(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】時計ムーブメントの複数の機能を制御するための部材
(51)【国際特許分類】
G04B 3/04 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G04B3/04 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543388
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2022051007
(87)【国際公開番号】W WO2022175002
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521486103
【氏名又は名称】マニュファクテュール ドゥ オルロジュリー オーデマ ピゲ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パピ、ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス、ホセ - マヌエル
(57)【要約】
本発明は、時計ムーブメントの複数の異なる機能の制御部材の制御部材1に関し、制御部材1は、竜頭2と少なくとも回転時に竜頭2と一体化するように設計された制御心棒3とを有し、制御心棒3は回転時に第1の機能の第1の作動デバイスと一体になり、竜頭2は、順に、圧力に応答して、軸方向並進的に休止位置と、第1の機能とは異なる第2の機能が作動させられる押下位置と、の間で可動であるように、且つ、竜頭2への圧力がなくなったときに竜頭の休止位置に復帰するように設計され、竜頭2はまた、休止位置で、少なくとも一方向の軸回転時に、竜頭2の前記方向の回転により前記制御心棒3の回転で前記第1の機能を作動させるように、少なくとも1つの安定角度位置と少なくとも1つの作動角度位置との間で可動であるように設計される。制御心棒3は、同様に軸方向並進的に前記竜頭2と一体になり、その結果、竜頭2がその押下位置にまで移動する間、軸方向並進的に竜頭2と共に可動であるように、且つ、軸方向並進的に第1の作動デバイスに対して自由になるように設計され、制御心棒3は、竜頭2がその押下位置にまで移動する間、第2の機能を作動させるために前記第2の機能の第2の作動デバイスと協働するように設計される。本発明はまた、少なくとも1つのそのような制御部材を有する時計にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントの複数の異なる機能の制御部材(1)であって、前記制御部材(1)は、竜頭(2)と、少なくとも回転時に前記竜頭(2)と一体化するように設計された制御心棒(3)とを有し、前記制御心棒(3)は、回転時に第1の機能の第1の作動デバイスと一体であり、前記竜頭(2)は、前記竜頭(2)上への圧力に応じて、順に、休止位置と、前記第1の機能とは異なる第2の機能が作動する押下位置との間で軸方向並進的に可動であるように、また前記竜頭(2)上への前記圧力がなくなったときに前記休止位置に戻るように設計され、前記竜頭(2)はまた、前記休止位置において、少なくとも1つの安定角度位置と少なくとも1つの作動角度位置との間で少なくとも一方向に軸回転的に可動であるように設計され、それにより、前記竜頭(2)を前記方向に回転させることによって前記制御心棒(3)の回転を介して前記第1の機能を作動させる、制御部材(1)において、
前記制御心棒(3)は、前記竜頭(2)がその押下位置に移動している間、同様に軸方向並進的に前記竜頭(2)と一体であり、それにより前記竜頭(2)と共に軸方向並進的に可動であるように、また前記竜頭(2)がその押下位置に移動している間、前記第1の作動デバイスに対して軸方向並進的に自由であるように設計され、また
前記制御心棒(3)は、前記竜頭(2)がその押下位置に移動している間、前記第2の機能を作動させるように前記第2の機能の第2の作動デバイスと協働するように設計されていることを特徴とする、制御部材(1)。
【請求項2】
セキュリティデバイスを含み、前記セキュリティデバイスは、前記竜頭が安定角度位置にないときに前記竜頭(2)の前記軸方向並進を妨げるように、また前記竜頭がその休止位置にないときに、特に前記竜頭がその押下位置にあるときに前記竜頭(2)の前記軸回転を妨げるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の制御部材(1)。
【請求項3】
前記竜頭(2)が、ヘッド(8)、及び前記ヘッド(8)と一体のスカート(10)を有すること、及び
前記セキュリティデバイスが、前記スカート(10)の側壁に形成された少なくとも1つの軸方向切欠き(28)を有し、前記竜頭がその休止位置にないときに、特に前記竜頭がその押下位置にあるときに前記竜頭(2)の前記軸回転を妨げるために、前記切欠き(28)内に固定ピン(30)が係合することが意図されていること
を特徴とする、請求項2に記載の制御部材(1)。
【請求項4】
前記スカート(10)は、前記竜頭(2)が前記休止位置にあるときに前記スカートの堅い下方縁部(10a)が前記ピン(30)に実質的に当接することが意図されるように設計され、それにより、前記切欠き(28)が前記ピン(30)と対向しない限り、前記竜頭(2)の前記押下位置に向かう軸方向並進的な移動を妨げることを特徴とする、請求項3に記載の制御部材(1)。
【請求項5】
前記制御心棒(3)が溝(32)を有すること、及び
前記第2の作動デバイスが、前記溝(32)内に係合される引抜きピース(34)であって、前記第2の機能を作動させるように設計された引抜きピース(34)を有すること
を特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の制御部材(1)。
【請求項6】
前記第2の機能がクロノグラフ機能のうちの1つであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の制御部材(1)。
【請求項7】
前記制御心棒(3)が四角部(36)を有すること、及び
前記第1の作動デバイスが、前記制御心棒(3)と回転的に一体に前記四角部(36)に取り付けられる四角穴を備えた中間歯車(38)を有し、前記中間歯車(38)は、前記第1の機能を作動させるように設計されていること
を特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の制御部材(1)。
【請求項8】
前記第1の機能が選択機能であること、及び
前記少なくとも1つの作動角度位置が、機能を選択するための位置に対応する安定角度位置であること
を特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の制御部材(1)。
【請求項9】
前記竜頭(2)及び前記制御心棒(3)は、第1の機能選択位置に対応する第1の中央安定角度位置と、第2の機能選択位置に対応する第2の安定角度位置である作動角度位置との間で一方向に軸回転的に可動であるように、また、前記第1の中央安定角度位置と、別の作動角度位置との間で逆方向に軸回転的に可動であるように設計され、前記別の作動角度位置が、第3の機能選択位置に対応する第3の安定角度位置であることを特徴とする、請求項8に記載の制御部材(1)。
【請求項10】
前記セキュリティデバイスが、前記制御部材(1)の前記3つの安定角度位置に対応するように前記竜頭(2)の前記スカート(10)にわたって分布する3つの切欠き(28)を有することを特徴とする、請求項3及び9に記載の制御部材(1)。
【請求項11】
前記第1の機能が機構の修正機能であること、及び
前記少なくとも1つの作動角度位置が、前記機構の修正位置に対応する不安定角度位置であること
を特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の制御部材(1)。
【請求項12】
前記竜頭(2)及び前記制御心棒(3)は、中立位置に対応する中央安定角度位置と、第1の修正位置に対応する第1の不安定角度位置である第1の作動角度位置との間で一方向に軸回転的に可動であるように、また、前記中央安定角度位置と、第2の作動角度位置との間で逆方向に軸回転的に可動であるように設計され、前記第2の作動角度位置が第2の修正位置に対応する第2の不安定角度位置であることを特徴とする、請求項11に記載の制御部材(1)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の制御部材(1)を少なくとも1つ有する時計。
【請求項14】
中央部(4)を含むケースを有する請求項13に記載の時計であって、前記制御部材(1)は、前記竜頭(2)が前記中央部(4)を越えるように設計されていることを特徴とする、時計。
【請求項15】
前記中央部(4)が、前記制御部材(1)と協働するように設計された固定ピン(30)を担持することを特徴とする、請求項13又は14に記載の時計。
【請求項16】
前記制御部材(1)が複数の安定角度位置を取るように設計される請求項13から15までのいずれか一項に記載の時計であって、前記中央部(4)が、前記安定角度位置のそれぞれにインデックス手段(52)を含むことを特徴とする、時計。
【請求項17】
前記時計がクロノグラフ機構を有すること、及び前記第2の機能が前記クロノグラフ機能のうちの1つであることを特徴とする、請求項13から16までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項18】
前記時計が時打ち機構を有すること、及び前記第1の機能が時打ち選択機能であることを特徴とする、請求項13から17までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項19】
前記時計が月表示機構を有すること、及び前記第1の機能が、前記月に対する修正機能であることを特徴とする、請求項13から18までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項20】
前記時計が時打ち機構及びクロノグラフ機構を有すること、及び
前記第1の機能が時打ちの形態の選択であり、前記第2の機能が前記クロノグラフの前記START/STOP機能であること
を特徴とする、請求項13から19までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項21】
前記時計が月表示機構及びクロノグラフ機構を有すること、及び
前記第1の機能が前記月の修正であり、前記第2の機能が前記クロノグラフのゼロリセット機能又はフライバック機能であること
を特徴とする、請求項12から20までのいずれか一項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメント(timepiece movement)の複数の異なる機能の制御部材に関し、前記制御部材は、竜頭(crown)と、少なくとも回転時に前記前記竜頭と一体化するように設計された制御心棒(control stem)とを有し、前記制御心棒は、第1の機能の第1の作動デバイスと回転的に一体になり、前記竜頭は、圧力に応答して、順に、休止位置(rest position)と、第1の機能とは異なる第2の位置が作動する押下位置(depressed position)との間で軸方向並進的に可動であるように、また、竜頭への圧力がなくなったときに竜頭の休止位置に復帰するように設計され、竜頭はまた、休止位置において、少なくとも1つの安定角度位置と少なくとも1つの作動角度位置との間で少なくとも一方向に軸回転的に可動であるように設計され、それにより、前記竜頭の前記方向への回転により前記制御心棒の回転を介して前記第1の機能を作動させる。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのそのような制御部材を有する時計にも関する。
【背景技術】
【0003】
そのような制御部材は、例えば国際特許出願公開第2005/038538号に記載のプッシュピース竜頭(push-piece crown)を有する制御デバイスに使用される。このデバイスでは、竜頭は、巻上げを作動させるための中立位置、針設定(hand-setting)を作動させるための引張位置、及び第3の機能を作動させるための押込み位置を占めることができるように設計される。制御心棒は、従来型腕時計の巻上げ及び針設定用心棒によって構成され、巻上げ及び針設定用心棒は、巻上げ用の心棒の中立位置と針設定用の心棒の引張位置との間を軸方向に移動させることができる。第3の機能を作動させるために特定の竜頭が設けられ、不動のままである巻上げ及び針設定心棒とは無関係に腕時計内部の制御部材を作動させることができるようにするために、プッシュピース管の端部に延長管が追加される。このデバイスの欠点は、特に、竜頭の複雑な構造、並びに尚早に作動しないようにするための制御部材に対する竜頭の位置の調節である。
【0004】
プッシュピースボタン型の他の制御部材も存在し、この制御部材は、コンプリケーション(complication)の異なる機能を作動させるために複雑化時計に使用される。例えば、クロノグラフ機構を有する時計は、一般に、クロノグラフ機能用の2つの異なるプッシュピースボタンを有し、一方はクロノグラフをSTARTING(開始)/STOPPING(停止)するためのものであり、他方はクロノグラフをゼロリセットするためのものである。これらの2つのプッシュピースボタンに加えて、時計は、様々な修正機能又は複雑化要因選択機能を実行するために、心棒や他のプッシュピース若しくは他のスライドなどの他の制御部材を有することができる。時計は、特にこれが腕時計である場合、その中央部のまわりに、任意の巻心棒に加えて、コンプリケーション用の多数の制御部材を有しており、これは、構造の複雑さ並びにケースに関連する気密性の問題を増大させる。中央部のまわりに分散される制御部材の数が多いと、腕時計の美的感覚に有害でもある。
【0005】
これらの問題を解決するために、制御部材の数は異なる機能を同じ制御部材に集中させることによって減らされることが提案されている。例えば、2つの制御部材を形成するためにプッシュピースを一体化した制御心棒が提案されている。
【0006】
スイス国特許第711600号は、例えば、竜頭に対して軸方向に可動であり、したがって、竜頭自体は機構の作動部材を制御するために軸方向並進的に休止位置と押下位置との間で可動ではない、プッシュピースを有する標準型のプッシュピースを有する竜頭を記述している。デバイスは、巻上げ及び針設定のためにムーブメントに接続され、中央延長部を介して竜頭によって作動させられる制御心棒を有する。制御心棒及び竜頭とは無関係にプッシュピースによって作動させられる別の管が、作動部材を制御するために提供される。
【0007】
回転運動又は並進運動のどれか一方が機能を選択する働きをし、他方の運動がその機能を作動させる働きをして、2つの動作が同じ機能に関連付けられる、多くの多機能制御機構もまた提案されている。一般に、これらの機構は、複雑な構造及び複雑な動作を有する。
【0008】
ケースと、軸方向及び半径方向に移動させることができる竜頭及び制御心棒を有する2機能制御部材と、竜頭の軸方向運動からスイッチオンするように設計された軸方向スイッチと、竜頭の径方向運動を径方向スイッチに伝えるために制御心棒と協働する歯車を用いて竜頭の径方向運動からスイッチオンするように設計された径方向スイッチと、を有するリストトップコンピュータが、米国特許第8,371,745号からも知られている。制御部材は、文字板上に表示される値、例えばアラーム時刻をブラウズするために、且つ、選択値を有効にするために制御心棒の軸方向運動を軸方向スイッチに伝えるために、竜頭の径方向運動を径方向スイッチに伝えるように設計される。この場合もまた、制御部材の2つの回転動作及び並進動作は、同じ機能にリンクされる。したがって、異なる機能を制御できるようにするために制御部材の数を増やす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願公開第2005/038538号
【特許文献2】スイス国特許第711600号
【特許文献3】米国特許第8,371,745号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、時計ムーブメントの様々な機能を制御することを可能にする単一の制御部材を提案することにより、これらの欠点を少なくとも部分的に是正しようとするものであり、機能のうちの1つは、プッシュピースの形で前記制御部材によって制御される。
【0011】
より詳細には、本発明の一目的は、クロノグラフ機構と無関係である、時計内に存在する機能を制御することを可能にする、クロノグラフ・プッシュピース型の制御部材を提案することである。
【0012】
本発明の別の目的は、上記機能のどれか1つの制御を妨げることを可能にする制御部材を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、時計ムーブメントの複数の異なる機能の制御部材に関し、前記制御部材は竜頭と少なくとも回転時に前記竜頭と一体化するように設計された制御心棒とを有し、前記制御心棒は第1の機能の第1の作動デバイスと回転的に一体になり、前記制御心棒は、竜頭への圧力に応答して、順に、軸方向並進的に休止位置と、第1の機能とは異なる第2の機能が作動させられる押下位置と、の間で可動であるように、且つ、竜頭への圧力がなくなったときに竜頭の休止位置に復帰するように設計され、竜頭はまた、休止位置で、少なくとも1つの安定角度位置と少なくとも1つの作動角度位置との間で少なくとも一方向に軸回転的に可動であるように設計され、それにより、前記竜頭の前記方向の回転により前記制御心棒の回転を介して前記第1の機能を作動させる。
【0014】
本発明によれば、前記制御心棒は、同様に、前記竜頭と軸方向並進的に一体になり、その結果、前記竜頭が竜頭の押下位置に移動している間、竜頭と共に軸方向並進的に可動であるように、且つ、前記竜頭が竜頭の押下位置に移動している間、第1の作動デバイスに対して軸方向並進的に自由であるように設計され、前記制御心棒はさらに、前記竜頭が竜頭の押下位置に移動している間、前記第2の機能を作動させるために前記第2の機能の第2の作動デバイスと協働するように設計される。
【0015】
したがって、本発明は、単一の制御部材を用いて、互いに無関係である、異なるコンプリケーションの2つの機能などの2つの異なる機能を制御して、機能の一方が休止位置で前記制御部材によってまるで制御心棒のように制御され、機能の他方が押下位置で前記制御部材によってまるでプッシュピースのように制御されることを可能にするが、休止位置及び押下位置で移動時に(回転的及び並進的に)竜頭と常に一体化される全く同一の制御心棒を用いる。したがって、竜頭及び制御心棒は、2つの別個の機能のために2つの作動デバイスを制御することを有利に可能にする全く同一の制御部材を構成する。したがって、本発明は、実装するのにより経済的である単純で頑丈な制御機構を提案する。
【0016】
有利には、制御部材は、竜頭が安定角度位置にないときに竜頭の軸方向並進を妨げ、竜頭がその休止位置にないときに、特に竜頭がその押下位置にあるときに竜頭の軸回転を妨げるように設計されたセキュリティデバイスを含む。
【0017】
したがって、制御部材は、特に第2の機能がアクティブであるときに第1の機能の制御を妨げることにより、安全確実である。
【0018】
第1の好ましい実施例によれば、第1の機能は時打ち機構(striking mechanism;ソヌリ)の時刻を打つ形態の選択であり、第2の機能はクロノグラフ機構のSTART/STOP機能である。
【0019】
別の好ましい実施例によれば、第1の機能は月表示機構の月の修正であり、第2の機能はクロノグラフ機構のゼロリセット機能又はフライバック機能である。
【0020】
本発明は、上述の制御部材を少なくとも1つ有する時計にも関する。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定な例として提供される本発明の複数の実施例の以下の詳細な説明を、添付図面を参照して読んだときに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による制御部材の破断図であり、前記制御部材は休止位置にある。
【
図2】本発明による制御部材の破断図であり、前記制御部材は押下位置にある。
【
図3】本発明による制御部材の竜頭の等角図である。
【
図4】時計の時打ち機構の時打ち選択機能及びクロノグラフ機構のSTART/STOP機能を制御するように設計された本発明による制御部材の制御心棒の概略図であり、制御部材はその休止位置にある。
【
図5】時計の時打ち機構の時打ち選択機能及びクロノグラフ機構のSTART/STOP機能を制御するように設計された本発明による制御部材の制御心棒の概略図であり、制御部材はその押下位置にある。
【
図6】クロノグラフ機構のゼロリセット機能又はフライバック機能と時計の月表示機構の月に対する修正機能とを制御するように設計された本発明による制御部材の制御心棒の概略図であり、制御部材は制御心棒の休止位置にある。
【
図7】中立位置にある、
図6の制御心棒の概略図である。
【
図8】第1の不安定角度修正位置にある、
図6の制御心棒の概略図である。
【
図9】第2の不安定角度修正位置にある、
図6の制御心棒の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図3を参照すると、本発明は、時計ムーブメントの複数の異なる機能の制御部材1に関し、前記制御部材1は、竜頭2及び少なくとも回転時に前記竜頭2と一体化される制御心棒3を有する。制御部材1は、竜頭2が時計の腕時計ケースの中央部4を越えるように、中央部4に取り付けられる。
【0024】
制御心棒3は、それ自体が回転時に第1の機能の第1の作動デバイスと一体化になり、この例について以下に詳述する。
【0025】
竜頭2は、前記竜頭2への圧力に応答して、軸方向並進的に
図1に描かれている休止位置と、第1の機能とは異なる第2の機能が作動させられる
図2に描かれている押下位置と、の間で可動であるように、且つ、竜頭2への圧力がなくなったときに竜頭の休止位置に復帰するように設計される。本明細書では、「休止位置」は、竜頭2の軸方向並進運動に対して定義され、その場合、休止位置は、竜頭が押圧力を受けていないときに竜頭がとる非押下位置と定義され、休止位置は、竜頭2が押下位置に配置されていない位置のすべてを意味する。
【0026】
竜頭2はまた、その休止位置で、軸回転時に、少なくとも1つの安定角度位置と少なくとも1つの作動角度位置との間を少なくとも一方向に制御心棒3と共に可動であり、その結果、前記竜頭2が前記方向に回転することにより、前記制御心棒3の回転で前記第1の機能を作動させるように設計される。
【0027】
本発明によれば、制御心棒3は、同様に、軸方向並進的に前記竜頭2と一体になり、その結果、前記竜頭2が竜頭の押下位置にまで移動する間、軸方向並進的に竜頭2と共に可動であるように、且つ、軸方向並進的に第1の作動デバイスに対して自由になるように設計され、前記制御心棒3は、前記竜頭2が竜頭の押下位置にまで移動する間、前記第2の機能を作動させるように前記第2の機能の第2の作動デバイスと協働するように設計される。
【0028】
したがって、竜頭2及び制御心棒3は、以下で詳述するように取り付けられると、移動竜頭2がその休止位置にあろうと押下位置にあろうと、移動時に(回転時及び並進時に)常に一体化し、それによって全く同一の制御部材1を構成する。本明細書の残り部分では、「休止位置」及び「押下位置」という表現は、共に、竜頭2及び制御部材1全体に使用され、制御心棒3は、竜頭2の移動が何であり得るにしても、その移動に常に追従する。
【0029】
この目的のために、竜頭2は、中央部4内にねじ留め又は駆動することによって固定されるように意図されたガイド管6を含む。管6は、縦軸線Aに対して回転対称性を有していて、制御部材1の並進及び回転軸線を構成する。
【0030】
竜頭2はまた、ヘッド8、ヘッドと一体の軸方向スカート10、及びヘッド8と一体のパイプ12も含み、前記アセンブリは軸線Aを中心に回転対称性を有する。
【0031】
竜頭2はまた、一方ではパイプ12の内部に、他方では管6の中心に収容されたピストン14も含み、前記ピストン14は、移動時にパイプ12と一体化するように設計される。パイプ12とヘッド8との間並びに管6とピストン14との間に形成された空洞内にばね16が配置される。ばね16は、竜頭2を移動させて、したがって制御部材1が制御心棒3も有し、竜頭の押下位置にするために竜頭2に圧力をかけられたときにヘッド8と管6の肩部18との間で軸方向に圧縮されるように、且つ、竜頭2への圧力がなくなったときに竜頭2をその休止位置に復帰することを可能にするように設計される。
【0032】
ピストン14及びパイプ12は管6内に可動に取り付けられ、スカート10は管6の周囲に可動に取り付けられる。中央部4は、管6が取り付けられているオリフィス20の周囲に、円形溝22を有し、スカート10は円形溝内に係合し、スカート10は、円形溝内を回転時及び並進時に軸線Aに沿って移動することができる。
【0033】
ピストン14は、ピストン14にねじ留めすることによって固定された雌駆動四角部(female driving square)24を用いてヘッド8を制御心棒3に運動学的に連接し、雌駆動四角部には、制御心棒3の端部に設けられた雄四角部(male square)26が嵌合する。制御心棒3の角端部は、ムーブメントをケース内に取り付ける間、その端部の開放面によって駆動四角部24に滑り込まれる。嵌合されると、竜頭2の雌四角部24は、制御心棒3の雄四角部を回転で連続的に駆動する。駆動四角部24の背面は、竜頭2に圧力をかけられたときに、制御心棒3の端部を軸方向並進で押下位置にまで押す。制御心棒3は、それ自体の復帰ばねを有し、復帰ばねは、圧力がなくなったときに制御心棒3を復帰させるために、駆動四角部24内に制御心棒の四角部端部を保持する。
【0034】
したがって、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、以下でより詳細に説明されるように、時計の2つの異なる機能、より正確には2つの異なるコンプリケーションを制御するために、ユーザが軸線Aに沿ってまるでプッシュピースのように軸方向並進的にその押下位置にまで移動させることができ、軸線Aを中心にしてまるで制御心棒のように回すことができる。
【0035】
本明細書では、「2つの異なる機能」という表現は、これらの機能が機能相互間に、制御心棒3を介したリンク以外の運動学的リンクを有していないことを意味する。
【0036】
より具体的には、時計は第1のコンプリケーションを有し、第1の機能は、第1のコンプリケーションにリンクされ、例えば選択機能とすることができ、作動角度位置は、1つ又は複数の機能選択位置に対応する1つ又は複数の安定角度位置である。例えば、時計は時打ち機構を有することができ、第1の機能は時刻を打つことである。第1の機能は、機構の修正機能とすることもでき、作動角度位置は、機構の1つ又は複数の修正位置に対応する1つ又は複数の不安定角度位置である。例えば、時計は月の表示機構を有することができ、第1の機能は月に対する修正機能である。
【0037】
時計は、クロノグラフ機構のような第2のコンプリケーションを有し、第2の機能は、START/STOP機能やゼロリセット機能若しくはフライバック機能などのクロノグラフ機構のうちの1つである。
【0038】
他の適切なコンプリケーションを使用することができる。
【0039】
本発明では、制御部材(竜頭2+制御心棒3)は、もっぱらその休止位置とその押下位置との間を軸方向に移動するように設計される。制御部材は、標準の巻上げ心棒のように、引張位置まで移動させることができない。この目的のために、第1の機能は、従来の巻上げ機能とすることも、従来の針設定機能とすることもできない。
【0040】
有利には、制御部材1は、以下で詳述するように、軸回転時に一方の回転方向に360°未満、好ましくは180°未満、より好ましくは90°若しくは60°以下の角度にわたって可動である。
【0041】
さらに、制御部材1がとる様々な角度位置は別々の角度位置であり、制御部材1は、これらの角度位置の間にとどまらない。
【0042】
有利には、制御部材1は、竜頭が安定位置にないときに、竜頭2の、したがって制御部材1の軸方向並進を妨げ、竜頭がその休止位置にないときに、特に竜頭がその押下位置にあるときに、竜頭2の、したがって制御部材1の軸回転を妨げるように設計されたセキュリティデバイスを含む。
【0043】
この目的のために、セキュリティデバイスは、スカート10の側壁に軸線Aと平行に形成された少なくとも1つの軸方向切欠き28を有し、軸方向切欠き28には、
図2に示すように竜頭がその休止位置にないときに、特に竜頭がその押下位置にあるときに、竜頭2の、したがって制御部材1の軸回転を妨げるために、固定ガイドピン30が係合することが意図されている。
【0044】
ピン30は、中央部4によって保持され、制御部材1上に設けられたセキュリティデバイスと協働できるように設計される。この目的のために、ピン30は、中央部4の壁から制御部材1の竜頭2の方向に突出し、ピン30の縦軸線は制御部材1の軸線Aに対して垂直である。
【0045】
さらに、竜頭2のスカート10は、スカートの堅い(solid)下方縁部10aが、竜頭2、したがって制御部材1が休止位置にあるときにピン30に実質的に当接するように意図されており、切欠き28のうちの1つが前記ピン30と対向しない限り、竜頭2、したがって制御部材1の押下位置に向かう軸方向並進の移動を妨げるように設計される。
【0046】
有利には、スカート10は、長い壁10bが制御部材1の軸回転角度を制限するピン30に対する当接部を画定するように、一定の角度セクタ上で、切欠き28を有する角度セクタを越えてより長くすることができる。スカート10の長い壁は、制御部材1の回転を180°の角度に制限する2つの当接部を構成するために、180°のセクタ上に設けることができ、180°の角度は、一方向に90°とし、逆方向に90°とすることができる。別の変形形態では、スカート10の長い壁は、制御部材1の回転を120°の角度に制限する2つの当接部を構成するために、240°のセクタ上に設けることができ、120°の角度は、一方向に60°とし、逆方向に60°とすることができる。
【0047】
したがって、ピン30が切欠き28と対向すると、竜頭2への圧力は第2の機能を作動させることを可能にする。
【0048】
ピン30が2つの切欠き28の間にあると、竜頭2への圧力は第2の機能を解放することを可能にしない。
【0049】
これらの場合のどちらでも、制御部材1が
図1に示すように休止位置にあると、第1の機能を作動させるために制御部材1を回転させることが可能である、というのは、ピン30は、切欠き28を有するスカート10の角度セクタの直下に配置されると、前記ピン30がスカート10の長い壁のうちの1つに当接するまで、双方向であり得る制御部材1の回転が起こるのを妨げないからである。
【0050】
ピン30が
図2に示すように切欠き28の後部にあるとき、竜頭2に圧力が加わってから、もはや竜頭2を戻すことができない。
【0051】
有利には、制御心棒3は溝32を有し、第2の作動デバイスは、前記溝32内に係合される、第2の機能を作動させるように設計された、枠の要素上に枢動可能に取り付けられた引抜きピース(pull-out piece)34を有する。
【0052】
制御心棒3はまた、制御心棒の四角部26とは反対側の端部に別の四角部36を有し、第1の作動デバイスは、四角穴(square hole)を有する中間歯車38を有し、制御心棒3の四角部36は四角穴を通って摺動することができ、次いで、前記中間歯車38は、四角部36上での回転時に制御心棒3と一体に取り付けられる。中間歯車38は、軸方向並進的に枠40の要素によって保持される。したがって、制御心棒3は、第1の作動デバイスに対して軸方向並進的に、特に竜頭2がその押下位置にまで移動する間、自由であるように設計される。中間歯車38は、第1の機能を作動させるように設計される。
【0053】
中間歯車38又は引抜きピース34に加えて、第1の作動デバイス又は第2の作動デバイスは、それに応じて第1の機能又は第2の機能を作動させるように設計される。
【0054】
図4及び
図5に描かれている第1の実施例によれば、時計は、時打ち機構であって、第1の機能が時打ち選択機能である、時打ち機構と、クロノグラフ機構であって、第2の機能がクロノグラフ機構のうちの1つ、より具体的には、START/STOP機能である、クロノグラフ機構と、を有する。
【0055】
したがって、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、第1の機能として、第1の作動デバイスを介して時打ち機構の時打ち選択機能を制御し、第2の機能として、第2の作動デバイスを介してクロノグラフ機構のSTART/STOP機能を制御するように設計される。図面を単純にするために、制御心棒3のみが、その端部において、竜頭2の雌駆動四角部24内に嵌合することになる雄四角部26で終端して描かれている。
【0056】
引抜きピース34に加えて、第2の作動デバイスは、引抜きピース34の復帰ばね42、及びクロノグラフ制御レバー44を有する。
【0057】
中間歯車38に加えて、第1の作動デバイスは、時打ち選択レバー46及びそのジャンパ48を含む時打ちセレクタを有する。時打ち選択レバーは、レバー46を3つの角度選択位置の間、すなわち、時打ちがないのに対応する第1の選択位置(無音位置S)とプチソヌリ(Petite sonnerie)に対応する第2の位置(位置PS)とグランドソヌリ(Grande sonnerie)に対応する第3の位置(位置GS)との間で移動させるために、中間歯車38にかみ合わされるように設計された歯付きセクタ50を有する。
【0058】
これらの異なる機構は当業者に知られており、さらに詳細に説明される必要はない。
【0059】
図1及び
図4に描かれているように、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)が休止位置にあるとき、制御部材の軸回転は、制御部材を両方向に回すことができるように妨げられず、制御心棒3は、その四角部36で中間歯車38を駆動し、中間歯車は、これが回っているときに、時刻を打つことを選択するために時打ち選択レバー46の歯付きセクタ50を一方向に又は逆方向に駆動する。
【0060】
時打ち機能を作動させるために、軸方向運動に対して休止位置にある制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、軸回転時に、選択レバー46の第1の角度選択位置に対応する第1の中央安定角度位置、すなわち位置Sと、作動角度位置であって、前記作動角度位置が選択レバー46の第2の角度選択位置に対応する第2の安定角度位置である、作動角度位置、すなわち位置PSと、の間を一方向に、例えば90°の角度だけ可動であるように、且つ、軸回転時に、前記第1の中央安定角度位置と、別の作動角度位置であって、前記別の作動角度位置が選択レバー46の第3の角度選択位置に対応する第3の安定角度位置である、別の作動角度位置、すなわち位置GSと、の間を逆方向に、例えば90°の角度だけ可動であるように設計される。
【0061】
この実施例では、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、複数の別個の安定角度位置、この場合は90°の角度だけ互いに隔てられる3つの位置を占めるように設計される。この目的のために、中央部4は前記安定角度位置のそれぞれにインデックス手段を含む。これらのインデックス手段は、例えば、中央部4上にねじ留めすることによって固定された位置決めリラばね(positioning lyre spring)52によって構成され、竜頭2の駆動四角部24は位置決めリラばねに滑り込む。駆動四角部24の外面は、制御部材1の角度位置のインデックス0±90°のためにリラばね52と協働する。
【0062】
選択レバー46の対応する3つの角度選択位置は、ジャンパ48によって保証される。
【0063】
時刻を打つ形態のうちの1つが選択されると、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、竜頭2を、したがって制御部材1を押圧することによりクロノグラフのSTART/STOP機能を作動させることが可能であるように、安定角度位置にある。
【0064】
この目的のために、この実施例では、セキュリティデバイスは、制御部材1の3つの安定角度位置に、したがって3つの角度選択位置に対応するように竜頭2のスカート10にわたって分散された3つの切欠き28を有する。より具体的には、選択位置Sに対応する中央切欠きは、
図3に示すように、他の2つの選択位置GS及びPSに対応する他の2つの切欠きのそれぞれから90°の角度で隔てられる。選択された時刻を打つ形態に対応する切欠き28はピン30の上に配置され、クロノグラフのSTART/STOP機能を作動させるために、竜頭2への圧力に応答して制御部材1(竜頭2+制御心棒3)の軸方向並進が可能になる。
【0065】
竜頭2に圧力をかけられると、ピン30は切欠き28内に係合し、したがって、トン14及び制御心棒3がムーブメントの内部に向かって軸方向並進で移動させられ、制御心棒3の四角部36は、
図2に描かれているように、動かないままである中間歯車38の四角穴に滑り込む。制御部材1の軸回転はもはや不可能である。
【0066】
竜頭2への圧力に応答する、制御部材の軸方向運動では、制御心棒3は引抜きピース34を制御し、引抜きピースは、
図5に示すように、クロノグラフをスタート又はストップするためにそれ自体がクロノグラフ制御レバー44を制御する。竜頭2への圧力、したがって制御心棒3への圧力を緩和してから、機構は、この目的のために設けられた異なる復帰ばねのおかげでその開始位置に戻る。制御部材1は、竜頭2への新たな圧力に応答して、クロノグラフのSTART/STOP機能の新たな作動の準備が整う。
【0067】
図6~
図9に描かれている別の実施例によれば、時計は、第1の機能が月に対する修正機能である月表示機構と、第2の機能がクロノグラフ機能のうちの1つ、より具体的にはゼロリセット機能又はフライバック機能であるクロノグラフ機構と、を有する。
【0068】
したがって、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、第1の機能として、第1の作動デバイスを介して月表示機構の月に対する修正機能を制御し、第2の機能として、第2の作動デバイスを介してクロノグラフ機構のゼロリセット機能又はフライバック機能を制御するように設計される。図面を単純にするために、制御心棒3のみが、その端部において、竜頭2の雌駆動四角部24に嵌合することになる雄四角部26で終端して描かれている。
【0069】
引抜きピース34に加えて、第2の作動デバイスは、引抜きピース34の復帰ばね54、及びクロノグラフ・ゼロリセットレバー56を有する。
【0070】
中間歯車38に加えて、第1の作動デバイスは、ラック58を3つの角度位置、すなわち、第1の中立位置と1月を加えることに対応する第1の角度修正位置と1月戻ることに対応する第2の角度修正位置との間で移動させるために、中間歯車38とかみ合うように設計された歯付きセクタ60を有する月修正ラック58を有する。第1の作動デバイスは、制御心棒3のセンタリングレバー62及び制御心棒3のセンタリングばね64も有する。
【0071】
これらの異なる機構は当業者に知られており、さらに詳細に説明される必要はない。
【0072】
図1及び
図6に描かれているように、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)が休止位置にあるとき、制御部材の軸回転は、制御部材を両方向に回すことができるように妨げられず、制御心棒3はその四角部36で中間歯車38を駆動し、中間歯車は、これが回転しているときに、月を修正するために修正ラック58の歯付きセクタ60を一方向又は逆方向に駆動する。
【0073】
月に対する修正機能を作動させるために、軸方向運動に対して休止位置にある制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、軸回転時に、
図7に描かれている、修正ラック58の角度中立位置に対応する中央安定角度位置と、第1の作動角度位置であって、前記第1の作動角度位置が
図8に描かれている、修正ラック58の第1の角度修正位置に対応する第1の不安定角度位置である、第1の作動角度位置と、の間を一方向に例えば60°の角度だけ可動であるように、且つ、軸回転時に、前記中央安定角度位置と、第2の作動角度位置であって、前記第2の作動角度位置が
図9に描かれている、修正ラック58の第2の角度修正位置に対応する第2の不安定角度位置である、第2の作動角度位置と、の間を逆方向に60°の角度だけ可動であるように設計される。
【0074】
この実施例では、制御部材1(竜頭2+制御心棒3)は、中央安定角度位置と、それぞれがこの場合は中央安定角度位置から60°の角度だけ隔てられる2つの不安定角度位置と、を占めるように設計される。
【0075】
中央安定角度位置は、中間歯車38に連接されたハートピース66に作用するように設計された制御心棒3のばね64及びセンタリングレバー62によって保証される(
図7参照)。制御心棒3の回転中、ばね64及びセンタリングレバー62はハートピース66に作用する(
図8及び
図9参照)。制御心棒3に伝達される偶力が緩和されるとすぐに、ばね64及びセンタリングレバー62は、ハートピース66の壁に作用し、中立位置にある修正機構の作動デバイス及び制御心棒の中央安定角度位置にある制御部材1を再配置する。
【0076】
制御部材1(竜頭2+制御心棒3)がその安定角度位置にあるとき、竜頭2、したがって制御部材1を押圧することによりクロノグラフのゼロリセットを作動させることが可能である。
【0077】
この目的のために、この実施例では、セキュリティデバイスは、制御部材1がその安定角度位置にあるときにピン30の上に配置される、竜頭2のスカート10内に単一切欠き28を有し、クロノグラフのゼロリセット機能を作動させるために、竜頭2への圧力に応答して制御部材1(竜頭2+制御心棒3)の軸方向並進が可能になる。
【0078】
竜頭2に圧力をかけられると、ピン30は切欠き28内に係合し、したがって、ピストン14及び制御心棒3がムーブメントの内部に向かって軸方向並進で移動し、制御心棒3の四角部36は、
図2に描かれているように、動かないままである中間歯車38の四角穴に滑り込む。制御部材1の軸回転はもはや不可能である。
【0079】
竜頭2への圧力に応答する、制御部材の軸方向運動では、制御心棒3は引抜きピース34を制御し、引抜きピースは、それ自体がクロノグラフ・ゼロリセットレバー56を制御する。竜頭2への圧力は、クロノグラフのゼロリセット機能又はフライバック機能を実行することを可能にする。竜頭2への圧力、したがって制御心棒3への圧力を緩和してから、機構は、この目的のために設けられた異なる復帰ばねのおかげでその開始位置に戻る。制御部材1は、竜頭2への新たな圧力に応答して、クロノグラフのゼロリセット機能の新たな作動の準備が整う。
【0080】
時計は、異なる第1の機能及び第2の機能、特に複数のコンプリケーションの機能を作動させるように設計された、本発明の1つ又は複数の制御部材を有することができる。
【0081】
したがって、時計は、2時の位置に、
図4及び
図5を参照して上述したように、第1の機能として、時打ち機構の時打ち選択機能を制御し、第2の機能として、クロノグラフ機構のSTART/STOP機能を制御するように設計された制御部材を有することができ、4時の位置に、
図6~
図9を参照して上述したように、第1の機能として、月表示機構の月に対する修正機能を制御し、第2の機能として、クロノグラフ機構のゼロリセット機能又はフライバック機能を制御するように設計された別の制御部材を有することができる。
【0082】
本発明は、単一の制御部材を用いて、互いに無関係である2つの異なる機能、特に異なるコンプリケーションの機能を制御することを可能にし、機能の一方が前記制御部材によってまるでプッシュピースのように制御され、機能の他方が前記制御部材によってまるで制御心棒のように制御される。したがって、異なる機能を制御するために中央部上に存在する制御部材の数を減らすことができる。
【0083】
さらに、竜頭2及び制御心棒3は、いったん取り付けられると、竜頭2がその休止位置にあろうと押下位置にあろうと、移動時に(回転時及び並進時に)常に一体化し、したがって全く同一の制御部材1を構成し、このことは、実装するのにより経済的な単純で頑丈な制御機構を提案することを有利に可能にする。
【国際調査報告】