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特表2024-505855ピクセル化された照明ビームを放出することのできる照明モジュールの設けられた自動車両の照明システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ピクセル化された照明ビームを放出することのできる照明モジュールの設けられた自動車両の照明システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/076 20060101AFI20240201BHJP
   B60Q 1/068 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60Q1/076
B60Q1/068
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544433
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2022051404
(87)【国際公開番号】W WO2022157339
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】2100601
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、ドルゼー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン、ロエル
(72)【発明者】
【氏名】マリー、ペラリン
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA03
3K339HA13
3K339KA07
3K339KA23
3K339LA02
3K339LA06
3K339LA22
3K339LA31
3K339MC32
3K339MC48
(57)【要約】
本発明は、上方カットオフ(FC)を伴った第1照明ビーム(F)を放出することのできる第1照明モジュール(2)と、ピクセル化された第2照明ビーム(HD)を放出することのできる第2照明モジュール(3)と、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きを機械的に調節するためのシステム(42)と、所与の照明機能(F)に関する発出命令を受けることのできる制御器(5)とを備えた自動車両の照明システム(1)に関するものである。その制御器(5)は、当該命令に基づいて第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を引き起こすために調節システムを制御するように設計されると共に、当該命令に基づいて所定の特性を有するピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方カットオフ(FC)を伴った第1照明ビーム(F)を放出することのできる第1照明モジュール(2)と、ピクセル化された第2照明ビーム(HD)を放出することのできる第2照明モジュール(3)と、前記第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きを機械的に調節するためのシステム(42)と、所与の照明機能(F)を発せよとの命令を受けることのできる制御器(5)とを備え、その制御器(5)は、前記命令に応じて前記第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう前記調節システムを制御するように構成されると共に、前記命令に応じて所定の特性を有するピクセル化された第2照明ビームを放出するよう前記第2照明モジュールを制御するように構成されている、自動車両の照明システム(1)。
【請求項2】
前記第1照明モジュール(2)と前記第2照明モジュール(3)とが同じ支持プレート(41)上に取り付けられており、前記機械的な調節システムは、前記支持プレートに連結されて前記支持プレートの移動を生じさせることのできるアクチュエータ(41)を備え、前記制御器(5)は、前記命令に応じて前記第1および第2照明ビーム(F,HD)の鉛直方向の向きの同時変更を引き起こす前記プレートの移動を生じさせるよう前記アクチュエータを制御するように構成されている、請求項1に記載の照明システム(1)。
【請求項3】
前記機械的な調節システムは、前記第1照明モジュール(2)に連結されて前記第1照明モジュールの移動を生じさせることのできる第1アクチュエータと、前記第2照明モジュール(3)に連結されて前記第2照明モジュールの移動を生じさせることのできる第2アクチュエータとを備え、前記制御器(5)は、前記命令に応じて前記第1および第2照明ビーム(F,HD)の鉛直方向の向きの同時変更を引き起こす前記第1および第2照明モジュールの同時移動を生じさせるよう前記第1および第2アクチュエータを制御するように構成されている、請求項1に記載の照明システム(1)。
【請求項4】
前記制御器(5)は、前記命令に応じて、前記第1照明ビーム(F)の光強度を前記命令に応じた所定の設定値(I)に従って変更するよう前記第1照明モジュール(2)を制御するように構成されている、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の照明システム(1)。
【請求項5】
前記第2照明モジュール(3)は、ピクセル化された第2照明ビーム(HD)を発光区域(ZE)内へ放出することができ、前記制御器(5)は、前記命令に応じて、プロファイル、測光値、および/または前記発光区域内での位置が前記命令に応じて予め決められているピクセル化された照明ビームを放出するよう前記第2照明モジュールを制御するように構成されている、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の照明システム(1)。
【請求項6】
前記制御器(5)は、少なくとも、非幻惑性ハイビーム照明ビーム(F)を放出せよとの命令、ロービーム照明ビーム(F)を放出せよとの命令、および市街地照明ビーム(F)を放出せよとの命令を選択的に受けることができ、
a.前記制御器は、非幻惑性ハイビーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたときには、前記第1照明ビーム(F)の前記上方カットオフ(FC)が水平線(H-H)に対して実質的に-0.57°の角度の所に位置するように、前記第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう前記調節システム(42)を制御するように構成されており、
b.前記制御器は、ロービーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたときには、前記第1照明ビームの前記上方カットオフが水平線に対して実質的に-1.57°の角度の所に位置するように、前記第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう前記調節システムを制御するように構成されており、
c.前記制御器は、市街地照明ビームを放出せよとの命令を受けたときには、前記第1照明ビームの前記上方カットオフが水平線に対して実質的に-2.57°の角度の所に位置するように、前記第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう前記調節システムを制御するように構成されている、請求項5に記載の照明システム(1)。
【請求項7】
前記制御器(5)が、上方カットオフ(HDC)を有する、初期の、と呼ばれるピクセル化された第2照明ビーム(HD)を放出するように前記第2照明モジュール(3)を制御していて、新たな所与の照明機能(F)を発せよとの命令を受けた場合、前記制御器は、前記命令に応じて、前記第1および第2照明ビーム(F,HD)の鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう前記調節システム(42)を制御する間、位置が一定のままの上方カットオフを有するピクセル化された第2照明ビームを放出するよう前記第2照明モジュールを制御するように構成されており、その上方カットオフの位置は、前記初期のピクセル化された第2照明ビームと同一である、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の照明システム(1)。
【請求項8】
前記制御器(5)が、初期の、と呼ばれるピクセル化された第2照明ビーム(HD)を放出するように前記第2照明モジュール(3)を制御していて、新たな所与の照明機能(F)を発せよとの命令を受けた場合、前記制御器は、前記命令に応じて、前記第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう前記調節システム(42)を制御する間、前記初期のピクセル化された第2照明ビームに対応したデジタル像(Im(Fi-1))のモーフィングおよび/または並進によって得られるデジタル像(Im(Fi-1,F)に基づいてピクセル化された第2照明ビームを放出するよう前記第2照明モジュールを制御するように構成されている、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の照明システム(1)。
【請求項9】
所与の照明機能(F)を発せよとの命令を受けたとき、前記制御器は、前記命令に応じて、可変速度を有した制御法則(L(θ))に従って前記第1および第2照明ビーム(F,HD)の鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう、前記調節システム(42)を制御するように構成されている、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の照明システム(1)。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の照明システム(1)を制御するための方法であって、
a.所与の照明機能(F)を発せよとの命令を受ける段階(E1)と、
b.前記命令に応じて、前記第1および第2照明ビーム(F,HD)の鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるように前記調節システム(42)を制御する段階(E21)と、
c.前記命令に応じて、所定の特性を有するピクセル化された第2照明ビームを放出するように前記第2照明モジュール(3)を制御する段階(E23)と、
を備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の照明の分野に関するものである。具体的には本発明は、ピクセル化された照明ビームを放出することのできる照明モジュールを装備した自動車両の照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の照明の分野においては、光学装置と関連付けられて選択的に作動され得る十分な数の(基本光源、と呼ばれる)光源を備えた照明モジュールを採用することが既知の慣行である。それは、基本光源のうちの1つにより放出される基本光ビームによって各ピクセルが形成される、ピクセル化された照明機能(例えば、少なくとも500ピクセルを含んだもの)を実現することを可能とするためである。この型式のモジュールは例えば、特に防眩ハイビーム照明機能や、地面筆記照明機能や、地面マーキング照明機能や、更にはウエルカム・シナリオ照明機能を実現することを可能とするものである。防眩ハイビーム照明機能においては、追従されたり通り過ぎたりする目標車両のために、ハイビームの一部のピクセルが消灯ないしは減光される。地面筆記照明機能においては、ピクトグラムを表示するために、ロービームの一部のピクセルが増光されたり減光されたりする。地面マーキング照明機能においては、ラインなどのマーキングを実現するために、ロービームの一部のピクセルが増光されたり減光されたりする。ウエルカム・シナリオ照明機能においては、車両の解錠時および/または始動時にピクトグラムを表示するために、地面上や壁面上に投影されるように企図された光ビームの一部のピクセルが増光されたり減光されたりする。
【0003】
この型式のモジュールを制御するため、中央コンピューターが、道路を撮影するカメラや、操舵角センサーや、ナビゲーション・システムなどの種々のセンサー類から情報を受け取って、当該モジュールによって発せられるべきピクセル化された照明機能の型式を決定し、この所望の機能を発せよとの命令を定期的に当該モジュールへ送る。コンピューターによって送られる命令は一般的に、機能の型式、および関連したパラメータ(例えば、幻惑されるべきでない車両の位置など)を含んでいる。制御器が、発光命令を受けるたびに、各基本光源について、この光源が発するべき光強度を定める。それは、その光源が放出するであろう基本ビームが、所望のピクセル化された照明機能を達成するのに必要なピクセルを実現するようにである。
【0004】
この型式の照明モジュールの欠点は、扱うことのできる道路上の発光区域である。具体的には、この発光区域の解像度や寸法が、この照明モジュールの採用している基本光源の数に直接結び付けられてしまうのである。容認可能なコストはもちろん、無理のない光学的、電子的、機械的な複雑性を維持するためには、この発光区域の寸法を制限する必要がある。しかしながら、上述した種々の照明機能を実現するのに必要な道路上での発光区域の位置、或いは種々の交通パラメータに応じて同じ機能を実現するのに必要な道路上での発光区域の位置さえも変化してしまうのである。この目的のために、例えば特許文献1(DE 10 2016 122 043)で説明されているのは、照明モジュールの発するピクセル化された照明機能が考えられているのと同時に、そのモジュールの鉛直方向の向きを調節することである。かくして、照明モジュールの鉛直方向の向きを変化させることによって、種々の発光区域に及び得るのである。
【0005】
この解決策は明白な利点を有してはいるが、自動車両のヘッドランプ内へ照明モジュールを組み込む観点からは十分なものではない。
【0006】
具体的には、そのような照明モジュールは、単独ではなく、他の照明モジュール(特に、平坦な上方カットオフを有した照明ビームを放出し得る照明モジュール)と組み合わせて用いられるのが一般的なのである。これら2つのモジュール同士の組合せによって、とりわけ、同じく上方カットオフを有するピクセル化された照明機能を発するよう照明モジュールを制御することによって、規制ハイビーム機能を実現することが可能となる。しかしながら、この照明モジュールの鉛直方向の向きが変更されると、2つの照明モジュール同士によって放出される全体的なビームの配光が変更され、ロービームの規制要件を満たさなくなってしまい得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016122043号明細書
【発明の概要】
【0008】
かくして、上方カットオフを有した照明ビームを放出し得る第1照明モジュールと、ピクセル化された照明ビームを放出し得る第2照明モジュールとを統合している自動車両の照明システムであって、規制照明機能を発する照明システムの能力を維持しながら同時に鉛直方向の向きを調節することを可能とするものへの要求が存在するのである。
【0009】
本発明は、この文脈の範囲内にあるものであり、この要求に取り組むことを目的としている。
【0010】
この目的のため、本発明の一主題は、上方カットオフを伴った第1照明ビームを放出することのできる第1照明モジュールと、ピクセル化された第2照明ビームを放出することのできる第2照明モジュールと、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きを機械的に調節するためのシステムと、所与の照明機能を発せよとの命令を受けることのできる制御器とを備え、その制御器は、当該命令に応じて第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう調節システムを制御するように構成されると共に、当該命令に応じて所定の特性を有するピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されている、自動車両の照明システムである。
【0011】
本発明によれば、第1照明モジュールはピクセル化された第2照明ビームを発光区域内に放出することができ、かくして第2照明ビームの鉛直方向の向きによって発光区域の位置が定められる。換言すれば、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更によって、一方では第1照明ビームの上方カットオフの位置を、他方ではピクセル化された第2照明ビームの発光区域を、同時に移動させることが可能となる。そして、これらの移動と同時に、ピクセル化された第2照明ビームの諸特性を定めることが可能となる。それは、この上方カットオフと、この発光区域との両方の位置を考慮に入れる目的で、特に、第1および第2照明ビームの結合によって形成される全体的なビームが、当該所与の照明機能の実現を取り巻く規制要件を満たすようにするためである。
【0012】
「ピクセル化された照明ビーム」は、複数の列および/または行に配置された複数のピクセルから成るビームを意味するものである。このビームは特に、各ピクセルの寸法や、このビームと関連付けられる発光区域の寸法に応じて定められる解像度を有している。第1照明ビームは、ピクセル化された第1照明ビームであっても、或いはピクセル化されていない第1照明ビームであってもよい、という有利性がある。適切な場合には、ピクセル化された第2照明ビームの解像度(特に、その鉛直解像度および/または、その水平解像度)は、第1照明ビームの解像度よりも高くなっていてよい。例えば、第1照明ビームの上方カットオフは、実質的に平坦なカットオフである。
【0013】
第1および第2照明モジュールは、ピクセル化された第2照明ビームが少なくとも部分的に第1照明ビーム上に及ぶよう、特に、第2照明ビームの発光区域が第1照明ビームの上方カットオフの上下に広がるように構成され得ることが有利である。かくしてピクセル化された第2照明ビームは、種々の機能、特に代替的または累積的に以下の諸機能を実現し得る:
a.第2照明ビームの各ピクセルが、第1および第2照明ビームの結合によって形成される全体的なビームの上方カットオフの一部を形成するように制御され、この上方カットオフの一部が、第1照明ビームの上方カットオフと同一直線上にあるか、または同一直線上にはなく、かくして第2照明ビームの上方カットオフが、単独で、ないしは第1照明ビームの上方カットオフと組み合わされて、規制ロービーム・カットオフを形成している、ロービーム照明機能、
b.第1照明ビームの上方カットオフよりも上に位置した第2照明ビームの各ピクセルが、第1および第2照明ビームの結合によって形成される全体的なビーム内に暗域を形成し、残りの各ピクセルが点灯したままであるように制御される、非幻惑性ハイビーム照明機能、
c.第1照明ビームの上方カットオフよりも下に位置すると共に表示区域内に位置した第2照明ビームの各ピクセルが、第1および第2照明ビームの結合によって形成される全体的なビーム内に(例えば、ネガティブコントラストやポジティブコントラストによって)地面上のピクトグラムやマーキングを実現するように制御される、地面筆記照明機能。
【0014】
本発明によれば、照明システムは、例えば自動車両の交通パラメータ、特に、その自動車両の速度および/または幻惑されるべきでない道路使用者らの存在(特に、自動車両のセンサーシステムによって検出されるもの)に応じて、所与の照明機能を発せよとの命令を出すことのできるコンピューターを備えていてよい。適切な場合には、当該命令は、発せられるべき照明機能の型式や、ことによると道路上のピクトグラムやマーキングの表示区域の位置および/または防眩暗域の位置を含んでいてもよい。
【0015】
制御器は、当該所与の照明機能を発せよとの命令の発出を受けたとき、寸法および解像度がピクセル化された第2照明ビームの発光区域のものに相当する枠内に、当該所与の照明機能の一部を実現するデジタル像を生成するように構成され得ることが有利である。適切な場合、制御器は、第2照明モジュールの基本光源それぞれの(この光源の放出する基本照明ビームが、関連したピクセルを道路上に再現するような)点灯/消灯/光強度の制御によって、生成されたデジタル像に対応するピクセル化された第2照明ビームを発光区域内へ放出するよう、第2照明モジュールを制御するように構成されている。
【0016】
本発明の一実施形態においては、第1照明モジュールと第2照明モジュールとが同じ支持プレート上に取り付けられており、機械的な調節システムは、当該支持プレートに連結されて支持プレートの移動を生じさせることのできるアクチュエータを備え、制御器は、当該命令に応じて第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を引き起こすプレートの移動を生じさせるよう当該アクチュエータを制御するように構成されている。「支持プレートの移動」は、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きを変更することを可能とする支持プレートの回動および/または並進を意味する。適切な場合、制御器は、受けた当該所与の照明機能を発せよとの命令に基づいて、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きについての鉛直方向移動角度の設定値を決定し、この鉛直方向移動角度の設定値に基づいて機械的調節システムを制御するように構成される。これらの特徴によれば、かくして照明ビームの鉛直方向の向きを調節するための同じアクチュエータを共用することによって、2つのモジュール同士の同じ照明システム内への統合を簡素化することが可能となる。
【0017】
本発明の別の実施形態において、機械的な調節システムは、第1照明モジュールに連結されて第1照明モジュールの移動を生じさせることのできる第1アクチュエータと、第2照明モジュールに連結されて第2照明モジュールの移動を生じさせることのできる第2アクチュエータとを備え、制御器は、当該命令に応じて第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を引き起こす第1および第2照明モジュールの同時移動を生じさせるよう第1および第2アクチュエータを(特に、同時に)制御するように構成されている。
【0018】
制御器は、当該命令に応じて、第1照明ビームの光強度を当該命令に応じた所定の設定値に従って変更するよう第1照明モジュールを制御するように構成されていることが有利である。例えば制御器は、受けた当該所与の照明機能を発せよとの命令に基づいて、第1照明ビームについての(例えば、この第1照明ビームの公称光強度のパーセンテージとしての)光強度設定値を決定し、この光強度設定値に従って第1照明ビームを放出するよう第1照明モジュールを制御するように設計されていてよい。
【0019】
第2照明モジュールは、ピクセル化された第2照明ビームを発光区域内へ放出することができ、制御器は、当該命令に応じて、プロファイル、測光値、および/または発光区域内での位置が当該命令に応じて予め決められているピクセル化された照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されていることが有利である。先に説明したように、発光区域は、一定の寸法および一定の解像度を有していて、その道路上での位置だけが第2照明モジュールの機械的な移動によって変更される。例えば制御器は、当該命令に応じて、以下の操作のうち1つないし複数を(順次ないしは同時に)実施するように第2照明モジュールを制御してよい:
a.発光区域内での第2照明ビームの鉛直方向および/または水平方向の寸法の変更、
b.発光区域内での、第2照明ビームにおける上方カットオフの付加、除去、移動、並びに/または、形状、寸法、および/若しくは位置の変更、
c.発光区域内での、第2照明ビームにおける暗域の付加、除去、移動、並びに/または、形状、寸法、および/若しくは位置の変更、
d.発光区域内での、第2照明ビームにおける道路上のピクトグラム並びに/またはマーキングの、付加、除去、移動、並びに/または、形状、寸法、および/若しくは位置の変更、
e.発光区域内での第2照明ビームの局所的ないしは全体的な光強度の増加または減少。
【0020】
本発明の一実施形態において、制御器は例えば、少なくとも、非幻惑性ハイビーム照明ビームを放出せよとの命令、ロービーム照明ビームを放出せよとの命令、および市街地照明ビームを放出せよとの命令を選択的に受けることができる。適切な場合には、
a.制御器は、非幻惑性ハイビーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたときには、第1照明ビームの上方カットオフが水平線に対して実質的に-0.57°の角度の所に位置するように、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう調節システムを制御するように構成されており、
b.制御器は、ロービーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたときには、第1照明ビームの上方カットオフが水平線に対して実質的に-1.57°の角度の所に位置するように、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう調節システムを制御するように構成されており、
c.制御器は、市街地照明ビームを放出せよとの命令を受けたときには、第1照明ビームの上方カットオフが水平線に対して実質的に-2.57°の角度の所に位置するように、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう調節システムを制御するように構成されている。
【0021】
上記で言及した例において、上方カットオフの位置は特に、これらの寸法に対して第1照明モジュールから十分遠い距離(例えば、25メートル)の所に位置した鉛直なスクリーン上に第1照明ビームが投影された場合であると理解されたい。更に、これらの例は適応例として列挙されてきたものであって、本発明の範囲から逸脱することなく他の諸機能(特に、高速道路照明機能や悪天候条件照明機能)を考えることが可能である。
【0022】
一例によれば、制御器は更に、非幻惑性ハイビーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたとき、100%の光強度設定値に従って第1照明ビームを放出するよう第1照明モジュールを制御すると共に、上方カットオフを備えるピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されていてよい。当該ピクセル化された第2照明ビームは、発光区域内で水平方向へは部分的にしか広がっておらず、第2照明ビームの上方カットオフは、第1照明ビームの(特に、実質的に平坦な)上方カットオフと同一直線上にある第1の実質的に平坦な部分と、当該上方カットオフよりも上に位置した第2の実質的に平坦な部分とを有し、第1および第2の部分同士が(特に、斜めの)段部によって連結されている。
【0023】
代替的な例では、制御器は更に、非幻惑性ハイビーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたとき、水平および鉛直方向で発光区域の全体に広がっていて(例えば、幻惑されるべきでない目標物体を枠内に収める)暗域を備える、ピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されていてもよい。
【0024】
一例によれば、制御器は、ロービーム照明ビームを放出せよとの命令を受けたとき、50%から100%の間の光強度設定値に従って第1照明ビームを放出するよう第1照明モジュールを制御すると共に、上方カットオフを備えるピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されていてよい。当該ピクセル化された第2照明ビームは、発光区域内で水平方向全体に広がっており、第2照明ビームの上方カットオフは、第1照明ビームの上方カットオフよりも上に位置した第1の実質的に平坦な部分と、第1の部分よりも上に位置した第2の実質的に平坦な部分とを有し、第1および第2の部分同士が(特に、斜めの)段部によって連結されている。
【0025】
一例によれば、制御器は、市街地照明ビームを放出せよとの命令を受けたとき、50%の光強度設定値に従って第1照明ビームを放出するよう第1照明モジュールを制御すると共に、実質的に平坦な上方カットオフを備えるピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されていてよい。当該ピクセル化された第2照明ビームは、発光区域内で水平方向全体に広がっており、第2照明ビームの上方カットオフは、第1照明ビームの(特に、実質的に平坦な)上方カットオフよりも上に位置している。
【0026】
制御器が、上方カットオフを有する、初期の、と呼ばれるピクセル化された第2照明ビームを放出するように第2照明モジュールを制御していて、新たな所与の照明機能を発せよとの命令を受けた場合、制御器は、当該命令に応じて、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう調節システムを制御する間、位置が一定のままの上方カットオフを有するピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されており、その上方カットオフの位置は、初期のピクセル化された第2照明ビームと同一であり得ることが有利である。
【0027】
例えば制御器は、ピクセル化された第2照明ビームにおける当該上方カットオフの、機械的調節システムによる第1および第2照明ビームの移動とは反対方向への移動を生じさせるよう第2照明モジュールを制御するように構成されていてよい。それは特に、この上方カットオフの位置および/または移動速度が、これらのビームの位置および/または移動速度に従うようにである。この場合、上方カットオフの移動は、デジタル的な移動であって機械的なものではなく、例えば、調節システムの制御中に第2照明モジュールを制御するために制御器による一連のデジタル像の生成によって実施され得るものであって、この上方カットオフの位置が照明ビームの移動とは反対に変化するのである、ということを理解されたい。この特徴のおかげで、上方カットオフの位置が道路上で一定のままであることが保証される。それは、規制によって規定される公差範囲から逸脱することを回避すると共に、このカットオフの移動が運転者の目を引く(これが運転者を邪魔してしまうかもしれない)ことを回避するようにである。
【0028】
変形例として、この上方カットオフが、第1および第2照明ビームとは異なる移動の速度および/または方向で変化したり、更には、これらの第1および第2照明ビームの移動に対する時間のずれを伴って変化したりすることができるようにしておいてもよい。
【0029】
制御器が、初期の、と呼ばれるピクセル化された第2照明ビームを放出するように第2照明モジュールを制御していて、(特に、最終的な、と呼ばれる、新たなピクセル化された第2照明ビームを定める)新たな所与の照明機能を発せよとの命令を受けた場合、制御器は、当該命令に応じて、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう調節システムを制御する間、初期のピクセル化された第2照明ビームに対応したデジタル像のモーフィング(変形)および/または並進によって得られるデジタル像に基づいてピクセル化された第2照明ビームを放出するよう第2照明モジュールを制御するように構成されていることが有利である。できれば、デジタル像の当該モーフィングおよび/または当該並進は、最終的なピクセル化された第2照明ビームに対応するデジタル像に向かってのモーフィングおよび/または並進であってよい。これらの特徴によって、とりわけ、照明システムによって放出される全体的なビームの(運転者の目を引くであろう)急激な変更を回避することが可能となる。
【0030】
所与の照明機能を発せよとの命令を受けたとき、制御器は、当該命令に応じて、可変速度を有した制御法則に従って第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるよう、調節システムを制御するように構成され得ることが有利である。例えば制御法則は、(上昇時間と呼ばれる)第1時間区間中の加速を、次に第2時間区間中の一定速度を、次に(下降時間と呼ばれる)第3時間区間中の減速を規定していてよい。これらの特徴によっても、代替的または累積的に、照明システムによって放出される全体的なビームの(運転者の目を引くであろう)急激な変更を回避することが可能となる。
【0031】
本発明の例示的な一実施形態によれば、第1照明モジュールは、少なくとも、光源と、光源によって放出された光線を集光し反射して当該モジュールの光軸に沿った照明ビームとするように構成された反射表面を有した集光器と、照明ビームを投射するように構成された光学装置(特に、レンズ)とを備えている。光学装置は、集光器の反射表面の像を形成するように構成されると共に、集光器の後部の所に位置した焦点(特に、焦線)を有している。それは、本質的にその反射表面の後方縁部を映し出し(結像させ)、この後方縁部によって第1照明ビームの上方カットオフが実現されるようにである。
【0032】
本発明の例示的な別の実施形態によれば、第1照明モジュールは、少なくとも、光源と、光源によって放出された光線を集光し反射して当該モジュールの光軸に沿った照明ビームとするように構成された集光器と、照明ビームを投射するように構成された光学装置(特に、レンズ)と、集光器と光学装置との間に配置されてカットオフ縁部を有した遮蔽体とを備えている。光学装置は、カットオフ縁部の所に位置した焦点(特に、焦線)を有している。それは、本質的にカットオフ縁部を映し出し(結像させ)、このカットオフ縁部によって第1照明ビームの上方カットオフが実現されるようにである。
【0033】
本発明の例示的な一実施形態によれば、第2照明モジュールは、ピクセル化された第2照明ビームが、複数の列および行(例えば、20列25行)に亘って分布した0.05°から0.3°の間の大きさの複数のピクセル(例えば、500ピクセル)を含む照明ビームであるように構成されている。例えば、第2照明モジュールは、複数の基本光源と、当該ピクセル化された第2照明ビームを一斉に放出するように構成された光学装置とを備えていてよい。適切な場合には、制御器が、第2照明モジュールの基本光源それぞれを選択的に制御するように構成されていてよい。それは、この光源が、ピクセル化された照明ビームのピクセルのうちの1つを形成する基本照明ビームを放出するようにである。「光源」は、光強度を制御可能な基本照明ビームを放出するよう選択的に作動させたり制御したりすることのできる、随意に電気光学素子と関連付けられる如何なる光源をも意味するものである。それは特に、発光半導体チップや、モノリシックなピクセル化された発光ダイオードの発光素子や、光源によって励起され得る光変換素子の一部や、更には液晶ないしはマイクロミラーと関連付けられた光源であってもよい。
【0034】
本発明の別の主題は、先行する請求項のうちいずれか一項に記載の照明システムを制御するための方法であって、
a.所与の照明機能を発せよとの命令を受ける段階と、
b.当該命令に応じて、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの同時変更を生じさせるように調節システムを制御する段階と、
c.当該命令に応じて、所定の特性を有するピクセル化された第2照明ビームを放出するように第2照明モジュールを制御する段階と、
を備えた方法である。
【0035】
ここで、単に例示的なものであって決して本発明の範囲を限定するものではない諸例を用いて、また種々の図が次のことを示している添付図面に基づいて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態による照明システムを模式的かつ部分的に示す図。
図2図1の照明システムを制御するための方法を模式的かつ部分的に示す図。
図3図2の方法により制御される図1の照明システムによって実現される第1の照明機能を模式的かつ部分的に示す図。
図4図2の方法により制御される図1の照明システムによって実現される第2の照明機能を模式的かつ部分的に示す図。
図5図2の方法により制御される図1の照明システムによって実現される第2の照明機能を模式的かつ部分的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明において、構造ないし機能において同一な種々の図面現れる要素同士は、別様に示されない限り、同じ参照符号を保持している。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態による自動車両の照明システム1を部分的に示している。
【0039】
照明システム1は、ヘッドランプ11を備えている。そのヘッドランプ11内には、光源21と光学装置22とを備えた第1照明モジュール2が配置されている。第1モジュール2は、実質的に平坦なカットオフを有した第1照明ビームFを放出することができる。
【0040】
ヘッドランプ11は、第2照明モジュール3を備えている。照明モジュール3は特に、レンズ32と関連付けられたピクセル化光源31を備えている。説明する例において、ピクセル化光源31は、モノリシックなピクセル化発光ダイオードである。その発光ダイオードにおける発光素子のそれぞれが基本光源31i,j を形成している。基本光源31i,j は、レンズ32に向かって光を放出するよう、組込み型制御器によって選択的に作動および制御され得る。かくしてレンズ32は、光強度を制御可能な基本照明ビームHDi,jを道路上へと投射する。各基本照明ビームHDi,jは、レンズによって、所与の発光方向と所与の開口角とによって規定される所与の発光円錐内へ投射される。かくして、説明する例においては、基本照明ビームHDi,jの全てによって、25行20列に亘って分布した500ピクセルを有するピクセル化された第2照明ビームHDが形成される。それは、水平方向で7.5°の角度範囲、鉛直方向で6°の鉛直角範囲によって画定される発光区域ZE内で広がっている。また、これらの基本照明ビームHDi,jのうちの1つによって、発光区域ZEの各ピクセルが形成されている。光源31における基本光源31i,jのうちの1つによって放出される各基本照明ビームHDi,jは、1°未満(例えば、0.3°)の水平方向および鉛直方向の開口を有している。
【0041】
説明する例において、第1照明ビームFはピクセル化されていないビームである。そして、第1および第2照明モジュール2および3は、第2照明ビームHDの発光区域ZEが、第1照明ビームFの平坦なカットオフの上下に広がるように構成されている。
【0042】
第1照明モジュール2と第2照明モジュール3とは、ヘッドランプ11内に水平軸線Y周りに回動できるよう装着された同じ支持プレート41上に取り付けられている。ヘッドランプ11は、アクチュエータ42を具備した機械的調節システムを備えている。そのアクチュエータ42は、当該支持プレート41に連結されて、軸線Y周りの支持プレート41の回動を引き起こすことができるようになっている。支持プレート41が軸線Y周りに回動すると、第1および第2照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きが同時に変更されるのである、ということを理解されたい。
【0043】
照明システム1は、自動車両のコンピューター12を含んでいる。そのコンピューター12は、種々のデータ、特に自動車両の種々のセンサーシステムから生じるもの(例えば、特に自動車両の速度や、更には自動車両の下流側の道路使用者らの存在など)を受け取る。コンピューター12は、これらの受け取ったデータに応じて、ヘッドランプ11によって所与の照明機能を発せよとの命令を出すように構成されている。
【0044】
ヘッドランプ11は、コンピューター12によって出された命令を受ける制御器5を備えている。この制御器5は、コンピューター12から受けた所与の照明機能を発せよとの命令に基づいて、照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きについての角度設定値と、第1照明ビームFの光強度設定値とを決定するように構成されている。制御器5はまた、この受けた命令に応じて、寸法および解像度がピクセル化された第2照明ビームHDの発光区域ZEのものに相当する枠内に、当該所与の照明機能の一部を実現するデジタル像を生成するようにも構成されている。
【0045】
かくして制御器5は、決定された角度設定値に従ったプレート42の回動を生じさせるようアクチュエータ42を制御するように構成されている。それは、この設定値に向かっての第1および第2照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きの同時変更を引き起こすようにである。
【0046】
制御器5はまた、決められた光強度設定値に従って第1照明モジュール2による第1照明ビームFの放出を制御するようにも構成されている。
【0047】
制御器5はまた、生成したデジタル像を、ピクセル化光源31の組込み型制御器へ送るようにも構成されている。この組込み型制御器は、基本光源31i,jのそれぞれを、この光源が放出し得る基本照明ビームHDi,jの点灯、消灯、および/または光強度の変更を行うよう選択的に制御する。その結果、この基本照明ビームが、この光源と関連付けられるデジタル像のピクセルを道路上に再現する。かくして、ピクセル化された第2照明ビームHDが、生成されたデジタル像を発光区域ZE内に再現するのである。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態による照明システム1を制御するための方法を示している。この方法は、図3および図4および図5との関連において説明されることとなる。図3および図4および図5はそれぞれ、図2の方法の実施時に実現される3つの異なる照明機能について、左側ではヘッドランプ11によって放出される照明ビームFおよびHDのスクリーン上への投影を、右側では道路現場の平面図を表している。
【0049】
段階E1において、コンピューター12は、受け取ったデータに基づいて、所与の照明機能Fを発せよとの命令を生成する。図3の例において、車両の速度が60km/hを超えていて多数の幻惑されるべきでない道路使用者らが検出されている場合に発せられるのがロービーム・モードの防眩ハイビーム照明機能Fである。図3の場合、機能Fを発せよとの命令は、それに加えて、自動車両の下流側に位置した障害物と衝突する危険性の警告を具体化する2本の水平な白帯を地面筆記区域RW内に生成することを要求する、ということに留意されたい。図4の例において、車両の速度が30km/hから60km/hの間であって少なくとも1人の幻惑されるべきでない道路使用者が検出されている場合に発せられるのがロービーム照明機能Fである。機能Fを発せよとの命令は、それに加えて、自動車両の下流側に位置した障害物と衝突する危険性の警告を具体化する3本の水平な白帯を地面筆記区域RW内に生成することを要求する。最後に図5の例において、車両の速度が30km/h未満の場合に発せられるのが市街地照明機能Fである。機能Fを発せよとの命令は、それに加えて、自動車両の大きさを具体化して運転者が精確な操縦を実現することを可能とする2本の鉛直な白帯を地面筆記区域RW内に生成することを要求する。上記で言及した諸機能は適応例として列挙されたものであって、ヘッドランプ11によって別の型式の照明機能を発せよとの命令をコンピューター12が生成してもよい、ということに留意されたい。
【0050】
制御器5は段階E1において、機能Fを発せよとの命令に基づいて、機能Fを実現することを可能とする照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きについての角度設定値θを決定する。次に、段階E21において制御器5は、軸線Y周りのプレート41の回動を引き起こして、この角度設定値θに向かって第1および第2照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きを変更するように、調節システムのアクチュエータ42を制御する。説明する例において、角度設定値θは、第1照明ビームFの実質的に平坦なカットオフFCの水平線H-Hに対する位置をそれぞれ定めており、図3のロービーム・モードの防眩ハイビーム照明機能については-0.57°、図4のロービーム照明機能については-1.57°、図5の市街地照明機能については-2.57°となっている。
【0051】
換言すれば、例えば図3に示すようにヘッドランプ11がロービーム・モードの防眩ハイビーム照明機能Fを発している間に、コンピューター12がロービーム照明機能Fの発出を要求した場合、制御器5は角度設定値θ(即ち、-1.57°)を決定し、照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きの-1°だけの変更を生じさせるようにアクチュエータ42を制御するのである。この変更は、図4に示すように、第1照明ビームFのカットオフFCを1°だけ低くすること、そしてピクセル化された第2照明ビームHDの発光区域ZEを-1°だけ位置変更することに帰着する。かくして運転者の視点からは、発光区域ZEが自動車両へ4メートル近づくのである。
【0052】
同様に、例えば図4に示すようにヘッドランプ11がロービーム照明機能Fを発している間に、コンピューター12が市街地照明機能Fの発出を要求した場合、制御器5は角度設定値θ(即ち、-2.57°)を決定し、照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きの-1°だけの変更を生じさせるようにアクチュエータ42を制御する。この変更は、第1照明ビームFのカットオフFCを1°だけ低くすること、そしてピクセル化された第2照明ビームHDの発光区域ZEを-1°だけ位置変更することに帰着する。かくして運転者の視点からは、発光区域ZEが自動車両へ3メートル近づくのである。
【0053】
段階E21において、第1および第2照明ビームの鉛直方向の向きの変更は、制御法則L(θ)に従って実現される。その制御法則L(θ)は、照明ビームFおよびHDの初期の鉛直方向の向きθi-1と、当該角度設定値θとの間における、それらの照明ビームについての移動速度設定値を規定している。説明する例において、制御法則L(θ)は次のようなものである。即ち、プレート41が、移動の始めには徐々に加速しながら、それから一定の速度で、移動の最後には徐々に減速しながら回動するようなものである。
【0054】
同時に、制御器5は段階E12において、機能Fを実現することを可能とする第1照明ビームFについての光強度設定値Iを決定する。そして段階E22において、制御器5は、第1照明ビームFの光強度がこの設定値Iに従うよう、第1照明モジュール2(具体的には、その光源21)を制御する。説明する例において、光強度設定値Iは、光源21によって発せられ得る公称光強度のパーセンテージとして決定され、それぞれ図3のロービーム・モードの防眩ハイビーム照明機能については100%、図4のロービーム照明機能については75%、図5の市街地照明機能については50%である。
【0055】
また同時に、段階E13において制御器5は一連のデジタル像Im(Fi-1,F)を生成する。それらのデジタル像Im(Fi-1,F)は、ピクセル化された第2照明ビームHDが、先に発せられている照明機能Fi-1から新たな機能Fへと移行することを可能とするものである。
【0056】
具体的には、一連のデジタル像Im(Fi-1,F)は、一方では次のように生成される。即ち、照明機能Fi-1について規定された第2照明ビームHDにおける上方カットオフHDCの位置が、段階E21における第1および第2照明ビームFおよびHDの鉛直方向の向きの変更中、実質的に一定のままであるようにである。この目的のために、制御器5によって生成される各デジタル像Im(Fi-1,F)で規定されるカットオフHDCの位置は、先に生成されているデジタル像Imj-1(Fi-1,F)で規定されたカットオフHDCの位置に対して、段階E11で決定された鉛直方向の向きの変更とは反対方向に移動するのである。このようにして、このカットオフHDCのデジタル的な移動が、発光区域ZEの鉛直方向の向きの機械的な変更と相殺されるのである。その結果、カットオフHDCの位置は、この機械的な変更の過程に亘って実質的に同じままである。
【0057】
図3において、ピクセル化された第2照明ビームHDは、発光区域ZE内においてカットオフHDCによって画定されている。そのカットオフHDCは、第1照明ビームの実質的に平坦なカットオフFCと同一直線上にある第1の実質的に平坦な部分と、当該実質的に平坦なカットオフよりも上に位置した第2の実質的に平坦な部分とを有している。第1および第2の部分同士は(特に、斜めの)段部によって連結されている。かくして図4および図5においては、次のことが見て取られるであろう。即ち、実質的にカットオフFCは実際に機械的な方向転換を受けているが、それとは対照的に、カットオフHDCは同じ位置(即ち、-0.57°)のままである。それにより、この機械的な方向転換中も含めて、照明ビームFおよびHD同士の結合によって形成される全体的なビームを、照明ビームにおける上方カットオフの存在を取り巻く規制要件に従ったままにしておくことが可能となる。
【0058】
他方では、先に発せられた照明機能Fi-1の実現を可能とするデジタル像Im(Fi-1)を、新たな照明機能Fの実現を可能とするデジタル像Im(F)に向かってモーフィング(変形)および/または並進させる操作によって、一連のデジタル像Im(Fi-1,F)が生成される。
【0059】
例えば図3においては、デジタル像Im(F)が、次のようなピクセル化された第2照明ビームHDを定めている。即ち、発光区域ZE内で水平方向へは部分的にしか広がっていない、上述したような特定のカットオフHDCを伴い、表示区域RW内に与えられる2本の水平な帯を備えているビームHDである。図4においては、デジタル像Im(F)が、次のようなピクセル化された第2照明ビームHDを定めている。即ち、発光区域ZE内で水平方向全体に広がって、同じカットオフHDCを伴い、表示区域RW内に与えられる3本の水平な帯を備えているビームHDである。かくして、先に発せられた照明機能Fの実現を可能とするデジタル像Im(F)を、新たな機能Fの実現を可能とするデジタル像Im(F)に向かってモーフィングおよび/または並進させる操作によって、図3の機能F図4の機能Fに向かっての移行を可能とする一連のデジタル像Im(F,F)が生成されるのである。
【0060】
同様に、図5においては、デジタル像Im(F)が、次のようなピクセル化された第2照明ビームHDを定めている。即ち、発光区域ZE内で水平方向全体に広がって、実質的に平坦な特定のカットオフHDCを伴い、表示区域RW内に与えられる2本の鉛直な帯を備えているビームHDである。かくして、先に発せられた照明機能Fの実現を可能とするデジタル像Im(F)を、新たな機能Fの実現を可能とするデジタル像Im(F)に向かってモーフィングおよび/または並進させる操作によって、図4の機能F図5の機能Fに向かっての移行を可能とする一連のデジタル像Im(F,F)が生成されるのである。
【0061】
段階E23においては、段階E21でのアクチュエータ42の制御と同時に、一連のデジタル像Im(Fi-1,F)におけるデジタル像それぞれが、ピクセル化光源31の組込み型制御器へ伝達される。一連のものにおける最初の像は、鉛直方向の向きの変更の開始時に伝達され、一連のものにおける最後の像は、この鉛直方向の向きの変更の終了時に伝達される。かくして、組込み型制御器は、発光区域ZEの移動中、ピクセル化された第2照明ビームHDが、この発光区域ZE内に一連のデジタル像Im(Fi-1,F)における各デジタル像を作り出すように、基本光源31i,jのそれぞれを選択的に制御する。
【0062】
前述の説明は、本発明がそれ自体設定した目的を達成することを如何にして可能とするかを明瞭に解説している。それは特に、平坦な上方カットオフを有した照明ビームを放出し得る第1照明モジュールと、ピクセル化された照明ビームを放出し得る第2照明モジュールとを統合している自動車両の照明システムであって、発することが望まれる照明機能の型式に応じて2つのビームの鉛直方向の向きとピクセル化された照明ビームとが同時に制御される照明システムによるものである。その結果、鉛直方向の向きを調節しながら、同時に照明システムが規制照明機能を発する能力を維持することが可能となる。
【0063】
如何なる場合にも、本発明は、この文書で具体的に説明された諸実施形態に限定されるものと見做されるべきではなく、特に、如何なる等価な手段や、これらの手段同士の技術的に効力のある如何なる組合せにも及ぶものである。とりわけ、説明された型式以外の照明モジュール、特に光源と、選択的に作動され得るマイクロミラーの格子との組合せを備えた照明モジュールが考えられてよい。また、説明されてきた以外の照明機能、特に高速道路照明機能や悪天候条件照明機能、更には他の型式のピクトグラムや地面マーキングをもたらす照明機能を発するように照明システムを制御するのを考えることも可能である。また、それぞれに専用の調節アクチュエータが備え付けられた2つの異なるプレート上に各モジュールを配置するのを考えることも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】