(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】インクジェット記録用フルイド(fluid)セット
(51)【国際特許分類】
C09D 11/54 20140101AFI20240201BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20240201BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20240201BHJP
C08F 20/02 20060101ALI20240201BHJP
C08F 12/14 20060101ALI20240201BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240201BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240201BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/322
C09K23/52
C08F20/02
C08F12/14
C08L101/02
C08K5/17
B41J2/01 501
B41J2/01 125
B41M5/00 120
B41M5/00 134
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545338
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2022050832
(87)【国際公開番号】W WO2022161799
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】デコスター,ルーク
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4D077
4J002
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB12
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4D077AA08
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4J100AB07P
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4J100AM21P
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4J100BC43P
4J100CA05
4J100JA07
4J100JA15
(57)【要約】
インクジェット印刷用フルイドセットは、水性インクジェット用インクと、及び共反応性フルイドと、を含む。インクジェット用インクは、顔料と、及び第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤と、を含む。共反応性フルイドは、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも2つ有する化合物を含む。共反応性フルイドは、好ましくは、プライマー、インクジェット用インク、又はオーバープリントワニスである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インクジェット用インクと、及び共反応性フルイドとを含む、フルイドセットであって、前記インクジェット用インクは、顔料と、及び第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤と、を含み、前記共反応性フルイドは、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも2つ有する化合物を含む、前記フルイドセット。
【請求項2】
前記ポリマー分散剤の前記官能基は、以下の一般式I、一般式II、又は一般式III:
【化1】
【化2】
【化3】
式中、
R
1は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、COR
3、及びCNからなる群より選択され
R
2は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、及びCOR
3からなる群より選択され
R
1及びR
2は、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができ
R
3は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は
無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、OR
4、及びNR
5R
6からなる群より選択され
R
4は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
R
5及びR
6は、独立して、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
R
5及びR
6は、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができ
Xは、O及びNR
7からなる群より選択され
nは、0又は1を表し
R
7は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され。R
8及びR
9は、独立して、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され、
R
8及びR
9は、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができる、
により表される、請求項1に記載のフルイドセット。
【請求項3】
前記ポリマー分散剤は、合計単量体組成に対して、一般式Iに従う官能基を有する単量体単位を少なくとも15モル%含む、請求項2に記載のフルイドセット。
【請求項4】
前記化合物は、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10、及び最も好ましくは少なくとも15有する樹脂粒子である、先行請求項のいずれか1項に記載のフルイドセット。
【請求項5】
前記化合物は、ニ官能性又は多官能性である、請求項1から請求項3に記載のフルイドセット。
【請求項6】
前記樹脂粒子は、架橋している、請求項4に記載のフルイドセット。
【請求項7】
前記樹脂粒子は、第一級アミンを含む繰り返し単位を少なくとも1つ有する樹脂を含む、請求項4に記載のフルイドセット。
【請求項8】
前記第一級アミンは、ビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選択される、請求項7に記載のフルイドセット。
【請求項9】
前記共反応性フルイドは、多価塩及びカチオン性樹脂の群から選択される凝集剤を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のフルイドセット。
【請求項10】
前記共反応性フルイドは、更に、白色顔料を含む、請求項9に記載のフルイドセット。
【請求項11】
前記共反応性フルイドは、着色剤を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のフルイドセット。
【請求項12】
前記共反応性フルイドは、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリエチレンワック
スの群から選択される樹脂を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のフルイドセット。
【請求項13】
請求項1から請求項12に定義されるとおりのフルイドセットを用いたインクジェット記録法であって、以下の工程:
a)請求項1から請求項12に定義されるとおりの水性インクジェット用インクを、基材に噴射する工程と、及び
b)請求項1から請求項12に定義されるとおりの共反応性フルイドを、前記インクジェット用インクの前記噴射前、後、又は最中に塗工する工程と、及び
c)前記塗工されたフルイドセットを、例えば、前記噴射されたインクの温度が少なくとも60℃になるようにして加熱することにより、乾燥させる工程と、
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非吸収基材への印刷用水性インクジェット技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非吸収基材に印刷された画像は、優れた吸着性能及び耐薬品性をはじめとする必要条件を全て満たさなければならない。こうした必要条件を満たす目的で、結合剤として機能する追加樹脂が、水性インクジェット用インクに組み込まれる。しかしながら、樹脂を水性インクジェット用インクに組み込むと、水性顔料インクの噴射信頼性及びコロイド化学安定性に相当な影響を及ぼすことが多く、このため、信頼性及び安定性が最重要視される産業用途に関して、このアプローチの適性はあまり良くない。インクに追加の樹脂を必要とすることなく、インクジェット印刷された画像に同じ物理的特性を達成することが可能であれば、有利であると思われる。
【0003】
特許文献1には、カプセル化β-ケトエステル官能性導入ポリマーが、水系インクジェット用インクに組み込むための特に興味深い樹脂として開示されている。非吸収基材への印刷は、画像品質を保証する目的でプライマーを必要とすることが多い。プライマーは、典型的には、カチオン性化合物、これはカチオン性ポリマーであることが多い、と、多価金属イオンとで構成される。特許文献2には、第一級及び第二級アミン官能性導入ポリマーが、カプセル化β-ケトエステル官能性導入ポリマーと組み合わせてプライマーに使用される、特別に好適なポリマーとして開示されている。しかしながら、このアプローチは、産業用途の必要条件を満たすために、インクジェット用インクに追加樹脂を依然として必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2021/122411
【特許文献2】WO2021/224046
【発明の概要】
【0005】
今回、少なくとも1種の水性インクジェット用インクと、及び少なくとも1種の共反応性フルイドと、を含むフルイドセットであって、a.インクジェット用インクは少なくとも1種の顔料分散液を含み、顔料分散液は、第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を少なくとも3つ有するポリマー分散剤で分散させてあること、並びにb.共反応性フルイドは、少なくとも1種のポリマーを含み、少なくとも1種のポリマーは、第一級アミン及び第二級アミンから選択される少なくとも2つの官能基で官能性導入されており、非吸収基材上に耐薬品性画像を導くこと、を特徴するフルイドセットが見出された。
【0006】
別の態様に従って、本発明は、請求項1に定義されるとおりの水性インクジェット用インクと及び共反応性フルイドとを含むフルイドセットにより、画像を印刷する方法を含む。この方法は、請求項13において定義される。
【0007】
本発明の他の特長、要素、工程、特徴、及び利点は、本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明からより明らかとなる。本発明の具体的実施形態は、従属項においても定義される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
見出されたのは、水性インクジェット用インクと及び共反応性フルイドとを含むフルイドセットであり、この水性インクジェット用インクは、顔料と、第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤とを含み、この共反応性フルイドは、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される少なくとも2つの官能基を有する化合物を含み、非吸収基材上に耐薬品性画像を導く。この共反応性フルイドは、プライマー、追加インクジェット用インク、又はオーバープリントワニスとして使用可能である。
【0009】
A.水性インクジェット用インク
A.1.官能性導入ポリマー分散剤
本発明によるフルイドセットの一部をなす水性インクジェット用インクは、顔料を含み、この顔料は、官能性導入ポリマー分散剤により分散されている。官能性導入ポリマー分散剤は、第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有する。このような官能基は、エポキシ基、マレイミド又はアクリレートなどの活性化二重結合、あるいは一般式I、又は一般式II、又は一般式IIIに従う官能官基であり:
【化1】
【化2】
【化3】
式中、
R
1は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、COR
3、及びCNからなる群より選択され
R
2は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は
無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、及びCOR
3からなる群より選択され
R
1及びR
2は、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができ
R
3は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、OR
4、及びNR
5R
6からなる群より選択され
R
4は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
R
5及びR
6は、独立して、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
R
5及びR
6は、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができ
Xは、O及びNR
7からなる群より選択され
nは、0又は1を表し
R
7は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され。R
8及びR
9は、独立して、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
R
8及びR
9は、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができる。
【0010】
好適な実施形態において、本発明によるポリマー分散剤は、一般式Iに従う官能基を少なくとも3つ有する。より好適な実施形態において、当該ポリマー分散剤は、一般式Iに従う官能基を有する単量体単位を、合計単量体組成に対して少なくとも5モル%、より好ましくは合計単量体組成に対して少なくとも10モル%、及び最も好ましくは一般式Iに従う官能基を有する単量体単位を、合計単量体組成に対して少なくとも15モル%含む。一般式Iに従う官能基を有する単量体単位を少なくとも15モル%という量は、十分な反応性を実現して、得られる画像に更により高い耐薬品性を導く。
【0011】
ポリマー分散剤は、天然又は合成ポリマーの後誘導体化により、あるいは官能性導入単量体の重合により、調製することができる。ポリマー分散剤は、付加ポリマー、重縮合ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。ポリマーは、開環重合、フリーラジカル重合、カチオン重合、及びアニオン重合により調製することができる。
【0012】
典型的な重縮合型のポリマーは、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、及びポリ(ウレタン)からなる群より選択される。開環重合により調製される典型的なポリマーは、ポリ(エーテル)、ポリ(エステル)、及びポリ(アミドである)。フリーラジカル重合により調製される典型的なポリマーは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドに由来するアクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、及びビニルエステル系ポリマーである。他の単量体、例えば、ビニルエーテル、マレイミド、イタコネート、アリルエーテル、及びアリルエステルも、ポリマーに含めることができる。
【0013】
本発明によるポリマー分散剤は、好ましくは、親水性型の単量体単位と、及び疎水性型
の単量体単位と、を含む。親水性単量体は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び双イオン性であることが可能であるが、好ましくはアニオン性又は非イオン性であり、アニオン性であることが最も好ましい。特に好適なアニオン性基は、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、及び硫酸エステル又はその塩からなる群より選択され、カルボン酸又はその塩及びスルホン酸又はその塩がより好ましく、カルボン酸又はその塩が最も好ましい。特に好適な非イオン性基は、ポリ(エチレングリコール)及びオリゴヒドロキシ基からなる群より選択される。
【0014】
フリーラジカル重合により調製されたポリマー分散剤が、特に好適である。
【0015】
フリーラジカル重合に特に好適なアニオン性親水性共重合単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、β-カルボキシアクリル酸エチル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸及びそのモノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ヒドロキシエチルアクリレートモノホスフェート、ヒドロキシエチルアクリレートモノスクシネートなど、カプロラクトンアクリレート、(2-アクリロイルオキシエチル)フタル(phtalic)酸、(2-アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタル(phtalic)酸、カルボキシメチル-2-プロぺノエート、4-[[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシル]オキシ]-安息香酸、4-カルボキシフェニルアクリレート、及びマレイン酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)エステルからなる群より選択され、アクリル酸及びメタクリル酸が最も好ましい。
【0016】
フリーラジカル重合に特に好適な非イオン性親水性単量体は、ポリ(エチレングリコール)官能性導入したアクリレート及びメタクリレート、並びにサッカライド官能性導入したアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドの群より選択される。ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル官能性導入したアクリレート及びメタクリレートが、特に好ましい。
【0017】
好適な疎水性単量体は、水対単量体比を5対1として混合した場合に、より好ましくは水対単量体比を10対1として混合した場合に、水と2相系を形成する単量体である。フリーラジカル重合に特に好適な疎水性単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アリール、アルカリール、及びアラルキル官能性導入(メタ)アクリル酸エステル、アルキル、アリール、アルカリール、及びアラルキル官能性導入アクリルアミド及びメタクリルアミド、スチレン誘導体、並びにビニルナフタレン誘導体からなる群より選択される。
【0018】
本発明によるポリマー分散剤は、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、グラジエントコポリマー、及び櫛形コポリマー、又はそれらの組み合わせが可能である。これらは、直鎖、星型、分岐型、又は超分岐型が可能である。
【0019】
ポリマー分散剤は、好ましくは、数平均分子量Mnが500~30000、より好ましくは1500~10000である。
【0020】
ポリマー分散剤は、好ましくは、重量平均分子量Mwが100,000未満、より好ましくは50,000未満、最も好ましくは30,000未満である。
【0021】
本発明の別の実施形態において、本発明による樹脂の分子量は、RAFT剤、ATRP、ニトロキシルラジカル技法、又は連鎖移動剤、好ましくはチオールを用いて制御される。
【0022】
特に好適な実施形態において、本発明による分散剤は、一般式Iに従う官能基を少なくとも1つ有する単量体の重合により調製される。付加重合用の典型的な単量体を、表1に
提示するが、それらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0023】
開環重合用の典型的な単量体を、表2に提示するが、それらに限定されない。
【表2】
重縮合用の典型的な単量体を、表3に提示するが、それらに限定されない。
【表3】
【0024】
A.2.顔料
本発明によるフルイドセットの一部をなす水性インクは、顔料を含み、この顔料は、黒色、白色、シアン色、マゼンタ色、黄色、赤色、橙色、バイオレット色、青色、緑色、褐色、それらの混合物などが可能である。着色顔料は、HERBST, Willy, et al. Industrial Organic Pigments, Produ
ction, Properties, Applications. 3rd edition. Wiley - VCH, 2004. ISBN 3527305769に開示されるものから選択することができる。
【0025】
適切な顔料は、WO2008/074548の段落[0128]~[0138]に開示される。
【0026】
顔料粒子は、第A.1節のポリマー分散剤により、好ましくは、水性媒体に分散している。インク中の追加樹脂との相互作用を回避するため、自己分散性顔料が使用される場合がある。本発明は、追加樹脂を用いずにインクジェット用インクを使用することを可能にする。なぜなら、自己分散性顔料は、非自己分散性顔料よりも高価であることが多いが、この自己分散性顔料を必要としないからである。
【0027】
本発明によるインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置を通じた、特に排出ノズルでの、インクの自由流動を許容するのに十分なほど小さくなければならない。着色力(colour strength)の最大化及び沈降の減速のためにも、小さい粒子を使用することが望ましい。
【0028】
顔料の平均粒径は、好ましくは0.050~1μm、より好ましくは0.070~0.300μm、特に好ましくは0.080~0.200μmである。最も好ましくは、顔料の数平均粒径は、0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒径は、Brookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて、動的光散乱の原理に基づいて特定される。インクは、脱塩水を用いて顔料濃度0.002重量%に希釈される。BI90plusの測定設定は、以下のとおり:23℃で5回、角度90°、波長635nm、及びgraphics=correction function。
【0029】
しかしながら、白色顔料インクジェット用インクの場合、白色顔料の数平均粒径は、上記と同じである。
【0030】
適切な白色顔料は、WO2008/074548の[0116]の表2により与えられる。白色顔料は、好ましくは、屈折率が1.60超の顔料である。白色顔料は、単独で採用することも組み合わせて採用することもできる。好ましくは、二酸化チタンが、屈折率1.60超の顔料として使用される。適切な二酸化チタン顔料は、WO2008/074548の[0117]及び[0118]に開示されるものである。
【0031】
特殊着色剤、例えば、衣服の特殊効果用蛍光顔料、並びに生地に銀色及び金色の豪華な外観を印刷するための金属顔料なども、使用可能である。
【0032】
顔料は、好ましくは、0.01~20%の範囲、より好ましくは0.05~10重量%の範囲、最も好ましくは0.1~5重量%の範囲で存在し、これらの量はそれぞれ、インクジェット用インクの合計重量に基づく。白色インクジェット用インクの場合、白色顔料は、好ましくは、インクジェット用インクの3重量%~40重量%、より好ましくは5%~35%の量で存在する。3重量%未満の量では、十分な被覆力を達成できない。
【0033】
本発明によるポリマー分散剤は、顔料重量に基づいて、5~600重量%、好ましくは10~100重量%の量で使用される。
【0034】
A.3.顔料分散液
本発明による着色インクジェット用インクは、顔料を、ポリマー分散剤の存在下、分散
媒に沈澱させる又はミリングすることにより調製できる。
【0035】
混合装置として、加圧ニーダー、オープンニーダー、プラネタリーミキサー、ディソルバー、及びDalton Universal Mixerを挙げることができる。適切なミリング装置及び分散装置としては、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー(paint conditioner)、及びトリプルローラーがある。分散液は、超音波エネルギーを用いて調製することもできる。
【0036】
多種多様な材料を、ミリング媒体として使用することができ、そのような媒体としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックなどがある。好適な実施形態において、粉砕媒体は、粒子、好ましくは形が実質的に球状のもの、例えば、ポリマー樹脂から本質的になるビーズ又はイットリウム安定化ジルコニウムビーズ、を含むことができる。
【0037】
混合、ミリング、及び分散のプロセスにおいて、各プロセスは、好ましくは、熱の蓄積を防ぐために冷却しながら行われる。
【0038】
混合、ミリング、及び分散のプロセスにおいて、各プロセスは、熱の蓄積を防ぐために冷却しながら、及び放射線硬化性インクジェット用インクの場合には可能な限り化学線が実質的に排除された光条件下で、行われる。
【0039】
本発明によるインクジェット用インクは、1種より多い顔料を含有することができ、インクジェット用インクは、各顔料の別個の分散液を用いて調製することもできれば、あるいは分散液の調製において複数の顔料を混合して共粉砕する(co-milled)こともできる。
【0040】
分散プロセスは、連続式、バッチ式、又は半バッチ式で行うことができる。
【0041】
ミル粉砕の成分の好適な量及び比は、具体的な材料及び意図する用途に応じて、広く変化することになる。ミリング混合物の内容物は、ミル粉砕及びミリング媒体を含む。ミル粉砕は、顔料と、ポリマー分散剤と、及び水などの液体キャリアと、を含む。本発明によるインクジェット用インクの場合、顔料は、通常、ミリング媒体を除くミル粉砕中に1~50重量%で存在する。顔料対ポリマー分散剤の重量比は、20:1~1:2である。
【0042】
ミリング時間は、広く変化する可能性があり、選択した顔料、機械手段、及び滞留条件、初期粒径及び所望の最終粒径などに依存する。本発明では、平均粒径が100nm未満の顔料分散液を調製することができる。
【0043】
ミリング完了後、ミリング媒体を、通常の分離技術を用いて、例えば、濾過、メッシュスクリーンでの篩い分けなどにより、ミリングされた粒状生成物(乾燥形態又は分散液形態のいずれかにある)から分離する。例えばビーズミルなどの場合に、篩をミル中に組み込むことが多い。ミリングされた高濃度顔料は、好ましくは、濾過によりミリング媒体から分離される。
【0044】
一般に、高濃度ミル粉砕の形状でインクジェット用インクを作ることが望ましく、これは、引き続き、例えば水と第A.4節の有機溶媒のミックスにより、希釈されて、インクジェット印刷システムで使用するのに適切な濃度にされる。この技法は、装置からより大量の顔料インクを調製することを可能にする。希釈により、インクジェット用インクは、特定用途に望まれる粘度、表面張力、色、色相、飽和密度、被覆性へと調整される。
【0045】
A.4.水溶性有機溶媒
本発明のインクジェット用インクは、溶媒としての水の他に、水溶性有機溶媒も含有することができる。水溶性有機溶媒の例として、多価アルコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、及び2,5-ヘキサンジオールなど、多価アルコールアルキルエーテル、例えば、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル、及びエチレングリコールフェニルエーテルなど、並びに窒素含有複素環化合物、例えば、2-ピロリドン及びN-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0046】
他の好適な水溶性有機溶媒として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn-プロピルエーテル、及びエチレングリコールn-ブチルエーテルが挙げられる。
【0047】
水性インクジェット用インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、好ましくは20重量%及び70重量%未満である。含有量が20重量%未満の場合、例えば、インクとヘッドの間の粘度ミスマッチにより、信頼できる噴射が困難である可能性がある。含有量が70重量%超の場合、インクは、その水に基づくより環境に優しい特徴を失う。
【0048】
水溶性有機溶媒は、好ましくは、2-ピロリドンと1,2-ヘキサンジオールとを、任意選択でグリセロールと一緒に含む、有機溶媒の混合物である。
【0049】
A.5.保湿剤
本発明のインクジェット用インクは、少なくとも1種の保湿剤を含有することができ、保湿剤がインクジェット用インク、特にインクジェット印刷液体中の水の蒸発速度を減速する能力により、インクジェットプリントヘッドのノズルの目詰まりが予防される。保湿剤は、水より高い沸点を有する有機溶媒である。
【0050】
適切な保湿剤は、WO2015/158649Aの[0114]に開示される。好適な保湿剤は、グリセロールであるか、又は2-ピロリドン(pyrolidone)の誘導体若しくは異性体である。
【0051】
保湿剤は、好ましくは、インクジェット印刷液体の合計重量に基づき、0.1~20重量%の量でインクジェット印刷液体に添加される。
【0052】
A.6.界面活性剤
本発明で使用されるインクには、基材上での湿潤性を確保する目的で、界面活性剤を添加することができる。添加される界面活性剤の量は、インク中の活性成分として、好ましくは、0重量%~5重量%である。この量が5重量%を超える場合、インクは、容易に発泡して、無排出を引き起こす。使用可能な界面活性剤は、それが上記限度を満足する限り
、特に制限されない。
【0053】
両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤のいずれでも使用可能であるものの、着色材料の分散安定性と画像品質の間の関係性の観点から、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びアセチレンアルコールのエチレンオキシド付加物などが、好ましくは使用される。また、フッ素系界面活性剤及びケイ素系界面活性剤を、配合に応じて組み合わせて(又は単独で)使用することができる。
【0054】
適切な界面活性剤は、シロキサン系界面活性剤、例えば、Evonik Industries製Tego Twin 4000、Evonik industries製Tegowet 270、BASF製Hydropalat WE3220など、シラン系界面活性剤、例えば、Momentive製Silwet HS312など、及びフッ素(fluor)含有界面活性剤、例えば:Neochem GMBH製Thetawet FS8150、Dupont製Capstone FS3100、Merck製Tivida FL2500、並びにDynol製界面活性剤、Air products製Envirogem&Surfynolシリーズである。
【0055】
他の適切な界面活性剤は、アセチレンアルコール界面活性剤である。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤の使用は、更に、ブリーディングを減少させて印刷品質を改善するとともに、印刷における乾燥性を改善して高速印刷を可能にする。
【0056】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は、好ましくは、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン(decine)-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン(decine)-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン(decin)-4-オール、及び2,4-ジメチル-5-デシン(decin)-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選択される1種又は複数である。これらは、例えば、Air Products(GB)からOlfine E 010などのOlfine(登録商標)104シリーズ及びEシリーズとして、又はNissin Chemical IndustryからSurfynol(登録商標)465及びSurfynol 61として、入手可能である。
【0057】
B.共反応性フルイド
B.1.第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ有する化合物
本発明によるフルイドセットの共反応性フルイドは、第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ有する化合物を含み、第一級アミンがより好適である。
【0058】
第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも2つの有する化合物は、二官能性又は多官能性の低分子量化合物及びオリゴマー又はポリマーから選択することができる。
【0059】
より好適な実施形態において、当該アミノ化合物は、官能性が2~8、より好ましくは2~5である低分子量化合物であり、最も好ましくは二官能性又は三官能性である。こうした化合物は、市場でより入手しやすい。
【0060】
典型的なアミノ化合物は、WO2021/224046Aの表4に与えられ、これは本
明細書により参照として援用される。
【0061】
別の好適な実施形態において、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも2つ有する当該化合物は、少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、及び最も好ましくは少なくとも15の官能基を有するポリマーであり、官能基は、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択され、第一級アミンがより好適である。第一級又は第二級アミンの量が上記の値を超える場合、反応性が上昇して、得られるコーティング及び画像の耐溶媒性及び耐水性がよりいっそう高くなる。
【0062】
ポリマーは、共反応性フルイドに溶解することが可能であり、又は分散若しくは乳化ポリマー粒子として存在することが可能である。プライマーとしての共反応性フルイドの設計において有用な典型的なポリマーは、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルアミン-コ-ビニルホルムアミド)、キトサン、4-アミノメチル-スチレン又はその塩のホモポリマー若しくはコポリマー、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル-メタクリルアミド又はその塩、ポリ(リシン)又はそのコポリマー、などからなる群より選択される。ビニルアミン、アリルアミン、及びオキサリルアミド架橋単位を含むポリマーの適切な例は、未公開特許出願EP20172947.2の[0018~0028]に見つけることができる。
【0063】
好適な実施形態において、共反応性フルイドは、少なくとも1種の樹脂粒子を含み、この樹脂粒子は、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも15有し、第一級アミンがより好ましい。フルイドに、化合物の代わりに樹脂粒子を使用することは、レオロジー挙動の改善という利点があり、この改善が、フルイドの噴射信頼性及びコロイド安定性の改善を導く。このことは、フルイドが、画像形成法においてインクジェットヘッド又はバルブジェットヘッドにより噴射されなければならない場合、例えば、フルイドがプライマー(前処理液体)、水性インクジェット用インク、又は画像に応じて塗布されるオーバーコートである場合、非常に重要である。
【0064】
アミノ含有樹脂粒子は、アミノ含有ポリマーの誘導体化、続いて当該誘導体を水性環境に分散させ、任意選択で続いて粒子を架橋させることにより、調製することができる。好適な出発ポリマーは、ビニルアミン又はアリルアミンのホモポリマー又はコポリマーである。典型例として、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルアミン-コ-ビニルホルムアミド)、キトサン、4-アミノメチル-スチレン又はその塩のホモポリマー若しくはコポリマー、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル-メタクリルアミド又はその塩、ポリ(リシン)又はそのコポリマーなどが挙げられる。出発ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは少なくとも7000、より好ましくは少なくとも15000、最も好ましくは少なくとも25000である。
【0065】
他の合成戦略として、カルボン酸官能性導入アクリルポリマーをアゼリジンで誘導体化し、続いて乳化、及び任意選択で架橋すること、任意選択で保護したアミノ官能性導入単量体の乳化又はミニエマルション重合に、任意選択で続いて脱保護すること、4-クロロメチル-スチレンなどの反応性単量体を含む反応性ラテックスを後誘導体化すること、並びにアミノ官能性導入アルコキシシランに基づくゾルゲル系重縮合が挙げられる。こうしたアミノ官能性導入シロキサン樹脂粒子の適切な例は、未公開特許出願EP-A-20172949.8の[0013~0026]に見つけることができる。
【0066】
好適な実施形態において、当該アミノ官能性導入樹脂粒子は架橋している。架橋粒子は
、より広い配合許容範囲を与える。実際、架橋により、樹脂粒子は、共反応性フルイドの担体中に存在する水溶性有機溶媒に対する耐性がより高くなる。更に好適な実施形態において、ポリマー樹脂粒子の繰り返し単位の少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも10モル%、最も好ましくは少なくとも20モル%が、第一級アミン又は第二級アミンである官能基を有する。
【0067】
アミンは、少なくとも部分的に、酸及びカルボン酸で中和されていることが可能であり、酸としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、硫酸などがあり、カルボン酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、及び乳酸などがある。
【0068】
B.2.添加剤
共反応性フルイドは、フルイドの機能に関して特異的な添加剤を含むことができる。
【0069】
B.2.1.プライマーとして作用する共反応性フルイド用の添加剤。
本発明による共反応性フルイドがプライマーとして作用する場合、フルイドは、更に、フルイドセットの水性インクの着色剤と反応する凝集剤を含むことができる。凝集剤は、水性インクがプライマーとして作用する共反応性フルイドと接触したときに、粘度上昇、インクの着色剤の沈澱又は固定化を誘導する。
【0070】
凝集剤は、好ましくは、樹脂又は多価金属イオンである。多価金属イオンの適切な例は、二価以上の金属カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、及びアルミニウムなど、並びにアニオン、例えば、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、硫酸イオン(SO4
2-)、硝酸イオン(NO3
-)、及び酢酸イオン(CH3COO-)から形成された水溶性金属塩である。
【0071】
これらの多価金属イオンは、インクジェット用インク中の顔料表面の、又はインクに含まれるポリマー分散剤のカルボキシル基に作用することにより、着色剤、より詳細には顔料を凝集させる機能を有する。結果として、インクの着色剤は固定されて、色のブリーディング及びビーディングの低下をもたらす。したがって、インク中の顔料及び/又はポリマー分散剤の表面が、アニオン性基、好ましくはカルボキシル基を有することが好ましい。
【0072】
凝集剤としての樹脂は、デンプン;セルロース材料、例えば、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロースなど;ポリウレタン、多糖;タンパク質、例えば、ゼラチン及びカゼインなど;水溶性の天然に生じるポリマー、例えば、タンニン及びリグニンなど;並びに合成水溶性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコールを含むポリマー、ポリエチレンオキシドを含むポリマー、アクリル酸単量体から形成されるポリマー、及び無水マレイン酸単量体から形成されるポリマー、の群から選択することができる。他の適切な樹脂は、EP2362014[0027-0030]に記載されるとおりのアクリルポリマーである。好ましくは、樹脂は、カチオン性樹脂、より好ましくは陽電荷を帯びたポリウレタンである。樹脂含有量は、好ましくは、プライマーとして作用するフルイドの合計質量(100質量%)に対して20重量%以下である。
【0073】
プライマーとして作用する共反応性フルイドは、着色剤、より具体的には、プライマーが本発明によるフルイドセットの水性インクジェット用インクとともに、ダンボール紙、黒色生地、などの暗色又は着色基材あるいは透明基材にオーバープリントされる場合に鮮明な着色画像を得るための白色着色剤を含むことができる。より具体的には、プライマーとして作用するフルイドは、好ましくは、白色顔料を含む。適切な白色顔料は、WO2008/074548の[0116]の表2により与えられる。白色顔料は、好ましくは、
屈折率が1.60超の顔料である。白色顔料は、単独で採用することも組み合わせて採用することもできる。好ましくは二酸化チタンが、屈折率1.60超の顔料として使用される。適切な二酸化チタン顔料は、WO2008/074548の[0117]及び[0118]に開示されるものである。本発明で有用な二酸化チタン(TIO2)顔料は、ルチル結晶型にあることもアナターゼ結晶型にあること可能である。TiO2の作成プロセスは、‘‘The Pigment Handbook’’, Vol. I, 2nd Ed., John Wiley & Sons, NY (1988)に更に詳細に記載されており、これの関連する開示は、あらゆる目的に関して完全に表明されているがごとく本明細書中参照として援用される。
【0074】
二酸化チタン粒子は、フルイドの所望の最終用途に応じて、約1μ以下の広範囲にわたる平均粒径を有することができる。高い隠蔽力が要求される用途又は装飾印刷用途の場合、二酸化チタン粒子は、好ましくは、約1μm未満の平均粒径を有する。好ましくは、粒子は、約50~約950nm、より好ましくは約75~約750nm、更により好ましくは約100~約500nmの平均粒径を有する。
【0075】
ある程度の透明性を持つ白色が要求される用途の場合、優先される顔料は、「ナノ」二酸化チタンである。「ナノ」二酸化チタン粒子は、典型的には、約10~約200nm、好ましくは約20~約150nm、より好ましくは約35~約75nmの範囲の平均径を有する。ナノ二酸化チタンを含むフルイドは、光褪色に対する良好な耐性及び適切な色相角を依然として維持しながら、彩度及び透明性の改善をもたらすことができる。コーティングのないナノグレードの酸化チタンの市販例は、Degussa(Parsippany N.J.)から入手可能なP-25である。
【0076】
また、複数の粒径を用いて、独特の利点、例えば、不透明さ及びUV保護などを実現することができる。こうした複数の粒径は、顔料グレード及びナノグレードのTIO2を両方とも添加することにより達成できる。
【0077】
二酸化チタン顔料は、1つ又は複数の金属酸化物表面被膜を有することもできる。こうした被膜は、当業者に既知の技法を用いて塗工することができる。金属酸化物被膜の例として、とりわけ、シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア、及びジルコニアが挙げられる。こうした被膜は、二酸化チタンの光反応性の低下をはじめとする、性質の改善をもたらすことができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア、及びジルコニアの金属酸化物被膜は、TiO2顔料に正電荷を帯びた表面をもたらし、それゆえに、プライマーの通常pHで正電荷を有する第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選択される官能基を少なくとも2つ有する化合物と組み合わせる上で特に有用である。その場合、顔料のさらなる表面処理は必要とされない。
【0078】
そのような被覆二酸化チタンの市販例として、R700(アルミナ被覆、E.I. DuPont deNemours、WilmingtonDel.から入手可能)、RDI-S(アルミナ被覆、Kemira Industrial Chemicals、Helsinki、Finlandから入手可能)、R706(DuPont、Wilmington Del.から入手可能)、及びW-6042(シリカアルミナ処理したナノグレード二酸化チタン、Tayco Corporation、Osaka Japan製)が挙げられる。
【0079】
プライマーとして作用する共反応性フルイドがインクジェットヘッド又はバルブジェットヘッドを介して噴射される場合、他の添加剤、例えば、第A.4節、第A.5節、及び、第A.6節に記載されるものなどを添加することができる。
【0080】
B.2.2.水性インクジェット用インクとして作用する共反応性フルイド用の添加物
本発明による共反応性フルイドは、画像の形成において、水性インクジェット用インクとしても機能することができ、セットの第一水性インクジェット用インクと反応する能力を理由に、共反応性インクジェット用インクとも呼ぶ。
【0081】
インクジェット用インクとして作用するフルイドは、好ましくは、第A.2節に記載されるとおりの着色剤並びに第A.4節、第A.5節、及び、第A.6節に記載されるとおりの添加剤を含む。
【0082】
B.2.3.オーバーコートとして作用する共反応性フルイド用の添加物
本発明による共反応性フルイドが、噴射された発明による水性インクジェット用インクの最上面をコーティングする又は最上面に印刷されるオーバーコートとして機能する場合、フルイドは、更に、樹脂を含むことができる。適切な樹脂として、アクリル系樹脂、ウレタン修飾ポリエステル樹脂、又はポリエチレンワックスが可能である。
【0083】
ポリウレタン樹脂は、オーバーコートとして作用するフルイド配合物に、分散液として組み込むことができ、脂肪族ポリウレタン分散液、芳香族ポリウレタン分散液、カチオン性ポリウレタン分散液、非イオン性ポリウレタン分散液、脂肪族ポリエステルポリウレタン分散液、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散液、脂肪族アクリル修飾ポリウレタン分散液、芳香族ポリエステルポリウレタン分散液、芳香族ポリカーボネートポリウレタン分散液、芳香族アクリル修飾ポリウレタン分散液、又はそれらのうち2種以上の組み合わせからなる群より選択することができる。
【0084】
適切なポリウレタン分散液の例の一部として、例えば、NEOREZ R-989、NEOREZ R-2005、及びNEOREZ R-4000(DSM NeoResins);BAYHYDROL UH 2606、BAYHYDROL UH XP 2719、BAYHYDROL UH XP 2648、及びBAYHYDROL UA XP 2631(Bayer Material Science);DAOTAN VTW 1262/35WA、DAOTAN VTW 1265/36WA、DAOTAN VTW 1267/36WA、DAOTAN VTW 6421/42WA、DAOTAN VTW 6462/36WA(Cytec Engineered Materials Inc.、Anaheim CA);並びにSANCURE 2715、SANCURE 20041、SANCURE 2725(Lubrizol Corporation)、又はそれらのうち2種以上の組み合わせがある。
【0085】
アクリル系樹脂として、アクリル単量体のポリマー、メタクリル単量体のポリマー、上記単量体と他の単量体とのコポリマーが挙げられる。これらの樹脂は、平均径が約30nm~約300nmの粒子の懸濁液として存在する。アクリルラテックスポリマーは、アクリル単量体又はメタクリル単量体の残基から形成される。アクリルラテックスポリマーは、アクリル単量体と別の単量体、例えば、ビニル芳香族単量体の、ホモポリマーであることもコポリマーであることも可能であり、ビニル芳香族単量として、スチレン、スチレンブタジエン、p-クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、及びジビニルナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
適切なアクリルラテックスポリマー懸濁液の例の一部として、例えば、JONCRYL
537及びJONCRYL 538(BASF Corporation、Port Arthur TX);CARBOSET GA-2111、CARBOSET CR-728、CARBOSET CR-785、CARBOSET CR-761、CARBOSET CR-763、CARBOSET CR-765、CARBOSET CR-715、及びCARBOSET GA-4028(Lubrizol Corporat
ion);NEOCRYL A-1110、NEOCRYL A-1131、NEOCRYL A-2091、NEOCRYL A-1127、NEOCRYL XK-96、及びNEOCRYL XK-14(DSM);並びにBAYHYDROL AH XP 2754、BAYHYDROL AH XP 2741、BAYHYDROL A 2427、及びBAYHYDROL A2651(Bayer)、又は上記のうち2種以上の組み合わせがある。
【0087】
オーバーコートとして作用する共反応性フルイド中の樹脂濃度は、少なくとも1重量%及び好ましくは30重量%未満、より好ましくは20重量%未満である。
【0088】
オーバーコートは、噴射された水性インクジェット用インク上に、コーティング技法により塗工する、又は印刷技法を用いて印刷することができ、印刷技法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はインクジェット印刷などがある。特に好適な実施形態において、インクジェット印刷を用いてワニスが印刷される。
【0089】
C.画像記録法
本発明によるフルイドセットは、インクジェット画像記録法において使用するのに適している。本発明によるインクジェット記録法は、以下の工程を含む:
・本発明によるフルイドセットの一部をなす水性インクジェット用インクを、基材、好ましくは無孔基材に噴射する工程、インクは、顔料と、及び第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤と、を含み、好ましくは官能基は、一般式I、一般式II、又は一般式IIIで表される;並びに
・本発明によるフルイドセットの共反応性フルイドを、基材、好ましくは無孔基材に、塗工する(その場合、フルイドはプライマーとして作用する)、又は噴射された水性インクジェット上に塗工する(その場合、フルイドはオーバーコートとして作用する)、あるいはフルイドを水性インクジェット用インクと一緒に噴射して、着色画像を形成させる(その場合、フルイドは水性インクジェット用インクとして、より詳細には共反応性インクジェット用インクとして作用する)工程。
・熱を加えて、例えば、噴射されたインクの温度を少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃にすることにより、塗工されたフルイドセットを乾燥させる工程。達する温度が60℃未満の場合、水性インクジェット用インクのポリマー分散剤と第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ有する化合物との間の架橋反応が、起こらない又は不十分にしか起こらない。結果として、耐溶媒性又は噴射され乾燥したインクの付着の改善は生じない。
【0090】
好適なインクジェット記録法において、本方法は、以下の工程を含む:
a)本発明による共反応性フルイドを、プライマーとして、基材、好ましくは無孔基材に噴射する工程。共反応性フルイドは、第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ有する化合物を含み、第一級アミンがより好適である。共反応性フルイドは、任意の適切なコーティング法によりコーティングさせる、又は以下のような印刷技法を用いて印刷することができる:グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はインクジェット印刷。特に好適な実施形態において、共反応性フルイドは、インクジェット印刷を用いて印刷され、化合物は、樹脂粒子である。これは、共反応性フルイドの塗工が、基材をプライミングする他の塗工法よりも実質的に少ない量のフルイドしか必要としないという利点を有することを、少なくとも意味する。任意選択で、共反応性フルイドは、熱を加えることで、乾燥又は半乾燥状態に乾燥させることができる。
b)本発明によるフルイドセットの水性インクジェット用インクを、塗工されたフルイド上に噴射する工程、インクは、顔料と、及び第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤とを含み、好ましくは官能基は、一般式I、一般式II、又は一般式IIIで表される;並びに
c)熱を加えて、例えば、噴射されたインクの温度を少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃にすることにより、噴射されたインクジェット用インクを乾燥させる工程。
【0091】
別の好適なインクジェット記録法において、本方法は、以下の工程を含む:
a)フルイドセットを、基材、好ましくは無孔基材にインクジェットすることにより、画像を形成する工程。フルイドセットの共反応性フルイドは、第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ有する化合物を含み、第一級アミンがより好適であり、並びに好ましくは、更に着色剤を含む。より好ましくは、化合物は、樹脂粒子である。本発明によるフルイドセットの水性インクジェット用インクは、顔料と、及び第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤とを含み、好ましくは官能基は、一般式I、一般式II、又は一般式IIIで表される。画像の形成におけるフルイドセットの噴射は、共反応性フルイド及び水性インクジェット用インクを、順次又は同時に噴射することにより行うことができる;並びに
b)熱を加えて、例えば、噴射されたインクの温度を少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃にすることにより、噴射されたフルイドセットを乾燥させる工程。
【0092】
別の好適なインクジェット記録法において、本方法は、以下の工程を含む:
a)本発明によるフルイドセットの水性インクジェット用インクを、基材、好ましくは無孔基材に噴射する工程。インクは、顔料と、及び第一級アミン又は第二級アミンと反応することができる官能基を有するポリマー分散剤とを含み、好ましくは官能基は、一般式I、一般式II、又は一般式IIIで表される。任意選択で、インクジェット用インクは、熱を加えることで、乾燥又は半乾燥状態に乾燥させることができる、並びに
b)本発明による共反応性フルイドを、オーバーコートして、噴射された水性インクジェット用インク上に塗工する工程。共反応性フルイドは、第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ用いて官能基導入された化合物を含み、第一級アミンがより好適である。共反応性フルイドは、任意の適切なコーティング法によりコーティングさせる、又は以下のような印刷技法を用いて印刷することができる:グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はインクジェット印刷。特に好適な実施形態において、共反応性フルイドは、インクジェット印刷を用いて印刷され、第一級アミン又は第二級アミンである官能基を少なくとも2つ有する化合物は、樹脂粒子である、並びに
c)熱を加えて、例えば、噴射されたインクの温度を少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃にすることにより、噴射されたフルイドセットを乾燥させる工程。
【0093】
別の好適なインクジェット記録法において、上記の好適な方法のうち2つ又は3つを組み合わせることができる。
【0094】
インクジェット記録法の基材は、多孔質のもの、例えば、生地、紙、皮革、及びダンボール紙基材などが可能であるが、好ましくは、非吸収基材、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)又は、ポリイミドなどである。
【0095】
基材は、紙基材、例えば、普通紙、又は樹脂コート紙、例えばポリエチレンコート紙若しくはポリプロピレンコート紙などであることも可能である。紙の種類に実際の制限はなく、紙として、新聞紙、雑誌用紙、事務用紙、壁紙が挙げられ、及び坪量のより高い紙、通常はボール紙と称するもの、例えば、白色チップボール、ダンボール、及び梱包用ボールなども挙げられる。
【0096】
基材は、透明でも、半透明でも、不透明でも可能である。好適な不透明基材として、A
gfa-Gevaert製のSynaps(商標)グレードのようないわゆる合成紙が挙げられる。Synaps(商標)は、密度が1.10g/cm3以上の不透明ポリエチレンテレフタレートシートである。
【0097】
本発明によるフルイドセットを乾燥させる、又は少なくともフルイド若しくは水性インクジェット用インクを乾燥させる加熱プロセスの例として、熱プレス、常圧水蒸気処理、高圧水蒸気処理、THERMOFIXが挙げられるが、これらに限定されない。加熱プロセスには任意の熱源を使用することができ、例えば、赤外線源が採用される。
【0098】
乾燥工程は、環境大気で行うことができるが、塗工されたフルイドセット又はフルイド若しくは水性インクジェット用インクのうち少なくとも一方の温度を少なくとも60℃、より好ましくは80℃にする加熱工程は、熱源を用いて行われなければならない。適切な熱源の例として、強制空気加熱、IR放射などの輻射加熱(NIR放射及びCIR放射を含む)、伝導加熱、高周波乾燥、及びマイクロ波乾燥用の設備が挙げられる。
【0099】
インクジェット用インク及び任意選択でプライマー及び/又はオーバーコートとして作用するフルイドを噴射するのに好適な、インクジェット印刷システム用のインクジェットヘッドは、ピエゾインクジェットヘッドである。ピエゾインクジェット噴射は、圧電型セラミックトランスデューサーに電圧が印加されたときのその動きに基づいている。電圧が印加されると、印刷ヘッドの圧電型セラミックトランスデューサーの形状が変化して空隙が形成され、次いでこの空隙がインク又は液体で満たされる。電圧が再び解除されると、セラミックは膨張してその元来の形状になり、インクジェットヘッドからインクの滴を吐出する。しかしながら、本発明による水性インクジェット用インク及び任意選択でフルイドの噴射は、ピエゾインクジェット印刷に限定されない。他のインクジェット印刷ヘッドが使用可能であり、そのような印刷ヘッドとして、各種のもの、例えば、連続型、熱印刷ヘッド型、MEMジェット型ヘッド、及びバルブジェット型などが挙げられる。
【実施例】
【0100】
D.実施例
D.1.材料:
全ての化合物は、特に記載がない限り、TCIEuropeが供給元である。
・BHTは、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールである
・PV Fast blue BG-NIP:PB15:3、供給元Clariant
・Tego Wet270は、エーテル修飾ポリ(ジメチルシロキサン)であり、供給元Evonik Industries
・MA-20は、単量体であり、以下のとおり調製される:
・N-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン-1-アミンクロロハイドレートの合成:
4-クロロメチル-スチレン114.45g及びBHT2gを、1-メトキシ-2-プロパノール115mlに溶解させ、この溶液を1-ブチルアミン219gに15分間かけて加え、この間、温度を50℃未満に維持した。反応を、室温で16時間、継続させた。ナトリウムメタノラートの30重量%メタノール溶液135gを加え、混合物を室温で15分間撹拌した。形成した塩化ナトリウムを濾過して除去し、溶媒を減圧除去した。残渣をアセトニトリル1リットルに溶解させ、10N塩酸溶液75gを、15分間かけて加えた。混合物を室温で15分間撹拌した。N-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン-1-アミンクロロハイドレートを、濾過して単離し、アセトニトリルで洗い、乾燥させた。N-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン-1-アミンクロロハイドレート84g(収率:50%)を単離した。N-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン-1-アミンクロロハイドレートは、Rev C18 TLCプレート(供給元Buechi)でのTLCで分析した、溶離液:MeOH/H2O、Rf:0.51。
・MA-20の合成:
トルエン400mlに、3-オキソ酪酸tert-ブチル64.4g、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン-1-アミンクロロハイドレート83.5g、トリメチルアミン55.5g及びBHT1.6gを溶解させた。反応を、2時間半、還流で継続させ、続いて反応混合物から150mlをゆっくりと蒸留した。反応混合物を室温まで放冷し、メチルtert-ブチルエーテル250mlを加えた。混合物を、水350mlで2回、濃塩酸10mlを水350mlに加えた溶液で1回、及び水350mlで1回抽出した。有機画分を、MgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。MA-20が103g単離されたが、これは依然として数パーセントの残留溶媒を含有していた。MA-20は、Rev C18 TLCプレート(供給元Buechi)でのTLCクロマトグラフィーで分析した、溶離液:メタノール/水/0.5MのNaClを70/15/15、Rf:0.12。
・MA-18は、一般式Iに従う単量体[=N-(2-ベンゾイル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミド]であり、以下のとおり調製する:
硫酸175gを、0℃に冷却した。ヒドロキシメチルアクリルアミド10.1g及びBHT0.66gを加え、続いて、1-フェニルブタン-1,3-ジオン16.2gを少しずつ加え、この間、温度は5℃未満に維持した。反応を、室温で20時間継続させた。反応混合物を、氷250gに加えた。混合物を、塩化メチレン250mlで2回抽出した。プールした塩化メチレン画分を、飽和NaHCO3溶液120mlで2回、及びブライン100mlで1回/抽出した。塩化メチレン画分を、MgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。残渣を、アセトン120ml及びn-ヘキサン400mlで処理した。粗N-(2-ベンゾイル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミドを、濾過して単離した。N-(2-ベンゾイル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミドを、Graceresolveカラムに、塩化メチレンから塩化メチレン/酢酸エチルを60/40への勾配溶出を用いて分取カラムクロマトグラフィーにより精製した。N-(2-ベンゾイル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミド7.8g(収率:31%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60 F254(供給元Merck)、溶離液は塩化メチレン/酢酸エチルを70/30、Rf:0.3)。
・MA-17は、一般式Iに従う単量体[N-(2-アセチル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミド]であり、以下のとおり調製する:
硫酸350gを、0℃に冷却した。アセチルアセトン20g及びBHT1.3gを加え、続いて、ヒドロキシメチルアクリルアミド20.2g(0.2g)を少しずつ加え、この間、温度は7℃未満に維持した。反応を、室温で20時間継続させた。反応混合物を、氷500gに加えた。混合物を、塩化メチレン500mlで2回抽出した。プールした塩化メチレン画分を、飽和NaHCO3250ml、及びブライン200mlで抽出し、MgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。N-(2-アセチル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミドを、Prochrom LC80カラムに、固定相としてKromasil Si 60A 10μm及び溶離液として塩化メチレン/酢酸エチルを80/20を用いて分取カラムクロマトグラフィーにより精製した。N-(2-アセチル-3-オキソ-ブチル)プロパ-2-エナミド4g(収率:11%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60 F254(供給元Merck)、溶離液は塩化メチレン/酢酸エチルを30/70、Rf:0.33)。
・MA-22は、一般式Iに従う単量体[N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(プロパ-2-エノイルアミノ)メチル]ブタンアミド]であり、以下のとおり調製する:
ジエチルアセトアセトアミド31.44gとヒドロキシメチルアクリルアミド10.1gの混合物に、12N HCl0.3mlを加えた。アセトニトリル50mlを加え、混合物を、6時間還流させた。混合物を、室温まで放冷し、不溶性残渣を、濾過して除去した。溶媒を、減圧除去し、残渣を、メチルt-ブチルエーテル50mlとヘキサン50mlの混合物で処理した。溶媒を除去し、N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(プロパ-2-エノイルアミノ)メチル]ブタンアミドを、Prochrom LC80カラムに
、固定相としてKromasil Si 60A 10μm及び溶離液として塩化メチレン/酢酸エチルを50/50を用いて分取カラムクロマトグラフィーにより単離した。N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(プロパ-2-エノイルアミノ)メチル]ブタンアミド5.8g(収率:24%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60 F254(供給元Merck)、溶離液は酢酸エチル、Rf:0.25)。
・MA-21は、一般式Iに従う単量体[3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]酪酸tert-ブチル]であり、以下のとおり調製する:
アセトニトリル140mlに、4-クロロメチル-スチレン15.2g、アセト酢酸t-ブチル7.91g、及びBHT0.66gを溶解させた。炭酸カリウム13.8gを加えた。反応を、6時間、還流で継続させた。混合物を、室温まで放冷し、水200mlを加えた。混合物を、メチルt-ブチルエーテル125mlで2回抽出した。プールしたメチルt-ブチルエーテル画分をMgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]酪酸Tert-ブチルを、Prochrom
LC80カラムに、固定相としてKromasil Si 60A 10μm及び溶離液として塩化メチレン/n-ヘキサンを50/50を用いて分取カラムクロマトグラフィーにより精製した。3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]酪酸tert-ブチル3.4g(収率:12.4%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60
F254(供給元Merck)、溶離液はトルエン、Rf:0.2)。
・MA-16は、一般式Iに従う単量体[3-[(4-ビニルフェニル)メチル]ペンタン-2,4-ジオン]であり、以下のとおり調製する:
ジメチルホルムアミド20mlとアセトニトリル60mlの混合物に、アセチルアセトンナトリウム塩9.8g、アセチルアセトン7.15g、ヨウ化ナトリウム0.34g、及びBHT0.31gを溶解させた。4-クロロメチル-スチレン10.89gを加え、反応混合物を80℃に加熱した。反応を、80℃で2時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷した。水150mlを加え、混合物をトルエン120mlで2回抽出した。プールしたトルエン画分をMgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。3-[(4-ビニルフェニル)メチル]ペンタン-2,4-ジオンを、Prochrom LC80カラムに、固定相としてKromasil Si 60A 10μm及び溶離液として塩化メチレン/n-ヘキサンを80/20を用いて分取カラムクロマトグラフィーにより精製した。3-[(4-ビニルフェニル)メチル]ペンタン-2,4-ジオン6.7g(収率:43.4%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60 F254(供給元Merck)、溶離液はジクロロメタン、Rf:0.55)。
・MA-23は、一般式Iに従う単量体[2-[ブチル(3-オキソブタノイル)アミノ]エチル=2-メチルプロパ-2-エノアート]であり、以下のとおり調製する:
・N-ブチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-3-オキソ-ブタンアミドの合成:トルエン300mlに、n-ブチル-アミノエタノール23.43g及びアセト酢酸t-ブチル31.64gを溶解させ、反応混合物を加熱した。この間、t-ブタノールを蒸留により徐々に除去した。溶媒/t-ブタノール混合物19gを蒸留により除去した。反応混合物を放冷し、溶媒を、減圧除去した。粗N-ブチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-3-オキソ-ブタンアミドは、それ以上精製することなく使用した。
・2-[ブチル(3-オキソブタノイル)アミノ]エチル=2-メチルプロパ-2-エノアートの合成:
トルエンに、N-(2-ヒドロキシエチル)-3-オキソ-ブタンアミド40g、メタクリル酸17.10g、p-トルエンスルホン酸一水和物1.8g、及びBHT0.87gを溶解させた。混合物を加熱還流させ、水を共沸蒸留で除去した。反応混合物を、室温まで放冷した。混合物を、飽和NaHCO3溶液150mlで2回、及び水100mlで2回、抽出した。トルエン画分を単離し、MgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。2-[ブチル(3-オキソブタノイル)アミノ]エチル=2-メチルプロパ-2-エノアートを、Prochrom LC80カラムに、固定相としてKromasil Si
60A 10μm及び溶離液として塩化メチレンを用いて分取カラムクロマトグラフィ
ーにより精製した。2-[ブチル(3-オキソブタノイル)アミノ]エチル=2-メチルプロパ-2-エノアート8g(収率:15%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60 F254(供給元Merck)、溶離液は酢酸エチル、Rf:0.6)
・MA-14は、一般式Iに従う単量体[N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタンアミド]であり、以下のとおり調製する:
エタノール400mlを0℃に冷却した。4-t-Bu-カテコール0.66gを加え、続いて、15w%ナトリウムのパラフィン分散物18.4g(0.2mol)を少しずつ加えた。反応を、30℃で30分間継続させた。4-クロロメチル-スチレン30.5g(0.2mol)を加え、続いてエタノール50mlでフラッシュし、続いて直ちにジエチルアセトアセトアミド62.8g(0.4mol)を加え、エタノール50mlでフラッシュした。反応を、還流温度で16時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷した。水500mlを加え、混合物を塩化メチレン400mlで抽出した。有機画分中の沈澱パラフィンを、濾過して除去した。水性画分を、塩化メチレン150mlで3回抽出した。プールした有機画分を、水150mlで2回抽出した。有機画分を単離し、MgSO4で乾燥させ、減圧エバポレートした。N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタンアミドを、Prochrom LC80カラムに、固定相としてKromasil Si 60A 10μm及び塩化メチレンから塩化メチレン/酢酸エチルを90/10への勾配溶出を用いて分取カラムクロマトグラフィーにより精製した。N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタンアミド27g(収率:49%)を単離した(TLC分析は、TLCシリカゲル60 F254(供給元Merck)、溶離液は塩化メチレン、Rf:0.3)
・INV-POL-1:INV-DISP-1は、メタクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、メタクリル酸フェノキシエチル、及びメタクリル酸のコポリマーであり、以下のとおり調製する。
酢酸エチル235mlに、メタクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル10g、メタクリル酸フェノキシエチル10g、及びメタクリル酸10gを溶解させた。混合物を、45分間窒素でフラッシュした。ドデシルチオール1.07gを加え、続いて、WAKO V59を0.203gを酢酸エチル2mlに溶解させた溶液を加えた。重合を、4時間還流で継続させた。反応混合物を、室温まで放冷すると、ポリマーの一部が沈澱した。沈澱した分のポリマーを単離し、メチルtert-ブチルエーテル100mlで処理した。6.8gのINV-POL-1が、白色粉末として単離された。GPCを用いて、ポリ(スチレン)標準を基準に分子量を特定した。INV-POL-1は、数平均分子量Mnが28900であり、重量平均分子量Mwが44500であった。
・INV-POL-2:INV-POL-2は、メタクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、メタクリル酸ベンジル、及びメタクリル酸のコポリマーであり、以下のとおり調製する。
酢酸エチル240mlに、メタクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル10g、メタクリル酸ベンジル10g、及びメタクリル酸10gを溶解させた。混合物を、45分間窒素でフラッシュした。ドデシルチオール1.11gを加え、続いて、WAKO V59を0.211gを酢酸エチル2mlに溶解させた溶液を加えた。重合を、3時間還流で継続させた。反応混合物を、室温まで放冷した。ポリマーの一部が沈澱したので、単離した。沈澱したポリマーを、メチルtert-ブチルエーテル100mlで処理した。9.3gのINV-POL-2が、白色粉末として単離された。GPCを用いて、ポリ(スチレン)標準を基準に分子量を特定した。INV-POL-2は、数平均分子量Mnが28500であり、重量平均分子量Mwが40500であった。
・COMP-POL-1:COMP-POL-1は、メタクリル酸2-(エトキシ)エチル、メタクリル酸フェノキシエチル、及びメタクリル酸のコポリマーであり、以下のとおり調製する。
酢酸エチル235mlに、メタクリル酸2-エトキシ-エチル10g、メタクリル酸2-フェノキシエチル10g、及びメタクリル酸10gを溶解させた。混合物を、45分間
窒素でフラッシュした。ドデシルチオール1.15gを加え、続いて、WAKO V59を0.219g加えた。重合を、4時間還流で継続させた。反応混合物を、室温まで放冷した。ポリマーの一部が沈澱したので、単離した。沈澱したポリマーを、メチルtert-ブチルエーテル300mlで処理し、濾過して単離し、乾燥させた。8.7gのCOM-POL-1が、白色粉末として単離された。GPCを用いて、ポリ(スチレン)標準を基準に分子量を特定した。COMP-POL-1は、数平均分子量Mnが24000であり、重量平均分子量Mwが32400であった。
・COMP-POL-2:COMP-POL-2は、メタクリル酸2-(エトキシ)エチル、メタクリル酸ベンジル、及びメタクリル酸のコポリマーであり、以下のとおり調製する。
酢酸エチル240mlに、メタクリル酸2-エトキシ-エチル10g、メタクリル酸ベンジル10g、及びメタクリル酸10gを溶解させた。混合物を、45分間窒素でフラッシュした。ドデシルチオール1.19gを加え、続いて、WAKO V59を0.227g加えた。重合を、4時間還流で継続させた。反応混合物を、室温まで放冷した。ポリマーの一部が沈澱したので、単離した。沈澱したポリマーを、メチルtert-ブチルエーテル300mlで処理し、濾過して単離し、乾燥させた。7.2gのCOM-POL-2が、白色粉末として単離された。GPCを用いて、ポリ(スチレン)標準を基準に分子量を特定した。COMP-POL-2は、数平均分子量Mnが24700であり、重量平均分子量Mwが33300であった。
・INV-POL-3:INV-POL-3は、MA-20、アクリル酸、及びスチレンのコポリマーであり、以下のとおり調製する。
酢酸エチル60mlに、スチレン7g、MA-20を5.53g、アクリル酸5.25g、及びドデシルメルカプタン1.72gを溶解させた。WAKO V59を0.49g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、メチルtert-ブチルエーテル200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。7g(収率:35%)のINV-POL-3が、単離された。
・アミノPOL-1:アミノPOL-1は、アミノ官能性導入アルコキシシランホモポリマーであり、アミノプロピル-メチル-ジメトキシシランから以下に記載のとおり調製する。
水65gに、アミノ(amin)プロピル-メチル-ジメトキシシラン35gを溶解させ、混合物を、24時間、70℃に加熱した。メタノールが蒸発した分は、ポリマー溶液に水を最大100gまで補った。
・INV-POL-4は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル15mlに、アクリル酸フェノキシエチル2.11g、MA-17を1.56g、アクリル酸0.9g、及びドデシルメルカプタン0.34gを溶解させた。WAKO V59を0.1g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。4.5g(収率:90%)のINV-POL-4が、単離された。
・INV-POL-5は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル15mlに、アクリル酸フェノキシエチル1.57g、MA-18を2.13g、アクリル酸0.9g、及びドデシルメルカプタン0.31gを溶解させた。WAKO V59を0.09g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。4.5g(収率:90%)のINV-POL-5が、単離された。
・INV-POL-6は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル15mlに、アクリル酸フェノキシエチル1.61g、MA-22を2.07g、アクリル酸0.89g、及びドデシルメルカプタン0.34gを溶解させた。WA
KO V59を0.1g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。4.5g(収率:90%)のINV-POL-6が、単離された。
・INV-POL-7は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル15mlに、アクリル酸フェノキシエチル1.33g、MA-21を2.34g、アクリル酸0.89g、及びドデシルメルカプタン0.34gを溶解させた。WAKO V59を0.1g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。2.7g(収率:54%)のINV-POL-7が、単離された。
・INV-POL-8は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル15mlに、アクリル酸フェノキシエチル1.79g、MA-16を1.88g、アクリル酸0.89g、及びドデシルメルカプタン0.34gを溶解させた。WAKO V59を0.1g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。4g(収率:80%)のINV-POL-8が、単離された。
・INV-POL-9は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル30mlに、スチレン3.96g、MA-23を3.25g、アクリル酸1.76g、及びドデシルメルカプタン0.8gを溶解させた。WAKO V59を0.23g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。WAKO V59を追加で0.2g加え、反応を75℃で追加の4時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン300mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。6.5g(収率:65%)のINV-POL-9が、単離された。
・INV-POL-10は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル30mlに、アクリル酸フェノキシエチル4.52g、MA-20を2.86g、アクリル酸1.81g、及びドデシルメルカプタン0.63gを溶解させた。WAKO V59を0.18g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン200mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。7.5g(収率:75%)のINV-POL-10が、単離された。
・INV-POL-11は、ポリマー分散剤であり、以下のとおり調製する:
酢酸エチル30mlに、スチレン3.5g、MA-14を2.76g、アクリル酸2.63g、及びドデシルメルカプタン0.86gを溶解させた。WAKO V59を0.25g加え、混合物を窒素でフラッシュした。反応混合物を75℃に加熱し、重合を、75℃で20時間継続させた。WAKO V59を追加で0.2g加え、反応を75℃で追加の4時間継続させた。反応混合物を、室温まで放冷し、n-ヘキサン300mlを加えた。沈澱したポリマーを、濾過して単離し、50℃で乾燥させた。8g(収率:80%)のINV-POL-11が、単離された。
【0101】
D.2.方法
D.2.1.耐溶媒性
フルイドセットを塗工することにより形成された画像及びコーティングの耐溶媒性を、溶媒としてのイソプロパノール及びメチルエチルケトン又は水を用いてQチップでコーティング又は印刷された画像を40回拭くことにより試験する。
【0102】
スコア0は、コーティング又は画像層の完全な溶解を意味する。スコア1は、拭いた際の明瞭に視認される損傷を意味する。スコア2は、拭いた際の軽微に視認される損傷を意
味する。スコア3は、コーティング又は画像に眼に見える損傷がほとんど又は全くないことを意味する。
【0103】
D.2.2.粒径
顔料分散液の平均粒径は、ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments、Goffin Meyvis)を用いて測定した。
【0104】
D.3.実施例1
この実施例は、本発明によるフルイドセットにより得られたコーティングの耐溶媒性が高いことを解説する。
【0105】
PV Fast blue BG-NIP(PB15:3、供給元Clariant)1g、水18g、INV-POL-1、INV-POL-2、COMP-POL-1、及びCOMP-POL-2から選択されるポリマー1g、N-メチルモルホリン0.2g、及びイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(0.4mm)100gの混合物を、24時間ミリングした。イットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを、濾過して除去し、シアン色分散液INV-DISP-1、INV-DISP-2、COMP-DISP-1、及びCOMP-DISP-2を、本発明インクであるINV-INK-1及びINV-INK-2並びに比較インクであるCOMP-INK-1及びCOMP-INK-2の配合物にそれぞれ使用した。平均粒径を、表4に提示する。
【表4】
【0106】
本発明インクであるINV-INK-1及びINV-INK-2並びに比較インクであるINK-COMP-1及びINK-COMP-2は、表5に従って成分を混合することにより調製した。全ての重量パーセンテージは、インクの合計重量に基づく。
【表5】
【0107】
4μワイヤーバーを用いて、本発明インクであるINV-INK-1及びINV-INK-2並びに比較インクであるCOMP-INK-1及びCOMP-INK-2を、ポリ(プロピレン)(Priplak、供給元Antalis)に塗布し、オーブン中80℃で5分間乾燥させた。コーティングを、耐水性及び耐溶媒性について評価した。このコーティングの最上面に、共反応性フルイドとしてアミノPOL-1の0.5μコーティングを塗工し、オーブン中80℃で5分間乾燥させた。コーティングの耐溶媒性を、上記の方法に従って測定した。耐溶媒性を測定する前に、コーティングを室温で24時間貯蔵した。結果を表6にまとめる。
【表6】
【0108】
表6から、本発明による単量体単位で官能性導入された分散剤を用いて配合されたインクだけが、共反応性オーバーコートの塗工に際して、耐溶媒性を顕著に改善させるということが明らかになる。比較の非反応性分散剤に基づくコーティングは、耐溶媒性を失う傾向にある。
【0109】
D.4.実施例2
この実施例は、インクがβ-ケトアミド官能性導入分散剤を含む場合のフルイドセットにより得られるコーティングの、加齢後の耐溶媒性性能を解説する。
【0110】
PV Fast blue BG-NIPを1g、水18g、INV-POL-3を1g、トリエチルアミン0.2g、及びイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(0.4mm)100gの混合物を、7日間ミリングした。イットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを、濾過して除去し、シアン色分散液INV-DISP-3を、本発明インクであるINV-INK-3の配合物に使用した。平均粒径は、124nmであった。
【0111】
本発明インクであるINV-INK-3は、表7に従って成分を混合することにより調製した。全ての重量パーセンテージは、インクの合計重量に基づく。
【表7】
【0112】
4μワイヤーバーを用いて、本発明インクであるINV-INK-3を、ポリ(プロピレン)(Priplak、供給元Antalis)に塗布し、オーブン中80℃で5分間乾燥させた。コーティングを、上記方法に従って耐水性及び耐溶媒性について評価した。このコーティングの最上面に、共反応性フルイドとしてアミノPOL-1の2μコーティングを塗工し、オーブン中80℃で15分間乾燥させた。7日後、コーティングの耐溶媒性を、上記の方法に従って測定した。INV-INK-3を60℃で7日間貯蔵し、4μワイヤーバーを用いて再度塗布し、オーブン中80℃で5分間乾燥させた。この第二コーティングの最上面に、共反応性フルイドとしてアミノPOL-1の2μコーティングを塗工し、オーブン中80℃で15分間乾燥させた。7日後、コーティングの耐溶媒性を、上記の方法に従って測定した。結果を表8にまとめる。
【表8】
【0113】
表8から、β-ケトアミドで官能性導入された分散剤は、60℃で7日間貯蔵した後でさえ、共反応性オーバープリントワニスでコーティングした際の耐薬品性を顕著に改善することが明らかとなる。
【0114】
D.5.実施例3
この実施例は、本発明によるポリマー分散剤における共反応性単量体の範囲を解説する。
【0115】
PV Fast blue BG-NIP(PB15:3、供給元Clariant)1g、水18g、INV-POL-4~INV-POL-11から選択されるポリマー1g、N-メチルモルホリン0.2g、及びイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(0.4mm)100gの混合物を、24時間ミリングした。イットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを、濾過して除去し、シアン色分散液INV-DISP-4~INV-DISP-11を、本発明インクであるINV-INK-4~INV-INK-11の配合物に使用した。平均粒径を、表9に提示する。
【表9】
【0116】
本発明インクであるINV-INK-4~INV-INK-11は、表10に従って成分を混合することにより調製した。全ての重量パーセンテージは、インクの合計重量に基づく。
【表10】
【0117】
表11に従って成分を混合することにより、アミノオーバーコートAM-OV-1を調製した。
【表11】
【0118】
4μワイヤーバーを用いて、本発明インクであるINV-INK-4~INV-INK-11を、ポリ(プロピレン)(Priplak、供給元Antalis)に塗布し、オーブン中80℃で5分間乾燥させた。コーティングを、耐水性及び耐溶媒性について評価した。このコーティングの最上面に、共反応性フルイドとしてAM-OV-1の10μコーティングを塗工し、オーブン中80℃で15分間乾燥させた。コーティングの耐溶媒性を、上記の方法に従って測定した。耐溶媒性を測定する前に、コーティングを室温で7日間貯蔵した。結果を表12にまとめる。
【表12】
【0119】
表12から、本発明による広範囲の分散剤が、第一級アミン官能性導入ポリマー含有オーバープリントワニスと反応した際に耐溶媒性の顕著な上昇をもたらすことが明らかとなる。
【国際調査報告】