(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20240201BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/42
G02B6/02 411
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545226
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 US2022013477
(87)【国際公開番号】W WO2022164739
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ホカンソン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】サン,シャオグアン
【テーマコード(参考)】
2H137
2H250
【Fターム(参考)】
2H137AB05
2H137AB06
2H137BA18
2H137BB12
2H250AC34
2H250AC62
2H250AC94
2H250AC98
(57)【要約】
マルチコア光ファイバは、少なくとも2つの螺旋状コアを含む。マルチコア光ファイバが曲げられるとき、曲げ長さ(L)および曲げ半径(R)を有するように、各コアは異なる歪みを受け、それによって、コア間の有効光学長差(51)をもたらす。本開示では、螺旋状コアは、δ1/Lを5×10
-6未満の値に減少させるピッチ(P)を有する(すなわち、δ1/L<5×10
-6)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作波長(λ)と、
曲げ長さ(L)および曲げ半径(R)を有する曲げ部と、
伝送軸と、
前記伝送軸に沿って延在するとともに、実質的に円形の横断面および軸心(C)を有するクラッドと、
前記クラッド内に位置するとともに、第1のオフセット距離(Λ1)だけCから半径方向にオフセットして配置された第1の螺旋状コアであって、
P<Lである第1のピッチ(P1)、およびλにおける第1のコア有効屈折率(nl)を有する第1の螺旋状コアと、
前記クラッド内に位置するとともに、第2のオフセット距離(Λ2)だけCから半径方向にオフセットして配置され、コア間隔距離(ΔD)だけ前記第1の螺旋状コアから離れた第2の螺旋状コアであって、
第2のピッチ(P2)、およびλにおける第2のコア有効屈折率(n2)を有する第2の螺旋状コアと、
前記第1の螺旋状コアと前記第2の螺旋状コアとの間の有効光学長差(δ1)であって、δ1/L<5×10
-6である有効光学長差(δ1)と、
を備えるマルチコア光ファイバ。
【請求項2】
レーザと、
前記レーザに動作可能に結合された変調器入力部、および変調器出力を有する変調器と、
平衡光検出器と、
前記変調器出力および前記平衡光検出器の間に光学的に接続されたマルチコア光ファイバとを備える光ファイバ信号伝送システムであって、
前記マルチコア光ファイバは、
動作波長(λ)と、
曲げ長さ(L)および曲げ半径(R)を有する曲げ部と、
伝送軸と、
前記伝送軸に沿って延在するとともに、実質的に円形の横断面および軸心(C)を有するクラッドと、
前記クラッド内に位置するとともに、第1のオフセット距離(Λ1)だけCから半径方向にオフセットして配置され第1の螺旋状コアであって、
P<Lである第1のピッチ(P1)、およびλにおける第1のコア有効屈折率(nl)を有する第1の螺旋状コアと、
前記クラッド内に位置するとともに、第2のオフセット距離(Λ2)だけCから半径方向にオフセットして配置され、少なくともコア間隔距離(ΔD)だけ前記第1の螺旋状コアから離れた第2の螺旋状コアであって、
P2≒P1である第2のピッチ(P2)、およびλにおける第2のコア有効屈折率(n2)を有する第2の螺旋状コアと、
前記第1の螺旋状コアと前記第2の螺旋状コアとの間の有効光学長差(δ1)であって、δ1/L<5×10
-6である有効光学長差(δ1)と、
を備える光ファイバ信号伝送システム。
【請求項3】
レーザと、
前記レーザに動作可能に結合された変調器入力部、および変調器出力を有する変調器と、
平衡光検出器と、
第1のファイバ長、前記変調器出力に光学的に結合される第1のファイバ入力端、第1のファイバ出力端、第1の有効光学長(11)を有する第1のコア、第2の有効光学長(12)を有する第2のコアを備える第1のマルチコア光ファイバと、
第2のマルチコア光ファイバであって、
前記第1のファイバ長と実質的に同じである第2のファイバ長、
前記第1のファイバ出力端に光学的に結合された第2のファイバ入力端、
前記平衡光検出器に光学的に結合された第2のファイバ出力、
前記第2のコアに接合され、前記変調器および前記平衡光検出器の間において第1の光路を形成し、前記第1の光路は曲げ長さ(L)を有する曲げ部を有し、12と実質的に同じ第3の有効光学長(13)を有する第3のコア、
前記第1のコアに接合され、前記変調器および前記平衡光検出器の間に第2の光路を形成し、前記第2の光路は前記曲げ部を有し、11と実質的に同じである第4の有効光学長(14)を有する第4のコア、
を備える前記第2のマルチコア光ファイバと、
前記第1の光路と前記第2の光路との間の有効光学長差(δ1)であって、δ1/L<5×10
-6である有効光学長差(δ1)と、
を備える光ファイバ信号伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、「Optical Fiber Links with Matched Optical Lengths Using Spun Multicore Optical Fiber」という名称を有する、Sunらによって2021年1月26日に出願された米国特許仮出願63/141,739の利益を主張するこれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる
【0002】
[開示の分野]
本開示は、概して、光学システムに関し、より詳細には、光ファイバシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
デュアルコア光ファイバを使用する光ファイバベースのフォトニックリンクは、当技術分野で知られている。例えば、名称「Multicore Fiber Optic Cable」を有する米国特許出願公開2021/0318505A1 (Beranekら)は、2021年10月14日に公開され、本明細書に明示的に記載されているかのように、参照することによってその全体が組み込まれ、デュアルコア光ファイバを使用する、平衡強度変調直接検出(IMDD:Intensity Modulation with Direct Detection)システムを教示する。
【0004】
ほとんどの光信号伝送システムにおけるように、信号完全性を維持することは重要であり、したがって、光信号伝送システムを改善するための努力が進行中である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、動作波長(λ)で動作するマルチコア光ファイバを教示する。マルチコア光ファイバは、少なくとも2つの螺旋状コアを含む。マルチコア光ファイバが曲げられて曲げ長さ(L)と曲げ半径(R)とを有する場合、各コアは異なる歪みを受け、その結果、コア間の実効的な光学長差(δ1)が生じる。本開示では、螺旋状コアは、δ1/Lを5×10-6未満の値に減少させるピッチ(P)を有する。
【0006】
他のシステム、デバイス、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明の検討によって、当業者に明白となるであろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴、および利点は、本説明内に含まれ、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0007】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してより良く理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。さらに、図面において、同様の参照番号は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】マルチコア光ファイバの一実施形態の横断面を示す図である。
【
図2】
図1のマルチコア光ファイバの斜視図である。
【
図3】マルチコア光ファイバが曲げられたとき(曲げ長さ(L)および曲げ半径(R)を有する)の
図1および
図2のマルチコア光ファイバのコアのうちの1つの螺旋構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
Beranekらによる名称「Multicore Fiber Optic Cable」を有する米国特許出願公開2021/0318505A1は、デュアルコア光ファイバを使用する直接検出を伴う平衡強度変調(IMDD)システムを教示している。典型的なシステムがBeranekの
図3に示されており、これはレーザ、変調器、平衡光検出器、および変調器の出力と平衡光検出器との間に光学的に接続されるデュアルコア光ファイバを示す。デュアルコア(またはマルチコア)IMDDシステムは当業者に知られているので、IMDDシステムの切り詰められた議論のみが本明細書で提供され、IMDDシステムに関するさらなる詳細については、Beranekの公開特許出願が参照される。
【0010】
Beranekは、デュアルコアIMDD(および同様のもの)システムの欠点が、屈曲および温度変動が時々2つのコアに異なる影響を及ぼすことであることを特定している。その結果、曲げまたは温度誘発効果は、しばしば予測不可能な有害な結果を伴って、光信号に対して異なる有効経路長を誘発し得る。
【0011】
曲げまたは温度の影響のいくつかを軽減するために、Beranekは、デュアルコアファイバを中心軸ファイバの周囲に巻き付け、それによって、デュアルコアファイバとともに螺旋を生成する。明確にするために、Beranekの2つのコアは、クラッド自体内で螺旋状ではない。むしろ、螺旋性は、ファイバ全体(クラッドを含む)に付与される。そのようなスパイラル幾何学形状を採用することによって、Beranekは、リンク経路長差を無効にしようとする。しかしながら、Branekの解決策は、デュアルコアファイバが引き出された後の経路長差の補償を必要とする。そのような引き出し後補償スキームは、製造に複雑さをもたらし、したがって、引き出し後のコストを増加させる。
【0012】
Beranekとは異なり、本開示は、(クラッド自体が螺旋状ではない)クラッド内に螺旋状コアを提供することによって異なる動作原理を教示する。言い換えれば、ファイバ全体(クラッドおよびコアの両方を有する)を螺旋状に構成するのではなく、本開示は、コアのみを螺旋状に構成する(全て非螺旋状クラッド内)。したがって、本出願における本発明のマルチコアファイバは、コア自体に対して螺旋状コアを有するが、クラッドに対しては有さない。(曲げ半径(R)および曲げ長さ(L)によって特徴付けられる)曲げを有するマルチコア光ファイバにおける螺旋状コアのピッチ(P)を制御することによって、有効経路長差(δ1)は、5×10-6×L未満に低減される。
【0013】
技術的問題に対する広範な技術的解決策を提供したので、ここで、図面に示される実施形態の説明を詳細に参照する。いくつかの実施形態がこれらの図面に関連して説明されるが、本開示を本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態に限定する意図はない。それどころか、すべての代替形態、修正形態、および均等物を網羅することが意図される。
【0014】
図1は、マルチコア光ファイバの実施形態の横断面を示す図であり、
図2は、マルチコア光ファイバの斜視図である。簡潔にするため(および混乱した図面を避けるため)、
図3は、
図1および
図2のマルチコア光ファイバの1つの螺旋状コアのみを示す。
【0015】
図1および
図2では、デュアルコア光ファイバ110が、動作波長(λ)(中心波長としても知られる)で光信号を搬送するように構成されたマルチコア光ファイバの例示的な実施形態として示されている。
図1および
図2に示すように、デュアルコア光ファイバ110は、第1の螺旋状コア120aと、第2の螺旋状コア120bと、実質的に円筒形のクラッド130とを備える。
【0016】
クラッド130は、デュアルコア光ファイバ110の信号伝送軸に実質的に平行に走る軸中心(C)を有する実質的に円形の横断面を含む。
【0017】
第1の螺旋状コア120aは、クラッド130内に位置し、Cからオフセット距離Λ1だけ半径方向にオフセットされる(1つのコアのみが示されている限り、
図3ではΛと略される)。同様に、第2の螺旋状コア120bもクラッド130内に位置し、Cから距離Λ2だけ半径方向にオフセットされる(図示せず)。
図1に示すように、螺旋状コア120a、120bは、コア間隔距離(ΔD)だけ互いに離間している。好ましくは、第1の螺旋状コア120aおよび第2の螺旋状コア120bは、Cの両側に対称に配置される。
【0018】
当然ながら、当技術分野で知られているように、螺旋状コア120a、120bのそれぞれは、動作波長λにおいて、有効コア屈折率n1およびn2をそれぞれ有する。また、螺旋の幾何学形状により、各螺旋状コア120a、120bは、周期性を画定する、関連付けられたピッチ(それぞれ、
図2に示されるように、P1およびP2)を有する。
【0019】
引き続き
図3を参照すると、デュアルコアファイバ110が曲げられると、曲げ(曲げ半径(R)および曲げ長さ(L)を有する)は螺旋状コア120aに対応する曲げを与える。螺旋状コア120aの曲げは、螺旋形状の山部および谷部において、それぞれの周期的な張力歪みおよび圧縮歪みを誘起する。有意に、P1およびP2が実質的に同じであり(すなわち、P1≒P2≒P)、PがL未満である(すなわち、P<L)場合、螺旋状コア120a、120bは、Lに沿って交互の張力歪みおよび圧縮歪みを受ける。さらに、2つのコア120a、120bがCに関して対称に配置される場合、第1の螺旋状コア120a上の圧縮歪みは、第2の螺旋状コア120b上の張力歪みに対応し、その逆も同様である。Lに応じて、Pの値が変化することを理解されたい。Pの典型的な値は、約1センチメートル(~1cm)~約10cmの間で変動し得る。
【0020】
比較として、螺旋状コアのないデュアルコアファイバに曲がりがある場合、非螺旋状コアのそれぞれは、異なる光学長(1)を経験する。2つの非螺旋状コアの有効光学長(δ1)の差は、次式によって表される。
δ1≒0.76n×(L/R)×ΔD [式1]
【0021】
例えば、62.5μmのコア間隔を有するデュアルコアファイバは、400μmの最大光学長差を生じ得る。10メートル(10m)のリンクでは、これは全長の4×10-5に比例して対応する。
【0022】
しかしながら、
図1~
図3の実施形態に示すように、2つの螺旋状コア120a、120bが受ける圧縮歪みおよび引張歪みが等しくかつ反対に交互になるため、光路長差の差は低減され、主に2つのコア間の実効屈折率差によって決定される。
【0023】
2つのコアの実効屈折率差の差が5×10-6(すなわち、<5×10-6)未満である場合、対応する光路長差も<5×10-6となる。
【0024】
しかしながら、2つのコアの実効屈折率差が5×10-6より大きい(すなわち、>5×10-6)場合、デュアルコアファイバリンクの2つのコア間の対応する光路長差は、それぞれのコアが切り替えられた2つのデュアルコア光ファイバを互いに接合することによってさらに低減され得る。例えば、第1のデュアルコアファイバ(ファイバ1)のコア1とコア2との間の光路長差が51である場合、同じ長さ差を有する第2のデュアルコアファイバ(ファイバ2)は、ファイバ1にコア接合(又は接続)されるが、しかし、ファイバ2からの光路長差がファイバ1からの光路長差を打ち消すように、対向するコアが位置合わせされ、接合されている。言い換えれば、ファイバ1のコア1は、ファイバ2のコア2に接合されるが、ファイバ1のコア2は、ファイバ2のコア1に接合され、ファイバ2の等対向経路長差は、ファイバ1に蓄積された経路長差を相殺する。
【0025】
引き続き、開示されるデュアル螺旋状コア光ファイバ110が、平衡IMDD(または同様の)システムにおけるレーザ相対強度雑音(RIN)を低減する目的で使用される場合、RINは、(IMDDシステムを有する1つのシングルコア光ファイバを使用することと比較して)20デシベル(20dB)まで低減され得る。言い換えれば、開示されるマルチ螺旋状コアファイバ110は、RINを著しく低減し、信号がコモンモード消去のために平衡光検出器に入るときの信号の平衡を改善する。
【0026】
Beranekの教示と比較すると、基本原理を螺旋状全長ファイバ構成(Beranekによって示されるものなど)からコアのみ螺旋構成(上記
図1~
図3に示されるような)に変更することによって、開示される多螺旋状コア繊維110は、製造がより容易であり、充分に小さいピッチ(P)に対して、より小さい屈曲を補償することができる。
【0027】
フローチャートにおけるあらゆるプロセスの説明またはブロックは、プロセスにおける論理的な機能またはステップを表すものとして理解されるべきであり、関連する機能に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序を含む、示されるまたは論じられる順序とは異なる順序で機能が実行され得る代替的な実装形態が、本開示の好ましい実施形態の範囲内に含まれることが理解されるべき、本開示の当業者には理解されるであろう。
【0028】
例示的な実施形態を示し、説明してきたが、当業者には、説明したような本開示に対して多くの変更、修正、または改変を行うことができることが明らかであろう。したがって、全てのそのような変更、修正、および改変は、本開示の範囲内であると見なされるべきである。
【国際調査報告】