(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】セル上蓋をシール溶接するためのレーザ溶接システム、および対応する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240201BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240201BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240201BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240201BHJP
B23K 26/28 20140101ALI20240201BHJP
【FI】
B23K26/21 P
B23K26/082
B23K26/00 P
B23K26/03
B23K26/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544449
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2022073483
(87)【国際公開番号】W WO2022156800
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202120180161.9
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110089300.1
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523277518
【氏名又は名称】トルンプフ (チャイナ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF (China) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 68, East Nanjing Road, Taicang, Jiangsu 215400, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランツ レーロイター
(72)【発明者】
【氏名】ユアン リュー
(72)【発明者】
【氏名】ゼカイ ホウ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA14
4E168BA30
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB22
4E168EA15
(57)【要約】
本開示は、セル上蓋の溶接という分野に関し、特に、セル上蓋(2)をシール溶接するためのレーザ溶接システム(1)であって、当該レーザ溶接システム(1)は、セル上蓋(2)の溶接されるべき部分に照射されるスキャン溶接レーザビームを生成するためのレーザ放射装置(11)と、少なくともセル上蓋(2)において連続的なスキャンシール溶接を実施するようにレーザ放射装置(11)を制御するための制御装置(12)とを含み、レーザ溶接システム(1)は、ただ1つのワークステーションのみにおいてセル上蓋(2)のシール溶接を完了するように構成されている、レーザ溶接システム(1)に関する。本開示はさらに、セル上蓋(2)をシール溶接するための方法であって、当該方法は、セル上蓋(2)の連続的なスキャンシール溶接を達成するために、レーザ溶接システム(1)を使用することによって実施される、方法を開示している。本開示のいくつかの実施形態によれば、セル上蓋の溶接の速度、品質、および自動化レベルを改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル上蓋(2)をシール溶接するためのレーザ溶接システム(1)であって、
当該レーザ溶接システム(1)は、
前記セル上蓋(2)の溶接されるべき部分に照射されるスキャン溶接レーザビームを生成するためのレーザ放射装置(11)と、
少なくとも前記セル上蓋(2)において連続的なスキャンシール溶接を実施するように前記レーザ放射装置(11)を制御するための制御装置(12)と
を含み、
前記レーザ溶接システム(1)は、ただ1つのワークステーションのみにおいて前記セル上蓋(2)のシール溶接を完了するように構成されている、
レーザ溶接システム(1)。
【請求項2】
前記レーザ放射装置(11)は、BrightLine Welding技術に基づいて動作するように構成されている、
請求項1記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項3】
前記レーザ溶接システム(1)は、前記セル上蓋(2)において閉じたループの溶接を連続的に実施するように構成されており、かつ/または
前記レーザ溶接システム(1)は、最大10,000mm/秒のスキャン溶接速度で溶接するように構成されている、
請求項1または2記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項4】
前記レーザ溶接システム(1)は、
少なくとも溶接前の事前位置決めを達成するための位置決め装置(13)と、
前記連続的なスキャンシール溶接プロセス中に溶融池の深さを監視するための溶接中溶融池深さ監視装置(14)と、
溶接された表面の品質を監視するための溶接後表面品質監視装置(15)と
のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項5】
前記位置決め装置(13)は、第1の視覚装置として構成されており、かつ/または
前記位置決め装置(13)は、サンプルの寸法および構成に基づいてカスタマイズされたプログラミングを達成するために適合させられるように構成されており、かつ/または
前記位置決め装置(13)は、前記制御装置(12)と通信接続されており、かつ/または
前記位置決め装置(13)は、前記レーザ放射装置(11)と通信接続されている、
請求項4記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項6】
前記位置決め装置(13)は、後続する連続的なスキャンシール溶接動作に関連する前記セル上蓋(2)の特性データを取得し、前記特性データを前記制御装置(12)に送信するために適合させられるように構成されており、
前記制御装置(12)は、取得した前記特性データに基づいて前記レーザ放射装置(11)、および/または前記セル上蓋(2)を固定するための作業台(3)を制御するために適合させられるように構成されている、
請求項5記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項7】
前記特性データは、前記セル上蓋(2)の幾何学的特性、前記セル上蓋(2)の位置特性、および前記溶接されるべき部分の間隙特性のうちの少なくとも1つを含み、かつ/または
前記レーザ溶接システム(1)は、前記特性データが所定の条件を満たしている場合には、前記後続する連続的なスキャンシール溶接動作を実施するように構成されており、前記特性データが前記所定の条件を満たしていない場合には、連続的なスキャンシール溶接を終了するか、または前記所定の条件を満たすように前記セル上蓋(2)を調整することによって前記後続する連続的なスキャンシール溶接動作の実施を継続するように構成されている、
請求項6記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項8】
前記レーザ溶接システム(1)は、前記溶接されるべき部分の間隙幅特性および/または間隙位置特性に基づいて、前記レーザ放射装置(11)によって放射されるレーザビームの特性を調整するために適合させられるように構成されており、かつ/または
前記レーザ放射装置(11)は、制御部を有するか、または前記制御装置(12)は、前記レーザ放射装置(11)に組み込まれており、かつ/または
前記レーザ放射装置(11)は、走査ガルバノメーターとして構成されている、
請求項7記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項9】
前記溶接中溶融池深さ監視装置(14)は、光干渉断層撮影技術に基づいて動作するように構成されており、かつ/または
前記溶接中溶融池深さ監視装置(14)は、前記制御装置(12)と通信接続されており、かつ/または
前記溶接後表面品質監視装置(15)は、所定の表面品質との比較結果に基づいて、対応するセル上蓋(2)が合格品であるかどうかを判定するように構成されており、かつ/または
前記溶接後表面品質監視装置(15)は、第2の視覚装置として構成されており、かつ/または
前記溶接後表面品質監視装置(15)は、前記制御装置(12)と通信接続されている、
請求項4から8までのいずれか1項記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項10】
前記位置決め装置(13)と、前記溶接後表面品質監視装置(15)とは、1つの共通の視覚装置として構成されている、
請求項9記載のレーザ溶接システム(1)。
【請求項11】
セル上蓋(2)をシール溶接するための方法であって、
当該方法は、前記セル上蓋(2)の連続的なスキャンシール溶接を達成するために、請求項1から10までのいずれか1項記載のレーザ溶接システム(1)を使用することによって実施される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セル上蓋をシール溶接するためのレーザ溶接システムと、セル上蓋をシール溶接するための方法とに関する。
【0002】
背景技術
技術が進歩するにつれて、また、環境保護の要件がますます厳格になるにつれて、電源としてバッテリを使用する機器がますます多くなっている。例えば、電気自動車は、近年急速に発展しており、徐々に従来の自動車に取って代わる傾向にある。
【0003】
パワーバッテリの最小の構成単位として、複数のセルが1つのモジュールを形成することができ、複数のモジュールが1つのバッテリパックを形成することができる。セルは、電気エネルギ貯蔵ユニットであり、したがって、できるだけ多くの電気エネルギを貯蔵するために比較的高いエネルギ密度を有する必要がある。いずれか1つのセルの損傷が結果的にバッテリパック全体の損傷をもたらす可能性があるので、セルの寿命も、最も重大な要因である。
【0004】
セルの製造方法は、セル自体の品質に関係しているだけでなく、製造効率も決定づける。バッテリパックは、通常、多数のセルを含む。したがって、効率的な製造方法を選択することが特に重要である。
【0005】
セルの製造プロセスにおいて非常に重要なステップは、セル上蓋をシール溶接することである。セル上蓋をシール溶接するための公知の連続的なシール溶接ステップ(すなわち、メインの溶接ステップ)は、主としてソリッドステート溶接ヘッド(コリメート溶接ヘッドまたはコリメート放射ヘッドとも呼ばれる)を使用し、このソリッドステート溶接ヘッドは、セル上蓋の周囲を閉じた形状で(通常は、閉じた長方形で)溶接するためにリニアモータに取り付けられている。閉じた長方形の場合には、この閉じた長方形は、通常、4つの小さな丸み付けられた角部を有する。
【0006】
この種類の溶接の主な欠点は、モータの加速および減速によって溶接速度が制限されることである。具体的には、モータは、角部位置に近づくときには減速し、角部を離れるときには加速する必要がある。このような加速および減速の繰り返しは、溶接速度に影響を与える。この溶接方式の溶接速度は、通常、250mm/秒を超えることはない。さらに、このような加速および減速により、溶接領域、特に減速領域(特に角部)の溶融池深さに関してばらつきが生じることとなる。
【0007】
さらに、従来技術では、溶接前にセル上蓋の溶接を視覚的に位置決めすることもなく、溶接中に溶融池の深さを監視することもなく、溶接後に表面品質を監視することもない。これらは全て、溶接品質および完成品率にも影響を与える。
【0008】
さらに、公知の溶接技術では、シール溶接は、上述した連続的なシール溶接ステップに加えてレーザ事前溶接ステップ、特にスポット溶接をさらに含む。事前溶接ステップは、連続的なシール溶接用のワークステーションの前に、所定のワークステーションにおいて実施される必要があり、事前溶接されたセル上蓋は、次いで、連続的なシール溶接のために連続的なシール溶接用のワークステーションに移送される。この状況では、より多くの設備投資が必要となるだけでなく、より多くの占有面積も必要となり、溶接システムは、比較的複雑である。
【0009】
上記の理由から、対応する改善策が必要とされている。
【0010】
発明の概要
本開示の目的は、上述した欠点のうちの少なくとも1つを克服するために、セル上蓋をシール溶接するための改善されたレーザ溶接システムと、対応するシール溶接方法とを提供することである。
【0011】
本開示の一態様によれば、セル上蓋をシール溶接するためのレーザ溶接システムであって、当該レーザ溶接システムは、セル上蓋の溶接されるべき部分に照射されるスキャン溶接レーザビームを生成するためのレーザ放射装置と、少なくともセル上蓋において連続的なスキャンシール溶接を実施するようにレーザ放射装置を制御するための制御装置とを含み、レーザ溶接システムは、ただ1つのワークステーションのみにおいてセル上蓋のシール溶接を完了するように構成されている、レーザ溶接システムが提供される。
【0012】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ放射装置は、BrightLine Welding(BLW)技術に基づいて動作するように構成されている。BrightLine Welding技術については、中国特許出願公開第109982807号明細書に開示されている内容を参照されたい。なお、同明細書の全内容を、参照により本明細書に援用するものとする。
【0013】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ溶接システムは、セル上蓋において閉じたループの溶接を連続的に実施するように構成されており、かつ/またはレーザ溶接システムは、最大10,000mm/秒のスキャン溶接速度で溶接するように構成されている。
【0014】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ溶接システムは、少なくとも溶接前の事前位置決めを達成するための位置決め装置と、連続的なスキャンシール溶接プロセス中に溶融池の深さを監視するための溶接中溶融池深さ監視装置と、溶接された表面の品質を監視するための溶接後表面品質監視装置とのうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0015】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め装置は、第1の視覚装置として構成されており、かつ/または位置決め装置は、サンプルの寸法および構成に基づいてカスタマイズされたプログラミングを達成するために適合させられるように構成されており、かつ/または位置決め装置は、制御装置と通信接続されており、かつ/または位置決め装置は、レーザ放射装置と通信接続されている。
【0016】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め装置は、後続する連続的なスキャンシール溶接動作に関連するセル上蓋の特性データを取得し、特性データを制御装置に送信するために適合させられるように構成されており、制御装置は、取得した特性データに基づいてレーザ放射装置、および/またはセル上蓋を固定するための作業台を制御するために適合させられるように構成されている。
【0017】
本開示の例示的な実施形態によれば、特性データは、セル上蓋の幾何学的特性、セル上蓋の位置特性、および溶接されるべき部分の間隙特性のうちの少なくとも1つを含み、かつ/またはレーザ溶接システムは、特性データが所定の条件を満たしている場合には、後続する連続的なスキャンシール溶接動作を実施するように構成されており、特性データが所定の条件を満たしていない場合には、連続的なスキャンシール溶接を終了するか、または所定の条件を満たすようにセル上蓋を調整することによって後続する連続的なスキャンシール溶接動作の実施を継続するように構成されている。
【0018】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ溶接システムは、溶接されるべき部分の間隙幅特性および/または間隙位置特性に基づいて、レーザ放射装置によって放射されるレーザビームの特性を調整するために適合させられるように構成されており、かつ/またはレーザ放射装置は、制御部を有するか、または制御装置は、レーザ放射装置に組み込まれており、かつ/またはレーザ放射装置は、走査ガルバノメーター(ガルバノスキャナ)として構成されている。
【0019】
本開示の例示的な実施形態によれば、溶接中溶融池深さ監視装置は、光干渉断層撮影技術に基づいて動作するように構成されており、かつ/または溶接中溶融池深さ監視装置は、制御装置と通信接続されており、かつ/または溶接後表面品質監視装置は、所定の表面品質との比較結果に基づいて、対応するセル上蓋が合格品であるかどうかを判定するように構成されており、かつ/または溶接後表面品質監視装置は、第2の視覚装置として構成されており、かつ/または溶接後表面品質監視装置は、制御装置と通信接続されている。
【0020】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め装置と、溶接後表面品質監視装置とは、1つの共通の視覚装置として構成されている。
【0021】
本開示の別の態様によれば、セル上蓋をシール溶接するための方法が提供され、当該方法は、セル上蓋の連続的なスキャンシール溶接を達成するために、レーザ溶接システムを使用することによって実施される。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、セル上蓋の溶接の速度、品質、および自動化レベルを改善することができ、占有面積を縮小することができ、レーザ溶接システムを簡素化することができる。
【0023】
本開示の原理、特徴、および利点は、添付の図面を参照しながら本開示の以下の詳細な説明によってより良好に理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による、セル上蓋の連続的なスキャンシール溶接のためのレーザ溶接システムの概略機能ブロック図である。
【0025】
実施形態の詳細な説明
本開示の解決されるべき技術的課題、技術的解決策、および有利な技術的効果がより明確に理解されるように、添付の図面および多数の例示的な実施形態を参照しながら本開示をさらに詳細に説明する。本明細書に記載されている特定の実施形態は、本開示の保護範囲を限定するためのものではなく、本開示を説明するためのものに過ぎないことを理解されたい。
【0026】
図1は、本開示の例示的な実施形態による、セル上蓋の連続的なスキャンシール溶接のためのレーザ溶接システムの概略機能ブロック図を示す。
【0027】
図1に示されているように、レーザ溶接システム1は、スキャン溶接レーザビームを生成するためのレーザ放射装置11と、少なくともセル上蓋2において連続的なスキャンシール溶接を実施するようにレーザ放射装置11を制御するための制御装置12とを含むことができる。溶接プロセス中、セル上蓋2を作業台3上に固定することができる。セル上蓋2は、一般的にアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等から形成されており、レーザ溶接のために適している。作業台3は、固定具であってもよい。
【0028】
当業者であれば、例えば、セル上蓋2の位置および/または向き、特にレーザ放射装置11に対して相対的にセル上蓋2の位置および/または向きを調整するために、制御装置12によって作業台3を制御することもできることを理解することができる。
【0029】
当業者であれば、本開示によるレーザ溶接システム1が、シール溶接プロセス中には全体として静止していることができ、セル上蓋2の周囲を閉じたループで連続的に溶接する目的でセル上蓋2の所定の位置を照射するようにレーザビームを制御するために、レーザ放射装置11、例えばレーザ放射装置11の光学装置111のみに依存することができるということを理解することができる。この場合には、従来のシール溶接プロセスにおけるリニアモータの加速および減速の問題が回避され、溶接速度を大幅に改善することができ、例えば最大10,000mm/秒のスキャン溶接速度を達成することができる。
【0030】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ放射装置11は、BrightLine Welding技術に基づいて動作するように構成可能である。BrightLine Welding技術は、本出願人に同様に属する技術であり、この技術は、処理されるべき被加工物にレーザビームを放射するために2in1レーザ光ケーブル(LLK)を利用し、スパッタの低減、表面形状の改善等のような利点を有する。明確性を期すために、本明細書では具体的な詳細については詳しく説明しない。
【0031】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ溶接システム1は、レーザビームがセル上蓋2に対して相対的に所定のように移動/スキャンを行うことを可能にする目的で、特に、被加工物または作業台3への損傷を回避するためにセル上蓋2の位置に従ってレーザビームの入射位置をリアルタイムで調整することを可能にする目的で、少なくとも溶接前の事前位置決めを達成するための位置決め装置13をさらに含むことができる。
【0032】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め装置13は、視覚装置として構成可能である。この場合には、例えば、セル上蓋2の形状/輪郭をインテリジェント画像処理技術によって自動的に取得することができ、対応するレーザの入射位置が調整される。
【0033】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め装置13は、溶接前の事前位置決めを実施するためにサンプルの寸法および構成に基づいてカスタマイズされたプログラミングを可能にするように構成可能である。
【0034】
図1に示されているように、位置決め装置13(特に、視覚装置の場合)は、セル上蓋2の形状および位置と、溶接されるべき部分の間隙特性(間隙幅、間隙位置、間隙が均一であるかどうか等を含むが、これらに限定されない)とに関して取得した情報を制御装置12に伝えるために、制御装置12と通信接続可能である(
図1に破線で概略的に示されている)。制御装置12は、これらの情報に従ってレーザ放射装置11だけでなく作業台3さえも制御することができる。
【0035】
本開示の例示的な実施形態によれば、隙間幅が所定の値より大きい場合には、制御装置12は、警報を発して、これからシールおよび溶接されようとしているセル上蓋2を後々溶接することができず、さもなければ溶接の問題が発生するであろうということを作業者に通知することができる。この状況では、作業者は、コスト損失を回避して完成品率を高めるためにセル上蓋2を調整するか、または取り外すことができる。
【0036】
当業者であれば、溶接されるべき部分における間隙が所定の条件を満たすことができるように、かつそれから溶接を続行することができるように、セル上蓋2を自動的に調整することも考えられ得るということを理解することができる。
【0037】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め装置13は、レーザ放射装置11自体が制御部(図示せず)を有している場合に、この制御部を介してレーザ放射装置11を制御するために、レーザ放射装置11と通信することもできる。
【0038】
レーザ放射装置11の制御部自体を、制御装置12の一部とみなすこともできる。いくつかの場合、例えば、走査ガルバノメーター(PFO、すなわちプログラミング・フォーカス・オプティカルとしても知られる)の場合には、制御装置12をレーザ放射装置11に組み込むことさえできる。本開示は、これに関して如何なる制限も課さない。
【0039】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ放射装置11によって放射されるレーザビームの出力、焦点サイズ等のような特性を、溶接されるべき部分の間隙幅のような間隙特性に従って制御することができ、好ましくは自動的に制御することができる。これにより、自動化レベルが大幅に改善され、完成品率も高められる。
【0040】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ溶接システム1は、連続的なスキャンシール溶接プロセス中に溶融池の深さを監視するための溶接中溶融池深さ監視装置14をさらに含むことができる。溶融池深さ監視装置14の支援により、溶接状態をリアルタイムで監視することができ、必要に応じて、所期の溶接プロセスを達成するために、特に制御装置12によってレーザ放射装置11の動作を制御することができる。
【0041】
本開示の例示的な実施形態によれば、溶接中溶融池深さ監視装置14は、光干渉断層撮影技術に基づいて動作するように構成可能である。この場合には、溶接が所期のように実施されているかどうかを判定するために、断層撮影法によって溶融池の深さをリアルタイムで監視することができる。
【0042】
本開示の例示的な実施形態によれば、レーザ溶接システム1は、溶接された表面の品質を監視するための溶接後表面品質監視装置15をさらに含むことができる。
【0043】
本開示の例示的な実施形態によれば、溶接後表面品質監視装置15は、撮影装置のような視覚装置として構成可能である。この場合には、溶接された表面を撮影し、次いで、例えば、データベース内の溶接シーム表面と比較し、その比較結果に基づいて、この溶接された表面が合格品であるかどうかを判定することが可能である。不適合品であると判定された場合には、操作者に通知することができるか、または対応する装置によってこの不適合品を自動的に取り除くことができる。
【0044】
本開示の例示的な実施形態によれば、溶接後表面品質監視装置15は、位置決め装置13と同じように、または同じ装置であるように構成可能である。後者の場合には、このことは、位置決め装置13が、溶接前の溶接前事前位置決めと、溶接後の溶接された表面の品質監視との両方を実施することができるということを意味する。このようにして、レーザ溶接システム1の複雑性が軽減されるだけでなくコストも削減される。
【0045】
本開示によるレーザ溶接システムは、連続的なスキャンシール溶接動作の前に、セル上蓋2において事前溶接を実施することもできる。換言すれば、事前溶接と、後続する連続的なスキャンシール溶接とを、ワークステーションを変更する必要なく同じレーザ溶接システムによって実施することが可能である。事前溶接は、シール溶接の1つのステップとみなすことができる。
【0046】
当業者であれば、特に固定具が上蓋を確実に固定することができる状況では、事前溶接プロセスを省略して、連続的なスキャンシール溶接を直接的に実施することさえ可能であることも理解することができる。
【0047】
本明細書では、本開示の特定の実施形態が詳細に説明されているが、これらの実施形態は、説明することを目的としたものに過ぎず、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。本開示の思想および範囲から逸脱することなく、種々異なる置換、変更、および修正が考えられる。
【国際調査報告】