(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】金属製品鋳造における金属材料封じ込めシステム
(51)【国際特許分類】
B22D 11/06 20060101AFI20240201BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B22D11/06 330B
B22D11/00 D
B22D11/00 E
B22D11/06 320C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544406
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 IB2022051187
(87)【国際公開番号】W WO2022172183
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021000003029
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523275190
【氏名又は名称】ダニエーリ エ チ.オフィシーネ メカニケ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノービレ、マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】アンソルディ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァドール、ニコラス
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004DA04
4E004DA13
4E004RA01
4E004SA01
(57)【要約】
2つの鋳造部材の間に画定された通路の開放側端部に液体金属材料または液体合金を横方向に封じ込めるための封じ込めシステム(1)。このシステムは、通路の開放側端部の近くに配置されるように適合された中空端部要素(3)で終端を迎える空気圧装置(2)を備え、中空端部要素(3)は、内部にチャンバ(4)を画定し、空気圧装置(2)は、圧縮された気体物質をチャンバ(4)内に供給するように適合されており、中空端部要素(3)には、圧縮された気体物質をチャンバ(4)から液体金属のための側面封じ込めゾーンに向かって吹き出すための少なくとも1つの吹き出し面(6、7)が設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの鋳造部材の間に画定された通路の開放側端部に少なくとも部分的に液体の金属材料を横方向に封じ込めるための封じ込めシステム(1)であって、該システムは、
少なくとも1つの圧縮された気体物質を供給するための供給装置(2)を備え、
前記供給装置(2)には、前記通路の前記開放側端部の近くに配置されるように適合された中空端部要素(3)が設けられ、
前記中空端部要素(3)は、内部に少なくとも1つのチャンバ(4)を有し、
前記供給装置(2)は、前記少なくとも1つの圧縮された気体物質を前記少なくとも1つのチャンバ(4)内に供給するように適合されており、
前記中空端部要素(3)には、前記少なくとも1つの圧縮気体物質を前記少なくとも1つのチャンバ(4)から前記少なくとも部分的に液体の金属材料の側面封じ込めゾーンに向かって吹き出すための少なくとも1つの吹き出し面(6、7)が設けられ、
前記少なくとも1つの吹き出し面(6、7)には、複数の貫通孔(14、15)が設けられ、
2つ以上の非同一平面上の吹き出し面(6、7;6’、12’)が、前記少なくとも1つの気体物質の流れを異なる方向に向けるために設けられるか、または、
各々のグループが他のグループとは異なる方向に向けられた2つ以上のグループの貫通孔が設けられた1つの吹き出し面のみが設けられる、封じ込めシステム(1)。
【請求項2】
2つ以上の非同一平面上の吹き出し面(6、7;6’、12’)の場合、各々の吹き出し面の前記貫通孔は互いに平行であり、他の吹き出し面の前記貫通孔に対してゼロ以外の角度で傾斜しているか、または、
2つ以上のグループの貫通孔が設けられた1つの吹き出し面のみの場合、各々のグループの前記貫通孔は互いに平行であり、他のグループの前記貫通孔に対してゼロ以外の角度で傾斜している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記中空端部要素(3)は、前記2つの鋳造部材の間に挿入され得るのに適した楔形状を少なくとも部分的に有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記中空端部要素(3)は、前記側面封じ込めゾーンに面するように適合された少なくとも1つの第1の外側表面(10)を備え、かつ前記少なくとも1つの吹き出し面(6、7)を備え、
好ましくは、前記中空端部要素(3)は、
前記第1の表面(10)の反対側の第2の外側表面(11)と、
互いに反対側にあり、前記第1の表面(10)を前記第2の表面(11)に接続する、第3の外側表面(8)および第4の外側表面(9)と、
をも備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第3の外側表面(8)および前記第4の外側表面(9)は、前記中空端部要素(3)の楔形を画定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
第1の平面Xを画定する第1の吹き出し面(6)と、前記第1の平面Xに入射する第2の平面Yを画定する第2の吹き出し面(7)とが提供され、
前記システムが前記通路の開放側端部に取り付けられるとき、前記第1の吹き出し面(6)は、液体金属供給面に対して垂直に配置され、前記第2の吹き出し面(7)は、前記第1の吹き出し面(6)と前記側面封じ込めゾーンの両方の近位にある第1の端部と、前記第1の吹き出し面(6)と前記側面封じ込めゾーンの両方から遠位にある第2の端部とを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記中空端部要素(3)は、前記平面Xに垂直な中心面を有し、2つの第3の吹き出し面(12)が提供され、前記2つの第3の吹き出し面(12)は、前記第1の吹き出し面(6)に隣接し、前記中心面に対して対称的に配置されており、
前記システムが前記通路の開放側端部に取り付けられるとき、前記第3の吹き出し面(12)は、前記第1の吹き出し面(6)に対しては近位にあるが前記側面封じ込めゾーンからは遠位にあるそれぞれの第1の端部と、前記第1の吹き出し面(6)からは遠位にあるが前記側面封じ込めゾーンに対しては近位にあるそれぞれの第2の端部とを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記中空端部要素(3)は、前記平面Xに垂直な中心面を有し、2つの他の吹き出し面(13)が提供され、前記2つの他の吹き出し面(13)は、第2の吹き出し面(7)に隣接し、前記中心面に対して対称的に配置されており、
前記システムが前記通路の開放側端部に取り付けられるとき、前記他の吹き出し面(13)は、前記第2の吹き出し面(7)と前記側面封じ込めゾーンの両方に対して近位にあるそれぞれの第1の端部と、前記第2の吹き出し面(7)と前記側面封じ込めゾーンの両方から遠位にあるそれぞれの第2の端部とを有する、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記中空端部要素(3)は、好ましくはグラファイト、ケイ酸カルシウム、銅、青銅から選択される材料で一体的に作られている、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
金属材料製品を鋳造するための鋳造機であって、
2つの鋳造部材(20、21)と、
請求項1~9のいずれか一項に記載の第1の封じ込めシステム(1)と、
好ましくは、請求項1~9のいずれか一項に記載の第2の封じ込めシステム(1’)と、
を備え、
前記2つの鋳造部材(20、21)は、前記鋳造部材間の空間内に供給された前記液体金属材料を凝固させて製品を形成するための、2つの開放側端部を有する通路を画定し、
前記第1の封じ込めシステム(1)は、前記通路の第1の開放側端部の近くに配置され、
前記第2の封じ込めシステム(1’)は、前記通路の第2の開放側端部の近くに配置され、
好ましくは、前記2つの鋳造部材(20、21)は、二重反転ロール、ベルト、トラック、またはそれらの組み合わせである、鋳造機。
【請求項11】
前記2つの鋳造部材(20、21)は、回転軸が共通の平面上に位置するように上下に配置された2つの鋳造ロールであり、好ましくは、前記金属材料は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、またはこれらの金属のうちの1つをベースとする合金である、請求項10に記載の鋳造機。
【請求項12】
前記第1の封じ込めシステム(1)の前記中空端部要素(3)および/または前記第2の封じ込めシステム(1’)の前記中空端部要素(3)を移動させるための移動手段(40)が、前記2つの鋳造ロール(20、21)の回転軸を含む面と平行な方向に沿った互いの距離を調整するために設けられる、請求項11に記載の鋳造機。
【請求項13】
前記第1の封じ込めシステム(1)の前記中空端部要素(3)、および好ましくは前記第2の封じ込めシステム(1’)の前記中空端部要素(3)が、前記2つの鋳造ロール(20、21)の間に少なくとも部分的に挿入されるための楔形状を少なくとも部分的に有する、請求項11または12に記載の鋳造機。
【請求項14】
前記中空端部要素が、完全に前記鋳造ロールの外側にある場合と、前記中空端部要素の前記楔形状によって前記鋳造ロール間に少なくとも部分的に挿入される場合、前記中空端部要素(3)と前記鋳造ロールのいずれかの表面との間にゼロ以外の距離が設けられる、請求項13に記載の鋳造機。
【請求項15】
請求項11または12に記載の鋳造機によって実行され得る、金属材料製品を鋳造するための鋳造方法であって、
前記液体金属材料を前記2つの鋳造部材(20、21)の間の前記空間内に供給する段階と、
前記金属材料を凝固させ、前記2つの鋳造部材(20、21)の間の前記通路内で製品を形成する段階と
を含み、
前記液体金属材料の側面封じ込めは、第1の封じ込めシステム(1)によって前記通路の前記2つの開放側端部のうちの少なくとも1つに設けられ、
前記液体金属材料の前記側面封じ込めは、少なくとも1つの圧縮気体物質を、少なくとも1つの吹き出し面(6、7)によって前記少なくとも1つの圧縮された気体物質を前記少なくとも1つのチャンバ(4)から前記液体金属材料の前記側面封じ込めゾーンに向かって吹き出す、前記中空端部要素(3)の前記少なくとも1つのチャンバ(4)に供給することによって得られ、
好ましくは、前記液体金属材料の第1の側面封じ込めが、前記第1の封じ込めシステム(1)によって前記通路の第1の開放側端部に設けられ、前記液体金属材料の第2の側面封じ込めが、前記第2の封じ込めシステム(1’)によって前記通路の第2の開放側端部に設けられる、鋳造方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの吹き出し面(6、7;6’、12’)は、前記少なくとも1つの吹き出し面と凝固中の前記金属材料との接触を提供することなく、前記圧縮された気体物質を吹き出すことのみによって、前記金属材料の側面封じ込め作用を働かせる、請求項15に記載の鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインロール鋳造として一般的に知られている技術に従って、または平坦な金属製品を形成するために2つの鋳造部材を使用する他の代替鋳造技術に従って、好ましくは平坦な金属製品(例えば、ストリップ)の鋳造作業中に、液体または半液体の金属材料(例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、または任意の合金)を封じ込めるためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ツインロール鋳造として一般的に知られている技術は、液体材料から始めて固体の金属半製品を製造するために、20世紀半ばから使用されているよく知られた技術である。この技術は主に、平坦なストリップの製造に使用されるが、薄いフォーマット(一般的に厚さまたは直径が10mmまで)の生産性が向上可能であるため、そしてそのような形状をツインロール鋳造は他の鋳造技術に比べて高速に鋳造することができるため、長尺製品(例えば、ビレットまたはバーなど)にも使用されるように適合され得る。ツインロール鋳造のもう一つの利点は、半製品の薄肉サイズおよび小形フォーマットを最終製品の形状に近づけることができるため、下流プロセスでの成形作業(圧延、絞り)を軽減し、安価で大量に製造される最終製品を入手するのに貢献することである。
【0003】
ツインロール鋳造には、鉄合金および非鉄合金、または純金属など、様々な材料が使用できる。
【0004】
従来の鋼鋳造構成では、ツインロール鋳造は、冷却された水平ロールが平行に並べて配置され、それらの軸が共通の水平面上にある2段のスタンドによって作動される一方、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、および/またはそれらの合金を鋳造するための2つの冷却された水平ロールは、例えばそれらの軸が共通の鉛直面上または鉛直線に対して傾斜した共通の面上に位置するように上下に配置される。鋳造ロールによって画定された空間は、液体金属材料を冷却されたロールと接触させて凝固を開始する排出装置によって供給される。排出装置は、材料を送り込み封じ込める動作において、液体または半液体材料が完全に固化する前に横方向に広がるのを防ぎ、排出装置自体の一部または別個の構成要素とすることができる、サイドバリアまたはエッジダムによって支援される。一般的に、排出装置は、鋳造される材料とその特性に応じて異なるチャネルおよび炉のシステムによって供給される。一般的に、液体材料は、重力またはポンプ手段を使用して輸送され、チャネルは、構造の完全性と液体状態の合金との化学的適合性を確保するために、温度の低下および材料の望ましくない局所的な凝固を防ぐための隔離特性と、適切な機械的抵抗の両方を有する材料で作られる必要がある。
【0005】
金属ストリップの鋳造における最も重大な問題の1つは、エッジの加工条件と凝固パラメータによって引き起こされる、液体材料の横方向の広がりである。
【0006】
一般的に、鋳造負荷が増加した場合、液体の流れ状態と低い鋳造速度が、ストリップのエッジの優先的な冷却を促進し、その結果ストリップが部分的に横方向に広がり、寸法制御が改善され、漏れのリスクが減少する。しかしながら、これによりストリップの局所的な品質が低下し、ストリップの側面部分をトリミングする必要が生じる。
【0007】
側面でさえもより均一な鋳造条件を得るために加工条件を変更することもできるが、これでは液体材料の横漏れが増加し、鋳造ロールに付着して設備に損傷を与え、プロセスの停止を誘発する危険性ももたらし得る。これは、凝固前のストリップの側面封じ込めを機械的バリアによって改善することで回避できるが、これらの結果を得るには技術的な観点から一定の制限が存在する。
【0008】
実際、機械的側面封じ込めシステムまたは機械的エッジダムは、鋳造装置から出てくる液体材料と反応する可能性のある材料で作られてはならず、もしそれらが隔離材料で作られている場合、それらは効果的に材料を封じ込めることができない。さらに、そのような材料は、偶発的な接触によるロールへの滑り損傷を避けるために、ロールに過度に抵抗してはならない。一般的に、これらの要件を満たすために、そのような材料は、例えば酸化物耐火材料などの軟質材料であることが好ましい。また、鋳造荷重が減少した場合、ロールバイトの出口に近い位置において、排出装置出口からかなり離れた点にも、つまり鋳造ロール間の距離が最小の点にも、有効な側面封じ込めを確保する必要があり、これには非常に長くて非常に薄いエッジダムを使用することが必要とされる。上述の材料では、エッジダムの必要な形状を達成したり、エッジダム自体の降伏または鋳造ロールの表面の損傷を招くことなく必要な形状で動作したりすることはできない。代わりに、鋼または金属などの代替材料を使用してエッジダムを構築することにより、化学反応、腐食、および/または摩耗の現象によって引き起こされる急速な損耗に加えて、液体金属材料(例えば、アルミニウムまたはその合金)の接着効果がもたらされるため、鋳造ロールの表面に損傷を与える危険性がある。
【0009】
したがって、前述の欠点を克服できる封じ込めシステムを提供する必要があると感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、好ましくは平坦な金属製品の鋳造において、液体金属材料、特にアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、またはこれらの金属のうちの1つをベースとした合金を横方向に封じ込めるためのシステムであって、このシステムは、任意の鋳造荷重で液体金属材料を封じ込めることと側面封じ込め領域を拡張することの両方の点で性能を向上させることができると同時に、側面封じ込め装置と液体金属材料との直接接触を回避することができるシステムを提供することである。
【0011】
本発明のシステムは、ツインロール鋳造として一般的に知られる技術に従って、または平坦な金属製品を画定するために2つの鋳造部材を使用する代替鋳造技術に従って実行される鋳造に適用することができる。
【0012】
本発明の別の目的は、柔軟性を備え、したがって鋳造部材を交換する必要なしに、様々な幅の金属製品を鋳造できる封じ込めシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、2つの鋳造部材の間に画定された通路の開放側端部に少なくとも部分的に液体の金属材料を横方向に封じ込めるための封じ込めシステムであって、前記システムは、少なくとも1つの圧縮された気体物質を供給するための供給装置を備え、
前記供給装置には、通路の前記開放側端部の近くに配置されるように適合された中空端部要素が設けられ、
前記中空端部要素は、内部に少なくとも1つのチャンバを画定し、
前記供給装置は、少なくとも1つの圧縮された気体物質を前記少なくとも1つのチャンバ内に供給するように適合されており、
前記中空端部要素には、前記少なくとも1つの圧縮気体物質を前記少なくとも1つのチャンバから前記少なくとも部分的に液体の金属材料のための側面封じ込めゾーンに向かって吹き出すための少なくとも1つの吹き出し面が設けられ、
前記少なくとも1つの吹き出し面には、複数の貫通孔が設けられ、
2つ以上の非同一平面上の吹き出し面が、前記少なくとも1つの気体物質の流れを異なる方向に向けるために設けられるか、または、各々のグループが他のグループとは異なる方向に向けられた2つ以上のグループの貫通孔が設けられた単一の吹き出し面が設けられる、システムによって、そのような目的の少なくとも1つ、および本説明に照らして明らかとなるであろう他の目的を達成する。
【0014】
本発明の別の態様は、金属材料製品を鋳造するための鋳造機であって、
2つの鋳造部材と、
上述のような第1の封じ込めシステムと、
好ましくは、上述のような第2の封じ込めシステムと、
を備え、
2つの鋳造部材は、前記鋳造部材間の空間内に供給された液体金属材料を凝固させて製品を形成するための、2つの開放側端部を有する通路を画定し、
第1の封じ込めシステムは、前記通路の第1の開放側端部の近くに配置され、
第2の封じ込めシステムは、前記通路の第2の開放側端部の近くに配置され、
好ましくは、前記2つの鋳造部材は、二重反転ロール、ベルト、トラック、またはそれらの組み合わせである、鋳造機に関するものである。
【0015】
本発明の他の一態様は、前述の鋳造機によって実行される、金属材料製品を鋳造するための鋳造方法に関するものであり、この方法は、
液体金属材料を2つの鋳造部材の間の空間内に供給する段階と、
金属材料を凝固させ、2つの鋳造部材の間の通路内で製品を形成する段階と、
を含み、
液体金属材料の側面封じ込めは、第1の封じ込めシステムによって通路の2つの開放側端部のうちの少なくとも1つに設けられ、
液体金属材料の側面封じ込めは、少なくとも1つの圧縮気体物質を、少なくとも1つの吹き出し面によって前記少なくとも1つの圧縮された気体物質を少なくとも1つのチャンバから前記液体金属材料の側面封じ込めゾーンに向かって吹き出す、前記中空端部要素の少なくとも1つのチャンバに供給することによって得られ、
好ましくは、液体金属材料の第1の側面封じ込めが、前記第1の封じ込めシステムによって通路の第1の開放側端部に設けられ、液体金属材料の第2の側面封じ込めが、第2の封じ込めシステムによって前記通路の第2の開放側端部に設けられる、鋳造方法に関するものである。
【0016】
本記述では、例として、2つの二重反転ロールを鋳造部材として使用するツインロール鋳造技術について言及する。
【0017】
本発明のソリューションは、凝固プロセス中に、液体金属材料をストリップの中央に向かって押し、溶融材料の側面への広がりまたは漏れを防ぐように前記エッジに力を加えることによって、平坦な金属製品(例えば、ストリップ)のエッジを封じ込めることができる圧縮された気体物質からなるバリアを提供することにある。
【0018】
本発明の原理は、少なくとも1つの圧縮された気体物質の供給装置の使用に基づいており、材料がロールに入る側、または材料がロールから出る側、またはロール自体の側面の側でも、鋳造機のロールに非常に近い位置に配置されるように部分的に成形され得る。このような供給装置は、少なくとも1つの圧縮された気体物質(例えば、空気または不活性ガス)を、ロール間の空間に一方の側から中央に向かって吹き出すように構成される。この圧縮された空気状物質には、ストリップのエッジにある液体材料を冷却して局所的に凝固を加速させる効果と、液体材料が広がるのを防ぐ機械的封じ込め作用を働かせるという二重の効果がある。
【0019】
このような解決策には多くの利点がある。
【0020】
まず、液体金属材料と他の材料との間の接触を避けながら機械的作用が働くため、化学反応、腐食、または摩耗が回避される。
【0021】
より詳細には、本発明のソリューションは、中空端部要素と鋳造ロールの任意の表面との間、または中空端部要素と液体金属材料との間のいずれにも直接接触を提供しない。
【0022】
特に、中空端部要素が完全に鋳造ロールの外側にあるとき、および中空端部要素が、例えば中空端部要素の楔形状によって、前記鋳造ロール間に少なくとも部分的に挿入されているときの両方で、中空端部要素と鋳造ロールの任意の表面との間には常にゼロ以外の距離が設けられる。
【0023】
中空端部要素の少なくとも1つの吹き出し面は、材料がロールから横方向に逃げるのを防止するために、凝固中の材料とのその接触を提供することなく、圧縮された気体物質を吹き出すことだけによって、金属材料の側面封じ込め作用を働かせる。
【0024】
また、他の利点は、従来技術では空間が限られているため物理的バリアによっては達成できなかったロール間の任意の点に封じ込め作用を働かせることができることである。例えば、鋳物の厚みが非常に薄い場合でも、空気または不活性ガスのジェットをロールバイトの中央に向けることができる。実際、この場合、鋳造製品(例えば、ストリップ)の最終的な厚さによって課される隙間が限られているため、ロールバイトの非常に近くのロール間に物理的バリアを挿入することはできない。
【0025】
最後に、吹き出し作用の大きな利点は、ロールの位置が変更された場合でも、調整を必要とせずにロール間の隙間をシールできることである。例えば、本発明のソリューションは、ソフトウェア制御されたロール位置の場合、および時折のロールの動きを決定する可能性がある鋳造条件による荷重設定の予期せぬ変化の場合にも機能し続ける。
【0026】
本発明の封じ込めシステムは、それを動作条件に適切に調整し、空気または不活性ガスの消費を最小限に抑えることによって封じ込め作用を分散させるように、その幾何学的形状に従ってより集中または拡散したジェットを生成することができる。また、注入ガスの圧力と機械的推力作用を調整して、溶融材料の異なる金属静圧を補償することができる。
【0027】
本発明の空気圧システムまたはエッジダムソリューションにより、以下の要件:
高圧を受ける金属材料(例えば、最大100~120mmの液体金属ヘッド)を横方向に封じ込めること、
関連する側面封じ込め領域の長さは、(例えば、45~70mm(セットバック)に)変化し得ること、
このシステムは柔軟性があり、鋳造ロールを異なる長さの他のロールに交換する必要なしに、様々なストリップ幅を鋳造できること、
を満たすことも可能になる。
【0028】
本発明の他の構成および利点は、限定的ではない例示的な実施形態の詳細な説明を考慮するとより明らかになるであろう。
【0029】
従属請求項は、本発明の特定の実施形態を説明する。
【0030】
本発明の説明においては、非限定的な例として提供される添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る側面封じ込めシステムを備えた横型鋳造機の図を示す。
【
図5】2つの鋳造ロール間に挿入された構成要素の第1の変形例の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図中において、同一の要素または構成要素には同一の符号を付す。
【0033】
本発明の封じ込めシステムは、ツインロール鋳造として一般的に知られる技術に従って、または平坦な金属製品を画定するために2つの鋳造部材を使用する代替鋳造技術に従って実行される鋳造に適用することができる。
【0034】
例えば、この代替鋳造技術は、
平坦な金属製品が、単一の水冷回転ロールとの接触によって凝固され、ロールと排出装置(例えば、タンディッシュ)のノズルとによって境界付けられた空間から開始し、ここで、2つの鋳造部材は、単一のロールとノズルである、単一ロール鋳造、
平坦な金属製品が、それぞれ2つの逆回転ベルトまたはトラックの間の通路内で凝固する、ツインベルト鋳造またはツイントラック鋳造(ツインブロック鋳造としても知られている)、
ロールベルト、ロールトラック、またはトラックベルト鋳造を組み合わせたもの、
のうちの1つとすることができる。
【0035】
この詳細な説明では、例として、2つの二重反転ロールを鋳造部材として使用するツインロール鋳造技術について言及する。
【0036】
図1は、上下に配置された2つの水平鋳造ロール20、21を備え、その軸が共通の鉛直面上にある横型鋳造機の一例を示しており、鋳造機は、本発明の一対の封じ込めシステム1、1’を備えている。しかしながら、本発明のシステムは、2つのロールの軸が鉛直線に対して傾斜した共通の平面上にある鋳造機でも使用することができる。特に、2つの鋳造ロールが平行に並べて配置され、それらの軸が共通の水平面上にある縦型鋳造機を使用することができる。
【0037】
図1~
図2に示されるバージョンでは、好ましくはアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、またはそれらの合金で作られた、平坦な金属材料製品(例えば、ストリップ)を鋳造するための鋳造機は、
液体金属材料を凝固させて平坦な製品を形成するための、2つの開放側端部を有する鋳造される金属材料のための出口通路を画定する、逆回転する重ねられた2つの鋳造ロール20、21と、
液体金属材料を2つの鋳造ロール間の空間内に、2つの鋳造ロール間に画定された通路に向かって供給するための供給手段と、
通路の第1の開放側端部の近くに配置された第1の封じ込めシステム1と、
好ましくは、通路の第2の開放側端部の近くに配置された第2の封じ込めシステム1’と、
を備える。
【0038】
通路の2つの側端部のうちの1つにおいてのみ液体金属材料を横方向に封じ込める必要がある場合には、単一の封じ込めシステムを使用するだけで十分である。
【0039】
それ自体は知られている供給手段は、
例えば入口チャネル(図示せず)から来る、液体金属材料を収集するためのタンディッシュ34と、
タンディッシュ34から来る液体金属材料を2つの鋳造ロール20、21によって境界付けられた通路に向かって供給するための、好ましくはセラミックス材料で作られた排出装置35と
を備える。
【0040】
2つの鋳造ロール20、21の回転軸を含む平面に平行な方向に沿って互いの距離を調整するために、第1の封じ込めシステム1および/または第2の封じ込めシステム1’を移動させるための移動手段(図示せず)を設けることができる。このような移動手段は、例えば、油圧、空気圧、機械式アクチュエータ、それらの組み合わせなどのリニアアクチュエータとすることができる。
【0041】
これにより、鋳造ロールを交換する必要なしに、様々な幅の金属製品(例えば、ストリップ)を鋳造することができる。製造されるストリップの一方のサイズから他方のサイズへの移行には、2つの側面封じ込めシステム1、1’のうちの少なくとも1つを鋳造ロール20、21に対して上記方向に沿って横方向に移動させることのみが必要である。これは、単一の封じ込めシステムの場合にも当てはまる。
【0042】
したがって、鋳造ロールの(固定された)幅が等しい場合、側面封じ込めシステムを移動して、鋳造されるストリップの異なる幅を画定できるため、従来技術のような専用のロールセットを有する必要はなく、従来技術では、封じ込めシステムを横方向に動かすことができないため、異なる幅のストリップを鋳造するたびに鋳造ロールを交換する必要がある。
【0043】
図1の封じ込めシステム1、1’は、金属材料(液体金属)が2つの鋳造ロール20、21の間の空間に入る側に配置されており、一方、
図2は単一の封じ込めシステム1を示しており、これは金属材料(鋳造製品)が鋳造ロール20、21から出る側に配置されている。金属材料の送り方向は、
図2の矢印Fで示される。
【0044】
別の変形例では、金属材料の入口側と金属材料の出口側の両方に1つまたは2つの封じ込めシステムを設けることができる。
【0045】
本発明のすべての実施形態において、鋳造される材料の各々の側面封じ込めシステム1、1’は、2つの鋳造ロール20、21の間に画定される通路のそれぞれの開放側端部に、鋳造ロール20、21によって画定される通路の開放側端部の近くに配置されるように適合された中空端部要素3を備える、少なくとも1つの圧縮された気体物質を供給するための供給装置2を備える(
図2)。
【0046】
中空端部要素3は、通路の開放側端部の2つの鋳造ロール間に少なくとも部分的に挿入され得るように、少なくとも部分的に楔形状を有することができる。
【0047】
楔形状の代替として、中空端部要素3は、直方体または角錐の平行六面体の形状、または2つの鋳造ロール間に画定された通路の近くに中空要素を配置するのに適した任意の他の形状を有することができ、中空端部要素3は、通路の開放側端部で2つの鋳造ロールの間に少なくとも部分的に挿入され得る。
【0048】
図面の例では、中空端部要素3は、楔形である。
【0049】
好ましくは、各々の供給装置2、したがってそれぞれの中空端部要素3は、排出装置35が占めるゾーンに対して横方向の外側位置(例えば、完全に外側位置)に配置される。
【0050】
図6の非限定的な変形例に示されるように、中空端部要素3は、内部に少なくとも1つのチャンバ4(例えば、単一チャンバ)を画定する。他の変形例では、2~6個のチャンバを提供できる。しかしながら、例えばチャンバが中空要素3を作製する材料の多孔性に対応する場合には、チャンバの数が6よりも多く、さらには6よりもかなり多くなる変形例も除外されない。
【0051】
供給装置2は、空気または不活性ガスなどの少なくとも1つの圧縮された気体物質を少なくとも1つのチャンバ4内部に供給するように構成されている。
【0052】
有利には、中空端部要素3には、圧縮された気体物質を少なくとも1つのチャンバ4から鋳造ロール20、21の間で鋳造されている金属材料の側面封じ込めゾーンに向けて吹き出すための少なくとも1つの吹き出し面が設けられる。
【0053】
図2の非限定的な例に示されるように、各々の封じ込めシステム1は、その第1の端部で下部鋳造ロール21のチョック23上に設置することができ、システムの第1の端部の反対側の第2の端部で対応する中空端部要素3を支持する支持アーム24を備える。
【0054】
2つの鋳造ロール20、21の回転軸を含む平面に平行な方向に沿って互いの距離を調整するために、封じ込めシステム1、1’の一方または両方の中空端部要素3を移動させるための移動手段40を設けることができる。
【0055】
例えば、各々の封じ込めシステム1、1’に対して1つの移動手段40が設けられる。
【0056】
特に、移動手段40は、2つの鋳造ロール20、21の回転軸を含む平面に平行な方向に沿って中空端部要素3の支持アーム24を移動させるように構成されている。
【0057】
このような移動手段40は、例えば、油圧、空気圧、または機械式アクチュエータなどのリニアアクチュエータとすることができる。好ましくは、少なくとも1つの吹き出し面には、少なくとも1つのチャンバ4と連通する複数の貫通孔が設けられるか、または空気または不活性ガスのジェットを確実に放出するために多孔質マトリックス材料で作られる。
【0058】
本発明のすべての実施形態において、中空端部要素3は、側面封じ込めゾーンに面するように適合され、少なくとも1つの吹き出し面を備える第1の外側表面10を備える。
【0059】
好ましくは、中空端部要素3はまた、
第1の表面10の反対側にあり、好ましくは少なくとも1つの圧縮された気体物質のための少なくとも1つの入口孔5を備える、第2の外側表面11と、
互いに対向しており、第1の表面10を第2の表面11に接続する、第3の外側表面8および第4の外側表面9と、
を備える。
【0060】
非限定的な一例では、中空端部要素3は、2つの鋳造ロール間に挿入され得るのに適した楔形状を少なくとも部分的に有する。ここで、第3の外側表面8および第4の外側表面9は、中空端部要素3の楔形状を画定する(
図7~
図14)。
【0061】
第3の表面8および第4の表面9は、平坦または曲線状、あるいは部分的に平坦および部分的に曲線状とすることができ、楔形状を画定するように中空要素3の中心面Zに向かって収束する。
【0062】
曲線状または部分的に曲線状の表面8および9の場合、その曲率半径は、対応する鋳造ロールの外側半径に実質的に等しい。
【0063】
単なる例として、本発明の封じ込めシステムの作動中、中空端部要素3と鋳造ロール20、21との間の最小距離、すなわち表面8、9と対応する鋳造ロールとの間の最小距離は、約0.5~2mmであり、例えば、約1mmである。好ましくは、中空端部要素3と液体金属材料のエッジとの間の距離は、約8~12mmであり、例えば、10mmである。
【0064】
中空端部要素3の変形例では、楔形状の尖端25から遠位にあり、第1の表面10を第2の表面11に、第3の表面8を第4の表面9に両方とも接続する第5の表面16(
図4)に、少なくとも1つの入口孔5を設けることができる。
【0065】
図4および
図5の例では、楔形状を画定する第3の表面8および第4の表面9は、曲線状であるが、第5の表面16に対して近位にあるそれぞれの平坦部分8’、9’も設けられている。少なくとも1つのチャンバ4用の少なくとも1つの入口孔は、平坦部分8’および/または平坦部分9’にも、またはそれらだけに設けることができる。平坦部分8’、9’を設けなくてもよく、この場合、第3の表面8と第4の表面9は、全体が曲面であり、中空端部要素3の楔形状を画定する。
【0066】
好ましくは、第3の表面8と第4の表面9は、中空要素3の中心面Zに関して対称に配置される。
【0067】
有利なことに、本発明のすべての実施形態において、中空端部要素3は、好ましくはグラファイト、ケイ酸カルシウム、銅、青銅から選択される材料で、3Dプリンタによって単一部品で作製することができる。
【0068】
あるいはまた、中空端部要素3は、複数の部品から、互いに異なる材料から作製することもできる。
【0069】
例えば、少なくとも1つの吹き出し面を備える部品もしくは構成要素、あるいはそれぞれの吹き出し面を備える複数の部品もしくは複数の構成要素は、多孔質マトリックス材料(例えば、焼結青銅またはセラミックス発泡体)で作ることができるか、または織物金属フィラメントによって画定することができるか、または内部でマトリックスが付加製造技術によって得られる。
【0070】
必ずしも必要ではないが、好ましくは、供給装置2は、空気圧装置、または気体物質を圧縮して供給するように適合された任意の装置とすることができる。
【0071】
中空端部要素3の第1の実施形態では、第1の表面10には、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるために、互いに非同一平面上にある2つ以上の吹き出し面が設けられる。この構成により、少なくとも2つの方向に、したがって2つの鋳造ロール間に囲まれた空間の少なくとも2の異なるゾーンに向けて、空気または不活性ガスのジェットを吹き出すことができ、液体金属材料の側面封じ込めの改善および/または封じ込め領域の拡張の増加が可能になる。
【0072】
例えば、各々の吹き出し面の貫通孔は、互いに平行であり、他の吹き出し面の貫通孔に対してゼロ以外の角度で傾斜している。
【0073】
好ましくは、中空端部要素3の内部に、吹き出し面の数に等しい数のチャンバ4を設けることができ、各々のチャンバがそれぞれの吹き出し面を供給する。
【0074】
この第1の実施形態の
図5、6、7、8、9、および11に示される変形例では、中空端部要素3は、楔形状を有するが、上述したように、中空要素は、楔形状以外の形状を有することができる。
【0075】
図5に示される第1の実施形態の第1の変形例は、第1の表面10上に2つの吹き出し面6、7を提供する。
【0076】
吹き出し面6は平面Xを画定し、好ましくは吹き出し面6に隣接する吹き出し面7は、平面Xに入射する平面Yを画定する。
【0077】
吹き出し面6は、中空端部要素3の尖端25から遠位にあり、吹き出し面7は、尖端の近位にある。
【0078】
例えば、吹き出し面6は、平坦で長方形であり、好ましくは細長く、吹き出し面7は、平坦で三角形であり、好ましくは二等辺三角形の形状であり、二等辺三角形の底辺は、好ましくは吹き出し面6の長方形の2つの短辺のうちの1つに隣接している。
【0079】
中心面Zは、2つの吹き出し面6、7を2つの等しい部分に分割する。
【0080】
封じ込めシステムが2つの二重反転鋳造ロール20、21の間に画定される通路の開放側端部に取り付けられるとき、吹き出し面6は、金属材料供給面に対して垂直に配置され、吹き出し面7は、吹き出し面6と側面封じ込めゾーンの両方に対して近位にある第1の端部と、吹き出し面6と側面封じ込めゾーンの両方から遠位にある第2の端部とを有する。
【0081】
換言すれば、吹き出し面7がロールバイトに近づくにつれて、吹き出し面7は、鋳造ロールの両方の回転軸を含む平面に垂直な鋳造ロールの中心面に対して拡がる。したがって、金属材料の送り方向を考慮すると、吹き出し面7は、鋳造ロール間に材料が入る側にシステムが配置されているならば、鋳造ロール間に入る金属材料のエッジに対して発散し、または、材料がロールから出る側にシステムが配置されているならば、鋳造ロールから出る金属材料のエッジに対して収束する。その代わりに、吹き出し面6は、エッジに対して実質的に平行である。この構成により、空気または不活性ガスのジェットを材料のエッジに向けて、また2つの鋳造ロールの間の空間でロールバイトに対して近位にある最も内側のゾーンに向けても吹き出すことが可能になり、従来技術の機械的バリアではアクセスが困難であるゾーン内の側面封じ込めが増加する。
【0082】
図5の例では、吹き出し面6には複数の貫通孔14が設けられ、一方、吹き出し面7には複数の貫通孔15が設けられている。
【0083】
貫通孔14は、互いに平行とすることができ、互いに平行な貫通孔15に対して、例えば鋭角、好ましくは5°~45°、より好ましくは10°~35°で傾斜することができる。
図6の矢印AおよびBは、それぞれ貫通孔14および15から出るジェットの方向を示す。
【0084】
貫通孔の代わりとして、吹き出し面6、7を多孔質マトリックス材料で作ることができる。
【0085】
図7に示される第1の実施形態の第2の変形例は、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるための4つの非共面吹き出し面6、7、12を備えた第1の表面10を提供する。
【0086】
第1の変形例の2つの吹き出し面6、7に加えて、この第2の変形例は、2つの側面吹き出し面12を提供し、2つの側面吹き出し面12は、吹き出し面6に隣接し、両方の吹き出し面6および吹き出し面7を2つの等しい部分に分割する中空端部要素3の中心面Zに関して対称的に配置される。
【0087】
封じ込めシステムが2つの鋳造ロール間に画定された通路の開放側端部に取り付けられるとき、2つの吹き出し面12は、吹き出し面6に対しては近位にあるが側面封じ込めゾーンからは遠位にあるそれぞれの第1の端部と、吹き出し面6からは遠位にあるが、側面封じ込めゾーンに対しては近位にあるそのそれぞれの第2の端部とを有する。
【0088】
換言すれば、各々の吹き出し面12は、吹き出し面6の平面Xに入射してこれに隣接するそれぞれの平面を画定し、空気または不活性ガスの追加のジェットを吹き出すことができるように、平面Xから出発して中心面Zに対して発散し、例えば横型鋳造機の場合は上面と下面の両方から、金属材料の供給面に向かって、特に鋳造ステップ中に金属材料のエッジに向かって、液体金属の側面封じ込めを高めるために収束する。
【0089】
特に、側面吹き出し面12および中央吹き出し面6は、第1の表面10の溝を画定する。
【0090】
単なる例として、吹き出し面12は、平坦で長方形または台形であり、好ましくは直角台形の形状であり、直角台形の最大の底辺が吹き出し面6の長方形形状の2つの長辺のうちの1つに隣接することが好ましい。
【0091】
図7の例では、吹き出し面6には複数の貫通孔14が設けられ、吹き出し面7には複数の貫通孔15が設けられ、2つの吹き出し面12には複数の貫通孔17が設けられている。
【0092】
貫通孔14は、互いに平行とすることができ、互いに平行な貫通孔15に対して、例えば鋭角、好ましくは5°~45°、より好ましくは10°~35°で傾斜することができる。
【0093】
貫通孔17もまた、互いに平行とすることができ、貫通孔14に対して、例えば鋭角、好ましくは5°~45°、より好ましくは10°~35°で傾斜することができる。しかしながら、吹き出し面12の貫通孔17の軸は、吹き出し面7の貫通孔15の軸に対して傾斜している。
【0094】
貫通孔の代わりとして、吹き出し面6、7、12を多孔質マトリックス材料で作ることが可能である。
【0095】
図8に示される第1の実施形態の第3の変形例は、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるための4つの非共面吹き出し面6、7、13を備えた第1の表面10を提供する。
【0096】
第1の変形例の2つの吹き出し面6、7に加えて、この第3の変形例は、2つの側面吹き出し面13を提供し、2つの側面吹き出し面13は、吹き出し面7に隣接し、中空端部要素3の中心面Zに関して対称的に配置され、中空端部要素3の中心面Zは、吹き出し面6と吹き出し面7の両方を2つの等しい部分に分割する。
【0097】
封じ込めシステムが2つの鋳造ロール間に画定された通路の開放側端部に取り付けられるとき、2つの吹き出し面13は、吹き出し面7と側面封じ込めゾーンの両方に対して近位にあるそれぞれの第1の端部と、吹き出し面7と側面封じ込めゾーンの両方から遠位にあるそのそれぞれの第2の端部とを有する。
【0098】
換言すれば、各々の吹き出し面13は、吹き出し面7の平面Yに入射してこれに隣接するそれぞれの平面を画定し、平面Yから出発して、2つの吹き出し面13の一方が鋳造ロール20を向き、他方が鋳造ロール21を向くように、中心面Zに関して発散し、したがって、金属材料の供給面に面していない。これにより、鋳造ロール20と鋳造ロール21に向けて空気または不活性ガスの追加のジェットを吹き出すことが可能になるため、同じ鋳造ロールがそれらの間に境界付けられた空間に空気を封じ込め、こうして鋳造されている製品のエッジの前方で圧力が増加したゾーンを決定し、こうしてロールバイト付近の液体金属の広がりがさらに減少する。
【0099】
単なる例として、吹き出し面13は、平坦であり、長方形または台形であり、好ましくは台形の最小の底辺が吹き出し面7の二等辺三角形の2つの等しい辺のうちの1つに隣接している。
【0100】
図8の例では、吹き出し面6には複数の貫通孔14が設けられ、吹き出し面7には複数の貫通孔15が設けられ、2つの吹き出し面13には複数の貫通孔18が設けられている。
【0101】
貫通孔14は、互いに平行とすることができ、互いに平行な貫通孔15に対して、例えば鋭角、好ましくは5°~45°、より好ましくは10°~35°で傾斜することができる。
【0102】
貫通孔18は、互いに平行とすることができ、貫通孔15に対して、例えば鋭角、好ましくは5°~45°、より好ましくは10°~35°で傾斜することができる。
【0103】
好ましくは、吹き出し面13の貫通孔18の軸は、吹き出し面6の貫通孔14の軸に対して傾斜している。
【0104】
貫通孔の代わりとして、吹き出し面6、7、13を多孔質マトリックス材料で作ることが可能である。
【0105】
図9に示される第1の実施形態の第4の変形例は、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるための6つの非共面吹き出し面6、7、12、13を備えた第1の表面10を提供する。
【0106】
第1の変形例の2つの吹き出し面6、7に加えて、この第4の変形例は、第3の変形例で設けられた2つの追加の吹き出し面13と、第2の変形例で設けられた2つの追加の吹き出し面12の両方を提供する。
【0107】
図11に示される第1の実施形態の第5の変形例は、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるための3つの非共面吹き出し面6’、12’を備えた第1の表面10を提供する。
【0108】
中央吹き出し面6は、第1の平面Xを画定し、2つの側方吹き出し面12’は、吹き出し面6に隣接し、吹き出し面6を2つの等しい部分に分割する中空端部要素3の中心面Zに関して対称的に配置されている。
【0109】
封じ込めシステムが2つの鋳造ロール間に画定された通路の開放側端部に取り付けられるとき、2つの吹き出し面12’は、吹き出し面6’に対しては近位にあるが側面封じ込めゾーンからは遠位にあるそれぞれの第1の端部と、第1の吹き出し面6からは遠位にあるが側面封じ込めゾーンに対しては近位にあるそのそれぞれの第2の端部とを有する。
【0110】
換言すれば、各々の吹き出し面12’は、吹き出し面6’の平面Xに入射してこれに隣接するそれぞれの平面を画定し、空気または不活性ガスの追加のジェットを吹き出すことができるように、平面Xから出発して中心面Zに関して発散し、例えば横型鋳造機の場合は上面と下面の両方から、金属材料の供給面に向かって、特に鋳造ステップ中に金属材料のエッジに向かって、液体金属の側面封じ込めを高めるために収束する。
【0111】
特に、側面吹き出し面12’および中央吹き出し面6’は、第1の表面10の溝を画定する。
【0112】
例えば、中央吹き出し面6’は、平坦であり、三角形、好ましくは二等辺三角形の形状であり、吹き出し面12’は、平坦であり、形状が長方形または台形であり、1つの辺が吹き出し面6’の二等辺三角形形状の等しい辺のうちの1つに隣接している。
【0113】
図11の例では、吹き出し面6’には複数の貫通孔14’が設けられ、2つの吹き出し面12’には複数の貫通孔17’が設けられている。
【0114】
各々の側面吹き出し面12’の貫通孔17’は、互いに平行とすることができ、貫通孔14’に対して、例えば鋭角、好ましくは5°~45°、より好ましくは10°~35°で傾斜することができる。
【0115】
貫通孔の代わりとして、吹き出し面6’、12’を多孔質マトリックス材料で作ることが可能である。
【0116】
中空端部要素3の第2の実施形態では、第1の表面10には、好ましくは様々なサイズの2つ以上のグループの貫通孔が設けられる単一の吹き出し面が設けられ、各々のグループは他のグループとは異なる方向に向けられており、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向ける。この構成により、空気または不活性ガスのジェットを材料のエッジに向けて、したがって2つの鋳造ロール間に囲まれた空間の少なくとも2つの異なるゾーンに向けて、少なくとも2方向に吹き出すことができ、側面の封じ込めを改善し、封じ込め領域の拡張を向上させることができる。
【0117】
例えば、各々のグループの貫通孔は、互いに平行であり、他のグループの貫通孔に対してゼロ以外の角度で傾斜している。
【0118】
好ましくは、1つ、2つ、または3つ以上のチャンバ4が、中空端部要素3の内部に設けられる。
【0119】
この第2の実施形態の
図10、
図12、
図13、および
図14に示される変形例では、中空端部要素3は、楔形状を有するが、上述したように、中空要素は、楔形状以外の形状を有することが可能である。
【0120】
図10に示される第2の実施形態の第1の変形例は、第1の表面10上に単一の吹き出し面6を提供し、吹き出し面は、好ましくは第1の表面10の凹部内に作られる。
【0121】
中央吹き出し面6は、平面または曲面である。
【0122】
封じ込めシステムが2つの二重反転鋳造ロール間に画定される通路の開放側端部に取り付けられるとき、吹き出し面6が平坦であるならば、吹き出し面6は、金属材料供給面に対して垂直に配置される。
【0123】
その代わりに、曲面の場合、ロールバイトに近づくにつれて、面は、鋳造ロールの両方の回転軸を含む平面に垂直な鋳造ロールの中心面に対して発散する。したがって、金属材料の送り方向を考慮すると、吹き出し面6は、鋳造ロール間に材料が入る側にシステムが配置されているならば、鋳造ロール間に入る金属材料のエッジに対して発散し、または、材料がロールから出る側にシステムが配置されているならば、鋳造ロールから出る金属材料のエッジに対して収束する。この構成により、空気または不活性ガスのジェットを材料のエッジに向けて、また2つの鋳造ロールの間の空間でロールバイトに対して近位にある最も内側のゾーンに向けても吹き出すことが可能になり、従来技術の機械的バリアではアクセスが困難であるゾーン内の側面封じ込めが増加する。
【0124】
図10の例では、吹き出し面6は、楔形の中空端部要素3の尖端25を頂点とする三角形である。
【0125】
中心面Zは、吹き出し面6を2つの等しい部分に分割する。
【0126】
図10の例では、吹き出し面6には複数の貫通孔14が設けられている。
【0127】
例えば様々なサイズの貫通孔14の2つ以上のグループを設けることができ、孔の各々のグループは、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるために、他のグループとは異なる配向または傾斜を有する。これにより、2つ以上の吹き出し面を提供する第1の実施形態の様々な変形例で得られるジェットと同様の方法で、異なる方向を向いた空気または不活性ガスのジェットを得ることができる。
【0128】
図12に示される第2の実施形態の第2の変形例は、実質的に三角形の形状を有する吹き出し面6を有し、楔形の中空端部要素3の尖端25から好都合な間隔を隔てた、好ましくは丸みを帯びた頂点を有することを除いて、
図10の変形例と等しい。
【0129】
図13および
図14にそれぞれ示される第2の実施形態の第3および第4の変形例は、唯一の吹き出し面と一致する完全に平坦または曲面状の第1の表面10を提供する。
【0130】
表面10には、好ましくは様々なサイズの2つ以上のグループの貫通孔が設けられ、各々のグループは、封じ込めゾーンに向かう気体物質の流れを異なる方向に向けるために、他のグループとは異なる方向を向いている。
【0131】
例えば、2つ以上のグループの貫通孔を設けることができ、各々のグループの孔は、他のグループに対して異なる配向または傾斜を有し、2つ以上の吹き出し面を提供する第1の実施形態の様々な変形例により得られるジェットと同様の方法で、空気または不活性ガスの異なる方向を向いたジェットを得ることができる。
【0132】
図13の例では、貫通孔は、表面10全域にわたるが表面10の中央ゾーンのみに異なる方法で分布される。特に、貫通孔は、6つの吹き出し面を提供する
図9の変形例の貫通孔14、15、17、18にそれぞれ対応する6つのグループに分割することができる。
【0133】
図14の例では、貫通孔14は、異なる方法であるが実質的に表面10全域にわたって分布される。
【0134】
上に示したすべての変形例(
図5~
図14)において、貫通孔は、1つ以上の吹き出し面上にハニカム構造で、すなわちオフセット列に貫通孔を分布させて配置することができる。好ましくは、中空端部要素3の表面10上の孔の密度は、表面10上の孔の総面積が表面10の面積の50%~70%になるように得られる。
【0135】
鋳造機による液体金属材料の凝固プロセスを
図1~
図3に示す。このプロセスでは、冷却され逆回転する2つの鋳造ロール20、21の間で排出装置35を通して液体金属材料を供給することによって、製品(例えば、ストリップまたはシート)が直接鋳造される。凝固領域の断面図を
図3に示す。液体金属材料がロール20、21に接触するとすぐに、固体シェルが形成され始め、出口通路38に向かって移動することによって増加する。上部ロール20および下部ロール21に付着した固体シェルは、出口通路38の直前の凝固点36で出会い(通常、鋳造速度約1.2m/分、金属シートの厚さ5mmの従来のプロセスの場合、凝固全長は約10~20mmである)、そこから鋳造ロール20、21により金属製品を変形させて鋳造製品37を得る。
【0136】
本発明のその実施形態のいずれか1つにおける封じ込めシステムは、特に、鋳造中にサンプ深さ39(
図3、実際の凝固長さに対応する)に沿って圧力を加えることによって、液体金属または液体合金を操作するために使用することができる。供給装置2によって吹き付けられる空気または不活性ガスによって専ら生成されるこの圧力は、実際の物理的封じ込めが存在しない排出装置35と出口通路38との間の領域における金属材料の側縁部の位置を制御する。
【0137】
本発明の封じ込めシステムは、鋳造ロールからの出口に依然として存在する液体金属材料を封じ込めるために、出口通路38の下流で使用することもできる。
【国際調査報告】