(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】試験装置及び試験装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544281
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021087118
(87)【国際公開番号】W WO2022156985
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】102021101240.6
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523275662
【氏名又は名称】ティーディーケー ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TDK EUROPE GMBH
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141 e, 81671 Munich (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プレヴァン, レミ
(72)【発明者】
【氏名】ラウアースドルフ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】西澤 振一郎
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA28
2G036BA46
2G036CA11
(57)【要約】
電気機器1を試験する試験手順を実行する試験装置100であって、アクセス機構22が開状態にある場合は電気機器を試験チャンバの内部空間20に配置可能で、アクセス機構を閉状態に変更することにより内部空間を外部環境から隔離する試験チャンバ2と、試験手順の一部として電気機器に電圧を印加する電源3と、ユーザが電圧に接触することを防止するマルチレベル安全システム4とを含み、マルチレベル安全システムは、アクセス機構を閉状態にロックする制御可能なインターロック素子40と、少なくとも電源がスイッチオン状態にある場合に試験装置の複数の特性を監視する複数の安全センサ42と、インターロック素子及び電源を制御する制御機器41であって、少なくとも電源がスイッチオン状態にある場合に複数の安全センサから複数のセンサ信号を連続的に受信する制御機器41とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器(1)の試験又は電磁両立性試験の試験手順を実行するための試験装置(100)であって、
アクセス機構(22)を有する試験チャンバ(2)であって、前記アクセス機構が開状態にある場合に、前記電気機器を前記試験チャンバの内部空間(20)に配置でき、前記アクセス機構を閉状態に変更することにより、前記内部空間を外部環境から隔離できる試験チャンバ(2)と、
前記試験手順の一部として前記電気機器に少なくとも電圧を印加する電源(3)と、
ユーザが電圧に接触することを防止するマルチレベル安全システム(4)と、を含み、
前記マルチレベル安全システムは、
前記アクセス機構を前記閉状態にロックする制御可能なインターロック素子(40)と、
少なくとも前記電源がスイッチオン状態にある場合、前記試験装置の複数の特性を監視する複数の安全センサ(42)と、
前記インターロック素子及び前記電源を制御する制御機器(41)であって、少なくとも前記電源がスイッチオン状態にある場合、複数の前記安全センサから複数のセンサ信号を連続的に受信する制御機器(41)と、を含む
ことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記制御機器は、少なくとも1つの前記安全センサが所定の危険状態に対応する前記試験チャンバの特性を検出した場合、前記電圧をオフにすることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記制御機器は、前記電圧が所定の閾値未満である場合、前記アクセス機構をアンロックするように前記インターロック素子を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記電圧は、前記電気機器の電気入力部(10)で監視されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の試験装置。
【請求項5】
複数の前記安全センサは、前記電気機器の電気入力部に直接接続される電圧センサ(43)を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の試験装置。
【請求項6】
前記電源は、前記電気機器に前記電圧を供給するDCリンク素子(33)を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の試験装置。
【請求項7】
複数の前記安全センサは、ユーザにより操作可能な非常スイッチ(44)を含むことを特徴とする先行する請求項1~6のいずれかに記載の試験装置。
【請求項8】
複数の前記安全センサは、
前記アクセス機構の状態を監視するアクセス機構センサ(45)を含むことを特徴とする先行する請求項1~7のいずれかに記載の試験装置。
【請求項9】
複数の前記安全センサは、少なくとも前記内部空間の一部において液体の存在を監視する液体検出器(46)を含むことを特徴とする先行する請求項1~8のいずれかに記載の試験装置。
【請求項10】
前記試験チャンバは、少なくとも部分的に前記内部空間内にある液体冷却システム(6)を含むことを特徴とする先行する請求項1~9のいずれかに記載の試験装置。
【請求項11】
前記試験チャンバは、前記内部空間内に固定手段(63)を含み、前記固定手段は、前記冷却システムから漏れた冷却液(69)を収集する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の試験装置。
【請求項12】
前記固定手段は、凹部又は槽を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の試験装置。
【請求項13】
前記液体検出器は、前記固定手段内に配置されることを特徴とする請求項11又は12に記載の試験装置。
【請求項14】
前記冷却システムは、冷却液を提供する冷却タンク(60)と、前記冷却液を前記電気機器へ及び前記電気機器から輸送する少なくとも1つの流路(61)とを含み、
前記冷却システムは、前記固定手段から前記冷却タンクに通じる少なくとも1つのバイパス流路(64)を含むことを特徴とする請求項10~13の一項に記載の試験装置。
【請求項15】
前記バイパス流路(64)及び少なくとも1つの前記流路(61)の少なくとも一部は、二重管構造として形成されることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の試験装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の試験装置(100)の動作方法であって、
電気機器(1)を、前記試験チャンバ(2)の内部空間(20)に配置し、前記電源(3)に接続し、
前記アクセス機構(22)を閉状態に変更し、前記インターロック素子(40)によりロックし、
少なくとも前記電源が前記電気機器に電圧を印加するスイッチオン状態にある場合、前記試験装置の複数の特性を、前記マルチレベル安全システム(4)の複数の前記安全センサ(42)により監視し、
前記制御機器(41)は、少なくとも1つの前記安全センサが所定の危険状態に対応する前記試験チャンバの特性を検出した場合には前記電圧をオフにし、及び/又は、前記電圧が所定の閾値未満であることを検出した場合には前記アクセス機構をアンロックするように前記インターロック素子を制御することを特徴とする動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下において、試験装置及び試験装置の動作方法を特定する。
【背景技術】
【0002】
例えば、欧州指令2014/35/EUによれば、25VAC(交流)又は60VDC(直流)を超える動作電圧を用いた電気機器の試験は、ユーザにとって安全でなければならない。この閾値を超える電気機器の能動部品との接触を避けなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定の実施形態の少なくとも1つの目的は、ユーザが所定の電圧、特に所定の安全閾値を超える電圧に接触することを防止するための安全対策を提供する試験装置を提供することである。特定の実施形態の少なくとも1つのさらなる目的は、試験装置の動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的は、独立請求項に記載の主題及び方法により達成される。主題及び方法の有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項に特徴付けられ、また、以下の説明及び図面によって開示される。
【0005】
少なくとも1つの実施形態において、試験手順を実行する試験装置が特定される。試験装置は、電気機器を試験するように構成される。また、電気機器を、被試験電気機器又は単に被試験デバイス(DUT)と表記することができる。
【0006】
好ましくは、試験手順は、電磁両立性(EMC)試験を実行するステップを含む。特に好ましくは、試験装置は、国際規格、特にCISPR25及びISO11452-2に準拠したパワーエレクトロニクス(PE)システム・構成要素開発用の持ち運び可能なEMC試験環境を提供する。したがって、試験装置は、好ましくは、CISPR25(伝導性エミッション)に準拠したシールド環境でのエミッション測定、ISO11452-2に準拠したシールド環境でのイミュニティ測定、制限されたシールド環境での放射エミッション及びイミュニティ測定、例えば、吸収材などを使用して、最大1GHzのバルク電流注入、ロッドアンテナなどを可能にする。
【0007】
好ましくは、試験装置は、例えば外部ラボの費用を回避することにより低コストでEMC測定を実行することができるとともに、試験対象の電気機器への開発効率を向上させることができる。
【0008】
少なくとも1つのさらなる実施形態によれば、試験装置の動作方法が提供される。前述及び以下に記載される特徴及び実施形態は、試験装置及び試験装置の動作方法に同様に適用される。
【0009】
電気機器は、好ましくは、エンジンの一部及び/又は電気自動車のパワートレインなどの、自動車用機器であり得るか又はそれを含み得る。
【0010】
代替的に、電気機器は、別の機器、好ましくは、パワーエレクトロニクス機器であり得る。したがって、EMC試験では、電気機器に高電圧を供給する必要がある。
【0011】
DIN EN ISO14119(機械の安全性、インターロック)によれば、ユーザ(以下、オペレータとも表記され得る)が機器の危険区域にアクセスできるようになる前に、あらゆる種類の危険な機器を安全な状態にする必要がある。電気機器の場合、能動電気部品へのアクセスが可能であってはならないことを意味する。
【0012】
さらなる実施形態において、試験装置は、内部空間とアクセス機構とを有する試験チャンバを含む。試験チャンバは、好ましくは、アクセス機構により開閉できるケースを含む。アクセス機構が開状態にある場合、試験対象の電気機器は、試験チャンバの内部空間に配置できる。試験チャンバを閉じることにより、即ち、アクセス機構を閉状態に変更することにより、内部空間は外部環境から隔離でき、それにより、試験チャンバはシールドボックスを形成し、通常の動作状況では、試験装置のユーザが試験チャンバ内の能動電気部品に接触する可能性はない。
【0013】
アクセス機構は、ケースの一部又は移動可能なカバーであり得るか、又はそれらを含み得る。例えば、アクセス機構は、ヒンジカバー、ヒンジドア、ドア要素又はハッチであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0014】
さらなる実施形態において、試験装置は、試験手順の一部として電気機器に少なくとも電圧を印加するように具体化された電源を含む。電源は、例えば、電圧源又は電圧電流源であり、好ましくは、高電圧動作及び/又は高電流動作、例えば、最大800Vひいては1000Vの電圧及び最大40Aの電流による高電圧動作、及び/又は最大50Vの電圧及び最大400Aの電流による低電圧動作を可能にする。
【0015】
電源は、例えば、試験チャンバの外側に位置し得るAC電源と、電気機器に電圧を供給するように具体化されたDCリンク素子とを含み得る。DCリンク素子は、試験チャンバ内に位置し得る。
【0016】
さらなる実施形態において、試験装置は、例えば例外的状況及び/又は技術的に引き起こされた故障もしくはユーザによって誘発された故障において、ユーザが電圧に接触することを防止するよう意図され具体化されたマルチレベル安全システム(以下、単に安全システムとも表記され得る)を含む。特に、電気機器は、一種のフェンスによって囲まれる必要があり、例えば、アクセス機構を有する試験チャンバの場合、ドア又はケースカバーなどによって囲まれる。アクセス機構を開く場合には、安全システムにより、オペレータが電気機器の危険区域及び内部空間にある他の構成要素に手を伸ばして接触できないことを保証する必要がある。これは、オペレータが危険区域に手が届くのに必要な時間よりも短い最短時間で電源を遮断することにより実現することができる。好ましくは、インターロックシステム(連動システム)の使用により、オペレータが試験装置の危険区域に手を伸ばして接触するのに必要な時間よりも短い最短時間で電源が遮断されるようになる。
【0017】
さらなる実施形態において、マルチレベル安全システムは、アクセス機構を閉状態にロックする能動的に制御可能なインターロック素子(連動素子)を含む。例えば、インターロック素子は、アクセス機構を閉状態に維持することを保証できる電子制御式ロック機構であり得る。さらに、安全システムは、インターロック素子及び電源を制御するように具体化された制御機器を含む。
【0018】
さらに、安全システムは、少なくとも電源がスイッチオン状態にある場合、試験装置の複数の特性を監視する複数の安全センサを含む。特に、制御機器は、少なくとも電源がスイッチオン状態にある場合、複数の安全センサから複数のセンサ信号を連続的に受信しながら、インターロック素子及び電源を制御するように具体化される。それに応して、マルチレベル安全システムは、複数のセンサ入力を同時に監視する拡張インターロック回路(拡張連動回路)を形成する。
【0019】
さらに、制御機器は、少なくとも1つの安全センサが、所定の危険状態に対応する試験チャンバの特性を検出した場合に、電源をオフにして遮断することによって、電圧を遮断するように具体化される。また、制御機器は、電源により印加された電圧が所定の閾値未満である場合にはアクセス機構をアンロックし、少なくとも電圧が閾値を超えた場合にはアクセス機構をロックするようにインターロック素子を制御するように具体化される。閾値は、例えば、AC電圧の場合には25V、DCの場合には60Vであってもよい。
【0020】
制御機器は、マルチレベル安全システムの他の構成要素を少なくとも制御する回路を含み得る。例えば、制御機器は、安全システムの他の構成要素に接続され、安全システムの構成要素を制御するコンピュータプログラムを実行する、コンピュータ又は他のマイクロコントローラベースの機器であり得るか、又はそれらを含み得る。さらに、試験装置の他の構成要素は、制御機器により制御することができる。
【0021】
さらなる実施形態において、電気機器に印加される電圧は、監視される。
【0022】
好ましくは、電圧は、電気機器の電気入力部で監視され、特に好ましくは、電気機器の電気入力部で直接監視される。したがって、複数の安全センサは、電気機器の電気入力部に直接接続されるように具体化された電圧センサを含み得る。例えば、電気機器は、電源に接続された入力ピンを含み得る。入力ピンでの電圧は、電圧センサにより直接監視することができる。例えば、接続されたAC電源をオフにした後、放電に時間がかかるコンデンサを含み得るDCリンク素子を使用した場合、AC電源が既にオフになっていても、電気機器の入力部に高電圧を供給することができる。電気機器の電気入力部で電圧を監視することにより、制御機器は、DCリンク素子が十分に放電した場合にのみ、即ち、電気機器の電気入力部での電圧が所定の閾値未満である場合にのみ、インターロック素子がアクセス機構をアンロックすることを保証することができる。
【0023】
さらなる実施形態において、複数の安全センサは、ユーザにより操作可能な非常スイッチを含む。非常スイッチが使用された場合、制御機器は電源を遮断することができる。
【0024】
さらなる実施形態において、複数の安全センサは、アクセス機構の状態を監視するように具体化されたアクセス機構センサを含む。特に、アクセス機構センサは、アクセス機構に含まれるドア、カバー又はハッチの状態及び/又は位置を監視することができる。アクセス機構が開いていることが検出された場合に、制御機器は電源を遮断することができる。例えば、アクセス機構センサは、アクセス機構が開いている場合にその状態を変更する接触センサであり得る。
【0025】
さらなる実施形態において、複数の安全センサは、少なくとも内部空間の一部において液体の存在を監視するように具体化された液体検出器を含む。内部空間における液体の存在が検出された場合、制御機器は電源を遮断することができる。
【0026】
例えば、試験チャンバは、少なくとも部分的に内部空間内にある水冷システムのような液体冷却システムを含み得る。漏れが発生した場合、冷却システムで使用されている冷却液が冷却システムから流出し、短絡などを引き起こす場合がある。発生した冷却液を収容するために、試験チャンバは、内部空間内に、凹部又は槽を含むか、又はそれらであり得る固定手段を含むことができ、固定手段は、冷却システムから漏れた冷却液を収集するように具体化される。さらに、冷却システムは、冷却液を供給する冷却タンクと、冷却液を電気機器へ及び電気機器から輸送する少なくとも1つの流路とを含み得る。さらに、冷却システムは、発生した冷却液を冷却タンクに戻すことができるように、固定手段から冷却タンクに通じる少なくとも1つのバイパス流路を含み得る。液体検出器は、固定手段内に配置できる。
【0027】
試験手順を実行するために、電気機器を、試験チャンバの内部空間に配置し、電源に接続する。次に、アクセス機構を閉状態に変更し、インターロック素子によりロックする。電源をオンにし、試験手順を開始する。少なくとも電源が電気機器に電圧を印加するスイッチオン状態にある場合、試験装置の複数の特性を、マルチレベル安全システムの複数の安全センサにより監視する。上述したように、制御機器は、少なくとも1つの安全センサが所定の危険状態に対応する試験チャンバの特性を検出した場合には電圧をオフにし、及び/又は、電圧が所定の閾値未満であることを検出した場合にはアクセス機構をアンロックするようにインターロック素子を制御する。
【0028】
本明細書に記載される試験装置は、事故を防止できる安全システムを形成する。好ましくは、試験装置は、例えば最大1000VDCの電圧を用いた電気機器のEMC測定を実行するように設計された、いわゆるEMCシールドボックスを含む。好適な実施形態において、複数の安全センサにより供給された信号は、連続的に監視され、アクセス機構が開いている場合及び/又は試験チャンバの内部空間内に液体が検出された場合及び/又は非常スイッチが押された場合、電源が遮断されることになる。
【0029】
代替的に、好ましくは電気機器の電気入力部で直接測定される電圧レベルは、以下の状態を生じさせることができる。測定された電圧が所定の安全閾値未満である場合には、アクセス機構のロックが解除される。測定された電圧が所定の安全閾値を超えた場合には、アクセス機構のロックが施錠される。被試験電気機器の電気入力部で電圧を直接監視することにより、コンデンサを含み得る電圧供給入力回路の正確な制御を可能にする。これらのコンデンサの放電に必要な時間は、可変であり、直接的な測定によってのみ検証できる。安全電圧閾値は、任意の値に調整できる。測定された電圧が規定の閾値未満に低下すると、アクセス機構を保持するロックが解除され、ユーザは電気機器にアクセスできるようになる。さらに、安全のための固定手段と組み合わせられた試験チャンバ内の液体の存在の検出により、液体による短絡の可能性が生じる前に、電子機器から電源を早期に切断することができる。
【0030】
さらなる利点、有利な実施形態及び発展形態は、図面に関連して以下に記載される実施形態によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る、電気機器を試験する試験手順を実行する試験装置の概略図である。
【
図2A】
図2Aは、さらなる実施形態に係る試験装置の概略図である。
【
図2B】
図2Bは、さらなる実施形態に係る試験装置の動作方法の概略図である。
【
図3】
図3は、さらなる実施形態に係る試験装置の概略図である。
【
図4A】
図4Aは、さらなる実施形態に係る試験装置の部品の概略図である。
【
図4B】
図4Bは、さらなる実施形態に係る試験装置の部品の概略図である。
【
図4C】
図4Cは、さらなる実施形態に係る試験装置の部品に係る図である。
【
図5】
図5は、さらなる実施形態に係る試験装置の部品の概略図である。
【
図6】
図6は、さらなる実施形態に係る試験装置の部品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、電気機器を試験する試験手順を実行する試験装置の実施形態が示される。図示の実施形態では、例として、試験装置は、パワーエレクトロニクスシステム・構成要素の開発に使用でき、CISPR25及びISO11452-2などの国際規格に準拠したEMC試験環境、好ましくは、持ち運び可能なEMC試験環境として具体化される。代替的に、試験環境の他の実施形態が可能である。
【0033】
試験装置は、試験チャンバ2を含み、該試験チャンバ2は、シールドボックスとも表記でき、被試験の電気機器1が配置される内部空間20を有する。試験チャンバ2は、試験チャンバ2を開閉するアクセス機構(図示せず)を含む。さらに、試験装置100は、試験手順の一部として電気機器1に少なくとも電圧を印加するように具体化された少なくとも1つの電源3を含む。図示の実施形態では、例として、試験装置は、高電圧電源30及び低電圧電源31を含む。
【0034】
さらに、試験装置100は、試験装置100のユーザが電圧に接触することを防止するよう意図され具体化されたマルチレベル安全システム4を含む。特に、安全システム4は、
図1に示すように、1つ以上の構成要素を含み得る制御機器41を含む。例えば、制御機器41は、安全システム4の構成要素及び試験装置100の他の構成要素を制御するコンピュータプログラムを実行する、コンピュータ又は他のマイクロコントローラベースの機器を含み得る。
【0035】
さらに、制御機器41は、オペレータが安全システム4及び試験装置100の他の構成要素と通信することを可能にすることができる。マルチレベル安全システム4のさらなる詳細は、以下の実施形態に関連して説明される。
【0036】
試験装置100は、試験手順に関する構成要素をさらに含む。例えば、試験装置100は、スイッチ91及びフィードスルー92などを介して電源3に接続できる1つ以上のラインインピーダンス安定化ネットワーク(LISN)90を含み得る。さらに、電気機器1は、1つ以上のCOM入力/出力構成要素93を介して制御することができる。EMC試験に関する測定値は、高周波(HF)出力部94を介して出力し、かつ電磁妨害(EMI)受信機95により監視することができる。EMC試験に関する構成要素は、可能な構成要素の例として示され、本発明を限定するものではない。
【0037】
図2A及び
図2Bは、さらなる実施形態に係る試験装置100及び試験装置100の動作方法を示す。以下の説明は、
図2A及び
図2Bの両方に関する。
【0038】
図2Aには、主にマルチレベル安全システム4に関する構成要素が示される。試験装置100は、例えば
図1に関連して説明された試験手順に関するさらなる構成要素を含み得る。
【0039】
図1に関連して既に記載されたように、試験装置100は、試験チャンバ2を含む。試験チャンバ2は、アクセス機構22を有するケース21を含む。さらに、試験装置100は、被試験の電気機器1に電圧を供給する少なくとも1つの電源3を含む。
【0040】
アクセス機構22は、
図2Aに示すように、ケース21の一部又は移動可能なカバーであり得るか、又はそれらを含み得る。例えば、アクセス機構22は、ヒンジカバー、ドア又はハッチであり得るか、又はそれらを含み得る。試験チャンバ2を閉じることにより、即ち、アクセス機構22を
図2Aの破線で示される閉状態に変更することにより、試験チャンバ2の内部空間20は、外部環境から隔離でき、それにより、通常の動作状況では、試験装置100のユーザは、試験チャンバ2内の能動電気部品に接触する可能性がない。
【0041】
試験装置100は、ユーザが電圧に接触することを防止するマルチレベル安全システム4をさらに含む。試験チャンバ2がユーザによってアクセス機構22を使用して開けられている場合、マルチレベル安全システム4により、ユーザが内部空間20内の電気機器1の危険区域及び他の構成要素に手を伸ばして接触することができないことを保証する必要がある。この目標を達成するために、安全システム4は、
図1に関連して既に述べられた制御機器41を含み、制御機器41は、安全システム4のさらなる構成要素を制御するように具体化される。
【0042】
マルチレベル安全システム4は、アクセス機構22を閉状態にロックする能動的に制御可能なインターロック素子40をさらに含む。
【0043】
インターロック素子40は、アクセス機構22を閉状態に維持することを保証できる電子制御式ロック機構であり得る。したがって、アクセス機構22がロックされている場合、通常の動作中に、ユーザは、アクセス機構22を簡単に開けることができない。
【0044】
図2Bに示すように、試験装置の動作方法では、第1のステップ101において、電気機器1を、試験チャンバ2の内部空間20に配置し、電源3に接続する。アクセス機構22を閉状態に変更し、インターロック素子40によりロックする。電源3をオンにすることにより、電気機器1に電圧を印加し、試験手順を実行する。
【0045】
さらに、安全システム4は、少なくとも電源3がオン状態にある場合、試験装置100の複数の特性を監視する複数の安全センサ42を含む。したがって、
図2Bのさらなる方法ステップ102により示されるように、少なくとも電源3がオン状態にある場合、試験装置100の複数の特性を、マルチレベル安全システム4の複数の安全センサ42により監視する。制御機器4は、複数の安全センサ42から複数のセンサ信号を連続的に受信しながら、インターロック素子40及び電源3を制御し、それにより、マルチレベル安全システム4は、複数のセンサ入力を同時に監視する拡張インターロック回路を形成する。
【0046】
制御機器41は、少なくとも1つの安全センサ42が所定の危険状態に対応する試験チャンバ100の特性を検出した場合に、電源3をオフにして遮断することにより、電気機器1に印加された電圧を遮断するように具体化される。例えば、電源3を直接オフにすることができ、或いは、
図1に示すように、電源3と電気機器1との間の1つ以上のスイッチを遮断する。また、制御機器41は、電源3により印加された電圧が所定の閾値未満である場合、アクセス機構22をアンロックし、電圧が閾値を超える場合、アクセス機構22をロックするようにインターロック素子40を制御するように具体化される。閾値は、例えば、電気機器1にAC電圧が印加される場合に25VAC、電気機器1にDC電圧が印加される場合に60VDCであってもよい。
【0047】
複数の安全センサ42は、電気機器1に印加された電圧が監視できるように、電圧センサ43を含む。好ましくは、電圧は、監視され、特に電気機器1の電気入力部10で直接監視される。したがって、電圧センサ43は、電気機器1の電気入力部10に直接接続されるように具体化される。例えば、電気機器1は、電源3に接続された入力ピンを含み得る。入力ピンでの電圧は、電圧センサ43により直接監視することができる。例えば、DCリンク素子又はLISN素子、即ち、接続されたAC電源がオフにされた後に放電するために時間がかかる1つ以上のコンデンサを含み得る構成要素が使用される場合、AC電源が既にオフにされていても、電気機器1の入力部10に高電圧を供給することができる。電気機器1の電気入力部10で電圧を直接監視することにより、制御機器41は、電気機器1の電気入力部10での電圧が十分に低下し、所定の閾値未満であることが検出された場合にのみ、インターロック素子40がアクセス機構22をアンロックすることを保証することができる。
【0048】
さらに、複数の安全センサ42は、ユーザにより操作可能な非常スイッチ44を含む。非常スイッチ44が使用されると、制御機器41は電源3を遮断する。
【0049】
さらに、複数の安全センサ42は、アクセス機構22の状態及び/又は位置を監視するように具体化されたアクセス機構センサ45を含む。特に、アクセス機構センサ45は、アクセス機構22に含まれるドア、カバー又はハッチの状態及び/又は位置を監視することができる。例えば、アクセス機構センサ45は、アクセス機構22が開いている場合に機械的又は磁気的に開閉される接触スイッチとすることができる。電源3がオンにされ、所望の状態としてはアクセス機構22が閉じられるべきであるが、開いていることが検出された場合、制御機器41は電源3を遮断することができる。
【0050】
また、
図2Aに示す試験装置100の複数の安全センサ42は、少なくとも内部空間20の一部において液体の存在を監視するように具体化された液体検出器46を含む。内部空間20における液体の存在が検出された場合、液体が短絡を引き起こす可能性があるため、制御機器41は同様に電源3を遮断する。液体が検出された場合に電源3をオフにすることで、短絡が発生する前に、電気機器1に印加されている危険な電圧を遮断できることが好ましい。
【0051】
図2Bに示す試験装置100の動作方法において、方法ステップ103に示すように、試験手順の終了に至る時に電源3が既にオフにされていても、電気機器1の入力部10での電圧を監視する。さらなる方法ステップ104に示すように、監視された電圧が所定の閾値未満である場合にのみ、制御機器41は、アクセス機構22をアンロックするようにインターロック素子40を制御する。
【0052】
方法ステップ102の試験手順中に複数の安全センサ42のうちの1つ以上により試験装置100の危険状態が検出された場合、方法ステップ105に示すように、同様に電源3を直ちにオフにするが、監視されている電圧が所定の閾値未満の値に達した場合にのみ、ステップ104においてアクセス機構22をアンロックすることができる。
【0053】
図3は、
図2A及び
図2Bに関連して説明されたマルチレベル安全システム4を含み、コンパクトな設計を有し、持ち運び可能なEMC試験環境に使用できる試験装置100のさらなる実施形態を示す。
【0054】
試験装置100は、試験チャンバ2と、試験チャンバ2の外側に、試験装置100の構成要素を配置できる分離されたモジュール区画5とを有するラック状構造を含む。
【0055】
モジュール区画5は、例えば壁により分離することができる。構成要素は、示すように、例えば電源3、安全モジュール47、冷却システム6、高周波スイッチングマトリックス7及びDC負荷素子8であり得る。
【0056】
試験チャンバ2は、図示の実施形態ではヒンジカバーであるアクセス機構22を含むケース21により形成される。ケース21の固定部分は、側壁(図示せず)を有する接地板23を含む。このような試験チャンバ2のさらなる詳細は、
図4A~
図5に関連して示される。
【0057】
電源3は、例えば、電圧源又は電圧電流源であり、好ましくは、高電圧動作及び/又は高電流動作、例えば、最大300V、400V又は800Vひいては1000Vの電圧及び最大40Aの電流による高電圧動作、及び/又は最大50Vの電圧及び最大400Aの電流による低電圧動作を可能にする。例えば、電気機器1に電圧を供給する電源ユニットは、試験チャンバ2の外側に位置し得るAC電源で給電することができる。電源3は、例えば、試験チャンバ2の外側に位置し得るAC電源32と、電気機器1に電圧を供給するように具体化されたDCリンク素子33とを含み得る。DCリンク素子33は、
図3に示すように、試験チャンバ2内に位置し得る。安全モジュール47は、マルチレベル安全システム4の一部であり、制御機器41及び非常スイッチ44を含み、
図3に示すように、電源32の近くに位置し得る。
【0058】
好ましくは、モジュール区画5同士の分離、例えば、区画5の間の壁による分離は、水又は他の液体が漏れた場合の保護を保証する。これは、例えば、試験装置100が内部空間20内に少なくとも部分的に到達する液体冷却システム6を含む場合に有利であり得る。漏れが発生した場合、冷却システム6で使用されている冷却液が冷却システム6から流出し、短絡などを引き起こす場合がある。
【0059】
電気機器1の異なる位置での高周波測定などのためのスイッチングマトリックス7と、12VDC及び最大500ADCで動作するDC負荷素子などのDC負荷素子8とは、
図1に関連して説明された試験手順に関する構成要素の例である。代替的又は追加的に、試験手順に関する他の構成要素は、試験チャンバ2の内部又は外部に位置することができる。
【0060】
上述したように、制御機器41は、少なくとも1つの安全センサ42が所定の危険状態に対応する試験チャンバ2の特性を検出した場合には電圧をオフにし、及び/又は、電圧が所定の閾値未満である場合にはアクセス機構22をアンロックするようにインターロック素子40を制御する。特に、マルチレベル安全システム4は、電気機器1のDC入力ピンなどの電気入力部10での電圧を監視している。試験手順の試験シーケンスが終了したときに、電源32の出力電圧を停止する。能動部品にユーザの手が届くことを防止するために、アクセス機構22は、入力部10での電圧が規定の閾値、例えば、欧州規格に準じて60VDCを下回るまで、インターロック素子40によりロックされたままとなる。代替的に、監視された電圧閾値は任意の値に調整できる。測定された電圧が規定の閾値未満に低下すると、アクセス機構22をロックするインターロック素子40が解錠されることにより、ユーザは試験チャンバ2内の電気機器1にアクセスできるようになる。
【0061】
代替的に、マルチレベル安全システム4は、試験チャンバ2内の液体の存在を監視し、アクセス機構センサ45によりアクセス機構22の位置を監視し、非常スイッチ44の状態を監視する。安全センサの信号は、連続的に監視され、電源32がオンにされているときにアクセス機構22が開いている状況、試験チャンバ2の内部空間20内に液体が検出された状況、及び非常スイッチ44が押された状況では、危険な電源3が遮断されることになる。
【0062】
図4A及び
図4Bは、試験チャンバ2及びモジュール区画5の例を示し、試験チャンバ2は、開状態及び閉状態で示されている。区画5を分離する壁は示されていない。試験チャンバ2は、アクセス機構22としてヒンジカバーを有するシールドボックスにより形成される。試験チャンバ2は、ステンレス鋼を含み得るか又は実質的にステンレス鋼で製造され得、かつ試験チャンバ2のカバーと固定ケース21との間に接触バネを有する。
図4Cには、高周波電磁波の周波数fに対する減衰率Aの典型的な依存性が示される。
【0063】
フィードスルー素子により、試験チャンバの内部空間へのアクセスが可能になる。
【0064】
図5は、試験チャンバ2とモジュール区画5のさらなる例を示しているが、ここでも区画を分離する壁は示さない。この実施形態では、例えば少なくとも1つのDCリンク素子及び/又は少なくとも1つのLISN素子を含む、試験手順に関する構成要素9は、試験チャンバ2の内部空間に位置するように示されている。
【0065】
図6は、さらなる実施形態に係る試験装置100の断面図を示す。特に、冷却システム6が示されている。上述したように、試験チャンバ2は、内部空間20内に少なくとも部分的に到達する液体冷却システムを含む。冷却システム6は、冷却液を供給する冷却タンク60と、冷却液を電気機器1へ輸送し電気機器1から輸送するポンプ62及び少なくとも1つの流路61とを含む。発生した冷却液69を収容するために、試験チャンバ2は、内部空間20内に凹部又は槽のような固定手段63を含む。固定手段63は、
図6に示すように、冷却システム6から漏出した冷却液69を収集するように具体化される。液体検出器46は、好ましくは、固定手段63内に配置できる。さらに、冷却システム6は、発生した液体69を内部空間20から安全に除去するために、発生した冷却液69を好ましくは重力によって冷却タンク60に戻すことができるように、固定手段63から冷却タンク60に通じる少なくとも1つのバイパス流路64を含む。
【0066】
したがって、バイパス流路64は、液体非常出口を形成する。バイパス流路64は、好ましくは、固定手段の底部に配置でき、少なくとも1つの流路61の少なくとも一部と共に二重管構造(チューブ・イン・チューブ構造)として形成することができる。
図6に示すように、バイパス流路は、少なくとも1つの流路61の一部が配置された船体チューブ(hull tube)のように形成することができる。代替的に、バイパス流路64は、少なくとも1つの流路61から分離して形成することができる。
【0067】
図面に関連して記載された特徴及び実施形態はまた、そのような組み合わせのすべてが明示的に記載されていなくても、さらなる実施形態に従って互いに組み合わせることができる。さらに、図面に関連して記載された実施形態は、代替的又は追加的に、一般的な部分の説明に従ってさらなる特徴を有し得る。
【0068】
本発明は、例示的な実施形態に基づく説明によって限定されるものではない。むしろ、本発明は、その特徴又はその組み合わせ自体が特許請求の範囲又は例示的な実施形態で明確に説明されていない場合でも、特許請求の範囲の特徴の各組み合わせを特に含む各新しい特徴及び特徴の各組み合わせを含む。
【符号の説明】
【0069】
1 電気機器
2 試験チャンバ
3 電源
4 マルチレベル安全システム
5 モジュール区画
6 冷却システム
7 高周波スイッチングマトリックス
8 DC負荷素子
9 構成要素
10 電気入力部
20 内部空間
21 ケース
22 アクセス機構
23 接地板
30 高電圧電源
31 低電圧電源
32 電源
33 DCリンク素子
40 インターロック素子
41 制御機器
42 安全センサ
43 電圧センサ
44 非常スイッチ
45 アクセス機構センサ
46 液体検出器
47 安全モジュール
60 冷却タンク
61 流路
62 ポンプ
63 固定手段
64 バイパス流路
69 冷却液
90 ラインインピーダンス安定化ネットワーク
91 スイッチ
92 フィードスルー
93 COM入力/出力構成要素
94 高周波出力部
95 電磁妨害受信機
100 試験装置
【国際調査報告】