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特表2024-505830ポリオレフィンおよびスチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ポリオレフィンおよびスチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240201BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 5/04 20060101ALI20240201BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20240201BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L53/02
C08L25/04
C08L101/00
B32B5/04
A61F13/49 319
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544067
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021084629
(87)【国際公開番号】W WO2022156951
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21152714.8
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルセル グリュンドケン
(72)【発明者】
【氏名】松本 章
【テーマコード(参考)】
3B200
3B211
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA11
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA05
3B200CA06
3B200CA07
3B200DA01
3B211CE02
4F100AJ02B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK12A
4F100AK42B
4F100AK46B
4F100AK75A
4F100AL02A
4F100AL05A
4F100AL09A
4F100AT00
4F100BA02
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4F100GB66
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4J002BB033
4J002BB121
4J002BB123
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4J002BC034
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4J002BG043
4J002BG053
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4J002BN123
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4J002CF183
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4J002CK023
4J002CL003
4J002GB00
4J002GB01
4J002GF00
(57)【要約】
本発明は、ポリオレフィンと、スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体と、任意に可塑剤と、を含む熱可塑性エラストマー組成物、該組成物を含む積層体、ならびに使い捨て用の衛生用品および医療用品における該積層体の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体(SEEPS)と、
b.ポリオレフィンエラストマーと、
c.任意に、可塑剤と、
d.ポリスチレンポリマーと、
を含む、熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンエラストマーが、プロピレン単位およびエチレン単位を含む、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンエラストマー中のエチレン含有量が、15重量%より大きい、請求項2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンエラストマーの、ASTM D1238に準拠して測定したメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、9g/10min未満である、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンエラストマーの、ASTM D1238に準拠して測定したメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、5g/10min未満である、請求項4記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィンエラストマーの、ASTM D1238に準拠して測定したメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、2g/10min未満である、請求項5記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
ポリオレフィンエラストマーを50~85重量%含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体(SEEPS)が、28~32重量%の結合したスチレンハードブロックセグメントと、水添ブタジエンおよびイソプレンから構成される中央のソフトブロックとを有するトリブロック共重合体である、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマー組成物が、ポリマーブロック(x)とポリマーブロック(y)とを有するブロック共重合体の水添により形成される水添ブロック共重合体を10重量%未満含み、前記ポリマーブロック(x)は、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を(ポリマーブロック(x)の総質量に対して)約70質量%超含み、前記ポリマーブロック(y)は、共役ジエン化合物およびイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種から誘導された構造単位を(ポリマーブロック(y)の総質量に対して)約30質量%以上含み、前記水添ブロック共重合体において、前記ポリマーブロック(y)中の3,4-結合単位と1,2-結合単位との合計含有量は、50モル%以上である、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマー組成物が、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、(ホモ)ポリエチレン(PE)、(ホモ)ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアクリレート、ポリテルペン、ポリフェノール、およびポリメタクリレートからなるリストから選択される1種以上の熱可塑性ポリマーを7重量%未満含み、前記7重量%は、前記熱可塑性ポリマーの合計量である、請求項1から9までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性エラストマー組成物が、ポリプロピレン単独重合体を含まない、請求項1から10までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性エラストマー組成物が、1種以上のポリプロピレン単独重合体を5重量%以上7重量%未満含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む、フィルム。
【請求項14】
請求項12記載のフィルムと、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、木綿またはそれらの混合物をベースとする不織布様布地と、を含む、積層体。
【請求項15】
おむつ、フェイスマスク、カバー、弾性パッチおよび昆虫捕獲シートを含む使い捨て用の衛生用品および医療用品における、請求項13記載のフィルムまたは請求項14記載の積層体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンと、スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体と、任意に可塑剤と、を含む熱可塑性エラストマー組成物、該組成物を含む積層体、ならびに使い捨て用の衛生用品および医療用品における該積層体の使用に関する。
【0002】
使い捨て用の衛生物品および医療用物品は、エラストマー組成物を、例えばウエストバンドや伸縮性の耳部に使用される積層体の形態で含むことが多い。このようなエラストマーフィルムは、柔らかさ、弾力性、引張強さ、応力緩和性、および様々な伸長レベルにおける望ましいレベルの張力などの特定の特性を満たさなければならない。さらに、エラストマー組成物は、使い捨て用の衛生物品の効率的な製造を可能にするために高速加工が可能でなければならない。また、組成物を含む衛生用品や医療用品は一般に使い捨て用であるため、組成物を製造する材料は安価でなければならない。
【0003】
国際公開第2019/094667号には、ポリオレフィンとスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマーとを含む組成物の使用が記載されている。これらの組成物は、特定の有利な特性を有するが、当業界では、改良された組成物が依然として必要とされている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、改善された柔らかさ、弾力性、引張強さ、応力緩和性および/または加工性を有する熱可塑性エラストマー組成物を提供することであった。さらに、該組成物は、積層体およびフィルムの製造に使用される場合の時間および/またはコストの点で有利な加工条件を提供する。
【0005】
これらおよび他の課題は、本発明により解決された。
【0006】
本発明は、
a.スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)と、
b.ポリオレフィンエラストマーと、
c.任意に、可塑剤と、
d.ポリスチレンポリマーと
を含む熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0007】
「熱可塑性」という用語は、その通常の意味、すなわち、当業者に理解されているとおり、加熱すると可塑性になることができ、冷却すると硬化する物質を意味するものとする。
【0008】
また、「エラストマー」という用語も、その通常の意味、すなわち、当業者に理解されているとおり、弾性を有する物質を意味するものとする。
【0009】
適切なポリオレフィンエラストマーとしては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン/エチレンランダム共重合体、プロピレン/エチレンブロック共重合体、プロピレン/ブタンランダム共重合体、プロピレン/エチレン/ブテンブロック共重合体、プロピレン/ペンテンランダム共重合体、プロピレン/ヘキセンランダム共重合体、プロピレン/オクテンランダム共重合体、プロピレン/エチレン/ペンテンランダム共重合体、プロピレン/エチレン/ヘキセンランダム共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0010】
好ましくは、本発明によるポリオレフィンエラストマーは、プロピレン単位およびエチレン単位を含む。プロピレン単位およびエチレン単位を含む市販のポリオレフィンエラストマーの好適な例としては、ExxonMobil Chemical社製VISTAMAXX(登録商標)銘柄(以下のグレードを含むが、これらに限定されない:2330;3000;3020;3980;6102;6202;および6502);Borealis社製QUEO(商標)銘柄(以下のグレードを含むが、これらに限定されない:0201、0203、0210、8201、8203、8210、8230);ならびにDOW Chemical社製INFUESE(商標)およびENGAGE(商標)銘柄が挙げられる。
【0011】
また好ましくは、ポリオレフィンエラストマー中のエチレン含有量は、5重量%より大きく、より好ましくは10重量%より大きく、最も好ましくは15重量%より大きく、特に(約)16重量%である。
【0012】
SEEPSと、非常に高粘度の、すなわちメルトインデックスの低いポリオレフィンとを含む組成物が、応力とひずみとの特に有益な関係をもたらすことが、驚くべきことに見出された。
【0013】
したがって、本発明による組成物は、好ましくは、ASTM D1238に準拠して測定した場合のメルトインデックス(190℃/2.16kg)が15g/min未満、より好ましくは9g/10min未満、より好ましくは5g/10min未満、最も好ましくは2g/10min未満、特に1.5g/10min未満であるポリオレフィンエラストマーを含む。
【0014】
また好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物は、ポリオレフィンエラストマーを35~90重量%、より好ましくは50~85重量%、より好ましくは55~75重量%、最も好ましくは65~75重量%含む。
【0015】
本発明によるスチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体(SEEPS)は、市販されている。その好ましい例としては、Septon(商標)4033、Septon(商標)4055、Septon(商標)4077、Septon(商標)4099、Septon(商標)HG252およびそれらの混合物が挙げられ、株式会社クラレより入手可能である。
【0016】
好ましくは、スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体(SEEPS)のスチレン含有量は、20~40重量%、より好ましくは25~35重量%、最も好ましくは28~32重量%である。
【0017】
また好ましくは、スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体(SEEPS)のメルトフローインデックス(230℃、2.16kg)は、1.0g/10min未満、最も好ましくは0.1g/10min未満である。
【0018】
また好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン-b-エチレン-エチレン-プロピレン-b-スチレンブロック共重合体(SEEPS)を5~55重量%、より好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~35重量%、最も好ましくは15~25重量%含む。
【0019】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、有利には可塑剤を含む。このような可塑剤は、当該技術分野で知られており、これらに限定されるものではないが、パラフィン系プロセス油およびナフテン系プロセス油のような鉱油;菜種油、落花生油およびロジンのような植物油;リン酸エステル;低分子量ポリエチレングリコール;液状パラフィン;低分子量エチレン、エチレン-α-オレフィン共重合オリゴマー;液状ポリブテン;液状ポリイソプレンもしくはその水添等価物;液状ポリブタジエンもしくはイソプレンのような合成油、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中に存在する可塑剤の量は、好ましくは5~20重量%、より好ましくは7~15重量%、最も好ましくは8~12重量%である。
【0021】
可塑剤はまた、合成炭化水素樹脂または粘着付与剤、例えばα-メチルスチレン(AMS)、テルペン系樹脂、ポリテルペン、テルペンフェノール系樹脂、ロジンエステル;脂肪族、脂環式もしくは芳香族のC5、C9の水添もしくは部分水添樹脂、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
本発明による熱可塑性エラストマーコンパウンドは、1種以上の添加剤を含むことができる。
【0023】
好適な任意の添加剤には、従来のまたは市販の添加剤が含まれる。これらの添加剤は、熱可塑性エラストマーコンパウンドおよび/またはそれから形成されるエラストマーフィルムにとって望ましい加工特性または性能特性を得るのに十分な任意の量で使用することができる。好適な例としては、酸化防止剤および安定剤;結合剤;顔料または染料のような着色剤;耐衝撃性改良剤;非エラストマー性熱可塑性ポリマー;粘着付与剤;紫外線吸収剤;ワックス;蚊誘引剤またはハエ誘引剤のような誘引剤;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアクリレート、ポリテルペン、ポリフェノール、およびポリメタクリレートを含む一覧から選択される1種以上の他の成分を含むこともできる。このような成分は、例えば、熱可塑性エラストマーコンパウンドにおける加工性または他の特性を調整するために存在し得る。適切な非エラストマー性熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンエラストマーブレンドおよびSEEPSブロック共重合体と相容性であるべきである。このようなポリオレフィンは、多くの供給元から市販されている。
【0025】
また好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、(ホモ)ポリエチレン(PE)、(ホモ)ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアクリレート、ポリテルペン、ポリフェノール、およびポリメタクリレートからなる一覧から選択される1種以上の熱可塑性ポリマーを7重量%未満含む。7重量%未満の量とは、組成物中に存在するこのような熱可塑性ポリマーの合計量がこの7重量%を下回ることを意味するものとする。より好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、1種以上のポリスチレンおよび/または(ホモ)ポリプロピレンポリマーを7重量%未満含む。より好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、1種以上のポリスチレンおよび/または(ホモ)ポリプロピレンポリマーを3重量%未満含む。最も好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物は、ポリプロピレン単独重合体を含まない。
【0026】
加工性の観点から、より好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、1種以上のポリスチレンおよび/または(ホモ)ポリプロピレンポリマーを5重量%以上7重量%未満含む。最も好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物は、ポリプロピレン単独重合体を5重量%以上7重量%未満含む。
【0027】
また好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、ポリマーブロック(x)とポリマーブロック(y)とを有するブロック共重合体の水添により形成される水添ブロック共重合体を10重量%未満含み、ポリマーブロック(x)は、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を(ポリマーブロック(x)の総質量に対して)約70質量%超含み、ポリマーブロック(y)は、共役ジエン化合物およびイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種から誘導された構造単位を(ポリマーブロック(y)の総質量に対して)約30質量%以上含み、該水添ブロック共重合体において、ポリマーブロック(y)中の3,4-結合単位と1,2-結合単位との合計含有量は、20モル%以上、または約40モル%以上、または約50モル%以上である。より好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物は、組成物の特性に影響を与えない量を除き、このような水添ブロック共重合体を含まない。
【0028】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、他のスチレンブロック共重合体、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、水添スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン(SEBS)または水添スチレン-b-イソプレン-b-スチレン(SEPS)、およびそれらの誘導体、例えば、1,2-ビニル過剰イソプレン型およびブタジエン型、グラフトおよび星型共重合体、α-メチルスチレン型、ジブロック、トリブロック、テトラブロック、または無水マレイン酸もしくはヒドロキシ官能基化された共重合体を含むこともできる。
【0029】
本発明のさらなる態様は、前述の熱可塑性エラストマー組成物を含むフィルム、および押出成形、特に共押出成形、インフレーション成形またはキャストフィルム押出成形による該フィルムの製造方法に関する。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、前述のフィルムと、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、木綿またはそれらの混合物をベースとする不織布様布地(例えば、二成分不織布)とを含む積層体に関する。さらなる態様は、おむつ、生理用ナプキン、フェイスマスク、カバー、弾性パッチ、および蚊取りシートまたはハエ取りシートなどの昆虫捕獲シートを含む使い捨て用の衛生用品および医療用品におけるフィルムまたは積層体の使用に関する。
【0031】
該積層体は、任意の従来公知の技術、例えば、共押出成形、サーマルボンディング、接着剤によるボンディングまたは超音波ボンディングによって製造することができる。該積層体を、有利には、使用前に、例えば伸張により、またはリングロール技術を用いて活性化させることができる。
【0032】
フィルムまたは積層体は、例えば、プルタブ、サイドタブ、サイドパネル、背面耳部、ウエストバンド、積層体層、シャーシエレメントなどとして使用することができる。
【0033】
以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例
【0034】
プレミックスPM1~PM4の製造
フィルム製造用のプレミックスを、直径58mm、長さ対直径比(LD)55、スクリーンなしのMaris社製共回転二軸スクリュコンパウンダーでコンパウンディングした。メルトポンプは使用しなかった。各材料を、コンパウンディングフィーダのインラインに設置された容積約100リットルの高速バッチ式ミキサーで予備混合した。コンパウンディング温度を20℃(入口)から190℃(ダイ)まで設定し、スクリュ速度は約500rpmであり、水中で切断し、アンチブロッキング剤を使用した。
【0035】
フィルムの製造
フィルムの製造を、キャストフィルム押出成形ラインにて以下の設定で行った:A/B/A構成の3層共押出成形(下記表1参照)、押出機Aのスクリュ寸法:直径45mm、長さ1440mm、押出機Bのスクリュ寸法:直径28mm、長さ840mm。ダイ幅600mm、T型ダイ。温度設定:205℃(押出機)、225~235℃(フィードブロックおよびダイ)、4℃(チルロール)。引上げ:約10m/min(可変)。フィルム厚を60μmに設定し、異なる処方を比較するために規格化した。
【0036】
評価
フィルムの弾性を評価した。100%ひずみでの第2サイクル負荷点は、おむつ閉鎖システムを伸張させるのに必要な力を定めるものである。50%での第2サイクル無負荷応力点は、伸張後の残留応力を定めるものである。両パラメータは、おむつ閉鎖システムの保持力に関連するものであり、安定した着用および着用中の快適性の指標である。
【0037】
表1に、上記の説明に従った処方および弾性を示す。引裂抵抗を、エルメンドルフ引裂抵抗測定法に従って評価し、定性的に総括した。プロセス安定性を低下させることが知られている典型的な既知のプロセス上の問題(温度範囲、ゲル、ネックイン、メルトフラクチャー)を考慮して、キャスト押出成形ラインでの加工性を定性的に総括した。
【0038】
表1の結果は、公知のSEBSブロック共重合体を本発明によるSEEPSブロック共重合体に置き換えると、良好なレベルの引裂抵抗を維持しながら、弾性および/または加工性の驚くべき改善がもたらされることを示している。
【0039】
【表1】
【0040】
プレミックスは、上記の説明に従って二軸スクリュコンパウンダーで製造した。組成は、以下のとおりである:
PM1:74.5% SEBS(SEPTON(商標)8004、製造元:株式会社クラレ)、24.5% プロセス油(パラフィン系、医療用品質、Oyster 261型、製造元:Petroyag)、<1% 加工助剤(酸化防止剤、シリカ、タルク)
PM2:74.5% SEEPS(SEPTON(商標)4033、製造元:株式会社クラレ)、24.5% プロセス油(パラフィン系、医療用品質、Oyster 261型、製造元:Petroyag)、<1% 加工助剤(酸化防止剤、シリカ、タルク)
PM3:63.5% SEEPS(SEPTON(商標)4033、製造元:株式会社クラレ)、20.5% プロセス油(パラフィン系、医療用品質、Oyster 261型、製造元:Petroyag)、15% ポリスチレン(GPPS、PS3190型、製造元:Styrolution)、<1% 加工助剤(酸化防止剤、シリカ、タルク)
PM4:63.5% SEEPS(SEPTON(商標)4033、製造元:株式会社クラレ)、20.5% プロセス油(パラフィン系、医療用品質、Oyster 261型、製造元:Petroyag)、15% ポリプロピレン(ポリプロピレン単独重合体、520P型、製造元:Sabic)、<1% 加工助剤(酸化防止剤、シリカ、タルク)
【国際調査報告】