(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】集中分散型PGMを有するパティキュレートフィルター、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20240201BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240201BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240201BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240201BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240201BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240201BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J35/04 301E
B01J35/04 301L
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/035 A
F01N3/24 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545772
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022013631
(87)【国際公開番号】W WO2022164777
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/073980
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チヤン,チュン コン
(72)【発明者】
【氏名】スン,イーポン
(72)【発明者】
【氏名】ヴュノフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イエ フイ
(72)【発明者】
【氏名】ジアニ,アッティリオ
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091AB13
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3G091BA38
3G091GB06
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4G169FB15
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】
本開示は、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターに関し、ここで、このパティキュレートフィルターが、少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める領域における白金族金属の平均担持量が、パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.1~10倍である。本発明によるパティキュレートフィルターは、半径方向に集中分布したPGMを有し、優れたHC、NOx、CO変換及び低背圧を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターであって、前記パティキュレートフィルターが少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める領域における白金族金属の平均担持量が、前記パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.1~10倍である、パティキュレートフィルター。
【請求項2】
中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域における白金族金属の前記平均担持量が、前記パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.2~8倍、好ましくは1.25~6倍である、請求項1に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項3】
中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、請求項1又は2に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項4】
中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域が、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である、請求項1から3のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項5】
前記パティキュレートフィルターが、少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて12~35質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて25%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項6】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、12.5~30質量%、好ましくは13~28質量%、特に13~25質量%の範囲である、請求項5に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項7】
前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、15%以下、好ましくは5%以下である、請求項5又は6に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項8】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、27~60質量%、好ましくは28~55質量%、より好ましくは29~50質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項9】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、34~80質量%、好ましくは36~75質量%、より好ましくは37~70質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項10】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、47~85質量%、好ましくは49~80質量%、より好ましくは50~78質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項11】
前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域が、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である、請求項5から10のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項12】
前記パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域が、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である、請求項9に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項13】
前記パティキュレートフィルターの白金族金属の平均担持量が、2~50g/ft
3、好ましくは3~25g/ft
3、より好ましくは4~20g/ft
3の範囲である、請求項1から12のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項14】
前記パティキュレートフィルターの触媒材料層の平均担持量が、0.2~3g/in
3、好ましくは0.3~2.5g/in
3、より好ましくは0.5~2g/in
3の範囲である、請求項1から13のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項15】
前記触媒材料層が少なくとも1つの耐火性金属酸化物をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項16】
i)フィルター基材を提供する工程と、
ii)少なくとも1種の白金族金属を含有するスラリーで、前記フィルター基材をコーティングする工程と、
iii)工程ii)で得られたフィルター基材を、少なくとも1種の白金族金属を含有する溶液又は分散液でさらにコーティングする工程と
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルターを調製する方法。
【請求項17】
前記スラリーが、少なくとも1つの耐火性金属酸化物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程iii)において適用される白金族金属の量が、工程ii)において適用される白金族金属の量の50~120質量%、好ましくは60~100質量%である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
工程ii)及び工程iii)が、コーティング後にコーティングされたフィルター基材を焼成する工程をさらに含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
内燃機関からの排気ガスを、請求項1から15のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルターに流すことを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【請求項21】
前記排気ガスが、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターに関し、ここで、このパティキュレートフィルターが半径方向に集中分布した白金族金属を有する。本発明は、このパティキュレートフィルターの調製方法、及び内燃機関からの排気ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排気ガスは、窒素、水蒸気、二酸化炭素を比較的多く含有しているが、不完全燃焼からの一酸化炭素、燃え残った燃料からの炭化水素、過度燃焼の温度からの窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(PM)などの有害及び/又は有毒の物質も比較的少量で含有する。
【0003】
2016年12月23日、中華人民共和国環境保護部(MEP)は、中国5号排出ガス基準よりもはるかに厳しい、小型車両からの排出ガスに関する中国6号排出ガス基準値及び測定方法(GB18352.6-2016;以下、中国6号とも呼ばれる)の最終法規を公表した。特に、中国6b号では、粒子状物質(PM)の規制が組み込まれ、オンボード診断(OBD)の要件が採用されている。さらに、乗用車等の国際調和試験サイクル(WLTC;World Harmonized Light-duty Vehicle Test Cycle)の下で車両をテストすることが実施されている。WLTCでは、急加速及び長時間の高速走行要件が含まれており、高い出力が求められるため、リッチ(ラムダ<1)又はディープリッチ(ラムダ<0.8)の条件下で長時間(例えば5秒超)「オープンループ」状態(燃料パドルを全開にする必要があるため)になる可能性があった。
【0004】
しかし、パティキュレートの規制が厳しくなるにつれ、排気管の過度な混雑及び背圧の上昇を招くことなく、パティキュレートを捕捉する機能を提供することが求められている。さらに、HC、NOx、COの変換も引き続き注目されている。一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物の排出量を低減するために、ウォッシュコートの担持量を多くして白金族金属の担持量を増やすことが考えられるが、これはフィルター全体の圧力損失を増大させる。
【0005】
国民及び政府は移動発生源から排出される炭化水素、NOx、一酸化炭素及び粒子状物質について真剣に懸念しているため、背圧を過度に高めることなく、優れたHC、NOx、CO変換を提供するパティキュレートフィルターを提供することが引き続き求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れたHC、NOx、COの変換及び低背圧を示す、半径方向に集中分布した白金族金属を有するパティキュレートフィルターを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターを調製する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、内燃機関からの排気ガスを処理するための方法を提供することであり、この方法は、内燃機関からの排気ガスを本発明によるパティキュレートフィルターに流すことを含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚いたことには、上記課題は、以下の実施形態により達成できることが見出された:
1.内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターであって、前記パティキュレートフィルターが少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める領域における白金族金属の平均担持量が、前記パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.1~10倍である、パティキュレートフィルター。
【0010】
2.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域における白金族金属の前記平均担持量が、前記パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.2~8倍、好ましくは1.25~6倍である、項目1に記載のパティキュレートフィルター。
【0011】
3.中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、項目1又は2に記載のパティキュレートフィルター。
【0012】
4.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域が、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である、項目1から3のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0013】
5.前記パティキュレートフィルターが、少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて12~35質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて25%以下である、項目1から4のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0014】
6.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、12.5~30質量%、好ましくは13~28質量%、特に13~25質量%の範囲である、項目5に記載のパティキュレートフィルター。
【0015】
7.前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、15%以下、好ましくは5%以下である、項目5又は6に記載のパティキュレートフィルター。
【0016】
8.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、27~60質量%、好ましくは28~55質量%、より好ましくは29~50質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、項目1から7のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0017】
9.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、34~80質量%、好ましくは36~75質量%、より好ましくは37~70質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、項目1から8のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0018】
10.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域における白金族金属の量が、前記パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、47~85質量%、好ましくは49~80質量%、より好ましくは50~78質量%の範囲であり、
前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める前記領域と、前記パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、前記触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である、項目1から9のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0019】
11.前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域が、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である、項目5から10のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0020】
12.前記パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域が、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である、項目9に記載のパティキュレートフィルター。
【0021】
13.前記パティキュレートフィルターの白金族金属の平均担持量が、2~50g/ft3、好ましくは3~25g/ft3、より好ましくは4~20g/ft3の範囲である、項目1から12のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0022】
14.前記パティキュレートフィルターの触媒材料層の平均担持量が、0.2~3g/in3、好ましくは0.3~2.5g/in3、より好ましくは0.5~2g/in3の範囲である、項目1から13のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0023】
15.前記触媒材料層が少なくとも1つの耐火性金属酸化物をさらに含む、項目1から14のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0024】
16.項目1から15のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルターを調製する方法であって、
i)フィルター基材を提供する工程と、
ii)少なくとも1種の白金族金属を含有するスラリーで、前記フィルター基材をコーティングする工程と、
iii)工程ii)で得られたフィルター基材を、少なくとも1種の白金族金属を含有する溶液又は分散液でさらにコーティングする工程と
を含む、方法。
【0025】
17.前記スラリーが、少なくとも1つの耐火性金属酸化物を含む、項目16に記載の方法。
【0026】
18.工程iii)において適用される白金族金属の量が、工程ii)において適用される白金族金属の量の50~120質量%、好ましくは60~100質量%である、項目16又は17に記載の方法。
【0027】
19.工程ii)及び工程iii)が、コーティング後にコーティングされたフィルター基材を焼成する工程をさらに含む、項目16から18のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
20.内燃機関からの排気ガスを、項目1から15のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルターに流すことを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【0029】
21.前記排気ガスが、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む、項目20に記載の方法。
【0030】
本発明によるパティキュレートフィルターは、半径方向で集中分布した白金族金属を有し、優れたHC、NOx、COの変換及び低い背圧を示す。さらに、本発明による方法は、本発明によるパティキュレートフィルターを、非常に簡単かつ効率的に製造することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、WLTCに基づいて試験した、近位連結触媒(CCC)として試験した本発明による触媒パティキュレートフィルター(実施例2、3及び4)、及び先行技術のパティキュレートフィルター(実施例1-比較用)のガス放出結果のプロットを示す。
【
図2】
図2は、WLTCのフェーズ1に基づいて試験した、近位連結触媒(CCC)として試験した本発明による触媒パティキュレートフィルター(実施例2、3及び4)、及び先行技術のパティキュレートフィルター(実施例1-比較用)のガス放出結果のプロットを示す。
【
図3】
図3は、WLTCに基づいて試験した、床下触媒(UFC)としてCCC+UFCシステムで試験した本発明による触媒パティキュレートフィルター(実施例2、3及び4)、及び先行技術のパティキュレートフィルター(実施例1-比較用)のガス放出結果のプロットを示す。
【
図4】
図4は、WLTCに基づいて試験した、近位連結触媒として試験した本発明による触媒パティキュレートフィルター(実施例2及び5)、及び先行技術のパティキュレートフィルター(実施例1及び6-比較用)のガス放出結果のプロットを示す。
【
図5】
図5は、WLTCのフェーズ1に基づいて試験した、近位連結触媒として試験した本発明による触媒パティキュレートフィルター(実施例2及び5)、及び先行技術のパティキュレートフィルター(実施例1及び6-比較用)のガス放出結果のプロットを示す。
【
図6】
図6は、600m
3/hの流速及び25℃で試験した触媒パティキュレートフィルターの背圧付加を示す(実施例2-本発明、実施例1及び7-比較用)。
【
図7】
図7は、実施例1~7のPGM分布レイアウトを示す。
【
図8】
図8(a)は、例示的なウォールフローフィルターを示す。
図8(b)は、例示的なウォールフローフィルターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の略語を使用している:
「HC」=炭化水素;
「NOx」=窒素酸化物;
「CO」=一酸化炭素;
「WLTC」=世界調和小型自動車試験サイクル;
「PM」=粒子状物質;
「CCC」=近位連結触媒(close-coupled catalyst);
「UFC」=床下触媒;
「OSC」=酸素貯蔵部品;
「PGM」=白金族金属;
「WFF」=ウォールフローフィルター;
「SCR触媒」=選択的触媒還元触媒;
「DOC」=ディーゼル酸化触媒;
「DEC」=ディーゼル発熱触媒;
「TWC触媒」=三元変換触媒。
【0033】
未定義の冠詞「a」、「an」、「the」は、当該冠詞に続く用語によって指定される種の1つ以上を意味する。
【0034】
本開示の文脈では、特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができる。
【0035】
本開示の文脈において、そのように定義された各態様は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0036】
本明細書で使用される「触媒」又は「触媒組成物」という用語は、反応を促進する材料を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンは上流にあり、テールパイプ及びフィルターなどの汚染軽減物品はエンジンから下流にある。
【0038】
「排気ガス」、「排気ストリーム」、「エンジン排気ストリーム」、「排気ガスストリーム」などの用語は、固体又は液体の粒子状物質を含有してもよい、流れるエンジン排気ガスの任意の組合せを指す。ストリームは、ガス状成分を含み、例えば、リーンバーンエンジンの排気であり、液体滴、固体微粒子などの特定の非ガス状成分を含有してもよい。リーンバーンエンジンの排気ストリームは、典型的には、燃焼生成物、炭化水素、不完全燃焼の生成物、窒素酸化物、可燃性及び/又は炭素質粒子状物質(すす)、及び未反応の酸素及び/又は窒素をさらに含んでいる。
【0039】
本明細書で使用される「ウォッシュコート」という用語は、基材に適用される触媒又は他の材料の薄い付着性コーティングという、当該技術分野における通常の意味を有する。
【0040】
ウォッシュコートは、液体媒体中に一定の固形分(例えば30~90質量%)の粒子を含有するスラリーを調製し、これを基材上に適用して乾燥させることでウォッシュコート層を提供することにより形成される。
【0041】
触媒は、「新鮮」であり、それは、長期間にわたって熱又は熱応力にさらされていないことを意味する。また、「新鮮」は、触媒が最近調製されたもので、排気ガスにさらされていないことを意味する場合もある。同様に、「エージング」触媒は、新鮮ではなく、排気ガス及び高温(500℃超)に長時間(3時間超)さらされたものである。
【0042】
触媒材料又は触媒ウォッシュコートにおける「担体」とは、沈殿、会合、分散、含浸、又は他の適切な方法によって、金属(例えば、PGM)、安定剤、促進剤、バインダーなどを受け取る材料を指す。例示的な担体には、本明細書で以下に説明するような耐火性金属酸化物担体が含まれる。
【0043】
「耐火性金属酸化物担体」は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化タングステン、及び希土類金属酸化物希土類金属酸化物、卑金属酸化物、及びそれらの物理的混合物、化学的組み合わせ及び/又は原子的にドープした組み合わせ、及び活性化アルミナなどの高表面積化合物又は活性化合物を含む金属酸化物である。金属酸化物の例示的な組み合わせには、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアアルミナ、及びアルミナ-セリアが含まれる。例示的なアルミナには、大孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、及びデルタ/シータアルミナが含まれる。例示的なプロセスにおいて出発材料として使用される有用な市販のアルミナには、活性化アルミナ、例えば高嵩密度ガンマ-アルミナ、低嵩密度又は中嵩密度の大孔ガンマ-アルミナ、及び低嵩密度の大孔ベーマイト及びガンマ-アルミナが含まれる。このような材料は、一般に、得られる触媒に耐久性を与えるものと考えられている。
【0044】
「高表面積耐火性金属酸化物担体」とは、特に、20Åより大きい細孔及び広い細孔分布を有する担体粒子を指す。高表面積耐火性金属酸化物担体、例えば、「ガンマ-アルミナ」又は「活性化アルミナ」とも呼ばれるアルミナ担体材料は、通常、1グラムあたり60平方メートル(「m2/g」)を超え、しばしば最大約200m2/g又はそれ以上の新鮮材料のBET表面積を示す。このような活性化アルミナは、通常、アルミナのガンマ相とデルタ相の混合物であるが、相当量のエタ相、カッパ相及びシータ相も含有してもよい。
【0045】
「NOx」という用語は、窒素酸化物化合物、例えばNO又はNO2を指す。
【0046】
本明細書で使用される「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価の状態を有し、還元条件下で一酸化炭素(CO)及び/又は水素などの還元剤と積極的に反応し、次に酸化条件下で酸素又は窒素酸化物などの酸化剤と反応することができるエンティティを指す。酸素貯蔵成分の例には、希土類酸化物、特にセリア、ランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ニオビア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、及びこれらの混合物が含まれる。
【0047】
白金族金属(PGM)成分とは、PGM(Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt及び/又はAu)を含む任意の成分を指す。例えば、PGMは、ゼロ価の金属形態であってもよいか、又はPGMは、酸化物形態であってもよい。「PGM成分」への言及は、任意の原子価状態でのPGMの存在を可能にする。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」等の用語は、触媒の焼成又は使用により分解又はそうでなければ触媒活性形態、通常金属又は金属酸化物に変換するそれぞれの白金族金属の化合物、錯体等を指す。
【0048】
本発明の一態様は、内燃機関からの排ガスを処理するためのパティキュレートフィルターに関し、ここで、前記パティキュレートフィルターが少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める領域における白金族金属の平均担持量が、前記パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.1~10倍である。
【0049】
本発明の文脈では、「中心軸全体の周囲である領域」とは、当該領域がフィルターと同じ中心軸を共有することを意味する。当業者であれば、前記領域がパティキュレートフィルターの中心領域であることを理解できる。Rの半径及びLの長さを有する円柱(1)の形態のパティキュレートフィルターを例とすれば、「パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20体積%を占める領域」という表現は、円柱(1)と同じ中心軸を共有し、0.45Rの半径及びLの長さを有する小さな円柱を意味する;「パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の70体積%を占める領域」という表現は、円柱(1)と同じ中心軸を共有し、0.84Rの半径及びLの長さを有する小さな円柱を意味する。
【0050】
本発明によれば、領域における「PGMの平均担持量」は、以下のように計算することができる:領域におけるPGMの平均担持量=当該領域におけるPGMの量/当該領域の体積。例えば、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20体積%を占める領域の容積がm(ft3)、前記領域内のPGMの量がn(g)である場合、前記領域内のPGMの平均担持量=n/m(g/ft3)となる。
【0051】
白金族金属の量は、元素分析によって決定することができる。例えば、まず、定義されたサンプル領域における元素分析を通じて、白金族金属の半径方向の分布を決定することができる。次に、その領域内の白金族金属の量は、白金族金属の半径方向の分布に従って決定することができる。
【0052】
例えば、フィルターの定義された半径内のコアをフィルターから採取することができる。次に、Malvern Panalytical Axios FAST 波長分散型蛍光X線(XRF)分光計で、サンプルを分析することができる。
【0053】
パティキュレートフィルターは、典型的には、多孔質基材で形成される。多孔質基材は、例えば、セラミック材料、例えばコージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、及び/又はチタン酸アルミニウム、典型的にはコージェライト又は炭化ケイ素を含んでもよい。多孔質基材は、内燃機関の排気処理システムで典型的に使用されるタイプの多孔質基材であってもよい。
【0054】
内燃機関は、リーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、発電所、焼却炉、又はガソリンエンジンであってもよい。
【0055】
多孔質基材は、従来のハニカム構造を示すことができる。フィルターは、従来の「スルーフローフィルター」の形態をとることができる。あるいは、フィルターは、従来の「ウォールフローフィルター」(WFF)の形態をとることができる。このようなフィルターは、当技術分野で知られている。
【0056】
好ましくは、パティキュレートフィルターはウォールフローフィルターである。
図8(a)及び
図8(b)を参照すると、例示的なウォールフローフィルターが提供される。ウォールフローフィルターは、排気ガス(13)(粒子状物質を含む)の流れを、多孔質材料で形成された壁を強制的に通過させることによって機能する。
【0057】
典型的には、ウォールフローフィルターは、その間に長手方向を規定する第1面及び第2面を有する。使用時には、第1面及び第2面のうちの一方は、排気ガス(13)のための入口面となり、他方は、処理された排気ガス(14)のための出口面となる。従来のウォールフローフィルターは、長手方向に延びる第1及び第2の複数の流路(channels)を有する。第1の複数の流路(11)は、入口面(01)で開いており、出口面(02)で閉じている。第2の複数の流路(12)は、出口面(02)で開いており、入口面(01)で閉じている。流路は、好ましくは、流路間で一定の壁厚を提供するために、互いに平行である。その結果、入口面から複数の流路のうちの1つに入ったガスは、入口面(21)から出口面(22)へ流路壁(15)を通って他の複数の流路に拡散せずにモノリスを出ることができない。流路は、流路の開放端にシーラント材料を導入することで閉じられる。好ましくは、第1の複数の流路の数は、第2の複数の流路の数と等しく、それぞれの複数の流路は、モノリス全体に均等に分布している。好ましくは、長手方向に直交する面内において、ウォールフローフィルターは、1平方インチあたり100~500個、好ましくは200~400個の流路を有する。例えば、入口面(01)において、開放の流路及び閉鎖の流路の密度は、1平方インチあたり200~400個の流路である。流路は、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形の形状である断面を有することができる。
【0058】
好ましい実施形態では、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域における白金族金属の平均担持量は、パティキュレートフィルターの残りの部分における白金族金属の平均担持量の1.2~8倍、例えば1.25、1.3、1.35、1.4、1.5、1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8倍、好ましくは1.25~6倍である。
【0059】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの触媒材料層は、実質的に均一である。本発明によれば、半径方向に集中分布した白金族金属を有する実質的に均一な触媒材料層は、優れたHC、NOx、及びCOの変換及びより低い背圧を示すことができる。実質的に均一な触媒材料層においては、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、25%以下であることができる。例えば、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20体積%を占める領域における触媒材料層の平均担持量(平均担持量20体積%)が、パティキュレートフィルターの残りの部分における触媒材料層の平均担持量(平均担持量80体積%)より高い場合、その差は以下のように算出することができる:(平均担持量20体積%-平均担持量80体積%)×100%/平均担持量80体積%。
【0060】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下または10%以下、好ましくは5%以下または2%以下、特に1%以下であることができる。
【0061】
好ましい実施形態では、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0062】
中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域の例には、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の22~70体積%を占める領域、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25~70体積%を占める領域、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の30~70体積%を占める領域、例えばパティキュレートフィルターの総体積の35体積%、40体積%、45体積%、50体積%、55体積%、60体積%、65体積%、68体積%又は69体積%を占め領域を含むことができる。当業者は、本開示の文脈における、中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の20~70体積%を占める前記領域に関する任意の記述が、これらの例示的な領域に適用されることを理解できる。
【0063】
本発明の一態様は、内燃機関からの排ガスを処理するためのパティキュレートフィルターであり、ここで、このパティキュレートフィルターが、少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域における白金族金属の量が、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて12~35質量%の範囲であり、
パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて25%以下である。
【0064】
本発明によれば、パティキュレートフィルターは、少なくとも1種の白金族金属を含む触媒材料層を含み、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域における白金族金属の量は、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、12~35質量%の範囲、例えば12質量%、12.2質量%、12.5質量%、12.8質量%、13質量%、13.5質量%、14質量%、15質量%、18質量%、20質量%、25質量%、30質量%又は35質量%、好ましくは12.5~30質量%、より好ましくは13~28質量%、特に13~25質量%である。上述のように、特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができ、例えば13~35質量%又は18~25質量%のような新しい範囲が挙げられる。
【0065】
本発明の文脈では、「中心軸全体の周囲である領域」とは、当該領域がフィルターと同じ中心軸を共有することを意味する。当業者であれば、前記領域がパティキュレートフィルターの中心領域であることを理解できる。Rの半径及びLの長さを有する円柱(1)の形態のパティキュレートフィルターを例とすれば、「パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域」という表現は、円柱(1)と同じ中心軸を共有し、1/3Rの半径及びLの長さを有する小さな円柱を意味する。また、Aの側面の長さを有する立方体(1)のパティキュレートフィルターにおいて、「パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域」という表現は、立方体(1)と同じ中心軸を共有する小さな立方体を意味し、ここで、この立方体の長さと幅は共に1/3Aであり、立方体の高さがAである。
【0066】
本発明によれば、本発明のパティキュレートフィルターは、実質的に均一な触媒材料層を有する。パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルタの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて25%以下である。これに関して、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域における触媒材料層の平均担持量(平均担持量11.1体積%)が、パティキュレートフィルターの残りの部分における触媒材料層の平均担持量(平均担持量88.9体積%)より高い場合、その差は以下のように算出することができる:(平均担持量11.1体積%-平均担持量88.9体積%)×100%/平均担持量88.9体積%。
【0067】
パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下又は10%以下、好ましくは5%以下又は2%以下、特に1%以下であることができる。
【0068】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、例えば入口サブ領域、又は中間サブ領域、又は出口サブ領域、又は入口サブ領域及び中間サブ領域、又は中間サブ領域及び出口サブ領域、又は入口サブ領域及び出口サブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0069】
好ましい実施形態によれば、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域における白金族金属の量は、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、27~60質量%の範囲、例えば28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、38質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%又は60質量%、好ましくは28~55質量%、より好ましくは29~50質量%であり、
パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が25%以下である。
【0070】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下又は10%以下、好ましくは5%以下又は2%以下、特に1%以下であることができる。
【0071】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、例えば入口サブ領域、又は中間サブ領域、又は出口サブ領域、又は入口サブ領域及び中間サブ領域、又は中間サブ領域及び出口サブ領域、又は入口サブ領域及び出口サブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0072】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める領域における白金族金属の量は、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、34~80質量%の範囲、例えば35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、41質量%、42質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、好ましくは36~75質量%、より好ましくは37~70質量%又は38~68質量%であり、
パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が25%以下である。
【0073】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下又は10%以下、好ましくは5%以下又は2%以下、特に1%以下であることができる。
【0074】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの総体積の32.3体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、例えば入口サブ領域、又は中間サブ領域、又は出口サブ領域、又は入口サブ領域及び中間サブ領域、又は中間サブ領域及び出口サブ領域、又は入口サブ領域及び出口サブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0075】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域における白金族金属の量は、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、47~85質量%の範囲、例えば48質量%、49質量%、50質量%、51質量%、52質量%、53質量%、54質量%、55質量%、56質量%、57質量%、58質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%又は80質量%、好ましくは49~80質量%、より好ましくは50~78質量%又は51~75質量%であり、
パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が25%以下である。
【0076】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下又は10%以下、好ましくは5%以下又は2%以下、特に1%以下であることができる。
【0077】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、例えば入口サブ領域、又は中間サブ領域、又は出口サブ領域、又は入口サブ領域及び中間サブ領域、又は中間サブ領域及び出口サブ領域、又は入口サブ領域及び出口サブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0078】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の56.3体積%を占める領域における白金族金属の量は、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、60~90質量%の範囲、例えば61質量%、62質量%、63質量%、64質量%、65質量%、66質量%、67質量%、68質量%、69質量%、70質量%、72質量%、75質量%、80質量%、82質量%、85質量%又は88質量%、好ましくは62~85質量%、より好ましくは64~80質量%であり、
パティキュレートフィルターの総体積の56.3体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が25%以下である。
【0079】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの総体積の56.3体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下又は10%以下、好ましくは5%以下又は2%以下、特に1%以下であることができる。
【0080】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの総体積の56.3体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、例えば入口サブ領域、又は中間サブ領域、又は出口サブ領域、又は入口サブ領域及び中間サブ領域、又は中間サブ領域及び出口サブ領域、又は入口サブ領域及び出口サブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0081】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の69.4体積%を占める領域における白金族金属の量は、パティキュレートフィルターにおける白金族金属の総質量に基づいて、75~95質量%の範囲、例えば78質量%、80質量%、82質量%、85質量%、88質量%、90質量%又は92質量%、好ましくは78~90質量%、より好ましくは80~88質量%であり、
パティキュレートフィルターの総体積の69.4体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差が25%以下である。
【0082】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの総体積の69.4体積%を占める前記領域と、パティキュレートフィルターの残りの部分との間の触媒材料層の平均担持量の差は、触媒材料層の平均担持量のより低い方に基づいて、20%以下、15%以下又は10%以下、好ましくは5%以下又は2%以下、特に1%以下であることができる。
【0083】
好ましい実施形態では、パティキュレートフィルターの総体積の69.4体積%を占める前記領域は、中心軸全体に沿って3つのサブ領域、すなわち、入口サブ領域、中間サブ領域及び出口サブ領域に均等に分割され、ここで、1つ又は2つのサブ領域、例えば入口サブ領域、又は中間サブ領域、又は出口サブ領域、又は入口サブ領域及び中間サブ領域、又は中間サブ領域及び出口サブ領域、又は入口サブ領域及び出口サブ領域、好ましくは入口サブ領域及び出口サブ領域における白金族金属の平均担持量が、残りのサブ領域(単数又は複数)における白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0084】
パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%、25体積%、44.4体積%、56.3体積%、69.4体積%及び20~70体積%を占める前記領域について前述した3つのサブ領域は、3つのサブ領域としてみなされ、白金族金属の異なる平均担持量を有することができるが、物理的には分割されていない。2つのサブ領域におけるPGMの平均担持量が残りのサブ領域における平均担持量よりも高い場合、前記2つのサブ領域における個々のPGMの平均担持量は、同じでも異なってもよい。例えば、3つのサブ領域におけるPGMの平均担持量はそれぞれa、b、cであり、a>b>c(すなわち、2つのサブ領域における個々のPGMの平均担持量は異なり、残りのサブ領域におけるPGMの平均担持量よりも高い)である場合、上記の「倍」は(a+b)/2cとして算出することができる。
【0085】
好ましい実施形態では、触媒材料層、特にパティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%、25体積%、44.4体積%、56.3体積%、69.4体積%及び20~70体積%を占める前記領域における触媒材料層は、第1ゾーン、第2ゾーン及び第3ゾーンを含み;
第1ゾーンが、入口の軸方向端から始まり、フィルター全長(L)の10~45%にわたって延びる第1長さ(L1)を有し;第3ゾーンが、出口の軸方向端から始まり、フィルター全長(L)の10~45%にわたって延びる第3長さ(L3)を有し;第2ゾーンが第1ゾーンの軸方向端で始まり、第3ゾーンの軸方向始端で終わり;
ゾーン体積あたりの白金族金属の質量として計算して、第1ゾーンにおけるPGMの平均担持量が、第2ゾーンにおけるPGMの平均担持量よりも高く、第3ゾーンにおけるPGMの平均担持量が、第2ゾーンにおけるPGMの平均担持量よりも高い。
【0086】
好ましい実施形態では、第1ゾーン及び/又は第3ゾーンにおける白金族金属の平均担持量は、第2ゾーンにおける白金族金属の平均担持量の1.5~15倍、例えば1.8、2.0、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14倍、好ましくは1.8~10倍、より好ましくは2~7倍である。
【0087】
パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%、25体積%、44.4体積%、56.3体積%、69.4体積%及び20~70体積%を占める前記領域におけるPGMの平均担持量は、8~60g/ft3の範囲、例えば9g/ft3、10g/ft3、11g/ft3、12g/ft3、13g/ft3、14g/ft3、15g/ft3、18g/ft3、20g/ft3、25g/ft3、30g/ft3、32g/ft3、35g/ft3、40g/ft3、45g/ft3、50g/ft3又は55g/ft3、好ましくは9~40g/ft3、より好ましくは10~30g/ft3であることができる。パティキュレートフィルターの残りの部分におけるPGMの平均担持量は、2~30g/ft3の範囲、例えば3g/ft3、4g/ft3、5g/ft3、6g/ft3、8g/ft3、10g/ft3、12g/ft3、14g/ft3、16g/ft3、18g/ft3、20g/ft3、22g/ft3、25g/ft3、28g/ft3、好ましくは3~18g/ft3、より好ましくは4~15g/ft3であることができる。
【0088】
本発明によれば、パティキュレートフィルターのPGMの平均担持量は、2~50g/ft3の範囲、例えば3g/ft3、4g/ft3、5g/ft3、6g/ft3、7g/ft3、8g/ft3、9g/ft3、10g/ft3、12g/ft3、15g/ft3、18g/ft3、20g/ft3、25g/ft3、30g/ft3、35g/ft3、40g/ft3又は45g/ft3、好ましくは3~25g/ft3、より好ましくは4~20g/ft3又は4~15g/ft3であることができる。
【0089】
上述のように、白金族金属(PGM)は、Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt及びAuから選択することができる。好ましい実施形態では、PGMは、Pt、Rh及びPdから、好ましくはRh及びPdから選択され、より好ましくはRhとPdの混合物である。好ましい実施形態では、触媒材料層は、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1のモル比でのパラジウムとロジウムの混合物を含む。実施形態では、触媒材料層は、Ptを含んでいない。
【0090】
本発明によれば、パティキュレートフィルターの触媒材料層の平均担持量は、0.2~3g/in3の範囲、例えば0.3g/in3、0.5g/in3、0.8g/in3、1.0g/in3、1.2g/in3、1.5g/in3、1.8g/in3、2g/in3、2.5g/in3又は3g/in3、好ましくは0.3~2.5g/in3又は0.5~2g/in3、より好ましくは0.8~2g/in3又は0.8~1.5g/in3であることができる。
【0091】
本発明によれば、触媒材料層は、少なくとも1つの耐火性金属酸化物をさらに含む。耐火性金属酸化物は、PGMの担体として使用することができる。耐火性金属酸化物の詳細は、上記の「耐火性金属酸化物担体」についての説明を参照することができる。実施形態において、耐火性金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0092】
好ましい実施形態において、触媒材料層は、少なくとも1つの酸素貯蔵成分(OSC)をさらに含むことができる。耐火性金属酸化物の詳細については、「酸素貯蔵成分」についての上記説明を参照することができる。
【0093】
好ましい実施形態において、触媒材料層は、少なくとも1つのドーパントをさらに含むことができる。本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、ドーパントを意図的に添加していない触媒材料層と比較して、触媒材料層の活性を高めるために意図的に添加される成分を指す。本開示において、例示的なドーパントは、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム、バリウム、セリウム、ニオブ及びこれらの組み合わせなどの金属の酸化物である。
【0094】
触媒材料層は、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、AMOx触媒、NOxトラップ、NOx吸収剤触媒、炭化水素トラップ触媒のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0095】
本明細書で使用される「選択的触媒還元」及び「SCR」という用語は、窒素還元剤を使用して窒素の酸化物を窒素(N2)に還元する触媒プロセスを意味する。SCR触媒は、以下から選択される少なくとも1つの材料を含んでもよい:MOR;USY;ZSM-5;ZSM-20;ベータ-ゼオライト;CHA;LEV;AEI;AFX;FER;SAPO;ALPO;バナジウム;酸化バナジウム;酸化チタン;酸化タングステン;酸化モリブデン;酸化セリウム;酸化ジルコニウム;酸化ニオブ;鉄;酸化鉄;酸化マンガン;銅;モリブデン;タングステン;及びこれらの混合物。SCR触媒の活性成分のための担持構造は、任意の好適なゼオライト、ゼオタイプ、又は非ゼオライト化合物を含んでもよい。あるいは、SCR触媒は、活性成分として、金属、金属酸化物、又は混合酸化物を含んでもよい。遷移金属を担持したゼオライト(例えば、銅-チャバザイト、又はCu-CHA、及び銅-レビン、又はCu-LEV、及びFe-ベータ)及びゼオタイプ(例えば、銅-SAPO、又はCu-SAPO)は、好ましい。
【0096】
本明細書で使用される「ディーゼル酸化触媒」及び「DOC」という用語は、当技術分野で周知のディーゼル酸化触媒を指す。ディーゼル酸化触媒は、COをCO2に、気相HC及びディーゼル微粒子の有機画分(可溶性有機画分)をCO2及びH2Oに酸化させるように設計されている。典型的なディーゼル酸化触媒は、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア、シリカ-チタニア、ゼオライトなどの高表面積の無機酸化物担体上に白金、及び任意にパラジウムを含む。本明細書で使用すされる用語は、発熱を生じるDEC(Diesel Exotherm Catalyst、ディーゼル発熱触媒)を含む。
【0097】
本明細書で使用される「アンモニア酸化触媒」及び「AMOx」という用語は、排気ガス流からアンモニアを除去するのに有効である、少なくとも担持された貴金属成分、例えば1種以上の白金族金属(PGM)を含む触媒を指す。具体的な実施形態において、貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、銀又は金を含んでもよい。具体的な実施形態では、貴金属成分は、貴金属の物理的混合物、又は化学的若しくは原子的にドープされた組み合わせを含む。
【0098】
貴金属成分は、典型的には、高表面積の耐火性メトアル酸化物担体上に堆積される。好適な高表面積の耐火性金属酸化物の例には、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化タングステン、及び希土類金属酸化物希土類金属酸化物、卑金属酸化物、及びそれらの物理的混合物、化学結合及び/又は原子的にドープされた組み合わせが含まれる。
【0099】
本明細書で使用される「NOx吸着触媒」及び「NOxトラップ(リーンNOxトラップとも呼ばれ、略称LNT)」という用語は、吸着によってリーンバーン内燃機関からの窒素酸化物(NO及びNO2)排出を低減するための触媒を指す。典型的なNOxトラップは、内燃機関からの排気ガスの浄化に使用されているアルミナ担体に分散させた白金などの貴金属触媒と組み合わせた、アルカリ土類金属酸化物、例えばMg、Ca、Sr及びBaの酸化物、アルカリ金属酸化物、例えばLi、Na、K、Rb及びCsの酸化物、希土類金属酸化物、例えばCe、La、Pr及びNdの酸化物を含む。NOxの貯蔵には、リーンエンジン運転時に硝酸塩を形成し、リッチ条件下で比較的容易に硝酸塩を放出することから、通常バリアが好ましい。
【0100】
本明細書で使用される「炭化水素トラップ」という用語は、低温運転期間中に炭化水素を捕捉し、高温運転期間中に酸化のためにそれらを放出するための触媒を指す。炭化水素トラップは、様々な炭化水素(HC)を吸着するための1種以上の炭化水素(HC)貯蔵成分によって提供されてもよい。典型的には、貴金属及び材料との最小限の相互作用を有する炭化水素貯蔵材料、例えば、ゼオライト又はゼオライト様材料(zeolite-like material)のような微多孔質材料を使用することができる。好ましくは、炭化水素貯蔵材料は、ゼオライトである。ベータゼオライトは、ベータゼオライトの大きな細孔開口により、ディーゼル由来の炭化水素分子を効果的に捕捉することができるので、特に好ましい。コールドスタート運転におけるHC貯蔵を高めるために、ベータゼオライトに加えて、他のゼオライト、例えばフォージャサイト、チャバザイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM-5ゼオライト、オフレタイトを使用することができる。
【0101】
本発明の別の態様は、
i)フィルター基材を提供する工程と、
ii)少なくとも1種の白金族金属を含有するスラリーで前記フィルター基材をコーティングする工程と、
iii)工程ii)で得られたフィルター基材を、少なくとも1種の白金族金属を含有する溶液又は分散液でさらにコーティングする工程と
を含む、パティキュレートフィルターを調製するための方法に関する。
【0102】
工程ii)におけるスラリーは、液体媒体(例えば水)を、白金族金属(PGM)成分及び耐火性金属酸化物、及び存在する場合にはOSC及びドーパントと混合することによって形成することができる。好ましい実施形態では、PGM成分(例えば、PGM塩の溶液の形態)は、湿潤粉末を得るために、例えば、初期湿潤技術によって耐火性金属酸化物担体に(例えば、粉末として)含浸させることができる。金属成分を担体粒子に含浸又は堆積させるために使用される液体媒体が、金属又はその化合物又はその錯体、又は触媒組成物中に存在し得る他の成分と悪反応しない、加熱及び/又は真空の適用時に揮発又は分解によって除去できる限り、水溶性のPGM化合物又は塩、又はPGM成分の水分散性化合物又は錯体を使用することができる。一般に、経済性及び環境面の両方の観点から、PGM成分の可溶性化合物、塩、又は錯体の水溶液が有利に利用される。一部の実施形態では、PGM成分は、共含浸法によって担体上に担持される。共含浸法は、当業者に知られており、例えば、関連する教示に関して参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,943,550号明細書に開示されている。湿潤粉末は、水のような液体媒体と混合して、スラリーを形成することができる。
【0103】
粒子の混合及び均質な材料の形成を促進するために、スラリーを粉砕することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固形分は、例えば、約20~60質量%、より特に約30~40質量%であってもよい。一実施形態では、粉砕後スラリーは、約1~約30ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。D90は、粒子の90%がより小さい粒径を有する粒径として定義される。
【0104】
スラリーでコーティングした後、フィルター基材は一般に焼成される。例示的な焼成プロセスは、空気中、約400~約700℃の温度で、約10分~約3時間の熱処理を含む。焼成工程の間、PGM成分は、金属又はその金属酸化物の触媒的に活性な形態に変換される。上記プロセスは、PGMの所望のレベルに到達するために必要に応じて繰り返すことができる。
【0105】
本発明による方法の工程iii)において、工程ii)で得られたフィルター基材は、少なくとも1種の白金族金属を含有する溶液又は分散液でコーティングされる。この溶液又は分散液は、耐火性金属酸化物を含んでいない。通常、溶液又は分散液は、PGM成分及び水のような液体媒体のみを含む。
【0106】
PGM溶液の例には、アミン錯体溶液又はPGMの硝酸塩(例えば硝酸白金、硝酸パラジウム、及び硝酸ロジウム)の溶液を含むことができる。
【0107】
少なくとも1種のPGMを含有する溶液又は分散液でコーティングしても、溶液又は分散液が耐火性金属酸化物を含まないため、触媒材料層の平均担持量(厚さ)を実質的に増加させることはない。
【0108】
少なくとも1種のPGMを含有する溶液又は分散液によるコーティングは、フィルター基材の中央領域内、パティキュレートフィルター基材の中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルター基材の総体積の20~70体積%、好ましくはパティキュレートフィルター基材の総体積の22~70体積%、より好ましくは25~70体積%、又は30~70体積%、例えば35体積%、40体積%、45体積%、50体積%、55体積%、60体積%、65体積%、68体積%又は69体積%を占める中央領域内で行われる。
【0109】
具体的な実施形態では、PGM溶液又は分散液によるコーティングは、以下のように行うことができる:PGM溶液又は分散液を2つの部分に分割する。溶液又は分散液の第1部分は、フィルター基材の軸方向の長さの25~75%、好ましくは40~60%に延びるように、片側からフィルター基材に適用され、その後フィルター基材が乾燥される。溶液又は分散液の第2部分は、フィルター基材の残りの軸方向長さに延びるように、別の側からフィルター基材に適用され、その後、フィルター基材は再び乾燥される。当業者であれば、各部分の質量は、コーティングされる軸方向の長さに比例することを理解できる。
【0110】
好ましい実施形態では、PGM溶液又は分散液は、パティキュレートフィルター基材の軸方向の長さ全体の一部、例えば軸方向の長さ全体の10~90%、例えば軸方向の長さ全体の20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%、好ましくは20~80%又は30~70%に延びる(覆う)ようにのみ適用される。好ましい実施形態では、PGM溶液又は分散液は、入口側から又は出口側から前記軸方向の長さの割合に延びるように適用される。より好ましい実施形態では、PGM溶液又は分散液は、入口側及び出口側の両方から前記軸方向長さの割合に延びるように適用される。PGM溶液又は分散液によって覆われる入口側の軸方向長さと出口側の軸方向長さとの比は、1:5~5:1の範囲、例えば1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1又は4:1、好ましくは1:3~3:1であることができる。
【0111】
少なくとも1種のPGMを含有する溶液又は分散液でコーティングした後、フィルター基材は一般に焼成される。例示的な焼成プロセスは、空気中、約400~約700℃の温度で約10分~約3時間の熱処理を含む。焼成工程の間、PGM成分は、金属又はその金属酸化物の触媒的に活性な形態に変換される。上記プロセスは、PGMの所望のレベルに到達するために必要に応じて繰り返すことができる。
【0112】
好ましい実施形態では、工程iii)で適用される白金族金属の量は、工程ii)で適用される白金族金属の量の50~120質量%、例えば工程ii)で適用される白金族金属の量の60質量%、70質量%、80質量%、90質量%、100質量%又は110質量%、好ましくは工程ii)で適用される白金族金属の量の60~100質量%又は60~95質量%である。
【0113】
本発明のさらなる態様は、内燃機関からの排気ガスを処理する方法に関し、この方法は、エンジンからの排気ガスを、本発明によるパティキュレートフィルター又は本発明による方法によって調製されたパティキュレートフィルターに流すことを含む。排気ガスは、未燃炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む。
【実施例】
【0114】
以下の実施例によって本発明をさらに説明されるが、これらの実施例は本発明を説明するために記載されたものであり、その限定として解釈されるものでない。特に明記しない限り、すべての部及びパーセントは質量によるものであり、すべての質量パーセントは、特に明記しない限り、水分を除いた意味の乾燥基準で表される。各実施例において、フィルター基材はコージェライト製であった。
【0115】
実施例1-比較用
実施例1で調製したパティキュレートフィルターは、PGM担持量が11g/ft3(Pd/Rh=3/8)のPd/Rh触媒層を有する。実施例1のパティキュレートフィルターは、ウォールフローフィルター基材の入口側から単一コートを使用することによって調製した。ウォールフローフィルター基材は、132mm(D)*127mm(L)のサイズ、1.74Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、63%の気孔率、及び17μmの水銀圧入測定による平均孔径を有していた。
【0116】
基材上にコーティングされたPd/Rh触媒層は、先行技術の三元変換(TWC)触媒複合体を含有する。この触媒層は、以下のように調製した:
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体にプラネタリーミキサーで含浸させ、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成させた。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーで耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させ、湿潤状態を達成しながら湿潤粉末を形成させた。上記の粉末を水中に添加し、次いで水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することにより、水性スラリーを形成した。次いで、このスラリーを、90%が5μmである粒径に粉砕した。次に、このスラリーをウォールフローフィルター基材の入口側から、基材全長を覆うようにコーティングした。コーティング後、フィルター基材+入口コートを150℃で乾燥させ、その後、550℃の温度で約1時間焼成した。焼成したPd/Rh触媒層は、68.7質量%のセリア-ジルコニア複合体、0.14質量%のパラジウム、0.37質量%のロジウム、4.6質量%の酸化バリウム、1.4質量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。触媒材料層の総担持量は1.24g/in3であった。
【0117】
実施例2
実施例2で調製したパティキュレートフィルターは、入口側から基材上にコーティングされ、基材全体の面積と長さを覆う、6g/ft3(Pd/Rh=1/1)のPGM担持量を有する第1のPd/Rh触媒層;及び入口側と出口側の両方から基材上にコーティングされ、より小さい直径(D=75mm)を有する半径方向の中心面積と基材全体の長さを覆う、15.5g/ft3の局所Rh担持量を有する第2のRh触媒成分を有していた。
【0118】
ウォールフローフィルター基材は、132mm(D)*127mm(L)のサイズ、1.74Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、63%の気孔率、及び17μmの水銀圧入測定による平均孔径を有していた。
【0119】
第1のPd/Rh触媒層は、以下のように調製した:
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体にプラネタリーミキサーで含浸させ、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成させた。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーで耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させ、湿潤状態を達成しながら湿潤粉末を形成させた。上記の粉末を水中に添加し、次いで水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することにより、水性スラリーを形成した。次いで、このスラリーを、90%が5μmである粒径に粉砕した。次に、当該技術分野で知られている堆積方法を用いて、このスラリーをウォールフローフィルター基材の入口側から、基材全長を覆うようにコーティングした。コーティング後、フィルター基材+入口コートを150℃で乾燥させ、その後、550℃の温度で約1時間焼成した。焼成したPd/Rh触媒層は、68.8質量%のセリア-ジルコニア複合体、0.14質量%のパラジウム、0.14質量%のロジウム、4.6質量%の酸化バリウム、及び1.4質量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。触媒材料層の総担持量は1.23g/in3であった。
【0120】
第2のRh触媒成分は、以下のように調整した:
合計で、5g/ft3のロジウム(パティキュレートフィルターの総体積の平均値)を、硝酸ロジウム溶液の形態で、基材の直径よりも小さい直径(D=75mm)を有する半径方向の中心面積を覆うように堆積させた。この半径方向の分布を実現するために、同一の内径(D=75mm)を有する溶液注入パイプを使用した。ロジウム溶液を均等に2等分し、前半のロジウム溶液を希釈し、その後、パイプによって伝導し、フィルターの出口側にコーティングした。その後、この部品を150℃で乾燥させてから、後半分のロジウム溶液を入口側から適用した。ロジウム溶液の希釈は、各溶液コートが基材の長さの50~55%に延びるように行った。両側から溶液コーティングを行った後、フィルターを150℃で乾燥させ、その後、空気中550℃の温度で約1時間焼成した。
【0121】
実施例3
D=95mmの直径を有する半径方向の中心面積と基材の全長を覆うように第2のRh触媒成分を堆積させたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3のパティキュレートフィルターを調製した。これにより、第2のRh触媒成分から9.7g/ft3の局所Rh担持量を得た。
【0122】
実施例4
D=109mmの直径を有する半径方向の中心面積と基材の全長を覆うように第2のRh触媒成分を堆積させたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4のパティキュレートフィルターを調製した。これにより、第2のRh触媒成分から7.3g/ft3の局所Rh担持量を得た。
【0123】
実施例5
入口側と出口側の両方から、D=75mmの直径を有する半径方向の中心面積、及び基材全長の33%を覆うように第2のRh触媒成分を堆積させた以外は、実施例2と同様にして、実施例5のパティキュレートフィルターを調製した。これにより、第2のRh触媒成分から23.3g/ft3の局所Rh担持量を得た。
【0124】
実施例6-比較用
基材の全面積(D=132mm)及び基材の全長を覆うように第2のRh触媒成分を堆積させたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例6のパティキュレートフィルターを調製した。これにより、第2のRh触媒成分から5g/ft3の均質なRh担持量を得た。
【0125】
実施例7-比較用
実施例7のパティキュレートフィルターは,入口側から基材上にコーティングされ、基材の全面積と長さを覆う、6g/ft3のPGM担持量(Pd/Rh=1/1)を有する第1のPd/Rh触媒層、及び入口側と出口側の両方から基材上にコーティングされ、より小さい直径(D=75mm)を有する半径方向の中心面積と基材全体の長さを覆う、15.5g/ft3の局所Rh担持量を有する第2のRh触媒層を有していた。
【0126】
ウォールフローフィルター基材は、132mm(D)*127mm(L)のサイズ、1.74Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、63%の気孔率、及び17μmの水銀圧入測定による平均孔径を有していた。
【0127】
第1のPd/Rh触媒層は、以下のように調製した:
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体にプラネタリーミキサーで含浸させ、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成させた。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーで耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させ、湿潤状態を達成しながら湿潤粉末を形成させた。上記の粉末を水中に添加し、次いで水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することにより、水性スラリーを形成した。次いで、このスラリーを、90%が5μmである粒径に粉砕した。次に、当該技術分野で知られている堆積方法を用いて、このスラリーをウォールフローフィルター基材の入口側から、基材全長を覆うようにコーティングした。コーティング後、フィルター基材+入口コートを150℃で乾燥させ、その後、550℃の温度で約1時間焼成した。焼成したPd/Rh触媒層は、68.8質量%のセリア-ジルコニア複合体、0.18質量%のパラジウム、0.18質量%のロジウム、4.6質量%の酸化バリウム、及び1.4質量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。触媒材料層の総担持量は0.99g/in3であった。
【0128】
第2のRh触媒層は、以下のように調整した:
合計で、5g/ft3のロジウム(パティキュレートフィルターの総体積の平均値)を、耐火性アルミナ及び約40質量%のセリアを含む安定化セリア-ジルコニア複合体にプラネタリーミキサーで含浸させ、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成させた。上記の粉末を水中に添加し、次いで水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することにより、水性スラリーを形成した。次いで、このスラリーを、90%が5μmである粒径に粉砕した。次に、このスラリーを、フィルターの入口側と出口側の両方から、より小さい直径(D=75mm)を有する半径方向の中心領域と、基材全長の50%を覆うようにコーティングした。コーティング後、フィルター基材を150℃で乾燥させ、その後、550℃の温度で約1時間焼成した。焼成した第2のRh触媒層は、68.2質量%のセリア-ジルコニア複合体、1.17質量%のロジウム、4.6質量%の酸化バリウム、及び1.4質量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。触媒材料層の総担持量は0.77g/in3であった。
【0129】
実施例1~7のパティキュレートフィルターにおける触媒材料層の総担持量と貴金属の総担持量は、
図7のスキーム1に示すように、PGMの分布レイアウトが異なるにもかかわらず、同一である。
【0130】
実施例8-実施例1~4の触媒パティキュレートフィルターの試験
8.1 CCCとして
8.1.1 WLTCに基づいて
典型的な入口温度が~875℃であり、典型的な触媒床温度が~925℃であり、~980℃を超えないように動作するエンジン設定を使用して、発熱エージングプロトコルで、実施例1~4におけるパティキュレートフィルターをエージングした。車両の耐久性試験の典型的な運転条件をシミュレートするために、エンジンからのガス供給組成はリッチとリーンの間で交互に変化した。すべての触媒フィルターは、同じ条件で100時間エージングした。
【0131】
WLTCの試験プロトコルに基づいて動作する近位連結触媒(CCC)のみの放出制御システム構成を備えた2.0Lのターボ過給エンジンを使用して、放出性能試験を行った。各触媒パティキュレートフィルターを、CCCとして近接した位置に設置し、高い実験再現性とデータの一貫性を保証するために少なくとも3回試験した。
【0132】
図1に示すように、溶液コーティングアプローチを用いた白金族金属、この場合はロジウムの放射状濃縮は、触媒パティキュレートフィルターの触媒活性を促進した。本発明の実施例2~4のパティキュレートフィルターは、ウォッシュコート担体の配合を変更することなく、同じ白金族金属担持量で比較例1のパティキュレートフィルターと比較して、WLTC試験で最大~25%のTHC、~15%のCO及び~10%のNOxの改善を示した。
【0133】
8.1.2 WLTCのフェーズ1に基づいて
また、実施例1~4のパティキュレートフィルターをCCCとしてWLTCのフェーズ1に基づいて試験した。WLTCのフェーズ1は、コールドスタート及び低速走行モード(都市部)を表す。
【0134】
図2に示すように、本発明例2~4のパティキュレートフィルターは、比較例1のパティキュレートフィルターと比較して、WLTCのフェーズ1の試験で最大~20%のTHC、~15%のCO及び~15%のNOx改善を示した。
【0135】
8.2 UFCとして
8.2.1 WLTCに基づいて
さらに、同じ2.0Lのターボ過給エンジンであるが、異なる近位連結触媒(CCC)+床下触媒(UFC)の放出制御システム構成を使用して、実施例のフィルターの放出性能をさらに評価した。CCCとして132.1mm(D)×50.8mm(L)、66gのcf PGM、1200℃で20時間エージングするオーブンのTWC部品を使用し、UFCとして実施例のフィルターをUF位置に取り付けた。CCCとUFCの間の距離は800mmであった。高い実験の再現性とデータの一貫性を保証するために、各触媒システムは少なくとも3回試験した。
【0136】
図3に示すように、このCCC+UFCシステムにおいて、ベストパフォーマーである本発明の実施例2及び3は、実施例1のフィルターを用いた参照システムと比較して、依然として最大~10%のNOx改善を示す。
【0137】
実施例9-実施例1、2、5及び6の触媒パティキュレートフィルターの試験
9.1 WLTCに基づいて
異なるエージングセットアップの下で、典型的な入口温度が~800℃であり、典型的な触媒床温度が~850℃であり、~900℃を超えないように動作するエンジン設定を使用して、発熱エージングプロトコルで、実施例1、2、5、6におけるパティキュレートフィルターをエージングした。車両の耐久性試験の典型的な運転条件をシミュレートするために、エンジンからのガス供給組成はリッチとリーンの間で交互に変化した。すべての触媒フィルターは、同じ条件で125時間エージングした。
【0138】
WLTCの試験プロトコルに基づいて動作する近位連結触媒(CCC)のみの放出制御システム構成を備えた2.0Lのターボ過給エンジンを使用して、放出性能試験を行った。各触媒パティキュレートフィルターを、CCCとして近接した位置に設置し、高い実験再現性とデータの一貫性を保証するために少なくとも3回試験した。
【0139】
図4に示すように、実施例2及び5のパティキュレートフィルターは、比較例1のパティキュレートフィルターと比較して、優れたTHC、CO及びNOxの変換活性を示し、異なるエージングプロトコルにおけるPGM放射状濃縮の堅牢性を証明した。これは、半径方向の中央面積にPGM溶液をコーティングすることにより、ロジウム濃縮ゾーンを慎重に設計したことに起因するものである。軸方向に特別に設計されたロジウム分布により、実施例5のパティキュレートフィルターの活性は、実施例2のパティキュレートフィルターの活性と比較してさらに向上している。一方、実施例6のパティキュレートフィルターは、同様のPGM溶液コーティングのアプローチを用いたにもかかわらず、汚染物質変換活性における優位性を示すことができなかった。このことは、半径方向の濃縮を伴わないPGM溶液コーティングだけでは、三元変換活性に利益をもたらさないことを証明している。
【0140】
9.2 WLTCのフェーズ1に基づいて
また、実施例1~4のパティキュレートフィルターをCCCとしてWLTCのフェーズ1に基づいて試験した。WLTCのフェーズ1は、コールドスタート及び低速走行モード(都市部)を表す。
【0141】
図5に示すように、本発明例2及び5のパティキュレートフィルターは、比較例1のパティキュレートフィルターと比較して、優れたTHC、CO及びNOxの変換活性を示した。軸方向に特別に設計されたロジウム分布により、実施例5のパティキュレートフィルターの活性は、実施例2のパティキュレートフィルターの活性と比較してさらに向上している。一方、実施例6のパティキュレートフィルターは、同様のPGM溶液コーティングのアプローチを用いたにもかかわらず、汚染物質変換活性における優位性を示すことができなかった。
【0142】
実施例10-背圧の比較
触媒フィルターにおいて、背圧(圧力損失とも呼ばれる)も注意深く観察する必要がある重要なパラメーターである。本発明で開示するPGM溶液コーティングは、触媒フィルターの背圧に影響を与えないが、スラリーコーティングは、最終的な触媒フィルターの背圧を不利に高くする結果をもたらすことができる。
【0143】
図6に示すように、PGM溶液コーティングアプローチを用いてRhを半径方向中心に濃縮した実施例2のパティキュレートフィルターは、実施例1と比較して、無視できる背圧差を示した。一方、公知のスラリーコーティングアプローチを用いて半径方向中心にRhを同様に濃縮した実施例7のパティキュレートフィルターは、比較例1及び本発明の実施例2と比較して、有意に高い背圧付加(backpressure add-on)を示した。
【0144】
ここでは、背圧付加は以下の方法で計算した。
【0145】
背圧付加=背圧触媒フィルター+背圧基材
【0146】
すべての背圧の値は、Superflowで600m3/hの流速及び25℃で測定した。
【国際調査報告】