(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電池パックの充電方法、コンピュータ可読記憶媒体及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20240201BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240201BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02J7/04 F
H01M10/44 P
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545242
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2021129053
(87)【国際公開番号】W WO2023077444
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝嵐
(72)【発明者】
【氏名】林真
(72)【発明者】
【氏名】黄珊
(72)【発明者】
【氏名】李偉
(72)【発明者】
【氏名】李世超
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503EA08
5H030AA06
5H030AS08
5H030BB03
5H030BB21
(57)【要約】
本出願は電池パックの充電方法、コンピュータ可読記憶媒体及び電力消費装置を開示する。前記充電方法は、電池パックにおける電池管理モジュールが充電するために充電スタンドに第1電流の充電要求を送信することと、電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように電池パックを制御することと、電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように電池パックを制御し、かつ充電するために充電スタンドに第2電流の充電要求を送信し、第2電流が第1電流よりも小さいこととを含む。本出願の実施例の電池パックの充電方法は、充電過程で充電電流を切り替える時点でパルス放電を行い、析出したリチウム金属の先端が電解液に再び入ることを効果的に促進し、リチウムデンドライトを平らにし、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池パック充電の安全性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックの充電方法であって、前記電池パックは電池管理モジュールを含み、前記充電方法は、
前記電池管理モジュールが充電するために充電スタンドに第1電流の充電要求を送信することと、
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することと、
前記電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御し、かつ充電するために前記充電スタンドに第2電流の充電要求を送信し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいこととを含む、電池パックの充電方法。
【請求項2】
前記電池管理モジュールが前記電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率を確定し、かつ前記電池管理モジュールが前記比率に応じて前記第1電流の大きさを確定することとをさらに含み、
ここでは、前記リチウム析出閾値は、前記電池パックの内部短絡が生じる時点におけるリチウム析出量である、請求項1に記載の充電方法。
【請求項3】
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、
前記電池パックが前記第1電流で所定時間、持続的に充電されたことを前記電池管理モジュールにより確定した後、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することを含む、請求項1または2に記載の充電方法。
【請求項4】
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、
前記電池パックの充電率SOCが所定値に達したと前記電池管理モジュールにより確定した後、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することを含む、請求項1または2に記載の充電方法。
【請求項5】
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、前記充電スタンドに電流が0Aである充電要求を送信し、かつ前記充電スタンドが前記電池パックを充電する電流であるリアルタイム充電電流を取得することと、
前記リアルタイム充電電流が前記第1電流閾値より小さいと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を行うように電池パックをある放電電流で制御し、かつ前記電池管理モジュールにより前記電池パックが前記放電電流で放電する放電時間を取得することとを含む、請求項1に記載の充電方法。
【請求項6】
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、前記充電スタンドに電流が0Aである充電要求を送信し、かつ前記充電スタンドが前記電池パックを充電する電流であるリアルタイム充電電流を取得し、電流が0Aである充電要求の要求時間を取得することと、
前記リアルタイム充電電流が前記第1電流閾値より小さいと前記電池管理モジュールにより確定した場合、ある放電電流で放電を行うように電池パックを制御し、かつ前記電池管理モジュールにより前記電池パックが前記放電電流で放電する放電時間を取得することとを含む、請求項1に記載の充電方法。
【請求項7】
前記電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御することは、
前記放電時間が第1時間閾値に達したと前記電池管理モジュールにより確定した場合、又は前記要求時間が第2時間閾値に達したと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御することを含む、請求項6に記載の充電方法。
【請求項8】
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、
前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、前記充電スタンド又は電力消費装置にパルス放電するように前記電池パックを制御することを含み、ここでは、前記電池パックは前記電力消費装置内に位置する、請求項1または2に記載の充電方法。
【請求項9】
コンピュータ命令が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ命令を実行すると、請求項1~8のいずれか一項に記載の充電方法を実行するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の充電方法を実行するための電池パックを含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は電池分野に関し、具体的には電池パックの充電方法、コンピュータ可読記憶媒体及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネと排出削減は、自動車産業の持続可能な発展のカギであり、電動車両は、その省エネと環境保全の優位性のため、自動車産業の持続可能な発展の重要な構成部分となっている。電動車両にとって、電池技術は、その発展に関わる重要な要素である。
【0003】
充電中、電池パックからリチウムが析出され、電池の安全性に影響する。
【発明の概要】
【0004】
上記問題点に鑑みて、本出願は、リチウム析出による電池の安全性能問題を低減することができる電池パックの充電方法、コンピュータ可読記憶媒体及び電力消費装置を提供する。
【0005】
第1態様では、本出願は電池パックの充電方法を提供し、前記電池パックは電池管理モジュールを含み、前記充電方法は、前記電池管理モジュールが充電するために充電スタンドに第1電流の充電要求を送信することと、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することと、前記電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御し、かつ充電するために前記充電スタンドに第2電流の充電要求を送信し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいことと、を含む。
【0006】
本出願の実施例の技術的解決策において、出願人は研究の結果、充電中の充電電流を切り替える時点(第1電流から第2電流に切り替える時点)が、リチウム析出の発生リスクが最も大きい時点であることを見出した。さらに、出願人は、研究により、リチウム析出の発生リスクが最も大きい時点にパルス放電を行うことで、析出したリチウム金属の先端が再び電解液に入ることを効果的に促進し、リチウムデンドライトを平らにし、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池パックの充電の安全を向上させることを見出した。
【0007】
いくつかの実施例において、前記充電方法は、前記電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率を前記電池管理モジュールにより確定し、かつ前記電池管理モジュールが前記比率に応じて前記第1電流の大きさを確定することとをさらに含み、ここでは、前記リチウム析出閾値は、前記電池パックの内部短絡が生じる時点におけるリチウム析出量である。本出願の実施例の充電方法においては、異なる細分化された具体的なリチウム析出状況に対して、異なる大きさの第1電流で充電することができ、析出するリチウムイオンを著しく減少させる。
【0008】
いくつかの実施例では、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、前記電池パックが前記第1電流で所定時間持続的に充電されたことを前記電池管理モジュールにより確定した後、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することを含む。
【0009】
いくつかの実施例では、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、前記電池パックの充電率SOCが所定値に達したと前記電池管理モジュールにより確定した後、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することを含む。
【0010】
本出願の実施例の充電方法においては、異なる段階的充電方法に対して、パルス放電を必要とする時点を正確に確定することができ、析出したリチウム金属の先端が電解液に再び入ることを正確かつ効果的に促進することができ、リチウムデンドライトを平らにし、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制することができる。
【0011】
いくつかの実施例では、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、前記充電スタンドに電流が0Aである充電要求を送信し、かつ前記充電スタンドが前記電池パックを充電する電流であるリアルタイム充電電流を取得することと、前記リアルタイム充電電流が前記第1電流閾値より小さいと前記電池管理モジュールにより確定した場合、ある放電電流で放電を行うように電池パックを制御し、かつ前記電池管理モジュールにより前記電池パックが前記放電電流で放電する放電時間を取得することと、を含む。
【0012】
いくつかの実施例では、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、前記充電スタンドに電流が0Aである充電要求を送信し、かつ前記充電スタンドが前記電池パックを充電する電流であるリアルタイム充電電流を取得し、電流が0Aである充電要求の要求時間を取得することと、前記リアルタイム充電電流が前記第1電流閾値より小さいと前記電池管理モジュールにより確定した場合、ある放電電流で放電を行うように電池パックを制御し、かつ前記電池管理モジュールにより前記電池パックが前記放電電流で放電する放電時間を取得することとを含む。
【0013】
いくつかの実施例では、前記電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御することは、前記電池管理モジュールにより、前記放電時間が第1時間閾値に達したと確定した場合、又は前記電池管理モジュールにより、前記要求時間が第2時間閾値に達したと確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御することを含む。
【0014】
いくつかの実施例では、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することは、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、前記充電スタンド又は電力消費装置にパルス放電するように前記電池パックを制御することを含み、ここでは、前記電池パックは前記電力消費装置内に位置する。
【0015】
第2態様では、コンピュータ命令が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体を提供し、前記コンピュータ命令を実行すると、上記の実施例に記載の充電方法を実行する。
【0016】
第3態様では、上記実施例に記載の充電方法を実行するための電池パックを含む電力消費装置を提供する。
【0017】
上記の説明は、本出願の技術案の概要に過ぎず、本出願の技術的手段をより明確に理解し、明細書の内容に基づいて実施できるようにし、本出願の上記及び他の目的、特徴及び利点をより明らかで理解しやすいようにするために、以下、本出願の具体的な実施例を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下の好ましい実施例の詳細な記述を読むことによって、当業者にとって、様々な他の利点及び有益点が明らかになる。図面は、好ましい実施形態を示すためにのみ用いられ、本出願を制限するものとはみなされない。そして、図面全体において、同じ部品は、同じ符号で表されている。図面において、
【
図1】本出願のいくつかの実施例による電池パックの充電方法のフローチャートである。
【
図2】本出願の他のいくつかの実施例による電池パックの充電方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を結び付けながら本出願の技術案の実施例を詳しく説明する。以下の実施例は、本出願の技術案をより明確に説明するためのものであり、例示に過ぎず、これによって本出願の保護範囲が制限されるものではない。
【0020】
特に定義がない限り、本文に使用されるすべての技術と科学用語は、本出願の当業者に一般的に理解される意味と同じである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明するためにのみ用いられ、本出願を制限することを意図するものではない。本出願の明細書と特許請求の範囲及び上記図面の説明における「含む」、「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」を意図的にカバーするものである。
【0021】
本出願の実施例の説明において、技術用語「第1」、「第2」等は、異なる対象を区別するためにのみ使用されるものであり、相対的な重要性を示すか、暗示するか、または、示された技術的特徴の数、特定の順序、または主副関係を暗示的に示すものとして解釈されるべきではない。本出願の実施例の説明では、特に具体的な限定が明確化されない限り、「複数」は二つ以上を意味する。
【0022】
本明細書において「実施例」と言及する場合、実施例と合わせて説明された特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも一つの実施例に含まれ得ることを意味する。明細書における各位置での該フレーズの出現は、必ずしも全てが同じ実施例を指すものではなく、他の実施例と相互排他する独立した又は代替的な実施例でもない。当業者は、本明細書に記載の実施例が他の実施例と組み合わせ得ることを明示的及び暗黙的に理解することができる。
【0023】
本明細書における順序付けられたステップの記載は、必ずしも、実施例または態様が記載された順序に限定されることを意味しない。むしろ、後のステップは、前のステップに基づいて確立されない限り、前記ステップを異なる順序で、または、互いに並行して実行することが想定され、これは、必然的に、先行するステップを最初に実行し、その後、後続のステップを実行することを必要とする(これは、具体的な実施例においてより明らかであろう)。記載された順序は、好ましい実施例であり得る。
【0024】
現在では、市場情勢の発展の観点から、動力電池の応用が益々拡大している。動力電池は、水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギ蓄積電源システムのみならず、電動自転車、電動バイク、電気自動車などの電動交通機関、軍事用機器、航空・宇宙飛行などの複数の分野で広く応用されている。動力電池の応用分野の拡大に伴い、その市場の需要量も絶えず拡大している。
【0025】
本発明者らは、充電過程、特に段階的に充電する過程において、電流切り換えの時点は、リチウム析出の発生リスクが最も大きい時点であることに気付いた。リチウムイオン電池の通常の充電中、リチウムイオンは正極から放出され、その後負極に吸蔵される。しかし、何らかの異常が発生すると、リチウムイオンが負極に吸蔵されず、負極表面に析出することしかできず、灰色の物質となる現象をリチウム析出という。リチウム析出はリチウムイオン電池の消耗状況である。リチウム析出は電池の性能を低下させ、サイクル寿命を大幅に短縮させるだけでなく、電池の急速充電容量も制限し、燃焼、爆発などの壊滅的な結果を引き起こす可能性がある。
【0026】
電池のリチウム析出のリスクを低減するために、出願人は研究により、リチウム析出の発生リスクが最も大きい時点にいくつかの措置を取ると、リチウム析出のリスクを効果的に低減し、ひいては抑制することを発見した。
【0027】
以上の考えに基づき、充電過程、特に段階的に充電する過程にリチウム析出が発生する問題を解決するため、発明者は深く研究し、電池管理モジュールを含む電池パックの充電方法を設計し、前記充電方法は、前記電池管理モジュールが、充電するために充電スタンドに第1電流の充電要求を送信することと、前記電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、パルス放電を行うように前記電池パックを制御することと、前記電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと前記電池管理モジュールにより確定した場合、放電を停止するように前記電池パックを制御し、かつ充電するために前記充電スタンドに第2電流の充電要求を送信し、前記第2電流が前記第1電流よりも小さいこととを含む。
【0028】
このような充電方法において、充電過程で電流を切り替える時点でパルス放電を行い、析出したリチウム金属の先端が電解液に再び入ることを効果的に促進し、リチウムデンドライトを平らにして、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池パック充電の安全性を向上させることができる。
【0029】
充電過程で電流を切り替える時点では、正極から放出されたリチウムイオンは負極に吸蔵できず、負極表面に析出することしかできない。このとき、負パルスを加えることにより、正極から放出したリチウム金属の先端を電解液に再び入らせ、リチウムデンドライトを平らにして、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池パック充電の安全性を向上させることができる。
【0030】
本出願の実施例における電池パックは、限定しないが、車両、船舶、または航空機などの電力消費装置に使用することができる。本出願に係る電池パックを備えて該電力消費装置を構成する電源システムを用いることにより、リチウム析出を低減し、電池パックの充電の安全性を向上させることができる。
【0031】
本出願の実施例は、電池パックを電源として使用する電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、電動玩具、電動ツール、電気自転車、電気自動車、船舶、宇宙船等であってもよいが、それらに限定されない。ここで、電動玩具は、据置型又は移動型の電動玩具、例えば、ゲーム機、電気自動車玩具、電気汽船玩具、電気飛行機玩具などを含んでもよく、宇宙航空機は、飛行機、ロケット、スペースシャトル、宇宙船などを含んでもよい。
【0032】
図1は、本出願のいくつかの実施例による電池パックの充電方法を示す図である。前記電池パックは、電池管理モジュールを含み、前記充電方法は、電池管理モジュールによって実行される。電池パックは複数の電池を含み、電池管理モジュールは電池パックのスマートハブであり、コア機能は電池パックの保護、電池パックデータの収集、電池パック状態の評価、充放電管理及び高電圧制御などである。
【0033】
図1の電池パックの充電方法は、ステップS11で開始される。ステップS11において、電池管理モジュールは、充電スタンドに第1電流の充電要求を送信する。ステップS12において、電池管理モジュールは、第1電流で充電するように電池パックを制御する。ステップS13において、電池管理モジュールは、電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすかどうかを判断する。電池管理モジュールにより電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たさないと確定した場合、ステップS12に戻り、継続して電池パックを第1電流で充電するように制御する。電池管理モジュールにより、電池パックの第1電流充電が第1所定条件を満たすと確定した場合、ステップS14を実行し、パルス放電を行うように電池パックを制御する。ステップS15において、電池管理モジュールは、電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすかどうかを判断する。電池管理モジュールにより、電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たさないと確定した場合、ステップS14に戻り、継続してパルス放電を行うように電池パックを制御する。電池管理モジュールにより電池パックのパルス放電が第2所定条件を満たすと確定した場合、電池パックを、放電を停止するように制御し、かつ充電するために充電スタンドに第2電流の充電要求を送信し、ここでは、第2電流は第1電流よりも小さい。
【0034】
本出願の充電方法は、主に段階的充電方法に適している。段階的充電方法は、当分野で一般的に用いられている充電方法であり、電池パックの急速充電を実現する充電方法である。段階的充電方法では、電池パックは、第1段階で1つの電流で充電され、第2段階で別の電流で充電され、第2段階の電流は、第1段階の電流よりも小さい。
【0035】
段階的充電方法は、急速充電を可能にするが、一連の安全問題をもたらす。リチウム析出はこれらの安全問題の一つである。リチウム析出はリチウムイオン電池の消耗状況である。リチウムイオン電池の通常の充電中、リチウムイオンは正極から放出され、その後負極に吸蔵される。しかし、リチウムイオン電池の異常充電時、正極から放出されたリチウムイオンは負極に吸蔵できず、負極表面に析出することしかできず、灰色の物質となる現象をリチウム析出という。負極表面に析出したリチウムイオンは、リチウムデンドライトに成長し、リチウムデンドライトがさらに成長すると、正極と負極の間のセパレータを突き刺し、電池の短絡を引き起こし、安全事故を引き起こす。
【0036】
リチウム析出は電池パックの性能を低下させ、電池パックの寿命を短縮するだけでなく、電池パックの急速充電容量を制限し、かつ電池パックの燃焼、爆発などの安全事故を引き起こす可能性がある。
【0037】
本出願において、出願人は、研究により、電池パックが第1電流充電から第2電流充電に切り替わる時点において、リチウム析出リスクが最大となることを見出した。電流を切り替える時点において、直ちにパルス放電を行う(または負パルスを加える)ことで、析出したリチウム金属の先端が再び電解液に入ることを効果的に促進し、リチウムデンドライトを平らにし、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池充電の安全性を著しく向上させることができる。
【0038】
図2は、本出願の他のいくつかの実施例による電池パックの充電方法を示す図である。
図1に関して説明したのと同様に、前記電池パックは、電池管理モジュールを含み、前記充電方法は、電池管理モジュールによって実行される。
【0039】
図2の電池パックの充電方法は、ステップS21で開始される。ステップS21において、電池管理モジュールは、まず、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率を確定し、前記比率に基づいて第1電流の大きさを確定する。
【0040】
電池管理モジュールは、リチウム析出量化モデルによって電池パックのリチウム析出量を得る。リチウム析出量化モデルは、電池パックのリチウム析出量と電池パックの動作時間(単位:日または年)の関数関係を反映する。各電池パックは、工場出荷前に、高精度の設備を用いて該電池パックのリチウム析出量化モデルを較正した。
【0041】
電池管理モジュールは、問い合わせによってリチウム析出閾値を得る。リチウム析出現象に関して上述したように、持続的なリチウム析出は、電池パックの短絡を引き起こし、リチウム析出閾値は、電池パックの内部短絡が生じる時点におけるリチウム析出量である。リチウム析出閾値は、電池パックが開発段階で設計情報及び実験検証によって得たある固定値である。電池管理モジュールは、問い合わせによってリチウム析出閾値を得ることができる。
【0042】
しかしながら、本出願は、リチウム析出量およびリチウム析出閾値を得るための上述の方式を含むが、これらに限定されないことを理解されたい。
【0043】
電池管理モジュールは、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率を得た後、前記比率に基づいて第1電流の大きさを確定する。本出願のいくつかの実施例では、前記比率の値が大きいほど、前記第1電流の値は小さくなる。
【0044】
例えば、表1は、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率と、第1電流との関係のいくつかの実施例を示す。
【0045】
【0046】
表1に示すように、例えば、段階的充電の第2段階において、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率が0~50%の範囲にあるとき、充電電流(すなわち、第1電流)は、1.25C(1Cは、電池パックの満充電に対応する電流である)であり、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率が、50%~85%の範囲にあるとき、充電電流は、1.20Cであり、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率が、85%~95%の範囲にあるとき、充電電流は、1.15Cである。すなわち、表1において、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率の値が大きいほど、前記第1電流の値は小さい。
【0047】
ステップS21において、異なる細分化された具体的なリチウム析出状況に対して、異なる大きさの第1電流で充電することができ、さらに、析出するリチウムイオンを著しく減少させる。また、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率が大きいほど、リチウム析出持続時間が長くなり、より小さい第1電流充電電流は、リチウム析出をさらに減少することができる。
【0048】
図1のステップS11およびS12と同様に、
図2において、電池管理モジュールは、ステップS22において、第1電流の充電要求を充電スタンドに送信し、ステップS23において、第1電流で充電するように電池パックを制御する。
【0049】
ステップS24において、電池管理モジュールは、電池パックが第1電流で所定時間持続的に充電されたかどうかを判断し、または電池パックの充電率SOCが所定値に達したかどうかを判断する。
【0050】
上述のように、本出願の充電方法は、段階的充電方法に主に適する。ステップS24における判断条件は、主に、段階的充電における各段階間の電流切り替え時の予め設定された条件に依存する。
【0051】
例えば、段階的充電方法において、電池パックが前の充電電流で5分間持続的に充電された後、次の充電電流に切り替わる(例えば、表1を参照すれば、第1段階の充電が5分間持続した後、第2段階に切り替わる)場合、本出願のステップS24において、電池管理モジュールは、電池パックが第1電流で所定時間持続的に充電されたかどうかを判断する。
【0052】
また、例えば、段階的充電方法において、電池パックの充電率SOCが50%に達するように電池パックを前の充電電流で充電された後、次の充電電流に切り替えるように設定した場合(例えば、表1を参照すれば、第3段階の充電は電池パックの充電率SOCが50%に達した後、第4段階に切り替わるという設定)、本出願のステップS24において、電池管理モジュールは、電池パックの充電率SOCが所定値に達したかどうかを判断する。
【0053】
ステップS24において、電池管理モジュールは、パルス放電を行う(または負パルスを加える)時点になったかどうかを確定する。電流を切り替える必要がある時、直ちにパルス放電を行い、析出したリチウム金属の先端が再び電解液に入ることを効果的に促進することができ、リチウムデンドライトを平らにし、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池充電の安全性を著しく向上させる。
【0054】
電池管理モジュールは、電池パックの第1電流での持続的充電が所定時間に達していないか、または電池パックの充電率SOCが所定値に達していないと確定した場合、ステップS23に戻り、継続して電池パックを、第1電流で充電するように制御する。
【0055】
電池管理モジュールは、電池パックの第1電流での持続充電が所定時間に達したか、または電池パックの充電率SOCが所定値に達したと確定した場合、ステップS25を実行し、電池管理モジュールは、充電スタンドに電流0Aの充電要求を送信し、パルス放電を開始する。電池管理モジュールは、充電スタンドに電流0Aの充電要求を送信すると同時に、電流0Aの充電要求の要求時間を任意で計時することができ、これにより、電流0Aの充電要求の要求時間が長すぎることによる充電スタンドの充電自動停止の発生を防止することができる。
【0056】
ステップS25を実行すると同時に、電池管理モジュールは、ステップS26において、リアルタイム充電電流を取得する。電池管理モジュールが充電スタンドに電流0Aの充電要求を送信した後、充電スタンドが電池パックを充電する電流は直ちに0Aに低下しないので、電池管理モジュールは、リアルタイム充電電流、すなわち充電スタンドが電池パックを充電する電流を取得する必要がある。
【0057】
ステップS27において、電池管理モジュールは、リアルタイム充電電流が第1電流閾値未満であるかどうかを判断する。本出願のいくつかの実施例では、第1電流閾値の大きさは、例えば、任意選択的に0.1A~10Aである。
【0058】
リアルタイム充電電流が第1電流閾値以上であると電池管理モジュールが確定した場合、ステップS26に戻り、電池管理モジュールは依然としてリアルタイム充電電流を取得する。
【0059】
電池管理モジュールにより、リアルタイム充電電流が第1電流閾値未満であると確定した場合、ステップS28を実行し、電池管理モジュールは、ある放電電流で放電するように電池パックを制御し、かつ電池パックが前記放電電流で放電する放電時間を取得する。充電過程が中断されないように、放電は、リアルタイム充電電流が、完全にゼロに等しくなく、第1電流閾値未満である場合に行われる。本出願のいくつかの実施例では、放電電流は、1A~5C(1Cは、電池パックを満充電することに対応する電流を意味する)であってもよく、任意選択的に1C~3Cであってもよい。
【0060】
本出願のいくつかの実施例では、放電電流の大きさは、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率に応じて異なる。具体的には、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率が大きいほど、放電電流も大きくなる。これは、電池パックのリチウム析出量とリチウム析出閾値との比率が大きいほど、電池パックのリチウム析出がより深刻になり、より多くのリチウム金属が析出した先端が電解液に再入ることを促進し、リチウムデンドライトを平にし、さらにリチウム析出を減少させるために、より大きな放電電流が必要であるからである。
【0061】
本出願のいくつかの実施例では、電池パックは充電スタンドに放電することができる。本出願のいくつかの実施例では、電池パックは、(携帯電話、タブレット、ノートパソコン、電動玩具、電動ツール、電気自動車、船舶、宇宙船等を含むがこれらに限定されない)電力消費装置内に位置することができる。このとき、電池パックは電力消費装置に放電することができる。
【0062】
ステップS29において、電池管理モジュールは、過剰放電を防止するために、放電時間が第1時間閾値に達したかどうかを判断する。本出願のいくつかの実施例では、第1時間閾値は、1s~60sであってもよい。
【0063】
あるいは、任意選択的に、ステップS25において、電池管理モジュールが、電流0Aの充電要求の要求時間を計時した場合、ステップS29において、前記要求時間が第2時間閾値に達したかどうかを判断し、これにより、上述のように、電流0Aの充電要求の要求時間が長すぎることによる充電スタンドの充電自動停止の発生を防止する。本出願のいくつかの実施例では、第1時間閾値は、2s~120sであってもよい。
【0064】
電池管理モジュールにより、放電時間が第1時間閾値に達していない、または要求時間が第2時間閾値に達していないと確定した場合、ステップS28に戻り、電池管理モジュールは、継続して電池パックをある放電電流で放電するように制御し、電池パックが前記放電電流で放電する放電時間を取得する。
【0065】
電池管理モジュールにより、放電時間が第1時間閾値に達したか、または要求時間が第2時間閾値に達したと確定した場合、ステップS30を実行し、電池パックを、放電を停止するように制御し、かつ充電するために第2電流の充電要求を充電スタンドに送信する。
【0066】
上述したように、本出願の充電方法は、主に段階的充電方法に適し、段階的充電方法では、第2段階の電流が第1段階の電流よりも小さいため、ステップS30における第2電流は第1電流よりも小さい。
【0067】
さらに、本出願のいくつかの実施例によれば、電池管理モジュールは、電池パックが満充電状態にあるか、または充電プラグを抜き取って充電状態を停止する状態にあると確定した場合、電池パックを別の放電電流で放電し、かつある放電時間持続するように制御する。例えば、電池パックを、0.1A~10Aの放電電流で1s~20s放電するように制御することができる。本出願のいくつかの実施例では、電池パックは、充電スタンドまたは上述の電力消費装置に放電することができる。
【0068】
電池パックが満充電状態にあるとき、または充電プラグを抜いて充電状態を停止する時、放電を行うように電池パックを制御することは、さらに、析出したリチウム金属の先端が電解液に再び入ることを効果的に促進し、リチウムデンドライトを平らにし、リチウムデンドライトの持続的な蓄積を抑制し、電池パックの充電の安全性をさらに向上させることができる。
【0069】
最後に説明すべきこととして、上記の各実施例は、本出願の技術案を説明するためのみに用いられ、それを制限するものではなく、前述した各実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者であれば理解できるように、前述した各実施例に記載の技術案を依然として変更し、又はそのうちの一部又は全部の技術的特徴を同等に置換することが可能であり、これらの変更又は置換は、対応する技術案の本質を本出願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させないものであり、本出願の請求の範囲及び明細書の範囲に包含されるべきである。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例で言及される各技術的特徴はいずれも、任意の方法で組み合わせることができる。本出願は、本明細書に開示される特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての技術案を含む。
【国際調査報告】