列の4つの圧縮段15により、ヘリウムの比較的大きい質量流量を犠牲にして、特にピストン圧縮の既知の解決策と比較して非常に良好な等温効率を得ることが可能となる。
【0036】
図1に図示する非限定的な例では、4つの圧縮段15及び3つのタービン17のみが示されているが、装置1は、8つの圧縮段15と、4つのタービン17とを含むことができる。他の任意の分配配置、例えば16個の圧縮段15及び8つのタービン17、又は12個の圧縮段及び6つのタービン、又は6つの圧縮段及び3つのタービン、又は4つの圧縮機及び3つのタービンなどを想定することができる。
【0037】
冷却は、圧縮段の全て若しくは一部の下流側又は圧縮機15の全て若しくは一部の下流側で(例えば、伝熱流体若しくは他の任意の冷媒により冷却される熱交換器16を介して)行うことができる。この冷却は、各圧縮段後、又は図示のように2つ(以上)の圧縮段15ごと、又は圧縮ステーションの下流側のみで行うことができる。意外にも、直列の各圧縮段15の出口ではなく、2つ(又は3つ)の圧縮段15ごとのこの冷却の分配により、装置1のコストを依然として抑制しながら冷却性能を得ることが可能となる。
【0038】
同様に、サイクルガスを冷却するための少なくとも1つの部材は、好ましくは、直列のタービン17の少なくともいくつかの出口に配置されている、熱交換器などのサイクルガスを冷却するためのシステム8、10、12を含む。
【0039】
この中間の膨張間冷却により、サイクルガスの最低温度に達するのに必要な高圧の値を制限することが可能となる。
【0040】
図示のように、装置1は、好ましくは、サイクルガスの循環方向に沿って直列の最後のタービン17を除く全てのタービン17の出口において、熱交換器などのサイクルガスを冷却するためのシステムを含む。図示のように、この冷却システムは、前述のそれぞれの向流熱交換器8、10、12により提供することができる。
【0041】
膨張後のこの冷却により、冷却される流体の冷気を抽出するための温度の段階的設定が可能となる(すなわち各膨張段後、明らかに異なる更に低い温度に達することが可能となる)。この温度の段階的設定は、この配置又はこれらの様々なタービン17への供給のために得られる最小圧縮率により得られる。
【0042】
複数の遠心圧縮段15を上流に直列に配置することにより、下流側での冷却の十分な段階的設定を可能にするこの圧力差を得ることが可能となる。具体的には、同じ圧力差の場合、温度が低下するほど、膨張中のエンタルピーにおける一定のエントロピー降下が減少する。タービン17の直列配置とタービンの出口での冷却8、10の効果は、既知の従来の段階的設定と比較してタービン17における平均質量流量を増加させることである。理論上の等エントロピー効率は、増加する傾向があり、したがってタービン17のより良好な効率を得ることを可能にする。
【0043】
特に、膨張段間の冷却8、10により、更に大きい全体的な圧縮率を必要とせずに、サイクル流体が目標液化温度に達することが可能となる。膨張は、好ましくは、等エントロピー又は実質的に等エントロピーである。すなわち、サイクル流体が徐々に冷却され、流体が液化する。
【0044】
その結果、実質的に等エントロピーの最後の膨張段の出口(すなわち最後の膨張タービン17の下流側)において直接最低温度に達する。そのため、例えばジュールトムソン型の膨張弁を下流に追加で設ける必要がない。液化される水素の低温、特に過冷却温度は、タービン17のみを用いて得ることができる(仕事の抽出)。
【0045】
好ましくは、タービン17のほとんど又は全ては、1つ又は複数のそれぞれの圧縮機15に結合される。
【0046】
例えば、サイクルガスの循環方向に沿って、連続するタービン17は、好ましくは、その直列配置の逆の順序で考慮される圧縮機の圧縮段15に結合される。換言すれば、例えば、タービン17は、それに先行するタービン17に結合された圧縮機15の上流に位置する圧縮機15に結合される。
【0047】
そのため、結合されるタービン17及び圧縮機の接続順序は、好ましくは、タービンと圧縮機との間で少なくとも一部が逆にされる(サイクル回路内では、更に上流側のタービンが更に下流側の圧縮機に結合される)。
【0048】
したがって、例えば、直列の6つの圧縮段15と、直列の3つの膨張段とを備えたアーキテクチャの場合、第1のタービン17(すなわち圧縮機構後の第1のタービン17)を第5の圧縮機15(第5の圧縮段)に直列に結合することができる一方、第2のタービン17を第3の圧縮機15(第3の圧縮段)に直列に結合することができ、第3のタービン17を第1の圧縮機15(第1の圧縮段)に直列に結合することができる。他の圧縮段を形成する他の圧縮機15がタービン(電動圧縮機システムであり、電動ターボ圧縮機ではない)に結合されないことが可能である。その結果、最も強力なタービン17(最も下流側のタービン)を第1の圧縮段(サイクルの低圧下にある第1の圧縮段の吸入口)に結合することができる。この比較的低い圧力レベルでは、圧縮機15の圧縮率が大きくなるほど、そのレベルでの圧力降下の影響が感じられなくなる(他の圧縮機15でも同様ある)。
【0049】
当然のことながら、上記の例は、決して限定的ではない。例えば、タービン17は、それぞれ偶数の圧縮機15に結合するか(第1のタービンを第6の圧縮機と、第2のタービンを第4の圧縮機となど)、又は圧縮機と直接直列に結合する(例えば、第1のタービン17を第6の圧縮機15と、第10のタービンを第5の圧縮機となど)ことができる。
【0050】
好ましくは、タービン17の作動圧力は、タービン17が結合される圧縮機15の作動圧力にそれぞれ設定される。換言すれば、タービン17に入るサイクルガスの圧力は、タービン17が結合された圧縮機15の出口圧力と40%以下、好ましくは30%又は20%以下だけ異なる。これにより、圧縮機ホイール15とタービン17とを直接結合する対象のモータ18の出力シャフト19にかかる軸方向荷重を低減することが可能となる。
【0051】
例えば、結合された少なくとも1つのタービン17及び対応する圧縮段は、タービン17から流出するサイクルガスの圧力が圧縮段15の入口におけるサイクルガスの圧力と40%以下、好ましくは30%又は20%以下だけ異なるような構造的構成を有する。
【0052】
同様に、結合された少なくとも1つのタービン17及び対応する圧縮段は、好ましくはまた(又は場合により代替的に)タービン17に入るサイクルガスの圧力が圧縮段の出口におけるサイクルガスの圧力と40%以下、好ましくは30%又は20%以下だけ異なるような構造的構成を有する。
【0053】
この特定の技術的特徴(遠心圧縮、求心膨張、タービンから圧縮機への仕事の伝達、結合された圧縮ホイールと膨張ホイールとの間の圧力の調節)の組み合わせにより、既知の解決策と比較して装置の効率が向上する。
【0054】
タービン(例えば、タービンホイール)及び圧縮段(例えば、圧縮ホイール)のこの構造的構成は、これらの2つの要素が、上で指定した値と同じ又は同様の絶対値の圧縮及び膨張をそれぞれ行うような寸法(適切な場合、ホイール及び/又は2つの要素の渦巻き構造及び/又は2つの要素の入口分配器の形状及び/又は寸法)とされることを意味する。すなわち、設計により、これらの2つの結合要素は、(サイクル回路内で別の能動的又は受動的要素を使用せずに)、好ましくは、サイクルガスの流れの状態にかかわらず、これらの圧縮比及び膨張比に達することができる。
【0055】
例えば、圧縮段に結合された少なくとも1つのタービン17の終端における膨張率は、タービン17が結合された圧縮段15の終端における圧力の上昇値と40%を超えて(又は20%を超えて)異ならない値だけサイクルガスの圧力を低下させるように構成することができる。
【0056】
例えば、圧縮機15が、タービン17に結合され、10バール~15バールで動作する(最初に10バールである流れが出口圧力15バールまで圧縮される)場合、タービン17がこの流れを15~10バール(入口では15バール、出口では10バール)の圧力まで膨張させることが有利である。
【0057】
これにより、軸方向の力を支えるシャフト19の軸方向の力の分配及びバランスが改善される。
【0058】
ホイール15、17の終端における圧力差により発生する力の符号が逆であるため、これにより軸方向の力の合力が減少する傾向がある。
【0059】
これは、好ましくは、複数のタービンが1つ又は複数の圧縮機15に直列に結合される場合にも当てはまる。
【0060】
したがって、図示のように、膨張機構は、直列の求心型タービン17の組立体で構成された直列の少なくとも2つの膨張段を含み得る。
【0061】
加えて、上述のように、サイクルガスの循環方向に沿って、直列の少なくとも2つのタービン17は、好ましくは、その直列配置の逆の順序で考慮される圧縮段15にそれぞれ結合される。すなわち、少なくとも1つのタービン17は、サイクル回路14内でそれに先行する別のタービン17に結合された圧縮段15の上流に位置する圧縮段15に結合される。
【0062】
好ましくは、装置は、n個のタービン(膨張ホイール又は膨張段)と、k個の圧縮機ホイール又は圧縮機段とを含み、ここで、k≧nである。したがって、各タービン17の終端において選択される膨張率は、好ましくは、(上で説明したように)タービン17が結合される圧縮機の関数として与えられる。
【0063】
タービン17に結合される圧縮機15と、タービンに結合されない圧縮機15との交互配列で示す例では、タービン17の作動圧力は、圧縮機15の作動圧力に「1つずつ」又は「2つずつ」設定することができる(すなわち、第1のタービン17は、第5又は第6の圧縮機15の圧縮率で作動し、同様に、第2のタービン17は、第3又は第4の圧縮機の圧縮率などで作動する)。直列の2つの圧縮機15の対(タービンに結合される圧縮ホイールを備えた圧縮機の後に、タービンに結合されない圧縮ホイールを備えた圧縮機が続く)を考慮すると、これらの2つの圧縮機の第1の圧縮機は、例えば、サイクルガスを第1の圧力PAに圧縮する一方、第2の圧縮機は、このサイクルガスを第2の圧力PBに圧縮し、ここで、PB>PAである。これらの2つの圧縮機の第1の圧縮機に結合されるタービン17は、好ましくは、第2の圧力PBから第1の圧力PAにサイクルガスを膨張させる。これは、例えば、この制約に従ってこのタービン17の特性を調整することにより達成することができる。例えば、タービン17に達する流量を校正する分配器の断面積の調整が生じ、これは、分配器部及びタービンのホイール部での結果として生じる圧力降下に影響を及ぼす。
【0064】
その結果、例えばタービンが直列の2つ置きの圧縮段に結合される場合、結合された膨張段と圧縮段との間の上で詳細に説明した圧力関係(入口/出口)は、タービンを支える圧縮段に又は直列の2つの圧縮機ホイールの組立体にのみ適用することができる。
【0065】
加えて、同一のシャフト19へのタービン17及び圧縮段15の1箇所又は複数箇所での機械的結合は、好ましくは、結合されるタービン17及び圧縮段15の同一の回転速度を確保するように構成される。これにより、装置内での膨張仕事を直接有効に利用することが可能となる。適切な場合、全ての圧縮機及びタービンホイールの回転速度を同一の決定値と等しくすることができる。
【0066】
任意選択的に、制御部材が圧縮段の全て又は一部に設けられ得る。例えば、少なくとも1つの圧縮段を駆動する各モータ18に可変周波数駆動部(「VFD」)を設けることができる。これにより、1つ又は複数の圧縮段の上流側の可変ブレードセットに連結された複雑な歯車系又は駆動部及び特定の制御手段を使用せずに、複数の圧縮段又は各圧縮段の速度、したがって膨張を個別に調整することが可能となる。この速度制御部材は、圧縮機の組立体に又は各圧縮段に設けられ得る。
【0067】
好ましくは、装置1は、圧縮段間、膨張段間又はサイクルの膨張の下流側の、回路内の圧力を低下させる(圧力降下)ための流量弁又は弁を含まない。その結果、メンテナンスのための遮断弁のみをサイクル回路14内に設けることが可能である。
【0068】
すなわち、タービン17の動作点(速度、圧力)は、タービン17の寸法特徴によってのみ調節することができる(例えば、タービン入口に絞り弁がない)。これにより、装置の信頼性が高まる(弁がないため、プロセスを制御するための弁の故障に伴う潜在的な問題が生じない)。これにより、高価な補助回路(安全弁など)を省略することも可能となり、製造が簡略化される(遮断すべきラインの数が低減されるなど)。
【0069】
ヘリウム系サイクルガスの使用により、プロセス内で準常圧領域が生じるリスク(これは、サイクル流体が水素である場合に危険である)なしに、且つ冷熱源の凍結のリスク(ヘリウムの最大液化温度は5.17Kと等しい)なしに、液化水素を過冷却することを目的とする温度に達することが可能となる。液化水素を過冷却する効果には、水素分子の輸送系にとって極めて顕著な利点があり、したがって搬送中のボイルオフガスの低減により、潜在的にユーザ(典型的には液体ステーション)にとっても利点がある。
【0070】
したがって、冷熱源を結晶化させずに、液化される水素の流れのゲル点(13K)に達することが可能である。
【0071】
サイクル回路14の低圧部分は、比較的高圧で動作させることができる。これにより、熱交換器6、7、8、9、10、11、12、13内の体積流量を減少させることが可能となる。したがって、サイクルガスの作動圧力と冷却される流体の目標圧力又は目標温度とを無相関にすることができる。したがって、このサイクルガスの圧力は、ターボ機械の応力に適応するように上昇させることができるが、概して熱交換器の寸法に影響を及ぼす主要なパラメータの1つである、低圧での体積流量を減少させるためにも上昇させることができる。
【0072】
サイクル回路14内のこの低圧レベルは、例えば、10バール以上であり、典型的には10バール~40バールであり得る。これにより、熱交換器内の体積流量が減少し、1圧縮段当たりの低い圧縮率の平衡が保たれる。
【0073】
図示のように、装置1は、例えば、サイクルガスと熱交換関係にある熱交換器5の組立体の少なくとも一部と熱交換関係にある第2の冷却システムを含み得る。この第2の冷却システム21は、例えば、第1の向流熱交換器又は複数の向流熱交換器を通して、液化されるサイクルガス及び/又は水素を冷却する液体窒素又は冷媒の混合物などの伝熱流体のための回路25を含み、また少なくとも1つの予冷用熱交換器5を介して、
図1に図示するように、1つ又は複数の伝熱流体を閉ループ内で循環させることにより生じる、温端部での変位損失を防ぐことを可能にすることもできる。
【0074】
この第2の冷却システム21は、例えば、液化される流体及び/又は作動ガスを圧縮機構の出口において予冷することを可能にする。伝熱流体のための回路25内(例えば、ループ内)を循環するこの冷媒は、例えば、この冷媒を生成及び/又は貯蔵する28ためのユニット27により供給される。適切な場合、冷却される流体のための回路3は、上流側で予冷されるようにこのユニット27を経由して通過する。装置1が1つ又は複数の他の追加の冷却システムを有することがあり得ることに留意されたい。例えば、チラーにより提供される第3の冷却回路(例えば、典型的には5℃~-60℃の温度の冷熱源を供給する)は、前述のシステムに加えて設けられ得る。必要に応じて、装置1に再び冷気を供給して装置1の液化動力を増加させるために、第4の冷却システムを設けることもできる。
図2の実施形態は、サイクル回路14が、(下流方向における最後のタービン17以外の)タービン17の1つの出口に接続された第1の端部と、(上流方向における)第1の圧縮機15以外の圧縮機15の1つの出口に接続された第2の端部とを有する戻り管22を含むという点のみで、前述の実施形態と区別される。この戻り管22により、圧縮機構の入口における低い圧力と、圧縮機構の出口におけるより高い圧力との間の中間圧力レベルでサイクルガスの流れの一部を圧縮機構に戻すことが可能となる。
【0075】
戻り管22は、向流熱交換器の少なくとも一部と熱交換関係にあり得る。中間圧力下の圧縮ステーションへの複数の戻り管は、有利には、プロセスの最適化の予測レベルに従って設置され得る。例えば、(対象とするタービンにおける)排出点と(対象とする圧縮段における)注入点は、異なる圧力レベルの下に位置し得る。
図3の実施形態は、サイクル回路14が、タービン17(例えば、上流方向における第1のタービン17)の上流に接続された第1の端部と、下流に位置する別のタービン(例えば、第3のタービン)の入口に接続された第2の端部とを更に含むという点でのみ、前述の実施形態と区別される。例えば、バイパス管24は、圧縮機構から高圧で流出するサイクルガスの流れの一部を更に下流側の最低温のタービンに向けて迂回させることを可能にする。残りの流れは、このより高温の第1の上流側タービン17に入る。これにより、様々なタービン及び圧縮機の比速度の点での位置決めに応じて、様々な段に送られる流量を調整することが可能となる。例えば、高圧下に位置する圧縮機は、(プロセスの低圧の近傍に位置する)第1の圧縮段よりも低い体積流量を受け取る。この体積流量を増加させ、したがって等エントロピー効率を潜在的に高める1つの方法は、
図3に示すように、膨張段からの中間圧力での戻りを組み込むことである。
図4に示す装置1は、更に別の非限定的な実施形態を図示する。上で説明した要素と同一の要素を同一の参照符号で表し、再び詳細に説明しない。
【0076】
図4の装置のサイクル回路14は、3つの圧縮機(3つのモータ18によりそれぞれ駆動される)を含む。図示のように、各圧縮機は、4つの圧縮段15(すなわち直列の4つの圧縮ホイール)を有し得る。これらの圧縮機ホイール15は、対象のモータ18のシャフト19の一端部に直接結合することにより取り付けられ得る。したがって、この例では、装置は、直列の12個の遠心圧縮段を含む。図示のように、サイクルガスの冷却26は、2つの圧縮段ごとに提供され得る。
【0077】
この例では、装置1は、直列の5つの膨張段(6つの求心タービンホイール、そのうちの2つは、並列に配置される)を有し、例えば1圧縮機当たり1つ又は2つの膨張段を有する。図示のように、全てのタービン17は、圧縮機シャフト19に結合され得る(例えば、2つのタービン17は、各モータ18のシャフト19の他端部に取り付けられ、同じくこのシャフト19に取り付けられる圧縮機ホイール15に機械的仕事を供給する)。当然のことながら、タービン17は、シャフト19の圧縮ホイール15と同じ側に位置することができる。例えば、4つの第1の膨張段は、直列の4つのタービン17で形成される。第5の膨張段は、例えば、サイクル回路14の並列の2つの分岐部にそれぞれ配置された2つのタービン17で形成される。
図5に示す装置1は、中間圧力レベル(中圧)でタービン17から流出するサイクルガスの一部を圧縮機構に移送するサイクルガスのための戻りライン122、123、124を装置1が含むという点で
図4の装置と区別される。例えば、ライン124は、第1のタービンの出口を第8の圧縮段の出口に接続する。同様に、ライン123は、第2のタービンの出口を第6の圧縮段の出口に接続する。同様に、ライン122は、第3のタービン17の出口を第4の圧縮段の出口に接続する。当然のことながら、装置は、これらの中圧戻りラインを1つのみ又は2つのみ有することができる。同様に、他の戻りラインも想定することができる。加えて、これらのラインの端部(他のタービンの出口及び他の圧縮段の出口)を変更することができる。
【0078】
この又はこれらの戻りにより、過剰な流量で供給される圧縮機の体積流量を増加させ、したがって圧縮機の等エントロピー効率を潜在的に高めることが可能となる。
【0079】
図6に示す装置1は、電動ターボ圧縮機装置の構造及び動作の非限定的な可能な例を示す装置1の詳細を図示する。モータ18のシャフト19の一端部は、4つの圧縮機ホイール(4つの圧縮段15)を駆動する。シャフト19の他端部は、2つの膨張段(2つのタービン17)に直接結合される。
【0080】
当然のことながら、圧縮段15及び膨張段17の他の任意の好適なタイプの配置(数及び分配配置)も想定することができる(モータの数についても同様である)。
【0081】
結果として、他の修正形態も可能である。
【0082】
したがって、タービン17について、特に下流側タービン(最低温のタービン)について様々な構成が可能である。
【0083】
例えば、既に説明したように、最後の2つの膨張段(2つのタービン)は、直列ではなく並列に設置することができる。これにより、これらのタービンの終端におけるエンタルピーのより大幅な低下を生じさせることが可能となる。これが実現されると、(2つのタービンが流量の100%を共有し、利用可能な圧力の差がほぼ2倍になるため)効率が損なわれる。これら最後の2つの膨張段でのこの効率の潜在的な低下にもかかわらず、エンタルピーの大幅な低下を実現することにより、膨張のより効果的な段階的設定を可能にすることができる。
【0084】
これは、より高温のタービンの場合よりも小さい、タービンの終端での温度変化が、同じ低温エンタルピー差によって生じるためである。これにより、冷凍及び液化プロセスの効率が高まる。その結果、タービンの終端における比較的小さい温度差にもかかわらず、装置の効率により、良好なエネルギー効率で水素を液化することが可能となる。
【0085】
タービン17により生じる温度差は、タービン17の上流側のサイクルガスの温度の関数であり得る。
【0086】
バッファタンク(図示せず)及び弁の組立体、冷却回路にガスを充填するための最大圧力を制限する目的のため、好ましくは低圧レベルで設けられ得る。好ましくは、最小圧縮率は、圧縮ステーションの終端において1.3~1.6である。サイクルガスは、例えば、100%又は99%ヘリウムで構成され、水素により補われ得る。
【0087】
サイクル回路は、タービン17の少なくとも1つの入口において、所定の動作点への流体の流量を調節するように構成された入口案内翼(「IGV」)を含み得る。
【0088】
加えて、圧縮機ホイール15及び/又はタービン17の配置は、上記の例に限定されるものではない。結果として、圧縮機15の数及び配置が修正され得る。例えば、圧縮機構は、3つの圧縮機のみで構成することができ、各圧縮機には、複数の圧縮段、例えば3つの圧縮段、すなわち3つの圧縮機ホイール(段間冷却の有無にかかわらず)を設けることができる。
【0089】
同様に、2つの圧縮段15は、他の圧縮段(例えば、直列の3つの圧縮段)と並列及び直列に配置することができる。並列の2つの圧縮段は、他の圧縮段の上流に配置され、したがって全て同一であり得る機械を使用して比較的高い流量を低圧で下流方向に供給することができる。
【0090】
同様に、タービン17をサイクル回路14内に並列に配置することができる。
【0091】
加えて、既に説明したように、全てのタービンを1つ又は複数の圧縮機ホイールに結合することができる(例えば、1つ又は複数のタービン17は、1つ又は複数の圧縮段と同じシャフト19に結合される)。
【0092】
図示のように、冷却される流体のための回路3は、例えば、水素(オルト水素からパラ水素へ)の変換のために、熱交換器又は熱交換器のセクション29の外側に1つ又は複数の触媒部材(ポット280)を有することができる。
【国際調査報告】