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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】手持ち式ピペット装置
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240201BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240201BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20240201BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
G01N35/10 A
G01N35/00 A
G06F3/0484
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544135
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2022051500
(87)【国際公開番号】W WO2022157363
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21153260.1
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】アリーザ グルシュカ
(72)【発明者】
【氏名】カトレン ヨスト
(72)【発明者】
【氏名】ネガー ラヤビ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン エックホーフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス エッガー
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4G057
5E555
【Fターム(参考)】
2G052CA18
2G052HC07
2G052JA09
2G058GD05
2G058GD07
2G058GE10
4G057AB16
5E555AA02
5E555AA04
5E555AA79
5E555BA01
5E555BA21
5E555BB01
5E555BB21
5E555BC01
5E555BE12
5E555CA12
5E555CB01
5E555CB14
5E555CB16
5E555CC01
5E555CC11
5E555DA02
5E555DB03
5E555DB20
5E555DB41
5E555DC09
5E555DD02
5E555DD06
5E555EA07
5E555EA09
5E555EA11
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
本発明は、タッチスクリーンを備えたピペット装置と、このピペット装置を有するシステムに関する。このピペット装置の操作コンセプトは、ピペッティングパラメータの値を少なくとも1つの入力画面上でユーザが設定でき、操作要素を作動すると出力画面が表示されて、ピペッティングパラメータに従って定義されたピペッティング作業が開始され、出力画面の別個の入力フィールドにタッチすると、再び入力画面に戻るというものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液体試料をピペッティングするための手持ち式ピペット装置であって、
少なくとも1つのピペット容器を接続するための接続部と、
ピペッティング作業を実施する際に少なくとも1つの試料を少なくとも1つのピペット容器に吸引し、前記試料を少なくとも1つのピペット容器内に保持し、及び前記試料を少なくとも1つのピペット容器から排出するように電気的に制御された動作要素と、
ユーザ定義可能なピペッティングパラメータのパラメータ値を入力するためのタッチセンシティブスクリーンであって、ピペッティングパラメータのパラメータセットはピペッティング作業を完全に定義する、タッチセンシティブスクリーンと、
少なくとも1つのピペッティングパラメータに応じて動作要素を制御するようにプログラムされたデータ処理手段を備えた電気制御装置と、
ユーザの指圧によって作動可能であり、その作動によりパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始する少なくとも1つの操作要素と、を有し、
前記データ処理手段は、
前記ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための入力画面(100、100´、100″、100_1、100_3、100_4)をスクリーンに表示し、
少なくとも1つの操作要素の作動が検出されると、入力画面の代わりに、入力画面で定義されたパラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための出力画面(200、200´、200″、200_1)をスクリーンに表示し、前記少なくとも1つの操作要素の作動が検出されると、又は続けてこれらの操作要素のうちの1つを操作すると、このピペッティングパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始するようにプログラムされており、
前記出力画面又は続けて表示される出力画面は特別ボタン(201、201´、201″、201_1)を含んでおり、このボタンにタッチすると出力画面が閉じて、前記入力画面又は他の入力画面をスクリーンに表示させる、
ことを特徴とする、手持ち式ピペット装置。
【請求項2】
前記ピペット装置は、特にロッカーボタンによって互いに別々に作動可能な正確に1つの第1の操作要素と第2の操作要素を有しており
前記データ処理手段は、入力画面の表示から出発してユーザによる第1の操作要素の作動を検出して、パラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始するようにプログラムされていることを特徴とする、請求項1に記載の手持ち式ピペット装置。
【請求項3】
前記ピペット装置は、ロッカーボタンと、該ロッカーボタンによって互いに別々に作動可能な第1の操作要素と第2の操作要素とを有しており、ロッカーボタンの第1の押圧面を押して第1の操作要素を作動し、ロッカーボタンの第2の押圧面を押して第2の操作要素を作動し、第1の押圧面と第2の押圧面は触覚的に区別できることを特徴とする、請求項1又は2に記載のピペット装置。
【請求項4】
前記ピペット装置は、ユーザの片手でピペット装置を保持するためのグリップとして設計されたハウジングを有し、該ハウジングは動作要素を含む軸部を備え、その長手方向軸線に沿って動作要素が延びており、
前記ピペット装置は、ロッカーボタンによって互いに別々に作動可能な第1の操作要素と第2の操作要素を有し、前記ロッカーボタンは、長手方向軸線に対して100<α<150°の角度で配置され、特に下方に傾けて配置されたサムレストに組み付けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のピペット装置。
【請求項5】
前記データ処理手段は、レコーダー機能を実行するようにプログラムされており、GUIは記録を開始及び/又は終了するための少なくとも1つの入力フィールドを備え、開始後にユーザによって定義されたピペッティング作業を実施するためのピペッティングプログラムのステップが記録され、ユーザはこれらのステップを少なくとも1つの操作要素を作動し、ピペッティングパラメータの値を1つ以上の入力画面に入力することによって実行することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のピペット装置。
【請求項6】
前記ピペット装置は、その長手方向軸線に沿って延びる動作要素を含んでいる軸部と、スクリーンの表面とスクリーンを囲むフレームとによって形成された、長手方向軸線に対して傾斜している前面を持つ頭部と、を備えたハウジングを有しており、スクリーンは前面の少なくとも80%を占めており、
特に、フレーム前面は第1の平面内にあり、前記スクリーンは第1の平面と同一か平行な第2の平面内にあることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のピペット装置。
【請求項7】
少なくとも1つのピペット容器のための接続部とイジェクトボタンとを備えたハウジングを有しており、前記イジェクトボタンの接触面はイジェクトボタンを押すことによって経路に沿ってハウジング内に移動可能であり、前記ピペット装置は、前記経路の終端に達するとピペット容器、特にピペットチップの取り外しが行われるように、又は少なくとも1つのピペット容器の取り外しをトリガする電気信号が発生するように設計されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のピペット装置。
【請求項8】
前記データ処理手段は、
少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第1の入力タイルを含む画面をスクリーンに表示し、前記入力タイルにタッチすると入力インターフェースが開いて、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力できるようにプログラムされており、
前記入力インターフェースは、数字キーパッドが表示されるスクリーン領域であり、前記数字キーパッドの数字キーは個々にタッチ可能であり、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を定義する数字列を入力するために使用できることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の手持ち式ピペット装置。
【請求項9】
前記データ処理手段は、
ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを示すための画面をスクリーンに表示するようにプログラムされており、
前記画面は、基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第1の入力タイルを含んでおり、前記入力タイルにタッチすると入力インターフェースが開いて、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にし、
前記画面は、入力フィールドを含んでおり、該入力フィールドにタッチすると、別の選択可能なピペッティングパラメータの概要のリストを含む選択リストが表示され、該選択リストからユーザは少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータを選択することができ、該第2のピペッティングパラメータは基本セットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータに追加され、それを用いてピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティング作業を決定するピペッティングパラメータを定義でき、
少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択が終了した後に選択リストが閉じられて、いまでは少なくとも1つの第1の入力タイルに加えて、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第2の入力タイルも表示する画面が現れ、前記入力タイルにタッチすると入力インターフェースが開いて、ユーザが少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの値を入力できるようになることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の手持ち式ピペット装置。
【請求項10】
前記データ処理手段は、
ユーザが入力インターフェースを介して入力したピペッティングパラメータの値が許容されない場合は、スクリーンに情報が表示され、好ましくは
少なくとも1つの修正ボタンが表示され、それにタッチすると、ユーザによって入力された値の代わりに、自動的に少なくとも1つの修正作業を実施し、これらの修正作業は、
許容されない値に代えて許容される値が自動的に設定され、
前記ピペッティングパラメータに代わる少なくとも1つのピペッティングパラメータが選択され、特にユーザの値又は他の適切な値で占められ、
ユーザの入力がキャンセルされて、特に再度入力が可能になる、構成を含むことができ、
及び/又は、
エラーメッセージが出力され、
及び/又は、
以前アクティブな値の変更は無視され、以前アクティブな値が維持され、
及び/又は、
組み合わせ不可能な機能を表す他の組み合わせ不可能なピペッティングパラメータは自動的に拒否される、
ようにプログラムされていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の手持ち式ピペット装置。
【請求項11】
前記データ処理手段は、
特に実質的に画面全体に広がる1つ以上の入力タイルを示す画面をスクリーンに表示するようにプログラムされていることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の手持ち式ピペット装置。
【請求項12】
前記データ処理手段は、
前記スクリーンにスタート画面を表示し、該スタート画面は横方向に向けられたスワイプジェスチャーによって第2の画面に置き換えられ、反対側の横方向に向けられたスワイプジェスチャーによって第3の画面に置き換えられるようにプログラムされており、
特に、第2の画面が入力フィールドのリストを含み、各入力フィールドは略称を付けていて、入力フィールドにタッチすると、所定のピペッティング作業を定義する所定のパラメータセットをロードし、特に前記入力フィールドにタッチした後に別画面が表示され、
特に、第3の画面は入力フィールドのリストを含み、各入力フィールドは略称を付けていて、入力フィールドにタッチすると、過去に使用されて自動的に保存された履歴ピペッティング作業を定義する履歴パラメータセットをロードし、特に前記入力フィールドにタッチした後に別画面が表示されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の手持ち式ピペット装置。
【請求項13】
ピペッティングパラメータを入力するシステムであって、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の手持ち式ピペット装置と、
外部スクリーンとデータ処理手段とを含む外部データ処理装置と、を有しており、前記データ処理手段はピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための外部入力画面を外部スクリーンに表示するようにプログラムされており、外部入力画面とピペット装置の入力画面は内容が実質的に同じであり、
前記システムは、外部データ処理装置上で定義されたピペッティングパラメータをピペット装置に転送し、そこでピペッティング作業を定義するために使用するように設計されていることを特徴とする、ピペッティングパラメータを入力するシステム。
【請求項14】
手持ち式ピペット装置のスクリーン上に入力画面を用意するためのコンピュータプログラムコード(請求項1と同様)であって、前記ピペット装置は少なくとも1つの液体試料をピペッティングするために用いられて、少なくとも1つのピペット容器を接続するための接続部と、ピペッティング作業を実施する際に少なくとも1つの試料を少なくとも1つのピペット容器に吸引し、前記試料を少なくとも1つのピペット容器内に保持し、及び前記試料を少なくとも1つのピペット容器から排出するように電気的に制御された動作要素と、ユーザ定義可能なピペッティングパラメータのパラメータ値を入力するためのタッチセンシティブスクリーンと、を有しており、ピペッティングパラメータのパラメータセットはピペッティング作業を完全に定義し、さらに、ピペット装置は、少なくとも1つのピペッティングパラメータに応じて動作要素を制御するようにプログラムされたデータ処理手段を含む電気的制御装置と、ユーザの指圧、特に親指圧によって作動可能であり、その作動によりパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始する少なくとも1つの操作要素と、を有しており、
プログラムコードが手持ち式ピペット装置のデータ処理手段によって実行されると、その結果として、
a)ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための入力画面がスクリーンに表示され、
b)少なくとも1つの操作要素の作動が検出されると、パラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための出力画面がスクリーンに表示され、任意に操作要素のこの操作又は後続の操作で現在のピペッティングパラメータセットに従ってピペッティング作業も開始され、
c)出力画面に特別ボタンが表示され、これにタッチすると出力画面が閉じて、画面、特に入力画面をスクリーンに表示させることを特徴とするコンピュータプログラムコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式ピペット装置、この手持ち式ピペット装置と外部機器との間でデータを交換するシステム、及び当該手持ち式ピペット装置によって実行可能なコンピュータプログラムコードに関する。
【背景技術】
【0002】
このような手持ち式ピペット装置は、医学、生物学、生化学、化学及びその他の実験室で一般的に使用されている。それらは実験室内で少量の流体試料の運搬及び移送のため、特に試料の正確な分注のために用いられる。このような手持ち式ピペット装置の既知の2つのタイプは、液体の吸引又は排出のそれぞれの物理的原理が異なる。液体の分注は、空気置換の原理で行われるか、又は直接置換の原理が使用される。第1のタイプの装置は空気置換式ピペット、第2のタイプは直接置換式ピペットと呼ばれる。
【0003】
空気置換式ピペットは、ピストンシリンダーシステムで本来の測定を行う。空気層がプラスチック製チップに吸引された試料とピストンを分離する。ピストンを上方にスライドさせると、チップ内に負圧が発生して液体がチップ内に上昇する。ピストンによって動かされる空気層は、チップ内の液体容量を吊り下げる弾性バネのような役割を果たす。直接置換の原理で作動する手持ち式ピペット装置では、ピストンと一体化されたチップを移送容器として使用する。ピペッティング作業中はこのピストンがピペット装置のピストンロッドと連結して、本来の分注作業を受け持つ。この場合、ピストンはチップの全内部容量を置換できるため、吸引された試料とピストン端部の間には実質的に空気層が形成されない。両タイプのピペット装置、即ち空気置換式ピペットと直接置換式ピペットは、いずれもピストンストロークピペットの概念に包含される。
【0004】
手持ち式ピペット装置には、ピストンシステムを手動で駆動するものと、電気で駆動するものがある。電気駆動の手持ち式ピストンストロークピペットは、少なくとも1種類のピペッティング作業を自動化又は部分的に自動化して実施するために、少なくとも1つのピペッティングプログラムによって制御可能であることが多い。
【0005】
手持ち式ピペットは、人間のユーザが片手で使用できるように設計されている。しかしながら、ロボット化されたグリップアームを有する自動実験装置も存在し、その把持ツールは手持ち式ピペットを操作するために人間の手の活動をシミュレートし、手持ち式ピペットを操作して動かすように設定されている。
【0006】
ピペット装置において、1回の操作によって排出される試料量は、装置内に吸引される試料量に対応することできる。しかしながら、また、複数の排出量に対応して吸引された試料量が、段階的に再び排出されるようにすることもできる。さらに、シングルチャンネルピペット装置とマルチチャンネルピペット装置とが区別され、シングルチャンネルピペット装置は単一の排出/吸引チャンネルのみを含み、マルチチャンネルピペット装置は複数の排出/吸引チャンネルを含み、それらは特に複数の試料の並行排出又は吸引を可能にする。
【0007】
本発明の範囲内で説明される手持ち式ピペット装置は、電動ピストンを有するコンピュータ制御された手持ち式ピストンストロークピペットであり、手持ち式電動ピペット装置又は手持ち式電動ピストンストロークピペットとも呼ばれる。
【0008】
先行技術による手持ち式電子空気置換式ピペットの例は、エッペンドルフ社(ドイツ、ハンブルク)のエクスプローラー(登録商標)及びエクスプローラー(登録商標)プラスであり、手持ち式電子ディスペンサーの例は、エッペンドルフ社(ドイツ、ハンブルク)のマルチペット(登録商標)E3及びマルチペット(登録商標)E3xである。
【0009】
電動ピペット装置は、非電動ピペット装置と比較して、多数の機能を簡単に実装できるため、多くの利点がある。特に電動ピペット装置は、プログラム制御されたピペッティング作業を自動化又は部分的に自動化することにより、それらを簡単に実行することができる。そのようなピペッティング作業を相応のピペッティングプログラムによって制御するための典型的なピペッティングパラメータは、液体を吸引又は排出するときの量、それらの順序と繰り返し、及び場合によってはそれらの操作を時間的に配分する際の時間パラメータに関するものである。電動ピペット装置は、単一の動作モード又は複数の動作モードで動作するように設計できる。動作モードは、ピペット装置のピペッティング作業に影響を与え又は制御するピペット装置の1つ以上のピペッティングパラメータのセットが、自動的に照会、設定及び/又は適用されるようにすることができる。
【0010】
ユーザがピペッティングパラメータを入力できるように、タッチセンシティブスクリーンを使用した手持ち式ピペット装置が知られており、手持ち式ピペット装置によってピペッティング作業を少なくとも部分的に自動化して実行することができる。
【0011】
欧州特許出願EP2814612B1号には、1つ以上のタッチスクリーンを備えたピペット装置が記載されており、ピペッティング作業は実質的に完全にタッチによって定義されてユーザによって制御される。複数のタッチスクリーンを使用することにより、そのようなタッチスクリーンの使用の可能性が示唆されるが、そのように定義されたピペットが人間工学的に使用可能であるか否かは、最終的に推測の域を出ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、効率的で人間工学的な操作コンセプトを有する手持ち式ピペット装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、特に請求項1に記載のピペット装置によって解決される。好適な構成は従属請求項の主題であり、発明の詳細な説明にも記載されている。
【0014】
本発明は、少なくとも1つの液体試料をピペッティングするための手持ち式ピペット装置であって、
少なくとも1つのピペット容器を接続するための接続部と、
ピペッティング作業を実施する際に少なくとも1つの試料を少なくとも1つのピペット容器に吸引し、この試料を少なくとも1つのピペット容器内に保持し、及びこの試料を少なくとも1つのピペット容器から排出するように電気的に制御された動作要素と、
ユーザ定義可能なピペッティングパラメータのパラメータ値を入力するためのタッチセンシティブスクリーンであって、ピペッティングパラメータのパラメータセットはピペッティング作業を完全に定義する、タッチセンシティブスクリーンと、
少なくとも1つのピペッティングパラメータに応じて動作要素を制御するようにプログラムされたデータ処理手段を備えた電気制御装置と、
ユーザの指圧によって作動可能であり、その作動によりパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始する少なくとも1つの操作要素と、
を有するものに関する。本発明によるピペット装置のその他の特徴は、以下の説明及び請求項から明らかになる。
【0015】
手持ち式の電動ピペット装置(以下略してピペット装置と呼ぶ)の利点は、これらの装置で自動化又は部分的に自動化されたピペッティング作業が電子的に設定可能であることにある。課題は、見渡せないほど多数の機能や設定可能性やプログラミングを実現することができる、そのような装置において直感的に効率的で人間工学的な作業体験をユーザに提供する操作コンセプトを見出だすことである。発明者らは、本請求項による発明を含む幾つかの発明により、この課題を解決する操作コンセプトを開発した。
【0016】
以下において自動化されたピペッティング作業と言うとき、それぞれの文脈が矛盾しない限り、部分的に自動化されたピペッティング作業も常に意味する。自動化されたピペッティング作業の実施には、通常はピペット装置の操作要素を作動することによって、少なくとも自動化されたピペッティング作業をトリガする少なくとも1つのユーザ活動も常に含まれている。特定の適用シナリオの部分的に自動化されたピペッティング作業は、ユーザが、例えばサブ作業に分割されたピペッティング作業を開始することに加えて、操作要素を作動することによってサブ作業のトリガも開始することを必要とすることがある。特定の適用シナリオの自動化されたピペッティング作業は、ピペット装置の特定の実施形態においては、ピペッティングパラメータのセットによって定義することができる。これらのピペッティングパラメータは、自動化されたピペッティング作業が開始する前に、ユーザがピペット装置のユーザインターフェース手段の操作手段によって設定し及び/又はデフォルト設定から引き継ぎ、及び/又はメモリからロードする。典型的には、ピペット装置のそのような実施形態のユーザインターフェースは、選択オプション、例えばコントロールホイール又はタッチスクリーン上の選択可能なフィールドのリストを有しており、それによっていわゆる「動作モード」を選択できる。動作モードは特定の適用シナリオを表しており、若しくは動作モードにおいてこの特定の適用シナリオに属していて、ユーザが対応する自動化されたピペッティング作業の開始前に設定できるピペッティングパラメータの全セットが選択されている。そして自動化されたピペッティング作業は、動作プログラムとして指定されたこの動作モードのピペッティングプログラムに従って進行する。
【0017】
好適な実施形態において、ピペット装置若しくはデータ処理手段は、ユーザがピペッティングパラメータを選択することによって自動化されたピペッティング作業を手動で定義し、それにより特にユーザ定義されたピペッティング作業のピペッティングパラメータのセット(ピペッティングパラメータセット)を定義するようにプログラムされている。このピペッティングパラメータセットは、動作モードの指定されたピペッティングパラメータセットに部分的又は完全に対応することができる。ピペッティング作業のピペッティングパラメータは、好ましくはピストンストロークピペットと接続されたピペット容器に試料を吸引するステップで、若しくはこのピペット容器から試料を排出するステップでピペッティングされる容量、場合によりこれらのステップの順序と繰り返し、場合によりこれらの作業の時間的配分における時間パラメータ、特にまたそのような作業の時間変動、特に試料を吸引又は排出する速度及び/又は加速度に関係し若しくはこれらを定量化する。この実施形態では、自動化されたピペッティング作業は、これらのユーザ定義されたピペッティングパラメータにより完全に定義されたピペッティングプログラムに従って進行する。
【0018】
本発明による手持ち式ピペット装置は好ましくは、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つのピペッティングパラメータの少なくとも1つのパラメータセットに従って少なくとも1つのピペッティング作業を実施するために使用するように、特にピペット装置の所定のパラメータセットに従う少なくとも1つの所定の動作モードで、又はユーザ定義されたパラメータセットにおいて使用するように設計されている。1つの動作モードでは、好ましくはピペッティングパラメータのそれぞれ1つのパラメータセット(ピペッティングパラメータセット)が設けられており、そのピペッティングパラメータは任意にユーザによって選択不可能であり、又は任意にユーザによって少なくとも部分的に選択可能であり、別のピペッティングパラメータで補完することができる。
【0019】
ピペッティング作業は、典型的にピペッティングプログラムに従って特定の試料量が、スタート容器からピストンストロークピペットと接続されたピペット容器、特にピペットチップに吸引され、及び/又はターゲット容器に排出され、特に配量して排出されるようになっている。ピペッティング作業は、好ましくは上記のピペッティング作業、又はその機能若しくは構成要素を所望の方法で影響又は定義できる、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は好ましくはそれ以上のピペッティングパラメータによって制御することができる。
【0020】
ピペッティング作業を制御するためのピペッティングパラメータは、好ましくはピストンストロークピペットと接続されたピペット容器に試料を吸引するステップで、若しくはこのピペット容器から試料を排出するステップでピペッティングされる容量、場合によりこれらのステップの順序と繰り返し、場合によりこれらの作業の時間的配分における時間パラメータ、特にまたそのような作業の時間的変動、特に試料の吸引又は排出する速度及び/又は加速度、又はプレウェットステップの数、任意にその際に吸引及び排出される容量に関係し若しくはこれらを定量化する。
【0021】
これらのピペッティングパラメータは、ユーザによって、好ましくは少なくとも部分的に、好ましくは完全に、特にピストンストロークピペット又は外部データ処理装置のユーザインターフェース手段の少なくとも1つの操作要素を介して選択及び/又は入力される。
【0022】
ピペッティング作業は、好ましくはピペッティングパラメータセットによって一義的に規定可能であり又は規定されている。このピペッティングパラメータセットは、好ましくは少なくとも部分的に、好ましくは完全に、特にピペット装置又は外部データ処理装置の操作手段を介して、ユーザによって選択及び/又は入力される。
【0023】
しかしながら、ピペッティング作業がピペッティングパラメータセットによって一義的に規定されないことが可能である。この場合は、特に(選択された)ピペッティングパラメータに応じて、ピペッティングパラメータセットを少なくとも1つの別のピペッティングパラメータによって自動的に補完するように、ピペット装置が設計され若しくはデータ処理手段がプログラムされている。少なくとも1つのピペッティングパラメータはユーザによって規定されず、例えばピペッティングパラメータが事前に知られていてデータメモリに保存されているか又はそこで自動的に検出されることにより、ピペット装置によって指定されることが可能であり選好される。
【0024】
好ましくは、直接的に連続する又は間接的に連続するピペッティング容量の数を規定する少なくとも1つのピペッティングパラメータが設けられており、好ましくは吸引ステップ及び/又は排出ステップの数、好ましくはそれぞれ関連するピペッティング容量、それぞれ関連するピペッティング速度及び/又は加速度、及び/又はステップ間のそれぞれ関連する時間間隔を規定する少なくとも1つのピペッティングパラメータが設けられている。
【0025】
ユーザ定義されたピペッティング作業の手動で定義するために援用できる典型的なピペッティングパラメータは、自動化されたピペッティング作業の典型的な適用シナリオの以下の説明から読み取ることができる。
【0026】
ピペット装置で部分的に自動化された作業として想定される典型的な適用シナリオは、ピペット容器(ピペットチップ又はディスペンサーチップ)に吸引された容量の分注(略称「DIS」)である。各部分排出、例えばピペット容器からマイクロタイタープレートの合計10の別個のターゲット容器に合計1mLの全試料を分注するためには、ユーザは、配分される試料液が入った貯蔵容器の上方にピペット装置を位置決めし、ピペット容器の先端を貯蔵液に浸漬し、操作要素を作動して初期容量を吸引し、操作要素を作動してリバースストロークをトリガし、それによってシステムは定義された初期位置に入り、操作要素を最初のターゲット容器の上方に位置決めし、操作要素を作動して0.1mLの配量された部分容量の電動排出を開始し、ピペット装置をマイクロタイタープレートの次のターゲット容器の上方に移動して位置決めし、操作要素を作動して再び0.1mLの配量された部分容量の電動排出を開始し、そしてこれらの手動で実施されたサブ作業(位置決め、トリガ)と、それに続く(合計10ステップの部分排出のうちの)0.1mL試料の電動部分排出の自動化されたサブ作業をさらに8回繰り返す。部分容量の配量された排出は、分注される試料の全量、分注される試料の部分容量、及び/又は等しい部分容量を排出するための排出ステップの数、試料吸引速度、及び/又は場合によりそれから逸脱する試料排出速度、リバースストロークの容量、オーバーストロークの容量のピペッティングパラメータのうちの1つ以上又は全てを含むピペッティングパラメータの指定に従って行われる。分注機能は、マイクロタイタープレートに試薬液を迅速に充填するのに特に適しており、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を実施するために使用できる。
【0027】
適用シナリオは、好ましくは試料の「自動分注」(ADS)に関するものである。関連する動作パラメータはそれぞれ好ましくは、複数の排出ステップのうちの1つの間のピペッティング容量に関する個々の試料の量、排出ステップの数、排出ステップが自動的に一定の時間間隔で順次実施されるタイムインターバルの持続時間(タイムインターバルはこれらの時間間隔又は例えば連続する排出ステップの終了と開始の間の遅延を規定できる)、1つ以上の試料が吸引される速度、1つ以上の試料が排出される速度である。この分注機能は、マイクロタイタープレートをより簡便に充填するのに適している。なぜなら、ユーザは例えばキーを押すことによって排出ステップを繰り返しトリガする必要がなく、自動分注を開始した後では排出は時間制御されて行われるからである。そのようなピペッティングパラメータセットに属する動作プログラムを実行する際、自動分注は、少なくとも操作要素を中断することなく操作する、例えばキーをずっと押したままにしていると相応のプログラムが実行されるという条件下で行うことができる。このことは、例えば時間窓を正確に守ることが要求される長い分注シリーズや反応の場合に有利である。自動分注機能は、マイクロタイタープレートをより簡便に充填するのに適している。なぜなら、ユーザは個々の排出ステップを自分でトリガする必要はなく、自動的に行われるからであり、これは例えばELISAを実行するために使用できる。
【0028】
適用シナリオは、好ましくは試料の「ピペッティング」(Pip)に関するものである。関連するピペッティングパラメータは特に、ピペッティングされる試料の容量、試料が吸引される速度、試料が排出される速度である。
【0029】
適用シナリオは、好ましくは試料の「ピペッティングとそれに続く混合」(P/Mix)に関するものである。関連するピペッティングパラメータはそれぞれ好ましくは、吸引及び/又は排出される試料の容量、混合量、混合サイクルの数、試料が吸引される速度、試料が排出される速度である。「ピペッティングとそれに続く混合」機能は、例えば非常に少量のピペッティングに推奨される。10μL未満の分注容量を選択する場合は、それぞれの反応液に混合することが推奨される。このことは、液体を排出した後に自動的に混合動作を開始することによって可能である。混合量と混合サイクルはあらかじめ定義されている。この動作モードの適用は、例えば物理的特性により水よりも重い分注液を排出し、ピペット容器、特にピペットチップ内の残液を、既に受け器に入れた液体を援用してピペット容器若しくはピペットチップからリンスすることである。別の適用は、排出された液体を受け器に入れた液体と直ちに混合することであろう。この動作モードは、例えばPCR混合溶液にDNAを添加する場合に有利である。
【0030】
適用シナリオは好ましくは試料の「多重吸引」に関するものであり、「逆分注」又はアスピレーションを表す「ASP」とも呼ばれる。関連するピペッティングパラメータはそれぞれ好ましくは、吸引される1つ以上の試料の容量、試料の数、吸引速度、排出速度である。この機能は、液体量を複数回吸引し、その全量を排出するために用いる。この場合、1回の作業でピペット容器に複数回充填することは想定されていない。速度は、全ての試料で同じである。実施において、好ましくは以下の手順で進行する。即ち、ピペット装置は基本位置から出発して、操作手段の第1のタイプの操作により、それぞれ部分容量を吸引する。最後の分量が吸引された後、ピペット装置は好ましくは警告メッセージを発し、ユーザは好ましくは操作手段の第2のタイプの操作によってこれを確認しなければならない。操作手段の次の第2のタイプの操作により、再び全量が排出される。操作手段は第1又は第2のタイプの操作のために、好ましくは少なくとも2つの操作要素を有し、1つは「第1のタイプ」の操作信号を制御装置に入力するためのものであり、1つは「第2のタイプ」の操作信号を制御装置に入力するためのものである。操作手段は、特にロッカーを有することができ、このロッカーは、特にピペット装置の長手方向軸線に対して垂直な軸線を中心に、特に第1のタイプの操作のための第1信号トリガ位置(「ロッカーアップ」)と第2のタイプの操作のための第2信号トリガ位置(「ロッカーダウン」)との間で揺動可能である。
【0031】
適用シナリオは、好ましくは試料の「ディリュート」(Dil)に関するものであり、「希釈」とも呼ばれる。関連するピペッティングパラメータはそれぞれ好ましくは、試料量、気泡量、希釈剤量、吸引速度、排出速度である。最大希釈液量=公称量-(試料+気泡)。この機能は、試料と希釈剤を気泡で分離して吸引し、全量を排出するために用いる。速度は、全ての部分容量で同じである。実施において、好ましくは以下の手順で進行する。即ち、ピペット装置は基本位置から出発して、最初に希釈剤量、次に気泡、最後に試料を吸引する。各吸引は、操作手段の第1のタイプの操作によって好ましくは別個にトリガされる。その後で全量が1回で排出される。
【0032】
適用シナリオは、好ましくは試料の「連続分注」(SeqD)に関するものである。関連するピペッティングパラメータはそれぞれ好ましくは試料の数(好ましくは固定最大数Nmax、好ましくは5≦Nmax≦15、好ましくはNmax=10)、個々の試料の量、吸引速度、排出速度である。この機能は、自由に選択できる最大量Nmaxを連続分注するために用い、好ましくはピペット容器の多重充填は設けられていない。速度は全ての試料で同じである。試料の数は、好ましくは個々の容量を入力するための中心的なパラメータである。容量を入力する際に、好ましくはピペット装置は、ピペット装置の最大容量を超えていないか常にチェックしなければならず、必要であれば警告メッセージが発せられる。全てのパラメータが入力された後で、ピペット装置は、操作手段の第1のタイプの操作後に全量を吸引し、操作手段の第2のタイプの操作後にそれぞれ個々の量を排出する。それ以外の手順は、好ましくは標準分注と同様である。
【0033】
適用シナリオは、好ましくは試料の「連続ピペッティング」(SeqP)に関するものである。関連するピペッティングパラメータはそれぞれ好ましくは、試料の数(好ましくは固定最大数Nmax、好ましくは5≦Nmax≦15、好ましくはNmax=10)、個々の試料の量、吸引速度、排出速度である。この機能は、開始前にプログラムされて順序が固定している、自由に選択できる最大量Nmaxのピペッティングに用いる。速度は、好ましくは全ての試料で同じである。しかしながら速度は異なるように設定することも可能である。機能の手順は、ピペッティングの手順に対応している。あらかじめ入力された容量が、プログラムされた順序で処理される。排出後、操作要素の作動、例えばキーを押すことによって、次の試料を吸引するか、それとも次の試料の前にまず「ブローアウト」を行うか、即ちピペット容器にまだ含まれている試料をオーバーストロークによって全て確実に吐出するか、及び/又はピペット容器を交換するか否かを決定する。
【0034】
適用シナリオは、好ましくは試料の「リバースピペッティング」(rPip)に関するものである。関連するピペッティングパラメータはそれぞれ好ましくは、個々の試料の量、吸引速度、排出速度、カウンターの起動である。「rPip」機能では、分注容量より多く吸引される。このことは、液体が吸引される前に、即ち第2のタイプの操作によって、即ち例えば、キーの押し下げ又は「ロッカーダウン」によって、ピストンが下方へ移動して、ブローアウトの下方位置、即ちピペッティングストロークにおけるピストンの位置を超えるピストンのオーバーストロークの位置に達することによって達成される。容量吸引が開始されると、ピペット装置はブローアウトの容量と設定された容量を吸引する。排出方向における駆動の遊びを除去するために、ピペット装置は追加のストロークを実行し、これは再びすぐに排出される。このことは分注と同様であるが、好ましくは最大速度による廃棄ストロークの自動排出の下で行われる。
【0035】
適用シナリオ「rPip」の実施において、好ましくは以下の手順で進行する。即ち、ピペット装置(又はディスペンサーチップ)のピストンが自動的にブローアウトに移動して、下方位置で停止している。第2に、操作手段の第1のタイプの操作が行われて、ピストンはブローアウト区間とピペッティング容量に対するストロークだけ上方に移動する。第3に、操作手段の第2のタイプの操作が行われる。ピストンは、ピペッティング容量に対するストロークで下降して、ブローアウトの手前で停止している。第4に、操作手段の第2のタイプの2回の操作が行われて、ピストンはブローアウトを実行して、下方位置で停止している。「第4」の代替として、操作手段の第1のタイプの操作が行われて、ピストンがピペッティングストロークで上方に移動する。「rPip」モードは、血漿、血清、その他タンパク質含有量の高い液体のピペッティングに特に適している。水溶液には、特に「ピペッティング」モードが適している。「rPip」モードは、ターゲット容器に排出する際に気泡の発生を最小限に抑えるために、湿潤剤含有溶液に特に適している。液体は、特にオーバーストローク(ブローアウト量)で吸引される。この場合、オーバーストロークは通常排出量に含まれず、好ましくはターゲット容器に排出されない。特に、同じ試料を再度使用する場合、オーバーストロークはチップ内に留まることができる。他の液体を使用する場合、好ましくはオーバーストローク及び/又は好ましくはピペット容器は廃棄される。
【0036】
ピペッティングパラメータセットにより、特に所望のピペッティング作業を実施するための動作プログラム、特に制御プログラムが制御されることが好ましい。制御プログラムは、それぞれ制御装置の電気回路の形態で構成でき、及び/又はプログラムコード制御可能であり、好ましくはプログラム可能である制御装置を制御するのに適した実行可能なプログラムコードによって構成できる。
【0037】
ピペット装置又は外部データ処理装置は好ましくは、ユーザによって入力されたピペッティングパラメータの値(ピペッティングパラメータ値)を自動的にチェックし、それぞれのピペッティングパラメータの許容範囲と比較するように設計されている。ユーザによって入力されたピペッティングパラメータ値が許容範囲外であれば、入力は受け入れられず、スクリーン上及び/又は音響的に警告が発せられるか、又は例えば最小値又は最大値、又は最後に許容された入力値であり得るデフォルト値に設定され、又は自動的に修正された値が使用される。
【0038】
ピペット装置は、好ましくは少なくとも1つのタッチセンシティブスクリーン又は非タッチセンシティブスクリーンを備え、及び/又は好ましくは少なくとも一部はあらかじめ定義されて表示ページデータの形態でピペット装置に保存されている多数の表示ページ(「画面」とも呼ばれる)を備えており、これらは1つのスクリーン又は複数のスクリーンに分散して、好ましくは全画面表示することができる。スクリーン面は、好ましくは実質的に矩形であり、場合によっては正方形でもある。正方形でない矩形の場合、矩形の短辺側はピペット装置の長手方向軸線Aに対して垂直に配置されていることが特に好適である。このようにすると、上下に並ぶ項目、特に行のリストをより長くすることができる。正方形でない矩形の場合、矩形の長辺側が、ピペット装置の長手方向軸線Aに対して垂直に配置されていることも好適である。このようにすると、並置された項目、特に列の配置をより長くすることができる。
【0039】
データ処理手段は、好ましくはスクリーン内にグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示するようにプログラムされている。以下のGUIの説明において、「データ処理手段は…するようにプログラムされている」という文言は一部省略され、GUIとその機能形態のみが説明されるが、この場合は常に、データ処理手段が相応のGUIとその機能形態を実装するようにプログラムされていることを意味する。この実装は、当業者にとってルーチン作業である。
【0040】
GUIは、少なくとも好ましくはピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータが表示される画面(特に「ホーム画面」)をスクリーンに表示することを含む。したがってデータ処理手段は、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータが表示される画面がスクリーンに表示されるようにプログラムする。「ピペッティングパラメータがスクリーンに表示される」という表現は、ピペッティングパラメータの現在設定されている値がスクリーンに表示されることを意味する。さらに、ピペッティングパラメータの説明、特にテキストによる説明、特徴的なピクトグラム、又はピペッティングパラメータに該当する場合は、ピペッティングパラメータによって説明される量の物理的単位、例えば容量に対して「μL」を表示することができる。しかしながら、また、スクリーンに説明がない場合でも、当業者は文脈から、表示された値がどのピペッティングパラメータに割り当てらあれるかを知り又は学習できる。
【0041】
特に、データ処理手段は、スタート画面、同義語としてホーム画面(類語:インターネットブラウザにおけるホームページ)とも呼ばれる画面を表示するようにプログラムされている。GUIへの複数又は多数のユーザ入力は、このホーム画面に戻されることが選好される。このホーム画面は有利には、ユーザ定義された又はあらかじめ保存されている適用シナリオから取り出されたピペッティング作業の全パラメータセットを表示し、関連するピペッティングパラメータの設定を可能にするために利用できる。ホーム画面は、特にピペット装置の電源を入れた後、特に電源を入れた直後に表示されるが、ホーム画面に時間的に先立って、例えば会社のロゴ、装置に関する情報など、純粋な情報提供ページが挿入されることも可能である。電源の投入は、ユーザがディスプレイや操作要素を作動することによって行うことができ、又は加速度センサ、モーションセンサ、近接センサなどのセンサの測定によって行うことができる。このようなホーム画面は、ユーザにとってピペット装置の操作コンセプトを直感的に理解できる中心であることが証明されている。
【0042】
ホーム画面は好ましくは、現在有効なパラメータセットのピペッティングパラメータを標準選択(=デフォルト選択)として表示する。さらに、データ処理手段は特に、ホーム画面のための以下の表示のうちの1つ以上又は全てを実行するようにプログラムされてよい。
・ピペット装置の電源を入れた後、基本パラメータセットのピペッティングパラメータが表示される。
・ピペット装置の電源を入れた後、最後に設定された基本パラメータセットのピペッティングパラメータが表示される。
・ピペット装置の電源を入れた後、最後に設定され、少なくとも部分的若しくは完全に実行もされた、又は設定されただけで実行されなかった基本パラメータセットのピペッティングパラメータが表示される。
・ピペット装置の休止状態が所定の時間続いた後(特に、スタンバイモードがある場合は、その後)、基本パラメータセットのピペッティングパラメータが表示される。この基本パラメータセットは、特にピペット装置の電源を入れた後に表示されるピペッティングパラメータセットである。「休止状態」は、工場設定に従ってあらかじめ定義された又はユーザが定義した所定の時間、装置においてユーザ操作又はディスプレイタッチが検出されなかったこと、及び/又は任意にピペット装置に存在するセンサ(加速度センサ、モーションセンサ、近接センサなど)が、ユーザの動き及び/又は接近を検知しなかったことを意味する。スタンバイモードは、休止状態が所定の時間続いた後で自動的に起動可能にすることができる。
・ピペット装置の休止状態が所定の時間続いた後(特に、スタンバイモードがある場合は、その後)、最後に設定された基本パラメータのピペッティングパラメータが表示される。
・ピペット装置の休止状態が所定の時間続いた後(特に、スタンバイモードがある場合は、その後)、最後に設定され、少なくとも部分的若しくは完全に実行もされた、又は設定されただけで実行されなかった基本パラメータセットのピペッティングパラメータが表示される。
【0043】
画面は、好ましくはピペッティング作業、特に基本的ピペッティング作業を定義するパラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの又は正確に1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第1の入力タイルを含む。画面に表示される入力タイルの数は、好ましくはパラメータセットのピペッティングパラメータの数に対応する。基本パラメータセットは、好ましくは少なくとも1つの又は正確に1つのピペッティングパラメータを含み、好ましくは少なくとも1つの又は正確に2つのピペッティングパラメータを含み、好ましくは少なくとも1つの又は正確に3つのピペッティングパラメータを含み、好ましくは少なくとも1つの又は正確に4つのピペッティングパラメータを含み、好ましくは少なくとも1つの又は正確に5つのピペッティングパラメータを含み、好ましくは少なくとも1つの又は正確に最大10のピペッティングパラメータ、又はそれ以上のピペッティングパラメータを含む。特にデータ処理手段は、ユーザが表示された画面若しくはホーム画面で1つの、特に任意の操作要素を作動すると、ピペッティングパラメータセットに関連するピペッティング作業を開始するようにプログラムされている。
【0044】
好ましくは、画面の入力タイル、特に第1の入力タイルにタッチすると、ユーザが関連するピペッティングパラメータ、特に少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする入力インターフェースが開く。
【0045】
入力タイルとは、タッチスクリーン上に表示された画面のマーキングされた入力領域を意味し、それにタッチすることは入力を表し、タッチした結果、プログラミングは好ましくは一連の動作、特に入力インターフェースの表示を開始する。制御プログラムによってこの入力タイルへの入力として評価される検出範囲は、マーキングされた面と異なり、例えばより大きいということはあり得るが、マーキングされた面、即ち目に見える入力タイルは、検出範囲に対応していることが好ましい。検出範囲がマーキングされた面よりも大きいと、不正確な位置のタッチも入力として検出される。検出範囲がマーキングされた面より小さいと、ユーザは入力タイルに正確な位置でタッチするように訓練され、不正確な位置のタッチの数を増やすことなく隣接する入力タイルの間隔を小さくでき、入力/出力のために利用できる面をより効率的に活用できるようになる。このような公差は、他の入力タイル又は画面の他の入力フィールドの検出範囲にタッチしない限り、許容され又はユーザの満足度を促進する。目に見える入力タイルは実質的に矩形の領域であることが好ましいが、それはディスプレイが実質的に矩形であるため入力及び出力のために存在する面が最も効率的に利用できるためである。しかしながら、また、そのような領域は別様とすることができ、例えば六角形、円形セグメント、多角形及び/又は丸みを帯びてもよい。入力タイルの幅bは、特にピペット装置を通る長手方向軸線Aに対して垂直に見て、好ましくはスクリーンの全幅Bの部分Xにわたって延びる。ここで、好ましくは0.8<x<1、好ましくは0.9<x<1、好ましくは0.95<x<1である。入力タイルの幅が大きいことによって、入力が簡便になる。この場合、b=B*xであることを意味する。
【0046】
入力タイルの背景は明るく、特に白であり、その上に示される情報は暗く、特に青又は黒であることが好ましい。しかしながら、また、例えばディスプレイの夜間モードでは、逆に背景は暗く、情報は明るくすることも可能である。好ましいのは、暗闇から直射日光まで、あらゆる通常の照明において、ユーザが情報を読みやすくするために、背景との十分なコントラストがあることである。ピペット装置は、好ましくは光に感応するフォトセンサを含んでいる。制御装置、特にデータ処理手段は、好ましくはフォトセンサから受信した光強度に対してスクリーンの明るさを所定の関係に維持するように設定若しくはプログラムされている。これは外光の強度が増加したら画面の明るさを増加させ、特に外光の強度が減少したら画面の明るさを減少させることを意味し得る。しかしながら、また、スクリーンの明るさは一定であることもでき、特に工場で事前に指定することができ、別のパラメータに応じて、例えばロードされた適用シナリオ又はロードされたユーザプロファイルに応じて自動的に調整可能であり、及び/又はユーザによって調整可能となり得る。
【0047】
画面、特にホーム画面は、好ましくは少なくとも1つの入力フィールドを有し、それにタッチすることによりユーザは少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータを選択することができる。このような入力の可能性を実現するために、本ピペット装置では幾つかの有利な解決策が見出された。第1の解決策では、入力フィールドは、画面、特にホーム画面の縁、特に下側又は上側の縁でマーキングされた領域であり、好ましくはそこで表示される入力フィールドのリストを中断しないようにされている。この入力フィールドがそこに表示される入力タイルに対して有する特別な位置は、特別な機能、即ち現在のパラメータセットに追加(又は拒否)すべき新しいピペッティングパラメータの選択及び/又は拒否のための新しい画面(「選択画面」ともいう)を開くことを明確にする。選択画面を閉じた後に、少なくとも1つの選択されたピペッティングパラメータが現在のパラメータセットに追加されて画面に表示される。ピペッティングパラメータを選択/拒否するための第2の解決策では、画面は、画面を表示するためにスクリーン上で利用可能な表示面を超える大きさ、特に長さ又は幅を有する。この最初は見えない画面の領域に入力タイルを設けることができ、これらの入力タイルは、特にそれぞれ1つの値、又は入力タイルに属するピペッティングパラメータの値を記述する情報、例えば特定のピペッティングパラメータの「オン/オフ」、特にこのピペッティングパラメータによって表される機能の「オン/オフ」を示すスイッチを含む。
【0048】
画面は、画面を表示するためにスクリーン上で利用可能な表示面よりも大きくてもよい。この場合、画面はスクロール可能、例えば垂直方向にスクロール可能であってよい。しかしながら、また画面は、スクリーン領域をタップするか、又はスクリーンをスワイプすることによってめくることも可能である。これは、基本的に知られている入力ジェスチャー「スワイプ」によって表示内容をめくること、つまり現在表示されている画面の領域の下方又は上方又は横方向に続く画面領域を表示させることである。
【0049】
「選択」という用語は、特にピペット装置のデータ記憶装置に保存できるピペッティングパラメータの所定の全量から1つのピペッティングパラメータを起動することを指す。ピペッティングパラメータを起動した結果、直ちにそのピペッティングパラメータが現在のパラメータセットに追加されてよいが、確認ダイアログを介在させて、ユーザがこの追加を確認又は阻止するようにすることも可能である。これに従って「拒否」を定義すると、起動されたピペッティングパラメータを無効化し、それに対応してユーザ定義されたユーザパラメータセットを変更することである。
【0050】
データ処理手段は好ましくは、このユーザ操作によるピペッティングパラメータ、特に第2のピペッティングパラメータの選択を検出した後、以下の動作をするようにプログラムされている。
・少なくとも1つの特に第2のピペッティングパラメータが、パラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータに追加されて、この少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータにより、ユーザ定義されたピペッティング作業を定義するユーザパラメータセットのピペッティングパラメータを定義する。
・この少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択が、画面、特にホーム画面にユーザに表示される。
【0051】
ピペット装置のデータ処理手段が、スクリーンにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示するようにプログラムされていることは、独立した発明と見なされる。この場合、GUIは少なくとも以下のことを含んでいる。即ち、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータが表示される画面、特にホーム画面がスクリーンに表示され、この画面は、ピペッティング作業、特に基本的ピペッティング作業を定義するパラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第1の入力タイルを含んでおり、これにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする入力インターフェースが開き、画面は少なくとも1つの入力フィールドを有しており、これにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータを選択できるようになり、データ処理手段は、このユーザ操作による選択を検出した後、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータが、パラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータに追加されて、この少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータによって、ユーザ定義されたピペッティング作業を定義するユーザパラメータセットのピペッティングパラメータを形成するようにプログラムされており、この少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択が、画面、特にホーム画面でユーザに表示される。
【0052】
本発明は、ピペット装置の革新的な操作コンセプトの特に有利な態様を表している。発明者らはユーザ調査に基づき、相当数のユーザにおいて、ユーザが所望のピペッティング作業をほとんど自分の希望に従って定義するピペット装置を用いて、既存の、例えば実績のあるパラメータセット又は基本パラメータセットにピペッティングパラメータ、即ち機能又は特徴を補うことによって、より効率的なワークフローを形成できることを認識した。この方策により、個々人が所望するピペッティングステップを定義するという目標を、明らかに最適で効率的に達成できる。特に、基本パラメータセットがスクリーン、特にホーム画面で提供されて直ちに実行できれば、即座に操作の成功体験が得られ、操作説明書を長時間かけて学ぶ必要もなくなる。ユーザは短い習得時間で可能なピペッティングパラメータのリストを概観し、それによって電動ピペット装置が備えている高機能の可能性をより効率的に活用することができる。このことは特に、先行技術による公知のピペット装置で、適用シナリオを表す既存の多かれ少なかれ複雑な動作モードを習得することに困難を感じ、そのため最も単純な動作モードで満足している多くのユーザグループに該当する。この新規のコンセプトは、未経験のユーザには機能の習得を促すとともに、熟練ユーザには完全なフレキシビリティーを提供する。
【0053】
ユーザパラメータセットを定義する上記の方策は、例えば別画面によって、ユーザによる選択を意図した他の、特により複雑なパラメータセットも提供できることを排除しないことに留意されたい。これらのパラメータセットは、あらかじめ定義された適用シナリオを表す、ユーザによって保存されたパラメータセット、又は以前に適用されたパラメータセットのリスト(このリストはパラメータセット履歴とも呼ばれる)の自動的に保存されたパラメータセット、又は統計的に最も頻繁に実行されたパラメータセット、又はユーザによって決定されたパラメータセットのお気に入りリストである。
【0054】
そのような別画面は、GUIの構成部分をなし、好ましくは他の全ての画面と同様に、特にデータ記憶装置に保存されているプログラム若しくはプログラムコード、特に動作プログラム又は制御プログラムに従ってスクリーン上に表示される。好ましくはGUIの構成部分である、そのような画面の例は、以下の通りである。
【0055】
好ましくは、お気に入り画面が設けられ、1つ以上の、任意に最大総数M1に制限された数のピペッティングパラメータセットが、特にリストアップされて表示される。これらのピペッティングパラメータセットは、ユーザによって以前に作成されたか、又はユーザによって他の画面からロードされたものであり、ユーザが入力オプションを用いて、例えば特にスクリーンの縁に配置されたメニューバー及び/又はナビゲーションバーに設けることができる入力フィールド、特に星形の絵文字若しくは他の外観の入力フィールドにタッチすることによってお気に入りとしてマーキングした。
【0056】
好ましくは、履歴画面が設けられ、1つ以上の、任意に最大総数M2に制限された1つ以上のピペッティングパラメータセットが表示される。これらのピペッティングパラメータセットの各々は、特に過去に実行され、特に自動的に保存されたピペッティングパラメータセットによって形成され、過去のピペッティング作業をシミュレートしたものである。
【0057】
好ましくは、プログラムセット画面が設けられ、1つ以上の、任意に最大総数M3に制限されたピペッティングパラメータセットが、特にリストアップされて表示される。これらのピペッティングパラメータセットは、ユーザによるプログラミングによって作成されたものである。このプログラミングは、特にプログラミング画面で行うことができ、ユーザはモジュールシステムに従って、ピペッティングパラメータによって定義可能なピペッティング作業の所定のシーケンスから段階的にプログラムステップをコンパイルし、これらの入力は、特に制御プログラム又は他のプログラムによって自動的に一貫性についてチェックされ、そこからプログラムされた相応のピペッティングパラメータセットが作成され、特にユーザの指定に従って、プログラムセット画面に追加され、そうして特に保存される。プログラミングは、外部データ処理装置で行うこともでき、この場合は外部で作成されプログラムされたピペッティングパラメータセットは、ピペット装置の通信手段によってピペット装置に転送される。プログラミングは、特に当業者が適切に用意できる、ピペット装置に実装されたプログラミング(マーキングロ)言語を用いて、特にGUIで任意に選択可能な入力フィールド、テキスト記述及び絵文字によって行われ、それらをユーザが段階的に接合する、しかしながら、好ましくは、レコーダー機能によってプログラミング(マーキングロ)コードが生成され、それは再びユーザによって、特にプログラミング画面で編集可能である。
【0058】
好ましくは、自動プログラミング画面が設けられ、1つ以上の、任意に最大総数M3に制限されたピペッティングパラメータセットが、特にリストアップされて表示される。これらのピペッティングパラメータセットは、事前にピペット装置のレコーダー機能により、ユーザが手動で設定及び実行したピペッティングパラメータ及び/又はピペッティング作業の設定ステップから、自動的に、即ち実質的にユーザの介入なしに導出され、特にデータ記憶装置に保存されているものである。典型的には、このレコーダー機能は、レコーダー機能の記録の開始を定義するGUIの入力フィールドにユーザがタッチすることによってトリガされ、特にこのレコーダー機能は、レコーダー機能の記録の終了を定義するGUIの入力フィールドにユーザがタッチすることによって終了する。所望のピペッティングプログラムのステップを作成するために、任意の所望のピペッティングパラメータを有するホーム画面から出発して、これらのピペッティングパラメータの値が規定され、操作要素が操作されて、試料量の吸引若しくは排出を所望の方法で実行する。この場合、シミュレートするか又はシミュレートしないが、これはモーターによって動かされる動作要素が操作要素の作動後に好ましくは移動できないか、好ましくは移動できることを意味する。レコーダー機能のこの「ティーチイン」特性により、ユーザがそのピペットを調整してピペッティングを実施する間に関連するピペッティングパラメータセットを作成して保存することができ、特にユーザがピペット装置に実装されたプログラミング(マーキングロ)言語を取り扱う必要はない。しかしながら、レコーダー機能によってプログラミング(マーキングロ)コードが生成され、それは再びユーザによって、特にプログラミング画面で編集可能であることが好ましい。
【0059】
好ましくは、シナリオ画面が設けられ、1つ以上の、任意に最大総数M3に制限されたピペッティングパラメータセットが、特にリストアップされて表示される。これらのピペッティングパラメータセットは、特に製造者によって用意されたものである。これらのピペッティングパラメータセットは、冒頭に記載した適用シナリオの1つ以上又は全てを定義することができる。相応のピペッティングパラメータセットの選択は、対応する適用シナリオを表し、対応する略称を付けた入力フィールド又は入力タイルにタッチすることによって行われる。
【0060】
上記の画面の1つで選択されたピペッティングパラメータは、入力フィールド、特に入力タイルによって表すことができる。ユーザは入力タイルにタッチして、相応のピペッティングパラメータセットをアクティブなピペッティングパラメータセットにすることができ、そのピペッティングパラメータは、特許請求項に従う(主)画面、特にホーム画面、又は別画面に表示される。ピペッティングパラメータセットを直接中央画面、特にホーム画面に転送することは、クイック選択とも呼ばれる。別画面に転送する際には、特に入力オプションを設けて、選択されたピペッティングパラメータセットのピペッティングパラメータで新しいプログラムを作成し、ピペッティングパラメータセットを編集し、このピペッティングパラメータセット又はその構成部分を削除することができる。
【0061】
上記の総数M1、M2、M3、M4、M5は、特に選択可能とすることができ、又は固定的に、例えばそれぞれ1~50、特に2~30、特に5~25の任意の数に指定することができる。
【0062】
基本パラメータセットは、特に、3つのピペッティングパラメータ、特に容量V、速度v(吸引/排出の2成分ベクトルパラメータ)、(この吸引又は排出の)繰り返しステップの数nのピペッティングパラメータを含むことができる。容量は、特に1回の吸引及び/又は排出においてピペット容器に吸引される容量若しくはピペット容器から排出される容量である。容量については、好ましくは物理的単位に関する情報、例えばmL又はμLも入力タイルに表示される。速度は特に、ピペッティング速度に関連するため意味的に関連する2つの情報、即ち液体を試料容器に吸引する速度と試料容器から排出する速度に関する情報を含むベクトル値である。速度に属する数値は、ピペット容器と周囲との間で交換される液体の速度に比例することができる(代替:非比例関係)。ユーザにより選択可能な速度は、例えば1...10のような序数又は文字A...Jなどの文字又はその他の記号によって表される速度レベルで指定できる。この場合、レベル4はレベル2の2倍の速度を表す必要はないが、表すことは可能である。基本パラメータセットは、特に上記の例(V、v、n)におけるように、実行可能なピペッティング作業を定義するように選択されている。
【0063】
入力フィールドは、好ましくは追加ボタンとして設けられ、特にスクリーン上に表示される入力タイルとは異なる形状及び/又は配色及び/又は背景色及び/又はスクリーンの縁に位置する追加ボタンとして設計された唯一の入力フィールドが設けられている。特別ボタンにタッチすると、好ましくは画面、特にホーム画面に代わり、その上に重なる画面(オーバーレイ)として選択画面、特に利用可能な、即ちデータ記憶装置に保存されているピペッティングパラメータの所定の選択群が選択リストの形で表示される。これは選択可能な第2のピペッティングパラメータに関する情報、特に(ピペッティングパラメータの内容を特定するための)概要を含んでおり、そこからユーザは少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータを選択できる。
【0064】
好ましくは、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択が完了した後に選択画面若しくは選択リストが閉じられ、再び画面、特にホーム画面が表示される。この画面は、いまや少なくとも1つの第1の入力タイルに加えて、少なくとも1つの第2の入力タイルも表示する。これは、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択及び/又は値、又はこの値を表す少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータに関する情報を表す。「少なくとも1つの第1の入力タイル」という表現は特に、例えば正確に3つの「第1の入力タイル」が設けられてよいことを意味し、そのため場合により追加される「少なくとも1つの第2の入力タイル」は、このとき表示されている4つの入力タイルの4番目となり得る。
【0065】
好ましくは、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータが、ユーザにより選択可能な値を取り得る場合に、選択画面/選択リストの内部で又は選択画面/リストが閉じた後に、少なくとも1つの第2の入力タイルにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする入力インターフェースが開くようにされている。
【0066】
現在のパラメータセットに対して別のピペッティングパラメータを選択するための第2の解決策によれば、好ましくは画面にN≧1群の入力フィールド、特に入力タイルが、特に入力タイルのスクロール又はスワイプ可能なリストとして表示され、各入力フィールドには入力フィールドを用いて選択可能な第2のピペッティングパラメータに関する情報、特に概要、絵文字及び/又は物理単位が割り当てられて表示される。
【0067】
好ましくは、N群の入力フィールドから少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータをユーザ操作により選択した後、この少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択及び/又は値又はこの値を表す情報が表示される。
【0068】
好ましくは、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータがユーザにより選択可能な値を取り得る場合に、いまやスクリーン/ホーム画面に表示されている少なくとも1つの第2の入力タイルにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする。
【0069】
好ましくは、データ処理手段は、少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第1の入力タイルを含む画面、特にホーム画面をスクリーンに表示し、これにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする入力インターフェースが開くようにプログラムされている。
【0070】
この入力インターフェースは、好ましくは数字キーパッドが表示されるスクリーン領域であり、その数字キーは個々にタッチ可能であり、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を定義する数字列を入力するために使用できる。スクリーン領域は、現在の画面に置き換わる新しい画面のスクリーン領域となり得る。入力インターフェースは、スクロール可能な選択リスト、又は他の可能な数値若しくは他の情報を備えた選択可能なフィールドの入力、例えば入力ローラー、又は多数の可能な選択可能な数値の並列表示を含むこともできる。好ましくは、入力インターフェースは、以前になされた値の変更がユーザによって確認される入力フィールドを有する。好ましくは、入力インターフェースは、入力若しくは値の設定が中止されて、画面、特にホーム画面に戻る入力フィールドを有する。好ましくは、入力インターフェース、好ましくは画面、特にホーム画面、入力フィールドを有し、これにタッチすると、選択によって最後にパラメータセットに追加されたピペッティングパラメータ、特に少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータが再びパラメータセットから削除され、又はピペッティングパラメータの値に対して行われた最後の変更が取り消され(「undo」機能)、又はパラメータ選択がデフォルト選択、特に基本パラメータセットにリセットされる。
【0071】
入力インターフェースは、特に数字フィールド、リストから選択するための少なくとも1つの選択入力フィールド、特にプルダウンメニュー、少なくとも1つの選択ホール(ピッカーホイール)、及びスクリーンにタッチしてパラメータ、特にピペッティングパラメータの数値を変更させる他の手段を有することができる。
【0072】
好ましくは、データ処理手段は、ユーザが入力インターフェースを介して入力したピペッティングパラメータの値が許容されない場合は、スクリーンに情報が表示され、好ましくは
・少なくとも1つの修正ボタンが表示され、それにタッチすると、ユーザによって入力された値の代わりに、自動的に少なくとも1つの修正作業を実施し、これらの修正作業は、
許容されない値に代えて許容される値が自動的に設定され、
上記のピペッティングパラメータに代わる少なくとも1つのピペッティングパラメータが選択され、特にユーザの値又は他の適切な値で占められ、
ユーザの入力がキャンセルされて、特に再度入力が可能になる、構成を含むことができ、
及び/又は
・エラーメッセージが出力され、
及び/又は
・以前アクティブな値の変更は無視され、以前アクティブな値が維持され、
及び/又は
・組み合わせ不可能な機能を表す他の組み合わせ不可能なピペッティングパラメータは自動的に拒否されるようにプログラムされている。
【0073】
好ましくは、データ処理手段は、特に互いに上下に配置され、特に実質的に画面全体にわたって延びる、実質的に矩形の入力タイルのリストを含む画面、特にホーム画面をスクリーンに表示するようにプログラムされている。このようにして利用可能な面が最適に活用され、操作が人間工学的になる。
【0074】
好ましくは、データ処理手段は、スタート画面(ホーム画面)をスクリーンに表示するようにプログラムされており、この画面は、特にピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための画面であり、横方向又は垂直方向のスワイプジェスチャーによって第2の画面に置き換えられ、横方向又は垂直方向のスワイプジェスチャーによって第3の画面に置き換えられる。このことは、別のスワイプジェスチャーにより、第2又は第3の画面から始まって別の画面が表示可能であることを排除するものではない。
【0075】
好ましくは、データ処理手段は、第2の画面が入力フィールドのリストを含み、各入力フィールドは略称を付けていて、入力フィールドにタッチすると、所定のピペッティング作業を定義する所定のパラメータセットをロードし、特にこの入力フィールドにタッチした後に、スタート画面とは別の画面が表示され、又は代替的に所定のパラメータセットの入力タイルを有するスタート画面が再度表示されるようにプログラムされている。
【0076】
好ましくは、ピペット装置の以下の特別機能を提供する少なくとも1つの画面が設けられている。即ち、入力フィールドを介して入力されるか又は変更できる目標容量のピペッティングパラメータが必要とされる。操作要素を連続的に操作することにより、液体は目標量に達するまでピペット容器に吸引される。同様に若しくは代替的に、目標量の液体を排出するための特別機能が任意に設けられる。即ち、操作要素を連続的に操作することにより、液体は目標量に達するまでピペット容器から排出される。このように従来の機械式ピペットの機能形態を模倣することにより、ユーザは、例えばピペッティング作業を短時間中断し、特により制御された方法でピペッティングするなど一定程度の追加制御が可能になる。
【0077】
好ましくは、データ処理手段は、第3の画面が入力フィールドのリストを有し、各入力フィールドは略称を付けていて、入力フィールドにタッチすると、以下のパラメータセットのうちの1つがロードされるようにプログラムされている。即ち、
過去に使用されて自動的に保存された履歴ピペッティング作業を定義する履歴パラメータセット、
あらかじめ定義された特定の適用シナリオを表すパラメータセット、
ユーザによって保存されたパラメータセットであるパラメータセット、
統計的に最も頻繁に実行されたパラメータセット、
ユーザによって決定されたパラメータセットのお気に入りリストに属するパラメータセット、
ユーザによるプログラミングによって作成されたパラメータセット、又はユーザによって手動で設定された個々の設定ステップ若しくは実行されたピペッティング作業から、プログラムコード(特にピペット装置の制御プログラムの一部であってもよい)によって実現されたピペット装置のレコーダー機能によって自動的に作成されたパラメータセット、であって、
特にこの入力フィールドにタッチした後に、スタート画面とは別の画面が表示され、又は代替的に所定のパラメータセットの入力タイルを有するスタート画面が再度表示される。
【0078】
スクリーン(「ディスプレイ」とも呼ばれる)は、タッチセンシティブスクリーン(「タッチスクリーン」とも呼ばれる)である。これは、好ましくはカラーディスプレイである。
【0079】
タッチスクリーンは入力媒体として機能でき、タッチセンシティブでないスクリーンは少なくとも情報を出力するための出力媒体として機能でき、又はスクリーンの隣に配置された1つ以上の操作要素と組み合わせて入力媒体として機能でき、特にスクリーン領域がそれぞれの操作要素の機能について情報を与える場合は、特に可変機能を実行できるいわゆるソフトキーとして設計されている。
【0080】
スクリーンは、好ましくは基本的に矩形である。スクリーン上に表示される実質的に矩形の入力タイル及び/又は矩形の情報フィールドを使用すると、それによってスクリーン面を最適に利用することができる。
【0081】
スクリーンは、好ましくは実質的に平面である。それにより、ユーザは操作を行うために実験室内の光源に対して最も反射の少ない方向角を選択できるため、読みやすさを改善することができる。これに対して、湾曲したスクリーンでは、より広い立体角から光が把捉されてユーザの目に反射する。
【0082】
好ましくは、平面スクリーンは、スクリーンが配置されているハウジング前部の平面部と面一である。これにより、タッチスクリーンの周囲がハウジング前部によって保護される場合に、特にタッチスクリーンの縁に近い領域にタッチすることが容易になる。
【0083】
好ましくは、操作コンセプトの特別の発明的実施態様によれば、データ処理手段は、特に特別ボタンとも呼ばれる別個の入力領域を含む画面、特に出力画面をスクリーンに表示するようにプログラムされており、このボタンにタッチすると出力画面が閉じて、入力画面又は他の画面がスクリーンに表示され、これら他の画面も特にピペッティングパラメータセットに含まれたパラメータ値の編集を可能にすることもできる。さらに、特別ボタンにタッチすると、進行中のピペッティング作業を中止させることができ、この中止はユーザによって安全応答により確認されなければならないようにすることも可能である。ピペッティング作業が全て完了すると、特に特別ボタンにタッチする必要はなく、出力画面の代わりに入力画面が再び表示される。なおもその前/後に成功したピペッティング作業に関する情報が出力されるようにすることができる。ピペッティングシーケンス(「実行」)が既に始まっている場合に、例えば速度だけを素早く調整するときに、特別ボタンによって正確に前の入力画面に戻る必要はない。ピペッティング作業が開始された後では、全てのパラメータ値を変更/修正することはできず、現在のピペッティングパラメータセットの特定のパラメータ値のみ変更/修正できるようにすることも可能である。
【0084】
入力画面によって表される入力モード(「設定」)と出力画面によって定義される出力モード(「実行」)を区別することにより、特に「実行」モードの進行中にパラメータ値を誤って変更するという、実験作業を無効にして著しい価値の損失を招きかねない事態を防ぐことができる。他方、操作部材を操作して「設定」モードから「実行」モードへ切り替えることは、ユーザにとって非常に快適で、直感的に理解できる。これも人間工学と効率的なワークフローに大いに寄与する。入力画面と出力画面の区別は、以下に挙げる定義のうちの1つ以上によって行うことができる。定義は、それぞれ特に好適には、ピペッティング作業が開始され、電気的に制御された動作要素が動いているピペット装置の状態に関するものである。ピペッティング作業が開始され、電気的に制御された動作要素が動いていないピペット装置の状態が存在する場合は、定義が該当しないことがあり得る。それにより、例えばマルチステップピペッティング作業において、ピペッティング作業又はマルチステップピペッティング作業のサブステップが完了した後に、パラメータセットのピペッティングパラメータの変更を可能にする出力画面を表示する可能性が生じるが、好ましくは先に表示された入力画面において変更可能だった、特にピペッティングステップ開始直前に表示された入力画面で変更可能だったパラメータセットの全てのピペッティングパラメータではない。例えばマルチステップピペッティング作業において、ユーザが1つ以上の個々のピペッティングパラメータ、特に進行中のピペッティング作業の成功に重大な影響を与えないピペッティングパラメータを変更できるようにすることは、有用であり得る。吸引速度及び/又は排出速度(ピペッティング速度とも呼ばれる)は、そのようなピペッティングパラメータとすることができ、それを変更しても必ずしもピペッティング作業の結果を変えず、したがって途中で若しくはピペッティング作業の完了したサブステップの間に、ユーザのニーズに合わせることができる。可能な定義は、以下のとおりである。
【0085】
好ましくは、入力画面ではなく出力画が、追加ボタンと呼ばれる入力フィールドを有しており、それにタッチすると、(出力)画面が閉じて、この入力画面又は他の入力画面がスクリーンに表示される。
【0086】
出力画面が特別ボタンを有する場合、入力画面、特にホーム画面が特別ボタンを持たないことは明らかである。なぜなら、特別ボタンは出力画面を閉じるものとして定義されているため、現在は表示されていなければならないからである。
【0087】
好ましくは、出力画面ではなく入力画面が追加ボタンと呼ばれる入力フィールドを有しており、それにタッチすると、ユーザは続けて入力画面に表示されるパラメータセットのピペッティングパラメータ群を変更することが可能になる。好ましくは、出力画面ではなく入力画面が追加ボタンと呼ばれる入力フィールドを有しており、それにタッチすると、特に利用可能な、即ちデータ記憶装置に保存されているピペッティングパラメータの所定の選択群を選択リストの形で示す出力画面を表示させる。これは選択可能な第2のピペッティングパラメータに関する情報、特に(ピペッティングパラメータの内容を特定するための)概要を含んでおり、そこからユーザは少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータを選択できる。ここで、「第1のピペッティングパラメータ」とは、入力画面に既に先に表示されたものであると理解され、「第2のピペッティングパラメータ」とは、第1のピペッティングパラメータに追加されるものであると理解される。
【0088】
好ましくは、出力画面ではなく入力画面が、ピペッティングパラメータ、特にその数値を表示する入力フィールドを有しており、それにタッチすると直ちに、即ち特に実質的な遅延なく、特に別のユーザ動作が必要なく、ユーザが表示されたピペッティングパラメータの値を変更できる入力インターフェースが開く。
【0089】
好ましくは、出力画面及び/又は出力画面に続けて表示される別の出力画面は、以前入力画面に表示され入力によって変更可能なピペッティングパラメータを、特にその半分以上を、特にその全てを変更する可能性を有さない。好ましくは、出力画面及び/又は出力画面に続けて表示される別の出力画面は、以前入力画面に表示され入力によって変更可能なピペッティングパラメータの総数又は一部f(特にf>3/4又はf>2/3又はf>1/2又はf>1/3又はf>1/4)又は少なくとも1つを変更する可能性を有さない。
【0090】
好ましくは、出力画面及び/又は出力画面に続けて表示される別の出力画面は、以前入力画面に表示され入力によって変更可能な少なくとも1つの所定のピペッティングパラメータを変更する、特に直接的及び/又は間接的に変更する可能性、特に入力フィールドを有さない。この少なくとも1つの所定のピペッティングパラメータは、好ましくは可能なピペッティングパラメータの以下のリストから選択されている。
【0091】
{ピペッティング作業中に吸引又は排出される容量、複数のサブステップからなるピペッティング作業におけるサブステップの数、特に総数。特にピペッティング作業におけるプレウェットステップの数(ゼロよりも大きい)。特に本来のピペッティング作業の開始前にピペット容器の内面を濡らすために、プレウェットステップの間に液体がピペット容器に吸引され再び排出出される、時間パラメータ、特にピペッティング作業又はマルチステップピペッティング作業のサブステップの持続時間、又はピペッティング作業の間又はマルチステップピペッティング作業のサブステップの間の潜伏時間、ピペッティング作業の実施後にピペット容器に残る残量の完全な排出の自動的実行/非実行に関するパラメータ(「自動ブローオフ」機能の起動又は無効化)、ピペッティング作業の速度、特にマルチステップピペッティングプロセス、特に分注プロセスのサブステップの間、特に試料量をピペット容器に吸引し、ピペット容器から排出する速度に関する速度パラメータ}
【0092】
ピペッティング容量は、ピペッティング作業中又はマルチステップピペッティング作業のサブステップ中にピペット容器に吸引される容量であるか、又はピペッティング作業中又はマルチステップピペッティング作業のサブステップ中にピペット容器から排出される容量、特にマルチステップピペッティング作業中に排出される分注容量とすることができる。
【0093】
好ましくは、出力画面又は続けて表示される出力画面は、特に特別ボタンを度外視すれば、入力フィールドを持たず、特にタッチすることによって出力画面の内容が特に即座に変更され及び/又は開始されたたピペッティング作業が特に即座に変更されるような入力画面を持たない。
【0094】
好ましくは、出力画面又は続けて表示される出力画面は、特に特別ボタンを度外視すれば、先に表示された入力画面に表示され、そこで入力によって変更可能であったピペッティングパラメータの1つを変更するための入力フィールドを持たない。
【0095】
好ましくは、出力画面又は続けて表示される出力画面は、特に特別ボタンを度外視すれば、ピペッティングパラメータを変更するための入力フィールドを持たない。即ち、タッチすると、入力画面を用いて入力されたピペッティングパラメータのパラメータセットの1つ以上又は全てのピペッティングパラメータの変更を、特に直接的又は間接的に可能にして、特に先に入力画面に表示され、入力によって変更可能な少なくとも1つの所定のピペッティングパラメータを変更できる、及び/又は特に進行中のピペッティング作業のピペッティングパラメータの1つを変更できる入力フィールドを持たない。「直接的に変更する」とは、特に入力フィールドにタッチした後、即座に入力インターフェースが開いて、ユーザが表示されたピペッティングパラメータの値を変更できることを意味する。「間接的に変更する」とは、特に少なくとも1つの入力フィールドを持つ入力画面が最初に開き、その入力フィールドにタッチすると、即座に入力インターフェースが開いて、ユーザが表示されたピペッティングパラメータの値を変更できることを意味する。
【0096】
好ましくは、出力画面ではなく、入力画面、特にホーム画面にのみ、ピペッティングパラメータのパラメータセットの少なくとも1つ以上又は全ての変更可能なピペッティングパラメータの変更が設けられている。特に、出力画面ではなく入力画面のみが、入力フィールド、特に少なくとも1つの第1の入力タイルを含んでいる。この入力タイルは、特にピペッティング作業、特に基本的ピペッティング作業を定義するパラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示し、それにタッチすることにより、即ちこのタッチに続く別のユーザ入力なしに、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする入力インターフェースが開く。ピペッティングパラメータのパラメータセットのこれらのピペッティングパラメータは、特に上述した可能な「所定の動作パラメータ」のリストから選択できる。
【0097】
好ましくは、入力画面ではなく出力画面は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて、様々な内容、特に現在進行中のサブステップを定義するピペッティングパラメータの値、例えばピペッティング作業の合計Nステップのサブステップiとして特定の排出速度v2での部分容量Vtの排出を表示する。これは、例えば適用シナリオ「Dis」に該当しよう。
【0098】
好ましくは、入力画面ではなく出力画面は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて、マルチステップピペッティングの進捗に関する情報を含む進捗インジケーターを表示する。
【0099】
好ましくは、入力画面ではなく出力画面は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて、可変表示要素、特に以下詳述するように表示ホイール若しくは表示ローラーを示す。
【0100】
特に上記の定義により、入力画面と出力画面の区別を行うことができる。
【0101】
ピペッティング作業は、異なる開始条件を満たすことによって開始できるか、又は開始条件を固定することもできる。それは、操作要素の(最初の)操作によって直接行われることもあれば、安全応答の意味で又は他の理由で、この第1の操作に直接(即ち特に特別ボタンにタッチすることなく)続く第2の操作、場合によってはタッチスクリーンとは異なる操作要素の第3の操作によって行うこともできる。データ処理手段は好ましくは、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための入力画面、特にホーム画面を表示し、(スクリーンとは異なる)少なくとも1つの操作要素の作動が検出されると、入力画面の代わりに、入力画面で定義されたパラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための出力画面(略称「実行」)をスクリーンに表示し、特にこの操作又はこの操作に続く(スクリーンとは異なる)操作要素の作動によって起動されてピペッティング作業を開始し、又は特に、出力画面の表示を引き起こす少なくとも1つの操作要素の作動が検出されると、又はそれに続くこれらの操作要素の1つの操作によって、このピペッティングパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始するようにプログラムされている。データ処理手段は好ましくは、上記の開始条件が、ユーザによりピペット装置においてGUIの入力インターフェースを介して選択可能であるようにプログラムされている。
【0102】
入力画面は、好ましくはそのグラフィッカルな表現において、特に各出力画面と異なっている。特に出力画面は、マーキング及び/又は情報フィールドの異なる配色及び/又は異なる配置を有する。特に出力画面は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて様々な内容、特にサブステップを現在定義しているピペッティングパラメータの値、例えばピペッティング作業の合計Nステップのサブステップiとして特定の排出速度v2での部分容量Vtの排出を表示する。これは、例えば適用シナリオ「Dis」に該当しよう。特に外形的識別性によって実現される、入力画面と出力画面を区別するコンセプトは、操作において重要な人間工学的利点を形成する。なぜなら、ユーザは自分が現在、場合によってはピペッティング作業が中断されて操作を待機しているのか、それとも設定モードにいるのかを最小限の労力で認識できるからである。したがって入力画面と出力画面のコンセプトは、ユーザにとって容易に区別できるピペット装置の入力モードと出力モードを意味する。好ましくは、別個の入力領域にタッチするだけで、或いはピペッティング作業が完了すると自動的に入力画面、特にホーム画面に戻ることができて、ユーザはパラメータ値の変更、又は再度パラメータの選択を行うことができる。この分離により、特に「実行」モードの進行中にパラメータ値を誤って変更するという、場合によっては実験作業を無効にして著しい価値の損失を招きかねない事態を防ぐことができる。他方、操作部材を操作して「設定」モードから「実行」モードへ切り替えることは、ユーザにとって著しい快適を意味し、直感的に理解できる。これも人間工学と効率的なワークフローに大いに寄与する。
【0103】
少なくとも1つの操作要素は、特にタッチセンサスクリーンの構成部分ではない。少なくとも1つの操作要素は、好ましくは押しボタンとして、即ちユーザが正規の方法で手持ち式ピペット装置を片手で保持したときに、ユーザによって特に親指で操作可能な部材として設計されている。このために、グリップとして用いられるハウジングを手で握るが、このときハウジングのハンドサポートは人差し指の上に載っている。この場合、タッチスクリーンの操作は、特にピペット装置を保持していない手の指によって行われる。
【0104】
データ処理手段は、出力画面の表示中、即ち特にピペット装置の出力モードで、ピペット装置の(ピペットチップを取り外すための)イジェクトボタンを押すと、若干のシナリオにおいて又は原則として、出力画面の代わりに入力画面、特にホーム画面、又は他の入力画面が表示され、及び/又はピペッティング作業は停止若しくは中止されるようにプログラムすることができる。
【0105】
パラメータセットのピペッティングパラメータによって定義されたピペッティングプログラムは、例えば特定のステップシーケンス若しくはサブステップが反復的又は周期的に繰り返される場合、複数の時間的段階を有することができる。ピペッティング作業が、例えば10のステップシーケンスを含んでいると、出力画面は好ましくは実行される各ステップで、10のステップシーケンスのうちどれが現在実行されているか及び/又は残りのステップシーケンスがどれだけ残っているかを示す。さらに、現在の(アクティブな)ステップの1つ以上のピペッティングパラメータを表示することができる。出力画面には好ましくはアクティブなパラメータ設定が表示されて、操作要素が押されると次に何が起こるか、例えばピペッティングステップ3/3が150μL及び速度Xで実行されることが表示される。
【0106】
好ましくは、出力画面は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて、様々な内容、特に現在進行中のサブステップを定義するピペッティングパラメータの値、例えばピペッティング作業の合計Nステップのサブステップiとして特定の排出速度v2での部分容量Vtの排出を表示する。これは、例えば適用シナリオ「Dis」に該当しよう。
【0107】
マルチステップピペッティング作業の進捗を示すために、出力画面は、好ましくは表示要素、特に単一部分又は複数部分からなる出力タイルを有する。表示要素は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて、様々な内容、特に現在進行中のサブステップを定義するピペッティングパラメータの値を表示する。表示要素は、特に出力画面の大きさが変化するか、又は一定の領域を占めている。
【0108】
好ましくは、サブステップi(iは特に連続的に進行するサブステップをカウントするカウントインデックスである)を表示する表示要素の第1の状態における第1のビューは、サブステップi+1を表示する第2の状態における第2のビューと異なっている。ビューの相違は、出力画面、特に表示要素に、第1の状態ではカウントインデックスiが表示され、第2の状態ではカウントインデックスi+1が表示されることとすることができる。さらに、ビューの相違は、出力画面、特に表示要素に、第1の状態と第2の状態で、それぞれのサブステップで適用されるピペッティングパラメータの異なる値が表示されることであってもよい。
【0109】
好ましくは、表示要素は、現在進行中のサブステップiで適用される1つ以上のピペッティングパラメータの1つ以上の値が表示される第1の出力タイルを有する。好ましくは、表示要素は追加的に、将来進行するサブステップi+1で適用される1つ以上のピペッティングパラメータの1つ以上の値が表示される第2の出力タイルを有する。これにより、ユーザはピペット装置を用いた作業について、より良好な概観とより適切な制御を得ることができる。好ましくは、表示要素は、先行のサブステップi-1で適用された1つ以上のピペッティングパラメータの1つ以上の値が表示される、他の第2の出力タイル又は第3の出力タイルを有する。これによっても、ユーザはピペット装置を用いた作業について、より良好な概観とより適切な制御を得ることができる。同様に、連続的に計画された将来のサブステップ(例えばi+2、i+3など、最大i=N)を有する別の出力タイルを、少なくとも部分的かつ同時に表示することができる。同様に、連続する先行のサブステップ(例えばi-2、i-3など、最大i=N)を有する別の出力タイルを、少なくとも部分的かつ同時に表示することができる。
【0110】
表示要素は、特にサブステップiに応じて、第1の出力タイルと、第2及び/又は第3の出力タイルのうちの1つ以上を含むことができる。
【0111】
好ましくは、表示要素は、少なくともサブステップiの間、上記の第1の出力タイル、上記の第2の出力タイル、及び上記の第3の出力タイルを有する。好ましくは、第1の出力タイルは、空間的に第2の出力タイルと第3の出力タイルとの間に配置されている。この配置において、表示要素は、表示ホイール又は表示ローラーとも呼ばれる。表示ローラーは、好ましくは少なくとも3つの位置(例えば中央、左、右、又は中央、上、下)を有し、これらの位置はそれぞれのサブステップを特徴付ける出力タイルによって占めることができる。インデックスカウンターiによってカウントされるマルチステップピペッティング作業の進捗は、表示ローラーの出力タイルの回転によって表され、例えば10ステップ(N=10)のピペッティング作業(例えば分注作業)では、ピペッティング作業の開始時(i=1)にサブステップi=1に関連する出力タイルは中央ローラー位置にある。その一方で、サブステップi=0に関連する出力タイルは存在しないか、又は存在して中央位置の横方向(左、右、上、下)に表示されて、ピペッティング作業全体に関する情報が表示されるか、他の情報が表示されるか、又は情報は表示されない。他方、将来のサブステップi=2に関連する出力タイルは、中央ローラー位置の横方向に、最初の位置とは反対(例えば右、左、下、上)にある。サブステップi=1が完了すると、第1の出力タイルは中央位置から横方向位置に移り、現在進行中のサブステップi=2に関係する第2の出力タイルは中央位置に移り、さらに現在まだ将来のサブステップi=3に関係する第3の出力タイルは新たに表示ローラーの他の横方向位置で表示される。
【0112】
好ましくは、出力画面、特に表示要素、特に表示要素の少なくとも1つの出力タイルには、マルチステップピペッティング作業の進捗に関する情報を含む進捗インジケーターが表示される。特にカウントインデックスiと、追加的にマルチステップピペッティング作業のサブステップの総数の値Nを、例えばテキスト出力「Nのうちのi」又は「i/N」の形で表示できる。進捗インジケーターは、追加的又は代替的に、進捗の非数値的でグラフィッカルな表現、特に進捗バー、又は現在進行中のサブステップiの位置をグラフィカルに強調した連続的に進行するサブステップ1・・・Nを表す線を含むことができる。
【0113】
表示要素が、例えば表示ローラーのように、サブステップに応じて複数の出力タイルを有する場合、表示要素の第1のビューが第2のビューに変わるのをアニメーション化して表現するようにできる。さらに、表示ローラーの横方向位置は、特に三次元オブジェクト(ローラー、ホイール)をシミュレート又は表現するため、及び/又は遠近法をシミュレート又は表現するために、陰影を付けたり明るくしたりして表現することができる。これにより、ピペット装置を用いた作業がさらに直感的になる。
【0114】
好ましくは、データ処理手段は、ピペット装置が、特にロッカーボタンによって互いに別々に作動可能な、正確に1つの第1の操作要素と第2の操作要素を有するようにプログラムされている。これとは別に、ピペット容器、特にピペットチップをイジェクトするためのイジェクトボタンを設けることができる。これにより、操作は直感的かつ人間工学的になる。
【0115】
データ処理手段は、好ましくは、ユーザによる操作要素、特に第1の操作要素の作動を検出し、操作要素の作動に応じてパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始するようにプログラムされている。ピペッティング作業が、操作要素の作動の直後に開始されること、又は開始前に1つか2つの中間作業、例えばブローアウト、即ちオーバーストロークを用いたピペット容器内の残液の吐出、又はピペッティング作業の別のステップの開始前に1回又は複数回のプレウェット量の試料を1回以上吸引及び排出することによるピペットチップのプレウェットを行うことが可能であり、或いはピペッティング作業の別のステップの開始前に、混合量の吸引及び排出を設けた混合ステップを行うことができる。
【0116】
好ましくは、ピペット装置は、それぞれ別個に配置されたボタンである第1の操作要素と第2の操作要素を有する。ピペット装置は、好ましくはロッカーボタンと、このロッカーボタンによって互いに別々に作動可能な第1の操作要素と第2の操作要素を有しており、ロッカーボタンの第1の押圧面を押して第1の操作要素を作動し、ロッカーボタンの第2の押圧面を押して第2の操作要素を作動し、第1の押圧面と第2の押圧面は触覚的に区別できる。特に第1の押圧面と第2の押圧面は、以下の触覚的に知覚可能で識別可能な外形的特徴に関して区別できる。即ち、*特に第1の押圧面が凹状であり、第2の押圧面が凸状であることによる第1の押圧面と第2の押圧面の任意の湾曲方向、*第1の押圧面と第2の押圧面の表面構造、*第1の押圧面と第2の押圧面の材料。ピペット装置の動作の所定の状況において、例えば設定モードにおいて操作要素の1つを押すことによって実行モードを開始した後、第1の操作要素は、特に試料を吸引させることができ、第2の操作要素は、特に試料を排出させることができる。代替的に、第2の操作要素は、特に試料を吸引させることができ、第1の操作要素は、特に試料を排出させることができる。
【0117】
好ましくは、ピペット装置は、ユーザの片手でピペット装置を保持するためのグリップとして設計されており、このハウジングはピストンを含む軸部を備え、その長手方向軸線Aに沿ってピストンが延びており、ピペット装置は、ピペット装置の台地面、特にサムレストに取り付けられたロッカーボタンによって互いに別々に作動可能な第1の操作要素と第2の操作要素を有しており、この台地面は長手方向軸線に対して80<a<180°の角度で配置され、好ましくは下方に傾斜している。「下方」という方向は、ピペット装置の長手方向軸線が重力と平行に配置された場合の重力方向を指す。ここで、台地面は、片手でピペット装置を保持する際にユーザの親指がサムレストにほぼ疲労せずに(把持する手の「スイートスポット」で)載るように配置されている。
【0118】
好ましくは、ピペット装置は、プラスチックを含む又はプラスチックからなるハウジングを有する。
【0119】
好ましくは、台地面は、長手方向軸線を通り、かつスクリーンの表面に対して垂直に延びる平面に対して垂直である。
【0120】
好ましくは、ピペット装置は、ピペット装置は、動作要素、特にピストン又はピストンロッドを含み、この動作要素が長手方向軸線に沿って延びている軸部と、スクリーンの表面と、好ましくはスクリーンを囲むフレームとによって形成された、長手方向軸線に対して傾斜している前面を持つ頭部とを備えたハウジングを有しており、スクリーンは前面の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらには少なくとも90%を占めており、特にフレーム前面は第1の平面内にあり、スクリーンは第1の平面と同一か平行な第2の平面内にある。
【0121】
ピペット装置は、好ましくは少なくとも1つのピペット容器のための接続部とイジェクトボタンとを備えたハウジングを有し、イジェクトボタンの接触面はイジェクトボタンを押すことによって経路に沿ってハウジング内に移動可能であり、ピペット装置は、この経路の終端に到達すると少なくとも1つのピペット容器、特にピペットチップの取り外しが行われるように、又は少なくとも1つのピペット容器、特にピペットチップの取り外しをトリガする電気信号を発生するように設計されている。イジェクトボタンは、バネ式であってもよい。取り外しは純粋に機械的であってもよく、この場合は取り外しに必要なエネルギーはユーザによって、取り外す際に直接、又はピペットチップを取り付ける際にばね要素を緊張させることによって間接的に加えられる。
【0122】
本発明はまた、ピペッティングパラメータを入力するためのシステムに関し、本発明による手持ち式ピペット装置と、外部データ処理装置、特にスマートフォン又はタブレットPC、外部スクリーン、即ちピペット装置の構成部分ではないスクリーンと、データ処理手段とを有しており、このデータ処理手段は、外部スクリーンにピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための外部入力画面(「設定」)を表示するようにプログラムされており、外部入力画面とピペット装置の入力画面は内容が実質的に同じであり、即ち画面、特にピペット装置の入力画面と同じ機能を有しており、システムは、外部データ処理装置上で定義されたピペッティングパラメータをピペット装置に転送し、そこでピペッティング作業を定義するために使用するように、又はピペット装置上で定義されたピペッティングパラメータを外部データ処理装置に転送し、そこに保存するように設計されている。
【0123】
本発明はまた、手持ち式ピペット装置のスクリーン上に入力画面を用意するためのコンピュータプログラムコードに関し、手持ち式ピペット装置は少なくとも1つの液体試料をピペッティングするために用いられて、少なくとも1つのピペット容器を接続するための接続部と、ピペッティング作業を実施する際に少なくとも1つの試料を少なくとも1つのピペット容器に吸引し、この試料を少なくとも1つのピペット容器内に保持し、及びこの試料を少なくとも1つのピペット容器から排出するように電気的に制御された動作要素と、ユーザ定義可能なピペッティングパラメータのパラメータ値を入力するためのタッチセンシティブスクリーンと、を有しており、ピペッティングパラメータのパラメータセットはピペッティング作業を完全に定義し、ピペット装置は、少なくとも1つのピペッティングパラメータに応じて動作要素を制御するようにプログラムされたデータ処理手段を備えた電気的制御装置と、ユーザの指圧、特に親指圧によって作動可能であり、その作動によりパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始する少なくとも1つの操作要素とを有しており、
プログラムコードが手持ち式ピペット装置のデータ処理手段によって実行されると、その結果として、
a)ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための入力画面(「設定」)がスクリーンに表示され、
b)少なくとも1つの操作要素の作動が検出されると、パラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための出力画面(「実行」)がスクリーンに表示され、任意に操作要素のこの操作又は後続の操作で現在のピペッティングパラメータセットに従ってピペッティング作業も開始され、
c)出力画面に特別ボタンが表示され、これにタッチすると出力画面が閉じて、画面、特に入力画面をスクリーンに表示させる。
【0124】
或いは、プログラムコードが手持ち式ピペット装置のデータ処理手段によって実行されると、その結果として、
スクリーンにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)が表示され、GUIは少なくとも以下のことを含んでいる。即ち、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータが表示される画面、特にホーム画面がスクリーンに表示され、この画面は、ピペッティング作業、特に基本的ピペッティング作業を定義するパラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を表示する少なくとも1つの第1の入力タイルを含んでおり、これにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする入力インターフェースが開き、画面は少なくとも1つの入力フィールドを有しており、これにタッチすると、ユーザが少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータを選択できるようになり、データ処理手段は、このユーザ操作による選択を検出した後、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータが、パラメータセット、特に基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータに追加されて、この少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータによって、ユーザ定義されたピペッティング作業を定義するユーザパラメータセットのピペッティングパラメータを形成するようにプログラムされており、この少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択が、画面、特にホーム画面でユーザに表示される。
【0125】
ピペット装置又は外部データ処理装置は、好ましくはデータ記憶装置を有する。このデータ記憶装置は、好ましくは少なくとも1つのデータメモリ、特にハードウェアデータメモリ、特に不揮発性データメモリ、特にEPROM又はFLASH(登録商標)メモリを有している。データ記憶装置はまた、揮発性データメモリを備えていてもよい。
【0126】
ピペット装置若しくは外部データ処理装置の電気制御装置は、制御装置又は制御ユニットとも略称され、好ましくはデータ処理手段、特に少なくとも1つの中央処理装置(CPU)を有する。データ処理手段は、マイクロコントローラーを含むことができる。制御装置は、好ましくはマイクロコントローラーを有する。制御装置は、好ましくはデータ、特にピペッティングパラメータ及び/又は1つ以上のコンピュータプログラム若しくはコンピュータプログラムコードを保存するための少なくとも2つの記憶装置若しくはデータメモリを有する。
【0127】
制御装置は、好ましくは、ピペッティング作業の少なくとも1つの機能又はピペッティング作業の一部又はピペッティング作業を自動的に実行するために、これらの少なくとも1つのピペッティングパラメータを使用する少なくとも1つの制御ソフトウェア若しくは制御プログラムを含んでいる。制御ソフトウェア若しくは制御プログラムは、特に制御装置のデータ処理手段、特にデータ処理手段のCPUによって実行される。制御ソフトウェア若しくは制御プログラムは、特に装置のデータ記憶装置に保存されている。このデータ記憶装置は、好ましくは不揮発性メモリである。
【0128】
ピペット装置又は外部データ処理装置は、センサ装置、例えば特に温度、湿度又は圧力、ピペット装置のピストンを駆動するために使用されるモーター電流を検出するためのセンサを有することができる。モーター電流は、特にピペッティングされた液体の粘度を決定し、それにより液体を識別するために使用することができる。センサ装置は、パラメータ、特にピペッティングパラメータ、特にピペット装置と接続されたピペット容器のタイプ、特にピペット容器、特にピペットチップの最大充填量を把握するための測定を実施するように設計することも可能である。ピペット装置又は外部データ処理装置は、センサ装置の測定値に応じて、少なくとも1つのピペッティングパラメータを自動的に決定するように設計することができる。これにより、精密なピペッティングに必要なピペッティングパラメータの最適化を改善することができる。
【0129】
ピペット装置及び/又は外部データ処理装置は、好ましくは配電網から独立して運転される。特にそれぞれの装置は、充電可能な電圧源、例えば1つ以上の蓄電池を備えることができる。そのために装置は、充電可能な電圧源と接続された充電インターフェースを有することができる。
【0130】
ピペットチップは、特に使い捨て製品であり、好ましくはプラスチック製である。必要とされる最大液体量に応じて、異なるピペットチップがピストンストロークピペットに使用される。市販のピペットチップの典型的な公称容量は、例えば10μL、20μL、100μL、200μL、300μL、1000μL、1250μL、2500μL、5mL、10mLである(μL:マイクロリットル、mL:ミリリットル)。ピペットチップは、通常長手方向に細長い円錐形の容器で、容器の下端部には液体交換口を有し、上端部には円錐状又は管状の上方に開いた端部を有し、これは特に空気置換式ピペットとして構成されたピペット装置の作業コーンとして形成された接続部に差し込むことができる。液体のピペットチップ内への吸引は、ピペットチップ内部の負圧によって行われる。この負圧は空気置換式ピペットとして設計されたピペット装置の場合、ピストンとして形成されたピペット装置の動作要素が移動し、ピペットチップ内の試料の上方の空隙に負圧が生成されることによって発生する。ピペットチップの内部は、ピペットチップがピストンストロークピペットの接続部と接続されているピペッティング位置(差し込み位置とも呼ばれる)で、ピストンストロークピペットのピペットチャンネルと流体的に接続されている。ピペットチャンネルは、中空円筒状のピストン室内でピストンストロークピペットの電気的に可動なシリンダーピストンを介して負圧/過圧が加えられる。
【0131】
ディスペンサーチップは、ピペッティング時にピストンと液体試料の間に実質的に空気層が存在しない直接置換式ピペットで使用される。ここでは、ピストンはディスペンサーチップの構成部分である。ディスペンサーチップは、ピストンシリンダーとして機能する、容器流出入口と容器開口部を備えた容器部分を有し、これらの開口部内にピストンが係合して、ピストンシリンダー内に移動可能に配置され、最終位置で吸引された全液量を押し出すことができる。ディスペンスチップを直接置換装置として設計されたピペット装置に接続する際に、容器部分はピペット装置の接続部と、特にねじ込みによって接続され、ピストンはカップリング装置によって動作要素に連結される。ディスペンサーチップは、特に使い捨て製品であり、好ましくはプラスチック製である。必要とされる液体の最大量に応じて、異なるディスペンシングチップが直接置換装置に使用される。市販のディスペンサーチップの典型的な公称容量は、例えば100μL、200μL、500μL、1mL、2.5mL、5mL、10mL、25mL、50mLである。
【0132】
本発明は、手持ち式ピペット装置、これと協働するデータ処理装置、システム、及び特にデータ記憶媒体に保存できるコンピュータプログラム若しくはコンピュータプログラムコードに関する。これらの各主題の可能な好適な実施形態は、それぞれ他の主題の全ての実施形態の説明から明らかになり、特に手持ち式ピストンストロークピペットの可能な実施形態は、方法、特に外部データ処理装置、システム及びコンピュータプログラムの説明から明らかになる。
【0133】
本発明による方法、手持ち式ピストン操作ピペット、これと協働するデータ処理手段、システム及びコンピュータプログラムの別の好適な実施形態は、以下の実施例の説明と併せて図とそれらの説明から明らかになる。実施形態の同じ部材は、特に説明しない限り、又は文脈から明らかな場合を除き、実質的に同じ参照符号を付ける。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1a図1aは、本発明によるピペット装置、ここでは空気置換式ピペットの実施例の概略側面図である。
図1b図1bは、図1aのピペット装置のロッカーボタンの詳細図である。
図1c図1cは、図1aのピペット装置を、長手方向軸線Aを中心にわずかに回転した図である。
図1d図1dは、タッチスクリーンが見えている図1aのピペット装置の細部の透視側面図である。
図1e図1eは、実施例に従う本発明によるシステムの模式図である。
図2a図2aは、実施例に従う本発明によるピペット装置の頭部領域の2つの画像により、2つの主要な画面、即ち入力画面と出力画面との間で切り替えるピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図2b図2bは、GUIの入力画面とその下にピペット装置の操作要素を(象徴的に)示し、入力画面(「設定」)からスタートして操作要素の作動によって出力画面に置き換わり、ここに示す分注作業(「Dis」)では画面若しくは画面の内容が連続的に変化している図である。
図2c図2cは、ピペッティングパラメータセットに対して現在選択されているピペッティングパラメータのリストを有するGUIの入力画面を示す図であり、略称リストはスクリーンの上縁部に配置された「タグ」の形で実装され、それらの中にそれぞれ選択されたピペッティングパラメータの略称が示されていて、ユーザは、(スクロール可能な)選択リスト全体を見なくとも選択済みのピペッティングパラメータを概観できる。
図2d図2dは、GUIの入力画面、特にホーム画面と、入力画面上の別個の入力フィールドにタッチすると入力画面に重なって現れるパラメータ選択画面を示す図である。
図2e図2eは、実施例に従う本発明によるピペット装置の出力画面を、マルチステップピペッティング作業のサブステップi=2における第1の状態と、サブステップi=3における第2の状態で示す図である。
図2f図2fは、実施例に従う本発明によるピペット装置のマルチステップピペッティング作業中における出力画面を示す図である。
図3a図3aは、実施例に従う本発明によるピペット装置の頭部領域の2つの画像により、ホーム画面からスタートして選択画面において選択リストを経由して現在のパラメータセットに別のピペッティングパラメータ若しくは機能を追加する、ピペット装置のGUIの別の機能を示す図である。
図3b図3bは、実施例に従う本発明によるピペット装置の頭部領域の2つの画像により、スクロール可能な内容又はスクロール可能な選択リストを有するホーム画面からスタートして現在のパラメータセットに別のピペット用パラメータ若しくは機能を追加する、ピペット装置のGUIの別の機能を示す図である。
図4図4は、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面の複数の画像により、異なる画面の表示を切り替える、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図5a図5aは、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面の複数の画像により、入力マスクを用いてピペッティングパラメータ値を設定する、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図5b図5bは、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面の2つの画像により、ピペッティングパラメータの履歴リストを呼び出し、又は入力画面の代わりに入力フィールドを備えた任意のメニューバー、又は入力フィールドとして機能しない情報フィールドをナビゲーション補助として使用する、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図6図6は、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面の複数の画像により、特定の適用シナリオを表す所定のパラメータセットを選択する、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図7a図7aは、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面の2つの画像により、現在のパラメータセットをお気に入りとしてマーキングし、それがお気に入りとして保存され、特にお気に入り画面に選択可能なリスト項目として、即ち相応の情報入力タイルとして表示される、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図7b図7bは、実施例による本発明によるピペット装置の画面の2つの画像により、お気に入り画面でお気に入りパラメータセットを識別する入力タイルが入力フィールドを有し、これにタッチするとお気に入りパラメータセットのパラメータが別画面に転送され、そこで表示されて、お気に入りパラメータセットのパラメータ値及び/又はパラメータ選択が変更できる、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図8a図8aは、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面とその下に(象徴的に)挿入された操作要素の多数の画像のシーケンスにより、ピペット装置のレコーダー機能によってユーザ定義されたピペッティング作業のピペッティングパラメータを定義する、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図8b図8bは、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面とその下に(象徴的に)挿入された操作要素の多数の画像のシーケンスにより、ピペット装置のレコーダー機能によってユーザ定義されたピペッティング作業のピペッティングパラメータを定義する、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
図9図9は、実施例に従う本発明によるピペット装置の画面とその下に(象徴的に)挿入された操作要素の多数の画像のシーケンスにより、レコーダー機能を用いてユーザ定義で作成されたパラメータのセットを選択し、変更目的のために編集する、ピペット装置のGUIの機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0135】
図1aは、少なくとも1つの液体試料をピペッティングするための本発明による手持ち式ピペット装置、ここでは空気置換式ピペット1を示す。このピペット装置は、
少なくとも1つのピペット容器19、ここではピペットチップを接続するための接続部2と、
ピペッティング作業を実施する際に少なくとも1つの試料を少なくとも1つのピペット容器19に吸引し、この試料を少なくとも1つのピペット容器19内に保持し、及びこの試料を少なくとも1つのピペット容器から排出するように、制御装置5によって電気的に制御された動作要素と、
ピペット装置の頭部14の前面14aに設けられた、ユーザ定義可能なピペッティングパラメータのパラメータ値を入力するためのタッチセンシティブスクリーン4であって、ピペッティングパラメータのパラメータセットはピペッティング作業を完全に定義する、タッチセンシティブスクリーン4と、を備え、
電気制御装置5は、少なくとも1つのピペッティングパラメータに応じて動作要素3を制御するようにプログラムされたデータ処理手段6を有し、並びにデータメモリ7、及び外部データ処理装置と無線通信するための通信ユニット8を有しており、
ロッカーボタン10によってユーザが作動できる正確に2つの操作要素(同義語:作動要素)9a及び9bと、を有する。これらの操作要素の各々は、ピペット装置を操作することによって、スクリーンに入力画面100、100´が表示される入力モード(「設定」)、例えば図1dに示すホーム画面から、スクリーンに出力画面が表示される出力モード(「実行」)に切り替えることができる。操作コンセプトのこの有利な態様は、さらに図2a、図2b及び図4も参照して明らかにされる。これに対し、イジェクトボタン15及びピペット装置の(図示しない)「電源オン/オフ」ボタンを作動しても、「設定」モードと「実行」モードの切り替えは行われない。図1dで「+」記号が付されている入力フィールド101´(「追加ボタン」とも呼ばれる)を用いて、パラメータセットに属するピペッティングパラメータのリストを加工することができる。
【0136】
ロッカーボタンは、凹状で、操作するとボタン9bを作動して、特に試料を排出させる下部10bと、凸状で、操作するとボタン9aを作動して、特に試料を吸引させる上部10aを有する。ロッカーボタンは、ピペット装置の長手方向軸線Aとほぼa=130~140°の角度をなすハウジング部分によって形成された台地上に配置されている。この台地の隣で長手方向軸線に対して垂直に配置されたハンドサポート16に基づき、ピペット装置は人間工学的に手に収まり、手の「スイートスポット」でサムレストを保持できるため、静止状態でロッカー10に親指が載る。スクリーン4は、ピペット装置のハウジング頭部14に配置されている。
【0137】
ピペット装置は、蓄電池17によって給電される電気モーター18を有し、これがシリンダーピストン12内でピストンロッド若しくはピストン3を動かし、その結果としてピペットチャンネル13内に吸引圧力又は排出圧力が生じる。電子制御により、正確な分注が可能となる。イジェクタボタン15が設けられていて、ピペット装置のイジェクタスリーブによってピペットチップ19を接続部2から取り外すことができる。データ処理手段は、特にイジェクトボタン15を作動した場合に進行中のピペッティング作業を中断し、場合によりまだ表示されている出力画面を入力画面100、100´に置き換えるようにプログラムされている。
【0138】
ユーザが両操作要素9a、9bのいずれかを操作すると、現在のパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業が開始される。所望の部分的に自動化されたピペッティング作業を定義するパラメータセットのピペッティングパラメータの選択及びこれらのピペッティングパラメータの値の設定は、本発明による特定の操作コンセプトを実装するGUIによって実行される。この操作コンセプトを、以下の図を参照して説明する。
【0139】
データ処理手段6は、スクリーン4に、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための入力画面100、100´(「設定」、破線で囲まれた矩形の内容を参照)を表示し、操作要素9a又は9bの少なくとも1つの操作が検出さると、入力画面で定義されたパラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための出力画面2002(「実行」)をスクリーン4に表示し、さらに、この少なくとも1つの操作要素の作動が検出されるか、又はこれらの操作要素の1つを(任意の安全応答の意味で)続けて作動すると、このピペッティングパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始するようにプログラムされている(図2a参照)。ここで、出力画面200、又は出力画面200の後に表示される他の出力画面は、特別ボタン201(ここでは「戻る」という文字情報が出ている)として設計された入力領域を、ここではスクリーンの下縁部に有しており、これにタッチすると出力画面200が閉じて、入力画面100又は他の画面、特に入力画面がスクリーン4に表示される。特に、この(スクリーンとは異なる)操作要素9a、9bの第1の作動に続く第2の作動で、現在のピペッティングパラメータセットに従って定義されたピペッティング作業が開始される。
【0140】
上記の他の画面は、特にピペッティングパラメータセットに含まれるパラメータ値の編集を可能にできる。例えばピペッティングシーケンス(「実行」)が既に開始されている場合に、速度のみを迅速に調整するときは、正確に前の入力画面100である必要はない。ピペッティング作業が開始された後では、もはや全てのパラメータ値を変更/修正できず、現在のピペッティングパラメータセットの特定のパラメータ値のみを変更/修正できるようにしてもよい。
【0141】
入力画面100と出力画面200は、それらのグラフィック及び/又は文字若しくは数値の再現、特に配色において異なる。即ち、入力画面100の入力フィールドは、大部分が明るい若しくは白い背景に黒色の情報(文字、数値、入力フィールド色)で保たれ、出力画面200の表示フィールドは、大部分が明るい又は白い背景に青い情報で保たれている。ピペッティングパラメータを選択するための選択画面を呼び出す入力画面の黒色の入力フィールド101(追加ボタンとも呼ばれる)は、出力画面には存在しない。
【0142】
特に、出力画面200は、好ましくは自動化されたマルチステップピペッティング作業の現在行われているサブステップに応じて様々な内容、特にサブステップを現在定義しているピペッティングパラメータの値、例えばピペッティング作業の合計Nステップのサブステップiとして特定の排出速度v2での部分容量Vtの排出を表示する。これは、例えば図2bに示す適用シナリオ「Dis」に該当しよう。
【0143】
図2bでは、最初に入力画面100_1が表示され、これは部分的に自動化されて進行するピペッティング作業のピペッティングパラメータセットを含んでいる。ここで、追加ボタン101に対してグラフィック的にわずかに変更された追加ボタン101_1が、同様に動作ピペッティングパラメータリストの加工を可能にする。操作要素、即ちここではロッカーボタン10のスイッチ9a若しくは第1の押圧面10aを操作すると、ピペット装置が「設定」モードから「実行」モードに移行して、特別ボタン201_1を含む出力画面200_1が表示される。特別ボタン201_1は特別ボタン201に対してグラフィック的に変化しており、それ以外は同様に作用する。吸引作業が実施された後、例えばここでは360μLの溶液をピペット容器に吸引するサブステップが実施される2秒の時間の後、出力画面200_1には、120μLの第1の分注容量を排出するサブステップに属する出力画面が表示される。操作要素、ここではロッカーボタン10の第2の押圧面10bを操作することにより、部分容量の排出が開始され、押圧面10bをさらに操作すると次の排出サブステップにつながる。排出サブステップは、インデックスカウンターi=1...3によって始めから終わりまでカウントされ、進捗表示i/N(i=1...3、N=3)は、部分的に自動化されて進行する分注作業の進捗を出力画面の出力フィールドに表示する。進捗をユーザにとって一層直感的に理解できるようにするために、可変表示要素、例えば図2e及び図2fに示す表示ローラーを使用することができる。出力画面200_1にはこのような可変表示要素はなく、ここでは出力タイルは常に出力画面200_1の同じ位置にあり、パラメータ値の数値表示、並びに進捗表示のみが変化する。
【0144】
図2eは、実施例に従う本発明によるピペット装置の出力画面200´を、マルチステップピペッティング作業において、サブステップi=2における第1の状態(図の左側)と、サブステップi=3における第2の状態(図の右側)で示す。出力画面は、表示ローラーとして設計された可変表示要素203´を有する。少なくとも1つの出力タイルを有する可変表示要素の場合、特に表示要素内の少なくとも1つの出力タイルの位置が変化する。表示ローラー203´は、中央出力タイル203a´を有し、これは(N=6)ステップの分注作業の値200μLによるピペッティングパラメータ「部分排出量」、排出速度「8」、及び数値進捗インジケーター(「2/6」)を表示する。中央出力タイル203a´の上側に隣接して、先行の排出サブステップ(i=1)の「分注200μL」を表示する上部出力タイル203b´が表示され、中央出力タイル203a´の下側に隣接して、現在のサブステップi=2の直後の排出サブステップ(i=3)の「分注200μL」を表示する下部出力タイル203c´が表示されている。図の右側には、同じ出力画面200´が示されているが、これは次のi=3の排出サブステップの間に表示される。中央出力タイル203a´の上側に隣接して、先行の排出サブステップ(i=2)の「分注200μL」を表示する上部出力タイル203b´が示され、中央出力タイル203a´の下側に隣接して、現在のサブステップi=3の直後の排出サブステップ(i=4)の「分注200μL」を表示する下部出力タイル203c´が示されている。表示要素203´のビューのi=2からi=3への移行(左から右)は、進捗の動態を示すためにアニメーション化することができる。可変表示要素により、マルチステップピペッティング作業とピペット装置の操作の認識はより直感的なものになる。最後の部分排出ステップ(i=N、ここではi=6)の場合、表示ローラーの下部位置203c´に、終了に達したことに関する情報又はその他の情報が表示され、又は何も表示されず、又はその後対応する出力タイル203c´は全く表示されない。第1の排出サブステップi=1で上側出力タイル203b´に対して同様にすることができ、その場合、例えば何も表示されないか、又は省略される。
【0145】
表示ローラーは、ここでは水平方向の回転軸を有し、出力タイルの位置変化は、垂直方向に行われる。代替的に、垂直方向の回転軸や斜め方向の回転軸も可能であろう。
【0146】
図2fは、実施例に従う本発明によるピペット装置の出力画面200″を、マルチステップ(M=32)のピペッティング作業において、サブステップi=8における状態で示している。ここでも、表示ローラー203´と同様に機能する、中央出力位置若しくは出力タイル203a″、上側出力タイル203b″及び下側出力タイル203c″を有する表示ローラー203″が示されている。さらに、出力画面200″は、別の出力フィールドと入力フィールドを用いて達成される別の機能を有する。好ましくは、出力画面は、本実施例で実装されているように、ピペッティングパラメータの値を示し、それにタッチすると次のステップでピペッティングパラメータを変更可能になるような入力フィールドを持たない。出力画面の表示中に存在する「実行」モードでは、ピペッティングパラメータを変更することは可能ではなく、せいぜいのところ中間ステップを介して可能であり、パラメータセットの全てのピペッティングパラメータが変更可能であるわけではない。例えば進行中のマルチステップピペッティング作業中に、液体の排出/吸引の速度を変更することが可能である場合がある。
【0147】
出力画面200″は、縁に、ここでは右下に配置された入力フィールドを有し、「休止」という言葉が表示されており、一時停止機能が実装されている。この入力フィールドにタッチすると、例えばN=3の排出サブステップi=1の完了後にマルチステップピペッティング作業が一時停止され、これは同時に32ステップのプログラムされたピペッティング作業の8番目のサブステップである。感嘆符と循環矢印のある入力フィールドは、例えばユーザエラーのため実行したばかりの8番目のサブステップを繰り返さなければならない場合に、ピペッティング作業を繰り返すことを可能にする。したがって上記の入力フィールドは、GUIの論理に従えば、ピペッティングパラメータの値を示し、それにタッチすると次のステップでピペッティングパラメータを変更することを可能にするような入力フィールドではない。
【0148】
本発明によるピペット装置のこれらの実施例では、入力フィールドに「タッチする」と、常に即時に結果をもたらす。即ち、結果は実質的な遅延なく発生し、好ましくはタッチする時点と結果(例えば入力インターフェースが開く)を表示する時点との間に、例えば「待機ページ」とも呼ばれる遅延を示唆する情報ページとして別画面が表示されることはない。しかしながら、このような中間的に表示される情報ページが有用であるGUIシナリオはあり得る。
【0149】
図2fに示すように、マルチステップ(ここではM=32)のピペッティング作業において、ここでは数値でも示される進捗状況(「8/32」)をグラフィカルに表すプログレスバーは有用であり得る。出力タイル222″の「プロトコルLisa 250」という付記は、例えばユーザが決めた「Lisa 250」という名称の個別にプログラムされたピペッティング作業が実行され、同時に例えばピペット装置のログファイルに保存されることを示している。特別ボタン201″は、一般的に設けられているように、出力画面200″を閉じることにつながる。一般的に、特にどんな出力タイルも入力タイルではなく、したがってタッチすると機能をもたらすような入力フィールドを持たず、そのため入力は可能ではない。
【0150】
入力画面と出力画面を区別するコンセプトは、操作において重要な人間工学的利点を形成する。なぜなら、ユーザは自分が現在、場合によってはピペッティング作業が中断されて操作を待機しているのか、それとも設定モードにいるのかを最小限の労力で認識できるからである。したがって入力画面と出力画面のコンセプトは、ユーザにとって容易に区別できるピペット装置の入力モードと出力モードを意味する。好ましくは、別個の入力領域(特別ボタン)にタッチするだけで、或いはピペッティング作業が完了すると自動的に入力画面、特にホーム画面に戻ることができて、ユーザはパラメータ値の変更、又は再度パラメータの選択を行うことができる。この分離により、特に「実行」モードの進行中にパラメータ値を誤って変更するという、場合によっては実験作業を無効にして著しい価値の損失を招きかねない事態を防ぐことができる。他方、操作部材を操作して「設定」モードから「実行」モードへ切り替えることは、ユーザにとって著しい快適を意味し、直感的に理解できる。これも人間工学と効率的なワークフローに大いに寄与する。出力画面(例えば200)は根本的に、出力画面に含まれている表示フィールド若しくはタイル、例えば出力タイル203は、純粋に情報提供の性格のものであり、したがって入力フィールドとして機能せず、それらにタッチしても特に動作が生じることはなく、特に入力オプションは開始しないことを特徴とする。このことは、出力画面、ここでは特別ボタン201の別個の操作フィールドには該当せず、それにタッチすると、出力モードが廃棄されてスクリーンに入力画面が表示され、特に場合によっては現在まだ進行中のピペッティング作業又はピペッティングプログラムを終了させることができる。
【0151】
ピペット装置1は、正確に1つの第1の操作要素9aと第2の操作要素9bを有し、これらは特にロッカーボタン10によって互いに別々に操作することができる。データ処理手段6は、ユーザによる第1の操作要素9a又は第2の操作要素9bの操作を検出し、パラメータセットに従って定義されたピペッティング作業を開始するようにプログラムされている。
【0152】
ピペット装置は、ロッカーボタン10と、このロッカーボタン10によって互いに別々に作動可能な第1の操作要素9aと第2の操作要素9bを有しており、ロッカーボタン10の第1の押圧面10aを押して第1の操作要素9aを作動し、ロッカーボタンの第2の押圧面10bを押して第2の操作要素9aを作動し、第1の押圧面と第2の押圧面は触覚的に区別できる。特に第1の押圧面10aは凸状(外側に湾曲)であり、第2の押圧面10bは凹状である。これによりユーザは、目視で確認することなく所望の操作要素若しくはロッカーボタンの所望の面(押圧面)を検出でき、操作が直感的で人間工学的である。
【0153】
ピペット装置1は、ユーザの片手でピペット装置を保持するためのグリップとして設計されたハウジング11を有しており、ハウジング11は動作要素を含む軸部11を有し、その長手方向軸線Aに沿って動作要素3が延びている。ロッカーボタンは、長手方向軸線に対して100<α<150°の角度で配置され、特に下方に傾けて配置されたサムレストに組み付けられている。「下」は、長手方向軸線を垂直に向け、ピペットチップ19が重力方向を指している場合のピペット装置の向きをいう。ロッカーボタンの台地部の角度構成により、人間工学的に配置されたサムレストが生じる。サムレストは、長手方向軸線を起点として配置され、特に長手方向軸線Aを通り平面スクリーン4の表面に対して垂直に延びる平面に対して垂直に位置している。長手方向軸線に対してハンドレストと同じ高さにある台地部の位置も、有利な人間工学をもたらす。
【0154】
頭部14は、スクリーン4の表面とこれを囲むフレームとによって形成される、長手方向軸線Aに対して傾いた前面14aを有しており、ここではスクリーンは前面の約80%を占めている。フレーム前面14aは第1の平面内にあり、平面スクリーン4は第1の平面と同一の第2の平面内にある。それにより、スクリーンの縁領域もユーザが十分タッチすることができ、そのためタッチスクリーン4の利用可能な領域を最適に活用することができる。同時に、スクリーン縁は露出しておらず、フレーム前面14aによって保護されている。
【0155】
ハウジング11は、少なくとも1つのピペット容器19のための接続部2(動作コーン)と、イジェクトボタン15を有しており、その接触面はイジェクトボタンを押すことによって経路に沿ってハウジング内に移動可能であり、ピペット装置は、この経路の終端に達するとピペット容器、特にピペットチップの取り外しが行われるように、又は少なくとも1つのピペット容器の取り外しをトリガする電気信号が発生するように設計されている。
【0156】
図5a:データ処理手段は、少なくとも1つの第1の入力タイル103、ここでは103a、103b、103cを含む画面102をスクリーンに表示するようにプログラムされている。この画面102は、少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値(ここでは103a:V=120μL、103b:v=(v1、v2)、排出速度v1=ステップ8、吸引速度=ステップ8、ステップ数n=3)を表示し、それにタッチすると入力インターフェースが開いて、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする。この入力インターフェースは、特に数字キーパッドが表示されるスクリーン領域であり、その数字キーは個々にタッチでき、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を定義する数字列を入力するために使用できる。入力タイルは、ここではスクリーンの白い矩形領域であり、対応する描画若しくは灰色の背景とのコントラストによって認識可能であり、その幅bはスクリーン4のほぼ全幅Bに延びている。これにより有利な人間工学が生じる。このことは上記の入力タイルに該当するが、入力画面の全ての入力フィールドに該当する必要はない(図1d参照)。入力インターフェースは、ここでは図5aの右側に示す新しい画面100aにおけるスクリーン領域であり、画面100として重ねて表示されている。同様のスクリーン領域100b、100cは、関連するピペッティングパラメータv=(v1、v2)及びnの入力タイル103b、103cが開かれると開く。或いは、絶対数の代わりに全量Vの分割(例えば分注ステップのサブステップ若しくは部分容量)を設定する場合は、対応して可能な分数f=0.1~1.0のリストで入力フィールドを有するスクリーン領域が開く。
【0157】
図3a:特に好ましくは、データ処理手段6は、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示するための、ここではホーム画面として設計された画面100をスクリーン4に表示するようにプログラムされている。画面は、基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値(ここではV、v=(v1、v2)、n)を表示する少なくとも1つの第1の入力タイル103(ここでは3つの入力タイル103a、103b、103c)を含み、これにタッチすると、入力インターフェースが、図5aの例では画面100aの数字キーパッドを有する画像領域が開いて、ユーザが少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータの値を入力することを可能にする。ここで、画面100は入力フィールド100を含んでおり、それにタッチすると、ここでは別画面110で別の選択可能なピペッティングパラメータ(ここではqm、rev、st、aboなど)の概要(ここでは「迅速混合」、「逆転」、「ステップ時間」、「自動ブローオフ」など)を含む選択リストが表示され、そこからユーザは少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータ(ここではqm、rev、st又はaboなど)を選択することができる。これは基本パラメータセットの少なくとも1つの第1のピペッティングパラメータに追加されて、これと共にピペッティング作業を決定するピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを定義する。少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの選択が完了したら選択リストが閉じられ、画面100が再び表示される。この画面100は、いまや少なくとも1つの第1の入力タイル103に加えて、少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの値(ここではqm、rev、st又はaboなど)を表示し、これにタッチすると入力インターフェース100dなどが開いて、ユーザは少なくとも1つの第2のピペッティングパラメータの値を入力することを可能になる。
【0158】
選択可能なパラメータが示されている代替画面110を表示して、入力フィールド104にタッチすることによってそこから所望のパラメータを選択/拒否した後にホーム画面100に戻るようにする代わりに、図3bに示すように、ホーム画面の内容は、例えばスクロール(操作フィールド105の垂直方向のスワイプ又はタップ)によってもアクセス可能な領域106、又はさらに別の領域も拡張することができ、そこで可能なピペッティングパラメータがリストアップされていて、選択/起動することができ、続いてそれらの値を編集することも可能である。
【0159】
本発明は、ピペット装置の革新的な操作コンセプトの特に有利な態様を表している。発明者らはユーザ調査に基づき、相当数のユーザにおいて、ユーザが所望のピペッティング作業をほとんど自分の希望に従って定義するピペット装置を用いて、既存の、例えば実績のあるパラメータセット又は基本パラメータセットにピペッティングパラメータ、即ち機能又は特徴を補うことによって、より効率的なワークフローを形成できることを認識した。この方策により、個々人が所望するピペッティングステップを定義するという目標を、明らかに最適で効率的に達成できる。特に、基本パラメータセットがスクリーン、特にホーム画面で提供されて直ちに実行できれば、即座に操作の成功体験が得られ、操作説明書を長時間かけて学ぶ必要もなくなる。ユーザは短い習得時間で可能なピペッティングパラメータのリストを概観し、それによって電動ピペット装置が備えている高機能の可能性をより効率的に活用することができる。このことは特に、先行技術による公知のピペット装置で、適用シナリオを表す既存の多かれ少なかれ複雑な動作モードを習得することに困難を感じ、そのため最も単純な動作モードで満足している多くのユーザグループに該当する。この新規のコンセプトは、未経験のユーザには機能の習得を促すとともに、熟練ユーザには完全なフレキシビリティーを提供する。
【0160】
好ましくは、データ処理手段6は、以下のようにプログラムされている。即ち、入力インターフェース100a、100b、100c、100dを介してユーザによって入力されたピペッティングパラメータの値が供されない場合は、スクリーンに情報が表示され、好ましくは、
・少なくとも1つの修正ボタンが表示され、それにタッチすると、ユーザによって入力された値の代わりに、自動的に少なくとも1つの修正作業を実施し、これらの修正作業は、
許容されない値に代えて許容される値が自動的に設定され、
上記のピペッティングパラメータに代わる少なくとも1つのピペッティングパラメータが選択され、特にユーザの値又は他の適切な値で占められ、
ユーザの入力がキャンセルされて、特に再度入力が可能になる、構成を含むことができ、
及び/又は
・エラーメッセージが出力され、
及び/又は
・以前アクティブな値の変更は無視され、以前アクティブな値が維持され、
及び/又は
・組み合わせ不可能な機能を表す他の組み合わせ不可能なピペッティングパラメータは自動的に拒否される。
【0161】
好ましくは、データ処理手段6は、特に実質的に画面全体に広がる入力タイル103a、103b、103cのリストを示す画面100をスクリーン4に表示するようにプログラムされている。
【0162】
図4:データ処理手段6は、スクリーン4にスタート画面100を表示し、このスタート画面100は横方向に向けられたスワイプジェスチャーによって第2の画面に置き換えられ、反対側の横方向に向けられたスワイプジェスチャーによって第3の画面に置き換えられるようにプログラムされており、特に(図6参照)第2の画面120は入力タイルのリストを含み、各入力タイルは略称を付けていて(ここでは例えば「容量計測」の略称を付けた入力タイル)、入力フィールドにタッチすると、所定のピペッティング作業を定義する所定のパラメータセットをロードし、特にこの入力フィールドにタッチした後に別画面120aが表示され、特に第3の画面130は入力フィールドのリストを含み、各入力フィールドは略称を付けて(ここでは例えば「150μLステップ6」などの略称を付けた入力タイルなど)、入力フィールドにタッチすると、過去に使用されて自動的に保存された履歴パラメータセットをロードし、特にこの入力フィールドにタッチした後に別画面が表示される。
【0163】
図1eには、ピペッティングパラメータを入力するためのシステム300が示されており、手持ち式ピペット装置1と、外部スクリーン51とデータ処理手段52を含む外部データ処理装置50とを有している。このデータ処理手段52は、ピペッティングパラメータのパラメータセットのピペッティングパラメータを表示及び入力するための外部入力画面を外部スクリーンに表示するようにプログラムされており、外部入力画面とピペット装置の入力画面は内容が実質的に同じである。このシステムは、外部データ処理装置上で定義されたピペッティングパラメータをピペット装置に転送し、そこでピペッティング作業を定義するために使用するように設計されている。
【0164】
図7aは、実施例に従う本発明によるピペット装置の入力画面100_3の2つの画像に基づき、現在のパラメータセットをお気に入りとしてマーキングし、それがお気に入りとして保存され、特にお気に入り画面に選択可能なリスト項目として、即ち対応する情報を提供する入力タイルとして表示される、ピペット装置のGUIの機能を示す。お気に入りシンボル(アスタリスク)が付けられた入力フィールドは、ここではユーザによるタッチを検出し、それに基づいて入力画面100_3で定義されたピペッティングパラメータセットがお気に入りとして保存され、これはお気に入りシンボルの色の変化で示される。
【0165】
図7bは、実施例に従う本発明によるピペット装置の2つの画面に基づき、お気に入り画面121のお気に入りパラメータセットを識別する入力タイルが入力フィールドを有し、それにタッチするとお気に入りパラメータセットのパラメータがホーム画面、即ち入力画面100_4に転送され、この画面が表示されてお気に入りパラメータセットのパラメータ値及び/又はパラメータ選択が変更できる、ピペット装置のGUIの機能を示す。
【0166】
図8aと図8bは緊密に関連して、スクリーンの多数の画像のシーケンスと、その下に(象徴的に)挿入された実施例に従う本発明によるピペット装置の操作要素に基づき、ユーザ定義されたピペッティング作業のピペッティングパラメータをピペット装置のレコーダー機能によって定義する、ピペット装置のGUIの機能を示す。図8aにおいて、ユーザによって実行されるプログラミング作業は、既に「自動プログラミング画面」として説明した「プログラム」と題する画面からスタートする。この画面上の入力フィールド「+」を用いて、別のプログラムを作成することができる。すると、ここでは次の画面で、入力フィールド「記録」若しくは「レコード」が提供され、これにタッチするとレコーダー機能若しくは記録が開始される。同時にピペット装置の別の「レコーダーモード」が開始され、ここでは操作要素(9a、9b)の作動はピストン3の電気的動作を招かない。むしろピペッティング作業がシミュレートされるのみであり(しかしながらこれはシミュレートせずに実施することもできよう)、プログラムステップが記録される。レコーダー機能の独自性は、試料の吸引と排出に用いる操作要素9a、9bと、タッチスクリーンと、ピペッティングパラメータ値の設定に用いる入力画面100″上の入力タイル103などだけが必要であることである。プログラミングコードによるプログラミングは必要ない。記録中は、画面内のステータスバーが、記録されているという情報(「レコーディング...」)を表示する。さらに、記録を停止できる停止マーク付きの入力フィールドが設けられている。「プログラム」画面には、自動的に割り当てられる名称「プログラム2」が入力タイルとして表示され、これにタッチするとプログラム編集、特にその名前の変更が可能になる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
【国際調査報告】