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特表2024-505908フォールトトレラント量子コンピュータのためのインタリーブモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】フォールトトレラント量子コンピュータのためのインタリーブモジュール
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20240201BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545900
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022070447
(87)【国際公開番号】W WO2022241336
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/143,727
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552936
【氏名又は名称】プサイクォンタム,コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ニッカーソン,ナオミ
(72)【発明者】
【氏名】リティンスキー,ダニエル
(57)【要約】
融合ベースの量子計算は、インタリーブモジュールのネットワークを使用して実施され得る。各インタリーブモジュールは、もつれた物理量子ビットから成るリソース状態を受信又は生成することができるとともに、異なるリソース状態からの量子ビットの対に対して融合演算又は単一量子ビット測定のいずれかを実行するように制御され得る再構成可能融合回路のセットと、再構成可能融合回路に接続されるルーティング経路と、リソース状態の量子ビットにおけるルーティング経路を選択し、それにより、融合演算と単一量子ビット測定との所望の組み合わせを実施するように動作する遅延線及びルーティングスイッチとを含むことができる。ルーティング経路は、同じインタリーブモジュール内の再構成可能融合回路に結合するローカルルーティング経路と、1つのインタリーブモジュールにおけるルーティングスイッチをネットワーク内の異なるインタリーブモジュールにおける再構成可能融合回路に結合するネットワークルーティング経路とを含むことができる。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置において、
複数の動作サイクルのそれぞれの最中にリソース状態を出力するための複数の出力経路を有するリソース状態相互接続部であって、各リソース状態が複数のもつれ量子ビットの量子システムであり、前記リソース状態の異なる量子ビットが前記出力経路のうちの異なる経路で出力される、リソース状態相互接続部と、
複数のルーティングスイッチであって、各ルーティングスイッチが、前記リソース状態相互接続部の前記出力経路のうちの異なる経路に結合される入力経路と、複数の出力経路とを有し、各ルーティングスイッチが、前記入力経路上の前記リソース状態の異なる量子ビットを受信するとともに、前記受信した量子ビットを前記複数の出力経路のうちの1つに選択的にルーティングするように構成される、複数のルーティングスイッチと、
複数の再構成可能融合回路であって、前記複数の再構成可能融合回路のそれぞれが、2つの入力量子ビットを受けるとともに、前記2つの入力量子ビット間の投影もつれ測定、又は前記2つの入力量子ビットのそれぞれに対する複数の単一量子ビット測定のうちの1つのいずれかを選択的に実行し、それによって測定結果データを生成するように構成される、複数の再構成可能融合回路と、
異なる遅延長を有する複数の遅延線であって、前記リソース状態相互接続部のそれぞれの出力経路と前記ルーティングスイッチの異なるルーティングスイッチのそれぞれの入力経路との間に異なる遅延線が結合される、複数の遅延線と、
複数のローカルルーティング経路と複数のネットワークルーティング経路とを含む複数のルーティング経路であって、前記ルーティングスイッチのそれぞれが前記再構成可能融合回路のうちの少なくとも1つに結合されるように前記ローカルルーティング経路が前記ルーティングスイッチと前記再構成可能融合回路との間に結合され、前記ネットワークルーティング経路のそれぞれが前記装置を出る、複数のルーティング経路と、
を備える装置。
【請求項2】
前記ネットワークルーティング経路のそれぞれは、前記装置の他のインスタンスにおける再構成可能融合回路に結合する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記再構成可能融合回路のそれぞれは、前記複数の単一量子ビット測定がパウリX測定、パウリY測定、及びパウリZ測定を含むように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記再構成可能融合回路のそれぞれは、前記複数の単一量子ビット測定がe-iπ/8の位相回転とそれに続くパウリZ測定とを更に含むように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の遅延線は、
1つの動作サイクルに対応する遅延長を有する第1の遅延線と、
動作サイクルの数(L)に対応する遅延長を有する第2の遅延線であって、Lが1よりも大きい、第2の遅延線と、
動作サイクルの数Lに対応する遅延長を有する第3の遅延線と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第2のローカル融合回路と、
第3のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
第2のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路が第1のネットワーク経路と第2のネットワーク経路とを含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記第1の遅延線から前記第1のローカル融合回路の第1の入力又は前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力又は前記第1のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
各ローカルリソース状態の第3の量子ビットを前記第2の遅延線から前記第2のローカル融合回路の第1の入力又は前記第2のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第3のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第4の量子ビットを前記第2のローカル融合回路の第2の入力又は前記第2のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第4のルーティングスイッチと、
を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記複数のローカルルーティング経路は、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3の遅延線に導くための第1のローカルルーティング経路であって、前記第3の遅延線の出力が前記第3のローカル融合回路の第1の入力に結合される、第1のローカルルーティング経路と、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力に導くための第2のローカルルーティング経路と、
を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の再構成可能融合回路が第3のネットワーク化融合回路を更に含み、
前記複数のネットワーク経路が第3のネットワーク経路を更に含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第1の入力又は前記第3のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第5のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力又は前記第3のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第6のルーティングスイッチと、
を更に含む、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第2のローカル融合回路と、
第3のローカル融合回路と、
第4のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
第2のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路が第1のネットワーク経路と第2のネットワーク経路とを含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記第1の遅延線から前記第1のローカル融合回路の第1の入力、前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力、又は前記第4のローカル融合回路の第1の入力に結合された第4の遅延線のうちの1つに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチであって、前記第4の遅延線が1つの動作サイクルに対応する遅延長を有する、第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力、前記第1のネットワーク経路、又は前記第4のローカル融合回路の第2の入力のうちの1つに選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
各ローカルリソース状態の第3の量子ビットを前記第2の遅延線から前記第2のローカル融合回路の第1の入力又は前記第2のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第3のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第4の量子ビットを前記第2のローカル融合回路の第2の入力又は前記第2のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第4のルーティングスイッチと、
を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のルーティング経路は、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3の遅延線に導くための第1のルーティング経路であって、前記第3の遅延線の出力が前記第3のローカル融合回路の第1の入力に結合される、第1のルーティング経路と、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力へと導くための第2のルーティング経路と、
を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の再構成可能融合回路が第3のネットワーク化融合回路を更に含み、
前記複数のネットワーク経路が第3のネットワーク経路を更に含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第1の入力又は前記第3のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第5のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力又は前記第3のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第6のルーティングスイッチと、
を更に含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路が第1のネットワーク経路を含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記第3の遅延線から前記第1のローカル融合回路の第1の入力又は前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力又は前記第1のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
を含み、
前記第1のネットワーク化融合回路の第2の入力は、前記装置の他のインスタンスのネットワーク経路に結合される、
請求項5に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路がネットワーク経路の第1のグループを含み、ネットワーク経路の前記第1のグループが2つ以上のネットワーク経路を含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記遅延線のうちの1つから前記第1のローカル融合回路の第1の入力又は前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力又はネットワーク経路の前記第1のグループ内の任意の1つのネットワーク経路に選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項14】
前記遅延線のうちの前記1つが前記第3の遅延線である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ネットワーク経路の前記第1のグループ内の前記ネットワーク経路のそれぞれは、前記装置の複数の他のインスタンスのうちの異なるインスタンスに結合される、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
複数の外部入力経路と、前記第1のネットワーク化融合回路の第2の入力に結合される出力経路とを有する入力スイッチ、
を更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記外部入力経路のそれぞれは、前記装置の複数の他のインスタンスのうちの異なるインスタンスのネットワーク経路に結合される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記複数の再構成可能融合回路のそれぞれは、前記投影もつれ測定演算が前記入力量子ビットの両方に対する破壊的測定を含むように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記再構成可能融合回路のそれぞれは、前記投影もつれ測定がジョイントXX測定結果及びジョイントZZ測定結果を与えるタイプII融合演算であるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
複数の再構成可能融合回路と複数のルーティングスイッチとに結合される古典的制御論理を更に備え、該古典的制御論理は、複数の再構成可能融合回路及び複数のルーティングスイッチのそれぞれに関して動作を選択するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記古典的制御論理は、実行されるべき量子計算を表わす融合グラフに少なくとも部分的に基づいて、前記複数の再構成可能融合回路及び前記複数のルーティングスイッチのそれぞれに関して前記動作を選択するように更に構成される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
リソース状態を生成して該リソース状態を前記リソース状態相互接続部に与えるリソース状態生成回路を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記リソース状態の前記量子ビットがフォトニック量子ビットである、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記リソース状態相互接続部は、リソース状態の外部ソースと前記リソース状態相互接続部の前記出力経路との間に結合される複数の導波路を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記リソース状態相互接続部は、フォトニックリソース状態を出力するリソース状態生成回路を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
インタリーブモジュールのネットワークであって、各インタリーブモジュールが、
複数の動作サイクルのそれぞれの最中にリソース状態を出力するための複数の出力経路を有するリソース状態相互接続部であって、各リソース状態が複数のもつれ量子ビットの量子システムであり、前記リソース状態の異なる量子ビットが前記出力経路のうちの異なる経路で出力される、リソース状態相互接続部と、
複数のルーティングスイッチであって、各ルーティングスイッチが、前記リソース状態相互接続部の前記出力経路のうちの異なる経路に結合される入力経路と、複数の出力経路とを有し、各ルーティングスイッチが、前記入力経路上の前記リソース状態の異なる量子ビットを受信するとともに、前記受信した量子ビットを前記複数の出力経路のうちの1つに選択的にルーティングするように構成される、複数のルーティングスイッチと、
複数の再構成可能融合回路であって、前記複数の再構成可能融合回路のそれぞれが、2つの入力量子ビットを受けるとともに、前記2つの入力量子ビット間の投影もつれ測定、又は前記2つの入力量子ビットのそれぞれに対する複数の単一量子ビット測定のうちの1つのいずれかを選択的に実行し、それによって測定結果データを生成するように構成される、複数の再構成可能融合回路と、
異なる遅延長を有する複数の遅延線であって、前記リソース状態相互接続部のそれぞれの出力経路と前記ルーティングスイッチの異なるルーティングスイッチのそれぞれの入力経路との間に異なる遅延線が結合される、複数の遅延線と、
複数のローカルルーティング経路と複数のネットワークルーティング経路とを含む複数のルーティング経路であって、前記ルーティングスイッチのそれぞれが前記再構成可能融合回路のうちの少なくとも1つに結合されるように前記ローカルルーティング経路が前記ルーティングスイッチと前記再構成可能融合回路との間に結合され、前記ネットワークルーティング経路のそれぞれが、前記ネットワーク内の異なるインタリーブモジュールにおける再構成可能融合回路に結合される、複数のルーティング経路と、
を含む、インタリーブモジュールのネットワークと、
前記インタリーブモジュールの前記ネットワークに結合されるとともに、前記ルーティングスイッチ及び前記再構成可能融合回路を制御して前記再構成可能融合回路から前記測定結果データを表わす古典的データ信号を受信するように構成される古典的制御論理と、
を備えるシステム。
【請求項27】
前記再構成可能融合回路のそれぞれは、前記複数の単一量子ビット測定がパウリX測定、パウリY測定、及びパウリZ測定を含むように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記再構成可能融合回路のそれぞれは、前記複数の単一量子ビット測定がe-iπ/8の位相回転とそれに続くパウリZ測定とを更に含むように構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
各インタリーブモジュールにおける前記複数の遅延線は、
1つの動作サイクルに対応する遅延長を有する第1の遅延線と、
動作サイクルの数(L)に対応する遅延長を有する第2の遅延線であって、Lが1よりも大きい、第2の遅延線と、
動作サイクルの数Lに対応する遅延長を有する第3の遅延線と、
を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第2のローカル融合回路と、
第3のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
第2のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路が第1のネットワーク経路と第2のネットワーク経路とを含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記第1の遅延線から前記第1のローカル融合回路の第1の入力又は前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力又は前記第1のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
各ローカルリソース状態の第3の量子ビットを前記第2の遅延線から前記第2のローカル融合回路の第1の入力又は前記第2のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第3のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第4の量子ビットを前記第2のローカル融合回路の第2の入力又は前記第2のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第4のルーティングスイッチと、
を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、前記複数のローカルルーティング経路は、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3の遅延線に導くための第1のローカルルーティング経路であって、前記第3の遅延線の出力が前記第3のローカル融合回路の第1の入力に結合される、第1のローカルルーティング経路と、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力に導くための第2のローカルルーティング経路と、
を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、
前記複数の再構成可能融合回路が第3のネットワーク化融合回路を更に含み、
前記複数のネットワーク経路が第3のネットワーク経路を更に含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第1の入力又は前記第3のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第5のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力又は前記第3のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第6のルーティングスイッチと、
を更に含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第2のローカル融合回路と、
第3のローカル融合回路と、
第4のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
第2のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路が第1のネットワーク経路と第2のネットワーク経路とを含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記第1の遅延線から前記第1のローカル融合回路の第1の入力、前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力、又は前記第4のローカル融合回路の第1の入力に結合された第4の遅延線のうちの1つに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチであって、前記第4の遅延線が1つの動作サイクルに対応する遅延長を有する、第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力、前記第1のネットワーク経路、又は前記第4のローカル融合回路の第2の入力のうちの1つに選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
各ローカルリソース状態の第3の量子ビットを前記第2の遅延線から前記第2のローカル融合回路の第1の入力又は前記第2のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第3のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第4の量子ビットを前記第2のローカル融合回路の第2の入力又は前記第2のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第4のルーティングスイッチと、
を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項34】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、前記複数のルーティング経路は、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3の遅延線に導くための第1のルーティング経路であって、前記第3の遅延線の出力が前記第3のローカル融合回路の第1の入力に結合される、第1のルーティング経路と、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力へと導くための第2のルーティング経路と、
を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、
前記複数の再構成可能融合回路が第3のネットワーク化融合回路を更に含み、
前記複数のネットワーク経路が第3のネットワーク経路を更に含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第5の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第1の入力又は前記第3のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第5のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第6の量子ビットを前記第3のローカル融合回路の第2の入力又は前記第3のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第6のルーティングスイッチと、
を更に含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路が第1のネットワーク経路を含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記第3の遅延線から前記第1のローカル融合回路の第1の入力又は前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力又は前記第1のネットワーク経路のいずれかに選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
を含み、
前記第1のネットワーク化融合回路の第2の入力は、インタリーブモジュールの前記ネットワークにおける異なるインタリーブモジュールのネットワーク経路に結合される、
請求項29に記載のシステム。
【請求項37】
前記インタリーブモジュールの少なくとも1つにおいて、
前記複数の再構成可能融合回路は、
第1のローカル融合回路と、
第1のネットワーク化融合回路と、
を含み、
前記複数のネットワーク経路がネットワーク経路の第1のグループを含み、ネットワーク経路の前記第1のグループが2つ以上のネットワーク経路を含み、
前記複数のルーティングスイッチは、
各リソース状態の第1の量子ビットを前記遅延線のうちの1つから前記第1のローカル融合回路の第1の入力又は前記第1のネットワーク化融合回路の第1の入力のいずれかに選択的に導くように構成される第1のルーティングスイッチと、
各リソース状態の第2の量子ビットを前記第1のローカル融合回路の第2の入力又はネットワーク経路の前記第1のグループ内の任意の1つのネットワーク経路に選択的に導くように構成される第2のルーティングスイッチと、
を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項38】
前記遅延線のうちの前記1つが前記第3の遅延線である、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
ネットワーク経路の前記第1のグループにおける前記ネットワーク経路のそれぞれは、インタリーブモジュールの前記ネットワークにおける異なるインタリーブモジュールに結合される、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記インタリーブモジュールの前記少なくとも1つは、
複数の外部入力経路と、前記第1のネットワーク化融合回路の第2の入力に結合された出力経路とを有する入力スイッチ、
を更に含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記外部入力経路のそれぞれは、インタリーブモジュールの前記ネットワークにおける異なるインタリーブモジュールのネットワーク経路に結合される、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記インタリーブモジュールのそれぞれにおける前記複数の再構成可能融合回路のそれぞれは、前記投影もつれ測定演算が前記入力量子ビットの両方に対する破壊的測定を含むように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記インタリーブモジュールのそれぞれにおける前記複数の再構成可能融合回路のそれぞれは、前記投影もつれ測定がジョイントXX測定結果及びジョイントZZ測定結果を与えるタイプII融合演算であるように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項44】
前記インタリーブモジュールは、寸法n×n=Nのアレイを形成するように接続され、n及びnが整数である、請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
各インタリーブモジュールは、もつれグラフの複数の層のそれぞれに関してリソース状態の数(L)を処理し、各層のサイズがL×Nである、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記古典的制御論理は、実行されるべき量子計算を表わす融合グラフに少なくとも部分的に基づいて前記ルーティングスイッチ及び前記再構成可能融合回路における制御設定のシーケンスを決定するように更に構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項47】
リソース状態を生成して前記リソース状態を前記インタリーブモジュールの前記リソース状態相互接続部に与えるための複数のリソース状態生成回路を更に備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項48】
前記リソース状態の前記量子ビットがフォトニック量子ビットである、請求項26に記載のシステム。
【請求項49】
各インタリーブモジュールにおける前記リソース状態相互接続部は、リソース状態の外部ソースと前記リソース状態相互接続部の前記出力経路との間に結合される複数の導波路を含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
各インタリーブモジュールにおける前記リソース状態相互接続部は、フォトニックリソース状態を出力するリソース状態生成回路を含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
現在のサイクルカウンタを決定するステップと、
前記現在のサイクルカウンタに少なくとも部分的に基づいてインタリーブ座標を決定するステップと、
リソース状態を取得するステップであって、前記リソース状態がもつれフォトニック量子ビットのシステムを備える、ステップと、
前記インタリーブ座標に少なくとも部分的に基づいて、各ルーティングスイッチが前記リソース状態の前記フォトニック量子ビットのうちの1つを受信するように配置される複数のルーティングスイッチにおける複数のルーティングスイッチ設定を決定するステップであって、前記ルーティングスイッチのそれぞれの少なくとも幾つかの出力が遅延線に結合される、ステップと、
前記インタリーブ座標に少なくとも部分的に基づいて、複数の再構成可能融合回路における複数の動作選択を決定するステップであって、前記複数の再構成可能融合回路のそれぞれが、前記ルーティングスイッチのうちの2つから2つの入力量子ビットを受信し、前記2つの入力量子ビットのうちの少なくとも一方が前記遅延線のうちの1つを介して受信されるように構成されるとともに、前記2つの入力量子ビットの間の投影もつれ測定演算又は前記2つの入力量子ビットのそれぞれに対する複数の単一量子ビット測定のうちの1つのいずれかを選択可能に実行し、それによって測定結果データを生成するように構成される、ステップと、
前記ルーティングスイッチ設定に基づいて前記ルーティングスイッチに制御信号を送信するステップと、
前記動作選択に基づいて前記再構成可能融合回路に制御信号を送信するステップと、
前記再構成可能融合回路から前記測定結果データを受信するステップと、
を含む方法。
【請求項52】
現在のサイクルカウンタをインクリメントするステップと、
インタリーブ座標を決定する動作と、リソース状態を取得する動作と、ルーティングスイッチ設定を決定する動作と、動作選択を決定する動作と、前記制御信号を前記ルーティングスイッチ及び前記再構成可能融合回路に送信する動作と、測定結果データを受信する動作とを繰り返すステップと、
を更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
複数のリソース状態の量子ビットに対して行われるべき測定演算のセットを規定する融合グラフを表わすデータを受信するステップを更に含み、
前記インタリーブ座標及び前記ルーティングスイッチ設定は、前記融合グラフに部分的に基づいて及び前記サイクルカウンタに部分的に基づいて決定される、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記複数の単一量子ビット測定は、パウリX測定、パウリY測定、及びパウリZ測定を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記複数の単一量子ビット測定は、e-iπ/8の位相回転と、それに続くパウリZ測定とを更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記投影もつれ測定演算は、前記入力量子ビットの両方に対する破壊的測定を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記投影もつれ測定は、ジョイントXX測定結果及びジョイントZZ測定結果を与えるタイプII融合演算である、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
この出願は、2021年1月29日に出願された米国仮出願第63/143,727号の利益を主張し、この仮出願の開示は参照により本願に組み入れられる。
【0002】
[0002]量子コンピューティングは、「量子ビット」と称される構造へのその依存によって「古典的」コンピューティングとは区別される。最も一般的なレベルにおいて、量子ビットは、2つの直交状態(従来のブラ/ケット記法で
【数1】

として示される)のうちの一方で又は2つの状態の重ね合わせ(例えば、
【数2】

)で存在することができる量子システムである。量子ビットのシステム(又は集合)で動作することによって、量子コンピュータは、古典的コンピュータにおいて非実用的な時間量を必要とするであろう特定のカテゴリの計算を迅速に実行することができる。
【0003】
[0003]しかしながら、量子コンピュータの実際の実現は依然として困難な課題のままである。1つの課題は、量子ビットの信頼できる形成及びもつれである。
【発明の概要】
【0004】
[0004]幾つかの実施形態によれば、融合ベースの量子計算は、インタリーブモジュールのネットワーク(ネットワークアレイとも呼ばれる)を使用して実施され得る。各インタリーブモジュールは、もつれた物理量子ビットから成るリソース状態を受信又は生成することができるとともに、異なるリソース状態からの量子ビットの対に対して融合演算又は単一量子ビット測定のいずれかを実行するように制御され得る再構成可能融合回路のセットと、再構成可能融合回路に接続されるルーティング経路と、リソース状態の量子ビットにおけるルーティング経路を選択し、それにより、融合演算と単一量子ビット測定との所望の組み合わせを実施するように動作する遅延線及びルーティングスイッチとを含むことができる。ルーティング経路は、同じインタリーブモジュール内の再構成可能融合回路に結合するローカルルーティング経路と、1つのインタリーブモジュールにおけるルーティングスイッチをネットワーク内の異なるインタリーブモジュールにおける再構成可能融合回路に結合するネットワークルーティング経路とを含むことができる。
【0005】
[0005]以下の詳細な説明は、添付図面と共に、特許請求の範囲に記載される発明の性質及び利点のより良い理解をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】デュアルレール符号化フォトニック量子ビットに対応する一対の導波路の一部の2つの表示を示す。
図2A】2つのモードを結合するための概略図を示す。
図2B】幾つかの実施形態で使用され得るフォトニックシステムにおけるモード結合の物理的実装を概略的に示す。
図3A】幾つかの実施形態で使用され得るマッハツェンダ干渉計(MZI)形態の物理的実装の例を概略的に示す。
図3B】幾つかの実施形態で使用され得るマッハツェンダ干渉計(MZI)形態の物理的実装の例を概略的に示す。
図4A】2つのモードを結合するための他の概略図を示す。
図4B】幾つかの実施形態で使用され得るフォトニックシステムにおける図4Aのモード結合の物理的実装を概略的に示す。
図5】幾つかの実施形態に係る4つのモードに関する「スプレッダ」又は「モード情報消去」変換を実施する4モード結合方式を示す。
図6】幾つかの実施形態に係る図5に概略的に示される4モード拡散変換を実施することができる光学デバイスの一例を示す。
図7】幾つかの実施形態で使用され得るデュアルレール符号化ベル状態生成器に関する回路図を示す。
図8A】幾つかの実施形態で使用され得るデュアルレール符号化タイプI融合ゲートに関する回路図を示す。
図8B図8Aのゲートを使用するタイプI融合演算の結果の例を示す。
図9A】幾つかの実施形態で使用され得るデュアルレール符号化タイプII融合ゲートに関する回路図を示す。
図9B図9Aのゲートを使用するタイプII融合演算の結果の一例を示す。
図10】幾つかの実施形態に係る量子もつれシステムの一例を示す。
図11】幾つかの実施形態において使用され得るリソース状態の一例を示す。
図12A】幾つかの実施形態で使用され得る融合グラフの一例を示す。
図12B】論理量子ビットに対する様々な論理演算に関してどのようにして融合グラフ(図12Dに示す)を表面符号時空間図(図12Bに示す)及びタイムスライス図(図12Cに示す)から生成することができるかの例を示す。
図12C】論理量子ビットに対する様々な論理演算に関してどのようにして融合グラフ(図12Dに示す)を表面符号時空間図(図12Bに示す)及びタイムスライス図(図12Cに示す)から生成することができるかの例を示す。
図12D】論理量子ビットに対する様々な論理演算に関してどのようにして融合グラフ(図12Dに示す)を表面符号時空間図(図12Bに示す)及びタイムスライス図(図12Cに示す)から生成することができるかの例を示す。
図12E図12Dで使用される融合グラフ表記の凡例を示す。
図13A】幾つかの実施形態に係る4つの論理量子ビットに対する計算を表わす融合グラフの図を示す。
図13B】幾つかの実施形態に係る4つの論理量子ビットに対する計算を表わす融合グラフの図を示す。
図13C】幾つかの実施形態に係る4つの論理量子ビットに対する計算を表わす融合グラフの図を示す。
図14A】幾つかの実施形態に係る再構成可能融合回路を含むインタリーブモジュールにおける回路構成要素の簡略化された概略図を示す。
図14B】幾つかの実施形態に係る再構成可能融合回路を含むインタリーブモジュールにおける回路構成要素の簡略化された概略図を示す。
図14C】幾つかの実施形態に係る再構成可能融合回路を含むインタリーブモジュールにおける回路構成要素の簡略化された概略図を示す。
図14D】幾つかの実施形態に係る再構成可能融合回路を含むインタリーブモジュールにおける回路構成要素の簡略化された概略図を示す。
図15】幾つかの実施形態に係る単位セルのネットワークの簡略化された概略図を示す。
図16】幾つかの実施形態に係る単位セルのネットワークを使用した層のパッチベース生成を示す簡略化された融合グラフを示す。
図17】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールのネットワークの簡略化された概略図を示す。
図18A】幾つかの実施形態に係る融合グラフの層内の頂点へのインタリーブ座標の割り当ての例を示す図である。
図18B】幾つかの実施形態に係る融合グラフの層内の頂点へのインタリーブ座標の割り当ての例を示す図である。
図19A】幾つかの実施形態に係る、インタリーブ座標が重ねられた融合グラフの代表的な層の図を示す。
図19B図19Aに示される層の1つのパッチの詳細図を示す。
図20】幾つかの実施形態に係る融合グラフのパッチから決定され得るインタリーブモジュールにおける構成設定を示す表を示す。
図21A】格子構造を変化させる動作の融合グラフの例を示す。
図21B】格子構造を変化させる動作の融合グラフの例を示す。
図22】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールの簡略化された概略図を示す。
図23A】論理量子ビットを移動させるための融合グラフの一例を示す。
図23B】論理量子ビットを移動させるより効率的な実施のための融合グラフを示す。
図24】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールの簡略化された概略図を示す。
図25】幾つかの実施形態に係るネットワークアレイにおけるインタリーブモジュール間のネットワーク経路の接続性の簡略化された概略図を示す。
図26A】周期的境界条件を伴うトーリック面符号の概念図である。
図26B】周期的境界条件を伴うトーリック面符号の概念図である。
図26C】周期的境界条件を伴うトーリック面符号の概念図である。
図26D】周期的境界条件を伴うトーリック面符号の概念図である。
図27】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールのネットワーク化されたアレイの簡略化された概略図を示す。
図28】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールの簡略化された概略図を示す。
図29A】星形表面符号の融合グラフを示す。
図29B】星形表面符号の融合グラフを示す。
図30A】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールのネットワークを使用して実装され得る星形表面符号パッチの接続構造の例を示す。
図30B】幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールのネットワークを使用して実装され得る星形表面符号パッチの接続構造の例を示す。
図31】幾つかの実施形態に係る星形表面符号を生成するために使用され得るインタリーブモジュールのネットワーク化されたアレイの簡略化された概略図を示す。
図32】幾つかの実施形態に係るFBQCを実装することができる量子コンピュータシステムのためのシステムアーキテクチャの一例を示す。
図33】幾つかの実施形態に係る古典的制御論理を使用してインタリーブモジュールのアレイを動作させるためのプロセスのフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0045]本明細書では、フォトニックシステムを含む様々な物理量子システムに基づいて量子ビットの集合に対して動作を実行するためのシステム及び方法の例(「実施形態」とも呼ばれる)が開示される。そのような実施形態は、例えば、量子コンピューティングにおいて、並びに、量子もつれを利用する他の状況(例えば、量子通信)において使用され得る。本開示の理解を容易にするために、関連する概念及び用語の概要がセクション1に提供され、融合ベースの量子コンピューティング(FBQC)の概要がセクション2に提供される。これに関連して、セクション3は、様々な実施形態に係るインタリーブモジュールの例を説明し、セクション4は、FBQCを実装するためにインタリーブモジュールのネットワークを使用する例を説明する。セクション5~7は、インタリーブモジュール及びインタリーブモジュールのネットワークの更なる例示的な実施形態を説明し、セクション8は、インタリーブモジュールのネットワークを使用してFBQCを実装することができるコンピューティングシステムの例示的な実施形態を説明する。理解を容易にするために実施形態が具体的に詳細に記載されるが、この開示にアクセスできる当業者であれば分かるように、これらの詳細を伴うことなく特許請求の範囲に記載される発明を実施できる。
【0008】
[0046]更に、本明細書中では、量子ビットの量子状態空間を2次元ベクトル空間としてモデル化することができる、量子ビットのシステムを形成する及びシステムで機能する実施形態が記載される。この開示にアクセスする当業者であれば分かるように、本明細書中に記載される技術を「量子ビット」のシステムに適用することができ、このシステムにおいて、量子ビットは、nビットの情報を符号化するために使用することができる(任意の整数nに関して)(複素)n次元ベクトル空間としてモデル化され得る量子状態空間を有する任意の量子システムとすることができる。説明を明確にするために、本明細書中では「量子ビット」という用語が使用されるが、幾つかの実施形態において、システムは、量子ビットなどのバイナリビットと必ずしも関連付けられない態様で情報を符号化する量子情報キャリアを使用することもできる。
【0009】
[0047]1.量子コンピューティングの概要
量子コンピューティングは、量子理論の規則に従う量子物体、例えば光子、電子、原子、イオン、分子、ナノ構造などの動力学に依存する。量子理論では、量子物体の量子状態は、物理的特性のセットによって記述され、そのセット全体はモードと称される。幾つかの実施形態において、モードは、量子物体の1つ以上の特性の値(又は値の分布)を定めることによって規定される。例えば、量子物体が光子である場合、モードは、光子の周波数、光子の空間における位置(例えば、光子がどの導波路又は導波路の重ね合わせ内を伝搬しているか)、関連する伝播方向(例えば、自由空間内の光子のkベクトル)、光子の偏光状態(例えば、光子の電場及び/又は磁場の方向(水平又は垂直))、光子が伝播している時間窓、光子の軌道角運動量状態などによって規定され得る。
【0010】
[0048]導波路内を伝播する光子の場合、光子の状態を離散的な時空間モードのセットの1つとして表示することが好都合である。例えば、光子の空間モードkは、光子が有限セットの離散導波路のうちのどれを伝播しているかに従って決定され、また、時間モードtは、光子が離散期間(本明細書では「ビン」と称される)のうちのどの離散期間に存在するかによって決定される。幾つかのフォトニック実装形態では、光子の生成を担うパルスレーザによって時間離散化の程度を提供することができる。以下の例では、主に説明の複雑化を避けるために空間モードが使用される。しかしながら、当業者であれば分かるように、システム及び方法は、任意のタイプのモード、例えば、時間モード、偏光モード、及び、量子状態を定めるのに役立つ任意の他のモード又はモードのセットに適用され得る。更に、以下の説明では、光子の空間モードを規定するためにフォトニック導波路を使用する実施形態について説明する。しかしながら、この開示にアクセスする当業者であれば分かるように、本開示の範囲から逸脱することなく、他のタイプのモード、例えば時間モード、エネルギー状態などを使用できる。更に、当業者は、他のタイプのフォトニックシステムを含むがこれに限定されない他のタイプの量子システムを使用して例を実施することができる。
【0011】
[0049]区別できない複数の粒子の量子システムの場合、システム内の各粒子の量子状態を記述するのではなく、フォック状態の形式(占有数表示と呼ばれることもある)を使用して多体システム全体の量子状態を記述することが有用である。フォック状態の記述において、多体量子状態は、システムの各モードにいくつの粒子があるかによって定められる。例えば、マルチモード2粒子フォック状態
【数3】

は、1つの粒子がモード1にあり、0個の粒子がモード2にあり、0個の粒子がモード3にあり、及び、1つの粒子がモード4にある2粒子量子状態を定める。ここでも、前述したように、モードは量子物体の任意の特性とすることができる。光子の場合、電磁場の任意の2つのモードを使用することができ、例えば、線形光学系で受動的に動作することができる自由度に関連するモードを使用するようにシステムを設計することができる。例えば、偏光、空間自由度、又は、角運動量を使用することができる。2粒子フォック状態
【数4】

によって表わされる4モードシステムは、4つの導波路のうちの2つの内部で1つの光子が移動する4つの別個の導波路として物理的に実装され得る。そのような多体量子システムの状態の他の例としては、1つの粒子が占める各モードを表わす4粒子フォック状態
【数5】

と、2つの粒子が占めるモード1及び2のそれぞれ並びに0個の粒子が占めるモード3及び4を表わす4粒子フォック状態
【数6】

とが挙げられる。粒子が存在しないモードについては、「真空モード」という用語が使用される。例えば、4粒子フォック状態
【数7】

の場合、モード3及び4が本明細書中では「真空モード」と称される。単一の占有モードを有するフォック状態は、占有モードを識別するために下付き文字を使用して省略表示で表わすことができる。例えば、
【数8】


【数9】

と等価である。
【0012】
[0050]1.1.量子ビット
本明細書中で使用される場合、「量子ビット(qubit)」(又は量子ビット(quantum bit))は、情報を符号化するために使用され得る関連する量子状態を伴う量子システムである。量子状態空間を(複素)2次元ベクトル空間としてモデル化することができる場合には、量子状態を使用して1ビットの情報を符号化することができ、この場合、ベクトル空間内の1つの次元が論理値0にマッピングされ、他の次元が論理値1にマッピングされる。古典的ビットとは対照的に、量子ビットは、論理値0及び1の重ね合わせである状態を有することができる。より一般的には、「量子ビット」は、nビットの情報を符号化するために使用できる(複素)n次元ベクトル空間(任意の整数nについて)としてモデル化され得る量子状態空間を有する任意の量子システムとなり得る。説明を明確にするために、本明細書中では「量子ビット」という用語が使用されるが、幾つかの実施形態において、システムは、量子ビットなどのバイナリビットと必ずしも関連付けられない態様で情報を符号化する量子情報キャリアを使用することもできる。量子ビット(qubits)(又はキューディット(qudits))は、様々な量子システムで実装され得る。量子ビットの例としては、光子の偏光状態、導波路内の光子の存在、又は、分子、原子、イオン、核、もしくは、光子のエネルギー状態が挙げられる。他の例としては、フラックス量子ビット、位相量子ビット、又は、電荷量子ビット(例えば、超伝導ジョセフソン接合から形成される)などの他の人工量子システム、トポロジカル量子ビット(例えば、Majorana fermions)、又は、空孔中心から形成されるスピン量子ビット(例えば、ダイヤモンド中の窒素空孔)が挙げられる。
【0013】
[0051]量子ビットは、量子ビットの論理値が量子システムの2つのモードのうちの1つの占有によって符号化されるように「デュアルレール符号化」され得る。例えば、論理0及び1の値は、以下のように符号化することができる。
【数10】

下付き文字「L」は、前と同様に、ケットが論理状態(例えば、量子ビット値)を表わすことを示し、上記の式の右側の表記
【数11】

は、第1のモードのi個の粒子及び第2のモードのj個の粒子があることを示す(例えば、i及びjは整数)。この表記法では、論理状態
【数12】

(2量子ビットの状態を表わし、第1の量子ビットは「0」論理状態にあり、第2の量子ビットは「1」論理状態にある)を有する2量子ビットシステムは、
【数13】

によって4つのモードにわたる占有を使用して表わすことができる(例えば、フォトニックシステムでは、第1の導波路内の1個の光子、第2の導波路内の0個の光子、第3の導波路内の0個の光子、及び、第4の導波路内の1個の光子)。本開示全体を通して幾つかの例では、不必要な数学的クラッタを回避するために、様々な添字が省略されている。
【0014】
[0052]1.2.もつれ状態
「古典的」コンピューティング(例えば、バイナリロジックを使用する従来のデジタルコンピュータ)に対する量子コンピューティングの利点の多くは、マルチ量子ビットシステムのもつれ状態を生み出す能力に起因する。数学的に言えば、n個の量子物体の状態
【数14】

は、
【数15】

であれば分離可能な状態であり、またもつれ状態は分離不可能な状態である。1つの例はベル状態であり、大まかに言えば、この状態は、2量子ビットシステムのための最大もつれ状態のタイプであり、また、ベル状態の量子ビットはベル対と称される場合がある。例えば、モードの対の単一光子によって符号化された量子ビット(デュアルレール符号化)の場合、ベル状態の例は以下を含む。
【数16】
【0015】
[0053]より一般的には、n量子ビットGreenberger-Horne-Zeilinger(GHZ)状態(又は「n-GHZ状態」)は、n個の量子ビットのもつれ量子状態である。所与の正規直交論理基底に関して、n-GHZ状態は、第1の基底状態にある全ての量子ビットが第2の基底状態にある全ての量子ビットと重ね合わされた量子重畳であり、
【数17】

上記のケットは論理基底を指す。例えば、モードの対の単一光子によって符号化された量子ビット(デュアルレール符号化)の場合、3-GHZ状態は次のように書くことができる。
【数18】

上記のケットは、(モードの添字を省略した)6つのそれぞれのモードにおける光子占有数を指す。
【0016】
[0054]1.3.物理的実装
量子ビット(及び量子ビットに対する動作)は、様々な物理システムを使用して実施することができる。本明細書中に記載される幾つかの例において、量子ビットは、導波路、ビームスプリッタ、フォトニックスイッチ、及び、単一光子検出器を使用する集積フォトニックシステムで与えられ、また、光子によって占有され得るモードは、導波路内の光子の存在に対応する時空間モードである。変換動作を実施するために、モードカプラ、例えば光ビームスプリッタを使用してモードを結合することができ、また、単一光子検出器を特定の導波路に結合することによって測定演算を実施することができる。この開示にアクセスする当業者であれば分かるように、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の適切な自由度のセットによって規定されるモード、例えば偏光モード、時間モードなどを使用できる。例えば、偏光のみが異なるモード(例えば、水平(H)及び垂直(V))の場合、モードカプラが、偏光をコヒーレントに回転させる任意の光学素子、例えば波長板などの複屈折材料となり得る。イオントラップシステム又は中性原子システムなどの他のシステムの場合、モードカプラは、2つのモードを結合することができる任意の物理的機構、例えば、原子/イオンの2つの内部状態を結合するように調整されるパルス電磁場となり得る。
【0017】
[0055]デュアルレール符号化を使用するフォトニック量子計算システムの幾つかの実施形態では、一対の導波路を使用して量子ビットを実装することができる。図1は、デュアルレール符号化フォトニック量子ビットを与えるために使用され得る一対の導波路102、104の一部の2つの表示(100,100’)を示す。100においては、光子106が導波路102内にあり、導波路104内に光子がなく(真空モードとも称される)、幾つかの実施形態では、これがフォトニック量子ビットの
【数19】

状態に対応する。100’においては、光子108が導波路104内にあり、導波路102内に光子がなく、幾つかの実施形態では、これがフォトニック量子ビットの
【数20】

状態に対応する。既知の論理状態のフォトニック量子ビットを前処理するために、光子源(図示せず)を導波路のうちの一方の一端に結合することができる。光子源は、それが結合される導波路内に単一光子を放出するように動作することができ、それによって既知の状態のフォトニック量子ビットを前処理する。光子は導波路を通って移動し、また、光子源を周期的に動作させることによって、その論理状態がフォトニックシステムの異なる時間モードにマッピングされる量子ビットを有する量子システムを同じ導波路対に形成することができる。更に、導波路の複数の対を与えることにより、論理状態が異なる時空間モードに対応する量子ビットを有する量子システムを形成することができる。そのようなシステム内の導波路が互いに特定の空間的関係を有する必要はないことが理解されるべきである。例えば、これらの導波路を平行に配置することができるが、必ずしも平行に配置する必要はない。
【0018】
[0056]占有モードは、所望の導波路内を伝搬する光子を生成するために光子源を使用することによって形成することができる。光子源は、例えば、ヘラルド単一光子源とも呼ばれる光子対を放出する共振器ベースの光子源となり得る。そのような光子源の一例において、光子源は、非線形光学プロセス(例えば、自発的な四光波混合(SFWM)、自発的なパラメトリックダウンコンバージョン(SPDC)、第2高調波生成など)によって光子対を生成することができる光共振器のシステムに結合されるポンプ、例えば光パルスによって駆動される。多くの異なるタイプの光子源を使用することができる。光子対源の例としては、マイクロリングベースの自発的な四光波混合(SPFW)ヘラルド光子源(HPS)を挙げることができる。しかしながら、使用される正確なタイプの光子源は重要ではなく、SPFW、SPDC、又は、任意の他のプロセスなどの任意のプロセスを使用する任意のタイプの非線形源を使用することができる。必ずしも非線形材料を必要としない他のクラスの光子源、例えば量子ドットソース、結晶の色中心などの原子及び/又は人工原子系を使用するものも使用することができる。場合によっては、光子源は、例えば、キャビティに結合された量子ドットなどの人工原子系の場合のように、フォトニックキャビティに結合されてもされなくてもよい。光機械システムなどの他のタイプの光子源もSPWM及びSPDCに存在する。
【0019】
[0057]そのような場合、光子源の動作は、所定のポンプパルスが光子対を生成してもしなくてもよいように、非決定的(「確率的」と呼ばれることもある)であってもよい。幾つかの実施形態では、所定のサイクル中に1つのモードが占有される確率が1に近づくことができるようにするべく幾つかの非決定的光子源のコヒーレント空間及び/又は時間多重化(本明細書では「能動的」多重化と呼ばれる)を使用することができる。当業者であれば分かるように、空間多重化及び/又は時間多重化を組み込む多くの異なる能動的多重化アーキテクチャが想定し得る。例えば、対数ツリー、一般化マッハツェンダ干渉計、マルチモード干渉計、連鎖ソース、ダンプ・ツー・ポンプ方式の連鎖ソース、非対称多結晶単一光子源、又は、任意の他のタイプの能動的多重化アーキテクチャを使用する能動的多重化方式を使用することができる。幾つかの実施形態では、光子源は、量子フィードバック制御などを用いた能動的多重化方式を使用することができる。
【0020】
[0058]測定演算は、光子が検出器によって検出されたことを示す古典信号(例えば、デジタル論理信号)を生成する単一光子検出器に導波路を結合することによって実施することができる。単一光子に対する感度を有する任意のタイプの光検出器を使用することができる。幾つかの実施形態では、(例えば、導波路の出力端における)光子の検出が占有モードを示し、一方、検出された光子の不在は非占有モードを示すことができる。
【0021】
[0059]以下に記載される幾つかの実施形態は、システムの量子状態を変換すると理解することができる、量子システムのモードを結合する一体変換動作の物理的実施態様に関する。例えば、量子システムの初期状態(モード結合前)が、あるモードが確率1で占有され、別のモードが確率1で占有されていない状態である場合(例えば、上記で紹介したフォック記法における状態
【数21】

、モード結合は、両方のモードが占有される非ゼロ確率を有する状態、例えば状態
【数22】

をもたらすことができ、この場合、
【数23】

である。幾つかの実施形態において、この種の動作は、モードを互いに結合するためにビームスプリッタを使用し、1つ以上のモードに位相シフトを適用するために可変移相器を使用することによって実施することができる。振幅a及びaは、ビームスプリッタの反射率(又は透過率)及び導入される任意の位相シフトに依存する。
【0022】
[0060]図2Aは、2つのモードを結合するための概略図210(回路図又は回路表記とも呼ばれる)を示す。モードは水平線212、214として描かれており、モードカプラ216は、結合されているモードを識別するためにノード(実線ドット)で終端する垂直線によって示される。線形量子光学のより具体的な言語では、図2Aに示すモードカプラ216は、転送行列を実装する50/50ビームスプリッタを表わす。
【数24】

ここで、Tは、2つのモード上の光子作成演算子の線形マップを規定する。(特定の状況では、転送行列Tは、一次虚数アダマール変換を実施するものとして理解することができる。)慣例により、システムが3つ以上のモードを含む場合、転送行列の第1の列はトップモードの作成演算子(本明細書ではモード1と呼ばれ、水平線212とラベル付けされる)に対応し、第2の列は第2のモードの作成演算子(本明細書ではモード2と呼ばれ、水平線214とラベル付けされる)に対応し、以下同様である。より明示的には、マッピングは以下のように書くことができる。
【数25】

作成演算子上の下付き文字は、動作されるモードを示し、下付き文字の入力及び出力は、ビームスプリッタの前後の作成演算子の形態をそれぞれ識別し、
【数26】

例えば、図2Aに示されるモードカプラの適用は、以下のマッピングをもたらす。
【数27】

したがって、式(9)によって記述されるモードカプラの作用は、入力状態
【数28】

を以下のように解釈することである
【数29】
【0023】
[0061]図2Bは、幾つかの実施形態に係る2つのフォトニックモードに関して式(9)の転送行列Tを実装するモード結合の物理的実装を示す。この例において、モード結合は、方向性カプラ又はモードカプラと呼ばれることもある導波路ビームスプリッタ200を使用して実施される。導波路ビームスプリッタ200は、一方の導波路のエバネッセント場が他方の導波路に結合することができるように2つの導波路202、204を十分に近接させることによって実現することができる。導波路202、204間の間隔d及び/又は結合領域の長さlを調整することにより、モード間の異なる結合を得ることができる。このように、導波路ビームスプリッタ200を所望の透過率を有するように構成することができる。例えば、ビームスプリッタは、0.5(すなわち、上記で導入された転送行列Tの特定の形態を実装するための50/50ビームスプリッタ)に等しい透過率を有するように設計することができる。他の転送行列が望まれる場合、反射率(又は透過率)は、本開示の範囲から逸脱することなく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、又は、0.9より大きくなるように設計することができる。
【0024】
[0062]モード結合に加えて、幾つかのユニタリ変換は、1つ以上のモードに適用される位相シフトを含み得る。幾つかのフォトニック実装形態では、可変位相シフタを集積回路に実装して、複数のモードにわたって拡散される光子の状態の相対位相を制御することができる。そのような位相シフトを規定する転送行列の例は、(第2のモードに+i及び-i位相シフトをそれぞれ適用するために)以下によって与えられる。
【数30】

シリカ-オン-シリコン材料の場合、幾つかの実施形態は、熱光スイッチを使用して可変位相シフタを実装する。熱光スイッチは、熱光学効果を介して導波路の温度を10-5K程度上昇させることによって屈折率nの変化をもたらすことができる、チップの表面上に製造された抵抗素子を使用する。本開示にアクセスする当業者であれば分かるように、導波路の一部の屈折率を変化させる任意の効果を使用して、可変の電気的に調整可能な位相シフトを生成することができる。例えば、幾つかの実施形態は、電気光学効果をサポートする任意の材料、いわゆるχ及びχ材料、例えばニオブ酸リチウム、BBO、KTPなど、更にはドープ半導体、例えばシリコン、ゲルマニウムなどに基づくビームスプリッタを使用する。
【0025】
[0063]可変透過率及び出力モード間の任意の位相関係を伴うビームスプリッタは、例えば図3Aに示すように、マッハツェンダ干渉計(MZI)形態300において方向性カプラ及び可変位相シフタを組み合わせることによって達成することもできる。デュアルレール符号化における2つのモード302a、302bの相対的な位相及び振幅に対する完全な制御は、位相シフタ306a、306b及び306cによって与えられる位相、並びに、結合領域304a及び304bの長さ及び近接度を変化させることによって達成することができる。図3Bは、位相シフタ306によって与えられる位相を変化させることによってモード302a、302b間の可変透過率を可能にするMZI310のわずかに単純な例を示す。図3A及び図3Bは、物理デバイスにおいてモードカプラをどのように実装することができるかの例であるが、本開示の範囲から逸脱することなく、任意のタイプのモードカプラ/ビームスプリッタを使用することができる。
【0026】
[0064]幾つかの実施形態では、ビームスプリッタ及び位相シフタを組み合わせて使用して、様々な転送行列を実装することができる。例えば、図4 Aは、図2 Aのものと同様の概略的な形態で、以下の転送行列を実装するモードカプラ400を示す。
【数31】

したがって、モードカプラ400は、以下のマッピングを適用する。
【数32】

式(15)の転送行列Tは、第2のモードでの位相シフトによって式(9)の転送行列Tに関係する。これは、モードカプラ416が第1のモードに結合する閉ノード407(線212)と、モードカプラ416が第2のモードに結合する開ノード408(線214)とによって、図4Aに概略的に示される。より具体的には、T=sTsであり、図4Aの右側に示すように、モードカプラ416は、先行及び後続の位相シフト(白四角418a、418bで示す)を用いて、(前述したような)モードカプラ216を使用して実装することができる。したがって、転送行列Tは、図4Bに示す物理ビームスプリッタによって実装することができ、この場合、開いた三角形は+i位相シフタを表わす。
【0027】
[0065]同様に、モードカプラ及び位相シフタのネットワークを使用して、3つ以上のモード間の結合を実施することができる。例えば、図5は、4つのモード上で「スプレッダ」又は「モード情報消去」変換を実施する4モード結合方式を示し、すなわち、この方式は、入力モードのいずれか1つで光子を取り込み、光子が4つの出力モードのいずれか1つで検出される確率が等しくなるように、4つの出力モードのそれぞれの間で光子を非局在化する。(周知のアダマール変換は、スプレッダ変換の一例である。)図2Aのように、水平線512~515はモードに対応し、モード結合は、結合されているモードを識別するためにノード(ドット)を有する垂直線516によって示される。この場合、4つのモードが結合される。回路表記502は、一次モード結合のネットワークである回路図504と等価な表示である。より一般的には、高次モード結合が一次モード結合のネットワークとして実施され得る場合、(適切な数のモードを有する)表記502と同様の回路表記が使用され得る。
【0028】
[0066]図6は、幾つかの実施形態に係る図5に概略的に示される4モード拡散変換を実施することができる光学デバイス600の一例を示す。光学デバイス600は、第1の材料層(図6において実線で表わされる)に形成される光導波路601、603の第1のセットと、第1の材料層(図6において破線で表わされる)とは異なる別個の第2の材料層に形成される光導波路605、607の第2のセットとを含む。第2の材料層及び第1の材料層は、基板上の異なる高さに位置する。当業者であれば分かるように、適切な低損失導波路交差が使用された場合、図6に示すような干渉計を単層で実装できる。
【0029】
[0067]光導波路の第1のセットのうちの少なくとも一つの光導波路601、603は、任意の種類の適切な光カプラ、例えば本明細書中に記載される方向性カプラ(例えば、図2B図3A図3Bに示される光カプラ)を有する光導波路の第2のセットの光導波路605、607と結合される。例えば、図6に示される光学デバイスは4つの光カプラ618、620、622、624を含む。各光カプラは、2つの導波路が平行に伝搬する結合領域を有することができる。2つの導波路は、結合領域内で互いにオフセットされているものとして図6に示されるが、2つの導波路は、オフセットを伴うことなく結合領域内で互いに真上及び真下に位置されてもよい。幾つかの実施形態において、光カプラ618、620、622、624のうちの1つ以上は、2つの導波路間で約50%の結合効率(例えば、49%~51%の結合効率、49.9%~50.1%の結合効率、49.99%~50.01%の結合効率、及び、50%の結合効率など)を有するように構成される。例えば、2つの導波路の長さ、2つの導波路の屈折率、2つの導波路の幅及び高さ、2つの導波路間に位置される材料の屈折率、及び、2つの導波路間の距離は、2つの導波路間に50%の結合効率を与えるように選択される。これにより、光カプラは50/50ビームスプリッタのように動作することができる。
【0030】
[0068]更に、図6に示される光学デバイスは、2つの層間光カプラ614及び616を含むことができる。光カプラ614は、第1の材料層上の導波路を伝搬する光の第2の材料層上の導波路への伝送を可能にし、光カプラ616は、第2の材料層上の導波路を伝搬する光の第1の材料層上の導波路への伝送を可能にする。光カプラ614及び616は、少なくとも2つの異なる層に位置される光導波路をマルチチャネル光カプラで使用できるようにし、これにより、小型のマルチチャネル光カプラが可能になる。
【0031】
[0069]更に、図6に示される光学デバイスは、非結合導波路交差領域626を含む。幾つかの実装形態において、2つの導波路(この例では603及び605)は、非結合導波路交差領域626(例えば、導波路は、ほぼ90度の角度で互いに交差する2つの直線導波路となり得る)内の交差部に平行結合領域が存在することなく互いに交差する。
【0032】
[0070]当業者であれば分かるように、前述の例は例示的なものであり、ビームスプリッタ及び/又は位相シフタを使用するフォトニック回路を使用して、任意の次数の実数アダマール変換及び虚数アダマール変換、離散フーリエ変換などのための変換行列を含む、多くの異なる変換行列を実装できる。本明細書で「スプレッダ」又は「モード情報消去(MIE)」回路と呼ばれるフォトニック回路の1つのクラスは、入力が1つの入力モードに局在化した単一光子である場合に、光子が出力モードのいずれか1つで検出される等しい確率を有するように、回路が幾つかの出力モードのそれぞれの間で光子を非局在化するという特性を有する。スプレッダ又はMIE回路の例は、アダマール転送行列を実装する回路を含む。(スプレッダ又はMIE回路は、1つの入力モードで局在化された単一光子ではない入力を受信することができ、そのような場合の回路の挙動は、実装される特定の転送行列に依存することが理解されるべきである。)他の例において、フォトニック回路は、1つの入力モードの単一光子に関して、異なる出力モードで光子を検出する確率が等しくない転送行列を含む他の転送行列を実装することができる。
【0033】
[0071]幾つかの実施形態において、複数のフォトニック量子ビットのもつれ状態は、2つ(又はそれ以上)の量子ビットのモードを結合して他のモードで測定を実行することによって形成することができる。例として、図7は、幾つかのデュアルレール符号化フォトニック実施形態で使用することができるベル状態生成器700の回路図を示す。この例において、モード732(1)-732(4)は、最初に光子(波線で示す)によってそれぞれ占有され、モード732(5)-732(8)は最初は真空モードである。(当業者であれば分かるように、占有モードと非占有モードとの他の組み合わせを使用できる。)
【0034】
[0072]一次モード結合(例えば、式(9)の転送行列Tを実装する)は、モードカプラ731(1)-731(4)によって示されるように占有モードと非占有モードとの対に対して実行される。その後、モードカプラ737によって示されるように、モードのうちの4つのモード(モード732(5)-732(8))に対してモード情報消去結合(例えば、図5に示すような4モードモード拡散変換を実施する)が実行される。モード732(5)-732(8)は、他の4つのモード732(1)-732(4)でベル状態がうまく生成されたかどうかを決定するために測定されて使用される「ヘラルド」モードとして作用する。例えば、検出器738(1)-738(4)は、二次モードカプラ737の後にモード732(5)-732(8)に結合することができる。各検出器738(1)-738(4)は、光子(又は検出された光子の数)を検出したかどうかを示す古典的データ信号(例えば、導体上の電圧レベル)を出力することができる。これらの出力は、他の4つのモード732(1)-732(4)にベル状態が存在するかどうかを決定する古典的決定論理回路740に結合することができる。例えば、決定論理回路740は、単一光子がちょうど2つの検出器738(1)-738(4)のそれぞれによって検出された場合に限り、ベル状態が確認される(ベル状態生成器の「成功」とも呼ばれる)ように構成することができる。モード732(1)-732(4)は、図7に示されるように、2つの量子ビット(Qubit 1及びQubit 2)の論理状態にマッピングすることができる。具体的には、この例では、Qubit 1の論理状態がモード732(1)及び732(2)の占有率に基づいており、Qubit 2の論理状態はモード732(3)及び732(4)の占有率に基づいている。ベル状態生成器700の動作は非決定的であり得ることに留意すべきである。すなわち、図示のように4つの光子を入力することは、モード732(1)-732(4)でベル状態が生成されることを保証しない。一実施態様では、成功の確率が4/32である。
【0035】
[0073]幾つかの実施形態では、複数のもつれた量子ビット(2つ以上の量子ビット)の量子システムを形成することが望ましい。マルチ量子ビット量子システムを形成するための1つの技術は、量子ビットのシステム間のもつれを作成するために使用され得る投影測定であるもつれ測定の使用によるものである。本明細書で使用される場合、「融合(fusion)」(又は「融合演算」又は「融合(fusing)」)は、投影もつれ測定を指す。「融合ゲート」は、それぞれが一般に異なる量子システムの一部である2つ(又はそれ以上)の入力量子ビットを受ける構造である。融合ゲートを適用する前に、異なる量子システムが互いにもつれる必要はない。2つの入力量子ビットの場合、融合ゲートは、最初の2つの量子システムがもつれた量子ビットの単一量子システムに融合されるように、1(「タイプI融合」)又は0(「タイプII融合」)のいずれかの出力量子ビットを生成する入力量子ビットに対して投影測定演算を実行する。融合ゲートは、一般的なクラスの投影もつれ測定の具体例であり、フォトニックアーキテクチャに特に適している。次に、タイプI及びタイプIIの融合ゲートの例を説明する。
【0036】
[0074]図8Aは、幾つかの実施形態に係るタイプI融合ゲート800を例示する回路図を示す。図8Aに示される図は、各水平線が量子システム、例えば光子のモードを表わす概略図である。デュアルレール符号化では、モードの各対が量子ビットに相当する。ゲートのフォトニック実装では、図8Aに示すような図のモードが、フォトニック導波路内の単一光子を使用して物理的に実現され得る。最も一般的には、図8Aに示されるようなタイプI融合ゲートは、量子ビットA(例えば光子モード843及び845によって物理的に実現される)及び量子ビットB(例えば光子モード847及び849によって物理的に実現される)を入力として取り込み、入力量子ビットA又は入力量子ビットBのいずれか(又は両方)と既にもつらされた他の量子ビットとのもつれを受け継ぐ単一の「融合」量子ビットを出力する。
【0037】
[0075]例えば、図8Bは、それぞれが幾つかのより長いもつれたクラスタ状態の終わり(すなわち、リーフ)に位置される量子ビットである2つの量子ビットA,BのタイプI融合の結果を示す(その一部のみが示される)。融合演算後に残る量子ビット857は、元の量子ビットA,Bからもつれ結合を受け継ぎ、それによって、より大きな線形クラスタ状態を生み出す。また、図8Bは、それぞれ量子ビットの何らかのより長いもつれクラスタ(その一部のみが示されている)に属する内部量子ビットである2つの量子ビットA,BのタイプI融合の結果を示す。前述のように、融合後に残る量子ビット859は、元の量子ビットA,Bからもつれ結合を受け継ぎ、それによって、融合量子システムを生み出す。この場合、融合演算後に残る量子ビットは、図示のように、4つの他の最近傍量子ビットによってより大きな量子システムともつらされる。
【0038】
[0076]図8Aに示されるタイプI融合ゲート800の概略図に戻ると、量子ビットAはモード843及び845によってデュアルレール符号化され、量子ビットBはモード847及び849によってデュアルレール符号化される。例えば、経路符号化されたフォトニック量子ビットの場合、量子ビットAの論理ゼロ状態(
【数33】

で示される)は、モード843が単一光子を含むフォトニック導波路であり且つモード845がゼロ光子を含むフォトニック導波路である場合に生成する(量子ビットBについても同様である)。したがって、タイプI融合ゲート800は、入力として2つのデュアルレール符号化光子量子ビットを取り込むことができ、それによって、合計4つの入力モード(例えば、モード843、845、847及び849)をもたらす。融合演算を達成するために、光子検出器855(それぞれモード843及び849に結合された2つの別個の光子検出器を含む)を使用して両方のモードに対して検出動作を実行する前に、モードカプラ(例えば、50/50ビームスプリッタ)853が、入力量子ビットのそれぞれのモードの間、例えばモード843とモード849との間に適用される。更に、出力モードが隣接して位置されるようにするために、量子ビットAの第2のモードの位置(モード845)を量子ビットBの第2のモードの位置(モード849)と入れ替えるモードスワップ動作851を適用することができる。幾つかの実施形態において、モードスワップは、前述のような物理導波路交差によって、又は1つ以上のフォトニックスイッチによって又は任意の他のタイプの物理モードスワップによって達成することができる。
【0039】
[0077]図8Aは、タイプI融合ゲートの例示的な配置のみを示し、当業者であれば分かるように、本開示の範囲から逸脱することなく、モードカプラの位置及びモードスワップ領域851の存在を変更することができる。例えば、ビームスプリッタ853は、モード845とモード847との間に適用することができる。モードスワップは、随意的であり、隣接していないモードを有する量子ビットを、例えば、この情報を古典メモリに記憶することによってどのモードがどの量子ビットに属するかを追跡することによって取り扱うことができる場合には必要ではない。
【0040】
[0078]タイプI融合ゲート800は非決定性ゲートであり、すなわち、融合演算は1未満の特定の確率で成功し、他の場合には、結果として生じる量子状態は、より大きな量子システムを形成するために互いに融合された元の量子システムを含むより大きな量子システムではない。より具体的には、ゲート800は、検出器855によってただ1つの光子が検出された場合、確率50%で「成功」し、検出器855によって0個又は2個の光子が検出された場合、「失敗」する。ゲートが成功すると、量子ビットA及び量子ビットBが一部であった2つの量子システムは、単一のより大きな量子システムに融合され、融合された量子ビットは、以前にリンクされていなかった2つの量子システムをリンクする量子ビットとして残る(例えば、図8B参照)。しかしながら、融合ゲートが失敗すると、より大きな量子システムを生成することなく元の量子システムから両方の量子ビットを除去する効果がある。
【0041】
[0079]図9Aは、幾つかの実施形態に係るタイプII融合ゲート900を例示する回路図を示す。本明細書中の他の図と同様に、図9Aに示す図は概略図であり、各水平線は量子システムのモード、例えば光子に相当する。デュアルレール符号化では、モードの各対が量子ビットに相当する。ゲートのフォトニック実装では、図9Aに示すような図のモードは、フォトニック導波路内の単一光子を使用して物理的に実現することができる。最も一般的には、ゲート900などのタイプII融合ゲートは、量子ビットA(例えば光子モード943及び945によって物理的に実現される)及び量子ビットB(例えば光子モード947及び949によって物理的に実現される)を入力として取り込み、入力量子ビットA又は入力量子ビットBのいずれか(又は両方)と既にもつらされた他の量子ビットとのもつれを受け継ぐ量子状態を出力する。(タイプII融合の場合、入力量子状態がそれらの間に合計N個の量子ビットを有する場合、出力量子状態はN-2個の量子ビットを有する。これは、間に合計N個の量子ビットを有する入力量子状態がN-1個の量子ビットを有する出力量子状態をもたらすタイプI融合とは異なる)
【0042】
[0080]例えば、図9Bは、それぞれが幾つかのより長いもつれたクラスタ状態(その一部のみが示されている)の終わり(すなわち、リーフ)に位置される量子ビットである2つの量子ビットA,BのタイプII融合の結果を示す。結果として得られる量子システム971は、量子ビットA及び量子ビットBからもつれ結合を継承し、それによってより大きな線形量子システムを作り出す。
【0043】
[0081]図9Aに示されるタイプII融合ゲート900の概略図に戻ると、量子ビットAはモード943及び945によってデュアルレール符号化され、量子ビットBはモード947及び949によってデュアルレール符号化される。例えば、経路符号化されたフォトニック量子ビットの場合、量子ビットAの論理ゼロ状態(
【数34】

で示される)は、モード943が単一光子を含むフォトニック導波路であり且つモード945がゼロ光子を含むフォトニック導波路である場合に生成する(量子ビットBについても同様である)。したがって、タイプII融合ゲート900は、入力として2つのデュアルレール符号化光子量子ビットを取り込み、それによって、合計4つの入力モード(例えば、モード943、945、947及び949)をもたらす。融合演算を達成するために、第1のモードカプラ(例えば、50/50ビームスプリッタ)953が、入力量子ビットのそれぞれのモード間、例えばモード943とモード949との間に適用され、第2のモードカプラ(例えば、50/50ビームスプリッタ)955が、入力量子ビットのそれぞれの他のモード間、例えばモード945とモード947との間に適用される。検出動作は、光子検出器957(1)-957(4)を使用して4つのモード全てに対して実行される。幾つかの実施形態では、モードスワップ動作(図9Aには図示せず)を実行して、モード結合の前にモードを隣接する位置に配置することができる。幾つかの実施形態において、モードスワップは、前述のような物理導波路交差によって、又は1つ以上のフォトニックスイッチによって又は任意の他のタイプの物理モードスワップによって達成することができる。モードスワップは、随意的であり、隣接していないモードを有する量子ビットを、例えば、この情報を古典メモリに記憶することによってどのモードがどの量子ビットに属するかを追跡することによって取り扱うことができる場合には必要ではない。
【0044】
[0082]図9Aは、タイプII融合ゲートの例示的な配置のみを示し、当業者であれば分かるように、本開示の範囲から逸脱することなく、モードカプラの位置及びモードスワップ領域の有無を変更することができる。
【0045】
[0083]図9Aに示すタイプII融合ゲートは非決定性ゲートであり、すなわち、融合演算は1未満の一定の確率で成功し、他の場合には、結果として生じる量子状態は、より大きな量子システムに一緒に融合された元の量子システムを含むより大きな量子システムではない。より具体的には、検出器957(1)、957(4)のいずれかで1光子が検出され、検出器957(2)、957(3)のいずれかで1光子が検出された場合に、ゲートが「成功」し、他の全ての場合において、ゲートは「失敗」する。ゲートが成功すると、量子ビットA及び量子ビットBが一部であった2つの量子システムは、単一のより大きな量子システムに融合され、タイプI融合とは異なり、融合した量子ビットは残っていない(図8B図9Bとを比較する)。融合ゲートが失敗すると、より大きな量子システムを生成することなく元の量子システムから両方の量子ビットを除去する効果がある。
【0046】
[0084]図10は、幾つかの実施形態に係る量子ビットもつれシステム1001の一例を示す。そのようなシステムは、幾つかの実施形態によれば、もつれた状態(例えば、GHZ状態、ベル対など)で量子ビット(例えば、光子)を生成するために使用することができる。幾つかの実施形態では、量子ビットもつれシステム1001は、以下に説明するようにリソース状態生成器として動作することができる。
【0047】
[0085]例示的なフォトニックアーキテクチャでは、量子ビットもつれシステム1001は、もつれ状態生成器1000に光学的に接続された光子源モジュール1005を含むことができる。光子源モジュール1005及びもつれ状態生成器1000の両方は、古典的処理システム1003が光子源モジュール1005及び/又はもつれ状態生成器1000と(例えば、古典的情報チャネル1030a~bを介して)通信及び/又は制御できるように、古典的処理システム1003に結合されてもよい。光子源モジュール1005は、導波路1032を相互接続することによって、出力光子をもつれ状態生成器1000に提供することができる単一光子源の集合を含むことができる。もつれ状態生成器1000は、出力光子を受け、それらを1つ以上のもつれたフォトニック状態に変換し、次いでこれらのもつれたフォトニック状態を出力導波路1040に出力することができる。幾つかの実施形態では、出力導波路1040は、例えば量子計算を実行するために、もつれ状態を使用することができる何らかの下流の量子フォトニック回路に結合することができる。例えば、もつれ状態生成器1000によって生成されたもつれ状態は、後述するように、1つ以上のインタリーブモジュールのリソース状態として使用され得る。
【0048】
[0086]幾つかの実施形態では、システム1001は、構成要素間で古典的な情報を相互接続し提供するための古典チャネル1030(例えば、古典チャネル1030a~1030d)を含むことができる。古典チャネル1030a~1030dは全て同じである必要はないことに留意すべきである。例えば、古典チャネル1030a~1030cは、1つ以上の基準信号、例えば、1つ以上のクロック信号、1つ以上の制御信号、又は古典情報を搬送する任意の他の信号、例えば、ヘラルド信号、光子検出器読み出し信号などを搬送する双方向通信バスを備えることができる。
【0049】
[0087]幾つかの実施形態では、量子ビットもつれシステム1001は、光子源モジュール1005及び/又はもつれ状態生成器1000と通信し、及び/又はそれらを制御する古典的コンピュータシステム1003を含む。例えば、幾つかの実施形態では、古典的コンピュータシステム1003を使用して、例えば光子源モジュール1005及びもつれ状態生成器1000に提供され得るシステムクロック、並びに量子計算を実行するために使用される任意の下流の量子フォトニック回路を使用して、1つ以上の回路を構成することができる。幾つかの実施形態では、量子フォトニック回路は、光回路、電気回路、又は任意の他のタイプの回路を含むことができる。幾つかの実施形態では、古典的コンピュータシステム1003は、メモリ1004と、1つ以上のプロセッサ1002と、電源と、入力/出力(I/O)サブシステムと、通信バス又はこれらの構成要素を相互接続することとを含む。プロセッサ1002は、メモリ1004に記憶されたモジュール、プログラム、及び/又は命令を実行し、それによって処理動作を実行することができる。
【0050】
[0088]幾つかの実施形態では、メモリ1004は、1つ以上のプログラム(例えば、命令のセット)及び/又はデータ構造を記憶する。例えば、幾つかの実施形態では、もつれ状態生成器1000は、連続するステージにわたってもつれ状態を生成しようと試みることができ、それらのステージのうちのいずれか1つがもつれ状態の生成に成功し得る。幾つかの実施形態では、メモリ1004は、それぞれのステージが成功したかどうかを決定し、それに応じてもつれ状態生成器1000を構成する(例えば、ステージが成功した場合に光子を出力に切り替えるように、又はステージがまだ成功していない場合に光子をもつれ状態生成器1000の次のステージに渡すように、もつれ状態生成器1000を構成することによって)ための1つ以上のプログラムを記憶する。そのために、幾つかの実施形態では、メモリ1004は、古典的コンピューティングシステム1003がステージが成功したかどうかを決定することができる検出パターン(後述)を記憶する。更に、メモリ1004は、例えば、構成要素の1つ以上の位相シフトを設定することによって構成される、本明細書に記載の様々な構成可能な構成要素(例えば、スイッチ)に提供される設定を記憶することができる。
【0051】
[0089]幾つかの実施形態では、前述の機能の一部又は全ては、光子源モジュール1005及び/又はもつれ状態生成器1000上のハードウェア回路で実施することができる。例えば、幾つかの実施形態では、光子源モジュール1005は、1つ以上のコントローラ1007a(例えば、論理コントローラ)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASICS)、古典的なプロセッサ及びメモリを含む「システムオンチップ」などを含むことができる)を含む。幾つかの実施形態では、コントローラ1007aは、光子源モジュール1005が成功したかどうかを決定し(例えば、以下に記載される所与のクロックサイクルに対する所与の試行について)、光子源モジュール1005が成功したかどうかを示す基準信号を出力する。例えば、幾つかの実施形態では、コントローラ1007aは、光子源モジュール1005が成功した場合、古典チャネル1030a及び/又は古典チャネル1030cに論理ハイ値を出力し、光子源モジュール1005が成功しなかった場合、古典チャネル1030a及び/又は古典チャネル1030cに論理ロー値を出力する。幾つかの実施形態では、コントローラ1007aの出力は、コントローラ1007b内のハードウェアを構成するために使用され得る。
【0052】
[0090]同様に、幾つかの実施形態では、もつれ状態生成器1000は、もつれ状態生成器1000のそれぞれのステージが成功したかどうかを決定し、前述のスイッチングロジックを実行し、基準信号を古典チャネル1030b及び/又は1030dに出力して、もつれ状態生成器400が成功したかどうかに関して他の構成要素に通知する、1つ以上のコントローラ1007b(例えば、論理コントローラ)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASICS)などを含むことができる)を含む。
【0053】
[0091]幾つかの実施形態では、システムクロック信号は、外部ソース(図示せず)を介して、又は古典チャネル1030a及び/又は1030bを介して古典的コンピューティングシステム1003が生成することによって、光子源モジュール1005及びもつれ状態生成器1000に提供することができる。幾つかの実施形態では、光子源モジュール1005に提供されるシステムクロック信号は、光子源モジュール1005をトリガして、導波路ごとに1つの光子を出力しようと試みる。幾つかの実施形態では、もつれ状態生成器1000に提供されるシステムクロック信号は、光子を検出しようと試みるために、もつれ状態生成器1000内の検出器のセットをトリガ又はゲートする。例えば、幾つかの実施形態では、光子を検出しようと試みるために、もつれ状態生成器1000内の検出器のセットをトリガすることは、検出器のセットをゲート制御することを含む。
【0054】
[0092]幾つかの実施形態では、光子源モジュール1005及びもつれ状態生成器1000は、内部クロックを有することができることに留意すべきである。例えば、光子源モジュール1005は、コントローラ1007aによって生成及び/又は使用される内部クロックを有することができ、もつれ状態生成器1000は、コントローラ1007bによって生成及び/又は使用される内部クロックを有する。幾つかの実施形態では、光子源モジュール1005の内部クロック及び/又はもつれ状態生成器1000は、外部クロック(例えば、古典的コンピュータシステム1003によって提供されるシステムクロック)に同期される(例えば、位相ロックループを介して)。幾つかの実施形態では、内部クロックのいずれかは、それ自体がシステムクロックとして使用されてもよく、例えば、光子源の内部クロックは、システム内の他の構成要素に分配され、マスタ/システムクロックとして使用されてもよい。
【0055】
[0093]幾つかの実施形態では、光子源モジュール1005は、空間的及び/又は時間的に多重化され得る複数の確率的光子源、すなわちいわゆる多重化単一光子源を含む。そのような光源の一例では、光源は、何らかの非線形プロセス(例えば、自発的な四光波混合、第2高調波生成など)によって0個、1個、又は複数の光子を生成することができる光共振器に結合されたポンプ、例えば光パルスによって駆動される。本明細書で使用される場合、用語「試み」は、出力光子を非決定論的に生成することができる何らかの種類の駆動信号、例えばポンプパルスで光子源を駆動する行為を指すために使用される(すなわち、駆動信号に応答して、光子源が1つ以上の光子を生成する確率は、1未満であり得る)。幾つかの実施形態では、それぞれの光子源は、それぞれの試みにおいて、ゼロ光子を生成する可能性が最も高い場合がある(例えば、単一光子を生成しようとする1回あたり0光子を生成する確率は90%であり得る)。試みの第2の最も可能性の高い結果は、単一光子の生成であり得る(例えば、単一光子を生成する試みごとに単一光子を生成する確率は9%であり得る)。試みの3番目に可能性の高い結果は、2つの光子の生成であり得る(例えば、単一光子を生成しようとする1回あたり2つの光子を生成する確率は約1%であり得る)。状況によっては、3つ以上の光子を生成する確率は1%未満であり得る。
【0056】
[0094]幾つかの実施形態では、光子源の見かけの効率は、複数の単一光子源を使用し、複数の光子源の出力を多重化することによって増大させることができる。
【0057】
[0095]使用される正確なタイプの光子源は重要ではなく、自発的な四光波混合(SPFW)、自発的なパラメトリックダウンコンバージョン(SPDC)、又は任意の他のプロセスなどの任意の光子生成プロセスを使用して、任意のタイプの光子源を使用することができる。必ずしも非線形材料を必要としない他のクラスの光子源、例えば量子ドットソース、結晶の色中心などの原子及び/又は人工原子系を使用するものも使用することができる。場合によっては、光子源は、例えば、キャビティに結合された量子ドットなどの人工原子系の場合のように、フォトニックキャビティに結合されてもされなくてもよい。光機械システムなどの他のタイプの光子源もSPWM及びSPDCに存在する。幾つかの例では、光子源は、既にもつれ状態にある複数の光子を放出することができ、その場合、もつれ状態生成器400は必要でなくてもよく、或いは、もつれ状態を入力として取り、更に大きなもつれ状態を生成してもよい。
【0058】
[0096]説明のために、幾つかの非決定性光子源の空間多重化を使用する例が、MUX光子源の例として説明される。しかしながら、本開示の範囲から逸脱することなく、多くの異なる空間MUXアーキテクチャが可能である。時間的MUXも、空間多重化の代わりに、又は空間多重化と組み合わせて実施することができる。対数ツリー、一般化マッハツェンダ干渉計、マルチモード干渉計、連鎖ソース、ダンプ・ツー・ポンプ方式の連鎖ソース、非対称多結晶単一光子源、又は任意の他のタイプのMUXアーキテクチャを使用するMUX方式を使用することができる。幾つかの実施形態では、光子源は、量子フィードバック制御などを伴うMUX方式を使用することができる。
【0059】
[0097]上記の説明は、導波路間のモード結合を使用して物理量子ビット及び物理量子ビットに対する動作を実施するためにフォトニック回路をどのように使用できるかの例を提供する。これらの例では、各物理量子ビットを表わすために一対のモードを使用することができる。以下に説明する例は、同様のフォトニック回路素子を用いて実現することができる。
【0060】
[0098]幾つかの実施形態では、複数の物理量子ビットのもつれシステムを1つ以上の「論理量子ビット」にマッピングすることができ、量子計算に関連する演算を論理量子ビット上の論理演算として規定することができ、論理量子ビットを物理量子ビット上の物理演算にマッピングすることができる。一般に、「量子ビット」という用語は、物理的又は論理的量子ビットを指定せずに本明細書で使用される場合、物理量子ビットを指すと理解されるべきである。
【0061】
[0099]2.融合ベースの量子コンピューティング(FBQC)の概要
本明細書で使用される「量子計算」は、一般に、量子ビットの集合に対して一連の演算(「計算」)を実行することを指す。量子計算は、「回路ベースの量子計算」(CBQC)の枠組みで考慮されることが多く、その場合、演算は、量子ビットに対して実行される論理「ゲート」のシーケンスとして指定される。ゲートは、単一量子ビットの単一演算(回転)、CNOTゲートなどの2量子ビットもつれ演算、又はToffoliゲートなどの他のマルチ量子ビットゲートのいずれかとすることができる。
【0062】
[0100]CBQC、及び一般に量子計算の1つの課題は、量子ビット及び量子ビットに対する演算を実施する物理システムがしばしば非決定性であり、雑音が多いことである。例えば、前述のフォトニックベル状態生成器及び融合回路は、フォトニック量子ビット間のもつれを作り出すことができるが、それらは非決定論的にそのように行い、成功の確率は1よりかなり小さい。更に、物理システムは「ノイズが多い」場合がある。例えば、光子を伝搬する導波路は、完全に効率的ではない場合があり、光子の時折の損失をもたらす。これらの理由から、フォールトトレラント量子コンピューティングが望ましい目標である。
【0063】
[0101]「測定ベースの量子計算」(MBQC)は、フォールトトレランスを可能にする量子計算を実施する手法である。MBQCでは、まず、一般に「クラスタ状態」と呼ばれる、多くの物理量子ビットの特定のもつれ状態を準備し、次いで、一連の単一量子ビット測定を実行して量子計算を実行(又は実行)することによって、計算が進行する。例えば、1つ又は2つの物理量子ビット上で動作する一連のゲートを実装するのではなく、クラスタ状態の物理量子ビットのサブセットを「論理」量子ビットにマッピングすることができ、論理量子ビット上のゲート演算を、1つ以上の論理量子ビットに関連する物理量子ビット上の測定値の特定のセットにマッピングすることができる。物理量子ビット間のもつれは、異なる物理量子ビット上の測定値間の予想される相関をもたらし、これはエラー訂正を可能にする。クラスタ状態は、特定の計算に固有ではない態様で準備することができ(場合によっては、クラスタ状態のサイズ以外)、単一量子ビット測定値の選択は、特定の計算によって決定される。MBQC手法では、クラスタ状態の慎重な設計によって、及びクラスタ状態を構成する物理量子ビットのいずれかのエラーによって引き起こされ得る任意の論理エラーから保護する態様で論理量子ビットを符号化するためにクラスタ状態のトポロジを使用することによって、フォールトトレランスを達成することができる。論理量子ビットの値(又は状態)は、計算が進行するにつれてクラスタ状態の物理量子ビットに対して行われる単一粒子測定の結果(本明細書では測定結果とも呼ばれる)に基づいて決定、すなわち読み出すことができる。
【0064】
[0102]例えば、MBQCに適したクラスタ状態は、特定の状態(
【数35】

状態と呼ばれることもある)の物理量子ビットの集合を準備し、物理量子ビットの対の間に制御位相ゲート(「CZゲート」と呼ばれることもある)を適用してクラスタ状態を生成することによって規定することができる。図式的には、このようにして形成されたクラスタ状態は、物理量子ビットを表わす頂点と量子ビットの対間のもつれ(例えば、CZゲートの適用)を表わすエッジとを有するグラフによって表わすことができる。グラフは、繰り返し単位セルから形成された規則的な構造を有する3次元グラフとすることができ、「格子」と呼ばれることもある。格子の一例は、Raussendorf格子であり、これは、R.Raussendorfら、「Fault-Tolerant One-Way Quantum Computer」、Annals of Physics 321(9):2242-2270(2006)に詳細に記載されている。そのような表示では、格子の2次元境界を識別することができる。これらの境界に属する量子ビットは「境界量子ビット」と呼ばれ、他の全ての量子ビットは「バルク量子ビット」と呼ばれる。他のクラスタ状態構造も使用することができる。論理演算は、クラスタ状態の量子ビットに対して単一量子ビット測定を行うことによって実行され、各測定は、実行されるべき特定の量子計算に従って選択される特定の論理基底で行われる。クラスタ状態にわたる測定結果の集合は、デコーダの使用による論理量子ビットのセットに対する量子計算の結果として解釈することができる。国際公開第2019/002934号パンフレットに記載されているUnion-Findデコーダを含む、デコーダアルゴリズムの多数の例が利用可能である。
【0065】
[0103]しかしながら、クラスタ状態にわたる長距離もつれの生成及び維持、及びその後の大クラスタ状態の記憶は、課題となり得る。例えば、MBQC手法の任意の物理的実施態様では、相互にもつれた数千以上の量子ビットを含むクラスタ状態が準備され、次いで単一量子ビット測定が実行される前にある期間保存されなければならない。
【0066】
[0104]「融合ベースの量子コンピューティング」(FBQC)は、論理量子ビットのセットに対する計算を、(一般にはるかに大きい)数の物理量子ビットに対する測定値のセットとして規定することができ、物理量子ビットに対する測定結果間の相関によりエラー訂正が可能になるという点で、MBQCに関連する技術である。しかしながら、FBQCは、最初に大きなクラスタ状態を作成し、次にそれを操作する必要性を回避する。FBQCのフォトニック実装では、幾つかの物理量子ビットから成るもつれ状態(「リソース状態」と呼ばれる)が周期的に生成され、測定演算(例えば、2量子ビット測定値及び/又は単一量子ビット測定値を提供することができる前述のタイプII融合演算)を実行できる回路に(導波路を介して)搬送される。測定は、測定された量子ビットを破壊するが、量子情報は、他のリソース状態の他の量子ビットに転送(テレポート)されるときに保存される。したがって、量子情報は、物理量子ビットの静的アレイに記憶されるのではなく、新たに生成された物理量子ビットに周期的にテレポートされる。
【0067】
[0105]FBQCでは、MBQCと幾分類似して、格子状構造を有することができる、融合グラフと呼ばれる無向グラフに計算をマッピングすることができる。融合グラフは、異なるリソース状態の選択された量子ビット(例えば、格子の「バルク」領域において)及び個々の量子ビット測定値(例えば、格子の境界において)に対する融合演算を含む、リソース状態の物理量子ビットに対して実行される演算を規定することができる。FBQC技術の例は、2021年8月5日に公開された国際公開第2021/155289号パンフレット「Fusion Based Quantum Computing」に記載されている。このセクションでは、以下に説明するインタリーブモジュール及び他のハードウェア構成要素のコンテキストを提供するために、FBQCの概念的な説明を提供する。
【0068】
[0106]2.1.リソース状態
前述したように、FBQCは、量子計算を実施するための基本的な物理的要素として「リソース状態」を使用することができる。本明細書で使用される場合、「リソース状態」は、分離不可能なもつれ状態(より小さな別々のもつれ状態に分解することができないもつれ状態)にある物理量子ビットの数(n)のもつれシステムを指す。様々な実施形態において、数nは、小さい数(例えば、3から30の間)であり得るが、より大きい数は排除されない。
【0069】
[0107]図11は、幾つかの実施形態に従って使用され得るリソース状態1100のグラフ表示を示す。図11のグラフ表示において、リソース状態1100の各物理量子ビット1101~1106は円として表わされ、物理量子ビット間のもつれは、量子ビットの対を接続する線1111~1116によって表わされる。リソース状態1100は、「6リング」リソース状態と呼ばれることもある。本明細書で使用される例では、もつれ形状は3次元空間を画定する。便宜上、もつれ空間内の基本方向は、南北(N-S)、東西(E-W)、及び上下(U-D)と呼ばれる。リソース状態1100は、もつれ空間内の各基本方向(N,S,U,D,E,W)に関連付けられた一量子ビットを有する。方向ラベルは、もつれ空間を指し、物理空間内の物理的寸法又は方向に対応する必要はないことを理解すべきである。更に、場合によっては、量子ビットは空間次元ではなく時間的に分離されてもよい。例えば、各物理量子ビットは、導波路内を伝搬する光子を使用して実装することができ、導波路の特定の部分は、異なる時間に異なる量子ビットに関連付けられた光子をホストすることができる。
【0070】
[0108]幾つかの実施形態では、リソース状態1100は、前述した種類の光子源及びもつれ回路を使用して生成することができる。例えば、ベル対は、1つ以上の光子源(前述のようにMUX光子源とすることができる)及び図7の回路700などの回路を使用して生成することができる。3-GHZ状態は、図8AのタイプI融合800などの回路を使用して、2つのベル対から生成することができる。6つの3-GHZ状態のセットから、図9AのタイプII融合回路900などの回路を使用して6リングリソース状態1100を形成することができる。前述したように、ベル状態生成回路700及び融合回路800及び900などのもつれ生成回路は、非決定論的に動作することができる。幾つかの実装形態では、リソース状態を生成する確率を高めるために、時間的及び/又は空間的多重化技術を使用して、幾つかのそのような回路の出力を多重化することができる。
【0071】
[0109]リソース状態1100は例示的なものであり、限定的なものではない。幾つかの実施形態では、リソース状態のもつれ形状は、実行される特定の計算に基づいて選択することができ、同じ計算で使用される異なるリソース状態は、異なるもつれ形状を有することができる。更に、リソース状態1100は6量子ビットを含むが、リソース状態における量子ビットの数も変えることができる。したがって、リソース状態は、示されている例よりも大きくても小さくてもよい。リソース状態を生成するために使用される回路はまた、特定のもつれ形状及び/又は様々なもつれ生成動作の成功の確率に応じて変更することができる。リソース状態が生成されない非ゼロ確率を考慮するために、エラー訂正符号を構築することもできる。
【0072】
[0110]2.2.論理演算
FBQCに関連してリソース状態の量子ビットに対して実行される演算は、融合グラフを使用して概念的に表わすことができる。図12Aは、幾つかの実施形態に係る融合グラフ1200の一例を示す。同じN-S、E-W、U-D命名規則(いかなる物理的寸法又は方向にも対応する必要はない)を用いて、図11で規定された同じ3次元もつれ空間が使用される。しかしながら、図11とは異なり、各頂点1201は、個々の量子ビットではなく、リソース状態(例えば、6リングリソース状態1100)を表わす。各頂点1201は、リソース状態の物理的に異なるインスタンスを表わす。2つの頂点1201を接続する各エッジ1210は、異なるリソース状態の量子ビット間の融合演算に対応する。各融合演算は、例えば、2量子ビット測定値を生成する上記のタイプII融合演算であり得る。関与する特定の量子ビットは、もつれ空間内のエッジの方向から識別することができる。したがって、例えば、エッジ1210aは、頂点1201aによって表わされるリソース状態のN量子ビットと頂点1201bによって表わされる(異なる)リソース状態のS量子ビットとの間の融合演算に対応し、エッジ1210bは、頂点1201bによって表わされるリソース状態のU量子ビットと頂点1201cによって表わされる(第3の)リソース状態のD量子ビットとの間の融合演算に対応する。各半エッジ1220(「半エッジ」はただ1つの頂点1201に接続されている)は、その頂点1201によって表わされるリソース状態の対応する量子ビットに関する単一量子ビット測定値を表わす。したがって、例えば、半エッジ1220aは、頂点1201aによって表わされるリソース状態のE量子ビットに対する単一量子ビット測定値に対応する。
【0073】
[0111]幾つかの実施形態では、融合グラフ1200などの融合グラフは、一連の「層」1230として見ることができ、各層はU-D軸上の座標に対応する。物理システムでFBQCを実装することは、各層のリソース状態を連続的に生成すること(例えば、DからUの方向に)と、その層のグラフのエッジ及び半エッジによって指定されるように、各層内で融合及び単一量子ビット測定演算を実行することとを含むことができる。連続する層のリソース状態が生成されると、1つの層のリソース状態のU量子ビットと次の層の対応する位置のリソース状態のD量子ビットとの間で融合演算を実行することができる。以下の説明では、融合演算は、「空間的」又は「時間的」と呼ばれることがある。この用語は、異なる量子ビット又はリソース状態が異なる時間に生成又は受信される特定の実施態様を想起させるものであり、空間融合は、異なるハードウェアインスタンスを使用して同時に生成又は受信される量子ビット間で実行することができ、時間融合は、同じハードウェアインスタンス(又は異なるハードウェアインスタンス)を使用して異なる時間に生成又は受信される量子ビット間で実行することができる。フォトニック量子ビットの場合、以前に生成された量子ビットを遅延させる(例えば、更なる長さの導波路材料を使用して光子のためのより長い伝搬経路を形成する)ことによって時間的融合を実施することができ、それによって、後に生成される量子ビットとのモード結合が可能になる。時間的融合を活用することにより、同じハードウェアを使用して、層内のリソース状態の複数のインスタンスを生成及び/又は処理し、及び/又はリソース状態の複数の層を生成することができる。以下に実施例を示す。
【0074】
[0112]論理量子ビットに対する一連の演算のための幾つかの符号化方式では、「静止している」論理量子ビット(すなわち、他の論理量子ビットと相互作用しないか、そうでなければ作用している)は、図12Aに示すような正則格子パターンを有する融合グラフ上にマッピングすることができる。図11の6リングリソース状態の場合、格子の大部分の各リソース状態は、隣接するリソース状態の量子ビットと融合されたその6つの量子ビットのそれぞれを有する。(タイプII融合回路に入力される2つの量子ビットは、互いに「融合」していると口語的に記載されることがある)例えば、リソース状態1100の第1のインスタンスのE量子ビット1101及びリソース状態1100の第2のインスタンスのW量子ビット1102を融合回路(例えば、図9AのタイプII融合回路)に入力して、2量子ビット測定値を得ることができる。格子の境界において、融合演算を受けない量子ビットは、単一量子ビット測定を受けることができる。
【0075】
[0113]論理量子ビットに対する論理演算は、選択された位置における融合グラフの規則格子パターンを修正することによって、例えば、単一量子ビット測定値を融合演算に置き換えることによって、又はその逆によって指定することができる。修正の選択は、実行される特定の計算に依存する。幾つかの例を次に説明する。
【0076】
[0114]幾つかの実施形態では、融合グラフ1200などの融合グラフを使用して、論理量子ビットのセットに対して実行される論理演算を指定することができる。例えば、FBQCに実装された論理演算を規定する融合グラフは、フォールトトレラントCBQCで計算を規定するために使用される種類の表面符号空間時間又はタイムスライス図から生成することができる。図12B~12Dは、3つの異なる論理演算、すなわち、(a)アイドリング論理量子ビット(すなわち、他のいかなる論理量子ビットとも相互作用していない論理量子ビットである)の測定、(b)2量子ビット
【数36】

測定(「格子手術」)、(c)ねじれを加えたY測定のための表面符号時空間又はタイムスライス図から融合グラフを生成する方法の例を示す。図12Eは、図12Dで使用される融合グラフ表記の凡例1250を示す。
【0077】
[0115]図12Bは、当技術分野で既知の技術を使用して構築することができる表面符号時空間図1242a~1242cの例を示す。凡例1252に示すように、表面符号時空間図は、論理量子ビットを規定する表面(例えば、プライマル境界及びデュアル境界)上の論理演算(例えば、ねじれ、転位)を表わすことができる。時空間図1242aは、停止している論理量子ビットに対応する。時空間図1242bは、2量子ビット
【数37】

測定に対応する。時空間図1242cは、ねじれを伴うY測定に対応する。表面符号及びCBQCを用いてフォールトトレラント量子計算を実行する場合、量子計算全体は一連のタイムスライス(又はタイムステップ)を介して進むことができる。各時間スライスにおいて、「チェック演算子」測定値のセットが実行され、チェック演算子測定値は、物理量子ビット上の演算子の測定値であり、チェック演算子測定値のパターンは、論理量子ビットに対して特定の論理演算を実施し、エラーの検出及び訂正を可能にする。所与のタイムスライスにおけるチェック演算子の測定値は、タイムスライス図で表わすことができる。例として、図12Bの各論理演算について、2つの代表的な時間スライスの時間スライス図が図12Cに示されている。具体的には、タイムスライス1244a-1及び1244a-2は、時空間図1242aから選択され、タイムスライス1244b-1及び1244b-2は、時空間図1242bから選択され、タイムスライス1244c-1及び1244c-2は、時空間図1242cから選択される。図12Cの全てのタイムスライス図では、5の2乗符号距離が使用され、論理量子ビットは、チェック演算子が適用される5×5の物理量子ビットの正方形パッチにマッピングされる。(異なる符号距離を適用できることを理解すべきである)凡例1254に示すように、各タイムスライス内のチェック演算子は、バルクにおける4量子ビット演算子
【数38】

と、境界における2量子ビット演算子
【数39】

とを含み、X、Y、及びZは、物理量子ビット上のパウリ演算子である。ねじれ及び転位の演算子も図示のように規定される。タイムスライス図1244a-1、1244a-2、1244b-1、1244b-2、1244c-1、及び1244c-2に示すように、タイムスライスは、物理量子ビット演算子の表記を省略する簡略化された方法で描くことができ、正しい演算子は、凡例に従って明暗の陰影のパターンから推測することができる。
【0078】
[0116]量子計算は、図12Cのタイムスライスなどのタイムスライスのシーケンスとして表わすことができる。しかしながら、図12Bの時空間図1242a~1242cなどの3D図において2Dタイムスライスのシーケンスを表わすことは、より便利であることが多い。時空間図における黒い実線は、時空間を通るパッチの角の軌跡をトレースする。陰影符号化された(又は色分けされた)表面は、空間時間を通じてプライマル境界及びデュアル境界を追跡し、様々な陰影パターンの意味が凡例1252に示されている。時空間図1242を通る2次元空間的断面は、時間スライス図1244に対応する。バルクは、プライマル及びデュアル測定(図12Cの様々なタイムスライス図に見られるように)の規則的なパターンを有し、バルクにおける測定値は、境界から推測することができる。また、図12Bには、(時間スライス1244c-1に適用された)ねじれ動作及び境界の関連する転位を示す角線が示されている。時空間図は、それらが対応するタイムスライスの数(又は符号距離)を直接示す必要はない。一般に、必ずしもそうとは限らないが、空間構成に対する各変更は、符号距離に等しい数のタイムスライスにわたって続く。
【0079】
[0117]例示の目的のために、時空間図1242aは、時空間図1242aからの角線及びデュアル境界キャッピングオフによって示されるように、Z基底で測定されるまでしばらくアイドリングする論理量子ビットを示す。時空間図1242bは、「格子手術」による論理2量子ビット測定
【数40】

に対応する。時空間図1242cは、Y演算子を用いた論理マルチクビットパウリ測定に寄与する矩形パッチ内に符号化された論理クビットに対応する。これらの論理演算の詳細(時空間図が特定の論理演算にどのように対応するかを含む)は、本開示を理解することに関連せず、当業者は、時空間図及びタイムスライス図を構築するためのそのような詳細及び技術に精通している。
【0080】
[0118]FBQCの幾つかの実施形態では、時空間図を簡単な方法で融合グラフに変換することができる。例えば、図12Dは、時空間図1242a~1242cに対応する融合グラフ1240a~1240cを示す。融合グラフ1240a~1240cは、両方ともリソース状態の立方格子を記述するという点で、融合グラフ1200と概ね同様であり得る。しかしながら、融合グラフ1240は、格子内の特定の立方体又は直方体の体積に色又は陰影を割り当てることによって、実行される測定演算に関する更なる情報を追加する。図12Eは、融合グラフ1240a~1240cにおける立方体又は直方体の体積の陰影(又は色)が、異なるリソース状態の量子ビットにおける測定値の対応するセットにどのようにマッピングされるかを示す凡例1250を示す。図12Eにおいて、一番上の行1261は、特定の2量子ビット(融合)測定値及び単一量子ビット測定値を表わす線種を規定する。後続の行1262~1266は、各立方体又は直方体の体積が融合測定値と単一量子ビット測定値との組み合わせにどのようにマッピングされるかを示している。幾つかの実施形態において、各2量子ビット融合測定(例えば、タイプII融合測定)は、
【数41】

測定結果の両方をもたらし、したがって、CBQC時空間図のプライマルチェック及びデュアルチェックは、融合グラフに変換されると、凡例1250の第2の行1262に示すように、両方とも同じ測定操作(及び同じハードウェア)及び結果の組み合わせに対応することができる。プライマルチェックとデュアルチェックとの違いは、測定結果データが復号化においてどのように使用されるかであり得る。凡例1250の行1263及び1264に示される境界チェックは、融合結果と2つの単一量子ビット測定値との組み合わせを含む半立方体に対応する。凡例1250の行1265に示されているねじれは、
【数42】

融合測定を含む(且つ特定の格子位置をスキップする)。幾つかの実装形態では、
【数43】

融合測定は、
【数44】

融合測定結果を乗算することによって決定することができるので、更なるハードウェアを必要としない。凡例1250の行1266に示される転位は、特定の格子位置をスキップし、
【数45】

融合測定を含む。
【0081】
[0119]時空間図から融合グラフへの変換は、図12C図12Dとを比較することによって分かるように、簡単であり得る。融合グラフの大部分は、3D市松模様のプライマル立方体及びデュアルバルク立方体で満たされ、プライマル及びデュアル境界はプライマル立方体又はデュアル半立方体で装飾される。ねじれ又は格子転位が存在する場合、それらは凡例1250に示す直方体を使用して追加される。融合グラフのスライスは、対応するCBQCタイムスライスのパターンを模倣することができるが、凡例1250(図12E)と凡例1254(図12C)とを比較することによって分かるように、解釈は異なる。融合グラフ内の立方体数は符号距離に依存し、符号距離dを有する正方形パッチのタイムスライスはd個のリソース状態を含む。
【0082】
[0120]融合グラフ1240などの融合グラフの生成に関する更なる説明は、上記の国際公開第2021/155289号パンフレット及びhttps://arxiv.org/abs/2103.08612で入手可能なH.Bombinら、「インタリーブ:フォールトトレラントなフォトニック量子コンピューティングのためのモジュール式アーキテクチャ、」、arXiv:2013.08612v1[quant-ph]、2021年3月15日に見出すことができる。
【0083】
[0121]幾つかの実施形態では、融合グラフは、リソース状態のセットに対して融合演算の特定の組み合わせを実行するために「命令」に「コンパイル」され得る。例として、図13A図13Cは、幾つかの実施形態に係る、4つの論理量子ビット(q,q,q,q)に対する論理演算を実施する融合グラフの図を示す。図13Aは、9つの層の第1のセット1302及び9つの層の第2のセット1304を含む融合グラフ1300の斜視図を示す。(説明を簡単にするために、図13Aは、異なる層内のリソース状態間の融合演算を示していないが、図12Aに示すように、隣接する層の対応する位置のリソース状態間で融合演算を実行できることを理解すべきである。また、説明を簡単にするために、図12Bの陰影は図13A図13Cには適用されない。プライマル立方体及びデュアルバルク立方体及び境界の半立方体の適切なパターンを推測することができる)図13Bは層1302の代表的なものを示し、図13Cは層1304の代表的なものを示す。この例では、計算は、論理量子ビットqとqとの間で第1パウリ積測定値Zを実行し、次いで論理量子ビットqとqとの間で第2パウリ積測定値Zを実行することを含む。この例では、9の「符号距離」(又は「符号サイズ」)が割り当てられている。符号距離は、所望のエラー訂正符号を提供するために使用されるバルク格子のサイズに関する選択可能なパラメータであり、符号距離の選択は、特定のハードウェア実装(例えば、リソース状態を提供するために使用される特定のもつれ生成回路の予想光子損失及び成功率)及び所望のフォールトトレランスの程度に依存し得る。この例では、各論理演算に関連付けられた層の数は符号距離に対応し、(図13B及び図13Cに最もよく見られるように)層内の格子修正間の物理量子ビットの数も符号距離に対応する。符号距離の選択は、本開示の理解に関連せず、本明細書に記載の実施形態は、ある範囲の符号距離をサポートすることができる。更に、この例は立方体符号(3次元全てで同じ符号距離)を使用しているが、立方体符号は必要ではなく、異なる次元(例えば、U-D、S-N、E-W)に沿った符号距離は互いに異なり得る。
【0084】
[0122]図13Bは、Z測定に対応する層1302のうちの代表的なものを示す。全ての層1302が同じ格子パターンを有することができることを理解すべきである。格子セクション1321は、静止時の論理量子ビットq(すなわち、他の量子ビットと相互作用しない)を表わし、格子セクション1324は、静止時の論理量子ビットqを表わす。この例では、各論理量子ビットは9の符号距離を有し、各層において9×9の格子として表わされる。U字形格子セクション1322は、論理量子ビットq及びqのZ2Z3測定値を表わす。図13Bによって示唆されるように、論理量子ビットに対する論理演算は、更なるリソース状態及び融合演算を導入することを含むことができ、更なるリソース状態及び融合演算の数は、少なくとも部分的に符号距離に依存する。
【0085】
[0123]図13Cは、Z測定に対応する層1304のうちの代表的なものを示す。全ての層1304が同じ格子パターンを有することができることを理解すべきである。格子セクション1342及び1343は、静止時の論理量子ビットq及びqを表わす。U字形格子セクション1341は、論理量子ビットq及びqのZ測定値を表わす。
【0086】
[0124]図12A図12E及び図13A図13Cは、論理量子ビット上で論理演算を実施するために、(物理量子ビット上の)単一量子ビット測定値と、異なるリソース状態の(物理)量子ビット間の融合との所定の組み合わせを使用する原理を示す。融合グラフは、物理量子ビットの特定の実装に依存しない方法で動作を指定できることを理解すべきである。以下に説明する幾つかの実施形態は、リソース状態の物理量子ビットに対する動作を実施することができる再構成可能ハードウェアモジュールを提供する。幾つかの実施形態では、そのような動作は、融合グラフで指定された動作に対応することができ、再構成可能ハードウェアモジュールによって提供された測定データを復号して論理演算の結果を決定することができる。しかしながら、再構成可能ハードウェアモジュールの動作は、実行されるべき動作を選択又は指定する任意の特定の態様、又は再構成可能ハードウェアモジュールによって生成された測定データの任意の特定の下流での使用に依存しない。
【0087】
[0125]3.インタリーブモジュール
幾つかの実施形態によれば、汎用「インタリーブ」ハードウェアモジュール(又は回路)は、一定の時間間隔でその出力においてリソース状態を提供するリソース状態相互接続部(RSI)と、(後述するような)再構成可能融合回路のセットと、リソース状態相互接続部から適切な再構成可能融合回路に量子ビットを配信するためのスイッチ及び/又は遅延線の組み合わせとを含むことができる。古典的制御論理を使用して、生成される各リソース状態の各量子ビットのスイッチ設定及び量子ビットを受信する各再構成可能融合回路の構成を制御することにより、インタリーブモジュール又はインタリーブモジュールのネットワークを動作させて、プログラムを実行するプログラム可能量子コンピュータを提供することができ、プログラムは、融合グラフ又は各リソース状態の動作のセットを指定する他の技術を使用して規定することができる。より一般的には、インタリーブモジュールを使用して、量子ビットのもつれシステムの作成及び測定に関連する様々な動作を実行することができる。
【0088】
[0126]3.1.インタリーブモジュールのための回路構成要素
3.1.1.リソース状態相互接続部(RSI)
幾つかの実施形態では、インタリーブモジュールは、本明細書では「RSI回路」又は「RSI」とも呼ばれるリソース状態相互接続部を含む。図14Aは、本明細書の図面においてRSI回路1490を示す回路記号を示す。RSI回路1490は、その出力がリソース状態の量子ビット(これは、前述したように、もつれ量子ビットの量子システムである)である任意の回路又は構成要素を使用して実装することができ、リソース状態の異なる量子ビットを出力するために異なる出力経路1491が使用される。幾つかの実施形態では、RSI回路1490は、「RSIクロック」のサイクルごとに1つのリソース状態を生成する回路又は他のハードウェアデバイスとして実装することができる。他の実施形態では、RSI回路1490は、他のハードウェアで生成されたリソース状態を受信及び分配する入力ポートとして実装することができる。例えば、RSI回路1490は、一端でリソース状態を生成する外部回路又は構成要素(図示せず)に結合され、他端でRSI回路1490の出力経路1491に結合された導波路のセットを含むことができる。集積回路内に形成されたフォトニック導波路、光ファイバ、他の導波路、及び/又は他の光相互接続の任意の組み合わせを使用することができる。RSI回路1490は、外部リソース状態生成回路からリソース状態を受信し、RSIクロックサイクルごとに1つのリソース状態のレートで量子ビットをそれぞれの出力経路1491にルーティングすることができる。このようにして、RSI回路1490は、インタリーブモジュールの入力ポートとして機能することができる。例えば、リソース状態を生成する1つ以上のフォトニック回路は、インタリーブモジュールとは別の位置に実装することができ、そのような回路の数は、インタリーブモジュールの数と等しいか又はそれよりも多くすることができる。スイッチング回路は、所与のリソース状態を、それが生成される回路から特定のインタリーブモジュール内の特定のRSI回路1490へ選択的にルーティングするために設けられることが可能である。所与のRSIクロックサイクルの間、RSI回路1490の各出力経路1491が同じリソース状態の異なる量子ビットを提供することを条件として、様々な回路及び結合を使用することができる。
【0089】
[0127]RSIクロックサイクル(本明細書では「動作サイクル」又は単に「クロックサイクル」とも呼ばれる)の持続時間は、リソース状態を生成する回路がリソース状態を生成する物理プロセスを完了することができるのに十分な長さであれば、必要に応じて選択することができる。様々な実施形態では、動作サイクル時間は約1ns又は約10nsであり得るが、より長い又はより短い動作サイクル時間は排除されない。
【0090】
[0128]リソース状態の特定のサイズ及びもつれ形状は、設計パラメータとして選択することができる。場合によっては、最適なサイズは、量子ビットの特定の物理的実施態様に依存し得る。例えば、前述したように、量子ビットは、導波路内を伝搬する光子を使用して実施することができる。光子を生成し、もつれを生み出すために使用されるプロセスは、確率的であってもよい(すなわち、任意の所定の事例において光子を首尾よく生成する確率は、1よりも著しく小さい)。量子ビットの生成又はもつれが確率的である場合、多重化技術又は他の技術を使用して、(それぞれの試みごとに)定められたもつれ構造を有するリソース状態を生成する確率を高めることができる。加えて、リソース状態のサイズは、許容され得るリソース状態生成のエラー率、及び指定されたもつれ構造を有するリソース状態を生成する特定の確率に部分的に基づいて、特定の実装に対して選択することができる。本明細書で説明される例は、もつれ空間(例えば、6リングリソース状態1100)内の異なる方向に関連する6量子ビットを有するリソース状態を指し、RSI回路1490の出力経路1491は、もつれパターンの視覚化を助けるために方向(U,D,E,W,S,N)でラベル付けされることがある。そのようなラベルは、物理的配置を指定することを意図していない。他のリソース状態を使用することができ、リソース状態は6量子ビットよりも多い又は少ない量子ビット及び任意の所望のもつれ構造を有することができることを理解すべきである。RSI回路1490に、又はRSI回路によって提供される各リソース状態は、他の量子システムともつれない別個の量子システムであり得る。異なるリソース状態からの量子ビット間のもつれは、後述する例のように、インタリーブモジュールの動作によって生成され得る。
【0091】
[0129]本開示を理解する目的のために、リソース状態の生成は、RSI回路1490がRSIクロックサイクルあたり1つのリソース状態のレートでリソース状態を出力することができる限り、RSI回路1490内で、又は出力量子ビットがRSI回路1490に提供される別個の回路もしくはシステム内で行うことができることを理解すれば十分である。しかしながら、更なるコンテキストを提供するために、ここで、リソース状態を生成するための技術の例を説明する。
【0092】
[0130]幾つかの実施形態では、個々の光子を生成及び動作するべく、フォトニック回路及び電子回路並びに構成要素(例えば、上記の節1.3に記載されているタイプのもの)を使用してリソース状態1100などのリソース状態を生成することができる。幾つかの実装形態では、(RSI回路1490の外部又は内部にあり得る)リソース状態生成器は、例えば従来のシリコンベースの技術を使用して製造された1つ以上の集積回路を含むことができる。リソース状態生成器は、光子源を含むことができ、又は外部光源から光子を受けることができる。また、リソース状態生成器は、前述したようにベル状態生成器及び融合演算を実装するフォトニック回路を含むこともできる。堅牢性を提供するために、外部リソース状態生成器は、RSI回路1490を介して伝播するリソース状態の成功したインスタンスを選択するための検出器及び電子制御ロジックを有する様々なフォトニック回路の複数の並列インスタンスを含むことができる。当業者は、所望のもつれ形状を有するリソース状態を生成することができるフォトニックリソース状態生成器を構築するための様々な方法を知っている。
【0093】
[0131]幾つかの実施形態では、リソース状態は、線形光学システム以外の技術を使用して生成することができる。例えば、イオントラップに実装された量子ビット、原子もしくはイオンのエネルギーレベルで符号化された他の量子ビット、スピン符号化量子ビット、超伝導量子ビット、又は他の物理システムなど、「物質ベース」量子ビットのシステム間のもつれを生成する及びもたらすための様々なデバイスが知られている。多くの異なる物理系を使用して同じ情報(この場合、量子状態)を符号化できるという意味で、量子情報は代替可能であることも当技術分野で理解されている。したがって、原理的には、システム間の相互作用を誘発することによって、あるシステムの量子状態を別のシステムに交換することが可能である。例えば、原子又はイオンのエネルギーレベルで符号化された量子ビット(又はもつれ量子ビットの集合)の状態は、電磁場(すなわち、光子)に交換することができる。超伝導量子ビットの状態をフォトニック状態に交換するためにトランスデューサ技術を使用することも可能である。場合によっては、初期スワップは、マイクロ波周波数を有する光子上であってもよい。交換後、光子の周波数を光ファイバ又は他の光導波路の動作周波数に増大させることができる。別の例として、量子テレポーテーションは、物質ベースの量子ビットと、ベル対の1つの量子ビットが光ファイバ(又は他の光導波路)に適した周波数を有する光子であるベル対との間に適用することができ、それにより、物質ベースの量子ビットの量子状態をフォトニック量子ビットのシステムに転送する。したがって、幾つかの実施形態では、物質ベースの量子ビットを使用して、フォトニック量子ビットから成るリソース状態を生成することができる。
【0094】
[0132]3.1.2.スイッチング回路
図14Bは、スイッチング回路(又は「スイッチ」)1480を示す記号を示す。スイッチング回路1480への入力及び出力は、任意の数の量子ビットを含むことができ、入力の数は、出力の数に等しい必要はない。スイッチング回路1400は、1つ以上の能動的光スイッチ、モードカプラ、位相シフタなどの任意の組み合わせを組み込むことができる。スイッチング回路は、入力モードを再構成し(例えば、量子ビットのモードを結合することによって量子ビットの基底変化をもたらすために)、入力モードを変更し、及び/又は入力モードのうちの1つ以上に位相を適用する能動動作を実行するように構成することができる(これは、モード間の後続の結合に影響を及ぼし得る)。場合によっては、スイッチング回路1480は、入力量子ビットを2つ以上の代替出力経路のうちの一方に結合することができるルーティングスイッチを実装する。幾つかの実施形態では、スイッチング回路1480の動作(例えば、ルーティング経路の選択)は、古典的制御信号1481に応じて動的に制御することができ、その状態は、以前の動作の結果、実行されるべき特定の計算、構成設定、タイミングカウンタ(例えば、周期的な切り替えのために)、又は任意の他のパラメータもしくは情報に基づいて決定することができる。
【0095】
[0133]3.1.3.遅延回路
図14Cには、遅延回路(「遅延線」ともいう)1470を示す記号が示されている。遅延回路は、量子ビットを一定時間遅延させ、量子ビットに記憶された量子情報のメモリとして機能することができる。時間の長さ(クロックサイクル単位)は、数によって示され、この例ではLであり、Lクロックサイクルの遅延を意味する。フォトニック量子ビットの場合、遅延回路は、例えば、遅延量子ビットの光子が非遅延量子ビットの光子よりも長い経路を進むように、1つ以上の適切な長さの光ファイバ又は他の導波路材料を提供することによって実装することができる。
【0096】
[0134]3.1.4.再構成可能融合回路
図14Dは、幾つかの実施形態に係る再構成可能融合回路1400の簡略化された概略図を示す。再構成可能融合回路1400は、入力経路1402、1404上で2つの量子ビットを受ける。量子ビットが(例えば、上記のセクション1.3で説明したように)デュアルレール符号化を使用するフォトニック量子ビットであってもよく、図14A図14Dに示される各経路を一対の導波路を使用して実装することができることを理解すべきである。より一般的には、各経路に対応する導波路の数は、量子ビットの特定のフォトニック符号化に従って選択することができる。各量子ビットはアクティブ光スイッチに入り、入力経路1402はスイッチ1412に入り、入力経路1404はスイッチ1414に入る。スイッチ1412、1414のそれぞれは、入力を5つの可能な出力経路のうちの1つに選択的にルーティングする1×5ルーティングスイッチとすることができる。スイッチ1412は、融合回路1420、パウリX測定回路1431、パウリY測定回路1432、パウリZ測定回路1433、及び位相回転回路1435の5つの「宛先」のそれぞれに結合された出力経路を有し、パウリZ測定回路1436にその出力を提供する。同様に、スイッチ1412はまた、融合回路1420、パウリX測定回路1441、パウリY測定回路1442、パウリZ測定回路1443、及び位相回転回路1445の5つの「宛先」のそれぞれに結合された出力経路を有し、出力をパウリZ測定回路1446に提供する。パウリX、Y、及びZ測定値は、量子ビットに対して規定され、各パウリ測定回路1431~1433、1436、1441~1443、1446は、基底回転(必要に応じて、X、Y、又はZ基底について)を含むことができ、基底回転は、前述したようなモードカプラ及び位相シフタと、それに続く各モードに結合された検出器とを使用して実施することができる。例えば、量子ビットがデュアルレール符号化で表わされる場合、検出器は、量子ビットを表わす2つの導波路のそれぞれの端部に結合することができる。測定結果は、各検出器によって検出された光子の数、又は光子が検出されたか否かを示す各検出器からの2値信号を含むことができる。
【0097】
[0135]融合回路1420は、例えば、図9A及び図9Bを参照して前述したようなタイプII融合回路であってもよい。融合回路1420は、例えば、図9Aに示すような検出器957を使用して、入力量子ビットの対に対してパウリXX及びZZジョイント測定値を提供することができる。前述したように、各検出器957は、古典的な出力信号を提供することができ、古典的な出力信号は、例えば、光子が検出されたかどうか、又は検出された光子の数のカウントを示すバイナリロジック信号とすることができる。
【0098】
[0136]位相シフト回路1435、1445のそれぞれは、パウリZ測定回路1436、1446の前にeiπ/8の位相シフトを印加する。幾つかの実施形態では、この位相回転経路は、FBQCの様々な実装形態をサポートするためにいわゆる「マジック」状態を生成する際に使用することができる。(FBQCにおけるマジック状態及びその用途は、上記の国際公開第2021/155289号パンフレットに更に記載されている)
【0099】
[0137]スイッチ1412、1414は古典的制御論理1450によって制御される。古典的制御論理1450は、プログラマブルプロセッサ及びメモリを有するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくはシステムオンチップ(SOC)などの古典的な論理ゲート(AND、OR、NOR、XOR、NAND、NOTなど)の配置、又は特定用途向け集積回路(ASIC)などのオンチップハードワイヤード回路を有するデジタル論理回路として実装することができる。幾つかの実施形態では、スイッチ1412、1414は、プロセッサ及びメモリを有するオフチップ古典コンピュータに結合され、オフチップ古典コンピュータは、古典的制御論理1450の動作の一部又は全てを実行するようにプログラムされる。幾つかの実施形態では、古典的制御論理1450(オフチップの古典的コンピュータを含むことができる)には、再構成可能融合回路1400に入力される量子ビットの各対に対して所望される測定のタイプを示すプログラム符号(上記のように融合グラフから決定することができる)を提供することができ、古典的制御論理1450は、スイッチ1412、1414に制御信号を送信して、所望の時間に所望の測定を実行するように再構成可能融合回路1400を構成することができる。
【0100】
[0138]古典的制御論理1450はまた、測定回路1431~1433、1441~1443、1436、1446、及び融合回路1420の全てから古典的な出力信号(測定結果データ)を受信することができる。幾つかの実施形態では、古典的制御論理1450は、測定結果データに基づいて量子計算の結果を解釈するために復号ロジックを実行することができ、場合によっては、復号ロジックの結果は、スイッチ1412、1414の後続の設定を決定するための入力として使用することができる。これに加えて又は代えて、古典的制御論理1450は、測定結果データを復号し、及び/又は測定結果データを使用して他の動作を実行することができる他のシステム又はデバイスに測定結果データを提供することができる。
【0101】
[0139]図14Dの左側には、再構成可能融合回路1400の一例を表わすために後続の図で使用される回路シンボル1460が示されている。
【0102】
[0140]3.2.完全にネットワーク化された単位セル
図15は、幾つかの実施形態に係る融合グラフを実行するための単位セルの「完全にネットワーク化された」実装形態の簡略化された概略図を示す。多数(n×n)の単位セル1500が接続されてネットワークアレイ(又はネットワーク)1502が形成され、図示のように隣接する単位セル1500間が接続される。数n×nは、融合グラフにおける層の寸法に対応することができる。例えば、図13Aの融合グラフの場合、層寸法は36×18である。幾つかの用途では、層寸法ははるかに大きくてもよい(例えば、10×10又は10×10程度)。本明細書の全ての概略図と同様に、概略図内の構成要素の配置は、ハードウェア構成要素の特定の物理的配置を意味する必要はないことを理解すべきである。
【0103】
[0141]各単位セル1500は、図14AのRSI回路1490の一例とすることができるRSI回路1510と、それぞれが図14Dの再構成可能融合回路1400の一例とすることができる3つの再構成可能融合回路1512a、1512b、1512cとを含むことができる。各単位セル1500はまた、1RSIサイクルの遅延を導入する遅延線1514を含むことができる。遅延線1514は、前述したように、適切な長さの導波路(例えば、光ファイバ)を使用して実装することができる。
【0104】
[0142]融合グラフ1520によって示されるように、ネットワークアレイ1502は、寸法n×nを有する1つの層1520が各RSIサイクルで生成される融合グラフを実装することができる。各単位セル1500において、6量子ビット(上記の図のように、N、S、E、W、U、及びDとラベル付けされている)を有するリソース状態が、各RSIサイクルの間に各RSI1510によって提供される。各量子ビットは、再構成可能融合回路1512a~1512cのうちの一方又は隣接する単位セル1500のいずれかに、別個の出力経路上に提供される。図示の例では、N量子ビットがN方向に隣接する単位セル1500に提供される。S量子ビットは再構成可能融合回路1512aに提供され、再構成可能融合回路はまた、S方向に隣接する単位セル1500からN量子ビットを受信する。同様に、W量子ビットは、W方向において単位セル1500の隣接インスタンスに提供される。E量子ビットは再構成可能融合回路1512bに提供され、再構成可能融合回路はまた、E方向に隣接する単位セル1500からW量子ビットを受信する。U量子ビットは、遅延線1514を使用して1RSIサイクルだけ遅延された後、次のRSIサイクルの間に同じRSI1510によって生成されたリソース状態のD量子ビットと同期して再構成可能融合回路1512cに提供される。幾つかの実施形態では、計算は、各単位セル1500内の各再構成可能融合回路1512a~1512c内のスイッチを制御することによって実施することができる。
【0105】
[0143]図15には示されていないが、幾つかの実施形態では、単一光子測定回路(図14Dに示すパウリ測定回路1431~1433と同様)をネットワークアレイ1502の境界で単位セル1500のルーティング経路に結合して、融合グラフの外側境界で量子ビットの単一量子ビット測定を実行することができる。融合グラフの外側境界で量子ビットを管理するための他のオプションも提供することができる。
【0106】
[0144]3.3.パッチベースの層生成
図15に示す完全にネットワーク化された構成は、各RSIクロックサイクルで寸法n×nの層を生成するためにn×n単位セル1500のネットワークアレイ1502を使用する。前述したように、層寸法は非常に大きくてもよく、ネットワークアレイ1502を実装するには相当量のハードウェアが必要になる可能性がある。必要とされるハードウェアの量を減らすために、ネットワークアレイ1502は、何らかの整数k>1に対して寸法P=n×nのk個の「パッチ」のセットを生成することによって層を生成するように修正することができる。合計の層サイズは、n×n×kとすることができる。
【0107】
[0145]図16は、幾つかの実施形態に係る単位セル1600のネットワークアレイを使用する層のパッチベースの生成を示す簡略化された融合グラフ1620を示す。融合グラフ1620は、各層がk個のRSIサイクルのセットにわたって生成されることを示している。融合グラフ1620を実装するために使用される単位セル1600は、図15のネットワークアレイ1502と同様にネットワークに接続することができる。単位セル1600は、1サイクル遅延線1514がkサイクル遅延線1614に置き換えられている点で図15の単位セル1500とは異なり、その結果、U量子ビットは、RSI1610が次の層の対応する位置のリソース状態を生成するRSIサイクルまで遅延される。
【0108】
[0146]融合グラフ1620は、k個の互いに素な直方体のセットを示す。幾つかの実施形態では、更なる再構成可能融合回路、スイッチング回路、及び遅延線(図16には示されていない)を使用して、各層の隣接するパッチを一緒に「スティッチング」することができる。パッチ間のステッチを実施するための適切な回路は、以下のセクションを考慮して明らかになるであろう。
【0109】
[0147]3.4.インタリーブモジュールのネットワーク
幾つかの実施形態によれば、融合グラフを実行するための代替手法は、「インタリーブモジュール」のネットワークアレイの使用を含み、各インタリーブモジュールは、LRSIサイクルでサイズLの連続パッチを処理するように構成され、隣接するインタリーブモジュールによって生成されたパッチは、境界で一緒にスティッチングすることができる。本明細書で「インタリーブ長」と呼ばれることもあるパラメータLは、必要に応じて選択することができる。インタリーブ長の選択に関する考慮事項を以下に記載する。
【0110】
[0148]図17は、幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールのネットワークの簡略化された概略図を示す。多数(n×n)のインタリーブモジュール1700がネットワークアレイ1702を形成するように接続され、隣接するインタリーブモジュール1700は、図に示されるように遅延線1730、1740によって接続される。遅延線1730は、インタリーブモジュール1700の一例をW方向におけるその隣接部に接続し、L個のRSIサイクルの遅延を導入する。遅延線1740は、インタリーブモジュール1700の一例をそのN方向の隣接するものに接続し、LRSIサイクルの遅延を導入する。ネットワークアレイ1702を使用して、寸法(L・n)×(L・n)を有する層を有する融合グラフ1720を生成することができる。
【0111】
[0149]各インタリーブモジュール1700は、各RSIサイクル中に6量子ビット(ラベル化N、S、W、E、D、U)を有するリソース状態を出力又は提供するRSI回路1710を含む。「ローカル」融合回路とも呼ばれる再構成可能融合回路1712a、1712b、1712cは、図14の再構成可能融合回路1400の例とすることができ、異なるRSIサイクル中に同じインタリーブモジュール1700内のRSI回路1710によって提供される異なるリソース状態の量子ビットに対して融合演算又は単一量子ビット測定演算を選択的に実行するために使用することができる。加えて、インタリーブモジュール1700の隣接するインスタンス内のRSI回路1710によって提供されるリソース状態間のもつれを可能にするために、更なる「ネットワーク」融合回路1712d、1712eを提供することができる。ネットワーク化融合回路1712d及び1712eは、ローカルに生成されたリソース状態の量子ビット及びインタリーブモジュール1700の隣接インスタンスから受信された「ネットワーク化された」量子ビットに対して融合演算又は単一量子ビット測定演算を選択可能に実行する、図14Dの再構成可能融合回路1400の更なるインスタンスであり得る。ルーティングスイッチ1716a~1716dは、特定のリソース状態のN、S、W、及びE量子ビットをローカル融合回路1712a、1712bのうちの一方(異なる動作サイクルにおいて同じRSI回路1710によって提供される異なるリソース状態の量子ビットを受信する)に、又はネットワーク化融合回路1712d、1712eのうちの一方(インタリーブモジュール1700の隣接するインスタンスにおいて異なるRSI回路1710によって提供される異なるリソース状態の量子ビットを受信する)に選択的にルーティングするように構成された(例えば、上記のように)スイッチング回路とすることができる。
【0112】
[0150]この例では、各インタリーブモジュール1700は、L個の連続するRSIサイクルの間にWからEに進むことによってパッチの「行」を構築し、次いで、次のL個のRSIサイクルの間にS方向に次の行を構築し、以下同様である。したがって、遅延線1714aは、E量子ビットのための遅延の1RSIサイクルを提供する。スイッチ1716dが、E量子ビットが到達したときに狭域経路(すなわち、ローカル融合回路1712bに結合された経路)を選択するように設定されている場合、RSI1710によって出力された第1のリソース状態のE量子ビットは、RSI1710によって出力された次のリソース状態のW量子ビットと同期して狭域融合回路1712bに到達することができる。同様に、遅延線1714bは、S量子ビットに対してL個のRSI遅延サイクルを提供する。スイッチ1716bが、S量子ビットが到着したときに狭域経路(すなわち、ローカル融合回路1712aに結合された経路)を選択するように設定されている場合、RSI1710によって出力された第1のリソース状態のS量子ビットは、後のRSI1710LのRSIサイクルによって出力された別のリソース状態のN量子ビットと同期して狭域融合回路1712aに到着することができ、これにより、異なる行における隣接する格子位置に対応するリソース状態の量子ビット間の融合演算が可能になる。前述したように、インタリーブモジュール1700は、LRSIサイクルで層のためのパッチを構築する。したがって、遅延線1714cは、U量子ビットにL個のRSI遅延サイクルを提供し、その結果、RSI1710によって出力されたリソース状態のU量子ビットは、次の層の対応する位置についてRSI1710によって出力された異なるリソース状態のD量子ビットと同期して融合回路1712cに到達する。
【0113】
[0151]ネットワーク化融合回路1712d、1712eはそれぞれ、ローカルRSI1710(すなわち、ネットワーク化融合回路1712d、1712eを有する同じインタリーブモジュール内のRSI1710)によって出力された「ローカル」量子ビットと、隣接するインタリーブモジュール1700からの「ネットワーク」量子ビットとを受信することができ、それにより、異なるインタリーブモジュール1700によって生成されたパッチが融合演算によって一緒に「スティッチング」されることを可能にする。ネットワーク化された量子ビットは、遅延線1730、1740を通過することができる。したがって、例えば、E方向の隣接するインタリーブモジュール1700からのネットワーク化された量子ビットは、融合グラフにおいて隣接するリソース状態の「ローカル」E量子ビットと同期してネットワーク化融合回路1712dに到達することができる。
【0114】
[0152]このようにして、各インタリーブモジュール1700は、融合グラフの各層内で連続したパッチを実行することができ、異なるインタリーブモジュール1700によって実行されるパッチは、境界で互いにスティッチングすることができる。幾つかの実施形態では、各インタリーブモジュール1700の動作の順序は、融合グラフ内の頂点に割り当てられた「インタリーブ座標」を使用して指定することができる。インタリーブ座標は、層番号、層内のパッチ番号(どのインタリーブモジュールがパッチを実行するかを識別する)、及びパッチ内のサイクル番号(これは、パッチ内の処理頂点又はリソース状態の順序を識別する)を指定することができる。図18Aは、幾つかの実施形態に係る融合グラフの単一層1800内の頂点へのインタリーブ座標の割り当てを示す。この例では、インタリーブ長Lは4であり、2×2のネットワークアレイで接続された4つのインタリーブモジュール1700があるものとする。したがって、層寸法は8×8である。各パッチ内の数字が大きいことが示すように、NWパッチ1801は、第1のインタリーブモジュール1700に割り当てられ、NEパッチ1802は、第2のインタリーブモジュール1700に割り当てられ、SWパッチ1803は、第3のインタリーブモジュール1700に割り当てられ、SEパッチ1804は、第四インタリーブモジュール1700に割り当てられる。各パッチ1801~1804内では、頂点に対応するリソース状態が生成されるRSIサイクルを識別するために、頂点に1~16の番号が付けられる。したがって、RSIサイクル1の間、各パッチ1801~1804内のNW個の最頂点が生成さ、RSIサイクル2の間、E方向に隣接する頂点がRSIサイクル4を通じて生成され、以下同様である。RSIサイクル5の間、各パッチ内のNW個の最頂点にS方向に隣接する頂点が生成され、以下同様である。便宜上、W-E方向を「行」、N-S方向を「列」と呼ぶことがある。
【0115】
[0153]インタリーブモジュール1700のインスタンス間に接続された遅延線1730、1740は、インタリーブモジュール1700の隣接するインスタンスによって生成されたリソース状態の量子ビットがネットワーク化融合回路1712d、1712eに同期して到着するように、適切な遅延を提供することができる。例えば、RSIサイクル1の間、(NEパッチ1802に割り当てられた)第2のインタリーブモジュール1700内のRSI回路1710は、スイッチ1716cによってネットワーク経路上へ遅延線1730内へルーティングされるW量子ビットを有するリソース状態を出力する。この例では、遅延線1730は、L=4RSI遅延サイクルを加え、その結果、W量子ビットは、RSIサイクル5の間に(NWパッチ1801に割り当てられた)第1のインタリーブモジュール1700のネットワーク化融合回路1712eに到達する。一方、RSIサイクル4の間、第1のインタリーブモジュール1700内のRSI回路1710は、遅延線1714aによって1RSIサイクルだけ遅延されたE量子ビットを有するリソース状態を出力する。次のRSIサイクル(サイクル5)の間、遅延E量子ビットは、スイッチ1716dによってネットワーク化融合回路1712eにルーティングされる。したがって、異なるインタリーブモジュール内のRSI回路1710によって出力されるリソース状態からの量子ビットは、パッチ境界にわたって正しく同期され得る。N-S方向のパッチ境界についても同様の考察が適用される。
【0116】
[0154]幾つかの実施形態では、遅延線1730、1740を省略することができる。例えば、図18Bは、幾つかの実施形態に係る融合グラフの層1820内の頂点へのインタリーブ座標の代替的な割り当てを示す。この表記法は、図18Aの表記法と同様であるが、異なるインタリーブモジュール1700が、文字A、B、C、及びDを使用して識別され、文字A、B、C、及びDは、明らかになるように、互いに幾分異なって構成されたインタリーブモジュールを示す。層1820はまた、パターンを任意のサイズのインタリーブ・モジュール・ネットワークにどのように拡張できるかを示すために、8×8よりも大きいものとして示されている。各頂点のサイクル番号によって示されるように、インタリーブモジュールAは、パッチ1821内のNW個の最も多くのリソース状態から始まり、E方向の行に沿って進み、次にS方向の次の行に進む(図18Aと同様に)。インタリーブモジュールBは、パッチ1822内の最も多くのリソース状態から始まり、W方向の行に沿って進み、次いでS方向の次の行に進む。インタリーブモジュール1700のインスタンスCは、パッチ1823内のSW-mostリソース状態から始まり、E方向の行に沿って進み、次いでN方向の次の行に進む。インタリーブモジュール1700のインスタンスDは、パッチ1823内のSE-mostリソース状態から始まり、W方向の行に沿って進み、次いでN方向の次の行に進む。サイクル番号が示すように、隣接するリソース状態がインタリーブモジュール1700の異なるインスタンスにおいてRSI回路1710によって出力されるときはいつでも、それらのリソース状態は同じRSIサイクルにおいて出力され、異なるインタリーブモジュールを接続するネットワーク経路上の遅延線は省略され得る。この場合、タイプA、B、C、及びDのインタリーブモジュールは、パッチを横切る方向に応じて異なる位置に内部遅延線を用いて構成される。例えば、タイプAのインタリーブモジュール(これは、図17のインタリーブモジュール1700について示されているように実装することができる)が、リソース状態のE量子ビットを1RSIサイクルだけ遅延させる場合、タイプBのインタリーブモジュールは、代わりに、リソース状態のW量子ビットを1RSIサイクルだけ遅延させる。同様に、タイプCのインタリーブモジュールは、S量子ビットを遅延させるのではなく、N量子ビットをLサイクルだけ遅延させる。適切な量子ビットを遅延させるためのインタリーブモジュール1700に対する適切な修正は簡単である。インセット1830は、ネットワーク経路上の遅延線を使用せずに、より多くのインタリーブモジュールを有するより大きなネットワークをサポートするためにパッチのABCDパターンを繰り返すことができることを示している。
【0117】
[0155]4.インタリーブモジュールを使用するFBQC
幾つかの実施形態では、インタリーブモジュール1700のネットワークアレイ1702を使用して、FBQCを実装することができる。例えば、インタリーブモジュールのネットワークアレイを使用して、図13A図13Cの融合グラフによって表わされる計算を実施することができる。
【0118】
[0156]例として、図19Aは、幾つかの実施形態に係る、インタリーブ座標がオーバーレイされた、図13Cの代表的な層1304の図を示す。この例では、ネットワークアレイ1700は、6×3の寸法及びインタリーブ長L=6を有すると仮定される。インタリーブ座標は、図18Aと同様に割り当てられ、各パッチ内でWからEに進み、NからSに進む。
【0119】
[0157]図19Bは、図19Aのパッチ1908の詳細図を示す。図から分かるように、パッチ境界は、論理量子ビット又は融合グラフ内の任意の他の境界と整列する必要はない。(言い換えれば、符号距離とインタリーブ長とは、特定の関係を有する必要はない)幾つかの実施形態では、パッチ1908は、各RSIサイクル中にインタリーブモジュール1700のスイッチ1716a~1716d及び再構成可能融合回路1712a~1712eの状態を設定するための一連の命令として解釈することができる。例えば、各RSIサイクルにおいて、量子ビットがローカル融合回路1712a~1712b、ネットワーク化融合回路1712d~1712e、又はネットワーク遅延線1730、1740にルーティングされるかどうかを制御するスイッチ1716a~1716dの状態は、現在のRSIサイクルに関連するインタリーブ座標から決定することができる。各再構成可能融合回路1712a~1712e(そのそれぞれは、図14の再構成可能融合回路1400の一例とすることができる)の状態は、そのインタリーブ座標におけるリソース状態についての頂点間の接続性に基づいて決定することができる。
【0120】
[0158]図20は、幾つかの実施形態に係るパッチ1908から決定することができるインタリーブモジュール1700のスイッチ1716a~1716d及び再構成可能融合回路1712a、1712b、1712d、1712eの設定を示す表2000を示す。所与のRSIサイクル中にスイッチ1716a~1716d及び再構成可能融合回路1712a、1712b、1712d、1712eを伝搬する量子ビットは、N1又はW34などの英数字符号によって識別され、文字は、(この説明全体を通して使用される)量子ビットの方向ラベルであり、数字は、その量子ビットを含むリソース状態がRSI1710によって出力されたRSIサイクルを示す。素数でマークされた量子ビット(例えば、W’又はN”)は、近隣のインタリーブモジュール1700からネットワーク経路を介して受信されるネットワーク化量子ビットである。灰色で陰影が付けられた表セルは、前の層の処理中に生成されたリソース状態に関連する動作を示す。層の間に「デッド」時間が存在する必要はなく、融合グラフのある層に関連付けられた全ての36(又は、より一般的には、全てのL)個のリソース状態を生成した後、インタリーブモジュール1700は、融合グラフの次の層に関連付けられたリソース状態の生成を直ちに開始することができることに留意すべきである。
【0121】
[0159]各RSIサイクルについて、各スイッチの状態は、スイッチを伝搬する量子ビットの量子ビット識別子と、スイッチがその量子ビットの「ネットワーク」又は「ローカル」出力経路(図17に示すように)を選択するように設定されているかどうかを示すための「ネット」又は「ローカル」のいずれかとによって示される。各再構成可能融合回路の状態は、融合の場合は「F()」、単一量子ビット測定の場合は「m()」のいずれかの演算によって示され、オペランドは量子ビット識別子である。この例では、単一量子ビット測定のタイプ(パウリX、Y、又はZ)は指定されていない。幾つかの実施形態において、単一量子ビット測定のタイプは、融合グラフから指定又は推測することができる。図14Dに示すように、再構成可能融合回路の動作の選択は、スイッチ1412、1414の対応する状態を選択することによって制御することができる。
【0122】
[0160]図示のように、サイクル1及び2の間にRSI回路1710によって出力されたリソース状態について、全ての量子ビットは、他のリソース状態の適切な量子ビットとの融合演算にルーティングされる。(量子ビットW1の場合、ネットワーク融合演算が選択される。)サイクル3及び4の間に生成されたリソース状態について、量子ビットE3及び量子ビットW4は、パッチ1908内の半線に従って、単一量子ビット測定値に送られる。他のRSIサイクルのスイッチ設定も同様に、融合グラフに基づいて決定することができる。
【0123】
[0161]U/D再構成可能融合回路1712cの状態は、図20には示されていない。この例では、U/D融合回路1712cは、単一量子ビット測定値が選択され得る最初の層のD量子ビット及び最後の層のU量子ビットを除いて、各層の融合演算を実行することができる。遅延線1714cは、L遅延(この場合、36RSIサイクル)を提供し、その結果、U/D融合回路1712は、ある層のU1量子ビットを次の層のD1量子ビットと融合する。幾つかの実施形態では、他の挙動を実施することができ、各U量子ビット及びD量子ビットの動作を融合グラフから決定することができる。
【0124】
[0162]この例が示すように、再構成可能融合回路を有するインタリーブモジュールのスイッチ設定は、融合グラフに基づいて決定することができる。したがって、融合グラフを表わすデータ構造を古典的制御論理への入力として提供することができ、古典的制御論理は、スイッチ設定の対応するシーケンスを決定し、融合グラフによって指定される計算を実行するためにインタリーブモジュールのネットワーク化されたアレイの動作を制御することができる。各動作サイクルの設定を列挙する命令のセットを含む他の入力も提供することができる。
【0125】
[0163]図17に示すインタリーブモジュールのネットワークを使用して、任意のサイズの層を生成できることを理解すべきである。(幾つかの実施形態では、サイズは、ハードウェア設計において固定されてもよい)インタリーブモジュール(N)の数及びインタリーブ長さLは、所望に応じて変更することができ、極端な場合には、Nを1に低減することができる。所与の層サイズについて、N及びLの異なる選択は異なる計算時間をもたらし、ハードウェアサイズと計算速度との間の所望のバランスを達成するための選択を行うことができる。
【0126】
[0164]5.更なる機能を有するインタリーブモジュール
前述の例では、融合グラフは、もつれ空間内の規則的なバルク格子に基づくことができると仮定されている。例えば、上記の融合グラフは、各層がリソース状態の関連する規則的なアレイ(又は2D格子)を有する層として表わすことができる構造を有する。幾つかの論理演算では、格子内の選択された位置に不規則性を導入することが望ましい場合がある(「不規則性」又は「欠陥」は、これに関連して、層内のリソース状態(又は頂点)の数を変化させるバルク格子からの変化を指すために使用される)。例として、図21A及び図21Bは、格子構造を変化させる動作の融合グラフの例を示す。これらの例では、特定の動作に対応する融合グラフの部分のみが示されている。これらの動作は、例えば図12Dの融合グラフ1240cに示すように、示された動作がバルク格子に不規則性を作り出すより大きな融合グラフに組み込むことができることを理解すべきである。
【0127】
[0165]図21Aは、「ねじれ」演算の融合グラフ2100を示す。10個のリソース状態(円として示される頂点2102)がねじれ演算に含まれ、U-D軸に沿った2つの異なる層のそれぞれに5つの頂点2102がある。以前の融合グラフと同様に、2つの頂点を結ぶ線2104は、タイプII融合演算を示し、単一の頂点に接続された半線2106は、単一量子ビットパウリ測定値を示す。(陰影は、図12Eの凡例1250と同じである)この場合、単一の量子ビット測定値(半線2106)はパウリY測定値である。2つの“X”マーク2110は、ねじれ演算によって“スキップ”された格子位置に対応する。すなわち、スキップされた位置2110に関連付けられ得る任意のリソース状態からの量子ビットは、融合又は他の測定演算の影響を受けない。
【0128】
[0166]図21Bは、図21Aと同じ表記法を使用して、「転位」動作の融合グラフ2150を示す。転位動作に関連するE-W融合演算には、8つのリソース状態(頂点2152)が含まれる。しかしながら、転位動作は、E-W方向に隣接する格子位置にないリソース状態を結合する。「X」印2160に示すように、転位動作によって4つの格子位置がスキップされる。
【0129】
[0167]スキップされた格子位置2110又は2160についてリソース状態が生成されるかどうかは、スキップされた格子位置に関連付けられた任意の量子ビットが他の量子ビットと相互作用しない限り、設計選択の問題である。幾つかの実施形態では、スキップされた位置2110のリソース状態の生成は、(例えば、対応するRSIサイクル中にリソース状態をRSI回路に提供しないことによって、又は対応するRSIサイクル中にリソース状態を生成するためにRSI回路をトリガしないことによって)防止又は回避することができる。他の実施形態では、スキップされた位置2110のリソース状態が生成され、その後その量子ビットが吸収されてもよい。例えば、RSI回路は、不透明な材料で終端する「端末」ルーティング経路と、量子ビットを端末ルーティング経路又は適切な出力経路のいずれかに選択的にルーティングするためのルーティングスイッチとを含むことができる。
【0130】
[0168]幾つかの実施形態によれば、インタリーブモジュールは、ねじれ及び転位などの動作をサポートするための更なる回路を含むことができる。図22は、幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュール2200の簡略化された概略図を示す。インタリーブモジュール2200は、構造及び動作においてインタリーブモジュール1700と同様となることができ、E及びW量子ビットのための更なるルーティングオプションを有する。「ローカル」融合回路とも呼ばれる再構成可能融合回路2212a、2212b、2212cは、図14Dの再構成可能融合回路1400のインスタンスとすることができ、異なるRSIサイクルでインタリーブモジュール2200内のRSI回路2210によって出力されたリソース状態の量子ビットに対して融合測定値又は単一量子ビット測定値を選択的に実行するために使用することができる。加えて、インタリーブモジュール2200の隣接するインスタンス内のRSI回路によって提供されるリソース状態間のもつれを可能にするために、更なる「ネットワーク」融合回路2212d、2212eを提供することができる。ネットワーク化融合回路2212d及び2212eは、ローカルに生成されたリソース状態の量子ビット及びインタリーブモジュール2200の異なるインスタンスから受信されたネットワーク化量子ビットに対して融合演算又は単一量子ビット測定を選択可能に実行する、図14Dの再構成可能融合回路1400の更なるインスタンスであり得る。「ローカル遅延」融合回路とも呼ばれる再構成可能融合回路2212fは、図14Dの再構成可能融合回路1400の別の例とすることができ、図21A及び図21Bに示す種類の格子転位及びねじれ欠陥を生成するために使用することができる。ルーティングスイッチ2216a及び2216bは、図17のインタリーブモジュール1700のルーティングスイッチ1716a及び1716bと同様に、特定のリソース状態のN及びS量子ビットをローカル融合回路2212a又はネットワーク化融合回路2212dのうちの一方に選択的にルーティングするように動作する再構成可能光スイッチング回路とすることができる。ルーティングスイッチ2216c及び2216dは、W及びE量子ビットのための3つの出力経路のうちの1つを選択するように動作する再構成可能光スイッチング回路であり得る。規則格子が処理されている場合、ルーティングスイッチ2216c及び2216dは、図17のインタリーブモジュール1700のルーティングスイッチ1716a及び1716bと同様に、W及びE量子ビットをローカル融合回路2212b又はネットワーク化融合回路2212eのうちの一方にルーティングすることができる。格子欠陥(例えば、転位又はねじれ)が処理される場合、ルーティングスイッチ2216c及び2216dは、代わりに「ローカル遅延」経路を選択することができる。ローカル遅延経路では、(遅延線2214aによって既に1RSIサイクルだけ遅延された)E量子ビットは、遅延線2224によって余分なRSIサイクルだけ遅延され、次いで再構成可能融合回路2212fに供給され得る。W量子ビットは、更なる遅延なしに再構成可能融合回路2212fに供給され、その結果、再構成可能融合回路2212fは、現在のリソース状態からのW量子ビット及び2サイクル前のリソース状態出力からのE量子ビットで動作し、それによって、図21A及び図21Bに示すように「スキップ」を行う。
【0131】
[0169]インタリーブモジュール2200の動作は、インタリーブモジュール2200が格子欠陥を導入する動作をサポートすることができることを除いて、前述したインタリーブモジュール1700の動作と同様又は同一であり得る。
【0132】
[0170]図示の例では、インタリーブモジュール2200は、E-W方向に凹凸を導入することができる。2つ以上の方向に格子不規則性を導入する能力が望まれる場合、N-S及び/又はU-D方向を含む複数の方向に対して同様のルーティング経路、遅延線、及び再構成可能融合回路を設けることができる。
【0133】
[0171]6.計算効率の向上
幾つかの実施形態では、インタリーブモジュール(例えば、図17のアレイ1702)のネットワークアレイは、融合グラフを使用して表わすことができる任意の量子計算を実行することができる汎用量子コンピュータを提供することができる。(インタリーブモジュール1700は、前述したように、融合グラフが格子欠陥演算を含まない任意の量子計算を実行するために使用することができる。インタリーブモジュール2200又は他の変形形態は、必要に応じてアレイ1702に置き換えることができる)任意の数のインタリーブモジュールをネットワークアレイに含めることができ、各インタリーブモジュールは所望のサイズLのパッチを生成する。本目的のために、遅延線は、インタリーブ長Lに基づいて長さが決定される固定長構造であると仮定する。
【0134】
[0172]固定数のインタリーブモジュールを有するネットワークの場合、より大きいLの使用は、(所与の符号距離に対して)符号化することができる論理量子ビットの数を増大させることができる。しかしながら、Lが大きいほど、論理演算が遅くなると予想され得る。この意味で、空間(又はハードウェア)と時間との間に設計トレードオフが存在する。所与の量子計算及び固定数のインタリーブモジュールの場合、符号化される必要がある論理量子ビットの数及び符号距離に基づいて、計算を実行するためにいくらかの最小インタリーブ長Lminが必要とされる。同時に、より大きいLはより長い遅延線を意味し、これは次に遅延線における伝搬損失の増大を意味する可能性があり(既存の光ファイバ及び他の導波路は完全には透過しないため)、ある時点でインタリーブ長は、伝搬損失がエラー訂正符号の損失閾値を超える閾値(Lmax)に達する可能性がある。LminがLmaxを超える場合、量子計算を実行するために更なるインタリーブモジュールを追加する必要がある。したがって、選択されたインタリーブ長Lは、LminとLmaxとの間でなければならない。幾つかの実施形態では、L=Lminが最適な選択であり得る。しかしながら、幾つかの実施形態では、線形より良い時空間トレードオフを利用することによって、(融合グラフのサイズによって測定することができる)量子計算の全体積を低減するために更なる物理量子ビットを使用することができる。この場合、インタリーブは、非インタリーブ手法(例えば、図15の完全にネットワーク化された単位セル)と比較して量子計算の実行速度を高めることができる。更に、インタリーブは論理演算の速度を遅くするので、Lを増大させると、論理演算に追いつくために必要な従来の処理の速度を低下させることができる。例えば、条件付き論理は、実行されるべき後続の論理演算を決定するために、第1の論理演算に対応する測定値の第1のセットを受信及び復号することを古典プロセッサに要求することができる。デコーダが論理演算を実行することができる速度よりも遅い場合、計算は失速又は減速する可能性がある。様々な実施形態において、インタリーブ長Lは、前述の設計上の考慮事項及び/又は他の考慮事項に基づいて、特定のハードウェア実装のために最適化することができる。
【0135】
[0173]7.接続性の向上
前述した例では、論理量子ビットは、平面トポロジによくマッピングする正方形表面符号を使用して表わすことができる。例えば、図13Aの融合グラフは、連続する層の間の融合演算によって結合された一連の平面層として見ることができる。しかしながら、場合によっては、異なるトポロジを使用する融合グラフは、よりコンパクトな論理演算を可能にすることができ、論理演算に対応する融合グラフのボリュームに関してコンパクトさを規定することができる。幾つかの実施形態では、インタリーブモジュールのネットワークは、よりコンパクトな融合グラフの実行をサポートするために更なる結合を有することができる。以下、実施例を説明する。
【0136】
[0174]7.1.論理量子ビットの移動
平面表示がボリューム集約的であり得る一例は、論理量子ビットを「移動」させる場合であり、論理量子ビットを表わすバルク格子領域が融合グラフ内のある領域から別の領域にシフトされる論理演算である。例えば、論理量子ビットは、それらの間で2量子ビット論理演算が実行され得るように、隣接する領域にシフトされる必要があり得る。図23Aは、ソース領域2302から宛先領域2304に論理量子ビットを移動させるための融合グラフ2300の一例を示す。論理量子ビットは静止しており(相互作用しておらず)、融合グラフ2300は、境界における単一量子ビット測定値を有する規則的なバルク格子を表わす。この例では、量子情報を単に次の層にテレポートする移動動作に関連する(U-D方向に沿った)中間層2306があり、これは余分な計算時間を必要とする可能性がある。図23Bは、論理中止に対する移動動作のより効率的な実施のための融合グラフ2350を示す。融合グラフ2350において、量子情報は、ソース領域2352の最U層内のU量子ビットと宛先領域2354の最D層内のD量子ビットとの間の融合演算を使用して、U-D軸に沿った単一ステップで所望の数の格子位置だけWからEにシフトされる。
【0137】
[0175]幾つかの実施形態によれば、このタイプの「高速」移動動作は、U及びD量子ビットのための更なるルーティングスイッチを追加することによってインタリーブモジュールを使用して実施することができる。図24は、幾つかの実施形態によるインタリーブモジュール2400の簡略化された概略図を示す。インタリーブモジュール2400は、図示されるように、U及びD量子ビットのためのルーティングスイッチ及びネットワーク化融合回路が追加されたインタリーブモジュール2200(又はインタリーブモジュール1700)と同様であり得る。N、S、E、及びW量子ビットのためのルーティングスイッチ及び融合回路は、図24には示されておらず、これらの構成要素及びそれらの動作は、図17又は図22に示す構成要素と同様又は同一であり得る。図24に図示されるように、インタリーブモジュール2400は、本明細書に記載された他のRSI回路と同一であり得るRSI回路2410を含み得る。インタリーブモジュール1700と同様に、各リソース状態のU量子ビットは遅延線2414cにルーティングされ、遅延線はLサイクルの遅延を提供することができる。インタリーブモジュール1700とは異なり、インタリーブモジュール2400は、更なるルーティングスイッチ2416e及び2416fを含む。ルーティングスイッチ2416eは、ローカル融合回路2412c(これは、図17のローカル融合回路1712cと同一であり得る)又はネットワークアレイ内の他の場所のインタリーブモジュール2400のインスタンスに接続するネットワーク経路2430のいずれかにD量子ビットを配信するように動作する。ルーティングスイッチ2416fは、(遅延した)U量子ビットをローカル融合回路2412c又はネットワーク化融合回路2412fのいずれかに送達するように動作する。ネットワーク化融合回路2412fは、ルーティングスイッチ2416fによって送達されるU量子ビット、及びネットワーク内の他の場所にあるインタリーブモジュール2400の別のインスタンスからネットワーク経路2430’を介して受信されるD量子ビットで動作する図14の再構成可能融合回路1400のインスタンスとすることができる。
【0138】
[0176]図25は、幾つかの実施形態に係るネットワークアレイ内のインタリーブモジュール2400間のネットワーク経路2430及び2430’の接続性の簡略化された概略図を示す。インタリーブモジュール2400のネットワークアレイ2502が示されている。この例では、ネットワーク経路2430は、インタリーブモジュール2400の隣接するインスタンス間で量子ビットを転送する。これにより、連続する階層において、論理量子ビットをE方向に1インタリーブ長Lだけシフトさせることができる。連続する層間のより大きなシフト及び/又は異なる方向のシフトをサポートするために、接続性は所望に応じて変更することができる。
【0139】
[0177]7.2.周期的境界条件
上記の例は、正方形表面符号パッチを使用し、各論理量子ビットは平面層内のd×d格子にマッピングされる。しかしながら、実施形態は、正方形表面符号又は平面符号に限定されない。例えば、トーリック符号は、各層に周期的な境界条件を作成することによって規定することができる。図26A~26Dは、周期的境界条件を有するトーリック符号の概念図である。図26Aは、もつれ空間内のN、E、W、及びS方向に関連付けることができる境界2602、2603、2604、2605を有する平面層2600を示す。E-W方向に周期的境界条件を作成するために、図26Bに示すように、境界2605に沿ったリソース状態のE量子ビットと境界2604に沿ったリソース状態のW量子ビットとの間で融合演算2610を実行することができる。N-S方向に周期的境界を作成するために、図26Cに示すように、境界2602に沿ったリソース状態のN量子ビットと境界2603に沿ったリソース状態のS量子ビットとの間で融合演算2612を実行することができる。図26Dは、図26Cのトーリック符号が、異なるパッチの境界におけるリソース状態間の融合演算(曲線2631、2632、2633、2634によって示されている)を用いて、4つの平面パッチ2621、2622、2623、2624のセットにどのようにマッピングされ得るかを示す。
【0140】
[0178]幾つかの実施形態によれば、トーリック符号は、インタリーブモジュール1700(又はインタリーブモジュール2400)などのインタリーブモジュールのネットワークアレイを使用して実装することができる。図27は、幾つかの実施形態によるインタリーブモジュールのネットワークアレイ2702の簡略化された概略図を示す。ネットワークアレイ2702は、ネットワークアレイ1702と概ね同様とすることができ、インタリーブモジュール2700は、前述したインタリーブモジュールのいずれかと概ね同様とすることができる。しかしながら、ネットワークアレイ2702では、アレイ2702のEエッジの各インタリーブモジュール2700は、経路2730によってアレイ2702のWエッジの対応するインタリーブモジュールに接続され、アレイ2702のN端の各インタリーブモジュールは、経路2740によってアレイ2702のS端の対応するインタリーブモジュールに接続される。適切な時間遅延を用いて、トーリック符号の生成を実施することができ、各インタリーブモジュール2700は、図26Dに示すパッチ2621~2624のうちの1つを生成する。
【0141】
[0179]インタリーブモジュール間の更なる接続性のこれらの例は例示的なものであり、変形及び修正が可能である。様々な実施形態において、空間的に分離されたインタリーブモジュール間の接続は、量子コンピュータ内の論理量子ビットのルーティングを容易にすることができる。例えば、幾つかのアーキテクチャは、異なるタイプの動作を担当する異なる論理ユニットを含むことができ、論理量子ビットは、ある論理ユニットから別の論理ユニットに移動する必要があり得る。インタリーブモジュール間の非局所的な空間的接続により、論理量子ビットの移動を効率的に実行することができる。インタリーブモジュール間の特定のタイプ及び数の接続は、特定のアーキテクチャ及び融合グラフトポロジに適合するように適合させることができる。
【0142】
[0180]7.3.非ユークリッド幾何学
前述の例では、ネットワークアレイは、全てのインタリーブモジュールがN、E、W、及びS方向のそれぞれに固有の隣接者を有する(又は場合によっては隣接者がない)ように、インタリーブモジュールを接続することによって形成される。幾つかの実施形態では、より多くの選択可能なルーティング経路及び再構成可能融合デバイスを追加することによって、インタリーブモジュールの異なる(しかし固定された)組み合わせで生成された量子ビット間のネットワーク融合を実行することができる。例として、図28は、幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュール2800の簡略化された概略図を示す。インタリーブモジュール2800は、ルーティングスイッチ2816eが3つ以上の出力経路を提供することを除いて、図24のインタリーブモジュール2400と同様とすることができる。ローカル経路は、D量子ビットをローカル融合回路2412cに送達する。他の経路は代替のネットワーク経路2830a~2830cであり、それらのそれぞれはインタリーブモジュール2800の異なるインスタンスに結合することができる。同様に、ネットワーク経路2830d~2830fを介して受信された代替のネットワーク化されたD量子ビットの中から選択するために、更なる「U-ネット」スイッチ2832が設けられる。代替的なネットワーク化されたD量子ビットは、他のインタリーブモジュール2800において生成されたリソース状態からのものであり得る。選択されたネットワーク化されたD量子ビットは、ネットワーク化融合回路2412fに供給される。動作はインタリーブモジュール2400と同様とすることができ、更なるルーティング経路により、論理量子ビットを異なる方向に、及び/又は隣接する層間の異なる距離だけ選択的に移動させることができ、及び/又は異なる数のRSIサイクルだけ遅延させることができる。代替的なネットワーク経路はU及びD量子ビットに限定されず、インタリーブモジュール内の任意のルーティングスイッチは、任意の数のネットワーク経路に選択的に結合することができることを理解すべきである。同様に、U-ネットスイッチ2832などのスイッチを設けて、任意の数の入力ネットワーク経路の中から選択することができる。
【0143】
[0181]幾つかの実施形態では、インタリーブモジュール内の1つ以上のルーティングスイッチは、異なるネットワーク経路の間だけでなく、異なる長さの遅延線及び/又はインタリーブモジュール内の異なる再構成可能融合回路に結合する異なるローカル経路の間でも選択を可能にすることができる。ローカル及びネットワークルーティング経路の適切な組み合わせは、より複雑な表面符号及び/又は他の潜在的な効率を可能にすることができる。
【0144】
[0182]例として、図29A及び図29Bは、星形表面符号パッチ2900及び2920の融合グラフの2つの例を示す。星形表面符号パッチは、三角形(n=3)及び正方形(n=4)表面符号パッチのn角形一般化として理解することができる。星形表面符号パッチ2900では、n=8である。nが大きい場合、星形表面符号パッチは、正方形表面符号パッチとして論理量子ビットあたりの物理量子ビット数の約半分を使用する。しかしながら、星形表面符号パッチの形状は、物理量子ビットの規則的な2次元アレイで実装することを困難にする。
【0145】
[0183]幾つかの実施形態によれば、切り替え可能なネットワーク接続を有するインタリーブモジュールを使用して、星形表面符号パッチを実装することができる。図30A及び図30Bは、幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュールのネットワークを使用して実装することができる星形表面符号パッチをサポートする接続構造の例を示す。図30Aは、星形表面符号パッチ2900の、8回繰り返す三角形の切頭格子パターン3002への分解を示す。パターン3002のインスタンス間の接続性(融合演算)は、線3004として示されている。左端及び右端の矢印3003は周期的境界条件を示すことを理解すべきである。更に、「バックボーン」3008(星形表面符号2900の中心部分に対応する)は、パターン3002の各インスタンスに接続される。
【0146】
[0184]図30Bは、星形表面符号パッチ2920の、8回繰り返す三角形の切頭格子パターン3022への分解を示す。「二重バックボーン」3028は、格子パターン3022の各インスタンスに接続する。左端及び右端の矢印3023は周期的境界条件を示すことを理解すべきである。図30Bでは、インタリーブ座標(番号1~8)が各頂点に割り当てられて、星形表面符号パッチ2900を生成するために使用することができるインタリーブパターンを示唆している。
【0147】
[0185]図31は、幾つかの実施形態に係る図30Bに示される格子パターンを生成するために使用することができるインタリーブモジュール3100のネットワークアレイ3102の簡略化された概略図を示す。各インタリーブモジュール3100は、前述したインタリーブモジュールと同様とすることができ、所望の接続を可能にするために切り替え可能なネットワーク接続(例えば、図28に示すものと同様である)を含むことができる。インタリーブモジュール3100を接続する線3130は、インタリーブモジュール3100の異なるインスタンス間の選択可能なネットワーク経路を表わす。
【0148】
[0186]本明細書に記載の様々な表面トポロジは例示的なものであり、適切に接続されたインタリーブモジュールは多種多様な表面符号を実装できることが理解されよう。
【0149】
[0187]8.FBQCを実現する計算システム
図32は、幾つかの実施形態に係るFBQCを実装することができる量子コンピュータシステム3200のためのシステムアーキテクチャの一例を示す。フォトニック物理量子ビットを使用して、量子コンピュータシステム3200の幾つかの実施形態は、フォールトトレラントFBQCのためのもつれ構造(例えば融合グラフ)を反映する測定データを生成することができる。システム3200は、古典的制御論理3210と、リソース状態生成器3202と、インタリーブモジュール3220のネットワーク3212とを含む。説明を明確にするために、古典的な信号経路3232~3237は、インタリーブモジュール3220の一例のみに接続されて示されている。古典的制御論理3210は、本明細書で説明される方法でインタリーブモジュール3220の各インスタンス内の構成要素と通信することができることを理解すべきである。
【0150】
[0188]古典的制御論理3210は、プログラマブルプロセッサ及びメモリを有するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくはシステムオンチップ(SOC)などの古典的な論理ゲート(AND、OR、NOR、XOR、NAND、NOTなど)の配置、又は特定用途向け集積回路(ASIC)などのオンチップハードワイヤード回路を有するデジタル論理回路として実装することができる。幾つかの実施形態では、古典的制御論理3210(又はその一部)は、プロセッサ及びメモリを有するオフチップ古典的コンピュータに実装することができ、オフチップ古典的コンピュータは、古典的制御論理3210の動作の一部又は全部を実行するようにプログラムすることができる。
【0151】
[0189]動作中、古典的制御論理3210(古典的コンピュータを含むことができる)は、実行される量子計算を指定する「プログラム符号」3201を受信することができる。例えば、プログラム符号は、上記の図に示すような融合グラフを規定する機械可読データファイルを含むことができる。古典的制御論理3210は、プログラム符号を読み取り、計算を実行するためにリソース状態生成器3202及びインタリーブモジュール3220のための制御信号を生成することができる。
【0152】
[0190]リソース状態生成器3202は、リソース状態を生成することができる任意の回路又は他の構成要素を含むことができ、それはフォトニック量子ビット(例えば、前述したようにデュアルレール符号化を使用する)のシステムであり得る。例えば、リソース状態生成器3202は、図10の量子ビットもつれシステム1000の実装とすることができる。様々な実施形態において、リソース状態生成器3202は、適切な数の量子ビット及びもつれパターンを有する6リングリソース状態又は他のリソース状態を生成することができる。幾つかの実施形態では、リソース状態生成器3202は、異なる動作サイクル中に異なるもつれパターンを有するリソース状態を生成するように再構成可能とすることができ、古典制御ユニット3210は、例えば、リソース状態生成を開始及び停止するために、及び/又は各動作サイクル中に生成するリソース状態の数又はタイプを選択するために、信号経路3230を介してリソース状態生成器3202に古典制御信号を送信することができる。幾つかの実施形態では、リソース状態生成器3202は、1未満の確率で所与の動作サイクルの所望の数のリソース状態を生成することに成功することができ、リソース状態生成器3202は、信号経路3231を介して古典的なヘラルド信号を古典的制御論理3210に提供することができる。古典的なヘラルド信号は、例えば、報知された光子源に関連する検出器からの信号、及び/又はベル状態生成器及び/又は前述の融合回路などのもつれ生成回路を含むことができる。古典的制御論理3210は、信号経路3231を介して受信されたヘラルド信号を使用して、リソース状態生成の各インスタンスが成功したか失敗したかを決定することができる。例えば、検出器内の光子の有無の特定のパターンは、成功又は失敗を示すことができる。幾つかの実施形態では、リソース状態生成器3202は極低温(例えば、4K)に維持することができ、一方、インタリーブモジュール3220はより高い温度(例えば、300K)で動作することができる。リソース状態生成器3202は、光ファイバ又は他の導波路を使用してインタリーブ・モジュール・ネットワーク3212に結合することができ、各インタリーブモジュール3220に動作サイクルごとに1つのリソース状態を提供することができる。
【0153】
[0191]各インタリーブモジュール3220は、図17のインタリーブモジュール1700、図24のインタリーブモジュール2400、又は前述した例のいずれかを含む任意の他のインタリーブモジュールのインスタンスとすることができる。図32に示すように、各インタリーブモジュール3220は、RSI回路3222、ルーティングスイッチ3224のセット、及び再構成可能融合回路3226のセットを含むことができる。各インタリーブモジュール3220内のコンポーネント間及びインタリーブモジュール3220間の結合の詳細は、図32には示されていない。前述の結合方式のいずれか、又は特定のトポロジー形態を有する融合グラフの実行をサポートする他の方式を使用できることを理解すべきである。
【0154】
[0192]各RSI3222は、前述したようにリソース状態を受信することができる。幾つかの実施形態では、RSI3222は、データ入力を必要とせずに自律的に動作することができ、各RSI3222回路は、動作サイクル(RSIサイクル又はクロックサイクルとも呼ばれる)ごとに1つのリソース状態を受信することができる。前述したRSI回路構成のいずれか又は他の構成を使用することができる。必要に応じて、リソース状態生成は、別個のリソース状態生成器3202ではなく、各RSI3222の内部で実施することができる。
【0155】
[0193]光ファイバ(又は他の導波路)3242を使用して、各RSI3222をその関連するルーティングスイッチ3224に結合することができる。幾つかの実施形態では、光ファイバ(又は他の導波路)3242は、同じリソース状態の異なる量子ビットの伝搬経路に適切な相対遅延を導入することができる。例えば、光ファイバ3242は、図17に示す遅延線1714a~1714cを実装することができる。
【0156】
[0194]古典的制御論理3210は、インタリーブモジュール3220の各インスタンスにおいてスイッチ3224をルーティングするための制御信号を生成し、古典信号経路3234を介して制御信号をルーティングスイッチ3224に送信することができる。前述したように、幾つかの実施形態では、ルーティングスイッチ3224は、RSI3222からローカル経路3244a又はネットワーク経路3244bのいずれかに量子ビットをルーティングすることができる。ローカル経路3244a及びネットワーク経路3244bは、量子ビットを再構成可能融合回路3226に転送する。前述したように、ローカル経路3244aは、同じインタリーブモジュール3220内の再構成可能融合回路3226に接続し、ネットワーク経路3244aは、異なるインタリーブモジュール3220内の再構成可能融合回路3226に接続する。説明を明確にするために、図32は、1つのローカル経路及び1つのネットワーク経路を示すが、いずれかのタイプの複数の経路を提供することができ、所与のリソース状態の異なる量子ビットのルーティング経路を互いに独立して選択することができることを理解すべきである。幾つかの実施形態では、古典的制御論理3210は、量子計算の融合グラフ表示に基づいて、ルーティングスイッチ3224のためのルーティング経路及び対応する制御信号を選択することができる。融合グラフを実行するためのルーティングスイッチのサイクルごとの設定の一例は、図19A図19B及び図20に関連して先に説明した。他の選択ロジックも実装することができる。
【0157】
[0195]幾つかの実施形態では、インタリーブモジュール3212の全てのインスタンスにわたる全てのルーティングスイッチ3224のセットは、融合ネットワークルータ3250を提供することができる。幾つかの実施形態では、融合ネットワークルータ3250は、基礎となるハードウェアの変更を必要とせずに、前述の例を含む異なる層トポロジをサポートする再構成可能な融合ネットワークルータとすることができる。例えば、図28を参照して前述したように、代替的なネットワークルーティング経路3244bは、一方のインタリーブモジュール3220内のルーティングスイッチ3224と、2つ以上の他のインタリーブモジュール3220のそれぞれ内の再構成可能融合回路3226との間に設けることができる。様々な実施形態において、任意のルーティングスイッチと任意の再構成可能融合回路との間にネットワークルーティング経路を設けることができる。極端な場合には、全てのルーティングスイッチを全ての再構成可能融合回路に接続することができるが、(前述の例のように)規則的な格子構造を有する融合グラフの場合、全ての可能な接続が有用な接続であるとは限らず、所与の実装形態におけるローカル経路3244a及びネットワーク経路3244bのセットは、システム3200がサポートすることを意図している融合グラフトポロジに基づくことができる。
【0158】
[0196]古典的制御論理3210はまた、インタリーブモジュール3220の各インスタンスにおいて再構成可能融合回路3226のための制御信号を生成し、古典的な信号経路3236を介して再構成可能融合回路3226に制御信号を送信することができる。前述したように、幾つかの実施形態では、各再構成可能融合回路3226は、2つの入力量子ビットで動作する図14Dの回路1400の実装であり得る。回路1400は、古典的制御信号を提供してスイッチ1410及び1412の状態を選択することによって制御することができ、これは、所望の測定演算に2つの入力量子ビットをルーティングする効果を有し、所望の測定演算は、2つの入力量子ビットのそれぞれに対する2量子ビットジョイント測定演算(例えば、タイプII融合演算)又は個々の量子ビット測定(例えば、特定のパウリ基底において)のいずれかを含むことができる。幾つかの実施形態では、古典的制御論理は、量子計算の融合グラフ表示(又は他の表示)に基づいて所望の測定演算を選択することができる。融合グラフを実行するための測定演算のサイクルごとの選択の一例は、図19A図19B及び図20に関連して先に説明した。他の選択ロジックも実装することができる。
【0159】
[0197]再構成可能融合回路3226によって生成された測定結果データ(「測定結果」とも呼ばれる)は、古典信号経路3237を介して古典的制御論理3210に提供することができる。前述のように、幾つかの実施形態では、測定結果データは、所与のサイクルにおける再構成可能融合回路内の各検出器又はアクティブ経路上の検出器の光子カウント(又は光子の有無を示す2値信号)を含むことができる。
【0160】
[0198]古典的制御論理3210は、量子計算の結果を決定するために、古典制御経路3237を介して受信された測定結果データを復号することができる。幾つかの実施形態では、古典的制御論理3210はまた、信号経路3233を介して受信されたヘラルド信号を復号に組み込むことができる。古典的制御論理3210で実施することができる復号化動作の更なる説明は、上記の国際公開第2021/155289号パンフレットに見出すことができる。
【0161】
[0199]図33は、幾つかの実施形態に係るインタリーブモジュール(例えば、インタリーブモジュール3220)のアレイを動作させるためのプロセス3300のフロー図である。プロセス3300は、例えば古典的制御論理3210で実施することができる。ブロック3302において、古典的制御論理3210は、実行されるべき量子計算(又は論理量子ビットに対する他の演算)に対応する融合グラフの機械可読表示を取得することができる。ブロック3304において、古典的制御論理3210は、各インタリーブモジュール3210によって生成される融合グラフのパッチを規定することができる。例えば、前述したように、インタリーブ長がLである場合、融合グラフの各層をサイズLのパッチに分割することができ、各パッチをインタリーブモジュール3210の異なるインスタンスに割り当てることができる。ブロック3306において、古典的制御論理3210は、RSIサイクルカウンタを初期化することができる。RSIサイクルカウンタは、例えば、リソース状態がRSI3222に提供される速度に対応する速度で動作する従来のクロック回路とすることができる。ブロック3308において、古典的制御論理3210は、現在のRSIサイクルのインタリーブ座標を決定することができる。インタリーブ座標の決定の一例は、図19Aを参照して前述されている。
【0162】
[0200]ブロック3310において、各RSI3222は、リソース状態を取得することができる。例えば、RSIサイクルカウンタに応答して古典的制御論理3210によって生成された信号は、リソース状態生成器3202におけるリソース状態の生成をトリガすることができ、リソース状態生成器3202は、各RSI3222にリソース状態を提供することができる。ブロック3312において、古典的制御論理3210は、インタリーブ座標に基づいてルーティングスイッチ3224のための設定を決定することができる。例えば、前述したように、古典的制御論理3210は、インタリーブ座標(又はパッチ内のリソース状態の位置)に基づいて、各量子ビットがローカル融合回路又はネットワーク化融合回路に向けられるべきかどうかを決定することができる。ブロック3314において、古典的制御論理3210は、ブロック3312における決定に基づいて、量子ビットをローカル経路又はネットワーク経路にルーティングするために、ルーティングスイッチ3224への制御信号を生成することができる。ブロック3316において、古典的制御は、融合グラフに示された測定演算に基づいて再構成可能融合回路3226のスイッチ設定を決定することができる。例えば、前述したように、古典的制御論理3210は、融合グラフから、融合演算を実行するか、又は単一量子ビット測定(及び、該当する場合、どの単一量子ビット測定を実行すべきか)を実行するかを決定することができる。ブロック3318において、古典的制御論理3210は、ブロック3316において決定された設定を実施するために再構成可能融合回路3226への制御信号を生成することができる。ブロック3320において、古典的制御論理3210は、再構成可能融合回路3226から測定結果データを受信することができる。測定結果データは、上記のように使用することができる。
【0163】
[0201]ブロック3322において、古典的制御論理3210は、量子計算が完了したかどうか、例えば、融合グラフ全体が実行されたかどうかを決定することができる。そうでない場合には、ブロック3324において、RSIサイクルカウンタをインクリメントすることができ、プロセス3300はブロック330に戻って、次のインタリーブ座標を決定し、リソース状態の次のセットを処理することができる。プロセス300は、計算が完了するまで反復し続け、ブロック3326で終了することができる。インタリーブモジュール3220の全てのインスタンスは、ルーティングスイッチ3224の設定に基づいて異なるインタリーブモジュール3220間を伝播する光子を用いて、並列に動作することができることを理解すべきである。異なるリソース状態からの量子ビットが、融合グラフを実行するための正しい相対タイミングで再構成可能融合回路3226に到達するように、インタリーブモジュール内又はインタリーブモジュール間に遅延線を設けることができる。
【0164】
[0202]図32のシステム3200及び図33のプロセス3300は例示的なものであり、変形及び修正が可能である。別々に示されているブロックを組み合わせることができ、又は単一のブロックを複数の別個の構成要素を使用して実装することができる。動作の順序は、論理が許容する範囲で変更することができ、順次と記載された動作を同時に実行することができる。インタリーブモジュール3200は、前述したインタリーブモジュールアレイ又はその変形もしくは修正のいずれかに従って実装することができる。
【0165】
[0203]システム3200は、量子計算、量子通信、及び他の用途に関連する動作を含む、融合グラフを使用して規定することができる論理量子ビット又は他の動作に対して動作を実行するために、本明細書に記載のインタリーブモジュールを組み込むことができる量子コンピュータシステムの一例にすぎない。本開示にアクセスできる当業者であれば分かるように、多くの異なるシステムを実装できる。更に、所与のインタリーブ座標に対して実行されるべきインタリーブ座標及び演算の決定は、融合グラフ、又はリソース状態のセットに対して実行されるべき演算のセットを指定する任意の他の入力に基づくことができる。したがって、インタリーブモジュールは、FBQCを含むがこれに限定されない様々な用途に使用することができる。
【0166】
[0204]9.更なる実施形態
インタリーブモジュール及びプロセスの前述の例は例示的なものであり、必要に応じて変更することができる。方向ラベル(例えば、N、E、W、S、U、D)の使用は、説明の便宜上のものであり、構成要素又は物理量子ビットの特定の物理的配置を必要としたり暗示したりするものではなく、もつれ空間を指すものとして理解されるべきである。全ての数値実施例は例示を目的としており、変更することができる。更に、層及びパッチは、正方形の数に関連して説明されるが、非正方形の層及び/又は非正方形のパッチも使用できることが理解されるべきである。例えば、パッチ又は層は長方形であり得る。三角パッチ又は層(又は他の形状を有するパッチ又は層)は、例えば、行ごとにリソース状態の数を変えることによって生成することもできる。更に、前述した例は、リソース状態の全てのインスタンスが同じもつれパターンを有すると仮定しているが、そのような均一性は必要とされない。例えば、幾つかの実施形態では、リソース状態生成器は、異なるクロックサイクルで異なるもつれパターンを有するリソース状態を生成するように再構成可能であり得る。更に、リソース状態生成器は非決定的に動作することができ、これはリソース状態間の確率的変動を導入することができる。
【0167】
[0205]幾つかの実施形態では、リソース状態生成は非決定性であり、所与の動作サイクルにおいて、特定のリソース状態生成器が所望のリソース状態の生成に成功してもしなくてもよいことを意味する。したがって、幾つかの実施形態は、幾つか(M個)のリソース状態生成回路を提供することができる。Nがインタリーブモジュールのインスタンスの総数である場合、MはNより大きくすることができ、Mは、所与の動作サイクル中に少なくともN個のリソース状態が生成される十分に高い確率を提供するように選択することができる(所与の実施態様における「十分に高い確率」は、フォールトトレランスの特定の実施態様に基づいて決定することができる)。その例が当技術分野で知られている能動的多重化技術を使用して、各クロックサイクルでN個のM個のリソース状態生成器を選択して、インタリーブモジュールのN個の異なるインスタンスにリソース状態を配信することができる。したがって、各インタリーブモジュールは、リソース状態生成器のそれ自体の専用インスタンスを有することができるが、有する必要はない。
【0168】
[0206]前述の実施形態は、FBQCを実行するために使用することができるもつれ構造を生成するためのシステム及び方法の例を提供する。しかしながら、実施形態はFBQCに限定されず、測定ベース量子コンピューティング(MBQC)、他の量子コンピューティングシステム、量子通信システム、及び指定されたもつれ構造を有する多数の物理量子ビットを含むシステム上で測定を実行することが望ましい任意の他のコンテキストを含む、様々なコンテキストで使用され得る。リソース状態の特定のサイズ(量子ビット数)及びもつれパターンは、特定のユースケースに応じて適宜変更することができる。これに加えて又は代えて、リソース状態の数及びリソース状態間のもつれ形状は、特定の使用事例に従って変更することができる。例えば、上記の説明は、3次元形状を有する融合グラフの例を使用しているが、より多い又はより少ない次元を有する融合グラフは、リソース状態の適切なソース及びインタリーブモジュールの適切に接続されたネットワークを提供することによって実行することができる。
【0169】
[0207]更に、前述の実施形態は、特定の材料及び構造(例えば、光ファイバ)への言及を含むが、光子を生成、伝播、及び動作することができる他の材料及び構造を置き換えることができる。前述したように、リソース状態は、フォトニック回路を使用して生成することができ、又はリソース状態は、物質ベースの量子ビットを使用して作成することができ、その後、適切なトランスデューサ技術を適用して、物質ベースの量子ビットの状態をフォトニック状態にスワップすることができる。本明細書に記載のインタリーブは、フォトニック量子ビットの伝搬を利用し、同様の技術は、明確に規定されたハードウェア経路に沿って伝搬するエンティティを使用して実現される物理量子ビットのシステムに適用可能であり得る。
【0170】
[0208]本明細書に示すリソース状態、インタリーブモジュール、及びインタリーブモジュールのネットワークは例示的なものであり、変形及び修正が可能であることを理解すべきである。幾つかの実施形態では、異なるサイズ及び/又はもつれパターンを有するリソース状態を融合グラフ内の異なる頂点位置で使用することができ、リソース状態構成の位置依存選択を使用して論理演算を実施することができる。更に、FBQCは、本明細書に記載のインタリーブ技術の使用例であるが、インタリーブ技術は、一般に、小規模なもつれ量子システム(リソース状態)からの大規模なもつれ量子システムの構築に適用可能であることを理解すべきである。したがって、本明細書に記載の種類のインタリーブモジュール及び技術は、FBQC及び他の量子コンピューティングシステムを含むがこれらに限定されない様々な状況で適用することができる。
【0171】
[0209]古典的制御論理は、導波路、ビームスプリッタ、検出器及び/又は他のフォトニック回路構成要素を用いてオンチップで、又は必要に応じてオフチップで実装することができる。
【0172】
[0210]本明細書中で使用される全ての数値が例示を目的とするものであって変更されてもよいことが理解されるべきである。場合によっては、スケールの感覚を与えるために範囲が定められるが、開示された範囲外の数値は排除されない。
【0173】
[0211]本明細書中の全ての図は概略図として意図されることも理解されるべきである。別段具体的に示されなければ、図面は、そこに示される要素の特定の物理的配置を又は示される全ての要素が必要であることを意味しようとするものではない。本開示にアクセスする当業者は、図面に示される或いはさもなければこの開示で記載される要素を修正又は省略することができるとともに、図示されない又は記載されない他の要素を追加できることを理解できる。
【0174】
[0212]本開示は、特定の実施形態に関連して特許請求の範囲に記載される発明の説明を与える。本開示にアクセスする当業者は、実施形態が特許請求の範囲に記載される発明の範囲を網羅せず、特許請求の範囲に記載される発明の範囲が全ての変形、修正、及び、均等物に及ぶことが分かる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18A-18B】
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22
図23A-23B】
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28
図29A
図29B
図30A-30B】
図31
図32
図33
【国際調査報告】